説明

プッシュスイッチおよび可動接点付きシート

【課題】位置決め用突出部への操作力集中部材の位置決め精度を向上させることができ、かつ、プレス成形機に粘着剤が付着しにくくすることができるプッシュスイッチの提供。
【解決手段】押圧操作時に可動接点に付与される操作力を可動接点の中央部に集中させるための操作力集中部材13は、粘着層10bを有する可撓性シート10に剥離可能に粘着された剥離シート17を素材として、可撓性シート10側とは反対側の面からポンチ18により打ち抜くことによって形成された断片からなり、位置決め用突出部11の形成、および、位置決め用突出部11への操作力集中部材13の挿入は、操作力集中部材13の形成のためのポンチ18による剥離シート17の打ち抜きと並行して、操作力集中部材13になる剥離シート17の部分ごと可撓性シート10を剥離シート17から離れる方向にポンチ18により押し出しダイ19に押し付けて塑性変形させることにより実現されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハウジングや基板等に粘着により固定されている可撓性シートに、可動接点が粘着により保持されていて、この可動接点の中央部に重なる可撓性シートの個所には中空の位置決め用突出部が形成されていて、押圧操作時の操作力を可動接点の中央部に集中させるための操作力集中部材が位置決め用突出部に挿入されて位置決めされているプッシュスイッチ、および、このプッシュスイッチに採用される可動接点付きシートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来のプッシュスイッチは、ハウジングや基板等のベース部材と、このベース部材に設けられている固定接点と、この固定接点に中央部が対向していて押圧操作により弾性変形して固定接点に接触する可動接点とを備えている。この可動接点は、粘着層付き可撓性シートに粘着されている。この可撓性シートはベース部材に粘着により固定されていて、これによって可動接点はその中央が固定接点に対向した状態に保持されている。
【0003】
可撓性シートの可動接点の中央部に重なる個所には、中空の位置決め用突出部(凹部)が、プレス成形(いわゆるエンボス加工、または絞り加工)により形成されている。この位置決め用突出部には、押圧操作時に可動接点に付与される操作力を可動接点の中央部に集中させるための操作力集中部材が挿入されている。つまり、操作力集中部材は位置決め用突出部によって可動接点の中央部に重なる位置に位置決めされている。
【0004】
このように構成されたプッシュスイッチの作製に際しては、可動接点、可撓性シートおよび操作力集中部材をまとめて一部品として扱うために、可動接点付きシートが用いられる。この可動接点付きシートは、可動接点、可撓性シートおよび操作力集中部材を備えている。この可動接点付きシートにおいて、可動接点は、その中央部が位置決め用突出部と重なる位置で可撓性シートに粘着されている。操作力集中部材は可撓性シートの位置決め用突出部に挿入された状態である。
【0005】
ここで説明した従来のプッシュスイッチおよび可動接点付きシートについては特許文献1を参照されたい。
【特許文献1】特開2007−179923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述した従来のプッシュスイッチでは、可撓性シートの位置決め用突出部に操作力集中部材を挿入する際、操作力集中部材が位置決め用突出部に対して不適切な姿勢や位置で可撓性シートの粘着層に付着することがあり、操作力集中部材が適切に位置決め用突出部に挿入されたものでは得られる操作感触が得られなくなることがある。
【0007】
また、可撓性シートにプレス成形により位置決め用突出部を形成した場合、プレス成形機に可撓性シートの粘着剤が付着するため、その粘着剤をプレス成形機から取り除く必要がある。
【0008】
本発明は、前述の事情を考慮してなされたものであり、その目的は、位置決め用突出部への操作力集中部材の位置決め精度を向上させることができ、かつ、プレス成形機に粘着層付き可撓性シートの粘着剤が付着しにくくすることができるプッシュスイッチおよび可動接点付きシートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、前述の目的を達成するために、次のように構成されている。
