説明

プラスチックフィルム及び輸液バッグ

【課題】品質劣化が抑制され、かつ耐ブロッキング性に優れるプラスチックフィルム及び輸液バッグを提供する。
【解決手段】ポリエステルエラストマーからなる第一の外層10と、高密度ポリエチレンを含有する第二の外層16と、前記第一の外層10と前記第二の外層16との間に設けられ、線状低密度ポリエチレンを主成分とする第一の中間層14と、前記第一の外層10と前記第一の中間層14との間に設けられ、α−オレフィンと、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸の無水物モノマーとの重合体を主成分とする第二の中間層12とを備え、共押出法により製膜されることよりなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療用容器に用いられるプラスチックフィルム、及びこれを用いた輸液バッグに関する。
【背景技術】
【0002】
輸液バッグや薬液用バッグ等の医療用容器は、ガラス製の容器や、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のブロー成形やヒートシールにて製袋されたソフトバッグが用いられている。中でもソフトバッグは、軽量であり廃棄時の容積が小さく、また投与時に通気針を必要としないことから、医療用容器の主流となっている。
【0003】
一般に、ソフトバッグに使用されているフィルムは、高圧下での蒸気滅菌時の溶出物を低減するため、及び透明度や柔軟性を維持するため、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン材料でフィルム全体が構成されている。ポリオレフィン材料は、外部加熱により溶融しやすく、外部加熱によって透明度が低下したり、フィルムの厚みが薄くなったり、皺が形成されたりする等の品質劣化を生じやすい。このため、ヒートシール等の外部加熱による製袋工程は、フィルムを劣化させないように時間をかけて慎重に、ポリオレフィン材料を部分的に溶融させる工程となっている。
【0004】
高圧下での蒸気滅菌や製袋工程での外部加熱による品質劣化を軽減することを目的として、ポリオレフィン材料よりも耐熱性に優れた材料を外層に配した発明が開示されている。
例えば、特許文献1には、0.916g/ccより小さい密度及び118℃より高い溶融ピーク温度を有するエチレン/α−オレフィンコポリマーを含む第1の外部層と、ポリエステル、コポリエステル(ポリエステル共重合体)、ポリアミド及びポリオレフィンから選択されるポリマー材料を含む第2の外部層と、第1の外部層及び/又は第2の外部層の間に設けられたα−オレフィン/不飽和モノマーコポリマーを含む層とを備えるフィルムが開示されている。また、特許文献1には、前記フィルムを流延共押出によって成形することが記載され、実際、Tダイを用いた流延共押出成形によりフィルムを製造した例が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2002−524308号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のフィルムを用い、第1の外部層が内面となるようにして、水冷共押出インフレーション法によりチューブ状フィルムを製造したところ、チューブ状フィルムを巻き取る際、内面同士が密着し、ブロッキングしやすいことが判った。
ブロッキングしたチューブ状フィルムの内面同士を引き離すと、内面が白化しやすい。
加えて、上記のチューブ状フィルムを製袋し、袋内に内容物を充填しようとすると、袋が開口せず、内容物を充填できないことがある。
さらに、内容物を袋内に充填した後、熱滅菌すると、袋の内面同士が部分的に溶着し、剥がせないことがある。
このように、特許文献1の発明は、外部加熱による品質劣化の軽減対策がなされているものの、耐ブロッキング性に劣るという問題があった。
そこで、本発明は、品質劣化が抑制され、かつ耐ブロッキング性に優れるプラスチックフィルム及び輸液バッグを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のプラスチックフィルムは、ポリエステルエラストマーからなる第一の外層と、高密度ポリエチレンを含有する第二の外層と、前記第一の外層と前記第二の外層との間に設けられ、線状低密度ポリエチレンを主成分とする第一の中間層と、前記第一の外層と前記第一の中間層との間に設けられ、α−オレフィンと、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸の無水物モノマーとの重合体を主成分とする第二の中間層とを備え、共押出法により製膜されたことを特徴とする。
前記第一の外層のポリエステルエラストマーは、脂環式ポリエステルであることが好ましく、前記第一の中間層は、高密度ポリエチレンを40質量%以下含有することが好ましく、前記第二の外層は、高密度ポリエチレンと線状低密度ポリエチレンとの混合物であり、線状低密度ポリエチレンの含有量が50質量%以下であることが好ましく、また、前記第二の外層は、高密度ポリエチレン20〜40質量%と、線状低密度ポリエチレン10〜30質量%と、低密度ポリエチレン70〜30質量%との混合物であることが好ましい。
【0008】
