説明

プライマー及び施工方法

【課題】各種の部材に対して高い接着性または高い付着性を有するプライマー等を提供する。
【解決手段】互いに異なる複数の部材の間に介在され、(A)(A1)平均分子量が3000以上100000以下の、ポリエチレン又はポリプロピレン又は酢酸ビニル重合体又はスチレン重合体又は塩化ビニル重合体又はブチラール樹脂又はエチレン酢酸ビニル重合体と、(A2)平均分子量が500以上3000以下の分散剤と、(A3)水と、が混合された高分子エマルジョンと、(B)アクリルエマルジョン又は合成ゴムエマルジョンと、(C)タルクと、を常温で混合して生成され、粘度が0.5Pa・s以上2.0Pa・s以下(500cps以上2000cps以下)である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに異なる部材の間に介在されるプライマー及びこのプライマーを用いた施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
構造物は数多くの部材から構成されており、構造物を構成する部材は、互いに異なる種類の部材同士がプライマーを介して接合されていたり、塗料などがプライマーを介して付着されている。このとき、使用されるプライマーは、高い接着性または付着性を得るために各部材、塗料、シーリング材等の組み合わせ毎に各々適した専用プライマーが用いられる。例えば、外壁などの各種下地材には、各々適切なシーリング材との組み合わせがあり、その組み合わせ毎に適した専用プライマーが用いられることが知られている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】建築用シーリング材ハンドブック編集委員会、「建築用シーリング材ハンドブック」、3版、日本シーリング材工業会、p.36−37、表2.8適材適所表
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように、施工する構造物には多くの種類の下地材やシーリング材等が使用されるので、下地材やシーリング材等の数や種類に応じてプライマーの種類も多くなる。このため、施工箇所における下地材やシーリング材の種類に適したプライマーを、間違えることなく使用及び管理することは煩雑であるという課題がある。また、隣接する異なる部材に、各々の部材に適した互いに異なるプライマーを塗布する際には、異なるプライマーが隣接する領域にはみ出して塗布されないように、マスキングのような養生をしなければならず施工も煩雑で多大な手間と時間がかかるという課題があった。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、各種の部材に対して高い接着性または高い付着性を有するプライマー、及び、このプライマーを用いた施工方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
かかる目的を達成するために本発明のプライマーは、互いに異なる複数の部材の間に介在され、(A)(A1)平均分子量が3000以上100000以下の、ポリエチレン又はポリプロピレン又は酢酸ビニル重合体又はスチレン重合体又は塩化ビニル重合体又はブチラール樹脂又はエチレン酢酸ビニル重合体と、(A2)平均分子量が500以上3000以下の分散剤と、(A3)水と、が混合された高分子エマルジョンと、(B)アクリルエマルジョン又は合成ゴムエマルジョンと、(C)タルクと、を常温で混合して生成され、粘度が0.5Pa・s以上2.0Pa・s以下(500cps以上2000cps以下)であることを特徴とするプライマーである。
このようなプライマーによれば、互いに異なる複数の部材の間に介在されるプライマーは耐水性に優れているため、含水率が高い部材を接着する接着力及び含水率が高い部材に対する付着力が大きいので、含水率が高い部材であっても確実に接着及び付着させることが可能である。このため、プライマーを塗布する部位の含水率が低下するまで養生する必要はないので、工期を短縮することが可能であり、施工コストを低減することが可能である。
【0007】
また、耐水性が高く接着性及び付着性に優れているので、互いに異なる種類の部材における塗装部分やシーリング目地等を同一のプライマーにて施工することが可能である。このため、複数種類のプライマーを管理したり、下地材に応じて使い分けたりする必要がないので、施工が容易であり部材に確実に接着または付着させることが可能である。
【0008】
また、本プライマーは、水系であり有機溶剤を用いることなく製造することが可能なので、溶剤特有の臭いはなく、環境に配慮した施工が可能なので、作業環境や周辺環境への悪影響の発生を抑えることが可能である。
【0009】
