説明

プライマー層上の磁気的に配向されたインク

少なくとも1層の第1のコーティング層(P)でコーティングされた基材(S)と、第1のコーティング層(P)の上に、少なくとも1種類の磁性粒子または磁化可能粒子(F)を備える少なくとも1層の第2のコーティング層(I)とを有する保護対象書類(D)であって、識別印が磁性粒子または磁化可能粒子(F)の選択的な配向によってコーティング層(I)に具現された保護対象書類が開示される。さらに、上記の保護対象書類を作る工程が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護対象書類の印刷の分野にある。本発明は、特に、磁性顔料粒子または磁化可能顔料粒子を備えるインクを印刷し磁気的に配向することによって繊維質または他の多孔質の基材で得られるインク系のセキュリティ要素の改良や、上記セキュリティ要素の生産および使用、ならびに上記セキュリティ要素を担持する保護対象書類に関する。
【背景技術】
【0002】
印刷され硬化させられたインク層に配向磁性粒子を含有するセキュリティ要素および装飾コーティング、ならびにそれらを生産する方法および使用する方法は、米国特許第3,676,273号明細書、米国特許第3,791,864号明細書、欧州特許第406,667(B1)号明細書、欧州特許第556,449(B1)号明細書、欧州特許出願公開第710,508(A1)号明細書、国際公開第02/90002(A2)号、国際公開第2005/002866(A1)号、国際公開第2006/061301(A1)号、国際公開第2006/117271(A1)号、国際公開第2007/131833(A1)号で知られており、また、欧州特許出願公開第1880866(A1)号明細書、国際公開第2008/046702(A1)号の出願でも知られている。この関連で特に有用なのは、米国特許第4,838,648号明細書、欧州特許第686,675(B1)号明細書、国際公開第02/73250(A2)号、国際公開第03/00801(A2)号、および国際公開第2004/024836号に開示されたような光学的に変化する磁性顔料、ならびに欧州特許出願公開第1810756(A2)号明細書、国際公開第2005/002866(A1)号、国際公開第2006/069218号、同時係属出願である国際公開第2008/046702(A1)号、および本明細書に関連する文書に開示された、印刷されたインク中で上記顔料を配向する方法である。
【0003】
国際公開第2005/002866(A1)号によれば、レタリング、デザイン、または画像等のような所定の識別印が、磁性粒子または磁化可能粒子(F)を備える印刷されたばかりの濡れたインクまたはコーティング組成物の層を担持する印刷書類、すなわちシートまたは織物の上に磁気的に転写されるが、これは、上記のシートまたは織物を、表面に彫刻の形で上記所定の識別印を担持する永久磁石材料の板にさらし、これにより磁性粒子または磁化粒子(F)を配向し、続いて配向された磁性粒子または磁化可能粒子(F)を動かなくするためにインクまたはコーティング組成物を硬化させる(固める)ことによって行われる。特許出願である国際公開第2008/046702(A1)号は、国際公開第2005/002866(A1)号に開示された磁気配向デバイスのさらなる改良に関するものである。
【0004】
国際公開第2007/131833(A1)号に開示されたように、見た目に訴える結果を得るためには特定のインク配合が必要である。特に、光学的に変化する磁性顔料薄片のような磁性小板を含有するインクの場合、外部から与えられた配向を磁性顔料粒子が自由に取り入れるのに十分な空間をインク層に与えるためには、磁性顔料の体積に対する(乾燥した、無溶媒の)インク展色剤の体積の比を3.0より高く、最も好ましくは5.0より高くすべきである。
【0005】
ところが、磁気配向画像の質は、上記の磁性粒子または磁化可能粒子(F)を備えるインクまたはコーティング組成物の層が付けられる基材にも大きく依存する、ということが観察された。プラスチック箔または金属箔、ポリマー基材、より一般的には非常に平滑な非多孔質表面では優れた磁気画像が得られるのに対して、でこぼこした不均一な繊維質基材や、多孔質基材で得られる磁気配向画像は、かなり質が悪い。銀行券用紙は、これら両極端の基材の中間に位置する。
【0006】
多孔質または繊維質の基材で最もよく観察される欠点は、磁気画像の光学的コントラストの全体的な低下か、または、反射率の変化を特徴とする、点状の、小さな、目に見える不整の存在かのいずれかである。この不整は、色濃度の、またはある局所領域から他の局所領域までの透光性の不整であり、その存在により、不快なまだらの外観が生じてしまう。
【0007】
国際公開第2006/061301(A1)号は、視角に依存する外見を有するセキュリティ要素を開示しており、このセキュリティ要素は、識別印を担持する背景上に付けられたインク層中で小板形状の顔料粒子を磁気的に配向し、続いてインク層を配向状態で固める(乾燥させる、硬化させる)ことによって生産することができる。セキュリティ要素の均一性および視角に依存する光学的外見は両方とも、上記のインク層が付けられる基材の質に強く依存する、ということが観察された。平滑な非吸収性の基材では、角度に依存する外見変化が強く、視角に応じて反射率および透光性に大きな変化が観察される場合がある。繊維質基材では、小板形状の顔料粒子が、最初に与えられた磁気配向をインクの乾燥時に見掛け上失ってしまうので、角度に依存する外見変化が乏しい。
【発明の概要】
【0008】
発明者らは現在までに、磁気的に配向可能な顔料を備えるコーティング(I)を付ける前に第1のコーティング層(プライマー層)(P)を繊維質基材(S)に付けることによって、繊維質または多孔質の基材での磁気配向画像の質の悪さが相当改善され得る、ということを見いだした。
【0009】
以下、本発明の詳細について、説明、図面、および請求の範囲で開示する。
開示されるのは、基材(S)において、その性質および表面特性にかかわらず高品質な磁気配向画像を得る工程であり、この工程は、
