説明

プライマー用組成物及び積層体

【課題】基材とシリコーン硬化物とをプライマー層を介して一体化するにあたり、基材とシリコーン硬化物との密着性を阻害することなく、当該シリコーン硬化物に優れた帯電防止乃至低減特性を付与すること。
【解決手段】(a)リチウム塩及び(b)ポリエーテル変性ポリシロキサンを含む縮合反応硬化性プライマー用組成物、並びに、当該組成物の硬化物である帯電防止性乃至低減性プライマー層を用いて基材とシリコーン硬化物とを一体化することにより得られた積層体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯電防止乃至帯電低減特性を有するプライマー用組成物及び当該組成物を利用した帯電防止乃至帯電低減性能を有する積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
各種粘着物質に対して離型性(剥離性)を示すフィルムは、離型性フィルム(剥離性フィルム)と呼称されている。このような離型性フィルムは、例えば、プラスチックフィルム等からなる基材の表面に離型性を有するシリコーン硬化物の皮膜が形成された構造を有しており、基材の表面に離型性皮膜形成性シリコーン組成物を塗布し、これを硬化させることにより製造されている。
【0003】
しかし、この種の離型性皮膜形成性シリコーン組成物は、基材の材質によっては、基材と密着或いは接着しないので、離型性のシリコーン硬化物皮膜と基材が強固に密着して一体化した離型性フィルムを得ることは困難であった。
【0004】
そこで、特開平7−3215号公報、特開平9−208923号公報に記載されるように、基材の表面に予めプライマー層を形成して、その上に、離型性皮膜形成性シリコーン組成物を塗布して、加熱硬化することが提案されている。
【0005】
一方、シリコーンは電気絶縁性に優れているため、例えば、離型性フィルムを剥がす際に、離型性のシリコーン硬化物皮膜が帯電して、微小な塵を吸引する等の問題がある。
【0006】
そこで、特開2009−30028号公報には、帯電防止剤をシリコーン硬化物中に配合することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平7−3215号公報
【特許文献2】特開平9−208923号公報
【特許文献3】特開2009−30028号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、基材とシリコーン硬化物が良好に一体化し、且つ、優れた帯電防止乃至低減特性を備えた積層体を得ることは困難であった。
【0009】
本発明は、基材とシリコーン硬化物とをプライマー層を介して一体化するにあたり、基材とシリコーン硬化物との密着性を阻害することなく、当該シリコーン硬化物に優れた帯電防止乃至低減特性を付与することを目的とする。また、本発明は、帯電防止性乃至低減性プライマー層を用いて基材とシリコーン硬化物とを一体化することにより得られた積層体を供与することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の目的は、(a)リチウム塩及び(b)ポリエーテル変性ポリシロキサンを含み、好適には、(c)イソシアナート基含有化合物を更に含む縮合反応硬化性プライマー用組成物により達成される。更に、本発明の他の目的は、前記縮合反応硬化性プライマー用組成物の硬化物である、帯電防止性乃至低減性プライマー層を用いて基材とシリコーン硬化物とを一体化することにより得られた積層体により達成される。
【0011】
(a)リチウム塩としては、LiBF 、LiClO 、LiPF 、LiAsF、LiSbF 、LiSOCF、LiN(SOCF 、LiSO 、LiC(SOCF、及び、LiB(C からなる群より選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0012】
(b)ポリエーテル変性ポリシロキサンとしては、水酸基を有するポリエーテル変性ポリシロキサンが好ましい。
【0013】
(b)ポリエーテル変性ポリシロキサンは下記一般式(1):

YO−(RSiO)−(RXSiO)−(RSiO)−Y (1)

{式中、
、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は一価炭化水素基を表し、
Xは、−R−(OR−(OR−OH(R、R及びRは、それぞれ独立して、二価炭化水素基を表し、
a及びbは、a≧0、b≧0を満たす整数である)を表し、
及びYは、それぞれ独立して、X、水素原子又は一価炭化水素基を表し、
x、y及びzは、x≧0、y≧0、z≧0、及び、x+y+z≧1を満たす整数であり、但し、y=0のとき、Y及びYの少なくとも一方は、Xである}で表される、末端水酸基を有するポリエーテル変性ポリシロキサンが特に好ましい。
【0014】
本発明の縮合反応硬化性プライマー用組成物は、(c)イソシアナート基含有化合物を更に含むことが好ましく、特に、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体である(c)イソシアナート基含有化合物が好ましい。
【0015】
本発明の縮合反応硬化性プライマー用組成物は、(d)反応性官能基を有する1種又は2種以上のシラン化合物、及び、(e)有機アルミニウム化合物、有機チタン酸エステル化合物、及び、白金系化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物を更に含むことが好ましい。
【0016】
(d)反応性官能基を有するシラン化合物としては、下記一般式(2):

Si(OR104−c (2)

