説明

プライマー組成物および封止構造体

【課題】ポリフタルアミド樹脂などの難接着性基材に対してシリコーン樹脂などの封止層を形成する際、十分な密着性やガスバリアー性が得られるプライマー組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ基および不飽和基を有する重合性単量体、有機過酸化物、希釈溶剤、を含有することを特徴とするプライマー組成物。また、ポリフタルアミド基材に対して、前記プライマー組成物が塗布、硬化され、該プライマー層上にさらにシリコーン樹脂層が形成された封止構造体はLEDに適する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプライマー組成物の密着性やガスバリヤー性の改良に関するものであり、具体的にはポリフタルアミド樹脂などの難接着性基材に対してシリコーン樹脂などの封止層を形成する際に有用なプライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
LEDは蛍光灯や白熱灯に代わる各種照明や表示装置用デバイスとして急速に普及している。LEDはパッケージ部材に納められた発光素子をシリコーン樹脂で封止する方法などによって製造されている。パッケージ部材としては耐久性などの点からポリフタルアミド樹脂などのエンジニアリングプラスチックが用いられているが、これらは難接着性基材であるため、封止樹脂との密着性が十分ではなかった。また、LEDの導通や反射用金属として用いられる銀の腐食を抑制するため、硫黄ガスバリア性が求められているものの、十分ではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許文献1には、LEDパッケージ用プライマー組成物が開示されているが、硫黄ガスバリヤー性については十分に検討されていない。
【特許文献1】特開2004-339450号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、ポリフタルアミド樹脂などの難接着性基材に対してシリコーン樹脂などの封止層を形成する際、十分な密着性やガスバリアー性が得られるプライマー組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、(a)エポキシ基および不飽和基を有する重合性単量体、(b)重合開始剤、(c)希釈溶剤、を含有することを特徴とするプライマー組成物である。
【発明の効果】
【0006】
本発明のプライマー組成物はポリフタルアミド樹脂などのエンジニアリングプラスチックへの密着性に優れ、シリコーン樹脂などへの密着性にも優れるため、密着性やガスバリアーを向上できる。また、該プライマー組成物を用いて形成された封止構造体は、特にLEDに適する。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のプライマー組成物の各成分について説明する。(a)エポキシ基および不飽和基を有する重合性単量体は、分子内にエポキシ基および不飽和基を有する重合性単量体である。不飽和基としては(メタ)アクリロイル基が好ましく、具体例としてはグリシジル(メタ)アクリレートや、これらの誘導体が挙げられる。
【0008】
(b)重合開始剤としては、過酸化物やアゾ化合物が挙げられるが、前記(a)成分を重合可能なものであれば特に限定されない。前記(a)成分がグリシジル(メタ)アクリレートや、これらの誘導体である場合、過酸化物を用いることが好ましい。重合開始剤の配合量は前記(a)成分を重合可能な量であれば特に限定されない。
【0009】
(c)希釈溶剤は、前記(a)成分や(b)成分と混和性を有する溶剤であれば、特に限定されることなく用いることができる。塗布性や塗布方式、確保したい塗布膜厚などによって希釈溶剤の種類や量は適宜選択できる。
【0010】
(d)(メタ)アクリロイル基含有シランカップリング剤は、分子内に(メタ)アクリロイル基およびアルコキシシリル基などの反応性シリル基を有する化合物であり、プライマー組成物の密着性やガスバリアー性をより向上させることができる。具体的には、γ−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、γ−アクリロキシプロピルトリメトキシシランなどが挙げられる。
【0011】
本発明のプライマー組成物は、前記(a)〜(c)の各必須成分や、必要に応じて(d)成分を混合することによって調製される。その他に本発明の効果を損なわない範囲において公知の各種添加成分を含んでいてもよい。
【0012】
また、本プライマー組成物は幅広い基材に対して使用できるが、難接着剤基材であるポリフタルアミド樹脂などのエンジニアリングプラスチックに対しても優れた密着性を有するため、これらの基材に用いた際に本発明の効果が顕著に発現する。また、シリコーン樹脂などとの密着性にも優れるため、ポリフタルアミド基材に対して、本発明のプライマー組成物が塗布、硬化され、該プライマー層上にさらにシリコーン樹脂層が形成された封止構造体はガスバリアー性にも優れ、特にLEDに適する。
【0013】
以下、本発明について実施例、比較例を挙げてより詳細に説明するが、具体例を示すものであって、特にこれらに限定するものではない。
【実施例】
【0014】
プライマー組成物1の調製
グリシジルメタクリレート100重量部とt−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート(化薬アクゾ社製、商品名BIC−75)1重量部を混合し、さらに希釈溶剤としてトルエンを33重量部添加、混合することにより、プライマー組成物1を得た。
【0015】
プライマー組成物2〜9の調製
プライマー組成物1の調製で用いた配合材料の他、グリシジルアクリレートおよびt−アミルパーオキシイソプロピルカーボネート(化薬アクゾ社製、商品名AIC−75)γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランを用い、表1記載の配合にて同様にプライマー組成物2〜9を得た。
【0016】
プライマー組成物Aの調製
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン/メタクリル酸メチル/アクリル酸n−ブチルを100/500/300の比で重合させたアクリル共重合体の50重量%トルエン溶液をプライマー組成物Aとした。
【0017】
プライマー組成物Bの調製
γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン/メタクリル酸メチル/アクリル酸n−ブチル/スチレンを100/500/300/150の比で重合させたアクリル共重合体の50重量%トルエン溶液をプライマー組成物Bとした。
【0018】
プライマー組成物Cの調製
2−(3、4−エポキシシクロヘキシルエチル)トリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名KBM−303)0.5mol、ビニルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、KBM1003)0.5molを仕込み、これに純水3.0molを添加し、40℃で加水分解縮合物をメタノールに溶解し、溶解の不溶物をフィルタでろ過した。ろ液の溶剤を減圧留去したもの100重量部に対して、BIC−75を5重量部添加、混合することにより、プライマー組成物Cを得た。
【0019】
プライマー組成物Dの調製
プライマー組成物Cの調製において、KBM1003の代わりに3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名KBM503)0.5molを仕込んだ他はプライマー組成物Cの調製と同様に行うことにより、プライマー組成物Dを調製した。
【0020】
【表1】

