プラスチックレンズの製造方法
【課題】良好な装用感を示す眼鏡を作製可能な高品質なプラスチックレンズを提供すること。
【解決手段】成形型のキャビティへプラスチックレンズ原料液を注入すること、上記キャビティ内でプラスチックレンズ原料液の硬化反応を行いモールド成形面形状が転写された被転写面を有するプラスチックレンズ基材を得ること、上記プラスチックレンズ基材を成形型から離型すること、および、離型後のプラスチックレンズ基材をアニールすること、を含むプラスチックレンズの製造方法。前記成形型を構成する2つのモールドの少なくとも一方は円形モールドであり、前記キャビティは断面の平面視形状が非円形であって、これにより該キャビティ内における硬化反応により得られるプラスチックレンズ基材の前記被転写面は非円形となり、前記アニールを、載置台上に保持された円形モールドの前記成形面と前記プラスチックレンズ基材の被転写面を密着配置した状態で行う。
【解決手段】成形型のキャビティへプラスチックレンズ原料液を注入すること、上記キャビティ内でプラスチックレンズ原料液の硬化反応を行いモールド成形面形状が転写された被転写面を有するプラスチックレンズ基材を得ること、上記プラスチックレンズ基材を成形型から離型すること、および、離型後のプラスチックレンズ基材をアニールすること、を含むプラスチックレンズの製造方法。前記成形型を構成する2つのモールドの少なくとも一方は円形モールドであり、前記キャビティは断面の平面視形状が非円形であって、これにより該キャビティ内における硬化反応により得られるプラスチックレンズ基材の前記被転写面は非円形となり、前記アニールを、載置台上に保持された円形モールドの前記成形面と前記プラスチックレンズ基材の被転写面を密着配置した状態で行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックレンズの製造方法に関するものであり、詳しくはアニール工程に起因する非点収差(アスティグマ)の発生が抑制された高品質なプラスチックレンズを提供可能なプラスチックレンズの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックをレンズ形状に成形してプラスチックレンズを得る方法としては、成形型内でプラスチックレンズ原料液の重合を行う注型重合法が挙げられる。注型重合法では、モールド成形面形状が転写されることにより、レンズ光学面が形成される。
【0003】
注型重合法としては、2つの円形モールド(上型および下型)を環状のガスケットに挿入し、ガスケットと上下型によって形成されたキャビティ(空間)にプラスチックレンズ原料液を注入して重合する方法(特許文献1参照)、2つの円形モールドの周面にテープを巻きつけて形成したキャビティにプラスチックレンズ原料液を注入して重合する方法(特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−30431号公報
【特許文献2】特開2007−216665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り2つの円形モールドの周囲を取り囲むことにより形成されたキャビティ内で重合されたプラスチックレンズの形状は円形となる。なお、本明細書および本発明では、特記しない限り、形状は平面視形状をいうものとする。
しかしながら、実際に眼鏡を製造する際に眼鏡フレームに枠入れされるレンズの大部分は子午線方向が短く、水平方向が長い。したがって注型重合により得られた円形のプラスチックレンズ(レンズブランクス)の子午線方向の上下端部は切断されて廃棄されているのが実情である。この廃棄される部分に使用されたプラスチックレンズ原料液は実際の眼鏡レンズには不要なものであるため、原料液の使用量を低減し製造コストを抑えるためには、枠入れ時に除去される部分は可能な限り少なくすることが望ましい。また、環境負荷の点からも、枠入れ時の廃棄物量は低減することが望ましい。
【0006】
上記の廃棄物量およびプラスチックレンズ原料液の使用量を低減するための手段としては、注型重合により成形するレンズの形状を非円形とすることが考えられる。そこで、非円形レンズを成形するために非円形のモールドを使用することが考えられるが、非円形の2つのモールドを正確に位置合わせすることは困難である。
【0007】
これに対し本願出願人は、例えば非円形のキャビティを形成可能な円筒部材をモールド間に挟入する方法等によって、円形のモールドを使用しつつ非円形レンズが製造可能となることを見出し、先に特許出願した(特願2010−124271号、特願2010−142275号、特願2010−142276号)。
【0008】
上記方法によれば、位置合わせ容易な円形モールドを使用しつつ非円形レンズを成形することが可能となる。しかし本発明者らの検討により、例えば上記方法で作製される非円形レンズでは、眼鏡矯正に不要な非点収差(アスティグマ)が発生する場合があることが明らかとなった。非点収差が顕著に発生したレンズを用いて作製される眼鏡は装用感に劣るものとなるため、前記の廃棄物量およびプラスチックレンズ原料液の使用量を低減しつつ良好な装用感を有する眼鏡を提供するためには、非円形レンズにおいて非点収差を低減することが求められる。
【0009】
かかる状況下、本発明は良好な装用感を示す眼鏡を作製可能な高品質なプラスチックレンズ、詳しくは非円形プラスチックレンズを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記目的を達成するために、非円形レンズにおいて非点収差が発生する理由について検討を重ねた結果、注型重合後、離型されたレンズに施されるアニール工程がその原因であると考えるに至った。この点についてより詳しく説明すると、注型重合によるプラスチックレンズの製造工程では、重合中に生じた内部歪みを取り除くために、離型後のレンズに対してアニール(加熱処理)が行われる。ただしアニール中にレンズが安定に保持されていないと、アニール加熱時にレンズが変形して光学歪を助長し、更にはモールド成形面形状を転写することにより成形されたレンズ光学面が変形するおそれがある。これに対し本願出願人は、特開平7−108622号公報および実開平7−18832号公報において、円形開口部を有するレンズ載置台上にレンズを配置し、レンズの安定性を維持した状態でプラスチックレンズのアニールを行うことを先に提案した。しかし本願出願人が上記公報において提案した方法は、円形レンズに対しては有効であるが、非円形レンズを円形開口部を有するレンズ載置台によって保持しようとすると、形状が合わないためアニール中にレンズの安定性を確保することは難しい。本発明者らは、ここでの不安定さが非円形レンズにおいて非点収差が発生する原因であると考えた。そこで対策として、非円形レンズの形状に対応する保持部を有する載置台を用いてアニールを行うことも考えられるが、これでは非円形レンズの異なる形状毎に対応する形状を有する載置台を準備しなければならないため、コストが著しく増加することとなってしまう。一方で特開2001−232691号公報には、非円形レンズにも適用可能なアニール時のレンズ保持方法として、レンズ表面を部分的に支持する方法が提案されているが、レンズ表面を直接支持する方法では、仮にアニール中の加熱によりレンズが軟化し形状変化を起こした場合には支持部分が凹状に窪み、面形状が崩れることが懸念される。また、眼鏡レンズの面形状は多種多様であり、非球面形状の累進要素を含むレンズなど面形状が複雑なものも多数ある。このような複雑な面形状のレンズ表面については、安定に支持し得る箇所を見出すことが難しい場合が多い。
これに対し本発明者らは更に鋭意検討を重ねた結果、非円形レンズを注型重合するために使用した円形モールドを介して非円形レンズを保持した状態でアニールを行うことで、非点収差の発生が抑制された高品質なプラスチックレンズ(非円形レンズ)が得られることを見出すに至った。上記方法によれば、円形開口部を有する従来のレンズ載置台をそのまま使用することができ、また、仮にアニール時の加熱によりレンズが軟化した場合にも、レンズ面に転写される形状は本来転写されるべきモールド成形面形状であるため、面精度が低下することはない。加えて、レンズを支持する面はレンズ面(被転写面)と雌雄の関係にあり形状がほぼ一致するモールド成形面であるため、上記のような複雑な面形状のレンズであっても安定に保持することができる。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
【0011】
即ち、上記目的は下記手段によって達成された。
[1]成形面同士が所定の間隔をもって対向する2つのモールドと、上記間隔を閉塞することにより形成されるキャビティを有する成形型の、上記キャビティへプラスチックレンズ原料液を注入すること、
上記キャビティ内でプラスチックレンズ原料液の硬化反応を行いモールド成形面形状が転写された被転写面を有するプラスチックレンズ基材を得ること、
上記プラスチックレンズ基材を成形型から離型すること、および、
離型後のプラスチックレンズ基材をアニールすること、
を含むプラスチックレンズの製造方法であって、
前記成形型を構成する2つのモールドの少なくとも一方は円形モールドであり、前記キャビティは断面の平面視形状が非円形であって、これにより該キャビティ内における硬化反応により得られるプラスチックレンズ基材の前記被転写面は非円形となり、
前記アニールを、載置台上に保持された円形モールドの前記成形面と前記プラスチックレンズ基材の被転写面を密着配置した状態で行うことを特徴とする、前記製造方法。
[2]前記載置台は、上方に開放する開口部を有し、該開口部内周面に設けられた保持部または開口端面により前記円形モールドを保持する、[1]に記載の製造方法。
[3]前記載置台の開口部は、円形開口部である[2]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、円形レンズに比べて枠入れされるレンズ形状に近い形状を有し、かつ優れた装用感を有する眼鏡を提供可能な非円形プラスチックレンズを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一態様において使用可能なアニール用載置台と、この上に載置される円形モールドおよび非円形レンズの斜視説明図である
【図2】図1に示すアニール用載置台上に円形モールドを介して非円形レンズを載置した状態を示す断面図(図1中のY−Y断面図)である。
【図3】本発明において使用可能な成形型において、2つの円形モールドに挟入される円筒部材の一例を示す概略図である。
【図4】本発明において使用可能な成形型の一部を構成するモールドおよびガスケットの一例を示す断面図である。
【図5】図3に示す円筒部材を、図4に示すキャビティ内に配置した状態の断面図である。
【図6】本発明において使用可能な成形型を構成する有底モールドの一例を示す概略図である。
【図7】図6に示す有底モールドの断面図である。
【図8】本発明において使用可能な成形型の一例を示す概略図である。
【図9】本発明において使用可能な成形型を構成する有底モールドの一例を示す断面図である。
【図10】図9に示す有底モールドの領域Aの平面図の一例である。
【図11】図9に示す有底モールドの開口に円形モールドを嵌挿することにより構成される成形型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、成形面同士が所定の間隔をもって対向する2つのモールドと、上記間隔を閉塞することにより形成されるキャビティを有する成形型の、上記キャビティへプラスチックレンズ原料液を注入すること、上記キャビティ内でプラスチックレンズ原料液の硬化反応を行いモールド成形面形状が転写された被転写面を有するプラスチックレンズ基材を得ること、上記プラスチックレンズ基材を成形型から離型すること、および、離型後のプラスチックレンズ基材をアニールすること、を含むプラスチックレンズの製造方法に関する。前記成形型を構成する2つのモールドの少なくとも一方は円形モールドであり、前記キャビティは断面の平面視形状が非円形であって、これにより該キャビティ内における硬化反応により得られるプラスチックレンズ基材の前記被転写面は非円形となる。なお本発明においてキャビティについて断面の平面視形状とは、後述の図4等に示す縦断面ではなく、該縦断面と直交する横断面の断面形状をいうものとする。そして本発明のプラスチックレンズの製造方法では、前記アニールを、載置台上に保持された円形モールドの前記成形面と前記プラスチックレンズ基材の被転写面を密着配置した状態で行う。先に説明したように非円形レンズによれば、枠入れ時の廃棄物量およびプラスチックレンズ原料液の使用量を大幅に低減することができる。そして本発明によれば、前記の通り眼鏡矯正に不要な非点収差(アスティグマ)の発生が抑制された非円形レンズを提供することが可能となる。
