説明

プラスチックキャップ及びそれを用いた製品又は容器

【課題】本発明は、開栓しにくさの原因となるものは、手の痛みと、手の滑りやすさの2要因であることを見出しなされた。すなわち、本発明は、手の痛みが少なくかつ滑り難いことで開栓しやすいプラスチックキャップの提供を目的とする。
【解決手段】本発明のプラスチックキャップ10は、天板部11と天板部11の周縁から垂下した筒状の胴体部12とからなり、かつ、天板部11から胴体部12の周端部16へ向かう方向に伸びる複数の凸条13からなるナール14が胴体部12の外周面に設けられており、かつ容器30の蓋となるプラスチックキャップにおいて、凸条13の間隔が0.95mm以上1.15mm以下であり、凸条13の高さが0.2mm以上0.3mm以下であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表面に適度な線数のナールを施し、手の痛みが少なく、かつ、手が滑り難いことで、開栓しやすいプラスチックキャップ及び当該プラスチックキャップで密封された製品又は容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、飲料物用容器のプラスチックキャップの開栓を容易にするために、外周面に滑り止めのための凹凸又は凸条が並んだナールが施されてきた(例えば、特許文献1〜8を参照。)。
【特許文献1】特開2006−1600号公報
【特許文献2】特開2005−178828号公報
【特許文献3】特開2004−284615号公報
【特許文献4】特開2004−291979号公報
【特許文献5】特開2004−352312号公報
【特許文献6】特開2004−196383号公報
【特許文献7】実登3109446号公報
【特許文献8】実登3090852号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
プラスチックキャップのナールは、滑り止めの効果を発揮するために、手の表面に対する摩擦抵抗が大きいことが好ましい。このため、ナールの凸部が手の表面に掛かりやすい大きさであり、かつ、ナールの凹凸の表面と手の表面との接触面積が大きいことが好ましい。しかし、ナールの凸条が手の表面に食い込むと、プラスチックキャップを開栓する際に手の表面に痛みを感じるため、手の滑りは抑えられていてもプラスチックキャップを開栓しにくくなってしまう問題がある。
【0004】
一方、手の痛みを軽減するために、ナールの凸部が手の表面に食い込まないようにすると、手の表面に対するナールの摩擦抵抗は小さくなる。このため、プラスチックキャップを握り締めた際に、手の痛みは抑えられていても手が滑ってしまい、プラスチックキャップを開栓しにくくなってしまう問題がある。特に、プラスチックキャップを開栓する際、手が濡れていたり、プラスチックキャップの表面が結露していたりするときには、手に対するプラスチックキャップの摩擦抵抗が水の影響で低下するので、かえって開栓が困難となる。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、開栓しにくさの原因となるものは、手の痛みと、手の滑りやすさの2要因であることを見出しなされた。すなわち、本発明は、手の痛みが少なくかつ滑り難いことで開栓しやすいプラスチックキャップの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、プラスチックキャップに、手の痛みが少なくかつ滑りにくい高さ及び間隔の凸条からなるナールを設けたことを特徴とする。
【0007】
具体的には、本発明に係るプラスチックキャップは、天板部と前記天板部の周縁から垂下した筒状の胴体部とからなり、かつ、前記天板部から前記胴体部の周端部へ向かう方向に伸びる複数の凸条からなるナールが前記胴体部の外周面に設けられており、かつ容器の蓋となるプラスチックキャップにおいて、前記凸条の間隔が0.95mm以上1.15mm以下であり、前記凸条の高さが0.2mm以上0.3mm以下であることを特徴とする。
【0008】
本発明に係るプラスチックキャップでは、前記凸条の天頂部の曲率半径が0.2mm以上0.3mm以下であることが好ましい。凸条の天頂部が、手の痛みを感じない程度に鋭くなく、かつ、手の表面が滑らない程度に平坦でないため、手の痛みと手の滑りのバランスがよい。さらに、凸条は剛性が高いので、凸条の天頂部に傷がつきにくい。
【0009】
本発明に係るプラスチックキャップでは、前記胴体部を外径Rとし、前記凸条の数を線数Nとし、前記線数Nが、下記の数1を満たすことが好ましい。
(数1)πR/1.15≦N≦πR/0.95
【0010】