本発明の輸液バッグは、本発明の前記プラスチックフィルムからなるバッグ本体に、注出口を設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明のプラスチックフィルムによれば、プラスチックフィルムの品質劣化が抑制され、かつ耐ブロッキング性の向上が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一実施形態にかかるプラスチックフィルムの断面図である。
【図2】本発明の一実施形態にかかる輸液バッグの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(プラスチックフィルム)
本発明の一実施形態にかかるプラスチックフィルムについて、以下に図1を参照して説明する。図1のプラスチックフィルム1は、第一の外層10と、第二の中間層12と、第一の中間層14と、第二の外層16とがこの順で積層されたものである。
【0012】
<第一の外層>
第一の外層10は、プラスチックフィルム1を袋状の容器にした際に、該容器の最外層となる層であり、プラスチックフィルム1がヒートシール工程での外部加熱を施された際に最も高温となる層である。なお、ヒートシール工程では、プラスチックフィルム1同士を溶着したり、プラスチックフィルム1と、薬液の排出注入口部材である合成樹脂成形品からなるポートやチューブとをプラスチックフィルム1の第二の外層16面に溶着する。
【0013】
第一の外層10は、ポリエステルエラストマーからなるものである。ポリエステルエラストマーとは、二塩基酸に由来する単位と二価アルコールに由来する単位とからなるポリエステル系熱可塑性エラストマーであって、ハードセグメントとソフトソグメントを有するポリエステルエーテルブロック共重合体である。
【0014】
ポリエステルエーテルとしては、ポリマー科学工学百科事典(the Encyclopedia of Polymer Science and Engineering、第2版、第12巻、第75〜115頁、1985年刊)に記載されているものが挙げられる。
【0015】
ポリエステルエラストマーに用いられる二塩基酸としては、芳香族もしくは脂肪族ジカルボン酸又はこれらのジメチルエステルが挙げられ、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレン−2,6−ジカルボン酸、アントラセンジカルボン酸、ジフェニル−4,4’−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸及び4,4’−ジフェニルエーテルジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸及び4,4’−ジシクロヘキシルジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸、アジピン酸、コハク酸、シュウ酸、セバシン酸、ドデカンジオン酸、ダイマー酸等の脂肪族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0016】
ポリエステルエラストマーに用いられる二価アルコールとしては、エチレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、デカメチレングリコール等の脂肪族ジオール、1,1−シクロヘキサンジメタノール、1,4−ジシクロヘキサンジメタノール、トリシクロデカンジメタノール等の脂環式ジオール、キシリレングリコール、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニル、ビス(p−ヒドロキシ)ジフェニルプロパン等の芳香族ジオール、ポリ(エチレンオキシド)、ポリ(プロピレンオキシド)、ポリ(テトラメチレンオキシド)及びこれらのコポリマー等のポリ(アルキレングルコールエーテル)等が挙げられる。
【0017】
これらの二塩基酸及び二価アルコールの内、芳香環を有する芳香族系化合物に由来する単位を含むポリエステルエラストマーは、医療用容器に使用する場合に要求される、日本薬局方の溶出試験の規格の紫外吸収スペクトルの規格値を満たさない場合がある。このため、ポリエステルエラストマーとしては、芳香族系化合物を含まないポリエステルエラストマーが好ましく、さらに芳香族系化合物を含まず、かつ耐熱性も高いことから脂環式化合物に由来する単位を含有するポリエステルエラストマーである脂環式ポリエステルであることが好ましい。脂環式ポリエステルの中でも、脂環式化合物を多く含む、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,4−ジシクロヘキサンジメタノール及びポリ(アルキレングルコールエーテル)からなる脂環式ポリエステルがより好ましい。
【0018】
ポリエステルエラストマーの製造方法としては、特に限定されず、従来公知の製造方法が挙げられる。
ポリエステルエラストマーの市販品としては、例えば、芳香族系化合物に由来する単位を含むハイトレル4767(商品名、東レ・デュポン株式会社製)、脂環式ポリエステルであるエクデル9966(商品名、イーストマン社製)等が挙げられる。
【0019】
第一の外層10の厚みt1は、プラスチックフィルム1の厚み(総厚み)Tに対して、2〜15%が好ましく、2〜10%がより好ましく、2〜8%がさらに好ましい。厚みt1が上記下限値未満であると、外部加熱の伝熱によるプラスチックフィルム1への熱ダメージの緩衝効果が低下して品質劣化を生じるおそれがあり、厚みt1が上記上限値超であると、プラスチックフィルム1の剛性が著しく増大し、医療用容器としての柔軟さが損なわれるおそれがある。
【0020】
<第二の中間層>