以下、本発明のプラスチックレンズの製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう)について、更に詳細に説明する。
【0015】
本発明の製造方法では、成形面同士が所定の間隔をもって対向する2つのモールドと、上記間隔を閉塞することにより形成されるキャビティを有する成形型を用いてプラスチックレンズ基材(以下、単に「プラスチックレンズ」または「レンズ」ともいう。)の注型重合を行うが、ここで従来の注型重合の成形型を用いては、非円形レンズを得ることはできない。他方、上記2つのモールドの両方が非円形モールドでは、モールドの正確な位置合わせを行うことは難しい。そこで本発明では、成形型を構成する2つのモールドの少なくとも一方を円形モールドとするとともに、断面の平面視形状が非円形のキャビティを有する成形型を使用する。かかる成形型としては、前記特許出願にかかる成形型を好適に使用することができ、それらの詳細は後述する。注型重合では、成形型キャビティ内でプラスチックレンズ原料液の硬化反応を行うことで、モールド成形面形状が転写された被転写面を有するプラスチックレンズ基材を得ることができる。そして本発明では上記成形型を使用することで、キャビティ内における硬化反応により得られるプラスチックレンズ基材の被転写面は非円形となる。こうして形成される非円形レンズの形状としては、角丸四角形、楕円形、多角形、等の円形以外の各種形状を挙げることができる。一般的な眼鏡フレームの形状は、子午線方向に短く、水平方向に長いため、この形状に近似した非円形レンズが廃棄物量のよりいっそうの低減の点から好ましく、この点からは角丸四角形または楕円形が好ましく、角丸四角形がより好ましい。また、非円形レンズの短径(子午線方向)の長さが45〜65mm程度、長径(水平方向)の長さが60〜75mm程度であることが、汎用されている眼鏡フレームの形状に対応可能であるため好ましい。成形されるレンズの肉厚はキャビティの深さによって規定され、通常、1〜30mm程度である。
【0016】
前記成形型を用いて成形された非円形レンズは、成形型から取り出された(離型された)後にアニールに付される。このアニールにより、重合中や後述する成膜中に生じた内部歪みを取り除くことができるが、非円形レンズのアニールについては前記した課題があった。これに対し先に説明したように本発明によれば、載置台上に保持された円形モールドの前記成形面と前記プラスチックレンズ基材の被転写面を密着配置した状態で行うことで、これら課題を解決することができる。以下、上記アニールについて、図面を参照しつつ更に詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一態様において使用可能なアニール用載置台11と、この上に載置される円形モールド13および非円形レンズ14の斜視説明図である。図2は、図1に示すアニール用載置台11上に円形モールド13を介して非円形レンズ14を載置した状態を示す断面図(図1中のY−Y断面図)である。図中の載置台11は、上方に開放する円形開口部を有し、該円形開口部の内周面には、全周にわたりテーパー状の保持面(テーパー面)を有する保持部12が設けられている。なお、保持部12のテーパー面の角度は、円形モールドの被保持面(図中では、凸面)の曲率半径等を考慮して設定される。また、前記テーパー面の角度は、取扱いの際に生じる接触や安全性等という観点から、糸面取り加工が施されていることが好ましい。また、アニール用載置台11は、取出用凹部15を有することができる。即ち、アニール用載置台11の周壁部には、一端が載置台11の円形開口部に開放し他端が保持部12と同一高さ位置または下方に位置して載置台11の内外を連通させる複数の取出用凹部15が設けられている。このような取出用凹部は無くてもよいし、1つまた2つ以上であってもよい。また、取出用凹部は載置台11の側壁の対向する位置に2つ形成されていることが好ましい。取出用凹部の形状寸法は、人の手指が入る程度の大きさに設定され、指による円形モールドおよび非円形レンズの取り出しを可能とする。円形モールド13は、上記テーパー状の保持部12に載置される。円形モールド13は、その周縁部下面16が保持部12に支持されるように載置される。この状態を図2の断面説明図(Y−Y)に示す。尚、図2には、便宜上、取出用凹部15は図示されていない。
【0018】
上記の円形モールド13の被保持面と反対側の面(図中では、凹面)はモールド成形面であって、非円形レンズの一方の面(被転写面)の形状は、注型重合により当該モールド成形面の面形状が転写されることにより形成されたものである。そして本発明では、図2に示すように、円形モールド13の成形面上に非円形レンズ14を、モールド成形面と被転写面を密着させた状態で配置する。このように非円形レンズを円形モールドを介して載置台上に配置すれば、非円形レンズの形状毎に載置台を準備する必要はなく、またモールド成形面と被転写面は雌雄の関係にあり形状はほぼ一致するため、従来の円環状の載置台のみでは困難であった、非円形レンズの安定保持が可能となり、更には複雑な面形状のレンズの安定保持も可能となる。加えて先に説明したように、仮にアニール中の加熱によりレンズが軟化したとしても、この軟化により転写される形状は本来転写されるべきモールド成形面形状であるため、面精度が低下することはない。こうして本発明によれば、アニールに起因する非点収差の発生が抑制された高品質な非円形レンズを得ることができる。また、離型後すぐにモールド上にレンズを戻せば、載置台上に直接レンズを載置する場合と比べて、レンズ表面の汚染を防ぐこともできる。アニールは、上記載置状態で載置台および円形モールドとともに、所定の雰囲気温度に加熱された公知の加熱炉に非円形レンズを配置して行うことができる。載置台上に配置する円形モールドは、アニール中に容易に軟化変形することのない耐熱性を有する材質からなるものであることが好ましい。ガラスモールド等の通常の注型重合に使用されるモールドは重合時の熱に耐え得る耐熱性を有するため、通常、アニールにおいて変形を起こすおそれはない。
【0019】
以上説明した態様では、アニール用載置台の円形開口部の内周面全周に設けたテーパー状の保持部によって円形モールドを支持しているが、本発明は当該態様に限定されるものではない。例えば、載置台円形開口部の内周面に複数の突起部として保持部を設けることも可能である。または、円形モールドの外形よりも載置台の円形開口部の開口径を小さくすることで、円形開口部の開口端面によって、円形モールドの非成形面周端部を保持することも可能である。なお本発明において使用されるアニール用載置台は、必ずしも円形の開口部を有するものに限定されるものではないが、従来使用されていたレンズ載置台をそのまま、または適宜改変して使用できる点で、円形開口部を有する載置台の使用が有利である。
【0020】
上記アニールは、必ずしも離型直後に行われるものに限定されるものではなく、離型されたレンズに施される各種のアニールとして適用可能である。例えば、プラスチックレンズ基材上に、各種機能性膜(ハードコート、反射防止膜等)を成膜した後に、成膜工程で加えられた熱により生じた歪を除去するためのアニールとしても、上記アニールを適用することができる。アニール条件は、アニールされるべきプラスチックレンズの材質、重合条件、成膜条件等によって決定されるものであり、一例として、例えばポリウレタン系のレンズについては、アニールとして通常20〜130℃で30分〜12時間程度の加熱処理が行われる。
【0021】
アニールに付される非円形レンズは、フィニッシュレンズ(両面が光学的に仕上げられたレンズブランク)であってもよく、セミフィニッシュレンズ(一方の面だけが光学的に仕上げられたレンズブランク)であってもよい。セミフィニッシュレンズは、表面は光学的に仕上げられた面であり、裏面はレンズ処方値に応じて所望のレンズ度数となるように研磨加工される。両面が光学的に仕上げられたプラスチックレンズは、眼鏡店において、または眼鏡店からの受注を受けた製造メーカーによって、眼鏡フレームの枠形状に縁摺加工され、次いでヤゲン加工される。その前後に反射防止膜、撥水膜等の所望の性能を付与するための機能性膜を、必要に応じて公知の方法でレンズ上に成膜することができる。前述のように、当該成膜の後にアニールを行ってもよい。縁摺加工され、必要に応じて機能性膜が形成されたレンズを眼鏡フレームにはめ込むことにより、眼鏡が完成される。本発明で製造されるプラスチックレンズの形状は、前述のように、円形レンズと比べて枠入れされるレンズの形状に近い非円形であるため、上記縁摺加工において不要な部分として除去され廃棄される部分の量を大幅に低減することができる。
【0022】
次に、注型重合により非円形レンズを成形可能な成形型について説明する。
【0023】
前記成形型の一態様は、所定の間隔をもって対向する2つの円形モールドと、前記間隔に挟入された円筒部材と、前記2つのモールドと円筒部材の周面を取り囲むことにより、該モールドと円筒部材との挟入状態を固定するシーリング部材と、を有する成形型(以下、「成形型A」という。)である。成形型Aでは、前記円筒部材は内部に断面形状が非円形の貫通孔を有し、該貫通孔が前記2つのモールドで封止されることにより、プラスチックレンズ原料液注入用キャビティが形成される。成形型Aは、非円形の貫通孔を封止することにより形成されるキャビティを有するため、該キャビティ内でプラスチックレンズ原料液の硬化反応を行うことにより、非円形のプラスチックレンズを得ることができる。
【0024】
図3は、成形型Aにおいて、2つの円形モールドに挟入される円筒部材の一例を示す概略図(図3左図は平面図、図3右図は斜視図)である。図3には、断面形状が角丸四角形の貫通孔2を有する円筒部材1を示したが、貫通孔の断面形状は角丸四角形に限定されるものではなく、非円形レンズの形状として例示した各種の形状であることができる。成形されるレンズの肉厚は、前記貫通孔の高さによって規定される。したがって、貫通孔の高さは所望のレンズ肉厚に応じて決定すればよい。また、前記貫通孔を取り囲む円筒部分4の形状は、2つのモールドとともにシーリング部材によって取り囲むことができるように、使用するモールドおよびシーリング部材の形状に応じて決定すればよい。例えばシーリング部材として環状のガスケットを使用する場合には、円筒部分の外径が、円筒部材が挿入されるガスケットの開口部分の内径と略一致するように決定すればよい。
また、図3に示す円筒部材1は、側面周縁部に切り欠3を有する。この切り欠は、プラスチックレンズ原料液の流路の一部をなす。この点については後述する。
【0025】
上記円筒部材は、通常、ガスケットの製造に使用される熱可塑性樹脂を射出成形等の公知の成形方法によって成形することにより得ることができる。前記切り欠は、カッター等で側面周縁部を切断することによって形成することができる。また、後述するように、切り欠に代えて側面に開口を有することもでき、該開口はカッターや穴あけ機の公知の開口手段によって側面に穴を開けることによって形成することができる。
【0026】
成形型Aは、上記円筒部材が2つのモールドの間隔に挟入されている点を除き、通常の注型重合で使用される成形型を何ら制限なく使用することができる。即ち、通常の注型重合で使用される成形型のキャビティ内に上記円筒部材を配置することにより、成形型Aを構成することができる。このように、従来使用されていた成形型を利用できることは、製造工程の大幅な変更なく非円形レンズを製造できるため有利である。
例えば、通常の注型重合で使用される成形型は、図4に示すように、レンズの前面(凸面)を形成すべく凹面側に成形面を有する凹面型である第一モールド21、レンズの後面(凹面)を形成すべく凸面側に成形面を有する第二モールド22を有し、環状のガスケット23が両モールドの周面を取り囲むことによって内部にキャビティ24が形成されている。第一モールドおよび第二モールドは、製造治具にて取り扱い可能な非転写面(非使用面27)とレンズの光学表面を転写させるための転写面(使用面26)を有する。使用面26はレンズの光学面形状および表面状態を転写する面である。この成形型では、注入口部25から注入されたプラスチックレンズ原料液が、ガスケット23の側面に設けられた注入口28からキャビティ24内へ導入され、キャビティ24内で硬化反応が行われる。したがって、得られる成形体は、キャビティ24と同様に円形である。
【0027】
一方、成形型Aは、キャビティ24に円筒部材が配置されることにより、プラスチックレンズ原料液注入用キャビティ2が形成される。このプラスチックレンズ原料液注入用キャビティの形状は非円形であるため、この中で硬化反応を行うことにより得られる成形体も非円形となる。
