説明

プラスチック光学部材の着色方法およびこの方法により着色したプラスチック光学部材

【課題】プラスチック光学部材に対して、所定の色を着色し、光の透過率が高く且つ色斑がなく、更には、着色処理にまつわる廃水処理、エネルギーロス等の問題点を解消する。
【解決手段】プラスチック光学部材に対してガンマ線あるいは電子線等の電離性放射線を照射することにより着色を行う着色方法であって、前記プラスチック光学部材に照射する放射線線量は、着色する色に応じて予め定められた放射線線量を選択し、照射してから所定期間経過後の前記プラスチック光学部材の色を着色の色として採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光の透過性が高く、着色を施したプラスチック光学部材の着色方法及びこの方法により着色したプラスチック光学部材に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチック光学製品の一つである視力補正眼鏡用レンズおよびサングラス用レンズを例に説明する。
【0003】
一般に、視力補正眼鏡用レンズおよびサングラス用レンズ等のプラスチック製レンズには、目の保護のため、あるいは、ファッション性を持たせるために、430nm波長以下の高エネルギー領域の紫外線を吸収する紫外線吸収剤を添加することは勿論のことであるが、レンズに着色することがよく行われている。
【0004】
レンズとは、三省堂 大辞林によれば「光を屈折させて発散または集束させるための光学素子である。通常は、両側面を球面と球面または球面と平面とした透明体である。用途によっては、片面または両面を球面ではなくした非球面レンズも利用される」とあるが、ここでは、単に光を透過させるもの、あるいは反射させるもの、さらには、眼鏡レンズに利用される乱視補正用のレンズ等を含めてレンズとして説明する。
【0005】
レンズに着色する方法としては、レンズとなる成形品の少なくとも一部分を、染料を含有した染色浴液中に所定時間浸漬することによって該成形品に染料を浸透させて染色を行なう方法がある(特許文献1)。
【0006】
しかし、この方法では、レンズ内に染料が分散された状態で存在するために、レンズへ入ってきた光がこの染料によって拡散して光の透過率を低下させ、レンズを通してみたときに、全体として肉眼で見たときよりも暗く感じる現象が発生していた。また、この着色方法は、染色浴液を利用していることから、染色浴液中への染料の分散ムラ、更には、成形品を染色浴液に浸漬したときの染料の浸透ムラが発生する等の品質上の問題が発生することがあった。そのため、左眼用と右眼用のレンズを対にしての着色処理方法をとらざるを得ないものであった(着色ムラ防止)。同時に、染色浴液に使用する染料が混在した液の排水処理、また、染色工程中の温度制御等に利用するエネルギーのロス等の問題があった。
【0007】
また、別の方法として、太陽光のような紫外線を含む光が照射される屋外ではレンズが速やかに着色してサングラスとして機能し、そのような光の照射がない屋内においては退色して透明な通常の眼鏡として機能する眼鏡、いわゆるフォトクロミック性を持ったプラスチックレンズの製造に関し、光重合開始剤を使用する方法がある(特許文献2),(非特許文献1)。
【0008】
しかし、この方法は、フォトクロミックス性を持ったレンズであることから、常時、一定に着色したレンズが得られない、かつ、所定の着色を施すことが困難であった。また、フォトクロミックス性を重視するために、レンズを透過する光の透過率についての考慮がなされていないものであった。
【0009】
一方、レンズの材料となる熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等の合成樹脂は、製造過程あるいはその利用する過程で、電離性放射線を照射されると色付くことが知られている(特許文献3)。しかし、この放射線照射は、樹脂に積極的に着色を施して利用するためのものではなく、発色することを邪魔な存在として取扱い、着色を防止する工夫がなされている。
【0010】
また、基材の表面に形成したコーティング(発色剤を含む樹脂組成物)を放射線に曝露することにより発色させる着色方法が知られている(特許文献4)。
【0011】
しかしながら、この着色方法は、発色させる樹脂組成物を基材の表面にコーティングすることが必要であり、基材そのものを着色することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特表2005−508459号公報
【特許文献2】特開2004−285141号公報
【特許文献3】特開2010−059295号公報
【特許文献4】特表2007−532707号公報
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Web文献:色の変わる分子 〜クロミック分子〜 http://www.chem-station.com/yukitopics/photochromic.htm
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、プラスチック光学部材の着色において、簡単な処理工程管理で所定の色に斑なく均一に着色し、かつ、光の透過率が高いプラスチック光学部材を実現し、更には、着色処理にまつわる廃水処理、エネルギー消費等の問題点をなくすことにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、プラスチック光学部材に電離性放射線を照射し、放射線を照射してから所定期間経過後の色をプラスチック光学部材の色として採用することにより、プラスチック光学部材を改質して視感透過率(以下、透過率と称す。)の高い所定の着色を実現するものである。
【0016】
第1の発明は、プラスチック光学部材に電離性放射線を照射することにより該プラスチック光学部材に着色するプラスチック光学部材の着色方法であって、
前記プラスチック光学部材に照射する放射線の量は、着色する色によって予め定められた放射線量を選択的に設定して照射することを特徴とするプラスチック光学部材の着色方法である。
【0017】
第2の発明は、前記第1の発明において、前記プラスチック光学部材は、(チオ)ウレタン系樹脂の原料モノマーをベースとした樹脂組成物、アリル系のモノマーをベースとした樹脂組成物の少なくとも一つにより構成されていることを特徴とするプラスチック光学部材の着色方法である。
【0018】
第3の発明は、前記第1乃至第2のいずれか一つの発明において、前記照射する電離性放射線は、ガンマ線あるいは電子線であることを特徴とするプラスチック光学部材の着色方法である。
【0019】
第4の発明は、前記第1乃至第3の発明の何れか一つの発明により着色したことを特徴とするプラスチック光学部材である。
【発明の効果】
【0020】
本発明のプラスチック光学部材の着色方法は、プラスチック光学部材に対する所定の放射線量の放射線照射と、放射線を照射してから所定期間経過させることによる着色処理であり、簡単な処理工程管理で所定の色の均一な着色を実現することができる。
【0021】
眼鏡用のプラスチックレンズの着色方法を例にその効果を具体的に説明する。プラスチックレンズの着色は、電離性放射線照射による着色処理であって電離性放射線の物質透過性が非常に高ことから、レンズ単体及び複数のレンズの放射線処理ロットの全てに対して斑のない均一な着色を実現することができる。
【0022】
このことから、従来技術の着色のような左目用、右目用のレンズを対にした着色処理等の余計な管理手数を削減することができ、多数のレンズの均一な着色を同時に実現することができる。
【0023】