【0010】
〔1〕本発明のプッシュスイッチは、ベース部材と、前記ベース部材に設けられている固定接点と、中央部が前記固定接点に対向していて押圧操作により弾性変形して前記固定接点に接触する可動接点と、前記ベース部材に粘着により固定されているとともに前記可動接点を粘着により保持している粘着層付き可撓性シートと、前記可動接点の中央部に重なる前記可撓性シートの個所には、中空の位置決め用突出部が形成されていて、押圧操作時に前記可動接点に付与される操作力を前記可動接点の中央部に集中させるための操作力集中部材が、前記位置決め用突出部に挿入されて位置決めされているプッシュスイッチであって、前記操作力集中部材は、前記可撓性シートに剥離可能に粘着された剥離シートを素材として、前記可撓性シート側とは反対側の面からポンチにより打ち抜くことによって形成された断片からなり、前記位置決め用突出部の形成、および、前記位置決め用突出部への前記操作力集中部材の挿入は、前記操作力集中部材の形成のための前記ポンチによる前記剥離シートの打ち抜きと並行して、前記操作力集中部材になる前記剥離シートの部分ごと前記可撓性シートを前記剥離シートから離れる方向に前記ポンチにより押し出して塑性変形させることによって実現されていることを特徴とする。
【0011】
このように構成された本発明のプッシュスイッチでは、位置決め用突出部の形成、および、位置決め用突出部への操作力集中部材の挿入は、操作力集中部材になる剥離シートの部分ごと可撓性シートを剥離シートから離れる方向にポンチにより押し出して塑性変形させることによって実現されているので、位置決め用突出部への操作力集中部材の位置決め精度を向上させることができ、かつ、プレス成形機に粘着層付き可撓性シートの粘着剤が付着しにくくすることができる。
【0012】
〔2〕本発明の可動接点付きシートは、ベース部材と、前記ベース部材に設けられている固定接点と、中央部が前記固定接点に対向していて押圧操作により弾性変形して前記固定接点に接触する可動接点と、前記ベース部材に粘着により固定されているとともに前記可動接点を粘着により保持している粘着層付き可撓性シートと、前記可動接点の中央部に重なる前記可撓性シートの個所には、中空の位置決め用突出部が形成されていて、押圧操作時に前記可動接点に付与される操作力を前記可動接点の中央部に集中させるための操作力集中部材が、前記位置決め用突出部に挿入されて位置決めされているプッシュスイッチに採用される可動接点付きシートであって、前記可動接点、前記可撓性シート、前記操作力集中部材を備えていて、前記可動接点は、その中央部が前記位置決め用突出部と重なる位置で前記可撓性シートに粘着されていて、前記操作力集中部材は、前記可撓性シートに剥離可能に粘着された剥離シートを素材として、前記可撓性シート側とは反対側の面からポンチにより打ち抜くことによって形成された断片からなり、前記位置決め用突出部に挿入されていて、前記位置決め用突出部の形成、および、前記位置決め用突出部への前記操作力集中部材の挿入は、前記操作力集中部材の形成のための前記ポンチによる前記剥離シートの打ち抜きと並行して、前記操作力集中部材になる前記剥離シートの部分ごと前記可撓性シートを前記剥離シートから離れる方向に前記ポンチにより押し出して塑性変形させることによって実現されていることを特徴とする。
【0013】
〔3〕本発明の可動接点付きシートは、「〔2〕」に記載の発明において、前記剥離シートが、耐熱性材料からなることを特徴とする。
【0014】
プッシュスイッチはリフローはんだ付けにより回路基板等に設けられることがある。本発明では、操作力集中部材の素材である剥離シートが耐熱性材料からなるので、そのリフローはんだ付けの熱では変形しない操作力集中部材を実現できる。
【0015】