【0028】
図5は、図3に示す円筒部材を、図4に示すキャビティ内に配置した状態の断面図である。図5左図は、図3左図のY−Y線における断面図であり、図5右図は、図3左図のX−X線における断面図である。
【0029】
図5右図に示すように、ガスケット側面に設けた注入口28と、円筒部材の側面周縁部に設けた切り欠23を連通させることにより、プラスチックレンズ原料液注入用キャビティ2にプラスチックレンズ原料液を注入する流路が形成される。上記切り欠に代えて円筒部材の側面に開口を形成し、該開口と注入口28とを連通させることによって流路を形成することも可能であるが、位置合わせの容易性の観点からは、円筒部材に切り欠を設けて流路を形成することが好ましい。また、上記のように円筒部材の切り欠または開口とガスケットの注入口とを連通させることにより流路を形成することは、ガスケットと円筒部材の位置決めを容易にするうえでも有利である。
【0030】
以上説明した態様では、2つのモールドと円筒部材の周囲を取り囲むことにより、該モールドと円筒部材の挟入状態を固定するシーリング部材として環状のガスケットを使用しているが、成形型Aではガスケットに代えて粘着テープをシーリング部材として使用することも可能である。
【0031】
前記成形型の他の態様は、外形が円形であり、かつ一方に開口し他方が閉塞した凹部を有する有底モールドと、上記有底モールドの開口端を蓋閉する円形モールドと、上記2つのモールドの周囲を取り囲むことにより、上記蓋閉状態を固定するシーリング部材と、を有する成形型(以下、「成形型B」という)である。成形型Bでは、前記有底モールドの凹部が円形モールドによって蓋閉されることによって、該有底モールド内にプラスチックレンズ原料液注入用キャビティが形成される。従来の注型重合では、2つの円形モールドの周囲を取り囲むことにより形成されたキャビティ内でプラスチックレンズの重合を行っていたため、必然的に成形されるレンズは円形レンズに限られることとなる。これに対し成形型Bでは、プラスチックレンズ原料液注入用キャビティは有底モールドの凹部を円形モールドによって蓋閉することにより形成されるため、成形されるレンズの形状は、凹部の形状によって決定される。したがって、凹部を、断面形状が非円形の形状に設計することにより、非円形レンズを成形することができる。上記有底モールドは、凹部の形状が非円形であるとしても、外形は円形であるため他方の円形モールドとの位置合わせが容易である。
【0032】
図6は、成形型Bを構成する有底モールドの一例を示す概略図(図6左図は平面図、図6右図は斜視図)である。図6には、断面形状が角丸四角形の凹部32を有する有底モールド31を示したが、凹部の断面形状は角丸四角形に限定されるものではなく、非円形レンズの形状として例示した各種の形状であることができる。
【0033】
成形されるレンズの肉厚は、前記凹部の内部側面の高さによって規定される。したがって、凹部の高さは所望のレンズ肉厚に応じて決定すればよい。また、前記凹部を取り囲む円筒部分34の形状は、他方の円形モールドとともにシーリング部材によって取り囲むことができるように、他方のモールドおよびシーリング部材の形状に応じて決定すればよい。例えばシーリング部材として環状のガスケットを使用する場合には、円筒部分の外径が、円筒部材が挿入されるガスケットの開口部分の内径と略一致するように決定すればよい。
また、図6に示す有底モールド31は、側面周縁部に切り欠33を有する。この切り欠は、プラスチックレンズ原料液の流路の一部をなす。この点については後述する。
【0034】
図7は、図6に示す有底モールドの断面図である。図7上図は、図6上図のY−Y線における断面図であり、図7下図は、図6上図のX−X線における断面図である。図7に示す有底モールドの開口端面35は、円形モールドとの当接面となる。開口端面は、当接する円形モールドの面形状に応じた曲面ないし傾斜した形状を有していてもよい。これにより円形モールドとの蓋閉状態を安定化することができる。また、円形モールドとの蓋閉状態の安定性を高めるために、有底モールドの開口端面に鍔部を形成することもできる。
【0035】
上記有底モールドは、金属製であってもよく、樹脂製であってもよい。成形したレンズの取り出しの容易性の点からは、有底モールドは樹脂製であることが好ましい。樹脂製の有底モールドは、通常、ガスケットの製造に使用される熱可塑性樹脂を射出成形等の公知の成形方法によって成形することにより得ることができる。ここで、有底モールドの内部底面32’に転写される面に鏡面研磨加工を施した金型を用いて有底モールドを成形することにより、光学面を形成可能な成形面を有する有底モールドを得ることができる。そのような有底モールドを使用することにより、有底モールドの内部底面が転写された面を、研磨等を行うことなくそのままレンズの光学面とすることができる。前記切り欠は、カッター等で有底モールド側面周縁部を切断することによって形成することができる。また、後述するように、切り欠に代えて側面に開口を有することもでき、該開口はカッターや穴あけ機の公知の開口手段によって側面に穴を開けることによって形成することができる。
【0036】
成形型Bは、通常の注型重合で使用される成形型の上型または下型を上記有底モールドに置き換えることにより構成することができる。このように従来使用されていた成形型の構成を大きく変えることなく成形型を構成できることは、製造工程の大幅な変更を必要としない点で有利である。従来使用されていた成形型については、先に図4に基づき説明した通りである。成形型Bは、図4に示す第一モールドまたは第二モールドを有底モールドに置き換えることにより構成することができる。一例として図8に、図4に示す成形型の第二モールドを、図6に示す有底モールドに置き換えて構成した成形型の断面図を示す。図8上図は、図6上図のY−Y線における断面図であり、図8上図は、図6上図のX−X線における断面図である。図8に示す成形型では、第一モールド21が有底モールド31の開口端を蓋閉することにより閉塞された凹部32が、プラスチックレンズ原料液注入用キャビティとなる。したがって、この中で硬化反応を行うことにより得られる成形体は凹部と同様に非円形となるため、非円形レンズを得ることができる。なお、本発明において「蓋閉」とは、開放空間に覆いかぶさることにより該空間を閉塞することをいう。
【0037】
図8下図に示すように、ガスケット側面に設けた注入口28と、有底モールドの側面周縁部に設けた切り欠33を連通させることにより、プラスチックレンズ原料液注入用キャビティ32にプラスチックレンズ原料液を注入する流路が形成される。上記切り欠に代えて有底モールドの側面に開口を形成し、該開口と注入口28とを連通させることによって流路を形成することも可能であるが、位置合わせの容易性の観点からは、有底モールドに切り欠を設けて流路を形成することが好ましい。また、上記のように有底モールドの切り欠または開口とガスケットの注入口とを連通させることにより流路を形成することは、ガスケットと有底モールドの位置決めを容易にするうえでも有利である。なお、ガスケット内周面には、図8に示すように保持部39を設けることができる。この保持部39は、有底モールドの周縁部に当接して有底モールドを位置決め保持するためのものであり、例えば帯状に、または一定間隔で配置された突起として、ガスケット内周面に設けることができる。
【0038】
以上説明した態様では、2つのモールドの周囲を取り囲むことにより、該モールドの蓋閉状態を固定するシーリング部材として環状のガスケットを使用しているが、成形型Bには、ガスケットに代えて粘着テープをシーリング部材として使用することも可能である。
【0039】
前記成形型の更に他の態様は、一方に開口し他方が閉塞した凹部を有する有底形状の第一モールド(以下、「有底モールド」ともいう)と、上記有底モールドの開口に嵌挿する円形の第二モールドと、を有する成形型(以下、「成形型C」というである。成形型Cでは、前記第二モールドが第一モールドの開口に嵌挿することにより、前記第一モールドの凹部が第二モールドによって閉塞されてプラスチックレンズ原料液注入用キャビティが形成される。そして、前記第一モールドは側面にプラスチックレンズ原料液を上記キャビティに導入するための注入口を有する。したがって、上記注入口を介してキャビティ内にプラスチックレンズ原料液を注入することにより、該キャビティ内でプラスチックレンズの重合を行うことができる。ここで第一モールドの凹部は断面形状が非円形であり、これにより前記プラスチックレンズ原料液注入用キャビティも断面形状が非円形となる。かかる成形型Cによれば、第一モールドの凹部形状が転写された非円形プラスチックレンズを得ることができる。
【0040】
図9は、成形型Cを構成する有底モールドの一例を示す断面図である。図9に示す有底モールド41は、一方に開口し他方が閉塞した凹部42を有する有底形状である。凹部42の内部には、有底モールドの開口に嵌挿される第二モールドを位置決め保持するための保持部(段差部)44を設けることが好ましい。この保持部44の上端面44’は第二モールドとの当接面となる。上端面44’の外形を第二モールドの外形と略一致させることにより、第二モールドを安定に位置決め保持することができる。上端面44’の外形は、円形モールドを位置決め保持するために円形とする。
【0041】
図10は、図9に示す有底モールドの領域Aの平面図の一例である。上記の通り、保持部44の上端面44’の外形は、図10に示すように円形とする。これに対し、凹部42において第二モールドにより閉塞されキャビティを形成する部分の断面形状は、図10右図に示すように円形であると円形レンズが得られるが、非円形レンズを得るために図10左図に示すように非円形とする。図10左図に示す態様では、凹部42において第二モールドにより閉塞されキャビティを形成する部分の断面形状は角丸四角形であるが、これに限定されるものではなく、非円形レンズの形状として例示した各種の形状であることができる。成形されるレンズの肉厚は、前記凹部の第二モールドによって閉塞される部分の高さによって規定される。したがって、凹部の第二モールドによって閉塞される部分の高さは所望のレンズ肉厚に応じて決定すればよい。
【0042】
図10に示す有底モールド41は、側面に注入口43を有する。この注入口43を介して、プラスチックレンズ原料液がキャビティ内に導入される。
【0043】
図11は、図9に示す有底モールド41の開口に、円形の第二モールド45を嵌挿することにより構成される成形型51の断面図である。第二モールド45としては、ガラスモールド等の通常の注型重合に使用される円形モールドを使用することができる。この第二モールド45は、有形モールド41の保持部44の上端面44’と当接することにより位置決め保持される。これにより、第二モールドによって閉塞された閉塞空間として、プラスチックレンズ原料液注入用キャビティ42’が形成される。
【0044】
上記有底モールドは、金属製であってもよく、樹脂製であってもよい。開口に嵌挿された第二モールドの保持および成形したレンズの取り出しの容易性の点からは、有底モールドは樹脂製であることが好ましい。樹脂製の有底モールドは、通常、ガスケットの製造に使用される熱可塑性樹脂を射出成形等の公知の成形方法によって成形することにより得ることができる。ここで、有底モールドの内部底面に転写される面に鏡面研磨加工を施した金型を用いて有底モールドを成形することにより、光学面を形成可能な成形面を有する有底モールドを得ることができる。そのような有底モールドを使用することにより、有底モールドの内部底面が転写された面を、研磨等を行うことなくそのままレンズの光学面とすることができる。側面の注入口は、射出成形等の成形時に形成してもよく、成形後にカッターや穴あけ機の公知の開口手段によって側面に穴を開けることによって形成してもよい。有底モールドには、図11に示すように注入口43と連通する漏斗状の注入口部46を設けることが、プラスチックレンズ原料液の導入を容易にするうえで好ましい。注入口部46は、射出成形等の成形時に形成してもよく、別部材として成形し接着剤等で取り付けることもできる。
【0045】
本発明では、以上説明した成形型A〜C等の非円形のキャビティを有する成形型を使用することで、非円形レンズを得ることができる。上記キャビティに注入されるプラスチックレンズ原料液(以下、「レンズ原料液」ともいう)は、硬化性成分を含むものであり、通常眼鏡レンズ用プラスチックレンズ基材を構成する各種ポリマーの原料モノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーを含むことができ、共重合体を形成するために2種以上のモノマーの混合物を含むこともできる。上記硬化性成分は、熱硬化性成分であっても光硬化性成分であってもよいが、注型重合では通常、熱硬化性成分が使用される。レンズ原料液には、必要があればモノマーの種類に応じて選択した触媒を添加することもできる。また、レンズ原料液には、通常使用される各種添加剤を含むこともできる。
