説明

プライマー組成物

【課題】塗布済であるか否かの判別を容易に行うことができるプライマー組成物を提供する。
【解決手段】バインダー樹脂と、下記一般式(1)またはその水和物で示される化合物(A)と、溶剤と、を含み、前記化合物(A)の含有量が、0.1質量%以上1.5質量%以下であることを特徴とするプライマー組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プライマー組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、自動車のボディと窓ガラスとの接着にはウインドウシーラントが使用されているが、ウインドウシーラントのみを使用した接着では十分な接着性が得られない場合が多い。このようにシーラントや接着剤単独で十分な接着性が得られない場合には、接着面にあらかじめプライマー組成物を塗布した後、その上に接着剤等を塗布して十分な接着性を確保することが行われている(例えば、特許文献1〜6を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−51287号公報
【特許文献2】特開2006−335921号公報
【特許文献3】特開2001−123092号公報
【特許文献4】特開2000−63768号公報
【特許文献5】特開2000−327956号公報
【特許文献6】特開2009−280682号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、プライマー組成物に用いられる樹脂成分が透明である場合には、被着体に対して塗布済であるか否かの判別が非常に困難な場合がある。
【0005】
そこで、本発明の目的は、塗布済であるか否かの判別を容易に行うことができるプライマー組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明は、次に示す(1)〜(6)である。
【0007】
(1)バインダー樹脂と、下記一般式(1)またはその水和物で示される化合物(A)と、溶剤と、を含み、前記化合物(A)の含有量が、0.1質量%以上1.5質量%以下であることを特徴とするプライマー組成物。
【化1】

【0008】
(2)ポリイソシアネート化合物とイソシアネート・シラン化合物とシラン化合物との何れか一つ以上を含む上記(1)に記載のプライマー組成物。
【0009】
(3)前記バインダー樹脂が、ポリウレタン系樹脂とポリアクリル系樹脂との何れか一つ以上を含む上記(1)又は(2)に記載のプライマー組成物。
【0010】
(4)前記ポリイソシアネート化合物が、トリス(フェニルイソシアネート)チオホスフェートである上記(2)又は(3)に記載のプライマー組成物。
【0011】
(5)前記イソシアネート・シラン化合物が、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物(a)と、少なくとも1つのフェニル基及びNHと結合している炭素を含むアミノシラン化合物(b)と、を反応させたものである上記(2)又は(3)に記載のプライマー組成物。
【0012】
(6)前記シラン化合物が、下記一般式(2)で示される化合物(1)、下記一般式(3)で示される化合物(2)、下記一般式(4)で示される化合物(3)の反応物の少なくとも一種を含む上記(2)又は(3)に記載のプライマー組成物。
【化2】

【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、塗布済であるか否かの判別を容易に行うことができるプライマー組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、この発明について詳細に説明する。なお、下記の発明を実施するための形態(以下、実施形態という)により本発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、下記実施形態で開示した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。
【0015】
本実施形態に係るプライマー組成物について説明する。本実施形態のプライマー組成物は、バインダー樹脂と、上記一般式(1)またはその水和物で示される化合物(A)と、溶剤と、を含み、化合物(A)の含有量が、0.1質量%以上1.5質量%以下である、プライマー組成物である。以下、本実施形態のプライマー組成物を、「本実施形態のプライマー組成物」ということがある。以下に、本実施形態のプライマー組成物に含有される成分について説明する。
【0016】
<バインダー樹脂成分>
本実施形態のプライマー組成物に含有される上記バインダー樹脂成分は、ポリウレタン系樹脂とポリアクリル系樹脂との何れか一つ以上を含む。
【0017】
このような上記バインダー樹脂成分は、後述する理由から、ポリアクリレート樹脂とポリウレタン樹脂との何れか一つ以上を含む樹脂であって、数平均分子量が15000以上の樹脂を含有することが好ましい。さらには、ポリアクリレート樹脂の数平均分子量は3000以上150000以下が好ましく、ポリウレタン樹脂の数平均分子量は3000以上60000以下が好ましい。
【0018】
本実施形態のプライマー組成物は、分子量の大きな上記樹脂を含有することにより、接着初期における膜強度に優れる。また上記樹脂を含有することにより各種被着体に対する接着性に優れる。上記の樹脂は、1種単独でまたは2種を混合して使用することができる。
【0019】
(ポリアクリレート樹脂)
上記バインダー樹脂が、ポリアクリレート樹脂であると、耐ウィンドウォッシャ接着性、および、低温接着性が優れ、好ましい。
【0020】
ポリアクリレート樹脂は、アクリル酸エステル、メタクリル酸メチルの何れか一方または両方を含む重合体であり、特に限定されないが、難接着性アクリルメラミン塗板に対する耐水接着性がより良好となるという理由から、アクリル酸メチルとメタクリル酸メチルとの共重合体であるのが好ましい。また、アクリル酸メチルとメタクリル酸メチルとの重合モル比(アクリル酸メチル/メタクリル酸メチル)は、特に限定されない。
【0021】
このようなポリアクリレート樹脂としては、ポリアクリレート樹脂(デルパウダー80N、数平均分子量100000、旭化成工業株式会社製)、ポリアクリレート樹脂(デルパウダー720V、数平均分子量65000、旭化成工業株式会社製)、ポリアクリレート樹脂(ゼムラックYC−3623、数平均分子量:35000、株式会社カネカ製)等の市販品を好適に用いることができる。
【0022】
(ポリウレタン樹脂)
上記バインダー樹脂が、ポリウレタン樹脂であると、初期接着性に優れ、好ましい。ポリウレタン樹脂は、イソシアネート基とアルコール基とが縮合してできるウレタン結合によってモノマーを共重合させたものであり、特に限定されない。
【0023】
このようなポリウレタン樹脂としては、ポリウレタン樹脂(パンデックスT−5205、数平均分子量:60000、DIC株式会社製)、ポリウレタン樹脂(パンデックスT−5201、数平均分子量:55000、DIC株式会社製)等の市販品を好適に用いることができる。
【0024】
<化合物A(色素)>
