説明

プラスチック光学素子、光走査装置及び画像形成装置

【課題】厚肉、偏肉形状であっても、従来と同等の生産コストで、かつレンズ面形状に優れ、内部ひずみが均質に低減された高い光学性能を有する高精度なプラスチック光学素子、該プラスチック光学素子を備えた光走査装置、画像形成装置を提供する。
【解決手段】光走査装置の前記結像光学系に備えられるプラスチック光学素子において、被転写面を有する金型のキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させ、該被転写面を転写することにより形成され、光線の入射面及び出射面となる2つの転写面を有し、前記転写面以外の一部に、金型のキャビティ形状を不完全転写することにより形成した非転写面を有し、かつ光線透過領域における前記非転写面の凹量の偏差が0.8mm以下であることを特徴とするプラスチック光学素子、該プラスチック光学素子を備えた光走査装置、画像形成装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザ方式のデジタル複写機、レーザプリンタ、ファクシミリ、プロッタ、及びこれらの複合機などの光学走査系に適用されるプラスチック光学素子に関し、特に、ビデオカメラ等の光学機器にも応用可能な、高精度な光学鏡面を有する厚肉、偏肉形状のプラスチック走査レンズ等のプラスチック光学素子、並びに該プラスチック光学素子を備えた光走査装置、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、レーザ方式のデジタル複写機、プリンタ、ファクシミリ装置等の光書込みユニット(光走査装置)には、レーザビームの結像、及び各種補正機能を有する矩形状の光学素子が用いられている。
【0003】
近年これらの光学素子は、製品のコストダウンの要求に伴い、ガラス製からプラスチック製へと変化してきている。また、複数の機能を最小限の素子で賄うために、その鏡面形状も球面のみならず複雑な非球面形状に形成されるようになってきている。レンズの場合には、そのレンズ厚を厚くし、また長手方向にレンズ厚が一定でない偏肉形状に設計されている場合も多い。
【0004】
プラスチック成形品は、特殊形状であっても、成形品形状に形成された金型のキャビティ内に樹脂母材を挿入する、又は溶融樹脂を射出充填することにより、低コストで大量生産することができる。従来のプラスチック成形では、金型のキャビティ内の溶融樹脂材料を冷却固化させる工程において、キャビティ内での樹脂圧力や樹脂温度を均一にすることが、プラスチック成形品を所望の形状に精度よく成形するのに望ましい。
【0005】
しかしながら、例えば、レンズが偏肉形状の場合、レンズ厚の異なる部位によって体積収縮量も異なるため、形状精度が悪化し、レンズ厚の厚いところにヒケが生じてしまうことがある。
【0006】
溶融樹脂を金型キャビティ内に射出充填する射出成形による製造法において、溶融樹脂の射出圧力を大きくして射出充填量を多くすると、プラスチック成形品の内部ひずみが大きくなるという問題があり、特に、厚肉で偏肉形状の成型品である場合には、内部ひずみが大きくなって光学性能等に悪影響を及ぼす恐れがある。
つまり、内部ひずみを小さくするために射出圧力を低くして射出充填量を少なくすると、厚肉部などでヒケを生じ、一方、射出圧力を大きくして射出充填量を多くすると、内部ひずみが大きくなるという問題がある。
【0007】
この問題に対し、転写面以外の一部に不完全転写により形成した凹形状(非転写面)を設けることにより、樹脂内圧や内部歪みが残存させることなく、厚肉、偏肉形状などであっても、薄肉成形品と同程度の生産コスト、及び形状精度を実現することが可能な方法が提案されている(特許文献1参照)。
さらに、転写面以外の一部に凹形状(非転写面)を形成する具体的な方法としては、前記凹部(非転写面)を含む面を形成するキャビティ駒の一部が摺動自在に設けられ、転写面およびキャビティ駒によって少なくとも1つ以上のキャビティが画成された一対の金型を、樹脂の軟化温度未満に加熱保持し、前記キャビティ内に軟化温度以上に加熱された溶融樹脂を射出充填し、次いで、前記転写面に樹脂圧力を発生させて樹脂を前記転写面に密着させた後、前記樹脂を軟化温度以下に冷却するときに、前記摺動自在に設けられたキャビティ駒を樹脂から離隔するように摺動して、樹脂とキャビティ駒の間に強制的に空隙を画成することにより凹部(非転写面)を形成する方法が提案されている(特許文献2及び3参照)。
