説明

プライマー組成物および構造体

【課題】 ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる強誘電性材料と金属および/または金属酸化物とを密着させるプライマー組成物、およびこのプライマー組成物を用いて接着した構造体を提供すること。
【解決手段】 本発明に係るプライマー組成物は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる強誘電性材料と金属および/または金属酸化物とを密着させるプライマー組成物であって、(A)下記式(3)で表される繰り返し単位および下記式(4)で表される繰り返し単位を特定の割合で有する重合体と(B)有機溶剤とを含有する。
【化8】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、強誘電特性を示すフッ素樹脂と金属および/または金属酸化物とを接着するためのプライマー組成物、およびこのプライマー組成物により接着して得られる、強誘電層と金属層とからなる構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、その強誘電性を利用して、たとえばポリマーメモリー等の不揮発性メモリーに用いられることが知られている(米国特許出願公開第2003/0015740号明細書(特許文献1))。このメモリーは配線層と絶縁層とを交互に積層してなる構造であり、層間の密着性は極めて重要である。国際公開第00/75992号パンフレット(特許文献2)には、フッ化ビニリデンと金属との間にプライマーを使用してこれらを接着する方法が開示されているが、このプライマーについて、具体的には何ら記載されていない。近年、メモリーの小型化による微細加工、薄膜化により各層単体の強度は低下の傾向にある。さらに繰り返し行われる電場印加による歪や電源ノイズ、発熱に伴う材料の収縮など信頼性に関しても密着性は重要な因子である。
【0003】
しかしながら、フッ素樹脂は非粘着性であり、一方で金属および金属酸化物は不活性でかつ化学的にも安定であり、さらに表面平滑性にも優れるため、これらの両界面の密着性を確保するのは困難である。
【0004】
フッ化ビニリデン用プライマーとしては、特公平7−49548号公報(特許文献3)にはウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ビニル樹脂、ニトリルゴムが提案されている。特開平8−12957号公報(特許文献4)には軟質フッ素樹脂、ポリイソシアネートおよび有機溶剤からなる接着剤が提案されている。特開平8−73806公報(特許文献5)にはエポキシ樹脂、アクリルポリオールおよびブロック化ポリイソシアネートを含むプライマーが提案されている。
【0005】
また、特開2003−34744号公報(特許文献6)には5員環ジチオカーボネート基を有する化合物と2つ以上の酸性基を有する化合物とを含有する組成物が、金属、樹脂との接着性に優れた硬化物を与えることが開示されている。しかしながら、この公報には、樹脂としてフッ素樹脂は開示されておらず、フッ化ビニリデンと金属および/または金属酸化物の両方に対する密着性についても記載されていない。
【特許文献1】米国特許出願公開第2003/0015740号明細書
【特許文献2】国際公開第00/75992号パンフレット
【特許文献3】特公平7−49548号公報
【特許文献4】特開平8−12957号公報
【特許文献5】特開平8−73806公報
【特許文献6】特開2003−34744号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる強誘電性材料と金属および/または金属酸化物とを密着させるプライマー組成物、およびこのプライマー組成物を用いて接着した構造体を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るプライマー組成物は、下記式(1)
−CF2−CH2− (1)
で表される繰り返し単位および下記式(2)
−CHF−CF2− (2)
で表される繰り返し単位を有する重合体を含有する強誘電性材料と金属および/または金属酸化物とを密着させるためのプライマー組成物であって、
(A)下記式(3)
【0008】
【化3】

【0009】
で表される繰り返し単位および下記式(4)
【0010】
【化4】

【0011】
で表される繰り返し単位を有する重合体であり、該重合体の全構成単位100重量%に対して、上記式(3)で表される繰り返し単位を5〜60重量%、上記式(4)で表される繰り返し単位を5〜95重量%含有する重合体と、(B)有機溶剤とを含有することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るプライマー組成物は、(C)アミン化合物および(D)エポキシ化合物をさらに含有することが好ましい。
前記エポキシ化合物(D)はエポキシ基とアルコキシシリル基とを同時に含有することが好ましい。
【0013】
本発明に係る構造体は、金属および/または金属酸化物からなる金属層と、該金属層上に形成された、上記プライマー組成物から得られたプライマー層と、該プライマー層上に形成された、下記式(1)
−CF2−CH2− (1)
で表される繰り返し単位および下記式(2)
−CHF−CF2− (2)
で表される繰り返し単位を有する重合体を含有する強誘電性材料からなる強誘電層とを有し、前記プライマー層の厚さが100nm以下であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、ポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる強誘電性材料と金属および/または金属酸化物とを強固に接着することができる。また、上記強誘電性材料と金属および/または金属酸化物とが層間剥離しない、層間密着性に優れた構造体を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
〔プライマー組成物〕
本発明に係るプライマー組成物は、(A)特定の構造を有する重合体と(B)有機溶剤と、必要に応じて、(C)アミン化合物と(D)エポキシ化合物とを含有する。以下、各成分について具体的に説明する。
【0016】
(A)重合体
本発明にプライマーとして用いられる重合体(以下、「重合体(A)」という)は、
(A)下記式(3)
【0017】
【化5】

