説明

プッシュスイッチおよび可動接点付きシート

【課題】リフローはんだ付けに伴う熱収縮によって可撓性シートが張り過ぎたりベース部材から部分的に引き剥がされたりするのを防止できるプッシュスイッチの提供。
【解決手段】ハウジング2と、このハウジング2の底板2aに設けられている固定接点3と、固定接点3に対向していて押圧操作により弾性変形して固定接点3に接触する可動接点9と、ハウジング2の側壁2bの突端に粘着により固定されていて、可動接点9が粘着されている可撓性シート10と、可動接点9の中央部を挟んで固定接点3に対向していて、可動接点9に付与される押圧操作時の操作力を可動接点9の中央部に集中させる操作力集中部材13とを備えている。可撓性シート10は中空の位置決め用突出部11を有し、これに操作力集中部材13が挿入されている。位置決め用突出部11は可撓性シート10が位置決め用突出部11の方向に収縮することを緩和する貫通孔12を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングや基板等に粘着により固定されている可撓性シートに、可動接点が粘着により保持されていて、この可動接点の中央部に重なる可撓性シートの個所には中空の位置決め用突出部が形成されていて、押圧操作時の操作力を可動接点の中央部に集中させるための操作力集中部材が位置決め用突出部に挿入されて位置決めされているプッシュスイッチ、および、このプッシュスイッチに採用される可動接点付きシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプッシュスイッチは、ハウジングや基板等のベース部材と、このベース部材に設けられている固定接点と、この固定接点に中央部が対向していて押圧操作により弾性変形して固定接点に接触する可動接点とを備えている。この可動接点は、可撓性シートに粘着されている。この可撓性シートはベース部材に粘着により固定されていて、これによって可動接点はその中央が固定接点に対向した状態に保持されている。
【0003】
可撓性シートの可動接点の中央部に重なる個所には、中空の位置決め用突出部(凹部)が、プレス成形(いわゆるエンボス加工、または絞り加工)により形成されている。この位置決め用突出部には、押圧操作時に可動接点に付与される操作力を可動接点の中央部に集中させるための操作力集中部材が挿入されている。つまり、操作力集中部材は位置決め用突出部によって可動接点の中央部に重なる位置に位置決めされている。
【0004】
このように構成されたプッシュスイッチの作製に際しては、可動接点、可撓性シートおよび操作力集中部材をまとめて一部品として扱うために、可動接点付きシートが用いられる。この可動接点付きシートは、可動接点、可撓性シートおよび操作力集中部材を備えている。この可動接点付きシートにおいて、可動接点は、その中央部が位置決め用突出部と重なる位置で可撓性シートに粘着されている。操作力集中部材は可撓性シートの操作力集中部材に挿入された状態である。
【0005】
ここで説明した従来のプッシュスイッチおよび可動接点付きシートについては特許文献1を参照されたい。
【特許文献1】特開2007−179923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来のプッシュスイッチでは、位置決め用突出部が可撓性シートに対してプレス成形により設けられていて、ベース部材に対して可撓性シートが粘着により固定されている。プッシュスイッチを回路基板等に設ける場合、リフローはんだ付けを行うことが一般的であり、この際、可撓性シートが加熱される。位置決め用突出部は、プレス成形により可撓性シートの一部を伸ばして形成されているものであるため、加熱された可撓性シートは位置決め用突出部の方向に収縮する。これが原因で、可撓性シートが張り過ぎたり、可撓性シートがベース部材から部分的に引き剥がされて可撓性シートの張りが不足したりする。可動接点は可撓性シート越しに押圧操作されるものであるから、可撓性シートの張りが過剰になったり不足したりすると、プッシュスイッチの押圧操作の感触が劣化する。
【0007】
本発明は、前述の事情を考慮してなされたものであり、その目的は、リフローはんだ付けに伴う可撓性シートの熱収縮によって可撓性シートが張り過ぎたりベース部材から部分的に引き剥がされたりすることを防止できるプッシュスイッチおよび可動接点付きシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、前述の目的を達成するために、次のように構成されている。
【0009】