〔4〕本発明の可動接点付きシートは、ベース部材と、前記ベース部材に設けられている複数の固定接点と、前記固定接点に中央部が対向していて押圧操作により弾性変形して前記固定接点に接触する複数の可動接点と、前記ベース部材に粘着により固定されているとともに前記複数の可動接点を粘着により保持している粘着層付き可撓性シートと、前記可動接点のそれぞれの中央部に重なる前記粘着層を有する可撓性シートの複数個所には、中空の位置決め用突出部が形成されていて、押圧操作時に前記可動接点に付与される操作力を前記可動接点の中央部に集中させるための複数の操作力集中部材がそれぞれ、前記複数の位置決め用突出部のそれぞれに挿入されて位置決めされているプッシュスイッチユニットに採用される可動接点付きシートにおいて、前記複数の可動接点、前記可撓性シート、前記複数の操作力集中部材を備えていて、前記複数の可動接点のそれぞれは、その中央部が前記複数の位置決め用突出部のそれぞれと重なる位置で前記可撓性シートに粘着されていて、前記複数の操作力集中部材のそれぞれは、前記可撓性シートに剥離可能に粘着された剥離シートを素材として、前記可撓性シート側とは反対側の面からポンチにより打ち抜くことによって形成された断片からなり、前記複数の位置決め用突出部のそれぞれに挿入されていて、前記位置決め用突出部の形成、および、前記位置決め用突出部への前記操作力集中部材の挿入は、前記操作力集中部材の形成のための前記ポンチによる前記剥離シートの打ち抜きと並行して、前記操作力集中部材になる前記剥離シートの部分ごと前記可撓性シートを前記剥離シートから離れる方向に前記ポンチにより押し出して塑性変形させることによって実現されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
「〔1〕」に記載の本発明のプッシュスイッチ、および「〔2〕」に記載の本発明の可動接点付きシートでは、前述したように、位置決め用突出部の形成、および、位置決め用突出部への操作力集中部材の挿入は、操作力集中部材になる剥離シートの部分ごと可撓性シートを剥離シートから離れる方向にポンチにより押し出して塑性変形させることによって実現されているので、位置決め用突出部への操作力集中部材の位置決め精度を向上させることができ、かつ、プレス成形機に粘着層付き可撓性シートの粘着剤が付着しにくくすることができる。この結果、適切な操作感触のプッシュスイッチが製造しやすくなり、かつ、プレス成形機から粘着剤を取り除く清掃作業の手間が少なくなる。
【0017】
「〔4〕」に記載の本発明の可動接点付きシートでは、「〔2〕」に記載の可動接点付きシートと同様の理由で、プッシュスイッチユニットに関し、位置決め用突出部への操作力集中部材の位置決め精度を向上させることができ、かつ、プレス成形機に粘着層付き可撓性シートの粘着剤が付着しにくくすることができる。この結果、適切な操作感触のプッシュスイッチユニットが製造しやすくなり、かつ、プレス成形機から粘着剤を取り除く清掃作業の手間が少なくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の実施形態について次の「<1>」,「<2>」で説明する。
【0019】
<1> 本発明のプッシュスイッチ、およびこのプッシュスイッチに採用される可動接点付きシートの実施形態について図1〜6を用いて説明する。
【0020】
図1は本発明の実施形態に係るプッシュスイッチの斜視図である。図2は図1に示したプッシュスイッチの分解斜視図である。図3は図1に示したプッシュスイッチの上面図を簡略化した図である。図4は図3のIV−IV断面図である。図5は本発明の実施形態に係る可動接点付きシートを示し、(a)は図4に対応する断面図であり、(b)は位置決め用突出部の上面図である。図6は図5に示す位置決め用突出部および操作力集中部材を可撓性シートに設ける手順を示す図である。
【0021】
図1〜4に示すように、プッシュスイッチ1は、ベース部材としての合成樹脂製のハウジング2を備えている。このハウジング2は、上面視形状が略正方形に形成されていて、底板2aと円筒状の側壁2bとを有する。底板2aと側壁2bによって収納空間が形成されている。底板2aには、固定接点3およびコモン接点4A,4Bが設けられている。固定接点3は、底板2aの中央で収納空間に対して露出している。コモン接点4A,4Bは底板2aの内部で連続していて、固定接点3の外周側で収納空間に対して露出している。ハウジング2には、端子5〜8が設けられている。端子5,6は、底板2aの内部で固定接点3と連続している。端子7,8は、底板2aの内部でコモン接点4A,4Bと連続している。