併せて、電離性放射線の物質透過性が非常に高いことから、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定化剤、内部離型剤、酸化防止剤、染料、フォトクロミック染料、顔料、耐電防止剤、偏光剤(偏光膜)等の公知の各種添加剤を加えたレンズであっても、前記添加剤類を加えないときの色とは若干異なるが、所定の色に均一に着色することができる。
【0024】
更には、電離性放射線の物質透過性が非常に高いことから、着色処理作業に要する時間も、従来の浸漬による着色処理では数時間かかるのに対して、数分間という短時間の電離性放射線照射によって着色処理作業を終了することができる。
【0025】
また、着色する色の選択については、照射する放射線線量を、予め設定した色に対応した放射線線量を選択するようにすることで、所定の色の着色を実現することができる。
【0026】
また、電離性放射線照射による着色処理であることから、レンズの着色のための染料等の異物をレンズに浸透させる必要がなく、染料等による着色と比較して同等以上の透過率の明るい着色レンズを得ることができる。
【0027】
また、電離性放射線照射であり、染料を不要とした着色処理であることから、従来技術で行っていた、染色浴液に使用する染料が混在した液体の排水処理、さらには、染色工程中の温度制御等に利用するエネルギーのロス等を低減することができる。
【0028】
また、本発明は成形部材に染料を浸透させて染色を行なう方法ではなく、電離性放射線照射によって着色処理を実現することができることから、レンズとメガネフレームを一体とした眼鏡の状態であっても、そのまま、電離性放射線照射を行うことで着色処理を行うことができる。このことにより、使用中の眼鏡であっても、手軽に所定の色への着色処理を行うことができ、ファッション性を持った眼鏡に変えて利用することができる。
【0029】
更に、本発明の電離性放射線を照射したレンズは、特別の遮光処理を施さなくても、エネルギー量の大きい短波長の光(波長が約480nm以下の光)を吸収し、その他の波長の光を透過する性質を有するようになることから、紫外線領域の光を吸収する遮光レンズとして機能させることができる。この効果は、照射する放射線線量が大きいほど顕著となる。また、眩しさの原因となる短波長の光を吸収することから、その他の波長の光の強弱が判別し易くなり、コントラストが高いレンズとすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の電離性放射線照射による熱硬化性樹脂の着色の一実施例を示す発色状態図である。
【図2】本発明の着色方法により着色したレンズの透過光の分光スペクトルを分析した特性図である。
【図3】プラスチック光学部材の製造工程を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、プラスチック光学部材に電離性放射線を照射し、放射線を照射してから所定期間経過後の色をプラスチック光学部材の色として採用することにより該プラスチック光学部材の着色を行うプラスチック光学部材の着色方法及びそれによって製造されたプラスチック光学部材である。プラスチック光学部材に照射する放射線線量は、プラスチック光学部材の着色する色によって予め定められた放射線線量を選択することによって行う。
【0032】
プラスチック光学部材は、(チオ)ウレタン系樹脂の原料モノマーをベースとした樹脂組成物、アリル系のモノマーをベースとした樹脂組成物の少なくとも一つにより構成されている。(チオ)ウレタン系樹脂の原料モノマーをベースとしたレンズ材に使用されるモノマーとしては、下記のものが挙げられる。
【0033】
ここに、生成させるためのポリイソシアネート化合物とポリオール化合物の組み合わせ、ポリイソシアネート化合物とポリチオール化合物の組み合わせ、ポリイソシアネート化合物とヒドロキシ基を有するチオール化合物の組み合わせ等を挙げることができる。
【0034】
ポリイソシアネート化合物としては、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有し、且つその分子中に硫黄原子を含むポリイソシアネート化合物、1分子中に2個以上のイソ(チオ)シアネート基を有するポリイソ(チオ)シアネート化合物等が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。
【0035】
具体的には、エチレンジイソシアナート、トリメチレンジイソシアナート、テトラメチレンジイソシアナート、ヘキサメチレンジイソシアナート、オクタメチレンジイソシアナート、ノナメチレンジイソシアナート、2,2’−ジメチルペンタンジイソシアナート、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアナート、デカメチレンジイソシアナート、ブテンジイソシアナート、1,3−ブタジエン−1,4−ジイソシアナート、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアナート、1,6,11−ウンデカトリイソシアナート、1,3,6−ヘキサメチレントリイソシアナート、1,8−ジイソシアナート−4−イソシアナートメチルオクタン、2,5,7−トリメチル−1,8−ジイソシアナート−5−イソシアナートメチルオクタン、ビス(イソシアナートエチル)カーボネート、ビス(イソシアナートエチル)エーテル、1,4−ブチレングリコールジプロピルエーテル−w,w’−ジイソシアナート、リジンジイソシアナートメチルエステル、リジントリイソシアナート、2−イソシアナートエチル−2,6−ジイソシアナートヘキサノエート、2−イソシアナートプロピル−2,6−ジイソシアナートヘキサノエート、キシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナートエチル)ベンゼン、ビス(イソシアナートプロピル)ベンゼン、α,α,α’,α’−テトラメチルキシリレンジイソシアナート、ビス(イソシアナートブチル)ベンゼン、ビス(イソシアナートメチル)ナフタリン、ビス(イソシアナートメチル)ジフェニルエーテル、ビス(イソシアナートエチル)フタレート、メシチリレントリイソシアナート、2,6−ジ(イソシアナートメチル)フラン、等の脂肪族ポリイソシアナート;イソホロンジイソシアナート、ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、シクロヘキサンジイソシアナート、ノルボルネンジイソシアナート、メチルシクロヘキサンジイソシアナート、ジシクロヘキシルジメチルメタンジイソシアナート、2,2’−ジメチルジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、ビス(4−イソシアナート−n−ブチリデン)ペンタエリスリトール、ダイマー酸ジイソシアナート、2−イソシアナートメチル−3−(3−イソシアナートプロピル)−5−イソシアナートメチル−ビシクロ−[2,2,1]−ヘプタン、2−イソシアナートメチル−3−(3−イソシアナートプロピル)−6−イソシアナートメチル−ビシクロ−[2,2,1]−ヘプタン、2−イソシアナートメチル−2−(3−イソシアナートプロピル)−5−イソシアナートメチル−ビシクロ−[2,2,1]−ヘプタン、2−イソシアナートメチル−2−(3−イソシアナートプロピル)−6−イソシアナートメチル−ビシクロ−[2,2,1]−ヘプタン、2−イソシアナートメチル−3−(3−イソシアナートプロピル)−5−(2−イソシアナートエチル)−ビシクロ−[2,2,1]−ヘプタン、2−イソシアナートメチル−3−(3−イソシアナートプロピル)−6−(2−イソシアナートエチル)−ビシクロ−[2,2,1]−ヘプタン、2−イソシアナートメチル−2−(3−イソシアナートプロピル)−5−(2−イソシアナートエチル)−ビシクロ−[2,2,1]−ヘプタン、2−イソシアナートメチル−2−(3−イソシアナートプロピル)−6−(2−イソシアナートエチル)−ビシクロ−[2,2,1]−ヘプタン等の脂環族ポリイソシアナート;フェニレンジイソシアナート、トリレンジイソシアナート、エチルフェニレンジイソシアナート、イソプロピルフェニレンジイソシアナート、ジメチルフェニレンジイソシアナート、ジエチルフェニレンジイソシアナート、ジイソプロピルフェニレンジイソシアナート、トリメチルベンゼントリイソシアナート、ベンゼントリイソシアナート、ナフタリンジイソシアナート、メチルナフタレンジイソシアナート、ビフェニルジイソシアナート、トルイジンジイソシアナート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアナート、3,3’−ジメチルジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアナート、ビベンジル−4,4−ジイソシアナート、ビス(イソシアナートフェニル)エチレン、3,3’−ジメトキシビフェニル−4,4’−ジイソシアナート、トリフェニルメタントリイソシアナート、ポリメリックMDI、ナフタリントリイソシアナート、ジフェニルメタン−2,4,4’−トリイソシアナート、3−メチルジフェニルメタン−4,6,4’−トリイソシアナート、4−メチル−ジフェニルメタン−3,5,2’,4’,6’−ペンタイソシアナート、フェニルイソシアナートメチルイソシアナート、フェニルイソシアナートエチルイソシアナート、テトラヒドロナフチレンジイソシアナート、ヘキサヒドロベンゼンジイソシアナート、ヘキサヒドロジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアナート、ジフェニルエーテルジイソシアナート、エチレングリコールジフェニルエーテルジイソシアナート、1,3−プロピレングリコールジフェニルエーテルジイソシアナート、ベンゾフェノンジイソシアナート、ジエチレングリコールジフェニルエーテルジイソシアナート、ジベンゾフランジイソシアナート、カルバゾールジイソシアナート、エチルカルバゾールジイソシアナート、ジクロロカルバゾールジイソシアナート、等の芳香族ポリイソシアナート;チオジエチルジイソシアナート、チオジプロピルジイソシアナート、チオジヘキシルジイソシアナート、ジメチルスルフォンジイソシアナート、ジチオジメチルジイソシアナート、ジチオジエチルジイソシアナート、ジチオジプロピルジイソシアナート等の含硫脂肪族ポリイソシアナート、ジフェニルスルフィド−2,4’−ジイソシアナート、ジフェニルスルフィド−4,4’−ジイソシアナート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアナートジベンジルチオエーテル、ビス(4−イソシアナートメチルベンゼン)スルフィド、4,4’−メトキシベンゼンチオエチレングリコール−3,3’−ジイソシアナート等の芳香族スルフィド系イソシアナート;ジフェニルジスルフィド−4,4’−ジイソシアナート、2,2’−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5’−ジイソシアナート、3,3’−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5’−ジイソシアナート、3,3’−ジメチルジフェニルジスルフィド−6,6’−ジイソシアナート、4,4’−ジメチルジフェニルジスルフィド−5,5’−ジイソシアナート、3,3’−ジメトキシジフェニルジスルフィド−4,4’−ジイソシアナート、4,4’−ジメトキシジフェニルジスルフィド−3,3’−ジイソシアナート等の芳香族ジスルフィド系ポリイソシアナート;ジフェニルスルホン−4,4’−ジイソシアナート、ジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアナート、ベンジリデンスルホン−4,4’−ジイソシアナート、ジフェニルメタンスルホン−4,4’−ジイソシアナート、4−メチルジフェニルスルホン−2,4’−ジイソシアナート、4,4’−ジメトキシジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアナート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ジイソシアナートジベンジルスルホン、4,4’−ジメチルジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアナート、4,4’−ジ−tert−ブチルジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアナート、4,4’−メトキシベンゼンエチレンジスルホン−3,3’−ジイソシアナート、4,4’−ジクロロジフェニルスルホン−3,3’−ジイソシアナート等の芳香族スルホン系ポリイソシアナート;4−メチル−3−イソシアナートベンゼンスルホニル−4’−イソシアナートフェノールエステル、4−メトキシ−3−イソシアナートベンゼンスルホニル−4’−イソシアナートフェノールエステル等のスルホン酸エステル系ポリイソシアナート;4−メチル−3−イソシアナートベンゼンスルホニルアニリド−3’−メチル−4’−イソシアナート、ジベンゼンスルホニル−エチレンジアミン−4,4’−ジイソシアナート、4,4’−メトキシベンゼンスルホニル−エチレンジアミン−3,3’−ジイソシアナート、4−メチル−3−イソシアナートベンゼンスルホニルアニリド−4−メチル−3’−イソシアナート等の芳香族スルホン酸アミド;チオフェン−2,5−ジイソシアナート等の含硫複素環化合物、その他 1,4−ジチアン−2,5−ジイソシアナート等が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。またそれらは、単独で用いることも、また、二種類以上を混合して川いてもよい。
【0036】
ポリオール化合物としては、1分子中に2個以上のヒドロキシル基を有するポリオール化合物、1分子中に2個以上のヒドロキシル基を有し且つその分子中に硫黄原子を含むポリオール化合物等が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。
【0037】
具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ブタントリオール、1,2−メチルグルコサイド、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、ソルビトール、エリスリトール、スレイトール、リビトール、アラビニトール、キシリトール、アルトール、マニトール、ドルシトール、イディトール、グリコール、イノシトール、ヘキサントリオール、トリグリセロース、ジグリセロール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、シクロブタンジオール、シクロペンタンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘプタンジオール、シクロオクタンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ヒドロキシプロピルシクロヘキサノール、トリシクロ〔5,2,1,02.6〕デカン−ジメタノール、ビシクロ〔4,3,0〕ノナンジオール、ジシクロヘキサンジオール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカンジオール、ビシクロ〔4,3,0〕ノナンジメタノール、トリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカン−ジエタノール、ヒドロキシプロピルトリシクロ〔5,3,1,1〕ドデカノール