説明

プッシュロックスイッチ

【課題】 プッシュロックスイッチにおいて、ロック機構を小型化することなく、操作ノブの操作ストロークを小さくする。
【解決手段】 一端部30aが軸31により枢支された遠隔アーム30の他端部30b側にロック機構35を設けると共に、その遠隔アーム30の長手方向の中間部に操作ノブ24を軸34を介して連結し、操作ノブ24の操作に伴い遠隔アーム30が揺動される構成とする。操作ノブ24の操作ストロークは、ロック機構35におけるロックピン38の移動ストロークよりも小さくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操作ノブを原位置から一旦押し込み操作することでロック位置に保持し、再度押し込み操作することで操作ノブがロック位置から原位置に復帰する構成のロック機構を備えたプッシュロックスイッチに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のプッシュロックスイッチの従来構成の一例を図6〜図8を参照して説明する。まず、図6において、スイッチケース1は、ケース本体2とインシュレータ3とを組み合わせて構成されている。このスイッチケース1には、操作ノブ4が、図中上下方向に往復移動可能に挿入されていて、この操作ノブ4は、圧縮コイルばね5の付勢力により原位置方向である上方に付勢されている。操作ノブ4の側部とスイッチケース1との間には、スライド式のスイッチ要素6が設けられている。このスイッチ要素6は、インシュレータ3に設けられた一対の固定接点7(図6(a)に1個のみ示す)と、操作ノブ4に設けられた可動接点8とから構成されていて、可動接点8は、圧縮コイルばね8aにより固定接点7側に付勢されている。
【0003】
そして、操作ノブ4において上記スイッチ要素6とは反対側に位置させて、ロック機構9が設けられている。このロック機構9は、操作ノブ4の側面に設けられたカム溝10と、このカム溝10を相対的に移動するロックピン11aを有するロック部材11とを備えている。カム溝10には、中央部にロック用係合部10aを有するハート形のカム凸部10bが設けられている。この場合、ロック部材11は、スイッチケース1に、図6(b)において左右方向にスライド可能に支持されている。
【0004】
上記構成において、図6は、操作ノブ4が上方の原位置に位置された状態が示されている。この状態では、ロック機構9におけるロックピン11aと、ロック用係合部10aとの係合が外れている。また、スイッチ要素6としては、可動接点8が固定接点7に接触していて、オン状態を呈している。
【0005】
この状態から、操作ノブ4が図6で下方(矢印A1方向)へ押し込み操作されると、操作ノブ4の矢印A1方向への移動に伴い、ロックピン11aが、カム凸部10bの周りのカム溝10を相対的に摺動する((a)の矢印B1参照)。図7には、操作ノブ4のフルストローク時(操作ノブ4を最も奥まで押し込んだ時)の状態が示されている。この状態では、ロックピン11aは、カム凸部10bの上方に位置されている。そして、操作ノブ4に対する操作力が解除されると、操作ノブ4が圧縮コイルばね5の付勢力で上方(矢印A1とは反対方向)へ戻されると共に、ロックピン11aがロック用係合部10aに係合するようになり(図7の矢印B2参照)、これにより操作ノブ4が図8に示すロック位置に保持されるようになる。このとき、可動接点8は固定接点7から下方へ離間していて、スイッチ要素6としてはオフ状態となる。
【0006】
図8のロック状態から、操作ノブ4が再度押し込み操作されると、操作ノブ4の矢印A1方向への移動に伴い、ロックピン11aとロック用係合部10aとの係合が外れる(図8の矢印B3参照)。そして、操作ノブ4に対する操作力が解除されると、操作ノブ4が圧縮コイルばね5の付勢力で上方へ戻されると共に、ロックピン11aがカム溝10を相対的に摺動して元の位置に戻る(図8の矢印B4参照)。これにより操作ノブ4が、図6に示す原位置に戻されるようになる。このとき、可動接点8は固定接点7に接触していて、スイッチ要素6としてはオン状態となる。
【0007】
なお、プッシュロックスイッチとしては、上記構成とはロック機構の構成が若干異なるが、特許文献1に示す構成のものも知られている。
【特許文献1】特開2000−182471
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した従来構成のものでは、次のような問題点がある。すなわち、操作ノブ4の操作ストロークとしては、ロック機構9におけるロックピン11aがカム溝10に対して相対的に移動する分のストローク(矢印A1方向及びこれとは反対方向のストローク)と同じ分だけ必要となる。このため、操作ノブ4の操作ストロークを小さくするには、ロック機構9のサイズを小型化する必要があるが、ロック機構9を小型化するには限界がある。
