説明

プッシュロッドを整列させるための装置

シリンダヘッドガスケット(211)は、該シリンダヘッドガスケット(211)の区域内に配置された1または2以上のアライメント孔(301)と1または2以上のドレーンバック孔(303)とを含む。1または2以上のプッシュロッド(201)は、アライメント孔(301)を貫通することができる。1または2以上のドレーンバック孔(303)は、1または2以上のプッシュロッド(201)が該1または2以上のドレーンバック孔(303)に嵌合できないように形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、それに限定されないが、シリンダヘッドガスケットを使用してプッシュロッドを整列させることを含むプッシュロッドの整列に関する。
【背景技術】
【0002】
シリンダヘッドガスケットは一般的に、内燃エンジンのエンジンブロックとしても知られているシリンダブロックとシリンダヘッドとの間に配置される。オイル、冷却液及び/又は燃料のような様々な流体は、シリンダブロックとシリンダヘッドとの間を流れる。シリンダヘッドガスケットは、シリンダヘッド及びシリンダブロックの様々な部分間をシールして様々な流体が混合しないようにすることが知られている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
幾つかの内燃エンジンでは、プッシュロッドが、シリンダブロック及びシリンダヘッドを貫通している。プッシュロッドはまた、シリンダヘッドガスケットも貫通している。図1に示すようなシリンダヘッドガスケット100は、プッシュロッドが貫通する複数のアライメント孔101を含む。複数のオイルドレーンバック孔103が、オイルがシリンダヘッドとシリンダブロックとの間を流れることを可能にする。アライメント孔101はオイルドレーンバック孔103に近接しており、またオイルドレーンバック孔103はアライメント孔101よりも大きいので、プッシュロッドが間違ってオイルドレーンバック孔103内に取り付けられて、プッシュロッドの不整列を招く可能性がある。エンジン内におけるプッシュロッドの不整列は、プッシュロッド、シリンダヘッドガスケット100、シリンダヘッド等々の損傷を招くおそれがある。そのようなエンジンは、正常に作動せず、費用のかかる修理が必要となる。
【0004】
従って、エンジン内にプッシュロッドを取り付ける方法であって、プッシュロッド不整列の発生を少なくする信頼性のある方法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
シリンダヘッドガスケットは、該シリンダヘッドガスケットの区域内に配置された1または2以上のアライメント孔と1または2以上のドレーンバック孔とを備えている。1または2以上のプッシュロッドは、アライメント孔を貫通することができる。1または2以上のドレーンバック孔は、1または2以上のプッシュロッドが嵌って貫通できないように形成されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、複数のアライメント孔を有するシリンダヘッドガスケットを使用してシリンダブロック内でプッシュロッドを整列させるための装置及び方法について説明する。ドレーンバック孔は、プッシュロッドがドレーンバック孔に嵌って貫通できないように形成されている。アライメント孔は、プッシュロッドが正しい配向においてのみアライメント孔に嵌って貫通するように形成するのが有利である。
【0007】
図2には、シリンダヘッド、シリンダヘッドガスケット及びシリンダブロックを貫通する複数のプッシュロッドを示しているエンジンの断面が示されている。複数のプッシュロッド201は、第2の端部205よりも小さい第1の端部203を有する。プッシュロッド201の小さい方の端部203は、カムシャフト209によって作動するバルブリフタ又はローラタペット207内に嵌合する。プッシュロッド201は、バルブリフタ207からシリンダブロック213とシリンダヘッド215との間に配置されたシリンダヘッドガスケット211内のアライメント孔301(図3参照)を貫通して延びる。プッシュロッドの大きい方の端部205は、エンジンのバルブ(図示せず)を作動させるロッカーアーム(図示せず)を作動させる。図2に示すエンジンのシリンダブロック内部においてプッシュロッド201を正しく整列させることにより、プッシュロッド201は、ロッカーアームとバルブリフタ207との間で直接整列する。
【0008】
図3には、プッシュロッド用のアライメント孔を有するシリンダヘッドガスケットの平面図を示す。シリンダヘッドガスケット211内には、エンジン内のプッシュロッド201の各々に対するアライメント孔301が配置される。シリンダヘッドガスケット211及び/又は、シリンダヘッド215をシリンダブロック213上に配置し、アライメント孔301を通してプッシュロッド201の小さい方の端部を落下させると、プッシュロッド201が対応するバルブリフタ207内に滑り込むように、各アライメント孔301をシリンダヘッドガスケット211の区域内に配置するのが有利である。プッシュロッド201がアライメント孔301の中をスライドすると、プッシュロッド201が対応するバルブリフタ207内にのみ滑り込むことができるように、アライメント孔301を、プッシュロッド201の外径にぴったり合う(ぴったりフィットする)ように形成するのが有利である。
