説明

プラガブル光トランシーバ

【課題】トランシーバがホスト装置に挿着されている状態で、各トランシーバの使用周波数帯域又はチャンネル番号を読み取ることができ、その識別を離れた所からでも容易に行なうことができるプラガブル光トランシーバを提供する。
【解決手段】ホスト装置のケージ内に着脱可能に収納され、光コネクタとの間で光信号を送受し、ホスト装置との間で電気信号を送受するプラガブル光トランシーバ1であって、ケージ内への着脱を操作するベール8に、送受信の種別を識別するカラーコードラベル11を付している。カラーコードラベル11は、例えば、送受信波長の下2桁及び小数点以下第1位の桁、又はチャンネル番号を表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、波長の異なる複数の光信号を送受信するのに用いるプラガブル光トランシーバに関する。
【背景技術】
【0002】
プラガブル光トランシーバは、発光素子と受光素子を備え、光コネクタを介して光信号を送受信する光モジュールで、複数の電子部品、電子回路及び回路基板が収納される本体部と、光コネクタが着脱可能に接続されるレセプタクル部とから成っている。このプラガブル光トランシーバ(以下、単にトランシーバという)は、例えば、ホスト装置のケージに着脱可能に挿入されて、ケージの奥部に配された電気コネクタと電気的に接続されるとともに、ケージ内への挿着がロックされる。
【0003】
トランシーバとケージとの着脱機構としては、例えば、特許文献1に開示のように、回転可能なベール(取手)を備え、これを本体部のカバーに設けられたバネ部で押えるようにして本体に組み付ける構成のものが知られている。この構成は、ベールを定常位置から着脱可能な位置に回動することにより、ベールのカム部でアクチュエータを回動して、アクチュエータの係止突起をケージの係止孔から脱出させることで着脱できるようにしている。また、光コネクタがトランシーバに装着されている状態では、ベールを回動できないようにもされている。
【特許文献1】米国特許第6439918号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常、同一のホスト装置に、光伝送速度或いは光伝送距離等が異なる複数種のトランシーバを挿着して使用される。近年、波長の異なる複数の光信号を多重化したWDM(Wavelength Division Multiplex)、さらにはDWDM(Dense Wavelength Division Multiplex)技術が進められているが、これらの送受信において、トランシーバは送受する信号の波長毎に異ならせた複数のものが用いられる。それぞれのトランシーバには、これらの波長或いはチャンネル番号を付して、ホスト装置の所定のポートに挿着されるように表示ラベルが付されている。
【0005】
しかし、通常、これらの表示ラベルはトランシーバ製品の本体部に貼り付けられ、ホスト装置の挿着後はケージ内に隠れてしまう。このため、装置の点検、試験等でトランシーバの種別等を確認する場合は、トランシーバ前部に接続されている光ファイバコードの接続を外し、外部に引き出して確認することとなり、手間を要する作業となる。また、通常、表示ラベルには文字による識別が付されているが、トランシーバ製品が小型化されてきているため、文字表示が読み取り難いという問題もあった。
【0006】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたもので、トランシーバをがホスト装置に挿着されている状態で、各トランシーバの使用周波数帯域又はチャンネル番号を読み取ることができ、その識別を離れた所からでも容易に行なうことができるプラガブル光トランシーバの提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるプラガブル光トランシーバは、ホスト装置のケージ内に着脱可能に収納され、光コネクタとの間で光信号を送受し、ホスト装置との間で電気信号を送受するプラガブル光トランシーバであって、ケージ内への着脱を操作するベールに、送受信の種別を識別するカラーコードラベルを付している。カラーコードラベルは、例えば、送受信波長の下2桁及び小数点以下第1位の桁を表示する。また、カラーコードラベルは、チャンネル番号を表示するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ホスト装置に挿着状態にあるトランシーバを引出すことなく、容易にその種別を識別することができるとともに、また、カラーコードによる表示で離れた位置からでも容易に読み取ることができる。この結果、トランシーバの種別の点検、確認等の作業性を大幅に高めることができる。