a)第1のコーティング層(P)を基材(S)の表面の少なくとも一部に付けるステップと、
b)少なくとも1種類の磁性粒子または磁化可能粒子(F)を備える第2のコーティング層または第2の一組のコーティング層(I)を第1のコーティング層(P)の少なくとも一部の上に付けるステップと、
c)磁性粒子または磁化可能粒子(F)を備えるコーティング層(I)を濡れている間に磁場にさらして、磁性粒子または磁化可能粒子(F)を磁場内で配向させるステップと、
d)磁性粒子または磁化可能粒子(F)を備えるコーティング層(I)を硬化させて、磁性粒子または磁化可能粒子(F)をそれぞれの配向に不可逆的に固定するステップと
の逐次ステップを特徴とする。
【0010】
この工程では、第1のコーティング層(P)を付けることが、第1のコーティング層(P)を耐接触性にするために第1のコーティング層(P)を乾燥または硬化させることを含むと有利である。
【0011】
本発明の関連において、第1の(プライマー)コーティング層は、層の厚さを増したり、プライマーコーティングの不透明性を活用したりするために、第1の一組の(プライマー)コーティング層(P)であってもよい。その場合、工程のステップ(a)が繰り返される。
【0012】
プライマーコーティングされた基材には、1層より多い第2のコーティング層(I)をさらに付けることができるが、これは例えば、より高度な光学的効果を得るためである。その場合、第2の一組のコーティング層を得るために、工程のステップ(b)と、随意にステップ(c)と、ステップ(d)とが繰り返される。
【0013】
さらに開示されるのは、上記工程によって得ることのできる、第1のコーティング層または第1の一組の層(P)でコーティングされた基材(S)を有する保護対象書類または物品(D)であって、保護対象書類または物品(D)が、第1のコーティング層または第1の一組の層(P)の少なくとも一部の上に、少なくとも1種類の磁性粒子または磁化可能粒子(F)を備える第2のコーティング層または第2の一組の層(I)と、磁性粒子または磁化可能粒子(F)の均一または局所選択的な配向によって第2のコーティング層または第2の一組の層(I)に具現された模様、画像、または識別印とを有することを特徴とする保護対象書類または物品(D)である。
【0014】
本発明は、基材(S)が、織られた繊維質基材、織られていない繊維質基材、非繊維質の多孔質基材、またはざらざらもしくはでこぼこの表面構造を有する非多孔質基材であると特に有利である。また、基材は、紙サイズ剤、防汚処理剤、オフセット印刷された背景等のような、前もって付けられたコーティングをさらに担持してもよい。
【0015】
保護対象書類または物品(D)は、銀行券、有価書類、本人確認書類、(クレジットカード、アクセスカード、身分証明書等の)カード、物品税印紙、ラベル、包装、または商品であってよい。
【0016】
プライマー層は、インクジェット印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、活版印刷、デカール印刷、パッドスタンピング、およびローラーコーティングのような、多様なコーティング工程によって付けられてよく、また、選ばれた技術に応じて0.3マイクロメートルという低い値から50マイクロメートル以上までの厚さを有してよい。さらに、プライマーは、プライマー層をあらかじめ乾燥させずに次の層を付けるウェット・オン・ウェット法で付けられてもよいし、あるいは、次の層が付けられる前にプライマー層が乾燥させられてもよい。
【0017】
磁気的に配向可能なコーティング層を付ける前にプライマーコーティング(P)を乾燥または硬化させると有利であることが見いだされた。より具体的には、プライマーコーティング(P)は、磁気的に配向可能なコーティング層(I)を付ける時には耐接触性であるべきである。好ましい硬化手順は、紫外線硬化、電子ビーム硬化、または酸化重合硬化のいずれかによる、化学的架橋によるものである。溶媒蒸発、基材への溶媒吸収、または水性乳剤からのポリマー液滴の合体によるフィルム形成による、単純な物理的乾燥は、効率が悪くなる。なぜならば、そのように乾燥させられた層は、次に付けられるコーティング層(I)の影響で再溶解する可能性があるからである。耐接触性とは、本開示の関連では、コーティング層に押しつけられた人間の指にコーティング層がくっつかないということを意味する。
【0018】
従って、第1の(つまりプライマー)コーティング層は、紫外線硬化型コーティング組成物であると好ましい。紫外線コーティングを付けると、紫外光での照射による瞬時の乾燥の技術的可能性という利点がある。第1のコーティング(P)の瞬時の乾燥により、1回の走行中に同じ印刷機で第2のコーティング(I)を付けられるようになる。代わりに適用可能な高速硬化工程は電子ビーム硬化であり、これは電子ビーム硬化型および他のほとんどの放射線硬化型のコーティング組成物で適用可能である。
【0019】
第1のコーティング層が、前段階で、例えば基材製造時に付けられる場合は、コーティング組成物の紫外線硬化または放射線硬化の特性は必ずしも必要でない。このような場合は、瞬間的な乾燥が必須ではないためである。従って、プライマーコーティングが別の工程で行われるのであれば、酸化重合乾燥プライマーも同様に有用である。物理的乾燥、例えば溶媒蒸発または乳剤からのポリマー液滴の合体による物理的乾燥は、単独の乾燥手順としてはあまり好ましくないが、いわゆる複合硬化型システムで上記の乾燥工程の1つと組み合わせれば非常に有利に用いられ得る。
【0020】
発明者らは、プライマー層は主として、インク展色剤の一部を均一または不均一(局所的)に吸い取る(吸収する)紙の能力を低減する、と考えている。インク展色剤の一部が吸収されてしまうと、注目すべきことには、印刷されたインク膜中の顔料に対するインク展色剤の比率が事実上低下する。このような比率低下は、国際公開第2007/131833(A1)号に開示されたように、磁気画像の光学的外観を劣化させることが知られている。
