説明

プラスチックラベル用印刷インキおよびプラスチックラベル

【課題】酸化チタンを高濃度に含有し白濃度が高く、印刷適性、保存安定性に優れ、さらに、基材(特にポリエステル系フィルム)との密着性にも優れたプラスチックラベル用印刷インキを提供する。
【解決手段】本発明のプラスチックラベル用印刷インキは、ポリエステルポリオールに由来する構造単位を有するウレタンアクリル系樹脂(A)、アクリル系樹脂(B)及び酸化チタン(C)を含有する印刷インキであって、ウレタンアクリル系樹脂(A)中の、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来する構造単位の含有量が1〜40重量%、アクリル系樹脂(B)の酸価が1〜40mgKOH/g、印刷インキの不揮発分中における[(アクリル系樹脂(B)の含有量):(ウレタンアクリル系樹脂(A)の含有量)](重量比)が50:50〜99:1、印刷インキの不揮発分中の酸化チタン(C)の含有量が70〜81重量%であることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックラベル用の印刷インキに関する。より詳しくは、高濃度に酸化チタンを含有する、印刷適性、保存安定性と基材に対する密着性(接着性)に優れたプラスチックラベル用印刷インキに関する。また、上記印刷インキより形成された印刷層を有するプラスチックラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、お茶や清涼飲料水等の飲料用容器として、PETボトルなどのプラスチック製ボトルや、ボトル缶等の金属製ボトル等が広く用いられている。これらの容器には、表示や装飾性、機能性の付与のためプラスチックラベルを装着する場合が多く、例えば、装飾性、加工性(容器への追従性)、広い表示面積等のメリットから、シュリンクラベル等が広く使用されている。このようなプラスチックラベルとしては、プラスチックフィルムの基材上に印刷インキから形成された印刷層が設けられたものが広く用いられている。
【0003】
上記基材であるプラスチックフィルムとしては、要求特性や用途に応じて、ポリエステル系樹脂(ポリエチレンテレフタレート(PET)など)からなるポリエステル系フィルム、ポリオレフィン系樹脂からなるポリオレフィン系フィルムやポリスチレン系樹脂からなるポリスチレン系フィルムなどが用いられている。そのため、印刷インキとしては、これらのプラスチックフィルムのいずれにも印刷可能な、汎用性の高い印刷インキ(兼用インキとも称する)が望ましい。
【0004】
しかしながら、上記基材の中でも、特にポリエステル系フィルムは印刷インキの密着性に劣り、特に白色顔料である酸化チタンを含有する印刷インキの場合には、基材との密着性が低下する問題があった。また、それに伴い、プラスチックラベルの製造工程や容器への装着工程において、ラベル表面の印刷層が削れて、白粉がロール等に付着する、いわゆる「粉吹き」が発生しやすくなるなどの問題があった。
【0005】
上記の問題を解決すべく、基材との密着性を改良した印刷インキとしては、例えば、特定のアクリル樹脂と特定のポリウレタン・ウレア樹脂を用いた印刷インキが知られている(特許文献1参照)。また、アクリル樹脂とニトロセルロースを用いた印刷インキが知られている(特許文献2参照)。しかし、上記印刷インキは、高濃度に酸化チタンを含有した場合には、印刷適性が低下する問題があった。さらに、アクリル系樹脂とエステル化セルロース系樹脂を用いた印刷インキが知られている(特許文献3参照)。しかし、当該印刷インキも、酸化チタンの濃度が非常に高い場合には、基材との密着性が低下する問題があった。
【0006】
上記のように、酸化チタンを高濃度に含有する、高い白濃度を有する印刷インキにおいては、印刷適性に優れ、かつ、基材との密着性(特にポリエステル系フィルムに対する密着性)にも優れた、汎用性の高い優れた印刷インキは得られていないのが現状である。
【0007】
さらに、酸化チタンを高濃度に含有する印刷インキは、顔料である酸化チタンが凝集しやすく保存安定性(顔料の凝集抑止性)に劣るという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−219670号公報
【特許文献2】特開2004−175858号公報
【特許文献3】特開2008−163215号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
即ち、本発明の目的は、酸化チタンを高濃度に含有し白濃度が高く、印刷適性、保存安定性(顔料の凝集抑止性)に優れ、さらに、プラスチックフィルム基材との密着性(特にポリエステル系フィルムに対する密着性)にも優れたプラスチックラベル用印刷インキを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、特定構造のウレタンアクリル系樹脂及び特定の酸価のアクリル系樹脂を特定の割合で配合することにより、高濃度に酸化チタンを含有する場合であっても、印刷適性、保存安定性に優れ、なおかつ、プラスチックフィルム基材、特にポリエステル系フィルム基材との密着性に優れた印刷インキを得ることができることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、ポリエステルポリオールに由来する構造単位を有するウレタンアクリル系樹脂(A)、アクリル系樹脂(B)及び酸化チタン(C)を含有する印刷インキであって、ウレタンアクリル系樹脂(A)中の、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来する構造単位の含有量が1〜40重量%であり、アクリル系樹脂(B)の酸価が1〜40mgKOH/gであり、印刷インキの不揮発分中の、アクリル系樹脂(B)の含有量とウレタンアクリル系樹脂(A)の含有量の比[(アクリル系樹脂(B)の含有量):(ウレタンアクリル系樹脂(A)の含有量)](重量比)が50:50〜99:1であり、印刷インキの不揮発分中の、酸化チタン(C)の含有量が70〜81重量%であることを特徴とするプラスチックラベル用印刷インキを提供する。
【0012】
また、本発明は、プラスチックフィルムの少なくとも片面に、前記のプラスチックラベル用印刷インキから形成された印刷層を有するプラスチックラベルを提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明のプラスチックラベル用印刷インキは、白顔料である酸化チタンを高濃度に含有するため、白濃度が高い。さらに、特定構造のウレタンアクリル系樹脂と特定の酸価のアクリル系樹脂を特定の配合割合で含有しているため、高濃度の酸化チタンを含有しているにもかかわらず、印刷適性、保存安定性(酸化チタンの凝集抑止性)およびプラスチックフィルム(特にポリエステル系フィルム)に対する密着性に優れる。このため、様々な種類のプラスチックフィルム基材に対して用いることができる、汎用性の高い白色印刷インキとして有用である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[プラスチックラベル用印刷インキ]
本発明のプラスチックラベル用印刷インキ(「本発明の印刷インキ」と称する場合がある)は、ポリエステルポリオールに由来する構造単位(構成単位)を有するウレタンアクリル系樹脂(A)、アクリル系樹脂(B)及び酸化チタン(C)を、必須の成分として、含有する。また、本発明の印刷インキは、溶剤を含有することが好ましく、さらに、その他の添加剤を含有してもよい。本明細書では、「ポリエステルポリオールに由来する構造単位を有するウレタンアクリル系樹脂(A)」を「ウレタンアクリル系樹脂(A)」又は「成分(A)」と称する場合があり、「アクリル系樹脂(B)」を「成分(B)」、「酸化チタン(C)」を「成分(C)」と称する場合がある。
【0015】
(ウレタンアクリル系樹脂(A))
上記ウレタンアクリル系樹脂(A)は、特に限定されないが、ウレタン成分とアクリル成分を必須の構成成分として構成された重合体(共重合体)である。言い換えると、ウレタンアクリル系樹脂(A)は、分子内に、ウレタン結合を有するウレタン成分部分と(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来する構造単位を含むアクリル成分部分とを含む重合体である。上記ウレタンアクリル系樹脂(A)は、本発明の印刷インキのプラスチックフィルム(基材)との密着性を向上させる役割を担う樹脂成分である。なお、「(メタ)アクリロイル基」とは、「アクリロイル基[CH2=CHCO−]」及び/又は「メタクリロイル基[CH2=C(CH3)CO−]」を表す。(メタ)アクリロイル基を有するモノマーは、分子内に[CH2=CHCO−]及び/又は[CH2=C(CH3)CO−]の構造を有する。また、「(メタ)アクリル」とは「アクリル」及び/又は「メタクリル」(アクリル及びメタクリルのうちのいずれか一方又は両方)を表す。