本実施形態のプライマー組成物に含有される化合物A(色素)は、紫外線または赤外線の照射によって消色する染料および顔料または何れか一方である。上記化合物A(色素)の含有量は、本実施形態のプライマー組成物の合計質量に対して0.1質量%以上2.5質量%以下である。上記化合物Aが上記含有量配合された本実施形態のプライマー組成物は、適度に発色することで視認性が得られるため、接着面に塗布済であるか否かの判別が容易となる。また、この発色は、意図的に紫外光を当てたり屋外暴露したりすることで消色させることができるため、本実施形態のプライマー組成物が接着面からはみ出ていたとしても美観は損なわれない。上記化合物Aの含有量は、上記効果がより良好になるという理由から、本実施形態のプライマー組成物の合計質量に対して0.1質量%以上2.0質量%以下であることが好ましく、さらに0.1質量%以上1.5質量%以下であることがより好ましい。
【0025】
ここで、本実施形態においては、単体で消色機能を有する上記化合物A(色素)として、下記一般式(1)またはその水和物で示される化合物が挙げられる。単体で消色機能を有する上記化合物Aとしては、市販品を用いることができ、例えば、キリヤ化学株式会社製のエリスロシン等が好適に用いられる。
【0026】
【化3】

【0027】
<溶剤>
本実施形態のプライマー組成物は、さらに、溶剤を含有する。上記溶剤の含有量は、本実施形態のプライマー組成物の全質量(合計質量)の60質量%以上、さらには60質量%以上95質量%以下であることが好ましい。含有量がこの範囲であれば、良好な塗工性を得ることができる。溶剤としては、特に制限はなく、有機溶剤、水溶性溶媒等、広く公知のものを使用することができる。上記溶剤としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン等の炭化水素系;テトラクロロメタン、メチレンクロリド等のハロゲン化炭化水素系;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系;セロソルブアセテート、ブチルセロソルブアセテート等のエーテルエステル系;メタノール、エタノール、プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール等のアルコール系;ミネラルスピリッツ等のガソリンから灯油留分に至る石油系;その他に、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等が挙げられる。これらの溶剤は、1種単独でも2種以上を併用して使用してもよい。なかでも、接着速度がより良好になるという理由から、メチルエチルケトン、酢酸エチルが好ましい。なお、上記溶剤は、十分に乾燥させまたは脱水してから用いるのが好ましい。本実施形態のプライマー組成物中における溶剤の含有量は、プライマー組成物の用途、目的等に応じて、適宜、その含有量を変化させることができる。
【0028】
<ポリイソシアネート化合物>
本実施形態のプライマー組成物は、ポリイソシアネート化合物を含有することができる。本実施形態のプライマー組成物に含有するポリイソシアネート化合物は、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートである。このようなポリイソシアネート化合物を含有することにより、本実施形態のプライマー組成物は、難接着性塗板に対する接着性、特に、初期接着性および耐水接着性を改善することができる。またプライマー組成物がポリイソシアネート化合物を含む場合、塗布した時の視認性、経時での消色性および接着性に優れるプライマー組成物である。
【0029】
上記ポリイソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、TDI(例えば、2,4−トリレンジイソシアネート(2,4−TDI)、2,6−トリレンジイソシアネート(2,6−TDI))、MDI(例えば、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4′−MDI)、2,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4′−MDI))、1,4−フェニレンジイソシアネート、ポリメチレンポリフェニレンポリイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、テトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)、トリジンジイソシアネート(TODI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート(NDI)、トリフェニルメタントリイソシアネートのような芳香族ポリイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート(TMHDI)、リジンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート(NBDI)のような脂肪族ポリイソシアネート;トランスシクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン(H6XDI)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(H12MDI)のような脂環式ポリイソシアネート;これらのカルボジイミド変性ポリイソシアネート;これらのイソシアヌレート変性ポリイソシアネート;等が挙げられ、これらを1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0030】
本実施形態においては、難接着性塗板に対する初期接着性および耐水接着性がより良好となる理由から、上記ポリイソシアネート化合物がイソシアネート基を3個以上有していることが好ましい。イソシアネート基を3個以上有するポリイソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、下記一般式(5)で表されるトリス(フェニルイソシアネート)チオホスフェート、下記一般式(6)で表されるポリメチレンポリフェニルイソシアネート、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物等が好適に挙げられる。これらは、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0031】
これらのうち、トリス(フェニルイソシアネート)チオホスフェート、ポリメチレンポリフェニルイソシアネートの何れか一方または両方と、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物との組み合わせで用いることが好ましい。また、トリス(フェニルイソシアネート)チオホスフェートと、イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物との組み合わせで用いることも好ましい。これらを組み合わせて用いることにより難接着性塗板に対する初期接着性および耐水接着性を大幅に向上できる。
【0032】
【化4】

(上記式(6)中、nは1以上5以下の整数を表し、1以上3以下の整数であるのが好ましい。)
【0033】
