説明

プライマー及び特定動物の検出方法

【課題】サバ、サケ、アワビ、イカ、カニ又は/及びエビを食品から特異的に検出できるPCRプライマーを提供する。
【解決手段】(A)特定の配列を有するサバの検出に用いられるプライマーのセット。(B)異なる配列を有するサケの検出に用いられるプライマーのセット。(C)さらに、異なる配列を有するアワビの検出に用いられるプライマーのセット。(D)さらに、異なる配列を有するイカの検出に用いられるプライマーのセット。(E,F)さらに、異なる配列を有する、エビ又は/及びカニの検出に用いられるプライマーのセット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アレルギーを引き起こす恐れのある特定の動物中のサバ、サケ、ア
ワビ、イカ、カニ、エビを検出対象とし、当該特定動物が食品原料や製品等に含まれていた場合に、その量が微量であっても高感度で検出することを可能とする特定動物の検出方法、並びにその方法に使用するPCRプライマー、プライマーセット、及びキットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在、特定のアレルギー体質を持つ人の健康危害の発生を防止する観点から、食物アレルギーを引き起こすことが明らかになった食品のうち、特に発症数、重篤度から勘案して表示する必要性の高い小麦、そば、卵、乳及び、落花生の5品目(以下「特定原材料」とい
う。)を含む加工食品については、当該特定原材料を含む旨を商品に記載しなければならない(厚生労働省医薬局食品保健部長通知、食品衛生法施行規則及び乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の一部を改正する省令等の施行について、平成13年3月15日、食発第79号)。また、アワビ、イカ、エビ、カニ、サケ、サバ、鶏肉、豚肉、いくら、牛肉、ゼ
ラチン、オレンジ、キウイフルーツ、くるみ、大豆、まつたけ、もも、やまいも、りんご及び、バナナの20品目(以下「特定原材料に準ずるもの」という。)についても、食物アレルギーの実態及びアレルギー誘発物質の解明に関する研究において、特定のアレルギー体質を持つ人に、過去に一定の頻度で重篤な健康危害が見られていることから、これらを原材料として含む加工食品については、当該食品を原材料として含む旨を可能な限り表示するよう努めることが推奨されている(厚生労働省医薬局食品保健部長通知、食品衛生法施行規則及び乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の一部を改正する省令等の施行について、平成13年3月15日、食発第79号)(食品衛生法施行規則及び乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の一部を改正する省令等の施行について、平成13年3月15日、食発第79号、改正 平成16年12月24日、食安発第1224002号)。
アレルギーを起こす恐れのある食品原料、特にアレルギー原因動植物は、生産、流通、加工段階での意図しない微量の混入も起こり得るため、食品原料ないし製品の提供者としては、それらにアレルギー原因動植物が混入されているか否かの品質管理を行うことが重要となる。
「特定原材料」である小麦、そば、卵、乳及び、落花生の検出法としては、ELISA法、ウ
ェスタンブロッド法あるいはPCR法を用いた方法が確立されており、当該検出法は、検査
キットとして商用的に入手、利用可能となっている(厚生労働省医薬局食品保健部長通知、アレルギー物質を含む食品の検査方法について、平成14年11月06日、食発第1106001号)。一方、「特定原材料に準ずるもの」に対する検出法は、鶏肉、豚肉、牛肉において報告されているが(特開2003-230383号「牛、豚、鶏検出用プライマー」)(Meyer R., C. Hofelein, J. Luthy, and U. Candrian; Polymerase chain reaction-restriction fragment length polymorphism analysis: a simple method for species identification in food; Journal of AOAC International, 78: 1542-1551, 1995)(松永孝光、柴田清弘、山田順一、新村裕、マルチプレックスPCR法による食肉及び食肉製品の肉種鑑別、日本食品科学工学会誌、第46巻、p. 187-194、1999)、アワビ、イカ、エビ、カニ、サケ、サバ、いくら、ゼラチン、オレンジ、キウイフルーツ、くるみ、大豆、まつたけ、もも、やまいも、りんご、及びバナナにおいては、明確な報告はない。これらの検出法が定かでない「特定原材料に準ずるもの」に相当する特定動植物の混入の有無に関して、科学的な検証をもって品質管理を行うことは、現在、困難な状況にある。
【0003】
様々な加工処理工程を経た食品原料や製品中から検出対象生物を検出する場合、「特定原材料」の検査法で確立されているように、検出対象生物に特徴的な蛋白質を検出する方法(ELISA法やウェスタンブロッド法)や検出対象生物に特徴的なDNA塩基配列を検出する方法(PCR法)が有望な手法となる(厚生労働省医薬局食品保健部長通知、アレルギー物
質を含む食品の検査方法について、平成14年11月06日、食発第1106001号)。一般に、蛋
白質は、DNAと比べて、食品製造工程における様々な加工処理に対する安定性が低いため
、蛋白質を検出する方法は、高度に加工された被験食品に対しては適用できない可能性が高い。それ故に、蛋白質よりも加工処理に比較的強いとされるDNAの塩基配列を標的とし
た検出方法は、様々な加工処理工程を経た食品原料や製品中から検出対象生物の混入の有無を調べる手法として、有望な方法と考えられる。また、動植物のDNA塩基配列には、rRNA遺伝子クラスターのようにコピー数の多い塩基配列が存在し、このような多コピー数の塩基配列を標的配列に使用できれば、検出法の感度を高めることも可能となる。さらに、細胞中に複数存在するクロロプラスト由来DNAあるいはミトコンドリア由来DNAの塩基配列を標的配列とする場合も、検出法の感度の向上化に寄与する。
【0004】
遺伝子組換え作物などをPCRで検出する場合、検出対象とするDNA塩基配列は、組換えられたDNA塩基配列に限定される。一方、自然界に存在する動植物の場合、無数にあるDNA塩基配列からどの塩基配列を検出対象に選ぶか、さらには、様々な動植物について、その塩基配列を検出対象として選ぶ有効性の有無に関する明確な知見は見られない。検出対象とする動植物に特異的な蛋白質を選定し、その蛋白質をコードするDNA塩基配列を検出する
ための標的とすることも行われているが、この場合、個々の動植物に対して個別に特異的な蛋白質を選定する必要がある。また、このような特異的な蛋白質が選定できたとしても、そのDNA塩基配列のコピー数が少ない場合には、必要な検出感度が得られない場合があり、微量に混入する動植物の検出には、不都合となる。
【0005】
被験試料であるサケ類の種を同定あるいは類推する方法として、ミトコンドリアのチトクロームb遺伝子配列やミトコンドリアのコントロール領域配列(D-loop)を標的としたPCRプライマーによって増幅されたDNA塩基配列を公知の塩基配列と比較する方法が報告されている(非特許文献1)。この方法で使用されているPCRプライマーは、主成分がサケ
類である試料から抽出されたDNAを増幅させることは可能であるが、その他の生物由来DNAに対する当該PCRプライマーの交差反応性、すなわち、検出特異性の記載は無く、さらに
、食品のように複数の動植物を含む試料中のサケ類DNAを特異的に検出できるという記載
もなされていない。それ故に、この方法は、複数の動植物を含む食品中のサケ類DNAを特
異的に検出する方法としては、十分に検証された方法ではない。
上述のチトクロームb遺伝子検出PCRプライマーの塩基配列は以下のとおりである。
CytB5(F): AAAATCGCTAATGACGCACTAGTCGA(配列番号11)
CytB6(R): GCAGACAGAGGAAAAAGCTGTTGA(配列番号12)
これは、サケ科サケ属、サルモ属以外に(サケ属、サルモ属以外は厚生労働省の「特定原材料に準ずるもの」に含まれない。)、サケ科イワナ属(イワナ)、サケ科グレイリング属(カワヒメマス)、ウナギ科ウナギ属(ウナギ)、マアナゴ科クロアナゴ属(マアナゴ)をも検出すると予想される。
また、上述のコントロール領域配列(D-loop)検出PCRプライマーの塩基配列は次の通り
である。
Smc1(F): AATGTAGTAAGAACCGACCAA(配列番号13)
Smc2(R): TAGGAACCAAATGCCAGGAAT(配列番号14)
これは、サケ科サケ属、サルモ属以外に、サケ科イワナ属(イワナ)、 フエダイ科フエダイ属(フエダイの仲間)、サバ科サバ属(タイイヨウマサバ)をも検出すると予想される。サケ科サケ属、サルモ属以外に、サケ科イワナ属(イワナ)をも検出すると予想される。
【0006】
さらに、上述のコントロール領域配列(D-loop)検出PCRプライマーの別の塩基配列は次
の通りである。Smc3(F): ACTTGGATATCAAGTGCATAAGGT(配列番号15)
Smc4(R):CCTGGTTTAGGGGTTTAACAGG(配列番号16)
これは、サケ科サケ属、サルモ属以外に、サケ科イワナ属(イワナ)をも検出すると予想される。
さらに、上述のコントロール領域配列(D-loop)検出PCRプライマーのさらに別の塩基配列
は次の通りである。
Smc7(F): AACCCCTAAACCAGGAAGTCTCAA(配列番号17)
Smc8(R): CGTCTTAACAGCTTCAGTGTTATGCT(配列番号18)
これは、サケ科サケ属、サルモ属以外に、サケ科イワナ属(イワナ)をも検出すると予想される。
また、頭足類(イカやタコの仲間)の種を同定あるいは推定する方法として、ミトコンドリアのチトクロームオキシダーゼIII遺伝子配列や同じくチトクロームオキシダーゼII遺
伝子配列を標的としたPCRプライマーによって増幅されたDNA塩基配列を公知の塩基配列と比較する方法も報告されている(非特許文献2)。この方法で使用されているPCRプライ
マーは、主成分が頭足類である試料から抽出されたDNAを増幅させることは可能であるが
、その他の生物に対する当該PCRプライマーの交差反応性、すなわち、検出特異性の記載
は無く、さらに、食品のように複数の動植物を含む試料中の頭足類DNAを特異的に検出で
きるという記載もなされていない。それ故に、複数の動植物を含む食品中の頭足類DNAを