【0016】
上記ウレタンアクリル系樹脂(A)におけるアクリル成分は、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー(単量体)を必須のモノマー成分として構成される。即ち、上記アクリル成分及びウレタンアクリル系樹脂(A)は、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来する構造単位を少なくとも有する。上記アクリル成分を構成するモノマー成分には(メタ)アクリロイル基を有するモノマー以外のモノマー成分が含まれていてもよいが、アクリル成分を構成するモノマー成分は(メタ)アクリロイル基を有するモノマーのみからなることが好ましい。
【0017】
上記(メタ)アクリロイル基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどの直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル[好ましくは(メタ)アクリル酸C1-12アルキルエステル等];(メタ)アクリル酸;カルボキシエチルアクリレートなどのカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル;2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル[好ましくは(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-8アルキルエステル等];(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリル酸アミド誘導体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル類などが挙げられる。上記の中でも、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーとしては、アクリル系樹脂(B)との相溶性の観点から、直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル[中でも、(メタ)アクリル酸C1-12アルキルエステル]、(メタ)アクリル酸が好ましく、より好ましくは、メタクリル酸メチル(MMA)、メタクリル酸ブチル(BMA)である。
【0018】
上記(メタ)アクリロイル基を有するモノマー以外のアクリル成分を構成するモノマー成分としては、特に限定されないが、例えば、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有重合性不飽和化合物又はその無水物;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどのスチレン系化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル;メチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリルなどのシアノ基含有ビニル化合物;エチレン、プロピレンなどが挙げられる。
【0019】
上記アクリル成分を構成するモノマー成分全量中の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーの含有量、即ち、ウレタンアクリル系樹脂(A)におけるアクリル成分(全アクリル成分)(100重量%)中の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来する構造単位の含有量は、特に限定されないが、アクリル系樹脂(B)との相溶性の観点から、80重量%以上(80〜100重量%)が好ましく、より好ましくは90重量%以上(90〜100重量%)である。
【0020】
上記ウレタンアクリル系樹脂(A)におけるウレタン成分は、特に限定されないが、例えば、ポリイソシアネート化合物とポリオール化合物を原料成分として構成される。即ち、上記ウレタン成分は、ポリイソシアネート化合物に由来する構造単位とポリオール化合物に由来する構造単位を有する。中でも、上記ウレタン成分は、ポリエステル系フィルム(基材)との密着性向上の観点から、ポリオール化合物としてポリエステルポリオールを必須の原料成分として構成される。即ち、上記ウレタン成分及びウレタンアクリル系樹脂(A)は、ポリエステルポリオールに由来する構造単位を少なくとも有する。
【0021】
上記ポリイソシアネート化合物としては、例えば、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネート等の公知のジイソシアネート類が挙げられる。上記ジイソシアネート類としては、例えば、トリレンジイソシアネート、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、1,3−フェニレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどが挙げられる。上記ジイソシアネート類は、単独で又は二以上を組み合わせて使用できる。また、必要に応じて3官能以上のポリイソシアネート類やポリイソシアネートアダクト体を上記ジイソシアネート類と組み合わせて用いることもできる。中でも、ポリエステル系フィルム(基材)との密着性向上の観点から、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、トリレンジイソシアネート(TDI)が好ましい。
【0022】
上記ポリエステルポリオールは、分子内(1分子内)に2個以上の水酸基を有するポリエステル化合物であり、中でも、分子内に2個の水酸基を有するポリエステルジオールが好ましい。上記ポリエステルポリオールは、特に限定されないが、ジカルボン酸成分とジオール成分を必須の構成成分として構成された重合体であることが好ましい。即ち、上記ポリエステルポリオールは、ジカルボン酸に由来する構造単位とジオールに由来する構造単位を少なくとも有することが好ましい。
【0023】
上記ジカルボン酸としては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、2,5−ジメチルテレフタル酸、5−t−ブチルイソフタル酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、トランス−3,3’−スチルベンジカルボン酸、トランス−4,4’−スチルベンジカルボン酸、4,4’−ジベンジルジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、2,7−ナフタレンジカルボン酸、2,2,6,6−テトラメチルビフェニル−4,4’−ジカルボン酸、1,1,3−トリメチル−3−フェニルインデン−4,5−ジカルボン酸、1,2−ジフェノキシエタン−4,4’−ジカルボン酸、ジフェニルエーテルジカルボン酸、2,5−アントラセンジカルボン酸、2,5−ピリジンジカルボン酸、及びこれらの置換体等の芳香族ジカルボン酸;シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、ノナデカン二酸、イコサン二酸、ドコサン二酸、1,12−ドデカンジオン酸、及びこれらの置換体等の脂肪族ジカルボン酸;1,4−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、1,5−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、2,6−デカヒドロナフタレンジカルボン酸、シス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、トランス−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,3−シクロヘキサンジカルボン酸、及びこれらの置換体等の脂環式ジカルボン酸などが挙げられる。中でも、芳香族ジカルボン酸が好ましく、より好ましくはテレフタル酸(TPA)、イソフタル酸(IPA)である。上記ジカルボン酸は、単独で又は二以上を組み合わせて使用できる。
【0024】
