説明

プライマー組成物

【課題】鉄、銅等の金属、またはこれらにメッキしたメッキ鋼板、特に亜鉛メッキ鋼板に対する付着性に優れ、かつ、ポリアミド(ナイロン)樹脂を上塗り被膜とする場合の上塗り被膜との付着性にも優れ、特に、ガソホール性に優れたプライマー塗膜を形成できるプライマー組成物を提供する。
【解決手段】
(A)ポリアミドイミド樹脂、(B)ナイロン樹脂ビーズ、(C)エポキシ樹脂、(D)ポリオール樹脂及び(E)硬化剤を含有し、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分の樹脂固形分の総質量に対して、(A)成分の含有比率が10〜30質量%、(B)成分の含有比率が64〜19質量%、(C)成分の含有比率が10〜30質量%、(D)成分の含有比率が15〜1質量%、及び(E)成分の含有比率が1〜20質量%であることを特徴とするプライマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
鉄、銅等の金属、またはこれらにメッキしたメッキ鋼板、特に亜鉛メッキ鋼板に対する付着性に優れ、かつ、ポリアミド(ナイロン)樹脂を上塗り被膜とする場合の上塗り被膜との付着性にも優れ、ガソリン等の耐溶剤性にも優れたプライマー塗膜を形成できるプライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車のブレーキ系統、燃料系統または油圧系統の配管として、外側のプラスチックジャケット層が、内側の金属管の外周面上のクロメート層の上に押出された熱可塑性材料、特にポリアミド樹脂からなる層であることを特徴とする配管が知られている(例えば特許文献1参照)。しかしながら、この配管では、ガソホール(低濃度エタノール混合ガソリン;米国、ブラジルで、オクタン価及び二酸化窒素排出量低減等を目的に開発され実用化されている燃料)の浸漬後の付着性が不十分という欠点があった。
【0003】
金属管の表面処理方法として、金属管の外周面上に形成した亜鉛または亜鉛・ニッケル鍍金層と、該鍍金層上に形成した三価クロム化合物およびリン酸化合物を主成分とする化成処理層と、該化成処理層上に形成した縮合リン酸塩およびケイ酸マグネシウム系化合物を主成分とする防錆顔料を添加したエポキシ系樹脂塗料からなるエポキシ系樹脂中間層と、前記エポキシ系樹脂中間層上に形成された樹脂層(ポリフッ化ビニル樹脂、ポリフッ化ビニリデン樹脂又はポリアミド樹脂からなる層)とを形成する金属管の表面処理方法が知られている(例えば特許文献2参照)。しかしながら、この方法では、処理及び塗装に六価クロムは含まないものの、三価クロムを含んでおり、市場が要求する完全なクロムフリーではないという欠点と、ガソホールの浸漬後の付着性が不十分という欠点があった。
【0004】
また、自動車に使用する液体、特に燃料および圧液のための、金属製の内管と、内管の外面に形成されたアルミコートと、アルミコートに連結されたポリアミド層とから成る導管に関するものとして、アルミコートとポリアミド樹脂層との間に、クロムを含有しない表面処理層および/あるいは、市販のポリアミドプライマーを用いたプライマーコートを間挿する方法が知られている(例えば特許文献3参照)。しかしながら、耐ガソホール性(ガソホール浸漬後の塗膜付着性試験)が不十分であるという欠点があった。
【0005】
また、ポリアミドイミド樹脂にエポキシ樹脂を加えることにより、低温硬化性と高付着性を得られることが知られている(例えば、特許文献4参照)。しかしながら、塗膜が脆く折り曲げ加工性が不十分であるという欠点があった。
【0006】
また、金属物体被塗装面に、エポキシ樹脂とアミノ樹脂及び/又はフェノール樹脂とを含むバインダー成分(A);ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂及びフェノール樹脂を含むバインダー成分(B)及びα−オレフィン・α,β−エチレン性不飽和カルボン酸共重合体樹脂を含むバインダー成分(C)よりなる群から選ばれる少なくとも1種のバインダー成分に、無機防錆剤を配合してなるプライマー組成物を塗布し、得られたプライマー塗膜層を介して熱可塑性樹脂系塗料(フッ化ビニル樹脂系塗料、フッ化ビニリデン樹脂系塗料、ポリアミド樹脂系塗料のいずれか)を被覆し、熱可塑性樹脂被膜を形成することを特徴とする金属物体被覆方法が知られている(例えば特許文献5参照)。しかしながら、この方法では、ポリアミド樹脂系塗料を被覆した複層塗膜の耐ガソホール性が不十分という欠点があった。
【0007】
【特許文献1】特表平9−509723号公報
【特許文献2】特開2003−194288号公報
【特許文献3】特開2003−343767号公報
【特許文献4】特開平9−302226号公報
【特許文献5】再公表WO2003−033173号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、鉄、銅等の金属、またはこれらにメッキしたメッキ鋼板、特に亜鉛メッキ鋼板に対する付着性に優れ、かつ、ポリアミド(ナイロン)樹脂を上塗り被膜とする場合の上塗り被膜との付着性にも優れ、特に、ガソホール性に優れたプライマー塗膜を形成できるプライマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、ポリアミドイミド樹脂、ナイロン樹脂ビーズ、エポキシ樹脂、ポリオール樹脂及び硬化剤を特定割合で含有するプライマー組成物によって、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明は、(A)ポリアミドイミド樹脂、(B)ナイロン樹脂ビーズ、(C)エポキシ樹脂、(D)ポリオール樹脂及び(E)硬化剤を含有し、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分の樹脂固形分の総質量に対して、(A)成分の含有比率が10〜30質量%、(B)成分の含有比率が64〜19質量%、(C)成分の含有比率が10〜30質量%、(D)成分の含有比率が15〜1質量%及び(E)成分の含有比率が1〜20質量%であることを特徴とするプライマー組成物を提供するものである。
【0010】
また、本発明は、上記プライマー組成物において、(D)成分が、アクリル樹脂系ポリオール樹脂及び/又はポリエステル樹脂系ポリオール樹脂である請求項1に記載のプライマー組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記プライマー組成物において、(E)成分が、フェノール樹脂及び/又はアミノ樹脂であるプライマー組成物を提供するものである。
