説明

プラスチック中のピリチオン安定剤としてのデヒドロ酢酸の塩

本発明は、ピリチオン含有材料、特にプラスチック材料又はペンキ、コーティング、接着剤又は繊維品のようなアウトドア環境にさらされる他の材料の変色を防止する方法に関する。該方法は、シャンプーのようなパーソナルケア組成物などの他のピリチオン含有材料の変色の防止にも同様に適している。デヒドロ酢酸又はその塩を含む変色抑制剤が、ピリチオン含有材料に添加される。変色は、環式有機リン酸エステル又は有機亜リン酸エステルの添加なしで防止される。該変色抑制剤の使用は、ピリチオンの抗菌効果を妨げない。

【発明の詳細な説明】
【発明の背景】
【0001】
本発明は、ピリチオンを含む製品、特に、風化条件に曝される製品の、変色の抑制に関する。
【0002】
プラスチックのような製品、特に風化条件に曝されるものは、それらの使用に応じて抗菌剤の使用を必要とする。プラスチック中に通常用いられる抗菌剤はピリチオンであり、特にピリチオン亜鉛である。ピリチオン亜鉛を含有するプラスチック材料は、残念ながら変色しやすい。
【0003】
US 4348308は、塩化ビニルポリマーの色安定性を改善するための添加組成物として、デヒドロ酢酸(DHA)又はその塩及びオルト三級アルキル置換された亜リン酸フェニルを使用することを開示している。この組成物は、抗菌剤を含んでいない。
【0004】
US 4301162は、プラスチックモールディングなどを含む工業的及び農業的製品のための抗菌剤及び抗真菌剤として、デヒドロ酢酸及びそのアルカリ塩を、2−ピリジンチオール1−オキシド(ピリチオン)及びその塩と組み合わせて使用することを開示している。US 4301162は、ピリチオン及びその塩によって起こされるプラスチックの変色について開示しておらず、また、ピリチオン及びその塩を含有するプラスチックにおけるアウトドアの風化条件の影響も開示していない。
【0005】
JP 09−087229 Aは、環式有機リン酸エステル化合物及びデヒドロ酢酸又はその金属塩をポリマー材料に添加することによって形成された抗菌組成物を開示している。JP 09−087229 Aによれば、デヒドロ酢酸化合物を伴う特定の酸性有機リン酸エステル又はその金属塩は、優れた抗菌性の性質、熱耐性、水中又は油中安定性をもたらし、また、まったく変色を有さない。JP 09−087229 Aは、2−ピリジンチオール1−オキシド及びその塩を含む、ポリマー材料に添加され得る多数のさらなる抗菌剤及び抗真菌剤化合物を収載している。JP 09−087229 Aは、アウトドアの風化条件に曝されたプラスチック材料の変色については議論していない。
【0006】
ピリチオン抗菌剤を含有する材料、特にプラスチック材料の、変色を防ぐための有効な手段に対する要求がなお存在している。
【発明の概要】
【0007】
本発明は、ピリチオン又はその塩を含有する材料の変色を抑制する方法に関する。該方法に従って、デヒドロ酢酸(DHA)又はその塩を含む変色抑制剤の有効量が該材料に添加される。
【0008】
本発明の一つの好ましい態様において、ピリチオン又はその塩を含有する材料は、ペンキ、コーティング、接着剤(adhesives)、及び繊維品から成る群から選択され、それは、屋外の風化条件に曝される。
【0009】
本発明の第2の好ましい態様において、ピリチオン又はその塩を含有する材料は、パーソナルケア製品であり、さらにはシャンプーであることが好ましい。
【0010】
本発明の他の好ましい態様において、ピリチオン又はその塩を含有する材料は、屋外の風化条件に曝されるプラスチック材料である。
【0011】
本発明の好ましい態様において、変色抑制剤は、デヒドロ酢酸の亜鉛塩(デヒドロ酢酸亜鉛)である。
【0012】
さらに好ましくは、ピリチオン又はその塩を含有する材料は押出し成形された(extruded)プラスチック材料であり、デヒドロ酢酸の亜鉛塩はプラスチック材料と共に共有押出し成形される。
【0013】
本発明の方法におけるプラスチック材料は、有機亜リン酸エステル、置換された亜リン酸フェニル、オルト置換された亜リン酸フェニル、又はオルト三級アルキル置換された亜リン酸フェニルを添加剤として必要としないか、好ましくはそれらを含まない。