上記ジオールとしては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール(ネオペンチルグリコール)、1,6−ヘキサンジオール、2−エチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2,2−ジエチル−1,3−プロパンジオール、1,8−オクタンジオール、2−エチル−2−ブチル−1,3−プロパンジオール、2−エチル−2,4−ジメチル−1,3−ヘキサンジオール、1,10−デカンジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の脂肪族ジオール;1,2−シクロヘキサンジメタノール、1,3−シクロヘキサンジメタノール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4−テトラメチル−1,3−シクロブタンジオール等の脂環式ジオール;2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパン、ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)スルホン等のビスフェノール系化合物のエチレンオキシド付加物、キシレングリコール等の芳香族ジオールなどが挙げられる。中でも、脂肪族ジオールが好ましく、より好ましくはネオペンチルグリコール(NPG)、エチレングリコール(EG)である。上記ジオールは単独で又は二以上を組み合わせて使用できる。
【0025】
上記ポリエステルポリオールは、上記以外にも、p−オキシ安息香酸、p−オキシエトキシ安息香酸等のオキシカルボン酸;安息香酸、ベンゾイル安息香酸等のモノカルボン酸;トリメリット酸等の多価カルボン酸;ポリアルキレングリコールモノメチルエーテル等の1価アルコール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン等の多価アルコールなどに由来する構造単位を含んでいてもよい。
【0026】
上記ポリエステルポリオール(好ましくはポリエステルジオール)は、特に芳香族ポリエステル系フィルム(PETフィルム等)との密着性向上の観点から、ジカルボン酸成分として芳香族ジカルボン酸(中でも、テレフタル酸、イソフタル酸)を含むことが好ましい。さらに、ジオール成分としては、水酸基が結合している炭素原子の間の鎖長の比較的短いジオールである、ネオペンチルグリコール(NPG)やエチレングリコール(EG)を含むことが好ましい。NPGやEGを用いることにより、特に、芳香族ジカルボン酸と共重合した際に、芳香環の密度を比較的高くできるためと推定されるが、芳香族ポリエステル系フィルムとの密着性がさらに向上する。従って、上記ポリエステルポリオールは、芳香族ジカルボン酸(特に、テレフタル酸及び/又はイソフタル酸)に由来する構造単位、並びに、ネオペンチルグリコール(NPG)及び/又はエチレングリコール(EG)に由来する構造単位を有するポリエステルポリオール(特に、ポリエステルジオール)が特に好ましい。
【0027】
上記ウレタン成分におけるポリオール化合物は、上記ポリエステルポリオール以外のポリオール化合物を含んでいてもよい。上記のポリエステルポリオール以外のポリオール化合物としては、特に限定されないが、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、ブタンジオール(1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール等)、1,6−ヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノールなどの低分子量グリコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等のポリエーテルジオール等の公知のジオール類や、3官能以上のポリオール化合物(ポリエーテルポリオールなど)などが挙げられる。
【0028】
上記ウレタン成分におけるポリオール化合物中のポリエステルポリオールの含有量、即ち、ウレタンアクリル系樹脂(A)中のポリオール(全ポリオール)に由来する構造単位(100重量%)中のポリエステルポリオールに由来する構造単位の含有量は、特に限定されないが、密着性向上(特にポリエステル系フィルムとの密着性向上)の観点から、80重量%以上(80〜100重量%)が好ましく、より好ましくは90重量%以上(90〜100重量%)である。
【0029】
上記ウレタンアクリル系樹脂(A)におけるウレタン成分の含有量に対するアクリル成分の含有量の割合[(アクリル成分の含有量)/(ウレタン成分の含有量)](重量比)は、特に限定されないが、0.01〜0.67が好ましく、より好ましくは0.05〜0.45である。[(アクリル成分の含有量)/(ウレタン成分の含有量)]が0.01未満でアクリル成分が少ない場合には、アクリル系樹脂(B)との親和性(相溶性)が低下し、印刷インキ中で分散不良が生じて、印刷適性の低下、顔料の凝集、プラスチックフィルム(基材)との密着性の低下などの問題が生じる場合があり、0.67を超えウレタン成分が少ない場合には、基材との密着性が低下する場合がある。
【0030】
上記ウレタンアクリル系樹脂(A)(100重量%)中の、上記(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来する構造単位の含有量は、1〜40重量%であり、好ましくは5〜30重量%、さらに好ましくは10〜25重量%である。上記含有量が1重量%未満では、ウレタンアクリル系樹脂(A)中のアクリル成分が少なく、アクリル樹脂(B)との親和性(相溶性)が低下し、印刷インキ中で分散不良が生じて、印刷適性の低下、顔料の凝集、プラスチックフィルム(基材)との密着性の低下などの問題が生じる。一方、上記含有量が40重量%を超えると、ウレタンアクリル系樹脂(A)中のウレタン成分が少なく、基材であるプラスチックフィルム(特にポリエステル系フィルム)との密着性が低下する。
【0031】
上記ウレタンアクリル系樹脂(A)を構成する構造単位や該構造単位の含有量の分析・測定は、特に限定されないが、例えば、核磁気共鳴(NMR)、ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)などにより行うことができる。
【0032】
上記ウレタンアクリル系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、10000〜50000が好ましく、より好ましくは15000〜45000である。上記重量平均分子量(Mw)が、10000未満では密着性が低下する場合があり、50000を超えると印刷適性が悪化する場合がある。なお、本明細書において、Mwは、例えば、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0033】
上記ウレタンアクリル系樹脂(A)のガラス転移温度(Tg)は、本発明の印刷インキから形成された印刷層の耐スクラッチ性、耐熱性、耐インキ割れ性向上の観点から、−30〜100℃が好ましく、より好ましくは0〜70℃である。なお、本明細書において、Tgは、例えば、DSC(示差走査熱量測定)により測定することができる。DSC測定は、特に限定されないが、例えば、セイコーインスツルメンツ(株)製、示差走査熱量計「DSC6200」を用いて、昇温速度10℃/分の条件で行うことができる。
【0034】
上記ウレタンアクリル系樹脂(A)の酸価は、保存安定性(顔料の凝集抑止性)の観点から、0〜5mgKOH/gが好ましく、より好ましくは0.3〜3mgKOH/gである。
【0035】
上記ウレタンアクリル系樹脂(A)は、例えば、日本化工塗料(株)などから入手可能である。
【0036】
(アクリル系樹脂(B))
上記アクリル系樹脂(B)は、特に限定されず、公知乃至慣用の印刷インキ用のアクリル系樹脂の中から、後述の酸価が1〜40mgKOH/gとなるように、選択して用いることができる。アクリル系樹脂(B)としては、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来する構造単位を少なくとも有する重合体(ポリマー)が挙げられる。上記アクリル系樹脂(B)を構成するモノマー成分には(メタ)アクリロイル基を有するモノマー以外のモノマー成分が含まれていてもよいが、アクリル系樹脂(B)を構成するモノマー成分は(メタ)アクリロイル基を有するモノマーのみからなることが好ましい。なお、アクリル系樹脂(B)には、ウレタンアクリル系樹脂は含まないものとする。
【0037】
