説明

プライマー組成物

【課題】コンクリート下地やコンクリート硬質化面に密着し、塗材を重層した構成物が剥離し難いプライマー組成物を提供する。
【解決手段】エポキシ樹脂主剤と硬化剤からなる溶剤型エポキシ樹脂プライマー組成物で、メチルメタクリレートブタジエンスチレン共重合体樹脂を含むこと、メチルメタクリレートブタジエンスチレン共重合体樹脂がスチレン・ブタジエンゴムをコアとしてメチルメタクリレートをグラフト重合し、シェルとしたものであり、エポキシ樹脂で膨潤されたものであること、重層される塗り床がエポキシ樹脂塗り床であることである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンクリート或いは硬質処理されたコンクリート面に密着性を付与するブライマー組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
コンクリート基礎は床として、そのままでは発塵や中性化や乾燥による劣化等があるため、目的に応じて処理される。発塵や簡単なコンクリート保護には水ガラスや金属シリケート等で処理するもの、耐久性や耐薬品性等を付与する場合にはエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂等の塗り床が施される。また、コンクリート打設と同時にコンクリートが硬化する前に水硬性組成物を散布し、表面処理する一体型塗り床も低コストで物性も高く使用される。
【0003】
コンクリート床面のコンクリート打設後の表面仕上げ後1時間乃至3時間程度経過後にコンクリート面が生乾き状態にある時に、透明色リチウム含有溶液または着色リチウム含有溶液を添加した塗料を用いて、コンクリート床面塗装を行う。これにより、コンクリート表面に塗布された塗料の一部がコンクリート表面に浸透する一方、塗膜としてコンクリート表面に十分な被膜厚の塗装面を形成でき、耐久性に富む着色塗膜層を形成できることが開示されている。(特許文献1)
【0004】
エポキシ樹脂と塩素含有量60〜70重量%の熱可塑性塩素含有樹脂をエポキシ樹脂100重量部に対し熱可塑性塩素含有樹脂20〜500重量部の割合で有機溶剤に溶解した防水塗膜用プライマー組成物がコンクリートの強化とプライマー上の塗膜の密着性が良いことが開示されている。(特許文献2)
【0005】
フレッシュコンクリートを打ち込んだ後、打設コンクリート表面層が未硬化状態にある間好ましくは締り始めた頃に、少なくともセメント、骨材及び無機系抗菌剤好ましくは銀系抗菌剤からなる抗菌性混合粉体を、当該打設コンクリート表面層に自動散布機を使って
均一に散布すると、当該抗菌性混合粉体は当該コンクリート表面層の余剰水を吸収してこれと水和し、打設コンクリート層と一体化した新たなコンクリート表面層を形成し、コンクリート一体型塗り床の抗菌性付与が開示されている。(特許文献3)
【0006】
(A)エポキシ樹脂、(B)Tg−30℃以下の(メタ)アクリレート系重合体から成るコア20〜80重量%とTg70℃以上の架橋性単量体単位を含有する(メタ)アクリレート系重合体から成るシェル80〜20重量%とから構成された重量平均粒子径0.1〜3μmのコアを用いて得られるコアシェル型粉末状重合体及び(C)エポキシ樹脂用潜在型硬化剤を含有し、(B)成分の含有量が(A)成分100重量部当たり10〜100重量部であるエポキシ樹脂系接着性組成物が耐衝撃性及び引張り剪断強度やT字剥離強度などの接着性能に優れることが開示されている。(特許文献4)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006-88106号公報
【特許文献2】特開昭61−4774号公報
【特許文献3】特開平8−184165号公報
【特許文献4】特開平5-65391号公報
【特許文献5】特開2003−137907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
解決しようとする課題は、コンクリート下地やコンクリート硬質化面に密着し、塗材を重層した構成物が剥離し難いプライマー組成物の提供である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明は、エポキシ樹脂主剤と硬化剤からなる溶剤型エポキシ樹脂プライマー組成物であって、メチルメタクリレートブタジエンスチレン共重合体樹脂を含むことを特徴とする溶剤型エポキシ樹脂プライマー組成物でセメント系基材に密着性がよい。
【0010】