〔1〕 本発明のプッシュスイッチは、ベース部材と、前記ベース部材に設けられている固定接点と、中央部が前記固定接点に対向していて押圧操作により弾性変形して前記固定接点に接触する可動接点と、前記ベース部材に粘着により固定されているとともに前記可動接点を粘着により保持している可撓性シートと、前記可動接点の中央部に重なる前記可撓性シートの個所には、中空の位置決め用突出部が形成されていて、押圧操作時に前記可動接点に付与される操作力を前記可動接点の中央部に集中させるための操作力集中部材が、前記位置決め用突出部に挿入されて位置決めされているプッシュスイッチであって、前記位置決め用突出部は、前記可撓性シートの前記位置決め用突出部の方向への熱収縮を低減する収縮低減手段を有することを特徴とする。
【0010】
このよう構成された本発明のプッシュスイッチは、位置決め用突出部が収縮低減手段を有するので、リフローはんだ付けに伴う可撓性シートの熱収縮によって可撓性シートが張り過ぎたりベース部材から部分的に引き剥がされたりすることを防止できる。
【0011】
〔2〕 本発明の可動接点付きシートは、ベース部材と、前記ベース部材に設けられている固定接点と、中央部が前記固定接点に対向していて押圧操作により弾性変形して前記固定接点に接触する可動接点と、前記ベース部材に粘着により固定されているとともに前記可動接点を粘着により保持している可撓性シートと、前記可動接点の中央部に重なる前記可撓性シートの個所には、中空の位置決め用突出部が形成されていて、押圧操作時に前記可動接点に付与される操作力を前記可動接点の中央部に集中させるための操作力集中部材が、前記位置決め用突出部に挿入されて位置決めされているプッシュスイッチに採用される可動接点付きシートであって、前記可動接点、前記可撓性シート、前記操作力集中部材を備えていて、前記可動接点は、その中央部が前記位置決め用突出部と重なる位置で前記可撓性シートに粘着されていて、前記操作力集中部材は、前記位置決め用突出部に挿入されていて、前記位置決め用突出部は、前記可撓性シートの前記位置決め用突出部の方向への熱収縮を低減する収縮低減手段を有することを特徴とする。
【0012】
〔3〕 本発明の可動接点付きシートは、「〔2〕」に記載の可動接点付きシートにおいて、前記収縮低減手段が前記位置決め用突出部の突端に形成された貫通孔であることを特徴とする。
【0013】
このように構成された可動接点付きシートでは、可撓性シートには、位置決め用突出部以外の可撓性シートの部分を位置決め用突出部の方向に引っ張る熱収縮だけでなく、貫通孔を広げる方向の熱収縮も生じる。これにより、熱収縮時に可撓性シートの部分が位置決め用突出部の方向に収縮することの緩和を実現している。
【0014】
〔4〕 本発明の可動接点付きシートは、「〔3〕」に記載の可動接点付きシートにおいて、前記貫通孔が前記位置決め用突出部の突端の中央に形成されているとともに、前記位置決め用突出部の突出方向における形状と相似していることを特徴とする。
【0015】
〔5〕 本発明の可動接点付きシートは、「〔2〕」に記載の可動接点付きシートにおいて、前記位置決め用突出部が筒状に形成されていて、前記収縮低減手段が前記位置決め用突出部の突端に形成された開口であることを特徴とする。
【0016】
「〔4〕」,「〔5〕」に記載の動接点付きシートでは、熱収縮に伴う位置決め用突出部の形状の歪みを低減することができる。
【0017】
〔6〕 本発明の可動接点付きシートは、ベース部材と、前記ベース部材に設けられている複数の固定接点と、前記固定接点に中央部が対向していて押圧操作により弾性変形して前記固定接点に接触する複数の可動接点と、前記ベース部材に粘着により固定されているとともに前記複数の可動接点を粘着により保持している可撓性シートと、前記可動接点のそれぞれの中央部に重なる前記可撓性シートの複数個所には、中空の位置決め用突出部が形成されていて、押圧操作時に前記可動接点に付与される操作力を前記可動接点の中央部に集中させるための複数の操作力集中部材がそれぞれ、前記複数の位置決め用突出部のそれぞれに挿入されて位置決めされているプッシュスイッチユニットに採用される可動接点付きシートにおいて、前記複数の可動接点、前記可撓性シート、前記複数の操作力集中部材を備えていて、前記複数の可動接点のそれぞれは、その中央部が前記複数の位置決め用突出部のそれぞれと重なる位置で前記可撓性シートに粘着されていて、前記複数の操作力集中部材のそれぞれは、前記複数の位置決め用突出部のそれぞれに挿入されていて、前記位置決め用突出部は、前記可撓性シートの前記位置決め用突出部の方向への熱収縮を低減する収縮低減手段を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
