説明

プライミング処理方法及びプライミング処理装置

【課題】プライミング処理で使用する洗浄液の更なる節減と、乾燥処理時間の短縮化および洗浄処理用ツールおよび/または乾燥処理用ツールの長寿命化を図ること。
【解決手段】このプライミング処理装置は、プライミングローラ14の周囲に回転方向に沿って、洗浄パッド20を有する粗洗浄処理部18と、2流体ジェットノズル42を有する仕上げ洗浄処理部38と、拭いパッド52を有する液滴除去部48と、隙間58およびガスノズル60を有する乾燥ブロー部50とを配置している。洗浄パッド20および拭いパッド52は、洗浄パッド移動機構24および拭いパッド移動機構56によりプライミングローラ14の外周面に接触する第1の位置とそこから退避する第2の位置との間で切り換えられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピンレス法の塗布処理に用いるスリットノズルの吐出口付近に塗布処理の下準備として処理液の液膜を形成するためのプライミング処理方法およびプライミング処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
LCD等のフラットパネルディスプレイ(FPD)の製造プロセスにおけるフォトリソグラフィー工程には、スリット状の吐出口を有する長尺形のスリットノズルを走査してガラス基板等の被処理基板上にレジスト液を塗布するスピンレス法が多く用いられている。
【0003】
このようなスピンレス法においては、レジスト塗布膜の膜厚の不均一性や塗布ムラを防止するうえで、塗布走査中に基板上に吐出されたレジスト液が走査方向においてスリットノズルの背面側に回って形成されるメニスカスがノズル長手方向で水平一直線に揃うのが望ましく、そのためには塗布走査の開始直前にスリットノズルの吐出口と基板との間の塗布ギャップが隙間なく適量のレジスト液で塞がることが必要条件となっている。この要件を満たすために、塗布走査の下準備としてスリットノズルの吐出口から背面下端部にかけてレジスト液の液膜を形成するプライミング処理が行われている。
【0004】
代表的なプライミング処理法は、スリットノズルと同等またはそれ以上の長さを有する円筒状のプライミングローラを塗布処理部の近くで水平に設置し、微小なギャップを介してプライミングローラの頂部と対向する位置までスリットノズルを近づけてレジスト液を吐出させ、その直後にプライミングローラを所定方向に回転させる。そうすると、プライミングローラの頂部付近に吐出されたレジスト液がスリットノズルの背面下部に回り込むようにしてプライミングローラの外周面上に巻き取られ、スリットノズル側とプライミングローラ側とに分かれる形でレジスト液の液膜が切り離される。スリットノズルには、ノズル吐出口から背面下端部にかけてレジスト液が残る。
【0005】
従来一般のプライミング処理装置は、たとえば特許文献1に示すように、プライミングローラを回転駆動する回転機構だけでなく、プライミングローラをクリーニングするためのスキージ(またはスクレーパ)や洗浄ノズルおよび乾燥ノズル等を備えており、1回のプライミング処理が終了すると、その後処理として、回転機構によりプライミングローラを連続回転させ、スキージでプライミングローラの外周面からレジスト液を掻き落とし、洗浄ノズルおよび乾燥ノズルより洗浄液および乾燥ガスをそれぞれプライミングローラの外周面に噴き付けるようにしている。
【0006】
この種のスキージは、プライミングローラと同等またはそれ以上の長さを有する長尺状の板体からなり、その長手方向に延びる一辺のエッジ部がプライミングローラの回転方向に逆らう斜めの角度でプライミングローラの外周面に常時接触するように配置され、その接触圧力はスキージを取付するネジ部材の締め込み量によって調整されるようになっている。
【0007】
しかしながら、1回のプライミング処理でスリットノズルより吐出されるレジスト液を受けて巻き取るために使用されるプライミングローラ上の領域は、スリットノズルやプライミングローラのサイズによって異なるが、プライミングローラの全周(360・)を必要とするものではなく、通常は半周(180・)以下であり、1/4周(90・)以下あるいは1/5周(72・)以下で済ますことも可能である。しかるに、従来一般のプライミング処理装置は、プライミング処理を実行する度毎に後処理として上記のようにプライミングローラを連続回転させてプライミングローラの外周面全体(全周)に洗浄液を噴き付けるため、洗浄液(通常シンナー)を多量に使用するという問題があった。
【0008】
また、プライミングローラの外周面上に巻き取られたレジスト液を掻き落とすために用いられているスキージは、掻き落としたレジストを周囲に散らかしたり、スキージ自体に付着させて蓄積しやすく、洗浄後の乾燥処理の際にプライミングローラの清浄な外周面にレジストのパーティクルを転移させてしまうことや、プライミングローラとの接触圧力を最適に調整ないし維持することが困難であること、消耗劣化が早くて寿命が短いこと等が問題となっている。
【0009】
本出願人は、この問題を解決するために、特許文献2において、1回のプライミング処理のために、スリットノズルの吐出口とプライミングローラの上端とを所定のギャップを隔てて対向させ、スリットノズルより一定量の処理液または塗布液(たとえばレジスト液)を吐出させるとともにプライミングローラを所定の回転角だけ回転させて、プライミングローラの半周以下の部分的表面領域を当該プライミング処理に使用し、連続した所定回数のプライミング処理が終了した後にプライミングローラの外周面を全周に亘ってまとめて洗浄するプライミング処理法を開示している。
【0010】
このプライミング処理法は、プライミングローラの外周面をその周回方向に複数に分割してそれらの分割領域(部分的表面領域)を連続する所定回数のプライミング処理に順次割り当てて使用し、その後にプライミングローラの外周面を全周に亘って一括洗浄する。この一括洗浄処理は、回転機構によりプライミングローラを連続回転させながら洗浄機構と乾燥部とを作動させてプライミングローラの外周面を全周に亘ってまとめて洗浄するものであり、各プライミング処理の際にプライミングローラの表面に巻き取られた塗布液を掻き落とすためのスキージは不要であり、プライミング処理後の洗浄処理で消費する洗浄液を節減できるとともに、洗浄ないし乾燥処理の際にパーティクルの発生を防止することもできる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2004−167476
【特許文献2】特開2007−237046
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、本出願人が上記特許文献2で開示したプライミング処理法の改良版であるとともに、独自の観点から、プライミング処理で使用する洗浄液の更なる節減を実現し、更には乾燥処理時間の短縮化および洗浄処理用ツールおよび/または乾燥処理用ツールの長寿命化を図るプライミング処理方法およびプライミング処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1の観点におけるプライミング処理方法は、スピンレス法の塗布処理に用いるスリットノズルの吐出口付近に塗布処理の下準備として塗布液の液膜を形成するためのプライミング処理方法であって、1回分のプライミング処理のために、水平に配置された円筒状または円柱状のプライミングローラの頂部に対して所定のギャップを隔てて前記スリットノズルの吐出口を平行に対向させ、前記スリットノズルに一定量の塗布液を吐出させてから前記プライミングローラを回転させて、前記プライミングローラの外周面の上に前記吐出された塗布液の一部を巻き取る第1の工程と、前記プライミングローラの外周面上に巻き取られた塗布液を乾燥させて乾燥膜とする第2の工程と、別の1回分のプライミング処理のために、前記乾燥膜を外して前記プライミングローラの頂部に対して所定のギャップを隔てて前記スリットノズルの吐出口を平行に対向させ、前記スリットノズルに一定量の塗布液を吐出させてから前記プライミングローラを回転させて、前記乾燥膜とは異なる領域で前記プライミングローラの外周面の上に前記吐出された塗布液の一部を巻き取る第3の工程と、前記プライミングローラを回転させながら、前記プライミングローラの外周面の前記塗布液を巻き取った各領域に多孔質の樹脂からなる洗浄パッドを接触させて粗洗浄を施す第4の工程と、前記プライミングローラを回転させながら、前記粗洗浄を施された前記プライミングローラの外周面に洗浄液を供給して仕上げ洗浄を施す第5の工程と、前記プライミングローラを回転させながら、前記仕上げ洗浄を施された前記プライミングローラの外周面を乾燥させる第6の工程とを有する。
【0014】