【0022】
ハウジング2にはドーム状の可動接点9が挿入されている。この可動接点9はその凹曲面側を底板2aに向けた状態で底板2aと重なっている。可動接点9の中央部は、固定接点3に対向している。可動接点9の縁部はコモン接点4A,4Bに接触している。可動接点9は、底板2aの方向への押圧操作により弾性変形して、すなわち復元可能に座屈して固定接点3に接触するようになっている。
【0023】
可動接点9は、粘着層付き可撓性シート10に粘着されて保持されている。この可撓性シート10は、耐熱性の合成樹脂、例えばポリイミド製のシート本体10aの一方の面に粘着層10bを設けてなる。この可撓性シート10は、ハウジング2の底板2aとは反対側の一端面に、粘着により固定されている。これにより、可動接点9は、その中央部が固定接点3に対向した状態に保持されている。
【0024】
可動接点9の中央部を挟んで固定接点3に対向する位置には、可動接点9に付与される押圧操作時の操作力を可動接点9の中央部に集中させるための操作力集中部材13が配置されている。
【0025】
可撓性シート10の可動接点9の中央部に重なる個所には、中空の位置決め用突出部11がプレス成形により形成されている。この位置決め用突出部11には操作力集中部材13が挿入されている。つまり、操作力集中部材13は位置決め用突出部11によって可動接点9の中央部と重なる位置に位置決めされている。位置決め用突出部11および操作力集中部材13の上面視形状は円形であり、位置決め用突出部11の突端側の操作力集中部材13の端面および周側面は粘着層10bにより位置決め用突出部11の内面に粘着されている。
【0026】
プッシュスイッチ1の作製に際しては、可動接点9、可撓性シート10および操作力集中部材13をまとめて一部品として扱うために、図5に示す可動接点付きシート15が用いられる。この可動接点付きシート15は、可動接点9、可撓性シート10および操作力集中部材13を備えている。この可動接点付きシート15において、可動接点9は、その中央部が位置決め用突出部11と重なる位置で可撓性シート10に粘着されている。操作力集中部材13は可撓性シート10の位置決め用突出部11に挿入された状態で、粘着層10bによって位置決め用突出部11の内面に粘着されている。
【0027】
位置決め用突出部11、操作力集中部材13は、図6に示すようにして設けられる。
【0028】
まず、シート体16を作製する。つまり、可撓性シート10の粘着層10bに剥離シート17を貼り付ける。この剥離シート17は、可撓性シート10に粘着層10bを残しつつ粘着層10bから剥離可能なシートである。
【0029】
次に、シート体16をポンチ18とダイ19との間に配置する。このとき、可撓性シート10をダイ19側に向け、剥離シート17をポンチ18側に向ける。
【0030】
次に、ポンチ18とダイ19を使用して、操作力集中部材13の形成、位置決め用突出部11の形成、位置決め用突出部11への操作力集中部材13の挿入および粘着を一工程で行う。
【0031】
つまり、操作力集中部材13は、ポンチ18により剥離シート17を打ち抜き、打ち抜かれた剥離シート17の断片を、可撓性シート10ごとダイ19に押し付けて圧縮変形(塑性変形)させることによって形成する。これと並行して、操作力集中部材13になる剥離シート17の部分ごと可撓性シート10を剥離シート17から離れる方向にポンチ18により押し出しダイ19に押し付けて塑性変形させることによって、位置決め用突出部11の形成、位置決め用突出部11への操作力集中部材13の挿入および粘着を行う。
【0032】
最後に、ダイ19およびポンチ18をシート体16から離間させ、可撓性シート10への位置決め用突出部11の形成、操作力集中部材13の形成および位置決め用突出部11への挿入および粘着が完了する。
【0033】
このようにして作製された中間シート体20から孔のあいた剥離シート17を剥がし、可動接点9の中央部を操作力集中部材13と重なる位置で粘着層10bに付着させると、可動接点付きシート15が完成する。
【0034】