また、上記(A)高分子エマルジョンにおいて、上記(A1)ポリエチレン又はポリプロピレン又は酢酸ビニル重合体又はスチレン重合体又は塩化ビニル重合体又はブチラール樹脂又はエチレン酢酸ビニル重合体の平均分子量が3000以上100000以下であり、且つ(A2)分散剤の平均分子量が500以上3000以下であり、また、プライマーが上記(A)高分子エマルジョン、上記(B)アクリルエマルジョン又は合成ゴムエマルジョン、及び上記(C)タルクを含むことによって、粘度を0.5Pa・s以上200Pa・s以下(500cps以上2000cps以下)の範囲内にすることができる。そして、プライマーの粘度が0.5Pa・s以上200Pa・s以下(500cps以上2000cps以下)の範囲内にあり、プライマーを躯体の上に施し易いので、作業性を向上させることが可能である。
【0010】
かかるプライマーであって、前記複数の部材には、金属製の部材が含まれていることが望ましい。
このようなプライマーによれば、耐水性に優れているので、接合される部位が金属製の部材を含む場合であっても、単一のプライマーにて施工することが可能である。
【0011】
かかるプライマーであって、前記複数の部材には、シーリング材が含まれていることが望ましい。
このようなプライマーによれば、単一のプライマーにて異なる種類の部材同士を確実に接合できるばかりでなく、プライマーを介して施したシーリング材により高いシール性を確保することが可能である。このように、使用するプライマーの数を削減することが可能なので、施工時に間違え難く、また間違えないように特段の気を遣う必要もないので、施工が容易であり部材に確実に接着または付着させることが可能である。
【0012】
かかるプライマーであって、前記複数の部材には、互いに異なる種類の複数のシーリング材が含まれていることとしても良い。
このようなプライマーによれば、プライマーが介在される部材に互いに異なる種類の複数のシーリング材が含まれている場合であっても、単一のプライマーにて施工することが可能である。このため、いずれのシーリング材も確実に施すことが可能であり、各々のシーリング材にて高いシール性を確保することが可能である。使用するプライマーが1種類の場合には、施工時に間違えることはなく、また間違えないように気を遣う必要もないので、施工が容易であり各シーリング材を確実に設けることが可能である。また、隣接する部位にてプライマーが施される領域と施されない領域とを仕切るための養生も必要ないので、作業の手間が削減され短時間にて確実に施工することが可能である。
【0013】
かかるプライマーであって、前記複数の部材には、互いに異なる種類の複数の下地材と、互いに異なる種類の複数のシーリング材とが含まれていることとしても良い。
このようなプライマーによれば、プライマーが介在される部材に互いに異なる種類の複数の下地材と、互いに異なる種類の複数のシーリング材とが含まれている場合であっても、単一のプライマーにて施工することが可能である。このため、使用するプライマーが1種類の場合には、施工時に間違えることはなく、また間違えないように気を遣う必要もないので、施工が容易であり各下地材及び各シーリング材を確実に設けることが可能である。また、隣接する部位にてプライマーが施される領域と施されない領域とを仕切るための養生も必要ないので、作業の手間が削減され短時間にて確実に施工することが可能である。
【0014】
また、前記プライマーを塗布する工程を有することを特徴とする施工方法である。
このような施工方法によれば、互いに異なる複数の部材の間に耐水性が高く部材同士を接着する接着力、または、各部材に付着させる付着力が大きなプライマーが施されるので、互いに異なる部材であっても確実に接着または付着させることが可能である。このため、例えばプライマーが介在される部材に互いに異なる種類の複数の下地材と、互いに異なる種類の複数のシーリング材とが含まれている場合であっても、単一のプライマーにて施工することが可能であり、施工時にプライマーを間違えることはなく、また間違えないように気を遣う必要もないので、施工が容易であり部材同士を確実に接着させること、また、塗料などを確実に付着させることが可能である。さらに、プライマーが施される領域と施されない領域とを仕切るための養生も必要ないので、作業の手間が削減され短時間にて確実に施工することが可能である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、各種の部材に対して高い接着性または高い付着性を有するプライマー、及び、このプライマーを用いた施工方法を提供することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明にかかるプライマーを用いた施工箇所の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図を用いて詳細に説明する。
