説明

プラスチックレンズ成形型用接着剤塗布方法

【課題】注入補助部材の内部に接着剤が入ることがないように注入補助部材に接着剤を塗布することができるようにする。
【解決手段】プラスチックレンズ成形型に接着される注入補助部材2を取付片12の接着面12aが上方を指向するように支持する支持ステップを有する。パイプからなる塗布ノズル21に接着剤を供給し、この塗布ノズル21の下端に接着剤14の液滴14aを保持させる接着剤供給ステップを有する。液滴14aを接着面12aに付着させる塗布ステップを有する。塗布ステップの後に取付片12と塗布ノズル21との間隔を予め定めた長さL1だけ拡げ、かつ接着剤14の糸引きによって生じた糸31が切れるまで取付片12に対して塗布ノズル21を停止させる接着剤分離ステップを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックレンズを成形する型に接着される注入補助部材に接着剤を塗布するためのプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の眼鏡用プラスチックレンズは、一般に注型重合によって形成されている。この注型重合とは、成形型にプラスチックレンズ材料を注入し、熱あるいは紫外線等のエネルギーにより硬化させて成形物を得る方法である。注型重合に用いる成形型は、たとえば特許文献1に記載されたものがある。
【0003】
特許文献1に開示されている成形型は、レンズ成形用のキャビティが内部に形成されたモールド組立体と、このモールド組立体に接着された注入補助部材とによって構成されている。前記モールド組立体は、レンズ面成形用の型となる一対の円板状モールド部材と、これらのモールド部材の外周部にコバ面成形用の型となるように巻き付けられたテープとによって構成されている。前記テープには、プラスチックレンズ材料を注入するための注入口が形成されている。
【0004】
前記注入補助部材は、プラスチックレンズ材料を前記キャビティ内に導くためのものである。この注入補助部材は、プラスチックレンズ材料を供給するノズルを挿入するための筒体と、この筒体の一端部に一体に形成された板状の取付片とを備えている。前記取付片は、前記モールド組立体の外周面に沿うような形状に形成されている。この取付片には、前記筒体の内外を連通する開口が形成されている。この取付片は、粘着テープや接着剤によって前記モールド組立体の外周面に接着されている。
【0005】
この取付片に形成されている前記開口は、前記テープの注入口と対向する位置に位置付けられている。前記ノズルは、注入補助部材から前記テープの注入口に挿入され、前記キャビティ内にプラスチックレンズ材料を注入する。
【0006】
前記注入補助部材をモールド組立体に接着するためには、先ず、作業者が注入補助部材の取付片に粘着テープを貼着したり、接着剤を塗布する。粘着テープには、取付片の開口と対向する位置に貫通孔が形成されている。そして、このように粘着テープが貼着されたり接着剤が塗布された注入保持部材を作業者が手で持ち、モールド組立体の外周面に押し付けることによって、注入補助部材がモールド組立体に接着される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開 WO 2010/098466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
発明者は、上述した注入補助部材の取付片に液状の接着剤を塗布する接着剤塗布装置を用いて接着剤を塗布する工程の自動化を図ることを考えている。しかし、接着剤を塗布ノズルで前記取付片に塗布すると、後述するように接着剤の特性が原因となる問題が生じた。
【0009】
接着剤は、取付片の接着面上に保持されるように粘性を有するものである。この種の接着剤を塗布ノズルで前記取付片に塗布し、その後、塗布ノズルを取付片から離すと、接着剤が糸を引く。この糸が伸びた状態でノズル側の先端から切断されると、この糸が取付片の開口部分に入るおそれがある。注入補助部材の内部に前記糸が入ると、この糸がプラスチックレンズ材料とともにモールド組立体内に混入する。このように接着剤が混入したプラスチックレンズは不良品になる。
【0010】