【0046】
前記レンズ原料液の具体例としては、例えば、メチルメタクリレートと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39)、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ポリウレタンとポリウレアの共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリチオウレタン、エン−チオール反応を利用したスルフィド樹脂、硫黄を含むビニル重合体等を重合可能な原料液が挙げられる。
【実施例】
【0047】
以下に、本発明を実施例により更に説明するが、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0048】
[実施例1]
1.成形型Cの作製
(1)有底モールドの成形
オレフィン系熱可塑性樹脂であるポリエチレンエラストマー(住友化学社製エクセレンFX)を用いて、内部底面から段差部の上端縁部までの部分の断面形状が角丸四角形(短径62mm、長径73mm、内部底面から上端縁部までの高さ14mm)である凹部を有し、かつ段差部の外形が直径約80mmの円形である有底モールドを射出成形により得た。有底モールドを成形するための金型としては、有底モールド凹部の内部底面に転写される面が鏡面研磨加工を施した凹面である金型を使用した。この金型を使用することにより、凹部の内部底面が光学面を形成可能な凸形状の成形面である有底モールドが成形された。
成形した有底モールドの側面にカッターによって注入口を形成した後、別途射出成形により成形した注入口部を、注入口部の開口と有底モールド側面の注入口が連通するように、有底モールド側面に接着剤で貼り付けた。
以上の工程により、図11に示す形状の有底モールドを得た。
【0049】
(2)成形型の組み立て
上記(1)で得た有底モールドの開口に、凸面を形成すべく凹形状の成形面を有する円形のガラスモールドを嵌挿することにより、図11に断面図を示す成形型を組み立てた。
【0050】
2.プラスチックレンズの成形
上記1.(2)で得た成形型を、有底モールドの注入口部が鉛直上方を向くように配置した後、注入口部からジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39)の原料液を、有底モールドの凹部を円形モールドで閉塞することにより形成したプラスチックレンズ原料液注入用キャビティ内に導入し、該キャビティが満たされた後に、所定の重合プログラムに従って硬化反応を行った。硬化反応終了後、成形型からレンズを取り出した。成形型から取り出したレンズの形状はキャビティと同様の形状、即ち、短径62mm、長径73mmの角丸四角形であった。即ち、非円形レンズを得ることができた。得られたレンズの厚さは、上記凹部の内部底面から上端縁部までの高さと同様であった。
【0051】
3.アニール
上記2.において成形型から取り出されたレンズを、図1に示す載置台上に、図2に示すように、レンズの被転写面を円形モールドの成形面と密着させた状態で円形モールドを介して配置した。この状態でレンズを加熱炉内に導入し、20〜115℃の条件でアニールした。
【0052】
[比較例1]
アニール時に円形モールドを介さず非円形レンズを直接載置台上に配置した点以外、実施例1と同様の方法でプラスチックレンズを得た。非円形レンズは長径側の両端面で載置台の保持部と当接したが、短径側の両端面では保持部と非接触状態であった。
【0053】
実施例1で得られたプラスチックレンズをレンズメーターのレンズ当てに当て、遠用屈折力測定基準点でのアスティグマを測定したところ、−0.040Dであった。本実施例で使用したレンズメーターは透過式であるが、反射式の表面屈折力装置や形状測定装置の測定結果から表面屈折力を解析することによってアスティグマを算出することもできる。一方、比較例1で得られたプラスチックレンズについて、同様の方法でアスティグマを測定したところ、−0.30Dであった。
【0054】
製品レンズとしては、アスティグマの判定規格は通常±0.045D以内とされている。
比較例1で得られたレンズのアスティグマは上記規格外であったのに対し、実施例1では、上記規格内のレンズを得ることができた。比較例1においてアスティグマが顕著に発生した理由は、非円形レンズが不安定な保持状態でアニールを施されたことによるものと考えられる。これに対し実施例1では、上記の通り眼鏡レンズの矯正に不要なアスティグマの発生を抑制することができた。これは、円形モールド上で非円形レンズを安定に保持した状態でアニールを行ったことによるものと考えられる。かかるレンズを使用すれば、装用感に優れる眼鏡を提供することができる。また、実施例1で得た非円形レンズは、有底モールドの内部底面から段差部の上端縁部までの部分の断面形状を円形(直径75mm)に変更した点以外、実施例1と同様に成形型の作製およびプラスチックレンズの成形を行うことにより得られる円形レンズと比べて、体積が約35%少ない。したがって体積が少ない分、1枚のレンズを得るためのプラスチックレンズ原料液の使用量を低減することができ、また、その分だけ枠入れのための縁摺加工において除去、廃棄される量を低減することができる。
【0055】
[実施例2]
1.成形型Aの作製
(1)円筒部材の成形
オレフィン系熱可塑性樹脂であるポリエチレンエラストマー(住友化学社製エクセレンFX)を用いて、断面形状が角丸四角形(短径52mm、長径72mm)である貫通孔を有する円筒部材(外径81.5mm、高さ17.5mm)を射出成形により得た。
成形した円筒部材側面の周縁部にカッターによって切り欠を形成した。
以上の工程により、図3に示す形状の円筒部材を得た。
【0056】
(2)成形型の組み立て
上記(1)で得た円筒部材を、上記と同様のポリエチレンエラストマー製の環状のガスケット内に挿入した。この際、ガスケット側面の注入口と切り欠が一致するように位置決めした。その後、ガスケットの開口に2枚の円形ガラスモールドを嵌め込むことにより、図5に断面図を示す成形型を組み立てた。
【0057】
2.プラスチックレンズの成形
上記1.(2)で得た成形型を、ガスケットの注入口部が鉛直上方を向くように配置した後、注入口部からジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39)の原料液を、円筒部材貫通孔を2枚のモールドで封止することにより形成したプラスチックレンズ原料液注入用キャビティ内に導入し、該キャビティが満たされた後に、所定の重合プログラムに従って硬化反応を行った。硬化反応終了後、成形型からレンズを取り出した。実施例2において、成形型から取り出したレンズの形状は、円筒部材の貫通孔と同様の形状、即ち、短径52mm、長径72mmの角丸四角形であった。即ち、非円形レンズを得ることができた。得られたレンズの厚さは、上記円筒部材の高さと同様であった。この非円形レンズから眼鏡フレームの枠形状に応じて不要な部分を除去し、眼鏡フレームに枠入れすることにより、眼鏡を完成させることができる。
例えば上記ガスケットに2枚の円形モールドを嵌め込み組み立てた成形型により成形される円形レンズは、ガスケット取り出し時には直径約80mm程度であり周縁部のバリ等を除去すると直径75mm程度となる。この円形レンズと比べると、上記非円形レンズの体積は約35%少ない。したがって体積が少ない分、1枚のレンズを得るためのプラスチックレンズ原料液の使用量を低減することができ、また、その分だけ枠入れのための縁摺加工において除去、廃棄される量を低減することができる。
【0058】
3.アニール
上記2.において成形型から取り出されたレンズを、図1に示す載置台上に、図2に示すように、レンズの被転写面を円形モールドの成形面と密着させた状態で円形モールドを介して配置した。この状態でレンズを加熱炉内に導入し、20〜115℃の条件でアニールした。
【0059】
[実施例3]
1.成形型Bの作製
(1)有底モールドの成形
オレフィン系熱可塑性樹脂であるポリエチレンエラストマー(住友化学社製エクセレンFX)を用いて、断面形状が角丸四角形である凹部(短径62mm、長径73mm、内部側面の高さ18mm)を有する、外形が円形の有底モールド(外径81.5mm、高さ23mm)を射出成形により得た。有底モールドを成形するための金型としては、有底モールド凹部の内部底面に転写される面が鏡面研磨加工を施した凹面である金型を使用した。この金型を使用することにより、凹部の内部底面が光学面を形成可能な凸形状の成形面である有底モールドが成形された。
成形した有底モールドの側面の周縁部にカッターによって切り欠を形成した。
以上の工程により、図6に示す形状の有底モールドを得た。
【0060】
(2)成形型の組み立て
上記(1)で得た有底モールドを、上記と同様のポリエチレンエラストマー製の環状のガスケット内に挿入した。この際、ガスケット側面の注入口と有底モールドの切り欠が一致するように位置決めした。その後、ガスケットの開口に、凸面を形成すべく凹形状の成形面を有する円形のガラスモールドを嵌め込むことにより、図8に断面図を示す成形型を組み立てた。
【0061】
2.プラスチックレンズの成形
上記1.(2)で得た成形型を、ガスケットの注入口部が鉛直上方を向くように配置した後、注入口部からジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39)の原料液を、有底モールドの凹部を円形モールドで蓋閉することにより形成したプラスチックレンズ原料液注入用キャビティ内に導入し、該キャビティが満たされた後に、所定の重合プログラムに従って硬化反応を行った。硬化反応終了後、成形型からレンズを取り出した。成形型から取り出したレンズの形状は、有底モールドの凹部と同様の形状、即ち、短径62mm、長径73mmの角丸四角形であった。即ち、非円形レンズを得ることができた。得られたレンズの厚さは、上記凹部の内部側面高さと同様であった。
【0062】
実施例3で得た非円形レンズは、有底モールドの凹部の断面形状を円形(直径75mm)に変更した点以外、実施例3と同様に成形型の作製およびプラスチックレンズの成形を行うことにより得られた円形レンズと比べて体積が約35%少ない。したがって体積が少ない分、1枚のレンズを得るためのプラスチックレンズ原料液の使用量を低減することができ、また、その分だけ枠入れのための縁摺加工において除去、廃棄される量を低減することができる。
【0063】
3.アニール
上記2.において成形型から取り出されたレンズを、図1に示す載置台上に、図2に示すように、レンズの被転写面を円形モールドの成形面と密着させた状態で円形モールドを介して配置した。この状態でレンズを加熱炉内に導入し、20〜115℃の条件でアニールした。
【0064】
実施例2、3で得られたプラスチックレンズをレンズメーターのレンズ当てに当て、遠用屈折力測定基準点でのアスティグマを測定したところ、いずれも通常の製品レンズのアスティグマの判定規格である±0.045D以内であり、非円形レンズにおいて眼鏡レンズの矯正に不要なアスティグマの発生を抑制することができたことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、眼鏡レンズの製造分野に有用である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックレンズの製造方法に関するものであり、詳しくはアニール工程に起因する非点収差(アスティグマ)の発生が抑制された高品質なプラスチックレンズを提供可能なプラスチックレンズの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プラスチックをレンズ形状に成形してプラスチックレンズを得る方法としては、成形型内でプラスチックレンズ原料液の重合を行う注型重合法が挙げられる。注型重合法では、モールド成形面形状が転写されることにより、レンズ光学面が形成される。
【0003】
注型重合法としては、2つの円形モールド(上型および下型)を環状のガスケットに挿入し、ガスケットと上下型によって形成されたキャビティ(空間)にプラスチックレンズ原料液を注入して重合する方法(特許文献1参照)、2つの円形モールドの周面にテープを巻きつけて形成したキャビティにプラスチックレンズ原料液を注入して重合する方法(特許文献2参照)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−30431号公報