上記イソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物としては、ジイソシアネート化合物を三量化して得られる、ジイソシアネート化合物のイソシアヌレート変性体を好適に用いることができる。上記ジイソシアネート化合物としては、具体的には、例えば、上記で例示した芳香族ポリイソシアネート等が挙げられる。これらのうち、TDIとHDIの混合物を反応させて得られるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物であるのが、難接着性塗板に対する初期接着性および耐水接着性がより良好となり、かつ、低温環境下で使用した場合でも十分な接着性が得られるという理由から好ましい。
【0034】
上記ポリイソシアネート化合物の含有量は、上記バインダー樹脂100質量部に対して50質量部以上3000質量部以下であるのが好ましい。含有量がこの範囲であると、難接着性塗板に対する初期接着性および耐水接着性がより良好となり、かつ、低温環境下で使用した場合でも十分な接着性が得られる。
【0035】
上記ポリイソシアネート化合物の市販品としては、例えば、トリス(フェニルイソシアネート)チオホスフェート(デスモジュールRFE、住化バイエルウレタン株式会社製)、HDIとTDIの混合物を反応させて得られるイソシアヌレート環を有するポリイソシアネート化合物(デスモジュールHL、住化バイエルウレタン株式会社製)、ポリメチレンポリフェニルイソシアネート(スミジュール44V−10、住化バイエルウレタン株式会社製)等を好適に用いることができる。
【0036】
<イソシアネート・シラン化合物>
本実施形態のプライマー組成物は、イソシアネート・シラン化合物を含有することができる。プライマー組成物は、ガラスとの耐水接着性により優れるという理由から、イソシアネート・シラン化合物を含有するのが好ましい。イソシアネート・シラン化合物を含む場合、塗布した時の視認性、経時での消色性および接着性に優れるプライマー組成物であ。上記イソシアネート・シラン化合物の含有量は、上記バインダー樹脂100質量部に対して100質量部以上300質量部以下であるのが好ましい。含有量がこの範囲であると、難接着性塗板に対する初期接着性および耐水接着性がより良好となる。
【0037】
本実施形態のプライマー組成物に用いられるイソシアネート・シラン化合物は、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとをモル比で、おおよそ1対3で反応させた化合物(a)と、少なくとも1つのフェニル基及びNHと結合している炭素を含むアミノシラン化合物(b)とを、モル比で0.8以上1.2以下で反応させたものであることが好ましい。化合物(a)とアミノシラン化合物(b)とのモル比は、好ましくは0.9以上1.1以下であり、更に好ましくは1対1前後である。
【0038】
プライマー組成物が含有することができるイソシアネート・シラン化合物は、イソシアネート基を有するシランカップリング剤であれば特に制限されない。例えば、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)とトリレンジイソシアネート(TDI)との付加物およびTMPとキシリレンジイソシアネート(XDI)との付加物からなる群から選択される1種以上のポリイソシアネート化合物と、N,N−ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[(3−トリエトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[(3−トリプロポキシシリル)プロピル]アミン、3−(n−ブチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよび3−(n−プロピルアミノ)プロピルトリメトキシシランからなる群から選択される1種以上のシラン化合物とを付加させて得られる芳香族系イソシアネート・シラン;イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシランのような脂肪族系イソシアネート・シランが挙げられる。
【0039】
なかでも、ガラスとの耐水接着性により優れるという理由から、脂肪族系イソシアネート・シラン化合物が好ましい。イソシアネート・シラン化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0040】
また、プライマー組成物に含有されるシラン化合物として、例えば、イソシアネート・シラン、およびアミノシランとエポキシシランとの反応生成物からなる群から選ばれる少なくとも1種のアルコキシシリル基含有化合物が挙げられる。アルコキシシリル基含有化合物は、アルコキシシリル基を有するイソシアネート化合物、またはアルコキシシリル基を有する、アミノシランとエポキシシランとの反応生成物である。
【0041】
アルコキシシリル基は、ケイ素原子にアルコキシ基が1個以上3個以下結合している基であれば特に制限されない。アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基が挙げられる。ケイ素原子に結合しているアルコキシ基が1または2個である場合、ケイ素原子に結合するアルコキシ基以外の基としては例えば、メチル基、エチル基のようなアルキル基が挙げられる。アルコキシシリル基としては、例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジメトキシエチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジエトキシエチルシリル基が挙げられる。アルコキシシリル基としては、トリメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基であるのが好ましい。トリメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基は、ガラスまたは金属に対する接着性に優れ、耐水接着性により優れる。
【0042】
イソシアネート・シラン化合物としては、例えば、1分子内に、少なくとも1つのイソシアネート基と少なくとも1つのアルコキシシリル基を有するものが挙げられ、具体的には、少なくとも1つのイソシアネート基と少なくとも1つのアルコキシシリル基とが、炭素原子数1以上の炭化水素基に結合しているものが挙げられる。炭化水素基としては、例えば、脂肪族炭化水素基、脂環式炭化水素基、不飽和脂肪族炭化水素基および芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。また、炭化水素基は、例えば、ウレタン結合、尿素結合、チオウレタン結合を有することができる。
【0043】
イソシアネート・シラン化合物としては、例えば、下記一般式(7)で表されるものが挙げられる。
【化5】

(上記式(7)中、Rは、ウレタン結合、尿素結合およびチオウレタン結合からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合を有することができる炭化水素基であり、Rはアルコキシ基であり、Rはアルキル基であり、mは1以上3以下の整数であり、nは1以上3以下の整数であり、oは1以上3以下の整数であり、m+nが2以上4以下の整数である。)
【0044】
