説明

プラグ引抜き工具

【課題】積算電力計と電力負荷設備との間に設置され、給電停止及び停止解除を行う無停電端子に差し込まれたバイパスプラグを容易に引き抜くことを可能とする。
【解決手段】バイパスプラグ350の被係合部357に係合する係合部6を備えた一対の脚部5を有した引抜き工具本体2と、各脚部に対して夫々その長手方向に沿ってスライド自在に係合した一対のスライド片21を有した略コ字状のスライド部材20と、を備え、スライド片のスライド方向長は、引抜き工具本体の全長よりも大きく設定され、スライド部材を引抜き工具本体にスライド自在に組み付けたときにベース片23は基端連結片8の外側面と対向する位置にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラグ引抜き工具、特に、電力需要者側に設置された積算電力計に接続され、給電停止及び停止解除を行う無停電端子に差し込まれているプラグを引き抜くためのプラグ引抜き工具に関する。
【背景技術】
【0002】
電力会社が電力需要者から電力料金を徴収する際には需要者の住居等に設置された電力量計の計量値に基づいて月々の使用量を算出して課金を行い、需要者は自動引き落とし、或いは振込みによって料金の精算を行う。
電力需要者が経済的な事情等により、消費電力量に対する使用料金が支払えない状況にある場合、電力供給者は電力需要者に対して電力の供給を停止する場合がある。その場合、電力の供給の停止を行うことが近い将来に必要となる電力需要者の積算電力計に対して無停電端子(例えば、特許文献1を参照。)を設置し、電力需要者が消費した消費電力量に対して料金を支払わない場合、予め取り付けておいた無停電端子に差し込まれているバイパスプラグを抜くという作業が必要となる。
【0003】
図4は、無停電端子の取り付け状態を示す説明図である。柱上トランス100で適正に降圧された電圧は、引き込み線110、電源側電線112、113、114を介して積算電力計210に入力され、負荷側電線212、213、214を介して電力消費機器720に印加される。電力消費機器220で消費された電力量は積算電力計210によって計量され、計量された消費電力量に応じて電力使用料金が請求され、電力需要者はその使用料金を支払うこととなる。
前述のように、電力需要者が経済的な事情等により、その使用料金が支払えない状況にあると、電力供給者は電力需要者に対して電力の供給を停止するため、電力需要者に対して、無停電端子300を積算電力計210と電力消費機器220との間に電気的に設置する。具体的に、無停電端子300は図4に示すように、負荷側電線212、214を切断し、その間に挿入される。負荷側電線213は積算電力計210と電力消費機器220に接続されたままである。ここで、積算電力計210と無停電端子300を接続する線をリード線212a、214aと記している。
【0004】
図5は、無停電端子の概略断面図(a)と、それに用いるバイパスプラグの正面図(b)と、側面図(c)である。以下、無停電端子300について説明するが、重複を避けるため、リード線212aと負荷側電線212に関してのみ説明し、リード線214aと負荷電線214に関しては省略する。
無停電端子300は、合成樹脂製のケース311と、ケース311の開口部を塞ぐ合成樹脂製のカバー312と、ケース311内に絶縁的に分離配置された2つの導電ブロック313a、314aとを備えている。一方の導電ブロック313aには、止め螺子315aによりリード線212aが固定されている。
導電ブロック313a、314aには、それぞれ、バイパスプラグ350の一方及び他方の端子351、352を挿入することができるプラグ端子挿入孔322a、323aが平行に設けられている。これらのプラグ端子挿入孔322a、323aに対応する部位のケース311は、それぞれ、プラグ端子挿入孔322a、323aに連通すると共に、バイパスプラグ350の端子351、352が挿入可能なプラグ嵌合孔324a、325aが設けられている。
また、無停電端子300には、負荷側電線212が挿入できるように、導電ブロック314aに引込線挿入孔326aが設けられており、この引込線挿入孔326a内に先端が挿入された負荷側電線212は導電ブロック314aに止め螺子327により保持されるように構成されている。
