説明

ブームスプレーヤ及びブーム制振装置

【課題】ブームの振動を低減することができると共に、昇降シリンダの動作に影響を及ぼさないブーム制振装置を提供すること。
【解決手段】車体1に取り付けられたリンクアーム2と、車体1とリンクアーム2との間に介装されリンクアーム2を昇降する昇降シリンダ3と、リンクアーム2を支持する昇降シリンダ3に対して作動油を給排して昇降シリンダ3を伸縮させる作動油給排装置5と、一端がリンクアーム2に支持され他端が自由端として設けられ防除液を散布するブーム4と、を備えるブームスプレーヤのブーム4の振動を制振するブーム制振装置であって、液圧シリンダ3に接続された油室62と油室62に圧力を付与するバネ室63とを有するアキュムレータ60と、液圧シリンダ3と油室62との間を行き来する作動油に抵抗を付与する減衰弁61とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防除液を散布するブームスプレーヤ、及びブームスプレーヤのブームの振動を制振するブーム制振装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のブームスプレーヤとして、特許文献1には、リフトシリンダ3を駆動してリフトリンク2を動作させることによってリフトフレーム1に装着された散布ブーム6を昇降させるものが開示されている。また、リフトリンク2に設けられたダンパー4が、車体40の走行揺動時に、リフトリンク2の拡縮作用を緩和してリフトフレーム1の上下動や左右傾斜を少なくすることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−269106号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般的に、ブームスプレーヤのブームは片持ち支持構造である。したがって、ブームスプレーヤの作業時に圃場の凹凸によって車体が振動した場合には、車体に入力された振動がブームに伝達されてブームが激しく振動してしまう。ブームが激しく振動した場合には、防除液の散布にムラが生じるため、作業スピードが遅くなり、防除液散布の効率が低下する。
【0005】
特許文献1に記載のダンパー4は、リフトリンク2に設けられるものであるため、リフトシリンダ3を駆動してリフトリンク2を動作させる際には、ダンパー4が抵抗となってしまう。
【0006】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、ブームの振動を低減することができると共に、昇降シリンダの動作に影響を及ぼさないブーム制振装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、車体に取り付けられたリンクアームと、前記車体と前記リンクアームとの間に介装され前記リンクアームを昇降する液圧シリンダと、前記リンクアームを支持する前記液圧シリンダに対して作動流体を給排して前記液圧シリンダを伸縮させる作動流体給排装置と、一端が前記リンクアームに支持され他端が自由端として設けられ防除液を散布するブームと、を備えるブームスプレーヤの前記ブームの振動を制振するブーム制振装置であって、前記液圧シリンダに接続された液圧室と当該液圧室に圧力を付与するバネ室とを有するアキュムレータと、前記液圧シリンダと前記液圧室との間を行き来する作動流体に抵抗を付与する減衰弁と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、リンクアームを支持する液圧シリンダに接続されたアキュムレータと、液圧シリンダとアキュムレータとの間を行き来する作動流体に抵抗を付与する減衰弁とを備えるため、液圧シリンダの振動がブームに伝達され難く、ブームの振動を低減することができる。また、アキュムレータ及び減衰弁は液圧シリンダの動作時に抵抗となるものではないため、液圧シリンダの動作に影響を及ぼさない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の第1実施形態に係るブームスプレーヤの左側面図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るブームスプレーヤにおけるリンクアーム及びブームの正面図である。
【図3】作動油給排装置及びブーム制振装置の油圧回路図である。