ウレタン結合、尿素結合およびチオウレタン結合からなる群から選ばれる少なくとも1種の結合を有することができる炭化水素基は、炭素原子数が1以上8以下であるのが好ましい。炭化水素基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプチル基、オクチル基のような脂肪族炭化水素基;フェニレン基、キシリレン基のような芳香族炭化水素基が挙げられる。炭化水素基は、フェニル基のような芳香族炭化水素基を側鎖として有することができる。
【0045】
が炭素原子および水素原子のみからなる脂肪族系イソシアネート・シラン化合物としては、例えば、イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、イソシアネートプロピルメチルジメトキシシラン、イソシアネートプロピルメチルジエトキシシランが挙げられる。
【0046】
炭化水素基は上述のとおりウレタン結合を有することができ、ウレタン結合を例えばウレタンプレポリマー由来の構造とすることができる。ウレタン結合を有する炭化水素基を構成しうるウレタンプレポリマーとしては、例えば、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)と、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレンジイソシアネート(XDI)およびヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)からなる群から選ばれる少なくとも1種とから得られるものが挙げられる。
【0047】
プライマー組成物が含有することができるイソシアネート・シラン化合物としては、例えば、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)とトリレンジイソシアネート(TDI)との付加物および1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)とキシリレンジイソシアネート(XDI)との付加物からなる群から選択される1種以上のポリイソシアネート化合物(ウレタンプレポリマー)と、N,N−ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[(3−トリエトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[(3−トリプロポキシシリル)プロピル]アミン、3−(n−ブチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランおよび3−(n−プロピルアミノ)プロピルトリメトキシシランからなる群から選択される1種以上のアミノシラン化合物とを付加させて得られる芳香族系イソシアネート・シランが挙げられる。
【0048】
また、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)との付加物のような脂肪族系ウレタンプレポリマー、HDIビウレット体、HDIイソシアヌレート体またはHDI−TDIイソシアヌレート体と、イソシアネート基と反応可能な活性水素基およびアルコキシシリル基を有する化合物(例えば、3−(N−フェニル)アミノプロピルトリメトキシシランのようなアミノシラン、メルカプトシラン)とを反応させることによって得られる、脂肪族系イソシアネート・シラン化合物が挙げられる。
【0049】
なかでも、イソシアネート・シラン化合物は、ガラスとの耐水接着性により優れるという理由から、脂肪族系イソシアネート・シラン化合物が好ましい。脂肪族系イソシアネート・シラン化合物は、脂肪族炭化水素基にイソシアネート基およびアルコキシシリル基が結合している化合物である。
【0050】
また、ガラスとの耐水接着性により優れるという理由から、脂肪族系の、ウレタンプレポリマー、ビウレット体、HDIイソシアヌレート体またはHDI−TDIイソシアヌレート体と、イソシアネート基と反応可能な活性水素基およびアルコキシシリル基を有する化合物との反応生成物が好ましく、1,1,1−トリメチロールプロパン(TMP)とヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)との付加物(ウレタンプレポリマー)あるいはHDIビウレット体、HDIイソシアヌレート体、HDI−TDIイソシアヌレート体と、3−(N−フェニルプロピル)トリメトキシシランあるいは3−メルカプトプロピルトリメトキシシランとの反応生成物がより好ましい。
【0051】
イソシアネート・シラン化合物の製造方法は、特に制限されるものではなく、例えば、従来より公知のものが挙げられる。イソシアネート・シラン化合物が少なくとも1つのイソシアネート基と少なくとも1つのアルコキシシリル基とを、例えば、ウレタン結合、尿素結合、チオウレタン結合を有する炭化水素基に結合させたものである場合、その製造としては、例えば、イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートに、イソシアネート基と反応可能な活性水素基およびアルコキシシリル基とを有する化合物を、イソシアネート基/活性水素基=2.0以上となる量で反応させることによって得られる反応生成物が挙げられる。
【0052】
イソシアネート・シラン化合物の製造の際に使用されるポリイソシアネートは、イソシアネート基が2個以上結合している化合物であれば特に制限されない。例えば、脂肪族ポリイソシアネート、芳香族ポリイソシアネート、ウレタンプレポリマーが挙げられる。なかでも、ガラスとの耐水接着性により優れるという理由から、脂肪族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートから得られるウレタンプレポリマーであるのが好ましい。
【0053】
脂肪族ポリイソシアネートは、脂肪族炭化水素基にイソシアネート基が2個以上結合している化合物である。脂肪族炭化水素基が有する炭素原子数は、被着体との接着性に優れるという理由から、3以上12以下であるのが好ましい。脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネートのような鎖状の脂肪族ポリイソシアネート;イソホロンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、水添ジシクロヘキシルメタンジイソシアネートのような脂環族ポリイソシアネート;キシリレンジイソシアネートのようなアラルキルポリイソシアネートが挙げられる。
【0054】
脂肪族ポリイソシアネートから得られるウレタンプレポリマーについて、製造の際に使用される脂肪族ポリイソシアネートは、特に制限されず、例えば上記と同様のものが挙げられる。また、脂肪族ポリイソシアネートから得られるウレタンプレポリマーについて、製造の際に使用されるポリオールは特に制限されず、例えば、トリメチロールプロパン、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシプロピレントリオールが挙げられる。脂肪族ポリイソシアネートから得られるウレタンプレポリマーは、その製造について特に制限されない。例えば、従来公知のものが挙げられる。
【0055】