請求項2の発明は、前記メチルメタクリレートブタジエンスチレン共重合体樹脂(以下MBS樹脂と記す)がスチレン・ブタジエンゴムをコアとしてメチルメタクリレートをグラフト重合し、シェルとしたものであり、エポキシ樹脂で膨潤されたものであることを特徴とする請求項1に記載の溶剤型エポキシ樹脂プライマー組成物でセメント系基材に安定して密着性がよい。
【0011】
請求項3の発明は、前記プライマー組成物の使途がコンクリート或いは硬質化されたコンクリートの表面用であることを特徴とする請求項1乃至2いずれかに記載の溶剤型エポキシ樹脂プライマー組成物で使途としてコンクリートや、珪酸塩系で表面処理した表面が無機硬質や磁器タイル等に対しても密着性が優れる。
【0012】
請求項4の発明は、前記コンクリートへのエポキシ系塗り床材重層用として使用されることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の溶剤型エポキシ樹脂プライマー組成物でエポキシ樹脂塗り床のコンクリートや硬質化されたコンクリートのプライマーとして密着性に優れる。

【発明の効果】
【0013】
本発明のプライマー組成物はセメント系基材に密着性が良く、特に表面が硬質化されたコンクリートに密着が良く、塗り床を重層するプライマーとして効果がある特徴がある。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明はセメント系基材に対して密着性に優れ、コンクリート下地の一時防塵処理やさらにエポキシ系塗材を処理する際のプライマーとして適し、特に珪酸塩系での処理されたもの、既設の無機硬質系の塗り床や磁器タイル貼り床に対して密着性が優れる。
【0015】
本発明に用いるMBS樹脂粉末はスチレンブタジエンゴムをコアとし、スチレン、メチルメタクリレートをグラフトし、シェルとした粉末で汎用の方法で製造され、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリカーボネート樹脂等の耐衝撃性の改善等で成型時に配合されるものである。製造方法の一例として特許文献5がある。成分比率はブタジエンが30重量%以上65重量以下が好ましく。さらに好ましくは45重量%以上65重量%以下が少量で効果が得られる点で好ましい。配合方法例としてはMBS樹脂粉末をエポキシ樹脂、例えば液状のビスフェノールA型エポキシ樹脂に分散後120℃以上で加温し、粉末を膨潤させて配合する。配合量はエポキシ樹脂固形分に対して1〜5重量%が好ましく、コストと効果が両立し、物性を損なうことがない。本発明のプライマー組成物は厚塗りは不要で、下地に対しての濡れや、塗膜に気泡が入らないこと、乾燥が速いことが要求されるため、溶剤で希釈する。プライマー組成物は室温硬化であるため、エポキシ樹脂主剤と硬化剤の2液型が好ましく、それぞれ成分の相溶性、乾燥性により溶剤を選択する。本発明の組成物はエポキシ樹脂成分は溶解状態であるがMBS樹脂粉末は完全に溶解するものでなく、沈降や凝集しない微濁溶液となる。プライマー組成物は使途や要求に合わせて、適宜選択するが、樹脂固形分として20〜40重量%がプライマーとして適うものとなる。
MBS樹脂樹脂粉末の市販品例としてカネエースB−11A、B−12((株)カネカ、商品名、MBS樹脂組成比率(ブタジエン:スチレン:MMA)=1:1:1、粒径としてB−12はB−11Aより大)、カネエースB−51、B−625((株)カネカ、商品名、MBS樹脂組成比率(ブタジエン:スチレン:MMA)=50〜60:30:10、粒径としてB−625はB51Aより大)がある。
【0016】
本発明に用いるエポキシ樹脂は硬化剤と組み合わせて硬化条件に合わせて選択する。ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、反応性希釈剤などエポキシ基を有するもので、反応性、硬度、接着力等で適宜単独或いは複数種類を配合できる。常温での硬化性や浸透性、製造の容易さから、液状ビスフェノールA樹脂を含むことが好ましい。
【0017】
本発明のエポキシ樹脂硬化剤はアミノ基、メルカプト基を有する硬化剤等を組み合わせることができ、脂肪族ポリアミン、変性脂肪族ポリアミン、ポリアミドアミン、ポリアミド、脂環式ポリアミン、変性脂環式ポリアミン、変性芳香族ポリアミン、3級アミン等のアミン化合物が挙げられ、例えば、ポリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジエチルアミノプロピルアミン、N-アミノエチルピペラジン、イソホロンジアミン、2,4,6−トリスジメチルアミノメチルフェノール、メタキシレンジアミン等が挙げることができる。好ましくは変性脂肪族ポリアミドアミン系の硬化剤である。