【0021】
実施例
各プライマー組成物を表2、表3記載の配合にてトルエンで希釈することにより、実施例1〜13、比較例1〜5の各プライマー組成物を調製した。
各プライマー組成物をポリフタルアミド樹脂製LEDパッケージ(5mm×5mm×1.5mm)底面の銀メッキ電極配線にディスペンサーで塗布した後、100℃雰囲気下で1時間乾燥、硬化させることにより、プライマー層を形成した。さらに、プライマー層上に付加型シリコーン樹脂(ポリメチルビニルシロキサン100重量部に対してポリメチル水素シロキサン10重量部、白金触媒10ppmを含有)を充填、封止して150℃雰囲気下で1時間硬化することによってLED試験体を作成した。
【0022】
半田試験
JEDEC(電子機器技術評議会)J−STD−020D.01に準じて耐リフロー試験を行った。配線基板の電極にメタルマスクで鉛フリー半田ペースト(千住金属工業社製、商品名M705−GRN360K2−V)を塗布した面の上に上記LED試験体を置き、リフローシュミレーター(マルコム社製、商品名SRS−1C)を用いてピーク温度260℃、50秒間の本加熱の温度プロファイルにて試験後、顕微鏡にて電極と樹脂界面(プライマー層)の状態を観察した。n=3で試験を行い、クラックまたは剥離が生じた試験体を数えた。
【0023】
耐光試験
スガ試験機社製のメタリングウェザーメーターM6Tを用い、放射照度0.53kW/m、BPT(ブラックパネル温度)120℃、積算放射照度200MJ/mの条件下において、上記LED試験体の暴露試験を行い、試験後にLEDパッケージと樹脂界面(プライマー層)の状態を観察した。n=3で試験を行い、クラックまたは剥離が生じた試験体を数えた。
【0024】
銀腐食試験
銀メッキを施した銅板上に実施例1〜13、比較例1〜5の各プライマー組成物を塗布した後、100℃雰囲気下で1時間乾燥、硬化させることにより、プライマー層を形成した。プライマー層上に前記付加型シリコーン樹脂を塗布し、150℃で1時間加熱することにより硬化して厚み2mmの皮膜を形成した。該銅板を硫黄粉0.2gと共に100ccガラスビンに封入し、60℃または80℃雰囲気下で24時間放置した。放置後に該銅板を取り出してシリコーン皮膜を剥がし、銀メッキの腐食の程度を確認して以下のように評価した。
○ :腐食なし
△ :部分的に腐食(薄い黒色)
× :全面腐食(黒色化)
【0025】
【表2】

【0026】
【表3】

【0027】
プライマー組成物1〜9を用いた各実施例においては、基材に対する密着性が優れており、ガスバリアー性も高かった。一方、プライマー組成物A〜Dを用いた各比較例においては、基材に対する密着性が低く、ガスバリアー性も悪かった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)エポキシ基および不飽和基を有する重合性単量体、(b)重合開始剤、(c)希釈溶剤、を含有することを特徴とするプライマー組成物。
【請求項2】
前記(a)エポキシ基および不飽和基を有する重合性単量体が、エポキシ基およびメタ(アクリロイル)基を有する重合性単量体であることを特徴とする請求項1記載のプライマー組成物。
【請求項3】
前記(b)重合開始剤が、有機過酸化物であることを特徴とする請求項1または2記載のプライマー組成物。
【請求項4】
さらに(d)メタ(アクリロイル)基含有シランカップリング剤を含有することを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のプライマー組成物。
【請求項5】
ポリフタルアミド基材に対して、請求項1〜4いずれかに記載のプライマー組成物が塗布、硬化され、該プライマー層上にさらにシリコーン樹脂層が形成されることを特徴とする封止構造体。

【公開番号】特開2012−46553(P2012−46553A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−186718(P2010−186718)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【特許番号】特許第4801787号(P4801787)
【特許公報発行日】平成23年10月26日(2011.10.26)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】