上記(メタ)アクリロイル基を有するモノマーとしては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸s−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ドデシルなどの直鎖又は分岐鎖状のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステル[好ましくは(メタ)アクリル酸C1-12アルキルエステル等];(メタ)アクリル酸;カルボキシエチルアクリレートなどのカルボキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル;2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレートなどのヒドロキシル基含有(メタ)アクリル酸エステル[好ましくは(メタ)アクリル酸ヒドロキシC1-8アルキルエステル等];(メタ)アクリル酸シクロヘキシルなどの(メタ)アクリル酸シクロアルキルエステル;N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミドなどの(メタ)アクリル酸アミド誘導体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリレートなどの(メタ)アクリル酸ジアルキルアミノアルキルエステル類などが挙げられる。
【0038】
上記(メタ)アクリロイル基を有するモノマー以外のアクリル系樹脂(B)を構成するモノマー成分としては、特に限定されないが、例えば、クロトン酸、イタコン酸、フマル酸、マレイン酸などのカルボキシル基含有重合性不飽和化合物又はその無水物;スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンなどのスチレン系化合物;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;塩化ビニルなどのハロゲン化ビニル;メチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;(メタ)アクリロニトリルなどのシアノ基含有ビニル化合物;エチレン、プロピレンなどが挙げられる。
【0039】
上記アクリル系樹脂(B)を構成するモノマー成分全量中の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーの含有量、即ち、アクリル系樹脂(B)(100重量%)中の(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来する構造単位の含有量は、特に限定されないが、プラスチックフィルム(特にポリエステル系フィルム)に対する密着性の観点から、80重量%以上(80〜100重量%)が好ましく、より好ましくは90重量%以上(90〜100重量%)である。
【0040】
上記アクリル系樹脂(B)を構成する構造単位や該構造単位の含有量の分析・測定は、特に限定されないが、例えば、核磁気共鳴(NMR)、ガスクロマトグラフ質量分析計(GCMS)などにより行うことができる。
【0041】
上記アクリル系樹脂(B)の酸価は、酸化チタンとの親和性を高め、印刷インキ中の酸化チタンの凝集を抑止し、保存安定性を向上する観点から、1〜40mgKOH/gであり、好ましくは2〜20mgKOH/gである。上記酸価が1mgKOH/g未満又は40mgKOH/gを超える場合には、印刷インキ中の酸化チタンが凝集しやすくなり、印刷インキの保存安定性が低下する。なお、本明細書において、酸価は、JIS K 5601−2−1(滴定法)に準拠して求められる。また、本発明の印刷インキ中に2種以上のアクリル系樹脂(B)が含まれる場合には、上記「アクリル系樹脂(B)の酸価」は、印刷インキ中の全てのアクリル系樹脂(B)(混合物)の酸価である。
【0042】
上記アクリル系樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)は、3万〜7万が好ましく、より好ましくは3万〜5万である。上記重量平均分子量(Mw)が、3万未満では密着性が低下する場合があり、7万を超えると印刷適性が悪化する場合がある。
【0043】
上記アクリル系樹脂(B)のガラス転移温度(Tg)は、本発明の印刷インキから形成された印刷層の耐スクラッチ性、耐熱性、耐インキ割れ性向上の観点から、40〜75℃が好ましく、より好ましくは45〜55℃である。
【0044】
上記アクリル系樹脂(B)は、市販品を用いることも可能である。例えば、三菱レイヨン(株)製「ダイヤナール BR−113(酸価3.5mgKOH/g)」、「ダイヤナール BR−116(酸価7.0mgKOH/g)」などが市場で入手可能である。
【0045】
(酸化チタン(C))
上記酸化チタン(C)としては、印刷インキに用いられる公知乃至慣用の酸化チタン(二酸化チタン)を用いることができる。上記酸化チタン(C)としては、例えば、ルチル型(正方晶高温型)、アナターゼ型(正方晶低温型)、ブルッカイト型(斜方晶)の酸化チタンが挙げられる。
【0046】
上記酸化チタン(C)の平均粒径(凝集体を形成している場合には、凝集体の粒径、いわゆる2次粒径)は、特に限定されないが、例えば、0.1〜1μmが好ましく、より好ましくは0.1〜0.5μm、さらに好ましくは0.2〜0.5μmである。上記平均粒径が0.1μm未満では、分散状態が悪かったり、白濃度が不足する場合や、グラビア印刷の際にいわゆる「版かぶり」(版の画線部以外の部分のインキ掻き取り不良による印刷不良)を生じる場合があり、1μmを超えると加飾性が不足する場合がある。
【0047】
上記酸化チタン(C)は、市販品を用いることも可能である。例えば、テイカ(株)製、酸化チタン「JRシリーズ(JR−809、JR−708、JR−707等)」などが入手可能である。
【0048】
(印刷インキ)
本発明の印刷インキは、上記のウレタンアクリル系樹脂(A)、アクリル系樹脂(B)及び酸化チタン(C)を必須の成分として含有する。さらに、溶剤を含有することが好ましく、その他の添加剤(中でも、ワックス、樹脂ビーズが好ましい)を含有してもよい。
【0049】
本発明の印刷インキの不揮発分中の、アクリル系樹脂(B)の含有量とウレタンアクリル系樹脂(A)の含有量の比[(アクリル系樹脂(B)の含有量):(ウレタンアクリル系樹脂(A)の含有量)](重量比)は、印刷適性とプラスチックフィルム(基材)に対する密着性の両立の観点から、50:50〜99:1であり、好ましくは80:20〜95:5である。即ち、本発明の印刷インキの不揮発分中の、ウレタンアクリル系樹脂(A)の含有量とアクリル系樹脂(B)の含有量の合計量(合計含有量)に対する、アクリル系樹脂(B)の含有量の割合[(アクリル系樹脂(B)の含有量)/{(ウレタンアクリル系樹脂(A)の含有量)+(アクリル系樹脂(B)の含有量)}×100](重量割合)は、50〜99重量%であり、好ましくは80〜95重量%である。
【0050】
上記の比[(成分(B)の含有量):(成分(A)の含有量)]が99:1よりも成分(A)の含有量が少ない場合(即ち、上記割合[(成分(B)の含有量)/{(成分(A)の含有量)+(成分(B)の含有量)}×100]が99重量%を超える場合)には、プラスチックフィルム(特にポリエステル系フィルム)との密着性が低下する。一方、上記の比[(成分(B)の含有量):(成分(A)の含有量)]が50:50よりも成分(A)の含有量が多い場合(即ち、上記割合[(成分(B)の含有量)/{(成分(A)の含有量)+(成分(B)の含有量)}×100]が50重量%未満の場合)には、印刷インキの印刷適性が低下し、印刷時に「版かぶり」(版の画線部以外の部分のインキ掻き取り不良による印刷不良)、「ドクターすじ」(インキがドクターによってかき切れずに逃げて尾を引いたしま模様を形成し、本来フィルムに転移してはならない余白部分に、線状の汚れが発生するもの)や、印刷層の擦れ(カスレ)、斑(ムラ)などが生じる。
【0051】
本発明の印刷インキの不揮発分(100重量%)中の、ウレタンアクリル系樹脂(A)の含有量とアクリル系樹脂(B)の含有量の合計量(合計含有量)は、特に限定されないが、印刷インキの密着性と白濃度向上の観点から、14〜30重量%が好ましく、さらに好ましくは15〜26重量%である。
【0052】
本発明の印刷インキの不揮発分(100重量%)中の、酸化チタン(C)の含有量は、印刷インキの密着性と白濃度向上の観点から、70〜81重量%であり、好ましくは74〜81重量%、より好ましくは76〜81重量%である。上記含有量が70重量%未満では、印刷インキの白濃度が不十分となる。一方、81重量%を超えると密着性が低下する。
【0053】