特異的に検出する方法としては、十分に検証された方法ではない。
上述のチトクロームオキシダーゼIII遺伝子検出PCRプライマーの塩基配列は次の通りで
ある。
COIII1プライマー: AGCCCATGACCTTTAACAGG(配列番号19)
COIII2プライマー: GACTACATCAACAAAATGTCAGTATCA (配列番号20)
これは、イカやタコ類以外に、ヒト、ハエの仲間、タイセイヨウマサバ、エビ類などをも検出すると予想される。
また、上述のチトクロームオキシダーゼII遺伝子検出PCRプライマーの塩基配列は次の通
りである。
COII1: ATTGCTCTGCCTTCACTACG(配列番号21)
COII2: CAAATTTCTGAGCATTGACC(配列番号22)
これは、イカやタコ類以外に、ヒト、ハエの仲間、タイセイヨウマサバ、エビ類などをも検出すると予想される。
【0007】
また、個々の稚魚や未成魚における、日本産サバ属の種判別を可能にする方法として、染色体上の18S rRNA遺伝子と5.8S rRNA遺伝子の間の介在配列を標的としたPCRプライマーによって増幅された増幅産物の長さの相違を調べる方法も報告されている。(特許文献1)。この方法で使用されているPCRプライマーは、サバ由来DNAを増幅させることが可能であり、その増幅産物の長さの相違いから、日本産サバであるマサバとゴマサバとの識別することが可能である。しかし、その他の生物に対する当該PCRプライマーの交差反応性、すなわち、検出特異性の記載は無く、さらに、食品のような複数の動植物を含む試料中のサバ属DNAを特異的に検出できるという記載及び、サバ属のサバ(マサバとゴマサバ)を特異的に検出できるという記載もなされていない。また、当該18S rRNA遺伝子と5.8S rRNA遺伝子との間の介在配列の塩基配列に関するデータベースは少なく、サバ以外の生物を検出するか否かの検証も不十分な状態である。それ故に、複数の動植物を含む食品中のサバ(マサバとゴマサバ)DNAを特異的に検出する方法としては、十分に検証された方法ではない。
上述のサバ属検出用PCRプライマーの塩基配列は以下の通りである。
SABA-S: CCGGGTACCCAACTCTCC(配列番号23)
SABA-AS: CACCGCTAAGAGTTGTCACAGT(配列番号24)
これは、サバ(属)以外に、ズズキ目のケツギョ(Siniperca chuatsi)をも検出すると
予想される。
【0008】
対象とする特定の動物の食品原料や製品中への混入の有無は、当該動物に特異的な遺伝子配列が食品原料や製品中から検出されるか否かを調べることによって、検査できる。但し、その検査法は、目的とする動物に由来するDNAを検出できるが、食品原料や製品を構
成する複数の目的としない動植物由来DNAを検出しないような方法であることが強く望ま
れる。
【0009】
上述したように、「特定原材料に準ずるもの」における、アワビ、イカ、エビ、カニ、サケ、サバ、いくら、ゼラチン、オレンジ、キウイフルーツ、くるみ、大豆、まつたけ、もも、やまいも、りんご、及びバナナに対する明確な検出法は、報告されておらず、これらの特定動植物が食品原料や製品に混入しているか否かを科学的に検証可能な手法が、食品の品質管理手法として待望されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2002-345498、日本産サバ属の種判別方法
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Yang D. Y., A. Cannon, and S. R. Saunders; DNA species identification of archaeological salmon bone from the Pacific Northwest Coast of North America; Journal of Archaeological Science, 31: 619-631, 2004
【非特許文献2】Bonnaud L., R. Boucher-Rodoni, and M. Monnerot; Phylogeny ofcephalopods inferred from mitochondrial DNA sequences; Molecular Phylogenetics and Evolution, 7: 44-54, 1997)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、アレルギーを引き起こす恐れのある特定の動物のうち、サバ、サケ、アワビ、イカ、カニ又は/及びエビを、食品原料や製品中から特異的に検出できる方法、及びこの方法に用いるPCRプライマー、プライマーセット、キットを提供することを、主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を達成するために、本発明者らは、分子生物学的観点から、検出対象とする動物及びその他の生物の遺伝子配列における共通性と特異性に着目し、20品目の「特定原材料に準ずるもの」の中から、サバ、サケ、アワビ、イカ、又は、エビ若しくは/又はカニ(本発明において、これらを「特定動物」と称する)を高感度に検出することができる方法を鋭意研究した。その結果、サバ、サケ、アワビあるいはイカの各々に特徴的な塩基配列、並びに、エビ及びカニからなるグループ(以降、「エビ・カニグループ」と称する)に特徴的な塩基配列を見いだし、これらの塩基配列を利用してPCR法などの核酸分析を行うことで、サバ、サケ、アワビあるいはイカ、並びに、エビ・カニグループを簡便に検出し得ることを見いだし、更に鋭意検討を重ねて、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の特定動物検出用PCRプライマーセット、特定動物検出法、並びに
、特定動物検出用キットに関与する。
項1. 下記の(1)〜(20)のいずれかのPCRプライマー。
(1) 配列表の配列番号1における塩基番号8〜22の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー
(2) 配列表の配列番号2における塩基番号10〜24の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー
(3) 配列表の配列番号3における塩基番号7〜21の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー
(4) 配列表の配列番号4における塩基番号12〜26の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー
(5) 配列表の配列番号5における塩基番号11〜25の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー
・ 配列表の配列番号6における塩基番号12〜26の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー
(7) 配列表の配列番号7における塩基番号7〜21の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPC Rプライマー
(8) 配列表の配列番号8における塩基番号7〜21の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー
(9) 配列表の配列番号9における塩基番号5〜19の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー
(10) 配列表の配列番号10における塩基番号6〜20の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー
(11) 配列表の配列番号1の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー
(12) 配列表の配列番号2の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー
(13) 配列表の配列番号3の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー
(14) 配列表の配列番号4の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー
(15) 配列表の配列番号5の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー
(16) 配列表の配列番号6の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー
(17) 配列表の配列番号7の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー
(18) 配列表の配列番号8の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー
(19) 配列表の配列番号9の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー
(20) 配列表の配列番号10の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー
項2. 配列表の配列番号1における塩基番号8〜22の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー。
項3. 配列表の配列番号2における塩基番号10〜24の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー。
項4. 配列表の配列番号3における塩基番号7〜21の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー。
項5. 配列表の配列番号4における塩基番号12〜26の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー。
項6. 配列表の配列番号5における塩基番号11〜25の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー。
項7. 配列表の配列番号6における塩基番号12〜26の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー。
項8. 配列表の配列番号7における塩基番号7〜21の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー。