また、本発明は、上記プライマー組成物において、プライマー組成物が、ポリアミド樹脂被膜の下塗り塗料として用いられるプライマー組成物であるプライマー組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のプライマー組成物は、鉄、銅等の金属、またはこれらにメッキしたメッキ鋼板、特に亜鉛メッキ鋼板に対する付着性に優れ、かつ、ポリアミド(ナイロン)樹脂を上塗り被膜とする場合の上塗り被膜との付着性にも優れ、特に、ガソホール性に優れた性能を示すプライマー塗膜を形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、ポリアミドイミド樹脂、ナイロン樹脂ビーズ、エポキシ樹脂、ポリオール樹脂及び硬化剤を含有したプライマー組成物である。
本発明に用いる(A)成分のポリアミドイミド樹脂の樹脂酸価は、30mgKOH/g以下が好ましく、より好ましくは10mgKOH/g以下である。酸価が、30mgKOH/gを超えると、50℃での貯蔵安定性が低下することがあり、好ましくない。
また、(A)成分のポリアミドイミド樹脂の数平均分子量は、9,000〜28,000が好ましく、より好ましくは12,000〜25,000である。数平均分子量が、9,000未満では、ガソホール性が低下することがあり、28,000を超えると、塗装作業性が低下することがあり、好ましくない。また、(A)成分のポリアミドイミド樹脂は、溶剤可溶なものが好ましい。
本発明における(A)成分の役割は、ガソホール浸漬時の塗膜の膨潤を押さえ、ガソホール浸漬後のプライマー塗膜の付着性を確保することにある。
【0013】
ポリアミドイミド樹脂の製造法については、特に制限がなく、種々の製造法が挙げられる。ポリアミドイミド樹脂は、公知の製造法によって製造され、具体的には、酸無水物基を有する3価以上のポリカルボン酸(a)、2価のジカルボン酸(b)、芳香族イソシアネートまたは芳香族ジアミン(c)およびラクタム(d)を有機極性溶媒中で反応させて得られる。(a)〜(d)の割合としては、例えば、(a)と(b)の配合割合(a)/(b)が当量比で4/6〜9/1が好ましく、(c)の割合が(a)と(b)のカルボキシル基およびアミノ基の総数の比が8〜16が好ましく、(d)の割合が(a)、(b)及び(c)の総質量に対して0.1〜20質量%が好ましい。反応は、80〜150℃の温度範囲で有機極性溶媒の存在下、芳香族ジイソシアネートを用いる場合には遊離発生してくる炭酸ガスを反応系より除去しながら加熱縮合して行なわれる。反応時間は、バッチの規模、採用される反応条件により適宜選択される。
【0014】
有機極性溶媒としては、例えば、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、γ−ブチロラクトン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル等を単独でまたは2種以上組み合わせて使用することができ、その使用量は、生成するポリアミドイミド樹脂の1.0〜5.0倍(質量)が好ましい。ポリアミドイミド樹脂の合成終了後に、芳香族ジイソシアネートを用いた場合には、樹脂末端のイソシアネート基をさらにアルコール類、ラクタム類、オキシム類等のブロック剤でブロックすることもできる。
【0015】
市販されているポリアミドイミド樹脂としては、バイロマックスHR11NN、バイロマックス13NX、バイロマックス14ET(いずれも、東洋紡績(株)製)、HI−405−30、HPC−5000、HPC−5010S、HPC−5020、HPC−5030、HPC−6000、HPC−6100、HPC−7200、HPC−9000(いずれも、日立化成工業(株)製)などがある。
(A)成分のポリアミドイミド樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0016】
本発明に用いる(B)成分のナイロン樹脂ビーズの溶融温度は150℃以上が好ましく、より好ましくは170℃以上である。溶融温度が150℃未満では高温焼付時の樹脂の熱安定性が低下する傾向があり、好ましくない。
また、(B)成分のナイロン樹脂ビーズは、アルコール、エステル、ケトン類等の溶剤に不溶なナイロン樹脂ビーズが好ましい。
また、(B)成分のナイロン樹脂ビーズの平均粒径は5〜100μmが好ましく、より好ましくは10〜50μmである。平均粒径が5μm未満では塗料粘度が高くなる傾向があり、好ましくなく、100μmを超える場合は、貯蔵安定性が低下する傾向があり、好ましくない。
本発明における(B)成分のナイロン樹脂ビーズの役割は、プライマー塗膜と上塗り被膜であるポリアミド樹脂被膜との付着性を確保することにある。
【0017】
ナイロン樹脂ビーズとしては、ε−カプロラクタムの開環重合によるポリアミド6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合によるポリアミド66、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の縮重合によるポリアミド610、11−アミノウンデカン酸の縮重合によるポリアミド11、ω−ラウロラクタムの開環重合又は12−アミノドデカン酸の縮重合によるポリアミド12などが挙げられる。
【0018】
市販されているナイロン樹脂ビーズとしては、Rilsan Fine PowderD30 NATURELL、Rilsan Fine PowderD40NATURELL、Rilsan Fine PowderD50NATURELL、オルガソール1002DNAT1、オルガソール1002ES4NAT1、オルガソール2002ES4NAT3、オルガソール2002ES3NAT3、オルガソール3501EDXNAD1、3502DNAD1(いずれも、アルケマ(株)製)、SNPパウダー13、SNPパウダー19(いずれも、(株)メタルカラー製)、A1020LP(ユニチカ(株)社製)などが挙げられる。
(B)成分のナイロン樹脂ビーズは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0019】
本発明に用いる(C)成分のエポキシ樹脂のエポキシ基価は、30〜250mgKOH/gが好ましく、より好ましくは50〜130mgKOH/gである。エポキシ基価が、250mgKOH/gを超えると、メッキ鋼板に対する付着性が低下する傾向があり、また30mgKOH/g未満では塗装作業性が低下する傾向がある。