、スピロ〔3,4〕オクタンジオール、ブチルシクロヘキサンジオール、1,1−ビシクロヘキシリデンジオール、シクロヘキサントリオール、マルチトール、ラクチトール、ジヒドロキシナフタレン、トリヒドロキシナフタレン、テトラヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゼン、ベンゼントリオール、ビフェニルテトラオール、ピロガロール、(ヒドロキシナフチル)ピロガロール、トリヒドロキシフェナントレン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、キシリレングリコール、ジ(2−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン、ビスフェノールA−ビス(2−ヒドロキシエチルエーテル)、テトラブロムビスフェノールA、テトラブロムビスフェノールA−ビス(2−ヒドロキシエチルエーテル)、ジブロモネエペンチルグリコール、エポキシ樹脂等のポリオールの他にシュウ酸、グルタミン酸、アジピン酸、酢酸、プロピオン酸、シクロヘキサンカルボン酸、6−オキソシクロヘキサンプロピオン酸、ダイマー酸、フタル酸、イソフタル酸、サリチル酸、3−ブロモプロピオン酸、2−ブロモグリコール酸、ジカルボキシシクロヘキサン、ピロメリット酸、ブタントラカルボン酸、ブロモフタル酸等の有機多塩基酸と前記ポリオールとの縮合反応生成物、前記ポリオールとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等アルキレンオキサイドとの付加反応生成物、アルキレンポリアミンとエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド等アルキレンオキサイドとの付加反応生成物等が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。またこれらはそれぞれ単独で用いることも、また二種類以上を混合して用いてもよい。
【0038】
また、硫黄原子を含有する2官能以上のポリオールとしては、 例えば、ビス〔4−(ヒドロキシエトキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(2−ヒドロキシプロポキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(2,3−ジヒドロキシプロポキシ)フェニル〕スルフィド、ビス〔4−(4−ヒドロキシシクロヘキシロキシ)スルフィド、ビス〔2−メチル−4(ヒドロキシエトキシ)−6−ブチルフェニル〕スルフィドおよびこれらの化合物に水酸基当たり平均3分子以下のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドが付加された化合物、ジ(2−ヒドロキシエチル)スルフィド、1,2−ビス(2−ヒドロキシエチルメルカプト)エタン、ビス(2−ヒドロキシエチル)ジスルフィド、1,4−ジチアン−2,5−ジオール、ビス(2,3−ジヒドロキシプロピル)スルフィド、テトラキス(4−ヒドロキシ−2−チアブチル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホン(商品名ビスフェノールS)、テトラブロモビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールS、4,4’−チオビス(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、1,3−ビス(2−ヒドロキシエチルチオエチル)−シクロヘキサン等が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。またこれらはそれぞれ単独で用いることも、また二種類以上を混合して用いてもよい。
【0039】
ポリチオール化合物としては、1分子中に2個以上のメルカプト基を有するポリチオール化合物、1分子中に2個以上のメルカプト基を有し且つその分子中に硫黄原子を含むポリチオール化合物等が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。
【0040】
具体的には、メタンジチオール、1、2−エタンジチオール、1,1−プロパンジチオール、1,2−プロパンジチオール、1,3−プロパンジチオール、2,2−プロパンジチオール、1,6−ヘキサンジチオール、1、2,3−プロパントリチオール、1,1−シクロヘキサンジチオール、1、2−シクロヘキサンジチオール、2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジチオール、3,4−ジメトキシブタン−1、2−ジチオール、2−メチルシクロヘキサン−2,3−ジチオール、ビシクロ〔2,2,1〕ペプタ−exo−cis−2,3ジチオール、1,1−ビス(メルカプトメチル)シクロヘキサン、チオリンゴ酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、2,3−ジメルカプトコハク酸(2−メルカプトエチルエステル)、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール(2−メルカプトアセテート)、2,3−メルカプト−1−プロパノール(3−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,3−ジメルカプトプロピルメチルエーテル、2,2−ビス(メルカプトメチル)−1,3−プロパンジチオール、ビス(2−メルカプトエチル)エーテル、エチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、エチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパンビス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパンビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)等の脂肪族ポリチオール、及びそれらの塩素置換体、臭素置換体等ハロゲン置換化合物、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1、2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1、2−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチル)ベンゼン、1、2−ビス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1、2−ビス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1、2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1、2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1、2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1、2,3−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1、2,4−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチル)ベンゼン、1、2,3−トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1、2,4−トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