【0008】
【特許文献1】特開2000-84945号公報
【特許文献2】特開2000−141413号公報
【特許文献3】特開平11−028745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、転写面以外の面の一部に不完全転写により形成した凹形状(非転写面)を設けることで内部ひずみを低減する効果は凹形状(非転写面)の凹量により変化するという問題がある。このことは、凹形状(非転写面)の凹量が場所毎に異なる場合、樹脂充填後の型内冷却過程における内部ひずみの開放度合いが場所毎に異なることを意味し、結果として、光線有効範囲内における内部ひずみの偏差を生じさせる。
【0010】
また、凹量の偏差は、同時に、樹脂充填後の型内冷却過程における熱収縮の割合が場所毎に異なることも意味し、結果として、レンズ面形状、特にその低周波成分の悪化を生む。これらの現象は、最終的に、光学性能、特にビームスポット径(像面湾曲)の悪化の要因となる。さらに、凹形状(非転写面)の凹量が局所的に大きくなり、光線有効範囲内における光線を遮るという外観上の不具合も生む。
【0011】
内部ひずみの絶対量のみならず、その偏差による光学性能、特にビームスポット径に対する影響については、光学素子が適用される画像形成装置の高画質化の流れに伴い顕著となってきた不具合である。
以上のように、製造工程の増加や金型の設計変更などによるコストアップや生産性の低下を招くことなく製造可能な、高精度な光学鏡面を有する厚肉、偏肉形状のプラスチック光学素子が求められている。
【0012】
そこで、本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであり、厚肉、偏肉形状であっても、従来と同等の生産コストで、かつレンズ面形状に優れ、内部ひずみが均質に低減された高い光学性能を有する高精度なプラスチック光学素子、並びに、該プラスチック光学素子を備えた光走査装置、及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題を解決するために提供する本発明は、以下の通りである。
〔1〕 光源手段、光偏光器、及び該光偏光器で偏向された光線を被走査面上に結像する結像光学系を有する光走査装置の前記結像光学系に備えられるプラスチック光学素子において、
被転写面を有する金型のキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させ、該被転写面を転写することにより形成され、光線の入射面及び出射面となる2つの転写面を有し、
前記転写面以外の一部に、金型のキャビティ形状を不完全転写することにより形成した非転写面を有し、かつ光線透過領域における前記非転写面の凹量の偏差が0.8mm以下であることを特徴とするプラスチック光学素子。
〔2〕 透明樹脂材料からなることを特徴とする前記〔1〕に記載のプラスチック光学素子。
〔3〕 fθレンズであることを特徴とする前記〔1〕から〔2〕のいずれかに記載のプラスチック光学素子。
〔4〕 転写面の外側にリブを有することを特徴とする前記〔1〕から〔3〕のいずれかに記載のプラスチック光学素子。
〔5〕 前記〔1〕から〔4〕のいずれかに記載のプラスチック光学素子を備えることを特徴とする光走査装置。
〔6〕 前記〔1〕から〔2〕のいずれかに記載のプラスチック光学素子を備えることを特徴とする画像形成装置。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、厚肉、偏肉形状であっても、従来と同等の生産コストで、かつレンズ面形状に優れ、内部ひずみが均質に低減された高い光学性能を有する高精度なプラスチック光学素子、並びに、該プラスチック光学素子を備えた光走査装置、及び画像形成装置を提供することができる。
【0015】
本発明の効果として、請求項1の発明によれば、光源手段、光偏光器、及び該光偏光器で偏向された光線を被走査面上に結像する結像光学系を有する光走査装置の前記結像光学系に備えられるプラスチック光学素子において、