【0009】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたもので、ロック機構を小型化することなく、操作ノブの操作ストロークを小さくすることができるプッシュロックスイッチを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を達成するために、本発明のプッシュロックスイッチは、一端部が枢支されて揺動可能に設けられた遠隔アームと、この遠隔アームの長手方向の中間部に連結されると共に、前記遠隔アームの長手方向と交差する方向に往復移動可能に設けられ、付勢手段により原位置方向へ付勢された操作ノブと、ロック用係合部とこのロック用係合部に対して係脱可能に係合するロックピンを有して前記遠隔アームの他端部側に設けられ、前記操作ノブが前記原位置から押し込み操作された後、その押し込み操作が解除されることに伴い前記ロックピンが前記ロック用係合部に係合することにより前記遠隔アームを介して前記操作ノブをロック位置に保持し、前記操作ノブが前記ロック位置から再度押し込み操作されることに伴い前記ロックピンと前記ロック用係合部の係合が解除され、この後、その押し込み操作が解除されることに伴い前記遠隔アームと共に前記操作ノブが原位置へ復帰されることを許容するロック機構と、前記操作ノブが前記原位置に位置された状態と前記ロック位置に位置された状態とでスイッチ状態が切り替えられるスイッチ要素と、を具備したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、一端部が枢支された遠隔アームの他端部側にロック機構を設けると共に、その遠隔アームの長手方向の中間部に操作ノブを連結しているので、操作ノブの操作ストロークは、ロック機構におけるロックピンの移動ストロークよりも小さくなる。従って、ロック機構のサイズを同じとした場合、操作ノブの操作ストロークを小さくすることができ、よって、ロック機構を小型化することなく、操作ノブの操作ストロークを小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の一実施例について、図1ないし図5を参照して説明する。
まず、図1及び図2において、スイッチケース21は、ケース本体22とインシュレータ23とを組み合わせて矩形箱状に構成されている。このスイッチケース21には、操作ノブ24が、図中上下方向に往復移動可能に挿入されていて、この操作ノブ24は、当該操作ノブ24とスイッチケース21内の底部(インシュレータ23)との間に配設された圧縮コイルばね25の付勢力により原位置方向である上方に付勢されている。圧縮コイルばね25は、操作ノブ24を原位置方向へ付勢する付勢手段を構成している。操作ノブ24は、上部がケース本体22の開口部22aから上方へ突出していると共に、段部24aにより上方への抜止めがなされている。
【0013】
操作ノブ24の側部(図2の左側部)とスイッチケース21側部のインシュレータ23との間には、スライド式のスイッチ要素26が設けられている。このスイッチ要素26は、インシュレータ23に設けられた一対の固定接点27(図2に1個のみ示す)と、操作ノブ24に設けられた可動接点28とから構成されていて、可動接点28は、圧縮コイルばね29により固定接点27側に付勢されている。
【0014】
スイッチケース21において、上記スイッチ要素26とは反対側の側部(図2において右側の側部)には、横方向(図1で左右方向)に延びる遠隔アーム30が当該スイッチケース21を貫通する状態で設けられている。この遠隔アーム30は、一端部30aが軸31により、スイッチケース21周囲の静止部位に回動可能に枢支されており、従って、軸31を支点にして揺動可能に設けられている。スイッチケース21には、その遠隔アーム30の揺動を許容する開口部32,33が形成されている。スイッチケース21内において、遠隔アーム30の長手方向の中間部が、軸34を介して上記操作ノブ24に回動可能に連結されている。
【0015】
遠隔アーム30の他端部30bはスイッチケース21から側方へ突出していて、その他端部30b側にロック機構35が設けられている。このロック機構35は、ロック用のカム溝36を有する矩形状のカム板37と、遠隔アーム30の他端部30bに設けられたロックピン38とを備えている。カム溝36には、中央部にロック用係合部39を有するハート形のカム凸部40が設けられている。カム板37は、スイッチケース21周囲の静止部位に設けられた左右方向に延びるガイド部41に沿って左右方向にスライド可能に設けられている。ロックピン38は、カム溝36に相対的に移動可能に挿入されている(図3参照)。
【0016】
次に上記構成の作用を説明する。
図1〜図3は、操作ノブ2が上方の原位置に位置された状態が示されている。この状態では、ロック機構35におけるロックピン38とロック用係合部39との係合が外れていて、遠隔アーム30としてはほぼ水平状態となっている。また、スイッチ要素26としては、可動接点28が固定接点27に接触していて、オン状態を呈している。
【0017】
この状態から、操作ノブ24が下方(矢印C1方向)へ押し込み操作されると、操作ノブ4の矢印C1方向への移動に伴い、軸34を介して遠隔アーム30が下方(矢印C1方向)へ押される。すると、遠隔アーム30は、一端部30aの軸31を中心にして他端部30bが図1の矢印D1方向へ回動されるようになる。すると、他端部30bのロックピン38が、カム板37におけるカム凸部40の周りのカム溝36を相対的に摺動する(図1の矢印E1参照)。このとき、カム板37がガイド部41に沿って左右方向へスライドする。図4には、操作ノブ24のフルストローク時(操作ノブ24を最も奥まで押し込んだ時)の状態が示されている。この状態では、ロックピン38は、カム凸部40の下方に位置されている。
【0018】
