説明

ブーツバンド

【課題】ブーツへのリング状の仮止めにおける空回りを防止してブーツに対する仮止め位置がずれることを防止することが可能なバーツバンドを提供する。
【解決手段】内側重なり部23及び外側重なり部24に形成され、リング状のバンド本体22をブーツ51の外周に巻き付けた仮止め状態を保持する仮止め手段26,27,36,37と、仮止め状態から縮径方向に締め付けられたバンド本体22の締め付け状態を保持するロック手段28,38と、リング状のバンド本体22から内径側に突出してブーツ51の外周面を押圧してブーツ51に対するバンド本体22の空回りを規制する突出部41が内側重なり部23の長さ方向に沿って形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ゴム、樹脂等からなるブーツを締め付けることによりブーツをアウターレースや駆動軸に設けられている固定部(ブーツの取付部)に密着させて固定するブーツバンドに関する。
【背景技術】
【0002】
ブーツバンドは例えば、エンジンの駆動力を駆動軸から従動軸に伝達する等速ジョイントに用いられる。等速ジョイントにおいては、アウターレース(継手ケース)の固定部及び駆動軸の固定部をブーツの取付部として備えている。これらの固定部は、蛇腹状のブーツによって覆われていると共に、ブーツの内部にはグリースが封入されている。ブーツバンドはブーツの長手方向の両端部に巻き付けられて縮径されることにより、ブーツの両端部を締め付けてブーツを等速ジョイントの固定部に密着させて固定する。このことによりブーツの内部からグリースが漏れ出ることを防止する。
【0003】
図11は、従来のブーツバンド1を締め付ける状態を示す。ブーツバンド1は金属薄板からなるバンド本体2からなり、このバンド本体2がブーツ11の外周に巻き付けられる。この場合、ブーツ11は等速ジョイントの金属製のアウターレース及び駆動軸に設けられる固定部に掛け渡されることにより、これらの固定部を覆っており、ブーツバンド1はリング状となってブーツ11の外周に巻き付けられる。
【0004】
バンド本体2は、内側重なり部3及び外側重なり部4が相互に重なり合うことによりリング状となっている。このリング状態は、内側重なり部3に形成されている仮止め突起5が外側重なり部4に形成されている仮止め孔(図示省略)に挿入されて係合することにより所定径となって保持される。ブーツバンド1はこのリング状の仮止め状態でブーツ11に外挿されてブーツ11の外周に巻き付けられる。そして、ブーツ11の外周への巻き付き状態で締付工具15によりブーツバンド1を矢印で示す縮径方向Fに締め付ける。
【0005】
締付工具15は一対の爪部15a、15bを有しており、一対の爪部15a、15bがブーツバンド1に形成されている第1工具爪6及び第2工具爪7に係止してブーツバンド1を矢印Fで示す縮径方向に締め付ける。この締め付けにより、内側重なり部3のロック突起(図示省略)が外側重なり部4のロック孔(図示省略)に係合し、この係合によってブーツバンド1は縮径状態が保持され、ブーツ11の締め付け状態を保持する。
【0006】
このようなリング状の仮止め状態のブーツバンド1を締付工具15によって締め付ける先行技術文献としては、特許文献1,2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第4045537号公報
【特許文献2】特許第4403728号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したブーツバンド1の締め付けは以下の手順で行われる。アウターケースもしくは駆動軸に設けられた固定部12を覆っているブーツ11の外周にブーツバンド1を巻き付けてブーツバンド1をブーツ11の仮止めした仮止め状態とする。この仮止め状態で等速ジョイントの駆動軸を回転させてブーツバンド1及びブーツ11を共に回転させる。そして形状認識装置によってブーツバンド1の工具爪6,7の位置と、締付工具15の爪部15a、15bの位置とを合わせた後、締付工具15によってブーツバンド1を締め付ける。このように締め付けに際しては、ブーツバンド1をブーツ11と一体的に回転させてブーツバンド1と締付工具15との位置合わせを行う必要がある。
【0009】
しかしながら、ブーツバンド1の仮止め状態が緩慢な場合には、ブーツ11に対してブーツバンド1が空回りする。ブーツバンド1が空回りすると、形状認識装置による工具爪6,7の位置合わせができなくなる問題がある。かかるブーツバンド1の空回りについては、仮止め時のブーツバンド1の内径、ブーツ11の外径の双方における寸法公差の範囲内で防止する必要がある。