(式中、
は、それぞれ独立して、反応性官能基を表し、
10は、それぞれ独立して、一価炭化水素基を表し、
cは、1〜3の整数である)で表されるものが好ましい。
【0017】
本発明は、上記縮合反応硬化性プライマー用組成物の硬化物にも関する。
【0018】
本発明の積層体の一つの態様は、基材、及び、上記縮合反応硬化性プライマー用組成物の硬化物を備える。
【0019】
本発明の積層体の他の態様は、基材、上記縮合反応硬化性プライマー用組成物の硬化物からなるプライマー層、及び、シリコーン硬化物層を備えており、前記基材上に前記プライマー層が存在し、且つ、前記プライマー層上に前記シリコーン硬化物層が存在する。
【0020】
前記シリコーン硬化物層は付加反応硬化性シリコーンの硬化物からなることが好ましい。
【0021】
前記基材は樹脂製であることが好ましい。
【0022】
本発明は、上記積層体を備える離型性又は粘着性フィルム又はシート、並びに、離型性又は粘着性ロール又はローラーにも関する。
【0023】
本発明は、基材及びシリコーン硬化物層を備える積層体において、
前記基材及び前記シリコーン硬化物層の間に上記縮合反応硬化性プライマー用組成物の硬化物からなるプライマー層を設けることを特徴とする積層体の帯電防止乃至低減方法にも関する。
【発明の効果】
【0024】
本発明のプライマー用組成物又は当該組成物からなるプライマー層は基材とシリコーン硬化物との密着性又は接着性を高めることができるので、当該プライマー層を介して基材とシリコーン硬化物を良好に一体化することができる。そして、本発明のプライマー用組成物又は当該組成物からなるプライマー層は基材とシリコーン硬化物との密着性を阻害することなく、当該シリコーン硬化物からなる硬化層に優れた帯電防止乃至低減特性を付与することができる。
【0025】
本発明では、プライマー用組成物又は当該組成物からなるプライマー層が帯電防止剤として(a)リチウム塩及び(b)ポリエーテル変性ポリシロキサンを含むにもかかわらず、プライマー層上に形成されたシリコーン硬化物(シリコーン硬化層)に優れた帯電防止乃至低減特性が付与される。
【0026】
本発明のプライマー用組成物又は当該組成物からなるプライマー層は、シリコーン硬化物の硬化性に悪影響を与えない。したがって、本発明の積層体におけるシリコーン硬化物は、その硬化性や離型性等の有利な表面特性が損なわれることなく、基材と強固に一体化される。
【0027】
そして、本発明の積層体はシリコーン硬化物の帯電防止乃至帯電低減特性に優れている。例えば、本発明の積層体は静電気により微細な塵や埃を吸引する性質が殆どない。したがって、本発明の積層体は帯電が好ましくない用途に好適に使用することができる。
【0028】
本発明の帯電防止乃至低減方法は、基材とシリコーン硬化物とを備える積層体に良好な帯電防止乃至低減特性を付与することができる。また、本発明の帯電防止乃至低減方法では、シリコーン硬化物と基材とを強固に一体化することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明は、(a)リチウム塩及び(b)ポリエーテル変性ポリシロキサンを含む縮合反応硬化性プライマー用組成物を用いることを特徴とする。以下、詳細に説明する。
【0030】
本発明において、(a)リチウム塩とは、リチウムの正イオンと任意の負イオンがイオン結合した塩を意味する。リチウム塩の種類は特に限定されるものではないが、LiBF 、LiClO 、LiPF 、LiAsF、LiSbF 、LiSOCF、LiN(SOCF 、LiSO 、LiC(SOCF、及び、LiB(C等が挙げられる。これらは単独でもよく、又は、2種類以上を併用してもよい。
【0031】
リチウム塩は有機溶媒又は液状有機高分子に溶解させた溶液の形態であってもよい。
【0032】
リチウム塩を溶解させる有機溶媒としては、リチウム塩の溶解性が高い極性溶媒が好ましく、例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、1−ブタノン、シクロヘキサノン等のケトン系、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系等が挙げられる。また、エステル系では、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソブチル等の酢酸エステル類や、マロン酸エステル類、コハク酸エステル類、グルタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、フタル酸エステル類等も好ましい。特に、これらの有機溶媒の置換基としてアルキレンオキサイド基、好ましくはエチレンオキサイド基(−CHCHO−)を含むものは比較的極性が高く、リチウム塩の溶解性が高いために特に好ましい。
【0033】
一方、リチウム塩を溶解させる液状有機高分子としては、比較的分子量が低く有機高分子自体が液体であるならば、液状有機高分子をそのまま用いてもよいし、液体又は固体の有機高分子を有機高分子を構成する単量体又は有機溶媒で溶解した溶液として用いてもよい。
【0034】
上記有機高分子の例としては、単量体を重合、縮合、縮重合させたものならば特に限定されず、ポリエステル、ポリエーテル、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリレート、ポリフォスファゼン、ポリビニルアルコール等が例示される。
【0035】
有機高分子を溶解する有機溶媒としては、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系、n−ヘキサン、リグロイン、ケロシン、ミネラルスピリット等の脂肪族炭化水素系、シクロヘキサン、デカヒドロナフタレン等の脂環式炭化水素系、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、イソブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、アミルアルコール、ヘキシルアルコール等のアルコール系、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、1,4−ジオキサン等のエーテル系、ジエチルカーボネート、ジプロピルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸イソブチル等の酢酸エステル類や、マロン酸エステル類、コハク酸エステル類、グルタル酸エステル類、アジピン酸エステル類、フタル酸エステル類等のエステル系の溶媒が例示される。
【0036】
一方、有機高分子を構成する単量体で有機高分子を溶解する場合は、溶解させようとする該高分子を構成する単量体を用いることが好ましく、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、カテコール等のアルコール類、エチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソフォロンジアミン等のアミン類、アジピン酸、フタル酸等のカルボン酸類、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート等のイソシアネート類、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等のアルキレンオキサイド類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のアルキレンカーボネート類、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート類、N−ビニルピロリドン、γ−カプロラクトン、ε−カプロラクタム、酢酸ビニル等が例示される。
【0037】
また、液状有機高分子はリチウム塩の溶解性を高めるために、これを構成する有機高分子、有機溶媒、単量体のいずれか又は全てに、置換基としてアルキレンオキサイド基、好ましくはエチレンオキサイド基(−CHCHO−)が含まれることが好ましい。
【0038】
(a)リチウム塩の添加量は特に限定されるものではないが、縮合反応硬化性プライマー用組成物の固形分100重量(質量)部に対し0.05〜200重量(質量)部、好ましくは0.1〜100重量(質量)部、更に好ましくは0.3〜60重量(質量)部の範囲とすることができる。0.1重量(質量)部未満ではリチウムイオン濃度が低すぎて帯電防止性が不十分となる恐れがあり、200重量(質量)部を超えるとリチウム塩が空気中の水分を吸収して潮解して帯電防止性が不十分となる恐れがある。なお、特に断りがない限り、「縮合反応硬化性プライマー用組成物の固形分」とは、縮合反応により得られる固形のプライマー層を形成する、(a)成分及び後述する(b)〜(e)成分、並びに、不揮発性の任意成分の和を意味するものであり、固形分を形成しない(f)溶媒を含まないものである。
【0039】
(b)ポリエーテル変性ポリシロキサンは、(a)リチウム塩と併用することにより、本発明の縮合反応硬化型プライマー用組成物に優れた帯電防止乃至低減特性を付与し、かつ、シリコーン硬化物との密着性及び硬化性に悪影響を及ぼさないものである。その種類は特には限定されないが、水酸基を有するポリエーテル変性ポリシロキサンであることが好ましく、特に、末端水酸基を有するポリエーテル変性ポリシロキサンが好ましい。
【0040】
(b)ポリエーテル変性ポリシロキサンは、下記一般式(1):

YO−(RSiO)−(RXSiO)−(RSiO)−Y (1)

