説明

プライマーの作製方法、プライマーの使用方法、プライマーセット、PCR用反応液、及びプライマーの設計方法

【課題】 複数の検出対象生物を、同時かつそれぞれ特異的に増幅することが可能なPCR用プライマーセットを作製する。
【解決手段】 PCR法によってDNAの塩基配列を増幅するために用いるプライマーセットを、増幅対象生物のDNAにおける増幅対象領域を増幅させるためのフォワードプライマー及びリバースプライマーの少なくとも一方の塩基配列が、非増幅対象生物のDNAの塩基配列と、12塩基以上連続で重ならないように作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PCR用プライマーの作製方法に関し、特に複数の増幅対象生物を特異的に検出可能なマルチプレックスPCR用プライマーセットの作製に用いることができるプライマーの作製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
PCR(ポリメラーゼ連鎖反応,Polymerase Chain Reaction)法は微生物の検出や微生物の分類などの研究や産業に幅広く利用されており、様々な点で世間に貢献している。PCR法が産業界に利用されている例として、食品製造現場や臨床現場において、日常的に危害菌などの有無が判定できる微生物検査が行われている。
PCRを行うにあたっては、対象微生物を特異的に増幅することが可能なプライマーを設計することが重要である。
しかしながら、異なる微生物でも同じ機能を持つ遺伝子では配列が類似している場合が多いことや対象領域が非対象領域と類似している可能性があることから、増幅の干渉や特異性が高いプライマーを設計するのは容易ではなかった。またPCR条件が最適化されていないため、PCR条件を検討する手間も大変だった。
特にマルチプレックスPCRにおける検証試験は、従来のPCRよりもプライマー数や対象微生物数が増えるため検証数の増加につながり、プライマー設計には特異性の付与が重要であった。
【0003】
また、微生物検査を簡単かつ迅速に行うためには、複数の微生物を同時に特異的に増幅するマルチプレックスPCRを行うことが望ましい。
しかし、このように複数の微生物を同時に増幅する場合には、プライマー同士の競合、あるいはダイマー形成などが起こり、さらに増幅が干渉するため、結果として感度の低下や非特異増幅に影響する。
このため、同時検出する対象微生物の数が多くなるに従って、特異性の高いプライマーの設計は非常に難しくなるという問題があった。
【0004】
ここで、マルチプレックスPCRにおけるプライマーに関連する発明としては、特許文献1に記載のプライマーキットを挙げることができる。
このプライマーキットによれば、検体ごとに必要なプライマーを自由に組み換えて使用できるとされている。また、検体ごとにそれぞれ異なる検査項目が要求される遺伝子検査等においても、不要な遺伝情報の検出を回避しつつ、必要な標的塩基配列のみを過不足なく増幅することができ、また各プライマーの反応条件が標準化されているため、いずれの組み合わせのプライマーを用いた場合であっても、同一の反応条件で、それぞれの標的塩基配列を効率よく増幅することができるとされている。
【0005】
また、特許文献2には、分離データからの解釈がしやすいように設計されたマルチプレックスPCR用プライマーセットが開示されている。
さらに、特許文献3には、検出対象とする複数の食中毒菌を検出するためのマルチプレックスPCR用プライマーセットが開示されている。
また、特許文献4には、長さが30塩基以上のプライマーを使用し、プライマーのハイブリダイゼーション効率が90%以上である温度のうち、最も高い温度でアニーリングさせ、3分〜10分間の長時間アニーリング・伸長反応を行うことにより、マルチプレックスPCRを行う方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、これらの文献には、プライマー設計条件やPCRの条件設定を網羅したような記載がなく、さらに特異性の高いプライマーを得るための手法については未だ十分な検討がなされておらず、高い特異性を有するプライマーセットの開発が求められていた。
ここで、プライマーの設計方法に関連する発明としては、特許文献5〜8に記載のものを挙げることができる。
【0007】
特許文献5には、複雑な温度制御を必要としない遺伝子増幅法であるLAMP(Loop-mediated isothermal amplification)法に適するプライマーの設計方法が開示されている。
また、特許文献6には、遺伝子を恒温増幅するNASBA法、TMA法、3SR法などに適するプライマーの設計方法が開示されている。
【0008】
また、特許文献7には、遺伝子発現の定量方法において、増幅したい部分の片側に共通のアダプターが付加されるが、従来の遺伝子発現用プライマー設計方法では、このアダプター部分のプライマー情報を1つ1つ入力しているため時間がかかるという問題を解消すべく、そのプライマー配列を保持して逐次入力の手間を省き、またプライマー候補の絞り込みを自動的に行うプライマーの設計方法が開示されている。
さらに、特許文献8には、互いに異なるDNAに、それぞれ特異的にハイブリダイズする複数のプライマーを効率よく設計するためのプライマーの設計方法が開示されている。
【0009】
【特許文献1】特開2009−55815号公報
【特許文献2】特開2005−95025号公報
【特許文献3】特開2007−274934号公報
【特許文献4】特開2006−320217号公報
【特許文献5】特開2007−189983号公報
【特許文献6】特開2005−301532号公報
【特許文献7】特開2002−27988号公報
【特許文献8】特開2001−258568号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献5,6に記載のプライマーの設計方法は、上記の通り、LAMP法やNASBA法等など恒温反応による遺伝子増幅法に関するものであり、また特許文献7に記載のプライマーの設計方法は、遺伝子発現の定量のために常に片側のプライマーを固定する手法に関するものであり、一般的なPCR法において特異性の高いプライマーを作製する場合に有効なものではなかった。
また、特許文献8には、プライマーを設計するにあたっての塩基長やGC含有量、融解温度(Tm値)などについての一般的な手法が開示されているが、PCR条件などに関する記載は無く、プライマーの特異性を十分に向上するためには、さらに改良する余地があった。
【0011】
そこで、本発明者らは、複数の検出対象生物が存在する場合に、どのような条件でプライマーを設計すれば、プライマーの競合やダイマーの形成を抑止して、特異的な増幅を行い得るプライマーセットを得ることができるかにつき鋭意研究した結果、その条件を見いだすことに成功し、本発明を完成させた。
本発明によれば、一回の試験で検出対象生物を検出することができるため、検査コストを大幅に削減することができる。また、特異性の高いプライマーの設計が容易にできるため、従来の検証数を削減することができ検証に掛かるコストの削減にもなる。
すなわち、本発明は、複数の検出対象生物を、同時かつそれぞれ特異的に増幅することが可能なプライマーの作製方法、プライマーの使用方法、プライマーセット、PCR用反応液、及びプライマーの設計方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明のプライマーの作製方法は、上記目的を達成するために、PCR法によってDNAの塩基配列(核酸断片)を増幅できるプライマーセットを、増幅対象生物のDNAにおける増幅対象領域を増幅させるためのフォワードプライマー及びリバースプライマーの少なくとも一方の塩基配列が、非増幅対象生物のDNAの塩基配列と、12塩基以上連続で重ならないように、作製する方法としてある。
なお、非増幅対象生物(又は増幅対象生物)のDNAの塩基配列とは、非増幅対象生物(又は増幅対象生物)のゲノムDNAの全部又は一部の塩基配列を意味する。
また、本発明のプライマーの作製方法は、プライマーセットを、フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が5℃未満となるように作製することが好ましい。
【0013】
また、本発明のプライマーの作製方法は、プライマーセットを、フォワードプライマー及びリバースプライマーの長さが23〜41merであり、かつ融解温度が70〜78℃となるように作製することが好ましい。
また、本発明のプライマーの作製方法は、PCR法が、複数の生物のDNAの塩基配列を同時に増幅させるマルチプレックスPCR法であり、各増幅対象生物のDNAにおける増幅対象領域を増幅させるためのフォワードプライマー及びリバースプライマーの少なくとも一方の塩基配列が、他の増幅対象生物及び所定の非増幅対象生物のDNAの塩基配列と、12塩基以上連続で重ならないように作製することが好ましい。
また、本発明のプライマーの使用方法は、PCRのアニーリング温度を、上記プライマーの作製方法を用いて得られたプライマーセットにおけるフォワードプライマーとリバースプライマーの中で、融解温度が低いプライマーの融解温度よりも0〜5℃低い温度に設定して、PCRを行う方法としてある。
【0014】
また、本発明のプライマーセットは、上記のプライマーの作製方法を用いて得られるものとしてある。
また、本発明のPCR用反応液は、上記のプライマーの作製方法を用いて得られたプライマーセットを含有するものとしてある。
【0015】
また、本発明のプライマーの設計方法は、PCR法によってDNAの塩基配列を増幅するために用いるプライマーの設計方法であって、DNAの塩基配列を増幅する対象の一又は二以上の増幅対象生物を選択するステップと、DNAの塩基配列を増幅しない対象の一又は二以上の非増幅対象生物を選択するステップと、選択された増幅対象生物のDNAからフォワードプライマーとリバースプライマーの候補を選択するステップと、フォワードプライマー及びリバースプライマーの候補の塩基配列が、選択された他の増幅対象生物又は非増幅対象生物のDNAの塩基配列と12塩基以上連続で重なるか否かを判定するステップと、判定の結果、フォワードプライマー及びリバースプライマーの候補の両方の塩基配列が、選択された他の増幅対象生物又は非増幅対象生物のいずれかのDNAの塩基配列と12塩基以上連続で重なる場合、再度選択された増幅対象生物からフォワードプライマーとリバースプライマーの候補を選択し直して12塩基以上連続で重なるか否かの判定を行うステップと、判定の結果、フォワードプライマー及びリバースプライマーの候補の少なくとも一方の塩基配列が、選択された他の増幅対象生物又は非増幅対象生物の全てのDNAの塩基配列と12塩基以上連続で重ならない場合、フォワードプライマーとリバースプライマーの候補をPCR法によってDNAの塩基配列を増幅するために用いるプライマーセットとして決定するステップを有する方法である。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、マルチプレックスPCR法においても検出対象生物を適切に増幅し得る、特異性の高いプライマーセットを作製することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の第一実施形態におけるプライマー設計装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第一実施形態のプライマーの設計方法を示すフローチャートである。
【図3】本発明の第二実施形態におけるプライマー設計装置の構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第二実施形態において作製されたプライマーの配列の例を示す図である。
【図5】本発明の第二実施形態のプライマーの設計方法を示すフローチャートである。
【図6】本発明の第三実施形態におけるプライマー設計装置の構成を示すブロック図である。
【図7】本発明の第三実施形態において作製されたプライマーの配列の例を示す図である。
【図8】本発明の第三実施形態のプライマーの設計方法を示すフローチャートである。
【図9】本発明の第四実施形態におけるプライマー設計装置の構成を示すブロック図である。
【図10】本発明の第四実施形態のプライマーの設計方法を示すフローチャートである。
【図11】本発明の第五実施形態におけるプライマー設計装置の構成を示すブロック図である。
【図12】本発明の第五実施形態のプライマーの設計方法を示すフローチャートである。
【図13】本発明の第六実施形態におけるプライマー設計装置の構成を示すブロック図である。
【図14】本発明の第六実施形態のプライマーの設計方法を示すフローチャートである。
【図15】本発明の第七実施形態におけるプライマー設計装置の構成を示すブロック図である。
【図16】本発明の第七実施形態のプライマーの設計方法を示すフローチャートである。
【図17】本発明における12塩基以上連続で重ならない条件に関する実施例及び比較例で用いたプライマーの塩基配列及び融解温度を示す図である。
【図18】本発明における12塩基以上連続で重ならない条件に関する実施例の結果を示す図である。
【図19】本発明における12塩基以上連続で重ならない条件に関する比較例の結果を示す図である。
【図20】本発明におけるプライマーの融解温度差条件(セレウス検出用プライマー 対象領域:cesB,nhe)に関する実施例及び比較例で用いるプライマーの塩基配列及び融解温度を示す図である。
【図21】本発明におけるプライマーの融解温度差条件(カンピロバクター検出用プライマー,大腸菌検出用プライマー)に関する実施例及び比較例で用いるプライマーの塩基配列及び融解温度を示す図である。
【図22】本発明におけるプライマーの融解温度差条件(リステリア検出用プライマー,サルモネラ検出用プライマー)に関する実施例及び比較例で用いるプライマーの塩基配列及び融解温度を示す図である。
【図23】本発明におけるプライマーの融解温度差条件(黄色ブドウ球菌検出用プライマー,ビブリオ検出用プライマー)に関する実施例及び比較例で用いるプライマーの塩基配列及び融解温度を示す図である。
【図24】本発明におけるプライマーの融解温度差条件(セレウス検出用プライマー 対象領域:cesB,nhe)に関する実施例及び比較例の結果を示す図である。
【図25】本発明におけるプライマーの融解温度差条件(カンピロバクター検出用プライマー,大腸菌検出用プライマー)に関する実施例及び比較例の結果を示す図である。
【図26】本発明におけるプライマーの融解温度差条件(リステリア検出用プライマー,サルモネラ検出用プライマー)に関する実施例及び比較例の結果を示す図である。
【図27】本発明におけるプライマーの融解温度差条件(黄色ブドウ球菌検出用プライマー,ビブリオ検出用プライマー)に関する実施例及び比較例の結果を示す図である。
【図28】本発明におけるプライマーの長さに関する参考例及び実施例及び比較例で用いるプライマーの塩基配列及び融解温度を示す図である。
【図29】本発明におけるプライマーの長さに関する参考例及び実施例の結果を示す図である。
【図30】本発明におけるプライマーの長さに関する比較例の結果を示す図である。
【図31】本発明におけるアニーリング温度とプライマーの融解温度条件(セレウス検出用プライマー 対象領域:cesB,nhe)に関する実施例及び参考例で用いるプライマーの塩基配列及び融解温度を示す図である。
【図32】本発明におけるアニーリング温度とプライマーの融解温度条件(カンピロバクター検出用プライマー,大腸菌検出用プライマー)に関する実施例及び参考例で用いるプライマーの塩基配列及び融解温度を示す図である。
【図33】本発明におけるアニーリング温度とプライマーの融解温度条件(リステリア検出用プライマー,サルモネラ検出用プライマー)に関する実施例及び参考例で用いるプライマーの塩基配列及び融解温度を示す図である。
【図34】本発明におけるアニーリング温度とプライマーの融解温度条件(黄色ブドウ球菌検出用プライマー,ビブリオ検出用プライマー)に関する実施例及び参考例で用いるプライマーの塩基配列及び融解温度を示す図である。
【図35】本発明におけるアニーリング温度とプライマーの融解温度条件(セレウス検出用プライマー 対象領域:cesB)に関する実施例及び参考例の結果を示す図である。
【図36】本発明におけるアニーリング温度とプライマーの融解温度条件(セレウス検出用プライマー 対象領域:nhe)に関する実施例及び参考例の結果を示す図である。
【図37】本発明におけるアニーリング温度とプライマーの融解温度条件(カンピロバクター検出用プライマー)に関する実施例及び参考例の結果を示す図である。
【図38】本発明におけるアニーリング温度とプライマーの融解温度条件(大腸菌検出用プライマー)に関する実施例及び参考例の結果を示す図である。
【図39】本発明におけるアニーリング温度とプライマーの融解温度条件(リステリア検出用プライマー)に関する実施例及び参考例の結果を示す図である。
【図40】本発明におけるアニーリング温度とプライマーの融解温度条件(サルモネラ検出用プライマー)に関する実施例及び参考例の結果を示す図である。
【図41】本発明におけるアニーリング温度とプライマーの融解温度条件(黄色ブドウ球菌検出用プライマー)に関する実施例及び参考例の結果を示す図である。
【図42】本発明におけるアニーリング温度とプライマーの融解温度条件(ビブリオ検出用プライマー)に関する実施例及び参考例の結果を示す図である。
【図43】本発明におけるマルチプレックスPCRにおける単独菌及び複数菌での増幅試験で用いたプライマーの塩基配列及び融解温度を示す図である。
【図44】本発明におけるマルチプレックスPCRにおける単独菌での増幅試験結果を示す図である。
【図45】本発明におけるマルチプレックスPCRにおける複数菌での増幅試験結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明のプライマーの作製方法、プライマーの使用方法、プライマーセット、PCR用反応液、及びプライマーの設計方法の実施形態について、詳細に説明する。
【0019】
まず、本発明のプライマーの作製方法の一実施形態について、詳細に説明する。なお、本発明のプライマーの作製方法は、PCR法によってDNAの塩基配列を増幅するために用いるプライマーセットを、対象生物のDNAにおける対象領域を増幅させるためのフォワードプライマー及びリバースプライマーの少なくとも一方の塩基配列が非増幅対象生物のDNAの塩基配列と12塩基以上連続で重ならないように、作製するものであれば良く、以下の具体的な内容に限定されるものではない。
【0020】
[プライマーの作製方法]
(1)プライマーの設計
マルチプレックスPCR用のプライマーセットの設計にあたっては、同時に使用する他のプライマーセットと競合しないように設計する必要がある。また特異性が高いプライマーに求められる機能として、増幅対象生物のDNAでは増幅対象領域以外が増幅しないこと、及び非増幅対象生物のDNAが増幅しないことが求められる。
【0021】
(条件A)
このようなマルチプレックスPCR用プライマーセットに求められる機能を向上させ得るプライマーの条件として、本発明者らはプライマーセットにおけるフォワードプライマー及びリバースプライマーの少なくとも一方の塩基配列が、所定の非増幅対象生物のDNAの塩基配列と、12塩基以上連続で重ならないという条件を見いだした。すなわち、このような条件のプライマーセットによれば、その他の環境や各種条件に問題がなければ、増幅対象遺伝子領域を特異的に増幅させることが可能であることがわかった。
【0022】
また、プライマーセットにおけるフォワードプライマー及びリバースプライマーの少なくとも一方の塩基配列が、他の増幅対象生物及び所定の非増幅対象生物のDNAの塩基配列と、12塩基以上連続で重ならないものとすることがより好ましい。
さらに、プライマーセットにおけるフォワードプライマー及びリバースプライマーの少なくとも一方の塩基配列が、当該増幅対象生物のDNAにおける非増幅対象領域の塩基配列、並びに、他の増幅対象生物及び所定の非増幅対象生物のDNAの塩基配列と、12塩基以上連続で重ならないものとすることがより好ましい。このような条件のプライマーセットによれば、その他の環境や各種条件に問題がなければ、増幅対象遺伝子領域のみを好適に増幅させることが可能である。
なお、当該増幅対象生物とは、プライマーセット候補の選択元の増幅対象生物であり、そのフォワードプライマー及びリバースプライマーにより検出する対象の増幅対象生物を意味する。
【0023】
ここで、「重ならない」とは、塩基が重複しないことを意味し、同じ塩基の配列ではないことを意味する。また「重なる」とは、塩基が重複することを意味し、同じ塩基の配列であることを意味する。プライマーの塩基配列が比較対象の塩基配列と「12塩基以上連続で重ならない」とは、プライマーの塩基配列と、比較対象の塩基配列を比較した場合に、プライマーの塩基配列が、12塩基以上連続してプライマーの塩基配列に存在しないことを意味する。
【0024】
このようなプライマーセットを設計するにあたっては、増幅対象生物における増幅対象領域を決定し、その領域を増幅させるためのプライマー候補を選択する。そして、選択したプライマー候補の塩基配列が、当該増幅対象生物のDNAにおける非増幅対象領域の塩基配列、並びに、他の増幅対象生物及び所定の非増幅対象生物のDNAの塩基配列と、12塩基以上連続で重ならないか否かを確認する。このとき、他の増幅対象生物及び所定の非増幅対象生物を予め選択して、その塩基配列と選択したプライマー候補の塩基配列との比較を行い、12塩基以上連続で重ならないか否かを判定することができる。
【0025】
フォワードプライマー及びリバースプライマーの両方の塩基配列が、当該増幅対象生物のDNAにおける非増幅対象領域の塩基配列、他の増幅対象生物のDNAの塩基配列、又は所定の非増幅対象生物のDNAの塩基配列と、12塩基以上連続で重なる場合は、再度プライマー候補を選択し直す。そして、フォワードプライマー及びリバースプライマーの少なくともいずれかの塩基配列が、当該増幅対象生物のDNAにおける非増幅対象領域の塩基配列、並びに、他の増幅対象生物及び所定の非増幅対象生物のDNAの塩基配列と、12塩基以上連続で重ならないプライマーセットが見つかるまで、プライマー候補の選択をし直し、及び12塩基以上連続で重ならないか否かの判定を繰り返し実行する。
