説明

ブース

【課題】ブースの出入り口を構成するフィルムの破断が長期間防止でき、耐久性に優れたブースを提供する。
【解決手段】天井面と側面とを有するブースであって、少なくとも1つの側面が合成樹脂製の上側フィルムと下側フィルムとで構成され、上側フィルムと下側フィルムの側端近傍部同士はオーバーラップしていて、かつ上側フィルムの上端が前記天井面に接合してなることを特徴とする。このとき、オーバーラップした部分に、上側フィルムと下側フィルムの側端近傍部同士の密着を防止する機能を付与することが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天井面と側面とを有するブースに関するものであり、特に、出入り口を構成するフィルムが破断しにくいブースに関する。
【背景技術】
【0002】
ブースは種々の用途で利用されているが、クリーンブース、塗装ブース、スプレーブース、喫煙ブース、屋台や屋外飲食スペースなどの屋外ブース等が代表的である。これらのブースは、ブース内外の環境を隔てることを目的に設置されるものであり、骨組みである枠体(フレーム)と、天井面および側面とから通常構成されている。
【0003】
図1に、天井面Cと側面Sとを有するブースの一例を示す。
図1に示すように、このようなブース10の出入り口12は、人や荷物の出入りがあってもブース内の環境が変化しないように、出入り口12をなす2枚の合成樹脂製フィルムU,Lの側端近傍部同士を10〜30cm程度オーバーラップさせて設計される。出入り口12においてオーバーラップさせた2枚のフィルム(以下、オーバーラップさせた上側のフィルムUを「上側フィルム」、下側のフィルムLを「下側フィルム」とも言う)の接合箇所は、天井面Cとの境界部であり、前横フレームF1に沿うものや、前横フレームF1の位置よりも若干下端側であるもの、すなわち前横フレームF1の近傍において上側フィルムが接合されていることが一般的であった。図1中、これら2枚のフィルムU,Lの接合箇所を斜線部で表す。
【0004】
ところが、このように2枚のフィルムUとLとの接合箇所(図中の斜線部)が、前横フレームF1、すなわち、出入り口12が設けられる側面と天井面Cとの境界をなす梁の近傍に存在するケースでは、上側フィルムUの開閉を繰り返すうち、あるいは、開閉時に過度の力が加えられたりすること等により、開閉動作の支点となる接合ポイントe(前記接合箇所の開閉端部)に負荷がかかり、該接合ポイントeを起点にして上側フィルムUが破断しやすいという問題があった。
【0005】
市場では、従来品よりも出入り口12をなす合成樹脂製フィルムU、Lが破断しにくく、長期に亘る使用が可能なブースの開発が要望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3988940号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、以上のような状況を鑑み、天井面と側面とを有するブースであって、出入り口を構成するフィルムの破断が長期間防止でき、耐久性に優れたブースの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記課題を解決するために検討を重ねた結果、ブースの出入り口を構成する上側フィルムの接合箇所を前横フレーム近傍から天井面に移すことで、上側フィルムの接合箇所と上側フィルムの開閉動作の支点とを異ならせる結果、開閉時の当該接合箇所への負荷が軽減され、上側フィルムの破断が長期に亘って防止できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
すなわち、本発明のブースは、天井面と側面とを有するブースであって、少なくとも1つの側面が合成樹脂製の上側フィルムと下側フィルムとで構成され、上側フィルムと下側フィルムの側端近傍部同士はオーバーラップしていて、かつ上側フィルムの上端が前記天井面に接合してなることを特徴とする。
このとき、前記オーバーラップした部分に、上側フィルムと下側フィルムの側端近傍部同士の密着を防止する機能を付与することが好ましい。これにより、特に塩化ビニル系樹脂製のフィルムを用いた際に発生しやすい、オーバーラップした部分におけるフィルム同士の密着が軽減され、出入り口の開閉がよりスムーズに行われ得る。
【発明の効果】
【0010】
本発明のブースは、長期に亘って、出入り口を構成するフィルムの破断が生じないものである。
また、出入り口を構成する上側フィルムと下側フィルムとがオーバーラップした部分に、それらフィルム同士の密着防止機能を付与することで、出入り口の開閉が容易になるうえ、しかも、密着が防止されることにより開閉時の各フィルムへの負荷がより軽減し、一層の耐久性の向上を図ることができる。
さらに、ブース内外への大型機材の搬入や搬出時に、上側フィルムUをその上端まで大きく開くことが容易にできる他、上側フィルムおよび/または下側フィルムの側端部の補強がより一層効果的に達成できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】ブースの出入り口の従来例を示す図である。
【図2】本発明のブースの一実施態様例を説明する図であり、(A)は上側フィルムの上端のみを天井面に接合させた例、(B)は上側フィルムおよび下側フィルムの上端を天井面に接合させた例である。