【図4】本発明の第2実施形態に係るブームスプレーヤの左側面図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るブームスプレーヤにおけるリンクアーム及びブームの正面図である。
【図6】マスダンパの断面図である。
【図7】本発明の第3実施形態に係るブームスプレーヤの左側面図である。
【図8】本発明の第3実施形態に係るブームスプレーヤにおけるリンクアーム及びブームの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0011】
<第1実施形態>
まず、図1及び図2を参照して、本発明の第1実施形態に係るブームスプレーヤ100について説明する。
【0012】
ブームスプレーヤ100は、圃場を走行しながら防除液を散布する農業用の作業機である。
【0013】
ブームスプレーヤ100は、車体1の前方側に取り付けられたリンクアーム2と、車体1とリンクアーム2との間に介装されリンクアーム2を昇降する昇降シリンダ(液圧シリンダ)3と、一端がリンクアーム2に支持され他端が自由端として設けられ防除液を散布するブーム4とを備える。
【0014】
リンクアーム2は、車体1の左右両側部に取り付けられた一対のベース10のそれぞれに固定された一対のベースリンク2aと、ブーム4の一端が支持され正面視が四角形状(図2参照)のフロントリンク2bと、一対のベースリンク2aとフロントリンク2bとの上部間にピン11及びピン12を介して回動自在に連結された一対の上部リンク2cと、一対のベースリンク2aとフロントリンク2bとの下部間にピン13及びピン14を介して回動自在に連結された一対の下部リンク2dとを備える。上部リンク2cと下部リンク2dは互いに平行に設けられる。図1に示すように、ベースリンク2a、フロントリンク2b、上部リンク2c、及び下部リンク2dによって、側面視が平行四辺形状のリンク機構が構成される。なお、図1では、車体1の左側部に設けられたベース10、ベースリンク2a、上部リンク2c、及び下部リンク2dを示したが、車体1の右側部にもベース10、ベースリンク2a、上部リンク2c、及び下部リンク2dが設けられる。
【0015】
昇降シリンダ3は、作動油(作動流体)が封入されたシリンダチューブ3aと、シリンダチューブ3aに摺動自在に挿入されたピストンロッド3bとを備える。シリンダチューブ3aの内部は、ピストンロッド3bによってピストン側室3cとロッド側室3dとに区画される。ピストンロッド3bのピストンには、ピストン側室3cとロッド側室3dとの間で作動油の行き来を許容する流路3eが形成される。リンクアーム2を支持するピストン側室3cに対しては作動油給排装置5(図3参照)によって作動油が給排され、その作動油の給排に応じてピストン側室3cが拡縮して昇降シリンダ3が伸縮する。
【0016】
図3に示すように、作動油給排装置5は、電動モータ51によって駆動しピストン側室3cに作動油を供給可能な油圧ポンプ(液圧ポンプ)52と、ピストン側室3cと油圧ポンプ52とをつなぐメイン通路53と、メイン通路53に設けられ油圧ポンプ52からピストン側室3cへの作動油の流れのみを許容する逆止弁54と、メイン通路53における逆止弁54の下流側から分岐し作動油をタンク55に導く戻り通路56と、戻り通路56に設けられ連通位置と遮断位置とに切り替え可能な電磁式の切換弁57と、メイン通路53及び戻り通路56内の圧力が予め定められた所定圧力に達した場合に開弁する回路保護用のリリーフ弁58とを備える。なお、本実施の形態では、油圧ポンプ52から吐出される作動油をピストン側室3cに供給するようにしたが、ロッド側室3dに供給するようにしてもよい。
【0017】
昇降シリンダ3を伸長させる場合には、電動モータ51が起動すると共に切換弁57は遮断位置(図3に示す状態)に保持される。これにより、油圧ポンプ52から吐出された作動油はメイン通路53を通じてピストン側室3cへと導かれ、昇降シリンダ3が伸長する。昇降シリンダ3の伸長の過程で、電動モータ51を停止させれば、昇降シリンダ3の伸長が止まると共に、ピストン側室3cの作動油が密閉状態となるため、昇降シリンダ3は電動モータ51停止時のストロークに保持される。
【0018】
