説明

プラスチックフィルムハウス換気用シート

【課題】巻き上げ時にシート同士が密着せず巻き下げが容易に行うことができ、かつ、巻き下げ時、即ち換気用シートを閉めた時に雨水溜まりによるシート破れ等の問題を生じない換気用シートの提供。
【解決手段】プラスチックフィルムハウスに展張し、巻芯4に巻きつけて巻き上げ巻き下げ可能な換気用シート3で、換気用シートを構成する熱可塑性樹脂フィルム3aの、換気用シート閉時に巻芯4の上方近辺に位置する部分3a’に少なくとも、通水性の孔6又はスリットを有する通水性の孔は、例えば1mm径〜7mm径、スリットは、1cm〜5cmの長さ、好ましくは2cm〜3cmの長さから選ぶことができ、通水性の孔又はスリットが、互いに少なくとも7cm以内に存するように配することが、水溜まりを防止する上で好ましい。特に通水性の孔、スリットを千鳥格子状に配すると、効率的にフィルム上の水溜まりを防止することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温室などのプラスチックフィルムハウスの天窓や谷部などに用いて、必要に応じて巻き上げ巻き下げを行うことができる換気用シートに関する発明であり、特に、巻き上げ時にシート同士が密着せず巻き下げが容易に行うことができ、かつ、巻き下げ時、即ち換気用シートを閉めた時に雨水溜まりによるシート破れ等の問題を生じない換気用シートに関する発明である。
【背景技術】
【0002】
従来より、作物の温室栽培やその他目的のためのプラスチックフィルムハウスとして、塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂等の軟質透明プラスチックフィルムを金属パイプ等の骨組み上に被覆展張したプラスチックフィルムハウスが、よく知られている。これらプラスチックフィルムハウスでは、ハウス内温度や湿度が高くなると換気を行い、農作物の育成や農作業に最適な環境を作りだす必要がある。
【0003】
従来、この換気の方法としては、農業用ハウスの側面下側のフィルムを、金属パイプ等の巻芯に巻きつけて、巻芯を巻き上げて換気する方法が一般に行なわれている(特許文献1の図3参照)。しかしながら、通常、農業用ハウス内の暖気は屋根部分に集まっており、側面下側の換気では効率が悪い。また下側から冷気がハウス内に入り込むことにより農作物に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため農業用ハウスの屋根部分や、連棟ハウスの谷部の樹脂フィルムを開閉した方が効果的な換気が可能である。
【0004】
しかし、屋根部分の樹脂フィルムを簡易に開閉する手段は従来、なかなか存在しなかった。例えば、天井部分の最上側の樹脂フィルムを巻芯に巻きつけて下方向(側面方向)に移動しながら巻き下ろし開ける方法(以下巻き下ろし方式)では、巻芯の重力により、巻くフィルムにたわみが生じやすく、また巻芯が重力で落ちないように、巻芯を回転自在にかつ支えるための仕組みが必要である。他方、天窓部分の樹脂フィルムを巻芯に巻きつけて上方向(天頂方向)に移動しながら巻き上げ開く方法(以下巻き上げ方式という。特許文献1の図2参照)は、巻芯を支える仕組みが不要であるが、フィルムを巻き上げて天窓フィルムを開けている間にフィルム同士が密着して、巻き下ろしが簡単に出来ないという問題(屋根部の傾斜が緩いと更にこの問題が大きくなる)や、天窓フィルムを閉じている際に、巻芯と上側のフィルムの間に雨水等の水溜りが生じて、フィルムが破けやすいという問題が生じやすく、特に傾斜が緩やかな天窓部分のフィルムにおいては好ましくなかった。
【0005】
【特許文献1】特開平8−172933号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかして本願発明の目的は、温室ハウスを形成する、プラスチックフィルムハウスの換気用シートであって、特に、巻き上げ開放式で換気用シートを巻芯に巻きつけ巻き上げた際にも被覆材同士が密着せずに巻き下げが簡単にできること、内面に付着した水滴のぼた落ちが生じないこと、更に好ましくは換気用シートを閉じている際にも巻芯と換気用シートの間に水溜りが生じてフィルムが破けやすいという問題を生じないこと、を満たす換気用シートを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち本発明の要旨は、1)プラスチックフィルムハウスに展張し、巻芯に巻きつけて巻き上げ巻き下げ可能な換気用シートであって、熱可塑性樹脂フィルムと、該フィルム面に積層されたネット体との複層構成からなり、該フィルムと該ネット体とが、展張時縦方向に少なくとも部分的に接合されてなることを特徴とする、プラスチックフィルムハウス換気用シート、好ましくは、該ネット体が、該熱可塑性樹脂フィルムの展張時外面側に積層されてなることを特徴とする1)記載のプラスチックフィルムハウス換気用シート、又は、該ネット体が、該熱可塑性樹脂フィルムの展張時内面側に積層されてなることを特徴とする1)記載のプラスチックフィルムハウス換気用シート、更に好ましくは該熱可塑性樹脂フィルムの、巻芯との接続部付近に、水抜き用開口が設けられていることを特徴とする1)ないし3)のいずれかに記載のプラスチックフィルムハウス換気用シート、にある。
【発明の効果】
【0008】
本発明の換気用シートによれば、巻き上げ開放式で換気用シートを巻芯に巻きつけ巻き上げた際にも被覆材同士が密着せずに巻き下げが簡単にできることができ、更に内面に付着した水滴のぼた落ちが生じないこと、更に好ましくは換気用シートを閉じている際にも巻芯と換気用シートの間に水溜りが生じてフィルムが破けやすいという問題を生じないという効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明を詳細に説明するが、これらの実施形態に限定されるわけではない。
【0010】
図1及び図2には、本発明の換気用シートをプラスチックフィルムハウスの天窓部分に採用したプラスチックフィルムハウスを示す。図1は換気用シートを閉じてプラスチックフィルムハウスを密閉した状態図を示し、図2は換気用シートを開いてハウスを換気している状態図を示す。図3は、換気用シートの一例の詳細を示す概略図である。
【0011】
本発明のプラスチックフィルムハウスとは、例えば作物の促進栽培に用いられる温室のように、金属パイプなどの内部空間を形成する骨組みに樹脂フィルム1を展張被覆したものを言う。プラスチックフィルムハウスの形状には特に限定はなく、正面から見た場合に、垂直の側部とアーチ状の屋根部を有するもの、垂直の側部と斜め形状の屋根部を有するもの、側部と屋根部が連続して曲線で構成された半円形のもの等の、いずれであってもよい。またプラスチックフィルムハウスが連続して連なった連棟ハウスであってもよい。
【0012】
プラスチックフィルムハウスに通常被覆されている樹脂フィルム1としては、従来より農業用ハウス等に展張被覆するために用いられている農業用樹脂フィルムなどを用いることができる。例えば塩化ビニル系樹脂製、ポリオレフィン系樹脂製、などの軟質樹脂フィルムを使用することができるが、これらに限定されるわけではない。これらの樹脂フィルムは、通常は骨組みの外側に展張被覆され、所々固定具やバンドなどにより固定される。
【0013】
本発明の換気用シートを用いるプラスチックフィルムハウスにおいては、ハウスの屋根部の所定個所の適宜面積に、通常の被覆樹脂フィルム1を展張しないで開放している部分、すなわち天窓1a(換気用シートで被覆する面積より若干小さめ)を設けておく。
【0014】
本発明の好ましい態様としては、その天窓部分1aに、予め細かい網目の防虫ネット2を展張しておく。そのことにより、換気用シートを巻き上げ天窓を開放した際に、通気性を確保し且つ虫の侵入を防ぐことができるため、好ましい。
【0015】
本発明の換気用シート3は、少なくとも天窓部分より大きな面積を有する透明かつ柔軟性を有するシートであって、その上端はプラスチックフィルムハウスに密着するように固定具等により固定され、換気用シート3の下端には、巻芯4を固定し、巻芯4を回転することにより換気用シート3を下端側から巻き取って巻き上がり方向に天窓を開くために使用されるシートである。
【0016】
本発明の換気用シート3は、熱可塑性樹脂フィルム3aと、該フィルム面に積層されたネット体3bの複層構成からなり、該フィルム3aと該ネット体3bとが、展張時縦方向に少なくとも部分的に接合されてなることを特徴とする。
【0017】
換気用シート3を構成する熱可塑性樹脂フィルム3aは、上記の通常の展張に用いる樹脂フィルム1と同様の透明性と柔軟性を有する樹脂フィルムで構成されており、例えば塩化ビニル系樹脂、ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリメチルメタクリレート樹脂、フッ素樹脂などの、任意の公知の熱可塑性樹脂を用いることができる。特に軟質である塩化ビニル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂製のフィルムが好ましい。単層でも多層のフィルムでもよく、厚さは10〜1000μm、好ましくは20〜200μmであり、その用途に応じた任意の公知添加剤、例えば可塑剤、紫外線防止剤、光安定剤、保温剤、滑剤を配合することが可能である。