{式中、
、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は一価炭化水素基を表し、
Xは、−R−(OR−(OR−OH(R、R及びRは、それぞれ独立して、二価炭化水素基を表し、
a及びbは、a≧0、b≧0を満たす整数である)を表し、
及びYは、それぞれ独立して、X、水素原子又は一価炭化水素基を表し、
x、y及びzは、x≧0、y≧0、z≧0、及び、x+y+z≧1を満たす整数であり、
但し、y=0のとき、Y及Yの少なくとも一方はXである}で表される末端水酸基を有するポリエーテル変性ポリシロキサンが好ましい。
【0041】
例えば、a及びbは、それぞれ独立して、0〜1000の整数であることができ、0〜100が好ましく、0〜50がより好ましい。
【0042】
例えば、x及びはzは、それぞれ独立して、1〜100000の整数であることができ、1〜10000が好ましく、1〜1000がより好ましい。一方、yは0〜100000の整数であることができ、0〜10000が好ましく、0〜1000がより好ましい。但し、y=0のとき、Y及びYの少なくとも一方はXである。
【0043】
一価炭化水素基としては、炭素原子数1〜30の、置換若しくは非置換の、直鎖状若しくは分岐状の一価炭化水素基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の炭素原子数1〜30の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素原子数3〜30のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、ブテニル基等の炭素数2〜30のアルケニル基;フェニル基、トリル基等の炭素原子数6〜30のアリール基;ベンジル基等の炭素数7〜30のアラルキル基;及び、これらの基の炭素原子に結合した水素原子が少なくとも部分的にフッ素等のハロゲン原子、又は、水酸基、エポキシ基、グリシジル基、アシル基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、アミド基、(メタ)アクリル基、水酸基、メルカプト基、イソシアナート基等を含む有機基で置換された基(但し、総炭素原子数は1〜30)が挙げられる。直鎖状の炭素原子数1〜6のアルキル基又はフェニル基が好ましく、メチル基又はエチル基、フェニル基が更に好ましい。
【0044】
二価炭化水素基としては、例えば、置換又は非置換の、及び、直鎖状又は分岐状の二価炭化水素基が挙げられる。具体的には、メチレン基、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基等の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基;ビニレン基、アリレン基、ブテニレン基、ヘキセニレン基、オクテニレン基等のアルケニレン基;フェニレン基、ジフェニレン基等のアリーレン基;ジメチレンフェニレン基等のアルキレンアリーレン基;及び、これらの基の炭素原子に結合した水素原子が少なくとも部分的にフッ素等のハロゲン原子、又は、、水酸基、エポキシ基、グリシジル基、アシル基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、アミド基、(メタ)アクリル基、水酸基、メルカプト基、イソシアナート基等を含む有機基で置換された基が例示される。
【0045】
二価炭化水素基の炭素数は特に限定されるものではないが、1〜30が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜10が更により好ましい。R及びRとしては、直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキレン基が好ましく、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基が特に好ましい。なお、RとRは異なる種類の二価炭化水素基であることが好ましい。
【0046】
(b)ポリエーテル変性ポリシロキサンの添加量は特に限定されるものではないが、縮合反応硬化性プライマー用組成物の固形分100重量(質量)部に対し0.05〜200重量(質量)部、好ましくは0.1〜100重量(質量)部、更に好ましくは0.3〜60重量(質量)部の範囲とすることができる。0.1重量(質量)部未満又は200重量(質量)部超では帯電防止性が不十分となる恐れがある。
【0047】
本発明の縮合反応硬化性プライマー用組成物は、(c)イソシアナート基含有化合物を更に含有することが好ましく、これにより、シリコーン硬化物に対するプライマー効果及びプライマー層の硬化性を向上させることができる。(c)イソシアナート基含有化合物は、分子中に少なくとも1つのイソシアナート基を有する化合物であれば、その種類は限定されるものではないが、例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4´−ジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、リジンメチルエステルジイソシアネート、メチルシクロヘキシルジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(シクロヘキシルイソシアナート)、ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、1,6,11−ウンデカントリイソシアナート、n−ペンタン−1,4−ジイソシアネート、これらの三量体、これらのイソシアヌレート体又はビウレット体、これらの重合体で2個以上のイソシアネート基を有するもの、更にブロック化されたイソシアネート類等があげられる。
【0048】
(c)イソシアナート基含有化合物としては、下記一般式(3)又は(4):
【化1】

(式中、R及びRは、それぞれ独立して、二価炭化水素基を表す)で表されるイソシアヌレート体又はビウレット体が好ましい。なお、二価炭化水素基の定義及び例示は上記のとおりである。
【0049】
(c)イソシアナート基含有化合物としては、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体がより好ましい。
【0050】
(c)イソシアナート基含有化合物の添加量は特に限定されるものではないが、縮合反応硬化性プライマー用組成物の固形分100重量(質量)部に対し0.01〜70重量(質量)部、好ましくは0.03〜40重量(質量)部、更に好ましくは0.10〜20重量(質量)部の範囲とすることができる。0.03重量(質量)部未満又は70重量(質量)部超では、プライマー層の硬化性、帯電防止性及びシリコーン硬化物に対するプライマー効果が十分に改善できない場合がある。
【0051】
本発明のプライマー用組成物は縮合反応硬化性であり、(a)リチウム塩及び(b)ポリエーテル変性ポリシロキサンを含有する場合、硬化後のプライマー層を介してシリコーン硬化物と基材を良好に一体化することができ、且つ、プライマー層上に形成されたシリコーン硬化物の硬化性及び密着性を損なうことなく、優れた帯電防止乃至減少効果をシリコーン硬化物に与えることができる。本発明のプライマー用組成物としては、縮合反応硬化性のプライマー用組成物であれば、シリコーン系又は非シリコーン系のいずれであっても用いることができるが、特に、(b)成分との相溶性及びシリコーン硬化物との密着性の向上の観点から、縮合反応硬化性のシリコーン系プライマー用組成物であることが好ましい。
【0052】
縮合反応硬化性のシリコーン系プライマー用組成物は、(d)反応性官能基を有する1種又は2種以上のシラン化合物、及び、(e)有機アルミニウム化合物、有機チタン酸エステル化合物、及び、白金系化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物を更に含むことが好ましい。これらの成分を縮合反応により硬化させてなるプライマー層は、シリコーン硬化物との密着性に特に優れ、且つ、(a)リチウム塩及び(b)ポリエーテル変性ポリシロキサンが、プライマー層中に均一に相溶することができ、その硬化性及び帯電防止乃至減少効果に特に優れるものである。
【0053】
(d)反応性官能基を有するシラン化合物は、縮合反応硬化性のシリコーン系プライマー用組成物の主剤であり、一分子中に少なくとも1つの反応性官能基を有する限り特に限定されるものではないが、下記一般式(2):

Si(OR104−c (2)