また、ベール部分にカラーコードが付されていることで、製品のデザイン性を向上させることもできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図により本発明の実施の形態を説明する。図1はプラガブル光トランシーバの未挿着状態を示す図、図2はプラガブル光トランシーバのケージへの挿着状態を示す図、図3は、本発明によるプラガブル光トランシーバを示す図、図4は本発明によるカラーコードラベルの貼りつけ部の詳細を示す図、図5は本発明で用いるカラーコードの一例を示す図である。図中、1はプラガブル光トランシーバ(トランシーバ)、2はケージ、3はフロントパネル、3aはパネル開口、4は筐体基板、5は本体部、6はレセプタクル部、7は光コネクタ受納部、8はベール、8aは軸部、8bは取手部、9は表示ラベル、10は光コネクタ、11はカラーコードラベル、11a,11b,11cはカラーコード、11dは送受信方向マークを示す。
【0010】
図1に示すように、プラガブル光トランシーバ(以下、トランシーバという)1は、例えば、レセプタクル部6の後部に本体部5が繋がった断面矩形の長方形体に形成される。トランシーバ1内には、発光素子、受光素子等の光部品、光信号の送受信を行なうための増幅素子等の電子部品や電子回路、及び、これらを実装するための回路基板を備えている。トランシーバ1は、ホスト装置のフロントパネル3に設けられたパネル開口3aから筐体基板4に載置されたケージ2内に挿入され、ケージ2の奥部に配されたコネクタ(図示せず)により電気的に接続される。
【0011】
レセプタクル部6内には、発光素子及び受光素子等が実装されていて、図2に示すように光コネクタ10と光学的に接続され、光信号の送受信が行なわれる。このため、レセプタクル部6の前部には、光コネクタ10が差し込まれる一対の開口からなる光コネクタ受納部7が設けられている。光コネクタ10は、例えば、光コネクタ受納部7への挿入が係止されるタイプ(例えば、LCコネクタ)のものが用いられる。レセプタクル部6には、トランシーバ1をケージ2内に挿入して、挿入をロックするためのベール8が設けられる。
【0012】
図2は、トランシーバ1をケージ2内に挿着した状態を示し、この状態でトランシーバ1はホスト装置への挿着がロックされ、電気的に接続された状態となっている。このとき、ベール8は図に示すような回動位置にあって、光コネクタ10の挿入が可能な状態となっている。光コネクタ10が光コネクタ受納部7に挿入されると、ラッチ手段により挿入がラッチされると共に、ベール8の回動を阻止して、光コネクタ10がはずされるまでは、トランシーバ1が取り出せないようにされている。
【0013】
トランシーバ1の波長或いはチャンネル番号等の表示ラベル9は、従来は図1に示すように、本体部5の上面側に製品シリアル番号等の製品に関する表示ラベルと一緒に貼り付けている。しかし、図2に示すように、トランシーバ1をケージ2内に挿着すると、この表示ラベル9は読めなくなる。このため、点検、試験等で使用波長或いはチャンネル番号を確認する場合には、トランシーバ1をケージ2から引出さなければならないが、通信が途絶えてしまう他に光コネクタ10を取り外すなどの作業も必要となり、かなりの手間を要する。
【0014】
本発明においては、図3及び図4に示すように、トランシーバ1の着脱操作を行なうベール8の表面に、カラーコードによる波長或いはチャンネル番号等の送受信種別を表示するカラーコードラベル11を付すようにしている。このため、ベール8はカラーコードラベル11が貼りやすいように、その取手部8bの幅を通常のものより幅広に形成する。なお、製品シリアル番号等の製品に関する表示ラベルについては、従来通りに本体部の上面等に貼りつける。ベール8は軸部8aで回動可能とされていて、図示の状態から前方にか移動させることにより、ケージ2とのロック状態を解除し、そのまま前方に引き抜くことにより取り出すことができる。また、挿着するには、ベール8を前方側に回動させた状態でケージ2内に押し込み、次いでベール8を図示の位置に戻すことにより挿着がロックされる。
【0015】
カラーコードラベル11は、取手部8bの形状に適合するように帯状に形成し、中央部にカラーコード11a,11b,11cからなる表示を付し、両側のスペース部分に、例えば、光信号の送信側か受信側かを識別するような送受信方向マーク11d等を付してもよい。カラーコードラベル11は、製品に関する表示ラベルと対にして印刷で形成しておくと、番号間違いを起こすことなく作製することができる。しかし、カラーコード11a,11b,11c部分は、複数種の小片として用意しておき、白紙のラベル上に貼りつけて所定のカラーコード表示ができるようにしてもよい。さらに、白紙のラベル上にペイント等で直接形成してもよい。