そして、12塩基以上連続で重ならないプライマー候補が見つかった場合、そのプライマー候補を含むプライマーセットを、実際に作製するプライマーセットとして決定する。
【0026】
また、このようなプライマーセットが、以下の条件B〜条件Eの条件を満たすか否かを判定し、条件Aに加えて、さらにこれらの条件のうちの一又は二以上を満たすものをプライマーセットとして用いることも好ましい。プライマーセットが条件B〜条件Eを満たせば、その増幅の特異性を一層向上させることが可能となる。
【0027】
(条件B)
フォワードプライマー及びリバースプライマーの少なくとも一方の塩基配列が、3’末端側半分において、G又はCを連続で3塩基以上備える配列を有することが好ましい。なお、Gはグアニン、Cはシトシンを意味し、Aはアデニン、Tはチミンを意味する。DNA分子は、これらいずれかの塩基を備えたヌクレオチドが鎖状に結合して構成されている。
【0028】
(条件C)
フォワードプライマー及びリバースプライマーの少なくとも一方の塩基配列が、それぞれのプライマーの配列の中心から3’末端側及び5’末端側の両方向に向かってプライマーの全長の四分の1の範囲を含む領域に、A又はTを連続で4塩基以上備える配列を有することが好ましい。
【0029】
(条件D)
フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度(Tm値)の差が5℃未満であることが好ましい。
【0030】
(条件E)
フォワードプライマー及びリバースプライマーの長さが23〜41merであり、かつ融解温度が70〜78℃であることが好ましく、融解温度が73〜78℃であることがさらに好ましい。
【0031】
(2)プライマーの作製工程
以上のようにして決定されたプライマーセットの塩基配列にもとづいて、フォワードプライマー及びリバースプライマーを作製する。これらのプライマーの作製は、一般的な方法で行うことができ、DNA合成装置を使用して、人工的に作製することができる。
【0032】
[プライマーの使用方法]
次に、本発明のプライマーの使用方法の一実施形態について、詳細に説明する。
上述した本実施形態のプライマーの作製方法によって作製されたプライマーセット、及び後述するプライマーの設計方法にもとづき作製されたプライマーセットは、PCRに用いることができ、特にマルチプレックスPCR用のプライマーセットとして好適に使用することが可能である。
【0033】
まず、本実施形態のプライマーの作製方法又はプライマーの設計方法にもとづいて、増幅対象生物のDNAにおける増幅対象領域を増幅するためのPCR用プライマーセットを作製する。
作製されたプライマーセットは、少なくとも条件Aを満たすもの、すなわち、フォワードプライマー及びリバースプライマーの少なくとも一方の塩基配列が、非増幅対象生物のDNAの塩基配列と、12塩基以上連続で重ならないものである。また、条件B〜Eの少なくともいずれかをさらに満たすものであることがより好ましい。
【0034】
次いで、このプライマーセットを含有するPCR用反応液を作製する。
PCR用反応液としては、例えば以下のような組成のものを用いることができる。
・緩衝液
・核酸合成基質(dATP、dCTP、dGTP、dTTP)
・フォワードプライマー
・リバースプライマー
・核酸合成酵素
・増幅対象生物のDNA
・水
【0035】
ここで、複数菌種を一括検出の場合する場合には、PCR用反応液におけるプライマー濃度を菌種毎に適した値にすることが好ましい。
すなわち、検出対象菌種毎にプライマー量を調整して、PCR用反応液を作成することが好ましい。
例えば、セレウス、カンピロバクター、大腸菌、リステリア、サルモネラ、黄色ブドウ球菌、及びビブリオを同時に検出する場合は、ビブリオ以外の菌種のフォワードプライマー及びリバースプライマーの濃度を同一にすると共に、ビブリオ検出用のフォワードプライマー及びリバースプライマーの濃度を、その他の各菌種の2倍にすることが好ましい。
【0036】
PCR法による遺伝子の増幅は、サーマルサイクラーなどのPCR装置を用いて行うことができる。
また、PCRの反応条件は、例えば次の条件で行うことができる。
(1)95℃ 2分
(2)95℃ 10秒(DNA鎖の乖離工程)
(3)68℃ 30秒(アニーリング工程)
(4)72℃ 30秒(DNA合成工程)
(5)72℃ 2分
(2)〜(4)を40サイクル
【0037】
このとき、アニーリング温度(アニーリング工程における温度)設定は、プライマーセットにおけるフォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度のうち、低い方の温度からさらに0〜5℃低い温度とすることが好ましい。
また、増幅対象生物が複数の場合や、増幅対象領域が複数存在する場合は、複数のプライマーセットにおける全てのプライマーの融解温度のうち、最も低い温度からさらに0〜5℃低い温度とすることが好ましい。
【0038】
具体的には、アニーリング温度を65〜73℃とすることが好ましく、68〜73℃とすることがより好ましく、68℃とすることが最も好ましい。なお、これらに対応して、プライマーの融解温度の最小が、70〜78℃となるようにプライマーを設計することが好ましく、73〜78℃となるようにすることがより好ましい。特に、プライマーの融解温度の最小は、73℃となるようにすることが最も好ましい。
このように、上記のアニーリング条件を適用することにより、増幅効率の不安定や増幅の干渉を防止することが可能となる。
【0039】
ここで、PCRのアニーリング工程において、鋳型DNAとプライマーが結合するためには耐熱性菌由来のDNAポリメラーゼの働きが必要である。すなわち、このDNAポリメラーゼは、70〜80℃周辺の温度で高い活性を示す。一方、アニーリング温度が高すぎると塩基同士の結合において、熱エネルギーが過大となって結合が阻害され、増幅産物量が減少する。
また、増幅産物を電気泳動ではなく、DNAチップやDNAマイクロアレイで検出する際に、核酸合成物質へ蛍光色素を付与した場合、アニーリング温度が70℃以上になると蛍光が増幅産物に取り込まれないことがある一方、アニーリング温度が68℃では高い蛍光強度が得られる。
【0040】
以上のことから、上述したように、アニーリング温度を65〜73℃とすることが好ましく、68〜73℃とすることがより好ましく、68℃とすることが最も好ましい。また、以下の実施例において示されるように、プライマーの融解温度の最小は、アニーリング温度に0〜5℃を加えた温度が適している。このため、プライマーの融解温度のうち最小は、73〜78℃に設定することが好ましい。
【0041】
次に、PCR法による産物を、マイクロキャピラリーなどの電気泳動により増幅対象領域ごとに泳動させ、正しい増幅産物が得られているか否かを確認する。また、電気泳動に代えて、DNAチップやDNAマイクロアレイなどを用いて、正しい増幅産物が得られているか否かを確認することも好ましい。これらは通常の方法により行うことが可能である。
【0042】
[プライマーの設計方法]
次に、本発明のプライマーの設計方法の実施形態について、詳細に説明する。
【0043】
[プライマーの設計方法の第一実施形態]
まず、図1及び図2を参照して、本発明のプライマーの設計方法の第一実施形態について説明する。図1は、本実施形態におけるプライマー設計装置の構成を示すブロック図であり、図2は、本実施形態におけるプライマーの設計方法を示すフローチャートである。
【0044】
PCRを行うにあたっては、上述したように、増幅対象生物を特異的に増幅することが可能なプライマーを設計することが重要であり、特に複数の微生物を同時に特異的に増幅するマルチプレックスPCRを行う場合には、プライマーの競合やダイマーの形成がなく、増幅の干渉が少ないプライマーを設計することが必要である。
特に、マルチプレックスPCRを用いての同時増幅および検出の場合においては、同じような機能を持つ遺伝子では塩基配列が類似していることが多い。このため、複数の微生物をそれぞれ増幅するためのプライマーを作製して、これらの微生物を同時に増幅する場合、増幅が干渉し合うことで、検出感度の低下につながることが多い。
【0045】
本実施形態は、このようなプライマーの設計条件として、各増幅対象生物の遺伝子における増幅対象領域を増幅させるためフォワードプライマー及びリバースプライマーの少なくとも一方の塩基配列が、所定の非増幅対象生物のDNAの塩基配列と、12塩基以上連続で重ならないように作製するものである(条件A−1)。また、このとき、プライマーセットにおけるフォワードプライマー及びリバースプライマーの少なくとも一方の塩基配列を、他の増幅対象生物及び所定の非増幅対象生物のDNAの塩基配列と、12塩基以上連続で重ならないものとすることがより好ましく(条件A−2)、当該増幅対象生物のDNAにおける非増幅対象領域の塩基配列、並びに、他の増幅対象生物及び所定の非増幅対象生物のDNAの塩基配列と、12塩基以上連続で重ならないものとすることがさらに好ましい(条件A−3)。本実施形態では、条件Aとして、A−1〜3のいずれかを用いることができる。
このような条件でプライマーを設計すれば、後述する実施例に示すように増幅反応が干渉しにくいプライマーを作製することができる。
【0046】
本実施形態のプライマーの設計方法は、図1に示すプライマー設計装置10により行うことができる。
プライマー設計装置10としては、パーソナルコンピュータやサーバ、タブレット型コンピュータ、携帯端末などの情報処理装置を用いることができる。このプライマー設計装置10は、図1に示すように、塩基配列記憶手段11、増幅対象生物選択手段12、非増幅対象生物選択手段13、プライマー候補選択手段14、十二塩基連続重複判定手段15、及びプライマーセット記憶手段16を備えている。
【0047】
なお、プライマー設計装置10におけるこれらの構成は、利用者が使用する情報処理装置内に備えられる必要はなく、これらの全部又は一部を他の情報処理装置に備え、ネットワークを通じて接続することによって構成することもできる。また、プライマー設計装置10は、独立した情報処理装置により構成することができるほか、ASP(Application Service Provider)や、SaaS(software as a service)などや、二以上の情報処理装置によって構成することができ、クライアント端末からアクセス可能なものにすることもできる。これは以下の実施形態における各種プライマー設計装置についても同様である。
【0048】
塩基配列記憶手段11は、増幅対象生物及び非増幅対象生物のDNAの塩基配列を記憶するデータベースなどの記憶装置である。この塩基配列記憶手段11は、増幅対象生物及び非増幅対象生物の識別情報ごとにDNAの塩基配列、各生物名称や分類等の各種属性情報を記憶する。これらの増幅対象生物及び非増幅対象生物のDNAの塩基配列としては、それぞれの生物における全塩基配列(全ゲノムDNA配列)とすることが好ましい。なお、全塩基配列ではなく、一部の領域を欠くものや一部の塩基配列のみを用いても良い。
【0049】
増幅対象生物選択手段12は、塩基配列記憶手段11から増幅対象生物を選択して記憶する。このとき、増幅対象生物選択手段12は、例えば塩基配列記憶手段11から記憶されている生物名称を一覧表示し、選択された一又は二以上の生物の名称とその識別情報を、増幅対象生物として記憶することができる。
【0050】
非増幅対象生物選択手段13は、塩基配列記憶手段11から非増幅対象生物を選択して記憶する。このとき、非増幅対象生物選択手段13は、例えば塩基配列記憶手段11から記憶されている生物名称を一覧表示し、選択された一又は二以上の生物の名称とその識別情報を、非増幅対象生物として記憶することができる。
なお、先に増幅対象領域を決定した後に、相同性検索を行って、増幅対象生物における当該領域と類似する配列を備えた非増幅対象生物を選択することも好ましい。
【0051】
プライマー候補選択手段14は、増幅対象生物のDNAの塩基配列からプライマーセットの候補となる塩基配列を選択し、これを当該増幅対象生物の識別情報に対応付けて一時的に記憶する。なお、このときプライマー候補選択手段14に、増幅対象領域の両端付近の領域から23mer〜41mer程度の長さのフォワードプライマー及びリバースプライマーを選択させることが好ましい。
【0052】
十二塩基連続重複判定手段15は、プライマー候補選択手段14により選択されたプライマーセットにおけるフォワードプライマー及びリバースプライマーの塩基配列が、非増幅対象生物のDNAの塩基配列と、12塩基以上連続で重複するか否かを判定する。
また、プライマーセットにおけるフォワードプライマー及びリバースプライマーの塩基配列が、他の増幅対象生物のDNAの塩基配列又は所定の非増幅対象生物のDNAの塩基配列と、12塩基以上連続で重複するか否かを判定することがより好ましく、当該増幅対象生物のDNAにおける非増幅対象領域の塩基配列、当該増幅対象生物以外の他の増幅対象生物のDNAの塩基配列、又は所定の非増幅対象生物のDNAの塩基配列と、12塩基以上連続で重複するか否かを判定することがさらに好ましい。
【0053】
このとき、十二塩基連続重複判定手段15は、非増幅対象生物選択手段13により選択された一又は二以上の非増幅対象生物について、塩基配列記憶手段11における非増幅対象生物の識別情報に対応する塩基配列に、上記フォワードプライマー及びリバースプライマーの塩基配列と12塩基以上連続で重複する領域が存在するか否かを判定する。
【0054】
また、増幅対象生物選択手段12により選択された増幅対象生物について、プライマーセットの候補が選択された当該増幅対象生物以外の一又は二以上の他の増幅対象生物が存在する場合、十二塩基連続重複判定手段15は、塩基配列記憶手段11におけるこれら他の増幅対象生物の識別情報に対応する塩基配列に、上記フォワードプライマー及びリバースプライマーの塩基配列と12塩基以上連続で重複する領域が存在するか否かを判定する。
【0055】
さらに、プライマーセットの候補が選択された当該増幅対象生物について、十二塩基連続重複判定手段15は、塩基配列記憶手段11における当該増幅対象生物の識別情報に対応する塩基配列の非増幅対象領域に、上記フォワードプライマー及びリバースプライマーの塩基配列と12塩基以上連続で重複する領域が存在するか否かを判定する。
【0056】
十二塩基連続重複判定手段15による判定の結果、非増幅対象生物のDNAの塩基配列について、上記フォワードプライマー及びリバースプライマーの塩基配列の少なくともいずれかが、12塩基以上連続で重複しない場合、当該プライマーセットを、作製に用いるプライマーセットとして決定することができる。また、このとき、上記その他の増幅対象生物及び非増幅対象生物のDNAの塩基配列について、上記フォワードプライマー及びリバースプライマーの塩基配列の少なくともいずれかが、12塩基以上連続で重複しない場合、当該プライマーセットを、作製に用いるプライマーセットとして決定することが好ましい。さらに、このとき、当該増幅対象生物とその他の増幅対象生物及び非増幅対象生物のDNAの塩基配列について、上記フォワードプライマー及びリバースプライマーの塩基配列の少なくともいずれかが、12塩基以上連続で重複しない場合、当該プライマーセットを、作製に用いるプライマーセットとして決定することがより好ましい。
【0057】
十二塩基連続重複判定手段15による判定の結果、それぞれ上記以外の場合、例えば、当該増幅対象生物とその他の増幅対象生物及び非増幅対象生物のDNAの塩基配列の少なくともいずれかについて、上記フォワードプライマー及びリバースプライマーの塩基配列の両方が、12塩基以上連続で重複する場合、プライマー候補選択手段14は、増幅対象である当該増幅対象生物のDNAの塩基配列から再度プライマーセットの候補となる塩基配列を選択し直して、これを当該増幅対象生物の識別情報に対応付けて一時的に記憶する。そして、再度、十二塩基連続重複判定手段15による上記判定が行われる。
【0058】
プライマーセット記憶手段16は、十二塩基連続重複判定手段15により、作製に用いるプライマーセットとして決定されたプライマーセットの塩基配列を、増幅対象生物の識別情報に対応付けて記憶する。
【0059】
次に、図2を参照して、本実施形態のプライマーの設計方法における各工程について説明する。なお、プライマー設計装置10における各手段の処理の順序は、適宜変更しても良い。これは以下の実施形態における各種プライマー設計装置についても同様である。
まず、プライマー設計装置10における増幅対象生物選択手段12は、塩基配列記憶手段11から、記憶されている生物名称を一覧表示し、選択された一又は二以上の生物の名称とその識別情報を、増幅対象生物として記憶する(ステップ10)。また、プライマー設計装置10における非増幅対象生物選択手段13は、塩基配列記憶手段11から、記憶されている生物名称を一覧表示し、選択された一又は二以上の生物の名称とその識別情報を、非増幅対象生物として記憶する(ステップ11)。
【0060】
次に、プライマー設計装置10におけるプライマー候補選択手段14により、増幅対象生物選択手段12により選択された増幅対象生物の識別情報に対応する塩基配列を塩基配列記憶手段11から検索して取得する。そして、取得された塩基配列からプライマーセットの候補となるフォワードプライマーとリバースプライマーの塩基配列を選択し、これを当該増幅対象生物の識別情報に対応付けて一時的に記憶する(ステップ12)。なお、増幅対象生物選択手段12により複数の増幅対象生物及び対象領域が選択されている場合は、各増幅対象生物毎及び対象領域毎にプライマーセットの候補を選択して記憶することができる。
【0061】
次に、プライマー設計装置10における十二塩基連続重複判定手段15により、上記プライマーセットの候補のフォワードプライマーとリバースプライマーの塩基配列の少なくともいずれかが、非増幅対象生物選択手段13により選択された非増幅対象生物の識別情報に対応する塩基配列と12塩基以上連続して重複するか否かを判定する(ステップ13)。このとき、プライマー設計装置10における十二塩基連続重複判定手段15により、上記プライマーセットの候補のフォワードプライマーとリバースプライマーの塩基配列の少なくともいずれかが、このプライマーセットの候補が選択された当該増幅対象生物の識別情報に対応する塩基配列の非増幅対象領域、他の増幅対象生物の識別情報に対応する塩基配列、又は非増幅対象生物選択手段13により選択された非増幅対象生物の識別情報に対応する塩基配列と12塩基以上連続して重複するか否かを判定することも好ましい。
【0062】
そして、プライマーセットの候補のフォワードプライマーとリバースプライマーの塩基配列の両方が、非増幅対象生物のDNAの塩基配列のいずれかと12塩基以上連続して重複した場合(ステップ14のYES)、再度ステップ12のプライマーセットの候補の選択から繰り返す。このとき、プライマーセットの候補のフォワードプライマーとリバースプライマーの塩基配列の両方が、このプライマーセットの候補が選択された当該増幅対象生物の識別情報に対応する塩基配列の非増幅対象領域、他の増幅対象生物の識別情報に対応する塩基配列、又は非増幅対象生物選択手段13により選択された非増幅対象生物の識別情報に対応する塩基配列のいずれかと12塩基以上連続して重複した場合に、再度ステップ12のプライマーセットの候補の選択から繰り返すようにすることも好ましい。
【0063】
プライマーセットの候補のフォワードプライマーとリバースプライマーの塩基配列の少なくともいずれかが、非増幅対象生物のDNAの塩基配列と12塩基以上連続して重複しない場合(ステップ14のNO)、十二塩基連続重複判定手段15は、当該プライマーセットの候補を、PCRに用いるプライマーセットとして決定する(ステップ15)。このとき、プライマーセットの候補のフォワードプライマーとリバースプライマーの塩基配列の少なくともいずれかが、このプライマーセットの候補が選択された当該増幅対象生物の識別情報に対応する塩基配列の非増幅対象領域、他の増幅対象生物の識別情報に対応する塩基配列、及び非増幅対象生物選択手段13により選択された非増幅対象生物の識別情報に対応する塩基配列と、12塩基以上連続して重複しない場合(ステップ14のNO)、当該プライマーセットの候補を、PCRに用いるプライマーセットとして決定することも好ましい。
十二塩基連続重複判定手段15は、以上の工程を、ステップ10で選択された全ての増幅対象生物について、それぞれ行うことができる。
【0064】
このような本実施形態のプライマーの設計方法によれば、非特異的な増幅を行い難いプライマーセットを設計することができる。このため、このような設計方法により作製されたプライマーセットは、マルチプレックスPCR用のプライマーセットに用いた場合にも、PCRにおける非特異的な増幅を抑制でき、好適に使用することが可能である。
【0065】
[プライマーの設計方法の第二実施形態]
次に、図3〜図5を参照して、本発明のプライマーの設計方法の第二実施形態について説明する。図3は、本実施形態におけるプライマー設計装置の構成を示すブロック図であり、図4は、本実施形態において作製されたプライマーの配列の例を示す図であり、図5は、本実施形態におけるプライマーの設計方法を示すフローチャートである。
【0066】
微生物のDNAの塩基配列において、GC配列は、GC含有量が少ない菌類で約25%、多い菌類で約80%程度(配列数の百分率。以下GC又はAT含有量について同様。)含まれており、その範囲は非常に幅広くなっている。また、GCリッチな部分やATリッチな部分などがあるため、プライマーの設計において、GC含有量に適したプライマー配列の設計思想が求められる。
本実施形態は、主に塩基配列のGC含有量が多い生物を増幅対象生物とする場合に、好適に用いられるものである。ここで、「GC含有量が多い」とは、塩基配列におけるG又はC塩基の含有量が50%以上である場合を意味する。
【0067】
