説明

プライマー組成物

【課題】厚さが薄い被着体に対しても追従可能であり、被着体に対する接着性に優れたプライマー組成物を提供する。
【解決手段】本発明の組成物は、トリメチロールプロパン末端にジイソシアネートが付加した付加物に、メルカプトシランをチオウレタン反応させた合成物(A)と、塩素化重合体(B)と、ジイソシアネート化合物(C)と、硬化触媒(D)と、溶剤(E)とを含有し、合成物(A)の含有量が、溶剤(E)100質量部に対して2質量部以上100質量部以下であることを特徴とするプライマー組成物である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリートや金属等の接着剤、シーリング材等に用いられるプライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
シーリング材は、建築物等において各種部材間の接合部や隙間を充填し、水密性・気密性等を確保する目的で幅広く使用されている。代表的な建築物用のシーリング材として、シリコーン系シーリング材、変成シリコーン系シーリング材、ポリウレタン系シーリング材、ポリサルファイド系シーリング材等の1液型または2液型のものが挙げられる。この中でも、シリコーン系シーリング材は、耐久性、耐候性に優れているため広く用いられている。
【0003】
建築用シーリング材などの施工にあたっては、シーリング材そのものの性能の他に、目地を構成する部材(被着体)とシーリング材との間の接着性(密着性)も重要であり、この接着性の付与及び向上のためにプライマー組成物が用いられている(特許文献1〜4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−105416号公報
【特許文献2】特開2006−182979号公報
【特許文献3】特開2001−152080号公報
【特許文献4】特許第2708063号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、シーリング材は年間の気候変動等の影響で目じりの幅が変化するため、プライマー組成物を追従させる必要があった。
【0006】
しかしながら、近年では被着体として例えば鉄などを用い、被着体の厚さが薄いものが使用されるようになってきているが、被着体の熱容量は小さいため、温度変化などでより被着体のムーブメント量が大きくなると、プライマー組成物の接着力の立ち上がりが遅いため、プライマー組成物の被着体に対する硬化が追従しきれず、プライマー組成物の被着体に対する接着力が低下する、という問題がある。
【0007】
本発明は、前記問題に鑑み、厚さが薄い被着体に対しても追従可能であり、被着体に対する接着性に優れたプライマー組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、次に示す(1)〜(5)である。
(1) トリメチロールプロパン末端にジイソシアネートが付加した付加物に、メルカプトシランをチオウレタン反応させた合成物(A)と、
塩素化重合体(B)と、
ジイソシアネート化合物(C)と、
硬化触媒(D)と、
溶剤(E)とを含有し、
前記合成物(A)の含有量が、前記溶剤(E)100質量部に対して2質量部以上100質量部以下であることを特徴とするプライマー組成物。
(2) 前記合成物(A)のNCO基に対するメルカプト基が、0.8以上1.2以下であることを特徴とする上記(1)に記載のプライマー組成物。
(3) 前記ジイソシアネート化合物(C)の含有量が、前記溶剤(E)100質量部に対して0.5質量部以上50質量部以下であることを特徴とする上記(1)又は(2)に記載のプライマー組成物。
(4) 前記硬化触媒(D)の含有量が、前記溶剤(E)100質量部に対して0.01質量部以上20質量部以下であることを特徴とする上記(1)から(3)の何れか一項に記載のプライマー組成物。
(5) シーリング材が、シリコーン系、変成シリコーン系、ポリウレタン系の何れかであることを特徴とする上記(1)から(4)の何れか一項に記載のプライマー組成物。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、厚さが薄い被着体に対しても追従可能であり、被着体に対して優れた接着性を有することができる。従って、本発明のプライマー組成物は、例えば自動車用シーリング材、建築用コーティング材等のシーリング材として有効に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、剥離試験の様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、この発明について詳細に説明する。なお、この実施例によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施例における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0012】