「〔1〕」に記載の本発明のプッシュスイッチおよび「〔2〕」に記載の本発明の可動接点付きシートは、可撓性シートの位置決め用突出部が収縮低減手段を有するので、リフローはんだ付けに伴う可撓性シートの熱収縮によって可撓性シートが張り過ぎたりベース部材から部分的に引き剥がされたりすることを防止できる。この結果、プッシュスイッチのリフローはんだ付けに伴う操作感触の劣化を防止できる。
【0019】
「〔6〕」に記載の本発明の可動接点付きシートは、可撓性シートの位置決め用突出部が収縮低減手段を有するので、プッシュスイッチユニットのリフローはんだ付けに伴う可撓性シートの熱収縮によって可撓性シートが張り過ぎたりベース部材から部分的に引き剥がされたりすることを防止できる。この結果、プッシュスイッチユニットを構成する各プッシュスイッチの、リフローはんだ付けに伴う操作感触の劣化を防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の実施形態について次の「<1>」,「<2>」で説明する。
【0021】
<1> 本発明のプッシュスイッチ、およびこのプッシュスイッチに採用される可動接点付きシートの実施形態について図1〜6を用いて説明する。
【0022】
図1は本発明の実施形態に係るプッシュスイッチの斜視図である。図2は図1に示したプッシュスイッチの分解斜視図である。図3は図1に示したプッシュスイッチの上面図を簡略化した図ある。図4は図3のIV−IV断面図である。図5は本発明の実施形態に係る可動接点付きシートを示し、(a)は図4に対応する断面図であり、(b)は位置決め用突出部の上面図である。図6は図5に示す位置決め用突出部および操作力集中部材を可撓性シートに設ける手順を示す図である。
【0023】
図1〜4に示すように、プッシュスイッチ1は、ベース部材としての合成樹脂製のハウジング2を備えている。このハウジング2は、上面視形状が略正方形に形成されていて、底板2aと円筒状の側壁2bとを有する。底板2aと側壁2bによって収納空間が形成されている。底板2aには、固定接点3およびコモン接点4A,4Bが設けられている。固定接点3は、底板2aの中央で収納空間に対して露出している。コモン接点4A,4Bは底板2aの内部で連続していて、固定接点3の外周側で収納空間に対して露出している。ハウジング2には、端子5〜8が設けられている。端子5,6は、底板2aの内部で固定接点3と連続している。端子7,8は、底板2aの内部でコモン接点4A,4Bと連続している。
【0024】
ハウジング2にはドーム状の可動接点9が挿入されている。この可動接点9はその凹曲面側を底板2aに向けた状態で底板2aと重なっている。可動接点9の中央部は、固定接点3に対向している。可動接点9の縁部はコモン接点4A,4Bに接触している。可動接点9は、底板2aの方向への押圧操作により弾性変形して、すなわち復元可能に座屈して固定接点3に接触するようになっている。
【0025】
可動接点9は、粘着層付き可撓性シート10に粘着されて保持されている。この可撓性シート10は、耐熱性の合成樹脂、例えばポリイミド製のシート本体10aの一方の面に粘着層10bを設けてなる。この可撓性シート10は、ハウジング2の底板2aとは反対側の一端面に、粘着により固定されている。これにより、可動接点9は、その中央部が固定接点3に対向した状態に保持されている。
【0026】
可動接点9の中央部を挟んで固定接点3に対向する位置には、可動接点9に付与される押圧操作時の操作力を可動接点9の中央部に集中させるための操作力集中部材13が配置されている。
【0027】
可撓性シート10の可動接点9の中央部に重なる個所には、中空の位置決め用突出部11がプレス成形により形成されている。この位置決め用突出部11には操作力集中部材13が挿入されている。つまり、操作力集中部材13は位置決め用突出部11によって可動接点9の中央部と重なる位置に位置決めされている。なお、操作力集中部材13は、位置決め用突出部11内において粘着層10bにより位置決め用突出部11の内面に粘着されている。
【0028】
位置決め用突出部11には、可撓性シート10の位置決め用突出部11の方向への熱収縮を低減する収縮低減手段としての貫通孔12が形成されている。この貫通孔12は、位置決め用突出部11の突端の中央に形成されていて、位置決め用突出部11の突出方向における形状、すなわち上面視形状と相似している。例えば、位置決め用突出部11の上面視形状も貫通孔12も円形に形成されている。