本実施形態におけるプライマー設計装置20は、図3に示すように、塩基配列記憶手段21、増幅対象生物選択手段22、非増幅対象生物選択手段23、プライマー候補選択手段24、GC配列判定手段25、及びプライマーセット記憶手段26を備えている。
本実施形態では、GC配列判定手段25により、候補のプライマーの塩基配列におけるG又はCの連続配列にもとづいて、これをPCR用のプライマーセットとして用いるか否かを決定する点で第一実施形態と異なっている。その他の点については、第一実施形態と同様のものとすることができ、本実施形態におけるその他の各手段は、第一実施形態における同名の各手段とそれぞれ同様の処理を行うものとすることができる。また、図5に示す本実施形態のプライマーの設計方法の各工程は、図2の条件A(ステップ13,14)を、条件B(ステップ23,24)に変更した点以外は同様である。
【0068】
GC配列判定手段25は、プライマー候補選択手段24により選択されたプライマーセットにおけるフォワードプライマー配列及びリバースプライマー配列が、3’末端側半分において、G又はCを連続で3塩基以上備える配列を有するか否かを判定する(ステップ23)。
GC配列判定手段25による判定の結果、選択されたプライマーセットにおけるフォワードプライマー及びリバースプライマーの塩基配列の少なくとも一方が、G又はCを連続で3塩基以上備えている場合(ステップ24のYES)、GC配列判定手段25は、当該プライマーセットの候補を、PCRに用いるプライマーセットとして決定する(ステップ25)。そして、プライマーセット記憶手段26は、この決定されたプライマーセットを記憶する。
【0069】
GC配列判定手段25による判定の結果、選択されたプライマーセットにおけるフォワードプライマー及びリバースプライマーの塩基配列の両方が、G又はCを連続で3塩基以上備えていない場合(ステップ24のNO)、再度ステップ22からの処理を繰り返す。すなわち、プライマー候補選択手段24により増幅対象生物からフォワードプライマーとリバースプライマーの候補を選択し直して、GC配列判定手段25により、G又はCを連続で3塩基以上備えているプライマーを含むプライマーセットが見つかるまで、条件Bの処理を繰り返す。
GC配列判定手段25による判定は、ステップ20で選択された全ての増幅対象生物について、それぞれ行うことができる。
【0070】
このようにしてPCRに用いるものとして決定されたプライマーセットにおける、G又はCを連続で3塩基以上備えているプライマーの塩基配列の例を図4に示す。
同図において、リステリアのdnaJ領域から選択されたリバースプライマー(配列番号1:GAGAATCCTCCACCGCTAAATCCGCC)は、3’末端側において、G又はCを連続で5塩基備えている。
また、黄色ブドウ球菌のdnaJ領域から選択されたフォワードプライマー(配列番号2:CACGCCTGGAGAGCCTTCACCAGC)は、3’末端側(中央を含む)において、G又はCを連続で3塩基備えている。
【0071】
また、サルモネラのinvA領域から選択されたフォワードプライマー(配列番号3:GAACAACCCATTTGTATTGGTTGTTACGGC)は、3’末端側において、G又はCを連続で4塩基備えている。
さらに、大腸菌のpyrH領域から選択されたフォワードプライマー(配列番号4:CGCTCGTCTGATGTCCGCTATTCCATTGAAT)は、3’末端側(中央を含む)において、G又はCを連続で3塩基備えている。
また、カンピロバクターの16SrDNA領域から選択されたフォワードプライマー(配列番号5:GAAATCTAATGGCTTAACCATTAAACTGCTTGGG)は、3’末端側において、G又はCを連続で3塩基備えている。
【0072】
このようにして得られたプライマーを含むプライマーセットを用いてPCRを行うことにより、増幅の特異性を、一層向上させることが経験上明らかとなっている。
【0073】
[プライマーの設計方法の第三実施形態]
次に、図6〜図8を参照して、本発明の第三実施形態について説明する。図6は、本実施形態におけるプライマー設計装置の構成を示すブロック図であり、図7は、本実施形態において作製されたプライマーの配列の例を示す図であり、図8は、本実施形態のプライマーの設計方法を示すフローチャートである。
本実施形態は、主に塩基配列のGC含有量が少ない生物を増幅対象生物とする場合に、好適に用いられるものである。ここで、「GC含有量が少ない」とは、塩基配列におけるG又はC塩基の含有量が50%未満である場合を意味する。
【0074】
本実施形態におけるプライマー設計装置30は、図6に示すように、塩基配列記憶手段31、増幅対象生物選択手段32、非増幅対象生物選択手段33、プライマー候補選択手段34、AT配列判定手段35、及びプライマーセット記憶手段36を備えている。
本実施形態では、AT配列判定手段35により、候補のプライマーの塩基配列におけるA又はTの連続配列にもとづいて、これをPCR用のプライマーセットとして用いるか否かを決定する点で第一実施形態と異なっている。その他の点については、第一実施形態と同様のものとすることができ、本実施形態におけるその他の各手段は、第一実施形態における同名の各手段とそれぞれ同様の処理を行うものとすることができる。また、図8に示す本実施形態のプライマーの設計方法の各工程は、図2の条件A(ステップ13,14)を、条件C(ステップ33,34)に変更した点以外は、図2におけるものと同様である。
【0075】
AT配列判定手段35は、プライマー候補選択手段34により選択されたプライマーセットにおけるフォワードプライマー及びリバースプライマーの塩基配列が、それぞれのプライマーの塩基配列の中心から3’末端側及び5’末端側の両方向に向かってそれぞれのプライマーの全長の四分の1の範囲を含む領域(以下、この領域を中央領域と称する。)に、A又はTを連続で4塩基以上備える配列を有するか否かを判定する(ステップ33)。
AT配列判定手段35による判定の結果、選択されたプライマーセットにおけるフォワードプライマー及びリバースプライマーの塩基配列の少なくとも一方が、中央領域に、A又はTを連続で4塩基以上備えている場合(ステップ34のYES)、AT配列判定手段35は、当該プライマーセットの候補を、PCRに用いるプライマーセットとして決定する(ステップ35)。そして、プライマーセット記憶手段36は、この決定されたプライマーセットを記憶する。
【0076】
AT配列判定手段35による判定の結果、選択されたプライマーセットにおけるフォワードプライマー及びリバースプライマーの塩基配列の両方が、中央領域に、A又はTを連続で4塩基以上備えていない場合(ステップ34のNO)、再度ステップ32からの処理を繰り返す。すなわち、プライマー候補選択手段34により増幅対象生物からフォワードプライマーとリバースプライマーの候補を選択し直して、AT配列判定手段35により、中央領域にA又はTを連続で4塩基以上備えているプライマー配列を含むプライマーセットが見つかるまで、条件Cの処理を繰り返す。
【0077】
AT配列判定手段35による判定は、ステップ30で選択された全ての増幅対象生物について、それぞれ行うことができる。
このようにしてPCRに用いるものとして決定されたプライマーセットにおける、A又はTを連続で4塩基以上備えているプライマー配列の例を図7に示す。
【0078】
同図において、ビブリオのtdh領域から選択されたフォワードプライマー(配列番号6:TCAGTTTACTTTTTTGGGTTTTTTGGCTTTCATGAAACCTG)は、中央領域に、A又はTを連続で6塩基備えている。
また、セレウスのnhe領域から選択されたフォワードプライマー(配列番号7:CATCTGTTGATGCGGCTTTAAAAGGGAAGT)は、中央領域に、A又はTを連続で7塩基備えている。
さらに、セレウスのcesB領域から選択されたフォワードプライマー(配列番号8:CACCTGCCGGAGGAGCAAAAATGATACAAC)は、中央領域に、A又はTを連続で6塩基備えている。
【0079】
このようにして得られたプライマーを含むプライマーセットを用いてPCRを行うことにより、増幅の特異性を、一層向上させることが経験上明らかとなっている。
【0080】
[プライマーの設計方法の第四実施形態]
次に、図9及び図10を参照して、本発明の第四実施形態について説明する。図9は、本実施形態におけるプライマー設計装置の構成を示すブロック図であり、図10は、本実施形態のプライマーの設計方法を示すフローチャートである。
【0081】
本実施形態におけるプライマー設計装置40は、図9に示すように、塩基配列記憶手段41、増幅対象生物選択手段42、非増幅対象生物選択手段43、プライマー候補選択手段44、融解温度判定手段45、及びプライマーセット記憶手段46を備えている。
本実施形態におけるプライマー設計装置40は、プライマー候補選択手段44が増幅対象生物のDNAの塩基配列から所定の長さのフォワードプライマーとリバースプライマーの候補を選択するとともに、融解温度判定手段45により、フォワードプライマーとリバースプライマーの融解温度が所定の範囲内である場合に、PCRに用いるプライマーセットとして用いることを決定する点で第一実施形態と異なっている。その他の点については、第一実施形態と同様のものとすることができ、本実施形態におけるその他の各手段は、第一実施形態における同名の各手段とそれぞれ同様の処理を行うものとすることができる。また、図10に示す本実施形態のプライマーの設計方法の各工程は、ステップ42の内容、及び図2の条件A(ステップ13,14)を条件D(ステップ43〜45)に変更した点以外は、図2におけるものと同様である。
【0082】
プライマー候補選択手段44は、増幅対象生物のDNAの塩基配列からプライマーセットの候補となる塩基配列を選択し、これを当該増幅対象生物の識別情報に対応付けて一時的に記憶する。本実施形態におけるこのプライマー候補選択手段44は、増幅対象領域の両端付近の領域から23mer〜41mer程度の長さのフォワードプライマー及びリバースプライマーを選択する。
【0083】
融解温度判定手段45は、プライマー候補選択手段44により選択されたプライマーセットにおけるフォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度(Tm値)を算出し、その融解温度が70〜78℃であるか否かを判定することができる(ステップ43、44)。この判定において、融解温度が73〜78℃であるか否かを判定するようにすることがより好ましい。以下においても同様である。PCRにおけるアニーリング温度との関係で、プライマーの融解温度をこのような範囲にすれば、より特異性の高い増幅を実現することができる。
【0084】
なお、融解温度判定手段45によるフォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の算出方法としては、例えばWallace法、GC%法、最近接塩基対法等を用いることができる。このうち、最近接塩基対法はプライマーの塩基組成、反応溶液の塩濃度、プライマーの長さや使用濃度、塩基の組成の他、塩濃度以外に隣接塩基間の熱力学エネルギー安定性を考慮するものであり、特に好ましい。以下の実施例では、この最近接塩基対法を用いて融解温度を算出している。
【0085】
融解温度判定手段45による判定の結果、フォワードプライマー及びリバースプライマーの両方の融解温度が70〜78℃である場合(ステップ45のYES)、融解温度判定手段45は、当該プライマーセットの候補を、PCRに用いるプライマーセットとして決定する(ステップ46)。そして、プライマーセット記憶手段46は、この決定されたプライマーセットを記憶する。
【0086】
融解温度判定手段45による判定の結果、フォワードプライマー及びリバースプライマーの少なくともいずれか一方の融解温度が70〜78℃でない場合(ステップ45のNO)、再度ステップ42からの処理を繰り返す。すなわち、プライマー候補選択手段44は、増幅対象生物からフォワードプライマーとリバースプライマーの候補を選択し直して、融解温度判定手段45によりフォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度を算出し、フォワードプライマー及びリバースプライマーの両方の融解温度が70〜78℃であるプライマーセットが見つかるまで、条件Dの処理を繰り返すことができる。
【0087】
融解温度判定手段45による判定は、ステップ40で選択された全ての増幅対象生物について、それぞれ行うことができる。
本実施形態のプライマーの設計方法によれば、作製されるプライマーセットによる増幅の特異性を、一層向上させることが可能となる。
【0088】
[プライマーの設計方法の第五実施形態]
次に、図11及び図12を参照して、本発明の第五実施形態について説明する。図11は、本実施形態におけるプライマー設計装置の構成を示すブロック図であり、図12は、本実施形態のプライマーの設計方法を示すフローチャートである。
【0089】
上述したように、微生物のDNAの塩基配列は、例えばGC含有量が少ない菌類で25%、多い菌類で80%程度と非常に幅広い。このGC含有量は、プライマーの融解温度に影響を与えるため、プライマーの設計にあたっては、フォワードプライマーとリバースプライマーの融解温度をできるだけ揃えることが好ましい。
さらに、マルチプレックスPCRにおいては、複数の増幅対象生物間で、プライマーの融解温度を揃えることができればより好ましい。
そこで、本実施形態では、プライマーの融解温度に着目して、以下に説明する条件Eを行うものとしている。
【0090】
本実施形態におけるプライマー設計装置50は、図11に示すように、塩基配列記憶手段51、増幅対象生物選択手段52、非増幅対象生物選択手段53、プライマー候補選択手段54、融解温度算出手段55、温度差判定手段56、及びプライマーセット記憶手段57を備えている。
本実施形態におけるプライマー設計装置50は、融解温度算出手段55と温度差判定手段56により、フォワードプライマーとリバースプライマーの融解温度差が所定の範囲内である場合に、PCRに用いるプライマーセットとして用いることを決定する点で第一実施形態と異なっている。その他の点については、第一実施形態と同様のものとすることができ、本実施形態におけるその他の各手段は、第一実施形態における同名の各手段とそれぞれ同様の処理を行うものとすることができる。また、図12に示す本実施形態のプライマーの設計方法の各工程は、図2の条件A(ステップ13,14)を、条件E(ステップ53〜55)に変更した点以外は、図2におけるものと同様である。
【0091】
融解温度算出手段55は、プライマー候補選択手段54により選択されたプライマーセットにおけるフォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度を算出する。
また、温度差判定手段56は、算出された融解温度の差(融解温度の差の絶対値。以下同様。)が、5℃未満であるか否かを判定する(ステップ53,54)。融解温度の差が、このような範囲であれば、特異性の高い増幅が行えるためである。
【0092】
温度差判定手段56による判定の結果、算出された融解温度の差が、5℃未満である場合(ステップ55のYES)、温度差判定手段56は、当該プライマーセットの候補を、PCRに用いるプライマーセットとして決定する(ステップ56)。そして、プライマーセット記憶手段57は、この決定されたプライマーセットを記憶する。
【0093】
温度差判定手段56による判定の結果、算出された融解温度の差が、5℃未満でない場合(ステップ55のNO)、再度ステップ52からの処理を繰り返す。すなわち、プライマー候補選択手段54は、増幅対象生物からフォワードプライマーとリバースプライマーの候補を選択し直して、融解温度算出手段55によりフォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度を算出し、温度差判定手段56により融解温度の差が5℃未満のフォワードプライマー及びリバースプライマーを含むプライマーセットが見つかるまで、条件Eの処理を繰り返すことができる。
【0094】
融解温度算出手段55と温度差判定手段56による判定は、ステップ50で選択された全ての増幅対象生物について、それぞれ行うことができる。
本実施形態のプライマーの設計方法によれば、作製されるプライマーセットによる増幅の特異性を、一層向上させることが可能となる。
【0095】
[プライマーの設計方法の第六実施形態]
次に、図13及び図14を参照して、本発明の第六実施形態について説明する。図13は、本実施形態におけるプライマー設計装置の構成を示すブロック図であり、図14は、本実施形態のプライマーの設計方法を示すフローチャートである。
【0096】
本実施形態におけるプライマー設計装置60は、図13に示すように、塩基配列記憶手段61、増幅対象生物選択手段62、非増幅対象生物選択手段63、プライマー候補選択手段64、融解温度算出手段65、温度差判定手段66、十二塩基連続重複判定手段67、及びプライマーセット記憶手段68を備えている。
本実施形態におけるプライマー設計装置60は、上記条件の一部、すなわち第一実施形態における条件Aと、第五実施形態における条件Eを組み合わせた構成を備えており、これによって、PCRに用いるプライマーセットを決定するものである。その他の点については、第一実施形態と同様のものとすることができ、本実施形態におけるその他の各手段は、第一実施形態における同名の各手段とそれぞれ同様の処理を行うことができる。
【0097】
本実施形態のプライマーの設計方法は、条件Eを行うまでの動作(ステップ60〜65)については、第五実施形態における図12の動作(ステップ50〜55)と同様のものとすることができる。
温度差判定手段66による判定の結果、算出された融解温度の差が、5℃未満である場合(ステップ65のYES)、次に、条件Aを第一実施形態と同様に行って(ステップ66、67)、選択されたプライマーセットにおけるフォワードプライマー及びリバースプライマーの塩基配列の少なくともいずれかが、非増幅対象生物のDNAの塩基配列と、12塩基以上連続で重複しない場合(ステップ67のNO)、当該プライマーセットを、作製に用いるプライマーセットとして決定する(ステップ68)。このとき、選択されたプライマーセットにおけるフォワードプライマー及びリバースプライマーの塩基配列の少なくともいずれかが、このプライマーセットの候補が選択された当該増幅対象生物のDNAの塩基配列の非増幅対象領域、他の増幅対象生物のDNAの塩基配列、及び非増幅対象生物のDNAの塩基配列と、12塩基以上連続して重複しない場合、当該プライマーセットの候補を、PCRに用いるプライマーセットとして決定することも好ましい。
【0098】
また、十二塩基連続重複判定手段67による判定の結果、上記以外の場合、すなわち、非増幅対象生物のDNAの塩基配列の少なくともいずれかについて、上記フォワードプライマー及びリバースプライマーの塩基配列の両方が、12塩基以上連続で重複する場合(ステップ67のYES)、プライマー候補選択手段64により増幅対象生物のDNAの塩基配列から再度プライマーセットの候補となる塩基配列を選択し、ステップ62からの動作を繰り返す。このとき、上記フォワードプライマー及びリバースプライマーの塩基配列の両方が、このプライマーセットの候補が選択された当該増幅対象生物のDNAの塩基配列の非増幅対象領域、他の増幅対象生物のDNAの塩基配列、又は非増幅対象生物のDNAの塩基配列の少なくともいずれかと、12塩基以上連続して重複する場合、再度プライマーセットの候補となる塩基配列を選択し直して、ステップ62からの動作を繰り返すことも好ましい。
【0099】
また、温度差判定手段66による判定の結果、算出された融解温度の差が、5℃未満でない場合(ステップ65のNO)にも、再度ステップ62からの処理を繰り返す。
これらの判定についても、ステップ60で選択された全ての増幅対象生物について、それぞれ行うことができる。
本実施形態のプライマーの設計方法によれば、作製されるプライマーセットによる増幅の特異性を、より一層向上させることが可能となる。
【0100】
[プライマーの設計方法の第七実施形態]
次に、図15及び図16を参照して、本発明の第七実施形態について説明する。図15は、本実施形態におけるプライマー設計装置の構成を示すブロック図であり、図16は、本実施形態のプライマーの設計方法を示すフローチャートである。
【0101】
本実施形態におけるプライマー設計装置70は、図15に示すように、塩基配列記憶手段71、増幅対象生物選択手段72、非増幅対象生物選択手段73、プライマー候補選択手段74、GC含量判定手段75、GC配列判定手段76、AT配列判定手段77、融解温度判定手段78、融解温度算出手段79、温度差判定手段7a、十二塩基連続重複判定手段7b、及びプライマーセット記憶手段7cを備えている。
本実施形態におけるプライマー設計装置70は、このように第一実施形態〜第五実施形態における判定手段を全て備えるとともに、さらにGC含量判定手段75を備え、これらによってPCRに用いるプライマーセットを決定するものである。具体的には、以下の通りであるが、その他の点については、第一実施形態と同様のものとすることができる。
【0102】
なお、本実施形態では、条件A〜Eのすべてを満たすプライマーセットを設計する例を示しているが、その一部の条件のみを満たすプライマーセットを設計することもできる。また、図16における各条件の判定を行う順序は、入れ替えても良い。さらに、複数の条件において同じデータを用いる場合には、後の算出処理を省略しても良い。例えば、条件Eの処理において、融解温度算出手段79による融解温度の算出処理を省略し、条件Dの処理で融解温度判定手段78により算出された融解温度を用い、温度差判定手段7aによる融解温度差を算出することが可能である。
【0103】
GC含量判定手段75は、入力したフォワードプライマー及びリバースプライマーの候補のGC含量を算出し、含有量が50%であるか否かを判定する。GC含量は、これらのプライマーの全塩基配列数に対するG及びCの塩基配列数の割合にもとづき算出することができる。