【0009】
ぴったりしたフィットは、例えばプッシュロッド201の外径と同じ形状にしかつ外径よりも僅かに大きい寸法を使用することによって得ることができる。アライメント孔301は、プッシュロッド201の大きい方の端部205ではなくて小さい方の端部203のみが嵌って貫通するように形成するのが有利である。複数のドレーンバック孔303は、アライメント孔301の各々の周りに配置される。
【0010】
図4及び図5に、シリンダヘッドガスケットのインサート305及び307の平面図が示されている。各インサート305又は307は、それぞれ構造体401又は501で構成され、これらの構造体401又は501は、それぞれ構造体401又は501の外周部又は外縁部に配置されるか或いは外周部又は外縁部に沿って配置された任意選択的なシール405又は505を有する。構造体401又は501は、例えば比較的平坦な鋼部材とすることができ、その中にアライメント孔301及びドレーンバック孔303が形成される。孔301及び303は、スタンピング、ブランキング、レーザカッティング等々のような当技術分野では公知の方法で形成することができる。インサート305及び307は、複数のセクションとして形成した状態で示しているが、これらインサートは、そのように形成することは必ずしも必要ではない。構造体401及び501のセクション間に任意選択的な支持用ブリッジ403及び503を形成して、多数のインサートの複雑さを低減しかつシール材を配置して潜在的な漏れ通路を減少させるのを可能にする。
【0011】
アライメント孔301は、プッシュロッド201の小さい方の端部203はアライメント孔31に嵌って貫通できるが、プッシュロッド201の大きい方の端部205は該アライメント孔31に嵌って貫通できないように形成するのが有利である。そのように形成することは、例えばアライメント孔301の寸法及び形状を適切に選択することによって行うことができる。例えば、アライメント孔301は、プッシュロッド201の外周部の形状と一致し、かつ直径がプッシュロッド201の主軸よりも大きいが、プッシュロッド201の大きい方の端部205よりも小さい開口を有することができる。アライメント孔301は、アライメント孔301がプッシュロッド201の外径にぴったりと合い、それによって、シリンダヘッドガスケット211及び/又はシリンダヘッド215がシリンダブロック213と組み立てられた時に、プッシュロッド201がアライメント孔301を通って適正なバルブリフタ207以外の中に落下する可能性をほぼなくすように形成するのが有利である。
【0012】
ドレーンバック孔303が、アライメント孔301の近くに配置された状態が示されている。アライメント孔301の各々の近くに配置され複数の部分リングで構成されたドレーンバック孔303が示されているが、ドレーンバック孔303が他の形状、寸法及び位置でも良い結果が得られる。ドレーンバック孔303は、プッシュロッド201のいずれの端部203及び205もドレーンバック孔303に嵌って貫通しないように形成されるのが有利である。ドレーンバック孔303は、所望の量のオイルがあらゆる特定の時点においてもそれを通して流れることができるのに十分な面積を備えた開口を有する。プッシュロッド201がアライメント孔301だけに嵌って貫通でき、またアライメント孔301の区域内にあるドレーンバック孔、装着孔等々のような他の孔には嵌って貫通できない限りは、プッシュロッド201は、シリンダブロック213内で正しく整列し、それに応じてロッカーアーム及びバルブリフタ207に対して正しく整列することになる。
【0013】
シール405又は505が、構造体401又は501の外周部又は外縁部において或いは外周部又は外縁部に沿って配置又は形成される。シール405又は505は、図6、図7及び図8に断面図で示すように、例えば構造体401又は501の外周部に沿って形成されかつ構造体401又は501から離れるように両方向に延びる成型ゴムビードとすることができる。シール405又は505は、図7に示すように、構造体401又は501の外縁部全体を囲むのが有利である。流体の漏れ通路を排除するために、インサート305及び307の様々なセクション間のブリッジ403及び503を取り囲むなどのように、各構造体401又は501の外周部又は外縁部以外の区域に付加的なシール材を追加するのが有利である。さらに、タブ509内の孔507をインサート307の残りの部分から隔離するようにシール材を追加し、それによって孔507がドレーンバック孔303を通過するオイルよりも高い圧力でのオイルの移送を可能にするのが有利である。シール405又は505は一般的に、オイルが該シール405又は505を通り越してシリンダヘッドガスケット211の他の区域内へ漏れるのを防ぎ、また冷却液又は燃料のような他の流体が該シール405又は505を通り越してガスケットの本体からオイル内に漏れるのを防止する。それに代えて、シール405及び505は、図に示すよりもドレーンバック孔303にさらに近接させて設置することができる。