【0018】
で表される繰り返し単位(以下「繰り返し単位(3)」という)および下記式(4)
【0019】
【化6】

【0020】
で表される繰り返し単位(以下「繰り返し単位(4)」という)を有する。
上記繰り返し単位(3)は、下記式(5)
【0021】
【化7】

【0022】
で表される、5員環ジチオカーボネート基を有するビニル系単量体から誘導される基であり、協和発酵ケミカル株式会社製のTCMAなどが挙げられる。また、上記繰り返し単位(4)は、メチルメタアクリレートから誘導される基である。
【0023】
上記繰り返し単位(3)は、重合体(A)の全構成単位100重量%に対して、5〜60重量%、好ましくは5〜50重量%、さらに好ましくは5〜40重量%である。また、上記繰り返し単位(4)は、重合体(A)の全構成単位100重量%に対して5〜95重量%である。繰り返し単位(3)および(4)の割合が上記範囲にあると、密着強度が増加する。
【0024】
上記重合体(A)は、さらにその他のビニル系単量体から誘導される繰り返し単位を含有していてもよい。この場合、重合体(A)に含まれる、その他のビニル系単量体から誘導される繰り返し単位は、重合体(A)の全構成単位100重量%に対して、好ましくは5〜90重量%である。その他のビニル系単量体から誘導される繰り返し単位が、上記上限を超えると密着強度が低下する。
【0025】
上記その他のビニル系単量体としては、たとえば、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸などの不飽和カルボン酸;
無水マレイン酸、無水イタコン酸などの不飽和カルボン酸無水物;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルなどの水酸基含有ビニル系単量体;
2−アミノエチル(メタ)アクリレート、2−アミノプロピル(メタ)アクリレート、3−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2−アミノエチルビニルエーテルなどのアミノ基含有ビニル系単量体;
1,1,1−トリメチルアミン(メタ)アクリルイミド、1−メチル−1−エチルアミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2−ヒドロキシプロピル)アミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2’−フェニル−2’−ヒドロキシエチル)アミン(メタ)アクリルイミド、1,1−ジメチル−1−(2’−ヒドロキシ−2’−フェノキシプロピル)アミン(メタ)アクリルイミドなどのアミンイミド基含有ビニル系単量体;
グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテルなどのエポキシ基含有ビニル系単量体;
エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、アミル(メタ)アクリレート、i−アミル(メタ)アクリレート、へキシル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、イソシアナートエチル(メタ)アクリレート、2−[(3,5−ジメチルピラゾリル)カルボキシアミノ]エチル(メタ)アクリレート、2−[(1−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチル(メタ)アクリレート、(2−トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリレート化合物
が挙げられる。
【0026】
さらに、スチレン、α−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メトキシスチレン、2−ヒドロキシメチルスチレン、4−エチルスチレン、4−エトキシスチレン、3,4−ジメチルスチレン、3,4−ジエチルスチレン、2−クロロスチレン、3−クロロスチレン、4−クロロ−3−メチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、2,4−ジクロロスチレン、2,6−ジクロロスチレン、1−ビニルナフタレンなどの芳香族ビニル単量体;
ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートなどの多官能性単量体;
(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビスアクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド、マレイン酸アミド、マレイミドなどの酸アミド化合物;
塩化ビニル、塩化ビニリデン、脂肪酸ビニルエステルなどのビニル化合物;
アクリロニトリルなどのシアノ化合物;
1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−ネオペンチル−1,3−ブタジエン、2−クロロ−1,3−ブタジエン、2−シアノ−1,3−ブタジエン、イソプレン、アルキル基、ハロゲン原子、シアノ基などの置換基で置換された置換直鎖共役ペンタジエン類、直鎖状および側鎖状の共役ヘキサジエンなどの脂肪族共役ジエン
が挙げられる。
【0027】
さらに、トラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、フッ化ビニリデン、クロロトリフルオロエチレン、3,3,3−トリフルオロプロピレン、テトラフルオロエチレンなどのフルオロオレフィン類;
CH2=CH−O−Rf
(Rfは、フッ素原子を含む、アルキル基もしくはアルコキシアルキル基を示す)
で表される(フルオロアルキル)ビニルエーテル、または(フルオロアルコキシアルキル)ビニルエーテル類;
パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、パーフルオロ(ブチルビニルエーテル)、パーフルオロ(イソブチルビニルエーテル)などのパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)類;