第二の中間層12は、第一の外層10に隣接する層であり、第一の外層10と後述の第一の中間層14との層間接着層である。
第二の中間層12は、α−オレフィンと不飽和カルボン酸との重合体、又はα−オレフィンと不飽和ジカルボン酸の無水物モノマーとの重合体(以下、総じて重合体Aということがある)からなる変性ポリオレフィンを主成分とするものである。
【0021】
α−オレフィンには、エチレン、プロピレン等が挙げられる。エチレンもしくはプロピレン等の単独重合体又はエチレンとプロピレンとの共重合体であるポリオレフィンは、遷移金属化合物と有機アルミニウム化合物とから得られる触媒系(チーグラー触媒)、担体(例えば、シリカ)にクロムの化合物(例えば、酸化クロム)を担持させることによって得られる触媒系(フィリップス触媒)、又はラジカル開始剤(例えば、有機過酸化物)を用いてオレフィンを単独重合又は共重合することによって得られる。
【0022】
また、不飽和カルボン酸又は不飽和ジカルボン酸の無水物モノマーとは、少なくとも1個の二重結合を有する不飽和モノマーであり、かつ少なくとも1個のカルボキシル基又はその無水物(基)を含有する化合物であり、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、エンディック酸、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水エンディック酸、無水シトラコン酸等が挙げられる。
【0023】
第二の中間層12に用いる重合体Aは、上記ポリオレフィンに上記不飽和モノマーがグラフト重合したグラフト重合体である。
重合体Aに用いられるポリオレフィンとしては、接着性に優れることから、エチレンの単独重合体、又はエチレンとプロピレンとの共重合体が好ましく、さらに透明性に優れることから、エチレンとプロピレンとの共重合体、特にエチレンとプロピレンとの共重合体であるオレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0024】
重合体Aとしては、市販品を用いてもよい。重合体Aの市販品としては、例えば、モディック(商品名、三菱化学株式会社製)、ゼラス(商品名、三菱化学株式会社製)、アドマー(商品名、三井化学株式会社製)等が挙げられる。
【0025】
第二の中間層12を構成する樹脂中の重合体Aの含有量は、50質量%超であり、75質量%以上が好ましく、100質量%がより好ましい。重合体Aの含有量が多いほど、第一の外層10と第一の中間層14とをより強固に接着できる。
【0026】
第二の中間層12には、接着力を損なわない範囲で、重合体A以外の樹脂を含有できる。第二の中間層12に含有される重合体A以外の樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等が挙げられる。
【0027】
第二の中間層12の厚みt2は、総厚みTに対して2〜15%が好ましく、2〜10%がより好ましい。厚みt2が上記下限値未満であると、第一の外層10との接着が不十分になるおそれがあり、厚みt2が上記上限値超であると、プラスチックフィルム1の強度物性が損なわれたり、製造原価を不必要に上昇させてしまうおそれがある。
【0028】
<第一の中間層>
第一の中間層14は、線状低密度ポリエチレンを主成分とする層である。第一の中間層14を設けることで、プラスチックフィルム1の柔軟性を高め、透明性を高く維持できる。
線状低密度ポリエチレンは、エチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンから選択された1種以上のα−オレフィンとの重合体である。
【0029】
前記の炭素数3〜20のα−オレフィンの中でも、炭素数3〜12のα−オレフィンが好ましく、例えば、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、4−メチル1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン及び1−ドデセン等が挙げられ、中でも、プロピレン、1−ブテン、1−ヘキセン及び1−オクテンが好ましい。
線状低密度ポリエチレン中のα−オレフィンの含有量は、1〜30モル%が好ましく、3〜20モル%がより好ましい。
【0030】
線状低密度ポリエチレンの密度は、0.890〜0.940g/cmが好ましい。また、線状低密度ポリエチレンのメルトマスフローレイト(以下、MFRということがある)は、0.1〜20g/10分であることが好ましい。なお、本発明において、密度はJIS K7112 D法に準拠して測定された値であり、MFRは、特に断りのない限りJIS K7210に準拠して加重21.18N、温度190℃で測定された値である。
【0031】
線状低密度ポリエチレンの製造方法は、特に限定されず、従来公知の製造方法が挙げられる。
線状低密度ポリエチレンは、メタロセン系触媒又はチーグラー・ナッタ触媒等を用いて製造されたものが好ましく、中でも、強度、透明性に優れる点で、メタロセン触媒で製造されたメタロセン系線状低密度ポリエチレンが、より好ましい。
線状低密度ポリエチレンの市販品としては、例えば、メタロセン系線状低密度ポリエチレンであるエクセレンGMH(商品名、住友化学株式会社製)、エボリュー(商品名、株式会社プライムポリマー製)、カーネル、ハーモレックス(商品名、日本ポリエチレン株式会社製)等が挙げられる。
【0032】