本実施形態に係るプッシュスイッチ1および可動接点付きシート15によれば次の効果を得られる。
【0035】
本実施形態に係るプッシュスイッチ1および可動接点付きシート15では、位置決め用突出部11の形成、および、位置決め用突出部11への操作力集中部材13の挿入および粘着は、操作力集中部材13になる剥離シート17の部分ごと可撓性シート10を剥離シート17から離れる方向にポンチ18により押し出しダイ19に押し付けて塑性変形させることによって実現されている。これにより、位置決め用突出部11への操作力集中部材13の位置決め精度を向上させることができ、かつ、プレス成形機(ポンチ18)に粘着層付き可撓性シート10の粘着剤が付着しにくくすることができる。この結果、適切な操作感触のプッシュスイッチ1が製造しやすくなり、かつ、プレス成形機(ポンチ18)から粘着剤を取り除く清掃作業の手間が少なくなる。
【0036】
本実施形態に係るプッシュスイッチ1および可動接点付きシート15では、操作力集中部材13の形成のためのポンチ18による剥離シート17の打ち抜きと並行して、位置決め用突出部11の形成、位置決め用突出部11への操作力集中部材13の挿入および粘着を行うので、操作力集中部材13の形成、位置決め用突出部11の形成、位置決め用突出部11への操作力集中部材13の挿入および粘着を別の工程で行わずに済む。これにより、プッシュスイッチ1の製造作業の効率を向上させることができる。
【0037】
本実施形態に係るプッシュスイッチ1および可動接点付きシート15では、操作力集中部材13の端面および周側面が位置決め用突出部11の内面に粘着されている。操作力集中部材13の端面は、元は剥離シート17の一部であり、粘着層10bを残した状態で可撓性シート10から剥離可能に加工された面なので、位置決め用突出部11の内面との結合力は弱いが、操作力集中部材13の周側面はそのような加工を施されていない切断面であり、端面よりも強力に粘着層10bに粘着されるので、位置決め用突出部11への固定を確実にすることができる。
【0038】
なお、前述の実施形態に係るプッシュスイッチ1および可動接点付きシート15では、可動接点9がドーム状であるが、本発明における可動接点は、その中央部が固定接点に対向していて押圧操作により弾性変形して固定接点に接触するものであればよく、ドーム状に限定されるものではない。
【0039】
前述の実施形態に係るプッシュスイッチ1および可動接点付きシート15は、位置決め用突出部11および操作力集中部材13の上面視形状が円形であってが、本発明における位置決め用突出部および操作力集中部材の形状は円形に限定されるものではなく、図7,8に示すものであってもよい。図7,8はそれぞれ、位置決め用突出部および操作力集中部材の別の例を示し、(a)は図5(a)に対応する断面図であり、(b)は図5(b)に対応する上面図である。これら図7,8に示すように、位置決め用突出部11および操作力集中部材は、正方形や正6角形等の正多角形であってもよし、図示しないが、ひし形、長方形、楕円形であってもよい。
【0040】
前述の実施形態に係るプッシュスイッチ1および可動接点付きシート15では、操作力集中部材13の端面および周側面が位置決め用突出部11の内面に粘着されていたが、本発明において位置決め用突出部に対する操作力集中部材の粘着個所は端面および周側面の両方に限定されず、少なくとも操作力集中部材の周側面が位置決め用突出部の内面に粘着されていればよい。また、位置決め用突出部は、少なくとも操作力集中部材の周側面に対向する面を有していればよく、したがって筒状であってもよい。
【0041】
<2> プッシュスイッチユニットに採用される本発明の可動接点付きシートの実施形態について図9〜12を用いて説明する。
【0042】
図9は本発明の実施形態に係る可動接点付きシートを備えたプッシュスイッチユニットの上面図である。図10は図9のX−X断面図である。図11は図9に示したプッシュスイッチの拡大図である。図12は本発明の実施形態に係る可動接点付きシートの図10に対応する断面図である。
【0043】