【0010】
上述した特許文献1及び2は、リング状のブーツバンドをブーツの外周に巻き付ける仮止めに関しての記載があるが、ブーツバンドの空回りについての記載について開示されていない。
【0011】
本発明は、このような従来の問題点を考慮してなされたものであり、ブーツへの仮止め時における空回りを防止することにより、ブーツに対する仮止め位置がずれることを防止することが可能なバーツバンドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のブーツバンドは、内側重なり部及び外側重なり部が相互に重なり合ったリング状となったバンド本体がアウターレース又は駆動軸に設けられる固定部の外周を覆うブーツの外周に巻き付けられ、バンド本体が縮径方向に締め付けられることによりブーツを前記固定部の外周に密着させるブーツバンドであって、前記内側重なり部及び外側重なり部に形成され、前記リング状のバンド本体を前記ブーツの外周に巻き付けた仮止め状態を保持する仮止め手段と、前記仮止め状態から縮径方向に締め付けられたバンド本体の締め付け状態を保持するロック手段とを備え、前記リング状のバンド本体から内径側に突出して前記ブーツの外周面を押圧してブーツに対するバンド本体の空回りを規制する突出部が前記内側重なり部の長さ方向に沿って形成されていることを特徴とする。
【0013】
この場合、本発明においては、前記固定部の外周に一対のシール凸部が形成され、前記ブーツは一対のシール凸部を含む固定部の外周を覆っており、前記突出部は前記一対のシール凸部の間のブーツの外周面を押圧することが好ましい。又、前記突出部が形成された内側重なり部の幅方向の両側が前記一対のシール凸部を覆うブーツの覆い部分を押圧する面圧発生部となっていることが好ましい。又、前記突出部及び面圧発生部は前記内側重なり部に長さ方向に延びて形成された線スリットによって分離されていることが好ましい。又、前記突出部は前記リング状のバンド本体の対向位置となるように前記内側重なり部に複数形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、仮止め手段によってリング状の仮止め状態となっているバンド本体をブーツの外周に巻き付けると、バンド本体の内径側に突出している突出部がブーツの外周面を押圧する。この押圧によりブーツバンドとブーツとの間に係止力が作用してブーツバンドとブーツとが一体的となり、ブーツバンドの空回りが規制されるため、ブーツバンドとブーツとが一体的に回転可能となる。従って、ブーツバンドのブーツに対する仮止め位置がずれることがなく、ブーツに対する適正位置でブーツバンドを締め付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態のブーツバンドを示す平面図である。
【図2】バンド本体をリング状とした状態の部分破断正面図である。
【図3】バンド本体を締め付けた状態を示す正面図である。
【図4】バンド本体をリング状とした状態を示し、(a)はバンド本体の正面図、(b)はブーツとの関係を示す側面図である。
【図5】バンド本体の仮止め状態を示し、(a)はバンド本体の正面図、(b)はブーツとの関係を示す側面図である。
【図6】バンド本体の締め付け状態を示し、(a)はバンド本体の正面図、(b)はブーツとの関係を示す側面図である。
【図7】ブーツに対する突出部の作用を説明する断面図である。
【図8】ブーツ及びブーツバンドを自動車の等速ジョイントに適用した状態を示す断面図である。
【図9】本発明の別の実施形態のブーツバンドをリング状とした状態を示す正面図である。
【図10】別の実施形態のブーツバンドを締め付けた状態を示す部分破断正面図である。
【図11】従来のブーツバンドを締め付ける操作を説明する正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を図面を参照して具体的に説明する。図1〜図8は本発明の一実施形態のブーツバンド21を示す。
【0017】
図1に示すように、ブーツバンド21はステンレス等の金属薄板からなる長尺なバンド本体22によって形成されている。バンド本体22には、相互に重なり合う内側重なり部23及び外側重なり部24が形成されている(図2及び図3参照)。内側重なり部23はバンド本体22の長さ方向の一端側(図1における右端側)に位置し、外側重なり部24は他端側(図1における左端側)に位置している。内側重なり部23及び外側重なり部24が相互に重なり合うことにより、バンド本体22は図3及び図4に示すようにリング状となる。この実施形態において、内側重なり部23のさらに先端側(右端側)には、外側重なり部24と同様に外側に位置する端末部30が連続するように形成されている(図2及び図3参照)。