(式中、
は、それぞれ独立して、反応性官能基を表し、
10は、それぞれ独立して、一価炭化水素基を表し、
cは、1〜3の整数である)で表されるものが好ましい。
【0054】
本発明において、反応性官能基(R)とは、ビニル基、アリル基、ブテニル基等のアルケニル基、並びに、水酸基、エポキシ基、グリシジル基、アシル基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、アミド基、(メタ)アクリル基、水酸基、メルカプト基、イソシアナート基等の反応性を有する官能基又は該官能基を有する一価有機基を意味する。前記一価有機基に存在する官能基は1つであっても、複数であってもよい。好ましいRは、上記の官能基を少なくとも1つ有する一価飽和若しくは芳香族炭化水素基である。反応性官能基としては、具体的には、3−ヒドロキシプロピル基、3−(2−ヒドロキシエトキシ)プロピル基、3−メルカプトプロピル基、2,3−エポキシプロピル基、3,4−エポキシブチル基、4,5−エポキシペンチル基、2−グリシドキシエチル基、3−グリシドキシプロピル基、4−グリシドキシブチル基、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロピル基、アミノプロピル基、N−メチルアミノプロピル基、N−ブチルアミノプロピル基、N,N−ジブチルアミノプロピル基、3−(2−アミノエトキシ)プロピル基、3−(2−アミノエチルアミノ)プロピル基、3−カルボキシプロピル基、10−カルボキシデシル基、3−イソシアネートプロピル基等を挙げることができる。
【0055】
10は、一価炭化水素基であり、上記の反応性官能基を有しない、炭素原子数1〜30の、置換若しくは非置換の、直鎖状若しくは分岐状の一価炭化水素基が好ましく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基等の炭素原子数1〜30の直鎖状若しくは分岐鎖状のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素原子数3〜30のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等の炭素原子数6〜30のアリール基;ベンジル基等の炭素数7〜30のアラルキル基;及び、これらの基の炭素原子に結合した水素原子が少なくとも部分的にフッ素等のハロゲン原子で置換された基(但し、総炭素原子数は1〜30)が挙げられる。直鎖状の炭素原子数1〜6のアルキル基又はフェニル基が好ましく、メチル基又はエチル基、フェニル基が更に好ましい。また、(OR10)で示される基は、特に好適には、炭素数1〜12のアルコキシ基であることが好ましく、アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等が挙げられる。
【0056】
一般式(2)で表されるシラン化合物としては、例えば、アルケニルトリアルコキシシランが挙げられる。アルケニルトリアルコキシシランとしては、例えば、アリルトリメトキシシラン,アリルトリエトキシシラン、アリルトリ(エトキシメトキシ)シラン、ブテニルトリメトキシシラン、ヘキセニルトリメトキシシラン、ヘキセニルトリエトキシシラン及びこれらのオルガノアルコキシシランの1種又は2種以上の部分加水分解縮合物が挙げられる。これらの中でもアリルトリメトキシシランが好ましい。
【0057】
一方、一般式(2)で表されるシラン化合物として、例えば、γ−メタクリロキシ基含有オルガノアルコキシシラン、エポキシ基含有オルガノアルコキシシラン、ビニル基含有オルガノアルコキシシラン、ビニル基含有アセトキシシラン等も挙げることができる。このうち、γ−メタクリロキシ基含有オルガノアルコキシシランとしては、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシランが例示され、エポキシ基含有オルガノシランとしては、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−エチルトリメトキシシランが例示され、ビニル基含有オルガノアルコキシシランとしては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルメチルジメトキシシランが例示される。
【0058】
(e)有機アルミニウム化合物、有機チタン酸エステル化合物、及び、白金系化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物は、(d)成分の縮合反応触媒として機能する成分であり、また、シリコーン硬化物との密着性を向上させる成分である。
【0059】
有機アルミニウム化合物としては、(CHO)Al、(CO)Al、(n−CAl等のアルミニウムアルコラート;ナフテン酸、ステアリン酸、オクチル酸、安息香酸等のアルミニウム塩;アルミニウムアルコラートにアセト酢酸エステル又はジアルキルマロネートを反応させて得られるアルミニウムキレート;アルミニウムオキサイドの有機酸塩,アルミニウムアセチルアセトネート等が挙げられる。これらの中でも、アルミニウムキレートが好ましく、具体例としては、アルミニウムトリス(アセチルアセトネート)、アルミニウムモノアセチルアセトネートビス(エチルアセトアセテート)、アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし2種以上を併用することもできる。
【0060】
有機チタン酸エステル類としては、例えば、有機チタン酸エステル、チタンのキレート化合物、チタンのケイ酸エステルによるキレート化合物、これら部分加水分解縮合物等が挙げられる。このような化合物としてはテトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラ(2−エチルヘキシル)チタネート、ジエトキシチタンビス(アセチルアセトネート)、チタンジアセチルアセトネート、チタンジアセチルアセテート、チタンオクチルグリコートチタンラクテート、チタンラクテートエチルエステル、チタントリエタノールアミネート及びこれらの部分加水分解縮合物が例示される。これらは単独で使用してもよいし2種以上を併用することもできる。
【0061】
白金系化合物としては、例えば、塩化白金酸、アルコール変性塩化白金酸、白金とジケトンの錯体、白金オレフィン錯体、塩化白金酸とアルケニルシロキサンの錯体等が例示される。これらの中でも白金オレフィン錯体及び塩化白金酸とアルケニルシロキサン(ジビニルテトラメチルジシロキサン等)の錯体がヒドロシリル化反応用には好ましく、特に塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンの錯体化合物が好ましい。
【0062】
(d)成分と(e)成分の配合量は特に限定されるものではないが、(d)成分100重量(質量)部に対して(e)成分1〜1000重量(質量)部が好ましく、5〜500重量(質量)部がより好ましく、10〜200重量(質量)部が更により好ましい。
【0063】
本発明のプライマー用組成物は(f)溶剤を含んでもよい。(f)溶剤は、本発明のプライマー用組成物をプライマー塗布作業に適した粘度に調節するために使用されるものであり、上記(a)成分〜(b)成分、上記(a)成分〜(c)成分、或いは、上記(a)〜(e)成分を溶解するものであればよく、その種類等は特に限定されない。かかる溶剤としては、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系炭化水素;トリクロロエチレン、パークロロエチレン、トリフルオロメチルベンゼン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、メチルペンタフルオロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等の非シリコーン系溶剤;ヘキサメチルシクロトリシロキサン、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン等のシリコーン系溶剤が例示される。(f)溶剤の配合量は任意であり、好ましくはプライマー用組成物の10〜99.9重量(質量)%である。
【0064】
本発明のプライマー用組成物は、上記成分に加えてプライマー用組成物の性能向上のための各種の添加剤を含むことができる。このような添加剤としては、例えば、平均単位式:

11SiO{(4−d−e)/2}

(式中、
11は一価価炭化水素基であり、
dは平均0≦d≦3、eは平均1≦e≦3であり、ただし1≦d+e≦3である)で表され、25℃における粘度が1〜10,000センチストークスのオルガノハイドロジェンポリシロキサン;
2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、ビニルトリス(t−ブチルパーオキシ)シラン、トリメチル(t−ブチルパーオキシ)シラン等の有機過酸化物;
平均単位式:

12SiO{(4−f)/2}

(式中、
12は一価価炭化水素基を表し、但し、R12の少なくとも0.2モル%はアルケニル基であり、
fは1.9〜2.3の数である)で表され、25℃における粘度が5,000センチストークス以上であるジオルガノポリシロキサン;
平均単位式:
13Si(OZ)4-g
(式中、
13は、各々独立に、炭素原子数の一価炭化水素基であり、
Zは、各々独立に、水素原子、アルキル基、アリール基、アラルキル基、又は、−R″−OR13基(R″はアルキレン基である)であり、
gは0〜3の値を有する)で表わされるシリケート及びシラン;
微粉末シリカ等の無機充填剤;
セリウムの脂肪酸塩、鉄の脂肪酸塩、酸化チタン、カーボンブラック等の耐熱性向上剤又は顔料
等が挙げられる。一価炭化水素基の定義及び例示は上記のとおりである。なお、上記のシラン類のうち、アルキルトリアルコキシシラン、ジアルキルジアルコキシシラン、トリアルキルアルコキシシラン等の(d)成分以外の加水分解性シラン類を、必要に応じて本発明の縮合反応硬化性プライマー用組成物に配合することは、本発明の好適な実施形態に内包される。
【0065】
本発明の縮合反応硬化性プライマー用組成物は、上記成分をミキサー等の機械力を用いて均一に混合することによって製造することができる。
【0066】
本発明の縮合反応硬化性プライマー用組成物は、硬化することによって、各種基材とシリコーン硬化物とを一体化することができる。したがって、本発明は、基材及び上記プライマー用組成物の硬化物を備える積層体、並びに、基材、上記プライマー用組成物の硬化物からなるプライマー層、及び、シリコーン硬化物層を備えており、前記基材上に前記プライマー層が存在し、且つ、前記プライマー層上に前記シリコーン硬化物層が存在する積層体にも関する。
【0067】
前記積層体は、本発明の縮合反応硬化性プライマー用組成物を基材に塗布後30分以上風乾を行い、或いは、例えば50〜110℃の温度条件下で加熱処理を行うことにより、プライマー層を形成してから、硬化性シリコーン組成物を塗布して加熱等によりシリコーン硬化物層を形成することにより製造することができる。塗布方法としては、特に限定されるものではなく、スプレー、ハケ塗り、浸漬等の既知の手法を採用することができる。
【0068】
硬化性シリコーン組成物としては、その硬化システムに特に限定なく使用することができ、付加反応硬化系、有機過酸化物を含むラジカル反応硬化系、高エネルギー線硬化系、縮合反応硬化系等の硬化性シリコーン組成物が挙げられるが、特に、ジオルガノポリシロキサン生ゴムと有機過酸化物を含むラジカル反応硬化性シリコーン組成物、アルケニル基含有ジオルガノポリシロキサンとオルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金系触媒を含む付加反応硬化性シリコーン組成物が好適に用いられる。特に、本発明のプライマー層上に形成される離型性(剥離性)シリコーン硬化層は、白金系触媒を用いて硬化される、付加反応硬化性シリコーン組成物の硬化物であることが好ましい。
【0069】
付加反応硬化性シリコーン組成物は、例えば、
(A)1分子中にケイ素原子に結合したアルケニル基を少なくとも2個以上有するオルガノポリシロキサン、
(B)1分子中にケイ素原子に結合した水素原子を少なくとも2個以上有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)ヒドロシリル化反応用白金系触媒
を含む。
【0070】
成分(A)の分子構造は、直鎖状が一般的であるが、分岐鎖状であってもよい。成分(A)のケイ素原子結合アルケニル基は、好ましくは炭素原子数2〜10のアルケニル基であり、ビニル基、アリル基、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基が例示される。好ましくは、ビニル基であり、ついでアリル基、ヘキセニル基である。分子中のアルケニル基の含有量は、1分子中でケイ素原子に結合する全有機基の0.003〜20.0モル%であることが好ましく、0.005〜10.0モル%がより好ましい。特に好適な範囲は0.01〜5.0モル%の範囲である。アルケニル基の含有量が前記下限未満では実用に足る硬化速度が得られない場合があり、前記上限を超えると硬化皮膜の剥離力が大きくなり過ぎる場合がある。アルケニル基は、分子鎖末端のケイ素原子に結合している場合、側鎖のケイ素原子に結合している場合、分子鎖末端のケイ素原子と側鎖のケイ素原子の両方に結合している場合があり得る。
【0071】
成分(A)中の、ケイ素原子に結合したアルケニル基以外の有機基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等のアルキル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基;ベンジル基、フェネチル基等のアラルキル基;3−クロロプロピル基、式CF2m+1CHCH−(ただし、mは1〜10の整数である)で表されるパーフルオロアルキル基(例えば、3,3,3−トリフルオロプロピル基、ペンタフルオロブチル基)等のハロゲン化アルキル基;式F[CF(CF)CFO]CF(CF)CFOCHCHCH−、F[CF(CF)CFO]CF(CF)CHOCHCHCH−、F[CF(CF)CFO]CFCFCHCH−、F[CF(CF)CFO]CF(CF)CHCH−、C2m+1CHCHOCHCHCH−、C2m+1CHOCHCHCH−(ただし、nは1〜5の整数、mは3〜10の整数である)で表されるパーフルオロエーテル化アルキル基;シアノエチル基が例示されるが、合成の容易性や硬化皮膜特性の点で、好ましくはアルキル基、フェニル基又はパーフルオロアルキル基(ただし、50モル%以上がメチル基)である。アルケニル基以外のすべての有機基がメチル基であることがより好ましい。
【0072】
成分(A)としては、具体的には、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルポリシロキサン、分子鎖両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルエトキシシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルビニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルフェニルシロキサン共重合体、分子鎖両末端ジメチルビニルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチル(3,3,3−トリフルオロプロピル)シロキサン共重合体が例示される。
【0073】
成分(A)は、常温で液状でも生ゴム状でもよいが、無溶剤型組成物用には液状であることが好ましく、その粘度は、50〜50,000mPa・sが好ましく、50〜20,000mPa・sがより好ましい。常温で生ゴム状の場合は、後述するように、キシレン、トルエン等の有機溶剤に溶解することが好ましい。
【0074】
成分(A)は付加反応硬化性シリコーン組成物の主剤であり、その配合量は、例えば、組成物の固形分全体に対して60.0〜99.5重量(質量)%とすることができ、70.0〜99.0重量(質量)%が好ましい。成分(B)はヒドロシリル化反応により成分(A)を架橋する架橋剤であり、その配合量は、例えば、組成物全体の0.5〜40.0重量(質量)%とすることができる。なお、「組成物の固形分全体に対して」とは、付加反応硬化性シリコーン組成物の硬化物を形成する(A)成分、(B)成分及び不揮発性の任意成分の和であり、有機溶剤を含まない成分の全体重量(質量)を100重量(質量)%とした場合の、各成分の含有量(重量(質量)%)で示される配合量を意味する。
【0075】
成分(B)は、25℃における粘度が1〜1,000mPa・sであり、かつ、1分子中に少なくとも2個のケイ素原子結合水素原子を有し、ケイ素原子結合有機基が炭素原子数1〜8のアルキル基又はフェニル基であるオルガノハイドロジェンポリシロキサンが好ましい。また、成分(A)との架橋反応のため、分子中に2個以上のケイ素原子結合水素原子を有することが必要であり、1分子中に3個以上のケイ素原子結合水素原子を有することが好ましい。
【0076】
成分(B)におけるケイ素原子結合水素原子の結合位置は特に限定されず、分子鎖末端、側鎖、これら両方が例示される。ケイ素原子結合水素原子の含有量は0.001〜1.7重量(質量)%であることが好ましく、00.005〜1.7重量(質量)%であることがより好ましい。