パーフルオロ(プロポキシプロピルビニルエーテル)などのパーフルオロ(アルコキシアルキルビニルエーテル)類;
アクリロニトリル、メタアクリロニトリルなどのシアン化ビニル化合物;
2,2,2−トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロブチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロヘキシル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロオクチル)エチル(メタ)アクリレート、2−(パーフルオロデシル)エチル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H−オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、1H,1H,2H,2H−ヘプタデカフルオロデシル(メタ)アクリレートなどのフッ素含有(メタ)アクリル酸エステル類;
4−(メタ)アクリロイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルアミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、4−(メタ)アクリロイルオキシ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジンなどのピペリジン系モノマー
が挙げられる。
【0028】
さらに、ビニルグリシジルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、3−ヒドロキシブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;
アリルグリシジルエーテル、2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテルなどのアリルエーテル類;
メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、tert−ブチルビニルエーテル、n−ペンチルビニルエーテル、n−ヘキシルビニルエーテル、n−オクチルビニルエーテル、n−ドデシルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテルもしくはシクロアルキルビニルエーテル類
などが挙げられる。
【0029】
これらのその他のビニル系単量体は1種単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
これらのその他のビニル系単量体のうち、グリシジル(メタ)アクリレート、2−[(1−メチルプロピリデンアミノ)カルボキシアミノ]エチル(メタ)アクリレート、(2−トリメトキシシリル)プロピル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0030】
上記重合体(A)は、上記式(5)で表されるビニル系単量体とメチルメタアクリレートと、必要に応じて、上記その他のビニル系単量体とを、従来公知の方法で共重合させることによって調製することができる。
【0031】
(B)有機溶剤
本発明に用いられる有機溶剤(B)としては、上記重合体(A)を溶解できるものであれば特に限定されないが、たとえば、2−ブタノン、2−ペンタノン、3−メチル−2−ブタノン、2−ヘキサノン、4−メチル−2−ペンタノン、3−メチル−2−ペンタノン、3,3−ジメチル−2−ブタノン、2−ヘプタノン、2−オクタノン等の直鎖状もしくは分岐状のケトン類;
シクロペンタノン、3−メチルシクロペンタノン、シクロヘキサノン、2−メチルシクロヘキサノン、2,6−ジメチルシクロヘキサノン、イソホロン等の環状のケトン類;
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−i−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−n−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−i−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−sec−ブチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノ−t−ブチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類;
2−ヒドロキシプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシプロピオン酸n−プロピル、2−ヒドロキシプロピオン酸i−プロピル、2−ヒドロキシプロピオン酸n−ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸i−ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸sec−ブチル、2−ヒドロキシプロピオン酸t−ブチル等の2−ヒドロキシプロピオン酸アルキル類;
3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル等の3−アルコキシプロピオン酸アルキル類が挙げられる。
【0032】