【0018】
本発明の換気用シートを構成するネット体3bは、上記熱可塑性樹脂フィルム3aの面上に積層される。本発明の一つの実施態様としては、該ネット体3bが、該熱可塑性樹脂フィルム3aのハウス展張時の外面側に積層されてなることを特徴とし、もう1つの実施態様は該ネット体3bが、該熱可塑性樹脂フィルム3aの展張時内面側に積層されてなることを特徴とする。
【0019】
いずれの態様も好ましいが、ネット体3bが展張時外面側に積層されている態様の方が、換気用シートを展張時に、ハウス内側に付着した滴のぼた落ちが発生しにくく、一方、ネット体3bが展張時内面側に積層されている態様の方が、換気用シートの外側に汚れが付着しにくいという利点を有する。
【0020】
換気用シートを構成するネット体3bとは、いわゆる縦方向の糸群と横方向の糸群から構成される柔軟な粗いネット状のものを意味し、本発明の目的から、好ましくは、熱可塑性樹脂製であって柔軟であり、比較的透明なネット体が好ましい。ネット体を構成する熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、などのポリオレフィン系樹脂を初めとして、ナイロン6、ナイロン66などのポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂などが挙げられ、好ましくは上記熱可塑性樹脂フィルム3aと同質の材料、又は相溶性を有する材料を用いると好ましい。
【0021】
糸の配列は特に限定されず、斜め方向の配列でもよく、また縦糸と横糸の太さや配列間隔が均一である必要もない。目粗さは、通常0.1mmから15mm程度から任意に採用できるが、本発明の目的としては、目が細かい必要はなく、0.5mm〜7mm程度が好ましい。あまり目が細かすぎると、汚れが付着しやすく、目が粗すぎると本発明の効果を発揮しにくい。
【0022】
糸の太さも特に限定されないが、通常、市販されているネット体に用いられるモノフィラメントやマルチフィラメント、スプリットヤーン等の糸を用いるこごとができる。
【0023】
本発明の換気用シートにおいては、この換気用シートを構成する熱可塑性樹脂フィルム3aと、その面上に積層されたネット体3bとが、展張時縦方向に少なくとも部分的に接合されてなることを特徴とする。即ち、熱可塑性樹脂フィルム3aとネット体3bを全面接合するのではなく、縦方向に列状に、又は部分的に接合する。フィルム3aとネット体3bを全面接合したり、展張時横方向に列状に接合してしまうと、特にネット体3bをフィルム内面に積層した場合に、内面に付着した水滴のぼた落ちが生じやすいためである。また、全く接合しないと、展張時や、巻き上げ巻き下げ時の作業性が好ましくない。
【0024】
具体的な接合態様としては、図3に、換気用シートを、プラスチックフィルムハウスに展張した際に、縦となる方向に、熱可塑性樹脂フィルム3aと、ネット体3bの接合した接合部位5を縦の列状に設けた例を示す。この接合部位は、横方向に複数設けられているが、その間隔は5cm以上〜40cm以下、好ましくは7cm〜30cm程度が、好ましい。
【0025】
図3では列状に設けた例を示しているが、かかる接合は、点線的な、部分的接合であってもよい。
【0026】
具体的接合方法としては、熱可塑性樹脂フィルム3aと、ネット体3bの材質にもよるが、熱融着、接着剤による接合、紐やテープによる部分接合など種々の方法を用いることができるが、特に屋外展張目的から、予め熱可塑性樹脂フィルム3aとネット体3bを熱融着して接合したものが好ましい。
【0027】
本発明の換気用シート3の好ましい特徴としては、換気用シートを構成する熱可塑性樹脂フィルム3aの、換気用シート閉時に巻芯4の上方近辺に位置する部分3a’に少なくとも、通水性の孔6又はスリットを有することがあげられる。通水性の孔は、例えば1mm径〜7mm径、スリットは、1cm〜5cmの長さ、好ましくは2cm〜3cmの長さから選ぶことができ、通水性の孔又はスリットが、互いに少なくとも7cm以内に存するように配することが、水溜まりを防止する上で好ましい。特に通水性の孔、スリットを千鳥格子状に配すると、効率的にフィルム上の水溜まりを防止することが可能となる。例えば、図3では、3mm孔を5cm間隔で千鳥格子状に配した例を示している。3a’の範囲は、換気用シート3の展張時縦方向の長さとして好ましくは7cm〜20cm、好ましくは10cm〜15cm程度あるとよい。