線数Nが数1をみたすことで、凸条の間隔を0.95mm以上1.15mm以下とし、手の痛みが少なくかつ滑り難い凸条の間隔とすることができる。
【0011】
本発明に係るプラスチックキャップでは、前記胴体部が、外径28mmであり、前記ナールが、80線以上90線以下の凸条からなることが好ましい。前記胴体部が外径28mmである場合に、ナールが80線以上90線以下の凸条からなることで、凸条の間隔を0.95mm以上1.15mm以下とし、手の痛みが少なくかつ滑り難い凸条の間隔とすることができる。
【0012】
本発明に係るプラスチックキャップでは、前記胴体部が、外径33mmであり、前記ナールが、95線以上105線以下の凸条からなることが好ましい。前記胴体部が外径33mmである場合に、ナールが95線以上105線以下の凸条からなることで、凸条の間隔を0.95mm以上1.15mm以下とし、手の痛みが少なくかつ滑り難い凸条の間隔とすることができる。
【0013】
本発明に係るプラスチックキャップでは、前記胴体部が、外径38mmであり、前記ナールが、110線以上120線以下の凸条からなることが好ましい。前記胴体部が外径38mmである場合に、ナールが110線以上120線以下の凸条からなることで、凸条の間隔を0.95mm以上1.15mm以下とし、手の痛みが少なくかつ滑り難い凸条の間隔とすることができる。
【0014】
本発明に係る製品又は容器は、本発明に係るプラスチックキャップで密封されていることを特徴とする。本発明に係るプラスチックキャップで密封されていることで、手の痛みが少なくかつ滑り難いことで開栓しやすい容器を提供することができる。また、手の痛みが少なくかつ滑り難いことで開栓しやすい容器に収容された製品を提供することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ナールの凸条が胴体部の周方向に0.95mm以上1.15mm以下の間隔で並び、かつ、凸条の高さが0.2mm以上0.3mm以下であることで、手の痛みと手の滑りやすさの2要因のバランスのとれたナールとすることができる。これにより、手の痛みが少なくかつ滑り難いことで開栓しやすいプラスチックキャップ、及び当該プラスチックキャップで密封された製品又は容器を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。以下に説明する実施の形態は本発明の構成の例であり、本発明は、以下の実施の形態に制限されるものではない。
【0017】
本実施形態に係るプラスチックキャップについて、図1及び図2を用いて説明する。図1は、本実施形態に係るプラスチックキャップの概略正面図である。図2は、プラスチックキャップの説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は上面図である。プラスチックキャップ10は、天板部11と天板部11の周縁から垂下した筒状の胴体部12とからなり、かつ、容器30の蓋となる。又、プラスチックキャップ10は、天板部11から胴体部12の周端部16へ向かう方向に伸びる複数の凸条13からなるナール14が胴体部12の外周面に設けられている。又、胴体部12の周端部16の周端にはバンド部15が設けられている。
【0018】
図1に示す容器30は、収容部31及び開口部32を有しており、開口部32がプラスチックキャップ10で密封されている。収容部31には、例えば、炭酸飲料、清涼飲料、ビール又は発泡酒等の飲料を含む製品が収容されている。容器30の材料は、例えば、アルミニウム又はスチール等の金属材料、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチック材料、ガラス材料である。容器30は、いかなる材料から形成されていても良いが、収容部31に充填される液体によっても制限を受ける。例えば、容器30が飲料用であれば、飲料の品質保持の観点から、収容部31に充填される飲料に対して不活性であることが好ましい。さらに、酸素等のガスバリア性を備えていることが好ましい。また炭酸飲料を充填する場合には耐圧性を有する材料から形成されていることが好ましい。このような観点から容器30は、アルミニウム又はスチール等の金属材料或いはPET等のプラスチック材料から形成されていることが好ましい。また、容器30は、リサイクル性の観点からプラスチックキャップ10と同一の材料で形成することが好ましい。PETボトルの場合には、DLC薄膜等のガスバリア性薄膜をコーティングしたボトルであることが好ましい。
【0019】