【0014】
インサート305及び307は、複数のタブ407を用いて、例えばステープルを利用する方法でタブ407を本体材料内に押し込みかつ本体材料の周りに折り曲げることによってシリンダヘッドガスケット211の本体に取り付けられる。シリンダヘッドガスケット211の本体は、例えば各側面を有孔鋼心で囲まれ、両有孔鋼心の外表面上に黒鉛の外層を備えた鋼中心部材のような多層の材料で構成することができる。別の実施例は、全表面を黒鉛で囲んだ有孔鋼心とすることができる。タブ407は、ガスケット211の全ての層を含む1または2以上の層を貫通するように押し込むことができる。それに代えて、インサート305及び307は、溶接、接着又は所望の機能を良好にもたらすその他の方法で取り付けることができる。
【0015】
図3、図4及び図5に示す実施形態は、シリンダヘッドガスケット211の本体に取り付けたインサート305及び307内に形成されたアライメント孔301及びドレーンバック孔303を示している。これらのアライメント孔301及びドレーンバック孔303は、インサートに形成するのではなく、直接シリンダヘッドガスケット211の本体内に形成することもできる。所望のシール機能を得るために、任意選択的なシール405及び505が、アライメント孔301及びドレーンバック孔303の周りに配置される。
【0016】
本発明は、直列形エンジン、L形エンジン、V形エンジン、ガソリン又はディーゼルエンジン等々のような様々なタイプのエンジンにおいて利用することができる。
【0017】
本発明は、組立て工程時にシリンダヘッドガスケット内のアライメント孔を使用することにより、プッシュロッドをシリンダブロック及びシリンダヘッド内で正しく配向しかつ整列させ、それに応じてロッカーアーム及びバルブリフタに対して正しく配向しかつ整列させるための方法及び装置を提供する。プッシュロッドは、アライメント孔を囲む区域内のオイルドレーンバック孔のようなあらゆる他の孔には嵌って貫通できないので、プッシュロッドを正しく整列させることが、非常に高い確度で成功する。プッシュロッドの正しい配向は、アライメント孔を適切に形成することによって可能になる。本発明は、組立て時間を短縮し、複雑さ及び誤りを減少させ、また修理又は手直しの必要性を低減する。
【0018】
本発明は、その技術思想又は本質的な特徴から逸脱することなく、その他の特定の形態で具現化することができる。説明した実施形態は、全ての点で単に例示であって限定するものではないと考えられたい。従って、本発明の範囲は、以上の記載によってではなく、添付の特許請求の範囲によって示している。特許請求の範囲の意味するもの及び等価な範囲内にある全ての変更は、その範囲内に含まれることになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】プッシュロッド用のアライメント孔を有するシリンダヘッドガスケットの平面図である。
【図2】本発明による、シリンダヘッド、シリンダヘッドガスケット及びシリンダブロックを貫通して延びる複数のプッシュロッドを示すエンジンの断面図である。
【図3】本発明による、プッシュロッド用のアライメント孔を有するシリンダヘッドガスケットの平面図である。
【図4】本発明によるシリンダヘッドガスケット用のインサートの平面図である。
【図5】本発明によるシリンダヘッドガスケット用のインサートの平面図である。
【図6】本発明による、線409のいずれかに沿った断面図である。
【図7】本発明による、線411のいずれかに沿った断面図である。
【図8】本発明による、線511のいずれかに沿った断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シリンダヘッドガスケットであって、
該シリンダヘッドガスケットの区域内に配置され、1または2以上のプッシュロッドが貫通することができる1または2以上のアライメント孔と、
該シリンダヘッドガスケットの区域内に配置され、前記1または2以上のプッシュロッドが嵌って貫通できないように形成された1または2以上のドレーンバック孔と、を備えている、
ことを特徴とするシリンダヘッドガスケット。
【請求項2】
該シリンダヘッドガスケットの区域が、該シリンダヘッドガスケットの本体に取り付けられたインサートの一部である、
請求項1に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項3】
前記インサートを該シリンダヘッドガスケットの本体に取り付けるように配置されかつ構成された1または2以上のタブをさらに含む、