【0016】
図5はカラーコードの一例を示す図である。WDM伝送方式では、1,550nm帯の波長を、間隔0.8nm(=100GHz)ずつずらして多重化してしている。波長帯域のCバンド(1530nm〜1565nm)とLバンド(1565nm〜1625nm)の使用帯域では64波長が存在し、将来的に間隔0.4nmになった場合は、128波長となる。したがって、これらの波長を表示するのに、整数の下二桁と小数点以下の一桁の計3桁をカラーコードで表示する。また、チャンネル数で表示する場合も、3桁で表示すれば十分対応することができる。
【0017】
カラーコードと整数番号の割り当ては、例えば、電気抵抗値の表示で用いられているカラーコードを利用することができる。図5(B)は、その整数番号とカラーコードの対応表で、0=黒,1=茶・・・・・・8=灰色,9=白とされている。例えば、使用波長をCバンドの1558.7nmを表示する場合は、下三桁の58.7を表示するものとして、十位のカラーコード11aを緑色、一位のカラーコード11bを灰色、小数点以下一位のカラーコード11cを紫色とする。これにより、当該トランシーバで送受信している使用波長は、1558.7nmであると表示することができる。
【0018】
また、十位のカラーコード11aと一位のカラーコード11bとの間隔D1を狭く(例えば、0.2mm〜0.4mm)し、一位のカラーコード11bと小数点以下一位のカラーコード11cとの間隔D2をD1より大きく(例えば、0.5mm〜1.0mm)すると、波長を読み取りやすくすることができる。なお、カラーコード11a,11b,11cには、色の他にカラーの意味する整数番号を付しておいてもよい。
【0019】
なお、表示のためのカラーコードの数は、あまり多くない方が好ましく、3色以下で表示するのが適当であるが、必要に応じて4色とすることもできる。また、カラーコードラベル11に余白部分等があれば、この余白を利用して光信号の伝送距離情報(LR,SRなど)や光伝送速度情報(10Gbps、2.5Gbpなど)を付加してもよい。
【0020】
上述した表示を行なうことにより、ホスト装置に挿着状態にあるトランシーバを引出すことなく、容易にその種別を識別することができるとともに、また、カラーコードによる表示で離れた位置からでも容易に読み取ることができる。この結果、トランシーバの種別の点検、確認等の作業性を向上させることができる。また、ベール部分にカラーコードが付されていることで、トランシーバ製品としてのデザイン性を向上させることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】プラガブル光トランシーバの未挿着状態を示す図である。
【図2】プラガブル光トランシーバのケージへの挿着状態を示す図である。
【図3】本発明によるプラガブル光トランシーバを示す図である。
【図4】本発明によるカラーコードラベルの貼りつけ部の詳細を示す図である。
【図5】本発明で用いるカラーコードの一例を示す図である。
【符号の説明】
【0022】
1…プラガブル光トランシーバ(トランシーバ)、2…ケージ、3…フロントパネル、3a…パネル開口、4…筐体基板、5…本体部、6…レセプタクル部、7…光コネクタ受納部、8…ベール、8a…軸部、8b…取手部、9…表示ラベル、10…光コネクタ、11…カラーコードラベル、11a,11b,11c…カラーコード、11d…送受信方向マーク。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホスト装置のケージ内に着脱可能に収納され、光コネクタとの間で光信号を送受し、前記ホスト装置との間で電気信号を送受するプラガブル光トランシーバであって、
前記ケージ内への着脱を操作するベールに、送受信の種別を識別するカラーコードが付されていることを特徴とするプラガブル光トランシーバ。
【請求項2】
前記カラーコードは、送受信波長の下2桁及び小数点以下第1位の桁を表示することを特徴とする請求項1に記載のプラガブル光トランシーバ。
【請求項3】
前記カラーコードは、チャンネル番号を表示することを特徴とする請求項1に記載のプラガブル光トランシーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−178021(P2006−178021A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−368750(P2004−368750)
【出願日】平成16年12月21日(2004.12.21)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【Fターム(参考)】