【0021】
プライマー層の有利な乾燥または硬化は、繊維質または多孔質の基材の細孔をふさぐのを助けて、次に付けられる第2のコーティング(I)のインク展色剤を基材が吸収するのを防ぎ、それにより、続く磁気配向ステップの際に第2のコーティング中で十分な量の液体を確実に利用できるようにして、磁気的に配向可能な顔料粒子がインク展色剤中で自由に回転して、与えられた外部磁場に沿って並ぶことができるようにする、と考えられている。
【0022】
プライマー層のさらなる利点は、光学的に変化する磁性インクまたは磁気的に配向可能な顔料粒子を含有するインクの印刷を、基材表面の化学的および物理的な性質とは事実上無関係にすることである。これにより、プライマーコーティングを、基材と、磁気的に配向可能な顔料粒子を含有するインクとの両方に適合するように配合できる。このような適合性は、その特殊な顔料含有物のためにずっと厳しい配合要件を必要とする、磁気的に配向可能な顔料を備えるインク配合よりも、プライマーコーティング配合の方がずっと容易に実現できる。
【0023】
好ましい実施の形態において、第1のコーティング層または第1の一組の層の少なくとも最上層(P)は、基材(S)と磁気的に配向された第2のコーティング層または第2の一組の層(I)との接着を促進するさらなる特性を有する。
【0024】
第1のコーティング(プライマー)層(P)は、無色透明のコーティングまたはコレステリック液晶ポリマー(cholesteric liquid crystal polymer、CLCP)コーティングであってよい。ただし、好ましい実施の形態では、第1のコーティング層または第1の一組の層の少なくとも1層が、可溶性染料および不溶性顔料を含む群から選択された1つ以上の明白な要素を備える。特に、顔料は、白色または有色の不透明顔料、金属顔料、真珠光沢顔料、光学的に変化する顔料、およびコレステリック液晶ポリマー(CLCP)顔料から選ばれてよい。
【0025】
第1のコーティング層または第1の一組の層の少なくとも1層(P)は、紫外発光化合物、可視発光化合物、赤外発光化合物、上方変換化合物、赤外吸収化合物、磁性化合物、および犯罪捜査用タガントからなる群から選ばれた1つ以上の隠れた要素を備えてよい。
【0026】
明白な要素とは、本説明の関連では、コーティング組成物に混ぜられ得るか、さもなければコーティング組成物の一部である材料であって、色、色シフト、または真珠光沢のような、少なくとも1つの目に見える特徴的性質を呈する材料である。明白な要素は、視覚認証することができる。
【0027】
隠れた要素とは、本説明の関連では、コーティング組成物に混ぜられ得るか、さもなければコーティング組成物の一部である材料であって、発光、磁性、または赤外線吸収のような、少なくとも1つの目に見えない特徴的性質を呈する材料である。隠れた要素を認証するには特別な機器が必要である。
【0028】
特定の実施の形態において、第1のコーティング層または第1の一組の層の少なくとも1層は、コレステリック液晶ポリマー(CLCP)材料を備えて、視角に依存する色を呈し、所定の波長範囲内の円偏光成分を反射する。
【0029】
第1のコーティング層または第1の一組の層の少なくとも1層(P)は、可変情報印刷方法によって、好ましくはレーザーマーキングによって印された、通し番号または個人化情報のような情報をさらに担持してよい。
【0030】
第2のコーティング層または一組の第2の層(I)の磁性粒子または磁化可能粒子(F)は、好ましくは磁性薄片顔料によって、より好ましくは光学反射磁性顔料薄片によって具現される。
【0031】
第2のコーティング層または一組の第2の層(I)の磁性粒子または磁化可能粒子(F)は、光学的に変化する磁性顔料によって、好ましくは{吸収体層/誘電体層/反射磁性層}の配列、または{吸収体層/誘電体層/反射体層に磁性層を加えた}配列のいずれかを備える薄膜干渉顔料によっても有利に具現され得る。後者の配列では、磁性機能は反射体機能から分離されてさらなる層として具現され、反射体層に隣接して配置されてもよいし、1層以上のさらなる層によって反射体層から離されてもよい。
【0032】
第2のコーティング層または第2の一組の層の少なくとも1層(I)は、紫外発光化合物、可視発光化合物、赤外発光化合物、上方変換化合物、赤外吸収化合物、磁性化合物、および犯罪捜査用タガントからなる群から選ばれた1つ以上の隠れた要素をさらに備えてよい。
【0033】
本方法の特に好ましい実施の形態において、少なくとも1種類の磁性粒子または磁化可能粒子(F)を備える第2のコーティング層(I)は、濡れている間に、国際公開第2005/002866(A1)号または同時係属出願である国際公開第2008/046702(A1)号に開示されたような、識別印の彫り込まれた永久磁石板の磁場にさらされ、さらされる間またはさらされた後に固められる。これにより、得られる磁気配向の模様、画像、または識別印の線幅(r)を、3ミリメートル未満、好ましくは2ミリメートル未満、最も好ましくは1ミリメートル未満にすることができる。
【0034】
第1のコーティング層または第1の一組の層の少なくとも1層(P)は、第2のコーティング層または第2の一組の層(I)よりも広がった中実表面としてさらに印刷され得る。
【0035】
また、第1のコーティング層または第1の一組の層の少なくとも1層(P)は、識別印、線、ラスター、格子、ロゴ、幾何学模様の形で、第2のコーティング層または第2の一組の層(I)との重なり領域における磁気画像に選択的に影響するように印刷されてもよい。
[発明の詳細な説明]
【0036】
本発明は、磁気配向画像を基材(S)に付ける工程を含み、この工程は、第1の(プライマー)コーティング(P)を基材(S)に付けるステップと、続いて随意に、付けられたプライマーコーティング(P)を固めるステップと、その後、磁性粒子または磁化可能粒子(F)を備える第2のコーティング(I)をプライマーコーティング(P)の少なくとも一部の上に付けるステップと、続いて第2のコーティング(I)を濡れている間に磁場にさらして、コーティング層(I)中で粒子(F)を磁気的に配向し、これにより模様、画像、または識別印を第2のコーティング層(I)に具現するステップと、続いて配向されたコーティング層(I)を固めて、粒子(F)を配向位置に固定するステップとの逐次工程ステップを有する。