【0005】
図5(b)に示すように、バイパスプラグ350は、略コ字状に折曲された導電線と、この導電線の端子351、352を除く部分を合成樹脂によりモールドした絶縁本体部355とを備えている。端子351、352は、これらが略平行になるように絶縁本体部355の一方の側面から延びている。絶縁本体部355の側部に一対の凹部357が形成されている。
作業者がバイパスプラグ350の両端子351、352を、プラグ嵌合孔324a、325aを介して、導電ブロック313a、314aのプラグ端子挿入孔322a、323aに挿入すると、両端子351、352は、それぞれ、プラグ端子挿入孔322a、323aに電気的に接続され取り外し困難となる。従って、リード線212aと負荷側電線212とは、止め螺子315a、導電ブロック313a、端子351、端子352、導電ブロック314a、止め螺子327を介して電気的に接続される。同様に、リード線214aと負荷側電線214に関しても同一の構成が採用されており、説明は省略する。
【0006】
図6は作業者がバイパスプラグを無停電端子から抜き取る作業を示す説明図である。積算電力計210及び無停電端子300は、家屋200の比較的高い位置、例えば、床面から1.8m〜2mの範囲に設置されているので、作業者は、梯子や脚立に乗った状態で無停電端子300に差し込まれているバイパスプラグ350を抜き取る作業を行うこととなる。
作業者は、例えば、右手Hの親指H1と人差し指H2とでバイパスプラグ350の絶縁本体部355を把持し、左手hで無停電端子300を把持する。そして、絶縁本体部355及び無停電端子300を把持した状態で、右手Hと左手hとを相反する方向に移動させるべく、両腕に力を入れる。そのようにして、両端子351、352は、それぞれ、プラグ端子挿入孔322a、323aから徐々に引き抜かれ、やがてプラグ端子挿入孔322a、323から完全に抜けることとなる。
バイパスプラグ350が抜き取られることにより、リード線212aと負荷側電線212及びリード線214aと負荷側電線214とは電気的に切断されるので、電力需要者は電力消費機器220を使用することができなくなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】実用新案登録第3112715号
【特許文献2】特開2009−44919公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
無停電端子300及びバイパスプラグ350は、積算電力計210に接続されたリード線212a、214aによって、積算電力計210の近傍且つ作業者の背丈よりも高い位置の空間に浮いた状態に維持されており、また両端子351、352はプラグ端子挿入孔322a、323aに取り外し困難に挿入されているので、作業者が無停電端子300に差し込まれているバイパスプラグ350を引き抜くことは容易ではない。従って、作業者は、梯子や脚立に乗った状態で、強い挟着力により無停電端子300に差し込まれているバイパスプラグ350を引き抜く作業を強いられ、時には作業者はペンチでバイパスプラグ350を引き抜かねばならないこともある。
また、両端子351、352が、プラグ端子挿入孔322a、323aから完全に抜けると、両端子351、352とプラグ端子挿入孔322a、323aとの間で生じていた摩擦力が急になくなるので、両手H、hには、互いに離れる方向に反動が働くこととなる。作業者の状態によっては、例えば、左手hが積算電力計210にぶつかり、右手Hは作業者自身にぶつかることもある。そのようなことが生じると、積算電力計210やバイパスプラグ350が破損し、また作業者が姿勢を崩して脚立や梯子から落ちて怪我をする恐れがある。
【0009】
図7はバイパスプラグを引き抜くための従来の引抜き工具(鳥居形)をバイパスプラグに取り付けた状態を示す図である。この引抜き工具400は、バイパスプラグ350の対向する2つの外側面に夫々形成された凹部(被係合部)357、357に係合する凸部(係合部)402、402を内側面に夫々備えた一対の脚部401、401、一対の脚部401、401の基端部側を連結一体化する基端連結片405、及び凹部357、357よりも基端部寄りの一対の脚部の内側面間を連結一体化する中間連結片410を有している。
引抜き工具400の使用に際しては、図示したように無停電端子300に取り付けられた状態にあるバイパスプラグ350の凹部357、357に対して凸部402、402が嵌合するように引抜き工具の脚部401、401を組み付ける。この状態で、一方の手で無停電端子300を把持しながら、他方の手の指を基端連結片405と中間連結片410との間の空所S内に差し込んで基端連結片405に指を引っかけつつ矢印方向へ引き抜く。
【0010】
しかし、この引抜き工具400を用いたバイパスプラグの引抜き作業においても、作業者がバイパスプラグ350を引き抜くにはかなりの力を要し、空所Sに差し込んだ指の力だけでは容易に抜くことができないのが実情である。また、引き抜いたときの勢いにより積算電力計やバイパスプラグを破損したり、作業者が怪我をすることが多々ある。
また、ペンチ等の工具を用いて引抜き工具400を引き抜くこともできるが、この作業も両手で行う必要があり、作業性が悪かった。また、ペンチ等の工具は引き抜き用の専用工具ではなく、しかも引抜き工具側にペンチで挟む手掛かりがないため、滑りやすい樹脂製の引抜き工具400をペンチで挟んで引き抜く作業は容易ではない。
【0011】
特許文献2(特開2009−44919公報)には、バイパスプラグ引抜き工具が開示されているが、構造が複雑でコストアップを招く虞がある。また、図7に示した既存の引抜き工具を利用することを前提とはしておらず、多用されている既存の引抜き工具による引抜き困難性を解消するものではない。
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、積算電力計と電力負荷設備との間に設置され、給電停止及び停止解除を行う無停電端子に差し込まれたバイパスプラグを、ペンチなどの工具を用いずに片手により容易に引き抜くことが可能なプラグ引抜き工具を提供することにある。
また、図7に示した既存の引抜き工具による引抜き作業の困難性を解消して、引抜き作業を補助する機能を有したプラグ引抜き工具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するため、請求項1に記載のプラグ引抜き工具は、積算電力計と電力負荷設備との間に設置され、給電停止及び停止解除を行う無停電端子に差し込まれたバイパスプラグを引き抜くためのプラグ引抜き工具において、前記バイパスプラグの対向する2つの外側面に夫々形成された被係合部に係合する係合部を内側面に夫々備えた一対の脚部、該一対の脚部の基端部側を連結一体化する基端連結片、及び前記係合部よりも基端部寄りの前記一対の脚部の内側面間を連結一体化する中間連結片を有した引抜き工具本体と、前記引抜き工具本体の前記各脚部に対して夫々その長手方向に沿ってスライド自在に係合した一対のスライド片、及び前記各スライド片の基端部側を連結一体化するベース片を有した略コ字状の引抜き補助部材と、を備え、前記引抜き補助部材のスライド片の前記スライド方向長は、前記引抜き工具本体の全長よりも大きく設定され、前記引抜き補助部材を前記引抜き工具本体にスライド自在に組み付けたときに前記ベース片は前記基端連結片の外側面と対向する位置にあることを特徴とする。
引抜き工具本体を用いてバイパスプラグの引抜き作業の困難性を解消して、片手による作業によって容易に引き抜くことが可能となる。
【0013】
請求項2の発明は、前記引抜き工具本体には、前記各脚部の先端に先端開口部を有し、且つ前記基端連結片の外側面に基端開口部を有したスライドガイド穴が貫通形成され、前記引抜き補助部材の各スライド片は、夫々前記スライドガイド穴内に前記基端開口部から差し込まれてスライド自在に支持され、前記先端開口部から各スライド片先端部を外部へ突出可能に構成されていることを特徴とする。
脚部内に貫通形成したスライドガイド穴内に引抜き補助部材のスライド片をスライド自在に支持するので、引抜き時における引抜き補助部材の移動経路、姿勢を安定させることができる。
請求項3の発明は、前記引抜き補助部材の各スライド片には、前記各脚部とスライド自在に係合するスライド被ガイド部が設けられ、各スライド片先端部を、前記各脚部先端から外側へ突出可能に構成されていることを特徴とする。
引抜き工具本体に対して全く加工する必要がなくなり、既存の引抜き工具本体をそのまま使用することができる。