項9. 配列表の配列番号8における塩基番号7〜21の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー。
項10. 配列表の配列番号9における塩基番号5〜19の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー。
項11. 配列表の配列番号10における塩基番号6〜20の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー。
【0014】
項12. 配列表の配列番号1の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー。
項13. 配列表の配列番号2の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー。
項14. 配列表の配列番号3の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー。
項15. 配列表の配列番号4の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDN AからなるPCRプライマー。
項16. 配列表の配列番号5の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー。
項17. 配列表の配列番号6の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー。
項18. 配列表の配列番号7の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー。
項19. 配列表の配列番号8の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー。
項20. 配列表の配列番号9の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー。
項21. 配列表の配列番号10の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー。
項22. 下記の(21)〜(30)のいずれかのプライマーセット。
(21) 項2記載のプライマーと項3記載のプライマーとからなるプライマーセット
(22) 項4記載のプライマーと項5記載のプライマーとからなるプライマーセット
(23) 項6記載のプライマーと項7記載のプライマーとからなるプライマーセット
(24) 項8記載のプライマーと項9記載のプライマーとからなるプライマーセット
(25) 項10記載のプライマーと項11記載のプライマーとからなるプライマーセット
(26) 項12記載のプライマーと項13記載のプライマーとからなるプライマーセット
(27) 項14記載のプライマーと項15記載のプライマーとからなるプライマーセット
(28) 項16記載のプライマーと項17記載のプライマーとからなるプライマーセット
(29) 項18記載のプライマーと項19記載のプライマーとからなるプライマーセット
(30) 項20記載のプライマーと項21記載のプライマーとからなるプライマーセット
項23. 項2記載のプライマーと項3記載のプライマーとからなるプライマーセット。
項24. 項4記載のプライマーと項5記載のプライマーとからなるプライマーセット。
項25. 項6記載のプライマーと項7記載のプライマーとからなるプライマーセット。
項26. 項8記載のプライマーと項9記載のプライマーとからなるプライマーセット。
項27. 項10記載のプライマーと項11記載のプライマーとからなるプライマーセット。
項28. 項12記載のプライマーと項13記載のプライマーとからなるプライマーセット。
項29. 項14記載のプライマーと項15記載のプライマーとからなるプライマーセット。
項30. 項16記載のプライマーと項17記載のプライマーとからなるプライマーセット。
項31. 項18記載のプライマーと項19記載のプライマーとからなるプライマーセット。
項32. 項20記載のプライマーと項21記載のプライマーとからなるプライマーセット。
項33. 試料からDNAを抽出する工程と、このDNAを鋳型として、項23〜32のいずれかに記載のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、増幅されたDNAを検出することにより試料中に特定動物が存在しているか否かを検出する工程とを含む特定動物の検出方法。
項34. 試料からDNAを抽出する工程と、このDNAを鋳型として項23又は28記載のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、増幅されたDNAを検出することにより試料中にサバが存在しているか否かを検出する工程とを含む特定動物の検出方法。
項35. 試料からDNAを抽出する工程と、このDNAを鋳型として項24又は29記載のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、増幅されたDNAを検出することにより試料中にサケが存在しているか否かを検出する工程とを含む特定動物の検出方法。
項36. 試料からDNAを抽出する工程と、このDNAを鋳型として項25又は30記載のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、増幅されたDNAを検出することにより試料中にアワビが存在しているか否かを検出する工程とを含む特定動物の検出方法。
項37. 試料からDNAを抽出する工程と、このDNAを鋳型として項26又は31記載のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、増幅されたDNAを検出することにより試料中にイカが存在しているか否かを検出する工程とを含む特定動物の検出方法。
項38. 試料からDNAを抽出する工程と、このDNAを鋳型として項27又は32記載のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、増幅されたDNAを検出することにより試料中にエビ又は/及びカニが存在しているか否かを検出する工程とを含む特定動物の検出方法。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、PCR等を用いた核酸分析による、精度及び検出感度の高い特定動物(サバ、サケ、アワビ、イカ、エビ、カニ)由来DNAのDNAの検出を可能とし、被験食品原料や被験食品中に、上記特定動物が混入しているか否か、又は、使用されているか否かといった品質管理検査の実施を可能にするという効果を奏する。
本発明における、エビ・カニグループ検出用PCRプライマーを用いた検査法で陽性反応が生じた場合、エビもしくはカニ、あるいは双方の存在を示すことになるが、このときに、PCR増幅産物の塩基配列を解析することによって、双方の存在比率を定性的に予測することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明のプライマーを用いたPCRにおけるDNAの検出感度を示す図である。
【図2】本発明のプライマーを用いて食品中の特定動物の検出を行った結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
特定動物検出用PCRプライマーセット
本発明の特定動物検出用PCRプライマーセットには、サバに特徴的な塩基配列を有するもの、サケに特徴的な塩基配列を有するもの、アワビに特徴的な塩基配列を有するもの、イカに特徴的な塩基配列するもの、並びに、エビ及びカニからなるグループに特徴的な塩基配列を有するものがある。
サバ検出用PCRプライマーセット及びサケ検出用PCRプライマーセットは、各種生物のミトコンドリアのチトクロームb遺伝子配列を既知のDNAデータベース(GenBank nucleotide sequence database)から取得あるいは、一部の生物の当該遺伝子配列を独自に解析することによって取得し、それらの厖大な塩基配列の多重並列配列図を作成後、詳細に比較検討することによって、サバ及びサケのそれぞれに特異的な当該遺伝子配列領域を選出し、その領域から新規に設計された。設計の際には、検出目的とする生物種の当該遺伝子配列領域とは、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするが、検出目的としない生物種とはハイブリダイズしないように創意工夫して、設計した。
アワビ検出用PCRプライマーセット、イカ検出用PCRプライマーセット及び、エビ・カニグループ検出用PCRプライマーセットは、各種生物のミトコンドリアの16S rRNA遺伝子を既知のDNAデータベースから取得あるいは、一部の生物の当該遺伝子配列を独自に解析することによって取得し、それらの厖大な塩基配列の多重並列配列図を作成後、詳細に比較検討することによって、アワビ、イカ、エビ、カニのそれぞれに特異的な当該遺伝子配列領域を選出し、その領域から新規に設計された。設計の際には、検出目的とする生物種の当該遺伝子配列領域とは、ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするが、検出目的としない生物種とはハイブリダイズしないように創意工夫して、設計した。
本発明の特定動物検出用PCRプライマーセットを用いたPCR分析では、対象となる試料が加工品である場合も想定される。加工品を分析する場合、DNAが分解または、断片化している可能性があるので、100〜500 bp 程度の短めのPCR増幅産物を形成するようなPCRプライマーが、高感度分析のために好ましい。それ故に、PCRプライマーの設計の際には、PCR増幅産物の長さが500 bp以下となるように創意工夫して設計した。また、これらのPCRプライマーセットの反応液を同一条件にすることは、実際の分析において、操作の煩雑性を軽減できる。それ故に、PCR反応液組成において、PCRの反応性を最も左右するマグネシウム濃度が同一になるように、具体的には2.5 mM Mg2+となるように創意工夫して、PCRプライマーを設計した。さらに、各々のPCRプライマーセットを設計する際には、センスプライマーとアンチセンスプライマーのハイブリダイズや、個々のプライマー自身によるハイブリダイズを生じないように、すなわち、いわゆるプライマーダイマーの形成を極力回避するように工夫を施した。
従って、本発明の特定動物検出用PCRプライマーセットを用いたPCR法などの核酸分析の手法を用いて、各種食品中に含まれるサバ、サケ、アワビあるいは、イカ、並びに、エビ・カニグループ由来DNAを高感度かつ特異的に検出することができる。