【0037】
模様、画像、または識別印は、コーティングに含まれる異方性の粒子、すなわち針または薄片の配向によって均一または局所選択的に作られ得るものであれば何であってもよい。均一な配向では、国際公開第2006/061301(A1)号に開示されたように、所定の表面領域のすべての粒子が同じ共通の方向を向くのに対して、局所選択的な配向では、粒子が、模様、画像、ロゴ、またはさらに他の種類の識別印を表すように、局所的に変化する方向を向く。
【0038】
本発明は、第1のコーティング層または第1の一組の層(P)でコーティングされた基材(S)を有する、上記工程によって得られる保護対象書類または物品(D)をさらに含み、この保護対象書類または物品(D)は、第1のコーティング層または第1の一組の層(P)の少なくとも一部の上に、少なくとも1種類の磁性粒子または磁化可能粒子(F)を備える第2のコーティング層または第2の一組の層(I)と、磁性粒子または磁化可能粒子(F)の均一または局所選択的な配向によって第2のコーティング層または第2の一組の層(I)に具現された模様、画像、または識別印とを有することを特徴とする。
【0039】
保護対象書類または物品(D)の基材は、紙またはボール紙のような繊維質基材であると好ましく、より一般的には、任意の織られた、または織られていない繊維質基材であってよい。例えば多孔質表面を有するプラスチック基材などの、非繊維質の多孔質基材であってもよいし、さらにはざらざらまたはでこぼこの表面構造を有する非多孔質基材であってもよい。また、基材は、不透明、透明、または半透明であってよい。さらには無色であっても有色であってもよい。基材は、コーティングされていなくても、サイズ剤や防汚処理剤等でプレコートされていてもよく、さらには空白であっても、オフセット印刷された背景のような印刷を担持していてもよい。
【0040】
本発明による工程は、銀行券、有価書類、本人確認書類、カード、物品税印紙、ラベル、包装等のような保護対象書類または物品(D)の生産や、偽造および転売に対する商品のマーキング(製品セキュリティ用途)に用いられると有利である。
【0041】
第1の、つまりプライマーのコーティング層、これは第1の一組の層(P)であってもよいが、この層は、0.3マイクロメートルないし50マイクロメートルの範囲の厚さを有する。本発明の関連で考えられる重要な層は、例えば紙処理剤や背景印刷などを含む多層コーティングを書類が担持する場合は、一組の層(P)の最上層である。
【0042】
第1のコーティング層(P)は、当技術分野で知られる任意の印刷工程で付けられてよく、特にインクジェット印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、活版印刷、デカール印刷、パッドスタンピング、およびローラーコーティングからなる群から選ばれた工程によって付けられてよいが、フレキソ印刷、グラビア印刷、またはスクリーン印刷の各工程のうちの1つによって付けられると最も好ましい。また、好ましくは、第1のコーティング層(P)が、第2のコーティング層(I)よりも広がった中実表面として印刷されるか、または、線、ラスター、格子、ロゴ、幾何学模様として、第2のコーティング層(I)との重なり領域における磁気画像に選択的に影響するように印刷される。
【0043】
コーティング層(P)は、紫外線型または電子ビーム型のコーティング組成物のような放射線硬化コーティング、例えば紫外線乾燥型スクリーン印刷インク、または紫外線乾燥型のインクジェット、オフセット、フレキソ、グラビア各インク、もしくはローラーコーティングインクであると最も好ましい。放射線硬化は、注目すべきことには、高速な(瞬時の)乾燥をもたらし、それにより印刷機で高い生産速度が可能になる。コーティング層が製造の前段階で付けられ、従って瞬間的な乾燥が必須でない場合は、構成溶媒の蒸発または浸透によって乾燥する、または酸化重合もしくは化学的架橋のような他の任意の乾燥工程によって乾燥する溶媒系または水性のコーティングとすることもできる。
【0044】
あらかじめプライマーコーティングを乾燥させずに第2のコーティングをプライマーコーティング上に付けるウェット・オン・ウェット法は可能であるが、磁気的に配向可能なコーティング(I)を付ける前にプライマー(P)を乾燥または硬化させることが好ましい。そのような乾燥または硬化は、本発明から最高の効果を得るのに役立つ。プライマーコーティング層は、少なくとも耐接触性となるくらいまで、すなわち、もはや裏移りせず、第2の層が付けられる際に印刷機器に触れても傷んだり印刷機器を汚したりしなくなるくらいまで、硬化させられるべきである。そのような乾燥は、プライマーコーティングの化学的性質に応じて、紫外線放射、電子ビーム放射、加熱、または他の、コーティングの固化をもたらす乾燥または硬化の手順により実現されてよい。
【0045】
水性乳剤コーティング組成物、溶媒系の熱可塑性または熱硬化性のコーティング組成物、空気乾燥型コーティング組成物、水性/紫外線硬化型および溶媒系/紫外線硬化型の成分を含む複合型組成物のような、他の化学的性質に基づくプライマーコーティング(P)も同様に用いられてよい。
【0046】
このように、プライマーコーティングは、紫外線硬化型コーティング、溶媒系コーティング、乳剤コーティングを含むがこの限りでない水性コーティング、酸化乾燥型コーティング、水性/紫外線乾燥型の複合型コーティング、および溶媒系/紫外線乾燥型の複合型コーティングからなる群から選ばれる。
【0047】
