説明

プライマー組成物

【課題】紫外線などの太陽光線に曝されて劣化したアスファルトを含む防水層に対しても良好な接着性を有し、紫外線などの太陽光線に曝されても良好な接着性を維持することができ(良好な耐候性を有し)、金属材料等に対する接着性及び作業時の取り扱い性については従来のプライマーと同程度またはそれ以上であるプライマー組成物を提供する。
【解決手段】(イ)アクリル系重合体を含有するアクリル系エマルジョンと、(ロ)シラン化合物と、を含有し、前記アクリル系重合体100質量部に対して、前記(ロ)シラン化合物を0.4〜20.0質量部含むプライマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマー組成物に関し、更に詳しくは、屋根等の防水施工に使用されるゴムアスファルト塗膜同士を良好に接着することができるプライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建造物の防水、止水、遮水を目的として屋上、屋根、ベランダ、地下構造物等には、防水層が広く施工されている。この防水層は、例えば、ゴムアスファルトエマルジョン、又はこのゴムアスファルトエマルジョン及び防水シートを屋根、ベランダ、地下構造物等の下地に塗工することによって形成される。しかし、上記防水層は、紫外線等の太陽光線によって、アスファルトが酸化劣化を起こし易く、特に夏季を中心に輻射によって外気温より著しく高温となる屋上や屋根などの表面では、数時間のうちにアスファルトの熱酸化が進んでしまう。
【0003】
一方、広大な面積に防水層を施工する場合には、防水層を複数のブロックに分けて施工することが多い。そのため、防水層にはブロック毎に部分的に重複した継ぎ目部分が形成される。このような継ぎ目部分は、先に施工された防水層のアスファルトが劣化していると、防水層同士の接着性が低下し、剥離(外観不良)や漏水が発生する可能性があった。したがって、一般的には、継ぎ目部分の漏水等を防止するため、継ぎ目部分には、防水層同士を接着するための接着剤としてプライマー組成物(以下、「プライマー」ともいう)を塗布し、プライマーの接着層を形成することが広く行われている。このプライマーには、例えば、アスファルトを含有する組成物が多く用いられている(例えば、特許文献1)。
【0004】
【特許文献1】特公平6−23313号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記プライマーは、それ自身もアスファルトを含有しているため、防水層に塗布後に紫外線等の太陽光線によって劣化を生じ、この劣化にともなって接着剤としての効果が低下してしまうことが問題になっている。さらに、上記プライマーは、カチオン系のプライマーであるため、塗布と同時に分解が起こる。この分解によって、プライマーの塗布作業等における作業効率が低下し、プライマーの取り扱い性を悪くしている。また、アニオン系やノニオン系のプライマーは、ドレン等の金属材料に対する接着性が悪いため、粘着付与剤が添加されることが通常である。この粘着付与剤は、金属材料に対するプライマーの接着性を向上させるものであるが、プライマーの塗布作業等における作業効率を低下させ、プライマーの取り扱い性を悪くする別の原因になっている。
【0006】
以上のようなことから、次の性質を有するプライマーの開発が期待されている。第一には、紫外線等によってアスファルトが劣化した防水層に対しても良好な接着性を有すること、第二には、プライマー自身も紫外線等によって劣化することなく接着性を維持できること、第三には、金属材料等に対しても接着性を有すること、第四には、プライマーの塗布作業等における取り扱い易さを有することである。
【0007】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、上記四つの性質を有するプライマーを提供することであり、すなわち、紫外線などの太陽光線に曝されて劣化したアスファルトを含む防水層に対しても良好な接着性を有し、紫外線などの太陽光線に曝されても良好な接着性を維持することができ(良好な耐候性を有し)、金属材料等に対する接着性及び作業時の取り扱い性については従来のプライマーと同程度またはそれ以上であるプライマー組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは上記課題を達成すべく鋭意検討した結果、(イ)特定のアクリル系重合体を含有するエマルジョンと(ロ)シラン化合物とを所定の割合で含むプライマー組成物によって、上記課題を達成することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
即ち、本発明によれば、以下に示すプライマー組成物が提供される。
【0010】
[1] (イ)ゲル分が50質量%以下のアクリル系重合体を含有するアクリル系エマルジョンと、(ロ)シラン化合物と、を含有し、前記アクリル系重合体100質量部に対して、前記(ロ)シラン化合物を0.4〜20.0質量部含むプライマー組成物。
【0011】
[2] 前記アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)が、−40〜15℃である前記[1]に記載のプライマー組成物。
【0012】
[3] 前記アクリル系重合体が、(A)芳香族ビニル化合物単量体に由来する構成単位を10.0〜50.0質量%、及び(B)(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を50.0〜90.0質量%(但し、(A)+(B)=100質量%)含有するものである前記[1]又は[2]に記載のプライマー組成物。