上記第1の観点におけるプライミング処理方法においては、複数回のプライミング処理が済んだ後、最初に粗洗浄工程(第4の工程)で、多孔質樹脂の洗浄パッドを回転するプライミングローラの外周面に押し付けて、そこに付着している塗布液の液膜を洗浄パッドとの弾力的な面接触の擦れ合いによって均一かつ効率よく洗い落とす。そして、粗洗浄処理の直後に、仕上げ洗浄工程(第5の工程)において、プライミングローラ上に残っている薄い液膜を洗浄液できれいに洗い落とす。このような2段階(粗洗浄/仕上げ洗浄)の洗浄処理方式によれば、粗洗浄工程の介在によって仕上げ洗浄工程の負担が著しく軽減されるだけでなく、粗洗浄工程で使用する洗浄液は再利用のもので済むため、トータルの洗浄液使用量を従来よりも大幅に低減することができる。
【0015】
さらに、上記第1の観点におけるプライミング処理方法においては、プライミングローラの外周面をその周回方向に複数に分割して各分割領域を連続する所定回数のプライミング処理に割り当てて使用してから、プライミングローラの外周面上に付着している液膜または乾燥膜をまとめて一括洗浄処理および一括乾燥処理に附するので、洗浄液使用量の更に大幅な節減を図ることができる。
【0016】
上記第1の観点のプライミング処理方法においては、プライミングローラの外周面上の所望の領域を使用して実施された1回分のプライミング処理の結果として該領域内に残存(付着)する塗布液の液膜を乾燥させて乾燥膜とし、さらにプライミングローラの外周面上の乾燥膜とは異なる領域を使用して後続のプライミング処理を実施する。乾燥膜は所定の領域内に固定されてそこに保持されるため、その近くで後続のプライミング処理を実施しても乾燥膜からの影響(干渉)を受けることはない。
【0017】
好適には、乾燥膜は、自然乾燥により半乾きの状態で形成される。このために、プライミングローラ上に塗布液の一部を巻き取った後も、プライミングローラの回転をそのまま継続させて、塗布液の自然乾燥を行うのが好ましい。このような自然乾燥法により、各々の乾燥膜を半乾きの状態で一括洗浄に附することが可能であり、乾燥膜の洗い落としを容易にし、洗浄液の使用量を削減することができる。
【0018】
本発明の第2の観点におけるプライミング処理方法は、スピンレス法の塗布処理に用いるスリットノズルの吐出口付近に塗布処理の下準備として塗布液の液膜を形成するためのプライミング処理方法であって、1回分のプライミング処理のために、水平に配置された円筒状または円柱状のプライミングローラの頂部に対して所定のギャップを隔てて前記スリットノズルの吐出口を平行に対向させ、前記スリットノズルに一定量の塗布液を吐出させてから前記プライミングローラを回転させて、前記プライミングローラの外周面の上に前記吐出された塗布液の一部を巻き取る第1の工程と、前記プライミングローラを回転させながら、前記プライミングローラの外周面の前記塗布液が巻き取られた領域を洗浄液で洗浄する第2の工程と、前記プライミングローラの外周面に付いている洗浄液を拭い取るために、前記プライミングローラを回転させながら、非多孔質の材質からなる板状の拭いパッドを前記プライミングローラの外周面に接触させる第3の工程と、前記プライミングローラの外周面に残っている洗浄液を揮発させるために、周回方向の一定の区間にわたり前記プライミングローラの周囲に形成された隙間の中に、前記プライミングローラの回転方向と逆の方向に吹き抜けるように乾燥ガスを噴射する第4の工程とを有する。
【0019】
上記第2の観点におけるプライミング処理方法においては、プライミング処理(第1の工程)直後の後処理として、洗浄工程(第2の工程)によってプライミングローラの外周面上に付着した洗浄液の多くは、液滴除去工程(第3の工程)において最初に通過する拭いパッドで拭い取られる。そして、拭いパッドによっても除去できなかったプライミングローラ上の薄い液膜は、拭いパッドを通り抜けた直後に乾燥ブロー工程(第4の工程)において隙間の中を回転方向と逆向きに鋭利に吹き抜ける乾燥ノズルからの乾燥ガスのブローによって均一かつ効率よく飛散ないし揮発させられる。このように、液滴除去工程(第3の工程)の介在によって乾燥ブロー工程(第4の工程)の負担が大きく軽減されるとともに、乾燥ブロー工程自体の揮発性能が高いため、トータルの乾燥処理時間を大きく短縮させることができる。
【0020】
本発明の第3の観点におけるプライミング処理方法は、スピンレス法の塗布処理に用いるスリットノズルの吐出口付近に塗布処理の下準備として塗布液の液膜を形成するためのプライミング処理方法であって、1回分のプライミング処理のために、水平に配置された円筒状または円柱状のプライミングローラの頂部に対して所定のギャップを隔てて前記スリットノズルの吐出口を平行に対向させ、前記スリットノズルに一定量の塗布液を吐出させてから前記プライミングローラを回転させて、前記プライミングローラの外周面の上に前記吐出された塗布液の一部を巻き取る第1の工程と、前記プライミングローラの外周面上に巻き取られた塗布液を乾燥させて乾燥膜とする第2の工程と、前記プライミングローラを回転させながら、前記プライミングローラの外周面の前記塗布液が巻き取られた各領域を洗浄液で洗浄する第3の工程と、前記プライミングローラの外周面に付いている洗浄液を拭い取るために、前記プライミングローラを回転させながら、非多孔質の材質からなる拭いパッドを前記プライミングローラの外周面に接触させる第4の工程と、前記プライミングローラの外周面に残っている洗浄液を揮発させるために、周回方向の一定の区間にわたり前記プライミングローラの周囲に形成された隙間の中に、前記プライミングローラの回転方向と逆の方向に吹き抜けるように乾燥ガスを噴射する第5の工程とを有する。
【0021】
上記第3の観点のプライミング処理方法においては、プライミングローラの外周面上の所望の領域を使用して実施された1回分のプライミング処理の結果として該領域内に残存(付着)する塗布液の液膜を乾燥させて乾燥膜とする。好適には、乾燥膜は、自然乾燥により半乾きの状態で形成される。このために、プライミングローラ上に塗布液の一部を巻き取った後も、プライミングローラの回転をそのまま継続させて、塗布液の自然乾燥を行うのが好ましい。このような自然乾燥法により、各々の乾燥膜を半乾きの状態で一括洗浄に附することが可能であり、乾燥膜の洗い落としを容易にし、洗浄液の使用量を削減することができる。
【0022】
そして、プライミング処理の後処理として、洗浄工程(第3の工程)によってプライミングローラの外周面上に付着した洗浄液の多くは、液滴除去工程(第4の工程)において最初に通過する拭いパッドで拭い取られる。そして、拭いパッドによっても除去できなかったプライミングローラ上の薄い液膜は、拭いパッドを通り抜けた直後に乾燥ブロー工程(第5の工程)において隙間の中を回転方向と逆向きに鋭利に吹き抜ける乾燥ノズルからの乾燥ガスのブローによって均一かつ効率よく飛散ないし揮発させられる。このように、液滴除去工程(第3の工程)の介在によって乾燥ブロー工程(第5の工程)の負担が大きく軽減されるとともに、乾燥ブロー工程自体の揮発性能が高いため、トータルの乾燥処理時間を大きく短縮させることができる。
【0023】
本発明の第4の観点におけるプライミング処理装置は、スピンレス法の塗布処理に用いるスリットノズルの吐出口付近に塗布処理の下準備として塗布液の液膜を形成するためのプライミング処理装置であって、所定位置に水平に配置された円筒状または円柱状のプライミングローラと、前記プライミングローラをその中心軸の回りに回転させる回転機構と、前記プライミングローラの外周面に粗洗浄を施すための多孔質の樹脂からなる洗浄パッドを有し、前記プライミングローラの外周面に接触する第1の位置と前記プライミングローラの外周面から退避した第2の位置との間で前記洗浄パッドの位置を切り換える粗洗浄処理部と、前記プライミングローラの外周面に洗浄液を供給して仕上げ洗浄を施すための仕上げ洗浄処理部と、前記プライミングローラの外周面を強制的に乾燥させるための乾燥処理部と、記回転機構、前記粗洗浄処理部、前記仕上げ洗浄処理部および前記乾燥処理部の各動作を制御する制御部とを有し、1回分のプライミング処理のために、水平に配置された円筒状または円柱状のプライミングローラの頂部に対して所定のギャップを隔てて前記スリットノズルの吐出口を平行に対向させ、前記スリットノズルに一定量の塗布液を吐出させてから前記プライミングローラを回転させて、前記プライミングローラの外周面の上に前記吐出された塗布液の一部を巻き取り、前記プライミングローラの外周面上に巻き取られた塗布液を乾燥させて乾燥膜とし、別の1回分のプライミング処理のために、前記乾燥膜を外して前記プライミングローラの頂部に対して所定のギャップを隔てて前記スリットノズルの吐出口を平行に対向させ、前記スリットノズルに一定量の塗布液を吐出させてから前記プライミングローラを回転させて、前記乾燥膜とは異なる領域で前記プライミングローラの外周面の上に前記吐出された塗布液の一部を巻き取り、前記プライミングローラを回転させながら、前記プライミングローラの外周面の前記塗布液を巻き取った各領域に多孔質の樹脂からなる洗浄パッドを接触させて粗洗浄を施し、前記プライミングローラを回転させながら、前記粗洗浄を施された前記プライミングローラの外周面に洗浄液を供給して仕上げ洗浄を施し、前記プライミングローラを回転させながら、前記仕上げ洗浄を施された前記プライミングローラの外周面を乾燥させる。