【0028】
巻芯4とは、プラスチックフィルムハウスの天窓部分に被覆された換気用シート3を巻き取り巻き戻すための芯となる長尺の円柱状又は円管状のロール(パイプ)であって、中実体でも中空体でもよい。また材質もある程度の強度と剛性があるものであればよく、例えば鉄製パイプ、塩ビ製パイプなどを利用することができる。巻芯の径(直径)は、換気用シート5を巻き取り巻き戻すために適当な径であればよく、例えば5mm〜50mmの範囲が挙げられる。長さは使用するハウスの大きさや換気を必要とする範囲により適宜調整すればよい。
【0029】
巻芯4は、密閉時(天窓閉時)を示す図1に示すように、通常時は、ハウスの天窓部の片側上面の下部に位置する。一方、換気時(天窓開時)には、巻芯の端部に備えられた回転駆動手段により、回転しながら、換気用シート5を巻き取り、且つ、換気用シート3の巻き取りに伴って自動的に天頂方向へ回転移動する。所定の換気幅移動した場所で、回転駆動装置の固定等により巻芯を固定することができる。
【実施例】
【0030】
以下、本発明の実施例を用いてより詳細に説明するが本発明はこれらに限定されるものではない。
(実施例1)
図1及び図2に示すような、農業用ポリオレフィン系樹脂フィルムを被覆展張したプラスチックフィルムハウス1の屋根部の一部を、天頂部から約70cmの換気幅に、天窓部分1aとし、その部分に防虫ネット2を張ったものを用意した。
【0031】
一方、換気用シート3に用いる熱可塑性樹脂フィルム3aとして、図3に示すように、一般に農業用フィルムとして用いられているポリオレフィン系樹脂フィルムを用意し、その展張時下側となる10cmの部分3a’に3mm径の小孔6を、2.5cm間隔で千鳥格子状に穿孔して通水部3a’を設けたフィルムとした。
【0032】
一方、該熱可塑性樹脂フィルム3aの展張時外面に、2mmの目粗さのポリエチレン糸製のネット体3bを積層し、その両者を、展張時縦方向となる方向に、その列状に接合して、横方向に10cm間隔となる接合部5を熱融着により形成し、換気用シート3を作成した。
【0033】
この換気用シートを図1、図2に示すように、下部に巻芯4を巻きつけ、上部をプラスチックフィルムハウスに固定するようにして固定し、巻き上げ方式による換気作業に供する。この結果、巻き上げ巻き下げ時における換気用シート同士の密着がなく、かつ巻き上げ巻き下げが容易に行うことができ、かつ、巻き下げ時、即ち換気用シートを閉めた時に雨水溜まりによるシート破れ等の問題を生じないことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明を用いたプラスチックフィルムハウスの換気用シートを閉じた状態を示す図
【図2】本発明を用いたプラスチックフィルムハウスの換気用シートを開いた状態を示す図
【図3】本発明の天窓シートを閉じた状態の側面拡大図の一例
【符号の説明】
【0035】
1・・プラスチックフィルムハウス、1a・・天窓部分、2・・防虫ネット、3・・換気用シート、3a・・熱可塑性樹脂フィルム、3b・・ネット体、4・・巻き芯、5・・接合部、6・・小孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックフィルムハウスに展張し、巻芯に巻きつけて巻き上げ巻き下げ可能な換気用シートであって、熱可塑性樹脂フィルムと、該フィルム面に積層されたネット体との複層構成からなり、該フィルムと該ネット体とが、展張時縦方向に少なくとも部分的に接合されてなることを特徴とする、プラスチックフィルムハウス換気用シート。
【請求項2】
該ネット体が、該熱可塑性樹脂フィルムの展張時外面側に積層されてなることを特徴とする請求項1記載のプラスチックフィルムハウス換気用シート。
【請求項3】
該ネット体が、該熱可塑性樹脂フィルムの展張時内面側に積層されてなることを特徴とする請求項1記載のプラスチックフィルムハウス換気用シート。
【請求項4】
該熱可塑性樹脂フィルムの、巻芯との接続部付近に、水抜き用開口が設けられていることを特徴とする請求項1ないし3いずれかに記載のプラスチックフィルムハウス換気用シート。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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