1、2,3−トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1、2,3,4−テトラメルカプトベンゼン、1、2,3,5−テトラメルカプトベンゼン、1、2,4,5−テトラメルカプトベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトエチル)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトエチレンオキシ)ベンゼン、2,2’−ジメルカプトビフェニル、4,4’−ジメルカプトビフェニル、4,4’−ジメルカプトビベンジル、2,5−トルエンジチオール、3,4−トルエンジチオール、1,4−ナフタレンジチオール、1,5−ナフタレンジチオール、2,6−ナフタレンジチオール、2,7−ナフタレンジチオール、2,4−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、4,5−ジメチルベンゼン−1,3−ジチオール、9,10−アントラセンジメタンチオール、1,3−ジ(p−メトキシフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、1,3−ジフェニルプロパン−2,2−ジチオール、フェニルメタン−1,1−ジチオール、2,4−ジ(p−メルカプトフェニル)ペンタン等の芳香族ポリチオール、
また2,5−ジクロロベンゼン−1,3−ジチオール、1,3−ジ(p−クロロフェニル)プロパン−2,2−ジチオール、3,4,5−トリブロム−1,2−ジメルカプトベンゼン、2,3,4,6−テトラクロル−1,5−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン等の塩素置換体、臭素鐙換体等のハロゲン置換芳香族ポリチオール、
また、2−メチルアミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−エチルアミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−アミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−モルホリノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−シクロヘキシルアミノ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−メトキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−フェノキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−チオベンゼンオキシ−4,6−ジチオール−sym−トリアジン、2−チオブチルオキシ−4,6−ジチオールーsym−トリアジン等の複素環を含有したポリチオール、及びそれらの塩素置換体、臭素置換体等ハロゲン置換化合物が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。またそれらはそれぞれ、単独で用いることも、また、二種類以上を混合して用いてもよい。
【0041】
メルカプト基以外にも少なくとも1つの硫黄原子を含有する2官能以上のポリチオールとしては、例えば、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3‐ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトメチルチオ)ベンゼン、1,2,3,4−テトラキス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,3,5−テトラキス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン、1,2,4,5−テトラキス(メルカプトエチルチオ)ベンゼン等、及びこれらの核アルキル化物等の芳香族ポリチオール、ビス(メルカプトメチル)スルフィド、ビス(メルカプトエチル)スルフィド、ビス(メルカプトプロピル)スルフィド、ビス(メルカプトメチルチオ)メタン、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、ビス(3−メルカプトプロピルチオ)メタン、1,2−ビス(メルカプトメチルチオ)エタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,2−ビス(3−メルカプトプロピル)エタン、1,3−ビス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,3−ビス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(メルカプトメチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(3−メルカプトプロピルチオ)プロパン、テトラキス(メルカプトメチルチオメチル)メタン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、テトラキス(3−メルカプトプロピルチオメチル)メタン、ビス(2,3−ジメルカプトプロピル)スルフィド、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、ビス(メルカプトメチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトエチル)ジスルフィド、ビス(メルカプトプロピル)ジスルフィド等、及びこれらのチオグリコール酸及びメルカプトプロピオン酸のエステル、ヒドロキシメチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシメチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシエチルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(2−メルカプトアセテート)、ヒドロキシプロピルジスルフィドビス(3−メルカプトプロピオネート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(2−メルカプトアセテート)、2−メルカプトエチルエーテルビス(3−メルカプトプロピオネート)、1,4−ジチアン、2,5−ジオールビス(2−メルカプトアセテート)、1,4−ジチアン−2,5−ジオールビス(3−メルカプトプロピオネート)、チオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−チオジブチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジグリコール酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、4,4−ジチオジフチル酸ビス(2−メルカプトエチルエステル)、チオジグリコール酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、チオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)、ジチオグリコール酸ビス(2,3−ジメチルカプトプロピルエステル)、ジチオジプロピオン酸ビス(2,3−ジメルカプトプロピルエステル)等の脂肪族ポリチオール、3,4−チオフェンジチオール、ビスムチオール等の複素環化合物等が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。またこれらは、それぞれ単独で用いることも、また二種類以上を混合して用いてもよい。