まず、本実施形態の施工に使用するプライマーの一例について説明する。
プライマー30は、2段階の工程を経て調製される。2段階の工程は、プライマー30の材料の1つである高分子エマルジョン(以下、分散液Aともいう)を調製する分散液A調製工程と、調製した分散液Aを用いてプライマー30を調製する工程とからなる。
【0018】
まず、分散液A調製工程について説明する。
分散液Aの材料(構成成分)として、有機ポリマーと、水と、有機ポリマーを水に分散させるための分散剤とを用意する。
【0019】
有機ポリマーとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン、酢酸ビニル重合体、スチレン重合体、塩化ビニル重合体、ブチラール樹脂、及びエチレン酢酸ビニル重合体からなる群から選択された1種又は2種以上の有機ポリマーが用いられる。なお、本実施の形態では、有機ポリマーの材料として、エポキシ系樹脂やアクリル系樹脂が用いられることはない。有機ポリマーの数平均分子量は、3000以上100000以下の範囲内にあり、常温で固体である。有機ポリマーは数平均分子量が3000を下回ると、プライマーの躯体への付着性が低下すると共にプライマーの耐水性や強度が低下し、数平均分子量が100000を超えると、プライマーの粘度が高くなりすぎてプライマーを躯体の上に施しにくくなる。
【0020】
分散剤としては、例えば、ポリビニルアルコール(PVA:poly-vinyl alcohol)が用いられる。PVAは、ビニル基に由来する油性の部分(以下、「親油基O」という)と、アルコールの水酸基に由来する、多数の水性の部分(以下、「親水基W」という)とを有する。このため、PVAは、乳化剤として機能する。PVAは、数平均分子量が500を下回ったり、3000を上回ったりすると、1分子中に含まれる親水基Wの数と親油基Oの数のバランスが崩れて、乳化剤としての機能が低下する。
【0021】
PVAとしては、親水基の一部をケン化した部分ケン化PVAを用いることが好ましく、より好ましくは、そのケン化度が70%〜98%、特には80%〜97%の部分ケン化PVAである。PVAは、ケン化度が70%を下回ると、上記有機ポリマーの水に対する溶けやすさ(可溶性)が高すぎてプライマーの耐水性が低下し、ケン化度が98%を上回ると、上記可溶性が低くなりすぎてプライマーが水性にならなくなる。なお、ケン化度が98%を上回るようなPVAを製造することは困難である。
【0022】
続いて、上記3つの材料を所定の混合比率で混合することで、有機ポリマーを主な固形分としたエマルジョン(以下、高分子エマルジョンともいう)を生成する。この混合の際、材料に対してせん断力を付与するために、混練機であるニーダー(kneading machine)を使用することが好ましく、より好ましくは、材料を加圧したり加熱したりする。これらにより、材料を均一に混合することができる。
【0023】
上記混合によって、PVAの親油基Oは上記有機ポリマーと馴染み、親水基Wは水と馴染む。この結果、多数の親水基Wが有機ポリマーの表面に配置された状態の粒子が、水に分散されることになる。こうして、水中に油性部分が分散されたO/W(oil in water)型のエマルジョン、つまり水性の高分子エマルジョンが形成される。このように調製された水性のエマルジョンを、本明細書では、「分散液A」と称している。分散液Aは、スラリー(slurry)状態又はペースト状態にある。
【0024】
ここで、混合比率について説明する。
分散剤は、有機ポリマーの質量を100%(1重量部)とすると、10質量%以上50質量%以下の割合で添加される。つまり、有機ポリマーと分散剤の質量比を示す混合比率(有機ポリマー:分散剤)は、1:0.1以上1:0.5以下である。分散剤の添加量が10質量%を下回ると、高分子エマルジョンの安定性が低下し、添加量が50質量%を上回ると、プライマーの耐水性が低下する。
【0025】
水は、任意の割合で添加される。ただし、混合の際には、少量ずつ添加することが好ましい。これにより、均一な混合物を得ることが容易となる。最終的な水の添加量は、分散液Aにおける固形分量が約50%、例えば48%となるように調整される。なお、固形分量とは、液状成分及び固形分の総質量に対する固形分の総質量の割合(質量%)を示す。
【0026】
ところで、上記分散液Aの調製にあたり、数平均分子量が500以上5000以下の石油樹脂を用意し、これを上記3つの材料とともに混合することが好ましい。石油樹脂としては、例えば、高級オレフィン系炭化水素を主原料とするものを用いることができる。このような石油樹脂は、プライマーの保存性を高める機能を有する。これは、石油樹脂が有機ポリマーや分散剤の親油基Oと馴染むためであると考えられる。石油樹脂の数平均分子量が500を下回ったり、5000を上回ったりすると、有機ポリマーや分散剤の親油基Oと馴染みにくくなり、プライマーの保存性を十分に高めることができなくなる。