図9に示すように、プッシュスイッチユニット100は、ベース部材としての合成樹脂製の基板102を備えている。この基板102の一方の面には、固定接点103および環状のコモン接点104の組が複数(図9では12個)並んで設けられている。固定接点103およびコモン接点104はそれぞれ図示しない端子と連続しているものである。
【0044】
基板102の一方の面側には、ドーム状の複数の可動接点109が、固定接点103およびコモン接点104に対応して並べられている。各可動接点109は、その凹曲面側を基板102に向けた状態で基板102と重なっている。可動接点109の中央部は、固定接点103に対向している。可動接点109の縁部はコモン接点104に接触している。可動接点109は、基板102の方向への押圧操作により弾性変形して、すなわち復元可能に座屈して固定接点103に接触するようになっている。
【0045】
複数の可動接点109はすべて、粘着層付き可撓性シート110に粘着されている。この可撓性シート110は、耐熱性の合成樹脂、例えばポリイミド製の本体シート110aに粘着層110bを設けてなる。可撓性シート110は、基板102に粘着により固定されている。これにより、複数の可動接点109はそれぞれ、その中央部が複数の固定接点103のそれぞれに対向した状態に保持されている。
【0046】
可動接点109の中央部を挟んで固定接点103に対向する位置には、可動接点109に付与される押圧操作時の操作力を可動接点109の中央部に集中させるための操作力集中部材113が配置されている。
【0047】
可撓性シート110の可動接点109の中央部に重なる個所には、中空の位置決め用突出部111がプレス成形により形成されている。この位置決め用突出部111には操作力集中部材113が挿入されている。つまり、操作力集中部材113は位置決め用突出部111によって可動接点109の中央部と重なる位置に位置決めされている。位置決め用突出部111および操作力集中部材113の上面視形状は楕円形であり、位置決め用突出部111の突端側の操作力集中部材113の端面および周側面は粘着層110bにより位置決め用突出部11の内面に粘着されている。
【0048】
ここまでで説明したプッシュスイッチユニット100の構成から分かるように、プッシュスイッチユニット100は、基板102、固定接点103、コモン接点104、可動接点109、可撓性シート110、操作力集中部材113を備えた図11に示すプッシュスイッチ101が複数一体化されたものである。
【0049】
プッシュスイッチユニット100の作製に際しては、複数の可動接点109、可撓性シート110および複数の操作力集中部材113をまとめて一部品として扱うために、図12に示す可動接点付きシート115が用いられる。この可動接点付きシート115は、複数の可動接点109、可撓性シート110、複数の操作力集中部材113を備えている。この可動接点付きシート115において、可動接点109は、その中央部が位置決め用突出部111と重なる位置で可撓性シート110に粘着されている。操作力集中部材113は可撓性シート110の位置決め用突出部111に挿入された状態で位置決め用突出部111が粘着されている。つまり、可動接点付きシート115はプッシュスイッチユニット100から基板102およびすべての固定接点103を取り除いた状態のものである。
【0050】
なお、操作力集中部材113の形成、位置決め用突出部111の形成、位置決め用突出部111への操作力集中部材113の挿入および粘着は、「<1>」で説明した実施形態の場合と同様にして実現されているので、その説明および図示を省略する。
【0051】
本実施形態に係る可動接点付きシート115によれば、「<1>」で説明した可動接点付きシート15の場合と同様に、次の効果が得られる。
【0052】
本実施形態に係る可動接点付きシート115では、位置決め用突出部111の形成、および、位置決め用突出部111への操作力集中部材113の挿入および粘着は、操作力集中部材113になる剥離シートの部分ごと可撓性シート110を剥離シートから離れる方向にポンチにより押し出しダイに押し付けて塑性変形させることによって実現されている。これにより、位置決め用突出部111への操作力集中部材113の位置決め精度を向上させることができ、かつ、プレス成形機(ポンチ)に粘着層付き可撓性シート110の粘着剤が付着しにくくすることができる。この結果、適切な操作感触のプッシュスイッチユニット100が製造しやすくなり、かつ、プレス成形機(ポンチ)から粘着剤を取り除く清掃作業の手間が少なくなる。