本発明のプライマー組成物(以下「本発明の組成物」という。)は、トリメチロールプロパン(TMP)末端にジイソシアネートが付加した付加物に、メルカプトシランをチオウレタン反応させた合成物(A)と、塩素化重合体(B)と、ジイソシアネート化合物(C)と、硬化触媒(D)と、溶剤(E)とを含有し、合成物(A)の含有量が、溶剤(E)100質量部に対して2質量部以上100質量部以下であるプライマー組成物である。
【0013】
<合成物(A)>
合成物(A)について説明する。本発明の組成物における、合成物(A)は、本発明の組成物の架橋剤として用いられるものである。合成物(A)は、トリメチロールプロパン(TMP)末端にジイソシアネートが付加した付加物に、メルカプトシランをチオウレタン反応させたものである。
【0014】
トリメチロールプロパン末端にジイソシアネートが付加した付加物は、ウレタン結合を有する炭化水素基を構成しうるウレタンプレポリマーである。
【0015】
ウレタンプレポリマーとしてトリメチロールプロパンを用いているが、トリメチロールプロパン以外の多価アルコールを用いてもよい。多価アルコールとして、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ジエチレングリコール、グリセリン、1,6−ヘキサンジオール、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトールのような脂肪族アルコール;ポリテトラメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコールのようなポリエーテル系ポリオール;ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールのようなポリオレフィン系ポリオールなどが挙げられる。多価アルコールは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0016】
ウレタンプレポリマーに用いられるジイソシアネートとして、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)、フェニレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート(XDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート、エチレンジイソシアネート、プロピレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、2,4−ジチアペンタン−1,3−ジイソシアネート(TPDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート等のポリイソシアネート、あるいは、これらポリイソシアネートの付加反応物、例えば、トリメチロールプロパンやグリコール等を用いたアダクト体、これらのイソシアヌレート変性体、カルボジイミド変性体、アロハネート変性体、ビュレット変性体等が挙げられる。
【0017】
メルカプトシランは、イソシアネート基と反応可能な活性水素基およびアルコキシシリル基を有する化合物であり、例えば、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどが好適に用いられる。
【0018】
合成物(A)の含有量は、溶剤(E)100質量部に対して2質量部以上100質量部以下とする。合成物(A)が溶剤(E)100質量部に対して2質量部よりも小さいと、プライマーの膜厚が小さすぎ強度が低下するからである。また、合成物(A)が溶剤(E)100質量部に対して100質量部を超えると、塗布の作業性が低下となるからである。
【0019】
合成物(A)のイソシアネート(NCO)基に対するメルカプト基のモル比は、0.8以上1.2以下であるのが好ましく、当量付近であるのが更に好ましい。NCO基に対するメルカプト基のモル比が、0.8より小さいと貯蔵安定性および反応性が低下するからである。また、NCO基に対するメルカプト基のモル比が、1.2を越えると貯蔵安定性および反応性が低下するからである。
【0020】
トリメチロールプロパン末端にジイソシアネートが付加した付加物に、メルカプトシランを添加することで、骨格の極性による親和性と末端のアルコキシシランの反応性により、シーリング材の硬化反応が進行することにより発生する応力と接着力とのバランスがとれ、剥離の発生を防止することができる。
【0021】
<塩素化重合体(B)>