【0042】
ヒドロキシ基を有するチオール化合物は、メルカプト基以外に少なくとも1つの硫黄原子を含有するものも含む。具体的には、2−メルカプトエタノール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール、グリセリンジ(メルカプトアセテート)、1−ヒドロキシ−4−メルカプトシクロヘキサン、2,7−ジメルカプトフェノール、2−メルカプトハイドロキノン、4−メルカプトフェノール、3,4−ジメルカプト−2−プロパノール、1,3−ジメルカプト−2−プロパノール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、1,2−ジメルカプト−1,3−ブタンジオール、ペンタエリスリトールトリス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールモノ(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールトリス(チオグリコレート)、ペンタエリスリトールペンタキス(3−メルカプトプロピオネート)、ヒドロキシメチル−トリス(メルカプトエチルチオメチル)メタン、1−ヒドロキシエチルチオ−3−メルカプトエチルチオベンゼン、4−ヒドロキシ−4’−メルカプトジフェニルスルホン、2−(2−メルカプトエチルチオ)エタノール、ジヒドロキシエチルスルフィドモノ(3−メルカプトプロピオネート)、ジメルカプトエタンモノ(サルチレート)、ヒドロキシエチルチオメチル−トリス)メルカプトエチルチオメチル)メタン等が挙げられるが、特にこれに限定されるものではない。またこれらは、それぞれ単独で用いることも、また二種類以上を混合して用いてもよい。
【0043】
(チオ)ウレタン系のモノマーを使用する場合には、一般的に、ジメチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫ジラウレート、アゾビスジメチルバレロニトリル等の重合触媒が添加される。
【0044】
アリル系のモノマーとは、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート単独、及びジエチレングリコールビスアリルカーボネートと共重合可能なモノマーとの混合モノマーが該当する。
【0045】
その共重合体可能なモノマーの具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、クロルスチレン、クロルメチルスチレン、ジビニルベンゼン等の芳香族ビニル化合物;メチル(メタ)アタリレート、n−ブチル(メタ)アタリレート、n−ヘキシル(メタ)アタリレート、シクロヘキシル(メタ)アタリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アタリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アタリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アタリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アタリレート、ステアリル(メタ)アタリレート、ラウリル(メタ)アタリレート、フェニル(メタ)アタリレート、グリシジル(メタ)アタリレート、ベンジルメタクリレート等のモノ(メタ)アタリレート類;
2−ヒドロキシエチル(メタ)アタリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アタリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アタリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アタリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アタリレート等のヒドロキシ基を有するモノ(メタ)アタリレート類;
エチレングリコールジ(メタ)アタリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アタリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アタリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アタリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アタリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アタリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アタリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アタリレート、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル〕プロパン、2,2−ビス〔4−((メタ)アクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル〕プロパン等のジ(メタ)アタリレート類;
トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタントリメタクリレート等のトリ(メタ)アタリレート類;テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アタリレート等のテトラ(メタ)アクリレート類〔ただし、本明細書中の(メタ)アクリレートは、メタクリレート又はアクリレートを意味する〕;ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルテレフタレート等が挙げられる。ジエチレングリコールビスアリルカーボネートと共重合可能なモノマーとの混合物は、本発明におけるジエチレングリコールビスアリルカーボネート系のモノマーに該当することはいうまでもない。
【0046】
また、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定化剤、内部離型剤、酸化防止剤、染料、フォトクロミック染料、顔料、耐電防止剤、偏光剤(偏光膜)等の公知の各種添加剤を加えて、混合かつまたは重合させることにより特定の効果を与えても良い。この特定の効果について、本発明では、機能アップの付加処理として表現し説明する。
【0047】
照射する放射線は、ガンマ線、電子線のいずれでも良いが、着色処理作業を短時間で実施できる等の便宜性を考慮すると、電子線が好ましい。
【0048】
また、プラスチック光学部材の一つとして、レンズとフレームを一体とした眼鏡の状態においても、眼鏡に前記放射線処理を行うことによってもレンズに着色処理を行うことができる。
【実施例1】
【0049】
実施例1として、電離性放射線照射によって着色したプラスチック光学部材の眼鏡用レンズ(以下、レンズと称す。)について、図面を参照して説明する。
【0050】
プラスチック(熱硬化性樹脂組成物)を用いたレンズの製造は、図3に示すように、概ね、一般的に行われている方法によって行うものであり、〔注型工程〕→〔切削・研磨工程〕→〔光学検査工程〕→〔染色工程〕→〔コーティング工程〕→〔玉型加工工程〕→〔最終検査工程〕を実施することによって行う。
【0051】