【0013】
[4] 前記(ロ)シラン化合物が、下記一般式(1)で表される前記[1]〜[3]のいずれかに記載のプライマー組成物。
【0014】
【化1】

(Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基を示し、また、Rは炭素数1〜2のアルキル基を示す。)
【0015】
[5] 前記(ロ)シラン化合物が、(ロ−1)炭素数4〜9であるシラン化合物と、
(ロ−2)炭素数10〜15であるシラン化合物と、を含有し、前記アクリル系重合体100質量部に対して、(ロ−1)炭素数4〜9であるのシラン化合物を0.2〜19.8質量部、(ロ−2)炭素数10〜15であるシラン化合物を0.2〜19.8質量部含む前記[1]〜[4]のいずれかに記載のプライマー組成物。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、劣化したアスファルトにも良好な接着性を有し、耐候性にも優れており、金属材料に対する接着性及び作業時の取り扱い性については従来のものと同程度またはそれ以上であるプライマー組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0018】
本発明のプライマー組成物は、(イ)ゲル分が50質量%以下のアクリル系重合体を含有するアクリル系エマルジョン(「(イ)成分」ともいう)と、(ロ)シラン化合物(「(ロ)成分」ともいう)と、を所定の割合で含むものである。
【0019】
(イ)アクリル系エマルジョン:
(イ)成分は、ゲル分が50質量%以下のアクリル系重合体(「(イ−1)成分」ともいう)を含有し、この(イ−1)成分が液体の分散媒中に分散している乳濁液である。分散媒としては、特に制限はないが、例えば、水、アルコール等が挙げられる。また、(イ−1)成分は、特に制限はないが、例えば、(A)芳香族ビニル化合物単量体に由来する構成単位(「(A)構成単位」ともいう)を含有する重合体、この(A)構成単位に加えて(B)(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位(「(B)構成単位」ともいう)を含有する重合体等を挙げることができる。この中でも、(A)構成単位と(B)構成単位とを含有する重合体であることが好ましい。
【0020】
(A)構成単位:
(A)構成単位としては、例えば、スチレン、t−ブチルスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、1,1−ジフェニルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、N,N−ジエチル−p−アミノエチルスチレン、ビニルピリジン等に由来する構成単位を挙げることができる。この中でも、スチレン、α−メチルスチレンに由来する構成単位が好ましい。
【0021】
(イ−1)成分中の(A)構成単位の割合は、10.0〜50.0質量%であることが好ましく、20.0〜48.0質量%であることがさらに好ましく、25.0〜45.0質量%であることが特に好ましい。10.0質量%未満であると、ゴムアスファルトの層との接着性が悪化する傾向にあり、50.0%超であると、低温下での成膜が困難になり、接着性が悪化する傾向にある。
【0022】
(B)構成単位:
(B)構成単位としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート等に由来する構成単位を挙げることができる。この中でも、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、ヘプチルアクリレート、オクチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、ノニルアクリレートに由来する構成単位が好ましく、メチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートに由来する構成単位が更に好ましい。
【0023】
(イ−1)成分中の(B)構成単位の含有割合は、50.0〜90.0質量%であることが好ましく、52.0〜80.0質量%であることがさらに好ましく、55.0〜75.0質量%であることが特に好ましい。50.0質量%未満であると、低温下での成膜が困難になり、接着性が悪化する傾向にあり、90.0%超であると、ゴムアスファルトの層との接着性が悪化する傾向にある。
【0024】
その他の単量体に由来する構成単位:
(イ−1)成分は、(A)構成単位、及び(B)構成単位に加え、芳香族ビニル化合物単量体、(メタ)アクリル酸エステルと共重合可能なその他の単量体に由来する構成単位ものを更に含有してもよい。その他の単量体としては、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル基含有単量体、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−エチロール(メタ)アクリルアミド、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体、アクリルアミドメチルプロパンスルホン酸、スチレンスルホン酸塩等のスルホン酸基含有単量体、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジメタクリレート、イソプロピレングリコールジアクリレート、テトラメチレングリコールジメタクリレート等の二官能単量体、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、3−ヒドロキシブチルメタクレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシブチルアクリレート等の水酸基含有単量体、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン等のアルコシシラン基含有単量体を挙げることができる。なお、(イ−1)成分は、上記その他の単量体を2種類以上混合したものであってもよい。また、(イ−1)成分は、異なる2種類以上のアクリル系エマルジョンを組合せて、ゲル分、(A)構成単位、及び(B)構成単位を満足するものであってもよい。
【0025】
(イ−1)成分の合成に際して、上記二官能単量体を架橋剤として用いることも可能である。これらの架橋剤は、15質量%以下用いることが好ましく、10質量%以下用いることが更に好ましい。なお、(イ−1)成分は、架橋型であっても、非架橋型であってもよい。
【0026】
(イ−1)成分の物性:
(イ−1)成分は、ゲル分が50質量%以下であることが必要である。好ましくは、0.5〜45.0質量%であり、更に好ましくは1.0〜40.0質量%である。ゲル分が50質量%超であると、ゴムアスファルトの層との接着性が悪化する傾向がある。「ゲル分」とは、(イ−1)成分のトルエン不溶分を示すものである。
【0027】
(イ−1)成分は、ガラス転移温度(Tg)が−40〜15℃であることが好ましい。更に好ましくは−35〜5℃であり、特に好ましくは、−30〜0℃である。ガラス転移温度(Tg)が−40℃未満であると、プライマー層が軟らかく接着性が悪化したり、プライマー層の表面にベタツキが発生して作業性が悪化したりする傾向がある。一方、15℃超であると、低温下での成膜が困難になり、接着性が悪化する傾向がある。ガラス転移温度(Tg)は、示差熱熱量分析計(DSC)により、公知の方法で測定することができる。
【0028】
(イ)成分の物性:
(イ)成分の固形分濃度(TSC)は、25〜65質量%であることが好ましい。更に好ましくは、35〜55質量%である。25質量%未満であると、下地の種類によってはプライマー組成物塗布後の乾燥に時間が掛り作業性が悪化する場合がある。一方、65質量%超であると、プライマー組成物の保存安定性が悪化しゲル化する傾向がある。なお、プライマー組成物は、実際の作業内容によって、水等で任意に希釈して使用することができる。
【0029】
(イ)成分の粘度は、10〜5,000mPa・sであることが好ましい。更に好ましくは、20〜3,000mPa・sである。10mPa・s未満であると、1回の塗布作業で塗布されるプライマー組成物の量が少なくなるため、塗布回数が増え、作業性が悪化する傾向がある。一方、5,000mPa・s超であると、プライマー組成物の塗布時の伸びが悪化するため、作業性が悪くなる傾向がある。
【0030】
(イ)成分の粒子径は、60〜300nmであることが好ましい。更に好ましくは、100〜250nmである。60nm未満であると、プライマー組成物の粘度が高くなり塗布時の伸びが悪化する傾向がある。一方、300nm超であると、コンクリート下地等への浸透性が悪化し、接着性が悪化する傾向がある。
【0031】
(イ)成分のpHは、3.0〜11.0であることが好ましい。更に好ましくは、3.5〜9.0である。3.0未満であると、塗布時の安定性が悪化し、塗布できなくなる傾向がある。一方、11.0超であると、アルカリが強く、取扱い上好ましくなくなる傾向がある。
【0032】
(イ)成分の合成:
(イ)成分は、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下で各単量体を共重合することにより合成することができる。
【0033】
ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、tert−ブチルヒドロパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイド、パラメンタンヒドロパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド等の有機過酸化物、過硫酸カリウム等の無機過酸化物、及びこれら過酸化物と硫酸第一鉄とを組み合わせたレドックス系触媒等を挙げることができる。これらのラジカル重合開始剤は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
ラジカル重合開始剤の使用量は、単量体の全量100質量部に対し、0.001〜2質量部とすることが好ましい。重合方法としては塊状重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等の公知の方法を採用することができる。なかでも乳化重合が特に好ましい。
【0035】