【0024】
上記第4の観点におけるプライミング処理装置によれば、上記の構成により上記第1の観点におけるプライミング処理方法を実施することが可能であり、それによって上記第1の観点におけるプライミング処理方法と同様の作用効果を奏することができる。
【0025】
本発明の第5の観点におけるプライミング処理装置は、スピンレス法の塗布処理に用いるスリットノズルの吐出口付近に塗布処理の下準備として塗布液の液膜を形成するためのプライミング処理装置であって、所定位置に水平に配置された円筒状または円柱状のプライミングローラと、前記プライミングローラをその中心軸の回りに回転させる回転機構と、前記プライミングローラの外周面を洗浄液を用いて洗浄するための洗浄処理部と、前記プライミングローラの外周面から液滴を拭い取るための非多孔質の材質からなる拭いパッドを有し、前記プライミングローラの外周面に接触する第1の位置と前記プライミングローラの外周面から退避した第2の位置との間で拭いパッドの位置を切り換える液滴除去部と、周回方向の一定の区間にわたり前記プライミングローラの周囲に形成された隙間と、前記隙間の中に前記プライミングローラの回転方向に逆らう方向で吹き抜けるように乾燥ガスを噴射するガスノズルとを有する乾燥ブロー部と、前記回転機構、前記洗浄処理部、前記液滴除去部および前記乾燥ブロー部の各動作を制御する制御部とを有し、1回分のプライミング処理のために、水平に配置された円筒状または円柱状のプライミングローラの頂部に対して所定のギャップを隔てて前記スリットノズルの吐出口を平行に対向させ、前記スリットノズルに一定量の塗布液を吐出させてから前記回転機構により前記プライミングローラを回転させて、前記プライミングローラの外周面の上に前記吐出された塗布液の一部を巻き取り、前記回転機構により前記プライミングローラを回転させながら、前記プライミングローラの外周面上に巻き取られた塗布液またはそれが乾燥してできた膜を前記洗浄処理部により洗い落とし、前記回転機構により前記プライミングローラを回転させながら、前記液滴除去部により前記拭いパッドを前記プライミングローラの外周面に接触させて、前記プライミングローラの外周面に付いている洗浄液を拭い取り、前記回転機構により前記プライミングローラを回転させながら、前記乾燥ブロー部のガスノズルに乾燥ガスを噴射させて、前記プライミングローラの外周面に残っていた洗浄液を揮発させる。
【0026】
上記第5の観点におけるプライミング処理装置によれば、上記の構成により上記第2または第3の観点におけるプライミング処理方法を実施することが可能であり、それによって上記第2または第3の観点におけるプライミング処理方法と同様の作用効果を奏することができる。
【0027】
上記第4の観点または上記第5の観点におけるプライミング処理装置において、好ましくは、プライミングローラの周囲で発生するミストを強制排気によって除去するための排気機構が設けられる。
【発明の効果】
【0028】
本発明のプライミング処理方法またはプライミング処理装置によれば、上記のような構成および作用により、プライミング処理で使用する洗浄液の更なる節減を実現できるとともに、乾燥処理時間の短縮化および洗浄処理用ツールおよび/または乾燥処理用ツールの長寿命化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施形態におけるプライミング処理装置の構成を示す図である。
【図2】第1の実施例において1回分のプライミング処理が行われるときの各段階を模式的に示す図である。
【図3】粗洗浄処理部において、洗浄パッドが吸い取った塗布液を外に吐き出させる動作を示す部分拡大断面図である。
【図4】乾燥処理部の構成および作用を示す部分拡大断面図である。
【図5】第2の実施例において、第1回および第2回のプライミング処理およびその後処理が行われるときの各段階を模式的に示す図である。
【図6】第2の実施例において、第4回(最終回)のプライミング処理およびその後処理が行われるときの各段階を模式的に示す図である。
【図7】仕上げ洗浄処理部で使用した洗浄液を回収して粗洗浄処理部で再利用する構成の一変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図を参照して本発明の好適な実施の形態を説明する。

[プライミング処理装置の構成]
【0031】
図1に、本発明の一実施形態におけるプライミング処理装置の構成を示す。このプライミング処理装置は、たとえばLCD製造プロセス用のフォトリソグラフィー工程においてスピンレス法のレジスト塗布処理を行うレジスト塗布装置(図示せず)に組み込まれ、レジスト塗布処理のために被処理基板を載置あるいは浮上搬送する塗布ステージ(図示せず)の近くに配置される。
【0032】
図示のプライミング処理装置において、ハウジング10は、上面にスリット状の開口部12を有する長尺形の筐体からなり、中に収容するプライミングローラ14をその頂部が開口部12を介して上方に露出するように軸受(図示せず)で水平かつ回転可能に支持している。
【0033】
プライミングローラ14は、たとえばステンレス鋼からなる円筒状または円柱状のローラであり、一定の外径と後述するスリットノズル98の全長をカバーする長さを有している。ハウジング10も、たとえばステンレス鋼で作られてよい。
【0034】
プライミングローラ14を回転させるためのローラ回転機構16は、図示省略するが、モータ、回転制御部およびエンコーダ等を備えている。モータは、好ましくはサーボモータからなり、その回転駆動軸はたとえばプーリや伝動ベルト等の伝動機構を介してプライミングローラ14の回転軸に接続されている。回転制御部は、モータの基本動作(回転、停止、速度制御等)だけでなく、エンコーダを通じてモータの回転量および回転角度位置を任意に制御できるようになっている。
【0035】
ハウジング10内には、プライミングローラ14の頂部(最上部)から底部(最下部)まで正の回転方向(図面では反時計回り)に沿って向う途中に、好ましくは回転角90・付近の位置に、粗洗浄処理部18の洗浄パッド20が配置されている。
【0036】
この洗浄パッド20は、多孔質の樹脂(好ましくは耐薬品性に優れたフッ素系樹脂)からなり、水平方向でプライミングローラ14の一端から他端までカバーする長さと矩形の横断面形状とを有し、少なくともプライミングローラ14と対向する面が開口している箱状のパッド保持部22に保持されている。洗浄パッド移動機構24は、図示省略するが、モータ、回転制御部およびエンコーダ等を備えており、ラック&ピニオン26およびパッド保持部22を介して、洗浄パッド20をプライミングローラ14のラジアル方向で移動させ、洗浄パッド20の位置をプライミングローラ14の外周面に所望の圧力で接触する第1の位置(接触洗浄位置)とプライミングローラ14の外周面から離間した第2の位置(退避位置)との間で切り換えられるようになっている。
【0037】
洗浄パッド20の近傍たとえば真上に、洗浄液補給ノズル28が配置されている。この洗浄液補給ノズル28は、洗浄パッド20と同等の長さを有する長尺状のスリットノズルからなり、その吐出口を上記第1の位置(接触洗浄位置)における洗浄パッド20の前部(接触部)20aに向けて、あるいは周回方向においてその少し上流側に位置するプライミングローラ14の外周面に向けて、配置されている。粗洗浄処理が行われる際には、送液ポンプ30により洗浄液タンク32から汲み出された洗浄液(たとえばシンナー液)が配管34を介して洗浄液補給ノズル28に送られ、洗浄液補給ノズル28が洗浄液を吐出して洗浄パッド20による接触洗浄をアシストするようになっている。配管34の途中には、洗浄液からゴミ等の不純物を除去するためのフィルタ36および開閉弁37が設けられている。
【0038】
ハウジング10内には、プライミングローラ14を中心にして粗洗浄処理部16の反対側に、仕上げ洗浄処理部38および乾燥処理部40が設けられている。仕上げ洗浄処理部38は、プライミングローラ14の頂部(最上部)から正の回転方向に沿って好ましくは回転角180・〜270・の区間内に、洗浄ノズル42を配置している。この洗浄ノズル42は、好ましくは長尺形の2流体ジェットノズルからなり、プライミングローラ14の全長をカバーする長さでそれと平行に配置され、配管44を介して洗浄液/ガス供給部46に接続されている。配管44の途中には開閉弁45が設けられている。
【0039】
乾燥処理部40は、プライミングローラ14の頂部(最上部)から正の回転方向に沿って好ましくは回転角270・〜360・の区間内に、液滴除去部48と乾燥ブロー部50とを設けている。
【0040】
液滴除去部48は、プライミングローラ14の外周面から液滴を拭い取るための拭いパッド52と、拭いパッド52を回動可能に支持するパッド支持部54と、プライミングローラ14の外周面に接触する第1の位置(液滴除去位置)とプライミングローラ14の外周面から離間した第2の位置(退避位置)との間で拭いパッド52の位置を切り換える拭いパッド移動機構56とを有している。
【0041】
拭いパッド52は、非多孔質の材質たとえば合成ゴムからなる長尺状の板体であり、プライミングローラ14と同等の長さを有し、上記第1の位置(ぬぐい取り位置)ではその長手方向に延びる一辺のエッジ部がプライミングローラ14の回転方向に倣う斜めの角度(接線となす角度が好ましくは45・以下、最も好ましくは約30・)でプライミングローラ14の外周面に所望の圧力で接触するようになっている。
【0042】
乾燥ブロー部50は、正の回転方向に沿って液滴除去部48よりも下流側に設定された一定の区間内にわたりプライミングローラ14の周囲に形成された隙間58と、プライミングローラ14の回転方向に逆らう方向で該隙間58の中を鋭利に吹き抜けるように乾燥ガスたとえばドライエアを噴出するガスノズル60とを備えている。このガスノズル60は、プライミングローラ14と同等の長さを有するスリットノズルであり、隙間58の下流側端部付近にてハウジング10の上壁部に組み込まれている。ガスノズル60は、配管62を介して乾燥ガス供給部64に接続されている。配管62の途中には開閉弁65が設けられている。
【0043】
プライミングローラ14から見て仕上げ洗浄処理部38および乾燥処理部40の背後に吸引口66が設けられている。この吸引口66は、バキューム通路68およびミストトラップ70を介してバキューム装置72に通じている。バキューム装置72は、たとえば真空ポンプあるいは吸気ファンで構成されている。ミストトラップ70は、吸引口66からバキューム通路68を通って送られてくるミストをトラップする。ミストトラップ70で回収された液(洗浄液)は、配管74を介して洗浄液タンク32へ送られるようになっている。
【0044】
ハウジング10の底には、プライミングローラ14の真下の位置にドレイン口76が形成されている。このドレイン口76は排液管78を介してドレインタンク80に通じている。このドレインタンク80に回収された洗浄液は、ポンプ82によって随時または定期的に洗浄液タンク32へ移されるようになっている。好ましくは、洗浄液と一緒に送られてきたレジストを分別する装置がドレインタンク80の中またはその回りに装備されてよい。
【0045】
洗浄液タンク32には、上記のようにミストトラップ70およびドレインタンク80に回収された使用済みの洗浄液だけでなく、必要に応じて開閉弁81を開けて新洗浄液供給源84より未使用の新洗浄液(シンナー)も補充されるようになっている。ドレインタンク80および洗浄液タンク32内の液は、それぞれのドレイン口側の開閉弁86,88を開けると、廃液管90,92を介して廃液タンク(図示せず)へ送られるようになっている。
【0046】
洗浄液タンク32、ミストトラップ70、ドレインタンク80およびその回りのポンプ類、配管類によって、回収された使用済みの洗浄液を粗洗浄処理部18に再利用させるための洗浄液再利用システム94が構築されている。
【0047】
主制御部96は、所定のソフトウェアにしたがって動作するマイクロコンピュータを含み、このプライミング処理装置内のローラ回転機構16、粗洗浄処理部18、仕上げ洗浄処理部38、乾燥処理部40、バキューム装置72、洗浄液再利用システム94および開閉弁(37,45,65等)の各動作を統括して制御する。
【0048】
また、主制御部96は、このプライミング処理装置内の全体のシーケンスを統括して制御するとともに、少なくともプライミング処理に関しては、当該レジスト塗布装置に備わっているレジスト塗布処理用のスリットノズル98の一切の動作を制御するようになっている。
【0049】
すなわち、当該レジスト塗布装置において、スリットノズル98は、ノズル移動機構100によって支持され、かつ予め設定されたスペース内で任意の位置に搬送され、任意の場所に位置決めされるようになっている。また、スリットノズル98には、レジスト供給部102よりレジスト供給管104を介してレジスト液が供給される。レジスト供給管104には開閉弁106が設けられている。プライミング処理に関しては、主制御部96が、ノズル移動機構100、レジスト供給部102、開閉弁106を通じて、スリットノズル98の移動や位置決め、およびレジスト液吐出動作を制御するようになっている。

[プライミング処理方法の第1の実施例]
【0050】
次に、図2〜図4につき、このプライミング処理装置で実施可能なプライミング処理方法の第1の実施例を説明する。
【0051】
このプライミング処理装置が組み込まれる当該レジスト塗布装置においては、塗布ステージ上で基板一枚分の塗布処理が終了する度毎に次の塗布処理の下準備としてこのプライミング処理装置で1回分のプライミング処理が行われる。
【0052】
図2に、この実施例において1回のプライミング処理が行われるときの各段階を示す。
【0053】
プライミング処理が行われる直前、プライミングローラ14の外周面は全周にわたり清浄な状態になっている。この状態の下で、先ず、図1に示すように、スリットノズル98の吐出口がプライミングローラ14の頂部と所定のギャップ(たとえば数100μm)を隔てて平行に対向するように、ノズル移動機構100を通じてスリットノズル98を位置決めする。
【0054】
次に、図2のS1(吐出)に示すように、プライミングローラ14を静止させたままで、レジスト供給部102を通じてスリットノズル98に一定量のレジスト液Rを吐出させる。
【0055】
このレジスト液吐出の動作は、一定時間内に行われる。スリットノズル98の吐出口より吐出されたレジスト液Rは、プライミングローラ14の頂部付近に着液してから周回方向で周囲に広がる。
【0056】
次いで、ローラ回転機構16により所定のタイミングでプライミングローラ14に回転動作を開始させ、図2のS2(巻き取り)に示すように、レジスト液Rをスリットノズル98の背面下部98aに回り込ませるようにして、プライミングローラ14の外周面上にレジスト液Rを巻き取る。ここで、レジスト液Rを巻き取るときの回転速度は、レジスト液Rの液膜を早急に断ち切ってしまわないような比較的低い速度が好ましい。
【0057】
次いで、所定のタイミングでプライミングローラ14の回転速度を一気に上げる。これによって、図2のS3(切り離し)に示すように、レジスト液Rの液膜が切り離されて、スリットノズル98側とプライミングローラ14側とに分かれる。この際、スリットノズル98を上昇させると、レジスト液膜の分離を所定の部位でより円滑かつ確実に行うことができる。こうして、スリットノズル98には、ノズル吐出口から背面下端部98aにかけてレジスト液の液膜RFが残る。一方、プライミングローラ14の外周面上には、上記のようにして巻き取られたレジスト液の液膜RMが残る。このレジスト液膜RMの周回方向巻き取りサイズは、回転角度の大きさでたとえば70・〜75・に設定することができる。
【0058】
この実施例では、レジスト液膜RMを切り離した直後に、プライミングローラ14をいったん停止させ、粗洗浄処理部18の洗浄パッド20をそれまでの退避位置(第2の位置)から接触洗浄位置(第1の位置)へ往動させてプライミングローラ14の外周面に所望の圧力で接触させる。これと略同時に、洗浄液補充ノズル28より接触洗浄位置付近に向けて洗浄液を吐出させてよい。レジスト液膜RMは、接触洗浄位置に差し掛かる直前の位置(ローラ周回方向の少し上流側の位置)で停止しているのが望ましい。
【0059】
次いで、プライミングローラ14の回転を再開させて、図2のS4(粗洗浄)に示すように、プライミングローラ14の外周面上に巻き取られているレジスト液膜RMを接触洗浄位置へ送り込む。洗浄パッド20は、接触洗浄位置を通過するレジスト液膜RMを適度な加圧の面接触で擦り取る。擦り取られたレジスト液膜RMの一部はプライミングローラ14の外周面から落ちてドレイン口76側に送られ、他の一部は洗浄パッド(多孔質樹脂)20の中へ吸い取られる。もっとも、レジスト液膜RMの中には、擦り取られずにプライミングローラ14の外周面上に残存するもの(RM')もあり、この残存液膜RM'はプライミングローラ14の回転に伴って周回方向の下流側へ向かって移動する。
【0060】
このように、プライミング処理でプライミングローラの頂部付近で巻き取られたレジスト液の液膜が半回転するまでの間に上記のような粗洗浄処理を受けることによって、プライミングローラ上で塗布液の液膜が不所望に広がるのを防止することができる。
【0061】
この実施例では、図3に示すように、残存液膜RM'が接触洗浄位置から抜け出た直後にプライミングローラ14を一時停止させ、粗洗浄処理部18において洗浄パッド移動機構24が洗浄パッド20を更に往動駆動してプライミングローラの外周面に一段と大きな押圧力で押し付けて、洗浄パッド20を押し潰し、洗浄パッド20がそれまで吸い取ったレジスト液Rを外に吐き出させる。この時、洗浄液補充ノズル28より洗浄液を洗浄パッド20に供給してもよい。
【0062】
その後、洗浄パッド移動機構24が洗浄パッド20を復動させて、押圧力を解除し、さらに洗浄パッド20をプライミングローラ14から離して退避位置(第2の位置)へ戻す。これと略同時に、ローラ回転機構16がプライミングローラ14の回転を再開させる。
【0063】