ここで、核酸分析とは、生物分類における、個々の種、属、あるいは、グループによって特徴的な塩基配列が存在することを利用して、その特徴的な塩基配列の有無を分析することによって、その生物の種、属、あるいは、グループを把握するために有効な手段であって、特定の微生物の検出や生物種の同定などに有用に用いられる方法である。
本発明が提供する第1〜第10のプライマーの塩基配列は以下のとおりである。
配列番号1(サバS):CTGATGTTGAGTCAGCATTCGA(22 mer)
配列番号2(サバAS):GAATAGCAGGTGAAGAATTGTTGC(24 mer)
配列番号3(サケS):AACAGCTTTTTCCTCTGTnTG(21 mer)
(配列番号3において、nはC又はTを表す。)
但し、配列番号3のCのものとTのものとはミックスプライマーとして用いる。以下、全て同様である。
配列番号4(サケAS):AGCCTACGAATGCAGTTATTATAGTG(26 mer)
配列番号5(アワビS):CTTCTAAGTGAAAAGGCTTAGATTT(25 mer)
配列番号6(アワビAS):CACTTGTTAGTAAACCAAAATTCTAC(26 mer)
配列番号7(イカS):GAATGAATGGTTTGACGAAGG(21 mer)
配列番号8(イカAS):GCTTCTGCACCCTAAGGTTAC(21 mer)
配列番号9(エビ・カニS):GGACGATAAGACCCTATAA(19 mer)
配列番号10(エビ・カニAS):ATAACGCTGTTATCCCTAAA(20 mer)
また、本発明の30塩基のDNAからなるプライマーとして、例えば以下のプライマーを挙げることができる。
配列番号25(サバS):ctacacccCTGATGTTGAGTCAGCATTCGA
配列番号26(サバAS):atgtagGAATAGCAGGTGAAGAATTGTTGC
配列番号27(サケS):cgacatttcAACAGCTTTTTCCTCTGTnTG
(配列番号27において、nはC又はTを表す。)
但し、配列番号27において、CのものとTのものとはミックスプライマーとして用いる。以下、全て同様である。
配列番号28(サケAS):acgtAGCCTACGAATGCAGTTATTATAGTG
配列番号29(アワビS):attaaCTTCTAAGTGAAAAGGCTTAGATTT
配列番号30(アワビAS)
:ggatCACTTGTTAGTAAACCAAAATTCTAC
配列番号31(イカS):
ttgaggctaGAATGAATGGTTTGACGAAGG
配列番号32(イカAS):nnnnntaaaGCTTCTGCACCCTAAGGTTAC
(配列番号32において、nは任意のヌクレオチドを表す。)
なお、配列番号32において、具体例として下記配列番号33を例示できる。これはヤリイカの塩基配列を基にして設計したものである。
配列番号33(ヤリイカAS):
cctattaaaGCTTCTGCACCCTAAGGTTAC
配列番号34(エビ・カニS):
nnnnnnnnnnnGGACGATAAGACCCTATAA
(配列番号34において、nは任意のヌクレオチドを表す。)
なお、配列番号34において、具体例として下記配列番号36を例示できる。これはブラックタイガーエビの塩基配列を基にして設計したものである。
【0018】
配列番号35(エビ・カニAS):
nnnnnnnnnnATAACGCTGTTATCCCTAAA
(配列番号35において、nは任意のヌクレオチドを表す。)
なお、配列番号35において、具体例として下記配列番号37を例示できる。これはブラックタイガーエビの塩基配列を基にして設計したものである。
配列番号36(ブラックタイガーエビS):
atactttaaggGGACGATAAGACCCTATAA
配列番号37(ブラックタイガーエビAS):
ctcaaagaagATAACGCTGTTATCCCTAAA
本発明は、まず第1のプライマーとして、配列表の配列番号1における塩基番号8〜22の塩基配列を3'末端側に含む最短15最大30塩基のDNAからなるPCRプライマーをセンスプライマーとして提案する。次に、第2のプライマーとして、配列表の配列番号2における塩基番号10〜24の塩基配列を3'末端側に含む最短15最大30塩基のDNAからなるサバ検出用PCRプライマーをアンチセンスプライマーとして提案する。第1及び第2のプライマーはサバ検出用に好適に使用できる。
これら第1のプライマーと第2のプライマーのセットは、PCRに供されることにより、双方ともサバのミトコンドリアのチトクロームb遺伝子に特異的に結合するが、その他の生物由来ミトコンドリアのチトクロームb遺伝子を検出可能に増幅しないので、サバDNAを検出するためのPCR用プライマーセットとして使用できる。また、当該第1のプライマーと第2のプライマーをセットとすることで、高感度に当該DNAを検出することができる。
【0019】
また、本発明は、第3のプライマーとして、配列表の配列番号3における塩基番号7〜21の塩基配列を3'末端側に含む最短15最大30塩基のDNAからなるプライマーをセンスプライマーとして提案する。さらに、第4のプライマーとして、配列表の配列番号4における塩基番号12〜26の塩基配列を3'末端側に含む最短15最大30塩基のDNAからなるプライマーをアンチセンスプライマーとして提案する。第3及び第4のプライマーはサケ検出用に好適に使用できる。
これら第3のプライマーと第4のプライマーとのセットは、PCRに供されることにより、双方ともサケのミトコンドリアのチトクロームb遺伝子に特異的に結合するが、その他の生物由来ミトコンドリアのチトクロームb遺伝子を検出可能に増幅しないので、サケDNAを検出するためのPCR用プライマーとして使用できる。また、当該第3のプライマーと第4のプライマーをセットとすることで、高感度に当該DNAを検出することができる。
第3のプライマーは、配列番号3の塩基番号19がCであるものとTであるものの双方を包含する。サケの検出にあたっては、センスプライマーとして、この双方をミックスプライマーとして用いることにより、サケ(サケ属、サルモ属)を特異的に検出することができる。
また、第3のプライマーの好ましい態様である30塩基のプライマーにおいて、配列番号27の塩基番号28がCであるものとTであるものの双方を包含する。サケの検出にあたっては、センスプライマーとして、この双方をミックスプライマーとして用いることにより、サケ(サケ属、サルモ属)を特異的に検出することができる。
【0020】
また、本発明は、第5のプライマーとして、配列表の配列番号5における塩基番号11〜25の塩基配列を3'末端側に含む最短15最大30塩基のDNAからなるプライマーをセンスプライマーとして提案する。さらに、第6のプライマーとして、配列表の配列番号6における塩基番号12〜26の塩基配列を3'末端側に含む最短15最大30塩基のDNAからなるプライマーをアンチセンスプライマーとして提案する。第5及び第6のプライマーはアワビ検出用に好適に使用できる。
これら第5のプライマーと第6のプライマーのセットは、PCRに供されることにより、双方ともアワビのミトコンドリアの16S rRNA遺伝子に特異的に結合するが、その他の生物由来ミトコンドリアの16S rRNA遺伝子を検出可能に増幅しないので、アワビDNAを検出するためのPCR用プライマーとして使用できる。また、当該第5のプライマーと第6のプライマーをセットとすることで、高感度に当該DNAを検出することができる。
【0021】
また、本発明は、第7のプライマーとして、配列表の配列番号7における塩基番号7〜21の塩基配列を3'末端側に含む最短15最大30塩基のDNAからなるプライマーをセンスプライマーとして提案する。さらに、第8のプライマーとして、配列表の配列番号8における塩基番号7〜21の塩基配列を3'末端側に含む最短15最大30塩基のDNAからなるプライマーをアンチセンスプライマーとして提案する。第7及び第8のプライマーはイカ検出用に好適に使用できる。
これら第7のプライマーと第8のプライマーのセットは、PCRに供されることにより、双方ともイカのミトコンドリアの16S rRNA遺伝子に特異的に結合するが、その他の生物由来ミトコンドリアの16S rRNA遺伝子を検出可能に増幅しないので、イカDNAを検出するためのPCR用プライマーとして使用できる。また、当該第7のプライマーと第8のプライマーをセットとすることで、高感度に当該DNAを検出することができる。
【0022】
また、本発明は、第9のプライマーとして、配列表の配列番号9における塩基番号5〜19の塩基配列を3'末端側に含む最短15最大30塩基のDNAからなる検出用プライマーをセンスプライマーとして提案する。さらに、第10のプライマーとして、配列表の配列番号10における塩基番号6〜20の塩基配列を3'末端側に含む最短15最大30塩基のDNAからなる検出用プライマーをアンチセンスプライマーとして提案する。第9及び第10のプライマーは、エビ・カニグループ検出用に好適に使用できる。
これら第9のプライマーと第10のプライマーのセットは、PCRに供されることにより、双方ともエビ・カニグループのミトコンドリアの16S rRNA遺伝子に特異的に結合するが、その他の生物由来ミトコンドリアの16S rRNA遺伝子を検出可能に増幅しないので、エビ・カニグループを検出するためのPCR用プライマーとして使用できる。また、当該第9のプライマーと第10のプライマーをセットとすることで、より高感度に当該DNAを検出することができる。
【0023】
前記各プライマーにおいて、塩基配列の長さを15から30とするのは、PCR用プライマーとしての塩基配列の適切な長さが15〜30程度であること、また、3'末端側15個の塩基配列を特定するのは、3'末端側15個程度がPCRの特異的な増幅反応において重要であって、5'末端側の塩基配列が若干異なっていたり、配列の長さが多少違っていたりしても、PCRの反応自体への悪影響が、たいていの場合、小さいためである。
【0024】
本発明においては、さらに、第1のプライマーの好ましい態様として、配列表の配列番号1の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー(1')(最も好ましくは配列番号1の塩基配列のDNAからなるプライマー)、第2のプライマーの好ましい態様として、配列表の配列番号2の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー(2')(最も好ましくは配列番号2の塩基配列のDNAからなるプライマー)を提案する。これらのプライマーはサバ検出用に好適に使用できる。当該各プライマーにおいても、それぞれをプライマーセットとして使用することが好ましく、配列番号1のプライマーと配列番号2のプライマーとをセットで用いることが最も好ましい。