特定の実施の形態において、第1のコーティング層または第1の一組の層の少なくとも1層は、コレステリック液晶ポリマー(CLCP)材料を備えて、視角に依存する色を呈し、所定の波長範囲内の円偏光成分を反射する。例えば米国特許第5,798,147号明細書(Beckら)および米国特許第6,899,824号明細書(Meyerら)に開示されたそのような材料は、前駆体液晶コーティングの形で付けることができ、前駆体液晶コーティングは、所定の外部条件(温度)下におかれると、特徴的に色づいたコレステリック構造を現わす。そして、そのコレステリック構造が、前駆体材料の光重合によって「凍結」させられる。
【0048】
別の実施の形態において、最上プライマー層(P)は無色透明のコーティングである。別の好ましい実施の形態では、プライマーコーティングは、可溶性染料および/または不溶性顔料を備える。プライマー上に重ね刷りされる光学的に変化する磁性インクおよび磁気画像の光学的効果を強化するために、有色の染料または顔料が選ばれてよい。好ましくは、顔料が、白色または有色の不透明顔料、金属顔料、真珠光沢顔料、光学的に変化する顔料、およびそれらの組み合わせから選ばれる。
【0049】
色シフト顔料、真珠光沢顔料、または金属顔料のような光学効果顔料は、磁気画像の全体的な外観を豊かにしつつ、書類にさらなるセキュリティを付与することができる。
【0050】
特に好ましい実施の形態において、プライマー(P)は、1つ以上の透明または有色のコレステリック液晶ポリマー(CLCP)顔料を備えて、視角に依存する色を呈し、所定の波長範囲内の所定の向きの円偏光を反射する。
【0051】
コレステリック液晶ポリマーは、らせん状に配列された分子積層の形の分子秩序を有する。この秩序に起因して材料の屈折率の周期的な空間変調が生じ、その結果、光の所定の波長および偏光方向の、選択的な透過/反射が起こる。CLCPにおけるらせん状の分子配列の特定の状態により、分子のらせん状積層の回転の向きに応じて、反射光が左回りまたは右回りに円偏光する。付加的な隠れた特徴としての円偏光の存在は、さらなるセキュリティ要素である。
【0052】
好ましいCLCP顔料は、欧州特許出願公開第1876216(A1)号明細書、欧州特許第1213338(B1)号明細書、欧州特許第0685749(B1)号明細書、独国特許出願公開第19922158(A1)号明細書、欧州特許出願公開第0601483(A1)号明細書、独国特許出願公開第4418490(A1)号明細書、欧州特許第0887398(B1)号明細書、および国際公開第2006/063926号、ならびに米国特許第5,211,877号明細書、米国特許第5,362,315号明細書、および米国特許第6,423,246号明細書に記載された種類の薄片である。顔料粒子は、1マイクロメートルないし10マイクロメートルほどの厚さと、10マイクロメートルないし100マイクロメートルほどの薄片径とを有し、対応する液晶ポリマー前駆体膜を粉砕することによって得られる。
【0053】
プライマーコーティング(P)は、紫外発光化合物、可視発光化合物、赤外発光化合物、上方変換化合物、赤外吸収化合物、磁性顔料、および犯罪捜査用タガントからなる群から選ばれた隠れたセキュリティ要素をさらに備えてよい。
【0054】
発光性の染料または顔料は、赤外吸収化合物と同様に、さらなる隠れた機械可読セキュリティマーキングを書類に付与して、確立された技術による保護対象書類の機械認証可能性を提供することができる。プライマー層の磁性顔料は、第2の層の、配向された光学的に変化する磁性顔料との協同効果をさらに提供することができる。欧州特許第0927750(B1)号明細書に開示されたような犯罪捜査用セキュリティマーカーは、マーキングに用いたインクおよびそれを用いて印刷された書類の追跡可能性を提供することができる。
【0055】
第1のコーティング層(P)は、通し番号または個人化情報のような情報をさらに担持してよく、情報は、レーザーマーキングのような可変情報印刷方法によって付けられてよい。
【0056】
プライマー(P)は、基材(S)と磁気的に配向されたコーティング層(I)との接着を促進するさらなる特性または機能を有してよい。注目すべきことには、このような特性または機能は、銀行券の印刷にしばしば用いられるような、例えば防汚コーティングを有する表面加工紙の場合に必要となる場合がある。防汚コート紙は、標準的なインク配合では印刷しにくい。一方、より高度な接着特性をさらに呈するように、光学的に変化する磁性インクのような機能的なインク配合を変えるのは、困難な作業である。接着を促進する機能を有するプライマーコーティング組成物を設けることは、より実現が容易であり、従って接着問題がある場合には好ましい選択である。
【0057】
第2のコーティング層または第2の一組の層(I)の磁性粒子または磁化可能粒子(F)は、好ましくは、鉄の薄片のような磁性顔料薄片によって、最も好ましくは、米国特許第6,818,299号明細書(Phillipsら)に開示されたような光学反射磁性顔料薄片か、米国特許第4,838,648号明細書、欧州特許第686,675(B1)号明細書、国際公開第02/73250(A2)号、および国際公開第03/00801(A2)号に開示されたような光学的に変化する磁性顔料かのいずれかによって具現される。
【0058】
光学反射磁性顔料薄片の例示的な実施の形態は、反射体層/磁性層/反射体薄層の配列を備える薄膜顔料であり、これは例えば、反射体層がアルミニウムによって具現され、磁性層がニッケルによって具現されたMgF2/Al/Ni/Al/MgF2で実現される。
【0059】
第2のコーティング層または第2の一組の層(I)の磁性粒子または磁化可能粒子(F)は、最も好ましくは、光学的に変化する磁性顔料によって具現される。
【0060】
光学的に変化する磁性顔料の例示的な実施の形態は、吸収体層/誘電体層/反射磁性層の配列、または吸収体層/誘電体層/反射体層に磁性層を加えた配列のいずれかを備える薄膜干渉顔料である。そのような顔料は、ファブリ・ペロー共振器構造に基づいており、反射光の波長が誘電体層の光学的厚さにより決まる。別々の磁性層と光学反射体層とを有する顔料が用いられると有利であるが、これは、欧州特許第1266380(B1)号明細書に開示されたように、磁性層と光学反射体層とによって磁気特性と光学反射特性とを自由に組み合わせることができるからである。