塩素化重合体(B)について説明する。塩素化重合体(B)は、塩素化された重合体であれば特に限定されないが、好ましくは、例えば、イソプレン系合成ゴムの塩素化物、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレン・プロピレン共重合体、塩素化ポリブタジエン、塩素化ポリスチレン、塩素化ポリブタジエン・スチレン共重合体、クロロスルフォン化ポリエチレン、クロロスルフォン化ポリエチレン・酢酸ビニル共重合体等から好適に選択される。また、塩素化重合体(B)は、上記例示した塩素化重合体を2種以上併用してもよい。
【0022】
塩素化重合体(B)の数平均分子量(Mn)は特に限定されないが、1万から100万程度であるのが好ましく、特に2万から50万程度であれば適度な強度と安定性を有し、接着の安定性の観点から好ましい。更に、分子量分布(重量平均分子量Mw/数平均分子量Mn)は、同一分子量における粘度が低くなるという点で範囲が狭いほど好ましい。
【0023】
<ジイソシアネート化合物(C)>
ジイソシアネート化合物(C)について説明する。ジイソシアネート化合物(C)は、本発明の組成物の硬化剤成分として用いられるものである。ジイソシアネート化合物(C)としては、例えば、パラフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、4、4’ージフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート;テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、オクタデシルジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート;イソホロンジイソシアネート等の脂環式イソシアネート;キシレンジイソシアネート等のアリール脂肪族イソシアネート;上記各イソシアネートの変性イソシアネート等が挙げられる。特に、イソホロンジイソシアネートが好適に用いられる。
【0024】
ジイソシアネート化合物(C)の含有量は、溶剤(E)100質量部に対して0.5質量部以上50質量部以下であるのが好ましい。ジイソシアネート化合物(C)の含有量が溶剤(E)100質量部に対して50質量部を越えると、発泡してしまい、ジイソシアネート化合物(C)の含有量が溶剤(E)100質量部に対して0.5質量部を下回ると、と被着体との反応が進まず接着強度が低下するからである。
<硬化触媒(D)>
硬化触媒(D)について説明する。本発明の組成物は、さらに、硬化触媒(D)を含む。本発明の組成物では、硬化触媒(D)を塩素化重合体(B)の硬化剤として用いる。本発明の組成物に使用できる硬化触媒(D)は、硬化性樹脂と反応可能なものであれば特に制限されない。また、硬化触媒(D)は、合成物(A)と反応してもよい。硬化触媒(D)としては、例えば、金属触媒、イミダゾール類(例えば、2−メチルイミダゾール)、リン系触媒(例えば、トリフェニルホスフィン、テトラフェニルホスホニウムテトラフェニルボレート)が挙げられる。硬化触媒(D)は、硬化性樹脂に応じて選択することができる。
【0025】
反応性ポリオルガノシロキサンに対して使用されうる硬化触媒としては、例えば、白金系触媒;オクタン酸コバルト、オクタン酸マンガン、オクタン酸鉄、オクタン酸亜鉛、オクタン酸スズ、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸鉄、ブタン酸スズ、ナフテン酸スズ、カプリル酸スズ、オレイン酸スズのようなカルボン酸金属塩;ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオレエート、ジオクチルスズジラウレート、ジフェニルスズジアセテート、酸化ジブチルスズ、酸化ジブチルスズとフタル酸エステルとの反応生成物、ジブチルスズジメトキシド、ジフェニルスズジアセテート、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)スズ、ジブチルビス(アセチルアセトナト)スズ、ジオクチルスズジラウレートのような有機スズ化合物;テトラエトキシチタン、テトラプロポキシチタン、テトラブトキシチタン、1,3−プロパンジオキシチタンビス(エチルアセチルアセテート)のようなアルコキシチタン類;アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテート、トリエトキシアルミニウムなどの有機アルミニウム;ジルコニウムテトラアセチルアセトネート、テトライソプロポキシジルコニウム、テトラブトキシジルコニウム、トリブトキシジルコニウムアセチルアセトネート、ステアリン酸トリブトキシジルコニウムなどの有機ジルコニウム化合物;ジイソプロポキシビス(エチルアセチルアセタト)チタンのようなチタンキレート化合物;アミン化合物;第四級アンモニウム化合物、プロポキシチタネートが挙げられる。なかでも、微量で大きな触媒能を有するという観点から、有機スズ化合物、プロポキシチタネート、アルコキシチタン類、白金触媒が好ましい。なかでも、電気絶縁性の観点から、非導電性であるのが好ましい。