【0014】
同様に、本発明の方法において、プラスチック材料は、環式有機リン酸エステルを添加剤として必要としないか、好ましくは含まない。
【0015】
他の好ましい態様において、変色抑制剤は、本質的にデヒドロ酢酸又はその塩から成り、いずれのさらなる変色抑制剤も含まない。
【0016】
該変色抑制剤は、ピリチオン又はその塩の抗菌作用を阻害することなく、変色を防ぐ利点を提供する。
【0017】
本発明のより良い理解のために、他の目的及びさらなる目的と共に、以下の記載が実施例と組み合わせて参照され、その範囲を添付の請求範囲に示す。
【詳細な説明】
【0018】
本発明は、ピリチオン又はその塩の存在によって引き起こされる材料の変色を抑制する方法に関する。
【0019】
該方法の一つの好ましい態様において、ピリチオン又はその塩を含有する材料は、ペンキ、コーティング、接着剤、及び繊維品から成る群から選択され、それは屋外の風化条件に曝される。
【0020】
該方法の第2の好ましい態様において、ピリチオン又はその塩を含有する材料は、パーソナルケア製品であり、さらに好ましくはシャンプーである。
【0021】
他の、本発明の特に好ましい態様において、ピリチオン又はその塩を含有する材料は、風化条件、特に屋外の風化条件に曝されるか、又は、曝されることが予期されるプラスチック材料である。
【0022】
プラスチック材料は、プラスチックを形成することができる任意のポリマー材料(ポリマー)から作られ得る。ポリマーの例の中には、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、及びポリスルホンが含まれる。好ましくは、ポリマーは、ビニルポリマーである。ビニルポリマーの例の中には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリビニルアルコール、ポリビニルアセテート、ポリ塩化ビニル、及びポリアクリロニトリルが含まれる。他の適切なポリマーは、ポリブタジエンである。ポリマープラスチック材料は、熱可塑性又は熱硬化性であってよい。
【0023】
屋外の風化条件に曝されるか又は曝されることが予期されるプラスチック材料は、アウトドアの使用又は屋外の環境に曝されることが意図されるすべてのプラスチック材料を含む。屋外の風化条件に曝されるか又は曝されることが予期されるプラスチック材料の例は、例えば、遊び場の設備、例えば、滑り台、ブランコなど;建築物の壁板;屋根ふき材料;自動車の部品;ドア;ごみ入れ;パティオ用の家具;公園のベンチ;アウトドアスポーツ装備;プランター;リサイクル容器;屋外のホース;屋外の延長コード;砂箱;子供の水遊び場;屋外の子供用のおもちゃ;靴;及び多数の他の品目を含む。
【0024】
アウトドアの風化条件は、例えば、日光、風、雨、温度変化(極度の及び穏やかな変化のいずれも)、雹、霙、雪などを含む。他のあまり普通ではない屋外風化条件は、例えば、砂、塵、又は塩水を含む。
【0025】
プラスチック材料の変色は、例えば、薄黒くなること(darkening)、黄ばみ(yellowing)、退色、及び他の任意の、意図した色からのプラスチック材料の色の変化を含む。変色は、時間の経過により生じ得るか、又は、プラスチック材料の処理の間に生じ得る。
【0026】
本発明に従って処理される材料は、ピリチオン又はその塩を抗菌剤として含む。それ故、ピリチオン又はその塩は、抗菌剤として作用するのに十分な量で存在する。例えば、ピリチオン又はその塩の量は、約500重量ppmから約5、000重量ppmであってよい。好ましくは、ピリチオン又はその塩の量は、約1,000重量ppmから約4,000重量ppmである。好ましくは、ピリチオンは、ピリチオン塩である。適切なピリチオンの塩は、例えば、ピリチオンナトリウム、ピリチオン亜鉛及びピリチオン銅を含む。より好ましくは、ピリチオン塩は、ピリチオン亜鉛である。
【0027】