被転写面を有する金型のキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させ、該被転写面を転写することにより形成され、光線の入射面及び出射面となる2つの転写面を有し、
前記転写面以外の一部に、金型のキャビティ形状を不完全転写することにより形成した非転写面を有し、かつ光線透過領域における前記非転写面の凹量の偏差が0.8mm以下であるプラスチック光学素子であるため、内部ひずみの低減効果を維持しつつ、光線透過領域(以下、「光線有効範囲」ともいう)内における内部ひずみの偏差を低減し、同時に熱収縮の偏差を低減することで、レンズ面形状、特にその低周波成分の精度が向上した光学素子が得られる。また、非転写面の凹量が局所的に大きくなり、光線有効範囲における光線を遮るという外観上の不良を防止することが出来る。
請求項2の発明によれば、請求項1に記載のプラスチック光学素子において、透明樹脂材料からなるとしたので、より優れた光学性能のプラスチック光学素子が得られる。
請求項3の発明によれば、請求項1から2のいずれかに記載のプラスチック光学素子において、fθレンズであるとしたので、光学性能、特にビームスポット径(像面湾曲)において優れた特性を有するプラスチック光学素子が得られる。
請求項4の発明によれば、請求項1から2のいずれかに記載のプラスチック光学素子において、転写面の外側にリブを有するとしたので、転写面への圧縮気体の廻り込みを防止することができる。
請求項5の発明によれば、請求項1から4のいずれかに記載のプラスチック光学素子を備える光走査装置であるため、より高精度な光走査が可能となる。
請求項6の発明によれば、請求項1から4のいずれかに記載のプラスチック光学素子を備える画像形成装置であるため、より高精度な画像形成が可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明の画像記録装置の一実施の形態における構成について図面を参照して説明する。
図1は、本発明のプラスチック光学素子の一例を示す図であり、カラーレーザービームプリンタの光走査装置の構成部品であるfθレンズの例である。
プラスチック光学素子10は、中央から両端にかけて肉厚が薄くなる偏肉形状であり、転写面1以外の樹脂内圧や内部ひずみが発生しやすい部分に、金型のキャビティ形状を不完全転写することにより凹形状又は凸形状に形成した非転写面2を有し、かつ前記非転写面2の光線透過領域における凹量の偏差が0.8mm以下である。転写面1は、被転写面を有する金型のキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させ、該被転写面を転写することにより形成される。転写面としては、光線の入射面及び出射面となる2つの転写面を有する。
ここで、「凹量の偏差」とは、金型のキャビティ形状を完全転写した場合に形成される仮想面を基準に、そこから、不完全転写することにより形成した非転写面のデプス量(深さ)を凹量と定義し、前記凹量の非転写面全域における偏差(差異)を示す。
【0017】
以下、プラスチック光学素子の製造において、非転写面(以下、「凹形状」、「凹部」ということがある)を形成する方法について、図2及び図3により説明する。
【0018】
図2は、樹脂に圧縮気体を付与し、成形時の不完全転写により非転写面を形成する方法を示す図である。
非転写面を含む面を形成するキャビティ駒31に少なくとも1つ以上の通気口32と、前記通気口に連通して成形品に圧縮気体を付与する少なくとも1つ以上の連通口を設け、前記連通口には金型外部に設けた圧縮気体供給装置を連結し、転写面33及びキャビティ駒34によって少なくとも1つ以上のキャビティが画成された一対の金型を準備し、この金型を樹脂の軟化温度未満に加熱保持し、前記キャビティ内に軟化温度以上に加熱されて溶融した樹脂35を射出充填し、次いで、転写面33に樹脂圧力を発生させて樹脂を転写面33に密着させた後、溶融した樹脂35を軟化温度以下に冷却するときに、通気口32からキャビティ内の樹脂35に圧縮気体を付与して、樹脂35と前記通気口32が設けられたキャビティ駒31の間に強制的に空隙36を画成することにより、凹部を形成する。
【0019】
樹脂とキャビティ駒の間に強制的に空隙が画成されることで、空隙に面した樹脂部分の樹脂面が自由面となり、他の金型に接した面よりも動き易くなる。この結果、冷却によって生じる熱収縮はこの部分の樹脂が動くことによって吸収され、空隙に面した樹脂部分が優先的にひけて、内部ひずみを緩和することが可能となり、また同時に転写面におけるひけの発生を防止することが可能になる。