さらに、n−プロピルアルコール、i−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、t−ブチルアルコール、シクロヘキサノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−プロピルエーテル、ジエチレングリコールジ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、トルエン、キシレン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸メチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルプロピオネート、3−メチル−3−メトキシブチルブチレート、酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、アセト酢酸メチル、アセト酢酸エチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ベンジルエチルエーテル、ジ−n−ヘキシルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、カプロン酸、カプリル酸、1−オクタノール、1−ノナノール、ベンジルアルコール、酢酸ベンジル、安息香酸エチル、炭酸ジエチル、しゅう酸ジエチル、マレイン酸ジエチル、γ−ブチロラクトン、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、乳酸、乳酸エチル等が挙げられる。
【0033】
これらの有機溶剤は1種単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
これらの有機溶剤のうち、直鎖状もしくは分岐状のケトン類、環状のケトン類、プロピレングリコールモノアルキルエーテルアセテート類、2−ヒドロキシプロピオン酸アルキル類、3−アルコキシプロピオン酸アルキル類が好ましい。
【0034】
本発明では、上記有機溶媒(B)を、固形分濃度が好ましくは0.001〜20重量%、より好ましくは0.003〜18重量%、特に好ましくは0.005〜15重量%となる量で使用することが望ましい。
【0035】
(C)アミン化合物
本発明に用いられるアミン化合物(C)としては、たとえば、芳香族ジアミン、脂肪族または脂環式ジアミン、アミノ基含有シリコン化合物などが挙げられる。
【0036】
芳香族ジアミンとしては、たとえば、1−ドデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−テトラデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−ペンタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−ヘキサデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−オクタデカノキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−コレステリルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、1−コレスタニルオキシ−2,4−ジアミノベンゼン、ドデカノキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、テトラデカノキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、ペンタデカノキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、ヘキサデカノキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、オクタデカノキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、コレステリルオキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、コレスタニルオキシ(3,5−ジアミノベンゾイル)、(2,4−ジアミノフェノキシ)パルミテート、(2,4−ジアミノフェノキシ)ステアリレート、(2,4−ジアミノフェノキシ)−4−トリフルオロメチルベンゾエート、p−フェニレン
ジアミン、m−フェニレンジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエタン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノベンズアニリド、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、3,3−ジメチル−4,4’−ジアミノビフェニル、5−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、6−アミノ−1−(4’−アミノフェニル)−1,3,3−トリメチルインダン、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、2,2−ビス(4−アミノフェノキシ)プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス(4−アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)−10−ヒドロアントラセン、2,7−ジアミノフルオレン、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、4,4’−メチレン−ビス(2−クロロアニリン)、2,2’,5,5’−テトラクロロ−4,4’−ジアミノビフェニル、2,2’−ジクロロ−4,4’−ジアミノ−5,5’−ジメトキシビフェニル、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−(p−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’−(m−フェニレンイソプロピリデン)ビスアニリン、2,2’−ビス[4−(4−アミノ−2−トリフルオロメチルフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、4,4’−ビス[(4−アミノ−2−トリフルオロメチル)フェノキシ]−オクタフルオロビフェニル、ジアミノテトラフェニルチオフェンなどが挙げられる。
【0037】