プラスチックキャップ10は、天板部11と天板部11の周縁から垂下した筒状の胴体部12とからなり、容器30の蓋となる。プラスチックキャップ10は、開口部32の外周面と胴体部12の内周面が接し、天板部11及び胴体部12によって容器30の開口部32を覆う蓋である。プラスチックキャップ10は、開口部32の外径に応じたキャップ径を有する。
【0020】
プラスチックキャップ10は、プラスチックキャップ10を開栓方向Aに回すことで開栓する開栓パターンが好ましく、例えばスクリューキャップ又はツイストキャップである。図1及び図2では、プラスチックキャップ10は、胴体部12の内周面にねじ山17が設けられ、胴体部12の内周面と容器30の開口部32とがネジ構造となっている例を示した。開栓方向Aは、例えば、反時計回りである。この場合、プラスチックキャップ10を時計回りに回して容器の開口部(図1の符号32)を密閉し、プラスチックキャップ10を反時計回りに回して容器の開口部(図1の符号32)を開栓する。
【0021】
プラスチックキャップ10は、AOキャップ(Albert Obrist Cap)のように、ねじ切ることで開栓する開栓パターンが好ましい。容器30が飲料用又は食品用を収容する場合、プラスチックキャップ10にバンド部15を設けることが好ましい。容器30が開栓されるとバンド部15が胴体部12と切り離されるので、消費者は容器30が開栓されたか否かを認識することができる。又、プラスチックキャップ10は、天板部11の内面に接するようにインナーシール(不図示)を備えることが好ましい。プラスチックキャップ10を閉めた際の容器30の密封性をより高めることができる。
【0022】
プラスチックキャップ10の成形方法は、特に制限されるものではないが、例えば圧縮成形法又は射出成形法である。圧縮成形法は、金型のメス側にプラスチック材料を入れて加熱し、プラスチック樹脂が流動化したときに金型のオス側を合せ、圧力を加えて成形する方法である。射出成形法は、加熱シリンダーの中で熱可塑性のプラスチック材料を加熱して流動化させ、これを射出ラムにより金型の空間にプランジャーで押し込んで成形する方法である。
【0023】
プラスチックキャップ10を形成するプラスチック材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂(PE)、ポリプロピレン樹脂(PP)、ポリエチレンテレフタレート樹脂(PET)、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート樹脂、シクロオレフィンコポリマ樹脂(COC、環状オレフィン共重合)、アイオノマ樹脂、ポリ−4−メチルペンテン−1樹脂、ポリメタクリル酸メチル樹脂、ポリスチレン樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合樹脂、アクリロニトリル樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン樹脂、4弗化エチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂である。プラスチックキャップ10を形成するプラスチック材料は、特に、PE、PP又はPETが好ましい。
【0024】
プラスチックキャップ10のシーリング方法は特に制限されないが、スクリュータイプのシーリング方法を用いることが好ましい。スクリュータイプのシーリング方法とは、プラスチックキャップ10を容器30の開口部32に回転ヘッド、ローラー又はバンド等のシーリング装置(不図示)でまわして締め付けるものである。さらに、プラスチックキャップ10と容器30とを、例えば、レーザー溶接法で溶着させても良い。このとき、プラスチックキャップ10と容器30との溶着部分を押当板等の密着手段によって密着状態にすることで、溶着不良を低減できる。
【0025】
ナール14は、胴体部12の外周面に設けられている。胴体部12の外周面は、例えば、胴体部12の外径52となる円筒の外周面である。胴体部12の外径52は、キャップ径である。キャップ径は、プラスチックキャップ10の外径を基準として、例えば、28mm、30mm、33mm、38mmである。胴体部12の外周面にナール14を設けることで、プラスチックキャップ10の開栓時に、指の表面(不図示)がナール14の凸条13に引っ掛かり、プラスチックキャップ10を開栓しやすくすることができる。このため、ナール14は、図2(b)に示すように、胴体部12の外周面のほぼ全域に設けられていることが好ましい。
【0026】