【0014】
請求項4の発明は、前記各脚部の外側面には、長手方向に沿って形成されたスライド係合部を有し、前記引抜き補助部材の前記各スライド片には、前記引抜き工具本体の各スライド係合部に対してスライド自在に係合するスライド被係合部が設けられていることを特徴とする。
脚部に対する加工の程度を少なくすることができる。
請求項5の発明は、前記引抜き補助部材の各スライド片の一方の長さを同等とするか、或いは一方のスライド片の長さを他方よりも短くしたことを特徴とする。
無停電端子側に段差がある場合にも対応することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明のプラグ引抜き工具によれば、既存の鳥居形の引抜き工具に若干の変形を加えるか、或いは既存の引抜き工具そのものに対して引抜き補助部材を適用することにより、片手による作業によってバイパスプラグを引き抜くことが可能となる。
バイパスプラグに対して既存の引抜き工具(引抜き工具本体)をセットした状態で、引抜き補助部材を引抜き工具本体側に設けたスライドガイド穴に引抜き補助部材のスライド片をスライド自在に挿入した構成、その他のスライド自在な構成を有するため、片手による作業により、強い力を要せずに、プラグを引き抜くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】(a)乃至(d)は本発明の一実施形態に係るプラグ引抜き工具の構成と、プラグ引抜き手順を説明する図である。
【図2】(a)、(b)及び(c)は本発明の他の実施形態に係るプラグ引抜き工具の構成を示す分解斜視図、X−X断面図、及びY−Y断面図である。
【図3】(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係るプラグ引抜き工具の構成を示す分解斜視図、及びZ−Z断面図である。
【図4】無停電端子の取り付け状態を示す説明図である。
【図5】(a)は無停電端子の概略断面図、(b)はバイパスプラグの正面図、(c)は側面図である。
【図6】作業者がバイパスプラグを無停電端子から抜き取る作業を示す説明図である。
【図7】従来の引抜き工具をバイパスプラグに取り付けた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳述する。
無停電端子とバイパスプラグは、図4〜図7で説明したものと同じものを想定している。従って、図4〜図7中の各構成要素については同一符号を用いて引用しながら説明する。
図1(a)乃至(d)は本発明の一実施形態に係るプラグ引抜き工具の構成と、プラグ引抜き手順を説明する図である。
本発明のプラグ引抜き工具1は、積算電力計と電力負荷設備との間に設置され、給電停止及び停止解除を行う無停電端子300のプラグ端子挿入孔に差し込まれたバイパスプラグを引き抜くための手段である。無停電端子の上面にはプラグ端子挿入孔を備えたプラグ装着部321が突設されている。
プラグ引抜き工具1は、バイパスプラグ350に直接係合する引抜き工具本体2と、引抜き工具本体2に対してスライド自在に係合して人手による引抜き作業を補助するスライド部材(引抜き補助部材)20と、から構成されている。
【0018】
引抜き工具本体2は、バイパスプラグ350の対向する2つの外側面に夫々形成された凹部(被係合部)357、357に係合する凸部(係合部)6、6を内側面に夫々備えた一対の脚部5、5と、一対の脚部5、5の基端部側を連結一体化する基端連結片8と、凸部6、6よりも基端部寄りの一対の脚部5、5の内側面間を連結一体化する中間連結片10と、を有している。
スライド部材(引抜き補助部材)20は、引抜き工具本体の各脚部5、5に対して夫々その長手方向に沿ってスライド自在に係合した一対のスライド片21、21と、各スライド片の基端部側を連結一体化するベース片23を有した略コ字状の部材である。
スライド部材20のスライド片21、21のスライド方向長(長手方向長)L1は、引抜き工具本体の全長L2よりも長く設定され、スライド部材20を引抜き工具本体2にスライド自在に組み付けたときにベース片23は基端連結片8の外側面(図面では上面)と対向する外側位置にある。
【0019】