【0027】
続いて、調製した分散液Aを用いてプライマーを調製する工程について説明する。
まず、プライマーの材料(構成成分)として、上記分散液Aと、下記に説明するアクリルエマルジョンと、タルク(Talc)とを用意する。
ここでいうアクリルエマルジョンとは、アクリル酸アルキルとスチレンとの共重合体を固形分とする水性のエマルジョン、又はアクリロニトリルとアクリル酸アルキルエステルの共重合体を固形分とする水性のエマルジョンをいう。アクリルエマルジョンとしては、アクリル酸ブチル(アクリル酸アルキルの一例である)とスチレンとの共重合体を固形分量50質量%となるように調製した水性分散液(市販品)が挙げられる。
【0028】
タルクとは、二酸化ケイ素(SiO2)と酸化マグネシウム(MgO)の混晶である含水ケイ酸マグネシウム[Mg3Si410(OH)2]のことをいう。タルクは、二酸化ケイ素を約60質量%含み、酸化マグネシウムを約30質量%含み、且つ結晶水を約4.8質量%含んでいる。本実施の形態では、タルクは、プライマーを躯体の上に施した後の硬化性を高める硬化剤として機能する。また、躯体がコンクリート躯体である場合、タルクは、プライマーとコンクリート躯体との親和結合力を高める機能を有する。
続いて、上記3つの材料を常温で混合する。これにより、プライマーが生成される。このようにして得られたプライマーは、スラリー状態又はペースト状態にある。
【0029】
ここで、混合比率について説明する。
アクリルエマルジョンは、分散液Aの質量を100%(1重量部)とすると、20質量%以上50質量%以下の割合で添加される。つまり、分散液Aとアクリルエマルジョンの質量比を示す混合比率(分散液A:アクリルエマルジョン)は、2:1以上5:1以下である。本実施の形態では、アクリルエマルジョンは、プライマーの耐水性を高める機能を有している。アクリルエマルジョンの添加量が20質量%を下回ると、プライマーの耐水性を十分に高めることができなくなる。一方、添加量が50質量%を上回ると、プライマーにおけるアクリルエマルジョンの割合が多くなりすぎて、本実施の形態によるプライマーの機能や特性が十分に発現しなくなる。
【0030】
なお、予め、分散液Aを調製しておくことにより、プライマーの調製が容易となる。このため、例えば、プライマーを躯体の上に施す施工現場とは離れた場所で、分散液Aの調整を行い、施工現場の近傍においてプライマーの最終調製を行うことも可能である。
このようにして得られるプライマーは、少なくとも、分散液Aの材料(有機ポリマー,分散剤,水)と、アクリルエマルジョンと、タルクとを含有しており、また、必要に応じて石油樹脂をさらに含有していることになる。このプライマーは、分散剤等を用いることで、有機溶剤を用いることなく製造される。このため、製造時や、後述する塗装仕上げの際に、周囲の人物に危険が及ぶことがなく安全である。
【0031】
次に、プライマーの性質について説明する。
プライマーは、O/W型のエマルジョンであるので、水性である。プライマーにおける固形分量は、水の量に応じて変わるが、例えば62%である。また、プライマーは、躯体の上に施された後は、水分が徐々に除去されて、硬化し、高強度の皮膜を形成する。
【0032】
また、このプライマーは、水性であるにも関わらず、皮膜形成後の耐水性が高い。これは、プライマー調製の際、分散液Aにアクリルエマルジョンを添加することや、プライマーの粘度の範囲を下記範囲とすることなどによって、達成されるものと考えられる。さらに、このプライマーは、躯体への付着力が高い。これは、プライマー調製の際、分散液Aにタルクを添加することや、プライマーの粘度の範囲を下記範囲とすることなどによって、達成されるものと考えられる。これらにより、躯体の含水率が高い状態であっても、プライマーを躯体の上に施すことが可能となる。このため、躯体を乾燥させる必要がなくなるので、プライマーを施すまでの期間を短くすることができる。もちろん、躯体を乾燥させて、その含水率が低い状態において、躯体の上にプライマーを施してもよい。したがって、躯体の含水率に依らずに、プライマーを躯体の上に施すことができる。
【0033】
また、プライマーの粘度は、500cps以上2000cps以下(SI単位に換算して、0.5Pa・s以上2.0Pa・s以下)である。このような粘度の範囲は、有機ポリマーの数平均分子量などを上述した範囲とし、アクリルエマルジョン及びタルクを添加することなどによって、達成される。プライマーの粘度が上記範囲内にあると、適度な粘性を有するため躯体上に施し易い。
【0034】