【0077】
成分(B)のケイ素原子に結合する有機基として、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、オクチル基等の炭素原子数1〜8のアルキル基とフェニル基が挙げられるが、それらの合計数の50%以上が炭素原子数1〜8のアルキル基であることが好ましい。かかるアルキル基のうちでは、硬化被膜特性と製造容易性の点でメチル基が好ましい。なお、成分(B)の分子構造としては、直鎖状、分岐鎖状、分岐状、環状が例示される。
【0078】
成分(B)の25℃における粘度は1〜1,000mPa・sが好ましく、5〜500mPa・sがより好ましい。25℃における粘度が前記下限未満であると、成分(B)がシリコーン組成物中から揮発し易くなり、また、前記上限を超えると、シリコーン組成物の硬化時間が長くなる場合がある他、付加反応硬化性シリコーン組成物が全体として高粘度になるため好ましくない。
【0079】
成分(B)としては、具体的には、両末端トリメチルシロキシ基封鎖メチルハイドロジェンポリシロキサン、両末端トリメチルシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、両末端ジメチルハイドロジェンシロキシ基封鎖ジメチルシロキサン・メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、環状メチルハイドロジェンポリシロキサン、環状メチルハイドロジェンシロキサン・ジメチルシロキサン共重合体、トリス(ジメチルハイドロジェンシロキシ)メチルシラン、テトラ(ジメチルハイドロジェンシロキシ)シランが例示される。
【0080】
成分(A)と成分(B)の配合比率は、[成分(B)中のケイ素原子結合水素原子]と[成分(A)中のアルケニル基]のモル比が0.3〜10.0となる量が好ましい。このモル比が0.3より小さいと、硬化皮膜が弱くなる恐れがある。このモル比が10.0より大きいと粘着性物質に対する剥離性が低下し、硬化皮膜同士がブロッキングしやすくなる恐れがある。また、剥離力の経時変化が大きくなり、実用性が損なわれる場合がある。こうした観点から、前記モル比が0.7〜5.0となる量がより好ましい。
【0081】
成分(C)は、成分(A)と成分(B)のヒドロシリル化反応による架橋、硬化を促進させる。成分(C)として、具体的には、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、塩化白金酸のアルデヒド溶液、塩化白金酸のオレフィン錯体、塩化白金酸とジケトン類との錯体;塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体、塩化白金酸とテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンとの錯体、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン錯体等の白金アルケニルシロキサン錯体;四塩化白金、白金微粉末、アルミナ微粒子又はシリカ微粒子に微粉末状白金を担持させたもの、白金黒、白金オレフィン錯体、白金ジケトン錯体、白金カルボニル錯体が例示される。
【0082】
成分(A)及び成分(B)との相溶性、有機溶剤への溶解性、硬化反応の促進能の点で、成分(C)としては、塩化白金酸、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体、塩化白金酸とテトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサンとの錯体、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金テトラメチルテトラビニルシクロテトラシロキサン錯体等の白金アルケニルシロキサン錯体が特に好ましい。
【0083】
成分(C)の配合量は触媒量、すなわち、シリコーン組成物を硬化させるのに十分な量であるが、該組成物の硬化性、基材への密着性、経済性を勘案すると、成分(A)と成分(B)の合計100重量(質量)部当り白金金属量で5〜1000ppmの範囲が好ましく、10〜500ppmの範囲がより好ましい。
【0084】
付加反応硬化性シリコーン組成物は、上記成分以外に、常温下でのゲル化、硬化を抑制して保存安定性を向上させ、加熱硬化性とするために、ヒドロシリル化反応抑制剤を含有することが好ましい。ヒドロシリル化反応抑制剤として、アセチレン系化合物、エンイン化合物、有機窒素化合物、有機燐化合物、オキシム化合物が例示され、具体的には、3−メチル−1−ブチン−3−オール(=メチルブチノール)、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−オール、3−メチル−1−ペンテン−3−オール、フェニルブチノール等のアルキニルアルコール;3−メチル−3−ペンテン−1−イン、3,5−ジメチル−1−ヘキシン−3−イン、1−エチニル−1−シクロヘキサノール、ベンゾトリアゾール、メチルビニルシクロシロキサン等が例示される。この付加反応抑制剤の配合量は、通常、上記成分(A)〜成分(C)の合計量を100重量(質量)部として、0.001〜5重量(質量)部の範囲内であるが、本成分の種類、ヒドロシリル化反応用白金系触媒の性能と含有量、成分(A)中のアルケニル基量、成分(B)中のケイ素原子結合水素原子量に応じて適宜選定するとよい。
【0085】
硬化性シリコーン組成物は、必要に応じて有機溶剤を含むことができる。有機溶剤としては、具体的には、トルエン、キシレン等の芳香族系炭化水素;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族系炭化水素;トリクロロエチレン、パークロロエチレン、トリフルオロメチルベンゼン、1,3−ビス(トリフルオロメチル)ベンゼン、メチルペンタフルオロベンゼン等のハロゲン化炭化水素;酢酸エチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンが例示される。これらのうちでは、溶解性と安全性と経済性の点からトルエン、キシレン、n−ヘキサンが好ましい。
【0086】
硬化性シリコーン組成物には、必要に応じて、その他の任意成分を添加することができる。例えば、安定剤、耐熱向上剤、充填剤、顔料、レベリング剤、剥離コントロール剤(重剥離添加剤又は軽剥離添加剤)、ミスト防止剤、基材への密着性向上剤、帯電防止剤、消泡剤、非反応性オルガノポリシロキサン等を添加してもよい。また、生産工程における本組成物の塗工プロセスに応じ、所望の塗膜の厚さを実現するために、シリカ微粉末等の公知の増粘剤を更に配合することもできる。更に、所望により、前記の(a)リチウム塩及び(b)ポリエーテル変性ポリシロキサンを、プライマー層だけでなく、硬化性シリコーン組成物に添加することができる。また、所望により、これらの(a)成分及び(b)成分に加えて、(c)イソシアナート基含有化合物を、硬化性シリコーン組成物に添加することができる。すなわち、基材上に形成されたプライマー層だけでなく、硬化性シリコーン組成物の硬化物からなるシリコーン硬化物層も、(a)リチウム塩及び(b)ポリエーテル変性ポリシロキサンを含有していてもよい。
【0087】
硬化性シリコーン組成物の全体の粘度は、基材へのコーテイング性の点で、無溶剤型では25℃における粘度が50〜5,000mPa・sの範囲にあることが好ましく、溶剤型では25℃における粘度が0.5〜50,000mPa・sの範囲にあることが好ましい。
【0088】
硬化性シリコーン組成物は、前記各成分を均一に混合することにより容易に製造することができる。各成分の配合順序は特に制限されるものではないが、混合後、直ちに使用しないときは、例えば、成分(A)、成分(B)、成分(C)を別々に保存しておき、使用直前にそれぞれを混合することが好ましい。
【0089】
プライマー層上での硬化性シリコーン組成物の硬化温度は、一般に50〜200℃が適切であるが、シート状基材の耐熱性が良好であれば200℃以上でもよい。加熱方法は特に限定されるものではなく、熱風循環式オーブン中での加熱、長尺の加熱炉への通過、赤外線ランプやハロゲンランプによる熱線輻射が例示される。また、加熱と紫外線照射を併用して硬化させてもよい。シリコーン組成物の硬化は、50〜200℃で行うことが好ましく、この場合加熱時間が1秒〜5分とすることができる。