本発明における(C)成分のエポキシ樹脂の役割は、プライマー塗膜とメッキ鋼板との付着性を確保することにある。
【0020】
本発明に用いるエポキシ樹脂としては、1分子内にエポキシ基を2個以上有するものが好ましく、液状エポキシ、固体状エポキシ樹脂など従来より公知のものを特に制限なしに使用することができる。また、固体状エポキシ樹脂を使用する場合には、該樹脂を溶解もしくは分散可能な有機溶剤に溶解もしくは分散して使用する。
【0021】
市販されているエポキシ樹脂としては、jER1001、jER1002、jER1003、jER1055、jER1004、jER1007(いずれも、ジャパンエポキシレジン(株)社製)、エポトートYD−134、エポトートYD−011、エポトートYD−012、エポトートYD−013、エポトートYD−014、エポトートYD−017、エポトートYD−7011R、エポトートYD−907(いずれも、東都化成(株)社製)、D.E.R662E、D.E.R663UE、D.E.R664U、D.E.R667E(いずれも、ダウケミカル社製)等のビスフェノール/エピクロルヒドリン型エポキシ樹脂などが挙げられる。
(C)成分のエポキシ樹脂は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
本発明に用いられる(D)成分のポリオール樹脂としては、種々のポリオール樹脂が挙げられる。ポリオール樹脂は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(D)成分のポリオール樹脂としては、水酸基価30〜120mgKOH/g、好ましくは40〜70mgKOH/g、重量平均分子量が5,000〜50,000、好ましくは7,000〜30,000、及び酸価0〜25mgKOH/g、好ましくは0〜15mgKOH/gを有するポリオール樹脂が望ましい。
該ポリオール樹脂の水酸基価が30mgKOH/g未満であると、得られる塗膜の架橋密度の不足によるガソホール後の付着性が低下し、120mgKOH/gを超えると、40℃での塗料の貯蔵安定性が低下し好ましくない。
重量平均分子量が5,000未満であると、架橋反応が不十分であるためガソホール後の付着性が低下し、50,000を超えると、40℃での塗料の貯蔵安定性が低下し好ましくない。
酸価が25mgKOH/gを超えると、40℃での塗料の貯蔵安定性が低下し好ましくない。
【0023】
本発明のポリオール樹脂としては、アクリル樹脂系ポリオール樹脂、ポリエステル樹脂系ポリオール樹脂等が挙げられる。
本発明に用いる(D)成分のアクリル樹脂系ポリオール樹脂、ポリエステル樹脂系ポリオール樹脂は、それぞれ単独で用いてもよく、また混合して用いてもよい。
本発明の(D)成分は、配合樹脂中の硬化剤成分と反応し架橋塗膜を得ることにある。
【0024】
ポリオール樹脂がアクリル樹脂系ポリオール樹脂(アクリルポリオール樹脂ともいう。)の場合は、下記水酸基を含有する重合性不飽和単量体をベースとして、その他の共重合可能な重合性不飽和単量体及び/又はアクリル系エステルを重合又は共重合することにより得られる。
水酸基を含有する重合性不飽和単量体としては、例えば、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロキシプロピルメタクリレート、ヒドロキシブチルメタクリレート、1,4−ブタンジオールモノメタクリレート、ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ヒドロキシブチルアクリレート、1,4−ブタンジオールモノアクリレート等が挙げられる。また、アクリル系エステルを形成する炭素数1〜18のアルキルアルコールは、直鎖状、分岐鎖状、環状のアルキル基を有するアルコールのいずれであってもよい。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0025】
その他共重合可能な重合性不飽和単量体としては、例えば、ホスマー(商品名、ユニケミカル社製)、メタクリル酸グリシジル、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、3,4−エポキシシクロヘキシルメチルメタクリレート、3,4−エポキシシクロ−10−ヘキシルメチルアクリレート、メタクリル酸フェニル、アクリル酸フェニル、α−メチルスチレン、p−ビニルトルエン、メタクリルアミド、アクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、アクリル酸−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル、エチルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、2−エチルヘキシルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル等の脂肪族ビニルエーテル化合物、さらには2,3−ジヒドロフラン、3,4−ジヒドロ−2H−ピラン、トリメトキシシリルプロピルメタクリレート、無水マレイン酸、無水イタコン酸、マレイン酸エステル類、フマル酸エステル類、スチレン、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、クロトン酸2−ヒドロキシエチル、クロトン酸2−ヒドロキシプロピル、クロトン酸3−ヒドロキシプロピル、クロトン酸3−ヒドロキシブチル、クロトン酸4−ヒドロキシブチル、クロトン酸5−ヒドロキシペンチル、クロトン酸6−ヒドロキシヘキシル、アリルアルコール、アリルグリシジルエーテル等のアリル基含有化合物、クロトン酸メチル、クロトン酸エチル、クロトン酸プロピル等のクロトン酸アルキルエステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、カプリル酸ビニル、カプリン酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の脂肪族カルボン酸ビニルエステル、シクロヘキサンカルボン酸ビニルのような脂環式カルボン酸ビニルエステル、安息香酸ビニル、桂皮酸ビニル、p−t−ブチル安息香酸ビニルのような芳香族カルボン酸ビニルエステル等が挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0026】