また、第3のプライマーの好ましい態様として、配列表の配列番号3の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマー(3')(最も好ましくは配列番号3の塩基配列のDNAからなるプライマー)、第4のプライマーの好ましい態様として、配列表の配列番号4の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマー(4')(最も好ましくは配列番号4の塩基配列のDNAからなるプライマー)を提案する。これらのプライマーはサケ検出用に好適に使用できる。当該各プライマーにおいても、それぞれをプライマーセットとして使用することが好ましく、配列番号3のプライマーと配列番号4のプライマーとをセットで用いることが最も好ましい。
また、第5のプライマーの好ましい態様として、配列表の配列番号5の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマー(5')(最も好ましくは配列番号5の塩基配列のDNAからなるプライマー)、第6のプライマーの好ましい態様として、配列表の配列番号6の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマー(6')(最も好ましくは配列番号6の塩基配列のDNAからなるプライマー)を提案する。これらのプライマーはアワビ検出用に好適に使用できる。当該各プライマーにおいても、それぞれをプライマーセットとして使用することが好ましく、配列番号5のプライマーと配列番号6のプライマーとをセットで用いることが最も好ましい。
また、第7のプライマーの好ましい態様として、配列表の配列番号7の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマー(7')(最も好ましくは配列番号7の塩基配列のDNAからなるプライマー)、第8のプライマーの好ましい態様として、配列表の配列番号8の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマー(8')(最も好ましくは配列番号8の塩基配列のDNAからなるプライマー)を提案する。これらのプライマーはイカ検出用に好適に使用できる。当該各プライマーにおいても、それぞれをプライマーセットとして使用することが好ましく、配列番号7のプライマーと配列番号8のプライマーとをセットで用いることが最も好ましい。
また、第9のプライマーの好ましい態様として、配列表の配列番号9の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマー(9')(最も好ましくは配列番号9の塩基配列のDNAからなるプライマー)、第10のプライマーの好ましい態様として、配列表の配列番号10の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマー(10')(最も好ましくは配列番号10の塩基配列のDNAからなるプライマー)を提案する。これらのプライマーはエビ・カニグループ検出用に好適に使用できる。当該各プライマーにおいても、それぞれをプライマーセットとして使用することが好ましく、配列番号9のプライマーと配列番号10のプライマーとをセットで用いることが最も好ましい。
特定動物検出法
本発明の特定動物検出方法は、試料からDNAを抽出する工程と、このDNAを鋳型として、本発明のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、増幅されたDNAを検出することにより試料中にサバ、サケ、アワビ、イカ、又は、エビ若しくは/及びカニ(エビ・カニグループ)が存在しているか否かを検出する工程とを含む方法である。
即ち、上記本発明の特定動物検出用PCRプライマーセットを用いて、試料中のDNAをPCR等で核酸分析することにより、試料中の特定動物を特異的に検出することが可能となる。このとき、サバを検出する場合には、サバ検出用PCRプライマーセットを使用し、同様にサケ、アワビ、イカ、エビ・カニグループを検出する場合には、それぞれサケ検出用PCRプライマーセット、アワビ検出用PCRプライマーセット、イカ検出用PCRプライマーセット、エビ・カニグループ検出用PCRプライマーセットを使用すればよい。また、本発明の、エビ・カニグループ検出用PCRプライマーセットを用いた検査で陽性反応を生じた場合、エビもしくはカニ、あるいは双方の存在を示すことになるが、このとき、PCR増幅産物の塩基配列を解析することによって、双方の存在比率を定性的に予測することも可能である。
【0025】
検出法(核酸分析)の種類は、特に限定されず、適宜公知の方法を用いることができる。例えば、PCRプライマーを用いてPCR増幅する方法やPCR増幅産物をプローブで検出する方法等を例示することができる。
PCRプライマーを用いてPCR増幅する方法としては、検出目的に応じて選択した上記本発明の特定動物検出用プライマーセットを用いて、試料中のDNAにおける標的塩基配列を選択的に増幅させ、PCR増幅産物の有無を測定する方法が挙げられる。PCR増幅産物の有無の確認は、通常、PCR増幅産物をアガロースゲル電気泳動により分離し、エチジウムブロマイドやサイバーグリーンIなどの核酸染色によって行うことができる。リアルタイムPCR装置を用いてPCRを行う場合は、その装置の検出システムにより自動的にPCR増幅産物の有無を確認することができる。例えば、PCR反応液中にサイバーグリーンIを添加した場合、サイバーグリーンIが二本鎖DNAに結合したときに発する蛍光量に依存したPCR増幅産物量をサイクル毎にモニターすることができる。さらに、PCR後に、PCR増幅産物の融解曲線分析を行い、その分析からPCR増幅産物の融解温度(Tm)値を導くことにより、PCR増幅産物が目的の増幅産物であるか否かを確認できる。状況によっては、このTm値による判断が困難な場合も想定されるが、そのような場合には、先述のアガロースゲル電気泳動によって増幅産物の有無とそのサイズを確認すればよい。
具体的には、配列番号1記載のプライマーと配列番号2記載のプライマーを用いたPCR増幅産物のTm値は約89.6℃であり、PCR増幅産物のサイズは約428 bpである。融解曲線分析において、当該Tm値を得た場合、又は、アガロース電気泳動において当該サイズの増幅産物を検出した場合、被験試料中にサバが存在していたことを示唆する。
また、配列番号3記載のプライマーと配列番号4記載のプライマーを用いたPCR増幅産物のTm値は約86.7℃であり、PCR増幅産物のサイズは約212 bpである。融解曲線分析において、当該Tm値を得た場合、又は、アガロース電気泳動において当該サイズの増幅産物を検出した場合、被験試料中にサケが存在していたことを示唆する。
また、配列番号5記載のプライマーと配列番号6記載のプライマーを用いたPCR増幅産物のTm値は約83.9℃であり、PCR増幅産物のサイズは約189 bpである。融解曲線分析において、当該Tm値を得た場合、又は、アガロース電気泳動において当該サイズの増幅産物を検出した場合、被験試料中にアワビが存在していたことを示唆する。
また、配列番号7記載のプライマーと配列番号8記載のプライマーを用いたPCR増幅産物のTm値は約81.8℃であり、PCR増幅産物のサイズは約359 bpである。融解曲線分析において、当該Tm値を得た場合、又は、アガロース電気泳動において当該サイズの増幅産物を検出した場合、被験試料中にイカが存在していたことを示唆する。
また、配列番号9記載のプライマーと配列番号10記載のプライマーを用いたPCR増幅産物のTm値は約77〜79℃であり、PCR増幅産物のサイズは約211 bpである。融解曲線分析において、当該Tm値を得た場合、又は、アガロース電気泳動において当該サイズの増幅産物を検出した場合、被験試料中にエビもしくはカニが存在していたことを示唆する。
【0026】
PCR増幅産物をプローブで検出する方法としては、Taq Man法に代表されるように、PCR増幅産物の内部塩基配列とハイブリダイズするような蛍光物質標識プローブを反応液に添加し、該プローブがPCR増幅産物にハイブリダイズ後、該プローブが分解されるときに生じる蛍光量をリアルタイムPCR装置で自動的に検出することによって、PCR増幅産物の有無を確認する方法が挙げられる。なお、PCR増幅産物をプローブで検出するその他の方法としては、Molecular Beacon法、CycleavePCR法、ハイブリプローブを利用する方法等が挙げられる。これらの方法で使用するPCRプライマーは、特定動物検出用PCRプライマーセットの何れかを使用すればよく、各々のPCRプライマーセットで増幅されるPCR増幅産物の内部塩基配列から標的とする生物種に共通な塩基配列領域を別途選択し、その領域に基づいたプローブを使用すればよい。
【0027】
本発明の特定動物の検出法において、対象となる被験試料の種類は、特に限定されない。
例えば、被験試料としては、食品原料や食品等が挙げられる。具体的に、食品原料としては、特定動物を取り扱う食品原料生産工場において、別途生産される特定動物を意図的に含まない食品原料が挙げられる。食品としては、ふりかけ、粉末スープ、液体スープ、熱風乾燥又は凍結乾燥した食肉具材や魚肉具材、菓子類、あるいは、これらの加工製品を含有する各種調理食品等が挙げられる。また、特定動物を取り扱う食品製造工場において、別途生産される特定動物を意図的に含まない食品が挙げられる。また、特定動物を含む加工製品を製造後、特定動物を含まない加工製品を製造する際には、特定動物残渣の除去を念頭においた加工製造設備の入念な清掃作業が必須となる。この清掃作業方法の有効性ならびに、製造設備の特定動物残渣の有無を確認するために、製造設備の拭き取り試料も被験試料として挙げられる。
【0028】
また、試料の形態も特に限定されず、一般的な既知のDNA抽出法(厚生労働省医薬局食品保健部長通知、アレルギー物質を含む食品の検査方法について、平成14年11月06日、食発第1106001号)や市販の各種DNA抽出キット[例えば、Nucleon PhytoPure, plant and fungal DNA extraction ki ts(Amersham Biosciences Corp., USA)、DNA Extraction IsoplantII kit(Nippon Gene Co. Ltd., Japan)、DNeasy Plant Mini Kit(Qiagen GmbH,Hilden, Germany)等]によって、DNAの回収が可能な試料であれば、上記の検出法に適用することができる。上記のDNA抽出法によって、ゲノムDNA及び細胞小器官由来DNA(ミトコンドリアDNAやクロロプラストDNA)を、通常、試料から抽出することができる。