なかでも、イソシアネート・シラン化合物の製造の際に使用されるポリイソシアネートは、ガラスとの耐水接着性により優れるという理由から、鎖状の脂肪族炭化水素基にイソシアネート基が結合しているポリイソシアネート、鎖状の炭化水素基にイソシアネート基が結合している脂肪族ポリイソシアネートから得られるウレタンプレポリマーが好ましく、ヘキサメチレンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネートから得られるウレタンプレポリマーがより好ましい。
【0056】
イソシアネート・シラン化合物の製造の際に使用されるポリイソシアネートは、プライマーの耐水接着性により優れるという理由から、イソシアネート基が2官能以上4官能以下であるのが好ましい。
【0057】
ポリイソシアネートは、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0058】
イソシアネート基と反応可能な活性水素基およびアルコキシシリル基とを有する化合物において、イソシアネート基と反応可能な活性水素基としては、例えば、アミノ基、メルカプト基、ヒドロキシ基が挙げられる。なかでも、被着体との接着性に優れるという観点から、アミノ基、メルカプト基が好ましい。
【0059】
イソシアネート基と反応可能な活性水素基およびアルコキシシリル基とを有する化合物において、アルコキシシリル基は特に制限されない。例えば、トリメトキシシリル基、トリエトキシシリル基、ジメトキシメチルシリル基、ジメトキシエチルシリル基、ジエトキシメチルシリル基、ジエトキシエチルシリル基が挙げられる。
【0060】
イソシアネート基と反応可能な活性水素基およびアルコキシシリル基とを有する化合物
において、イソシアネート基と反応可能な活性水素基およびアルコキシシリル基とが結合
している有機基は特に制限されない。例えば、脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基およ
び芳香族炭化水素基からなる群から選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
【0061】
イソシアネート基と反応可能な活性水素基としてのアミノ基、およびアルコキシシリル基とを有する化合物としては、例えば、N,N−ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[(3−トリエトキシシリル)プロピル]アミン、N,N−ビス[(3−トリプロポキシシリル)プロピル]アミン、3−(n−ブチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(n−プロピルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランのような第二級アミンを有するものが挙げられる。なかでも、耐水接着性により優れるという理由から、第二級アミンを有するものが好ましく、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−ブチル−γ−アミノプロピルトリメトキシシランがより好ましい。
【0062】
イソシアネート基と反応可能な活性水素基としてのメルカプト基、およびアルコキシシリル基とを有する化合物としては、例えば、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルメチルジエトキシシラン、γ−メルカプトプロピルエチルジエトキシシランが挙げられる。
【0063】
イソシアネート基と反応可能な活性水素基およびアルコキシシリル基とを有する化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0064】
イソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネートと、イソシアネート基と反応可能な活性水素基およびアルコキシシリル基とを有する化合物との反応は、耐水接着性により優れるという理由から、イソシアネート基/活性水素基=2.0以上で反応させるのが好ましく、2.0以上4.0以下であるのがより好ましい。
【0065】
イソシアネート・シラン化合物は、それぞれ単独でまたは2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0066】
<シラン化合物>
本実施形態のプライマー組成物はシラン化合物を含有することができる。プライマー組成物がシラン化合物を含む場合、塗布した時の視認性、経時での消色性および接着性に優れるプライマー組成物である。
【0067】
本実施形態のプライマー組成物に用いられるシラン化合物は、上記一般式(2)で示される化合物(1)、上記一般式(3)で示される化合物(2)、上記一般式(4)で示される化合物(3)の反応物の少なくとも一種を含むことが好ましい。
上記シラン化合物の含有量は、上記バインダー樹脂100質量部に対して100質量部以上300質量部以下であるのが好ましい。含有量がこの範囲であると、難接着性塗板に対する初期接着性および耐水接着性がより良好となる。
【0068】
(アミノシラン化合物)
本実施形態のシラン化合物は、下記一般式(8)で表される構造を有するアミノシラン化合物を含む。
【化6】

【0069】
(上記式(8)中、RおよびRはそれぞれ炭素数が1以上8以下の分岐していてもよいアルキル基であり同一でも異なっていてもよく、Rは炭素数が1以上12以下の分岐していてもよいアルキレン基であり、Rは水素原子、炭素数が1以上8以下の分岐していてもよいアルキル基であり、炭素数が7以上18以下の分岐していてもよいアラルキル基または炭素数が6以上18以下のアリール基であり、nは0以上2以下の整数である。)
【0070】
アミノシラン化合物は、エポキシシラン化合物の硬化剤として機能するだけでなく、変性シリコーン系シーリング材との相溶性に優れ、該シーリング材に対する打ち継ぎ性(初期および耐水接着性)を改善し、さらに、貯蔵安定性の向上にも寄与する。本実施形態においては、これらの化合物は少なくとも1種を含有すればよい。
【0071】
アミノシラン化合物中のシリル基は、少なくとも加水分解性の置換基を1個有するのが好ましく、2個以上有するのがより好ましい。2個以上有すると、アミノシラン化合物の接着付与効果がより高まる。3個以上有するのが特に好ましい。
【0072】
加水分解性の置換基としては、具体的には、水素原子、アルコキシ基、アシルオキシ基(RCO−O−)、アミノ基、アミド基、アミノオキシ基、メルカプト基、アルケニルオキシ基等が挙げられる。これらのうちでも加水分解性の穏やかなアルコキシ基が好ましい。なお、加水分解性の置換基を選択することにより、用途に応じた、加水分解速度や接着性発現時間を調整することができる。
【0073】
およびRの炭素数が1以上8以下に分岐していてもよいアルキル基は、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられ、これらの基が二重結合または三重結合を含んでいてもよい。この中でも、メチル基、エチル基が好ましい。なお、RおよびRは同一であっても異なっていてもよい。
【0074】
の炭素数が1以上12以下に分岐していてもよいアルキレン基は、例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、ドデカメチレン基、3,3−ジメチルブチレン基等が挙げられ、入手が容易で接着性が優れる点からトリメチレン基、3,3−ジメチルブチレン基(特に3,3−ジメチル−1,4−ブチレン基)がより好ましい。より好ましくは炭素数が2以上6以下に分岐していてもよいアルキレン基である。