【0029】
プッシュスイッチ1の作製に際しては、可動接点9、可撓性シート10および操作力集中部材13をまとめて一部品として扱うために、図5に示す可動接点付きシート15が用いられる。この可動接点付きシート15は、可動接点9、可撓性シート10および操作力集中部材13を備えている。この可動接点付きシート15において、可動接点9は、その中央部が位置決め用突出部11と重なる位置で可撓性シート10に粘着されている。操作力集中部材13は可撓性シート10の位置決め用突出部11に挿入された状態で、粘着層10bによって位置決め用突出部11の内面に粘着されている。
【0030】
位置決め用突出部11、操作力集中部材13は、図6に示すようにして設けられる。
【0031】
まず、シート体16を作製する。つまり、可撓性シート10の粘着層10bに貫通孔12(収縮低減手段)を形成して剥離シート17を貼り付ける。この剥離シート17は、可撓性シート10に粘着層10bを残しつつ粘着層10bから剥離可能なシートである。
【0032】
次に、シート体16をポンチ18とダイ19との間に配置する。このとき、可撓性シート10をダイ19側に向け、剥離シート17をポンチ18側に向ける。
【0033】
次に、ポンチ18とダイ19を使用して、操作力集中部材13の形成、位置決め用突出部11の形成、位置決め用突出部11への操作力集中部材13の挿入および粘着を一工程で行う。
【0034】
つまり、操作力集中部材13は、ポンチ18により剥離シート17を打ち抜き、打ち抜かれた剥離シート17の断片を、可撓性シート10ごとダイ19に押し付けて圧縮変形(塑性変形)させることによって形成する。これと並行して、操作力集中部材13になる剥離シート17の部分ごと可撓性シート10を剥離シート17から離れる方向にポンチ18により押し出しダイ19に押し付けて塑性変形させることによって、位置決め用突出部11の形成、位置決め用突出部11への操作力集中部材13の挿入および粘着を行う。
【0035】
最後に、ダイ19およびポンチ18をシート体16から離間させ、可撓性シート10への位置決め用突出部11の形成、操作力集中部材13の形成および位置決め用突出部11への挿入および粘着が完了する。
【0036】
このようにして作製された中間シート体20から孔のあいた剥離シート17を剥がし、可動接点9の中央部を操作力集中部材13と重なるように粘着層10bに付着させると、可動接点付きシート15が完成する。
【0037】
本発明の実施形態に係るプッシュスイッチ1および可動接点付きシート15によれば次の効果を得られる。
【0038】
本実施形態に係るプッシュスイッチ1および可動接点付きシート15では、可撓性シート10の位置決め用突出部11が貫通孔12(収縮低減手段)を有するので、プッシュスイッチ1のリフローはんだ付けの際、可撓性シート10には、位置決め用突出部11以外の可撓性シート10の部分を位置決め用突出部11の方向に引っ張る熱収縮だけでなく、貫通孔12を広げる方向の熱収縮も生じる。これにより、プッシュスイッチ1のリフローはんだ付けに伴う可撓性シートの熱収縮によって可撓性シート10が張り過ぎたりハウジング2の側壁2bから部分的に引き剥がされたりすることを防止できる。この結果、プッシュスイッチ1のリフローはんだ付けに伴う押圧操作時の操作感触の劣化を防止できる。
【0039】
本実施形態に係るプッシュスイッチ1および可動接点付きシート15では、貫通孔12(収縮低減手段)は、位置決め用突出部11の突端の中央に形成されているとともに、位置決め用突出部11の突出方向における形状(上面視形状)と相似している。これにより、熱収縮に伴う位置決め用突出部の形状の歪みを低減することができる。
【0040】
なお、前述の実施形態に係るプッシュスイッチ1および可動接点付きシート15では、可動接点9がドーム状であるが、本発明における可動接点は、その中央部が固定接点に対向していて押圧操作により弾性変形して固定接点に接触するものであればよく、ドーム状に限定されるものではない。
【0041】
前述の実施形態に係るプッシュスイッチ1および可動接点付きシート15では、収縮低減手段が貫通孔12であったが、本発明における収縮低減手段は貫通孔に限定されるものではなく、切溝であってもよい。
【0042】