【図3】本発明のブースの他の実施態様例を説明する図であり、(A)はオーバーラップした部分の一部に密着防止部材を設けた例、(B)は(A)に示した密着防止部材を天井面にまで延長させて設けた例である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のブースの一実施態様例を、図2(A),(B)により説明する。
図2(A),(B)中、1つの天井面Cと4つの側面Sとを有する五面体に描かれたブース30の形状は例示に過ぎず、少なくとも1つの側面が合成樹脂製の上側フィルムUと下側フィルムLとで構成され、上側フィルムUと下側フィルムLは側端近傍部同士がオーバーラップされており、上側フィルムUの上端は天井面Cに接合させてなるものであれば、特に限定されるものではない。例えば、四面体であっても、六面体であってもよい。
【0013】
天井面Cについては、斜めであっても、段差を有していてもよく、平面状(平坦状)に限らないので、例えば、前横フレームF1と後横フレームF2との(あるいは左横フレームF3と右横フレームF4との)地上面からの高さの設定が異なっていてもよい。
なお、天井面Cは合成樹脂製フィルムからなっていてもよいし、金属板やプラスチック板など他の材料から構成されていてもよい。
【0014】
側面Sについては、ブース出入り口32が設けられる面は合成樹脂製フィルムからなることを要件とするが、出入り口32が設けられない面は合成樹脂製フィルム以外の材料から構成されていても差し支えない。
【0015】
上記合成樹脂製フィルムとしては、塩化ビニル系樹脂、オレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂から選ばれる少なくとも1つの合成樹脂を主体としてなる。
それら主体とする合成樹脂の中では、ブースとして通常必要とされる透明性、難燃性において優れている塩化ビニル系樹脂が好ましい。なお、塩化ビニル系樹脂は、ウェルダー溶着性にも優れている。
【0016】
このような主体とする樹脂には、帯電防止剤、難燃剤、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、抗菌剤、安定剤、充填剤、滑剤など、合成樹脂製フィルムに一般に使用される各種添加剤を配合することもできる。また、導電性インクがフィルム表面に塗布されていてもよい。
【0017】
上記合成樹脂製フィルムの厚みについては、0.1〜2mm程度が好ましい。
薄すぎると、フレーム(枠体)に被せにくいうえ、方体としての保形性が出にくい。また開閉の際に、接合箇所以外でも破損しやすくなる傾向にある。反対に、厚すぎると、折りたたんだ状態、もしくはロールに巻いた状態で出荷する際などに取扱性に劣るので、より好ましくは0.3〜0.8mmである。
【0018】
図2(A)に示すように、本発明のブース30は、天井面Cと側面Sとを有し、少なくとも1つの側面(本例では1つの側面)を2枚の合成樹脂製フィルムU,Lの側端近傍部同士をオーバーラップさせて構成し、上側フィルムUの上端を天井面Cに接合させてなる。
【0019】
このように、本発明のブース30の出入り口32は、2枚の合成樹脂製フィルムU,Lの側端近傍部同士をオーバーラップさせて構成する。2枚の合成樹脂製フィルムU,Lは重なり部分が大きすぎると、開閉や出入りがしづらくなり、重なり部分が小さすぎれば、出入り時にブース内の環境に変化が生じやすくなるので、側端近傍部同士は10〜30cm程度オーバーラップさせるとよい。
なお、図2(A),(B)では、出入り口32がブースの一側面にのみ設けられているブース30を例示しているが、本発明では、出入り口は、複数の側面に設けられていてもよいし、1つの側面に2つ以上の出入り口を設けてもよい。
【0020】
本発明では、上側フィルムUの上端を天井面Cに接合させてなるもので、上側フィルムUの接合箇所を前横フレームF1近傍に設けず、天井面Cにずらすことで、出入り(開閉)動作の際に生ずる力を前記接合箇所に集中させないことが重要である。
上側フィルムUの上端を天井面Cに接合させることにより、上側フィルムUの開閉動作において明確な支点は発現せず、開閉動作に伴う力は分散されるため、上側フィルムUの破断が長期に亘って防止できるという優れた効果が発現する。
【0021】
本発明では、図2(B)に示すように、上側フィルムUと下側フィルムLとの両方の上端を天井面Cに接合させてもよい。
この場合、フィルムU,Lの各上端の位置は、図2(B)に示すように、下側フィルムLが前横フレームF1に近い側にあるものに限らず、上側フィルムUが前横フレームF1に近い側にあってもよいし、同一線上であってもよい。
【0022】
上側または上下両側のフィルムU,Lの上端を、天井面Cに接合させる位置については、ブースのサイズにも左右されるが、前横フレームF1から離れすぎると、上側フィルムUや下側フィルムLの面積が大きくなるためコストや重量の面から好ましくなく、一方、前横フレームF1に近すぎると、天井面Cとの接合箇所が開閉時の支点になりやすく、接合箇所への負荷の分散作用が不十分となるので、前横フレームF1から10〜100cm程度とすればよい。
【0023】