【0090】
本発明のプライマー用組成物は、鉄、ステンレススチール、アルミニウム、ニッケル、亜鉛、銅等の各種金属:アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、アルカリ処理されたフッ素樹脂等の各種樹脂;ガラス、セラミック等の各種無機材料からなる基材にシリコーン硬化物を強固に接着させることができる。特に、シリコーン硬化物を接着させることが困難とされていた表面活性の低い基材、例えば、ステンレススチール、ニッケル、ポリカーボネート、ポリブチレンテレフタレート、アルカリ処理されたフッ素樹脂等の基材に適用した場合にはシリコーン硬化物とこれらの基材とを強固に接着させ一体化させることができる。
【0091】
したがって、本発明のプライマー用組成物は、このような特徴を生かして、例えば、シリコーン離型層(剥離層)を備えた、剥離フィルム、剥離紙、剥離シート、粘着テープ、粘着フィルム、粘着物の包装体等の製品である積層体の製造に有用であるほか、複写機のロールの芯金とシリコーン硬化物層の接着、オイルシールのハウジングとシリコーン硬化物層の接着、その他の金属又は樹脂製基材にシリコーン硬化物層を強固に接着するためのプライマー層として有効に使用することができる。
【0092】
そして、本発明では、シリコーン硬化物層中に帯電防止剤を配合しなくても、プライマー層中のリチウム塩の作用により、シリコーン硬化物表面の帯電を防止乃至低減することができる。
【0093】
したがって、本発明は、基材及びシリコーン硬化物層を備える積層体において、前記基材及び前記シリコーン硬化物層の間に本発明のプライマー用組成物の硬化物からなるプライマー層を設けることを特徴とする、積層体の帯電防止乃至低減方法としての側面をも有する。しかも、上記方法では、前記基材とシリコーン硬化物層との密着性を阻害することがない。
【産業上の利用可能性】
【0094】
本発明のプライマー用組成物は、基材の材質によらず当該基材とシリコーン硬化物とを強固に接着させるためだけでなく、シリコーン硬化物に帯電防止乃至帯電低減特性を付与するための下塗り材として使用することができる。
【0095】
本発明の積層体は、シリコーン硬化物層が離型性を有する場合は離型性を備えるフィルム又はシート(剥離紙、剥離テープ等)、或いは、ロール又はローラー(搬送用・トナー定着用ゴムロール等)の部材として使用することができ、一方、シリコーン硬化物層が粘着性を有する場合は粘着性を備えるフィルム又はシート(粘着テープ等)、或いは、ロール又はローラー(清掃用ロール等)の部材として使用することができる。
【0096】
本発明の積層体は、静電気の帯電が低減されており、塵や埃の静電的な吸着が抑制される。したがって、本発明の積層体は、例えば、クリーンな環境が求められる半導体、ディスプレイ、タッチパネル、複写機器、プリンター等の分野で好適に使用することができる。
【実施例】
【0097】
以下、本発明を実施例により詳細に説明するが、本発明は実施例に限定されるものではない。なお、以下において、「部」は重量(質量)部を表す。
【0098】
[実施例1]
(d1)グリシドキシプロピルトリメトキシシラン 10.0部、(d2)γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン 10.0部、(e1)アルミニウムビスエチルアセトアセテートモノアセチルアセトネート 5.0部、(b1)末端水酸基封鎖ポリエーテル変性シリコーンと(a1)リチウム塩と(f1)メチルエチルケトンの混合物である「デノンRH−10」(丸菱油化工業(株)製)10.0部、(c1)ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体である「コロネートHX」(日本ポリウレタン工業(株)製)3.0部、(f1)メチルエチルケトン 750部、(f2)トルエン 750部を混合し、プライマー組成物Iを調製した。これを乾燥後の塗工量が0.08g/mとなるように、厚さ38ミクロンのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上へ塗工し、100℃に熱した熱風循環式オーブンにて10秒間乾燥し、プライマー塗工フィルムIを得た。
【0099】
その後、付加硬化性シリコーン剥離剤「SD7226」(東レ・ダウコーニング(株)製)100部、メチルエチルケトン 450部、トルエン 450部、付加反応白金触媒「SRX212」(東レ・ダウコーニング(株)製)1.5部からなる塗工浴を調製し、乾燥後の塗工量が約0.15g/mとなるようプライマー塗工フィルムI上に塗工し、130℃に熱した熱風循環式オーブンにて30秒間処理することで、プラスチックフィルムの表面にシリコーン硬化皮膜を有する積層体Iを得た。
【0100】
[比較例1]
「デノンRH−10」及び「コロネートHX」を除いた以外は、実施例1と同様として、積層体IIを得た。
【0101】
[実施例2]
(f3)n−へプタン 330部、(d3)アリルトリメトキシシラン 15.0部、(e2)テトラ(n−ブチル)チタネート5.0部、塩化白金酸とジビニルテトラメチルジシロキサンとの錯体 2.0部、(b1)末端水酸基封鎖ポリエーテル変性シリコーンと(a1)リチウム塩と(f1)メチルエチルケトンの混合物である「デノンRH−10」(丸菱油化工業(株)製)7.0部、(c1)ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体である「コロネートHX」(日本ポリウレタン工業(株)製)2.0部、(f1)メチルエチルケトン 1000部を混合し、プライマー組成物IIを調製した。これを乾燥後の塗工量が0.08g/mとなるように厚さ38ミクロンのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上へ塗工し、100℃に熱した熱風循環式オーブンにて10秒間乾燥し、プライマー塗工フィルムIIを得た。
【0102】
その後、付加硬化性シリコーン剥離剤「SD7226」(東レ・ダウコーニング(株)製)100部、メチルエチルケトン 450部、トルエン 450部、付加反応白金触媒「SRX212」(東レ・ダウコーニング(株)製)1.5部からなる塗工浴を調製し、乾燥後の塗工量が約0.15g/mとなるようプライマー塗工フィルムII上に塗工し、130℃に熱した熱風循環式オーブンにて30秒間処理することで、プラスチックフィルムの表面にシリコーン硬化皮膜を有する積層体IIIを得た。
【0103】
[比較例2]
「デノンRH−10」及び「コロネートHX」を除いた以外は、実施例2と同様として、積層体IVを得た。
【0104】
[比較例3]
「デノンRH−10」 10.0部に代えて、帯電防止剤としてポリオキシアルキレンアルケニルエーテル硫酸エステル塩(エレクトロストリッパーME-5,花王(株)製)を6.0部、及び、ポリエーテル変性シリコーン「SH193」(東レ・ダウコーニング(株)製) 6.0部を用いた以外は、実施例1と同様として、積層体Vを得た。
【0105】
[比較例4]
プライマーを塗工することなく、付加硬化型シリコーン剥離剤「SD7226」(東レ・ダウコーニング(株)製)100部、エチルメチルケトン 450部、トルエン450部、付加反応白金触媒「SRX212」(東レ・ダウコーニング(株)製)1.5部、末端水酸基封鎖ポリエーテル変性シリコーンとリチウム塩とエチルメチルケトンの混合物である「デノンRH−10」(丸菱油化工業(株)製)5.0部、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体である「コロネートHX」(日本ポリウレタン工業(株)製)1.5部からなる剥離剤組成物Iを調製し、乾燥後の塗工量が約0.15g/mとなるよう厚さ38ミクロンのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム上に塗工し、130℃に熱した熱風循環式オーブンにて30秒間処理することで、プラスチックフィルムの表面にシリコーン硬化皮膜を有する積層体VIを得た。
【0106】
以下に、実施例1及び2、並びに、比較例1〜3で使用されたプライマー組成物の成分組成を示す。
なお、積層体I〜VIを得る際に、プライマー層上にシリコーン硬化層を形成する際に用いた付加硬化型シリコーン剥離剤は、「SD7226」(東レ・ダウコーニング(株)製)であり、共通である。
【0107】
【表1】