請求項2に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項4】
前記インサートが鋼で構成される、
請求項2に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項5】
シールをさらに含む、
請求項2に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項6】
前記1または2以上のドレーンバック孔の少なくとも1つの外側に配置されたシールをさらに含む、
請求項2に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項7】
前記シールが成形ゴムビードで構成される、
請求項5に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項8】
該シリンダヘッドガスケットの区域内に配置されたシールをさらに含む、
請求項1に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項9】
前記1または2以上のアライメント孔は、前記1または2以上のプッシュロッドの1のプッシュロッドの小さい端部は、嵌って貫通できるが、前記1または2以上のプッシュロッドの前記1のプッシュロッドの大きい端部は嵌って貫通できないように形成されている、
請求項1に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項10】
前記1または2以上のプッシュロッドが、該シリンダヘッドガスケットの区域内の1または2以上のアライメント孔のいずれかだけに嵌って貫通できる、
請求項1に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項11】
前記1または2以上のドレーンバック孔が、前記1または2以上のアライメント孔の近くに配置される、
請求項1に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項12】
前記1または2以上のドレーンバック孔が、前記1または2以上のアライメント孔の各々の近くに配置された複数の部分リングで構成される、
請求項1に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項13】
前記1または2以上のアライメント孔が、前記1または2以上のプッシュロッドの外径にぴったりと合う、
請求項1に記載のシリンダヘッドガスケット。
【請求項14】
シリンダヘッドガスケットと共に使用する構造体内に形成され、1または2以上のプッシュロッドが貫通することができる1または2以上のアライメント孔と、
前記構造体内に配置され、前記1または2以上のプッシュロッドが嵌って貫通できないように形成された1または2以上のドレーンバック孔と、を備えている、
ことを特徴とする装置。
【請求項15】
前記シリンダヘッドガスケットの本体にインサートを取り付けるように配置されかつ構成された1または2以上のタブをさらに備えている、
請求項14に記載の装置。
【請求項16】
前記1または2以上のドレーンバック孔の少なくとも1つの外側に配置されたシールをさらに備えている、
請求項14に記載の装置。
【請求項17】
前記シールが成形ゴムビードで構成される、
請求項16に記載の装置。
【請求項18】
前記1または2以上のアライメント孔が、前記1または2以上のプッシュロッドの1のプッシュロッドの小さい端部は嵌って貫通できるが、前記1または2以上のプッシュロッドの1つのプッシュロッドの大きい端部は嵌って貫通できないように形成されている、
請求項14に記載の装置。
【請求項19】
前記1または2以上のプッシュロッドが、前記構造体内の1または2以上のアライメント孔のいずれかだけに嵌って貫通できる、
請求項14に記載の装置。
【請求項20】
前記1または2以上のドレーンバック孔が、前記1または2以上のアライメント孔の各々の近くに配置された複数の部分リングで構成される、
請求項14に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−507666(P2007−507666A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533922(P2006−533922)
【出願日】平成16年9月14日(2004.9.14)
【国際出願番号】PCT/US2004/030132
【国際公開番号】WO2005/038215
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【出願人】(501402947)インターナショナル エンジン インテレクチュアル プロパティー カンパニー リミテッド ライアビリティ カンパニー (69)
【Fターム(参考)】