一方、昇降シリンダ3を収縮させる場合には、電動モータ51が停止状態になると共に切換弁57を連通位置に切り換える。これにより、油圧ポンプ52が停止するため、ピストン側室3cの作動油は、メイン通路53及び戻り通路56を通じてタンク55に排出され、ピストン側室3cが収縮して昇降シリンダ3が収縮する。昇降シリンダ3の収縮の過程で、切換弁57を遮断位置に戻すと、昇降シリンダ3の収縮が止まると共に、ピストン側室3cの作動油が密閉状態となるため、昇降シリンダ3のストロークが保持される。
【0019】
なお、油圧ポンプ52の駆動源として電動モータ51を用いる代わりにブームスプレーヤ100の走行用エンジン(図示せず)を用いるようにしてもよい。この場合、油圧ポンプ52は走行用エンジンと共に駆動するため、電動モータ51を用いる場合と異なり、油圧ポンプ52を起動停止させることができない。したがって、油圧ポンプ52の駆動源として走行用エンジンを用いる場合には、メイン通路53における逆止弁54の上流側に、油圧ポンプ52から吐出される作動油をタンク55へと還流させるための切換弁を設け、その切換弁によって油圧ポンプ52からピストン側室3cへの作動油の供給と停止を切り換えるようにすればよい。
【0020】
なお、電動モータ51、油圧ポンプ52、逆止弁54、及び切換弁57は、これらをパッケージ化したものを昇降シリンダ3のシリンダチューブ3aの外周に一体に結合して配置するようにしてもよい。
【0021】
昇降シリンダ3は、シリンダチューブ3aの基端部がピン15を介してベース10に回動自在に連結され、ピストンロッド3bの先端部がピン16を介して上部リンク2cに回動自在に連結される。このように、昇降シリンダ3は、ベース10と上部リンク2cとの間に介装され、車体1の左右両側に一対設けられる。
【0022】
一対の昇降シリンダ3は同期して伸縮する。昇降シリンダ3の伸縮に伴ってリンクアーム2は車体1に対して昇降し、それに伴ってフロントリンク2bに支持されたブーム4も昇降する。具体的には、昇降シリンダ3が伸長すれば、リンクアーム2が上昇してブーム4も上昇する。一方、昇降シリンダ3が収縮すれば、リンクアーム2が下降してブーム4も下降する。このように、昇降シリンダ3を伸縮させることによって、圃場の作物に対するブーム4の高さを調節することができる。
【0023】
ブーム4は、一対のブーム4a,4bからなる。ブーム4aは一端がフロントリンク2bの左端部に支持され他端が自由端として設けられ、ブーム4bは一端がフロントリンク2bの右端部に支持され他端が自由端として設けられる。ブーム4a,4bは、基端部がフロントリンク2bに対して水平方向に回動自在に取り付けられる。図1及び図2に示す状態は、ブーム4a,4bが車体1の左右水平方向に延在した展開状態であり、この状態で防除液の散布が行われる。図1及び図2に示す状態からブーム4a,4bが車体1の後方に向かって略90度回動することによって、ブーム4a,4bはそれぞれ車体1の左右両側部に沿って折り畳まれた折畳状態となる。このように、ブーム4a,4bは、防除液散布時の展開状態と非散布時の折畳状態とに切り替えられる。この切り替え動作は、図示しない油圧シリンダ、電動モータ、滑車、チェーン、ワイヤ等によって行われる。
【0024】
ブーム4aとブーム4bは同じ構成であるため、以下では、車体1の左側に設けられるブーム4aについて説明し、ブーム4bについてはブーム4aと同じ構成には同一の符号を付し説明を省略する。
【0025】
ブーム4aは、一端がフロントリンク2bに支持された第1ブーム21と、第1ブーム21の先端部に設けられたスライドブラケット23に支持された第2ブーム22とを備える。スライドブラケット23には、第2ブーム22に沿って延設されたレール(図示せず)を支持する滑車(図示せず)が設けられる。第2ブーム22は、スライドブラケット23の滑車にレールが案内されることによって、第1ブーム21に沿って移動可能である。図1及び図2に示す状態は、第2ブーム22が第1ブーム21に対して前進して第1ブーム21と第2ブーム22がスライドブラケット23を介して直列に連結された直列状態であり、この状態で防除液の散布が行われる。なお、第1ブーム21に対する第2ブーム22の前進量は圃場の大きさに応じて調節され、防除液の散布が行われる。図1及び図2に示す状態から第2ブーム22が第1ブームに対して後退することによって第1ブーム21と第2ブーム22が平行に配設された収納状態となる。このように、ブーム4aは、防除液散布時の直列状態と非散布時の収納状態とに切り替えられる。この切り替え動作は、図示しない油圧シリンダ、電動モータ、滑車、チェーン、ワイヤ等によって行われる。