第一の中間層14を構成する樹脂中の線状低密度ポリエチレンの含有量は、50質量%超であり、70質量%以上が好ましく、100質量%であってもよい。
【0033】
第一の中間層14には、線状低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの混合物を用いることが好ましい。線状低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの混合物を用いることで、プラスチックフィルム1の耐熱性をより高められる。この混合物中の高密度ポリエチレンの含有量は、5〜40質量%が好ましく、5〜30質量%がより好ましい。高密度ポリエチレンの含有量が上記下限値以上であれば、耐熱性や外観をより高められる。上記上限値超であると透明性、柔軟性が低下する傾向にある。
【0034】
第一の中間層14に用いられる高密度ポリエチレンは、密度が0.940g/cm超のものである。
この高密度ポリエチレンのMFRは0.1〜10g/10分が好ましく、より好ましくは0.5〜5.0g/10分である。MFRが上記下限値未満であると、押出成形時の樹脂圧力が上昇し成形性が低下するおそれがある。MFRが上記上限値超であると、共押出インフレーション法で製膜する際、バブル安定性が低下するおそれがある。
【0035】
高密度ポリエチレンの分子量分布(Mw/Mn)は、4以下が好ましい。Mw/Mnが4超であるとプラスチックフィルム1の透明性が低下する傾向にある。Mw/Mnは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにより測定され、ポリスチレンを標準試料とした検量線を用いて、計算した質量平均分子量Mwと数平均分子量Mnの比である。
【0036】
高密度ポリエチレンの融解ピーク温度(融点)は、128℃以上が好ましい。なお、高密度ポリエチレンの融解ピーク温度の上限値は、市販されている高密度ポリエチレンの融解ピーク温度を上限とすることができる。ただし、プラスチックフィルム1を袋状の医療用容器の成形性、耐熱性に優れるものとするためには、高密度ポリエチレンの融解ピーク温度が好ましくは128〜138℃、より好ましくは130〜135℃とされる。
融解ピーク温度は、示差走査熱量計を用い、試料をおよその融解ピーク温度より約30℃高い温度で10分間保持した後、10℃/分の速度で30℃まで冷却し、次いで、10℃/分の速度で融解ピーク温度より30℃高い温度まで昇温した際に、現れた融解ピークの温度である。
【0037】
第一の中間層14を構成する樹脂は、結晶造核剤を含有してもよい。結晶造核剤を含有することで、プラスチックフィルム1の透明性、耐熱性をさらに高められる。好ましい結晶造核剤としては、例えば、シクロヘキサン・ジカルボン酸カルシウム塩及びステアリン酸亜鉛の混合物が挙げられる。
第一の中間層14を構成する樹脂中の結晶造核剤の含有量は、0.5〜2.5質量%が好ましい。上記下限値以上であれば、耐熱性、透明性をさらに高められ、上記上限値超としても、耐熱性、透明性の向上の程度が低いためである。
【0038】
第一の中間層14の厚みt3は、総厚みTに対して40〜95%が好ましく、75〜95%がより好ましく、80〜95%がさらに好ましい。上記範囲内であれば、透明性、柔軟性及び耐衝撃性に優れるためである。
【0039】
<第二の外層>
第二の外層16は、高密度ポリエチレンを含有する層であり、ヒートシールによりプラスチックフィルム1同士を溶着するためのシール層である。
第二の外層16を構成する樹脂中の高密度ポリエチレンの含有量は、20質量%以上が好ましく、50質量%以上がより好ましく、実質的に100質量%がさらに好ましい。上記下限値以上であれば、加熱条件121℃の高圧蒸気殺菌で変形することがない。加えて、高密度ポリエチレンの含有量が多いほど、耐熱性に優れ、耐ブロッキング性に優れる。
【0040】
第二の外層16を構成する樹脂は、高密度ポリエチレンと線状低密度ポリエチレンとの混合物でもよい。第二の外層16を構成する樹脂中の線状低密度ポリエチレンの含有量は、耐ブロッキング性の観点からは50質量%以下が好ましく、45質量%以下がより好ましく、40質量%以下がさらに好ましい。上記上限値超であると、比較的低温でヒートシールできたり、短時間でヒートシールできたりするが、プラスチックフィルム1の内面同士でブロッキングが発生しやすい傾向にある。第二の外層16を構成する樹脂中の線状低密度ポリエチレンの含有量の下限値は、例えば、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましい。上記下限値以上であれば、プラスチックフィルム1の透明性、耐衝撃性をより高められる。
【0041】
また、第二の外層16を構成する樹脂としては、高密度ポリエチレン20〜40質量%と低密度ポリエチレン10〜30質量%と線状低密度ポリエチレン70〜30質量%との混合物が好ましく、高密度ポリエチレン20〜30質量%と低密度ポリエチレン10〜25質量%と線状低密度ポリエチレン70〜45質量%との混合物がより好ましい。高密度ポリエチレンと低密度ポリエチレンと線状低密度ポリエチレンとの3成分の混合物とすることで、耐熱性及び耐ブロッキング性の低下を抑制しつつ、透明性、耐衝撃性をさらに高められる。
なお、本発明における低密度ポリエチレンとは、いわゆる高圧法ポリエチレンである。密度は0.910〜0.930g/cmが好ましく、MFRは0.1〜10g/10分が好ましい。
第二の外層16の樹脂構成は、プラスチックフィルム1を用いた容器の用途(例えば、内容物の種類、容量等)、容器に求められる特性に応じて、適宜決定される。