【0026】
ポリイソシアネートに対して使用されうる硬化触媒としては、例えば、金属触媒、が挙げられる。金属触媒としては、例えば、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズジオクトエート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオレート、ジブチルスズジメトキシド、ジフェニルスズジアセテート、ジブチルビス(トリエトキシシロキシ)スズ、ジブチルビス(アセチルアセトナト)スズ、ジオクチルスズジラウレートのような有機スズ化合物;テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネートのようなチタン酸エステル類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートのような有機アルミニウム化合物類;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナートのようなキレート化合物類;オクタン酸鉛、オクタン酸ビスマスのようなオクタン酸金属塩が挙げられる。
【0027】
硬化触媒(D)は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0028】
本発明においては、硬化触媒(D)を用いることにより、硬化反応速度を速めるとともに、硬化反応の進行を促進して硬化に到る作業時間の短縮を図ることができる。これによりタックフリータイムも短縮され、実用上優れる。硬化触媒(D)の配合量が少なすぎると、硬化速度および硬化反応の促進効果が十分でなく、完全に硬化するまでに長時間を要してしまう。逆に、硬化触媒(D)の配合量が多すぎると、硬化時に局所的な発熱や発泡が生じ、良好な硬化物が得られない。このため、硬化触媒(D)は、溶剤(E)100質量部に対して0.01質量部以上20質量部以下含有するのが好ましい。上記範囲であると、硬化速度および硬化反応の促進効果が十分であり、かつ、硬化時に局所的な発熱および発泡が抑制され均質なものとなり、貯蔵安定性も向上する。
【0029】
本発明の組成物に用いられる溶剤(E)としては、上記合成物(A)、前記塩素化重合体(B)、ジイソシアネート化合物(C)および硬化触媒(D)に対して不活性であれば従来公知の各種の溶剤を用いることができる。具体的には、例えば、ベンゼン、キシレン、トルエン等の芳香族炭化水素化合物;アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン等のケトン類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類; ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類が挙げられる。これらを1種単独で用いても2種以上を併用してもよい。なお、上記溶剤は、充分に乾燥または脱水してから用いることが好ましい。これらのうち、酢酸エチルやトルエンが沸点が低く乾きが速い等の理由から好ましい。
【0030】
本発明において、上記溶剤の含有量は、プライマー組成物の固形分濃度を、1質量%以上50質量%以下、好ましくは10質量%以上40質量%以下に調整するように添加することが、得られるプライマー組成物の塗布性が優れるという理由から好ましい。
【0031】
また、本発明の組成物は、本発明の目的を損なわない範囲で、上述した各成分以外に、必要に応じて、各種の添加剤を含有することができる。
【0032】
添加剤としては、例えば、シランカップリング剤、顔料、染料、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、接着性付与剤、安定剤、分散剤が挙げられる。
【0033】
シランカップリング剤としては、例えば、トリメトキシビニルシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシランが、特に湿潤面への接着性を向上させる効果に優れ、更に汎用化合物であることから好適に挙げられる。
【0034】
顔料は、無機顔料および有機顔料のいずれでも両方でもよい。例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、群青、ベンガラ、リトポン、鉛、カドミウム、鉄、コバルト、アルミニウム、塩酸塩、硫酸塩の無機顔料、アゾ顔料、銅フタロシアニン顔料等の有機顔料等を用いることができる。
【0035】