【0053】
本実施形態に係る可動接点付きシート115では、操作力集中部材113の形成のためのポンチによる剥離シートの打ち抜きと並行して、位置決め用突出部111の形成、位置決め用突出部111への操作力集中部材113の挿入および粘着を行うので、操作力集中部材113の形成、位置決め用突出部111の形成、位置決め用突出部111への操作力集中部材113の挿入および粘着を別の工程で行わずに済む。これにより、プッシュスイッチユニット100の製造作業の効率を向上させることができる。
【0054】
本実施形態に係る可動接点付きシート115では、操作力集中部材113の周側面が位置決め用突出部111の内周面に粘着されているので、操作力集中部材113の位置決め用突出部11への固定を確実にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施形態に係るプッシュスイッチの斜視図である。
【図2】図1に示したプッシュスイッチの分解斜視図である。
【図3】図1に示したプッシュスイッチの上面図を簡略化した図である。
【図4】図3のIV−IV断面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る可動接点付きシートを示し、(a)は図4に対応する断面図であり、(b)は位置決め用突出部の上面図である。
【図6】図5に示す位置決め用突出部および操作力集中部材を可撓性シートに設ける手順を示す図である。
【図7】図5に示した位置決め用突出部および操作力集中部材の形状の別の例を示し、(a)は図5(a)に対応する断面図であり、(b)は図5(b)に対応する上面図である。
【図8】図5に示した位置決め用突出部および操作力集中部の形状の別の例を示し、(a)は図5(a)に対応する断面図であり、(b)は図5(b)に対応する上面図である。
【図9】本発明の実施形態に係る可動接点付きシートを備えたプッシュスイッチユニットの上面図である。
【図10】図9のX−X断面図である。
【図11】図9に示したプッシュスイッチの拡大図である。
【図12】本発明の実施形態に係る可動接点付きシートの図10に対応する断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 プッシュスイッチ
2 ハウジング
2a 底板
2b 側壁
3 固定接点
4A,4B コモン接点
5〜8 端子
9 可動接点
10 可撓性シート
10a シート本体
10b 粘着層
11 位置決め用突出部
13 操作力集中部材
15 可動接点付きシート
16 シート体
17 剥離シート
18 ポンチ
19 ダイ
20 中間シート体

100 プッシュスイッチユニット
101 プッシュスイッチ
102 基板
103 固定接点
104 コモン接点
109 可動接点
110 可撓性シート
110a シート本体
110b 粘着層
111 位置決め用突出部
113 操作力集中部材
115 可動接点付きシート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベース部材と、前記ベース部材に設けられている固定接点と、中央部が前記固定接点に対向していて押圧操作により弾性変形して前記固定接点に接触する可動接点と、前記ベース部材に粘着により固定されているとともに前記可動接点を粘着により保持している粘着層付き可撓性シートと、前記可動接点の中央部に重なる前記可撓性シートの個所には、中空の位置決め用突出部が形成されていて、押圧操作時に前記可動接点に付与される操作力を前記可動接点の中央部に集中させるための操作力集中部材が、前記位置決め用突出部に挿入されて位置決めされているプッシュスイッチであって、
前記操作力集中部材は、前記可撓性シートに剥離可能に粘着された剥離シートを素材として、前記可撓性シート側とは反対側の面からポンチにより打ち抜くことによって形成された断片からなり、