脂肪族または脂環式ジアミンとしては、たとえば、1,2−ビスアミノメチルシクロヘキサン、1,4−シクロヘキサンジアミン、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、1,1−メタキシリレンジアミン、1,3−プロパンジアミン、1,4−ジアミノブタン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、4,4−ジアミノヘプタメチレンジアミン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、イソホロンジアミン、テトラヒドロジシクロペンタジエニレンジアミン、ヘキサヒドロ−4,7−メタノインダニレンジメチレンジアミン、トリシクロ[6.2.1.02,7]−ウンデシレンジメチルジアミン、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルアミン)、ワンダミンHM(新日本理化)などが挙げられる。
【0038】
アミノ基含有シリコン化合物としては、アミノプロピルトリメトキシシラン、アミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、アミノエチルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、アミノプロピル末端ポリジメチルシロキサンなどが挙げられる。
【0039】
これらのアミン化合物(C)は1種単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
これらのアミン化合物のうち、1,4−ビス(3−アミノプロピル)ピペラジン、ヘキサメチレンジアミン、アミノエチルアミノプロピルトリメトキシシランが好ましい。
【0040】
本発明において上記アミン化合物(C)を使用する場合、上記重合体(A)100重量部に対して、好ましくは0.01〜50重量部、より好ましくは0.05〜45重量部、
特に好ましくは0.1〜40重量部の範囲で使用される。アミン化合物(C)を上記範囲で使用すると、アミン化合物(C)が上記式(3)で表される構造に付加反応して開環反応が起こり、金属との密着性が向上する。また、アミンとフッ素樹脂との密着性も向上に、構造体の密着強度が向上する。さらに、1分子中に2個以上のアミノ基を有するアミン化合物を使用してプライマー層内の重合体(A)が架橋することにより、プライマー層の強度が向上するとともに、光、水、熱などに対する耐久密着性が向上する。
【0041】
(D)エポキシ化合物
本発明に用いられるエポキシ化合物(D)としては、たとえば、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、高級アルコールグリシジルエーテル、フェノールグリシジルエーテル、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどのモノエポキシ化合物、
エチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジプロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、ビスフェノールA型グリシジルエーテル、水添ビスフェノールA型グリシジルエーテル、レソルシノールジグリシジルエーテル、ポリブタジエンジグリシジルエーテルなどのジエポキシ化合物、
トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルなどのその他のエポキシ樹脂が挙げられる。
【0042】
これらのエポキシ化合物(D)は1種単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
これらのエポキシ化合物のうち、エポキシ基とアルコキシシリル基とを同時に含有するエポキシ化合物、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテルが好ましく、グリシジルトリメトキシシランンがより好ましい。
【0043】
本発明において上記エポキシ化合物(D)を使用する場合、上記重合体(A)100重量部に対して、好ましくは0.01〜50重量部、より好ましくは0.05〜45重量部、特に好ましくは0.1〜40重量部の範囲で使用される。エポキシ化合物(D)を上記範囲で使用すると、硫黄化合物による臭気を低減でき、また上記式(3)中の環構造の開環後の安定性が向上する。
【0044】
<プライマー組成物>
本発明に係るプライマー組成物は、上記重合体(A)を上記有機溶剤(B)に溶解することにより製造することができる。このとき、必要に応じて、上記アミン化合物(C)およびエポキシ化合物(D)を添加することができる。
【0045】
このプライマー組成物は、後述するポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる強誘電性材料と金属および/または金属酸化物とを強固に接着することができる。
〔構造体〕
本発明に係る構造体は、下記のポリフッ化ビニリデン系樹脂からなる強誘電性材料と金属および/または金属酸化物とが、上記プライマー組成物によって接着された構造体であって、層間密着性に優れている。
【0046】
<強誘電性材料>
(ポリフッ化ビニリデン系樹脂)
本発明に用いられる強誘電性材料を構成するポリフッ化ビニリデン系樹脂は、下記式(1)
−CF2−CH2− (1)
で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(1)」という)および下記式(2)
−CHF−CF2− (2)
で表される繰り返し単位(以下、「繰り返し単位(2)」という)を有する重合体を含有する。
【0047】
上記繰返し単位(1)は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の全構成単位100重量%に対して、好ましくは20〜90重量%、より好ましくは25〜85重量%、特に好ましくは30〜80重量%である。また、上記繰返し単位(2)は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の全構成単位100重量%に対して、好ましくは10〜80重量%、より好ましくは15〜75重量%、特に好ましくは20〜70重量%である。繰返し単位(1)および(2)の割合が上記範囲にあると、ポリフッ化ビニリデン系樹脂が強誘電性を示す。