【0020】
図3は、非転写面を含む面を形成するキャビティ駒を摺動させ、成形時の不完全転写により非転写面を形成する方法を示す図である。
凹部を含む面を形成するキャビティ駒37が摺動自在に設けられ、転写面33及びびキャビティ駒34によって少なくとも1つ以上のキャビティが画成された一対の金型を準備し、この金型を樹脂の軟化温度未満に加熱保持し、前記キャビティ内に軟化温度以上に加熱されて溶融した樹脂35を射出充填し、次いで、転写面33に樹脂圧力を発生させて溶融した樹脂35を前記転写面に密着させた後、樹脂35を軟化温度以下に冷却するときに、前記摺動自在に設けられたキャビティ駒37を樹脂35から離隔するように摺動して、樹脂とキャビティ駒の間に強制的に空隙36を画成することにより、凹部を形成する。
【0021】
樹脂とキャビティ駒の間に強制的に空隙が画成されることで、空隙に面した樹脂部分の樹脂面が自由面となり、他の金型に接した面よりも動き易くなる。この結果、冷却によって生じる熱収縮はこの部分の樹脂が動くことによって吸収され、空隙に面した樹脂部分が優先的にひけて、内部ひずみを緩和することが可能となり、また同時に、転写面におけるひけの発生を防止することが可能になる。
【0022】
図4に、図2及び図3のような方法で、非転写面を形成した場合の、該非転写面の凹量と内部ひずみ(位相差)との関係を示す。図4は、成形条件を固定した(制御しない)場合の結果であるが、前記非転写面における凹量と内部ひずみ(位相差)とに相関を確認した。つまり、転写面以外の面の一部に不完全転写により形成した凹形状(非転写面)を設けることで内部ひずみを低減することが可能となるが、その低減効果は凹形状(非転写面)の凹量により変化することがわかる。
このことは、凹形状(非転写面)の凹量が場所毎に異なる場合、樹脂充填後の型内冷却過程における内部ひずみの開放度合いが場所毎に異なることを意味し、結果として、光線有効範囲内における内部ひずみの偏差を生じさせることを示している。また、凹量の偏差は、同時に、樹脂充填後の型内冷却過程における熱収縮の割合が場所毎に異なることも意味し、結果として、レンズ面形状、特にその低周波成分の悪化を生むことを示している。
以上の現象は、最終的に、光学性能、特にビームスポット径(像面湾曲)の悪化の要因となり、加えて、凹形状(非転写面)の凹量が局所的に大きくなり、光線有効範囲内における光線を遮るという外観上の不具合も生む。
【0023】
これまでの加工実績より、光学性能、特にビームスポット径(像面湾曲)から内部ひずみの偏差の許容値を導出すると約300nmとなる。これにより、凹形状(非転写面)の凹量の偏差の許容値(約0.8mm)を得た。
【0024】
よって、凹形状(非転写面)の凹量の偏差を0.8mm以下に制御することにより、内部ひずみの低減効果を維持しつつ、光線有効範囲内における内部ひずみの偏差を低減し、同時に、熱収縮の偏差を低減することで、レンズ面形状、特にその低周波成分の精度を向上させることが可能である。
これによれば、成形工法を変えずに、光学性能、特にビームスポット径(像面湾曲)を向上させることが可能となる。
さらに、前記凹形状(非転写面)の凹量が局所的に大きくなり、光線有効範囲における光線を遮るという外観上外観上の不良を防止することが出来る。
【0025】
以下、凹形状(非転写面)の凹量の偏差を0.8mm以下に制御する方法を、成形方法ごとに説明する。
【0026】
<1>圧縮気体の付与による凹面形成の場合
図2に示す樹脂に圧縮気体を付与し、成形時の不完全転写により凹部を形成する方法において、凹量の偏差0.8mm以下を実現する方法としては、通常一律であるエア圧を、凹量(デプス)のパターンに合わせ変更する方法が挙げられる。凹量(デプス)のパターンとしては、凹形状と凸形状が挙げられる。
【0027】
凹量(デプス)のパターンが凹形状の場合、通常一律であるエア圧を、像高中央付近のみ相対的に低下させることにより凹量(デプス)の偏差を低減することができる。また、凹量(デプス)のパターンが凸形状の場合、通常一律であるエア圧を、像高中央付近のみ相対的に上昇させることにより、又は像高中央付近のみに金型(キャビティ駒)通気口を設けることにより、凹量(デプス)の偏差を低減することができる。