【0042】
第二の外層16に用いられる線状低密度ポリエチレンは、第一の中間層14に用いられる線状低密度ポリエチレンと同様のものを用いることができる。
第二の外層16に用いられる線状低密度ポリエチレンは、メタロセン系触媒又はチーグラー・ナッタ触媒で製造されたものが好ましい。
第二の外層16に用いられる線状低密度ポリエチレンのMFRは、特に限定されないが、例えば、0.1〜10g/10分であることが好ましい。
第二の外層16に用いられる線状低密度ポリエチレンの密度は、特に限定されないが、例えば、0.925g/cm以下が好ましい。密度が上記上限値以下であれば、プラスチックフィルム1の透明性、耐衝撃性をより効果的に高められる。
【0043】
第二の外層16の融解ピーク温度は、第一の外層10の融解ピーク温度以下であり、第一の外層10の融解ピーク温度と第二の外層16の融解ピーク温度との差(融解ピーク温度差)は、40℃以上が好ましく、50℃以上がより好ましい。この融解ピーク温度差が上記下限値未満であると、ヒートシールによってプラスチックフィルム1の品質劣化が生じやすくなる傾向になる。
融解ピーク温度差の上限は、特に限定されないが、100℃以下が好ましい。第一の外層10と第二の外層16との融解ピーク温度差が大きすぎると、共押出時に第二の外層16が高温で製膜されることになり、第二の外層16の粘度が著しく低下して、安定的に製膜できないおそれがある。
【0044】
第二の外層16の厚みt4は、総厚みTに対して1〜30%が好ましく、2〜20%がより好ましく、3〜15%がさらに好ましい。厚みt4が上記下限値未満であると、プラスチックフィルム1の強度物性が損なわれるおそれがあり、厚みt4が上記上限値超であると、透明性、柔軟性が低下するおそれがある。
【0045】
プラスチックフィルム1の総厚みTは、プラスチックフィルム1の用途等を勘案して決定でき、プラスチックフィルム1を輸液バッグに用いる場合には、例えば、50〜1000μmが好ましく、100〜350μmがより好ましい。上記下限値未満であると、耐衝撃性、水蒸気バリア性、ヒートシール工程等の加工時及び使用時の耐熱性が不十分になるおそれがあり、上記上限値超であると、透明性、柔軟性が不十分になるおそれがある。総厚みTは、透明性及び水蒸気バリア性をより高める観点から、150〜300μmがさらに好ましい。
【0046】
<プラスチックフィルムの製造方法>
プラスチックフィルム1の製造方法は、共押出法である。共押出法としては、例えば、多層Tダイ法により反物状に製膜する方法、多層インフレーション法により筒状に製膜する方法が挙げられ、中でも多層インフレーション法により筒状に製膜する方法が好ましい。筒状に製膜することで、製袋した際に薬液等の内容物と接触する面が、外部環境に露出せず、より衛生的に製造できるためである。プラスチックフィルム1の透明性をさらに高める観点から、溶融状態から急冷固化できる水冷式の共押出インフレショーン法がより好ましい。
【0047】
(輸液バッグ)
本発明の一実施形態にかかる輸液バッグについて、以下に図2を参照して説明する。
図2の輸液バッグ100は、チューブ状のプラスチックフィルム(チューブフィルム)からなるバッグ本体110を備えるものである。この輸液バッグ100は、チューブフィルムの一方の開口端に筒状の注出口111を設けてヒートシールし、この第一のヒートシール部112を底にして輸液を輸液収納部113に充填後、チューブフィルムの他方の開口端をヒートシールして第二のヒートシール部114を形成したものである。第二のヒートシール部114の略中央には、吊下孔115が打抜き形成されており、その両側には長方形の未シール部116が設けられている。注出口111の先端には注射針を挿入するゴム栓117が取り付けられている。なお、注出口111はチューブであってもよい。
【0048】
上述の通り、本実施形態のプラスチックフィルムは、第一の外層と、第二の中間層と、第一の中間層と、第二の外層とがこの順で積層されているため、外部加熱に起因する品質劣化を生じにくく、かつブロッキングを防止できる。
本実施形態のプラスチックフィルムは、外部加熱による品質劣化を生じることなく、高温で短時間でヒートシールできるため、高速で製袋できる。
本実施形態のプラスチックフィルムは、共押出法により製造できるため、接着剤等の溶出の懸念がない。
従来のプラスチックフィルムは、シール層同士を対向させ、重ねて巻き取ると、ブロッキングを生じやすかった。本実施形態のプラスチックフィルムは、シール層である第二の外層同士が対向するように重ねられても、ブロッキングを生じにくい。このため、共押出インフレーション法でチューブ状に成形しても、ブロッキングを生じることのない巻回体として巻き取れる。即ち、本実施形態のプラスチックフィルムは、共押出インフレーション法で製造される場合に、顕著な効果を発揮する。そして、共押出インフレーション法で製造されたプラスチックフィルムは、内容物と接触する面をより衛生的に保てるので、輸液バッグや薬液を収容する容器等に特に好適である。
【0049】
本発明のプラスチックフィルムは上述の実施形態に限定されない。
上述の実施形態では、第一の外層、第二の外層、第一の中間層又は第二の中間層が、それぞれ一層構造とされているが、本発明はこれに限定されず、各層は、その機能が損なわなければ二層以上で構成されていてもよい。
【0050】