ただ、本発明の実施にあっては、染色工程として、電離性放射線照射工程を行うものであり、そのときの工程順序は、〔コーティング工程〕→〔放射線照射工程〕→〔玉型加工工程〕→〔最終検査工程〕を行うこととなる。但し、〔放射線照射工程〕の後に、好ましくは〔放射線照射工程〕と〔玉型加工工程〕の間に、〔所定期間経過工程〕を介在させる。
【0052】
なお、本レンズの製造工程は一般的な手順を示したものであり、機能アップの付加処理の種類によって、適宜工程順序を変更することができる。
【0053】
各工程の概要は次の通りである。
【0054】
〔注型工程〕
注型工程は、レンズ基材の原料となる樹脂を配合したモノマー(液状のプラスチック材料)を調合し、モールドと呼ばれる型に流し込み、その後、電気炉で熱を加えて分子構造を均一化させて固め、レンズの原型を製造する工程である。
【0055】
〔切削・研磨工程〕
切削・研磨工程は、荒切削、精密研削、研磨および洗浄の4段階よりなる。荒切削は、レンズ基材に軸、センターマーキングのブロッキングを行い、ジェネレーターと呼ばれる機械で指定の度数に合わせて裏面にカーブをつけて切削する段階である。この段階では切削面が荒く、カーブの微調整は次の精密研削でおこなう。精密研削は、ジェネレーターで加工した面をダイヤモンドの刃を用いた機械で更に微細な削りを行って0.1mm以下の誤差のカーブをかたち造る段階である。研磨は、精密研削したレンズ基材のカーブ面を研磨粉が混じった研磨剤で磨き、表面の艶出しを行う段階である。洗浄は、研磨の後に、汚れや異物を取り除く処理である。
【0056】
〔光学検査工程〕
光学検査工程は、レンズ基材の面精度、光学精度、外観精度について、設計値との対比による検査を行う工程である。
【0057】
〔コーティング工程〕
コーティング工程は、ハードコート処理、洗浄およびマルチコート処理の3段階よりなる。ハードコート処理では、超音波洗浄等でレンズ基材の汚れや埃を除去した後、レンズ基材の表面にシリコン樹脂系のハードコート液を塗布し、熱処理によって硬化させる。洗浄処理では、超音波洗浄等でレンズ基材の表面の汚れや埃を除去する。マルチコート処理では、レンズ基材の裏表面に反射防止膜を真空蒸着により製膜し、レンズ基材の表面の反射を抑えるだけでなく、必要に応じて反射を増加させる膜や、汚れや水やけを防止する膜等を必要に応じて製膜する。
尚、コーティング工程の前の染色工程は、通常は実施しないが、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定化剤、内部離型剤、酸化防止剤、染料、フォトクロミック染料、顔料、耐電防止剤、偏光剤(偏光膜)等の公知の各種添加剤を加えて付加処理を要する場合に適宜実施するものである。
【0058】
〔放射線照射工程〕
放射線照射工程は、レンズ基材に着色する色に対応した放射線の照射線量、時間等について、予め定めた基準から放射線照射強度、時間を選択して放射線をレンズ基材に照射するものであり、放射線照射は、大気中でかつ室温にて行い、照射線量は、着色する色に合せて、10〜300kGy(キロ グレイ)を適宜選択するものである。照射する放射線は、ガンマ線あるいは電子線であり、着色処理の短時間の処理が可能である等の便宜性を考慮すると、電子線が好ましい。
【0059】
〔玉型加工工程〕
玉型加工工程では、眼鏡店からの要望に応じて、フレームの形状に合わせてレンズ基材の外周面を削る玉型加工を行なうが、フレーム情報をコンピュータで読み取った後、レンズ基材の中心に治具を装着して寸分違わずにレンズ基材の外周面の切削加工を行う。
【0060】
〔最終検査工程〕
最終検査工程は、各工程、検査を経て仕上がったレンズの光学、外観、色調の最終検査を行う。
【0061】
レンズの着色は、放射線照射後に自然環境で所定期間(約100日間)を経過させることにより発色が安定したときに完了する。
【0062】
ただ、レンズの着色は、後述するように、放射線照射直後と所定期間経過後とのレンズ色を放射線照射線量ごとに明確に対応させることができるため、放射線照射直後のレンズをそのまま利用することもできる。この場合には、所定期間を経過する過程においては、レンズ色が経時的に変化していく。
【0063】
図1に示すレンズは、イソシアネート系およびポリチオール系のモノマーを各50%:50%の割合(等量)で、且つ、430nm波長以下の紫外線を吸収する微量の紫外線吸収剤を混合した樹脂組成物を使用して製造したものであり、厚みは2.0mm、度なしのものである。また、機能アップの付加処理の代表例として、ハードコート処理を施した同一レンズの着色の状況についても合せて表示する。
【0064】
照射する電離性放射線は、コバルト60によるγ線を使用し、照射した放射線線量は、10、50、100、150、200、250、300kGyの7段階である。そして、電離性放射線照射の環境は、大気中、かつ、室温である。
【0065】
図1の試料番号に従って、コバルト60によるガンマ線の照射する放射線線量を増加させていき、レンズの着色状況は、電離性放射線照射直後と電離性放射線照射から100日経過時の着色状況の変化を表示した。更に、試料番号毎の写真:左側は、機能アップの付加処理を行なっていない通常のレンズ(通常品と表示)、右側は、機能アップの付加処理の代表としてハードコート処理を施したレンズ(ハードコート有りと表示)の写真を示している。図1における試料番号毎の写真下の色表示は、JIS Z 8102:2001「物体等の色名」と対比して記載した。
【0066】
尚、放射線照射直後とは、放射線照射機関で放射線照射を行った後、レンズを入手した時であり、放射線照射日から約1週間経過したものである。
【0067】
この結果、電離性放射線照射によるレンズの着色は、電離性放射線照射直後は、全体的に赤っぽい色に発色するが、電離性放射線照射から100日経過で見ると緑がかった色に変化することがわかった。ここには表示していないが、この色の変化は、電離性放射線照射直後から10〜20日程度経過すると、約100日経過のものと同系統の色になり、その後は色の変化が少なくなって100日経過段階では発色した色の変化が着色したい色にほぼ安定することがわかった。
【0068】
従って、本発明の着色方法では、顧客からの着色の要望に対し、最終の完成段階(電離性放射線照射後100日経過したもの)での色見本を基にレンズの色を選択し、それに見合う放射線線量を選択することで、所定の色への着色が可能である。
【0069】
ただ、前述したように、レンズの着色は、放射線照射直後と所定期間経過後とのレンズ色を放射線照射線量ごとに明確に対応させることができるため、放射線照射直後のレンズをそのまま利用することもできる。この場合には、所定期間を経過する過程においては、レンズ色が経時的に変化していく。
【0070】
この色の経時変化については、レンズの材料として混合したプラスチック樹脂同士が電離性放射線照射を行なうことによって架橋が行なわれ、更に、時間の経過とともに架橋が促進して経時的に安定してくることによると推測している。
【0071】
このように、電離性放射線の放射線線量を選択して照射することによって着色する色が選択できること、更には、ここには表示していないが、紫外線吸収剤、赤外線吸収剤、光安定化剤、内部離型剤、酸化防止剤、染料、フォトクロミック染料、顔料、耐電防止剤、偏光剤(偏光膜)等の公知の各種添加剤を加えて付加処理を行なったレンズについても、同様の電離性放射線照射による着色を行なったが、前記の通常品と同様に、電離性放射線照射の放射線線量を選択して照射することによって着色する色を選択することができることが確認できた。この場合には、通常品の着色と比較して、若干くすんだ色となるが、ほぼ同等の着色傾向を得ることができた。
【実施例2】
【0072】
実施例2として、電離性放射線照射によって着色したレンズの明るさに最も関連性のある透過率について、表1を参照して説明する。
【0073】
使用したレンズは、実施例1と同様のプラスチック樹脂を使用して、次の試験条件で、レンズの透過率の確認試験を行った。