共重合可能なアクリル酸系エステルの例としては、例えば、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸−n−プロピル、メタクリル酸イソプロピル、メタクリル酸−n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸−t−ブチル、メタクリル酸ペンチル、メタクリル酸ヘキシル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸−2−エチルヘキシル、メタクリル酸アダマンチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸−n−プロピル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸−n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸−t−ブチル、アクリル酸ペンチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸−2−エチルヘキシル、アクリル酸アダマンチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸、アクリル酸、イタコン酸、メサコン酸、マレイン酸、フマル酸、ω−カルボキシ−ポリカプロラクトン(n=2)モノアクリレート(例えば、アロニックスM−5300(商品名、東亞合成化学工業(株)製))、フタル酸モノヒドロキシエチルアクリレート(例えば、アロニックスM−5400(商品名、東亞合成化学工業(株)製))、アクリル酸ダイマー(例えば、アロニックスM−5600(商品名、東亞合成化学工業(株)製))等が挙げられる。これらは1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0027】
その他の共重合性不飽和単量体、共重合可能なアクリル酸系エステルは、必須成分ではなく、塗膜を設計する上で、基材や使用目的等に応じて必要に応じて、適宜選び用いられる。
水酸基を有する重合性不飽和単量体等を重合又は共重合させる方法については特に制限はなく、公知の方法、例えば、有機溶剤中における溶液重合、懸濁重合、乳化重合、塊状重合、沈殿重合等を用いることができる。また、その重合方式についても特に制限はなく、例えば、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合のいずれも用いることができるが、これらの中で、工業的な面からラジカル重合が好適である。ラジカル重合において用いられる重合開始剤としては、例えば、t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド、t−ブチルパーオキシネオデカネート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、メチルエチルケトンパーオキシド等の有機過酸化物、あるいは2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオニトリル)(AIBN)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)等のアゾ系開始剤を好ましく挙げることができる。もちろん、これらに限定されるものではない。これらのラジカル重合開始剤は1種用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0028】
ラジカル重合時の反応温度は、一般的に60〜150℃が好ましい。この温度が60℃未満であると、ラジカル重合開始剤が分解しにくく、反応が進行しにくいし、150℃を超えると、ラジカル重合開始剤が熱により分解してラジカルを生成しても、その寿命が短く、効果的に生長反応が進行しにくい。重合時間は、重合温度やその他の条件に左右され、一概に定めることはできないが、一般に2〜6時間程度で十分である。
【0029】
また、(D)成分のポリオール樹脂がポリエステル樹脂系ポリオール樹脂(ポリエステルポリオール樹脂ともいう。)の場合には、多塩基酸と多価アルコールとを反応せしめてなるものであり、多塩基酸としては、例えば無水フタル酸、テトラヒドロ無水フタル酸、イソフタル酸、無水マレイン酸、フマル酸、無水トリメリット酸、メチレントリシクロヘキセントリカルボキシル無水物、無水ピロメリット酸、イタコン酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水ハイミック酸、無水コハク酸、無水ヘット酸などが挙げられ、多価アルコールとしては、例えばエチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、ソルビトールなどが挙げられる。さらに、該ポリエステル樹脂は一塩基酸、脂肪酸、油成分などで変性したものでも差し支えない。さらに、該ポリエステル樹脂の水酸基の導入は例えば1分子中に3個以上の水酸基を有する多価アルコールによって容易に行える。
【0030】
本発明に用いる(E)成分の硬化剤としては、フェノール樹脂及びアミノ樹脂が好ましく、それぞれ単独で用いてもよく、あるいは併用してもよい。
本発明における(E)成分の硬化剤の役割は、配合樹脂中の樹脂成分と反応し熱硬化性塗膜を得ることにある。
フェノール樹脂の数平均分子量としては、300〜1,500が好ましく、より好ましくは400〜1,000である。数平均分子量が300未満では、硬化塗膜の折り曲げ性が低下する傾向があり、1,500を超える場合は、50℃での塗料の貯蔵安定性が低下する傾向があり、好ましくない。
【0031】
フェノール樹脂は、フェノール類とホルムアルデヒド類とを反応させて得られる。フェノール樹脂を得るために用いられるフェノール類としては、例えば、フェノール、メチルフェノール、p−エチルフェノール、p−n−プロピルフェノール、p−イソプロピルフェノール、p−n−ブチルフェノール、p−tert−ブチルフェノール、p−tert−アミルフェノール、o−クレゾール、m−クレゾール、p−クレゾール、p−シクロヘキシルフェノール、p−オクチルフェノール、p−ノニルフェノール、3,5−キシレノール、レゾルシノール、カテコールなどの1分子中にベンゼン環を1個有するフェノール類;フェニルo−クレゾール、p−フェニルフェノールなどの1分子中にベンゼン環を2個有するフェノール類;ビスフェノールA、ビスフェノールFなどを挙げられ、これらは、単独でも2種類以上を混合しても使用することができる。また、ホルムアルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、トリオキサンなどが挙げられる。