前記位置決め用突出部の形成、および、前記位置決め用突出部への前記操作力集中部材の挿入は、前記操作力集中部材の形成のための前記ポンチによる前記剥離シートの打ち抜きと並行して、前記操作力集中部材になる前記剥離シートの部分ごと前記可撓性シートを前記剥離シートから離れる方向に前記ポンチにより押し出して塑性変形させることによって実現されていることを特徴とするプッシュスイッチ。
【請求項2】
ベース部材と、前記ベース部材に設けられている固定接点と、中央部が前記固定接点に対向していて押圧操作により弾性変形して前記固定接点に接触する可動接点と、前記ベース部材に粘着により固定されているとともに前記可動接点を粘着により保持している粘着層付き可撓性シートと、前記可動接点の中央部に重なる前記可撓性シートの個所には、中空の位置決め用突出部が形成されていて、押圧操作時に前記可動接点に付与される操作力を前記可動接点の中央部に集中させるための操作力集中部材が、前記位置決め用突出部に挿入されて位置決めされているプッシュスイッチに採用される可動接点付きシートであって、
前記可動接点、前記可撓性シート、前記操作力集中部材を備えていて、
前記可動接点は、その中央部が前記位置決め用突出部と重なる位置で前記可撓性シートに粘着されていて、
前記操作力集中部材は、前記可撓性シートに剥離可能に粘着された剥離シートを素材として、前記可撓性シート側とは反対側の面からポンチにより打ち抜くことによって形成された断片からなり、前記位置決め用突出部に挿入されていて、
前記位置決め用突出部の形成、および、前記位置決め用突出部への前記操作力集中部材の挿入は、前記操作力集中部材の形成のための前記ポンチによる前記剥離シートの打ち抜きと並行して、前記操作力集中部材になる前記剥離シートの部分ごと前記可撓性シートを前記剥離シートから離れる方向に前記ポンチにより押し出して塑性変形させることによって実現されていることを特徴とする可動接点付きシート。
【請求項3】
請求項2に記載の発明において、
前記剥離シートが、耐熱性材料からなることを特徴とする可動接点付きシート。
【請求項4】
ベース部材と、前記ベース部材に設けられている複数の固定接点と、前記固定接点に中央部が対向していて押圧操作により弾性変形して前記固定接点に接触する複数の可動接点と、前記ベース部材に粘着により固定されているとともに前記複数の可動接点を粘着により保持している粘着層付き可撓性シートと、前記可動接点のそれぞれの中央部に重なる前記粘着層を有する可撓性シートの複数個所には、中空の位置決め用突出部が形成されていて、押圧操作時に前記可動接点に付与される操作力を前記可動接点の中央部に集中させるための複数の操作力集中部材がそれぞれ、前記複数の位置決め用突出部のそれぞれに挿入されて位置決めされているプッシュスイッチユニットに採用される可動接点付きシートにおいて、
前記複数の可動接点、前記可撓性シート、前記複数の操作力集中部材を備えていて、
前記複数の可動接点のそれぞれは、その中央部が前記複数の位置決め用突出部のそれぞれと重なる位置で前記可撓性シートに粘着されていて、
前記複数の操作力集中部材のそれぞれは、前記可撓性シートに剥離可能に粘着された剥離シートを素材として、前記可撓性シート側とは反対側の面からポンチにより打ち抜くことによって形成された断片からなり、前記複数の位置決め用突出部のそれぞれに挿入されていて、
前記位置決め用突出部の形成、および、前記位置決め用突出部への前記操作力集中部材の挿入は、前記操作力集中部材の形成のための前記ポンチによる前記剥離シートの打ち抜きと並行して、前記操作力集中部材になる前記剥離シートの部分ごと前記可撓性シートを前記剥離シートから離れる方向に前記ポンチにより押し出して塑性変形させることによって実現されている
ことを特徴とする可動接点付きシート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2009−140711(P2009−140711A)
【公開日】平成21年6月25日(2009.6.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−314970(P2007−314970)
【出願日】平成19年12月5日(2007.12.5)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】