【0075】
が水素原子である、上記一般式(8)で表される化合物として、具体的には、例えば、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン(以上、日本ユニカー株式会社製)等が挙げられる。好ましくはγ−アミノプロピルトリメトキシシランが挙げられる。
【0076】
の炭素数が1以上8以上に分岐していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、1−メチルブチル基、2−メチルブチル基、1,2−ジメチルプロピル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基等が挙げられ、これらの基が二重結合または三重結合を含んでいてもよい。この中でも、メチル基、エチル基が好ましい。なお、RおよびRは同一であっても異なっていてもよい。この中でも、炭素数が2以上4以下に分岐していてもよいアルキル基が好ましい。また、Rはそのアルキル基の水素原子の1つ以上が置換基で置換されていてもよい。置換基としては、特に限定されないが、アミノ基、アミノアルキル基(炭素数:1以上8以下)であるのが好ましく、アミノ基、アミノメチル基、アミノエチル基、アミノブチル基がより好ましい。
【0077】
が炭素数が1以上8以下に分岐していてもよいアルキル基である、上記一般式(8)で表される化合物として、具体的には、例えば、3−(n−ブチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン(Dynasilane1189(デグサヒュルス社製))等が挙げられる。
【0078】
の炭素数が7以上18以下に分岐していてもよいアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等を挙げることができる。
【0079】
の炭素数が6以上18以下のアリール基としては、フェニル基、メチルフェニル基(トルイル基)、ジメチルフェニル基、エチルフェニル基等を挙げることができる。また、アリール基の置換基としては、上記したアルキル基の他に、メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシ基、フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子からなる基等が挙げられる。これらの置換基は1または2以上を有してもよく、それらの置換位置も限定されない。
【0080】
が炭素数が6以上18以下のアリール基である、上記一般式(8)で表される化合物として、具体的には、例えば、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン(日本ユニカー株式会社製)等が挙げられる。
【0081】
本実施形態の組成物には、上記アミノシラン化合物を1種用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0082】
これらのうちでも、組成物の上記機能をより高い水準でバランスよく発揮できる点で、N,N−ビス[(3−トリメトキシシリル)プロピル]アミン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−ブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、4−アミノ−3,3−ジメチルブチルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン等のアミノシラン化合物が好ましい。
【0083】
(シラン化合物の反応物)
本実施形態のシラン化合物の反応物は、1分子中にエポキシ基を2個以上有するポリシロキサンとアミノシランとの反応生成物(以下、シラン化合物(B)ともいう)を含む。本実施形態のプライマー組成物はこのシラン化合物(B)の縮合物を含むので、シリコンハードコート、白ガラス(一般的なフロートガラス)に対するウレタン系接着剤の接着性を高めることができる。本実施形態の1分子中にエポキシ基を2個以上有するポリシロキサンは、シロキサン結合(Si−O−Si)を骨格とし、側鎖にエポキシ基を含む官能基を有する化合物である。上記エポキシ基を含む官能基としては、例えば、γ−グリシドキシプロピル基、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチル基等が挙げられる。特に、γ−グリシドキシプロピル基であると容易に入手できるので好ましい。本実施形態の1分子中にエポキシ基を2個以上有するポリシロキサンとしては、好ましくは下記一般式(9)で表される化合物が挙げられる。
【0084】
【化7】

【0085】
上記一般式(9)において、R及びRは炭素数1以上4以下のアルキル基を表し、それぞれ同一でも異なってもよい。好ましくは、R及びRはメチル基又はエチル基である。また、R及びRは炭素数1以上6以下のアルキル基又は炭素数1以上4以下のアルコキシ基を表し、それぞれ同一でも異なってもよい。好ましくは、R及びRはメトキシ基又はエトキシ基である。シラン化合物(B)に含まれる加水分解性アルコキシ基が多いほど得られる接着性が高くなるからである。また、上記一般式(9)において、m、nは0以上の整数であり、m+n≧2である。特にm+n=2であると、反応物の粘度が低く、作業性がよいため好ましい。
【0086】
上記一般式(9)で表される化合物は、例えば以下のようにして合成できる。反応容器に、分子内にエポキシ基を含み、その末端にトリアルコキシシリル基又はジアルコキシシリル基を有する化合物、例えば、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン又はこれらの混合物等(以下、エポキシシランともいう)と水とをモル比にして2:1の割合で混合し、常温で8時間以上20時間以下縮合反応させて得られる。この場合、上記式(9)のm+nの値は、エポキシシランと水との比を変えることにより制御できる。
【0087】
上記一般式(9)で表される化合物と反応させるアミノシランとしては、1分子中にアミノ基を1つ又は2つ有するアミノシランが好ましく、特に好ましくはアミノ基を1つ有するアミノシランである。本実施形態のシラン化合物(B)の1分子中に含むことができるエポキシ基と加水分解性アルコキシ基の数が多くなるためである。また、上記アミノ基は1級又は2級のアミノ基が好ましい。本実施形態のシラン化合物(B)は上記ポリシロキサンに含まれるエポキシ基とアミノシランの有するアミノ基とが反応することにより得られる。本実施形態においてこれらの反応比(アミノ基/エポキシ基)は、モル比にして0.1以上1.0以下であり、好ましくは0.3以上1.0以下、特に好ましくは0.5以上1.0以下である。反応比がこの範囲であると、得られるシラン化合物(B)に含まれる加水分解性アルコキシシランのバランスがよく所望の接着性が得られる。
【0088】