【0028】
具体的なエア圧の変更方法としては、(1)金型スリット位置の適正化、(2)金型スリット幅の変更、(3)エア圧の分割制御、(4)エア注入タイミングの適正化等が挙げられる。
【0029】
<2>キャビティ駒摺動による凹面形成の場合
図3に示すキャビティ駒の一部を摺動させ、成形時の不完全転写により凹部を形成する方法において、凹量の偏差0.8mm以下を実現する方法としては、動自在に設けられた(1)キャビティ駒形状の適正化、(2)離隔タイミングの適正化等が挙げられる。摺動するキャビティ駒の例を図13に示す。
【0030】
上述した2つの方法により凹量の偏差0.8mm以下を実現する為に、さらに、樹脂充填量を含めた成形条件の適正化を同時に実施する必要がある。
【0031】
本発明のプラスチック光学素子は、透明樹脂材料で成形されることにより、成形工法を変えずに、光学性能、特にビームスポット径(像面湾曲)精度を向上させることが可能となる。
【0032】
また、本発明のプラスチック光学素子は、透明樹脂材料で成形され、且つfθレンズであることにより、成形工法を変えずに、光学性能、特にビームスポット径(像面湾曲)を向上させることが可能となる。
【0033】
さらに、本発明のプラスチック光学素子は、図12に示すように、転写面にリブ14を有することにより、転写面への圧縮気体の廻り込みを防止することが可能となり、光学性能、特にビームスポット径(像面湾曲)を向上させることが可能となる。
【0034】
以下、本発明のプラスチック光学素子を搭載した光走査装置、及び画像形成装置について説明する。
【0035】
図14は、本発明の実施の形態例を示すプラスチック光学素子10を具備する光走査装置20を説明する説明図であり、(A)は上面図、(B)は側面図である。
複数の光源から出射されるビームを走査して画像情報に応じて画像を形成する光走査装置20は、画像情報に応じて複数のビーム51cを出射する光源21と、光源21から出射されるビーム51cを偏向する偏向手段22と、偏向手段22に対向した位置に複数個が互いに対向して配置された本発明のプラスチック光学素子10とを備えている。
図14(A)及び(B)に示すように、光源21の複数のレーザ光源から出射された複数のビーム51cを、同一の偏向手段22(例えば、ポリゴンミラー)で偏向し、光源21の複数のレーザ光源に対応して偏向手段22に対向した位置に配置された各プラスチック光学素子10により、それぞれの感光体51a上に結像させ、感光体51a上にて走査させることにより、画像情報に応じて画像が形成される。
【0036】
図15は、本発明のプラスチック光学素子10と光走査装置20とを備える画像形成装置の一実施形態としてのフルカラープリンタを説明する概略図である。
図15において、複数の光源から出射されるビームを走査して画像情報に応じて画像を形成する画像形成装置50は、画像を形成する画像形成部51と、画像形成部51で複数のビーム51cを走査して画像情報に応じて画像を形成する光走査装置20を具備している。
画像形成装置50は、被記録媒体(P)上にトナーの記録多色画像を形成する画像形成部51と、被記録媒体(P)を矢印(B)方向に給送する被記録媒体給送部(給紙部)52と、被記録媒体(P)を排出して収納する排紙トレイ(図示せず)からなる。
被記録媒体給送部52は、各段に給紙カセット52a(52a-1及び52a-2)を備え、必要に応じてさらに別の給紙装置を設置することも出来る。
【0037】
画像形成部51には、イエロー作像ユニット51(Y)、マゼンタ作像ユニット51(M)、シアン作像ユニット51(C)、ブラック作像ユニット51(Bk)の4個が着脱可能に搭載され、電子写真方法の作像プロセスで被記録媒体(P)上にトナーの記録画像を形成することが出来るようになっている。
また、中間転写ベルト51gが所定の走行経路に沿ってエンドレスに各支持ローラに張架されており、中間転写ベルト回転駆動ローラ51g-1によって矢印(C)方向へ回転駆動される。
作像ユニット51の各作像部では、感光体51aのドラム形状の感光体ドラムの周囲に、帯電処理を行う帯電手段51b、ビーム51cで照射する光走査装置20、露光されて形成された静電潜像を顕像化して現像する現像手段51d、及びドラム表面に残留するトナーを除去回収するクリーニング手段51fの感光体クリーニングユニット51f1が配置されており、作像プロセスとしては、中間転写ベルト51gが、1回転して1つのカラーの多色画像を形成するようになっている。