【0048】
また、上記ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、さらに、上記繰り返し単位(1)および(2)以外の繰り返し単位を有していてもよい。この繰り返し単位を誘導する、その他の単量体としては、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メチル−α−メチルスチレン等の(α−メチル)スチレン類;
o−ヒドロキシスチレン、o−t−ブトキシスチレン、o−1−メトキシエトキシスチレン、o−1−エトキシエトキシスチレン、o−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、o−t−ブトキシ−α−メチルスチレン、o−1−メトキシエトキシ−α−メチルスチレン、o−1−エトキシエトキシ−α−メチルスチレン等のo−ヒドロキシ(α−メチル)スチレンおよびその誘導体;
m−ヒドロキシスチレン、m−t−ブトキシスチレン、m−1−メトキシエトキシスチレン、m−1−エトキシエトキシスチレン、m−ヒドロキシ−α−メチルスチレン、m−t−ブトキシ−α−メチルスチレン、m−1−メトキシエトキシ−α−メチルスチレン、m−1−エトキシエトキシ−α−メチルスチレン等のm−ヒドロキシ(α−メチル)スチレンおよびその誘導体;
p−t−ブトキシスチレン、p−1−メトキシエトキシスチレン、p−1−エトキシエトキシスチレン、p−t−ブトキシ−α−メチルスチレン、p−1−メトキシエトキシ−α−メチルスチレン、p−1−エトキシエトキシ−α−メチルスチレン等のp−ヒドロキシ(α−メチル)スチレンの誘導体;
(メタ)アクリル酸、クロトン酸、けい皮酸、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、無水イタコン酸、メサコン酸、シトラコン酸、無水シトラコン酸等の不飽和カルボン酸類およびその無水物;
前記不飽和カルボン酸のメチルエステル、エチルエステル、n−プロピルエステル、i−プロピルエステル、n−ブチルエステル、i−ブチルエステル、sec−ブチルエステル、t−ブチルエステル(但し、(メタ)アクリル酸t−ブチルを除く。)、n−ペンチルエステル、n−ヘキシルエステル、2−ヒドロキシエチルエステル、2−ヒドロキシプロピルエステル、3−ヒドロキシプロピルエステル、2,2−ジメチル−3−ヒドロキシプロピルエステル、シクロヘキシルエステル、ベンジルエステル等のエステル類;
(メタ)アクリロニトリル、シアン化ビニリデン、クロトンニトリル、けい皮酸ニトリル、マレインニトリル、フマロニトリル、イタコンニトリル、メサコンニトリル、シトラコンニトリル等の不飽和ニトリル類;
(メタ)アクリルアミド、クロトンアミド、けい皮酸アミド、マレインアミド、フマルアミド、イタコンアミド、メサコンアミド、シトラコンアミド等の不飽和アミド類;
マレイミド、N−フェニルマレイミド等の不飽和イミド類;
(メタ)アリルアルコール等の不飽和アルコール類;
ビニルアニリン類、ビニルピリジン類、N−ビニル−ε−カプロラクタム、N−ビニルピロリドン、N−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール等の他のビニル化合物が挙げられる。
【0049】
これらのその他の単量体は1種単独で、または2種以上を混合して使用することができる。
これらのその他の単量体から誘導される繰り返し単位の割合は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の全構成単位100重量%に対して、好ましくは0.01〜30重量%、より好ましくは0.05〜28重量%、特に好ましくは0.1〜25重量%である。その他のビニル系単量体から誘導される繰り返し単位が上記上限を超えると、ポリフッ化ビニリデン系樹脂の強誘電性が低下することがある。
【0050】
上記ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、フッ化ビニリデンとトリフルオロオレフィンと、必要に応じて上記その他の単量体とを、従来公知の方法で共重合させることによって製造することができる。上記トリフルオロオレフィンとしてはトリフルオロエチレンが好ましい。
【0051】
上記ポリフッ化ビニリデン系樹脂のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(以下、「Mw」という。)は、通常、1,000〜1,000,000であり、好ましくは4,000〜800,000である。
【0052】
上記ポリフッ化ビニリデン系樹脂としては、呉羽化学工業(株)製のKFポリマー、ダイキン工業(株)製のネオフロン、Solvay社製のSOLEF、Hylar、Elf
Atchem社製のKynerなどが挙げられる。
【0053】
(有機溶剤)
上記ポリフッ化ビニリデン系樹脂は、通常、有機溶剤に溶解した状態で使用される。ここで用いられる有機溶剤は、上述した有機溶剤(B)と同様のものを使用することができる。その使用量は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂100重量部に対して、好ましくは100〜100,000重量部、より好ましくは150〜80,000重量部、特に好ましくは200〜50,000重量部である。
【0054】
(界面活性剤)
上記ポリフッ化ビニリデン系樹脂を強誘電性材料として使用する際に、塗布性、現像性等を向上させるために、界面活性剤を使用してもよい。
【0055】