本実施形態では、プライマー候補選択手段74により、増幅対象生物のDNAの塩基配列から長さが23〜41merのフォワードプライマー及びリバースプライマーが選択されて、これらがGC含量判定手段75に入力される。なお、条件Dの判定を省略する場合は、プライマー候補選択手段74により、長さが23〜41merの制限なくプライマーセットの候補が選択され、GC含量判定手段75による上記GC含量の判定を行うことができる。
【0104】
本実施形態のプライマーの設計方法は、GC含量判定手段75による判定が行われる前までの動作(ステップ70〜72)については、第四実施形態における図10の動作(ステップ40〜42)と同様のものとすることができる。
次に、GC含量判定手段75により、フォワードプライマー及びリバースプライマーの候補のGC含量を算出し、含有量が50%であるか否かを判定する(ステップ73)。
【0105】
そして、GC含量が50%以上の場合、条件BのGC配列判定処理を実行し(ステップ74)、GC含量が50%未満の場合、条件CのAT配列判定処理を実行し(ステップ75)、次いで条件Dにおける融解温度判定処理を実行する(ステップ76)。ここで、ステップ74は、第二実施形態における図5の動作(ステップ23〜24)と同様のものとすることができ、ステップ75は、第三実施形態における図8の動作(ステップ33〜34)と同様のものとすることができ、ステップ76は、第四実施形態における図10の動作(ステップ43〜45)と同様のものとすることができる。
【0106】
続いて、条件Eの融解温度差判定処理を実行し(ステップ77)、さらに条件Aの12塩基連続重複判定処理を実行して(ステップ78)、全ての条件を満たすものを、プライマーセットとして決定することができる(ステップ79)。ここで、ステップ77は、第五実施形態における図12の動作(ステップ53〜55)と同様のものとすることができ、ステップ75は、第一実施形態における図2の動作(ステップ13〜14)と同様のものとすることができる。
【0107】
本実施形態のプライマーの設計方法によれば、作製されるプライマーセットによる増幅の特異性を、極めて高い精度にまで向上させることが可能となっている。
【0108】
以上の通り、本発明のプライマーの作製方法、プライマーの使用方法、プライマーセット、PCR用反応液、及びプライマーの設計方法によれば、作業者の経験や技能に関係なく簡単に、特異性の高いプライマーを作成することができるため、一回の試験で複数菌を検出することが可能となる。このため、検査コストを大幅に削減することが可能となる。
また、このように特異性の高いプライマーを設計できるため、特異性の検証に必要なプライマー量を削減することが可能となる。
さらに、本発明はDNAを有する各種生物体の検出にも応用でき、産業の発展に寄与する有用性の高いものであると言える。
【実施例】
【0109】
<実験1:「12塩基以上連続で重ならない」に関して>
本発明のプライマーの作製方法及びプライマーの設計方法にもとづいて、「プライマーセットにおけるフォワードプライマー及びリバースプライマーの少なくとも一方の塩基配列が、所定の非増幅対象生物のDNAの塩基配列と、12塩基以上連続で重ならない(条件A)」を満たすプライマーセットを155個作製し、これらをそれぞれ用いてPCR法を行うことにより、増幅対象領域が特異的に増幅されるか否かを確認した。その結果、全てのプライマーセットについて、特異的な増幅が行われ、非増幅対象領域が増幅されなかった。このうち3例について、以下の実施例1〜3に示す。
【0110】
また、条件Aを満たさず、フォワードプライマー及びリバースプライマーの両方が非増幅対象領域と12塩基以上重複するプライマーセットを56個作製して、増幅対象領域がPCR法により特異的に増幅されるか否かを確認した。その結果、全てのプライマーセットについて、非特異的な増幅が行われ、非増幅対象領域が増幅されていた。このうち2例について、以下の比較例1,2に示す。
【0111】
(実施例1)
まず、増幅対象生物として食中毒菌である以下のビブリオ(RIMD2210050)を選択するとともに、非増幅対象生物として以下の6種類の食中毒菌を選択した。なお、Negative Cont.は対照である。
1.非増幅対象生物 セレウス(Bacillus cereus TIFT 114011)
2.非増幅対象生物 カンピロバクター(Campylobacter jejuni ATCC 33560)
3.非増幅対象生物 大腸菌(Escherichia coli NBRC 102203)
4.非増幅対象生物 リステリア(Listeria monocytogenes ATCC 15313)
5.非増幅対象生物 サルモネラ(Salmonella enterica ATCC 9270)
6.非増幅対象生物 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC 100910)
7.増幅対象生物 ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus RIMD 2210050)
8.Negative Cont.
【0112】
これらの食中毒菌の菌株は、次の機関から分譲されたものである(以下においても同様)。
・NBRC 独立行政法人製品評価基盤機構
・TIFT 公益財団法人東洋食品研究所
・ATCC American type culture collection
・RIMD 大阪大学微生物病研究所
【0113】
次いで、DNASIS(日立ソフトウェアエンジニアリング株式会社製)を用いてこれらの生物の塩基配列を比較した。そして、ビブリオの塩基配列から条件Aを満たし、増幅対象領域tdh(耐熱性溶血毒素遺伝子,380bp)を増幅するプライマーセットを設計した。
具体的には、図17の実施例1に示すビブリオ検出用の両方のプライマー(配列番号9,10)が、上記6種類の非増幅対象生物のDNAの塩基配列と12塩基以上連続で重ならないもの(条件A)である。
【0114】
なお、図17において、配列番号は、配列表に示される塩基配列の配列番号を示している。F/Rは、フォワードプライマー及びリバースプライマーの区別を示しており、Fがフォワードプライマー、Rがリバースプライマーを示している。食中毒菌は、本実施形態のプライマーセットにより増幅する対象の食中毒菌の名称を表している。対象領域は、その食中毒菌における本実施形態のプライマーセットにより増幅される対象領域に存在する遺伝子の名称を示している。また、同図において、食中毒菌の増幅対象領域ごとに対応するPCR用プライマーセットの塩基配列を示している。これらの配列番号に示される塩基配列は、5’末端から3’末端方向の配列を示している。
【0115】
次に、設計したプライマーセットを、ライフテクノロジージャパン株式会社によって人工合成を行うことで作製した。さらに、このプライマーセットを含有するPCR用反応液を作製した。具体的には、以下の組成のものを作製した。
・緩衝液(10× Ex Taq buffer (20mM Mg2+ plus),2.0μl)
・核酸合成基質(dNTP Mixture (dATP、dCTP、dGTP、dTTP各2.5mM),1.6μl)
・フォワードプライマー(10ng/μl,0.4μl)
・リバースプライマー(10ng/μl,0.4μl)
・核酸合成酵素(EX Taq(5U/μl),0.1μl)
・試料のDNA(1.0μl)
・滅菌水(14.5μl)
(全量 20μl)
ここで、試料のDNAは、増幅対象生物と6種類の非増幅対象生物のDNAを個別に含めて、それぞれ別個にPCRを行った。
【0116】
次に、epグラジエントs(エッペンドルフ社製)を用いて、以下の反応条件でPCR法による遺伝子の増幅を行った。
(1)95℃ 2分
(2)95℃ 10秒(DNA鎖の乖離工程)
(3)68℃ 30秒(アニーリング工程)
(4)72℃ 30秒(DNA合成工程)
(5)72℃ 2分
(2)〜(4)を40サイクル
【0117】
最後に、PCR法による産物を、MultiNA(登録商標、株式会社島津製作所製)を用いて、マイクロキャピラリー電気泳動により、それぞれの生物ごとに泳動させ、正しい増幅産物が得られているか否かを確認した。その結果を図18(a)に示す。
同図において、7の増幅対象生物(ビブリオ)から選択された、1〜6の非対象生物のDNAと12塩基以上連続で重ならないプライマーを含む本発明のプライマーセットによれば、ビブリオの増幅対象領域tdh(380bp)のみが特異的に増幅され、非増幅対象領域については、増幅が行われていないことがわかる。なお、同図の縦軸にはbpの対数目盛りが示されているが、比較的大きな誤差があり、バンドの大凡の位置を確認することはできるが、厳密な値を示すものではない。また、電気泳動の結果を示す図において、プライマーやそのダイマーによるバンドが現れている場合があるが、これらは増幅によるものではない。以下においても同様である。
【0118】
(実施例2)
増幅対象生物として食中毒菌である以下の大腸菌(NBRC102203)を選択するとともに、非増幅対象生物として以下の6種類の食中毒菌を選択した。
1.Negative Cont.
2.非増幅対象生物 セレウス(Bacillus cereus TIFT 114011)
3.非増幅対象生物 カンピロバクター(Campylobacter jejuni ATCC 33560)
4.増幅対象生物 大腸菌(Escherichia coli NBRC 102203)
5.非増幅対象生物 リステリア(Listeria monocytogenes ATCC 15313)
6.非増幅対象生物 サルモネラ(Salmonella enterica ATCC 9270)
7.非増幅対象生物 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC 100910)
8.非増幅対象生物 ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus RIMD 2210050)
【0119】
次いで、実施例1と同様に、これらの生物の塩基配列を比較して、大腸菌の塩基配列から条件Aを満たし、増幅対象領域pyrH(ウリジンモノリン酸キナーゼ遺伝子,157bp)を増幅するプライマーセットを設計した。
具体的には、図17の実施例2に示す大腸菌検出用の両方のプライマー(配列番号11,12)が、上記6種類の非増幅対象生物のDNAの塩基配列と12塩基以上連続で重ならないものである。
【0120】
次に、実施例1と同様に、本実施例において設計したプライマーセットを作製するとともに、このプライマーセットを含有するPCR用反応液を作製した。さらに、実施例1と同様にPCR法による遺伝子の増幅を行い、その増幅産物を、MultiNAにより、それぞれの生物ごとに泳動させ、正しい増幅産物が得られているか否かを確認した。その結果を図18(b)に示す。
同図において、4の増幅対象生物(大腸菌)から選択された、2,3,及び5〜8の非対象生物のDNAと12塩基以上連続で重ならないプライマーを含む本発明のプライマーセットによれば、大腸菌の増幅対象領域pyrH(157bp)のみが特異的に増幅され、非増幅対象領域については、増幅が行われていないことがわかる。
【0121】
(実施例3)
実施例2に示した7種類の菌株のうち、増幅対象生物として食中毒菌であるサルモネラ(ATCC9270)を選択するとともに、非増幅対象生物として残りの6種類の食中毒菌を選択し、以下のように8を対照とした。
1.非増幅対象生物 セレウス(Bacillus cereus TIFT 114011)
2.非増幅対象生物 カンピロバクター(Campylobacter jejuni ATCC 33560)
3.非増幅対象生物 大腸菌(Escherichia coli NBRC 102203)
4.非増幅対象生物 リステリア(Listeria monocytogenes ATCC 15313)
5.増幅対象生物 サルモネラ(Salmonella enterica ATCC 9270)
6.非増幅対象生物 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC 100910)
7.非増幅対象生物 ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus RIMD 2210050)
8.Negative Cont.
【0122】
次いで、実施例1と同様に、これらの生物の塩基配列を比較して、サルモネラの塩基配列から条件Aを満たし、増幅対象領域invA(侵入性因子関連遺伝子,180bp)を増幅するプライマーセットを設計した。
具体的には、図17の実施例3に示すサルモネラ検出用の両方のプライマー(配列番号13,14)が、上記6種類の非増幅対象生物のDNAの塩基配列と12塩基以上連続で重ならないものである。
【0123】
次に、実施例1と同様に、本実施例において設計したプライマーセットを作製するとともに、このプライマーセットを含有するPCR用反応液を作製した。さらに、実施例1と同様にPCR法による遺伝子の増幅を行い、その増幅産物をMultiNAによりそれぞれの生物ごとに泳動させ、正しい増幅産物が得られているか否かを確認した。その結果を図18(c)に示す。
同図において、5の増幅対象生物(サルモネラ)から選択された、1〜4,及び6,7の非対象生物のDNAと12塩基以上連続で重ならないプライマーを含む本発明のプライマーセットによれば、サルモネラの増幅対象領域invA(180bp)のみが特異的に増幅され、非増幅対象領域については、増幅が行われていないことがわかる。
【0124】
(比較例1)
増幅対象生物として食中毒菌である以下の大腸菌(NBRC102203)を選択するとともに、非増幅対象生物として以下の6種類の食中毒菌を選択した。
1.非増幅対象生物 セレウス(Bacillus cereus TIFT 114011)
2.非増幅対象生物 カンピロバクター(Campylobacter jejuni ATCC 33560)
3.増幅対象生物 大腸菌(Escherichia coli NBRC 102203)
4.非増幅対象生物 リステリア(Listeria monocytogenes ATCC 15313)
5.非増幅対象生物 サルモネラ(Salmonella enterica ATCC 9270)
6.非増幅対象生物 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC 100910)
7.非増幅対象生物 ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus RIMD 2210050)
8.Negative Cont.
【0125】
次いで、これらの生物の塩基配列を比較して、大腸菌の塩基配列から条件Aを満さない、増幅対象領域dnaJ(ヒートショック遺伝子)を増幅するプライマーセットを設計した。
具体的には、図17の比較例1に示す大腸菌検出用のフォワードプライマー(配列番号15)及びリバースプライマー(配列番号16)の両方が、上記6種類の非増幅対象生物のDNAの塩基配列と12塩基以上連続で重なっている。
【0126】
次に、実施例1と同様に、本比較例において設計したプライマーセットを作製するとともに、このプライマーセットを含有するPCR用反応液を作製した。さらに、実施例1と同様にPCR法による遺伝子の増幅を行い、その増幅産物をMultiNAによりそれぞれの生物ごとに泳動させ、正しい増幅産物が得られているか否かを確認した。その結果を図19(a)に示す。
同図において、3の増幅対象生物(大腸菌)から選択された、条件Aを満たさないプライマーセットによれば、1,5,6の非増幅対象生物についても、増幅が行われていることがわかる。
【0127】
(比較例2)
比較例1に示した7種類の菌株のうち、増幅対象生物として食中毒菌であるサルモネラ(ATCC9270)を選択するとともに、非増幅対象生物として残りの6種類の食中毒菌を選択した。
【0128】
次いで、これらの生物の塩基配列を比較して、サルモネラの塩基配列から条件Aを満さない、増幅対象領域invA(侵入性因子関連遺伝子,180bp)を増幅するプライマーセットを設計した。
具体的には、図17の比較例2に示すサルモネラ検出用のフォワードプライマー(配列番号17)及びリバースプライマー(配列番号18)の両方が、上記1〜4,6,7の非増幅対象生物のDNAの塩基配列と12塩基以上連続で重なっている。
【0129】
次に、実施例1と同様に、本比較例において設計したプライマーセットを作製するとともに、このプライマーセットを含有するPCR用反応液を作製した。さらに、実施例1と同様にPCR法による遺伝子の増幅を行い、その増幅産物を、電気泳動により、それぞれの生物ごとに泳動させ、正しい増幅産物が得られているか否かを確認した。その結果を図19(b)に示す。
同図において、5の増幅対象生物(サルモネラ)から選択された、条件Aを満たさないプライマーセットによれば、上記1及び3の非増幅対象生物についても、増幅を行っていることがわかる。
以上の通り、プライマーセットが(条件A)を満足する場合、PCR法によって増幅が特異的に行われることが確認された。
【0130】
<実験2:フォワードプライマーとリバースプライマーの融解温度の差に関して>
本発明のプライマーの作製方法及びプライマーの設計方法にもとづいて、各種食中毒菌について、「フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度(Tm値)の差が5℃未満(条件E)」を満たすプライマーセットを作製し、これを用いてPCR法を行うことにより、増幅対象領域が特異的に増幅されるか否かを確認した(実施例4〜11)。
また、フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が5℃以上かつ10℃未満になるプライマーセットと、10℃以上になるプライマーセットを作製し、これを用いてPCR法を行うことにより、増幅対象領域が特異的に増幅されるか否かを確認した(比較例3〜18)。
【0131】
(1)セレウス(対象領域:cesB)検出用プライマー
(実施例4)
増幅対象生物として食中毒菌である以下のセレウス(TIFT114011)を選択するとともに、非増幅対象生物として以下に示す6種類の食中毒菌を選択した。
1.増幅対象生物 セレウス(Bacillus cereus TIFT 114011)
2.非増幅対象生物 カンピロバクター(Campylobacter jejuni ATCC 33560)
3.非増幅対象生物 大腸菌(Escherichia coli NBRC 102203)
4.非増幅対象生物 リステリア(Listeria monocytogenes ATCC 15313)
5.非増幅対象生物 サルモネラ(Salmonella enterica ATCC 9270)
6.非増幅対象生物 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC 100910)
7.非増幅対象生物 ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus RIMD 2210050)
8.Negative Cont.
【0132】
次いで、セレウスの塩基配列から上記条件Eを満たす、増幅対象領域cesB(セレウリド合成酵素遺伝子,238bp)を増幅するプライマーセットを設計した。
具体的には、図20の実施例4に示すセレウス検出用のフォワードプライマー(配列番号19)及びリバースプライマー(配列番号20)を設計した。これらの融解温度の差は、3.33℃となっている。
【0133】
次に、実施例1と同様に、本実施例において設計したプライマーセットを作製するとともに、このプライマーセットを含有するPCR用反応液を作製した。
そして、以下の反応条件でPCR法による遺伝子の増幅を行った。
(1)95℃ 2分
(2)95℃ 10秒(DNA鎖の乖離工程)
(3)68℃ 30秒(アニーリング工程)
(4)72℃ 30秒(DNA合成工程)
(5)72℃ 2分
(2)〜(4)を40サイクル
なお、上記アニーリング温度は、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から5℃低い温度に設定した。これは、実験2における以下の実施例及び比較例についても同様である。
【0134】
そして、PCR法による産物を、電気泳動により、それぞれの生物ごとに泳動させ、正しい増幅産物が得られているか否かを確認した。その結果を図24に示す。
同図において、本実施例の条件Eを満たす、フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が5℃未満のプライマーセットによれば、セレウスの増幅対象領域cesB(238bp)のみが特異的に増幅され、非増幅対象領域については、増幅が行われていないことがわかる。
【0135】
(比較例3)
実施例4と同様に、増幅対象生物として食中毒菌であるセレウスを選択するとともに、非増幅対象生物として6種類の食中毒菌を選択した。
次いで、セレウスの塩基配列から条件Eを満たさない、フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が5℃以上10℃未満である、増幅対象領域cesB(セレウリド合成酵素遺伝子,238bp)を増幅するプライマーセットを設計した。
具体的には、図20の比較例3に示すセレウス検出用のフォワードプライマー(配列番号19)及びリバースプライマー(配列番号21)を設計した。これらの融解温度の差は、6.12℃となっている。
【0136】
次に、実施例4と同様に、本比較例において設計したプライマーセットを作製するとともに、このプライマーセットを含有するPCR用反応液を作製した。
そして、以下の反応条件でPCR法による遺伝子の増幅を行った。
(1)95℃ 2分
(2)95℃ 10秒(DNA鎖の乖離工程)
(3)65℃ 30秒(アニーリング工程)
(4)72℃ 30秒(DNA合成工程)
(5)72℃ 2分
(2)〜(4)を40サイクル
【0137】
そして、PCR法による産物を、電気泳動により、それぞれの生物ごとに泳動させ、正しい増幅産物が得られているか否かを確認した。その結果を図24に示す。