プライミングローラ14の回転によって、上記残存液膜RM'が仕上げ洗浄処理部38に差し掛かると、2流体ジェットノズル42が作動して未使用の新洗浄液(シンナー)に圧縮ガス(エアまたは窒素)を混合した2流体のジェット流を残存液膜RM'に噴き付ける。主制御部96は、プライミングローラ14の外周面上で残存液膜RM'が付着している領域(つまり今回のプライミング処理でレジスト液膜RMの巻き取りに充てられた領域)を管理しており、その領域の現時の位置(周回方向の位置)もローラ回転機構16を通じて把握できる。したがって、残存液膜RM'が付着している領域が仕上げ洗浄処理部38付近の所定の区間を通過する間だけ2流体ジェットノズル42に2流体ジェット流を噴射させ、当該領域の通過後に2流体ジェット流の噴射を停止させることができる。なお、仕上げ洗浄処理部38と略同時にバキューム装置72がオンになる。
【0064】
もっとも、上記のように粗洗浄処理部18において粗洗浄処理の直後に洗浄パッド20のクリーニング(液の吐き出し)を行う場合は、そのパッドクリーニングに使用されたプライミングローラ14の外周面の領域(残存液膜RM'の後に続く領域)が幾らか汚れるので、その汚れた領域も仕上げ洗浄処理部38が2流体ジェット流できれいにしておくのが好ましい。また、洗浄パッド20のクリーニング(液の吐き出し)は、プライミング処理の度に毎回ではなく、定期的に行ってもよい。
【0065】
こうして、2流体ジェットノズル42より噴射される2流体ジェット流の強い衝撃力により、図2のS5(仕上げ洗浄)に示すように、プライミングローラ14の外周面上に付着していた残存液膜RM'は容易かつ十全に洗い落とされ、その多くは洗浄液に混じってドレイン口76へ流れ落ち、残りはミストに変じて付近に飛散する。飛散したミストは、吸気口66の方へ引き込まれ、そこからバキューム通路68に排出される。なお、仕上げ洗浄処理部38と吸気口66との間に存在する部材、すなわち拭いパッド52、パッド支持部54およびブランケット55等にはミストを通す流通孔(図示せず)が設けられてよい。
【0066】
仕上げ洗浄処理部38が上記のような仕上げ洗浄の動作を開始した直後に、乾燥処理部40も乾燥処理動作を開始する。すなわち、図2のS6(液滴除去/乾燥ブロー)に示すように、液滴除去部48が拭いパッド52を回動させてそれまでの退避位置(第2の位置)から液滴除去位置(第1の位置)へ切り換える。また、乾燥ブロー部50はガスノズル60にドライエアを噴射させる。
【0067】
これにより、仕上げ洗浄によってプライミングローラ14の外周面上に付着した洗浄液の多くは、乾燥処理部40において最初に通過する液滴除去部48の拭いパッド52で拭い取られる。図4に示すように、拭い取られた洗浄液の液滴qaのうち、一部は拭いパッド52およびパッド支持部54の下面を伝ってドレイン口76側へ落下し、残りはミストと一緒に吸引口66へ引き込まれる。
【0068】
拭いパッド52の拭い取りによっても除去できなかったプライミングローラ14上の薄い液膜は、図4に示すように、拭いパッド52を通り抜けた直後に乾燥ブロー部50において隙間58の中を回転方向と逆向きに鋭利に吹き抜けるガスノズル60からのドライエアのブローによって均一かつ効率よく飛散ないし揮発させられ、ミストmaとなって吸引口66へ引き込まれる。
【0069】
なお、乾燥ブロー部50によるドライエアのブローが無くても、バキューム装置72がオンしている限りは、プライミングローラ14上の液膜は隙間58の中で逆風を受け、揮発を促進させられる。しかし、プライミングローラ14と平行な長手方向において隙間58のギャップサイズに僅かでもばらつきがあると、液膜の揮発性に強弱分布が生じて、乾燥処理時間が揮発の弱い場所の所要乾燥時間によって律速され、長引いてしまうという問題がある。
【0070】
この実施例においては、隙間58のギャップサイズにばらつきが在っても、乾燥ブロー部50によるドライエアのブローによりギャップサイズのばらつきの影響を補償して隙間58内の揮発レートを均一化することが可能であり、ひいては乾燥処理時間の短縮化を促進できる。
【0071】
液滴除去部48においては、プライミングローラ14の外周面上の仕上げ洗浄処理を施された領域が通り過ぎた直後に、拭いパッド52をプライミングローラ14から離して退避位置(第2の位置)へ戻しておく。
【0072】
一方、乾燥ブロー部50の方は、図2のS7(乾燥ブロー)に示すように、そのままドライエアの噴射を継続し、所定時間(たとえば10秒程度)の経過後にドライエアの噴射を停止する。また、乾燥ブロー部50がオフした直後あるいはそれから所定時間の経過後にバキューム装置72をオフにする。
【0073】
上記した一連の動作は、プライミング処理直後の後処理として、プライミングローラ14を1回転させる間に、粗洗浄処理部18による粗洗浄と、仕上げ洗浄処理部38による仕上げ洗浄と、乾燥処理部40の液滴除去部48による液滴除去処理とをそれぞれ1回実施する最短のサイクルであり、通常はこれでプライミングローラ14の外周面を十全にクリーニングすることができる。もっとも、上記プライミングローラ1回転のクリーニングサイクルを複数回繰り返すことも可能である。
【0074】
上記したように、この実施例においては、プライミング処理直後の後処理として、最初に粗洗浄処理部18が多孔質樹脂の洗浄パッド20を回転するプライミングローラ14の外周面に押し付けて、そこに付着しているレジスト液の液膜RMを洗浄パッド20との弾力的な面接触の擦れ合いによって均一かつ効率よく洗い落とすようにしている。そして、粗洗浄処理の直後に、仕上げ洗浄処理部38が、プライミングローラ14上に残っている薄い残存液膜RM'を2流体ジェット流の仕上げ洗浄によって容易かつ十全に洗い落とすようにしている。
【0075】
このような2段階(粗洗浄/仕上げ洗浄)の洗浄処理方式によれば、粗洗浄処理部18の働きによって仕上げ洗浄処理部38の負担が大きく軽減されるだけでなく、粗洗浄処理部18で使用する洗浄液は再利用のもので済むため、トータルの洗浄液使用量を従来よりも大幅に低減することができる。
【0076】
また、粗洗浄処理部18においては、洗浄パッド20が多孔質樹脂からなり、面接触の擦り合いの際に吸い取ったレジスト液を図3に示すような押し潰しによって速やかに外へ吐き出せるので、レジストの汚れを溜めずに済み、粗洗浄処理の性能を安定に維持することができる。
【0077】
さらに、洗浄パッド20は、粗洗浄処理を行う時だけ第1の位置(接触洗浄位置)でプライミングローラ14の外周面に接触し、原則としてそれ以外の時はプライミングローラ14から離れて退避する。これによって、プライミングローラ14の外周面のうちプライミング処理に充てられていない清浄な領域が洗浄パッド20との接触によってレジストの汚れを受け取るような事態(それによって仕上げ洗浄および乾燥処理の負担ないし処理時間が増大する)を回避できるとともに、洗浄パッド20の消耗劣化を少なくし、長寿命化を図ることができる。
【0078】
また、この実施例においては、洗浄処理によってプライミングローラ14の外周面に付着した洗浄液を除去して乾燥させるために、乾燥処理部40の液滴除去部48がプライミングローラ14の外周面に非多孔質の拭いパッド52を接触させて液滴を拭い取ってから、乾燥処理部40の乾燥ブロー部50がガスノズル60にローラ回転方向とは逆向きにドライエアを噴射させ、隙間58の中およびその出口付近で逆向きの鋭利なドライエアのブローをプライミングローラ14の外周面に当てるようにしている。
【0079】
このような2段階(拭い取り/エアブロー)の乾燥処理方式によれば、液滴除去部48の働きによって乾燥ブロー部50の負担が大きく軽減されるだけでなく、乾燥ブロー部50自体の乾燥処理効率が高いので、トータルの乾燥処理時間を従来よりも大幅に低減することができる。
【0080】
また、液滴除去部48の拭いパッド52は仕上げ洗浄後の液滴を拭い取る時だけ第1の位置(液滴除去位置)でプライミングローラ14の外周面に接触し、原則としてそれ以外の時はプライミングローラ14から離れて退避する。これによって、プライミングローラ14の外周面上の乾いている領域に拭いパッド52を通じて液滴が不所望に及ぶ事態(それによって乾燥ブローの負担ないし処理時間が増大する)を回避できるだけでなく、拭いパッド20の汚れおよび消耗劣化を少なくして長寿命化を図ることができる。

[プライミング処理方法の第2の実施例]
【0081】
次に、図5および図6につき、このプライミング処理装置で実施可能なプライミング処理方法の第2の実施例を説明する。
【0082】
この第2の実施例でも、プライミング処理装置が組み込まれる当該レジスト塗布装置においては、塗布ステージ上で基板一枚分の塗布処理が終了する度毎に次の塗布処理の下準備としてこのプライミング処理装置で1回分のプライミング処理が行われる。
【0083】
図5に、第2の実施例においてプライミングローラ14の外周面が全周にわたり清浄な状態にリセットされてから1回目および2回目のプライミング処理が行われるときの各段階を示す。
【0084】