【0032】
上記フェノール類とホルムアルデヒド類との反応には触媒として無機酸、有機酸及び有機酸金属塩等を使用することができる。
フェノール類は、レゾール型フェノール樹脂でもノボラック型フェノール樹脂であっても良い。中でもレゾール型フェノール樹脂であることが好適である。また、必要に応じて、天然樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等で適宜変性されたフェノール樹脂であっても良い。上記フェノール樹脂は単独でも、2種類以上を選択し、使用してもよい。
【0033】
また、アミノ樹脂の重量平均分子量としては、600〜20,000が好ましく、より好ましくは1,000〜10,000である。重量平均分子量が800未満では硬化塗膜の折り曲げ性が低下する傾向があり、20,000を超える場合は、ガソホール性が低下する傾向があり、好ましくない。
アミノ樹脂としては、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、アセトグアナミン樹脂、ステログアナミン樹脂、スピログアナミン樹脂、ジシアンジアミド等のアミノ成分とアルデヒドとの反応によって得られるメチロール化アミノ樹脂が挙げられるが、アミノ樹脂はエポキシ樹脂、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂等で変性されていても良い。折り曲げ加工性の点で、メラミン樹脂が好ましい。上記アミノ樹脂は単独でも、2種類以上を選択し、使用してもよい。
(E)成分の硬化剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
(A)成分のポリアミドイミド樹脂、(B)成分のナイロン樹脂ビーズ、(C)成分のエポキシ樹脂、(D)成分の硬化剤のプライマー組成物中の含有比率は、(A)成分、(B)成分、(C)成分及び(D)成分の樹脂固形分の総質量に対して、(A)成分が10〜30質量%、(B)成分が64〜19質量%、(C)成分が10〜30質量%、(D)成分が15〜1質量%、(E)成分が1〜20質量%である。
より好ましくは、(A)成分が15〜22質量%、(B)成分が57〜25質量%、(C)成分が15〜25質量%、(D)成分が12〜2質量%、(E)成分が3〜13質量%である。
(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分の含有比率の合計は100質量%となる。なお、樹脂固形分は、JIS K5601−1−2に記載された方法で測定された加熱残分をいう。
【0035】
(A)成分が、10質量%未満の場合、ガソホール浸漬後のプライマー塗膜と上塗り被膜との付着性(二次付着)が低下し、30質量%を超えると、プライマー塗膜と上塗り被膜との初期の付着性(一次付着)が低下し好ましくない。
(B)成分が、19質量%未満の場合、プライマー塗膜と上塗り被膜との一次付着が低下し、64質量%を超えるとガソホール浸漬後のプライマー塗膜と上塗り被膜との二次付着が低下し好ましくない。
(C)成分が、10質量%未満の場合、プライマー塗膜とメッキ鋼板との付着性が低下し、30質量%を超えると、折り曲げ加工性が低下し好ましくない。
(D)成分が、1質量%未満の場合、プライマー塗膜と上塗り被膜との一次付着が低下し、15質量%を超えるとガソホール浸漬後のプライマー塗膜と上塗り被膜との二次付着が低下し好ましくない。
(E)成分が、1質量%未満の場合、ガソホール浸漬後のプライマー塗膜と上塗り被膜との付着性が低下し、20質量%を超えると折り曲げ加工性が低下し好ましくない。
【0036】
本発明のプライマー組成物には、耐食性を向上させる目的で、防錆顔料を配合することができる。防錆顔料としては、通常、下塗り塗料に用いる防錆顔料が使用できる。
具体的な防錆顔料としては、例えば、ジンククロメート、ストロンチウムクロメートなどのクロム系顔料、及びクロムを含まない無公害型の防錆顔料のいずれも使用できるが、環境保全の点から無公害型防錆顔料の使用が好ましい。
【0037】
無公害型防錆顔料としては、例えばリン酸亜鉛系防錆顔料、リン酸マグネシウム系防錆顔料、燐酸アルミニウム系防錆顔料、リン酸カルシウム系防錆顔料、亜燐酸亜鉛系防錆顔料、亜燐酸マグネシウム系防錆顔料、亜燐酸カルシウム系防錆顔料、亜燐酸アルミニウム系防錆顔料等の縮合燐酸塩系防錆顔料、縮合燐酸塩の表面を金属化合物で処理した顔料;モリブデン酸亜鉛系防錆顔料、シアナミド亜鉛系防錆顔料、シアナミド亜鉛カルシウム系防錆顔料等の亜鉛系防錆顔料;シリカ等が挙げられる。これらは単独で、又は2種類以上を混合して、使用できる。
【0038】
本発明のプライマー組成物には、防錆顔料以外の無機顔料、有機顔料、加工顔料等、従来から塗料用として使用される顔料が必要に応じて配合できる。有機顔料としては、例えば、アゾレーキ系顔料、フタロシアニン系顔料、インジゴ系顔料、ペリレン系顔料、キノフタロン系顔料、ジオキサジン系顔料、キナクリドン系顔料、イソインドリノン系顔料、金属錯体顔料等が挙げられる。また、無機顔料としては、例えば、黄色酸化鉄、べんがら、二酸化チタン、カーボンブラック等が挙げられる。
また、必要であれば、アルミ顔料、パール顔料等の鱗片状顔料も配合できる。これらの顔料は、特に限定されることなく、単独、又は2種類以上を混合して、使用できる。
【0039】
本発明のプライマー組成物は、(A)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分の各成分を有機溶剤に溶解もしくは分散して使用することが好ましい。該有機溶剤としてはヘキサン、ヘプタン、イソオクタン、不飽和脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、(o−、m−、p−)シクロヘキサン、ジオキサン、テトラヒドロフラン、セロソルブ、メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、2−メトキシエタノール2−ブトキシエタノールジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、アセトンメチルエチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸イソブチル、酢酸ペンチル、3−メトキシブチルアセテート、2−エチルヘキシルアセテート、酢酸ベンジル、酢酸シクロヘキシル、エチレングリコールモノアセテート、酢酸セロソルブ、酢酸カルビトール、アセト酢酸エチル、ピリジン、N−メチル−2−ピロリドン、ホルムアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、アセトアミドなどが挙げられる。