また、本発明のプラスチックフィルムは、第一の外層と第二の外層との間に第一の中間層が設けられ、かつ第一の外層と第一の中間層との間に第二の中間層が設けられていればよく、例えば、第一の中間層と第二の中間層との間に第三の中間層が設けられていてもよい。第三の中間層としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体、MXDナイロン等を主成分とするガスバリア層等が挙げられる。
【実施例】
【0051】
以下、本発明について実施例を挙げて説明するが、本発明は以下の記載によって限定されるものではない。特に断りのない限り、表中の「%」は「質量%」を表わす。
【0052】
(使用原料)
各例の第一の外層、第二の中間層、第一の中間層、第二の外層に用いた樹脂は以下の通りである。
PET1:ポリエステルエラストマー(脂環式ポリエステル)、エクデル 9966(商品名)、融解ピーク温度=205℃、イーストマン社製
PET2:ポリエステルエラストマー(芳香族系化合物に由来する単位を含むポリエステル)、ハイトレル 4767(商品名)、融解ピーク温度=199℃、東レ・デュポン株式会社製
AD1:変性オレフィン系熱可塑性エラストマー、ゼラス MC721AP(商品名)、密度=0.89g/cm、MFR(JIS K7210に準拠し、加重21.18N、温度230℃で測定した値)=3.5g/10分、融解ピーク温度=155℃、三菱化学株式会社製
AD2:変性ポリエチレン、アドマー NF308(商品名)、密度=0.932g/cm、MFR=1.7g/10分、融解ピーク温度=125℃、三井化学株式会社製
LLD1:メタロセン系線状低密度ポリエチレン、エボリュー SP0511(商品名)、密度=0.910g/cm、MFR=1.2g/10分、融解ピーク温度=110℃、株式会社プライムポリマー製
LLD2:チーグラー系線状低密度ポリエチレン、モアテック 3500Z(商品名)、密度=0.921g/cm、MFR=2g/10分、融解ピーク温度=121℃、株式会社プライムポリマー製
HD:高密度ポリエチレン、密度=0.955g/cm、MFR=3.5g/10分、融解ピーク温度=132℃、Mw/Mn=3.5
LD:高圧法低密度ポリエチレン、密度=0.927g/cm、MFR=1g/10分、融解ピーク温度=115℃
【0053】
各例に用いた混合物の融解ピーク温度は以下の通りであった。
LLD1(80質量%)とHD(20質量%)との混合物:融解ピーク温度=125℃
LLD1(20質量%)とHD(80質量%)との混合物:融解ピーク温度=130℃
LLD1(40質量%)とHD(60質量%)との混合物:融解ピーク温度=128℃
LLD2(80質量%)とHD(20質量%)との混合物:融解ピーク温度=127℃
LLD1(60質量%)とHD(20質量%)とLD(20%)との混合物:融解ピーク温度=126℃
【0054】
(評価方法)
<ヒートシール性>
ヒートシール温度による影響を調べるため、異なる温度でヒートシールした。各例のプラスチックフィルム2枚をシール層同士が対向するように重ね合わせ、異なる4点の温度(180℃、200℃、220℃、240℃)に昇温した上下のヒートシール板を用いて、圧力0.2MPaでヒートシールした。また、ヒートシール時間に因る影響を調べるため、異なる時間でヒートシールした。ヒートシール時間を0.1、0.3、0.5、1.0、2.0、3.0秒間とした。
上記の異なる温度でプラスチックフィルムをヒートシールし、シール部の状態を勘案してヒートシール時間を選択した。
【0055】
ヒートシールされた検体を15mm幅の短冊状に裁断し、引張試験機を用いてJIS−K6854−3に準拠して引張速度300mm/分の速度で剥離を行い、以下に定めるA〜D−−の評価基準に従いヒートシール性を評価した。
【0056】
≪評価基準≫
A:フィルム外面の品質劣化がなく剥離強度も強い。剥離強度は50N/15mm以上。
B+:外面の品質劣化はないが、剥離強度がやや弱い。剥離強度は30N/15mm以上50N/15mm未満。
B−:外面に厚み減少がわずかにみられるが、剥離強度は強い。剥離強度は50N/15mm以上。
C+:外面の品質劣化はないが、剥離強度が弱い。剥離強度は30N/15mm未満。
C−:外面に厚み減少がみられ、剥離強度が強い。剥離強度は50N/15mm以上。
D+:外面の品質劣化はないが、シールされていない。
D−:外面の厚み減少が著しく、剥離強度が強い。剥離強度は50N/15mm以上。
D−−:外面の厚み減少が著しく部分的に穴あきやシール板に溶融フィムが付着しており、剥離強度が強い。剥離強度は50N/15mm以上。
【0057】
<薬局方に定める溶出試験>
各例のプラスチックフィルムについて、「第十五改正日本薬局方」の一般試験法・プラスチック製医薬品容器試験法に定める溶出試験を行なった。溶出試験の実測値が、表1のポリエチレン製又はポリプロピレン製の水性注射剤容器の規格内であるか否かを判定した。
【0058】
【表1】

【0059】
溶出試験を短冊法及びパウチ法にて行った。
≪短冊法用の試験液の調製≫
接液の表面積が1200cmになるように、各例のプラスチックフィルムの厚さが均一な部分を取って20cm×30cmの短冊とし、これを短冊法用の試験片とした。得られた試験片をさらに5cm×0.5cmの大きさに細断して、細断片とした。細断片を蒸留水で洗浄し、乾燥した。乾燥した全ての細断片と蒸留水200mLとを300mLの硬質ガラス製容器に入れ、この硬質ガラス製容器を密栓した後、高圧蒸気滅菌器にて、121℃で1時間加熱した。加熱後、高圧蒸気滅菌器から硬質ガラス製容器を取り出し、室温になるまで放置し、この内容液を短冊法用の試験液とした。短冊法用の試験液を用い、泡立ち、pH、過マンガン酸カリウム還元性物質、紫外線吸収スペクトル、蒸発残留物を測定した。