1回目のプライミング処理では、先ず、図1に示すように、スリットノズル98の吐出口がプライミングローラ14の頂部と所定のギャップ(たとえば数100μm)を隔てて平行に対向するように、ノズル移動機構100を通じてスリットノズル98を位置決めする。
【0085】
次に、図5のS1-1(吐出)に示すように、プライミングローラ14を静止させたままで、レジスト供給部102を通じてスリットノズル98に一定量のレジスト液Rを吐出させる。
【0086】
このレジスト液吐出の動作は、一定時間内に行われる。スリットノズル98の吐出口より吐出されたレジスト液Rは、プライミングローラ14の頂部付近に着液してから周回方向で周囲に広がる。
【0087】
次いで、ローラ回転機構16により所定のタイミングでプライミングローラ14に回転動作を開始させ、図2のS1-2(巻き取り)に示すように、レジスト液Rをスリットノズル98の背面下部98aに回り込ませるようにして、プライミングローラ14の外周面上にレジスト液Rを巻き取る。ここで、レジスト液Rを巻き取るときの回転速度は、レジスト液Rの液膜を早急に断ち切ってしまわないような比較的低い速度が好ましい。
【0088】
次いで、所定のタイミングでプライミングローラ14の回転速度を一気に上げる。これによって、図2のS1-3(切り離し)に示すように、レジスト液Rの液膜が切り離されて、スリットノズル98側とプライミングローラ14側とに分かれる。この際、スリットノズル98を上昇させると、レジスト液膜の分離を所定の部位でより円滑かつ確実に行うことができる。こうして、スリットノズル98には、ノズル吐出口から背面下端部98aにかけてレジスト液の液膜RFが残る。一方、プライミングローラ14の外周面上には、上記のようにして巻き取られたレジスト液の液膜RM1が残る。このレジスト液膜RM1の周回方向巻き取りサイズは、回転角度範囲でたとえば70・〜75・のサイズに設定することができる。
【0089】
この実施例では、レジスト液膜RM1を切り離した後も、図5のS1-4(自然乾燥)に示すようにプライミングローラ14の回転をそのまま継続させる。この際、プライミングローラ14の回転速度は、レジスト液膜を切り離した直後の速度をそのまま維持してもよく、あるいは異なる速度に切り換えてもよい。なお、この自然乾燥(S1-4)の間も、バキューム装置72はオフにしておく。また、粗洗浄処理部18、仕上げ洗浄処理部38、乾燥処理部40(液滴除去部48、乾燥ブロー部50)もそれまでの全工程S1-1〜S1-4を通じて全てオフにしておく。
【0090】
この実施例では、このようにプライミングローラ14上に巻き取られたレジスト液膜RM1を切り取った後もプライミングローラ14の回転をそのまま継続させる動作によって、注目すべき2つの効果が奏される。
【0091】
第1の効果は、プライミングローラ14上に巻き取られたレジスト液膜RM1の液垂れを防止できることである。すなわち、巻き取り(S1-22)および切り離し(S1-3)の動作中に、プライミングローラ14上のレジスト液膜RM1は、プライミングローラ14の頂部から底部に向って周回方向に移動する。
【0092】
仮に、ここでプライミングローラ14の回転を止めたならば、レジスト液膜RM1には重力によって周回方向下向きの力が持続的に働いて、プライミングローラ14の外周面上でレジスト液膜RM1が下に垂れる(広がる)。スリットノズルを使用するスピンレス塗布法では、通常20cp以下の低粘度レジスト液が使用されるため、プライミングローラ上で上記のようなレジスト液膜の液垂れが生じやすい。
【0093】
しかるに、この実施例では、プライミングローラ14の回転を止めずにそのまま継続させることによって、レジスト液膜RM1に働く重力の作用(液垂れを誘引する力)を実質的にキャンセルし、プライミングローラ14上に巻き取ったレジスト液膜RM1を液垂れで広げることなく表面張力で所定の領域(分割領域)内に止めておくことができる。
【0094】
第2の効果として、排気機構つまりバキューム装置72をオフしたまま、プライミングローラ14の回転を継続させることにより、プライミングローラ14上に巻き取られたレジスト液膜RM1を短時間で効率よく自然乾燥させることができる。
【0095】
すなわち、バキューム装置72をオンにしてプライミングローラ14を回転させると、乾燥ブロー部50のガスノズル60を止めていてもプライミングローラ14上のレジスト液膜RM1が隙間58の中で逆風による大きなストレスを受けて、膜厚均一性を低下させやすい。特に、隙間58のギャップサイズのばらつきに起因してレジスト液膜RM1に加わる逆風の圧力に軸方向でばらつきがあると、レジスト液膜RM1の表面に周回方向に延びる筋状の凹凸が付きやすい。バキューム装置72を止めておけば、プライミングローラ14の回転中にその外周面上のレジスト液膜RM1は隙間58を通過する時でも逆風の圧力を受けることはなく、大気中に静止状態で放置されていた場合と同等の自然乾燥を受ける。
【0096】
こうして、プライミングローラ14上のレジスト液膜RM1は、自然乾燥によって、膜の内部は液状のままで膜の表層部が乾燥固化した半乾きまたは生乾きの状態になる。このような半乾きの状態に至ると、プライミングローラ14の回転を止めても、レジスト液膜RM1の液垂れは生じない。
【0097】
この実施形態では、自然乾燥工程後の半乾き状態になったレジスト液膜RMi(i=1,2,3・・)を、自然乾燥工程前の完全な液状態の液膜と区別するために、レジスト乾燥膜[RMi]と称する。
【0098】
上記のようなプライミングローラ14の回転によるレジスト液膜RM1の自然乾燥(S1-4)は、一定の時間をかけて行われる。この間に、スリットノズル98は、ノズル移動機構100によって塗布ステージへ送られ、そこで基板一枚分のレジスト塗布処理に供される。そして、レジスト塗布処理を終えると、スリットノズル98は、再びこのプライミング処理装置へ戻ってきて、図1に示すように、その吐出口がプライミングローラ14の頂部に対して所定のギャップを隔てて平行に対向するように位置決めされる。
【0099】
2回目のプライミング処理では、図5のS2-1(吐出)に示すように、前回(1回目)のプライミング処理でプライミングローラ14に巻き取られている第1のレジスト乾燥膜[RM1]を外してプライミングローラ14の頂部をスリットノズル98の吐出口に対向させた状態で、スリットノズル98に一定量のレジスト液Rを吐出させる。
【0100】
次いで、1回目のプライミング処理のときと同じ動作およびタイミングでレジスト液Rの巻き取り(S2-2)、切り離し(S2-3)、自然乾燥(S2-4)の工程が順次行われる。
【0101】
この場合も、1回目のプライミング処理のときと同様に、巻き取り(S2-2)および切り離し(S2-3)の工程により、プライミングローラ14の外周面上に所定の周回方向サイズ(回転角度範囲で70°〜75°)でレジスト液Rが巻き取られてレジスト液膜RM2が形成される。そして、プライミングローラ14の回転をそのまま継続して切り離し(S2-3)から自然乾燥(S2-4)の動作に移行し、液垂れを起こさずに所定の領域内でレジスト液膜RM2を自然乾燥させる。こうして、プライミングローラ14の外周面上には、第1レジスト乾燥膜[RM1]とは異なる領域に、通常は回転方向において下流側の隣に設定された分割領域内に、今回(2回目)のプライミング処理に付随した残存物として第2レジスト乾燥膜[RM2]が所定の周回方向サイズ(70°〜75°)で形成される。
【0102】
3回目のプライミング処理も、図示省略するが、上述した1回目および2回目のプライミング処理と同じ手順および動作で行われる。結果として、第1および第2のレジスト乾燥膜[RM1],[RM2]とは異なる領域に、通常は回転方向において第2レジスト乾燥膜[RM2]の下流側の隣に設定された分割領域内に、3回目のプライミング処理に付随した残存物として第3レジスト乾燥膜[RM3]が所定の周回方向サイズ(70°〜75°)で形成される。
【0103】
なお、3回目のプライミング処理が終了した時点で、第3レジスト乾燥膜[RM3]は上述したように自然乾燥により半乾き状態になっているが、第1および第2レジスト乾燥膜[RM1],[RM2]も依然として半乾き状態を保っている。すなわち、第1および第2レジスト乾燥膜[RM1],[RM2]は、プライミングローラ14上で強制乾燥処理や加熱処理を一切受けていないので、自然乾燥の時間が数倍長くてもまだ半乾き状態のままでいる。
【0104】
この第2の実施例では、プライミングローラ14の外周面が全周にわたり清浄な状態にリセットされてから連続して所定回数たとえば4回のプライミング処理を行った直後に、プライミングローラ14の一括洗浄(外周面全周の清浄化)を行うようにしている。
【0105】
図6に、プライミングローラ14の一周内で最後(4回目)のプライミング処理および直後の一括洗浄/乾燥処理が行われるときの各段階を示す。
【0106】
最後(4回目)のプライミング処理でも、図6に示すように、レジスト液Rの吐出(S4-1)、巻き取り(S4-2)および切り離し(S4-3)の各工程は1回目〜3回目の各プライミング処理のときと同じであり、プライミングローラ14の外周面上には回転方向において第3レジスト乾燥膜[RM3]の下流側隣の分割領域内にレジスト液膜RM4が巻き取られる。