作像ユニット51(Y)、51(M)、51(C)、及び51(Bk)の配置された作像部で、現像手段51dによって各色のトナーを現像し、転写手段51eの一次転写ローラ51e-1によって中間転写ベルト51gに転写させる。転写手段51eの二次転写ローラ51e-2にて、重ねトナーの記録画像の二次転写を受けた被記録媒体(P)を通過させ、矢印(D)方向に搬送される搬送経路の下流側に、トナーの記録画像を加熱定着の処理をする定着手段51iとして、加熱ローラ51i-1と加圧ローラ51i-2が配置されている。定着手段51iを通過した被記録媒体(P)は、排紙ローラ51jにより排紙トレイに排紙される。
【0038】
被記録媒体給送部52は、給紙カセット52a(52a-1及び52a-2)に未使用の被記録媒体(P)が収容され、回動可能に支持された底板(図示せず)が、最上の被記録媒体(P)の記録用紙をピックアップローラ52c(52c-1及び52c-2)が当接可能な位置まで上昇する。ピックアップローラ52cの回転により、最上の被記録媒体(P)は、給紙カセット52aから送り出されてレジストローラ対51hに搬送される。レジストローラ対51hは、被記録媒体(P)の搬送を一時止めて、中間転写ベルト51g上の重ねトナーの記録画像と被記録媒体(P)の先端との位置関係が所定の位置と一致するようにタイミングをとり、回転駆動が開始するよう制御される。
【0039】
なお、これまで本発明を図面に示した実施形態をもって説明してきたが、本発明は図面に示した実施形態に限定されるものではなく、他の実施形態、追加、変更、削除など、当業者が想到することができる範囲内で変更することができ、いずれの態様においても本発明の作用・効果を奏する限り、本発明の範囲に含まれるものである。
【実施例】
【0040】
以下、本発明の実施例を説明する。
(実施例1)
図2に示す方法により、図5に示すプラスチック光学素子であるfθレンズを製造した。波線は、光透過領域(光線有効範囲)1を示す。非転写面2の凹量(デプス)のパターンが凹形状のプラスチック光学素子を製造した。
図6にレンズ高さと、凹量(デプス)との相関を示す。ターゲットとして凹量の偏差が0.8mm以下となる値を設定した。
図7に、通常のエア圧(STDで示す)と、ターゲットを満たすように改善したエア圧(改善案)をそれぞれ示す。
【0041】
図6に示すように、通常のエア圧では、レンズ高さによる凹量(デプス)の偏差が大きいが、図7の改善案に示すように、像高によりエア圧を変化させることにより、凹量の偏差が低減し、凹量の偏差が0.8mm以下のレンズが得られることがわかる。
【0042】
(実施例2)
図2に示す方法により、非転写面2の凹量(デプス)のパターンが凸形状のプラスチック光学素子を製造した。
図8にレンズ高さと、凹量(デプス)との相関を示す。ターゲットとして凹量の偏差が0.8mm以下となる値を設定した。
図9に、通常のエア圧(STDで示す)と、ターゲットを満たすように改善したエア圧(改善案)をそれぞれ示す。
【0043】
図8に示すように、通常のエア圧では、レンズ高さによる凹量(デプス)の偏差が大きいが、図9の改善案に示すように、像高によりエア圧を変化させることにより、凹量の偏差が低減し、凹量の偏差が0.8mm以下のレンズが得られることがわかる。
【0044】
(実施例3)
図2に示す方法において、像高中央付近のみに通気口を設けることにより、非転写面2の凹量(デプス)のパターンが凸形状のプラスチック光学素子を製造した。
図10にレンズ高さと、凹量(デプス)との相関を示す。ターゲットとして凹量の偏差が0.8mm以下となる値を設定した。
図11に、通常のエア圧(STDで示す)と、ターゲットを満たすように改善したエア圧(改善案)をそれぞれ示す。
【0045】
図10に示すように、通常のエア圧では、レンズ高さによる凹量(デプス)の偏差が大きいが、図11の改善案に示すように、像高によりエア圧を変化させることにより、凹量の偏差が低減し、凹量の偏差0.8mm以下のレンズが得られることがわかる。
【0046】
(実施例4)
