説明

プラスチック容器および導管

本発明は、少なくとも115℃のガラス転移温度(Tg)を有する半結晶性の半芳香族ポリアミドを含む熱可塑性ポリマー組成物でできた部品もしくは層からなる、または部品もしくは層を含む、冷却システム、加熱システム、空気取入れシステム、排気システム、圧力システムまたは燃料システム用のプラスチック容器もしくは導管に関する。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明はプラスチック容器もしくは導管に関する。より具体的には本発明は、熱可塑性ポリマー組成物でできた部品もしくは層からなる、または部品もしくは層を含む、冷却システム、加熱システム、空気取入れシステム、排気システム、圧力システムまたは燃料システム用の容器もしくは導管に関する。
【0002】
冷却システム、加熱システム、空気取入れシステム、排気システム、圧力システムおよび燃料システム用の容器および導管は、熱を生成する、エンジン、または加熱装置に接続して典型的には使用される。さらに、エンジンは多くの場合、熱を常に容易に放出することができない区画に閉じ込められる。これは、例えばエンジンフード下に閉じ込められた自動車エンジンについてのケースである。加熱装置またはエンジンのすぐ近くでの高温のために、容器、それぞれ導管は、短期ピーク温度に対してのみならず、特に高温への長期暴露に対してもまた、良好な熱安定性を持たなければならない。特に比較的高い湿度で高温に長期間暴露されるときに、容器もしくは導管を作り出す材料は、酸化分解に見舞われる可能性があり、表面亀裂をもたらし、表面亀裂が見られる。一方で、容器および導管の幾つかは、油、燃料、ならびに水および水/グリコール混合物などの、加熱および冷却液などの液体を貯蔵するまたは輸送するために使用される。これらの液体は、特に高温では、容器および導管に使用されたプラスチック材料に対して攻撃的な液体であり得る。かかる条件下では、いわゆる応力亀裂が起こる可能性がある。それ故、容器および導管はまた、かかる液体に対して著しく不透過性であるべきであり、使用される液体に、特に高温での応力亀裂に十分に耐性があるべきである。
【0003】
本発明の目標は、比較的高い湿度で高められた温度に対する良好な耐性を組み合わせ、油、燃料ならびに加熱および冷却液などの液体への暴露下に低い透過性および環境応力亀裂に対する良好な耐性を示す、プラスチック容器もしくは導管、およびそこで使用される材料を提供することである。
【0004】
この目標は、少なくとも115℃のガラス転移温度を有する半結晶性の半芳香族ポリアミドを含むポリアミドポリマー組成物でできた部品もしくは層からなる、または部品もしくは層を含む、本発明による容器および導管で達成された。
【0005】
上記の組成物でできた、容器もしくは導管、または少なくともそれらの部品もしくは層は、耐熱酸化性、耐化学薬品性および燃料不透過性の点で良好な特性を組み合わせることが分かった。半結晶性ポリアミドは、典型的にはガラス転移温度(Tg)より上であり、そして非常に高い可能性がある融解温度(Tm)を有し、高められた温度で良好な寸法特性および機械的特性の保持をもたらす。かかる半結晶性ポリアミドのTgは、ポリアミドのタイプに依存して変わる可能性があり、同じ融解温度を有する異なるポリアミドについて異なり得る。非晶質の半芳香族ポリアミドは、本発明に使用されるものよりはるかに高いTgを有する可能性があるが、このTgは一般に、高められた温度で必要とされる寸法特性および機械的特性にとって十分ではない。半結晶性の脂肪族ポリアミドは一般に、はるかにより低いTgを有し、より高い燃料透過性を有し、匹敵する条件下で熱酸化および環境応力亀裂にはるかに多く見舞われることが分かった。より低いTgを有する幾つかの半結晶性の半芳香族ポリアミドでできた相当する製品と比べると、半結晶性であり、そして匹敵する融解温度を有するにもかかわらず、本発明による製品は、特性、すなわち比較的高い湿度で高められた温度での耐熱酸化性、耐化学薬品性および燃料不透過性の点で全体に良好なバランスを示す。
【0006】
国際公開第2007/085406号パンフレットは、高いTgの半結晶性の半芳香族ポリアミドを記載しているが、燃料透過性へのそれらの影響を記載していない。
【0007】
国際公開第2006/056581号パンフレットは、半結晶性の半芳香族ポリアミドを含む多層構造体を記載しているが、高いTgの半結晶性の半芳香族ポリアミドも燃料透過性へのそれらの影響も記載していない。
【0008】