乳化重合に使用する乳化剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤等を挙げることができる。また、フッ素系の界面活性剤を使用することもできる。これらの乳化剤は、一種のみを用いてもよいし、二種以上を併用することもできる。具体的には、アニオン系界面活性剤を好適に用いることができる。例えば、炭素数10以上の長鎖脂肪酸塩、ロジン酸塩、スルホン酸塩等が好適に用いられる。より具体的には、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸のカリウム塩及び/又はナトリウム塩等を挙げることができる。
【0036】
重合反応を行うことによって得られる(イ−1)成分の分子量を調節するために、連鎖移動剤を使用することもできる。この連鎖移動剤としては、tert−ドデシルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン、四塩化炭素、チオグリコール類、ジテルペン、ターピノーレン、γ−テルピネン類等を使用することができる。
【0037】
各種単量体、乳化剤、ラジカル重合開始剤、及び連鎖移動剤等は、反応容器に全量を一括投入してから重合を開始してもよいし、反応継続中に連続的又は間欠的に追加・添加してもよい。重合反応は、酸素を除去した反応器を用いて行うことが好ましい。また、重合反応温度は、0〜100℃とすることが好ましく、0〜80℃とすることが更に好ましい。重合反応途中で、原料の添加法、温度、撹拌等の条件等を適宜変更してもよい。重合方式は、連続式であっても回分式であってもよい。重合反応時間は、0.01〜30時間程度とすればよい。所定の重合転化率に達した時点で、重合停止剤を添加する等によって重合反応を停止する。重合停止剤としては、ヒドロキシルアミン、N,N−ジエチルヒドロキシルアミン等のアミン化合物、ヒドロキノン等のキノン化合物等を用いることができる。重合反応停止後、得られた乳化液を(イ)成分とすることができる。
【0038】
(ロ)シラン化合物:
(ロ)シラン化合物は、特に制限はないが、下記一般式(1)で表されるものであることが好ましい。
【0039】
【化2】

(Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基を示し、また、Rは炭素数1〜2のアルキル基を示す。)
【0040】
は、炭素数1〜12のアルキル基であり、例えば、メチル基、フェニル基、ヘキシル基等が挙げられる。この中でも、ヘキシル基が好ましい。なお、Rは、置換基を有していてもよく、置換基としては、例えば、アミノ基等が挙げられる。
【0041】
は、炭素数1〜2のアルキル基であり、例えば、メチル基、エチル基等が挙げられる。この中でも、エチル基が好ましい。
【0042】
上記(ロ)成分は、具体的には、アミノプロピルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン等を挙げることができる。この中でも、ヘキシルトリエトキシシランが好ましい。
【0043】
(ロ)成分は、さらに、炭素数が異なる二種のシラン化合物を含有することが好ましい。その組み合わせは特に制限はないが、(ロ−1)炭素数4〜9であるシラン化合物(「(ロ−1)成分」ともいう)と(ロ−2)炭素数10〜15であるシラン化合物(「(ロ−2)成分」ともいう)の組み合わせであることが好ましい。この中でも、ヘキシルトリエトキシシランとヘキシルトリメトキシシランであることが特に好ましい。
【0044】
(ロ)成分の市販品としては、アミノプロピルトリメトキシシラン(商品名「KBM602」、信越化学社製)、n−ヘキシルトリエトキシシラン(商品名「HTS−E」、チッソ社製)、n−ヘキシルトリメトキシシラン(商品名「HTS−M」、チッソ社製)、イソブチルトリメトキシシラン(商品名「AY43−048」、東レダウコーニング社製)、ヘキシルトリメトキシシラン(商品名「AY43−206M」、東レダウコーニング社製)、デシルトリメトキシシラン(商品名「AY43−210」、東レダウコーニング社製)、フェニルトリエトキシシラン(商品名「KBE−103」、信越化学社製)等を挙げることができる。
【0045】
(ロ)成分が炭素数の異なる二種のシラン化合物((ロ−1)成分及び(ロ−2)成分)を含有する場合、(ロ−1)成分の配合割合は、(イ−1)成分100質量部に対して、0.2〜19.8質量部であることが好ましい。更に好ましくは、1.5〜18.5質量部である。配合割合が0.2質量部未満であると、ゴムアスファルトの層との接着性が悪化する傾向がある。一方、配合割合が19.8質量部超であると、ゴムアスファルトの層との接着性が悪化する傾向がある。また、(ロ−2)成分の配合割合は、(イ−1)成分100質量部に対して、0.2〜19.8質量部であることが好ましい。更に好ましくは、1.5〜18.5質量部である。配合割合が0.2質量部未満であると、ゴムアスファルトの層との接着性が悪化する傾向がある。一方、配合割合が19.8質量部超であると、ゴムアスファルトの層との接着性が悪化する傾向がある。
【0046】
その他の組成物:
また、本発明のプライマー組成物には、必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、例えば、架橋剤、増量剤、増粘剤、消泡剤、防腐剤などを添加することができる。
【0047】
架橋剤としては、たとえば、エポキシ、イソシアネート、金属酸化物などを挙げることができる。この中でも、エポキシが好ましい。
【0048】