【特許文献2】特開2007−216665号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り2つの円形モールドの周囲を取り囲むことにより形成されたキャビティ内で重合されたプラスチックレンズの形状は円形となる。なお、本明細書および本発明では、特記しない限り、形状は平面視形状をいうものとする。
しかしながら、実際に眼鏡を製造する際に眼鏡フレームに枠入れされるレンズの大部分は子午線方向が短く、水平方向が長い。したがって注型重合により得られた円形のプラスチックレンズ(レンズブランクス)の子午線方向の上下端部は切断されて廃棄されているのが実情である。この廃棄される部分に使用されたプラスチックレンズ原料液は実際の眼鏡レンズには不要なものであるため、原料液の使用量を低減し製造コストを抑えるためには、枠入れ時に除去される部分は可能な限り少なくすることが望ましい。また、環境負荷の点からも、枠入れ時の廃棄物量は低減することが望ましい。
【0006】
上記の廃棄物量およびプラスチックレンズ原料液の使用量を低減するための手段としては、注型重合により成形するレンズの形状を非円形とすることが考えられる。そこで、非円形レンズを成形するために非円形のモールドを使用することが考えられるが、非円形の2つのモールドを正確に位置合わせすることは困難である。
【0007】
これに対し本願出願人は、例えば非円形のキャビティを形成可能な円筒部材をモールド間に挟入する方法等によって、円形のモールドを使用しつつ非円形レンズが製造可能となることを見出し、先に特許出願した(特願2010−124271号、特願2010−142275号、特願2010−142276号)。
【0008】
上記方法によれば、位置合わせ容易な円形モールドを使用しつつ非円形レンズを成形することが可能となる。しかし本発明者らの検討により、例えば上記方法で作製される非円形レンズでは、眼鏡矯正に不要な非点収差(アスティグマ)が発生する場合があることが明らかとなった。非点収差が顕著に発生したレンズを用いて作製される眼鏡は装用感に劣るものとなるため、前記の廃棄物量およびプラスチックレンズ原料液の使用量を低減しつつ良好な装用感を有する眼鏡を提供するためには、非円形レンズにおいて非点収差を低減することが求められる。
【0009】
かかる状況下、本発明は良好な装用感を示す眼鏡を作製可能な高品質なプラスチックレンズ、詳しくは非円形プラスチックレンズを提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは上記目的を達成するために、非円形レンズにおいて非点収差が発生する理由について検討を重ねた結果、注型重合後、離型されたレンズに施されるアニール工程がその原因であると考えるに至った。この点についてより詳しく説明すると、注型重合によるプラスチックレンズの製造工程では、重合中に生じた内部歪みを取り除くために、離型後のレンズに対してアニール(加熱処理)が行われる。ただしアニール中にレンズが安定に保持されていないと、アニール加熱時にレンズが変形して光学歪を助長し、更にはモールド成形面形状を転写することにより成形されたレンズ光学面が変形するおそれがある。これに対し本願出願人は、特開平7−108622号公報および実開平7−18832号公報において、円形開口部を有するレンズ載置台上にレンズを配置し、レンズの安定性を維持した状態でプラスチックレンズのアニールを行うことを先に提案した。しかし本願出願人が上記公報において提案した方法は、円形レンズに対しては有効であるが、非円形レンズを円形開口部を有するレンズ載置台によって保持しようとすると、形状が合わないためアニール中にレンズの安定性を確保することは難しい。本発明者らは、ここでの不安定さが非円形レンズにおいて非点収差が発生する原因であると考えた。そこで対策として、非円形レンズの形状に対応する保持部を有する載置台を用いてアニールを行うことも考えられるが、これでは非円形レンズの異なる形状毎に対応する形状を有する載置台を準備しなければならないため、コストが著しく増加することとなってしまう。一方で特開2001−232691号公報には、非円形レンズにも適用可能なアニール時のレンズ保持方法として、レンズ表面を部分的に支持する方法が提案されているが、レンズ表面を直接支持する方法では、仮にアニール中の加熱によりレンズが軟化し形状変化を起こした場合には支持部分が凹状に窪み、面形状が崩れることが懸念される。また、眼鏡レンズの面形状は多種多様であり、非球面形状の累進要素を含むレンズなど面形状が複雑なものも多数ある。このような複雑な面形状のレンズ表面については、安定に支持し得る箇所を見出すことが難しい場合が多い。
これに対し本発明者らは更に鋭意検討を重ねた結果、非円形レンズを注型重合するために使用した円形モールドを介して非円形レンズを保持した状態でアニールを行うことで、非点収差の発生が抑制された高品質なプラスチックレンズ(非円形レンズ)が得られることを見出すに至った。上記方法によれば、円形開口部を有する従来のレンズ載置台をそのまま使用することができ、また、仮にアニール時の加熱によりレンズが軟化した場合にも、レンズ面に転写される形状は本来転写されるべきモールド成形面形状であるため、面精度が低下することはない。加えて、レンズを支持する面はレンズ面(被転写面)と雌雄の関係にあり形状がほぼ一致するモールド成形面であるため、上記のような複雑な面形状のレンズであっても安定に保持することができる。
本発明は、以上の知見に基づき完成された。
【0011】
即ち、上記目的は下記手段によって達成された。
[1]成形面同士が所定の間隔をもって対向する2つのモールドと、上記間隔を閉塞することにより形成されるキャビティを有する成形型の、上記キャビティへプラスチックレンズ原料液を注入すること、
上記キャビティ内でプラスチックレンズ原料液の硬化反応を行いモールド成形面形状が転写された被転写面を有するプラスチックレンズ基材を得ること、
上記プラスチックレンズ基材を成形型から離型すること、および、
離型後のプラスチックレンズ基材をアニールすること、
を含むプラスチックレンズの製造方法であって、
前記成形型を構成する2つのモールドの少なくとも一方は円形モールドであり、前記キャビティは断面の平面視形状が非円形であって、これにより該キャビティ内における硬化反応により得られるプラスチックレンズ基材の前記被転写面は非円形となり、
前記アニールを、載置台上に保持された円形モールドの前記成形面と前記プラスチックレンズ基材の被転写面を密着配置した状態で行うことを特徴とする、前記製造方法。
[2]前記載置台は、上方に開放する開口部を有し、該開口部内周面に設けられた保持部または開口端面により前記円形モールドを保持する、[1]に記載の製造方法。
[3]前記載置台の開口部は、円形開口部である[2]に記載の製造方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、円形レンズに比べて枠入れされるレンズ形状に近い形状を有し、かつ優れた装用感を有する眼鏡を提供可能な非円形プラスチックレンズを製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一態様において使用可能なアニール用載置台と、この上に載置される円形モールドおよび非円形レンズの斜視説明図である
【図2】図1に示すアニール用載置台上に円形モールドを介して非円形レンズを載置した状態を示す断面図(図1中のY−Y断面図)である。
【図3】本発明において使用可能な成形型において、2つの円形モールドに挟入される円筒部材の一例を示す概略図である。
【図4】本発明において使用可能な成形型の一部を構成するモールドおよびガスケットの一例を示す断面図である。
【図5】図3に示す円筒部材を、図4に示すキャビティ内に配置した状態の断面図である。
【図6】本発明において使用可能な成形型を構成する有底モールドの一例を示す概略図である。
【図7】図6に示す有底モールドの断面図である。
【図8】本発明において使用可能な成形型の一例を示す概略図である。
【図9】本発明において使用可能な成形型を構成する有底モールドの一例を示す断面図である。
【図10】図9に示す有底モールドの領域Aの平面図の一例である。
【図11】図9に示す有底モールドの開口に円形モールドを嵌挿することにより構成される成形型の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、成形面同士が所定の間隔をもって対向する2つのモールドと、上記間隔を閉塞することにより形成されるキャビティを有する成形型の、上記キャビティへプラスチックレンズ原料液を注入すること、上記キャビティ内でプラスチックレンズ原料液の硬化反応を行いモールド成形面形状が転写された被転写面を有するプラスチックレンズ基材を得ること、上記プラスチックレンズ基材を成形型から離型すること、および、離型後のプラスチックレンズ基材をアニールすること、を含むプラスチックレンズの製造方法に関する。前記成形型を構成する2つのモールドの少なくとも一方は円形モールドであり、前記キャビティは断面の平面視形状が非円形であって、これにより該キャビティ内における硬化反応により得られるプラスチックレンズ基材の前記被転写面は非円形となる。なお本発明においてキャビティについて断面の平面視形状とは、後述の図4等に示す縦断面ではなく、該縦断面と直交する横断面の断面形状をいうものとする。そして本発明のプラスチックレンズの製造方法では、前記アニールを、載置台上に保持された円形モールドの前記成形面と前記プラスチックレンズ基材の被転写面を密着配置した状態で行う。先に説明したように非円形レンズによれば、枠入れ時の廃棄物量およびプラスチックレンズ原料液の使用量を大幅に低減することができる。そして本発明によれば、前記の通り眼鏡矯正に不要な非点収差(アスティグマ)の発生が抑制された非円形レンズを提供することが可能となる。
以下、本発明のプラスチックレンズの製造方法(以下、「本発明の製造方法」ともいう)について、更に詳細に説明する。
【0015】
本発明の製造方法では、成形面同士が所定の間隔をもって対向する2つのモールドと、上記間隔を閉塞することにより形成されるキャビティを有する成形型を用いてプラスチックレンズ基材(以下、単に「プラスチックレンズ」または「レンズ」ともいう。)の注型重合を行うが、ここで従来の注型重合の成形型を用いては、非円形レンズを得ることはできない。他方、上記2つのモールドの両方が非円形モールドでは、モールドの正確な位置合わせを行うことは難しい。そこで本発明では、成形型を構成する2つのモールドの少なくとも一方を円形モールドとするとともに、断面の平面視形状が非円形のキャビティを有する成形型を使用する。かかる成形型としては、前記特許出願にかかる成形型を好適に使用することができ、それらの詳細は後述する。注型重合では、成形型キャビティ内でプラスチックレンズ原料液の硬化反応を行うことで、モールド成形面形状が転写された被転写面を有するプラスチックレンズ基材を得ることができる。そして本発明では上記成形型を使用することで、キャビティ内における硬化反応により得られるプラスチックレンズ基材の被転写面は非円形となる。こうして形成される非円形レンズの形状としては、角丸四角形、楕円形、多角形、等の円形以外の各種形状を挙げることができる。一般的な眼鏡フレームの形状は、子午線方向に短く、水平方向に長いため、この形状に近似した非円形レンズが廃棄物量のよりいっそうの低減の点から好ましく、この点からは角丸四角形または楕円形が好ましく、角丸四角形がより好ましい。また、非円形レンズの短径(子午線方向)の長さが45〜65mm程度、長径(水平方向)の長さが60〜75mm程度であることが、汎用されている眼鏡フレームの形状に対応可能であるため好ましい。成形されるレンズの肉厚はキャビティの深さによって規定され、通常、1〜30mm程度である。
【0016】