導管は、液体または空気などの、気体を導くための手段と本明細書では理解される。かかる導管は好適には、パイプまたはチューブの形状を有する。
【0009】
容器は、液体または気体を包含するための手段と本明細書では理解される。好適には、容器は、別々にまたは組み合わせてのどちらかで液体または気体を満たすおよび/または放出するのに好適な、1つ以上の開口部を有する。
【0010】
半芳香族ポリアミドは、熱可塑性ポリマーの分野内での通常の意味を有すると本明細書では理解される。かかるポリアミドは典型的には、脂肪族部分を含む繰り返し単位の隣に芳香族部分を含む繰り返し単位を含む。一般に、かかるポリアミドは、ジカルボン酸およびジアミンに由来する繰り返し単位を含み、他の成分に由来する繰り返し単位が同様に存在してもよい。
【0011】
半結晶性ポリマーとは、少なくとも5J/gの融解エンタルピーを有するポリマーと本明細書では理解される。それに伴って、非晶質ポリマーは、5J/g未満の融解エンタルピーを有するポリマーであると本明細書では理解される。
【0012】
用語、融解エンタルピーとは、10℃/分の加熱速度での二次加熱ランでDSCによってASTM D3418−03に従った方法で測定される、発熱エネルギーと本明細書では理解される。
【0013】
用語、融解温度とは、10℃/分の加熱速度での二次加熱ランでDSCによってASTM D3418−03に従った方法で測定される、融解温度と本明細書では理解される。本明細書では、融解吸熱の最大ピークが融解温度とみなされる。
【0014】
本明細書で用いられる用語、ガラス転移温度(Tg)とは、ガラス転移範囲に入り、そして最大のガラス転移速度を示す、10℃/分の加熱速度での二次加熱ランでDSCによりASTM E 1356−91に従った方法で測定された温度と理解される。最大のガラス転移速度を示す温度は、親熱曲線の変曲点と一致する親熱曲線の(時間に関する)一次導関数のピークでの温度として測定される。
【0015】
用語、密度とは、ISO 1183−1:2004B方法B(粒子、粉末、フレーク、顆粒または完成品の小片のための、液体ピクノメーター法)に従った方法で測定される20℃での密度と本明細書では理解される。
【0016】
そうでないと明らかに記載されない限り、原料の量は、重量百分率(重量%)単位で本明細書では示され、ここで重量百分率は、そうでないと明らかに記載されない限り、原料を含む組成物の総重量に対するものである。
【0017】
半結晶性の半芳香族ポリアミドは本明細書ではまた、簡潔さおよび読みやすさのためにポリアミド(A)または単に(A)で示されるであろう。
【0018】
ポリアミド(A)は特有の好ましい特性を有するが、本発明による容器もしくは導管用の熱可塑性ポリマー組成物に使用されるポリアミド(A)の特性は変わってもよい。好ましくは、ポリアミド(A)のガラス転移温度は、少なくとも120℃、より好ましくは少なくとも125℃、またはさらにより良好には少なくとも130℃である。特に、比較的高い湿度で高められた温度での耐熱酸化性は増加する。好ましくはポリアミド(A)は、少なくとも270℃、より好ましくは290〜340℃、さらにより良好には310〜330℃の融解温度(Tm−A)を有する。より高い最低融解温度は、高められた温度での寸法特性および機械的特性がより良好に保持されるという利点を有する。より低い最高融解温度は、生成物がより容易に加工されることである。
【0019】
本発明による容器もしくは導管の製造のために使用されるポリアミド(A)は有利には、少なくとも1.20の密度を有することが分かった。好ましくは、密度は少なくとも1.23である。より高い密度は、低い透過性、良好な耐化学薬品性および酸化安定性に好都合であると分かった。密度は、成形後の容器もしくは導管に関して、すなわち成形品に関して測定することができる。成形品における組成物が、ポリアミド(A)以外に他の成分を含む場合、密度は完全組成物について測定され、そこからポリアミド(A)の密度が、他の成分の密度についての補正によって計算される。本発明による成形品の特性は、成形品をアニーリング工程にかけることによって改善することができる。同様にアニーリング工程によって、結晶化度は高められ、密度は増加する。
【0020】
ポリアミド(A)は、少なくとも115℃のTgの任意の半結晶性の半芳香族ポリアミドであってもよい。好適には、ポリアミドAは、ジカルボン酸およびジアミンに由来する繰り返し単位であって、ジカルボン酸、もしくはジアミンのどちらか、または両方が芳香族成分を含み、残りが、直鎖状、分枝状、もしくは環状であることができる脂肪族ジカルボン酸および/またはジアミン、および/またはアリール脂肪族ジカルボン酸およびジアミンを含む繰り返し単位を含む。