【0018】
内側重なり部23には、端末部30側から長さ方向(左方向)に向かって第1仮止め突起26、第2仮止め突起27及びロック突起28が所定間隔を有して順に形成されている。これらはバンド本体22をプレスすることによりバンド本体22から切り起こし状に形成されるものである。
【0019】
端末部30には、自由端(右端側)から内側重なり部23に向かって第1工具爪25及び切欠部29が順に形成されている。第1工具爪25はリング状のバンド本体22を締め付ける際に使用される部位であり、第1仮止め突起26、第2仮止め突起27及びロック突起28と同様にバンド本体22から切り起こし状に形成されている。切欠部29は第1工具爪25と第1仮止め突起26との間に位置している。切欠部29は横長矩形状に切り欠かれており、この切欠部29を外側重なり部24が板厚方向に向かって挿通する。すなわち、外側重なり部24を端末部30の下側から切欠部29に差し込んで挿通させることにより外側に引き出すものであり、これにより外側重なり部24は切欠部29で端末部30と交差した後、内側重なり部23の外側に重なり合うようになっている。このように外側重なり部24が切欠部29を板厚方向に向かって貫通することにより、外側重なり部24と内側重なり部23とが相互に重なり合った状態となる。
【0020】
外側重なり部24は内側重なり部23の切欠部29を挿通可能なようにバンド本体22の他の部位よりも細幅に形成されている。外側重なり部24には、自由端側(左端側)から長さ方向(右方向)に向かってロック孔38、第2仮止め孔37、第1仮止め孔36が所定間隔を有して順に形成されている。ロック孔38、第2仮止め孔37、第1仮止め孔36はいずれもバンド本体22をプレス打ち抜きすることにより細長の矩形孔となって形成されている。外側重なり部24はバンド本体22の他の部分よりも板厚分、外側に向かって高くなっており、その境界部分には段部31が形成されている。段部31は外側重なり部24が切欠部29を挿通した後、切欠部29の端部(右端部)の当接部32に当接する(図2参照)。この当接によって外側重なり部24が不用意に切欠部29から抜け出ることが阻止され、外側重なり部24の切欠部29の挿通状態、すなわち内側重なり部23への重なり状態が安定する。
【0021】
外側重なり部24よりもバンド本体22の長さ方向(右方向)には、第2工具爪35が切り起こしによって形成されている。第2工具爪35は端末部30の第1工具爪25と共にリング状のバンド本体22を縮径方向に締め付ける際に用いられるものである。なお、第2工具爪35には、バンド本体22の締め付けの際に端末部30の先端部が入り込んで浮き上がりを防止する押え部35aが形成されている。
【0022】
上記構造のブーツバンド21において、第1仮止め突起26、第2仮止め突起27、第1仮止め孔36及び第2仮止め孔37は、バンド本体22をリング状としてブーツの外周に巻き付けた状態を保持する仮止め手段を構成する。ロック突起28及びロック孔38は仮止め状態から縮径方向に締め付けられたバンド本体22の締め付け状態を保持するロック手段を構成する。
【0023】
以上の構造に加えて、内側重なり部23には突出部41が形成されている。突出部41は内側重なり部23の長さ方向における1箇所又は複数箇所に形成されるものであり、この実施形態では、内側重なり部23の長さ方向に沿って2箇所に形成されている。2箇所の突出部41は図2及び図3に示すように、バンド本体22をリング状としたとき、リング状のバンド本体22の対向位置となるように内側重なり部23に形成されている。かかる突出部41はリング状となっているバンド本体22の内径側に突出した状態となっている。
【0024】
図1に示すように、内側重なり部23の長さ方向の2箇所に対し、長さ方向に延びた平行な2本の線スリット42をそれぞれ形成することにより2本の線スリット42の間が突出部41となっている。そして、突出部41は2本の線スリット42に挟まれた部分をバンド本体22の内径側に円弧状に突出させることにより形成される。円弧状となってバンド本体22の内径側に突出した突出部41はブーツ51の外周面を押圧する。この押圧によってブーツ51とブーツバンド21との間に係止力が作用してブーツ51に対するブーツバンド21の空回りを規制することができる。この実施形態においては、後述するように突出部41は駆動軸61に設けられる固定部62及びアウターレース63に設けられる固定部65を覆うブーツ51の覆い部分を押圧するものである(図7及び図8参照)。