【0107】
しかし、切り離し(S4-3)の直後に、自然乾燥の工程をスキップして、粗洗浄(S4-5)の工程に移行する。この粗洗浄(S4-5)の工程では、上述した第1の実施例と同様に洗浄パッド20の位置をそれまでの退避位置(第2の位置)から切り換える。
【0108】
そして、洗浄パッド20を接触洗浄位置(第1の位置)に保持したまま、プライミングローラ14を回転させる。1回転の間に、プライミングローラ14上に付着しているレジスト乾燥膜[RM1],[RM2],[RM3]およびレジスト液膜RM4は、RM4→[RM3]→[RM2]→[RM1]の順序で接触洗浄位置(第1の位置)へ送り込まれる。洗浄パッド20は、接触洗浄位置を通過するレジスト液膜RMおよびレジスト乾燥膜[RM3],[RM2],[RM1]を適度な加圧下の弾力的な面接触で擦り取る。
【0109】
ここで、プライミングローラ14の外周面上に付着したばかりのレジスト液膜RM4はもちろん半乾き状態のレジスト乾燥膜[RM3],[RM2],[RM1]も容易に擦り取られる。擦り取られたレジスト液膜RM4またはレジスト乾燥膜[RM3],[RM2],[RM1]の一部はプライミングローラ14の外周面から落ちてドレイン口76側に送られ、他の一部は洗浄パッド(多孔質樹脂)20の中へ吸い取られる。
【0110】
また、レジスト液膜RM4またはレジスト乾燥膜[RM3],[RM2],[RM1]の中には、擦り取られずにプライミングローラ14の外周面上に残存するもの(RM')もある。それらの残存液膜RM4',RM3', RM2',RM1'はプライミングローラ14の回転に伴って周回方向の下流側へ向かって移動する。粗洗浄処理部18においては、最後のレジスト乾燥膜[RM1]に対する粗洗浄を終えてから、洗浄パッド20を退避位置へ戻してよい。
【0111】
プライミングローラ14の回転によって、各残存液膜RMi'が仕上げ洗浄処理部38に差し掛かると、図6のS4-6(粗洗浄/仕上げ洗浄)に示すように、2流体ジェットノズル42が2流体ジェット流を残存液膜RM'に噴き付ける。主制御部96の制御の下で、2流体ジェット流をプライミングローラ14の外周面上で各残存液膜RM'が付着している領域に限定して噴き付けることも可能であるが、最初の残存液膜RM4'が差し掛かった時から最後の残存液膜RM1'が通り過ぎるまで2流体ジェット流を中断なく持続させてもよい。なお、仕上げ洗浄処理部38で2流体ジェット流の噴射を開始するのと略同時にバキューム装置72をオンにする。
【0112】
こうして、2流体ジェットノズル42より噴射される2流体ジェット流の強い衝撃力により、プライミングローラ14の外周面上に付着していた残存液膜RM'は容易かつ十全に洗い落とされ、その多くは洗浄液に混じってドレイン口76へ流れ落ち、残りはミストに変じて付近に飛散する。飛散したミストは、吸気口66の方へ引き込まれ、そこからバキューム通路68に排出される。
【0113】
仕上げ洗浄処理部38が上記のような仕上げ洗浄の動作を開始した直後に、乾燥処理部40も乾燥処理動作を開始する。図6のS4-7(仕上げ洗浄/液滴除去/乾燥ブロー)に示すように、仕上げ洗浄によってプライミングローラ14の外周面上に付着した洗浄液の液滴は、直後に乾燥処理部40においてその大部分が液滴除去部48の拭いパッド52で拭い取られ、拭いパッド52を通り抜けた直後に隙間58の中を逆向きに鋭利に吹き抜けるドライエアのブローによって均一かつ効率よく揮発させられ、ミストmaとなって吸引口66から排出される。
【0114】
液滴除去部48においては、最初の残存液が差し掛かった時から少なくとも1回転の間は拭いパッド52を液滴除去位置(第1の位置)でプライミングローラ14の外周面に接触させたままにしておくのが望ましい。
【0115】
この第2の実施例においても、上述した第1の実施例と同様に、液滴除去部48が拭いパッド52を退避させた後も、図6のS4-8(乾燥ブロー)に示すように、乾燥ブロー部50の方はそのまましばらくドライエアの噴射を継続し、所定時間の経過後にドライエアの噴射を停止してよい。また、乾燥ブロー部50をオフにした直後あるいはそれから所定時間の経過後にバキューム装置72をオフにする。
【0116】
このように、この第2の実施例によれば、プライミングローラ14の外周面をその周回方向に複数(たとえば4つ)に分割して各分割領域を連続する所定回数(4回)のプライミング処理に割り当てて使用し、最後(4回目)のプライミング処理を除く各プライミング処理においては、レジスト液の液膜RMiを巻き取った後もプライミングローラ14の回転をそのまま継続させる動作によって、レジスト液膜RMiの液垂れを防止してレジスト液膜RMiを各分割(割当)領域内に保持できるとともに、レジスト液膜RMiを短時間で効率よく自然乾燥させて半乾き状態のレジスト乾燥膜[RMi]とすることができる。
【0117】
このように、プライミングローラ14上で、レジスト液膜RMiの液垂れを防止できるので、隣の未使用分割領域を汚すおそれはなく、したがって後続のプライミング処理が前のプライミング処理によって影響を受けることはなく、プライミング処理の再現性および信頼性を向上させることができる。
【0118】
また、プライミングローラ14上に付着した各レジスト液膜RMiは自然乾燥による半乾き状態のレジスト乾燥膜[RMi]として、あるいは完全な液状の状態で洗浄されるので、洗い落としが容易であり、洗浄機構(粗洗浄処理部18、仕上げ洗浄処理部38)の負担を軽減し、洗浄液の使用量を少なくすることができる。
【0119】
さらに、複数回のプライミング処理によってプライミングローラ14の外周面上に所望の間隔を空けて形成されたレジスト乾燥膜または液膜を一括洗浄処理および一括乾燥処理によって一度に除去するクリーニング法であるから、上述した第1の実施例と比較しても洗浄液の使用量を一層削減することができる。
【0120】
なお、図示の例では、プライミングローラ14の外周面を4分割し、1回のプライミング処理における周回方向のレジスト液巻き取りサイズを70°〜75°とした。しかし、任意の分割数および巻き取りサイズが可能であり、たとえば1回当たりの周回方向巻き取りサイズを70°以下で済まし、プライミングローラ14の外周面を5分割して5回連続使用することも可能である。また、プライミングローラ14の外周面上に一周に亘って設定される複数の分割領域の間でプライミング処理に使用される順序は任意(順不同)であり、配列順序に一致させなくてもよい。

[他の実施例]
【0121】
粗洗浄処理部16で使用する再利用の洗浄液は、ドレインタンク80やミストトラップ70で回収する方法の他に、図7に示すような方法も可能である。すなわち、仕上げ洗浄処理部38による仕上げ洗浄(新液洗浄)に用いた洗浄液(シンナー)をドレインに流す代わりに、洗浄ノズル42の下方に設置したトレイ110に集めて回収し、トレイ110から粗洗浄処理部16へ転送するように構成することができる。この場合、粗洗浄処理部18の洗浄パッド20およびパッド保持部22をトレイ110よりも低い位置に設置することで、ポンプを使わずに重力を利用して再利用洗浄液の転送を自動的に行うことができる。
【0122】
プライミング処理装置内の他の処理部の構成または機能も上述した実施形態のものに限定されない。たとえば、粗洗浄処理部18においてパッド保持部22、パッド移動機構24、運動変換機構26の構成または機能も種種の変形が可能である。仕上げ乾燥処理部38においては2流体ジェットノズル以外の洗浄ツールも使用可能である。
【0123】
本発明における塗布液としては、レジスト液以外にも、たとえば層間絶縁材料、誘電体材料、配線材料等の塗布液も可能であり、各種薬液、現像液やリンス液等も可能である。本発明における被処理基板はLCD基板に限らず、他のフラットパネルディスプレイ用基板、半導体ウエハ、CD基板、フォトマスク、プリント基板等も可能である。
【符号の説明】
【0124】
10 プライミング処理装置
12 開口部
14 プライミングローラ
16 ローラ回転機構
18 粗洗浄処理部
20 洗浄パッド
28 洗浄液補充ノズル
38 仕上げ洗浄処理部
40 乾燥処理部
42 2流体ジェットノズル
52 拭いパッド
58 隙間
60 ガスノズル
72 バキューム装置
98 主制御部
100 ノズル移動機構
102 レジスト供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スピンレス法の塗布処理に用いるスリットノズルの吐出口付近に塗布処理の下準備として塗布液の液膜を形成するためのプライミング処理方法であって、
1回分のプライミング処理のために、水平に配置された円筒状または円柱状のプライミングローラの頂部に対して所定のギャップを隔てて前記スリットノズルの吐出口を平行に対向させ、前記スリットノズルに一定量の塗布液を吐出させてから前記プライミングローラを回転させて、前記プライミングローラの外周面の上に前記吐出された塗布液の一部を巻き取る第1の工程と、