【0018】
本発明は溶剤を用いる。これはエポキシ樹脂やその硬化剤と相溶性を有し、硬化の過程で塗膜中に残留しないこと、環境への影響を考慮の上選択する。この溶剤はプライマー組成物を減粘させ、硬化時に膜外に速やかに抜け、MBR樹脂粉末の沈降、凝集がないものを適宜選択する。溶剤としてトルエン、キシレン、N−ブタノール、イソプロピルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルエチルケトン等が挙げられる。
【0019】
この他、エポキシ樹脂組成物に汎用配合される物を使うことができる。粘性調整剤、沈降防止剤、消泡剤、難燃剤、表面改質剤、着色剤等を配合することができる。
【0020】
例えば、難燃剤は三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウムなどを挙げることができる。
【0021】
消泡剤や表面改質剤はプライマー組成物の仕上がり性を良くするために、泡の早期除去や成膜時にピンホール、クレータ等の外観悪化を抑制するもので、シリコーン系オリゴマー、ポリマーやアクリル系ポリマー等の組成物である。
【0022】
本発明のプライマー組成物は基材の材質・状態に応じて適宜塗布量を選択する。硬質下地であれば、約150g/m塗布する。プライマー塗布後、塗材を重層するが、その塗材例としてエポキシ樹脂系塗材がある。
【0023】
以下に実施例、参考例、比較例を記して詳細な説明をする。結果を表1に記す。
【0024】
プライマー配合例
【0025】
主剤A
エピクロン1051ー75M (DIC(株)、商品名、ビスフェノールA型固形エポキシ樹脂、固形分75%、MEK溶液)を35重量部、jER828(三菱化学(株)、商品名、ビスフェノールA型液状エポキシ樹脂、エポキシ当量190)を5重量部、メチルエチルケトンを30重量部、n−ブチルアルコールを30重量部配合し、主剤Aとした。
【0026】
硬化剤A
サンマイド353NB(エアプロダクツジャパン(株)、商品名、ポリアミドアミン、固形分50%ブタノール溶液)25重量部、イソプロピルアルコール36重量部、酢酸ブチル39重量部を配合し、硬化剤Aとした。
【0027】
添加剤A
jER828を80重量部にカネエースB−51を20重量部を混合し、これを140℃下5時間静置したものを添加剤Aとした。
【0028】
添加剤B
添加剤AのカネエースB−51をカネエースB−625に変えた以外添加剤Aと同じく行い添加剤Bとした。
【0029】
添加剤C
添加剤AのカネエースB51をカネエースB−11Aに変えた以外添加剤Aと同じく行い添加剤Cとした。
【0030】
添加剤D
添加剤AのカネエースB−51をカネエースB−12に変えた以外添加剤Aと同じく行い添加剤Dとした。
【0031】
添加剤E
添加剤AのB51をメタブレンW−300A(三菱レイヨン(株)、商品名、アクリル系ゴムコア品)に変えた以外添加剤Aと同じく行い添加剤Eとした。
【実施例1】
【0032】
主剤Aを47.5重量部、添加剤Aを2.5重量部を配合し、硬化剤Aを50重量部と混合し、実施例1のプライマー組成物とした。
【実施例2】
【0033】
実施例1の添加剤Aを添加剤Bに変えた以外実施例1と同じに行い実施例2のプライマー組成物とした。
【実施例3】
【0034】
主剤Aを46.5重量部、添加剤Aを3.5重量部を配合し、硬化剤Aを50重量部と混合し、実施例3のプライマー組成物とした。
【実施例4】
【0035】
実施例3の添加剤Aを添加剤Bに変えた以外実施例3と同じに行い実施例4のプライマー組成物とした。
【0036】
比較例1
実施例1の添加剤Aを添加剤Eに変えた以外実施例1と同じに行い比較例1のプライマー組成物とした。
【0037】
比較例2
主剤Aを50重量部と硬化剤Aを50重量部と混合し、比較例2のプライマー組成物とした。
【0038】
参考例1
実施例1の添加剤Aを添加剤Cに変えた以外実施例1と同じに行い参考例1のプライマー組成物とした。
【0039】
参考例2
実施例1の添加剤Aを添加剤Dに変えた以外実施例1と同じに行い参考例2のプライマー組成物とした。
【0040】
参考例3
主剤Aを46.5重量部、添加剤Cを3.5重量部を配合し、硬化剤Aを50重量部と混合し、参考例3のプライマー組成物とした。
【0041】
参考例4
主剤Aを49重量部、添加剤Aを1重量部を配合し、硬化剤Aを50重量部と混合し、参考例4のプライマー組成物とした。
【0042】
参考例5
参考例4の添加剤Aを添加剤Bに変えた以外参考例4と同じに行い参考例5のプライマー組成物とした。