【0026】
第1ブーム21と第2ブーム22が直列状態である場合には、ブーム4aは、第1ブーム21の基端部がフロントリンク2bに支持され、第2ブーム22の先端部が自由端となる片持ち支持構造となる。したがって、ブーム4aの自重によって第2ブーム22の先端部側が下方に撓んだ状態となる。そこで、フロントリンク2bとスライドブラケット23との間には、第1ブーム21を支持するスプリング24が介装される。スプリング24によって第1ブーム21が上方に引っ張られるため、第2ブーム22の先端部側の下方への撓みが低減される。なお、スプリング24に変わり、ワイヤを用いてもよい。
【0027】
第1ブーム21及び第2ブーム22のそれぞれには、車体1に搭載された防除液タンク(図示せず)から防除液が導かれる。第1ブーム21及び第2ブーム22の下面には、防除液を散布するためのノズル25が第1ブーム21及び第2ブーム22の長手方向に沿って複数設けられる。防除液タンクから第1ブーム21及び第2ブーム22に導かれた防除液は、複数のノズル25を通じて圃場に散布される。
【0028】
防除液を散布する際には、ブーム4a,4bは、車体1の左右水平方向に延在した展開状態に設定されると共に、第1ブーム21と第2ブーム22が直列に連結された直列状態に設定される(図2に示す状態)。この状態では、ブーム4a,4bは片持ち支持構造となる。ブームスプレーヤ100は、ブーム4a,4bを片持ち支持した状態で走行し、走行しながらブーム4a,4bのノズル25から防除液を散布する。
【0029】
ブームスプレーヤ100が圃場を走行する際には、圃場の凹凸部によって車体1が上下方向に振動する。車体1が振動すると、車体1に連結されたリンクアーム2及び昇降シリンダ3も車体1と共に振動し、リンクアーム2に支持されたブーム4a,4bに伝達される。ブーム4a,4bは、片持ち支持構造であるため、基端部側がリンクアーム2と共に振動するのに対して、自由端側は撓んで車体1の上下方向に振動する。以下では、ブーム4の自由端側が撓んで振動する事象を「撓み振動」と称し、車体1の上下方向の撓み振動を「上下振動」と称する。ブーム4a,4bが上下振動した場合には、ブーム4a,4bが作物に接触するおそれがあり、上下振動が大きい場合には圃場に接触してブーム4a,4bやノズル25が破損するおそれがある。
【0030】
ブーム4a,4bの上下振動を低減するため、ブームスプレーヤ100にはブーム制振装置が設けられる。以下では、図3を参照して、ブーム制振装置について説明する。
【0031】
ブーム制振装置は、昇降シリンダ3のピストン側室3cに接続されたアキュムレータ60と、ピストン側室3cとアキュムレータ60との間を行き来する作動油に抵抗を付与する減衰弁61とを備える。
【0032】
アキュムレータ60の内部は、リンクアーム2を支持するピストン側室3cに接続された油室(液圧室)62と、油室62に圧力を付与するバネ室63とを有する。
【0033】
油室62は、メイン通路53におけるピストン側室3cと逆止弁54との間から分岐する分岐通路65に接続される。つまり、油室62とピストン側室3cは、メイン通路53及び分岐通路65を通じて接続される。減衰弁61は分岐通路65に設けられる。
【0034】
なお、油室62とピストン側室3cは、メイン通路53とは独立した通路にて直接接続するようにしてもよい。その場合、減衰弁61は、その独立した通路に設けられる。
【0035】
バネ室63は、加圧された窒素等のガスが封入されたガス室であり、油室62との境界面である液面にガス圧を付与している。なお、油室62とバネ室63とを区画するフリーピストンをアキュムレータ60内に収装するようにしてもよい。また、油室62とバネ室63とを区画するフリーピストンをアキュムレータ60内に収装すると共に、バネ室63内にバネを収装するようにしてもよい。つまり、加圧されたガスに代わり、バネを用いて油室62に圧力を付与するようにしてもよい。
【0036】
アキュムレータ60の特性は、バネ室63内のガス圧、アキュムレータ60の容積等を調整することによって設定される。
【0037】
次に、ブーム制振装置の動作について説明する。
【0038】
油圧ポンプ52が停止状態でかつ切換弁57が遮断位置であり、昇降シリンダ3が所定のストロークに保持されている状態にて、ブームスプレーヤ100が圃場を走行する場合について説明する。