【0025】
内側重なり部23における突出部41の形成領域においては、線スリット42を境とした突出部41の両側が面圧発生部43となっている。面圧発生部43は突出部41に対応した内側重なり部23の幅方向の両側に設けられており、リング状のハンド本体22を縮径方向に締め付けたとき、突出部41の両側でブーツ51を締め付ける。突出部41がバンド本体22の内径側に突出することにより突出部41の形成領域のシール性が阻害される懸念があるが、突出部41の両側でバンド本体22を締め付ける面圧発生部43を設けることによりシール性を確保することができる。
【0026】
この実施形態において、面圧発生部43は駆動軸61の固定部62及びアウターレース63の固定部65に一対となってそれぞれ設けられているシール凸部64,64aに対応した位置となるように形成されている。これにより面圧発生部43は一対のシール凸部64を覆うブーツ51の覆い部分58を押圧する(図7参照)。
【0027】
次に、この実施形態のブーツバンド21をブーツ51の外周に取り付ける操作及び作用を図2〜図8により説明する。図4はブーツバンド21をブーツ51に外挿した状態を、図2及び図5はブーツバンド21を仮止めした状態を、図3及び図6はブーツバンド21を締め付けた状態を示す。
【0028】
図8はこの実施形他のブーツバンド21が適用される自動車の等速ジョイントを示し、駆動軸61に設けられる固定部62とアウターレース63に設けられる固定部65とを有している。これらの固定部62,65は径が異なっている。駆動軸61の固定部62及びアウターレース63の固定部65にブーツ51が掛け渡されることにより、等速ジョイントがブーツ51によって覆われており、このブーツ51の内部にグリースが充填される。
【0029】
図4〜図6及び図8に示すように、ブーツ51は伸縮自在な蛇腹部52と、蛇腹部52の両端部に一体に形成された大径部53及び小径部54とによって形成されており、大径部53が大径のアウターレース63の固定部65の外周面に密着し、小径部54が小径の駆動軸61の固定部62の外周面に密着する。ブーツバンド21はリング状となった状態でブーツ51の大径部53及び小径部54に外挿されて巻き付けられる。この巻き付けの後、ブーツバンド21は縮径方向に締め付けられることにより、ブーツ51における大径部53及び小径部54を外周側から締め付けて大径部53及び小径部54をそれぞれ固定部62,65の外周面に密着させる。これによりブーツ51内に充填されたグリースが外部に漏出することを防止する。
【0030】
図7はブーツ51における大径部53を示す。この実施形態においては、小径部53も同様となっている。大径部53はアウターレース63に設けられる固定部65の外周面に当接するシール部55と、シール部55の両側で外方に向かって立ち上がる一対のフランジ部56とを有しており、一対のフランジ部56の間のシール部55の上部がブーツバンド21を巻き付けるためのシール溝部57となっている。この場合、アウターレース63の固定部65(駆動軸61の固定部62も同様)の外周面には一対のシール凸部64aが形成されており、このシール凸部64aの間にブーツ51のシール部55が入り込むことにより、アウターレース63に対するブーツ51の位置決めが行われると共にアウターレース63に対するブーツ51の位置ずれが防止されている。
【0031】
ブーツ51の締め付けに先立ってブーツバンド21においては、帯状に展開された状態からバンド本体22を湾曲させ、外側重なり部24を切欠部29に下側から差し込んで挿通させることにより切欠部29の外側に引き出す。このことにより外側重なり部24と内側重なり部23とが相互に重なり合ったリング状となる。図3及び図4(a)は、この状態を示し、内側重なり部23の第1仮止め突起26が外側重なり部24の第1仮止め孔36に進入してこれらが相互に係合状態となり、これによりバンド本体22はリング状となる。このとき、内側重なり部23の第2仮止め突起27及びロック突起28は外側重なり部24とは非係合状態となっている。この状態では、リング状のブーツバンド21の径が大きく、図4(b)で示すようにブーツ51の大径部53をブーツバンド21内に挿入することができる。ブーツ51の小径部54に対しても同様に処理することができる。
【0032】
図4の状態において、ブーツバンド21は図7に示すように、バンド本体22の内径側に突出している突出部41がアウターレース63の固定部65における一対のシール凸部64aの間のブーツ51の外周面への押圧が可能なようにブーツ41の軸方向に対する位置合わせを行う。この位置合わせにより、突出部41の幅方向の両側に面圧発生部43はアウターレース63の固定部65の一対のシール凸部64aを覆うブーツ51の覆い部分58に臨んだ状態となる。