【0043】
【表1】

【0044】
ゴム配合率:
ゴム含有重量/エポキシ樹脂配合重量×100(%)を参考値として記した。
試験体の作製
コンクリートモルタルピース(ブロックサイズ70×70×20mm)、JEX−118(アイカ工業(株)、商品名、ケイ酸ナトリウム水溶液、NaO 14% SiO 5%含有)に23℃30日間浸漬させ、取り出して50℃7日間乾燥させたものを硬質下地とし、実施例、比較例、参考例のプライマー組成物を23℃相対湿度50%の条件下で0.15kg/m刷毛で塗布し、23℃相対湿度50%下で、24時間静置した。その後、ジョリエースJE−10(アイカ工業(株)、商品名、エポキシ樹脂系塗床材、2液型、固形分約50%)を混合し、刷毛で0.2kg/m塗布した。これを23℃相対湿度50%下で7日静置したものを常態碁盤目評価試験体とし、さらにこれを水中に7日間浸漬静置後 、23℃相対湿度50%下1日静置したものを耐水碁盤目評価試験体とした。
碁盤目試験
JIS K5600−5−6:1999(塗料一般試験方法−第5部:塗膜の機械的性質−第6節:付着性(クロスカット法))に準じて、単一刃切込み工具で2mm間隔、カット数6でスペーサーを用いて手動で行った。評価分類は同JIS掲載表1に従った。
6段階の分類され、以下に記載内容を示す。
0:カットの縁が完全に滑らかで、どの格子の目にもはがれがない。
1:カットの交差点における塗膜の小さなはがれ。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に5%を上回ることはない。
2:塗膜がカットの縁に沿って、及び/又は交差点においてはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは明確に5%を超えるが15%を上回ることはない。
3:塗膜がカットの縁に沿って、部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は目のいろいろな部分が、部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に15%を超えるが35%を上回ることはない。
4:塗膜がカットの縁に沿って.部分的又は全面的に大はがれを生じており、及び/又は数か所の目が部分的又は全面的にはがれている。クロスカット部分で影響を受けるのは、明確に35%を上回ることはない。
5:分類4でも分類できないはがれ程度のいずれか。

強制剥離試験
上記、常態碁盤目と同じ処理された試験体に塗膜に下地に到達する切れ目を入れ、切れ目より人力で皮すきを用いて剥離を試み、下記の評価分類とした。
○ 剥離不可 △ 剥離部分がある。 × 剥離できる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明のプライマー組成物はコンクリートの一時発塵防止塗料として、さらに塗り床材を重層する際、密着性に優れる。特に、硬質化処理された面や、コンクリート打設後水硬性組成物を散布して硬化させる一体型塗り床の既設床に対して塗り床塗材は密着が劣るが本発明のプライマー組成物はこれに対して重層することができ、有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エポキシ樹脂主剤と硬化剤からなる溶剤型エポキシ樹脂プライマー組成物であって、メチルメタクリレートブタジエンスチレン共重合体樹脂を含むことを特徴とする溶剤型エポキシ樹脂プライマー組成物。
【請求項2】
前記メチルメタクリレートブタジエンスチレン共重合体樹脂がスチレン・ブタジエンゴムをコアとしてメチルメタクリレートをグラフト重合し、シェルとしたものであり、エポキシ樹脂で膨潤されたものであることを特徴とする請求項1に記載の溶剤型エポキシ樹脂プライマー組成物。
【請求項3】
前記プライマー組成物の使途がコンクリート或いは硬質化されたコンクリートの表面用であることを特徴とする請求項1乃至2いずれかに記載の溶剤型エポキシ樹脂プライマー組成物。
【請求項4】
前記コンクリートへのエポキシ系塗り床材重層用として使用されることを特徴とする請求項1乃至3いずれかに記載の溶剤型エポキシ樹脂プライマー組成物。

【公開番号】特開2012−211245(P2012−211245A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77143(P2011−77143)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】