同図において、本比較例の条件Eを満たさないプライマーセットによれば、セレウスの非増幅対象領域、及び非増幅対象生物の黄色ブドウ球菌における非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0138】
(比較例4)
フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が10℃以上であるプライマーセットを設計した点、及びPCRにおけるアニーリング温度を60℃とした点以外は、比較例3と同様にして、実験を行った。図20に示すように、比較例4のセレウス検出用のフォワードプライマー(配列番号19)及びリバースプライマー(配列番号22)の融解温度の差は、11.29℃である。その結果を図24に示す。
同図において、本比較例のプライマーセットによっては、非増幅対象領域は増幅されておらず、非特異的増幅は行われていない。
【0139】
(2)セレウス(対象領域:nhe)検出用プライマー
(実施例5)
セレウスの塩基配列から条件Eを満たす、増幅対象領域nhe(溶血活性を示さないエンテロトキシン分泌遺伝子,195bp)を増幅するプライマーセットを設計した点、及びPCRにおけるアニーリング温度を68℃とした点以外は、実施例4と同様にして実験を行った。図20に示すように、実施例5のセレウス検出用のフォワードプライマー(配列番号23)及びリバースプライマー(配列番号24)の融解温度の差は、0.31℃となっている。その結果を図24に示す。
同図において、本実施例の条件Eを満たす、フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が5℃未満のプライマーセットによれば、セレウスの増幅対象領域nhe(195bp)のみが特異的に増幅され、非増幅対象領域については、増幅が行われていないことがわかる。
【0140】
(比較例5)
セレウスの塩基配列から条件Eを満たさない、フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が5℃以上10℃未満である、増幅対象領域nheを増幅するプライマーセットを設計した点、及びPCRにおけるアニーリング温度を62℃とした点以外は、比較例3と同様にして実験を行った。図20に示すように、比較例5のセレウス検出用のフォワードプライマー(配列番号25)及びリバースプライマー(配列番号24)の融解温度の差は、7.47℃となっている。その結果を図24に示す。
同図において、本比較例の条件Eを満たさないプライマーセットによれば、セレウスの非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0141】
(比較例6)
フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が10℃以上であるプライマーセットを設計した点、及びPCRにおけるアニーリング温度を58℃とした点以外は、比較例5と同様にして、実験を行った。図20に示すように、比較例6のセレウス検出用のフォワードプライマー(配列番号26)及びリバースプライマー(配列番号24)の融解温度の差は、11.02℃となっている。その結果を図24に示す。
同図において、本比較例の条件Eを満たさないプライマーセットによれば、非増幅対象生物のカンピロバクター及び大腸菌における非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0142】
(3)カンピロバクター検出用プライマー
(実施例6)
増幅対象生物として実施例4に示したカンピロバクターを選択し、その塩基配列から条件Eを満たす、増幅対象領域16S rDNA(リボソーム遺伝子,263bp)を増幅するプライマーセットを設計した点、及びPCRにおけるアニーリング温度を68℃とした点以外は、実施例4と同様にして実験を行った。図21に示すように、実施例6のカンピロバクター検出用のフォワードプライマー(配列番号27)及びリバースプライマー(配列番号28)の融解温度の差は、1.98℃となっている。その結果を図25に示す。
同図において、本実施例の条件Eを満たす、フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が5℃未満のプライマーセットによれば、カンピロバクターの増幅対象領域16S rDNA(263bp)のみが特異的に増幅され、非増幅対象領域については、増幅が行われていないことがわかる。
【0143】
(比較例7)
カンピロバクターの塩基配列から条件Eを満たさない、フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が5℃以上10℃未満である、増幅対象領域16S rDNAを増幅するプライマーセットを設計した点、及びPCRにおけるアニーリング温度を63℃とした点以外は、比較例3と同様にして実験を行った。図21に示すように、比較例7のカンピロバクター検出用のフォワードプライマー(配列番号29)及びリバースプライマー(配列番号28)の融解温度の差は、5.6℃となっている。その結果を図25に示す。
同図において、本比較例の条件Eを満たさないプライマーセットによれば、カンピロバクターの非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0144】
(比較例8)
フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が10℃以上であるプライマーセットを設計した点、及びPCRにおけるアニーリング温度を58℃とした点以外は、比較例7と同様にして実験を行った。図21に示すように、比較例8のカンピロバクター検出用のフォワードプライマー(配列番号30)及びリバースプライマー(配列番号28)の融解温度の差は、10.82℃となっている。その結果を図25に示す。
同図において、本比較例の条件Eを満たさないプライマーセットによれば、カンピロバクターの非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0145】
(4)大腸菌検出用プライマー
(実施例7)
増幅対象生物として実施例4に示した大腸菌を選択し、その塩基配列から条件Eを満たす、増幅対象領域pyrH(ウリジンモノリン酸キナーゼ遺伝子,157bp)を増幅するプライマーセットを設計した点、及びPCRにおけるアニーリング温度を72℃とした点以外は、実施例4と同様にして実験を行った。図21に示すように、実施例7の大腸菌検出用のフォワードプライマー(配列番号31)及びリバースプライマー(配列番号32)の融解温度の差は、3.43℃となっている。その結果を図25に示す。
同図において、本実施例の条件Eを満たす、フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が5℃未満のプライマーセットによれば、大腸菌の増幅対象領域pyrH(157bp)のみが特異的に増幅され、非増幅対象領域については、増幅が行われていないことがわかる。
【0146】
(比較例9)
大腸菌の塩基配列から条件Eを満たさない、フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が5℃以上10℃未満である、増幅対象領域pyrHを増幅するプライマーセットを設計した点、及びPCRにおけるアニーリング温度を67℃とした点以外は、比較例3と同様にして実験を行った。図21に示すように、比較例9の大腸菌検出用のフォワードプライマー(配列番号33)及びリバースプライマー(配列番号32)の融解温度の差は、7.89℃となっている。その結果を図25に示す。
同図において、本比較例の条件Eを満たさないプライマーセットによれば、非増幅対象生物のセレウス、カンピロバクター、リステリア、サルモネラ、及び黄色ブドウ球菌における非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0147】
(比較例10)
フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が10℃以上であるプライマーセットを設計した点、及びPCRにおけるアニーリング温度を64℃とした点以外は、比較例9と同様にして実験を行った。図21に示すように、比較例10の大腸菌検出用のフォワードプライマー(配列番号34)及びリバースプライマー(配列番号32)の融解温度の差は、11.79℃となっている。その結果を図25に示す。
同図において、本比較例の条件Eを満たさないプライマーセットによれば、カンピロバクター、リステリア、サルモネラ、黄色ブドウ球菌、及びビブリオにおける非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0148】
(5)リステリア検出用プライマー
(実施例8)
増幅対象生物として実施例4に示したリステリアを選択し、その塩基配列から条件Eを満たす、増幅対象領域dnaJ (ヒートショックタンパク遺伝子,176bp)を増幅するプライマーセットを設計した点、及びPCRにおけるアニーリング温度を70℃とした点以外は、実施例4と同様にして実験を行った。図22に示すように、実施例8のリステリア検出用のフォワードプライマー(配列番号35)及びリバースプライマー(配列番号36)の融解温度の差は、1.33℃となっている。その結果を図26に示す。
同図において、本実施例の条件Eを満たす、フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が5℃未満のプライマーセットによれば、リステリアの増幅対象領域dnaJ(176bp)のみが特異的に増幅され、非増幅対象領域については、増幅が行われていないことがわかる。
【0149】
(比較例11)
リステリアの塩基配列から条件Eを満たさない、フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が5℃以上10℃未満である、増幅対象領域dnaJを増幅するプライマーセットを設計した点、及びPCRにおけるアニーリング温度を63℃とした点以外は、比較例3と同様にして実験を行った。図22に示すように、比較例11のリステリア検出用のフォワードプライマー(配列番号35)及びリバースプライマー(配列番号37)の融解温度の差は、6.97℃となっている。その結果を図26に示す。
同図において、本比較例の条件Eを満たさないプライマーセットによれば、非増幅対象生物のカンピロバクター、大腸菌、サルモネラ、及びビブリオにおける非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0150】
(比較例12)
フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が10℃以上であるプライマーセットを設計した点、及びPCRにおけるアニーリング温度を60℃とした点以外は、比較例11と同様にして実験を行った。図22に示すように、比較例12のリステリア検出用のフォワードプライマー(配列番号35)及びリバースプライマー(配列番号38)の融解温度の差は、10.27℃となっている。その結果を図26に示す。
同図において、本比較例の条件Eを満たさないプライマーセットによれば、非増幅対象生物のサルモネラ、及びビブリオにおける非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0151】
(6)サルモネラ検出用プライマー
(実施例9)
増幅対象生物として実施例4に示したサルモネラを選択し、その塩基配列から条件Eを満たす、増幅対象領域invA(侵入性因子関連遺伝子,180bp)を増幅するプライマーセットを設計した点、及びPCRにおけるアニーリング温度を68℃とした点以外は、実施例4と同様にして実験を行った。図22に示すように、実施例9のサルモネラ検出用のフォワードプライマー(配列番号39)及びリバースプライマー(配列番号40)の融解温度の差は、1.33℃となっている。その結果を図26に示す。
同図において、本実施例の条件Eを満たす、フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が5℃未満のプライマーセットによれば、サルモネラの増幅対象領域invA(180bp)のみが特異的に増幅され、非増幅対象領域については、増幅が行われていないことがわかる。
【0152】
(比較例13)
サルモネラの塩基配列から条件Eを満たさない、フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が5℃以上10℃未満である、増幅対象領域invAを増幅するプライマーセットを設計した点、及びPCRにおけるアニーリング温度を63℃とした点以外は、比較例3と同様にして実験を行った。図22に示すように、比較例13のサルモネラ検出用のフォワードプライマー(配列番号41)及びリバースプライマー(配列番号40)の融解温度の差は、5.61℃となっている。その結果を図26に示す。
同図において、本比較例の条件Eを満たさないプライマーセットによれば、サルモネラの非増幅対象領域、並びに非増幅対象生物のセレウス、大腸菌、黄色ブドウ球菌、及びビブリオにおける非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0153】
(比較例14)
フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が10℃以上であるプライマーセットを設計した点、及びPCRにおけるアニーリング温度を
58℃とした点以外は、比較例13と同様にして実験を行った。図22に示すように、比較例14のサルモネラ検出用のフォワードプライマー(配列番号42)及びリバースプライマー(配列番号40)の融解温度の差は、10.71℃となっている。その結果を図26に示す。
同図において、本比較例の条件Eを満たさないプライマーセットによれば、非増幅対象生物の大腸菌、及びリステリアにおける非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0154】
(7)黄色ブドウ球菌検出用プライマー
(実施例10)
増幅対象生物として実施例4に示した黄色ブドウ球菌を選択し、その塩基配列から条件Eを満たす、増幅対象領域dnaJ(ヒートショックタンパク遺伝子,236bp)を増幅するプライマーセットを設計した点、及びPCRにおけるアニーリング温度を68℃とした点以外は、実施例4と同様にして実験を行った。図23に示すように、実施例10の黄色ブドウ球菌検出用のフォワードプライマー(配列番号43)及びリバースプライマー(配列番号44)の融解温度の差は、4.12℃となっている。その結果を図27に示す。
同図において、本実施例の条件Eを満たす、フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が5℃未満のプライマーセットによれば、黄色ブドウ球菌の増幅対象領域dnaJ(236bp)のみが特異的に増幅され、非増幅対象領域については、増幅が行われていないことがわかる。
【0155】
(比較例15)
黄色ブドウ球菌の塩基配列から条件Eを満たさない、フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が5℃以上10℃未満である、増幅対象領域dnaJを増幅するプライマーセットを設計した点、及びPCRにおけるアニーリング温度を66℃とした点以外は、比較例3と同様にして実験を行った。図23に示すように、比較例15の黄色ブドウ球菌検出用のフォワードプライマー(配列番号43)及びリバースプライマー(配列番号45)の融解温度の差は、6.2℃となっている。その結果を図27に示す。
同図において、本比較例のプライマーセットによっては、非増幅対象領域は増幅されておらず、非特異的増幅は行われていない。
【0156】
(比較例16)
フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が10℃以上であるプライマーセットを設計した点、及びPCRにおけるアニーリング温度を
62℃とした点以外は、比較例15と同様にして実験を行った。図23に示すように、比較例16の黄色ブドウ球菌検出用のフォワードプライマー(配列番号43)及びリバースプライマー(配列番号46)の融解温度の差は、11.55℃となっている。その結果を図27に示す。
同図において、本比較例の条件Eを満たさないプライマーセットによれば、非増幅対象生物の大腸菌、サルモネラ、及びビブリオにおける非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0157】
(8)ビブリオ検出用プライマー
(実施例11)
増幅対象生物として実施例4に示したビブリオを選択し、その塩基配列から条件Eを満たす、増幅対象領域tdh(耐熱性溶血毒素遺伝子,380bp)を増幅するプライマーセットを設計した点、及びPCRにおけるアニーリング温度を68℃とした点以外は、実施例4と同様にして実験を行った。図23に示すように、実施例11のビブリオ検出用のフォワードプライマー(配列番号47)及びリバースプライマー(配列番号48)の融解温度の差は、3.7℃となっている。その結果を図27に示す。
同図において、本実施例の条件Eを満たす、フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が5℃未満のプライマーセットによれば、ビブリオの増幅対象領域tdh(380bp)のみが特異的に増幅され、非増幅対象領域については、増幅が行われていないことがわかる。
【0158】
(比較例17)
ビブリオの塩基配列から条件Eを満たさない、フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が5℃以上10℃未満である、増幅対象領域tdhを増幅するプライマーセットを設計した点、及びPCRにおけるアニーリング温度を60℃とした点以外は、比較例3と同様にして実験を行った。図23に示すように、比較例17のビブリオ検出用のフォワードプライマー(配列番号47)及びリバースプライマー(配列番号49)の融解温度の差は、8.43℃となっている。その結果を図27に示す。
同図において、本比較例の条件Eを満たさないプライマーセットによれば、非増幅対象生物のサルモネラにおける非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0159】
(比較例18)
フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が10℃以上であるプライマーセットを設計した点、及びPCRにおけるアニーリング温度を55℃とした点以外は、比較例17と同様にして実験を行った。図23に示すように、比較例18のビブリオ検出用のフォワードプライマー(配列番号47)及びリバースプライマー(配列番号50)の融解温度の差は、13.91℃となっている。その結果を図27に示す。
同図において、本比較例の条件Eを満たさないプライマーセットによれば、非増幅対象生物のセレウス、リステリア、サルモネラ、及び黄色ブドウ球菌における非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0160】
<実験3:プライマーの長さに関して>
本発明のプライマーの作製方法及びプライマーの設計方法にもとづいて、各種食中毒菌について、「フォワードプライマー及びリバースプライマーの長さが23〜41mer」を満たすプライマーセットを作製し、これを用いてPCR法を行うことにより、増幅対象領域が特異的に増幅されるか否かを確認した(参考例1,実施例12)。なお、参考例1と実施例12のプライマーセットは、条件Dを満たしている。
また、「フォワードプライマー及びリバースプライマーの長さが23〜41mer」を満たさないプライマーセットを作製し、これを用いてPCR法を行うことにより、増幅対象領域が特異的に増幅されるか否かを確認した(比較例19〜21)。
【0161】
(参考例1)Fプライマー:41mer,Rプライマー:23mer
増幅対象生物として以下のサルモネラ(ATCC9270)を選択するとともに、非増幅対象生物として、以下の10種類の食中毒菌を選択した。
1.非増幅対象生物 セレウス(Bacillus cereus NBRC 15305)
2.非増幅対象生物 セレウス(Bacillus cereus TIFT 114011)
3.非増幅対象生物 カンピロバクター(Campylobacter coli ATCC 43478)
4.非増幅対象生物 カンピロバクター(Campylobacter jejuni ATCC 33560)
5.非増幅対象生物 大腸菌(Escherichia coli NBRC 102203)
6.非増幅対象生物 リステリア(Listeria monocytogenes ATCC 15313)
7.増幅対象生物 サルモネラ(Salmonella enterica ATCC 9270)
8.非増幅対象生物 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC 100910)
9.非増幅対象生物 ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus RIMD 2210050)
10.非増幅対象生物 ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus ATCC 17802)
11.非増幅対象生物 エルシニア(Yersinia enterocolitica ATCC 9610)
12.Negative Cont.
【0162】
次いで、サルモネラの塩基配列から「フォワードプライマー及びリバースプライマーの長さが23〜41mer」である、増幅対象領域invA(侵入性因子関連遺伝子,180bp)を増幅するプライマーセットを設計した。
具体的には、図28の参考例1に示すサルモネラ検出用のフォワードプライマー(配列番号51,41mer)及びリバースプライマー(配列番号52,23mer)のプライマーセットを設計した。