前記成形型を用いて成形された非円形レンズは、成形型から取り出された(離型された)後にアニールに付される。このアニールにより、重合中や後述する成膜中に生じた内部歪みを取り除くことができるが、非円形レンズのアニールについては前記した課題があった。これに対し先に説明したように本発明によれば、載置台上に保持された円形モールドの前記成形面と前記プラスチックレンズ基材の被転写面を密着配置した状態で行うことで、これら課題を解決することができる。以下、上記アニールについて、図面を参照しつつ更に詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明の一態様において使用可能なアニール用載置台11と、この上に載置される円形モールド13および非円形レンズ14の斜視説明図である。図2は、図1に示すアニール用載置台11上に円形モールド13を介して非円形レンズ14を載置した状態を示す断面図(図1中のY−Y断面図)である。図中の載置台11は、上方に開放する円形開口部を有し、該円形開口部の内周面には、全周にわたりテーパー状の保持面(テーパー面)を有する保持部12が設けられている。なお、保持部12のテーパー面の角度は、円形モールドの被保持面(図中では、凸面)の曲率半径等を考慮して設定される。また、前記テーパー面の角度は、取扱いの際に生じる接触や安全性等という観点から、糸面取り加工が施されていることが好ましい。また、アニール用載置台11は、取出用凹部15を有することができる。即ち、アニール用載置台11の周壁部には、一端が載置台11の円形開口部に開放し他端が保持部12と同一高さ位置または下方に位置して載置台11の内外を連通させる複数の取出用凹部15が設けられている。このような取出用凹部は無くてもよいし、1つまた2つ以上であってもよい。また、取出用凹部は載置台11の側壁の対向する位置に2つ形成されていることが好ましい。取出用凹部の形状寸法は、人の手指が入る程度の大きさに設定され、指による円形モールドおよび非円形レンズの取り出しを可能とする。円形モールド13は、上記テーパー状の保持部12に載置される。円形モールド13は、その周縁部下面16が保持部12に支持されるように載置される。この状態を図2の断面説明図(Y−Y)に示す。尚、図2には、便宜上、取出用凹部15は図示されていない。
【0018】
上記の円形モールド13の被保持面と反対側の面(図中では、凹面)はモールド成形面であって、非円形レンズの一方の面(被転写面)の形状は、注型重合により当該モールド成形面の面形状が転写されることにより形成されたものである。そして本発明では、図2に示すように、円形モールド13の成形面上に非円形レンズ14を、モールド成形面と被転写面を密着させた状態で配置する。このように非円形レンズを円形モールドを介して載置台上に配置すれば、非円形レンズの形状毎に載置台を準備する必要はなく、またモールド成形面と被転写面は雌雄の関係にあり形状はほぼ一致するため、従来の円環状の載置台のみでは困難であった、非円形レンズの安定保持が可能となり、更には複雑な面形状のレンズの安定保持も可能となる。加えて先に説明したように、仮にアニール中の加熱によりレンズが軟化したとしても、この軟化により転写される形状は本来転写されるべきモールド成形面形状であるため、面精度が低下することはない。こうして本発明によれば、アニールに起因する非点収差の発生が抑制された高品質な非円形レンズを得ることができる。また、離型後すぐにモールド上にレンズを戻せば、載置台上に直接レンズを載置する場合と比べて、レンズ表面の汚染を防ぐこともできる。アニールは、上記載置状態で載置台および円形モールドとともに、所定の雰囲気温度に加熱された公知の加熱炉に非円形レンズを配置して行うことができる。載置台上に配置する円形モールドは、アニール中に容易に軟化変形することのない耐熱性を有する材質からなるものであることが好ましい。ガラスモールド等の通常の注型重合に使用されるモールドは重合時の熱に耐え得る耐熱性を有するため、通常、アニールにおいて変形を起こすおそれはない。
【0019】
以上説明した態様では、アニール用載置台の円形開口部の内周面全周に設けたテーパー状の保持部によって円形モールドを支持しているが、本発明は当該態様に限定されるものではない。例えば、載置台円形開口部の内周面に複数の突起部として保持部を設けることも可能である。または、円形モールドの外形よりも載置台の円形開口部の開口径を小さくすることで、円形開口部の開口端面によって、円形モールドの非成形面周端部を保持することも可能である。なお本発明において使用されるアニール用載置台は、必ずしも円形の開口部を有するものに限定されるものではないが、従来使用されていたレンズ載置台をそのまま、または適宜改変して使用できる点で、円形開口部を有する載置台の使用が有利である。
【0020】
上記アニールは、必ずしも離型直後に行われるものに限定されるものではなく、離型されたレンズに施される各種のアニールとして適用可能である。例えば、プラスチックレンズ基材上に、各種機能性膜(ハードコート、反射防止膜等)を成膜した後に、成膜工程で加えられた熱により生じた歪を除去するためのアニールとしても、上記アニールを適用することができる。アニール条件は、アニールされるべきプラスチックレンズの材質、重合条件、成膜条件等によって決定されるものであり、一例として、例えばポリウレタン系のレンズについては、アニールとして通常20〜130℃で30分〜12時間程度の加熱処理が行われる。
【0021】
アニールに付される非円形レンズは、フィニッシュレンズ(両面が光学的に仕上げられたレンズブランク)であってもよく、セミフィニッシュレンズ(一方の面だけが光学的に仕上げられたレンズブランク)であってもよい。セミフィニッシュレンズは、表面は光学的に仕上げられた面であり、裏面はレンズ処方値に応じて所望のレンズ度数となるように研磨加工される。両面が光学的に仕上げられたプラスチックレンズは、眼鏡店において、または眼鏡店からの受注を受けた製造メーカーによって、眼鏡フレームの枠形状に縁摺加工され、次いでヤゲン加工される。その前後に反射防止膜、撥水膜等の所望の性能を付与するための機能性膜を、必要に応じて公知の方法でレンズ上に成膜することができる。前述のように、当該成膜の後にアニールを行ってもよい。縁摺加工され、必要に応じて機能性膜が形成されたレンズを眼鏡フレームにはめ込むことにより、眼鏡が完成される。本発明で製造されるプラスチックレンズの形状は、前述のように、円形レンズと比べて枠入れされるレンズの形状に近い非円形であるため、上記縁摺加工において不要な部分として除去され廃棄される部分の量を大幅に低減することができる。
【0022】
次に、注型重合により非円形レンズを成形可能な成形型について説明する。
【0023】
前記成形型の一態様は、所定の間隔をもって対向する2つの円形モールドと、前記間隔に挟入された円筒部材と、前記2つのモールドと円筒部材の周面を取り囲むことにより、該モールドと円筒部材との挟入状態を固定するシーリング部材と、を有する成形型(以下、「成形型A」という。)である。成形型Aでは、前記円筒部材は内部に断面形状が非円形の貫通孔を有し、該貫通孔が前記2つのモールドで封止されることにより、プラスチックレンズ原料液注入用キャビティが形成される。成形型Aは、非円形の貫通孔を封止することにより形成されるキャビティを有するため、該キャビティ内でプラスチックレンズ原料液の硬化反応を行うことにより、非円形のプラスチックレンズを得ることができる。
【0024】
図3は、成形型Aにおいて、2つの円形モールドに挟入される円筒部材の一例を示す概略図(図3左図は平面図、図3右図は斜視図)である。図3には、断面形状が角丸四角形の貫通孔2を有する円筒部材1を示したが、貫通孔の断面形状は角丸四角形に限定されるものではなく、非円形レンズの形状として例示した各種の形状であることができる。成形されるレンズの肉厚は、前記貫通孔の高さによって規定される。したがって、貫通孔の高さは所望のレンズ肉厚に応じて決定すればよい。また、前記貫通孔を取り囲む円筒部分4の形状は、2つのモールドとともにシーリング部材によって取り囲むことができるように、使用するモールドおよびシーリング部材の形状に応じて決定すればよい。例えばシーリング部材として環状のガスケットを使用する場合には、円筒部分の外径が、円筒部材が挿入されるガスケットの開口部分の内径と略一致するように決定すればよい。
また、図3に示す円筒部材1は、側面周縁部に切り欠3を有する。この切り欠は、プラスチックレンズ原料液の流路の一部をなす。この点については後述する。
【0025】
上記円筒部材は、通常、ガスケットの製造に使用される熱可塑性樹脂を射出成形等の公知の成形方法によって成形することにより得ることができる。前記切り欠は、カッター等で側面周縁部を切断することによって形成することができる。また、後述するように、切り欠に代えて側面に開口を有することもでき、該開口はカッターや穴あけ機の公知の開口手段によって側面に穴を開けることによって形成することができる。
【0026】
成形型Aは、上記円筒部材が2つのモールドの間隔に挟入されている点を除き、通常の注型重合で使用される成形型を何ら制限なく使用することができる。即ち、通常の注型重合で使用される成形型のキャビティ内に上記円筒部材を配置することにより、成形型Aを構成することができる。このように、従来使用されていた成形型を利用できることは、製造工程の大幅な変更なく非円形レンズを製造できるため有利である。
例えば、通常の注型重合で使用される成形型は、図4に示すように、レンズの前面(凸面)を形成すべく凹面側に成形面を有する凹面型である第一モールド21、レンズの後面(凹面)を形成すべく凸面側に成形面を有する第二モールド22を有し、環状のガスケット23が両モールドの周面を取り囲むことによって内部にキャビティ24が形成されている。第一モールドおよび第二モールドは、製造治具にて取り扱い可能な非転写面(非使用面27)とレンズの光学表面を転写させるための転写面(使用面26)を有する。使用面26はレンズの光学面形状および表面状態を転写する面である。この成形型では、注入口部25から注入されたプラスチックレンズ原料液が、ガスケット23の側面に設けられた注入口28からキャビティ24内へ導入され、キャビティ24内で硬化反応が行われる。したがって、得られる成形体は、キャビティ24と同様に円形である。
【0027】
一方、成形型Aは、キャビティ24に円筒部材が配置されることにより、プラスチックレンズ原料液注入用キャビティ2が形成される。このプラスチックレンズ原料液注入用キャビティの形状は非円形であるため、この中で硬化反応を行うことにより得られる成形体も非円形となる。
【0028】
図5は、図3に示す円筒部材を、図4に示すキャビティ内に配置した状態の断面図である。図5左図は、図3左図のY−Y線における断面図であり、図5右図は、図3左図のX−X線における断面図である。
【0029】
図5右図に示すように、ガスケット側面に設けた注入口28と、円筒部材の側面周縁部に設けた切り欠23を連通させることにより、プラスチックレンズ原料液注入用キャビティ2にプラスチックレンズ原料液を注入する流路が形成される。上記切り欠に代えて円筒部材の側面に開口を形成し、該開口と注入口28とを連通させることによって流路を形成することも可能であるが、位置合わせの容易性の観点からは、円筒部材に切り欠を設けて流路を形成することが好ましい。また、上記のように円筒部材の切り欠または開口とガスケットの注入口とを連通させることにより流路を形成することは、ガスケットと円筒部材の位置決めを容易にするうえでも有利である。
【0030】
以上説明した態様では、2つのモールドと円筒部材の周囲を取り囲むことにより、該モールドと円筒部材の挟入状態を固定するシーリング部材として環状のガスケットを使用しているが、成形型Aではガスケットに代えて粘着テープをシーリング部材として使用することも可能である。
【0031】
前記成形型の他の態様は、外形が円形であり、かつ一方に開口し他方が閉塞した凹部を有する有底モールドと、上記有底モールドの開口端を蓋閉する円形モールドと、上記2つのモールドの周囲を取り囲むことにより、上記蓋閉状態を固定するシーリング部材と、を有する成形型(以下、「成形型B」という)である。成形型Bでは、前記有底モールドの凹部が円形モールドによって蓋閉されることによって、該有底モールド内にプラスチックレンズ原料液注入用キャビティが形成される。従来の注型重合では、2つの円形モールドの周囲を取り囲むことにより形成されたキャビティ内でプラスチックレンズの重合を行っていたため、必然的に成形されるレンズは円形レンズに限られることとなる。これに対し成形型Bでは、プラスチックレンズ原料液注入用キャビティは有底モールドの凹部を円形モールドによって蓋閉することにより形成されるため、成形されるレンズの形状は、凹部の形状によって決定される。したがって、凹部を、断面形状が非円形の形状に設計することにより、非円形レンズを成形することができる。上記有底モールドは、凹部の形状が非円形であるとしても、外形は円形であるため他方の円形モールドとの位置合わせが容易である。
【0032】
図6は、成形型Bを構成する有底モールドの一例を示す概略図(図6左図は平面図、図6右図は斜視図)である。図6には、断面形状が角丸四角形の凹部32を有する有底モールド31を示したが、凹部の断面形状は角丸四角形に限定されるものではなく、非円形レンズの形状として例示した各種の形状であることができる。
【0033】