図3に示す方法において、図13に示す形状のキャビティ駒を用い、適正化を行うことにより、凹量の偏差0.8mm以下のレンズが得られた。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明のプラスチック光学素子の一例の外観を示す斜視図である。
【図2】本発明のプラスチック光学素子を成形する金型の一例を示す断面図である。
【図3】本発明のプラスチック光学素子を成形する金型の他の例を示す断面図である。
【図4】プラスチック光学素子の凹量と内部ひずみの相関を示すグラフである。
【図5】本発明のプラスチック光学素子の一例のfθレンズの側面図である。
【図6】実施例1におけるエア圧パターンを示すグラフである。
【図7】実施例1における凹量(デプス)改善例を示すグラフである。
【図8】実施例2におけるエア圧パターンを示すグラフである。
【図9】実施例2における凹量(デプス)改善例を示すグラフである。
【図10】実施例3におけるエア圧パターンを示すグラフである。
【図11】実施例3における凹量(デプス)改善例を示すグラフである。
【図12】転写面の外側にリブを有するfθレンズの一例を示す図である。
【図13】適正化されたキャビティ駒の一例を示す図である。
【図14】本発明に係る光走査装置の一実施の形態における構成を示す図であり、(A)は上面図、(B)は側面図である。
【図15】本発明に係る画像記録装置の一実施の形態における構成を示す概略図である。
【符号の説明】
【0048】
1 転写面
2 非転写面
10 プラスチック光学素子
14 リブ
15 摺動キャビティ駒
20 光走査装置
21 光源
22 偏向手段
23 筺体
31 通気キャビティ駒
32 通気口
33 転写面
34 キャビティ駒
35 溶融樹脂
36 空隙
37 摺動キャビティ駒
50 画像形成装置
51 画像形成部
51(Y) イエロー作像ユニット
51(M) マゼンタ作像ユニット
51(C) シアン作像ユニット
51(Bk)ブラック作像ユニット
51a 感光体
51a−1 表面
51b 帯電手段
51c ビーム
51d 現像手段
51e−1 一次転写ローラ(転写手段)
51e−2 二次転写ローラ(転写手段)
51f クリーニング手段
51g 中間転写ベルト
51g−1 中間転写ベルト回転駆動ローラ
51h レジストローラ対
51i−1 加熱ローラ(定着手段)
51i−2 加圧ローラ(定着手段)
51j 排紙ローラ
52 給紙部(被記録媒体給送部)
52a 給紙カセット
52c ピックアップローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源手段、光偏光器、及び該光偏光器で偏向された光線を被走査面上に結像する結像光学系を有する光走査装置の前記結像光学系に備えられるプラスチック光学素子において、
被転写面を有する金型のキャビティ内の樹脂に樹脂圧力を発生させ、該被転写面を転写することにより形成され、光線の入射面及び出射面となる2つの転写面を有し、
前記転写面以外の一部に、金型のキャビティ形状を不完全転写することにより形成した非転写面を有し、かつ光線透過領域における前記非転写面の凹量の偏差が0.8mm以下であることを特徴とするプラスチック光学素子。
【請求項2】
透明樹脂材料からなることを特徴とする請求項1に記載のプラスチック光学素子。
【請求項3】
fθレンズであることを特徴とする請求項1から2のいずれかに記載のプラスチック光学素子。
【請求項4】
転写面の外側にリブを有することを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のプラスチック光学素子。
【請求項5】
請求項1から4のいずれかに記載のプラスチック光学素子を備えることを特徴とする光走査装置。
【請求項6】
請求項1から4のいずれかに記載のプラスチック光学素子を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公開番号】特開2010−60962(P2010−60962A)
【公開日】平成22年3月18日(2010.3.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−227879(P2008−227879)
【出願日】平成20年9月5日(2008.9.5)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】