染料は、特に限定されず、従来公知のものを用いることができる。例えば、樹脂成形品が黒色である場合には、黒色染料、黄色染料、赤色染料、青色染料、褐色染料が挙げられる。
【0036】
老化防止剤としては、例えば、ヒンダードフェノール系化合物、ヒンダードアミン系化合物が挙げられる。
【0037】
酸化防止剤としては、例えば、ブチルヒドロキシトルエン(BHT)、ブチルヒドロキシアニソール(BHA)が挙げられる。
【0038】
帯電防止剤としては、例えば、第四級アンモニウム塩;ポリグリコール、エチレンオキサイド誘導体等の親水性化合物が挙げられる。
【0039】
難燃剤としては、例えば、クロロアルキルホスフェート、ジメチル・メチルホスホネート、臭素・リン化合物、アンモニウムポリホスフェート、ネオペンチルブロマイド−ポリエーテル、臭素化ポリエーテルが挙げられる。
【0040】
接着性付与剤としては、例えば、テルペン樹脂、フェノール樹脂、テルペン−フェノール樹脂、ロジン樹脂、キシレン樹脂が挙げられる。
【0041】
安定剤としては、例えば、脂肪酸シリルエステル、脂肪酸アミドトリメチルシリル化合物等が挙げられる。
【0042】
分散剤は、固体を微細な粒子にして液中に分散させる物質をいい、ヘキサメタリン酸ナトリウム、縮合ナフタレンスルホン酸ナトリウム、界面活性剤等が挙げられる。
【0043】
本発明の組成物を製造する方法は特に限定されないが、例えば、上記各成分を減圧下または窒素等の不活性ガス雰囲気下で、ボールミル、万能かくはん機、混合ミキサー等の撹拌装置を用いて充分に混練し、均一に分散させる等により混合する方法が挙げられる。
得られた本発明の組成物は、密閉容器中で貯蔵され、使用時に空気中の湿気により常温で硬化物を得ることができる。
【0044】
このように、本発明の組成物は、トリメチロールプロパン末端にジイソシアネートが付加した付加物に、メルカプトシランをチオウレタン反応させた合成物(A)と、塩素化重合体(B)と、ジイソシアネート化合物(C)と、硬化触媒(D)と、溶剤(E)とを含有し、前記合成物(A)の含有量が、前記溶剤(E)100質量部に対して2質量部以上100質量部以下とするプライマー組成物である。トリメチロールプロパン末端にジイソシアネートが付加した付加物に、メルカプトシランを添加することで、骨格の極性による親和性と末端のアルコキシシランの反応性により、シーリング材の硬化反応が進行することにより発生する応力と接着力とのバランスがとれ、剥離の発生を防止することができる。また、ジイソシアネート化合物(C)を添加することで、硬化反応を更に促進することができる。従って、厚さが薄い被着体に対しても追従可能であり、被着体に対して優れた接着性を有することができる。
【0045】
本発明の組成物の用途は特に限定されないが、本発明の組成物は、以上のような優れた特性を有することから、建築用、土木用、コンクリート用、木材用、金属用、ガラス用、プラスチック用等のシーリング材、シール剤、ポッティング剤、弾性接着剤、コーティング材、ライニング材、接着剤、コンクリートやモルタル中の構造用接着剤、ひび割れ注入材等の用途に好適に用いられる。また、建築用シーリング材としては、シリコーン系シーリング材、変成シリコーン系シーリング材、ポリウレタン系シーリング材、ポリサルファイド系シーリング材等が挙げられ、特にシリコーン系シーリング材、変成シリコーン系シーリング材、ポリウレタン系シーリング材が好適に用いられる。
【0046】
また、本発明の組成物は、難接着性部材用の接着剤としても好適に使用できる。本発明の組成物を好適に使用できる難接着性部材の材料としては、例えば、アクリル電着塗装、フッ素焼付け塗装が挙げられる。これらの難接着性部材は、例えば、自動車、車輌、建築、電子部品等に使用される。また、本発明の組成物は、難接着性部材以外の部材にも使用することができる。
【0047】
本発明の組成物を難接着性部材に接着させる方法は特に限定されない。例えば、本発明の組成物を難接着性部材に塗布、浸漬して、接着させることができる。本発明の組成物は湿気等の水分によって硬化することができ、硬化は5℃以上40℃以下、30%RH以上70%RH以下の条件下で行うことが好ましい。
【実施例】
【0048】
以下、実施例を示して、本発明を具体的に説明する。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
<プライマー組成物の調製>
「表1」に示す各成分を、同表に示す添加量(質量部)で、配合しこれらを均一に混合して、表1に示される各合成物(A)1〜(A)6を調製した。各々の各合成物(A)1〜(A)6における各成分の添加量(質量部)を「表1」に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
上記表1に示される各成分は、以下のとおりである。
・TMP HDIアダクト:タケネート160N、三井化学社製