【0033】
図5は図4に続いてブーツバンド21をブーツ51に対して仮止めした状態を示す。仮止めに際しては、外側重なり部24が内側重なり部23に対して矢印Fで示す縮径方向に相対的に移動するように締め付ける。これにより、内側重なり部23の第1仮止め突起26が外側重なり部24の第1仮止め孔36との係合から外れた後、第2仮止め孔37に入り込んで係合する。これに加えて、内側重なり部23の第2仮止め突起27が外側重なり部24のロック孔28に入り込んで係合する。これらの係合によりリング状のバンド本体22がブーツ51の大径部53の外周に巻き付けられた仮止め状態となり、この状態が保持される(図5(b)参照)。かかるバンド本体22の仮止め状態は、内側重なり部23の第1仮止め突起26が外側重なり部24の第2仮止め孔37と係合するか、内側重なり部23の第2仮止め突起27が外側重なり部24のロック孔28と係合するかのいずれか一方の係合によって保持することができる。
【0034】
図5の状態においては、製造誤差等によりリング状のバンド本体22の内面とブーツ51の外周面との間に隙間を生じることがある。これに対し、この実施形態においては、突出部41がリング状のバンド本体22の内径側に突出しており、この突出部41がブーツ51を押圧する。突出部41が押圧することにより、ブーツバンド21とブーツ51との間に係止力が作用してブーツバンド21とブーツ51とが一体的となる。これによりブーツバンド21の空回りを規制するため、ブーツバンド21だけが空回りすることがなく、ブーツバンド21とブーツ51とが一体的に回転可能となる。従って、締付工具15の爪部15a、15b(図11参照)に対して工具爪25,35を位置合わせするための回転の際に、ブーツバンド21とブーツ51とが一体的に回転するため、ブーツ51に対するブーツバンド21の仮止め位置がずれることがなくなる。
【0035】
特に、この実施形態においては、突出部41がリング状のバンド本体22の対向位置に設けられており、対向位置でブーツ51を両側から挟むように押圧するため、ブーツ51への係止力がさらに大きくなっており、ブーツバンド21のブーツ51に対する空回りを規制することができ、ブーツバンド21及びブーツ51の一体回転を確実に行うことができる。さらに、突出部41がアウターレース63の一対のシール凸部64の間に位置してブーツ51の外周面を押圧するため、ブーツ51がアウターレース63のの軸方向にずれることを防止できる。
【0036】
図6及び図3は図5のブーツ51の仮止め状態からバンド本体22を縮径方向に締め付けた状態を示す。縮径方向へのバンド本体22の締め付けは、形状認識装置によって工具爪25,35を締付工具15の爪部15a、15bに位置合わせした後、締付工具15によって図5(a)の矢印Fで示す縮径方向に沿ってバンド本体22を締め付ける。
【0037】
この締め付けにより外側重なり部24が内側重なり部23に対して相対的に移動し、内側重なり部23のロック突起28が外側重なり部24のロック孔38に入り込んで形成する。これと同時に、内側重なり部23の第2仮止め突起27が外側重なり部24の第2仮止め孔37に入り込んで係合すると共に、内側重なり部23の第1仮止め突起26が外側重なり部24の第1仮止め孔36に入り込む。これらによりリング状のバンド本体22がブーツ51を締め付ける締付状態が保持される(図6(b)参照)。なお、かかる締付状態においては、ロック突起28とロック孔38とが係合すれば良く、仮止め突起26、27と仮止め孔36、37とは係合しなくても良い。
【0038】
以上のバンド本体22の縮径方向への締め付けにあっては、突出部41の幅方向両側の面圧発生部43はアウターレース63の一対のシール凸部64aを覆うブーツ51の覆い部分58を押圧する。このように突出部41の両側部分で面圧発生部43が一対のシール凸部64aに対応したブーツの覆い部分58を押圧することにより、一対のシール凸部64aで安定したピーク面圧を発生させることができる。このため、高いシール性を確保することができる。
【0039】
図9及び図10は本発明の別の実施形態のブーツバンド21であり、図9はブーツ51が挿入される前のリング状態を示し、上記実施形態の図2に対応している。図10はバンド本体22がリング状の仮止め状態から縮径方向Fに締め付けられた締付状態を示し、上記実施形態の図3に対応している。
【0040】