【0039】
ブームスプレーヤ100が圃場を走行する際に、圃場の凹凸部によって車体1が上下方向に振動すると、車体1に連結された昇降シリンダ3も上下振動するため、車体1の上下振動が昇降シリンダ3を介してリンクアーム2及びブーム4aに伝達され、ブーム4aが上下振動する。このように、車体1の上下振動は昇降シリンダ3を介してブーム4aに伝達される。
【0040】
車体1の振動により昇降シリンダ3がストロークすると、シリンダチューブ3aとピストンロッド3bとの間に相対変位が生じ、ピストンロッド3bの侵入分だけ昇降シリンダ3内圧力が増減する。ピストン側室3cの圧力が増減すれば、ピストン側室3cとアキュムレータ60の油室62との間で作動油が行き来する。具体的には、ピストン側室3cの作動油が油室62内にバネ室63のガス圧力に抗して流入すると共に、バネ室63のガス圧力によって油室62の作動油がピストン側室3c内に流入する。このように、アキュムレータ60はバネ作用を発揮する。また、ピストン側室3cと油室62との間を作動油が行き来する際には、その作動油の流れに減衰弁61によって抵抗が付与されて減衰力が発揮される。
【0041】
以上のように、ブームスプレーヤ100の走行に伴って車体1が上下振動した場合には、それに伴ってアキュムレータ60のバネ作用によって昇降シリンダ3とアキュムレータ60との間で作動油の行き来が発生し、ピストン側室3cと油室62との間を行き来する作動油に対して減衰弁61によって抵抗が付与され減衰力が発生する。これにより、昇降シリンダ3の振動がブーム4aへ伝達され難くなると共に、昇降シリンダ3におけるシリンダチューブ3aとピストンロッド3bとの相対変位がすぐに収まる。したがって、ブーム4aの上下振動が低減される。
【0042】
以上の第1実施形態によれば、以下に示す作用効果を奏する。
【0043】
アキュムレータ60は、リンクアーム2を支持するピストン側室3cに接続された油室62と、油室62に圧力を付与するバネ室63とを有し、ピストン側室3cと油室62とを接続する通路には、作動油に抵抗を付与する減衰弁61が設けられる。したがって、車体1が上下振動した場合には、アキュムレータ60がバネ作用を発揮すると共に、減衰弁61が減衰機能を発揮するため、車体1の振動がブーム4に伝達され難く、ブーム4の振動を低減することができる。また、アキュムレータ60及び減衰弁61は昇降シリンダ3の動作時に抵抗となるものではないため、昇降シリンダ3の動作に影響を及ぼさない。
【0044】
<第2実施形態>
図4〜図6を参照して、本発明の第2実施形態に係るブームスプレーヤ200について説明する。
【0045】
上記第1実施形態にて説明したブーム制振装置は、ブーム4a,4bの上下振動を低減することができる。しかし、ブーム4a,4bの自由端側は、車体1が凸部に乗り上げる際には車体1の前後方向(走行方向)に撓み振動(以下「前後振動」と称する。)する。上記第1実施形態にて説明したブーム制振装置では、この前後振動を低減することができない。ブーム4a,4bが前後振動した場合には、ブームスプレーヤ100の走行方向に防除液が均一に散布されずムラが生じ、作業スピードが遅くなる。作業スピードが遅くなると、防除液散布の効率が低下する。そこで、本第2実施形態では、上記第1実施形態にて説明したブーム制振装置の構成に加えて、ブーム4a,4bの前後振動を低減する構成について説明する。
【0046】
なお、以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態のブームスプレーヤ100と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0047】
図4及び図5に示すように、ブーム4a,4bの前後振動を低減するブーム制振装置として、ブーム4a,4bのそれぞれの自由端側にはマスダンパ30が設けられる。ブーム4a,4bに設けられるマスダンパ30は同じ構成であるため、ブーム4aに設けられるマスダンパ30について説明する。
【0048】
図6に示すように、マスダンパ30は、ブーム4aの先端部に固定され内部に作動油(作動流体)が封入された筐体31と、筐体31内に筐体31の内周壁に沿って移動自在に配置された錘32と、錘32の移動を案内するガイド33とを備える。
【0049】
