説明

プッシュプル型換気装置

【課題】プルフードの裏側面に排気口が有っても、作業スペース上の有害ガスを拡散させずに外部に排出し、且つ設置も移動も容易なであるプッシュプル型換気装置を提供する。
【解決手段】層流2を供給する上部プッシュフード3と、これの下方に位置しその表面7aを作業スペース4にすると共に表面7aに吸込口5を設け且つ裏側面7bに排気口6を設けた下部プルフード7と、この下部プルフード7と上部プッシュフード3との間に介在して上部プッシュフード3を支持する壁面支持体8と、からなり、下部プルフード7の表面7aの吸込口5と裏側面7bの排気口6との間に仕切り体9を介在させ、作業スペース4から垂下した位置の仕切り体9に通気開口10を設け、且つ作業スペース4の周端部4Aと通気開口10の周端部10Aとの最短距離(L)を同一にして通気抵抗を平均化し、吸込口5周辺の吸込風速を均一且つ設定速度以上にすることで、上記課題を達成できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、供給した層流及び吸込口近辺における有害ガスの拡散速度以上の吸込風速により、人がいる作業スペースにて生じた有害ガスを、周囲に拡散させずにそのまま吸い込んで、外部に排除するためのプッシュプル型換気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人が現に作業したり、監視している作業スペースで有害ガスが発生している場合、人がその有害ガスを吸い込んだりすることなく、外部に換気あるいは排除して、人の安全を図らなければならない。通常行われているのは、作業スペースを囲い、換気扇を回して有害ガスを外部に換気し、人はその囲いの中に手指を延ばして作業を行う方法である。しかしながら、この方法では、作業スペースを広く取ることが出来ず、囲いにより作業もやりづらくなる。そこで、作業スペースの囲いを少なくし、オープン状態で作業が出来、しかも人が有害ガスを吸い込んだりすることなく、作業スペースから外部に換気することができる
、いわゆるプッシュプル型換気装置とよばれるものがある。
【0003】
このプッシュプル型換気装置は、図11に示すように、その表面の中央に遮断面を形成して作業面56としその周辺を吸込面57とした平板状のプルフード50と、その対向する上部に配した一様流を吹き出すプッシュフード51とを、吸引機構であるファン52を内蔵した支持部材53を介して連結し、プルフード50の平らな表面に配した吸込面57から吸い込まれた気流をプッシュフード51に循環させることなく装置外に排気するように構成すると共に、前面部54及び両側面部55を開放状態にしてなり、プルフード50面上の作業物から発生する有害ガスをプッシュフード51から吹き出されるプルフード50面に当たっても反射することのない微風速の一様下降流によって外部へ発散することなくプルフード50に搬送する、作業テーブルを兼ねたものである(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そして、図12に示すように、平板状のプルフード50の作業面56上の有害ガスを、拡散させずに作業面56の周辺にある吸込面57から吸い込むには、それ相応の風速を確保しなければならないから、プルフード50にその吸込面57から吸い込まれた気流をファン52に向ける気流ガイド58を内蔵している。この気流ガイド58は、支持部材53の排気口59に向けて配設されることで、作業面56の周辺の吸込面57でそれ相応の風速を確保し、作業面56上の有害ガスを拡散させずに、吸込面57から吸い込むことができるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】 特許第4551984号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1のプッシュプル型換気装置は、支持部材53にファン52を内蔵した構造であるため、この支持部材53と平板状のプルフード50との接続部位に位置する支持部材53の排気口59を幅広に形成することが可能であるから、プルフード50がその表面の吸込面57から吸い込まれた気流をファン52に向ける気流ガイド58を内蔵することで、上記した「それ相応の風速」を確保することが出来る。