本発明はこのような問題を解消するためになされたもので、注入補助部材の内部に接着剤が入ることがないように注入補助部材に接着剤を塗布することが可能なプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために、本発明に係るプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布方法は、プラスチックレンズを成形する中空の円柱状を呈する型の周壁に接着される取付片を有しかつ前記周壁に開口する注入口と連通するレンズ材料供給用の穴が形成された注入補助部材を前記取付片の接着面が上方を指向するように支持する支持ステップと、前記接着面を指向するように接着面の上方に配置されたパイプからなる塗布ノズルに接着剤を供給し、前記塗布ノズルの下端に接着剤の液滴を保持させる接着剤供給ステップと、前記取付片と前記塗布ノズルとの間隔を狭くして前記液滴を前記接着面に付着させる塗布ステップと、前記塗布ステップの後に前記取付片と前記塗布ノズルとの間隔を予め定めた長さだけ拡げ、かつ取付片に対して塗布ノズルが離間するときの接着剤の糸引きによって生じた糸が切れるまで取付片に対して塗布ノズルを停止させる接着剤分離ステップとを有することを特徴とする。
【0012】
本発明は、上記発明において、前記予め定めた長さは、前記取付片における前記接着剤が塗布された位置と前記穴との距離より短く設定されていることを特徴とする。
【0013】
本発明は、上記発明において、前記接着剤の糸引きによって生じた糸が切れたか否かの判定は、前記取付片に対して前記塗布ノズルを停止させた後の経過時間に基づいて行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、接着剤の糸引きによって生じた糸は、注入補助部材の中に入ることがない長さに生じ、取付片に対して塗布ノズルが停止している間に切れる。したがって、本発明によれば、注入補助部材の内部に接着剤が入ることがないように注入補助部材に接着剤を塗布することが可能なプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係るプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布方法を実施するために用いる接着剤塗布装置の概略構成を示す側面図である。
【図2】プラスチックレンズ用成形型の分解斜視図である。
【図3】プラスチックレンズ用成形型の断面図で、同図(A)は成形型の全体を破断して示す縦断面図、同図(B)は要部を拡大して示す断面図である。
【図4】塗布ノズルとホルダーの底面図である。
【図5】図4におけるV−V線断面図である。
【図6】図4におけるVI−VI線断面図である。
【図7】塗布方法を説明するための要部の側面図で、同図(A)は接着剤の液滴を塗布ノズルに保持させた状態を示し、同図(B)は接着剤を取付片に付着させた状態を示し、同図(C)は塗布ノズルを所定距離だけ上昇させた状態を示す。
【図8】塗布方法を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係るプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布方法の一実施の形態を図1〜図8によって詳細に説明する。先ず、本発明に係る接着剤塗布方法を実施するための接着剤塗布装置の構成を図1によって説明する。
【0017】
図1に示す接着剤塗布装置11は、接着剤(図示せず)が塗布される部材である注入補助部材2を支持する支持部3と、注入補助部材2に接着剤を塗布する塗布部4とを備えている。
前記注入補助部材2は、図2および図3に示すように、プラスチックレンズ成形型5の一部を構成するものである。プラスチックレンズ成形型5は、プラスチックレンズを成形するためのものである。この実施の形態によるプラスチックレンズ成形型5は、図2および図3(A)に示すように、中空の円柱状を呈するモールド組立体6と、このモールド組立体6の外周面に接着された前記注入補助部材2とによって構成されている。
【0018】
前記モールド組立体6は、一対の円板状のモールド部材(第1のモールド部材7と第2のモールド部材8)と、これらのモールド部材7,8の外周面に巻き付けられたテープ9とによって構成されている。
このモールド組立体6において、注入補助部材2は、テープ9に注入口10が形成された後に接着される。
【0019】
前記モールド部材7,8は、光を透過可能なガラス材料によって所定の形状に形成されており、レンズ面を成形するための型を構成している。図3において上側に位置する第1のモールド部材7の下面7aは、上方に向けて凸になる凹曲面であり、他方の第2のモールド部材8の上面8aは、上方に向けて凸になる凸曲面である。
前記テープ9は、レンズのコバ面を成形するための型を構成している。このテープ9は、光を透過可能な材料によって形成された、いわゆる粘着テープである。このテープ9は、第1、第2のモールド部材7,8の外周面に1周以上巻回されて貼り付けられている。
【0020】
すなわち、プラスチックレンズ成形型5の周壁は、このテープ9によって構成されている。