上記溶剤(溶媒)は、グラビア印刷やフレキソ印刷等に使用される印刷インキに通常用いられる有機溶剤等を用いることができる。上記溶剤としては、例えば、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチルなどの酢酸エステル類;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール(IPA)、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトンなどのケトン類;トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサンなどの脂環式炭化水素類;エチレングリコール、プロピレングリコール等のグリコール類;エチレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル等のグリコールエーテル類;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルエステル類などが挙げられる。これらの中でも、溶解性、安全性の観点から、酢酸エステル類、ケトン類、アルコール類が好ましい。上記溶剤は単独で又は2種以上を混合して使用できる。上記溶剤は、印刷インキを基材に塗布した後、乾燥により除去することができる。なお、上記溶剤(溶媒)には、「分散媒」の意味も含む。
【0054】
本発明の印刷インキ(100重量%)中、上記溶剤の含有量は、特に限定されないが、印刷インキの印刷適性向上、粘度、白濃度の観点から、25〜45重量%が好ましく、さらに好ましくは26〜35重量%である。本発明の印刷インキの不揮発分濃度(印刷インキ中の不揮発分の濃度)は、特に限定されないが、印刷インキの印刷適性向上、粘度、白濃度の観点から、55〜75重量%が好ましく、さらに好ましくは65〜74重量%である。なお、本明細書において、「不揮発分」とは、不揮発成分(不揮発物)を意味する。具体的には、不揮発分は、例えば、試料(例えば、印刷インキ)1g(1g±0.1g)を150℃、2時間の条件下で加熱したときの残さ(不揮発残さ)である。なお、上記の加熱条件(150℃×2時間)及び試料量(1g)以外は、JIS K 5601−1−2に準拠した方法(装置、器具、秤量方法、乾燥方法等)で、上記不揮発残さ(加熱残さ)を得ることが好ましい。
【0055】
本発明の印刷インキは、上記の必須成分[成分(A)、成分(B)及び成分(C)]や溶剤以外にも、必要に応じて、その他の添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲内で含有していてもよい。上記その他の添加剤としては、特に限定されないが、成分(A)及び成分(B)以外の樹脂(「その他の樹脂」と称する場合がある)、成分(C)以外の顔料(「その他の顔料」と称する場合がある)、可塑剤、滑剤(ワックス、樹脂ビーズなど)、沈降防止剤、分散剤、安定剤、硬化剤、消泡剤、充填剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、色別れ防止剤、香料、消臭剤等が挙げられる。上記の中でも、ワックス、樹脂ビーズが好ましい。
【0056】
上記滑剤としては、例えば、ポリエチレンワックス、酸化ポリエチレン系ワックス等のポリオレフィン系ワックス、脂肪酸アマイド、脂肪酸エステル、パラフィンワックス、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ワックス、カルナウバワックス等の各種ワックス(ワックス類)や樹脂ビーズが挙げられる。本発明の印刷インキ(100重量%)中の、上記の滑剤(特にワックス)の含有量は、特に限定されないが、0.1〜10重量%が好ましく、さらに好ましくは2〜7重量%である。
【0057】
本発明の印刷インキは、例えば、上記のウレタンアクリル系樹脂(A)、アクリル系樹脂(B)及び酸化チタン(C)と、溶剤と、必要に応じて、その他の添加剤とを混合することにより製造される。なお、成分(A)や成分(B)は、それぞれ予め溶剤に溶解させてから他の成分と混合してもよい。混合は、公知慣用の混合方法により行うことができ、特に限定されないが、例えば、ペイントシェイカー、バタフライミキサー、プラネタリーミキサー、ポニーミキサー、ディゾルバー、タンクミキサー、ホモミキサー、ホモディスパーなどのミキサーや、ロールミル、サンドミル、ボールミル、ビーズミル、ラインミルなどのミル、ニーダーなどが用いられる。混合の際の混合時間(滞留時間)は、特に限定されないが、10〜120分が好ましい。
【0058】
本発明の印刷インキの粘度(23±2℃)は、特に限定されないが、例えば、グラビア印刷により塗工される場合には、10〜1000mPa・sが好ましく、より好ましくは20〜500mPa・sである。粘度が1000mPa・sを超える場合には、例えばグラビア印刷性が低下し、「かすれ」や「版かぶり」などが生じて、希望のデザイン通りに印刷できなくなる場合がある。また、粘度が10mPa・s未満の場合には、顔料や添加剤が沈降しやすくなる等、貯蔵安定性が低下したり、「およぎ」が発生して印刷ムラが生じ、希望のデザイン通りの印刷が出来なくなる場合がある。印刷インキの粘度は、不揮発分濃度、成分(A)や成分(B)の重量平均分子量、増粘剤、減粘剤等によって制御することが可能である。なお、本明細書中、「粘度」とは、特に限定しない限り、E型粘度計(円錐平板形回転粘度計)を用い、23±2℃、円筒の回転速度50rpmの条件下、JIS Z 8803に準じて測定した値を意味している。
【0059】
本発明の印刷インキは、プラスチックラベル用途(プラスチックラベル製造用途)に用いられるプラスチックラベル用印刷インキである。具体的には、プラスチックラベルにおける印刷層を形成するための印刷インキとして用いられる。本発明の印刷インキは、プラスチックラベルの中でも、ポリエステル系フィルムを基材とするプラスチックラベルに対して、特に好ましく用いられる。さらに、シュリンクラベル用途が好ましい。
【0060】
本発明の印刷インキは、主たる樹脂成分であるアクリル系樹脂(B)の酸価を、酸化チタン(C)との親和性が良好な特定の範囲に制御している。このため、高濃度に酸化チタン(C)を含有するにもかかわらず、酸化チタン(C)の凝集抑止性が高く、保存安定性に優れる。
また、ウレタンアクリル系樹脂(A)を、特定割合で配合することにより、高濃度に酸化チタン(C)を含有するにもかかわらず、優れた印刷適性とプラスチックフィルム(特にポリエステル系フィルム)に対する優れた密着性を両立している。ウレタンアクリル系樹脂(A)は特定量のアクリル成分を含み、主たる樹脂成分であるアクリル系樹脂(B)との親和性(相溶性)が良好であるため、本発明の印刷インキは良好な印刷適性を保持できる。さらに、ウレタンアクリル系樹脂(A)のウレタン成分により、本発明の印刷インキとプラスチックフィルムとの密着性が向上する。特に、ウレタンアクリル系樹脂(A)は、ウレタン成分がポリエステルポリオールからなるポリエステルポリオール系のウレタン成分であるため、本発明の印刷インキは、特に通常密着性が低下しやすいポリエステル系フィルムに対しても、優れた密着性を発揮しうる。
上記のように、本発明の印刷インキは、高濃度に酸化チタン(C)を含有するにもかかわらず、良好な印刷適性、保存安定性を有し、なおかつ、優れたプラスチックフィルム基材との密着性を発揮しうる。このため、高い白濃度の印刷層を形成しうる印刷インキとして好ましく用いることができる。
【0061】
さらに、ウレタンアクリル系樹脂(A)のウレタン成分におけるポリエステルポリオールを、芳香族ジカルボン酸からなる芳香族ポリエステルポリオールとすることにより、特に芳香族ポリエステル系フィルム(例えば、PETフィルム)に対する密着性がより一層向上するため好ましい。
【0062】
[プラスチックラベル]
プラスチックフィルム(基材)の少なくとも片面に、本発明のプラスチックラベル用印刷インキから形成された印刷層を設けることにより、プラスチックラベル(プラスチックフィルムの少なくとも片面に、本発明のプラスチックラベル用印刷インキから形成された印刷層を有するプラスチックラベル)が得られる。本明細書では、上記の「プラスチックフィルムの少なくとも片面に、本発明のプラスチックラベル用印刷インキから形成された印刷層を有するプラスチックラベル」を、「本発明のプラスチックラベル」と称する場合がある。また、「本発明のプラスチックラベル用印刷インキから形成された印刷層」を「本発明の印刷層」と称する場合がある。
【0063】
(プラスチックフィルム(基材))