しかしながら、このプッシュプル型換気装置では、プルフード50の表面以外の裏側面61にファン52につながる排気口を設けたような場合に、上記のようなファン52に向ける気流ガイド58では対応することが出来ないことになる。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、プルフードの表面以外の裏側面にファンにつながる排気口を設けたような場合でも、プルフード上での作業中に発生した粉塵や有害ガスなどを、拡散させずにスムーズに吸い込んで外部に排出でき、且つ、簡易な設置ができ移動も容易である換気装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記課題を達成するために提案されたものであって、下記の構成からなることを特徴とするものである。
すなわち、請求項1記載の発明は、層流を供給する上部プッシュフードと、該上部プッシュフードの下方に位置しその表面を作業スペースにすると共にその表面に吸込口を設け且つ表面以外の裏側面に排気口を設けた下部プルフードと、を備えてなり、前記下部プルフードの表面の前記吸込口と裏側面の前記排気口との間に仕切り体を介在させ、前記下部プルフードの作業スペースから垂下した位置の前記仕切り体に通気開口を設け、且つ前記作業スペースの周端部と前記通気開口の周端部との最短距離(L)を同一にして通気抵抗を平均化し、前記下部プルフードの前記吸込口周辺における吸込風速を均一且つ設定速度以上に保持するようにしたことを特徴とするプッシュプル型換気装置である。
【0009】
また、請求項2記載の発明は、層流を供給する上部プッシュフードと、該上部プッシュフードの下方に位置しその表面を作業スペースにすると共にその表面に吸込口を設け且つ表面以外の裏側面に排気口を設けた下部プルフードと、を備えてなり、前記下部プルフードの表面の前記吸込口と裏側面の前記排気口との間に仕切り体を介在させ、前記下部プルフードの作業スペースから垂下した位置に当たる前記仕切り体の面部に通気開口を設け、且つ前記吸込口の外周端部と前記通気開口の周端部との最短距離(LO)が同一より長くなる部位が発生する場合、その長さ発生部位に直面する前記仕切り体の側面部に補助通気開口を設けて通気抵抗を平均化し、前記下部プルフードの前記吸込口周辺における吸込風速を均一且つ設定速度以上に保持するようにしたことを特徴とするプッシュプル型換気装置である。
【0010】
上記第1の課題解決手段による作用は次の通りである。すなわち、上部プッシュフードから層流を、下部プルフードの作業スペースに向けて垂下させ、さらに、排気口からエアーを排気すると、上記層流により作業スペース上の作業物から発生する有害ガスを、そのまま表面に設けた吸込口に導き、この吸込口から層流と共に有害ガスを下部プルフード内に吸い込む。その際、有害ガスを含有する層流は、一旦、吸込口と裏側面の排気口との間に介在する仕切り体内に入り、この仕切り体の通気開口を通って、下部プルフードの裏側面に設けられた排気口から排気されるが、作業スペースの周端部と通気開口の周端部との最短距離(L)を同一にしてその通気抵抗を平均化してあるから、下部プルフードの吸込口周辺における吸込風速を均一且つ設定速度以上に保持して、有害ガスを拡散させることがない。
【0011】
上記第2の課題解決手段による作用は、上部プッシュフードから層流を、下部プルフードの作業スペースに向けて垂下させ、さらに、排気口からエアーを排気すると、上記層流により作業スペース上の作業物から発生する有害ガスを、そのまま表面に設けた吸込口に導き、この吸込口から層流と共に有害ガスを下部プルフード内に吸い込む。その際、有害ガスを含有する層流は、一旦、吸込口と裏側面の排気口との間に介在する仕切り体内に入り、この仕切り体の通気開口及び補助通気開口を通って、下部プルフードの裏側面に設けられた排気口から排気されるが、吸込口の外周端部と通気開口の周端部との最短距離(LO)が同一より長い部位があっても、その長さ発生部位に直面する仕切り体の面部に設けてある補助通気開口により、通気抵抗を平均化してあるから、下部プルフードの吸込口周辺における吸込風速を均一且つ設定速度以上に保持して、有害ガスを拡散させることがない。
【発明の効果】
【0012】
以上詳述したように、本発明によれば、以下のような効果がある。