次に、上記プライマーを用いた施工方法として、コンクリート製の躯体にガラスが嵌め込まれたアルミニウム製の枠部を有するサッシを取り付ける施工方法について説明する。
【0035】
図1は、本発明にかかるプライマーを用いた施工箇所の模式断面図である。
図1に示す施工箇所は、コンクリート構造物(以下、構造物という)1に嵌め込まれたサッシ10の下枠13と構造物1との取り合い部分である。
【0036】
構造物1の躯体2に設けられた開口を形成し水平をなす下側開口面2aには、下方に窪み上方に開放された溝部2bが形成されている。溝部2b内にはサッシ10の枠体12が収容されるとともに、躯体2と枠体12との間にはモルタル14が充填されている。
【0037】
サッシ10は、4本の棒状の枠部材11が矩形状に枠組みされた枠体12と、外周部が全周に亘り枠体12に収容されたガラス20と、下側の枠部材11とガラス20との間に介在されたセッティングブロック23と、ガラス20の両面と枠体12との間に設けられたバックアップ材22と、バックアップ材22よりも枠体12の開放側に充填されたシリコーン系シーリング材24と、を有している。図1では、枠体12を形成する4本の枠部材11のうち下側に位置する下枠13のみが示されている。
【0038】
枠部材11は、対向する一対の側壁部11aと、一対の側壁部11aの一端側を繋ぐ底部11bとを備え、断面が「コ」字状をなすアルミニウム製の部材である。
【0039】
枠体12は、各枠部材11の開放された側が内側に向けられて枠組みされており、ガラス20は、下枠13の底部11b上に配置されたセッティングブロック23上に載置されるように配置される。このとき、ガラス20は、一対の側壁部11aの間にて、幅方向におけるほぼ中央に配置されている。そして、各枠部材11の側壁部11aとガラス20との間に形成された、各枠部材11の開放端側に繋がった領域にはガラス20の端部側にバックアップ材22が設けられている。また、シリコーン系シーリング材24は、各枠部材11におけるバックアップ材22より開放端側の領域にてガラス20を挟むように、ガラス20と枠部材11の側壁部11aとの間に充填されている。
【0040】
サッシ10の下側に位置する下枠13は、「コ」字状をなす断面の開放された側が上方に向くように配置され、開放端部13aは下側開口面2aとほぼ同じ高さに配置されている。躯体2と枠体12との間に充填されているモルタル14は、開放端部13a及び下側開口面2aより低い位置まで充填されており、その上に開放端部13a及び下側開口面2aとほぼ同じ位置まで変成シリコーン系シーリング材26が充填されている。
【0041】
また、構造物1の表面、すなわち躯体2の下側開口面2aには外装材としての塗料28が、枠体12の開放端部13aと溝部2bに充填された変成シリコーン系シーリング材26も含めて下側開口面2aを覆うように塗布されている。
このような構造物1を施工する際には、まず、サッシ10を製造しておく。
【0042】
サッシ10の製造は、まず下枠13にセッティングブロック23を収容するとともにガラス20の端部をセッティングブロック23に当接させて配置し、ガラス20の周縁部を各枠部材11にて収容し、隣接する枠部材11同士を矩形状に接合する。
【0043】
次に、枠体12を構成する各枠部材11の側壁部11aの内側と、ガラス20の周縁部との間に、全周に亘ってバックアップ材22を挿入してガラス20を枠体12に保持する。このとき、各枠部材11の側壁部11aとガラス20との間には各枠部材11の開放端側に繋がった空間が形成されている。
【0044】
次に、枠体12を構成する各枠部材11の側壁部11aの内側と、ガラス20の周縁部であって、枠体12に収容されて側壁部11aと対向する部位に、上述したプライマー30を塗布する。このとき、枠部材11の側壁部11aの内側と、ガラス20において側壁部11aと対向する部位とには、上述した同一のプライマー30を塗布する(プライマー30を塗布する工程)。
その後、プライマー30が塗布された枠部材11の内側とガラス20の周縁部との間にシリコーン系シーリング材24を充填してサッシ10が完成する。
【0045】
次に、躯体2の溝部2bにモルタル14を注入し、モルタル14が注入された溝部2b内に枠体12が収容されるようにサッシ10を配置する。このとき、枠体12は溝部2bにおいて溝部2bの幅方向の中央に位置するように配置されることにより、モルタル14が押し分けられて溝部2bの幅方向において枠体12の両側にも移動され、枠体12はモルタル14により三方にて躯体2と接合される。また、このとき、枠体12の両側に移動されたモルタル14の、溝部2bの開放端側には、コンクリート製の躯体2とアルミニウム製の枠体12との間に空間が形成されている。ここで、サッシ10は釘やボルトなどの固定具により躯体2に固定されていても良い。