前述の実施形態に係るプッシュスイッチ1および可動接点付きシート15では、収縮低減手段である貫通孔12が位置決め用突出部11の突端の中央に形成されるとともに、貫通孔12の形状が、位置決め用突出部11の突出方向における位置決め用突出部11および貫通孔12の形状が円形に設定されている。これは、収縮低減手段である貫通孔が位置決め用突出部の突端の中央に形成されているとともに、その貫通孔の形状が、位置決め用突出部の突出方向における形状と相似形に設定されているものの一例であり、本発明における位置決め用突出部および貫通孔の形状はそれに限定されるものではない。その他の形状としては、図7,8に示すものであってもよい。図7,8はそれぞれ、図5に示した位置決め用突出部および収縮低減手段である貫通孔の形状の別の例を示し、(a)は図5(a)に対応する断面図であり、(b)は図5(b)に対応する上面図である。これら図7,8に示すように、位置決め用突出部11および貫通孔12は、正方形や正6角形等の正多角形であってもよいし、図示しないが、ひし形、長方形、楕円形であってもよい。
【0043】
前述の実施形態に係るプッシュスイッチ1および可動接点付きシート15は、収縮低減手段である貫通孔が位置決め用突出部の突端の中央に形成されているとともに、位置決め用突出部の突出方向における形状と相似している一例であったが、本発明における収縮低減手段はそのような貫通孔に限定されるものではない。位置決め用突出部が筒状に形成されていて、位置決め用突出部の突端に形成された開口が収縮低減手段であってもよい。
【0044】
前述の実施形態に係るプッシュスイッチ1および可動接点付きシート15では、ポンチ18とダイ19により、操作力集中部材13の形成、位置決め用突出部11の形成、位置決め用突出部11への操作力集中部材13の挿入とが一工程で実現されている例であった。操作力集中部材13の形成、位置決め用突出部11の形成、位置決め用突出部11への操作力集中部材13の挿入は別工程で行われてもよく、この場合、位置決め用突出部11に操作力集中部材13を挿入する際、位置決め用突出部11内の空気を貫通孔12から逃がすことができるので、操作力集中部材13を位置決め用突出部11に挿入しやすい。
【0045】
<2> プッシュスイッチユニットに採用される本発明の可動接点付きシートの実施形態について図9〜12を用いて説明する。
【0046】
図9は本発明の実施形態に係る可動接点付きシートを備えたプッシュスイッチユニットの上面図である。図10は図9のX−X断面図である。図11は図9に示したプッシュスイッチの拡大図である。図12は本発明の実施形態に係る可動接点付きシートの図10に対応する断面図である。
【0047】
図9に示すように、プッシュスイッチユニット100は、ベース部材としての合成樹脂製の基板102を備えている。この基板102の一方の面には、固定接点103および環状のコモン接点104の組が複数(図9では12個)並んで設けられている。固定接点103およびコモン接点104はそれぞれ図示しない端子と連続しているものである。
【0048】
基板102の一方の面側には、ドーム状の複数の可動接点109が、固定接点103およびコモン接点104に対応して並べられている。各可動接点109は、その凹曲面側を基板102に向けた状態で基板102と重なっている。可動接点109の中央部は、固定接点103に対向している。可動接点109の縁部はコモン接点104に接触している。可動接点109は、基板102の方向への押圧操作により弾性変形して、すなわち復元可能に座屈して固定接点103に接触するようになっている。
【0049】
複数の可動接点109はすべて、粘着層付き可撓性シート110に粘着されている。この可撓性シート110は、耐熱性の合成樹脂、例えばポリイミド製の本体シート110aに粘着層110bを設けてなる。可撓性シート110は、基板102に粘着により固定されている。これにより、複数の可動接点109はそれぞれ、その中央部が複数の固定接点103のそれぞれに対向した状態に保持されている。
【0050】
可動接点109の中央部を挟んで固定接点103に対向する位置には、可動接点109に付与される押圧操作時の操作力を可動接点109の中央部に集中させるための操作力集中部材113が配置されている。
【0051】
可撓性シート110の可動接点109の中央部に重なる個所には、中空の位置決め用突出部111がプレス成形により形成されている。この位置決め用突出部111には操作力集中部材113が挿入されている。つまり、操作力集中部材113は位置決め用突出部111によって可動接点109の中央部と重なる位置に位置決めされている。なお、操作力集中部材113は、位置決め用突出部111内において粘着層110bにより位置決め用突出部111に粘着されている。
【0052】