請求項1記載の発明は、下部プルフードの表面以外の裏側面にファンにつながる排気口を設けたような場合でも、下部プルフード上での作業中に発生した粉塵や有害ガスなどを、拡散させずに下部プルフード内にスムーズに吸い込んで外部に排出でき、且つ、簡易な設置ができ移動も容易にできる効果がある。
【0013】
また、請求項2記載の発明は、吸込口の外周端部と通気開口の周端部との最短距離(LO)が同一より長い部位があっても、上記した効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施の形態を示すプッシュプル型換気装置の斜視図(実施例1)である。
【図2】本発明のプッシュプル型換気装置の一部を断面した側面図(実施例1)である。
【図3】本発明のプッシュプル型換気装置における下部プルフードの分解斜視図(実施例1)である。
【図4】本発明の下部プルフードにおける仕切り体の斜視図(実施例1)である。
【図5】本発明の下部プルフードの作業スペースの周端部と通気開口の周端部との最短距離(L)を示す平面図(実施例1)である。
【図6】本発明の下部プルフードの吸込口の外周端部と通気開口の周端部との最短距離(LO)を示す平面図(実施例2)である。
【図7】本発明の下部プルフードにおける他の仕切り体の斜視図(実施例1)である。
【図8】本発明の優位性を検証する実験用プッシュプル型換気装置の正面の模式図である。
【図9】実験用プッシュプル型換気装置の下部プルフードの模式図である。
【図10】実験用プッシュプル型換気装置の側面の模式図である。
【図11】従来例を示す斜視図である。
【図12】従来例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
【実施例1】
【0016】
図1ないし図4において、プッシュプル型換気装置1は、層流2を供給する上部プッシュフード3と、この上部プッシュフード3の下方に位置しその表面7aを作業スペース4にすると共にその表面7aに吸込口5を設け且つ表面7a以外の裏側面7bに排気口6を設けた下部プルフード7と、を備えてなるが、この実施例では、下部プルフード7と上部プッシュフード3との間に介在して上部プッシュフード3を支持する壁面支持体8を有している場合について、説明する。そして、このプッシュプル型換気装置1では、下部プルフード7の表面7aの吸込口5と裏側面7bの排気口6との間に仕切り体9を介在させ、下部プルフード7の作業スペース4から垂下した位置の仕切り体9に通気開口10を設け、且つ作業スペース4の周端部4Aと通気開口10の周端部10Aとの最短距離(L)を同一にして通気抵抗を平均化し、下部プルフード7の吸込口5周辺における吸込風速を均一且つ設定速度以上にしたものである。これにより、上部プッシュフード3から垂下する層流2により、下部プルフード7の作業スペース4上に漂う有害ガスを、そのまま吸込口5に導き、均一且つ設定速度以上、すなわち、有害ガスの拡散速度より大にした吸込風速によって、有害ガスを拡散させることなく、吸込口5から下部プルフード7内に吸い込むようにしたものである。
【0017】
前記上部プッシュフード3は、層流2を供給できれば特に限定がないが、層流2を供給するものであるから、少なくとも層流発生機構20が内蔵され、加えてこの層流発生機構20に送風するための送風機21が必要になる。この送風機21は、必ずしも上部プッシュフード3に内蔵する必要はなく、他から必要とする風量及び風圧が得られるエアー源があれば、このエアー源に流入口22を接続すればよい。この層流発生機構20は、所定の開孔率を有するパンチング板を波形に形成してなる波形パンチング板23及びこれの下流に配置した100±20メッシュの網材及び格子状ルーバーを少なくとも有する。
【0018】
そして、この実施例1において、上部プッシュフード3は、上記の層流発生機構20と、この層流発生機構20の流入口22側に配置した2台の送風機21と、これらの送風機21及び層流発生機構20を収納すると共に外部からエアーを受け入れる2つの流入口22及び発生した層流2を送出する多数の小孔群からなる吹出口24を有する機体25と、からなり、波形パンチング板23の波形壁により送風機21からの気流の偏流を緩衝し、且つ、波形パンチング板23の所定の開孔率で生じる抵抗によって粗く気流の均一化を図り、上記の網材及び格子状ルーバーによりさらに質の高い層流2して、吹出口24の多数の小孔群から層流2を送出するものである。
【0019】