エポキシとしては、特に限定されず、ビスフェノールA型エポキシ、ビスフェノールF型エポキシ、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、トリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、脂肪酸変性エポキシ、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル、ジグリセリンポリグリシジルエーテル、ポリグリセリンポリグリシジルエーテル、ソルビトール系ポリグリシジルエーテルなどを挙げることができる。
【0049】
イソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどの脂肪族イソシアネート、1,3−シクロペンタンジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,2−シクロサキサンジイソシアネートなどの脂肪族環式イソシアネート、キシリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネートなどの芳香族イソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートメチルなどの脂環族イソシアネート、これらのヌレート体などの多量体及び混合物を用いることができる。
【0050】
架橋剤の配合量は、(イ−1)成分100質量部に対して、0.1〜10.0質量部、好ましくは0.3〜5質量部である。配合量が0.1質量部未満であると、架橋剤の添加効果がなく、接着性が悪化する傾向がある。一方、10.0質量部超であると、プライマー組成物のゲル化時間が早くなり、作業性が悪化する傾向がある。
【0051】
増量剤としては、また固形分濃度の増加や重量感を付与する目的で必要に応じて用いられる。このようなフィラーとしては、クレー、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、珪藻土、グラファイト、アルミナ、酸化鉄、酸化チタン、シリカ、ゴム粉末、ガラスフレーク、ベントナイト、水酸化アルミニウムや、ポルトランドセメント、アルミナセメント、早強セメントなどの水硬性粉体などを挙げることができる。この中でも、アルミナセメント、ポルトランドセメントが好ましい。
【0052】
上記増量剤の配合量は、上記(イ−1)成分100質量部に対して、0〜500質量部であることが好ましく、更に好ましくは、10〜450質量部、特に好ましくは、20〜400質量部である。500質量部を超えると、プライマー組成物の含有量が低くなり接着性が悪化する傾向がある。
【0053】
分散剤は、本発明のプライマー組成物において、充填剤の均一な分散と組成物粘度を保持するという役目を果たすものである。分散剤としては、トリポリリン酸塩、ピロリン酸塩などの無機系分散剤、ポリカルボン酸塩、ホルマリン縮合ナフタレンスルホン酸塩などの高分子分散剤などが挙げられ、好ましくは無機系分散剤である。
【0054】
分散剤の配合量は、(イ−1)成分100質量部に対し、0.3〜2質量部、好ましくは0.5〜1.5質量部である。0.3質量部未満であると、充填剤が均一に分散しない傾向がある。一方、2質量部超であると、粘度保持ができず、分離と充填剤の沈降現象が生起する傾向がある。
【0055】
消泡剤は、組成物の生産時における泡立ち防止、および加工時における泡立ち防止という役目を果たすものである。消泡剤としては、鉱物油ノニオン系界面活性剤、ポリジメチルシロキサンオイル、エチレンオキサイド又はプロピレンオキサイド変性の、ジメチルシリコーン又はジメチルシリコーンエマルジョンなどのシリコン系消泡剤、鉱物油、アセチレンアルコールなどのアルコール系消泡剤などが挙げられる。
【0056】
消泡剤の配合量は、(イ)成分(固形分換算)100質量部に対し、0.03〜1.50質量部、好ましくは0.03〜1.00質量部である。0.03質量部未満であると、充分な消泡効果が得られない傾向がある。一方、1.50質量部超であると、ハジキ現象が出て、加工製品の外観を悪くする傾向がある。
【0057】
増粘剤は、本発明のプライマー組成物において、下地への塗布性を良くする役目を果たすものである。増粘剤としては、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、カゼイン、非イオン系界面活性剤、ポリエーテルポリオール系などが挙げられ、好ましくは非イオン系界面活性剤、ポリエーテルポリオール系である。
【0058】
増粘剤の配合量は、(イ−1)成分(固形分換算)100質量部に対し、0.01〜5質量部であることが好ましく、更に好ましくは0.03〜2質量部である。0.01質量部未満であると、増粘効果が低く、塗布性が向上しない傾向がある。一方、5質量部超であると、プライマー層の耐水性が悪化し、接着性が悪くなる傾向がある。
【0059】
本発明のプライマー組成物は、前記(イ−1)成分(固形分換算)100質量部に対して、前記(ロ)成分が0.4〜20.0質量部含有していることが必要である。含有量は、1.0〜18.0質量%であることが好ましく、更に好ましくは1.5〜15.0質量%である。含有量が、0.4質量%未満であると、ゴムアスファルトの層との接着性が悪化する傾向がある。一方、20.0質量%超であると、プライマー組成物の保存安定性が悪化する傾向がある。
【0060】
プライマー組成物の製造方法:
本発明のプライマー組成物は、例えば、以下のようにして製造することができる。
まず、上記(イ)成分、(ロ)成分、及び必要に応じて添加剤を所定量加え、混合温度5〜40℃でラインブレンダー、ブレンダー、万能混合撹拌機などの混合機により混合し、プライマー組成物を調製する。