【0061】
濡れた状態の印刷されたインクまたはコーティング組成物(I)中の顔料粒子(F)の配向は、外部の印加磁場によって与えられる。印加磁場に沿って顔料粒子(F)が自由に並ぶことができるように、インク媒体中における磁性顔料粒子(例えば薄片、F)の回転自由を許容するだけの、基材上のインク膜層(I)の最小厚さが必要である。従って、第2のコーティングは、10マイクロメートルないし30マイクロメートルの典型的な膜厚で付けられる。
【0062】
本発明の工程は、国際公開第2005/002866(A1)号および同時係属出願である国際公開第2008/046702(A1)号に開示されたような、細い線模様または高解像度の識別印の磁気配向転写の場合に特に有利である。磁気的に転写された画像が細い線の細部を含む場合は画像の優れた品質が必要であり、銀行券用紙のような繊維質基材に細い線の細部を正しく転写するためには、本発明の開示によるプライマーコーティングが必須で、磁気的に配向されたセキュリティ要素の光学的外観を大幅に向上させる、ということが分かった。
【0063】
本発明の関連において、細い線の細部は、3ミリメートル未満の線幅(r)を有するものと理解されたい。国際公開第2005/002866(A1)号および国際公開第2008/046702(A1)号に開示された装置を用いれば、2ミリメートル未満、さらには1ミリメートル未満の線幅でさえ、磁気配向模様として容易に転写することができる。図2は、第2のコーティング(I)への磁気的な転写によって得られる模様の線幅(r)と、それが磁気配向板(M)の磁場線の性質に結びついている様子とを説明する図である。
【0064】
特定の実施の形態において、プライマー(P)でコーティングされた表面は、光学的に変化する磁性インクまたは磁気的に配向された顔料粒子を含有するインクで印刷された第2のコーティング層(I)の領域よりも広がっていてよい。すなわち、磁気的に配向されたインクの表面全体がプライマー表面内に含まれてよい。また、別の実施の形態では、プライマー領域が第2のコーティング層(I)より狭く印刷されてもよい。
【0065】
別の特定の実施の形態において、第1のコーティング層(P)は、線、ラスター、格子、ロゴ、幾何学模様として、第2のコーティング層(I)との重なり領域における磁気画像に選択的に影響するように印刷される。さらに、特に好ましいのは、細線の磁気画像を備える書類または物品(D)、すなわち識別印が3ミリメートル未満、好ましくは2ミリメートル未満、最も好ましくは1ミリメートル未満の線幅(r)を有する書類または物品(D)であり、そのような識別印は、国際公開第2005/002866(A1)号および国際公開第2008/046702(A1)号に開示された配向装置を用いて製造することができる。
次に、図面と例示的な実施の形態に関して、本発明をさらに説明する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】図1は、本発明のセキュリティ要素を模式的に説明する図であり、Sは繊維質または多孔質の基材、Pは第1のコーティング(プライマーコーティング)、Iは少なくとも1種類の磁性粒子または磁化可能粒子(F)を備える第2のコーティングであって、磁性粒子または磁化可能粒子(F)の選択的な配向により識別印が具現される。
【図2】図2は、コーティング(I)中の粒子の磁気配向によって得られる模様の線幅(r)が、粒子を配向させるのに用いられる磁場に依存する様子を説明する図である。細線の模様には、磁場の急な反転が必要である。
【図3a】図3aは、付けられたプライマー層(P)の、「困難な」基材(吸収性のオフセット用紙)上での磁気配向画像の形成に対する効果を説明する図である。光学的に変化する磁性インク(I)が基材(S)上に直接印刷されたものであり、続いて顔料の磁気配向と、インクの固化を施してある。画像が見えない。
【図3b】図3bは、付けられたプライマー層(P)の、「困難な」基材(吸収性のオフセット用紙)上での磁気配向画像の形成に対する効果を説明する図である。光学的に変化する磁性インク(I)が本発明のプライマー層(P)上に印刷されたものであり、その他については(a)と同じ条件である。磁気配向画像が明瞭かつ整然と現れている。
【図3c】図3cは、付けられたプライマー層(P)の、「困難な」基材(吸収性のオフセット用紙)上での磁気配向画像の形成に対する効果を説明する図である。光学的に変化する磁性インク(I)が、半分はプライマー層(P)上に、半分は基材(S)上に印刷されたものであり、その他については(a)と同じ条件である。プライマーコーティング部分(左)では磁気配向画像が明瞭かつ整然と現れているが、非コーティング部分(右)ではまったく現れていない。
【実施例】
【0067】
[インク配合]
第1の(プライマー)コーティング(P)用のインクは、当業者に知られているように製造される。第1の例は、フレキソ法によって付ける紫外線硬化型プライマー配合であり、以下の通りである。
【表1】

【0068】
代替となる第2のものは、シルクスクリーン印刷で付ける、発光マーカーを備える紫外線乾燥型プライマーであり、以下のように配合される。
【表2】

【0069】
第3の例の要点は2層プライマーである。まず、酸化乾燥工程マゼンタ枚葉給紙オフセットインクで基材が印刷される。この第1の層が乾燥したら、LCP薄片顔料を備える紫外線硬化型スクリーン印刷用プライマーがオフセット層に付けられる。シルクスクリーンプライマーの配合は以下の通りである。
【表3】

【0070】
磁性の光学的に変化する顔料を備える第2のコーティング組成物(I)は、国際公開第2007/131833(A1)号に開示されたように配合される。紫外線乾燥型シルクスクリーンインク配合の例は以下の通りである。
【表4】

【0071】
[印刷と磁気配向]