前記テープ9は、第1、第2のモールド部材7,8の外周面の全域を覆っている。また、テープ9は、第2のモールド部材8の非使用面から突出することがないように第1、第2のモールド部材7,8に巻き付けられている。前記非使用面とは、第2のモールド部材8における上面8aとは反対側の凹面である。なお、テープ7の幅は、第1、第2のモールド部材7,8間の間隙を密閉する幅であれば適宜変更することができる。
【0021】
前記テープ9は、図示してはいないが帯状の基材と、この基材の片面(モールド部材7,8と対向する面)に形成された粘着層とによって構成されている。前記基材としては、たとえばポリエステルを挙げることができる。前記粘着層を形成する材料は、プラスチックレンズ材料に溶け出したり、重合を阻害したりしないものが望ましく、たとえばシリコーン系の粘着剤などを挙げることができる。
【0022】
このテープ9を一対のモールド部材7,8に巻き付けることによって、内部にレンズ成形用のキャビティ11(図3参照)を有するがモールド組立体6が組み立てられる。
テープ9に形成された注入口10は、プラスチックレンズ材料をキャビティ11内に注入するためのものである。この注入口10は、第1、第2のモールド部材7,8に巻き付けられたテープ9にたとえばカッター(図示せず)によって形成される。
【0023】
前記注入補助部材2は、図2および図3に示すように、前記モールド組立体6の外周部に重ねることが可能な形状に形成された取付片12と、この取付片12に一体に形成された補助部材本体13とによって構成されている。この注入補助部材2は、プラスチック材料によって形成されている。前記取付片12は、モールド組立体6の外周面に沿うような曲率で湾曲した板状に形成されている。図3に示す組立状態においては、取付片12は接着剤14によってモールド組立体6に接着されている。
【0024】
前記補助部材本体13は、断面形状が四角形の筒体であって、前記取付片12からモールド組立体6とは反対側に延びるように形成されている。この実施の形態による補助部材本体13は、図3に示すように、モールド組立体6の径方向と平行に延びる平板部13aと、この平板部13aと対向する傾斜部13bとを有している。前記傾斜部13bは、取付片12に向かうにしたがって漸次平板部13aに接近するように傾斜している。また、補助部材本体13における取付片12とは反対側の端部には、フランジ15が設けられている。
【0025】
この補助部材本体13の内部は、溶融状態のプラスチックレンズ材料(図示せず)が流れる通路16になる。前記取付片12には、前記通路16の一端の開口となるスリット状の穴17(図3参照)が形成されている。この穴17は、取付片12をモールド組立体6側から見た状態において、前記平板部13aと平行に延びるように形成されている。
注入補助部材2は、テープ9に注入口10が形成された後、前記穴17が前記注入口10と対向する状態でモールド組立体6に接着される。
【0026】
前記接着剤塗布装置1の前記支持部3は、図1に示すように、注入補助部材2を取付片12が露出する状態で支持するように構成されている。図1に示す支持部3は、取付片12の接着面12aが上方を指向する状態で取付片12を支持している。
接着剤塗布装置1の前記塗布部4は、前記取付片12と対向する複数の塗布ノズル21と、接着剤供給装置22および駆動装置23とを備えている。
前記各塗布ノズル21は、図5〜図7に示すように、パイプによって形成されている。これらの塗布ノズル21は、上下方向に延びる状態で前記取付片12の上方に位置付けられている。塗布ノズル21の下端は、下方に向けて開口している。各塗布ノズル21の先端(下端)と前記取付片12の接着面12a(図1においては上面)との間の間隔Dは、全ての塗布ノズル21において均等に形成されている。
【0027】
前記接着剤供給装置22は、前記塗布ノズル21に液状の接着剤14を供給するものである。また、この接着剤供給装置22は、図7に示すように、塗布ノズル21の先端に接着剤14が液滴14aとなって保持される状態を保つことができるように構成されている。この実施の形態で使用する接着剤14は、紫外線硬化型のもので、所定の粘度を有するものが用いられている。なお、接着剤14は、紫外線硬化型のものに限定することはなく、適宜変更することが可能である。
【0028】
この実施の形態による塗布ノズル21は、図4〜図6に示すように、一つのホルダー24に支持されており、このホルダー24を介して前記接着剤供給装置22に支持されている。前記ホルダー24は、上方に向けて開口する箱状の本体25と、この本体25の開口部を閉塞する蓋体26とによって構成されている。
前記蓋体26は、前記接着剤供給装置22の下端部に取付けられている。接着剤供給装置22の接着剤用通路22aは、ホルダー24の内部に形成された接着剤用貯留室27に開口している。
【0029】