筐体31の内部は、錘32によって第1油室34と第2油室35の2つの油室(液圧室)に区画される。第1油室34内には錘32の移動に伴って伸縮する第1バネ36がガイド33に沿って収装され、第2油室35内には錘32の移動に伴って伸縮する第2バネ37がガイド33に沿って収装される。
【0050】
錘32には、第1油室34と第2油室35を連通する流路38が形成される。流路38には、通過する作動油に抵抗を付与する減衰弁39が設けられる。減衰弁39は、流路38にオリフィスを設けることによって構成される。これに代わり、錘32に環状の流路を設け、その流路によって作動油に抵抗を付与するようにしてもよい。
【0051】
マスダンパ30の固有振動数は、ブーム4aの固有振動数と略同値に設定するのが望ましい。マスダンパ30の固有振動数は、錘32の質量と第1バネ36及び第2バネ37のバネ定数とを調整することによって設定される。マスダンパ30は、錘32が車体1の前後方向(走行方向)に移動する向きに、つまり、ガイド33が車体1の前後方向に延在する向きに配置される。したがって、ブームスプレーヤ200の走行に伴ってブーム4aが前後振動した場合には、それに伴って錘32がブーム4aの固有振動数に同調して共振すると共に、錘32の振動に伴って流路38を通過する作動油に対して減衰弁39によって抵抗が付与され減衰力が発生する。これにより、ブーム4aの前後振動が低減される。
【0052】
<第3実施形態>
図7及び図8を参照して、本発明の第3実施形態に係るブームスプレーヤ300について説明する。
【0053】
本第3実施形態では、上記第1実施形態にて説明したブーム制振装置の構成に加えて、ブーム4a,4bの前後振動を低減する構成について説明する。
【0054】
なお、以下では、上記第1実施形態と異なる点を中心に説明し、第1実施形態のブームスプレーヤ100と同一の構成には同一の符号を付して説明を省略する。
【0055】
ブーム4a,4bの前後振動を低減するブーム制振装置として、ブーム4a,4bのそれぞれの自由端側にはマスダンパ40が設けられる。マスダンパ40は、ロータリーダンパ41を備えるものであり、第2実施形態のブームスプレーヤ200のマスダンパ30の構成と相違する。ブーム4a,4bに設けられるマスダンパ40は同じ構成であるため、ブーム4aに設けられるマスダンパ40について説明する。
【0056】
マスダンパ40のロータリーダンパ41は、ブーム4aに固定され作動油が封入された筐体42と、筐体42内を挿通しブーム4aに揺動自在に連結された揺動軸43とを備える。
【0057】
揺動軸43の自由端には振り子44が結合される。揺動軸43と振り子44とによって、マスダンパ40の錘が構成される。上記第2実施形態では、錘32の全部が筐体31内に収容されるものであったのに対して、本第3実施形態では、揺動軸43の一部、つまり錘の一部が筐体42内に収容される。
【0058】
筐体42の内部は、揺動軸43によって第1油室45と第2油室46の2つの油室(液圧室)に区画される。第1油室45及び第2油室46には、揺動軸43の揺動に伴って伸縮するバネ(図示せず)が収装される。
【0059】
揺動軸43には、第1油室45と第2油室46を連通する流路(図示せず)が形成される。その流路には、通過する作動油に抵抗を付与する減衰弁(図示せず)が設けられる。
【0060】
マスダンパ40の固有振動数は、ブーム4aの固有振動数と略同値に設定するのが望ましい。マスダンパ40の固有振動数は、揺動軸43及び振り子44の質量と、第1油室45及び第2油室46に収装されるバネのバネ定数とを調整することによって設定される。マスダンパ40は、振り子44が車体1の前後方向(走行方向)に揺動可能な向きに配置される。したがって、ブームスプレーヤ200の走行に伴ってブーム4aが前後振動した場合には、それに伴って振り子44がブーム4aの固有振動数に同調して共振すると共に、振り子44の揺動に伴って流れる作動油に対して減衰弁によって抵抗が付与され減衰力が発生する。これにより、ブーム4aの前後振動が低減される。
【0061】
本発明は上記の実施の形態に限定されずに、その技術的な思想の範囲内において種々の変更がなしうることは明白である。
【0062】
例えば、ブーム4a,4bのうち片方のみを設ける構成にしてもよい。
【0063】