前記層流発生機構20の波形パンチング板23は、開孔率20%乃至40%の範囲のものが使用される。なお、この実施例の波形パンチング板23では、小孔の孔径は3mmであり、小孔の中心からの各小孔へのピッチは5mm(φ3×p5)であって、因みにこの時の波形パンチング板23の開孔率は33%である。そして、この波形パンチング板23は、この実施例では波状というようりもノコギリ歯状に折り返され、ノコギリ歯の山同士のピッチは20mmである波形パンチング板23とされる。この波形パンチング板23により、その波形壁により偏流している旋回気流を分断是正し、且つ波形壁にある無数の小孔を通る際の抵抗により、風速分布を均一化へと粗く整えることが出来るのである。
【0020】
前記網材は、100±20メッシュの範囲のものが採用され、通常、ステンレス材の金網であるが、その他の材質のものでも良い。そして、この網材によりさらに質の高い均一の気流を実現する。一方、前記格子状ルーバーは、網材により得られた質の高い均一の気流に、さらに一定の方向性を付与するものである。
【0021】
前記機体25は、全体として直方体をなし、既述のとおり、その上面に2つの流入口22があり2台の送風機21が内蔵され、その下面に多数の小孔群である吹出口24が設けられて、これから発生した層流2を送出している。
【0022】
前記下部プルフード7は、図3に示すように、全体として直方体をなした箱体であり、この実施例1では、その表面7aを、断面形状が逆台形となるように窪ませ、その窪み部30の周縁の傾斜部31に多数の小孔群である前記吸込口5を設け、且つ表面7aの中央にある平面部を前記作業スペース4にして、この表面7aは裏側面7bからなる箱体32上に離着座できるようにしている。そして、下部プルフード7の表面7aの吸込口5と、この実施例では裏側面7bに設けた排気口6との間に、仕切り体9を、裏側面7b及び排気口6から離し通気できる状態で介在させている。
【0023】
この仕切り体9は、トレー状をなし、表面7aの作業スペース4から垂下した位置に、作業スペース4とほぼ相似形の前記通気開口10を設けて、且つ、作業スペース4の周端部4Aと通気開口10の周端部10Aとの最短距離(L)を同一にして、すなわち、図5に示すL1=L2=L3=L4にして、吸込口5から通気開口10に到るまでの通気抵抗を平均化し、下部プルフード7の吸込口5周辺における吸込風速を均一になるようにしている。そして、この吸込風速は予め定めた設定速度以上、すなわち、有害ガスの拡散速度より大にしてやればよい。なお、この通気開口10は、吸込口5の場合と同様に多数の小孔群で形成されている。
【0024】
したがって、下部プルフード7の裏側面7bに設けられた排気口6に、排気ファンなどの排気源にダクトで接続して排気を行えば、作業スペース4の周端部4Aを囲繞している吸込口5からエアーを吸い込むことになるが、その際、作業スペース4の周端部4Aと通気開口10の周端部10Aとの最短距離(L)が同一であるため、その通気抵抗も平均化して吸込口5からの吸込風速も均一となり、さらに、この吸込風速を有害ガスの拡散速度より大になるように排気源の風量を設定してやれば、上部プッシュフード3からの層流2により吸込口5に連ばれた作業スペース4上に漂う有害ガスは、拡散することなく吸込口5から下部プルフード7内に導入され、排気口6からダクトにより外部に排気される。
【0025】
なお、前記作業スペース4では、実際に作業をする際、作業用板33を敷いて行うの通例である。この作業スペース4は、下部プルフード7の窪み部30の中央の平面部であり、その周囲を傾斜部31により囲われているので、作業用板33が平面部である作業スペース4からずれて傾斜部31に乗り上げづらくなり、仮に乗り上げた場合でも作業がしづらいので、作業者はすぐに修正を図ることになって、傾斜部31に設けた吸込口5を作業用板33により塞ぐこともない。したがって、下部プルフード7の表面7aを窪ませて窪み部30を形成して、平面部を作業スペース4とし、傾斜部31に吸込口5を設けることによって、作業性がより優れたものになり、且つ傾斜部31の吸込口5を作業用板33が塞いだりしないで、より安定して作業スペース4上を漂う有害ガスを排除することができるのである。
【0026】