【0108】
【表2】

【0109】
【表3】

【0110】
実施例1及び2、並びに、比較例1乃至4で得られた積層体I乃至VIの密着性、剥離抵抗、残留接着率、表面抵抗、及び、電荷減衰半減期を以下のようにして測定・評価した。結果を表4に示す。
【0111】
(a)密着性
積層体を、湿度90%、温度40℃のオーブン中で7日間エージングした後、塗工面を指でこすり、塗膜の脱落を肉眼にて観察し、密着性の良否を判定した。
【0112】
(b)剥離抵抗
積層体を70℃のオーブン中で1日間エージングした後、塗工面にアクリル系溶剤型粘着剤 「オリバイン BPS−5127」(東洋インキ製造(株)製)を塗布し、70℃に熱した熱風循環式オーブンにて120秒間乾燥した。次いで、この処理面に厚さ25ミクロンのポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを貼り合わせ、25℃、荷重20g/cmの条件下で1日間エージングした。このものを5cm幅に切断して試験片を作成し、引っ張り試験機を用いて、角度180°、剥離速度0.3m/分の条件下で試験片から貼り合わせたPETフィルムを引っ張り、その剥離に要する力(g)を測定した。
【0113】
(c)残留接着率
積層体にポリエステル粘着テープ「ニットーポリエステルテープ31B」(日東電工(株)社製)を貼り合わせ、70℃,荷重20g/cmの条件下で20時間エージングした。その後、貼り合わせたポリエステル粘着テープを剥がし、そのテープを2kgゴムローラーでステンレス板に貼りつけた。25℃で30分間エージングした後、引張り試験機を用いて、角度180°、剥離速度0.3m/分の条件下でステンレス板から貼りつけた粘着テープを引っ張り、その接着力(g)を測定した。これを残留接着力とした。一方、未使用のポリエステル粘着テープをステンレス板表面に2kgゴムローラーで貼りつけて、その接着力(g)を上記と同様に測定した。これを基礎接着力とした。これらの各接着力より、次式から残留接着率を測定した。

残留接着率(%)=残留接着力÷基礎接着力×100
【0114】
(d)表面抵抗
東京電子(株)のSTACK TR-2型表面抵抗計を用いて測定した。
【0115】
(e)電荷減衰半減期測定
シシド静電気(株)製 HONEST METER H-110型を用いて、JIS L 1094に記載の方法で測定した。
【0116】
【表4】

【0117】
表4の結果から、本発明に対応する実施例1及び実施例2ではシリコーン硬化皮膜と基材との密着性が良好であり、絶縁性に優れており、且つ、シリコーン硬化皮膜上の帯電を防止乃至低減可能であることが分かる。
【0118】
一方、本発明の(a)成分であるリチウム塩、(b)ポリエーテル変性ポリシロキサン及び(c)イソシアナート基含有化合物を欠くプライマー組成物を使用する比較例1及び比較例2では、電荷減衰半減期が長く、シリコーン硬化皮膜上の帯電を効果的に低減することができない。また、比較例3に示されるように、リチウム塩以外の帯電防止剤を使用すると、電荷減衰半減期が長くなり、シリコーン硬化皮膜上の帯電を効果的に低減することが困難となるだけでなく、プライマー層を用いたシリコーン硬化皮膜と基材との密着性も著しく低下し、プライマー効果及び帯電防止特性のいずれも不十分であった。さらに、比較例4に示す通り、プライマーレスの条件下では、シリコーン硬化皮膜と基材との密着性が著しく低下した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)リチウム塩
(b)ポリエーテル変性ポリシロキサン
を含む、縮合反応硬化性プライマー用組成物。
【請求項2】
(a)リチウム塩が、LiBF 、LiClO 、LiPF 、LiAsF、LiSbF 、LiSOCF、LiN(SOCF 、LiSO 、LiC(SOCF、及び、LiB(C からなる群より選ばれる1種又は2種以上である、請求項1記載の縮合反応硬化性プライマー用組成物。
【請求項3】
(b)ポリエーテル変性ポリシロキサンが、水酸基を有するポリエーテル変性ポリシロキサンである、請求項1又は2記載の縮合反応硬化性プライマー用組成物。
【請求項4】
(b)ポリエーテル変性ポリシロキサンが、下記一般式(1):

YO−(RSiO)−(RXSiO)−(RSiO)−Y (1)

{式中、
、R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、水酸基又は一価炭化水素基を表し、
Xは、−R−(OR−(OR−OH(R、R及びRは、それぞれ独立して、二価炭化水素基を表し、
a及びbは、a≧0、b≧0を満たす整数である)を表し、
及びYは、それぞれ独立して、X、水素原子又は一価炭化水素基を表し、
x、y及びzは、x≧0、y≧0、z≧0、及び、x+y+z≧1を満たす整数であり、
但し、y=0のとき、Y及びYの少なくとも一方は、Xである}で表される、末端水酸基を有するポリエーテル変性ポリシロキサンである、請求項1乃至3のいずれかに記載の縮合反応硬化性プライマー用組成物。
【請求項5】
(c)イソシアナート基含有化合物を更に含む、請求項1乃至4のいずれかに記載の縮合反応硬化性プライマー用組成物。
【請求項6】
(c)イソシアナート基含有化合物がヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体である、請求項5記載の縮合反応硬化性プライマー用組成物。
【請求項7】
(d)反応性官能基を有する1種又は2種以上のシラン化合物
(e)有機アルミニウム化合物、有機チタン酸エステル化合物、及び、白金系化合物からなる群より選ばれる1種又は2種以上の化合物
を更に含む、請求項1乃至6のいずれかに記載の縮合反応硬化性プライマー用組成物。
【請求項8】
(d)反応性官能基を有するシラン化合物が下記一般式(2):

Si(OR104−c (2)

(式中、
は、それぞれ独立して、反応性官能基を表し、
10は、それぞれ独立して、一価炭化水素基を表し、
cは、1〜3の整数である)で表される、請求項7記載の縮合反応硬化性プライマー用組成物。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の縮合反応硬化性プライマー用組成物の硬化物。
【請求項10】
基材、及び、請求項9記載の硬化物を備える積層体。
【請求項11】
基材、請求項9記載の硬化物からなるプライマー層、及び、シリコーン硬化物層を備えており、
前記基材上に前記プライマー層が存在し、且つ、前記プライマー層上に前記シリコーン硬化物層が存在する積層体。
【請求項12】
前記シリコーン硬化物層が、付加反応硬化性シリコーン組成物の硬化物からなる請求項11記載の積層体。
【請求項13】
前記基材が樹脂製である請求項10乃至12のいずれかに記載の積層体。
【請求項14】
請求項10乃至13のいずれかに記載の積層体を備える離型性又は粘着性フィルム又はシート。
【請求項15】
請求項10乃至13のいずれかに記載の積層体を備える離型性又は粘着性ロール又はローラー。
【請求項16】
基材及びシリコーン硬化物層を備える積層体において、
前記基材及び前記シリコーン硬化物層の間に請求項9記載の硬化物からなるプライマー層を設けることを特徴とする、積層体の帯電防止乃至低減方法。

【公開番号】特開2012−158619(P2012−158619A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17035(P2011−17035)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(000110077)東レ・ダウコーニング株式会社 (338)
【Fターム(参考)】