デヒドロ酢酸又はデヒドロ酢酸の塩は、ピリチオン又はその塩によって引き起こされる変色を防ぐために、プラスチック材料のような材料に加えられる。デヒドロ酢酸の塩は、例えば、デヒドロ酢酸リチウム、デヒドロ酢酸ナトリウム、デヒドロ酢酸カリウム、デヒドロ酢酸マグネシウム、デヒドロ酢酸カルシウム、デヒドロ酢酸ストロンチウム、デヒドロ酢酸バリウム、デヒドロ酢酸銅、及びデヒドロ酢酸亜鉛を含む。それらの塩(特にデヒドロ酢酸亜鉛)の中には、対応する無水形態の代わりに用いられ得るか又はそれに加えて用いられ得る、安定な水和物を形成するものもある。さらに好ましくは、本発明の変色抑制剤は、デヒドロ酢酸の亜鉛塩、ナトリウム塩、又は銅塩であり、デヒドロ酢酸の亜鉛塩が最も好ましい。
【0028】
さらにより好ましくは、ピリチオン又はその塩を含有する材料は、押出し成形されたプラスチック材料であり、デヒドロ酢酸の亜鉛塩はプラスチック材料と共有押出し成形される。
【0029】
ピリチオン及びその塩は、有機亜リン酸エステルの添加なしで、デヒドロ酢酸及びその塩によって安定化され得る。有機亜リン酸エステルは、例えば、亜リン酸ジフェニル及び/又は亜リン酸トリフェニルを含む亜リン酸フェニル;置換された亜リン酸ジフェニル及び/又は亜リン酸トリフェニルを含む置換された亜リン酸フェニル;オルト置換された亜リン酸フェニル;及びオルト三級アルキル置換された亜リン酸フェニルを含む。
【0030】
ピリチオン及びその塩は、環式有機リン酸エステルの添加なしで、デヒドロ酢酸及びその塩によって安定化され得る。
【0031】
他の好ましい態様において、変色抑制剤は、本質的にデヒドロ酢酸又はその塩から成り、いずれのさらなる変色抑制剤も含まない。
【0032】
デヒドロ酢酸又はその塩及びピリチオン又はその塩は、処理の前、処理の間、又は処理後のいずれの時点でもプラスチックに添加されてよい。デヒドロ酢酸又はその塩及びピリチオン又はその塩は、任意の順序でポリマー材料に添加されてよい。例えば、ピリチオン又はその塩が最初に添加されてもよく、デヒドロ酢酸又はその塩が最初に添加されてもよく、或いは、ピリチオン又はその塩及びデヒドロ酢酸又はその塩が同時にポリマー材料に添加されてもよい。
【0033】
デヒドロ酢酸又はその塩の有効量は、ピリチオン又はその塩によって引き起こされるプラスチック材料のような材料の変色を防ぐのに十分な量である。例えば、該有効量は、約0.05重量%から約5重量%(約500から約50,000ppm)、好ましくは約0.1%から約5%(約1,000から約50,000ppm)、より好ましくは約0.2%から約4%(約2,000から約40,000ppm)、又は約1.0%から約5%(約10,000から約50,000ppm)、特に、10,000ppmから約50,000ppmより高い、デヒドロ酢酸又はその塩を含むことができる。パーセント量は、それぞれの材料の成分の総量に基づくものである。
【0034】
ポリマー材料は、ピリチオン又はその塩及び/又はデヒドロ酢酸又はその塩の添加の前、添加の間、又は、添加後に、一回又は複数回処理され得る。ポリマー材料又は得られたプラスチック材料が受けることができる処理の種類は、例えば、調合(blending)、押出し成形(extruding)、繊維紡績、フィルムブローイング、フィラメント巻線、スピンコーティング、モールディング、吹込み成形、射出成形、反応射出成形、移送成形、又はそれらの種類の処理の組合せを含む。
【0035】
ピリチオン又はその塩及びデヒドロ酢酸又はその塩を含むポリマー材料及びプラスチック材料は、当該分野で周知のように、上記の処理を適切な温度で受けることができる。好ましくは、該処理工程は、プラスチック、ピリチオン、及びDHAが安定である温度で行われる。例えば、Zn DHAは約277℃で分解する。極めて短い処理工程では、より高い温度が使用され得る。ほとんどのポリマーについては、100℃から450℃、好ましくは120℃から240℃で処理が完成され得る。PVCについては、例えば、170℃から200℃未満が典型的である。
【0036】