位置決め用突出部111には、可撓性シート110の位置決め用突出部111の方向への熱収縮を低減する収縮低減手段としての貫通孔112が形成されている。この貫通孔112は、位置決め用突出部111の突端の中央に形成されている。また、貫通孔112は位置決め用突出部111の突出方向における形状、すなわち上面視形状と相似している。例えば、位置決め用突出部111の上面視形状も貫通孔112も楕円形に形成されている。
【0053】
つまり、プッシュスイッチユニット100は、基板102、固定接点103、コモン接点104、可動接点109、可撓性シート110、操作力集中部材113を備えた図11に示すプッシュスイッチ101が複数一体化されたものである。
【0054】
プッシュスイッチユニット100の作製に際しては、複数の可動接点109、可撓性シート110および複数の操作力集中部材113をまとめて一部品として扱うために、図12に示す可動接点付きシート115が用いられる。この可動接点付きシート115は、複数の可動接点109、可撓性シート110、複数の操作力集中部材113を備えている。この可動接点付きシート115において、可動接点109は、その中央部が位置決め用突出部111と重なる位置で可撓性シート110に粘着されている。操作力集中部材113は可撓性シート110の位置決め用突出部111に挿入された状態で位置決め用突出部111が粘着されている。つまり、可動接点付きシート115はプッシュスイッチユニット100から基板102およびすべての固定接点103を取り除いた状態のものである。
【0055】
本実施形態に係る可動接点付きシート115によれば、「<1>」で説明した可動接点付きシート15の場合と同様に、次の効果が得られる。
【0056】
本実施形態に係る可動接点付きシート115では、可撓性シート110の位置決め用突出部111が貫通孔112(収縮低減手段)を有するので、プッシュスイッチユニット100のリフローはんだ付けの際、可撓性シート110には、位置決め用突出部111以外の可撓性シート110の部分を位置決め用突出部111の方向に引っ張る熱収縮だけでなく、貫通孔112を広げる方向の熱収縮も生じる。これにより、プッシュスイッチユニット100のリフローはんだ付けに伴う可撓性シート110の熱収縮によって可撓性シート110が張り過ぎたり基板102から部分的に引き剥がされたりすることを防止できる。この結果、プッシュスイッチユニット100を構成する各プッシュスイッチ101の、リフローはんだ付けに伴う操作感触の劣化を防止できる。
【0057】
本実施形態に係る可動接点付きシート115では、貫通孔112(収縮低減手段)が位置決め用突出部111の突端の中央に形成されているとともに、位置決め用突出部111の突出方向における形状(上面視形状)と相似している。これにより、熱収縮に伴う位置決め用突出部の形状の歪みを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0058】
【図1】本発明の実施形態に係るプッシュスイッチの斜視図である。
【図2】図1に示したプッシュスイッチの分解斜視図である。
【図3】図1に示したプッシュスイッチの上面図を簡略化した図ある。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る可動接点付きシートを示し、(a)は図4に対応する断面図であり、(b)は位置決め用突出部の上面図である。
【図6】図5に示す位置決め用突出部および操作力集中部材を可撓性シートに設ける手順を示す図である。
【図7】図5に示した位置決め用突出部および貫通孔(収縮低減手段)の形状の別の例を示し、(a)は図5(a)に対応する断面図であり、(b)は図5(b)に対応する上面図である。
【図8】図5に示した位置決め用突出部および貫通孔(収縮低減手段)の形状の別の例を示し、(a)は図5(a)に対応する断面図であり、(b)は図5(b)に対応する上面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る可動接点付きシートを備えたプッシュスイッチユニットの上面図である。
【図10】図9のX−X断面図である。
【図11】図9に示したプッシュスイッチの拡大図である。
【図12】本発明の実施形態に係る可動接点付きシートの図10に対応する断面図である。
【符号の説明】
【0059】
1 プッシュスイッチ
2 ハウジング
2a 底板
2b 側壁
3 固定接点
4A,4B コモン接点
5〜8 端子
9 可動接点
10 可撓性シート
10a シート本体
10b 粘着層
11 位置決め用突出部
12 貫通孔
13 操作力集中部材
15 可動接点付きシート
16 シート体
17 剥離シート
18 ポンチ
19 ダイ
20 中間シート体

100 プッシュスイッチユニット