【0060】
≪パウチ法用の試験液の調製≫
接液の表面積が1200cmになるように、各例のプラスチックフィルムを用い、200mLの蒸留水を収容した四方シールパウチ(30cm×40cm、シール幅:5mm)を作製した。この四方シールパウチを高圧蒸気滅菌器にて、121℃で1時間加熱した。加熱後、高圧蒸気滅菌器から四方シールパウチを取り出し、室温になるまで放置し、内容液をパウチ法用の試験液とした。パウチ法用の試験液を用い、泡立ち、pH、過マンガン酸カリウム還元性物質、紫外線吸収スペクトル、蒸発残留物を測定した。
【0061】
[pH]
短冊法用又はパウチ法用の試験液、及び蒸留水をそれぞれ20mL採取し、これに1g/L塩化カリウム水溶液を1mL加え、pHを測定した。試験液のpHと蒸留水のpHとの差を算出した。
【0062】
[泡立ち]
短冊法用又はパウチ法用の試験液5mLを内径15mm、長さ200mmの共栓試験管に入れ、3分間激しく振り混ぜ、生じた泡が消失するまでの時間を測定した。
【0063】
[過マンガン酸カリウム還元性物質]
短冊法用又はパウチ法用の試験液20mLに、0.002mol/L過マンガン酸カリウム液20mL及び希硫酸1mLを加え、3分間煮沸した後冷却した。冷却後、ヨウ化カリウム0.1gを加えて混合し、10分間放置した。放置後、0.001mol/Lチオ硫酸ナトリウム液で滴定した(指示薬:デンプン試薬)。試験液を蒸留水に換えた以外は同様にして、空試験を行った。試験液と蒸留水(空試験)とに対する0.002mol/L過マンガン酸カリウム液の消費量の差を算出した。
【0064】
[紫外線吸収スペクトル]
短冊法用又はパウチ法用の試験液について、蒸留水を対照とし、紫外可視吸光度測定法により、波長220〜240nmの区間、及び241〜350nmの区間のそれぞれで最大吸光度を測定した。
【0065】
[蒸発残留物]
短冊法用又はパウチ法用の試験液をそれぞれ20mL採取し、これを水浴上で蒸発乾固し、残留物を105℃で1時間乾燥し、その質量を測定した。
【0066】
<ヘイズの評価>
各例のプラスチックフィルムを20cm×15cmに切り出し、これを第二の外層同士が対向するように2枚重ね合わせ、シール幅5mmでヒートシールして三方シール袋を作製した。この三方シール袋に蒸留水500mLを充填し、開口部をヒートシールして密封した。
密封した袋を、121℃、30分の条件下で、高圧蒸気滅菌をした。その後、速やかに開封して蒸留水を排出し、23℃、50%RHの環境下で、24時間の状態調節を行った。状態調節した袋について、JIS−K6714に準拠してヘイズを測定した。
【0067】
<皺の有無>
ヘイズの評価で用いた高圧蒸気滅菌後の三方シール袋の外面上の皺の有無を目視で評価した。
評価は、外面上の皺が全く見られないものを皺が「無」とし、許容範囲ではあるが、若干の皺が見られるものを皺が「有」と判定した。
【0068】
<ブロッキングの有無>
高圧蒸気滅菌前のブロッキング1種類と、滅菌後のブロッキング2種類との全3種の方法で評価した。
【0069】
≪滅菌前ブロッキング試験≫
水冷式の共押出インフレーション製膜機で製造された後、押し潰されたチューブ状のプラスチックフィルムの内面部同士が密着している状態から、剥がした時に白化した場合をブロッキング「有」とし、剥がした時に白化しない場合をブロッキング「無」と判定した。
【0070】
≪滅菌後ブロッキング試験1≫
ヘイズの評価で用いた高圧蒸気滅菌後の三方シール袋を開封した際、袋内面同士を完全に離間させることはできるが、少なくとも一部が密着していると見られた場合をブロッキング「有」とし、密着している箇所が全く見られない場合をブロッキング「無」と判定した。この滅菌後ブロッキング試験1は、袋容量と内容物量との比が、通常の使用条件における量的関係にある通常のブロッキング試験である。
【0071】
<滅菌後ブロッキング試験2>
各例のプラスチックフィルムを10cm×10cmに切り出し、これを第二の外層同士が対向するように2枚重ね合わせ、シール幅5mmでヒートシールして三方シール袋を作製した。この三方シール袋に蒸留水50mLを充填し、開口部をヒートシールして密封した。
密封した袋を、121℃、30分の条件下で、袋内面の一部が密着するようにして高圧蒸気滅菌をした。その後、速やかに開封した際のブロッキングの程度を、前記滅菌後ブロッキング試験1と同様の基準で判定した。滅菌後ブロッキング試験2は、滅菌後ブロッキング試験1に比べ、内容物量が少量であり、袋内面が一部密着するようにして高圧蒸気滅菌をした点で、ブロッキングが発生しやすい過酷な条件である。
【0072】
<落袋試験>
ヘイズの評価用に作製し、高圧蒸気滅菌した袋、10袋を4℃で1日保管した後、2mの高さから、各袋について1回落下させて、破袋した袋の数を数えた。
【0073】
(実施例1〜8、比較例1〜3)
表2〜5の構成に従い、4種4層の水冷式の共押出インフレーション製膜機で、各例のチューブ状のプラスチックフィルムを製膜した。得られたプラスチックフィルムについて、ヒートシール性、薬局方の溶出試験、ヘイズ、皺の有無、ブロッキングの有無及び落袋試験による落袋強度を評価した。各例のプラスチックフィルムは、いずれも第一の外層の厚みが10μm、第二の中間層の厚みが10μm、第一の中間層の厚みが130μm、第二の外層の厚みが10μmとされたものである。