本明細書において、複数のメンバーを含む種々のパラメータのグループが記載される。パラメータのグループ内で、各メンバーは、一以上の他の任意のメンバーと組み合わされて、さらなるサブグループを作ることができる。例えば、グループのメンバーがa、b、c、d、及びeである場合、そのメンバーの任意の2つ、3つ、又は4つを含むさらなるサブグループ(例えば、a及びc;a、d、及びe;b、c、d、及びe;など)が具体的に考えられる。
【0037】
ある場合に、第1グループのパラメータのメンバー(例えば、a、b、c、d、及びe)が、第2グループのパラメータ(例えばA、B、C、D、及びE)と組み合わされ得る。第1グループ又はそのサブグループの任意のメンバーは、第2グループ又はそのサブグループの任意のメンバーと組み合わされて、さらなるグループ、即ち、Cとb;B、D、及びEとa及びcなどを形成し得る。
【0038】
例えば、本発明において、種々のパラメータのグループが定義される(例えば、ポリマー、デヒドロ酢酸及びその塩、ポリマー処理)。各グループは、複数のメンバーを含む。例えば、ポリマーは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルアセテート、ポリ塩化ビニルなどを含む。各メンバーは、それぞれの他のメンバーと組み合わされて、さらなるサブグループ、例えば、ポリエチレン及びポリビニルアセテート、ポリプロピレン及びポリエチレン、並びに、ポリプロピレン及びポリビニルアセテートを形成し得る。
【0039】
本発明は、一つのグループの下に収載された各要素が、任意の他のグループの下に収載された各要素及びすべての要素と組み合わされ得る態様をさらに考慮する。例えば、上記で同定されたポリマーは、ビニルポリマー、ポリアセタールなどを表し得る。デヒドロ酢酸及びその塩は、デヒドロ酢酸亜鉛、デヒドロ酢酸銅、デヒドロ酢酸などを表すように同定される。ピリチオン及びその塩は、ピリチオン亜鉛、ピリチオン銅などを表すように同定される。各ポリマーは、それぞれの及びすべてのデヒドロ酢酸又はその塩と組み合わされ得る。例えば、一つの態様において、ポリマーは、ポリアセタールであってよい;デヒドロ酢酸又はその塩は、デヒドロ酢酸銅であってよい;及び、ピリチオン又はその塩は、ピリチオン亜鉛であってよい。あるいは、ポリマーは、ビニルポリマーであってよい;デヒドロ酢酸又はその塩はデヒドロ酢酸であってよい;及び、ピリチオン又はその塩はピリチオン亜鉛であってよい。同様に、第4グループは、調合、押出し成形などを含む処理方法である。上記の態様のそれぞれは、各処理方法及び全処理方法と組み合わされてよい。例えば、ポリマーがビニルポリマーであり;デヒドロ酢酸又はその塩がデヒドロ酢酸であり;及びピリチオン又はその塩がピリチオン亜鉛である態様において、処理方法は、押出し成形(又は収載された任意の処理方法)であってよい。
【0040】
各グループについて、任意の一以上のメンバーが押出しされ得ることが具体的に考えられる。例えば、ポリマーが、ポリアミド、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリスルホン、又はビニルポリマーとして定義される場合、ポリマーは、ポリアセタール又はポリスルホン、又は二つ、三つ、又は四つのポリマーの任意の他の組合せとして定義されることも考えられる。
【0041】
用語「含む(comprising)」以降のリストは、包括的であり、又は、開放型(open-ended)である。即ち、該リストはさらなる挙げられていない要素を含んでもよく、含まないでもよい。用語「から成る(consisting of)」以降のリストは、排他的であり、又は、閉鎖型(closed ended)である。即ち、該リストは、該リスト中に特定されていないいずれの要素も排除する。
【0042】
本明細書におけるすべての数字は、他に指示しない限り、およその値である。
【0043】
本発明は、以下の例を参照することによってより理解され得る。以下の例は、本発明を説明するが、本発明又はその範囲をいずれの方法でも限定するよう意図されない。
【実施例】
【0044】
実施例1
安定化ピリチオン亜鉛:
デヒドロ酢酸亜鉛及びピリチオン亜鉛を、充填剤入り(filled)及びクリアな市販の可撓性のポリ塩化ビニル(PVC)化合物と混合した。該混合物を、噛合い型モジュラー式同方向回転二軸スクリュー押出し機を用いて押出し、可撓性のPVC化合物を形成した。押し出し機は、それぞれの押し出しゾーンで、140℃、170℃、175℃、175℃、175℃、及び175℃の温度プロフィールを有した。押出し後、可撓性のPVC化合物を冷却した。一旦冷却が完了したら、可撓性のPVC化合物を185℃でプレスし、プラスチックシートを形成した。
【0045】
実施例2
非安定化ピリチオン亜鉛:
ピリチオン亜鉛を、充填剤入り及びクリアな市販の可撓性のポリ塩化ビニル(PVC)化合物と混合した。該混合物を、噛合い型モジュラー式同方向回転二軸スクリュー押出し機を用いて押出し、可撓性のPVC化合物を形成した。押し出し機は、それぞれの押出しゾーンで、140℃、170℃、175℃、175℃、175℃、及び175℃の温度プロフィールを有した。押出し後、可撓性のPVC化合物を冷却した。一旦冷却が完了したら、可撓性のPVC化合物を185℃でプレスし、プラスチックシートを形成した。
【0046】
実施例3
未処理コントロール:
クリアな及び充填剤入りの市販の可撓性のポリ塩化ビニル(PVC)化合物を、噛合い型モジュラー式同方向回転二軸スクリュー押出し機を用いて押出し、可撓性のPVC化合物を形成した。押し出し機は、それぞれの押出しゾーンで、140℃、170℃、175℃、175℃、175℃、及び175℃の温度プロフィールを有した。押出し後、可撓性のPVC化合物を冷却した。一旦冷却が完了したら、可撓性のPVC化合物を185℃でプレスし、プラスチックシートを形成した。
【0047】
実施例4:
安定性評価
実施例1〜3のプラスチックシートを、7.62×15.24cm(3″×6″)の長方形にカットし、QUV加速風化試験器の中に置いた。風化試験器は、ASTM標準試験D154に従って、8時間の紫外線A波(長波)暴露サイクル及び4時間の水凝結サイクルに設定した。1,000時間の暴露後、プラスチックシートを、発色現像(color development)について試験した。変色試験の結果を下記表1にまとめる。
【表1】

【0048】
未処理のコントロール(実施例3)と非安定化ピリチオン亜鉛(実施例2)の比較は、クリアなプラスチック中で非安定化ピリチオン亜鉛によって引き起こされた変色を示している。充填剤入りプラスチックにおいても、非安定化ピリチオン亜鉛によって引き起こされた変色が示されている。それ故、非安定化ピリチオン亜鉛が、風化条件に暴露されたクリアなプラスチック及び充填剤入りのプラスチックのいずれをも変色させ得ることが明らかである。
【0049】
非安定化ピリチオン亜鉛(実施例2)と安定化ピリチオン亜鉛(実施例1)の比較において、安定化ピリチオン亜鉛は、非安定化ピリチオン亜鉛よりもクリアなプラスチック及び充填剤入りのプラスチックの変色が少ない結果となった。充填剤入りのプラスチックにおいても、安定化ピリチオン亜鉛は、未処理のコントロールよりもプラスチックの変色が少ない結果となった。それ故、抗菌剤の利益を提供する安定化ピリチオン亜鉛は、非安定化ピリチオン亜鉛よりもプラスチック材料の変色を少なくすることが示された。
【0050】
実施例5:
真菌耐性試験
ASTM試験方法G21に従って、上記で列挙された、調製されたプラスチックのそれぞれから3つのサンプルを、ペトリ皿中の鉱物塩寒天上に置き、以下の真菌を播種した:アスペルギルスニガー ATCC 9642;オーレオバシジウムプルラン(Aureobasidium pullulans) ATCC 15233;カエトミウムグロボサム(Chaetomium globosum) ATCC 6205;ペニシリウムフニクロサム(Penicillium funiculosum) ATCC 11797;及びトリコデルマビレン(Trichoderma virens) ATCC 9645。「非安定化ピリチオン亜鉛」と呼ばれるサンプルは、2,500ppmのピリチオン亜鉛を含み、一方、安定化サンプルは、1,250ppmのピリチオン亜鉛及び1,250ppmのデヒドロ酢酸亜鉛を含む。サンプルを、28℃で4週間インキュベートした。試験生物の増殖について、毎週サンプルを評価した。結果を下記の表2に示す。
【表2】

【0051】
上記表2に示すように、ピリチオン又はその塩を含有するプラスチック材料に添加した場合、デヒドロ酢酸又はその塩は、ピリチオン又はその塩の抗菌活性を妨げない。
【0052】
このように、本発明の好ましい態様であると現在考えられている態様が記載されているとはいえ、当業者は、それらに対する他のさらなる変化及び改変を理解するであろう。また、そのような他の変化は請求の範囲に定義された本発明の範囲と共に含まれるように意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピリチオン又はその塩を含む材料の変色を抑制する方法であって、該方法は、デヒドロ酢酸又はその塩を含む有効量の変色抑制剤を前記材料に加えることを含む方法。
【請求項2】
前記材料は、ペンキ、コーティング、接着剤、及び繊維品から成る群から選択され;及び、前記材料は屋外の風化条件に曝される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記材料はパーソナルケア製品である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記パーソナルケア製品はシャンプーである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記材料は屋外の風化条件に曝されたプラスチック材料である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記変色抑制剤はデヒドロ酢酸の亜鉛塩である、請求項1〜5の何れか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記プラスチック材料は押出し成形され、前記デヒドロ酢酸の亜鉛塩は、前記プラスチック材料と共有押出し成形される、請求項5及び6に記載の方法。
【請求項8】
有機亜リン酸エステルが前記プラスチック材料に添加されない、請求項5〜7の何れか一項に記載の方法。
【請求項9】
置換された亜リン酸フェニルが前記プラスチック材料に添加されない、請求項5〜7の何れか一項に記載の方法。
【請求項10】
オルト置換された亜リン酸フェニルが前記プラスチック材料に添加されない、請求項5〜7の何れか一項に記載の方法。
【請求項11】
オルト三級アルキル置換された亜リン酸エステルが前記プラスチック材料に添加されない、請求項5〜7の何れか一項に記載の方法。
【請求項12】
環式有機リン酸エステルが前記プラスチック材料に添加されない、請求項5〜7の何れか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記変色抑制剤が、本質的にデヒドロ酢酸又はその塩から成る、請求項1〜12の何れか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記変色抑制剤は、500重量ppmから50,000重量ppmの濃度のデヒドロ酢酸又はその塩を提供するのに十分な量で添加される、請求項1〜13の何れか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記変色抑制剤は、10,000重量ppmから50,000重量ppmの濃度のデヒドロ酢酸又はその塩を提供するのに十分な量で添加される、請求項14に記載の方法。

【公表番号】特表2012−521378(P2012−521378A)
【公表日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−501193(P2012−501193)
【出願日】平成22年3月26日(2010.3.26)
【国際出願番号】PCT/EP2010/001935
【国際公開番号】WO2010/108695
【国際公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【出願人】(592233462)ロンザ インコーポレイテッド (15)
【Fターム(参考)】