【0163】
次に、実施例1と同様に、本実施例において設計したプライマーセットを作製するとともに、このプライマーセットを含有するPCR用反応液を作製した。
そして、以下の反応条件でPCR法による遺伝子の増幅を行った。
(1)95℃ 2分
(2)95℃ 10秒(DNA鎖の乖離工程)
(3)69℃ 30秒(アニーリング工程)
(4)72℃ 30秒(DNA合成工程)
(5)72℃ 2分
(2)〜(4)を40サイクル
なお、上記アニーリング温度は、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から5℃低い温度に設定した。これは、実験3における以下の実施例及び比較例についても同様である。
【0164】
そして、PCR法による産物を、電気泳動により、それぞれの生物ごとに泳動させ、正しい増幅産物が得られているか否かを確認した。その結果を図29(a)に示す。
同図において、「フォワードプライマー及びリバースプライマーの長さが23〜41mer」のプライマーセットによれば、サルモネラの増幅対象領域invA(180bp)のみが特異的に増幅され、非増幅対象領域については、増幅が行われていないことがわかる。
【0165】
(実施例12)Fプライマー:41mer,Rプライマー:34mer
増幅対象生物として参考例1における供試菌株9のビブリオを選択し、その塩基配列から「フォワードプライマー及びリバースプライマーの長さが23〜41mer」を満たす、増幅対象領域tdh(耐熱性溶血毒素遺伝子,380bp)を増幅するプライマーセットを設計した点、及びPCRにおけるアニーリング温度を68℃とした点以外は、参考例1と同様にして実験を行った。本実施例のプライマーセットは、図28に示すように、フォワードプライマー(配列番号53,41mer)及びリバースプライマー(配列番号54,34mer)からなっている。実験結果を図29(b)に示す。
同図において、「フォワードプライマー及びリバースプライマーの長さが23〜41mer」を満たすプライマーセットによれば、ビブリオの増幅対象領域tdh(380bp)のみが特異的に増幅され、非増幅対象領域については、増幅が行われていないことがわかる。なお、供試菌株10のビブリオ(ATCC 17802)は、増幅対象領域tdhを有していない。
【0166】
(比較例19)Fプライマー:22mer,Rプライマー:34mer
増幅対象生物として以下のビブリオを選択するとともに、非増幅対象生物として、以下に示す6種類の食中毒菌を選択した。
1.非増幅対象生物 セレウス(Bacillus cereus TIFT 114011)
2.非増幅対象生物 カンピロバクター(Campylobacter coli ATCC 43478)
3.非増幅対象生物 大腸菌(Escherichia coli NBRC 102203)
4.非増幅対象生物 リステリア(Listeria monocytogenes ATCC 15313)
5.非増幅対象生物 サルモネラ(Salmonella enterica ATCC 9270)
6.非増幅対象生物 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC 100910)
7.増幅対象生物 ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus RIMD 2210050)
8.Negative Cont.
【0167】
増幅対象生物のビブリオの塩基配列から「フォワードプライマー及びリバースプライマーの長さが23〜41mer」を満たさない、増幅対象領域tdh(耐熱性溶血毒素遺伝子,380bp)を増幅するプライマーセットを設計した。また、PCRにおけるアニーリング温度を48℃とした。その他の点は、参考例1と同様にして実験を行った。本実施例のプライマーセットは、図28に示すように、フォワードプライマー(配列番号55,22mer)及びリバースプライマー(配列番号56,34mer)からなっている。実験結果を図30(a)に示す。
同図において、「フォワードプライマー及びリバースプライマーの長さが23〜41mer」を満たさないプライマーセットによれば、非増幅対象生物のセレウス、大腸菌、リステリア、サルモネラ、及び黄色ブドウ球菌における非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0168】
(比較例20)Fプライマー:34mer,Rプライマー:22mer
増幅対象生物として比較例19に示すビブリオを選択し、そのDNAの塩基配列から「フォワードプライマー及びリバースプライマーの長さが23〜41mer」を満たさない、増幅対象領域tdh(耐熱性溶血毒素遺伝子,380bp)を増幅するプライマーセットを設計した。また、PCRにおけるアニーリング温度を55℃とした。その他の点は、参考例1と同様にして実験を行った。本実施例のプライマーセットは、図28に示すように、フォワードプライマー(配列番号57,34mer)及びリバースプライマー(配列番号58,22mer)からなっている。実験結果を図30(b)に示す。
同図において、「フォワードプライマー及びリバースプライマーの長さが23〜41mer」を満たさないプライマーセットによれば、非増幅対象生物のセレウス、カンピロバクター、サルモネラ、及び黄色ブドウ球菌における非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0169】
(比較例21)Fプライマー:42mer,Rプライマー:23mer
増幅対象生物として比較例19における供試菌株5のサルモネラを選択し、増幅対象生物のサルモネラの塩基配列から「フォワードプライマー及びリバースプライマーの長さが23〜41mer」を満たさない、増幅対象領域invA(侵入性因子関連遺伝子,180bp)を増幅するプライマーセットを設計した。また、PCRにおけるアニーリング温度を69℃とした。その他の点は、参考例1と同様にして実験を行った。本実施例のプライマーセットは、図28に示すように、フォワードプライマー(配列番号59,42mer)及びリバースプライマー(配列番号60,23mer)からなっている。実験結果を図30(c)に示す。
同図において、「フォワードプライマー及びリバースプライマーの長さが23〜41mer」を満たさないプライマーセットによれば、全ての非増幅対象生物における非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0170】
以上の結果から、「フォワードプライマー及びリバースプライマーの長さが23〜41mer」を満たすプライマーセットを用いてPCRを行うことで、増幅対象領域の増幅の特異性が向上することがわかる。
【0171】
<実験4:アニーリング温度とプライマーの融解温度との関係に関して>
本発明のプライマーの作製方法及びプライマーの設計方法にもとづき作製したプライマーセットを用いて、種々のアニーリング温度によりPCRを行うことで、プライマーセットにおけるプライマーの融解温度とアニーリング温度との関係について検討した。
具体的には、各種食中毒菌について、アニーリング温度を、プライマーセットにおけるフォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度のうち、低い方の温度よりも所定の範囲で低くしてPCRを行うことにより、増幅対象領域が特異的に増幅されるか否かを確認した(参考例2〜25,実施例13〜28)。
【0172】
(1)セレウス(cesB)検出用プライマー
(参考例2)アニーリング温度:融解温度(Tm値)−20℃
増幅対象生物として以下のセレウスを選択するとともに、非増幅対象生物として、以下の6種類の食中毒菌を選択した。
1.増幅対象生物 セレウス(Bacillus cereus TIFT 114011)
2.非増幅対象生物 カンピロバクター(Campylobacter jejuni ATCC 33560)
3.非増幅対象生物 大腸菌(Escherichia coli NBRC 102203)
4.非増幅対象生物 リステリア(Listeria monocytogenes ATCC 15313)
5.非増幅対象生物 サルモネラ(Salmonella enterica ATCC 9270)
6.非増幅対象生物 黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC 100910)
7.非増幅対象生物 ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus RIMD 2210050)
8.Negative Cont.
【0173】
次いで、実施例1と同様に、これらの生物の塩基配列を比較して、セレウスの塩基配列から条件Aを満たす、増幅対象領域cesB(セレウリド合成酵素遺伝子,238bp)を増幅するプライマーセットを設計した。このプライマーセットは、図31の参考例2に示すように、フォワードプライマー(配列番号19)及びリバースプライマー(配列番号20)からなっている。参考例3,4、及び実施例13,14においてもこのプライマーセットを使用して、実験を行った。
【0174】
次に、実施例1と同様に、本参考例において設計したプライマーセットを作製するとともに、このプライマーセットを含有するPCR用反応液を作製した。
そして、以下の反応条件でPCR法による遺伝子の増幅を行った。
(1)95℃ 2分
(2)95℃ 10秒(DNA鎖の乖離工程)
(3)53℃ 30秒(アニーリング工程)
(4)72℃ 30秒(DNA合成工程)
(5)72℃ 2分
(2)〜(4)を40サイクル
本参考例では、上記アニーリング温度として、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から20℃低い温度(Tm−20℃)を設定した。
【0175】
そして、PCR法による産物を、電気泳動により、それぞれの生物ごとに泳動させ、正しい増幅産物が得られているか否かを確認した。その結果を図35に示す。
同図において、本参考例におけるセレウス検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−20℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、セレウスの増幅対象領域cesB(238bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0176】
(参考例3)アニーリング温度:融解温度−15℃
PCRにおけるアニーリング温度を58℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から15℃低い温度(Tm−15℃)に設定した点以外は、参考例2と同様にして実験を行った。その結果を図35に示す。
同図において、本参考例におけるセレウス検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−15℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、セレウス及びカンピロバクターにおける非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0177】
(参考例4)アニーリング温度:融解温度−10℃
PCRにおけるアニーリング温度を63℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から10℃低い温度(Tm−10℃)に設定した点以外は、参考例2と同様にして実験を行った。その結果を図35に示す。
同図において、本参考例におけるセレウス検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−10℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、セレウスの増幅対象領域cesB(238bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0178】
(実施例13)アニーリング温度:融解温度−5℃
PCRにおけるアニーリング温度を68℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から5℃低い温度(Tm−5℃)に設定した点以外は、参考例2と同様にして実験を行った。その結果を図35に示す。
同図において、本実施例におけるセレウス検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−5℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、セレウスの増幅対象領域cesB(238bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0179】
(実施例14)アニーリング温度:融解温度−0℃
PCRにおけるアニーリング温度を73℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度(Tm−0℃)に設定した点以外は、参考例2と同様にして実験を行った。その結果を図35に示す。
同図において、本実施例におけるセレウス検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度をアニーリング温度としてPCRを行った場合、セレウスの増幅対象領域cesB(238bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0180】
(2)セレウス(nhe)検出用プライマー
(参考例5)アニーリング温度:融解温度−20℃
セレウスの塩基配列から増幅対象領域nhe(溶血活性を示さないエンテロトキシン分泌遺伝子,195bp)を増幅するプライマーセットを設計した点以外は、参考例2と同様にして実験を行った。このプライマーセットは、図31の参考例5に示すように、フォワードプライマー(配列番号23)及びリバースプライマー(配列番号24)からなっている。参考例6,7、及び実施例15,16においてもこのプライマーセットを使用して、実験を行った。アニーリング温度は53℃とした。その結果を図36に示す。
同図において、本参考例におけるセレウス検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−20℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、セレウスの増幅対象領域nhe(195bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0181】
(参考例6)アニーリング温度:融解温度−15℃
PCRにおけるアニーリング温度を58℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から15℃低い温度(Tm−15℃)に設定した点以外は、参考例5と同様にして実験を行った。その結果を図36に示す。
同図において、本参考例におけるセレウス検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−15℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、セレウスの増幅対象領域nhe(195bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0182】
(参考例7)アニーリング温度:融解温度−10℃
PCRにおけるアニーリング温度を63℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から10℃低い温度(Tm−10℃)に設定した点以外は、参考例5と同様にして実験を行った。その結果を図36に示す。
同図において、本参考例におけるセレウス検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−10℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、セレウスの増幅対象領域nhe(195bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0183】
(実施例15)アニーリング温度:融解温度−5℃
PCRにおけるアニーリング温度を68℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から5℃低い温度(Tm−5℃)に設定した点以外は、参考例5と同様にして実験を行った。その結果を図36に示す。
同図において、本実施例におけるセレウス検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−5℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、セレウスの増幅対象領域nhe(195bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0184】
(実施例16)アニーリング温度:融解温度−0℃
PCRにおけるアニーリング温度を73℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度(Tm−0℃)に設定した点以外は、参考例5と同様にして実験を行った。その結果を図36に示す。
同図において、本実施例におけるセレウス検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度をアニーリング温度としてPCRを行った場合、セレウスの増幅対象領域nhe(195bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0185】
(3)カンピロバクター検出用プライマー
(参考例8)アニーリング温度:融解温度−20℃
増幅対象生物として参考例2における供試菌株2のカンピロバクターを選択し、カンピロバクターの塩基配列から条件Aを満たす、増幅対象領域16S rDNA(リボソーム遺伝子,263bp)を増幅するプライマーセットを設計した点以外は、参考例2と同様にして実験を行った。このプライマーセットは、図32の参考例8に示すように、フォワードプライマー(配列番号27)及びリバースプライマー(配列番号28)からなっている。アニーリング温度は53℃とした。参考例9,10、及び実施例17,18においてもこのプライマーセットを使用して、実験を行った。その結果を図37に示す。
同図において、本参考例におけるカンピロバクター検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−20℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、カンピロバクターにおける非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。なお、同図の点線囲み内における下側のバンドが非特異的増幅を示し、上側のバンドは検出対象のものである。以下の参考例9,10においても同様である。
【0186】
(参考例9)アニーリング温度:融解温度−15℃
PCRにおけるアニーリング温度を58℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から15℃低い温度(Tm−15℃)に設定した点以外は、参考例8と同様にして実験を行った。その結果を図37に示す。
同図において、本参考例におけるカンピロバクター検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−15℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、カンピロバクターにおける非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0187】
(参考例10)アニーリング温度:融解温度−10℃
PCRにおけるアニーリング温度を63℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から10℃低い温度(Tm−10℃)に設定した点以外は、参考例8と同様にして実験を行った。その結果を図37に示す。
同図において、本参考例におけるカンピロバクター検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−10℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、カンピロバクターにおける非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0188】
(実施例17)アニーリング温度:融解温度−5℃
PCRにおけるアニーリング温度を68℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から5℃低い温度(Tm−5℃)に設定した点以外は、参考例8と同様にして実験を行った。その結果を図37に示す。
同図において、本実施例におけるカンピロバクター検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−5℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、カンピロバクターの増幅対象領域16S rDNA(263bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0189】
(実施例18)アニーリング温度:融解温度−0℃
PCRにおけるアニーリング温度を72℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度(Tm−0℃)に設定した点以外は、参考例8と同様にして実験を行った。その結果を図37に示す。