上記界面活性剤としては、たとえば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンn−オクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンn−ノニルフェニルエーテル、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールジステアレート等のノニオン系界面活性剤が挙げられる。
【0056】
さらに、KP341(信越化学工業(株)製)、ポリフローNo.75,同No.95(共栄社化学(株)製)、エフトップEF301,同EF303,同EF352(トーケムプロダクツ(株)製)、メガファックスF171,同F173(大日本インキ化学工業(株)製)、フロラードFC430,同FC431(住友スリーエム(株)製)、アサヒガードAG710,サーフロンS−382,同SC−101,同SC−102,同SC−103,同SC−104,同SC−105,同SC−106(旭硝子(株)製)等の市販の界面活性剤を挙げることができる。
【0057】
これらの界面活性剤は1種単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。
界面活性剤の配合量は、ポリフッ化ビニリデン系樹脂100重量部に対して、通常2重量部以下である。
【0058】
本発明では、さらに、ハレーション防止剤、接着助剤、保存安定化剤、消泡剤等の添加剤を使用することもできる。
このようなポリフッ化ビニリデン系樹脂は、たとえば、溶媒に溶解した後、得られた組成物をフィルターでろ過し、溶液として使用することが好ましい。
【0059】
(金属および金属酸化物)
本発明に用いられる金属および金属酸化物としては、ポリマーメモリー等の基板や電極材料などに使用される金属および金属酸化物が挙げられ、具体的には、Si、Cu、Al、Au、Ni、Ti、W、Cr、Taなどの金属およびこれらの酸化物が挙げられる。
【0060】
本発明の構造体は、上記金属または金属酸化物からなる金属層を有している。この金属層は、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スッパッタ法などの従来公知の方法で形成させることができる。
【0061】
<構造体の製造方法>
まず、上記金属および/または金属酸化物からなる金属層上に、上記プライマー組成物をスピンコート法などの従来公知の方法で塗布し、得られた塗膜を乾燥して有機溶剤(B)を除去し、プライマー層を形成する。次いで、このプライマー層上に、上記ポリフッ化ビニリデン系樹脂を有機溶剤に溶解した組成物をスピンコート法などの従来公知の方法で塗布し、得られた塗膜を乾燥して有機溶剤を除去して、強誘電性材料からなる層(強誘電層)を形成する。これにより、本発明に係る構造体が得られる。
【0062】
上記プライマー組成物を使用することにより、厚さが好ましくは100nm以下、より好ましくは70nm以下、特に好ましくは50nm以下のプライマー層を形成することができる。本発明に係るプライマー組成物がポリフッ化ビリニデン系樹脂と金属層とに対して優れた接着性を示すことにより、このように薄いプライマー層を形成することができる。
【0063】
[実施例]
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明は、この実施例により何ら限定されるものではない。なお、実施例および比較例中の「部」および「%」は、特記しない限り、それぞれ「重量部」および「重量%」を示す。また、実施例および比較例における各種の測定・評価は、下記の方法により行った。
(1)重量平均分子量(Mw)
東ソー株式会社製ゲルパーミエーションクロマトグラフHLC−8220GPCにより、下記条件で測定し、ポリスチレン換算値として示した。
カラム:TSK gel 有機溶剤系SECカラム
溶離液:テトラヒドロフラン
溶離液供給速度:0.5mL/分
測定温度:25℃
検出器:RI−8020
(2)膜厚
SOPRA社製分光エリプソメーターにより測定した。
(3)密着性(テープテスト)
JIS K5600−5−6に記載の碁盤目テスト(升目100個)に従い、テープ剥離試験を3回実施し、剥離しなかった升目の平均値により評価した。
(4)密着性(ピールテスト)
得られた構造体の強誘電層表面に、エポキシ系接着剤MOS7(コニシ株式会社製)を約0.1μmの厚さで塗布し、さらに厚さ12μmの銅箔を貼り付けた。このサンプルを1cm幅にカットし、引っ張り試験機により密着強度(荷重)を測定した。
(5)密着性(研磨テスト)
得られた構造体のSiO2酸化膜表面が、ポリッシングパットに当接するように化学機
械研磨装置(荏原製作所(株)製、EPO−112)に装着し、0.5PSiまたは1.0PSiの圧力をかけ、回転数200rpmで5分間研磨した後、画像解析装置により強誘電層が密着している面積率(%)を測定した。
【0064】
[参考例1]
(強誘電材料用組成物の調製)
(1)フッ化ビニリデンとトリフッ化エチレンとを75:25の割合(重量比)で共重合させ、得られた共重合体を炭酸ジエチルに溶解した(濃度:2.25重量%)。
(2)上記(1)で得られた組成物500mlを、ジビニルベンゼンで架橋したポリスチレンのスルホン化物からなるカチオン交換樹脂をイオン交換体としてカチオン電荷調節剤中に含む機能性濾材〔キュノ(株)製ゼータプラスSHフィルター(材質:セルロース、ケイソウ土およびパーライトを含む。カチオン電荷調節剤:ポリアミドポリアミンエピクロロヒドリン樹脂。直径47mm、厚さ3mmの円形状)〕に、20℃で、0.45kg/(m2・min)の流速で通液させた。
【0065】
[調製例1]
(重合体(A)(プライマー用ポリマー)溶液の調製)
還流冷却器および攪拌機を備えた反応器に、メチルイソブチルケトン150部を充填し95℃まで昇温した。これに、TCMA20部とメチルメタクリレート(MMA)80部との混合物、およびアゾビスイソブチロニトリル5部を滴下ロートまたはインクレポンプを用いて攪拌しながら滴下した後、95℃で3時間反応させて固形分濃度40%の重合体溶液(S1)を得た。
【0066】
[調製例2〜8]
TCMAとMMAの代わり、表1に示す単量体を用いた以外は、調製例1と同様にして重合体溶液(S2)〜(S8)をそれぞれ調製した。
【0067】
【表1】