スライド部材の各スライド片21、21を夫々引抜き工具本体の脚部5、5に対してスライド自在に係合させる構成は種々あり得る。
図1の実施形態に係るプラグ引抜き工具1では、引抜き工具本体2には、各脚部5、5の先端に先端開口部11a、11aを有し、且つ基端連結片の外側面に基端開口部11b、11bを有したスライドガイド穴11、11が貫通形成されている。
スライド部材20の各スライド片21、21はその先端部を、夫々スライドガイド穴11、11内に基端開口部11b、11bから差し込まれてスライド自在に支持され、スライド部材を最も押し込んだときには先端開口部11a、11aから各スライド片先端部を外部(先方)へ突出可能に構成されている。
【0020】
このプラグ引抜き工具1を用いて、無停電端子300に差し込まれたバイパスプラグ350を引き抜く際には、図1(a)に示した引抜き工具本体2をバイパスプラグ350に組み付ける。引抜き工具本体2の凸部6、6がバイパスプラグの凹部(被係合部)357、357に嵌合するように取り付ければ組み付けが完了する。
この状態で、(b)に示すようにスライドガイド穴11、11の基端開口部11b、11bからスライド部材の各スライド片21、21の先端部を差し込み、各スライド片の先端部が先端開口11a、11aを介して無停電端子300の上面に接触した状態とする。
なお、予めスライドガイド穴に各スライド片を差し込んだ状態で、バイパスプラグに対して引抜き工具本体を組み付けることも可能である。
【0021】
続いて(d)に示すように作業者の人差し指等を基端連結片8と中間連結片10との間の空所Sに挿入しつつ、掌の一部をベース片23の外面に当接させた状態で人差し指を上方(プラグ引抜き方向)へ引きつつ、掌によりベース片23の外面をプラグへ向けて押し込む。つまり、(d)の状態で手を握りしめるように力をこめる。すると、(c)に示すようにスライド部材の先端部が先端開口部から突出して無停電端子上面と当接するため、引抜き工具本体2は各スライド片21、21に沿ってスライドしながら上昇を開始し、凸部6、6により保持したバイパスプラグ350を一体的に上昇させる。バイパスプラグの上昇に伴ってプラグ端子351、352がプラグ端子挿入孔から引き抜かれ始め、最後には完全に引き抜かれた状態となる。
この引抜き作業は、一方の手だけで、しかも小さな力(握力)で実施可能であり、他方の手で無停電端子300を保持する必要はない。このため、従来のように作業者が無理な姿勢で相当な腕力をもってバイパスプラグ350を引き抜くという作業が不要となる。このため、バイパスプラグを抜いたときの勢いで周辺の機器を損傷したり作業者が怪我をする事態を回避できる。
【0022】
なお、図1中に破線で示したように、スライド部材20の上部、即ち各スライド片21、21の上部に横方向への突出部23aを設けることにより、(c)のようにバイパスプラグを引き抜いた後でスライド部材を引抜き工具本体2から離脱させる際に、突出部23aを手掛かりとすることが可能となり、離脱作業が容易となる。
要するに、スライド部材は、各スライド片が脚部に設けたスライドガイド穴をスライドする構成であれば、それ以外の部分は把持し、操作易いように種々変形させることができる。このことは、他の実施形態にも同様に当てはまる。
【0023】
次に、図2(a)、(b)及び(c)は本発明の他の実施形態に係るプラグ引抜き工具の構成を示す分解斜視図、X−X断面図、及びY−Y断面図である。なお、図1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
このプラグ引抜き工具1では、引抜き工具本体2には一切加工が加えられていない代わりに、スライド部材20の各スライド片21、21側に、引抜き工具本体の脚部5、5の外面に対してスライド自在に係合するスライド被ガイド部25、25が設けられている。
このスライド被ガイド部25、25は、図示のように各スライド片21、21の形状を、脚部5、5の外側三面と接してこれらを包囲するようにコ字状に構成している。
無停電端子に装着されたバイパスプラグ350を引き抜く際には、予め引抜き工具本体2をバイパスプラグにセットした状態で、この引抜き工具本体2の脚部5、5の外面(コ字状の三面)にスライド部材の断面形状がコ字状のスライド被ガイド部25、25が被さるように組み付ける。