なお、比較例2及び3については、高圧蒸気滅菌時に袋が破れ、内容物の蒸留水が流失したため、薬局方に定める溶出試験、ヘイズの評価、皺の有無、滅菌後のブロッキング試験及び落袋試験を行わなかった。
【0074】
【表2】

【0075】
【表3】

【0076】
【表4】

【0077】
【表5】

【0078】
表2〜5に示す通り、本発明を適用した実施例1〜8は、いずれもヒートシール温度200℃以上でヒートシール性が「A」であり、かつ通常の使用条件(滅菌後ブロッキング試験1)でブロッキングを生じなかった。
さらに、実施例1〜7は、ブロッキングが発生し易い過酷な条件下(滅菌後ブロッキング試験2)でもブロッキングが見られず、耐ブロッキング性に極めて優れていた。なお、実施例1〜7は落袋試験で1〜2袋の破袋がみられるものの通常の使用において問題となるものではない。
第一の中間層にLLD1とHDとの混合物又はLLD2とHDとの混合物を用いた実施例1〜4及び6〜8は、高圧蒸気滅菌後に皺が生じなかったのに対し、第一の中間層をLLD1のみで構成した実施例5は、高圧蒸気滅菌後に皺が生じていた。この結果から、第一の中間層を線状低密度ポリエチレンと高密度ポリエチレンとの混合物で構成すると、皺の発生を防止できることが判った。
第一の外層にPET1を用いた実施例1と、第一の外層にPET2を用いた実施例2とは、日本薬局方の溶出試験において、パウチ法での溶出試験に両実施例とも適合したが、より負荷の高い短冊法での溶出試験に実施例2が適合できなかった。
第二の外層にLLD1を添加した実施例3及び実施例4では、LLD1の添加量が増すほど、低温、短時間のヒートシールでも剥離強度が強くなることが判った。
チーグラー系線状低密度ポリエチレンを第一の中間層に用いた実施例6は、メタロセン系線状低密度ポリエチレンを使用した実施例1と比較して、ヘイズが高く、透明性が低いことが判った。
第二の中間層に、変性ポリエチレンを用いた実施例8は、変性オレフィン系エラストマーを用いた実施例1と比較して、ヘイズが高く、透明性が低いことが判った。また、実施例8は、滅菌後ブロッキング試験1でブロッキングが見られなかったが、滅菌後ブロッキング試験2で袋内面同士の一部密着が観察された。ただし、落袋試験で破袋はなく、落袋強度に優れ、耐衝撃性に優れていた。
【0079】
第一の外層及び第二の外層にHDを用いた比較例1は、ヘイズ及びヒートシール性が著しく劣っていた。
第二外層にHDを含有せず、LLD2を用いた比較例2は熱滅菌前のチューブ状のプラスチックフィルムの状態で、ブロッキングは無かったが、121℃の熱滅菌時に破袋してしまい、熱滅菌に耐えることができなかった。
第二外層にHDを含有せず、LLD1を用いた比較例3は熱滅菌前のチューブ状のプラスチックフィルムの状態で、ブロッキングが有り、121℃の熱滅菌時に破袋してしまい、熱滅菌に耐えることができなかった。
以上の結果から、本発明を適用することで、品質劣化を抑制し、かつ耐ブロッキング性を向上できることが判った。
【符号の説明】
【0080】
1 プラスチックフィルム
10 第一の外層
12 第二の中間層
14 第一の中間層
16 第二の外層
100 輸液バッグ
110 バッグ本体
111 注出口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルエラストマーからなる第一の外層と、
高密度ポリエチレンを含有する第二の外層と、
前記第一の外層と前記第二の外層との間に設けられ、線状低密度ポリエチレンを主成分とする第一の中間層と、
前記第一の外層と前記第一の中間層との間に設けられ、α−オレフィンと、不飽和カルボン酸又は不飽和カルボン酸の無水物モノマーとの重合体を主成分とする第二の中間層とを備え、
共押出法により製膜されたことを特徴とするプラスチックフィルム。
【請求項2】
前記第一の外層のポリエステルエラストマーは、脂環式ポリエステルであることを特徴とする請求項1に記載のプラスチックフィルム。
【請求項3】
前記第一の中間層は、高密度ポリエチレンを40質量%以下含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のプラスチックフィルム。
【請求項4】
前記第二の外層は、高密度ポリエチレンと線状低密度ポリエチレンとの混合物であり、線状低密度ポリエチレンの含有量が50質量%以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラスチックフィルム。
【請求項5】
前記第二の外層は、高密度ポリエチレン20〜40質量%と、線状低密度ポリエチレン10〜30質量%と、低密度ポリエチレン70〜30質量%との混合物であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラスチックフィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のプラスチックフィルムからなるバッグ本体に、注出口を設けたことを特徴とする輸液バッグ。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−18211(P2013−18211A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−154050(P2011−154050)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000143880)株式会社細川洋行 (130)
【Fターム(参考)】