同図において、本実施例におけるカンピロバクター検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度をアニーリング温度としてPCRを行った場合、カンピロバクターの増幅対象領域16S rDNA(263bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0190】
(4)大腸菌検出用プライマー
(参考例11)アニーリング温度:融解温度−20℃
増幅対象生物として食中毒菌である大腸菌を選択し、大腸菌の塩基配列から条件Aを満たす、増幅対象領域pyrH(ウリジンモノリン酸キナーゼ遺伝子,157bp)を増幅するプライマーセットを設計し、アニーリング温度を57℃とした点以外は、参考例2と同様にして実験を行った。このプライマーセットは、図32の参考例11に示すように、フォワードプライマー(配列番号31)及びリバースプライマー(配列番号32)からなっている。参考例12,13、及び実施例19,20においてもこのプライマーセットを使用して、実験を行った。その結果を図38に示す。
同図において、本参考例における大腸菌検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−20℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、大腸菌における非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0191】
(参考例12)アニーリング温度:融解温度−15℃
PCRにおけるアニーリング温度を62℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から15℃低い温度(Tm−15℃)に設定した点以外は、参考例11と同様にして実験を行った。その結果を図38に示す。
同図において、本参考例における大腸菌検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−15℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、大腸菌における非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0192】
(参考例13)アニーリング温度:融解温度−10℃
PCRにおけるアニーリング温度を67℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から10℃低い温度(Tm−10℃)に設定した点以外は、参考例11と同様にして実験を行った。その結果を図38に示す。
同図において、本参考例における大腸菌検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−10℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、大腸菌の増幅対象領域pyrH(157bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0193】
(実施例19)アニーリング温度:融解温度−5℃
PCRにおけるアニーリング温度を72℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から5℃低い温度(Tm−5℃)に設定した点以外は、参考例11と同様にして実験を行った。その結果を図38に示す。
同図において、本実施例における大腸菌検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−5℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、大腸菌の増幅対象領域pyrH(157bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0194】
(実施例20)アニーリング温度:融解温度−0℃
PCRにおけるアニーリング温度を77℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度(Tm−0℃)に設定した点以外は、参考例11と同様にして実験を行った。その結果を図38に示す。
同図において、本実施例における大腸菌検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度をアニーリング温度としてPCRを行った場合、大腸菌の増幅対象領域pyrH(157bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0195】
(5)リステリア検出用プライマー
(参考例14)アニーリング温度:融解温度−20℃
増幅対象生物として参考例2における供試菌株4のリステリアを選択し、リステリアの塩基配列から条件Aを満たす、増幅対象領域dnaJ(ヒートショックタンパク遺伝子,176bp)を増幅するプライマーセットを設計し、アニーリング温度を54℃とした点以外は、参考例2と同様にして実験を行った。このプライマーセットは、図33の参考例14に示すように、フォワードプライマー(配列番号35)及びリバースプライマー(配列番号36)からなっている。参考例15,16、及び実施例21,22においてもこのプライマーセットを使用して、実験を行った。その結果を図39に示す。
同図において、本参考例におけるリステリア検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−20℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、大腸菌における非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0196】
(参考例15)アニーリング温度:融解温度−15℃
PCRにおけるアニーリング温度を59℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から15℃低い温度(Tm−15℃)に設定した点以外は、参考例14と同様にして実験を行った。その結果を図39に示す。
同図において、本参考例におけるリステリア検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−15℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、リステリアの増幅対象領域dnaJ(176bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0197】
(参考例16)アニーリング温度:融解温度−10℃
PCRにおけるアニーリング温度を64℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から10℃低い温度(Tm−10℃)に設定した点以外は、参考例14と同様にして実験を行った。その結果を図39に示す。
同図において、本参考例におけるリステリア検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−10℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、リステリアの増幅対象領域dnaJ(176bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0198】
(実施例21)アニーリング温度:融解温度−5℃
PCRにおけるアニーリング温度を69℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から5℃低い温度(Tm−5℃)に設定した点以外は、参考例14と同様にして実験を行った。その結果を図39に示す。
同図において、本実施例におけるリステリア検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−5℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、リステリアの増幅対象領域dnaJ(176bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0199】
(実施例22)アニーリング温度:融解温度−0℃
PCRにおけるアニーリング温度を74℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度(Tm−0℃)に設定した点以外は、参考例14と同様にして実験を行った。その結果を図39に示す。
同図において、本実施例におけるリステリア検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度をアニーリング温度としてPCRを行った場合、リステリアの増幅対象領域dnaJ(176bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0200】
(6)サルモネラ検出用プライマー
(参考例17)アニーリング温度:融解温度−20℃
増幅対象生物として参考例2における供試菌株5のサルモネラを選択し、サルモネラの塩基配列から条件Aを満たす、増幅対象領域invA(侵入性因子関連遺伝子,180bp)を増幅するプライマーセットを設計した点以外は、参考例2と同様にして実験を行った。このプライマーセットは、図33の参考例17に示すように、フォワードプライマー(配列番号39)及びリバースプライマー(配列番号40)からなっている。参考例18,19、及び実施例23,24においてもこのプライマーセットを使用して、実験を行った。アニーリング温度は53℃とした。その結果を図40に示す。
同図において、本参考例におけるサルモネラ検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−20℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、大腸菌における非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0201】
(参考例18)アニーリング温度:融解温度−15℃
PCRにおけるアニーリング温度を58℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から15℃低い温度(Tm−15℃)に設定した点以外は、参考例17と同様にして実験を行った。その結果を図40に示す。
同図において、本参考例におけるサルモネラ検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−15℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、大腸菌における非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0202】
(参考例19)アニーリング温度:融解温度−10℃
PCRにおけるアニーリング温度を63℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から10℃低い温度(Tm−10℃)に設定した点以外は、参考例17と同様にして実験を行った。その結果を図40に示す。
同図において、本参考例におけるサルモネラ検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−10℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、サルモネラ及び黄色ブドウ球菌における非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0203】
(実施例23)アニーリング温度:融解温度−5℃
PCRにおけるアニーリング温度を68℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から5℃低い温度(Tm−5℃)に設定した点以外は、参考例17と同様にして実験を行った。その結果を図40に示す。
同図において、本実施例におけるサルモネラ検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−5℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、サルモネラの増幅対象領域invA(180bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0204】
(実施例24)アニーリング温度:融解温度−0℃
PCRにおけるアニーリング温度を73℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度(Tm−0℃)に設定した点以外は、参考例17と同様にして実験を行った。その結果を図40に示す。
同図において、本実施例におけるサルモネラ検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度をアニーリング温度としてPCRを行った場合、サルモネラの増幅対象領域invA(180bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0205】
(7)黄色ブドウ球菌検出用プライマー
(参考例20)アニーリング温度:融解温度−20℃
増幅対象生物として参考例1における供試菌株6の黄色ブドウ球菌を選択し、黄色ブドウ球菌の塩基配列から条件Aを満たす、増幅対象領域dnaJ(ヒートショックタンパク遺伝子,236bp)を増幅するプライマーセットを設計した点以外は、参考例2と同様にして実験を行った。このプライマーセットは、図34の参考例20に示すように、フォワードプライマー(配列番号43)及びリバースプライマー(配列番号44)からなっている。参考例21,22、及び実施例25,26においてもこのプライマーセットを使用して、実験を行った。アニーリング温度は53℃とした。その結果を図41に示す。
同図において、本参考例における黄色ブドウ球菌検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−20℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、黄色ブドウ球菌の増幅対象領域dnaJ(236bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0206】
(参考例21)アニーリング温度:融解温度−15℃
PCRにおけるアニーリング温度を58℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から15℃低い温度(Tm−15℃)に設定した点以外は、参考例20と同様にして実験を行った。その結果を図41に示す。
同図において、本参考例における黄色ブドウ球菌検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−15℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、黄色ブドウ球菌の増幅対象領域dnaJ(236bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0207】
(参考例22)アニーリング温度:融解温度−10℃
PCRにおけるアニーリング温度を63℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から10℃低い温度(Tm−10℃)に設定した点以外は、参考例20と同様にして実験を行った。その結果を図41に示す。
同図において、本参考例における黄色ブドウ球菌検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−10℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、黄色ブドウ球菌の増幅対象領域dnaJ(236bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0208】
(実施例25)アニーリング温度:融解温度−5℃
PCRにおけるアニーリング温度を68℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から5℃低い温度(Tm−5℃)に設定した点以外は、参考例20と同様にして実験を行った。その結果を図41に示す。
同図において、本実施例における黄色ブドウ球菌検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−5℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、黄色ブドウ球菌の増幅対象領域dnaJ(236bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0209】
(実施例26)アニーリング温度:融解温度−0℃
PCRにおけるアニーリング温度を73℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度(Tm−0℃)に設定した点以外は、参考例20と同様にして実験を行った。その結果を図41に示す。
同図において、本実施例における黄色ブドウ球菌検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度をアニーリング温度としてPCRを行った場合、黄色ブドウ球菌の増幅対象領域dnaJ(236bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0210】
(8)ビブリオ検出用プライマー
(参考例23)アニーリング温度:融解温度−20℃
増幅対象生物として参考例2における供試菌株7のビブリオを選択し、ビブリオの塩基配列から条件Aを満たす、増幅対象領域tdh(耐熱性溶血毒素遺伝子,380bp)を増幅するプライマーセットを設計した点以外は、参考例2と同様にして実験を行った。このプライマーセットは、図34の参考例23に示すように、フォワードプライマー(配列番号47)及びリバースプライマー(配列番号48)からなっている。参考例24,25、及び実施例27,28においてもこのプライマーセットを使用して、実験を行った。アニーリング温度は53℃とした。その結果を図42に示す。
同図において、本参考例におけるビブリオ検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−20℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、全ての非増幅対象生物における非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0211】
(参考例24)アニーリング温度:融解温度−15℃
PCRにおけるアニーリング温度を58℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から15℃低い温度(Tm−15℃)に設定した点以外は、参考例23と同様にして実験を行った。その結果を図42に示す。
同図において、本参考例におけるビブリオ検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−15℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、全ての非増幅対象生物における非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0212】
(参考例25)アニーリング温度:融解温度−10℃
PCRにおけるアニーリング温度を63℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から10℃低い温度(Tm−10℃)に設定した点以外は、参考例23と同様にして実験を行った。その結果を図42に示す。
同図において、本参考例におけるビブリオ検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−10℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、セレウスを除く全ての非増幅対象生物における非増幅対象領域が増幅されており、非特異的増幅が行われていることがわかる。
【0213】
(実施例27)アニーリング温度:融解温度−5℃
PCRにおけるアニーリング温度を68℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から5℃低い温度(Tm−5℃)に設定した点以外は、参考例23と同様にして実験を行った。その結果を図42に示す。
同図において、本実施例におけるビブリオ検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度−5℃をアニーリング温度としてPCRを行った場合、ビブリオの増幅対象領域tdh(380bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0214】
(実施例28)アニーリング温度:融解温度−0℃
PCRにおけるアニーリング温度を72℃、すなわちフォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度(Tm−0℃)に設定した点以外は、参考例23と同様にして実験を行った。その結果を図42に示す。
同図において、本実施例におけるビブリオ検出用プライマーを用いて、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度をアニーリング温度としてPCRを行った場合、ビブリオの増幅対象領域tdh(380bp)のみが増幅されており、非増幅対象領域の増幅は、行われていなかった。
【0215】