・HDIビューレット:デュラネート24A−100、旭化成社製
・TMP XDIアダクト:タケネート110N、三井化学社製
・TMP IPDIアダクト:タケネート140N、三井化学社製
・メルカプトシラン:KBM−803、信越化学社製
【0051】
「表2」に示す各成分を、同表に示す添加量(質量部)で、配合しこれらを均一に混合して、表2に示される各組成物を調製した。各々の実施例、比較例における各成分の添加量(質量部)を「表2」に示す。
【0052】
【表2】

【0053】
上記表2に示される各成分は、以下のとおりである。
・塩化ゴム:ペルグートS170、バイエル社製
・イソホロンジイソシアネート:デスモジュールI、バイエル社製
・錫触媒:2価のオクチル酸錫
・プロポキシチタネート:日本曹達社製
・TDI/HDIポリイソシアネート:デスモジュールHL、バイエル社製
【0054】
<接着性試験>
得られた各組成物について、以下に示す方法で、各プライマー組成物の剥離試験を行った。結果を「表2」に示す。調整されたプライマー組成物を用いて、90°剥離試験(ピール試験)を行い、破壊状態を評価した。図1は、剥離試験の様子を示す斜視図である。図1に示すように、調製されたプライマー組成物11を、下記の各種被着体12に刷毛で塗布し、下記の各種シーリング材13を設置した後、5℃、12時間放置し、乾燥した。その後、下記の各種シーリング材13を用いて、プライマー組成物11を被着体12から矢印A方向に被着体12に対して90度となるように剥離させた。その結果を表2に示す。表2中、○、×の評価基準は以下の通りである。
(評価に用いた被着体)
・アルミナ:陽極酸化アルミニウム
・ ゴム :塩化ゴム組成物
(評価に用いたシーリング材)
・変成シリコーン系:スーパーII、横浜ゴム社製
(評価基準)
・シーリング材の凝集破壊となったもの:○
・シーリング材とプライマー組成物との界面で剥離した(接着していない):×
【0055】
表2に示すように、トリメチロールプロパン末端にジイソシアネートが付加した付加物にメトキシシランを添加して反応させた合成物(A)に、ジイソシアネート化合物(C)を添加することで、凝集破壊とすることができ、剥離を発生させなかった。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明に係るプライマー組成物は、厚さが薄い被着体に対しても追従可能であり、被着体に対する接着力を維持することが可能であるので、例えばコンクリートや金属等の接着剤、シーリング材等に用いることができる。
【符号の説明】
【0057】
11 プライマー組成物
12 被着体
13 シーリング材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トリメチロールプロパン末端にジイソシアネートが付加した付加物に、メルカプトシランをチオウレタン反応させた合成物(A)と、
塩素化重合体(B)と、
ジイソシアネート化合物(C)と、
硬化触媒(D)と、
溶剤(E)とを含有し、
前記合成物(A)の含有量が、前記溶剤(E)100質量部に対して2質量部以上100質量部以下であることを特徴とするプライマー組成物。
【請求項2】
前記合成物(A)のNCO基に対するメルカプト基のモル比が、0.8以上1.2以下であることを特徴とする請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
前記ジイソシアネート化合物(C)の含有量が、前記溶剤(E)100質量部に対して0.5質量部以上50質量部以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載のプライマー組成物。
【請求項4】
前記硬化触媒(D)の含有量が、前記溶剤(E)100質量部に対して0.01質量部以上20質量部以下であることを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載のプライマー組成物。
【請求項5】
シーリング材が、シリコーン系、変成シリコーン系、ポリウレタン系の何れかであることを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載のプライマー組成物。

【図1】
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【公開番号】特開2011−201994(P2011−201994A)
【公開日】平成23年10月13日(2011.10.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−69693(P2010−69693)
【出願日】平成22年3月25日(2010.3.25)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】