また、凸条13は、天板部11から胴体部12の周端部16へ向かう方向に伸びている。天板部11から胴体部12の周端部16へ向かう方向は、例えば、胴体部12の軸方向101と平行な方向である。図1では凸条13が直線状に伸びている例を示したが、凸条13は湾曲していてもよいし、屈曲していてもよい。又、凸条13は、胴体部12の周端部16側が天板部11側よりも開栓方向Aにずれていてもよい。図1に示すように開栓方向Aが右方向を向いている場合は、凸条13は右肩下がりとなっていることが好ましい。凸条13の周端部16側が開栓方向Aにずれていることで、消費者が胴体部12を開栓方向Aに回転させてプラスチックキャップ10を開栓する際に、消費者の押圧した力をプラスチックキャップ10のねじ山17に沿って効率よく力を加えることができる。
【0027】
図3は、図2(b)に示す凸条の拡大図である。図3に示す凸条13aと凸条13bは、図1に示す凸条13のうちの、隣接する任意の凸条13を示す。凸条13a及び凸条13bは、胴体部12の外周面Sから胴体部12の外周面Sの外側の法線方向へ突出している。凸条13a及び凸条13bの天頂部は、手の表面が接触しても手が痛くないように丸みを帯びていることが好ましい。例えば凸条13a及び凸条13bの天頂部は、楕円や半円などの曲率半径Rの円弧の一部であることが好ましい。図3に示すように、凸条13a及び凸条13bは、曲率半径Rの半円形状であることが好ましい。なお、間隔I、高さh及び曲率半径Rは、プラスチック成形における誤差を有する。
【0028】
凸条13a及び凸条13bの間隔Iは、0.95mm以上1.15mm以下であり、かつ、凸条13a及び凸条13bの高さhは、0.2mm以上0.3mm以下である。間隔Iは、凸条13a及び凸条13bのそれぞれの特定部分同士の距離である。特定部分は、例えば天頂部Ta及び天頂部Tbである。この場合、間隔Iは、図3に示すように、凸条13aの天頂部Taから凸条13bの天頂部Tbまでの距離である。特定部分は、天頂部Ta及び天頂部Tbが平坦な場合には、胴体部12との境界部Ba及び境界部Bb、又は、胴体部12の周方向の凸条13aの幅の中心部Ca及び中心部Cbとしてもよい。凸条13a及び凸条13bの間隔Iが、0.95mm未満の場合、凸条13a及び凸条13bの間に手の表皮が入りにくいので、手の表面に対する凸条13a及び凸条13bの摩擦抵抗が小さく手が滑りやすい。一方、凸条13a及び凸条13bの間隔Iが、1.15mm超の場合、凸条13a及び凸条13bの間に手の表皮が入り込み、凸条13a及び凸条13bの先端が手の表面に食い込むので手に痛みを感じる。
【0029】
さらに、凸条13a及び凸条13bの高さhは、0.2mm以上0.3mm以下である。凸条13a及び凸条13bの高さhは、胴体部12の外周面Sを基準として、胴体部12の外周面Sの外側の法線方向における高さである。凸条13a及び凸条13bの高さhが0.2mm以上0.3mm以下であることで、手の痛みと手の滑りのバランスがよい凸条13a及び凸条13bの高さとすることができる。凸条13a及び凸条13bの間隔Iが0.95mm以上1.15mm以下である場合に、凸条13a及び凸条13bの高さhが0.3mm超であると、凸条13a及び凸条13bの手の表面への食い込みが深く、手に痛みを感じる。又、凸条13a及び凸条13bの間隔Iが0.95mm以上1.15mm以下である場合に、凸条13a及び凸条13bの高さhが0.2mm未満の場合、凸条13a及び凸条13bの手の表面の食い込みが浅く、凸条13a及び凸条13bが滑り止めの目的を果たしにくくなる。
【0030】
さらに、図3に示す凸条13a及び凸条13bの天頂部の曲率半径Rは、0.2mm以上0.3mm以下であることが好ましい。凸条13a及び凸条13bの間隔Iが0.95mm以上1.15mm以下であり、かつ、凸条13a及び凸条13bの高さが0.2mm以上0.3mm以下である場合に、曲率半径Rが0.2mm未満であると、凸条13a及び凸条13bの天頂部Ta及び天頂部Tbが鋭く、手に痛みを感じる場合がある。また、凸条13a及び凸条13bの天頂部Ta及び天頂部Tbの剛性が弱く、天頂部Ta及び天頂部Tbに傷がつきやすくなる。一方、凸条13a及び凸条13bの間隔Iが0.95mm以上1.15mm以下であり、かつ、凸条13a及び凸条13bの高さが0.2mm以上0.3mm以下である場合に、曲率半径Rが0.3mm超であると、凸条13a及び凸条13bが平坦になるので手が滑りやすい場合がある。凸条13a及び凸条13bの間隔Iが0.95mm以上1.15mm以下であり、かつ、凸条13a及び凸条13bの高さが0.2mm以上0.3mm以下である場合に、凸条13a及び凸条13bの天頂部Ta及び天頂部Tbの曲率半径Rが0.2mm以上0.3mm以下であることで、凸条13a及び凸条13bの天頂部Ta及び天頂部Tbが、手の痛みを感じない程度に鋭くなく、かつ、手の表面が滑らない程度に平坦でないため、手の痛みと手の滑りのバランスがよい。さらに、凸条13a及び凸条13bは剛性が高いので、凸条13a及び凸条13bの天頂部Ta及び天頂部Tbに傷がつきにくい。特に、凸条13a及び凸条13bの横断面が半円形状となる場合には、凸条13a及び凸条13bの剛性が高く、かつ、手が滑りにくく、かつ、凸条13a及び凸条13bが手の表面に食い込むことによる手の痛みを効率よく分散させることができる。