前記塗布ノズル21は、図5および図6に示すように、前記本体25の下壁25aを貫通する状態で下壁25aに取付けられている。すなわち、接着剤用貯留室27は、各塗布ノズル21に連通されている。この接着剤用貯留室27の容積は、接着剤用貯留室27に供給された接着剤14が全ての塗布ノズル21に分配されるように、接着剤14を予め定めた量だけ貯留できる大きさに設定されている。
【0030】
この実施の形態による塗布ノズル21の長さは、前記下壁25aが水平方向に延びるように形成されているために、各塗布ノズル21の水平方向の位置に対応させて変えられている。すなわち、取付片12の長手方向の中央と対応する塗布ノズル21が最も長くなり、取付片12の長手方向の両端と対応する塗布ノズル21が最も短くなる。これらの塗布ノズル21の先端(下端)と取付片12の接着面12aとの間隔は、この実施の形態においても全ての塗布ノズル21において等しくなるように形成されている。
【0031】
これらの塗布ノズル21は、図7に示すように、下方から見て長方形状に並ぶように配置されている。これらの塗布ノズル21が並ぶことによって形成される長方形は、取付片12を上方から見たときに取付片12の前記穴17を囲むような大きさに形成されている。すなわち、複数の塗布ノズル21は、上方から見て前記穴17を囲むように配置されている。
【0032】
前記駆動装置23は、前記塗布ノズル21と前記取付片12との間隔を変えることができるように構成されている。図1に示す駆動装置23は、塗布ノズル21を昇降させる構成のものである。前記接着剤供給装置22によって塗布ノズル21の先端に保持された接着剤14の液滴14aは、塗布ノズル21が図1に示す初期位置から下降することによって、取付片12の接着面12aに付着する。
【0033】
次に、前記接着剤塗布装置1を用いた本発明の接着剤塗布方法を図7(A)〜(C)と図8に示すフローチャートとによって説明する。
この実施の形態による接着剤塗布装置1は、接着剤14を塗布する動作を開始する以前に予め準備動作を行う。この準備動作は、前記駆動装置23が前記塗布ノズル21と接着剤供給装置22とを図1に示す初期位置に上昇させる動作である。この準備動作は、接着剤14の塗布が終了した直後に実施することができる。
【0034】
接着剤14を塗布するためには、先ず、図8に示すフローチャートの支持ステップS1において、作業者または自動投入装置が注入補助部材2を支持部3に支持させる。このとき、接着剤供給装置22の接着剤用通路22aおよび接着剤用貯留室27が接着剤14で満たされていない場合は、接着剤供給装置22を動作させ、接着剤14を塗布ノズル21に供給する。接着剤供給装置22は、全ての塗布ノズル21から接着剤14が流出する状態で停止される。
【0035】
しかる後、接着剤供給装置22が動作し、図7(A)に示すように、塗布ノズル21の下端に接着剤14の液滴14aが形成される。このように塗布ノズル21の下端に液滴14aが形成されることにより、図8に示すフローチャートの接着剤供給ステップS2が終了する。
【0036】
次いで、図8に示すフローチャートの塗布ステップS3において、駆動装置23が接着剤供給装置22と塗布ノズル21とを下降位置まで下降させる。この実施の形態でいう前記下降位置とは、図7(B)に示すように、接着剤14の液滴14aが取付片12の上面(接着面12a)に付着するときの塗布ノズル21および接着剤供給装置22の上下方向の位置である。
【0037】
すなわち、塗布ステップS3を実施することにより、接着剤14の液滴14aが取付片12の接着面12aに付着する。この接着剤14は、複数の塗布ノズル21によっていわゆるスタンプ式に取付片12の穴17を囲む位置に塗布される。
接着剤14が取付片12に付着した後、図8に示すフローチャートの接着剤分離ステップS4において、駆動装置23が塗布ノズル21から接着剤14を分離させる動作を行う。
【0038】
塗布ノズル21の下端が接着剤14を介して取付片12に接続されている状態で塗布ノズル21が上昇すると、接着剤14が糸を引いて上方に伸びるようになる。この糸は、伸びた後に粘性が低下して切れる。長く伸びた糸が上端(塗布ノズル21との接続部)で切れて倒れると、取付片12の前記穴17に入るおそれがある。
このように接着剤14からなる糸が穴17に入ることを防ぐために、前記駆動装置23は、先ず、図7(C)に示すように、塗布ノズル21と接着剤供給装置22とを前記糸が短く伸びる程度の長さL1だけ上昇させる。
【0039】
この上昇行程において、長さL1に相当する長さの接着剤14からなる糸31が形成される。前記長さL1は、前記取付片12における接着剤14が塗布された位置と前記穴17との距離L2(図4参照)より短く設定されている。このため、長さL1の前記糸31が上端で切れて倒れたとしても、糸31が前記穴17に入ることはない。