【0046】
そして、溝部2bの開放端側の空間を形成している、躯体2のコンクリート面と枠体12のアルミニウム面とモルタル14の表面とに、上述したプライマー30を塗布する(プライマー30を塗布する工程)。このとき、躯体2のコンクリート面と枠体12のアルミニウム面とには、上述した同一のプライマー30を塗布する。また、このとき躯体2及びモルタル14は含水率が例えば10%以上の高い状態であっても構わない。
【0047】
次に、プライマー30が塗布された空間内に変成シリコーン系シーリング材26を、下側開口面2aとほぼ同じ位置まで充填する。
【0048】
溝部2bの開放端側の空間に変成シリコーン系シーリング材26を充填した後に、枠体12の開放側の端部と、充填された変成シリコーン系シーリング材26の上面と、躯体2の下側開口面2aとに亘って上述したプライマー30を塗布する(プライマー30を塗布する工程)。このとき、枠体12の開放端部13aと、変成シリコーン系シーリング材26の上面と、躯体2の下側開口面2aとは、いずれも別部材であり材質が相違するが、同一の上記プライマー30を、領域を分けることなく塗布する。
【0049】
プライマー30が塗布された枠体12の開放端部13aと、変成シリコーン系シーリング材26の上面と、躯体2の下側開口面2aとに外装材となる塗料28を塗布して構造物1が完成する。
【0050】
本実施形態のプライマー30は耐水性が高く接着力及び付着力が大きいので、ガラス20とシリコーン系シーリング材24、シリコーン系シーリング材24とアルミニウム製の枠体12、アルミニウム製の枠体12と変成シリコーン系シーリング材26、変成シリコーン系シーリング材26とコンクリート製の躯体2、変成シリコーン系シーリング材26とモルタル14、変性シリコーン系シーリング材26と塗料28、コンクリート製の躯体2と塗料28等、互いに異なる種類の部材であっても確実に接着または付着させることが可能である。
【0051】
また、プライマー30は、耐水性が高いため含水率が高い部材を接着する接着力及び含水率が高い部材に対する付着力に優れているので、含水率が高い部材の塗装部分やシーリング目地等を同一のプライマー30にて施工することが可能である。このため、プライマー30を塗布する部位の含水率が低くなるまで養生する必要がないので、工期を短縮することが可能であり、施工コストを低減することが可能である。
【0052】
また、本プライマー30は、水系であり有機溶剤を用いることなく製造することが可能なので、溶剤特有の臭いはなく、環境に配慮した施工が可能なので、作業環境や周辺環境への悪影響の発生を抑えることが可能である。
【0053】
また、高分子エマルジョンにおいて、ポリエチレン又はポリプロピレン又は酢酸ビニル重合体又はスチレン重合体又は塩化ビニル重合体又はブチラール樹脂又はエチレン酢酸ビニル重合体の平均分子量が3000以上100000以下であり、且つ分散剤の平均分子量が500以上3000以下であり、また、下地調整材が上記高分子エマルジョン、上記アクリルエマルジョン又は合成ゴムエマルジョン、及び上記タルクを含むことによって、粘度を0.5Pa・s以上2.0Pa・s以下(500cps以上2000cps以下)の範囲内にすることができる。そして、プライマー30の粘度が0.5Pa・s以上200Pa・s以下(500cps以上2000cps以下)の範囲内にあるので、プライマー30を躯体2等の上に施し易く、作業性を向上させることが可能である。
【0054】
また、上述したプライマー30は、塗料28が塗布される部位が上述したアルミニウム製のサッシ10の枠体12のような金属製の部材を含む場合や、変成シリコーン系シーリング材26のようなシーリング材を含む場合であっても、単一のプライマー30にて施工することが可能である。さらに、上述したプライマー30は、耐水性に優れ、各部材同士を接着する接着力及び塗料28等の付着力が大きいので、接合される部材、または、塗料28が塗装される部位に互いに異なる種類の複数のシーリング材が含まれている場合、また、接合される部材、または、塗料が塗装される部位に互いに異なる種類の複数の下地材と、互いに異なる種類の複数のシーリング材や塗料28が含まれている場合であっても、単一のプライマー30にて施工することが可能である。このため、使用するプライマー30は1種類だけなので、施工時に間違えることはなく、また間違えないように気を遣う必要もないので、施工がより容易であり確実に接着及び付着させることが可能である。また、隣接する部位にてプライマー30が施される領域と施されない領域とを仕切るための養生も必要ないので、作業の手間が削減され短時間にて確実に施工することが可能である。
【0055】