【0031】
図1及び図2(b)に示すプラスチックキャップ10では、胴体部12を外径Rとし、凸条13の数を線数Nとし、線数Nが、前述の数1を満たすことが好ましい。図1及び図2(b)に示すように、ナール14は、胴体部12の周方向に並んでいる複数の凸条13からなる。凸条13の間隔Iは0.95mm以上1.15mm以下であるときに手の痛みと手の滑りの両方のバランスのとれた間隔となるので、線数Nが数1に示す条件を満たすことが好ましい。キャップ径が28mmであれば、ナール14は、80線以上90線以下の凸条13からなることがより好ましい。この場合、複数の凸条13は、胴体部12の中心角θで略4°以上略4.5°以下で並んでいる。又、キャップ径が30mmであれば、ナール14は、85線以上95線以下の凸条13からなることがより好ましい。この場合、複数の凸条13は、胴体部12の中心角θで略3.8°以上略4.2°以下で並んでいる。又、キャップ径が33mmであれば、ナール14は、95線以上105線以下の凸条13からなることがより好ましい。この場合、複数の凸条13は、胴体部12の中心角θで略3.5°以上略3.7°以下で並んでいる。又、キャップ径が38mmであれば、ナール14は、110線以上120線以下の凸条13からなることがより好ましい。この場合、複数の凸条13は、胴体部12の中心角θで略2.5°以上略3.5°以下で並んでいる。
【実施例】
【0032】
図1に示すプラスチックキャップ10についての凸条13の間隔による評価を行うための官能試験を行った。評価者は17人である。本実施例では、図3に示す凸条13a及び凸条13bの高さhが0.25mmであり、凸条13a及び凸条13bの天頂部の曲率半径が0.25mmであり、凸条13の間隔が0.98mmであるキャップ径28mmのプラスチックキャップを用いた。この場合、プラスチックキャップ10が90線の凸条13からなることから、プラスチックキャップ10を「90線」と示す。
【0033】
比較例として、本実施例「90線」と凸条13の間隔Iの異なるプラスチックキャップを2例挙げた。比較例1は、図3に示す凸条13の間隔Iが1.47mmであるプラスチックキャップである。比較例2は、図3に示す凸条13の間隔Iが0.73mmであるプラスチックキャップである。比較例1は、60線の凸条13からなることから、「60線」と示す。比較例2は、120線の凸条13からなることから、以下「120線」と示す。
【0034】
上記の実施例「90線」、比較例1「60線」及び比較例2「120線」を用いて、プラスチックキャップの開栓時における「手の痛くなさ」、「手の滑り難さ」及び「開栓し易さ」を比較する官能試験を行った。官能試験では、ひとりが実施例、比較例1、2の順位づけを行い、その順位に従って、1位を3点、2位を2点、3位を1点と点数付けした。すなわち、「手の痛くなさ」では、1点が「手が痛い」、3点が「手が痛くない」となる。又、「手の滑り難さ」では、1点が「手が滑り易い」、3点が「手が滑り難い」となる。又、「開栓し易さ」では、1点が「開栓し難い」、3点が「開栓し易い」となる。そして、実施例、比較例1、2の各サンプルごとに17人がつけた点数の総和を求め、それを17人で除して平均点を求めた。図4、図5及び図6に、「手の痛くなさ」、「手の滑り難さ」及び「開栓し易さ」の官能試験結果を示す。
【0035】
図4は、「手の痛くなさ」の官能試験結果を示すグラフである。図4に示す「手の痛くなさ」については、比較例1「60線」が1.35であり、比較例2「120線」が2.76であるのに対し、実施例「90線」が2.12であった。図4に示すように、「手の痛くなさ」については、凸条の線数の増加に伴い「手が痛くない」と感じるという結果が得られた。図5は、「手の滑り難さ」の官能試験結果を示すグラフである。図5に示す「手の滑り難さ」については、比較例1「60線」が2.29であり、比較例2「120線」が1.41であるのに対し、実施例「90線」が2.35であった。実施例「90線」の「手の滑り難さ」は、比較例1「60線」よりも「手が滑り難い」と感じる結果が得られた。図4及び図5に示す結果から、実施例「90線」が、比較例1「60線」よりも痛みを軽減し、かつ、比較例1「60線」よりも高い滑り止め効果を得られることが分かった。