特定動物検出用キット
本発明は、また、特定動物検出キットに関する。当該キットは、上記本発明の特定動物検出用PCRプライマーセットの少なくとも1セットを含んで成るものであれば、その構成は特に限定されない。
具体的には、配列番号1における塩基番号8〜22の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーと、配列番号2における塩基番号10〜24の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーとのセット;配列番号3における塩基番号7〜21の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーと、配列番号4の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーとのセット;配列番号5における塩基番号11〜25の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーと、配列番号6における塩基番号12〜26の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーとのセット;配列番号7における塩基番号7〜21の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーと、配列番号8における塩基番号7〜21の塩基配列を3'末
端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーとのセット;及び配列番号9における5〜19の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーと、配列番号10における塩基番号6〜20の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーとのセットの1セット以上を含む特定動物検出キットが挙げられる。
そして、好ましいものとして、配列番号1の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーと、配列番号2の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーとのセット;配列番号3の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーと、配列番号4の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーとのセット;配列番号5の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーと、配列番号6の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーとのセット;配列番号7の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーと、配列番号8の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーとのセット;及び配列番号9の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーと、配列番号10の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるプライマーとのセットの1セット以上を含む特定動物検出キットが挙げられる。
中でも特に好ましいものとして、配列番号1の塩基配列からなるプライマーと配列番号2の塩基配列からなるプライマーとのセット;配列番号3の塩基配列からなるプライマーと配列番号4の塩基配列からなるプライマーとのセット;配列番号5の塩基配列からなるプライマーと配列番号6の塩基配列からなるプライマーとのセット;配列番号7の塩基配列からなるプライマーと配列番号8の塩基配列からなるプライマーとのセット;及び配列番号9の塩基配列からなるプライマーと配列番号10の塩基配列からなるプライマーとのセットの1セット以上を含む特定動物検出キットが挙げられる。
また、上記の各々のプライマーセット及び、当該の各々のプライマーセットで増幅されるPCR増幅産物を検出するためのプローブ等を含む特定動物検出キットなども挙げられる。
当該キットには、使用目的等に応じて、適当な試薬や各種容器等を含めることができる。具体的には、PCRプライマー伸長生成物を合成するための重合用試薬、例えば、耐熱性DNAポリメラーゼ、デオキシリボヌクレオチド、マグネシウム及び、PCR反応用緩衝液、並びに、それらの品質を適切に保持可能な保存容器等を含めることができる。
実施例
以下に、本発明を実施例または試験例を用いてさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例に限定して解釈されるものではない。また、本発明の要旨を逸脱することなく、適宜変更することが可能である。
実施例1
各種動物、植物、真菌及び、細菌由来DNAに対する特定動物用PCRプライマーセットの検出特異性の確認
本発明の特定動物用PCRプライマーセットを使用したPCR分析法の有効性を確認するために、各種生物由来DNAに対するPCRの検出特異性を調べる実験を、下記のように実施した。
【0029】
ヒト、ウシ、ブタ、ニワトリ、アフリカツメガエル、タイセイヨウダラ及び、チョウザメの精製DNAは、セマイン社(CeMines, LLC, USA)から購入したものを使用した。
コムギ、トウモロコシ及び、ダイズの精製DNAは、バイオチェイン・インスティテュート社(BioChain Institute, Inc., USA)から購入したものを使用した。
マサバ、ゴマサバ、タイセイヨウサバ、キハダマグロ、カツオ、ブリ、ベニザケ、サケ(シロザケ)、ギンザケ、カラフトマス、スチールヘッド(ニジマス)、スルメイカ、モンゴウイカ、ヤリイカ、ミズダコ、ホタテガイ、サザエ、エゾアワビ、トコブシ、ハマグリ、アサリ、ベニズワイガニ、タラバガニ、ブラックタイガーエビ、シバエビ、アマエビ(ホッコクアカエビ)及び、シロエビの精製DNAは、商店から購入した各々の試料の(筋)肉質部分を凍結後、マルチビーズショッカー(安井器械、大阪)で破砕した試料からNuc leon PhytoPure, plant and fungal DNA extraction kits(Amersham Biosciences Corp., USA)または、DNA Extraction IsoplantII kit(Nippon Gene Co. Ltd., Japan)を用いて調製したものを使用した。
オキアミ類(未同定種)の精製DNAは、商店から購入した試料をTBS緩衝液(150 mM NaCl,10 mM Tris-HCl[pH 7.5])で洗浄後、マルチビーズショッカーで破砕した試料からNucleon PhytoPure, plant and fungal DNA extraction kitsを用いて調製したものを使用した。
クロゴキブリの精製DNAは、その脚の部分を70%エタノールで洗浄し、さらに、TBS緩衝液で洗浄後、マルチビーズショッカーで粉砕した試料からNucleon PhytoPure, plant and fungal DNA extraction kits)を用いて調製したものを使用した。
イネ(葉)は栽培農家から入手し、ネギは商店から購入した。これらの精製DNAは、植物体を70%エタノールで洗浄し、さらに、TBS緩衝液で洗浄後、マルチビーズショッカーで破砕した試料からNucleon PhytoPure, plant and fungal DNA extraction kitsを用いて調製したものを使用した。
ソバの精製DNAは、商店から購入したそば粉をマルチビーズショッカーで粉砕した試料からNucleon PhytoPure, plant and fungal DNA extraction kitsを用いて調製したものを使用した。
アスペルギウス・オリゼ(Aspergillus oryzae IFO 4206)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae IFO 0282)、大腸菌(Escherichia coli JCM 1649T
及び、バチルス・セレウス菌(Bacillus cereus ATCC 14579T)の精製DNAは、各々の菌株を適切な培地で培養後、その培養液からPuregene Yeast and Gram-Positive DNA Isolation kit(Gentra Systems Inc., USA)を用いて調製したものを使用した。
マツタケ(カナダ産)(Tricholoma magnivelare)、シイタケ、ハタケシメジ、エノキダケ、マイタケ、ナメコ、エリンギ及び、アワビタケの精製DNAは、商店から購入した試料の小片を凍結後、マルチビーズショッカーで破砕した試料からNucleon PhytoPure, plantand fungal DNA extraction kitsを用いて調製したものを使用した。
なお、いずれの精製DNAもRNA分解酵素によるRNAの除去操作を実施してある。
【0030】
配列番号1、2、3、4、5、6、7、8、9及び、10に記載の各々のPCRプライマーは、オペロン・バイオテクノジー社(Operon Biotechnologies GmbH, Germany)で合成されたものを以下のPCRで使用した。
上述したように準備した各種動物、植物、真菌及び、細菌DNA量を測定後、滅菌水を用いて、動物、植物及び真菌DNAの濃度を1 ng/μLに、細菌DNAの濃度を50 pg/μLに調製した
。調製した1 μLのDNA試料液を含む20 μL容量の反応液は、タカラバイオ社のEx Taq キットのR-PCRバージョン(Takara Bio Inc., Japan)を用いて調製した。このキットは、10ラR-PCR buffer(Mg2+ free)、250 mM MgCl2 solution, 10 mM dNTP mixture及び、5 unit/μL Taq DNA polymerase(ホットスタートタイプ)を含む。反応液は、R-PCR bufferをベースとし、2.5 mM MgCl2、0.005% SYBR Green I(FMC Bioproducts, Rockland, Maine, USA)、250 nMセンスプライマー、250 nMアンチセンスプライマー、200 μM dNTP mixture(各々200 μMのdATP、dTTP、dCTPおよび、dGTP)および、0.05 unit/μL Taq DNA polymeraseを含む組成として、調製した。PCR反応は、LightCycler(Roche Diagnostics GmbH, Mannheim, Germany)で行い、増幅反応条件は以下の通りである。