以上の結果から、アニーリング温度を、フォワードプライマー又はリバースプライマーの融解温度の小さい方の温度から0〜5℃低い温度に設定して、PCRを行うことで、増幅対象領域の増幅の特異性が向上することがわかる。
【0216】
<実験5:本発明におけるマルチプレックスPCR法における単独菌での増幅試験に関して>
本発明のプライマーの作製方法及びプライマーの設計方法にもとづき作製したプライマーセットを複数同時に用いるとともに、増幅対象生物を単独として、その増幅対象領域を特異的に増幅できるかを検証した。
【0217】
(実施例29)
まず、本発明のプライマーの作製方法及びプライマーの設計方法にもとづいて、図43に示すプライマーセットを設計した。すなわち、配列番号61のフォワードプライマー及び配列番号62のリバースプライマーとからなる、セレウスにおける増幅対象領域nhe(溶血活性を示さないエンテロトキシン分泌遺伝子,195bp)を増幅するプライマーセット1、配列番号63のフォワードプライマー及び配列番号64のリバースプライマーとからなる、セレウスにおける増幅対象領域cesB(セレウリド合成酵素遺伝子,238bp)を増幅するプライマーセット2、配列番号65のフォワードプライマー及び配列番号66のリバースプライマーとからなる、カンピロバクターにおける増幅対象領域16S rDNA(リボソーム遺伝子,263bp)を増幅するプライマーセット3、配列番号67のフォワードプライマー及び配列番号68のリバースプライマーとからなる、大腸菌における増幅対象領域pyrH(ウリジンモノリン酸キナーゼ遺伝子,157bp)を増幅するプライマーセット4、配列番号69のフォワードプライマー及び配列番号70のリバースプライマーとからなる、リステリアにおける増幅対象領域dnaJ(ヒートショックタンパク遺伝子,176bp)を増幅するプライマーセット5、配列番号71のフォワードプライマー及び配列番号72のリバースプライマーとからなる、サルモネラにおける増幅対象領域invA(侵入性因子関連遺伝子,180bp)を増幅するプライマーセット6、配列番号73のフォワードプライマー及び配列番号74のリバースプライマーとからなる、黄色ブドウ球菌における増幅対象領域dnaJ(ヒートショックタンパク遺伝子,236bp)を増幅するプライマーセット7、配列番号75のフォワードプライマー及び配列番号76のリバースプライマーとからなる、ビブリオにおける増幅対象領域tdh(耐熱性溶血毒素遺伝子,380bp)を増幅するプライマーセット8を設計した。また、図43において、これらのプライマーセットを用いた場合の各増幅産物の理論上の塩基配列の長さを示している。
【0218】
これらのプライマーセットは、フォワードプライマー及びリバースプライマーの少なくとも一方が、当該対象生物の非増幅対象領域や他の増幅対象生物及び所定の非増幅対象生物のDNAの塩基配列と、12塩基以上連続で重ならない。また、フォワードプライマー及びリバースプライマーの少なくとも一方が、3’末端側半分において、G又はCを連続で3塩基以上備える配列を有する、あるいは、フォワードプライマー及びリバースプライマーの少なくとも一方が、それぞれのプライマーの配列の中心から3’末端側及び5’末端側の両方向に向かってプライマーの全長の四分の1の範囲を含む領域に、A又はTを連続で4塩基以上備える配列を有している。また、フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度(Tm値)の差が5℃未満である。さらに、フォワードプライマー及びリバースプライマーの長さが23〜41merであり、かつ融解温度が73〜78℃となっている。
【0219】
また、上記プライマーセット1〜8の設計にあたり、それぞれ順に対応する番号の以下の食中毒菌を増幅対象生物にすると共に、他の食中毒菌を非増幅対象生物として使用した。
1.セレウス(Bacillus cereus NBRC 15305)
2.セレウス(Bacillus cereus TIFT 114011)
3.カンピロバクター(Campylobacter coli ATCC 43478)
4.大腸菌(Escherichia coli NBRC 102203)
5.リステリア(Listeria monocytogenes ATCC 15313)
6.サルモネラ(Salmonella enterica ATCC 9270)
7.黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC 100910)
8.ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus RIMD 2210050)
【0220】
次に、実施例1と同様に、設計したプライマーセットを、ライフテクノロジージャパン株式会社によって人工合成を行うことで作製した。
次に、PCR用反応液として、上記プライマーセット1〜8を全て含有させ、以下の組成のものを作製した。
・緩衝液 10×Ex Taq buffer(20mM Mg 2+ plus) 2.0μl
・核酸合成基質 dNTP Mixture(dATP、dCTP、dGTP、dTTP各2.5mM) 1.6μl
・ビブリオ検出用primer R(10ng/μl、final conc.4ng) 0.4μl
・ビブリオ検出用primer F(10ng/μl、final conc.4ng) 0.4μl
・その他のprimer R(10ng/μl、final conc.2ng) 0.2μl×7
・その他のprimer F(10ng/μl、final conc.2ng) 0.2μl×7
・核酸合成酵素 EX Taq(5U/μl) 0.1μl
・試料のDNA 1.0μl
・滅菌水 11.7μl
(全量 20μl)
【0221】
また、試料のDNAは、次の1〜7に示す食中毒菌のDNAをそれぞれ別個に含有させ、個別にPCRを行った。
1.セレウス(Bacillus cereus TIFT 114011)
2.カンピロバクター(Campylobacter jejuni ATCC 33560)
3.大腸菌(Escherichia coli NBRC 102203)
4.リステリア(Listeria monocytogenes ATCC 15313)
5.サルモネラ(Salmonella enterica ATCC 9270)
6.黄色ブドウ球菌(Staphylococcus aureus NBRC 100910)
7.ビブリオ(Vibrio parahaemolyticus GTC 2055)
なお、ビブリオは、次の機関から分譲されたものである。
・GTC 岐阜大学大学院医学系研究科病原体制御分野
【0222】
PCR法による遺伝子の増幅は、epグラジエントs(エッペンドルフ株式会社製)を使用して、以下の条件で行った。
(1)95℃ 2分
(2)95℃ 10秒(DNA鎖の乖離工程)
(3)68℃ 30秒(アニーリング工程)
(4)72℃ 30秒(DNA合成工程)
(5)72℃ 2分
(2)〜(4)を40サイクル
【0223】
次に、実施例1と同様に、PCR法による産物を、電気泳動により、それぞれの生物ごとに泳動させ、正しい増幅産物が得られているか否かを確認した。その結果を図44に示す。
同図において、各試料の生物ごとに、それぞれ以下のピークが示されている。
1.セレウス 198bp及び252bp
2.カンピロバクター 270bp
3.大腸菌 158bp
4.リステリア 195bp
5.サルモネラ 177bp
6.黄色ブドウ球菌 238bp
7.ビブリオ 390bp
【0224】
ここで、PCRによる増幅産物を電気泳動した場合、MultiNA(株式会社島津製作所製)に用いる試薬などの影響から、理論上の増幅産物の塩基配列と完全には一致せず、近似する値の結果が得られる。
図44に示す結果は、それぞれの理論上の増幅産物の塩基配列の長さに近似するものであり、それぞれ対象とする食中毒菌の増幅対象領域が増幅されていると考えられる。
【0225】
このように、本発明のプライマーの作製方法及びプライマーの設計方法にもとづき作製したプライマーセットを複数同時に用いた場合でも、それぞれ対象とする食中毒菌の増幅対象領域をそれぞれ個別に特異的に増幅できることが明らかとなった。
なお、リステリアの増幅産物は195bpとなっており、理論上の増幅産物176bpに比較して20bp近く長くなっているが、これは誤差又は当該菌株(ATCC 15313)に配列の挿入が生じていることなどによるものと推定される。
【0226】
<実験6:本発明におけるマルチプレックスPCR法における複数菌での増幅試験に関して>
(実施例30)
実施例29と同じプライマーセットを同様に作製すると共に、PCR用反応液として、作製したプライマーセット1〜8を全て含有させた、以下の組成のものを作製した。
・緩衝液 10×Ex Taq buffer(20mM Mg 2+ plus) 2.0μl
・核酸合成基質 dNTP Mixture(dATP、dCTP、dGTP、dTTP各2.5mM) 1.6μl
・ビブリオ検出用primer R(10ng/μl、final conc.4ng) 0.4μl
・ビブリオ検出用primer F(10ng/μl、final conc.4ng) 0.4μl
・その他のprimer R(10ng/μl、final conc.2ng) 0.2μl×7
・その他のprimer F(10ng/μl、final conc.2ng) 0.2μl×7
・核酸合成酵素 EX Taq(5U/μl) 0.1μl
・試料のDNA 1.0μl×7
・滅菌水 5.7μl
(全量 20μl)
【0227】
また、本実施例では、試料のDNAとして、実施例29と同じものを全て同時に含有させた。次いで、実施例1と同様のPCRの条件によって、各試料のDNAを複数のプライマーセット1〜8を用いて同時に増幅するマルチプレックスPCRを行った。そして、増幅産物を電気泳動によりそれぞれの生物ごとに泳動させ、正しい増幅産物が得られているか否かを確認した。その結果を図45に示す。
【0228】
同図に示すように、次の8つの増幅産物のピークが見られた。
(1)168bp (2)172bp (3)187bp (4)201bp
(5)224bp (6)243bp (7)273bp (8)387bp
これらのピークは、それぞれ大腸菌、サルモネラ、リステリア、セレウス(nhe)、黄色ブドウ球菌、セレウス(cesB)、カンピロバクター、ビブリオの理論上の増幅産物の塩基配列の長さに近似するものであり、各食中毒菌の増幅対象領域が特異的に増幅されていると考えられる。
このように、本発明のプライマーの作製方法及びプライマーの設計方法にもとづき作製したプライマーセットを複数同時に用いることで、それぞれ対象とする食中毒菌の増幅対象領域を同時に特異的に増幅できることが明らかとなった。
【0229】
本発明は、以上の実施形態や実施例に限定されるものではなく、本発明の範囲内において、種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上記各実施形態や実施例の内容の適宜組み合わせたものとすることが可能である。また、生物の遺伝子のみならず、人工のDNAの塩基配列の増幅に使用するなど適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0230】
本発明は、食品製造現場や臨床現場における微生物検査や、遺伝子診断、遺伝子検査等の産業や研究開発において、好適に利用することが可能である。
【符号の説明】
【0231】
10,20,30,40,50,60,70 プライマー設計装置
11,21,31,41,51,61,71 塩基配列記憶手段
12,22,32,42,52,62,72 増幅対象生物選択手段
13,23,33,43,53,63,73 非増幅対象生物選択手段
14,24,34,44,54,64,74 プライマー候補選択手段
15,67,7b 十二塩基連続重複判定手段
16,26,36,46,57,68,7c プライマーセット記憶手段
75 GC含量判定手段
25,76 GC配列判定手段
35,77 AT配列判定手段
55,65,79 融解温度算出手段
56,66,7a 温度差判定手段
45,78 融解温度判定手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PCR法によってDNAの塩基配列を増幅させるために用いるプライマーセットを、増幅対象生物のDNAにおける増幅対象領域を増幅させるためのフォワードプライマー及びリバースプライマーの少なくとも一方の塩基配列が、非増幅対象生物のDNAの塩基配列と、12塩基以上連続で重ならないように作製する
ことを特徴とするプライマーの作製方法。
【請求項2】
前記プライマーセットを、フォワードプライマー及びリバースプライマーの融解温度の差が5℃未満となるように作製する
ことを特徴とする請求項1記載のプライマーの作製方法。
【請求項3】
前記プライマーセットを、フォワードプライマー及びリバースプライマーの長さが23〜41merであり、かつ融解温度が70〜78℃となるように作製する
ことを特徴とする請求項1又は2記載のプライマーの作製方法。
【請求項4】
前記PCR法が、複数の生物のDNAの塩基配列を同時に増幅させるマルチプレックスPCR法であり、各増幅対象生物のDNAにおける増幅対象領域を増幅させるためのフォワードプライマー及びリバースプライマーの少なくとも一方の塩基配列が、他の増幅対象生物及び所定の非増幅対象生物のDNAの塩基配列と、12塩基以上連続で重ならないように作製する
ことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のプライマーの作製方法。
【請求項5】
PCRのアニーリング温度を、請求項1〜4のいずれかに記載のプライマーの作製方法を用いて得られたプライマーセットにおけるフォワードプライマーとリバースプライマーの中で、融解温度が最も低いプライマーの融解温度よりも0〜5℃低い温度に設定して、PCRを行う
ことを特徴とするプライマーの使用方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載のプライマーの作製方法を用いて得られた
ことを特徴とするプライマーセット。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれかに記載のプライマーの作製方法を用いて得られた一又は二以上のプライマーセットを含有する
ことを特徴とするPCR用反応液。
【請求項8】
検出対象菌種毎にプライマー量を調整した請求項7に記載のPCR用反応液。
【請求項9】
PCR法によってDNAの塩基配列を増幅するために用いるプライマーの設計方法であって、
DNAの塩基配列を増幅する対象の一又は二以上の増幅対象生物を選択するステップと、
DNAの塩基配列を増幅しない対象の一又は二以上の非増幅対象生物を選択するステップと、
選択された増幅対象生物のDNAからフォワードプライマーとリバースプライマーの候補を選択するステップと、
前記フォワードプライマー及び前記リバースプライマーの候補の塩基配列が、選択された他の増幅対象生物又は前記非増幅対象生物のDNAの塩基配列と12塩基以上連続で重なるか否かを判定するステップと、
判定の結果、前記フォワードプライマー及び前記リバースプライマーの候補の両方の塩基配列が、選択された他の増幅対象生物又は前記非増幅対象生物のいずれかのDNAの塩基配列と12塩基以上連続で重なる場合、再度前記選択された増幅対象生物からフォワードプライマーとリバースプライマーの候補を選択し直して前記12塩基以上連続で重なるか否かの判定を行うステップと、
判定の結果、前記フォワードプライマー及び前記リバースプライマーの候補の少なくとも一方の塩基配列が、選択された他の増幅対象生物又は前記非増幅対象生物の全てのDNAの塩基配列と12塩基以上連続で重ならない場合、前記フォワードプライマーと前記リバースプライマーの候補を前記PCR法によってDNAの塩基配列を増幅するために用いるプライマーセットとして決定するステップと、を有する
ことを特徴とするプライマーの設計方法。
【請求項10】
前記フォワードプライマー及び前記リバースプライマーの候補の塩基配列が、3’末端側半分において、G又はCを連続で3塩基以上備える否かを判定するステップと、
判定の結果、前記フォワードプライマー及び前記リバースプライマーの候補の両方の塩基配列が、G又はCを連続で3塩基以上備えていない場合、再度前記増幅対象生物からフォワードプライマーとリバースプライマーの候補の塩基配列を選択し直して、前記G又はCを連続で3塩基以上備えるか否かの判定を行うステップと、
判定の結果、前記フォワードプライマー及び前記リバースプライマーの候補の少なくとも一方の塩基配列が、G又はCを連続で3塩基以上備えている場合、前記フォワードプライマー及び前記リバースプライマーの候補を前記PCR法によってDNAの塩基配列を増幅するために用いるプライマーセットとして決定するステップと、を有する
ことを特徴とする請求項9記載のプライマーの設計方法。
【請求項11】
前記フォワードプライマー及び前記リバースプライマーの候補の塩基配列が、それぞれのプライマーの配列の中心から3’末端側及び5’末端側の両方向に向かってそれぞれのプライマーの全長の四分の1の範囲を含む領域に、A又はTを連続で4塩基以上備えるか否かを判定するステップと、
判定の結果、前記フォワードプライマー及び前記リバースプライマーの候補の両方の塩基配列が、A又はTを連続で4塩基以上備えていない場合、再度前記増幅対象生物からフォワードプライマーとリバースプライマーの候補を選択し直して前記A又はTを連続で4塩基以上備えるか否かの判定を行うステップと、
判定の結果、前記フォワードプライマー及び前記リバースプライマーの候補の少なくとも一方の塩基配列が、A又はTを連続で4塩基以上備えている場合、前記フォワードプライマーと前記リバースプライマーの候補を前記PCR法によってDNAの塩基配列を増幅するために用いるプライマーセットとして決定するステップと、を有する
ことを特徴とする請求項9又は10記載のプライマーの設計方法。
【請求項12】
前記フォワードプライマー及び前記リバースプライマーの候補の融解温度を算出するステップと、
算出した融解温度の差が、5℃未満であるか否かを判定するステップと、
判定の結果、5℃未満でない場合、再度前記増幅対象生物からフォワードプライマーとリバースプライマーの候補を選択し直して5℃未満であるか否かの判定を行うステップと、
判定の結果、5℃未満である場合、前記フォワードプライマーと前記リバースプライマーの候補を前記PCR法によってDNAの塩基配列を増幅するために用いるプライマーセットとして決定するステップと、を有する
ことを特徴とする請求項9〜11のいずれかに記載のプライマーの設計方法。
【請求項13】
選択された増幅対象生物のDNAから長さが23〜41merのフォワードプライマーとリバースプライマーの候補を選択するステップと、
前記フォワードプライマー及び前記リバースプライマーの候補の融解温度を算出するステップと、
算出した融解温度が、70〜78℃であるか否かを判定するステップと、
判定の結果、前記フォワードプライマー及び前記リバースプライマーの候補の融解温度の少なくとも一方が、70〜78℃でない場合、再度前記増幅対象生物からフォワードプライマーとリバースプライマーの候補を選択し直して前記70〜78℃であるか否かの判定を行うステップと、
判定の結果、前記フォワードプライマー及び前記リバースプライマーの候補の両方の融解温度が、70〜78℃である場合、前記フォワードプライマーと前記リバースプライマーの候補を前記PCR法によってDNAの塩基配列を増幅するために用いるプライマーセットとして決定するステップと、を有する
ことを特徴とする請求項9〜12のいずれかに記載のプライマーの設計方法。
【請求項14】
前記PCR法が、複数の生物のDNAの塩基配列を同時に増幅させるマルチプレックスPCR法である
ことを特徴とする請求項9〜13のいずれかに記載のプライマーの設計方法。
【請求項15】
前記増幅対象生物が、食中毒菌であることを特徴とする請求項9〜14のいずれかに記載のプライマーの設計方法。
【請求項16】
PCRのアニーリング温度を、請求項9〜15のいずれかに記載のプライマーの設計方法を用いて得られたプライマーセットにおけるフォワードプライマーとリバースプライマーの中で、融解温度が最も低いプライマーの融解温度よりも0〜5℃低い温度に設定して、PCRを行う
ことを特徴とするプライマーの使用方法。
【請求項17】
請求項9〜15のいずれかに記載のプライマーの設計方法を用いて得られた
ことを特徴とするプライマーセット。
【請求項18】
請求項9〜15のいずれかに記載のプライマーの設計方法を用いて得られた一又は二以上のプライマーセットを含有する
ことを特徴とするPCR用反応液。
【請求項19】
検出対象菌種毎にプライマー量を調整した請求項18に記載のPCR用反応液。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate

【図29】
image rotate

【図30】
image rotate

【図31】
image rotate

【図32】
image rotate

【図33】
image rotate

【図34】
image rotate

【図35】
image rotate

【図36】
image rotate

【図37】
image rotate

【図38】
image rotate

【図39】
image rotate

【図40】
image rotate

【図41】
image rotate

【図42】
image rotate

【図43】
image rotate

【図44】
image rotate

【図45】
image rotate


【公開番号】特開2013−17416(P2013−17416A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152910(P2011−152910)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【出願人】(390003193)東洋鋼鈑株式会社 (265)
【Fターム(参考)】