成形されるレンズの肉厚は、前記凹部の内部側面の高さによって規定される。したがって、凹部の高さは所望のレンズ肉厚に応じて決定すればよい。また、前記凹部を取り囲む円筒部分34の形状は、他方の円形モールドとともにシーリング部材によって取り囲むことができるように、他方のモールドおよびシーリング部材の形状に応じて決定すればよい。例えばシーリング部材として環状のガスケットを使用する場合には、円筒部分の外径が、円筒部材が挿入されるガスケットの開口部分の内径と略一致するように決定すればよい。
また、図6に示す有底モールド31は、側面周縁部に切り欠33を有する。この切り欠は、プラスチックレンズ原料液の流路の一部をなす。この点については後述する。
【0034】
図7は、図6に示す有底モールドの断面図である。図7上図は、図6上図のY−Y線における断面図であり、図7下図は、図6上図のX−X線における断面図である。図7に示す有底モールドの開口端面35は、円形モールドとの当接面となる。開口端面は、当接する円形モールドの面形状に応じた曲面ないし傾斜した形状を有していてもよい。これにより円形モールドとの蓋閉状態を安定化することができる。また、円形モールドとの蓋閉状態の安定性を高めるために、有底モールドの開口端面に鍔部を形成することもできる。
【0035】
上記有底モールドは、金属製であってもよく、樹脂製であってもよい。成形したレンズの取り出しの容易性の点からは、有底モールドは樹脂製であることが好ましい。樹脂製の有底モールドは、通常、ガスケットの製造に使用される熱可塑性樹脂を射出成形等の公知の成形方法によって成形することにより得ることができる。ここで、有底モールドの内部底面32’に転写される面に鏡面研磨加工を施した金型を用いて有底モールドを成形することにより、光学面を形成可能な成形面を有する有底モールドを得ることができる。そのような有底モールドを使用することにより、有底モールドの内部底面が転写された面を、研磨等を行うことなくそのままレンズの光学面とすることができる。前記切り欠は、カッター等で有底モールド側面周縁部を切断することによって形成することができる。また、後述するように、切り欠に代えて側面に開口を有することもでき、該開口はカッターや穴あけ機の公知の開口手段によって側面に穴を開けることによって形成することができる。
【0036】
成形型Bは、通常の注型重合で使用される成形型の上型または下型を上記有底モールドに置き換えることにより構成することができる。このように従来使用されていた成形型の構成を大きく変えることなく成形型を構成できることは、製造工程の大幅な変更を必要としない点で有利である。従来使用されていた成形型については、先に図4に基づき説明した通りである。成形型Bは、図4に示す第一モールドまたは第二モールドを有底モールドに置き換えることにより構成することができる。一例として図8に、図4に示す成形型の第二モールドを、図6に示す有底モールドに置き換えて構成した成形型の断面図を示す。図8上図は、図6上図のY−Y線における断面図であり、図8上図は、図6上図のX−X線における断面図である。図8に示す成形型では、第一モールド21が有底モールド31の開口端を蓋閉することにより閉塞された凹部32が、プラスチックレンズ原料液注入用キャビティとなる。したがって、この中で硬化反応を行うことにより得られる成形体は凹部と同様に非円形となるため、非円形レンズを得ることができる。なお、本発明において「蓋閉」とは、開放空間に覆いかぶさることにより該空間を閉塞することをいう。
【0037】
図8下図に示すように、ガスケット側面に設けた注入口28と、有底モールドの側面周縁部に設けた切り欠33を連通させることにより、プラスチックレンズ原料液注入用キャビティ32にプラスチックレンズ原料液を注入する流路が形成される。上記切り欠に代えて有底モールドの側面に開口を形成し、該開口と注入口28とを連通させることによって流路を形成することも可能であるが、位置合わせの容易性の観点からは、有底モールドに切り欠を設けて流路を形成することが好ましい。また、上記のように有底モールドの切り欠または開口とガスケットの注入口とを連通させることにより流路を形成することは、ガスケットと有底モールドの位置決めを容易にするうえでも有利である。なお、ガスケット内周面には、図8に示すように保持部39を設けることができる。この保持部39は、有底モールドの周縁部に当接して有底モールドを位置決め保持するためのものであり、例えば帯状に、または一定間隔で配置された突起として、ガスケット内周面に設けることができる。
【0038】
以上説明した態様では、2つのモールドの周囲を取り囲むことにより、該モールドの蓋閉状態を固定するシーリング部材として環状のガスケットを使用しているが、成形型Bには、ガスケットに代えて粘着テープをシーリング部材として使用することも可能である。
【0039】
前記成形型の更に他の態様は、一方に開口し他方が閉塞した凹部を有する有底形状の第一モールド(以下、「有底モールド」ともいう)と、上記有底モールドの開口に嵌挿する円形の第二モールドと、を有する成形型(以下、「成形型C」というである。成形型Cでは、前記第二モールドが第一モールドの開口に嵌挿することにより、前記第一モールドの凹部が第二モールドによって閉塞されてプラスチックレンズ原料液注入用キャビティが形成される。そして、前記第一モールドは側面にプラスチックレンズ原料液を上記キャビティに導入するための注入口を有する。したがって、上記注入口を介してキャビティ内にプラスチックレンズ原料液を注入することにより、該キャビティ内でプラスチックレンズの重合を行うことができる。ここで第一モールドの凹部は断面形状が非円形であり、これにより前記プラスチックレンズ原料液注入用キャビティも断面形状が非円形となる。かかる成形型Cによれば、第一モールドの凹部形状が転写された非円形プラスチックレンズを得ることができる。
【0040】
図9は、成形型Cを構成する有底モールドの一例を示す断面図である。図9に示す有底モールド41は、一方に開口し他方が閉塞した凹部42を有する有底形状である。凹部42の内部には、有底モールドの開口に嵌挿される第二モールドを位置決め保持するための保持部(段差部)44を設けることが好ましい。この保持部44の上端面44’は第二モールドとの当接面となる。上端面44’の外形を第二モールドの外形と略一致させることにより、第二モールドを安定に位置決め保持することができる。上端面44’の外形は、円形モールドを位置決め保持するために円形とする。
【0041】
図10は、図9に示す有底モールドの領域Aの平面図の一例である。上記の通り、保持部44の上端面44’の外形は、図10に示すように円形とする。これに対し、凹部42において第二モールドにより閉塞されキャビティを形成する部分の断面形状は、図10右図に示すように円形であると円形レンズが得られるが、非円形レンズを得るために図10左図に示すように非円形とする。図10左図に示す態様では、凹部42において第二モールドにより閉塞されキャビティを形成する部分の断面形状は角丸四角形であるが、これに限定されるものではなく、非円形レンズの形状として例示した各種の形状であることができる。成形されるレンズの肉厚は、前記凹部の第二モールドによって閉塞される部分の高さによって規定される。したがって、凹部の第二モールドによって閉塞される部分の高さは所望のレンズ肉厚に応じて決定すればよい。
【0042】
図10に示す有底モールド41は、側面に注入口43を有する。この注入口43を介して、プラスチックレンズ原料液がキャビティ内に導入される。
【0043】
図11は、図9に示す有底モールド41の開口に、円形の第二モールド45を嵌挿することにより構成される成形型51の断面図である。第二モールド45としては、ガラスモールド等の通常の注型重合に使用される円形モールドを使用することができる。この第二モールド45は、有形モールド41の保持部44の上端面44’と当接することにより位置決め保持される。これにより、第二モールドによって閉塞された閉塞空間として、プラスチックレンズ原料液注入用キャビティ42’が形成される。
【0044】
上記有底モールドは、金属製であってもよく、樹脂製であってもよい。開口に嵌挿された第二モールドの保持および成形したレンズの取り出しの容易性の点からは、有底モールドは樹脂製であることが好ましい。樹脂製の有底モールドは、通常、ガスケットの製造に使用される熱可塑性樹脂を射出成形等の公知の成形方法によって成形することにより得ることができる。ここで、有底モールドの内部底面に転写される面に鏡面研磨加工を施した金型を用いて有底モールドを成形することにより、光学面を形成可能な成形面を有する有底モールドを得ることができる。そのような有底モールドを使用することにより、有底モールドの内部底面が転写された面を、研磨等を行うことなくそのままレンズの光学面とすることができる。側面の注入口は、射出成形等の成形時に形成してもよく、成形後にカッターや穴あけ機の公知の開口手段によって側面に穴を開けることによって形成してもよい。有底モールドには、図11に示すように注入口43と連通する漏斗状の注入口部46を設けることが、プラスチックレンズ原料液の導入を容易にするうえで好ましい。注入口部46は、射出成形等の成形時に形成してもよく、別部材として成形し接着剤等で取り付けることもできる。
【0045】
本発明では、以上説明した成形型A〜C等の非円形のキャビティを有する成形型を使用することで、非円形レンズを得ることができる。上記キャビティに注入されるプラスチックレンズ原料液(以下、「レンズ原料液」ともいう)は、硬化性成分を含むものであり、通常眼鏡レンズ用プラスチックレンズ基材を構成する各種ポリマーの原料モノマー、オリゴマーおよび/またはプレポリマーを含むことができ、共重合体を形成するために2種以上のモノマーの混合物を含むこともできる。上記硬化性成分は、熱硬化性成分であっても光硬化性成分であってもよいが、注型重合では通常、熱硬化性成分が使用される。レンズ原料液には、必要があればモノマーの種類に応じて選択した触媒を添加することもできる。また、レンズ原料液には、通常使用される各種添加剤を含むこともできる。
【0046】
前記レンズ原料液の具体例としては、例えば、メチルメタクリレートと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39)、ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと一種以上の他のモノマーとの共重合体、ポリウレタンとポリウレアの共重合体、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、不飽和ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリウレタン、ポリチオウレタン、エン−チオール反応を利用したスルフィド樹脂、硫黄を含むビニル重合体等を重合可能な原料液が挙げられる。
【実施例】
【0047】
以下に、本発明を実施例により更に説明するが、本発明は実施例に示す態様に限定されるものではない。
【0048】
[実施例1]
1.成形型Cの作製
(1)有底モールドの成形
オレフィン系熱可塑性樹脂であるポリエチレンエラストマー(住友化学社製エクセレンFX)を用いて、内部底面から段差部の上端縁部までの部分の断面形状が角丸四角形(短径62mm、長径73mm、内部底面から上端縁部までの高さ14mm)である凹部を有し、かつ段差部の外形が直径約80mmの円形である有底モールドを射出成形により得た。有底モールドを成形するための金型としては、有底モールド凹部の内部底面に転写される面が鏡面研磨加工を施した凹面である金型を使用した。この金型を使用することにより、凹部の内部底面が光学面を形成可能な凸形状の成形面である有底モールドが成形された。
成形した有底モールドの側面にカッターによって注入口を形成した後、別途射出成形により成形した注入口部を、注入口部の開口と有底モールド側面の注入口が連通するように、有底モールド側面に接着剤で貼り付けた。
以上の工程により、図11に示す形状の有底モールドを得た。
【0049】
(2)成形型の組み立て
上記(1)で得た有底モールドの開口に、凸面を形成すべく凹形状の成形面を有する円形のガラスモールドを嵌挿することにより、図11に断面図を示す成形型を組み立てた。
【0050】
2.プラスチックレンズの成形