【0024】
この状態で、図1(d)に示したように片手の指を空所Sに差し込んでプラグ引抜き方向へ力を入れると同時に、掌でスライド部材のベース片23の外面をプラグへ向けて押し込むことにより、片手による小さい力によってバイパスプラグを引き抜くことができる。
スライド部材20のスライド片21、21のスライド方向長(長手方向長)L1は、引抜き工具本体の全長L2よりも長く設定され、スライド部材20を引抜き工具本体2にスライド自在に組み付けたときにベース片23は基端連結片8の外側面(図面では上面)と対向する外側位置にある。このような長さ設定としたため、スライド片に沿って引抜き工具本体をスライドさせた際に、各脚部先端よりも各スライド片先端部を外部(先端方向)へ突出させることができる。即ち、図1(c)のような引抜き操作において、スライド片先端が無停電端子面に当接した状態で、バイパスプラグを保持した引抜き工具本体はスライド片に沿って無停電端子面から離間する方向へ移動することが可能となる。
【0025】
次に、図3(a)及び(b)は本発明の他の実施形態に係るプラグ引抜き工具の構成を示す分解斜視図、及びZ−Z断面図である。なお、図1の実施形態と同一部分には同一符号を付して説明する。
このプラグ引抜き工具1では、引抜き工具本体2の各脚部5、5の外面に長手方向へ延びるスライド係合部13、13が形成されている一方で、スライド部材20の各スライド片21、21に、スライド係合部13、13に対してスライド自在に係合するスライド被係合部30、30が設けられている。
スライド係合部13、13は、断面四角形状の溝であり、スライド被係合部30、30はこのスライド係合部13、13に嵌合して長手方向へスライドする断面四角形状の突条である。スライド係合部13、13を突条とし、スライド被係合部30、30を溝としてもよい。また、溝、及び突条の断面形状は、四角形以外の任意の形状であってもよい。
【0026】
無停電端子に装着されたバイパスプラグ350を引き抜く際には、予め引抜き工具本体2をバイパスプラグにセットした状態で、この引抜き工具本体2の脚部5、5に設けたスライド係合部13、13に、各スライド片に設けた各スライド係合部30、30が嵌合するように、スライド部材20を組み付ける。この状態で、図1(d)に示したように片手の指を空所Sに差し込んでプラグ引抜き方向へ力を入れると同時に、掌でスライド部材のベース片23の外面をプラグへ向けて押し込むことにより、片手による小さい力によってバイパスプラグを引き抜くことができる。
スライド部材20のスライド片21、21のスライド方向長(長手方向長)L1は、引抜き工具本体の全長L2よりも長く設定され、スライド部材20を引抜き工具本体2にスライド自在に組み付けたときにベース片23は基端連結片8の外側面(図面では上面)と対向する外側位置にある。このような長さ設定としたため、スライド片に沿って引抜き工具本体をスライドさせた際に、各脚部先端よりも各スライド片先端部を外部(先端方向)へ突出させることができる。即ち、図1(c)のような引抜き操作において、スライド片先端が無停電端子面に当接した状態で、バイパスプラグを保持した引抜き工具本体はスライド片に沿って無停電端子面から離間する方向へ移動することが可能となる。
【0027】
なお、図3の実施形態と図2の実施形態を組み合わせた構成としてもよい。即ち、図2に示したスライド被ガイド部25、25の内側面に図3に示したスライド被係合部30、30を突設し、脚部5、5にスライド係合部13、13を設けた構成としてもよい。
なお、図2、図3の実施形態は、図1とは異なってスライド部材20の各スライド片21、21が引抜き工具本体の脚部5、5の外側に位置するため、脚部5、5の先端部が接する無停電端子300の上面の近傍に突起等の障害物がある場合には何れか一方のスライド片の先端部を当接する場合の障害となることが考えられる。即ち、スライド片21、21の長さが図示のように均等であり、且つ各スライド片先端部の当接面の高さ位置が異なるとすれば、両スライド片の先端部を均等に無停電端子面に当接しながらの引抜き作業が難しくなり、作業の支障となることがある。