前記プライミングローラの外周面上に巻き取られた塗布液を乾燥させて乾燥膜とする第2の工程と、
別の1回分のプライミング処理のために、前記乾燥膜を外して前記プライミングローラの頂部に対して所定のギャップを隔てて前記スリットノズルの吐出口を平行に対向させ、前記スリットノズルに一定量の塗布液を吐出させてから前記プライミングローラを回転させて、前記乾燥膜とは異なる領域で前記プライミングローラの外周面の上に前記吐出された塗布液の一部を巻き取る第3の工程と、
前記プライミングローラを回転させながら、前記プライミングローラの外周面の前記塗布液を巻き取った各領域に多孔質の樹脂からなる洗浄パッドを接触させて粗洗浄を施す第4の工程と、
前記プライミングローラを回転させながら、前記粗洗浄を施された前記プライミングローラの外周面に洗浄液を供給して仕上げ洗浄を施す第5の工程と、
前記プライミングローラを回転させながら、前記仕上げ洗浄を施された前記プライミングローラの外周面を乾燥させる第6の工程と
を有するプライミング処理方法。
【請求項2】
スピンレス法の塗布処理に用いるスリットノズルの吐出口付近に塗布処理の下準備として塗布液の液膜を形成するためのプライミング処理方法であって、
1回分のプライミング処理のために、水平に配置された円筒状または円柱状のプライミングローラの頂部に対して所定のギャップを隔てて前記スリットノズルの吐出口を平行に対向させ、前記スリットノズルに一定量の塗布液を吐出させてから前記プライミングローラを回転させて、前記プライミングローラの外周面の上に前記吐出された塗布液の一部を巻き取る第1の工程と、
前記プライミングローラを回転させながら、前記プライミングローラの外周面の前記塗布液が巻き取られた領域を洗浄液で洗浄する第2の工程と、
前記プライミングローラの外周面に付いている洗浄液を拭い取るために、前記プライミングローラを回転させながら、非多孔質の材質からなる板状の拭いパッドを前記プライミングローラの外周面に接触させる第3の工程と、
前記プライミングローラの外周面に残っている洗浄液を揮発させるために、周回方向の一定の区間にわたり前記プライミングローラの周囲に形成された隙間の中に、前記プライミングローラの回転方向と逆の方向に吹き抜けるように乾燥ガスを噴射する第4の工程と
を有するプライミング処理方法。
【請求項3】
スピンレス法の塗布処理に用いるスリットノズルの吐出口付近に塗布処理の下準備として塗布液の液膜を形成するためのプライミング処理方法であって、
1回分のプライミング処理のために、水平に配置された円筒状または円柱状のプライミングローラの頂部に対して所定のギャップを隔てて前記スリットノズルの吐出口を平行に対向させ、前記スリットノズルに一定量の塗布液を吐出させてから前記プライミングローラを回転させて、前記プライミングローラの外周面の上に前記吐出された塗布液の一部を巻き取る第1の工程と、
前記プライミングローラの外周面上に巻き取られた塗布液を乾燥させて乾燥膜とする第2の工程と、
前記プライミングローラを回転させながら、前記プライミングローラの外周面の前記塗布液が巻き取られた各領域を洗浄液で洗浄する第3の工程と、
前記プライミングローラの外周面に付いている洗浄液を拭い取るために、前記プライミングローラを回転させながら、非多孔質の材質からなる拭いパッドを前記プライミングローラの外周面に接触させる第4の工程と、
前記プライミングローラの外周面に残っている洗浄液を揮発させるために、周回方向の一定の区間にわたり前記プライミングローラの周囲に形成された隙間の中に、前記プライミングローラの回転方向と逆の方向に吹き抜けるように乾燥ガスを噴射する第5の工程と
を有するプライミング処理方法。
【請求項4】
スピンレス法の塗布処理に用いるスリットノズルの吐出口付近に塗布処理の下準備として塗布液の液膜を形成するためのプライミング処理装置であって、
所定位置に水平に配置された円筒状または円柱状のプライミングローラと、
前記プライミングローラをその中心軸の回りに回転させる回転機構と、
前記プライミングローラの外周面に粗洗浄を施すための多孔質の樹脂からなる洗浄パッドを有し、前記プライミングローラの外周面に接触する第1の位置と前記プライミングローラの外周面から退避した第2の位置との間で前記洗浄パッドの位置を切り換える粗洗浄処理部と、
前記プライミングローラの外周面に洗浄液を供給して仕上げ洗浄を施すための仕上げ洗浄処理部と、
前記プライミングローラの外周面を強制的に乾燥させるための乾燥処理部と、
前記回転機構、前記粗洗浄処理部、前記仕上げ洗浄処理部および前記乾燥処理部の各動作を制御する制御部と
を有し、
1回分のプライミング処理のために、水平に配置された円筒状または円柱状のプライミングローラの頂部に対して所定のギャップを隔てて前記スリットノズルの吐出口を平行に対向させ、前記スリットノズルに一定量の塗布液を吐出させてから前記プライミングローラを回転させて、前記プライミングローラの外周面の上に前記吐出された塗布液の一部を巻き取り、
前記プライミングローラの外周面上に巻き取られた塗布液を乾燥させて乾燥膜とし、
別の1回分のプライミング処理のために、前記乾燥膜を外して前記プライミングローラの頂部に対して所定のギャップを隔てて前記スリットノズルの吐出口を平行に対向させ、前記スリットノズルに一定量の塗布液を吐出させてから前記プライミングローラを回転させて、前記乾燥膜とは異なる領域で前記プライミングローラの外周面の上に前記吐出された塗布液の一部を巻き取り、
前記プライミングローラを回転させながら、前記プライミングローラの外周面の前記塗布液を巻き取った各領域に多孔質の樹脂からなる洗浄パッドを接触させて粗洗浄を施し、
前記プライミングローラを回転させながら、前記粗洗浄を施された前記プライミングローラの外周面に洗浄液を供給して仕上げ洗浄を施し、
前記プライミングローラを回転させながら、前記仕上げ洗浄を施された前記プライミングローラの外周面を乾燥させる、
プライミング処理装置。
【請求項5】
スピンレス法の塗布処理に用いるスリットノズルの吐出口付近に塗布処理の下準備として塗布液の液膜を形成するためのプライミング処理装置であって、
所定位置に水平に配置された円筒状または円柱状のプライミングローラと、
前記プライミングローラをその中心軸の回りに回転させる回転機構と、
前記プライミングローラの外周面を洗浄液を用いて洗浄するための洗浄処理部と、
前記プライミングローラの外周面から液滴を拭い取るための非多孔質の材質からなる拭いパッドを有し、前記プライミングローラの外周面に接触する第1の位置と前記プライミングローラの外周面から退避した第2の位置との間で拭いパッドの位置を切り換える液滴除去部と、
周回方向の一定の区間にわたり前記プライミングローラの周囲に形成された隙間と、前記隙間の中に前記プライミングローラの回転方向に逆らう方向で吹き抜けるように乾燥ガスを噴射するガスノズルとを有する乾燥ブロー部と、
前記回転機構、前記洗浄処理部、前記液滴除去部および前記乾燥ブロー部の各動作を制御する制御部と
を有し、
1回分のプライミング処理のために、水平に配置された円筒状または円柱状のプライミングローラの頂部に対して所定のギャップを隔てて前記スリットノズルの吐出口を平行に対向させ、前記スリットノズルに一定量の塗布液を吐出させてから前記回転機構により前記プライミングローラを回転させて、前記プライミングローラの外周面の上に前記吐出された塗布液の一部を巻き取り、
前記回転機構により前記プライミングローラを回転させながら、前記プライミングローラの外周面上に巻き取られた塗布液またはそれが乾燥してできた膜を前記洗浄処理部により洗い落とし、
前記回転機構により前記プライミングローラを回転させながら、前記液滴除去部により前記拭いパッドを前記プライミングローラの外周面に接触させて、前記プライミングローラの外周面に付いている洗浄液を拭い取り、
前記回転機構により前記プライミングローラを回転させながら、前記乾燥ブロー部のガスノズルに乾燥ガスを噴射させて、前記プライミングローラの外周面に残っていた洗浄液を揮発させる、
プライミング処理装置。
【請求項6】
前記プライミングローラの周囲で発生するミストを強制排気によって除去するための排気機構を有する、請求項4または請求項5に記載のプライミング処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−66244(P2012−66244A)
【公開日】平成24年4月5日(2012.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235712(P2011−235712)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【分割の表示】特願2009−152244(P2009−152244)の分割
【原出願日】平成21年6月26日(2009.6.26)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(391032358)平田機工株式会社 (107)
【Fターム(参考)】