本実施形態に用いられるアミノシランとしては、具体的には、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−アミノプロピルエチルジエトキシシラン、ビストリメトキシシリルプロピルアミン、ビストリエトキシシリルプロピルアミン、ビスメトキシジメトキシシリルプロピルアミン、ビスエトキシジエトキシシリルプロピルアミン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルエチルジエトキシシラン等が挙げられる。これらの中でも、上述した理由により、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、ビストリメトキシシリルプロピルアミンが好ましい。上記アミノシランは1種用いてもよく、2種以上を組合せて用いてもよい。
【0089】
本実施形態のシラン化合物(B)の製造方法としては、例えば上述の方法で得られた上記一般式(9)で表される化合物と、上記アミノシランとを混合し、40度以上50度以下で16時間以上48時間以下反応させて得られる。このとき、メチルエチルケトン、酢酸エチル等の揮発性溶媒の存在下で反応させることもでき、揮発性溶媒の添加量は0以上50質量%以下の範囲内であることが好ましい。
【0090】
このようにして得られるシラン化合物(B)は、分子内に含まれるアルコキシシランとのバランスがよく強力な接着性を付与できる。また、シラン化合物(B)が上記の構造、すなわちシロキサン結合を主鎖とし、側鎖に平行に伸びる反応性官能基をもつ構造を有することにより、組成物が硬化した後に得られる網目構造が適度な架橋密度を有しているため、アクリル系塗板、ガラス、シリコンハードコートされた樹脂ガラス等の非孔質な基体に対して強力な接着性が得られる。
【0091】
<硬化触媒>
本実施形態のプライマー組成物は、さらに、硬化触媒を含有することができる。硬化触媒を含有することにより、接着発現が速くなり、低温環境下で使用した場合でも十分な接着性が得られる。上記硬化触媒としては、例えば、金属系触媒、アミン系触媒等が挙げられる。
【0092】
上記金属系触媒としては、具体的には、例えば、ジメチルスズジラウレート、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズマレエート、ジブチルスズジアセテート、ジオクチルスズジラウレート、ナフテン酸スズなどのスズカルボン酸塩類;テトラブチルチタネート、テトラプロピルチタネートなどのチタン酸エステル類;アルミニウムトリスアセチルアセトナート、アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、ジイソプロポキシアルミニウムエチルアセトアセテートなどの有機アルミニウム化合物類;ジルコニウムテトラアセチルアセトナート、チタンテトラアセチルアセトナートなどのキレート化合物類;オクタン酸鉛、オクタン酸ビスマスなどのオクタン酸金属塩;等が挙げられる。
【0093】
上記アミン系触媒としては、具体的には、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、ジメチルアミノエチルモルホリン等の第三級アミンが挙げられる。
【0094】
上記硬化触媒は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。上記硬化触媒の含有量は、上記ポリイソシアネート化合物100質量部に対して0.001質量部以上1.0質量部以下が好ましく、0.001質量部以上0.6質量部以下がより好ましい。
【0095】
<添加剤>
本実施形態のプライマー組成物は、必要に応じて、本実施形態の効果を損なわない範囲で、充填剤、紫外線吸収剤、分散剤、脱水剤、接着付与剤等の各種添加剤等を含有することができる。上記充填剤としては、各種形状の有機または無機の充填剤が挙げられる。具体的には、例えば、ヒュームドシリカ、焼成シリカ、沈降シリカ、粉砕シリカ、溶融シリカ;ケイソウ土;酸化鉄、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化バリウム、酸化マグネシウム;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸亜鉛;ろう石クレー、カオリンクレー、焼成クレー;これらの脂肪酸処理物、樹脂酸処理物、ウレタン化合物処理物、脂肪酸エステル処理物;等が挙げられる。
【0096】
本実施形態のプライマー組成物の作製方法は、特に限定されるものではない。例えば、上記の各必須成分と任意成分とを密閉容器中で混合ミキサー等のかくはん機を用いて十分に混合する方法を用いることができる。
【0097】
本実施形態のプライマー組成物を適用する被着体としては、特に限定されないが、例えば、ガラス、金属、木材、プラスチックおよびこれらの表面に塗装が施されたもの等が挙げられる。難接着性塗板としては、アクリル系塗板、エポキシ系塗板、シリコーン系塗板等が挙げられる。
【0098】
このように本実施形態のプライマー組成物によれば、以下に示すような効果を有することができる。すなわち、バインダー樹脂と溶剤とに、上記一般式(1)で示される化合物(A)を上記のように所定量含有することで、塗布時には目視にて塗布状況が確認できるため、塗布済であるか否かの判別を容易に行うことができる。また、本実施形態のプライマー組成物は、塗布時には目視にて塗布状況が確認でき、屋外などで太陽光に所定時間当てることで時間の経過と共に消色するため、施工時のはみ出しに注意する必要がなく、作業性を向上させることができると共に、塗布面の外観を損なうことなく美観に優れたプライマー組成物を提供することができる。
【0099】
したがって、本実施形態のプライマー組成物は、例えば、接着剤、シーラント(シーリング材)などに好適に用いることができる、接着剤またはシーラントとしては、例えば、ウレタン系、ウレタンエポキシ系等が好適に挙げられる。特に、本実施形態のプライマー組成物は、ウインドウシーラントと難接着性塗板、及び、ウインドウシーラントとガラスとの接着に用いられるプライマーとして有用である。
【0100】
本実施形態のプライマー組成物を用いたウインドウシーラントと難接着性塗板、及び、ウインドウシーラントとガラスとの接着方法について、以下に説明する。被着体の一方は、自動車のボディ等に用いられる塗装鋼板、例えば、電着塗装鋼板等にアクリルメラミン塗料を焼付けた難接着性塗板等およびフロートガラス等が挙げられる。上記ウインドウシーラントは、自動車のボディと窓ガラスとを接着するためのもので、例えば、一般に用いられるポリウレタン系シーラント等が挙げられる。ウインドウシーラントとしては、例えば、横浜ゴム株式会社製のWS−202等の市販品を使用することができる。
【実施例】
【0101】
以下に、実施例を挙げて本実施形態を具体的に説明するが、本実施形態はこれらに限定されるものではない。
【0102】
<プライマー組成物>
下記表1に示す組成(質量部)で撹拌機を用いて混合し、各プライマー組成物を得た。
【0103】
<視認性>
得られたプライマー組成物をアクリル系塗板あるいはフロートガラスに塗布して試料を作製し、塗布直後における試料の外観を目視により観察し、アクリル系塗板あるいはフロートガラスに対して塗布済みであるか否かを判別できるかを判断した。プライマー組成物が着色されていて塗板に対して塗布済であることが判別可能な場合には、視認性に優れるものとして「○」と評価した。プライマー組成物が透明であり、塗板に対して塗布済であるか否かの判別ができないものを視認性に劣るものとして「×」と評価した。評価結果を下記表1に示す。