【0068】
得られた重合体溶液(S1)〜(S8)それぞれを、メチルイソブチルケトンで希釈し、固形分濃度0.01%のプライマー組成物(P1)〜(P8)を調製した。また、重合体溶液(S1)、(S5)または(S6)10部に、表2に示すアミン化合物およびエポキシ化合物を配合し、これをメチルイソブチルケトンで希釈して固形分濃度0.01%のプライマー組成物(P9)〜(P16)を調製した。
【0069】
【表2】

【0070】
得られたプライマー組成物(P1)〜(P16)を、スパッタリングにより作製した、表3および表4に示す金属膜上または金属酸化膜上にスピンコーターを用いて塗布し、100℃で10分間乾燥させてプライマー層を形成し、プライマー層の膜厚を測定した。さらに参考例1にて調製した強誘電材料用組成物を塗布し、120℃で10分間乾燥させて強誘電層を形成し、金属層/プライマー層/強誘電層からなる構造体を製造した。この構造体について、テープテストおよびピールテストを行った。結果を表3および4に示す。
【0071】
【表3】

【0072】
【表4】

【0073】
また、予め溝を形成したシリコンウェハ上に銅または金を電解メッキした後、化学機械研磨装置(荏原製作所(株)製、EPO−112)を用いて所定の研磨条件で銅または金の表面を研磨してCu配線基板およびAu配線基板を作成した。各配線基板上に上記プライマー組成物(P2)をスピンコーターを用いて塗布し、100℃で10分間乾燥させて25Åのプライマー層を形成した。次いで、参考例1にて調製した強誘電材料用組成物を塗布し、120℃で10分間乾燥させて強誘電層を形成した。さらに、スパッタリングによりSiO2酸化膜を形成し、配線基板/プライマー層/強誘電層/SiO2酸化膜からなる構造体を製造した。この構造体について、研磨テストを行った。結果を表5に示す。
【0074】
【表5】

【0075】
[比較例]
市販のポリメタクリル酸メチル(重量平均分子量20,000)をメチルイソブチルケ
トンに溶解して固形分濃度0.01%のプライマー組成物(P’1)を調製した。
【0076】
また、TCMAとMMAの量を、それぞれTCMA0.5部とMMA99.5部に変更した以外は、調製例1と同様にして重合体溶液(S’1)を調製した。この重合体溶液(S’1)をメチルイソブチルケトンで希釈して固形分濃度0.01%のプライマー組成物(P’2)を調製した。
【0077】
これらのプライマー組成物(P’1)および(P’2)について、上記実施例と同様にして金属層/プライマー層/強誘電層からなる構造体を製造し、テープテストおよびピールテストを行った。結果を表6に示す。
【0078】
【表6】

【0079】
また、プライマー組成物(P’1)について、上記実施例と同様にして配線基板/プライマー層/強誘電層/SiO2酸化膜からなる構造体を製造し、研磨テストを行った。結
果を表7に示す。
【0080】
【表7】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
−CF2−CH2− (1)
で表される繰り返し単位および下記式(2)
−CHF−CF2− (2)
で表される繰り返し単位を有する重合体を含有する強誘電性材料と金属および/または金属酸化物とを密着させるためのプライマー組成物であって、
(A)下記式(3)
【化1】

で表される繰り返し単位および下記式(4)
【化2】

で表される繰り返し単位を有する重合体であり、該重合体の全構成単位100重量%に対して、上記式(3)で表される繰り返し単位を5〜60重量%、上記式(4)で表される繰り返し単位を5〜95重量%含有する重合体と、
(B)有機溶剤を含有するプライマー組成物。
【請求項2】
(C)アミン化合物および(D)エポキシ化合物をさらに含有することを特徴とする請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
前記エポキシ化合物(D)がエポキシ基とアルコキシシリル基とを同時に含有することを特徴とする請求項2に記載のプライマー組成物。
【請求項4】
金属および/または金属酸化物からなる金属層と、該金属層上に形成された、請求項1〜3のいずれかに記載のプライマー組成物から得られたプライマー層と、該プライマー層上に形成された、下記式(1)
−CF2−CH2− (1)
で表される繰り返し単位および下記式(2)
−CHF−CF2− (2)
で表される繰り返し単位を有する重合体を含有する強誘電性材料からなる強誘電層とを有し、前記プライマー層の厚さが100nm以下であることを特徴とする構造体。


【公開番号】特開2006−299006(P2006−299006A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−119813(P2005−119813)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】