また、本実施形態のプライマー30を塗布する工程を有する施工方法によれば、互いに異なる複数の部材の間に耐水性が高く部材同士を接着する接着力、及び塗料28の付着力が大きなプライマー30が塗布されるので、互いに異なる部材であっても確実に接着及び塗料を付着させることが可能である。このため、例えば接合される部材及び隣接する部材に互いに異なる種類の複数の下地材や互いに異なる種類の複数のシーリング材が含まれている場合であっても、単一のプライマー30にて施工することが可能であり、施工時にプライマー30を間違えることはなく、また間違えないように気を遣う必要もないので、施工が容易であり確実に接着及び塗装することが可能である。さらに、隣接する部位にてプライマー30が施される領域と施されない領域とを仕切るための養生も必要ないので、作業の手間が削減され短時間にて確実に施工することが可能である。例えば、従来は、枠体12、変成シリコーン系シーリング材26、躯体2にそれぞれ専用のプライマー30を用いなければならない場合には、枠体12だけにプライマー30を塗るための養生、変成シリコーン系シーリング材26だけにプライマー30を塗るための養生、躯体2だけにプライマー30を塗るための養生を行ったうえでプライマー30を塗布する工程を順次行わなければならないため、作業が繁雑であり、長い施工時間を費やさなければならなかった。ところが、上記実施形態のように、いずれの部材に対しても接着性及び付着性に優れたプライマー30を用いると、アルミニウム製のサッシの枠体12、変成シリコーン系シーリング材26、躯体2に亘って塗料28を塗る際に、一種類のプライマー30で良いため、枠体12、変成シリコーン系シーリング材26、躯体2に一挙にプライマー30を塗布し、更に含水率が高い状態であっても塗装することができるため、施工が容易で短時間で施工することが可能である。
【0056】
また、上記実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0057】
1 構造物
2 躯体
2a 下側開口面
2b 溝部
10 サッシ
11 枠部材
11a 側壁部
11b 底部
12 枠体
13 下枠
13a 開放端部
14 モルタル
20 ガラス
22 バックアップ材
23 セッティングブロック
24 シリコーン系シーリング材
26 変性シリコーン系シーリング材
28 塗料
30 プライマー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる複数の部材の間に介在され、
(A)
(A1)平均分子量が3000以上100000以下の、ポリエチレン又はポリプロピレン又は酢酸ビニル重合体又はスチレン重合体又は塩化ビニル重合体又はブチラール樹脂又はエチレン酢酸ビニル重合体と、
(A2)平均分子量が500以上3000以下の分散剤と、
(A3)水と、
が混合された高分子エマルジョンと、
(B)アクリルエマルジョン又は合成ゴムエマルジョンと、
(C)タルクと、
を常温で混合して生成され、
粘度が0.5Pa・s以上2.0Pa・s以下(500cps以上2000cps以下)であることを特徴とするプライマー。
【請求項2】
請求項1に記載のプライマーであって、
前記複数の部材には、金属製の部材が含まれていることを特徴とするプライマー。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のプライマーであって、
前記複数の部材には、シーリング材が含まれていることを特徴とするプライマー。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のプライマーであって、
前記複数の部材には、互いに異なる種類の複数のシーリング材が含まれていることを特徴とするプライマー。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のプライマーであって、
前記複数の部材には、互いに異なる種類の複数の下地材と、互いに異なる種類の複数のシーリング材とが含まれていることを特徴とするプライマー。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載のプライマーを、塗布する工程を有することを特徴とする施工方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−1467(P2011−1467A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−145629(P2009−145629)
【出願日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【出願人】(000000549)株式会社大林組 (1,758)
【出願人】(391051614)成瀬化学株式会社 (11)
【Fターム(参考)】