【実施例】
【0061】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、各種物性値の測定方法、及び諸特性の評価方法を以下に示す。
【0062】
[ゲル分(トルエン不溶分)測定]:
プライマー組成物の約5gをガラス板に薄く引き伸ばし、25℃で24時間乾燥させ、フィルムを得る。このフィルムを細かく切り、質量が約0.250〜0.350gとなるように1mg単位で秤量する(質量A)。次に、フラスコにトルエンを100ml計量し、上記フィルムを加え完全に密封状態にする。この状態で、室温において14〜18時間静置させた後、マグネチックスターラで1時間撹拌する。この溶液をNo.2濾紙で濾過する。予め、質量を測定しておいたアルミ皿(質量B)に上記濾液を20ml量り採る。その後、アルミ皿を乾燥させ、乾燥後のアルミ皿の質量を1mg単位で秤量する(質量C)。なお、測定回数は、3回とする。ゲル分(トルエン不溶分)は、下記式により計算される。
トルエン不溶分(質量%)=100−[(質量C−質量B)×5/質量A]×100
【0063】
[ガラス転移温度(Tg)]:
ガラス転移温度は、理学電気社製の示差走査熱量分析計(DSC)を用い、以下のようにして測定した。プライマー組成物の約5gをガラス板に薄く引き伸ばし、25℃で24時間乾燥させ、フィルムを得る。得られたフィルムのガラス転移温度を下記条件で測定する。
昇温速度 :20℃/分
雰囲気 :チッ素ガス
サンプル量:20mg
【0064】
[固形分濃度測定]:
ホットプレート法により算出した。試料1gをアルミ皿に取り160〜180℃で水分を気化させ気化前後の質量変化を測定した。
【0065】
[粘度測定]:
回転型粘時計(型番「BM型」、東京計器社製)の1〜4号ローターを使用し、60rpmで23℃、1分間供した。
【0066】
[粒子径測定]:
大塚電子社製の型番「FPAR1000」を用いて、動的光散乱法(測定温度23℃)により測定した。
【0067】
[pH測定]:
ガラス電極計(型番「HM30S」、東亜電波工業社製)に23℃で1分間供した。
【0068】
[紫外線劣化アスファルト含有層に対する接着性]:
スレート板上に、ゴムアスファルトエマルジョンとポリイソシアネートとの混合物の第一層、プライマー組成物の第二層、ゴムアスファルトエマルジョンとポリイソシアネートとの混合物の第三層、及び改質アスファルトルーフィングの第四層の順に複合層を形成し、改質アスファルトルーフィングの第四層を180°の角度で剥がしたときの剥離状態を以下のように評価した。
○:第三層が凝集破壊
△:○と×が混在し、○の割合が×よりも多い剥離状態
×:第一層と第二層との界面、又は第二層と第三層との界面での剥離
【0069】
[耐候性(プライマー層の紫外線暴露耐性)]:
プライマー層の紫外線暴露耐性は、単軸引張り試験によって評価した。この単軸引張り試験は、オートグラフ(型番「AG−500」、島津製作所社製)を用いて以下の条件で行った。
引張りスピード:3mm/min
【0070】
例えば、図1に示すように、コンクリート40上に、プライマー組成物の第一層11、ゴムアスファルトエマルジョンとポリイソシアネートとの混合物の第二層12、及び改質アスファルトルーフィングの第三層13の順に、これらの複合層10を形成し、複合層10の第三層13に40×40mmの単軸引張り試験用のアタッチメント20を接着させる。その後、第一から第三層に亘って、アタッチメント20の側面に沿う切り込み30を形成し、アタッチメント20を積層方向に引っ張ることにより行った。
【0071】
上記単軸引張り試験による結果は以下のよう評価した。
○:接着強度が0.3N/mm以上で、剥離状態が第二層の凝集破壊である。
△:接着強度が0.3N/mm以上、又は剥離状態が第二層の凝集破壊である。
×:接着強度が0.3N/mm以下で、剥離状態が、第一層と第二層との界面剥離、又は第一層と下地材(コンクリート)との界面剥離である。
【0072】
[金属等に対する接着性]:
図1のコンクリートに替えて金属材料上に、プライマー組成物の第一層、ゴムアスファルトエマルジョンとポリイソシアネートとの混合物の第二層、及び改質アスファルトルーフィングとの第三層を順に形成し、この第三層に40×40mmの単軸引張り試験用のアタッチメントを接着させ、上記単軸引張り試験によって評価した。単軸引張り試験は、オートグラフ(型番「AG−500」、島津製作所社製)を用いて以下の条件で行った。
引張りスピード:3mm/min
【0073】
上記単軸引張り試験による結果は以下のよう評価した。
○:接着強度が0.3N/mm以上で、剥離状態が第二層の凝集破壊である。
△:接着強度が0.3N/mm以上、又は剥離状態が第二層の凝集破壊である。
×:接着強度が0.3N/mm以下で、剥離状態が、第一層と第二層との界面剥離、又は第一層と下地材(金属材料)との界面剥離である。
【0074】
[作業性]:
プライマー組成物の取り扱いの容易さ(作業性)について評価した。取り扱いの容易さは、塗布軽さ、伸び、刷毛もち性、及び洗浄性で評価した。
【0075】
「塗布軽さ」とは、刷毛等で下地材に塗布する場合の抵抗力であり、200×300mmスレート下地材に実際に塗布したときの抵抗力を感触にて評価した。
○:ほとんど抵抗なく塗布できる。
△:若干抵抗はあるが、なんとか塗布できる。
×:抵抗力が強く、塗布しにくい。
【0076】
「伸び」とは、プライマー組成物を刷毛等に含浸させ、これによって1回で塗布可能な面積であり、200×300mmのスレート下地材に実際に塗布して評価した。