上記1.(2)で得た成形型を、有底モールドの注入口部が鉛直上方を向くように配置した後、注入口部からジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39)の原料液を、有底モールドの凹部を円形モールドで閉塞することにより形成したプラスチックレンズ原料液注入用キャビティ内に導入し、該キャビティが満たされた後に、所定の重合プログラムに従って硬化反応を行った。硬化反応終了後、成形型からレンズを取り出した。成形型から取り出したレンズの形状はキャビティと同様の形状、即ち、短径62mm、長径73mmの角丸四角形であった。即ち、非円形レンズを得ることができた。得られたレンズの厚さは、上記凹部の内部底面から上端縁部までの高さと同様であった。
【0051】
3.アニール
上記2.において成形型から取り出されたレンズを、図1に示す載置台上に、図2に示すように、レンズの被転写面を円形モールドの成形面と密着させた状態で円形モールドを介して配置した。この状態でレンズを加熱炉内に導入し、20〜115℃の条件でアニールした。
【0052】
[比較例1]
アニール時に円形モールドを介さず非円形レンズを直接載置台上に配置した点以外、実施例1と同様の方法でプラスチックレンズを得た。非円形レンズは長径側の両端面で載置台の保持部と当接したが、短径側の両端面では保持部と非接触状態であった。
【0053】
実施例1で得られたプラスチックレンズをレンズメーターのレンズ当てに当て、遠用屈折力測定基準点でのアスティグマを測定したところ、−0.040Dであった。本実施例で使用したレンズメーターは透過式であるが、反射式の表面屈折力装置や形状測定装置の測定結果から表面屈折力を解析することによってアスティグマを算出することもできる。一方、比較例1で得られたプラスチックレンズについて、同様の方法でアスティグマを測定したところ、−0.30Dであった。
【0054】
製品レンズとしては、アスティグマの判定規格は通常±0.045D以内とされている。
比較例1で得られたレンズのアスティグマは上記規格外であったのに対し、実施例1では、上記規格内のレンズを得ることができた。比較例1においてアスティグマが顕著に発生した理由は、非円形レンズが不安定な保持状態でアニールを施されたことによるものと考えられる。これに対し実施例1では、上記の通り眼鏡レンズの矯正に不要なアスティグマの発生を抑制することができた。これは、円形モールド上で非円形レンズを安定に保持した状態でアニールを行ったことによるものと考えられる。かかるレンズを使用すれば、装用感に優れる眼鏡を提供することができる。また、実施例1で得た非円形レンズは、有底モールドの内部底面から段差部の上端縁部までの部分の断面形状を円形(直径75mm)に変更した点以外、実施例1と同様に成形型の作製およびプラスチックレンズの成形を行うことにより得られる円形レンズと比べて、体積が約35%少ない。したがって体積が少ない分、1枚のレンズを得るためのプラスチックレンズ原料液の使用量を低減することができ、また、その分だけ枠入れのための縁摺加工において除去、廃棄される量を低減することができる。
【0055】
[実施例2]
1.成形型Aの作製
(1)円筒部材の成形
オレフィン系熱可塑性樹脂であるポリエチレンエラストマー(住友化学社製エクセレンFX)を用いて、断面形状が角丸四角形(短径52mm、長径72mm)である貫通孔を有する円筒部材(外径81.5mm、高さ17.5mm)を射出成形により得た。
成形した円筒部材側面の周縁部にカッターによって切り欠を形成した。
以上の工程により、図3に示す形状の円筒部材を得た。
【0056】
(2)成形型の組み立て
上記(1)で得た円筒部材を、上記と同様のポリエチレンエラストマー製の環状のガスケット内に挿入した。この際、ガスケット側面の注入口と切り欠が一致するように位置決めした。その後、ガスケットの開口に2枚の円形ガラスモールドを嵌め込むことにより、図5に断面図を示す成形型を組み立てた。
【0057】
2.プラスチックレンズの成形
上記1.(2)で得た成形型を、ガスケットの注入口部が鉛直上方を向くように配置した後、注入口部からジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39)の原料液を、円筒部材貫通孔を2枚のモールドで封止することにより形成したプラスチックレンズ原料液注入用キャビティ内に導入し、該キャビティが満たされた後に、所定の重合プログラムに従って硬化反応を行った。硬化反応終了後、成形型からレンズを取り出した。実施例2において、成形型から取り出したレンズの形状は、円筒部材の貫通孔と同様の形状、即ち、短径52mm、長径72mmの角丸四角形であった。即ち、非円形レンズを得ることができた。得られたレンズの厚さは、上記円筒部材の高さと同様であった。この非円形レンズから眼鏡フレームの枠形状に応じて不要な部分を除去し、眼鏡フレームに枠入れすることにより、眼鏡を完成させることができる。
例えば上記ガスケットに2枚の円形モールドを嵌め込み組み立てた成形型により成形される円形レンズは、ガスケット取り出し時には直径約80mm程度であり周縁部のバリ等を除去すると直径75mm程度となる。この円形レンズと比べると、上記非円形レンズの体積は約35%少ない。したがって体積が少ない分、1枚のレンズを得るためのプラスチックレンズ原料液の使用量を低減することができ、また、その分だけ枠入れのための縁摺加工において除去、廃棄される量を低減することができる。
【0058】
3.アニール
上記2.において成形型から取り出されたレンズを、図1に示す載置台上に、図2に示すように、レンズの被転写面を円形モールドの成形面と密着させた状態で円形モールドを介して配置した。この状態でレンズを加熱炉内に導入し、20〜115℃の条件でアニールした。
【0059】
[実施例3]
1.成形型Bの作製
(1)有底モールドの成形
オレフィン系熱可塑性樹脂であるポリエチレンエラストマー(住友化学社製エクセレンFX)を用いて、断面形状が角丸四角形である凹部(短径62mm、長径73mm、内部側面の高さ18mm)を有する、外形が円形の有底モールド(外径81.5mm、高さ23mm)を射出成形により得た。有底モールドを成形するための金型としては、有底モールド凹部の内部底面に転写される面が鏡面研磨加工を施した凹面である金型を使用した。この金型を使用することにより、凹部の内部底面が光学面を形成可能な凸形状の成形面である有底モールドが成形された。
成形した有底モールドの側面の周縁部にカッターによって切り欠を形成した。
以上の工程により、図6に示す形状の有底モールドを得た。
【0060】
(2)成形型の組み立て
上記(1)で得た有底モールドを、上記と同様のポリエチレンエラストマー製の環状のガスケット内に挿入した。この際、ガスケット側面の注入口と有底モールドの切り欠が一致するように位置決めした。その後、ガスケットの開口に、凸面を形成すべく凹形状の成形面を有する円形のガラスモールドを嵌め込むことにより、図8に断面図を示す成形型を組み立てた。
【0061】
2.プラスチックレンズの成形
上記1.(2)で得た成形型を、ガスケットの注入口部が鉛直上方を向くように配置した後、注入口部からジエチレングリコールビスアリルカーボネート樹脂(CR−39)の原料液を、有底モールドの凹部を円形モールドで蓋閉することにより形成したプラスチックレンズ原料液注入用キャビティ内に導入し、該キャビティが満たされた後に、所定の重合プログラムに従って硬化反応を行った。硬化反応終了後、成形型からレンズを取り出した。成形型から取り出したレンズの形状は、有底モールドの凹部と同様の形状、即ち、短径62mm、長径73mmの角丸四角形であった。即ち、非円形レンズを得ることができた。得られたレンズの厚さは、上記凹部の内部側面高さと同様であった。
【0062】
実施例3で得た非円形レンズは、有底モールドの凹部の断面形状を円形(直径75mm)に変更した点以外、実施例3と同様に成形型の作製およびプラスチックレンズの成形を行うことにより得られた円形レンズと比べて体積が約35%少ない。したがって体積が少ない分、1枚のレンズを得るためのプラスチックレンズ原料液の使用量を低減することができ、また、その分だけ枠入れのための縁摺加工において除去、廃棄される量を低減することができる。
【0063】
3.アニール
上記2.において成形型から取り出されたレンズを、図1に示す載置台上に、図2に示すように、レンズの被転写面を円形モールドの成形面と密着させた状態で円形モールドを介して配置した。この状態でレンズを加熱炉内に導入し、20〜115℃の条件でアニールした。
【0064】
実施例2、3で得られたプラスチックレンズをレンズメーターのレンズ当てに当て、遠用屈折力測定基準点でのアスティグマを測定したところ、いずれも通常の製品レンズのアスティグマの判定規格である±0.045D以内であり、非円形レンズにおいて眼鏡レンズの矯正に不要なアスティグマの発生を抑制することができたことが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、眼鏡レンズの製造分野に有用である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形面同士が所定の間隔をもって対向する2つのモールドと、上記間隔を閉塞することにより形成されるキャビティを有する成形型の、上記キャビティへプラスチックレンズ原料液を注入すること、
上記キャビティ内でプラスチックレンズ原料液の硬化反応を行いモールド成形面形状が転写された被転写面を有するプラスチックレンズ基材を得ること、
上記プラスチックレンズ基材を成形型から離型すること、および、
離型後のプラスチックレンズ基材をアニールすること、
を含むプラスチックレンズの製造方法であって、
前記成形型を構成する2つのモールドの少なくとも一方は円形モールドであり、前記キャビティは断面の平面視形状が非円形であって、これにより該キャビティ内における硬化反応により得られるプラスチックレンズ基材の前記被転写面は非円形となり、
前記アニールを、載置台上に保持された円形モールドの前記成形面と前記プラスチックレンズ基材の被転写面を密着配置した状態で行うことを特徴とする、前記製造方法。
【請求項2】
前記載置台は、上方に開放する開口部を有し、該開口部内周面に設けられた保持部または開口端面により前記円形モールドを保持する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記載置台の開口部は、円形開口部である請求項2に記載の製造方法。
【請求項1】
成形面同士が所定の間隔をもって対向する2つのモールドと、上記間隔を閉塞することにより形成されるキャビティを有する成形型の、上記キャビティへプラスチックレンズ原料液を注入すること、
上記キャビティ内でプラスチックレンズ原料液の硬化反応を行いモールド成形面形状が転写された被転写面を有するプラスチックレンズ基材を得ること、
上記プラスチックレンズ基材を成形型から離型すること、および、
離型後のプラスチックレンズ基材をアニールすること、
を含むプラスチックレンズの製造方法であって、
前記成形型を構成する2つのモールドの少なくとも一方は円形モールドであり、前記キャビティは断面の平面視形状が非円形であって、これにより該キャビティ内における硬化反応により得られるプラスチックレンズ基材の前記被転写面は非円形となり、
前記アニールを、載置台上に保持された円形モールドの前記成形面と前記プラスチックレンズ基材の被転写面を密着配置した状態で行うことを特徴とする、前記製造方法。
【請求項2】
前記載置台は、上方に開放する開口部を有し、該開口部内周面に設けられた保持部または開口端面により前記円形モールドを保持する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記載置台の開口部は、円形開口部である請求項2に記載の製造方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2013−28079(P2013−28079A)
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−165883(P2011−165883)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【出願人】(509333807)ホヤ レンズ タイランド リミテッド (25)
【氏名又は名称原語表記】HOYA Lens Thailand Ltd
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年2月7日(2013.2.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【出願人】(509333807)ホヤ レンズ タイランド リミテッド (25)
【氏名又は名称原語表記】HOYA Lens Thailand Ltd
【Fターム(参考)】
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