第1の標準的なオフセット用紙は、相応に用いられた。第2の標準的なオフセット用紙は、中実表面として、本明細書において上述された24マイクロメートルの第1のプライマー組成物がシルクスクリーン印刷され、印刷された組成物は紫外線硬化させられた。
【0072】
両方の用紙には、本明細書において上述された第2のコーティング組成物(I)の中実斑点が30マイクロメートルの厚さでシルクスクリーン印刷された。印刷された基材は、国際公開第2008/046702(A1)号および国際公開第2005/002866(A1)号に開示されたような、識別印を担持する磁性板上に一時的に置かれ、配向されたコーティングは紫外線硬化させられた。
【0073】
図3は、その他については同じ条件で得られた結果を示す図である。プライマーコーティングされなかった用紙では、磁気配向画像が見えないが(図3a)、プライマーコーティングされた用紙では、磁気配向画像が明瞭かつ整然としている(図3b)。画像形成ステップの際に、識別印を担持する磁性板を第2の基材のコーティング領域および非コーティング領域と重ねると、プライマー(P)コーティングが存在する場所だけ画像が明瞭かつ整然と形成される(図3c)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1のコーティング層または第1の一組の層(P)でコーティングされた基材(S)を有する保護対象書類または物品(D)であって、
前記保護対象書類または物品(D)が、前記第1のコーティング層または第1の一組の層(P)の少なくとも一部の上に、 少なくとも1種類の磁性粒子または磁化可能粒子(F)を備える第2のコーティング層または第2の一組の層(I)を有し、
前記磁性粒子または磁化可能粒子(F)の均一または局所選択的な配向によって前記第2のコーティング層または第2の一組の層(I)に具現された模様、画像、または識別印を有することを特徴とする保護対象書類または物品(D)。
【請求項2】
前記基材が、織られた繊維質基材、織られていない繊維質基材、非繊維質の多孔質基材、およびざらざらまたはでこぼこの表面構造を有する非多孔質基材からなる群から選ばれる請求項1に記載の保護対象書類または物品(D)。
【請求項3】
前記第1のコーティング層または第1の一組の層(P)が0.3マイクロメートルないし50マイクロメートルの範囲の厚さを有する請求項1ないし2のうちのいずれか1項に記載の保護対象書類または物品(D)。
【請求項4】
前記第1のコーティング層または前記第1の一組の層の少なくとも最上層(P)が、インクジェット印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、活版印刷、デカール印刷、パッドスタンピング、およびローラーコーティングからなる群から選ばれた工程によって付けられる請求項1ないし3のうちのいずれか1項に記載の保護対象書類または物品(D)。
【請求項5】
前記第1のコーティング層または前記第1の一組の層の少なくとも最上層(P)が、紫外線硬化型コーティング組成物、電子ビーム硬化型コーティング組成物、溶媒系コーティング組成物、水性コーティング組成物、酸化重合乾燥型コーティング組成物、ならびに水性/紫外線硬化型コーティングおよび溶媒系/紫外線硬化型コーティングを含む複合硬化型コーティング組成物からなる群から選ばれる請求項1ないし4のうちのいずれか1項に記載の保護対象書類または物品(D)。
【請求項6】
前記第1のコーティング層または前記第1の一組の層の少なくとも最上層(P)が無色透明のコーティングである請求項1ないし5のうちのいずれか1項に記載の保護対象書類または物品(D)。
【請求項7】
前記第1のコーティング層または前記第1の一組の層の少なくとも1層が、コレステリック液晶ポリマー(cholesteric liquid crystal polymer、CLCP)材料を備えて、視角に依存する色を呈し、所定の波長範囲内の円偏光成分を反射する請求項1ないし6のうちのいずれか1項に記載の保護対象書類または物品(D)。
【請求項8】
前記第1のコーティング層または前記第1の一組の層の少なくとも1層(P)が、可溶性染料および不溶性顔料を含む群から選択された1つ以上の明白な要素を備える請求項1ないし7のうちのいずれか1項に記載の保護対象書類または物品(D)。
【請求項9】
前記顔料が、白色または有色の不透明顔料、金属顔料、真珠光沢顔料、光学的に変化する顔料、およびコレステリック液晶ポリマー(CLCP)顔料からなる群から選ばれる請求項8に記載の保護対象書類または物品(D)。
【請求項10】
前記第1のコーティング層または前記第1の一組の層の少なくとも1層(P)が、紫外発光化合物、可視発光化合物、赤外発光化合物、上方変換発光化合物、赤外吸収化合物、磁性化合物、および犯罪捜査用タガントからなる群から選ばれた1つ以上の隠れた要素を備える請求項1ないし9のうちのいずれか1項に記載の保護対象書類または物品(D)。
【請求項11】
前記第1のコーティング層または前記第1の一組の層の少なくとも1層(P)が、可変情報印刷方法によって、好ましくはレーザーマーキングによって印された、通し番号または個人化情報のような情報を担持する請求項1ないし10のうちのいずれか1項に記載の保護対象書類または物品(D)。
【請求項12】
前記第1のコーティング層または前記第1の一組の層の少なくとも最上層(P)が、前記基材(S)と前記磁気的に配向された第2のコーティング層または第2の一組の層(I)との接着を促進するさらなる特性を有する請求項1ないし11のうちのいずれか1項に記載の保護対象書類または物品(D)。
【請求項13】
前記第2のコーティング層または第2の一組の層(I)の前記磁性粒子または磁化可能粒子(F)が、磁性顔料薄片によって、好ましくは光学反射磁性顔料薄片によって具現される請求項1ないし12のうちのいずれか1項に記載の保護対象書類または物品(D)。
【請求項14】