【0040】
本発明のプライマー組成物を塗布する素材としては、鉄、銅などの金属板、またはこれらにメッキしたメッキ鋼板が好ましく用いられるが、特に、亜鉛メッキ鋼板が好ましい。プライマー組成物を塗布する際には、素材の表面に塗装前処理を施すことが好ましく、この塗装前処理としては、プレコートメタル用前処理として用いられる化成処理ならいずれでもよく、例えばクロメート化成処理、リン酸塩化成処理、複合酸化皮膜処理などが挙げられる。
【0041】
本発明のプライマー組成物の塗装方法は、種々の塗装方法により行うことができ、例えば、ロールコーター、フローコーター、ディッピング、又は、スプレー等による塗装方法が用いられる。なかでも、ロールコーターによる塗装が、膜厚制御と均一性を得る点で好ましい。プライマー組成物を塗布した塗膜は、通常100〜300℃で、5秒〜5分間の硬化条件で焼付けを行えばよく、例えばロールコーターによって塗装するプレコート塗装分野においては、通常、素材到達最高温度が120〜260℃で、15〜120秒間の硬化条件で硬化すれば良い。
本発明のプライマー組成物を塗布して得られるプライマー塗膜の乾燥塗膜厚は、通常1〜10μmの範囲が好ましく、より好ましくは3〜7μmである。
【0042】
本発明のプライマー塗膜の上に被覆する被膜としては、ポリアミド(ナイロン)樹脂の被膜が、付着性の点で好ましい。ポリアミド(ナイロン)樹脂としては、本発明のプライマー組成物に用いたナイロン樹脂ビーズと同じ組成のε−カプロラクタムの開環重合によるポリアミド6、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の縮重合によるポリアミド66、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の縮重合によるポリアミド610、11−アミノウンデカン酸の縮重合によるポリアミド11、ω−ラウロラクタムの開環重合又は12−アミノドデカン酸の縮重合によるポリアミド12などが挙げられ挙げられる。ポリアミド樹脂の被膜を形成する方法としては、例えば、ポリアミド樹脂の融点以上の温度で加熱して溶融したものをシート状にして、被膜を形成する方法が挙げられるが、これに限定されず、種々の方法が挙げられる。
ポリアミド樹脂の被膜の膜厚は、50〜200μmが好ましく、より好ましくは、80〜150μmである。
【実施例】
【0043】
以下に、本発明を製造例、実施例、比較例により更に具体的に説明する。尚、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下、特に明記しない限り、「部」および「%」はそれぞれ「質量部」および「質量%」を意味する。また、表1〜表3において、各成分の配合量を示す数値の単位は、質量部である。
なお、実施例、比較例において、各項目の評価は下記の方法にて行なった。
【0044】
<塗装作業性および塗膜の評価方法>
(プライマー組成物の塗装作業性)
希釈溶剤(N−メチルピロリドン/イソホロン=50/50(質量比)の混合溶剤)でプライマー組成物をフォードカップNo.4(25℃)で60秒に希釈し、その希釈したプライマー組成物を、電気亜鉛メッキ鋼板(縦100mm、横67mm、厚さ0.3mm)の表面に乾燥塗膜厚が4〜6μmになるようにバーコーター塗装する。この時のプライマー塗膜の肌を、以下の基準に従って評価し、プライマー組成物の塗装作業性の評価とした。
◎:問題なし。
○:実用上問題なし。
×:ラウンド肌になり、実用上問題がある。
【0045】
一次付着性能
希釈溶剤(N−メチルピロリドン/イソホロン=50/50(質量比)の混合溶剤)でプライマー組成物をフォードカップNo.4(25℃)で60秒に希釈し、その希釈されたプライマー組成物を電気亜鉛メッキ鋼板(縦100mm、横67mm、厚さ0.3mm)の表面に乾燥塗膜厚が4〜6μmになるようにバーコーター塗装した後、ただちに260℃で40秒間、焼付硬化する。このとき、縦40mm程度、プライマー組成物が塗装されていない部分を作成しておく。
次に、ナイロンペレット(商品名:Rilsan B BMF O(アルケマ社製))を300℃で溶融し、100〜110μmになるようにアプリケーターで塗装する。このとき、プライマー組成物が塗装されていない部分も同時に塗装し連続膜として、試験板を得た。得られた試験板の縦方向に10mm幅で塗膜に切り込みを入れ、プライマー組成物が塗装されていない部位からナイロン塗膜を一定速度でひっぱり、プライマー組成物が塗装されている部位の剥離状態を下記の基準により評価した。
【0046】
(i)メッキ鋼板とプライマー塗膜の付着性
◎:プライマー塗膜部位でナイロン塗膜が破断する。
○:プライマー塗膜部位で凝集破壊または界面剥離した後、ナイロン塗膜が破断する。
×:メッキ鋼板とプライマー塗膜との界面剥離はあるが、ナイロン塗膜は破断しない。
【0047】
(ii)プライマー塗膜と上塗り被膜との初期の付着性
メッキ鋼板とプライマー塗膜の付着性(一次付着)と同様にして試験板を作成し、プライマー塗膜とナイロン塗膜との初期の付着性(一次付着)を下記の基準により評価した。
◎:プライマー塗膜部位でナイロン塗膜が破断する。
○:プライマー塗膜部位で凝集破壊または界面剥離した後、ナイロン塗膜が破断する。
×:プライマー塗膜とナイロン塗膜との界面剥離はあるが、ナイロン塗膜は破断しない。
【0048】
(折り曲げ性)
希釈溶剤(N−メチルピロリドン/イソホロン=50/50(質量比)の混合溶剤)でプライマー組成物をフォードカップNo.4(25℃)で60秒に希釈し、その希釈したプライマー組成物を電気亜鉛メッキ鋼板(縦100mm、横67mm、厚さ0.3mm)の表面に乾燥塗膜厚が4〜6μmになるようにバーコーター塗装した後、ただちに260℃で40秒間、焼付硬化し、折り曲げ性用の試験板とした。
折り曲げ性試験として、20℃の室温にて、幅5cmに切断した試験片について、0Tでは何も挟まず、1Tでは試験片と同ーの塗板を1枚、2Tでは試験片と同ーの塗板を2枚内側にはさみ塗膜を外側にして180度密着曲げを行い、4Tでは同一の塗板を4枚内側にはさみ塗膜を外側にし180度密着曲げを行う試験を行った。折り曲げ性は、この折り曲げ試験結果を、下記基準に従って評価した。
◎:4Tで亀裂の発生がない。