上記の本発明のプラスチックラベルにおける基材であるプラスチックフィルムは、印刷層の担体(支持体)となり、ラベルの強度、剛性や収縮特性に主たる影響を及ぼす。上記プラスチックフィルムの種類は、プラスチックラベルの種類等に応じて、適宜選択することが可能であり、特に限定されないが、例えば、プラスチックラベルがシュリンクラベル(熱収縮性ラベル)の場合には、プラスチックフィルムはシュリンクフィルム(熱収縮性フィルム)である。
【0064】
上記プラスチックフィルムを形成する樹脂の種類は、要求物性、用途、コストなどに応じて、適宜選択することが可能であり、特に限定されないが、例えば、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド樹脂、アラミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、アクリル系樹脂等の樹脂が挙げられる。これらの樹脂は1種のみを用いてもよいし、2種以上を用いてもよい。さらに、同種又は異種の樹脂を積層して積層フィルムとして用いてもよい。中でも、ポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂が好ましい。即ち、上記プラスチックフィルムは、ポリエステル系樹脂からなるポリエステル系フィルム、ポリスチレン系樹脂からなるポリスチレン系フィルム、ポリオレフィン系樹脂からなるポリオレフィン系フィルム、ポリエステル系樹脂を外層とし、ポリオレフィン系樹脂又はポリスチレン系樹脂を内層とした異種積層フィルムが好ましい。上記の中でも、透明性の観点から、特にポリエステル系フィルムが好ましい。本発明の印刷インキは、一般的な印刷インキに対しては密着性が低下しやすいポリエステル系フィルムの基材に対しても、優れた密着性を発揮する。上記のポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂としては、例えば、特開2008−170822号公報、特開2008−170697号公報、特開2008−163215号公報、特開2008−163231号公報に記載のポリエステル系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリスチレン系樹脂などを用いることができる。
【0065】
上記ポリエステル系フィルムに用いられるポリエステル系樹脂としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂やポリ(エチレン−2,6−ナフタレンジカルボキシレート)(PEN)、ポリ乳酸(PLA)等を用いることができ、中でも好ましくはポリエチレンテレフタレート(PET)系樹脂である。上記PET系樹脂としては、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを用いたポリエチレンテレフタレート(PET);ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを主成分、1,4−シクロヘキサンジメタノール(CHDM)を共重合成分として用いた共重合ポリエステル(CHDM共重合PET)、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを主成分、ネオペンチルグリコール(NPG)を共重合成分として用いた共重合ポリエステル(NPG共重合PET)、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールを主成分、ジエチレングリコールを共重合成分として用いた共重合ポリエステルなどのジオール変性PET;ジカルボン酸変性PET(ジカルボン酸成分において、テレフタル酸を主成分にイソフタル酸及び/又はアジピン酸で変性)などが挙げられる。
【0066】
上記ポリスチレン系フィルムに用いられるポリスチレン系樹脂としては、構成モノマーとして、例えば、スチレン、α−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−エチルスチレン、p−イソブチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン系単量体を1種又は2種以上含む樹脂が挙げられる。具体的には、例えば、一般ポリスチレン、スチレン−ブタジエン共重合体(SBS)、スチレン−ブタジエン−イソプレン共重合体(SBIS)、スチレン−アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。
【0067】
上記ポリオレフィン系フィルムに用いられるポリオレフィン系樹脂としては、低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)、メタロセン触媒系LLDPE(mLLDPE)などのポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン、プロピレン−α−オレフィン共重合体などのポリプロピレン系樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体、環状オレフィン樹脂等が挙げられる。特に、ポリオレフィン系フィルムとしては、環状オレフィン樹脂を外層とするものが好ましい。例えば、環状オレフィン樹脂を外層とし、ポリエチレン系樹脂又はポリプロピレン系樹脂を内層(中心層)とするものが好ましい。
【0068】
上記プラスチックフィルム(基材)は単層構成であってもよいし、積層構成を有していてもよい。即ち、上記プラスチックフィルムは、単層フィルムであってもよいし、要求物性、用途などに応じて、複数のフィルム層を積層した積層フィルムであってもよい。また、積層フィルムの場合、同種の樹脂からなるフィルム層を積層していてもよいし、異なる樹脂からなるフィルム層を積層していてもよい。積層フィルムの場合、ポリエステル系樹脂を外層とし、ポリオレフィン系樹脂又はポリスチレン系樹脂を内層とした積層フィルムが好ましい。
【0069】
上記プラスチックフィルムは、無配向フィルムであってもよいし、配向フィルムであってもよい。中でも、プラスチックフィルムがシュリンクフィルムである場合には、シュリンク特性(熱収縮特性)を発揮する観点から、1軸、2軸または多軸に配向したフィルムであることが好ましい。上記シュリンクフィルムが積層フィルムの場合には、積層フィルム中の少なくとも1層のフィルム層が配向していることが好ましい。全てのフィルム層が無配向の場合には、十分なシュリンク特性を発揮できない場合がある。上記プラスチックフィルム(特にシュリンクフィルム)は、1軸または2軸配向フィルムが好ましく、中でも、フィルムの1軸方向に強く配向しているフィルム(実質的に1軸延伸されたフィルム)がより好ましい。特に幅方向に1軸延伸されたフィルムが好ましい。
【0070】
上記プラスチックフィルムは、溶融製膜または溶液製膜などの慣用の方法によって作製することができる。また、市販のプラスチックフィルム(シュリンクフィルムなど)を用いることも可能である。プラスチックフィルムの表面には、必要に応じて、コロナ放電処理やプライマー処理等の慣用の表面処理が施されていてもよい。積層構成のプラスチックフィルムを作製する場合、積層の方法としては、慣用の方法、例えば、共押出法、ドライラミネート法などを用いることが可能である。プラスチックフィルムに配向を施す方法としては、例えば、長手方向(フィルムの製造ライン方向。縦方向又はMD方向とも称する)および幅方向(長手方向と直交する方向。横方向又はTD方向とも称する)の2軸延伸、長手方向又は幅方向の1軸延伸等を用いることができる。延伸方式は、例えば、ロール方式、テンター方式、チューブ方式等を用いることができる。例えば、幅方向に実質的に1軸延伸されたフィルムの延伸処理は、70〜100℃程度の温度で、必要に応じて長手方向に1.01〜1.5倍、好ましくは1.05〜1.3倍程度に延伸した後、幅方向に3〜6倍、好ましくは4〜5.5倍程度延伸することにより行うことができる。
【0071】
上記プラスチックフィルムがシュリンクフィルムである場合、シュリンクフィルムの主配向方向の、90℃、10秒における熱収縮率(「熱収縮率(90℃、10秒)」と称する場合がある)は、特に限定されないが、15〜90%が好ましく、より好ましくは20〜85%である。主配向方向と直交する方向の熱収縮率(90℃、10秒)は、特に限定されないが、−3〜15%が好ましい。なお、上記「主配向方向」とは主に延伸処理が施された方向(最も熱収縮率が大きい方向)であり、一般的には長手方向又は幅方向であり、例えば、幅方向に実質的に1軸延伸されたフィルムの場合には幅方向である。
【0072】