○:2/3程度は塗布できる。
△:1/2程度は塗布できる。
×:ほとんど塗布できない。
【0077】
「刷毛もち性」とは、塗布した刷毛等の刷毛の硬さであり、200×300mmのスレート下地材全面にプライマー組成物を塗布し、直後の刷毛の硬さを観察して評価した。
○:使用前とほとんど変わらない硬さ。
△:若干硬くなる程度の硬さ。
×:硬くなり、再使用は不可能な状態。
【0078】
「洗浄性」とは、塗布した刷毛等を水道水で洗浄した後の刷毛等の再使用の可否であり、200×30mmのスレート下地材全面にプライマー組成物を塗布し、直後に水道水で刷毛を洗浄し、洗浄後の刷毛等の使用可能状態を評価した。
○:再使用が可能。
△:なんとか再使用が可能。
×:再使用ができない。
【0079】
(実施例1)
単量体混合物の調製:
予め、2−エチルヘキシルアクリレート(ビーエーエスエフジャパン社製、含有量99.7%)31部を容器に入れ、その後、n−ブチルアクリレート(ビーエーエスエフジャパン社製、含有量99.8%)25部、スチレン(三菱化学社製、含有量99.8%)41.0部、アクリル酸(大阪有機化学工業社製、含有量80.0%)1部、ポリエチレングリコールモノメタクリレート(日本油脂社製、含有量99.5%)2部、ドデシルベンゼンスルフォン酸ソーダ(花王社製、含有量25%)1.5部、及びイオン交換水30部を加えて撹拌し、単量体混合液を調製した。
【0080】
(イ)アクリル系エマルジョンの調製:
撹拌機、還流冷却器、温度計、滴下装置、及び窒素ガス導入管を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水70部、シード粒子(JSR社製、アクリル酸エステル/メタクリル酸共重合体、粒子径55nm)3部を仕込み、撹拌しながら内部温度が80℃になるまで加温した。内部温度65℃で過硫酸ナトリウム(三菱ガス化学社製、含有量100.0%)0.7部を加え、同時に、上記単量体混合液の滴下を開始し、4時間かけて滴下を終了させる。滴下終了後、さらに、80℃で4時間撹拌を続けた。その後、室温まで温度を下げて重合反応を完結させ、消泡剤として鉱油系(商品名「DF−122」、サンノプコ社製)0.1部、防腐剤としてメチルイソチアゾリン系(商品名「レバナックスF−30」、三祐化成研究所社製)0.05部を添加したものを(イ)アクリル系エマルジョンとした。この(イ)アクリル系エマルジョンは、固形分濃度(TSC)51.0質量%、粘度100mPa・s、pH4.1、粒子径190nmであり、(イ)アクリル系エマルジョン中のアクリル系重合体(A−1)は、ゲル分5質量%、ガラス転移温度−15℃、(A)構成単位41部、(B)構成単位59部であった。アクリル系重合体(A−1)の物性値を表1に示す。
【0081】
【表1】

【0082】
プライマー組成物の調製:
上記(イ)アクリル系エマルジョン(アクリル系重合体として100部)、ヘキシルトリエトキシシラン(商品名「HTS−E」、チッソ社製)3部、ヘキシルトリメトキシシラン(商品名「HTS−M」、チッソ社製)3部、消泡剤としてジメチルシリコーンエマルション系(商品名「CF2052」、東レダウコーニング社製)0.05部、増粘剤としてポリウレタン系(商品名「SNシックナーA812」、サンノプコ社製)0.05部を混合温度20℃で20分間、ブレンダー(型番「LR−41D」、ヤマト科学社製)によって混合してプライマー組成物を調製した。このプライマー組成物は、固形分濃度45.0%、800mPa・sであった。
【0083】
アスファルト複合層の作製:
予め、ゴムアスファルトエマルジョンを乳化することによって作製する。このゴムアスファルトエマルジョンとポリイソシアネートとを混合し、混合物をスレート板に1500g/mとなるように流し込み下地(「下地層」ともいう)を作製する。その後、この下地を紫外線に72時間暴露させる。さらに、上記下地に、プライマー組成物を150g/mで塗布し、プライマー組成物の塗膜(「プライマー層」ともいう)を形成する。このプライマー層を紫外線に72時間暴露させる。その後、に上記ゴムアスファルトエマルジョンとポリイソシアネートの混合物を1500g/mで塗布し、混合物の層を形成する。この混合物層の上に直ちに、改質アスファルトルーフィング(「ルーフィング層」ともいう)を貼り付ける。ここで、改質アスファルトルーフィングとは、ポリマーにて改質されたアスファルトを不織布に含浸させた防水性能を有する防水シートである。以上のようにして、「下地層−プライマー層−混合物層−ルーフィング層」からなるアスファルト複合層を作製し、このアスファルト複合層を50%RH雰囲気下、23℃で7日間養生する。養生後、上記ルーフィング層を指で剥がし、プライマー層の接着性(紫外線劣化アスファルト含有層に対する接着性)を評価した。
【0084】
「コンクリート−プライマー層−混合物層−ルーフィング層」複合層の作製:
コンクリート板上にプライマー組成物を150g/mで塗布し、プライマー組成物の層(プライマー層)を形成する。その後、このプライマー層を紫外線に72時間暴露させる。更にプライマー層の上に上記混合物を1500g/mで塗布し、混合物層を形成し、この混合物層の上に直ちに、改質アスファルトルーフィング(「ルーフィング層」ともいう)を貼り付け、ルーフィング層とした。以上のようにして、「コンクリート−プライマー層−混合物層−ルーフィング層」からなる複合層を作製し、50%RH雰囲気下23℃で7日間養生する。養生後、直ちに単軸引張り試験を行った。この試験によってプライマー層の耐候性(プライマー層の紫外線暴露耐性)を評価した。