○:4T折り曲げ時僅かに亀裂があるが、実用上問題なし。
×:クラックを生じ、実用上問題がある。
【0049】
(ガソホール浸漬後のプライマー塗膜と上塗り被膜との付着性(二次付着))
希釈溶剤(N−メチルピロリドン/イソホロン=50/50(質量比)の混合溶剤)でプライマー組成物をフォードカップNo.4(25℃)で60秒に希釈し、その希釈されたプライマー組成物を電気亜鉛メッキ鋼板(縦100mm、横67mm、厚さ0.3mm)の表面に乾燥塗膜厚が4〜6μmになるようにバーコーター塗装した後、ただちに260℃で40秒間、焼付硬化する。このとき、縦40mm程度、プライマー組成物が塗装されていない部分を作成しておく。
【0050】
次に、ナイロンペレット(商品名:Rilsan B BMF O(アルケマ社製))を300℃で溶融し、100〜110μmになるようにアプリケーターで塗装する。このとき、プライマー組成物が塗装されていない部分も同時に塗装し連続膜として試験板を得た。得られた試験板を、20℃×120時間、ガソホールに浸漬した後、1時間室温に放置し、縦方向に10mm幅で塗膜に切り込みを入れ、プライマー組成物が塗装されていない部位からナイロン塗膜を一定速度でひっぱり、プライマー組成物が塗装されている部位の剥離状態を下記の基準により評価した。
◎:プライマー塗膜部位でナイロン塗膜が破断する。
○:プライマー塗膜部位で凝集破壊または界面剥離した後、ナイロン塗膜が破断する。
×:プライマー塗膜部位での界面剥離または凝集破壊はあるが、ナイロン塗膜は破断しない。
【0051】
樹脂製造例1(アクリル樹脂系ポリオール樹脂溶液D−1の製造)
温度計、攪拌機、還流用コンデンサーおよびモノマー滴下装置を備えたガラス製の2Lのフラスコに300部のキシレンを仕込み、徐々に昇温して還流状態にする。還流状態に保ち、スチレン60部、ブチルアクリレート90部、メチルメタクリレート120部、ブチルメタクリレート204部、ヒドロキシエチルメタクリレート120部、アクリル酸6部と重合開始剤パーブチルZ(商品名、日本油脂(株)社製;t−ブチルペルオキシベンゾエート)11部の混合溶液を、3時間を要して滴下装置から滴下した。滴下終了後3時間還流状態に保ち、ついでパーブチルZの1部およびキシレン10部を混合し、滴下装置から滴下した。さらに、2時間還流温度に保ち反応を続けた後、キシレン78部を加え室温まで冷却して、樹脂固形分61質量%のアクリル樹脂系ポリオール樹脂溶液D−1を得た。原料の配合量、及び得られたアクリル樹脂系ポリオール樹脂の物性を表1に示した。
【0052】
樹脂製造例2(アクリル樹脂系ポリオール樹脂溶液D−2の製造)
樹脂製造例1と同様にして、表1に示すアクリル樹脂系ポリオール樹脂溶液D−2を得た。原料の配合量、及び得られたアクリル樹脂系ポリオール樹脂の物性を表1に示した。
【0053】
樹脂製造例3(ポリエステル樹脂系ポリオール樹脂溶液D−3の製造)
温度計、攪拌機を備えた、ガラス製の2Lのフラスコに、ブチルエチルプロパンジオール187.3部、トリメチロールプロパン18.8部、1,6ヘキサンジオール94部、無水フタル酸31.3部、アジピン酸295.2部を仕込み、徐々に昇温して140℃にした後、3時間をかけ190℃まで昇温した。2時間、190℃に保持し、エステル化反応をすすめた後、2時間をかけ210℃まで昇温し、樹脂酸価が10以下になるまでエステル化反応を行った。得られた樹脂を冷却し、キシレン373.4部を加え、固形分60質量%のポリエステル樹脂系ポリオール樹脂溶液D−3を得た。原料の配合量、及び得られたポリエステル樹脂系ポリオール樹脂の物性を表2に示した。
【0054】
プライマー組成物の製造例 P−1
分散機にバイロマックスHR11NN(ポリアミドイミド樹脂、商品名、東洋紡績(株)社製、数平均分子量15000、樹脂固形分15%)381.8部、硫酸バリウムSS−50(体質顔料、商品名、堺化学社製)9.5部、艶消し剤HK125(防錆顔料、商品名、デグサ社製)22.3部、N−メチルピロリドン50部、およびイソホロンを50部仕込み、粒度が30μm以下になるまで分散する。目的の粒度になったら、分散を止め、Rilsan
Fine Powder D30 NATURELL(ナイロン樹脂ビーズ、商品名、アルケマ社製、平均粒径25μm)165.5部、N−メチルピロリドン50部、イソホロン50部を混合した溶剤とjER1001(エポキシ樹脂、商品名、ジャパンエポキシレジン社製;エポキシ価118、樹脂固形分100質量%)57.3部を溶解してなる溶液、アクリル樹脂系ポリオール樹脂溶液D−1の20.9部、ショウノールCKS−704(フェノール樹脂、昭和高分子社製、数平均分子量430、樹脂固形分59質量%)21.6部、ユーバン80S(メラミン樹脂、商品名、三井化学社製、重量平均分子量3700、樹脂固形分50質量%)25.5部、N−メチルピロリドン47.8部、イソホロン47.8部を加えて取り出し、充分攪拌し、表3に示すプライマー組成物の製造例のP−1を得た。なお、表3〜5に示すプライマー組成物の特性値の欄に記載されている加熱残分の数値は、プライマー組成物の全質量に対する加熱残分の含有割合(質量%)を示したものであり、加熱残分の内訳は、樹脂と顔料であり、樹脂と顔料の含有割合(質量%)の数値を合計すると加熱残分の含有割合(質量%)になる。
【0055】
プライマー組成物の製造例 P−2〜P−3、P−5〜P−22
プライマー組成物の製造例P−1と同様にして、表3〜表5に示すP−2〜P−3、P−5〜P−22を得た。
【0056】
プライマー組成物の製造例 P−4
攪拌機にバイロマックスHR13NX(ポリアミドイミド樹脂、商品名、東洋紡績(株)社製、数平均分子量10000、樹脂固形分30質量%)224部、オルガソール2002ES3NAT3(ナイロン樹脂ビーズ、アルケマ社製、平均粒径40μm)147.2部、N−メチルピロリドン50部、イソホロン50部を混合した溶剤とjER1001(エポキシ樹脂、商品名、ジャパンエポキシレジン社製、エポキシ価118、樹脂固形分100質量%)64部を溶解してなる溶液、、アクリル樹脂系ポリオール樹脂溶液D−2の26.2部、ショウノールCKS−704(フェノール樹脂、昭和高分子社製、数平均分子量430、樹脂固形分59質量%)21.7部、ユーバン20SB(メラミン樹脂、三井化学社製、重量平均分子量5780、樹脂固形分50質量%)25.6部、N−メチルピロリドン195.7部、イソホロン195.6部を加えて、充分攪拌し、表3に示すプライマー組成物の製造例のP−4を得た。
【0057】
実施例 1