上記プラスチックフィルムが透明フィルムの場合、プラスチックフィルムのヘイズ値(%)(JIS K 7105準拠)は、10%未満が好ましく、より好ましくは5.0%未満、さらに好ましくは2.0%未満である。ヘイズ(ヘーズ)値が10%以上の場合には、プラスチックフィルムを通して印刷を見せる場合に、印刷が曇り、装飾性が低下することがある。
【0073】
上記プラスチックフィルム(基材)の厚みは、特に限定されないが、耐突き刺し性、耐摩耗性の観点から、10〜100μmが好ましく、より好ましくは12〜80μm、さらに好ましくは15〜60μmである。
【0074】
上記プラスチックフィルム(例えば、シュリンクフィルム)は、市販品を用いることも可能である。例えば、シュリンクフィルムの市販品としては、東洋紡績(株)製「スペースクリーン S7042」、「SV−808」、三菱樹脂(株)製「LX−10S」、「LX−61S」(以上、ポリエステル系フィルム);シーアイ化成(株)製「ボンセット」、グンゼ(株)製「GMLS」(以上、ポリスチレン系フィルム);グンゼ(株)製「FL」(ポリオレフィン系フィルム);三菱樹脂(株)製「エコロージュ」(ポリ乳酸系フィルム);三菱樹脂(株)製「DL」、グンゼ(株)製「HGS」(以上、表層がポリエステル系樹脂、中心層がポリスチレン系樹脂の積層フィルム)等が挙げられる。
【0075】
(プラスチックラベルの構成、物性、製造方法など)
本発明のプラスチックラベルは、前述のとおり、上記プラスチックフィルム(基材)の少なくとも片面側に、本発明の印刷層(本発明の印刷インキから形成された印刷層)を有する。上記の本発明の印刷層は、必ずしもラベルの全面に設けられる必要はなく、プラスチックフィルム(基材)の一部分にのみ設けることができる。上記の本発明の印刷層は、アンカーコート層などの他の層を介さずにプラスチックフィルム上に直接設けても、十分な密着性を発揮できる。このため、生産性、コスト面で有利である。なお、本発明の印刷層は、必要に応じて、アンカーコート層を介してプラスチックフィルム上に設けられていてもよい。
【0076】
本発明の印刷層の厚みは、特に限定されないが、密着性の観点から、0.5〜5μmが好ましく、より好ましくは1〜3μmである。
【0077】
さらに、本発明のプラスチックラベルには、プラスチックフィルム(基材)、本発明の印刷層の他にも、接着剤層、紫外線防止層、アンカーコート層、プライマーコート層、本発明の印刷層以外の印刷層(「他の印刷層」と称する場合がある)、不織布、紙等の層を必要に応じて設けてもよい。
【0078】
本発明のプラスチックラベルにおける、本発明の印刷層の透過濃度は、白濃度の観点から、0.22以上が好ましく、より好ましくは0.24以上、さらに好ましくは0.27以上である。上記透過濃度が0.22未満では、白濃度が不十分な場合がある。上記透過濃度は、例えば、伊原電子工業(株)製、透過濃度計「Ihac−T5」を用いて測定することができる。本発明の印刷層の透過濃度は、例えば、本発明のプラスチックラベル(本発明の印刷層/基材の構成)の透過濃度から、基材の透過濃度を差し引くことにより求めることができる。
【0079】
本発明のプラスチックラベルは、例えば、本発明の印刷インキを、プラスチックフィルム(基材)の表面上に、塗布、乾燥して本発明の印刷層を設けることにより、製造することができる。上記の塗布、乾燥工程は、プラスチックフィルムの製造工程(製膜工程)中に行われてもよいし(インラインコート)、フィルム製膜後に行われてもよい(オフラインコート)が、生産性や加工性の観点から、オフラインコートが好ましい。また、必要に応じて、本発明の印刷層以外の層等を設けてもよい。
【0080】
上記の印刷インキを塗布する方法としては、コストや生産性、印刷の装飾性などの観点から、グラビア印刷方式、フレキソ印刷方式、凸版輪転印刷方式が好ましく、中でも、グラビア印刷方式が特に好ましい。また、塗布された印刷インキ層(塗布層)を加熱等により、乾燥する際には、印刷装置上で加熱が可能な、一般的な加熱装置を好ましく用いることができる。安全性の観点から、好ましくは、熱風ヒーターなどを用いることができる。
【0081】
本発明のプラスチックラベルとしては、特に限定されないが、例えば、ストレッチラベル、シュリンクラベル、ストレッチシュリンクラベル、インモールドラベル、タックラベル、ロールラベル(巻き付け方式の糊付ラベル)、感熱接着ラベル等が挙げられる。中でも、シュリンクラベルが特に好ましい。上記シュリンクラベルは、筒状ラベル、巻き付けラベル等、特に限定されないが、筒状のシュリンクラベル(筒状シュリンクラベル)が好ましい。
【0082】
本発明のプラスチックラベルは、容器に装着され、ラベル付き容器として用いることができる。上記容器には、例えば、PETボトルなどのソフトドリンク用ボトル、宅配用牛乳容器、調味料などの食品用容器、アルコール飲料用ボトル、医薬品容器、洗剤、スプレーなどの化学製品の容器、カップ麺容器などが含まれる。また、容器の材質は特に限定されず、上記容器には、例えば、PETなどのプラスチック製容器、ガラス製容器、金属製容器などが含まれる。なお、本発明のプラスチックラベルは、容器以外の被着体に用いられてもよい。
【実施例】
【0083】
以下に、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0084】
表1〜4には、実施例及び比較例における、印刷インキの配合組成(配合量)、印刷インキの不揮発分中の酸化チタンの含有量、印刷インキの不揮発分中の[(アクリル系樹脂の含有量):(ウレタンアクリル系樹脂の含有量)](重量比)、アクリル系樹脂の酸価、並びに、印刷インキ及びプラスチックラベルの評価結果等を示した。
上記の印刷インキの配合組成は、重量基準の配合量(重量部)で示した。なお、「不揮発分」は、酸化チタン、アクリル系樹脂、アクリル系樹脂溶液、ウレタンアクリル系樹脂溶液、ウレタン系樹脂溶液及びWAX(ワックス:滑剤)のそれぞれの不揮発分換算の配合量(重量部)で示した。また、「溶剤分」は、アクリル系樹脂溶液に含まれる溶剤分、ウレタンアクリル系樹脂溶液に含まれる溶剤分、ウレタン系樹脂溶液に含まれる溶剤分及び添加した溶剤(有機溶剤)の合計量(重量部)で示した。
【0085】
表5及び表6には、実施例及び比較例で用いたウレタンアクリル系樹脂溶液、ウレタン系樹脂溶液における、各溶液に含まれる樹脂(ウレタンアクリル系樹脂又はウレタン系樹脂)の種類、構造[構造単位(各構造単位の由来する化合物を示した)と各構造単位の含有量(樹脂中の含有量)]、酸価及び重量平均分子量、並びに、該樹脂中の「(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来する構造単位の含有量」(アクリル成分含有量)を示した。また、各溶液の溶剤組成(溶剤の種類および含有割合)及び不揮発分濃度を示した。
【0086】
表7には、実施例及び比較例で用いたアクリル系樹脂(又はアクリル系樹脂溶液に含まれるアクリル系樹脂)の構造単位[各構造単位の由来する化合物(構成モノマー)を示した]と各構造単位の樹脂中の含有量(重量%)、並びに、該アクリル系樹脂の酸価及び重量平均分子量を示した。なお、アクリル系樹脂(b1)、アクリル系樹脂(b3)及びアクリル系樹脂(b4)は不揮発分濃度100重量%のアクリル系樹脂である。アクリル系樹脂溶液(b2)は、アクリル系樹脂の溶液(不揮発分45重量%、酢酸エチル22重量%及びイソプロパノール33重量%を含有する)である。アクリル系樹脂溶液(b5)は、アクリル系樹脂の溶液(不揮発分25.2重量%、酢酸エチル45.4重量%及びイソプロパノール29.4重量%を含有する)である。
【0087】
実施例1
(印刷インキ)
ウレタンアクリル系樹脂として、ウレタンアクリル系樹脂溶液(a1)[不揮発分濃度:41.5重量%]1.9重量部(ウレタンアクリル系樹脂として、0.8重量部)を用いた。なお、上記ウレタンアクリル系樹脂溶液(a1)は、表5に示すとおり、ネオペンチルグリコールに由来する構造単位を39.4重量%、テレフタル酸に由来する構造単位を13.3重量%、イソフタル酸に由来する構造単位を13.3重量%、イソホロンジイソシアネートに由来する構造単位を11.2重量%(以上、ウレタン成分)、メタクリル酸ブチルに由来する構造単位を22.8重量%(アクリル成分)含む、重量平均分子量42000、酸価3.0mgKOH/gの芳香族ポリエステルポリオール系のウレタンアクリル系樹脂の酢酸エチル溶液(不揮発分濃度:41.5重量%)である。
アクリル系樹脂として、アクリル系樹脂(b1)[酸価:13mgKOH/g、不揮発分濃度:100重量%]10.2重量部を用いた。上記アクリル系樹脂(b1)は、表7に示すとおり、メチルメタクリレートに由来する構造単位を72.7重量%、エチルメタクリレートに由来する構造単位を3.2重量%、n−ブチルメタクリレートに由来する構造単位を14.5重量%、ブチルアクリレートに由来する構造単位を9.6重量%含む、重量平均分子量33000のアクリル系樹脂である。