前記第2のコーティング層または第2の一組の層(I)の前記磁性粒子または磁化可能粒子(F)が、光学的に変化する磁性顔料によって、好ましくは吸収体層/誘電体層/反射磁性層の配列、または吸収体層/誘電体層/反射体層に磁性層を加えた配列のいずれかを備える薄膜干渉顔料によって具現される請求項1ないし12のうちのいずれか1項に記載の保護対象書類または物品(D)。
【請求項15】
前記第2のコーティング層または前記第2の一組の層の少なくとも1層(I)が、紫外発光化合物、可視発光化合物、赤外発光化合物、上方変換化合物、赤外吸収化合物、磁性化合物、および犯罪捜査用タガントからなる群から選ばれた1つ以上の隠れた要素を備える請求項1ないし14のうちのいずれか1項に記載の保護対象書類または物品(D)。
【請求項16】
前記磁気配向の模様、画像、または識別印の線幅(r)が、3ミリメートル未満、好ましくは2ミリメートル未満、最も好ましくは1ミリメートル未満である請求項1ないし15のうちのいずれか1項に記載の保護対象書類または物品(D)。
【請求項17】
前記第1のコーティング層または前記第1の一組の層の少なくとも1層(P)が、前記第2のコーティング層または第2の一組の層(I)よりも広がった中実表面として印刷される請求項1ないし16のうちのいずれか1項に記載の保護対象書類または物品(D)。
【請求項18】
前記第1のコーティング層または前記第1の一組の層の少なくとも1層(P)が、識別印、線、ラスター、格子、ロゴ、幾何学模様として、前記第2のコーティング層または第2の一組の層(I)との重なり領域における前記磁気画像に選択的に影響するように印刷される請求項1ないし17のうちのいずれか1項に記載の保護対象書類または物品(D)。
【請求項19】
前記保護対象書類または物品が、銀行券、有価書類、本人確認書類、カード、物品税印紙、ラベル、包装、および商品からなる群のうちの1つである請求項1ないし18のうちのいずれか1項に記載の保護対象書類または物品(D)。
【請求項20】
請求項1ないし19のうちのいずれか1項に記載の保護対象書類または物品を生産する工程であって、
a)第1のコーティング層(P)を基材(S)の表面の少なくとも一部に付けるステップと、
b)少なくとも1種類の磁性粒子または磁化可能粒子(F)を備える第2のコーティング層または第2の一組の層(I)を前記第1のコーティング層(P)の少なくとも一部の上に付けるステップと、
c)前記磁性粒子または磁化可能粒子(F)を備える前記コーティング層(I)を濡れている間に磁場にさらして、前記磁性粒子または磁化可能粒子(F)を前記磁場内で配向させるステップと、
d)前記磁性粒子または磁化可能粒子(F)を備える前記コーティング層(I)を硬化させて、前記磁性粒子または磁化可能粒子(F)をそれぞれの配向に不可逆的に固定するステップと
を含む工程。
【請求項21】
前記第1のコーティング層(P)を付けることが、前記第1のコーティング層(P)を耐接触性にするために前記第1のコーティング層(P)を乾燥または硬化させることを含む請求項20に記載の工程。
【請求項22】
前記乾燥または硬化が、紫外線硬化、電子ビーム硬化、酸化重合乾燥、物理的乾燥、およびこれらの組み合わせからなる工程群から選ばれる請求項21に記載の工程。
【請求項23】
前記第1のコーティング層または前記第1の一組の層の少なくとも最上層(P)が、インクジェット印刷、オフセット印刷、フレキソ印刷、グラビア印刷、スクリーン印刷、活版印刷、デカール印刷、パッドスタンピング、およびローラーコーティングからなる群から選ばれた印刷工程によって付けられる請求項20ないし22のうちのいずれか1項に記載の工程。
【請求項24】
通し番号または個人化情報のような情報が、可変情報印刷方法によって、好ましくはレーザーマーキングによって前記第1のコーティング層または前記第1の一組の層の少なくとも1層(P)に印される請求項20ないし23のうちのいずれか1項に記載の工程。
【請求項25】
前記第2のコーティング層または第2の一組の層(I)の前記磁性粒子または磁化可能粒子(F)が、磁性顔料薄片によって、好ましくは光学反射磁性顔料薄片によって具現される請求項20ないし24のうちのいずれか1項に記載の工程。
【請求項26】
前記第2のコーティング層または第2の一組の層(I)の前記磁性粒子または磁化可能粒子(F)が、光学的に変化する磁性顔料によって、好ましくは吸収体層/誘電体層/反射磁性層の配列、または吸収体層/誘電体層/反射体層に磁性層を加えた配列のいずれかを備える薄膜干渉顔料によって具現される請求項20ないし24のうちのいずれか1項に記載の工程。
【請求項27】
前記第2のコーティング層または第2の一組の層(I)が、コレステリック液晶ポリマー(cholesteric liquid crystal polymer、CLCP)材料を備えるコーティングの上に付けられる請求項20ないし26のうちのいずれか1項に記載の工程。
【請求項28】
前記少なくとも1種類の磁性粒子または磁化可能粒子(F)を備える前記第2のコーティング層または第2の一組の層(I)が、濡れている間に、識別印の彫り込まれた永久磁石板の磁場にさらされる請求項20ないし27のうちのいずれか1項に記載の工程。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【公表番号】特表2012−509780(P2012−509780A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536899(P2011−536899)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【国際出願番号】PCT/EP2009/065731
【国際公開番号】WO2010/058026
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(311003204)シクパ ホールディング エスアー (21)
【氏名又は名称原語表記】SICPA HOLDING SA
【住所又は居所原語表記】Avenue de Florissant 41,CH−1008 Prilly Switzerland
【Fターム(参考)】