【0036】
図6は、「開栓し易さ」の官能試験結果を示すグラフである。図6に示す「開栓し易さ」については、比較例1「60線」が1.47であり、比較例2「120線」が2.24であるのに対し、実施例「90線」が2.35であった。このように、実施例「90線」が、最も開栓し易いと感じるという結果が得られた。
【0037】
以上の図4、図5及び図6に示す官能試験の結果から、本実施例「90線」は、手に痛みを感じずかつ、手が滑り難いと感じ、さらに開栓し易いと感じることが分かる。図4、図5及び図6に示す官能試験のそれぞれについてフリードマンの順位差検定を行った結果、比較例1「60線」、比較例2「120線」及び本実施例「90線」の間に5%の結果有意差があった。このように、本実施例「90線」のプラスチックキャップは、凸条13の間隔が0.98mmであることで、手の痛みが少なくかつ滑り難いことで開栓しやすいことが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】本実施形態に係るプラスチックキャップの概略正面図である。
【図2】プラスチックキャップの説明図であり、(a)は縦断面図、(b)は上面図である。
【図3】図2(b)に示す凸条の拡大図である。
【図4】「手の痛くなさ」の官能試験結果を示すグラフである。
【図5】「手の滑り難さ」の官能試験結果を示すグラフである。
【図6】「開栓し易さ」の官能試験結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0039】
10 プラスチックキャップ
11 天板部
12 胴体部
13、13a、13b 凸条
14 ナール
15 バンド部
16 周端部
17 ねじ山
30 容器
31 収容部
32 開口部
51 胴体部の内径
52 胴体部の外径
S 胴体部の外周面
h 凸条の高さ
Ta、Tb 凸条の天頂部
Ba、Bb 凸条と胴体部の境界部
Ca、Cb 凸条の幅の中心部
R 凸条の天頂部の曲率半径
I 凸条の間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天板部と前記天板部の周縁から垂下した筒状の胴体部とからなり、かつ、前記天板部から前記胴体部の周端部へ向かう方向に伸びる複数の凸条からなるナールが前記胴体部の外周面に設けられており、かつ、容器の蓋となるプラスチックキャップにおいて、
前記凸条の間隔が0.95mm以上1.15mm以下であり、
前記凸条の高さが0.2mm以上0.3mm以下であることを特徴とするプラスチックキャップ。
【請求項2】
前記凸条の天頂部の曲率半径が0.2mm以上0.3mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックキャップ。
【請求項3】
前記胴体部を外径Rとし、
前記凸条の数を線数Nとし、
前記線数Nが、下記の数1を満たすことを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチックキャップ。
(数1)πR/1.15≦N≦πR/0.95
【請求項4】
前記胴体部が、外径28mmであり、
前記ナールが、80線以上90線以下の凸条からなることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のプラスチックキャップ。
【請求項5】
前記胴体部が、外径33mmであり、
前記ナールが、95線以上105線以下の凸条からなることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のプラスチックキャップ。
【請求項6】
前記胴体部が、外径38mmであり、
前記ナールが、110線以上120線以下の凸条からなることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のプラスチックキャップ。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6に記載のプラスチックキャップで密封されていることを特徴とする製品又は容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−44630(P2008−44630A)
【公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−219388(P2006−219388)
【出願日】平成18年8月11日(2006.8.11)
【出願人】(307027577)麒麟麦酒株式会社 (350)
【Fターム(参考)】