ブース30をなす天井面Cと側面S(上側フィルムUおよび下側フィルムLを含む)との接合方法については、特に限定されないが、それぞれが合成樹脂製フィルムからなる場合は、例えば、高周波ウェルダーや超音波ウェルダーなどによるウェルダー溶着、スナップボタンなどの点ファスナー、線ファスナー、面ファスナー、ボタンによる接合などが挙げられるが、接着強度、ブースとしての密閉性、作業コストなどの面から、高周波ウェルダーによる溶着が好ましい。
【0024】
このような本発明のブースにおいては、出入り口の開閉をよりスムーズにするために、前述の上側フィルムUと下側フィルムLのオーバーラップした部分に、側端近傍部同士の密着を防止する機能を付与することもできる。
図3(A),(B)に、このような密着防止機能を発現する密着防止部材5を設けたブース40の実施態様例を示す。
【0025】
図3(A)では、出入り口42における上側フィルムUと下側フィルムLとの側端近傍部同士の密着を防止するために、オーバーラップした部分(上側フィルムUの内面(裏面)、及び/または下側フィルムLの外面(表面))に、密着防止部材5を設けている。
図3(A)に示した例では、密着防止部材5はオーバーラップした部分の一部にしか設けられていないが、オーバーラップした部分の全てに設けてもよいし、図3(B)に示すように、オーバーラップしていない部分にまで延長して設けることもできる。
【0026】
密着防止部材5としては、ターポリンや生地(織物、編布、不織布)などの補強布が挙げられ、例えば、前述したブースをなす合成樹脂製フィルム同士の接合方法と同様の方法などによって、上側フィルムUの内面(裏面)及び/または下側フィルムLの外面(表面)に設ければよい。このような補強布を設けることで、ブース内・外への大型機材の搬入・搬出時に、上側フィルムUをその上端まで大きく開くことが容易にできたり、上側フィルムUおよび/または下側フィルムLの側端部の補強がより一層効果的に達成できる。
なお、補強布を目立つ色彩・配色とすれば、一般的に透明なブースにおいて出入り口42が明確でわかりやすくなる。
【0027】
本発明では、密着防止部材5を設ける代わりに、例えば、
・上側フィルムUの出入り口を構成する側の端を折り返し、ウェルダー溶着しておく、
・上側フィルムUの内面(裏面)及び/または下側フィルムLの外面(表面)を梨地加工等のエンボス加工しておく、
などの手法にて、上記のような密着防止機能を付与することもできる。
【0028】
このような密着防止機能を付与することで、開閉負荷がかかりやすい上側フィルムUの耐久性が向上するばかりか、上側フィルムUと下側フィルムLとの密着が軽減され、出入り口42の開閉が非常にスムーズになる。さらに、上側フィルムUと下側フィルムLとの密着の軽減により、開閉動作に伴う上側フィルムUの天井面との接合箇所への負荷もより軽減し、一層の耐久性を図ることができる。
【0029】
本発明のブース側面の下端部は、床などの設置面との間に隙間を有するものであってもよいし、設置面に接するものとしてもよい。
また、下端部の一部、または全周にわたり、特許文献1に記載するような柔軟性のあるウエイト部材を配設することで、ブース側面のシワや下端部の捲れを防止してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明のブースは、製造ラインや研究施設などに簡便に設置できるブースとして最適なものであり、長期に亘り出入り口を構成するフィルムの破断が生じず、耐久性に優れたものである。また、出入り口をなす上側フィルムと下側フィルムがオーバーラップした部分に密着防止機能を付与することで、出入り口の開閉をよりスムーズにすることもできる。
したがって、工場内などのクリーンブース、塗装ブース、スプレーブース、喫煙ブース、屋台や屋外飲食スペースなどの屋外ブースとしても好適に使用され得、例えば、ベルトコンベアの一部に載せる態様などにも使用可能である。
【符号の説明】
【0031】
10,30,40 ブース
12,32,42 出入り口
5 密着防止部材
C 天井面
S 側面
L 下側フィルム
U 上側フィルム
F1 前横フレーム
F2 後横フレーム
F3 左横フレーム
F4 右横フレーム
e 接合ポイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井面と側面とを有するブースであって、
少なくとも1つの側面が合成樹脂製の上側フィルムと下側フィルムとで構成され、上側フィルムと下側フィルムの側端近傍部同士はオーバーラップしていて、かつ上側フィルムの上端が前記天井面に接合してなることを特徴とするブース。
【請求項2】
前記オーバーラップした部分に、上側フィルムと下側フィルムの側端近傍部同士の密着を防止する機能を付与することを特徴とする請求項1に記載のブース。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2012−158878(P2012−158878A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17753(P2011−17753)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000000077)アキレス株式会社 (402)
【Fターム(参考)】