駆動装置23は、塗布ノズル21と接着剤供給装置22とを前記上昇行程で上昇させた後に前記糸31の粘性が失われて糸31が切れるまで停止させる。
糸31が切断するタイミングは、接着剤14を伸ばした時の糸31の長さと、接着剤14そのものの液粘度によっても異なる。このため、接着剤供給装置22の停止時間は、前記糸31の長さや接着剤14の液粘度を加味して適宜設定する。
【0040】
前記糸31が切れたか否かの判定は、上昇後の経過時間に基づいて行われる。すなわち、駆動装置23は、第1回目の上昇行程が終了した後に糸31が切れるために必要な時間が経過するまで待機する。この待機動作が終了することによって接着剤分離ステップS4が終了する。
糸31が切れた後、駆動装置23は、図8に示すフローチャートの復帰ステップS5において、塗布ノズル21と接着剤供給装置22とを図1に示す初期位置に上昇させる。
【0041】
上述したように接着剤14が塗布された注入補助部材2は、注入補助部材用移載装置(図示せず)や作業者によって支持部3から取出され、次の工程に送られる。注入補助部材2は、次の工程において、モールド組立体6の所定の位置に接着させられる。
【0042】
この実施の形態による接着剤塗布方法によれば、接着剤14の糸引きによって生じた糸31は、注入補助部材2の中に入ることがない長さに生じ、取付片12に対して塗布ノズル21が停止している間に切れる。したがって、この実施の形態によれば、注入補助部材2の内部に接着剤14が入ることがないように注入補助部材2に接着剤14を塗布することが可能なプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布方法を提供することができる。
【0043】
この実施の形態において、前記接着剤14の糸引きによって生じた糸31が切れたか否かの判定は、取付片12に対して塗布ノズル21を停止させた後の経過時間に基づいて行われている。このため、前記判定を行うにあたっては、糸31が切断される時間だけ装置を停止させておくだけでよいから、低いコストで行うことができる。
【符号の説明】
【0044】
1…接着剤塗布装置、2…注入補助部材、5…プラスチックレンズ成形型、6…モールド組立体、9…テープ、12…取付片、14a…液滴、17…穴、21…塗布ノズル、22…接着剤供給装置、24…ホルダー、31…糸。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチックレンズを成形する中空の円柱状を呈する型の周壁に接着される取付片を有しかつ前記周壁に開口する注入口と連通するレンズ材料供給用の穴が形成された注入補助部材を前記取付片の接着面が上方を指向するように支持する支持ステップと、
前記接着面を指向するように接着面の上方に配置されたパイプからなる塗布ノズルに接着剤を供給し、前記塗布ノズルの下端に接着剤の液滴を保持させる接着剤供給ステップと、
前記取付片と前記塗布ノズルとの間隔を狭くして前記液滴を前記接着面に付着させる塗布ステップと、
前記塗布ステップの後に前記取付片と前記塗布ノズルとの間隔を予め定めた長さだけ拡げ、かつ取付片に対して塗布ノズルが離間するときの接着剤の糸引きによって生じた糸が切れるまで取付片に対して塗布ノズルを停止させる接着剤分離ステップとを有することを特徴とするプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布方法。
【請求項2】
請求項1記載のプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布方法において、前記予め定めた長さは、前記取付片における前記接着剤が塗布された位置と前記穴との距離より短く設定されていることを特徴とするプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布方法。
【請求項3】
請求項1または請求項2記載のプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布方法において、前記接着剤の糸引きによって生じた糸が切れたか否かの判定は、前記取付片に対して前記塗布ノズルを停止させた後の経過時間に基づいて行うことを特徴とするプラスチックレンズ成形型用接着剤塗布方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−200701(P2012−200701A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−69469(P2011−69469)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】