また、下部プルフード7の窪み部30の中央にある作業スペース4の深さは、10mmないし20mmの範囲にある。そして、作業スペース4上に敷く作業用板33の厚みも10mmないし20mmの範囲にあるから、作業スペース4上に作業用板33を敷いてもほぼ同じ高さになって、作業者の肘の位置が低くならず作業し易くなり、さらに、傾斜部31の吸込口5に有害ガスをスルーさせることなく導いて、下部プルフード7内に吸い込むことができ、より確実に有害ガスを排除することができる。
【0027】
前記壁面支持体8は、溝型鋼形状をなし、既述のとおり、前記下部プルフード7と前記上部プッシュフード3との間に介在して上部プッシュフード3を支持するものである。この壁面支持体8は、非溝面8a側を上部プッシュフード3と下部プルフード7との間に介在した壁面としている。
【実施例2】
【0028】
図6、7は、本発明のプッシュプル型換気装置における下部プルフードの仕切り体の他の実施形態を示すものであり、この仕切り体9Aと図1ないし図4に示す仕切り体9との相違点は、吸込口5の外周端部5Aと通気開口10の周端部10Aとの最短距離(LO)が同一より長くなる部位が発生する場合、例えば、図6のLO1<LO2であるとき、その長さ発生部位に直面する仕切り体9Aの側面部に、例えば、図7に示す仕切り体9Aの側面部に複数の補助通気開口34を設けて通気抵抗を平均化し、下部プルフード7の吸込口5周辺における吸込風速を均一且つ設定速度以上にした点にある。これにより、吸込口5の外周端部5Aと通気開口10の周端部10Aとの最短距離が同一より長い部位があっても、補助通気開口34により、通気抵抗を平均化でき、下部プルフード7の吸込口5周辺における吸込風速を均一且つ設定速度以上に保持して、有害ガスを拡散させることがない。
【0029】
次に、本発明のプッシュプル型換気装置の優位性を検証したので、その状況を説明する。
図8ないし10は本発明の実施例2を適用した実験用のプッシュプル型換気装置の模式図であり、この実験装置を使用して下記の条件で測定する。まず、試験室内を充分換気し、図8ないし10の実験用のプッシュプル型換気装置を設置する。有害ガスとして、3.04重量%アセトアルデヒド標準ガス(住友精化株式会社製、N2バランス)を使用し、流量1L/分とした。アセトアルデヒドのガスボンベからシリコンホースにて各実験ポイントに標準ガスを導き発生させた。各実験ポイントは図8、9に示すように作業スペースの中心Aでそれぞれ作業スペース上をA−0とし、A−0から垂直に200mm上方をA−200、同様に600mm上方をA−600、さらに、1200mm上方をA−1200とした。さらに、作業スペースと吸込口との境界上をB−0とした。
【0030】
上記した各実験ポイントにおいて、アセトアルデヒドを発生させ、その発生から5分間経過後から、すなわち、6分〜15分まで、1分ごとに下部プルフードに繋げた排気ダクト内のアセトアルデヒド濃度の測定を行った。アセトアルデヒド濃度は光音響ガスモニタ(INNOVA社製、1312−1)により測定した。なお、各実験ポイントにおいて測定した結果より、最大値と最小値とを除いた8回分の平均値を測定結果とした。
【0031】
図8ないし10による本発明の実験の対照例として、下部プルフード内に仕切り体を全く設けないものとし、それ以外は図8ないし10による本発明の実験例と同様の条件にてアセトアルデヒド濃度の測定を行った。以上の測定結果を表1に示す。
【表1】

【0032】
表1の測定結果から、本発明は、いずれの実験ポイントにおいても対照例より優れ、有害ガスたるアセトアルデヒドの拡散を有効に阻止していることを、検証できたと言える。
【0033】
次に、上記構成になるプッシュプル型換気装置1の作動状況を詳述する。
まず、電源をオンすると、上部プッシュフード3の2台の送風機21が作動し、2つの流入口23からエアーが入り、層流発生機構20の波形パンチング板23、網材、格子状ルーバーをエアーが通過する過程で、一様で微風速の質の高い層流2が形成される。この層流2は吹出口24から送出されて、作業スペース4上に敷いた作業用板33上の作業物から発生し漂っている有害ガスは、層流2により下方に押され、吸込口5に導かれて、そのまま層流2と共に吸い込まれ下部プルフード7内に入り、有害ガスを含有する層流2は、一旦、吸込口5の排気口6との間に介在する仕切り体9内に入り、この仕切り体9の通気開口10を通って、下部プルフード7の裏側面7bに設けられた排気口6からダクトにより排気される。その際、作業スペース4の周端部4Aと通気開口10の周端部10Aとの最短距離(L)を同一にして通気抵抗を平均化してあるから、下部プルフード7の吸込口5周辺における吸込風速を均一、且つ設定速度以上、すなわち、有害ガスの拡散速度以上に保持しているから、有害ガスを拡散させることはない。