95℃で1分間のサイクルを一回実施後、20℃/秒の速度で95℃まで昇温後、5秒間同温度で保温、次に20℃/秒の速度でT℃まで降温後、10秒間同温度で保温、さらに10℃/秒の速度で72℃まで昇温後、20秒間同温度で保温する3つのステップからなる増幅サイクルを35回実施した。なお、Tは、サバ検出用PCRプライマーの場合には64、カニ・エビグループ検出用PCRプライマーの場合には60、サケ、アワビ及びイカ検出用PCRプライマーの場合には62とした。PCR増幅産物は、SYBR Green I依存性の蛍光量として、各々のサイクルの最終ステップに記録した。増幅サイクル終了後、メルティングカーブは、20℃/秒の速度で95℃まで昇温後、次に20℃/秒の速度で60℃まで降温し、10秒間同温度で保温後、さらに0.2℃/秒の速度で97℃に至るまでのゆるやかな昇温中に0.2秒毎の蛍光強度を記録することによって得た。同PCR装置のソフトウェアによってメルティングカーブから得られたPCR増幅産物のTm値は、PCRによる特異的な増幅産物の有無を推定するために使用した。さらに、1.8%(wt/vol)アガロースゲル電気泳動によってPCR増幅産物(反応液の2 μL)を分離し、分離後のゲルをエチジウムブロマイドで染色後、U V照射下において増幅産物を視覚化することによって、増幅産物の有無を確認した。分子量マーカーとしてΦX174 HaeIII digest DNA(Takara)を使用した。これらのPCRの結果を表1に記載した。表中の+(プラス)は電気泳動により標的サイズの増幅産物が検出されたことを示し、−(マイナス)は当該増幅産物が検出されなかったことを示す。
【0031】
【表1】

【0032】
サバ検出用PCRプライマー(配列番号1及び2からなるPCRプライマーセット)を使用した場合、マサバDNAとゴマサバDNAを使用した場合のみ428 bp前後の増幅産物が確認され(表1)、両者の増幅産物のTm値は、約89.6℃であった。他の魚類を含むその他の生物種DNAを使用した場合には、増幅産物は見られなかった(表1)。なお、タイセイヨウマサバは、「特定原材料に準ずるもの」(厚生労働省医薬局食品保健部長通知、食品衛生法施行規則及び乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の一部を改正する省令等の施行について、平成13年3月15日、食発第79号)で規定されるサバに含まれておらず、タイセイヨウマサバDNAを検出しないように意図的に設計した当該PCRプライマーは、タイセイヨウマサバDNAを検出しないことを確認した(表1)。
なお、既知及び、独自に解析した各種生物のミトコンドリアのチトクロームb遺伝子配列に関する多重並列配列図とPCRプライマー配列との関係から、当該PCRプライマーを用いたPCRは、サバ科サバ属のマサバDNA、ゴマサバDNAを検出できるが、近縁種である同科サバ属のタイセイヨウマサバDNAや同科マグロ属のタイヘイヨウマグロ(クロマグロ)DNA、キハダマグロDNA、メバチマグロDNA、同科カツオ属のカツオDNA、同科ハガツオ属のハガツオ、タイセイヨウハガツオ、同科ソウダガツオ属のマルソウダ(トックリガツオ)、並びに、サワラ属のサワラの仲間(Scomberomorus tritor)DNA及び、他の魚類を含むその他の生物種DNAを検出しないことが強く示唆されている。
【0033】
また、サケ検出用PCRプライマー(配列番号3及び4からなるPCRプライマーセット)は、ベニザケDNA、サケ(シロザケ)DNA、ギンザケDNA、カラフトマスDNA及び、スチールヘッド(ニジマス)DNAを使用した場合のみ212 bp前後の増幅産物が確認され(表1)、これらの増幅産物のTm値は、約86.7℃であった。他の魚類を含むその他の生物種DNAを使用した場合には増幅産物は見られなかった(表1)。なお、既知及び、独自に解析した各種生物のミトコンドリアのチトクロームb遺伝子配列に関する多重並列配列図とPCRプライマー配列との関係から、当該PCRプライマーを用いたPCRは、サケ科サケ属のベニザケDNA、サケ(シロザケ)DNA、ギンザケDNA、カラフトマスDNA、スチールヘッド(ニジマス)DNA、マスノスケDNA、サクラマス(ヤマメ)DNA、サツキマス(アマゴ)DNA及び、サケ科サルモ属のブラウントラウトDNAやタイセイヨウサケDNAを検出できるが、近縁種であるサケ科イワナ属のイワナDNA、サケ科イトウ属のイトウDNA及び、他の魚類を含むその他の生物種DNAを検出しないことが強く示唆されている。なお、厚生労働省の通知による「特
定原材料に準ずるもの」に含まれる「サケ」は、サケ属とサルモ属の魚であり、イワナ属やイトウ属を含まない。
また、アワビ検出用PCRプライマー(配列番号5及び6からなるPCRプライマーセット)を使用した場合は、エゾアワビDNAを使用した場合のみ189 bp前後の増幅産物が確認され(表1)、この増幅産物のTm値は、約83.9℃であった。他の軟体動物を含むその他の生物種DNAを使用した場合には、増幅産物は見られなかった(表1)。なお、トコブシは、「特定原材料に準ずるもの」(厚生労働省医薬局食品保健部長通知、食品衛生法施行規則及び乳及び乳製品の成分規格等に関する省令の一部を改正する省令等の施行について、平成13年3月15日、食発第79号)で規定されるアワビに含まれておらず、トコブシDNAを検出しないように意図的に設計した当該PCRプライマーは、トコブシDNAを検出しないことを確認した。
なお、既知及び、独自に解析した各種生物のミトコンドリアの16S rRNA遺伝子配列に関する多重並列配列図とPCRプライマー配列との関係から、当該PCRプライマーを用いたPCRは、ミミガイ科ハリオティス属のエゾアワビDNA、マダカアワビDNA、メガイアワビDNA、アカネアワビDNA、ホワイトアバロンミミガイDNA、ガマノセアワビDNA、スルスミアワビDNAを検出できるが、同科ハリオティス属のトコブシDNA、セイヨウトコブシDNA、イボアナゴDNA、マアナゴウDNA、ミミガイDNA及び、他の軟体動物を含むその他の生物種DNAを検出しないことが強く示唆されている。
【0034】
また、イカ検出用PCRプライマー(配列番号7及び8からなるPCRプライマーセット)を使用した場合は、スルメイカDNA、モンゴウイカDNA及び、ヤリイカDNAを使用した場合のみ359 bp前後の増幅産物が確認され(表1)、これらの増幅産物のTm値は、約81.8℃であった。タコ類や貝類を含むその他の生物種DNAを使用した場合には、増幅産物は見られなかった(表1)。
なお、既知及び、独自に解析した各種生物のミトコンドリアの16S rRNA遺伝子配列に関する多重並列配列図とPCRプライマー配列との関係から、当該PCRプライマーを用いたPCRは、イカ類(十腕目)の各科に属するイカDNA(例えば、コウイカ科のコウイカ、アミモンコウイカ、モンゴウイカ、ヨーロッパヒメコウイカ、トグロコウイカ科のトグロコウイカ、ヒメイカ科のホンヒメイカ、ダンゴイカ科のミミイカ、ニヨリミミイカ、ヨーロッパボウズイカ、ヤリイカ科のヤリイカ、ケンサキイカ、アオリイカ、ジンドウイカ、アカイカ科のスルメイカ、アルゼンチンイレックス、ダイオウイカ科のダイオウイカ等)を検出できるが、タコ類(八腕目)や他の軟体動物を含むその他の生物種DNAを検出しないことが強く示唆されている。
さらに、エビ・カニグループ検出用PCRプライマー(配列番号9及び10からなるPCRプライマーセット)を使用した場合は、ベニズワイガニDNA、タラバガニDNA、ブラックタイガーエビDNA、シバエビDNA、アマエビ(ホッコクアカエビ)DNA、シロエビDNA及び、オキアミ類(未同定種)DNAを使用した場合のみ211 bp前後の増幅産物が確認され(表1)、これらの増幅産物のTm値は、約77〜80℃であった。昆虫類を含むその他の生物種DNAを使用した場合には、増幅産物は見られなかった(表1)。
なお、既知及び、独自に解析した各種生物のミトコンドリアの16S rRNA遺伝子配列に関する多重並列配列図とPCRプライマー配列との関係から、当該PCRプライマーを用いたPCRは、エビ目(十脚目)DNA(エビ類、カニ類、ヤドカリ類)、オキアミ目DNA(オキアミ類)、ヨコエビ目(端脚目)DNA(ヨコエビ)、ワラジムシ目(等脚目)DNA(フナムシ、ダンゴムシ)及び、シャコ下綱(シャコ類)を検出できるが、近縁種であるミジンコ亜綱(ミジンコ、カブトエビ、ホウネンエビ)、アゴアシ亜綱(ウミホタル、フジツボ)並びに、昆虫類、蜘蛛類及び、その他の生物種DNAを検出しないことが強く示唆されている。
実施例2
特定動物用PCRプライマーセットを用いたPCRの検出感度の確認
実施例1で使用した特定動物用PCRプライマーセットを用いたPCRの検出感度を調べるた
めに、下記のような実験を実施した。
実施例1で調製したマサバ、ベニザケ、エゾアワビ、スルメイカ、ブラックタイガーエビ及び、ベニズワイガニの各DNAを滅菌水で希釈し、1 pg/μl、10 pg/μl、100 pg/μl、1000 pg/μlのDNA溶液の希釈系列を作製し、これらの希釈された被験DNA液の1 μLを、実施例1に記載したPCR反応条件で、PCRに供した。PCR反応後、実施例1に記載したようにして、PCR増幅産物のTm値を求め、さらに、増幅産物の有無をアガロースゲル電気泳動によって確認した。
図1に示すように、サバ検出用PCRプライマー(配列番号1及び2からなるPCRプライマーセット)を使用した場合の検出感度は、1 pg DNA/分析であり、サケ検出用PCRプライマー(配列番号3及び4からなるPCRプライマーセット)を使用した場合の検出感度は、1 pg DNA/分析であり、アワビ検出用PCRプライマー(配列番号5及び6からなるPCRプライマーセット)を使用した場合の検出感度は、10 pg DNA/分析であり、イカ検出用PCRプライマー(配列番号7及び8からなるPCRプライマーセット)を使用した場合の検出感度は、1 pg DNA/分析であり、エビ・カニグループ検出用PCRプライマー(配列番号9及び10のPCRプライマーセット)を使用した場合の検出感度は、10 pg DNA/分析であった。
実施例3
特定動物用PCRプライマーセットを用いたPCRによる特定動物含有食品中の特定動物由来DNAの検出