この実施形態においては、リング状のバンド本体22の内径側に突出してブーツ51の外周面を押圧する突出部41が直線状に形成されるものであり、それ以外は上記実施形態と同様である。このように突出部41を直線状に形成する場合においても、突出部41がシール凸部64又は64aの間のブーツ51を押圧することができ、バンド本体22の空回りを規制することができる。又、ブーツバンド21を縮径方向Fに締め付けた締め付け状態では、突出部41の幅方向両側の面圧発生部43がシール凸部64、64aを覆うブーツ51の覆い部分58を押圧するため、一対のシール凸部64、64aで安定したピーク面圧を発生させることができ、高いシール性を確保することができる。
【0041】
以上の実施形態においては、バンド本体22のブーツ51への締付状態を保持するロック手段として、ロック突起28及びロック孔38を形成し、第1工具爪25及び第2工具爪35を引き締めることによりロック突起28及びロック孔38を係合させて構造としているが、これに限らず先行技術1に示すようにバンド本体22にクランク状の耳部を突出させ、この耳部を加締めて塑性変形させることによりバンド本体22を引き締めて締め付ける構造としても良い。又、上記実施形態では、外側重なり部24が端末部30に設けられた切欠部29を挿通してから内側から外側に抜け出すことにより、バンド本体22の両端部が外側に配置されて係合構造を構成する引き締め型のブーツバンドとしているが、これに限らず先行技術2に示すような一般的な引き締め型のブーツバンドであっても良い。
【0042】
又、上記実施形態においては、アウターレース63の大径側の固定部65及び駆動軸61の小径側の固定部62に双方に適用しているが、いずれか一方に適用しても良い。さらには、リング状のバンド本体22に対し、一つの突出部41を形成しても良く、3つ以上の突出部41を形成しても良い。
【符号の説明】
【0043】
21 ブーツバンド
22 バンド本体
23 内側重なり部
24 外側重なり部
25 第1工具爪
26 第1仮止め突起
27 第2仮止め突起
28 ロック突起
35 第2工具爪
36 第1仮止め孔
37 第2仮止め孔
38 ロック孔
41 突出部
42 線スリット
43 面圧発生部
51 ブーツ
62,65 固定部
63 アウターレース
64,64a シール凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内側重なり部及び外側重なり部が相互に重なり合ったリング状となったバンド本体が固定部の外周を覆うブーツの外周に巻き付けられ、バンド本体が縮径方向に締め付けられることによりブーツを固定部の外周に密着させるブーツバンドであって、
前記内側重なり部及び外側重なり部に形成され、前記リング状のバンド本体を前記ブーツの外周に巻き付けた仮止め状態を保持する仮止め手段と、
前記仮止め状態から縮径方向に締め付けられたバンド本体の締め付け状態を保持するロック手段とを備え、
前記リング状のバンド本体から内径側に突出して前記ブーツの外周面を押圧してブーツに対するバンド本体の空回りを規制する突出部が前記内側重なり部の長さ方向に沿って形成されていることを特徴とするブーツバンド。
【請求項2】
前記固定部の外周に一対のシール凸部が形成され、前記ブーツは一対のシール凸部を含む固定部の外周を覆っており、前記突出部は前記一対のシール凸部の間のブーツの外周面を押圧することを特徴とする請求項1記載のブーツバンド。
【請求項3】
前記突出部が形成された内側重なり部の幅方向の両側が前記一対のシール凸部を覆うブーツの覆い部分を押圧する面圧発生部となっていることを特徴とする請求項1又は2記載のブーツバンド
【請求項4】
前記突出部及び面圧発生部は前記内側重なり部に長さ方向に延びて形成された線スリットによって分離されていることを特徴とする請求項3記載のブーツバンド。
【請求項5】
前記突出部は前記リング状のバンド本体の対向位置となるように前記内側重なり部に複数形成されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項記載のブーツバンド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2012−237421(P2012−237421A)
【公開日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−108114(P2011−108114)
【出願日】平成23年5月13日(2011.5.13)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】