101 プッシュスイッチ
102 基板
103 固定接点
104 コモン接点
109 可動接点
110 可撓性シート
110a シート本体
110b 粘着層
111 位置決め用突出部
112 貫通孔
113 操作力集中部材
115 可動接点付きシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、前記ベース部材に設けられている固定接点と、中央部が前記固定接点に対向していて押圧操作により弾性変形して前記固定接点に接触する可動接点と、前記ベース部材に粘着により固定されているとともに前記可動接点を粘着により保持している可撓性シートと、前記可動接点の中央部に重なる前記可撓性シートの個所には、中空の位置決め用突出部が形成されていて、押圧操作時に前記可動接点に付与される操作力を前記可動接点の中央部に集中させるための操作力集中部材が、前記位置決め用突出部に挿入されて位置決めされているプッシュスイッチであって、
前記位置決め用突出部は、前記可撓性シートの前記位置決め用突出部の方向への熱収縮を低減する収縮低減手段を有する
ことを特徴とするプッシュスイッチ。
【請求項2】
ベース部材と、前記ベース部材に設けられている固定接点と、中央部が前記固定接点に対向していて押圧操作により弾性変形して前記固定接点に接触する可動接点と、前記ベース部材に粘着により固定されているとともに前記可動接点を粘着により保持している可撓性シートと、前記可動接点の中央部に重なる前記可撓性シートの個所には、中空の位置決め用突出部が形成されていて、押圧操作時に前記可動接点に付与される操作力を前記可動接点の中央部に集中させるための操作力集中部材が、前記位置決め用突出部に挿入されて位置決めされているプッシュスイッチに採用される可動接点付きシートであって、
前記可動接点、前記可撓性シート、前記操作力集中部材を備えていて、
前記可動接点は、その中央部が前記位置決め用突出部と重なる位置で前記可撓性シートに粘着されていて、
前記操作力集中部材は、前記位置決め用突出部に挿入されていて、
前記位置決め用突出部は、前記可撓性シートの前記位置決め用突出部の方向への熱収縮を低減する収縮低減手段を有する
ことを特徴とする可動接点付きシート。
【請求項3】
請求項2に記載の可動接点付きシートにおいて、
前記収縮低減手段が前記位置決め用突出部の突端に形成された貫通孔であることを特徴とする可動接点付きシート。
【請求項4】
請求項3に記載の可動接点付きシートにおいて、
前記貫通孔が前記位置決め用突出部の突端の中央に形成されているとともに、前記位置決め用突出部の突出方向における形状と相似していることを特徴とする可動接点付きシート。
【請求項5】
請求項2に記載の可動接点付きシートにおいて、
前記位置決め用突出部が筒状に形成されていて、
前記収縮低減手段が前記位置決め用突出部の突端に形成された開口であることを特徴とする可動接点付きシート。
【請求項6】
ベース部材と、前記ベース部材に設けられている複数の固定接点と、前記固定接点に中央部が対向していて押圧操作により弾性変形して前記固定接点に接触する複数の可動接点と、前記ベース部材に粘着により固定されているとともに前記複数の可動接点を粘着により保持している可撓性シートと、前記可動接点のそれぞれの中央部に重なる前記可撓性シートの複数個所には、中空の位置決め用突出部が形成されていて、押圧操作時に前記可動接点に付与される操作力を前記可動接点の中央部に集中させるための複数の操作力集中部材がそれぞれ、前記複数の位置決め用突出部のそれぞれに挿入されて位置決めされているプッシュスイッチユニットに採用される可動接点付きシートにおいて、
前記複数の可動接点、前記可撓性シート、前記複数の操作力集中部材を備えていて、
前記複数の可動接点のそれぞれは、その中央部が前記複数の位置決め用突出部のそれぞれと重なる位置で前記可撓性シートに粘着されていて、
前記複数の操作力集中部材のそれぞれは、前記複数の位置決め用突出部のそれぞれに挿入されていて、
前記位置決め用突出部は、前記可撓性シートの前記位置決め用突出部の方向への熱収縮を低減する収縮低減手段を有する
ことを特徴とする可動接点付きシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−140710(P2009−140710A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314968(P2007−314968)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】