サバ、サケ、イカ、エビあるいは、カニを原料として含有する市販食品等に対する本発明の特定動物用PCRプライマーセットを用いたPCR分析を下記のように行い、本発明の実用性を検討した。
【0035】
サバ、サケ、イカ、エビあるいは、カニを原料として含有することを明記されている市販食品(表2)を準備し、1〜10 gをマルチビーズショッカーで粉砕した。その混合破砕物の0.1〜1 gから各々のDNAをNucleon PhytoPure, plant and fungal DNA extraction kitsを用いて抽出した。抽出時には、RNA分解酵素によるRNAの除去操作も実施した。抽出した食品試料DNA量を測定後、滅菌水を用いて、食品試料DNAの濃度を10 ng/μLに調製した。
なお、アワビを原料として含有する市販食品の入手が困難であったため、アワビ含有食品の代替試料として、ちょっとぞうすい・かに(ヒガシマル)(10 ng/μL)にエゾアワビDNAを50 pg/μLの濃度で添加したものを使用した。これらの調製DNA液の1 μLを、実施例1で使用した特定動物用PCRプライマーセットを用い、実施例1に記載したPCR反応条件で、PCRに供した。PCR反応後、実施例2に記載したようにして、PCR増幅産物のTm値を求め、さらに、増幅産物の有無をアガロースゲル電気泳動によって確認した。これらのPCRの結果を表2に記載した。表中の+(プラス)は電気泳動により標的サイズの増幅産物が検出されたことを示し、−(マイナス)は当該増幅産物が検出されなかったことを示し、NDは検査が未実施であることを示す。
【0036】
【表2】

【0037】
また、これらのPCRのアガロース電気泳動に関する結果を図2(A、B、C、D及び、E)に示した。さらに、食品試料DNAから増幅されたPCR増幅産物を、BigDye Terminator v3.1 Cycle Sequencing kit(Applied Biosystems社)を用いて、両方向からダイレクトシーケンス後、Applied Biosystems 310 Genetic Analyzer(Applied Biosystems社)によって塩基配列を分析した。分析した塩基配列データをGenBank nucleotide sequence database(BLAST search)もしくは、発明者らが保有するDNAデータベースと比較解析し、その塩基配列の類似性に基づいて、PCR増幅産物由来DNAの生物種を帰属・同定した。
【0038】
その結果、サバ検出用PCRプライマー(配列番号1及び2からなるPCRプライマーセット)を使用した場合、サバ含有食品である、削り粉かつお入り(王将の杜)、けずり粉(ヤマキ)、ふりかけ30(ニコニコのり)及び、小魚ふりかけ(大森屋)由来DNAにおいてのみ、428 bp前後の増幅産物が確認され[表2、図2(A)]、これらの増幅産物のTm値は、約89.6℃であった。他の食品試料由来DNAを使用した場合には、増幅産物は見られなかった[表2、図2(A)]。なお、PCR増幅産物の塩基配列解析の結果、削り粉かつお入り(王将の杜)、けずり粉(ヤマキ)、ふりかけ30(ニコニコのり)及び、小魚ふりかけ(大森屋)由来DNAから増幅されたPCR増幅産物の塩基配列は、何れもゴマサバのミトコンドリア由来チトクロームb遺伝子配列と一致した。すなわち、当該PCRプライマーを用いたPCRは、複数の市販食品において、サバ非含有食品試料からサバ由来DNAやその他のDNAを検出しないが、サバ含有食品試料からサバ由来DNAを特異的に検出できることを確認した。
【0039】
また、サケ検出用PCRプライマー(配列番号3及び4からなるPCRプライマーセット)を使用した場合は、サケ含有食品である、小魚ふりかけ(大森屋)及び、さけ茶づけ(永谷園)由来DNAにおいてのみ、212 bp前後の増幅産物が確認され[表2、図2(B)])、これらの増幅産物のTm値は、約86.3℃であった。他の食品試料由来DNAを使用した場合には、増幅産物は見られなかった[表2、図2(B)]。なお、PCR増幅産物の塩基配列解析の結果、小魚ふりかけ(大森屋)及び、さけ茶づけ(永谷園)由来DNAから増幅されたPCR増幅産物の塩基配列は、何れもサケ(シロサケ)のミトコンドリア由来チトクロームb遺伝子配列と一致した。すなわち、当該PCRプライマーを用いたPCRは、複数の市販食品において、サケ非含有食品試料からサケ由来DNAやその他のDNAを検出しないが、サケ含有食品試料からサバ由来DNAを特異的に検出できることを確認した。
【0040】
また、アワビ検出用PCRプライマー(配列番号5及び6からなるPCRプライマーセット)を使用した場合は、アワビ含有食品の代替試料[50 pgエゾアワビDNAを添加したちょっとぞうすい・かに(ヒガシマル)]由来DNAにおいてのみ、189 bp前後の増幅産物が確認され[表2、図2(C)]、この増幅産物のTm値は、約84.2℃であった。他の食品試料由来DNAを使用した場合には、増幅産物は見られなかった[表2、図2(C)]。なお、PCR増幅産物の塩基配列解析の結果、アワビ含有食品の代替試料由来DNAから増幅されたPCR増幅産物の塩基配列は、当然のことながら、エゾアワビのミトコンドリア由来16S rRNA遺伝子配列と一致した。すなわち、当該PCRプライマーを用いたPCRは、複数の市販食品において、アワビ非含有食品試料からアワビ由来DNAやその他のDNAを検出しないが、アワビ非含有食品中に添加された微量のアワビ由来DNAを特異的に検出できることを確認した。
【0041】
また、イカ検出用PCRプライマー(配列番号7及び8からなるPCRプライマーセット)を使用した場合は、イカ含有食品である、カップヌードル・シーフードヌードル(日清食品)由来DNAにおいてのみ、359 bp前後の増幅産物が確認され[表2、図2(D)]、この増幅産物のTm値は、約82.9℃であった。他の食品試料由来D NAを使用した場合には、増幅産物は見られなかった[表2、図2(D)]。なお、PCR増幅産物の塩基配列解析の結果、カップヌードル・シーフードヌードル(日清食品)由来DNAから増幅されたPCR増幅産物の塩基配列は、スルメイカの仲間(Todarodes sp.)のミトコンドリア由来16S rRNA遺伝子配列と最も高い類似性を示した。すなわち、当該PCRプライマーを用いたPCRは、複数の市販食品において、イカ非含有食品試料からイカ由来DNAやその他のDNAを検出しないが、イカ含有食品試料からイカ由来DNAを特異的に検出できることを確認した。
【0042】
さらに、エビ・カニグループ検出用PCRプライマー(配列番号9及び10からなるPCRプライマーセット)を使用した場合は、エビあるいは、カニを含有する食品である、ふりかけ30(ニコニコのり)、小魚ふりかけ(大森屋)、ちょっとぞうすい・かに(ヒガシマル)及び、かっぱえびせん(カルビー)由来DNAにおいてのみ、211 bp前後の増幅産物が確認され[表2、図2(E)]、これらの増幅産物のTm値は、約79〜81℃であった。他の食品試料由来DNAを使用した場合には、増幅産物は見られなかった[表2、図2(E)]。
【0043】
なお、PCR増幅産物の塩基配列解析の結果、ふりかけ30(ニコニコのり)由来DNAから増幅されたPCR増幅産物の塩基配列は、アミエビ類のミトコンドリア由来16S rRNA遺伝子配列と最も高い類似性を示し、小魚ふりかけ(大森屋)由来DNAの場合は、オキアミの仲間のミトコンドリア由来16S rRNA遺伝子配列と最も高い類似性を示し、ちょっとぞうすい・かに(ヒガシマル)由来DNAの場合は、オオズワイガニのミトコンドリア由来16S rRNA遺伝子配列と一致し、かっぱえびせん(カルビー)由来DN Aの場合は、アカエビの仲間のミトコンドリア由来16S rRNA遺伝子配列と最も高い類似性を示した。すなわち、当該PCRプライマーを用いたPCRは、複数の市販食品において、エビ・カニ非含有食品試料からエビやカニ由来DNAやその他のDNAを検出しないが、エビもしくは、カニ含有食品試料からエビあるいはカニ由来DNAを特異的に検出できることを確認した。さらに、検出されたPCR増幅産物の塩基配列を解析することによって、その増幅産物がエビに由来するものであるか、カニに由来するものであるかを判別可能であることも確認できた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)配列表の配列番号7の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー、及び
(B)配列表の配列番号8の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー
からなるプライマーセット。
【請求項2】
(C)配列表の配列番号9の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー、及び
(D)配列表の配列番号10の塩基配列を3'末端側に含む最大30塩基のDNAからなるPCRプライマー
からなるプライマーセット。
【請求項3】
試料からDNAを抽出する工程と;
このDNAを鋳型として、請求項1又は2に記載のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と;
増幅されたDNAを検出することにより試料中に特定動物が存在しているか否かを検出する工程とを含む特定動物の検出方法。
【請求項4】
試料からDNAを抽出する工程と、このDNAを鋳型として請求項1記載のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、増幅されたDNAを検出することにより試料中にイカが存在しているか否かを検出する工程とを含む特定動物の検出方法。
【請求項5】
試料からDNAを抽出する工程と、このDNAを鋳型として請求項2記載のプライマーセットを用いてPCRを行う工程と、増幅されたDNAを検出することにより試料中にエビ及び/又はカニが存在しているか否かを検出する工程とを含む特定動物の検出方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−4890(P2010−4890A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193542(P2009−193542)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【分割の表示】特願2005−105250(P2005−105250)の分割
【原出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000226976)日清食品ホールディングス株式会社 (127)
【Fターム(参考)】