【0074】
【表1】

【0075】
〔レンズ〕
レンズは、イソシアネート系およびポリチオール系のモノマーを各50%:50%の割合(等量)で、且つ、430nm波長程度以下の紫外線を吸収する微量の紫外線吸収剤を混合したプラスチック樹脂のままで機能アップの付加処理を行っていないレンズ(通常品)と、ハードコートとマルチコートの両方の処理を行ったレンズ(HMC)の2種類とし、その各々に対して、電子線を照射したもの(電子線照射)と、電子線を照射しないもの(比較用)とを作成した。
【0076】
〔電離性放射線照射〕
照射する電離性放射線は、電子線とし、放射線線量を10kGy〜300kGyとの間を段階的に選定して、試験1は10kGy、試験2は50kGy、試験3は100kGy、試験4は200kGy、試験5は300kGyとした。
【0077】
〔透過率の測定期間〕
透過率の測定は、前述の着色の変化が経時的に変化していくことを踏まえ、約4ヶ月程度の追跡確認を行った。
【0078】
〔確認試験結果〕
本発明のレンズは、前記実施例1の着色でも記載したが、経時変化があり、電離性放射線照射の効果が安定するまでに100日程度必要とすることから、本確認試験結果は、表1の右端の数値(110日〜120日経過時の透過率)にて評価した。
【0079】
その結果、次のことを確認することができた。
1)放射線線量が10〜100kGy程度の低いときは、電子線照射の通常品、HMC共に、比較用に比して透過率を高く維持することができる。
2)放射線線量が200〜300kGyのときは、比較用の透過率が高い傾向を示すが、その差は7%(相対的)程度である。
3)電子線照射した通常品とHMCを比較すると、通常品に比してHMCを照射したものが透過率は、些少ではあるが高い数値を確保することができる。
【0080】
本確認試験において、電子線の放射線線量が200〜300kGyのときは、電子線照射の透過率が比較用の透過率に対して低い傾向を示すことについては、後述するように「電離性放射線照射により着色したレンズは、眩しさの原因となる短波長の光を吸収することで、その他の波長の光の強弱が判別しやすくなり、コントラストが高いレンズとすることができる」ことから、透過率の7%(相対的)程度の低下は充分に吸収し、明るい視野のレンズを達成することができる。
【実施例3】
【0081】
電離性放射線照射によって着色したレンズを透過する光の性質について、図2を基に説明する。
【0082】
レンズは、実施例1の通常品で、電離性放射線としてコバルト60によるガンマ線を10、50、100、150、200、250、300kGyの6段階の放射線線量で照射し、照射後100日を経過したものと、ガンマ線を照射しない通常品とを試料として分光スペクトルの測定を行った。分光スペクトル測定のための光源はタングステンランプ/D2ランプ、分光スペクトル測定器はU3500(株式会社 日立製作所製)を使用した。
【0083】
その結果、通常品は、プラスチック製レンズとして一般的に添加、使用されている紫外線吸収剤の働きによって約430nm以下の波長の光はほとんど吸収するが、それ以上の波長の光は90%程度の透過率を示すのに対して、コバルト60によるガンマ線を照射したものは、光の吸収域が拡大し、480nm以下の波長域の光をほとんど吸収し、かつ、それ以上の波長の透過率はコバルト60によるガンマ線の放射線線量が強くなるに従って低下し、全体の透過量が少なくなることがわかった。
【0084】
ここで、コバルト60によるガンマ線を照射したものは、480nm以上の波長の光の透過量が低下し、光の総透過量も減少して視野が暗くなってくる。一方で、480nm以下の波長域の光をほとんど吸収して透過させないことから、眩しさの現象となる高エネルギー波長の光がなくなり、全体としてはコントラストが高いレンズとすることができる。
【実施例4】
【0085】
電離性放射線照射による眼鏡の着色について説明する。
【0086】
レンズをフレームに装着した眼鏡の状態で該眼鏡に電離性放射線照射を行い、眼鏡に装着している熱硬化性樹脂のレンズに所定の着色を行った。
【0087】
レンズの着色条件については、前記実施例1〜3の条件に従って実施することによって、所定の着色を得ることができる。
【0088】
また、レンズとフレームとを一緒にして電離性放射線照射することから、フレームについては、耐放射線性がある材料とすることが必要である。
【0089】
本発明の実施例として、実施例1〜4によって説明したが、眼鏡レンズの着色への利用に関して説明する。
【0090】
レンズへの着色は、特にファッション性を帯びたものが多くなると予想されるため、レンズの色に対する顧客の要望も千差万別である。
【0091】
この顧客の要望に応える為には、まず、「最終製品としてのレンズの色見本による選択」である。この最終製品としての色見本には、その色をレンズに着色するための電離性放射線照射条件を対応させてデータベース化しておくことが必要である。勿論、レンズの材質が異なる場合には、予め、レンズの材質と照射する放射線線量との関係による着色条件のデータを実証し、データベース化しておくことが必要である。
【0092】
この最終製品としてのレンズの色見本に沿って、顧客の要望によって着色するレンズの色を選択してもらう。
【0093】
そして、顧客が選択した色から、前記電離性放射線照射条件のデータベースに基づき、照射に必要な放射線線量を選択する。この放射線線量に従ってレンズへの電離性放射線照射を行い、所定期間の安定化期間(上記実施例1、2では100日程度)放置後に完成品となる。このような形態をとることによって、本発明の熱硬化性樹脂のレンズの着色を実施することができる。
【0094】
一方、レンズの着色は、放射線照射直後と所定期間経過後とのレンズ色を放射線照射線量ごとに明確に対応させることができるため、放射線照射直後のレンズをそのまま利用することもできる。この場合には、所定期間を経過する過程においては、レンズ色が経時的に変化していく。
【0095】
本発明の着色方法は、レンズ以外の様々な形態のプラスチック光学部材の着色に適用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック光学部材に電離性放射線を照射することにより該プラスチック光学部材の着色を行うプラスチック光学部材の着色方法において、
前記プラスチック光学部材に照射する前記電離性放射線の放射線線量は、プラスチック光学部材に着色する色によって予め定められた放射線線量を選択して照射することを特徴とするプラスチック光学部材の着色方法。
【請求項2】
請求項1において、前記プラスチック光学部材は、(チオ)ウレタン系樹脂の原料モノマーをベースとした樹脂組成物、アリル系のモノマーをベースとした樹脂組成物の少なくとも一つにより構成されていることを特徴とする記載のプラスチック光学部材の着色方法。
【請求項3】
請求項1または2において、前記照射する電離性放射線は、ガンマ線あるいは電子線であることを特徴とするプラスチック光学部材の着色方法。
【請求項4】
前記請求項1〜3に係る発明のいずれか一つにより着色したことを特徴とするプラスチック光学部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−123236(P2012−123236A)
【公開日】平成24年6月28日(2012.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−274479(P2010−274479)
【出願日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(301074388)株式会社 サンルックス (12)
【出願人】(505374783)独立行政法人日本原子力研究開発機構 (727)
【Fターム(参考)】