また、ブームスプレーヤ100は、エンジンやモータ等を備える自走式、エンジンやモータ等を備える走行体に牽引される牽引式のいずれでもあってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明に係るブーム制振装置は、圃場を走行しながら防除液を散布するブームスプレーヤのブームの振動を制振する装置として用いることができる。
【符号の説明】
【0065】
100,200,300 ブームスプレーヤ
1 車体
2 リンクアーム
3 昇降シリンダ
3c ピストン側室
4 ブーム
21 第1ブーム
22 第2ブーム
25 ノズル
30 マスダンパ
32 錘
36 第1バネ
37 第2バネ
38 流路
39 減衰弁
40 マスダンパ
41 ロータリーダンパ
42 揺動軸
43 錘
52 油圧ポンプ
53 メイン通路
54 逆止弁
56 戻り通路
57 切換弁
60 アキュムレータ
61 減衰弁
62 油室
63 バネ室
65 分岐通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体に取り付けられたリンクアームと、
前記車体と前記リンクアームとの間に介装され前記リンクアームを昇降する液圧シリンダと、
前記リンクアームを支持する前記液圧シリンダに対して作動流体を給排して前記液圧シリンダを伸縮させる作動流体給排装置と、
一端が前記リンクアームに支持され他端が自由端として設けられ防除液を散布するブームと、
を備えるブームスプレーヤの前記ブームの振動を制振するブーム制振装置であって、
前記液圧シリンダに接続された液圧室と当該液圧室に圧力を付与するバネ室とを有するアキュムレータと、
前記液圧シリンダと前記液圧室との間を行き来する作動流体に抵抗を付与する減衰弁と、
を備えることを特徴とするブーム制振装置。
【請求項2】
前記作動流体給排装置は、
前記液圧シリンダに作動流体を供給可能な液圧ポンプと、
前記液圧シリンダと前記液圧ポンプとをつなぐメイン通路と、
前記メイン通路に設けられ前記液圧ポンプから前記液圧シリンダへの作動流体の流れのみを許容する逆止弁と、
前記メイン通路における前記逆止弁の下流側から分岐し作動流体をタンクに導く戻り通路と、
前記戻り通路に設けられ連通位置と遮断位置とに切り替え可能な切換弁と、を備え、
前記アキュムレータは、前記メイン通路における前記液圧シリンダと前記逆止弁との間に接続されることを特徴とする請求項1に記載のブーム制振装置。
【請求項3】
前記ブームの自由端側に設けられたマスダンパをさらに備え、
前記マスダンパは、
前記ブームの振動に伴って振動する錘と、
前記錘の全部又は一部を収容し、作動流体が封入された筐体と、
前記筺体内に収装され、前記錘の振動に伴って伸縮するバネと、
前記錘の振動に伴って流れる前記筐体内の作動流体に抵抗を付与する減衰弁と、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のブーム制振装置。
【請求項4】
前記錘は、前記筐体内に当該筐体の内周壁に沿って移動自在に配置され、
前記バネは、前記錘によって区画された前記筐体内の2つの液圧室に収装され、
前記減衰弁は、前記錘に形成され前記2つの液圧室を連通する流路に設けられ、
前記マスダンパは、前記錘の移動方向が前記車体の走行方向となるように配置される
ことを特徴とする請求項3に記載のブーム制振装置。
【請求項5】
前記錘は、前記筐体内を挿通し前記ブームに揺動自在に連結された揺動軸と、当該揺動軸の自由端に結合され前記車体の走行方向に揺動可能な振り子とからなり、
前記バネは、前記揺動軸によって区画された前記筐体内の2つの液圧室に収装され、
前記減衰弁は、前記揺動軸に形成され前記2つの液圧室を連通する流路に設けられる
ことを特徴とする請求項3に記載のブーム制振装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一つに記載のブーム制振装置を備えるブームスプレーヤ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−102(P2013−102A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137522(P2011−137522)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000000929)カヤバ工業株式会社 (2,151)
【出願人】(501203344)独立行政法人農業・食品産業技術総合研究機構 (827)
【Fターム(参考)】