しかし、この場合にはスライド片の長さを無停電端子面の段差(高低差)に合わせて予め異ならせておくことにより、対応することができる。即ち、両スライド片の先端部が当接する無停電端子面の高さが異なる場合には、一方のスライド片の先端部を異なる高さ分だけ他方より短く(長く)構成することにより、両スライド片の先端部を均等に無停電端子面に当接しながらの引抜き作業が可能となる。
【0028】
以上のように本発明のプラグ引抜き工具によれば、既存の鳥居形の引抜き工具に若干の変形を加えるか、或いは既存の引抜き工具そのものに対してスライド部材を適用することにより、片手による作業によってバイパスプラグを引き抜くことが可能となる。
即ち、バイパスプラグに対して既存の引抜き工具(引抜き工具本体)をセットした状態で、スライド部材を引抜き工具本体側に設けたスライドガイド穴にスライド部材のスライド片をスライド自在に挿入した構成、その他のスライド自在な構成を有するため、片手による握力だけの作業により、両腕の腕力を用いた強い力を要せずに、プラグを引き抜くことができる。
【符号の説明】
【0029】
1…プラグ引抜き工具、2…引抜き工具本体、5…脚部、6…係合部、8…基端連結片、10…中間連結片、11…スライドガイド穴、11a…先端開口部、11b…基端開口部、13…スライド係合部、20…スライド部材(引抜き補助部材)、21…スライド片、23…ベース片、23a…突出部、25…スライド被ガイド部、30…スライド被係合部、300…無停電端子、321…プラグ装着部、350…バイパスプラグ、351、352…プラグ端子、357…被係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積算電力計と電力負荷設備との間に設置され、給電停止及び停止解除を行う無停電端子に差し込まれたバイパスプラグを引き抜くためのプラグ引抜き工具において、
前記バイパスプラグの対向する2つの外側面に夫々形成された被係合部に係合する係合部を内側面に夫々備えた一対の脚部、該一対の脚部の基端部側を連結一体化する基端連結片、及び前記係合部よりも基端部寄りの前記一対の脚部の内側面間を連結一体化する中間連結片を有した引抜き工具本体と、
前記引抜き工具本体の前記各脚部に対して夫々その長手方向に沿ってスライド自在に係合した一対のスライド片、及び前記各スライド片の基端部側を連結一体化するベース片を有した引抜き補助部材と、を備え、
前記引抜き補助部材の各スライド片の前記スライド方向長は、前記引抜き工具本体の全長よりも大きく設定され、前記引抜き補助部材を前記引抜き工具本体にスライド自在に組み付けたときに前記ベース片は前記基端連結片の外側面と対向する位置にあることを特徴とするプラグ引抜き工具。
【請求項2】
前記引抜き工具本体には、前記各脚部の先端に先端開口部を有し、且つ前記基端連結片の外側面に基端開口部を有したスライドガイド穴が貫通形成され、
前記引抜き補助部材の各スライド片は、夫々前記スライドガイド穴内に前記基端開口部から差し込まれてスライド自在に支持され、前記先端開口部から各スライド片先端部を外部へ突出可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のプラグ引抜き工具。
【請求項3】
前記引抜き補助部材の各スライド片には、前記各脚部とスライド自在に係合するスライド被ガイド部が設けられ、各スライド片先端部を、前記各脚部先端から外側へ突出可能に構成されていることを特徴とする請求項1に記載のプラグ引抜き工具。
【請求項4】
前記各脚部の外側面には、長手方向に沿って形成されたスライド係合部を有し、
前記引抜き補助部材の前記各スライド片には、前記引抜き工具本体の各スライド係合部に対してスライド自在に係合するスライド被係合部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のプラグ引抜き工具。
【請求項5】
前記引抜き補助部材の各スライド片の一方の長さを同等とするか、或いは一方のスライド片の長さを他方よりも短くしたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載のプラグ引抜き工具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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