【0085】
金属等複合層の作製:
まず、鉄鋼、アルミニウム、鉛、銅、及び鋳鉄に、#150のサンドペーパーで目荒しし、脱脂する。これら金属下地及びコンクリートに、それぞれプライマー組成物を塗布し、プライマー組成物の塗膜(プライマー層)を形成する。このプライマー層を24時間、屋外で暴露する。次に、プライマー層に上記ゴムアスファルトエマルジョンとポリイソシアネートとの混合物を1500g/mで塗布し、混合物層を形成する。この混合物層の上に直ちに、改質アスファルトルーフィングを貼り付け、ルーフィング層とした。以上のように、「金属−プライマー層−ルーフィング層」からなる金属等複合層を作製し、この金属等複合層を50%RH雰囲気下、23℃で7日間養生する。養生後、直ちに単軸引張り試験を行った。この試験によって金属材料に対するプライマー層の接着性(金属等に対する接着性)を評価した。なお、金属下地及びコンクリートにはプライマー組成物を150g/mで塗布した。プライマー組成物の配合処方、及び評価結果を表2に示す。
【0086】
作業性:
上記プライマー組成物の取り扱い易さ(作業性)は、「塗布軽さ」が○、「伸び」が○、「刷毛もち性」が○、「洗浄性」が○であった。
【0087】
【表2】

【0088】
(実施例2〜12、比較例1〜6)
表2に示す配合処方とすること以外は、上述した実施例1と同様にして実施例2〜12、比較例1〜6のアスファルト複合層、「コンクリート−プライマー層−混合物層−ルーフィング層」複合層、及び金属等複合層を作製し、同時にプライマー組成物の作業性について各種評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0089】
表2に示すように、実施例1〜12のアスファルト複合層、「コンクリート−プライマー層−混合物層−ルーフィング層」複合層、及び金属等複合層は、比較例1〜6のアスファルト複合層、「コンクリート−プライマー層−混合物層−ルーフィング層」複合層、及び金属等複合層に比べて、良好な接着性を有し、プライマー組成物の取り扱いも容易であることが明らかである。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明のプライマー組成物は、紫外線などの太陽光線に曝されて劣化したアスファルトを含む防水層に対しても良好な接着性を有し、紫外線などの太陽光線に曝されても良好な接着性を維持し(良好な耐候性を有し)、金属材料等との接着性も良好である接着層を形成することができ、かつ、取り扱いが容易であるため、施工中に紫外線等に曝されることの多い、屋根、屋上、ベランダ、地下構造物等に施工される防水層に用いる接着剤として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0091】
【図1】本発明のプライマー組成物により形成されたプライマー層を有する複合層の単軸張り試験における試験状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0092】
10:複合層、11:第一層、12:第二層、13:第三層、20:アタッチメント、30:切り込み、40:コンクリート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(イ)ゲル分が50質量%以下のアクリル系重合体を含有するアクリル系エマルジョンと、
(ロ)シラン化合物と、
を含有し、
前記アクリル系重合体100質量部に対して、前記(ロ)シラン化合物を0.4〜20.0質量部含むプライマー組成物。
【請求項2】
前記アクリル系重合体のガラス転移温度(Tg)が、−40〜15℃である請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
前記アクリル系重合体が、
(A)芳香族ビニル化合物単量体に由来する構成単位を10.0〜50.0質量%、及び
(B)(メタ)アクリル酸エステルに由来する構成単位を50.0〜90.0質量%(但し、(A)+(B)=100質量%)含有するものである請求項1又は2に記載のプライマー組成物。
【請求項4】
前記(ロ)シラン化合物が、下記一般式(1)で表される請求項1〜3のいずれか一項に記載のプライマー組成物。
【化1】

(Rは、置換基を有していてもよい炭素数1〜12のアルキル基を示し、また、Rは炭素数1〜2のアルキル基を示す。)
【請求項5】
前記(ロ)シラン化合物は、
(ロ−1)炭素数4〜9であるシラン化合物と、
(ロ−2)炭素数10〜15であるシラン化合物と、
を含有し、
前記アクリル系重合体100質量部に対して、(ロ−1)炭素数4〜9であるシラン化合物を0.2〜19.8質量部、(ロ−2)炭素数10〜15であるシラン化合物を0.2〜19.8質量部含む請求項1〜4のいずれか一項に記載のプライマー組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2007−254610(P2007−254610A)
【公開日】平成19年10月4日(2007.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−81307(P2006−81307)
【出願日】平成18年3月23日(2006.3.23)
【出願人】(000230397)株式会社イーテック (49)
【Fターム(参考)】