上記のウレタンアクリル系樹脂溶液(a1)及びアクリル系樹脂(b1)に、酸化チタン[テイカ(株)製、商品名「JR−707」、不揮発分濃度:100重量%]55.7重量部、ワックス[サゾール社製、商品名「SPRAY105」、不揮発分濃度:100重量%]3重量部、酢酸エチル13.9重量部、酢酸n−プロピル15.3重量部を加えて、ホモディスパーで攪拌混合し、印刷インキ(100重量部)を作製した。
【0088】
(プラスチックラベル(シュリンクラベル))
上記の印刷インキを、ポリエステル(PET)系シュリンクフィルム(東洋紡績(株)製、「S7042」:厚み45μm)の片面に、彫刻60線/インチ、版深30μmのグラビア版を用いて、工程速度300m/分の条件で、全面グラビア印刷を施し、熱風乾燥機を用いて50℃の条件で乾燥して、印刷層を形成し、プラスチックラベル(シュリンクラベル)を得た。なお、乾燥後の印刷層の厚みは約3μmであった。
【0089】
実施例2、比較例1
表1に示すように、ウレタンアクリル系樹脂の種類などを変更して、実施例1と同様にして、印刷インキおよびプラスチックラベルを作製した。
なお、ウレタンアクリル系樹脂溶液(a1)、ウレタンアクリル系樹脂溶液(a2)及びウレタンアクリル系樹脂溶液(a3)の各溶液に含まれるウレタンアクリル系樹脂は、いずれもポリエステルポリオールに由来する構造単位を有するウレタンアクリル系樹脂である。
【0090】
比較例2〜5
表1に示すように、ウレタンアクリル系樹脂をウレタン系樹脂に変更する等して、実施例1と同様にして、印刷インキおよびプラスチックラベルを作製した。
【0091】
実施例3〜8、比較例6〜9
表2に示すように、酸化チタンの配合量などを変更して、実施例1と同様にして、印刷インキおよびプラスチックラベルを作製した。
【0092】
実施例9〜15、比較例10〜12
表3に示すように、ウレタンアクリル系樹脂とアクリル系樹脂の配合量などを変更して、実施例1と同様にして、印刷インキおよびプラスチックラベルを作製した。
【0093】
実施例16〜18、比較例13、14
表4に示すように、アクリル系樹脂の種類などを変更して、実施例1と同様にして、印刷インキおよびプラスチックラベルを作製した。
【0094】
(評価)
実施例および比較例で得られた印刷インキおよびプラスチックラベル(シュリンクラベル)について、以下の評価を行った。評価結果は表1〜4に示した。
【0095】
(1)印刷適性
実施例及び比較例において、プラスチックラベルの製造中(製造開始直後から1時間)の、印刷層の形成状態、グラビア版の版面及びインキパンを目視にて観察した。版かぶり、ドクターすじおよび印刷層の形成状態としてカスレ、ムラの有無より、印刷適性を以下の基準で判断した。
○(印刷適性良好) : 版かぶり、ドクターすじ、印刷層の形成状態としてカスレ、ムラがない。
△(使用可能) : ドクターすじ、印刷層の形成状態としてカスレ、ムラはない。版かぶりがある。
×(印刷適性不良) : ドクターすじ、又は、印刷層の形成状態としてカスレ若しくはムラがある。
【0096】
(2)密着性(接着性)(テープ剥離試験)
碁盤目のクロスカットを入れない以外は、JIS K 5600−5−6に準じて、試験を行った。実施例及び比較例で得られたプラスチックラベルの印刷層の表面に、粘着テープ(ニチバン(株)製、商品名「セロテープ(登録商標)」、幅18mm)を貼り付け、この粘着テープを90度方向に剥離した。
粘着テープを貼り付けた印刷層表面のうち、50mm(長手方向:製造ライン方向)×18mm(幅方向)の領域において、印刷層の残存した面積(割合)を目視で観察し、下記の基準で判断した。
印刷層の残存面積が99%以上である。 : 密着性良好(○)
印刷層の残存面積が90%以上、99%未満である。 : 密着性はやや不良であるが使用可能なレベル(△)
印刷層の残存面積が90%未満である。 : 密着性不良(×)
【0097】
(3)印刷層の透過濃度(白濃度)
実施例及び比較例で得られたプラスチックラベルを、5cm(長手方向)×5cm(幅方向)の大きさに切り出し、測定用サンプルとした。
伊原電子工業(株)製、白黒透過濃度計「Ihac−T5」を用いて、上記測定用サンプルの透過濃度を測定した。さらに、基材であるポリエステル(PET)系シュリンクフィルム(東洋紡績(株)製、「S7042」:厚み45μm)についても同様に測定を行い、基材の透過濃度を測定した。
上記測定用サンプルの透過濃度から基材の透過濃度を差し引いて、「印刷層の透過濃度」を求めた。
なお、例えば、上記印刷層の透過濃度が0.22以上の場合に、印刷層の白濃度が高い(高白濃度)と判断できる。上記印刷層の透過濃度は、0.24以上がより好ましく、さらに好ましくは0.27以上である。
【0098】
(4)顔料(酸化チタン)の凝集抑止性
実施例及び比較例で得られた印刷インキ100gをポリプロピレンボトルに秤量した後、24時間、常温(23℃)にて静置した。その後、スパチュラでボトル底部をすくった観察結果を以下の基準で評価した。
沈殿物がほとんど存在しない。 : 顔料(酸化チタン)の凝集抑止性良好(○)
沈殿物が存在する。 : 顔料(酸化チタン)の凝集抑止性不良(×)
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
【表3】

【0102】
【表4】

【0103】
【表5】

【0104】
【表6】

【0105】
【表7】

【0106】
以上からわかるとおり、本発明の印刷インキは、高濃度に酸化チタンを含有しており、なおかつ、印刷適性および保存安定性(顔料の凝集抑止性)に優れていた。また、本発明の印刷インキから形成された印刷層は、白濃度が高く、さらに基材との密着性に優れていた(実施例)。
一方、ウレタンアクリル系樹脂中の、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来する構造単位の含有量が本発明の規定範囲を超える(アクリル成分の割合が多すぎる)場合には、基材との密着性が低下した(比較例1)。また、ウレタンアクリル系樹脂のかわりにウレタン系樹脂を用いた場合には、印刷適性が低下し、さらに密着性や保存安定性も低下する場合があった(比較例2〜5)。
また、印刷インキの不揮発分中の酸化チタンの含有量が本発明の規定範囲を超える場合には、密着性および保存安定性が低下した(比較例6、7)。さらに、印刷インキの不揮発分中の酸化チタンの含有量が少なすぎる場合には、印刷層の透過濃度(白濃度)が低下した(比較例8、9)。
さらに、印刷インキの不揮発分中のアクリル系樹脂の含有量の割合が多すぎる場合には、基材に対する密着性、印刷適性が低下した(比較例10)。また、印刷インキの不揮発分中のウレタンアクリル系樹脂の含有量の割合が多すぎる場合には、印刷適性が低下した(比較例11、12)。
さらに、アクリル系樹脂の酸価が本発明の規定範囲を外れる場合には、保存安定性が低下した(比較例13、14)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステルポリオールに由来する構造単位を有するウレタンアクリル系樹脂(A)、アクリル系樹脂(B)及び酸化チタン(C)を含有する印刷インキであって、
ウレタンアクリル系樹脂(A)中の、(メタ)アクリロイル基を有するモノマーに由来する構造単位の含有量が1〜40重量%であり、
アクリル系樹脂(B)の酸価が1〜40mgKOH/gであり、
印刷インキの不揮発分中の、アクリル系樹脂(B)の含有量とウレタンアクリル系樹脂(A)の含有量の比[(アクリル系樹脂(B)の含有量):(ウレタンアクリル系樹脂(A)の含有量)](重量比)が50:50〜99:1であり、
印刷インキの不揮発分中の、酸化チタン(C)の含有量が70〜81重量%であることを特徴とするプラスチックラベル用印刷インキ。
【請求項2】
プラスチックフィルムの少なくとも片面に、請求項1に記載のプラスチックラベル用印刷インキから形成された印刷層を有するプラスチックラベル。

【公開番号】特開2012−62415(P2012−62415A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208468(P2010−208468)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000238005)株式会社フジシールインターナショナル (641)
【Fターム(参考)】