プライマー組成物製造例P−1を用い、(プライマー組成物の塗装作業性)に記載の方法で、プライマー組成物の作業性を評価し、その結果を表4に示した。 次に、(折り曲げ性)に記載の方法で、折り曲げ性を評価し、その結果を表4に示した。次に、(メッキ鋼板とプライマー塗膜の付着性(一次付着))および(プライマー塗膜と上塗り被膜との初期の付着性(一次付着))に記載の方法で、付着性を評価し、その結果を表4に示した。さらに、(ガソホール浸漬後のプライマー塗膜と上塗り被膜との付着性(二次付着))に記載の方法で付着性を評価し、その結果を表6に示した。
【0058】
実施例2〜14、比較例1〜8
実施例1と同様にして、各項目を評価し、その結果を表6及び表7にまとめた。
【0059】
【表1】

【0060】
【表2】

【0061】
【表3】

【0062】
【表4】

【0063】
【表5】

【0064】
表中のカッコ付き数字は、以下に示すものである。
1):バイロマックス HR11NN:ポリアミドイミド樹脂、商品名、東洋紡績(株)製、数平均分子量10,000、樹脂固形分15質量%
2):バイロマックス HR13NX:ポリアミドイミド樹脂、商品名、東洋紡績(株)製、数平均分子量10,000、樹脂固形分30質量%
3):HI−405−30:ポリアミドイミド樹脂、商品名、日立化成工業(株)製、数平均分子量19,000、樹脂固形分30質量%
4):Rilsan Fine Powder D30 NATURELL:溶剤不溶なナイロン樹脂ビーズ、商品名、アルケマ社製、平均粒径25μm
5):オルガソール 2002ES4NAT3:溶剤に不溶なナイロン樹脂ビーズ、商品名、アルケマ社製、平均粒径40μm
【0065】
6):オルガソール 2002ES3NAT3:溶剤に不溶なナイロン樹脂ビーズ、商品名、アルケマ社製、平均粒径30μm
7):jER1001:エポキシ樹脂、商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ価118、樹脂固形分100質量%
8):jER1002:エポキシ樹脂、商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ価87、樹脂固形分質量100%
9):jER834 :エポキシ樹脂、商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ価226、樹脂固形分質量100%
10):YD−907 :エポキシ樹脂、商品名、東都化成(株)製、エポキシ価38、樹脂固形分質量100%
【0066】
11):ショウノール CKS−704:フェノール樹脂、昭和高分子(株)製、数平均分子量430、樹脂固形分59質量%
12):ショウノール CRG−951:フェノール樹脂、昭和高分子(株)製、数平均分子量750、樹脂固形分100質量%
13):ユーバン80S:メラミン樹脂、商品名、三井化学(株)製、重量平均分子量3,700、樹脂固形分50質量%
14):ユーバン20SB:メラミン樹脂、商品名、三井化学(株)製、重量平均分子量5,780、樹脂固形分50質量%
15):ユーバン122:メラミン樹脂、商品名、三井化学(株)製、重量平均分子量1560、樹脂固形分60質量%
【0067】
16):硫酸バリウム SS−50:体質顔料、商品名、堺化学(株)製、
17):艶消し剤HK−125:防錆顔料、商品名、デグサ社製
18):タイピュアR−706:酸化チタン、商品名、デュポン社製、
19):カーブンブラックFW200:カーボンブラック、商品名、デグサ社製
20):jER828:エポキシ樹脂、商品名、ジャパンエポキシレジン(株)製、エポキシ価297、樹脂固形分100質量%
【0068】
【表6】

【0069】
【表7】

【0070】
本発明のプライマー組成物は、表6の実施例1〜14に示すように、本発明の請求範囲内であれば、何れの場合も実用上問題のないレベル以上の性能が得られている。
しかし、ポリアミドイミド樹脂、ナイロン樹脂ビーズ又はポリオール樹脂の含有割合が請求範囲以外の場合、比較例1〜4に示すようにプライマー塗膜と上塗り被膜との初期の付着性あるいはガソホール浸漬後のプライマー塗膜と上塗り被膜との付着性が不良となる。また、エポキシ樹脂の含有割合が請求範囲以外の場合、比較例5および6に示すように、プライマー塗膜とメッキ鋼板との付着性が不良になったり、折り曲げ性が不良になる。さらに、硬化剤成分の含有割合が請求範囲以外の場合、比較例7、8に示すように、ガソホール浸漬後のプライマー塗膜と上塗り被膜との付着性あるいは折り曲げ性が不良となる。
【0071】
上記の通り、プライマー組成物の各成分が本発明の請求範囲にあれば、プライマー組成物の塗装作業性に優れ、メッキ鋼板とプライマー塗膜の付着性(一次付着)、プライマー塗膜と上塗り被膜との初期の付着性(一次付着)、折り曲げ性、ガソホール浸漬後のプライマー塗膜と上塗り被膜との付着性(二次付着)に優れるプライマー塗膜を形成できる、ポリアミド樹脂被膜の下塗り塗料として有用なプライマー組成物が得られる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)ポリアミドイミド樹脂、(B)ナイロン樹脂ビーズ、(C)エポキシ樹脂、(D)ポリオール樹脂及び(E)硬化剤を含有し、(A)成分、(B)成分、(C)成分、(D)成分及び(E)成分の樹脂固形分の総質量に対して、(A)成分の含有比率が10〜30質量%、(B)成分の含有比率が64〜19質量%、(C)成分の含有比率が10〜30質量%、(D)成分の含有比率が15〜1質量%、及び(E)成分の含有比率が1〜20質量%であることを特徴とするプライマー組成物。
【請求項2】
(D)成分が、アクリル樹脂系ポリオール樹脂及び/又はポリエステル樹脂系ポリオール樹脂である請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
(E)成分が、フェノール樹脂及び/又はアミノ樹脂である請求項1又は2に記載のプライマー組成物。
【請求項4】
プライマー組成物が、ポリアミド樹脂被膜の下塗り塗料として用いられるプライマー組成物である請求項1〜3のいずれかに記載の記載のプライマー組成物。

【公開番号】特開2009−1723(P2009−1723A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−165597(P2007−165597)
【出願日】平成19年6月22日(2007.6.22)
【出願人】(599076424)BASFコーティングスジャパン株式会社 (59)
【Fターム(参考)】