【0034】
なお、図6に示すように、プッシュプル型換気装置1が、その吸込口5の外周端部5Aと通気開口10の周端部10Aとの最短距離(LO)が同一より長くなる部位(LO1<LO2)が発生する場合でも、その長さ発生部位に直面する仕切り体9Aの側面部に設けてある補助通気開口34により、通気抵抗を平均化でき、下部プルフード7の吸込口5周辺における吸込風速を均一且つ設定速度以上に保持するから、有害ガスを拡散させることはない。
【0035】
以上、本発明の実施例1、2を説明したが、具体的な構成はこれに限定されず、例えば壁面支持体がなく、建造物の天井や床、あるいは壁などを利用して設置してもよく、本発明の要旨を逸脱しない範囲での変更・追加、各請求項における他の組み合わせにかかるものも、適宜可能であることが理解されるべきである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明のプッシュプル型換気装置は、下部プルフードに吸引機構につながる排気口を直接設けたような場合でも、下部プルフード上での作業中に発生した粉塵や有害ガスなどを、拡散させずにスムーズに吸い込んで外部に排出でき、且つ、簡易な設置ができ移動も容易にしたいような場合に、利用可能性が極めて高くなる。
【符号の説明】
【0037】
1 プッシュプル型換気装置
2 層流
3 上部プッシュフード
4 作業スペース
4A 周端部
5 吸込口
5A 外周端部
6、59 排気口
7 下部プルフード
7a 表面
7b、61 裏側面
8 壁面支持体
8a 非溝面
9、9A 仕切り体
10 通気開口
10A 周端部
20 層流発生機構
21 送風機
22 流入口
23 波形パンチング板
24 吹出口
25 機体
30 窪み部
31 傾斜部
32 箱体
33、60 作業用板
34 補助通気開口
50 平板状のプルフード
51 プッシュフード
52 ファン
53 支持部材
54 前面部
55 側面部
56 遮断面
57 吸込面
58 気流ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
層流を供給する上部プッシュフードと、該上部プッシュフードの下方に位置しその表面を作業スペースにすると共にその表面に吸込口を設け且つ表面以外の裏側面に排気口を設けた下部プルフードと、を備えてなり、前記下部プルフードの表面の前記吸込口と裏側面の前記排気口との間に仕切り体を介在させ、前記下部プルフードの作業スペースから垂下した位置に当たる前記仕切り体の面部に通気開口を設け、且つ前記作業スペースの周端部と前記通気開口の周端部との最短距離(L)を同一にして通気抵抗を平均化し、前記下部プルフードの前記吸込口周辺における吸込風速を均一且つ設定速度以上に保持するようにしたことを特徴とするプッシュプル型換気装置。
【請求項2】
層流を供給する上部プッシュフードと、該上部プッシュフードの下方に位置しその表面を作業スペースにすると共にその表面に吸込口を設け且つ表面以外の裏側面に排気口を設けた下部プルフードと、を備えてなり、前記下部プルフードの表面の前記吸込口と裏側面の前記排気口との間に仕切り体を介在させ、前記下部プルフードの作業スペースから垂下した位置に当たる前記仕切り体の面部に通気開口を設け、且つ前記吸込口の外周端部と前記通気開口の周端部との最短距離(LO)が同一より長くなる部位が発生する場合、その長さ発生部位に直面する前記仕切り体の側面部に補助通気開口を設けて通気抵抗を平均化し、前記下部プルフードの前記吸込口周辺における吸込風速を均一且つ設定速度以上に保持するようにしたことを特徴とするプッシュプル型換気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−24550(P2013−24550A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−173392(P2011−173392)
【出願日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【出願人】(000228028)株式会社トルネックス (25)