【0104】
<消色性>
上記で作製した視認性評価のために用いた試料を、太陽光の当たる屋外に3日間暴露し、プライマー組成物の着色時からの色の消色の割合を評価した。プライマー組成物が消色して透明化していた場合には、消色性に優れるものとして「○」と評価した。なお、化合物A(色素)を含有していない比較例1については、消色性の評価ができないため、「−」とした。評価結果を下記表1に示す。
【0105】
<接着性>
得られたプライマー組成物を比較例1、実施例1−1、1−2、1−3についてはアクリル系塗板に塗布し、実施例2−1,2−2,2−3、実施例3−1、3−2,3−3、についてはフロートガラスに塗布し、20℃で2分間放置した後、ウレタン系のウインドウシーラント(商品名:WS−202、横浜ゴム株式会社製)を厚さ3mmとなるように塗布し、以下に示す硬化条件で硬化させて試験体とした。
【0106】
(硬化・養生条件)
・初期接着性:20℃、65%RHの環境下で7日間放置
・耐水接着性:20℃、65%RHの環境下で7日間放置後に、20℃の温水に14日間浸漬
・耐熱接着性:20℃、65%RHの環境下で7日間放置後に、80℃雰囲気下で14日間静置
【0107】
(接着性評価方法)
得られた試験体のウインドウシーラントをナイフでカットし、カット部を手で摘んで引張り、その剥離状態を観察することで、接着性を評価した。接着性の評価は、接着面積に対するウインドウシーラントの界面破壊(AF)面積および凝集破壊(CF)面積に対する、凝集破壊(CF)面積の割合(%)により行い、CFの割合が高いほど接着性に優れると評価した。例えば、接着面の面積に対してウインドウシーラントの凝集破壊の面積の割合が80%であった場合を「CF80」と表記し、凝集破壊の面積の割合が100%であった場合を「CF100」と表記することとした。評価結果を下記表1に示す。
【0108】
【表1】

【0109】
表1に示す各成分は下記のとおりである。
・バインダー樹脂(アクリル樹脂):商品名:デルパウダー80N、数平均分子量100000、旭化成工業株式会社製
・バインダー樹脂(ポリエステル樹脂):商品名:バイロンGK810、数平均分子量6000、ガラス転移温度:46℃、酸成分:テレフタル酸、イソフタル酸およびセバシン酸、東洋紡績株式会社製
・バインダー樹脂(ウレタン樹脂):商品名:パンデックスT5205、数平均分子量60000、DIC株式会社製
・ポリイソシアネート化合物:商品名:デスモジュールRFE、不揮発分(固形分)27質量%、住化バイエルウレタン株式会社製
・ポリイソシアネート・シラン化合物:(商品名:タケネートD160N、HDI−TPM付加物、三井化学ポリウレタン株式会社製)と(商品名:KBM−573、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、信越化学工業株式会社製)とをモル比1:1で反応させた反応物
・シラン化合物:(商品名:Z−6094、3−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、東レ・ダウコーニング株式会社製)と(商品名:Z−6044、3−グリシドキシプロピルジメトキシシラン、東レ・ダウコーニング株式会社製)と(商品名:A−187、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製)とをモル比1:1.5:0.7で反応させた反応物
・化合物A(色素):商品名エリスロシン、分子量897.86、キリヤ化学株式会社製、上記式(1)の水和物
・溶剤:酢酸エチル
・上記表1中、固形分は、プライマー組成物の合計質量に対する質量%を示す。化合物(A)の含有量は、プライマー組成物の合計質量に対する質量%を示す。
【0110】
表1に示す結果から、実施例1−1〜1−3、実施例2−1〜2−3、実施例3−1〜3−3は、いずれも、視認性および消色性に優れ、また、接着性も良好であることが分かった。また、実施例1−1〜1−3を見ると、ポリイソシアネート化合物を含む場合であっても、視認性、消色性およびアクリル塗板に対する接着性に優れることが分かった。また、実施例2−1〜2−3を見ると、ポリイソシアネート・シラン化合物を含む場合であっても、視認性、消色性およびフロートガラスに対する接着性に優れることが分かった。また、実施例3−1〜3−3を見ると、シラン化合物を含む場合であっても、視認性、消色性およびフロートガラスに対する接着性に優れることが分かった。これに対して、比較例1について、化合物A(色素)を含有していない比較例1は、視認性に劣ることが分かった。
【0111】
よって、バインダー樹脂と溶剤とに、上記一般式(1)またはその水和物で示される化合物(A)を0.1質量%以上2.5質量%以下、好ましくは0.1質量%以上2.0質量%以下、より好ましくは0.1質量%以上1.5質量%以下含有したプライマー組成物を用いることで、塗布時には目視にて塗布状況が確認でき、屋外などで太陽光に所定時間当てることで時間の経過と共に消色するため、塗布済であるか否かの判別を容易に行うことができる。このため、このプライマー組成物を用いれば、外観を損なうことなく美観に優れ、施工時のはみ出しに注意する必要がなく、作業性を向上させることができることが判明した。
【0112】
以上のように、本発明にかかるプライマー組成物は、塗布時には目視にて塗布状況が確認でき、屋外等で太陽光が当たると経時で消色して見えなくなるため施工性向上および美観性を向上させるのに有用であり、特に、ウインドウシーラントと難接着性塗板との接着に用いられるプライマーとして用いるのに適している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バインダー樹脂と、
下記一般式(1)またはその水和物で示される化合物(A)と、
溶剤と、を含み、
前記化合物(A)の含有量が、0.1質量%以上1.5質量%以下であることを特徴とするプライマー組成物。
【化1】

【請求項2】
ポリイソシアネート化合物とイソシアネート・シラン化合物とシラン化合物との何れか一つ以上を含む請求項1に記載のプライマー組成物。
【請求項3】
前記バインダー樹脂が、ポリウレタン系樹脂とポリアクリル系樹脂との何れか一つ以上を含む請求項1又は2に記載のプライマー組成物。
【請求項4】
前記ポリイソシアネート化合物が、トリス(フェニルイソシアネート)チオホスフェートである請求項2又は3に記載のプライマー組成物。
【請求項5】
前記イソシアネート・シラン化合物が、トリメチロールプロパンとヘキサメチレンジイソシアネートとを反応させた化合物(a)と、少なくとも1つのフェニル基及びNHと結合している炭素を含むアミノシラン化合物(b)と、を反応させたものである請求項2又は3に記載のプライマー組成物。
【請求項6】
前記シラン化合物が、下記一般式(2)で示される化合物(1)、下記一般式(3)で示される化合物(2)、下記一般式(4)で示される化合物(3)の反応物の少なくとも一種を含む請求項2又は3に記載のプライマー組成物。
【化2】


【公開番号】特開2012−207121(P2012−207121A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−73625(P2011−73625)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】