そして、操作ノブ24に対する操作力が解除されると、操作ノブ24が圧縮コイルばね25の付勢力で上方(矢印C1とは反対の矢印C2方向)へ戻されると共に、遠隔アーム30の他端部30bも上方(矢印D1とは反対の矢印D2方向)へ戻されるように回動される。すると、ロックピン38がロック用係合部39に係合するようになり(図4の矢印E2参照)、これにより遠隔アーム30を介して操作ノブ24が図5に示すロック位置に保持されるようになる。このとき、可動接点28は固定接点27から下方へ離間していて、スイッチ要素26としてはオフ状態となる。
【0019】
図5のロック状態から、操作ノブ24が再度押し込み操作されると、操作ノブ24の矢印C1方向への移動に伴い、遠隔アーム30の他端部30bが矢印D1方向へ回動し、ロックピン38とロック用係合部39との係合が外れる(図5の矢印E3参照)。そして、操作ノブ24に対する操作力が解除されると、操作ノブ24が圧縮コイルばね25の付勢力で上方(矢印C2方向)へ戻されると共に、遠隔アーム30の他端部30bが矢印D2方向へ回動し、ロックピン38がカム溝36を相対的に摺動して元の位置に戻る(図5の矢印E4参照)。これにより操作ノブ24が、図1に示す原位置に戻されると共に、遠隔アーム30が元の水平状態に戻されるようになる。このとき、可動接点28は固定接点27に接触していて、スイッチ要素26としてはオン状態となる。
【0020】
上記した実施例においては、一端部30aが軸31により枢支された遠隔アーム30の他端部30b側にロック機構35を設けると共に、その遠隔アーム30の長手方向の中間部に操作ノブ24を軸34を介して連結しているので、操作ノブ24の操作ストロークは、ロック機構35におけるロックピン38の移動ストロークよりも小さくなる。
【0021】
このことを具体的に説明する。図4において、遠隔アーム30の一端部である軸31の中心から、遠隔アーム30と操作ノブ24との連結部となる軸34の中心までの距離をL1、遠隔アーム30の一端部である軸31の中心から、他端部30bのロックピン38までの距離をL2とし、また、ロックピン38の上下方向の最大ストロークをS2、このときの軸34の上下方向のストロークをS1とした場合、(1)式の関係が成立する。
【0022】
S2:S1=L2:L1 …(1)
これを変形すると、
S1=(L1/L2)S2 …(2)
と表すことができる。ここで、例えばロック機構35のサイズを従来と同じとした場合(ロックピン38の最大ストロークS2を同じとした場合)、操作ノブ24の操作ストローク(S1)を、ロックピン38の最大ストロークS2の(L1/L2)倍、小さくすることができる。よって、ロック機構35を小型化することなく、操作ノブ24の操作ストロークS1を小さくすることができる。
【0023】
本発明は、上記した実施例にのみ限定されるものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で適宜変形して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、操作ノブが原位置に位置された状態での破断正面図
【図2】図1のX1−X1線に沿う縦断側面図
【図3】図1のX2−X2線に沿う縦断側面図
【図4】操作ノブをフルストローク押し込んだ状態での破断正面図
【図5】操作ノブがロック位置に保持された状態での破断正面図
【図6】従来例を示すもので、(a)は図1相当図、(b)は(a)のY1−Y1線に沿う縦断側面図
【図7】図4相当図
【図8】図5相当図
【符号の説明】
【0025】
図面中、21はスイッチケース、24は操作ノブ、25は圧縮コイルばね(付勢手段)、26はスイッチ要素、27は固定接点、28は可動接点、30は遠隔アーム、30aは一端部、30bは他端部、31は軸、34は軸、35はロック機構、36はカム溝、37はカム板、38はロックピン、39はロック用係合部、40はカム凸部、41はガイド部を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端部が枢支されて揺動可能に設けられた遠隔アームと、
この遠隔アームの長手方向の中間部に連結されると共に、前記遠隔アームの長手方向と交差する方向に往復移動可能に設けられ、付勢手段により原位置方向へ付勢された操作ノブと、
ロック用係合部とこのロック用係合部に対して係脱可能に係合するロックピンを有して前記遠隔アームの他端部側に設けられ、前記操作ノブが前記原位置から押し込み操作された後、その押し込み操作が解除されることに伴い前記ロックピンが前記ロック用係合部に係合することにより前記遠隔アームを介して前記操作ノブをロック位置に保持し、前記操作ノブが前記ロック位置から再度押し込み操作されることに伴い前記ロックピンと前記ロック用係合部の係合が解除され、この後、その押し込み操作が解除されることに伴い前記遠隔アームと共に前記操作ノブが原位置へ復帰されることを許容するロック機構と、
前記操作ノブが前記原位置に位置された状態と前記ロック位置に位置された状態とでスイッチ状態が切り替えられるスイッチ要素と、
を具備したことを特徴とするプッシュロックスイッチ。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2006−202521(P2006−202521A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−10246(P2005−10246)
【出願日】平成17年1月18日(2005.1.18)
【出願人】(000003551)株式会社東海理化電機製作所 (3,198)
【Fターム(参考)】