【0021】
好適な芳香族ジカルボン酸の例は、テレフタル酸およびイソフタル酸である。好適な芳香族ジアミンの例は、メタ−キシリレンジアミンおよびパラ−キシリレンジアミンである。
【0022】
好ましくは、半結晶性の半芳香族ポリアミドは、ジカルボン酸としてのテレフタル酸に由来する繰り返し単位を含む。
【0023】
上記の芳香族ジカルボン酸および/または芳香族ジアミンと組み合わせて、ポリアミド(A)に使用することができる脂肪族ジカルボン酸および脂肪族ジアミンは、任意の脂肪族ジカルボン酸および/または脂肪族ジアミンであってもよい。好適には、ジカルボン酸成分は4〜36個のC原子、好ましくは6〜12個のC原子を含む。ジカルボン酸成分は2〜36個のC原子、好ましくは4〜12個のC原子を含んでもよい。
【0024】
任意選択的に上記の芳香族ジカルボン酸と組み合わせて、ポリアミド(A)に使用することができる脂肪族ジカルボン酸の例は、アジピン酸および1,4−シクロヘキサアン(cyclohexaan)ジカルボン酸である。脂肪族ジアミンの例は、1,4ブタンジアミン、1,5ペンタンジアミン、1,6ヘキサンジアミン、1,8オクタンジアミン、2−メチルオクタメチレンジアミン、1,9ノナンジアミン、1,10デカンジアミンである。
【0025】
好ましい実施形態では、半結晶性の半芳香族コポリアミドは、
(a)25〜45モル%のテレフタル酸、
(b)5〜25モル%のテレフタル酸とは異なる芳香族ジカルボン酸、および/または脂肪族ジカルボン酸、
(c)エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミンおよびペンタメチレンジアミンからなる群から選択される5〜30モル%のジアミン、
(d)少なくとも6個のC−原子を含む20〜45モル%のジアミン、および任意選択的に
(e)0〜10モル%の1つ以上のアミノカルボン酸およびまたはラクタム、ならびに
(f)アミノおよび/またはカルボン酸基の点で一官能性または三官能性である0〜3モル%の1つ以上の化合物
に由来する繰り返し単位からなり、
ここで、a〜fのそれぞれのモル%はa〜fの合計に対するものであり、a〜fの合計は100%である。
【0026】
容器および導管でのこのポリアミドの利点は、それが相対的な高い密度を有するという事実によって同様に、それが非常に良好な特性を示すことである。さらに、このポリアミドは、それが他のポリアミドと組み合わせて少ない量で使用されるときに既に、燃料透過性にかなりの影響を及ぼす。
【0027】
好ましくは、短鎖ジアミン(c)は、テトラメチレンジアミンおよびペンタメチレンジアミンから選択される。同様に好ましくは、半結晶性の半芳香族ポリアミドは、290〜335℃の範囲の、より好ましくは310〜330℃の範囲の融解温度を有する。より高い融解温度は、例えば、より多い量のテレフタル酸および/または脂環式もしくは芳香族ジアミン、または短鎖脂肪族ジアミンを使用することによって成し遂げることができる。より高いTgは、より多い短鎖脂肪族ジアミンを使用することによって成し遂げることができる。当業者は、共通の常識および所定の実験を用いて融点を適合させることができる。
【0028】
上記の実施形態での成分a〜fは、a〜fのそれぞれのモル%がa〜fの合計に対するものであり、次の量:(a)35〜45モル%;(b)5〜15モル%;(c)10〜25モル%;(d)25〜40モル%;(e)0〜5モル%;および(f)0〜1モル%で、個々にまたは互いに組み合わせてのどちらかで好ましくは存在する。それぞれ(b)および(c)に対して、より多い量の(a)および(d)は、より良好な高温特性と組み合わせてポリマーについてより良好な加工をもたらす。
【0029】
本発明による容器もしくは導管での熱可塑性ポリマー組成物は、ポリアミド(A)以外に、他のポリマー、強化剤、充填剤、および添加剤などの、1つ以上の他の成分を含んでもよい。好適には、熱可塑性ポリマー組成物は少なくとも1つの他のポリマー、および/または強化剤および/または充填剤、および/または少なくとも1つの他の添加剤を含んでもよい。
【0030】
他のポリマーは、例えば、ポリアミドもしくはポリエステル、またはエラストマーなどの、熱可塑性ポリマーを含んでもよい。好ましくは、他のポリマーは、半結晶性の半芳香族ポリアミド(A)とは異なるポリアミドを含むか、それからのみなることさえある。このポリアミドは、脂肪族もしくは半芳香族ポリアミド、非晶質もしくは結晶性ポリアミド、例えば、ポリアミド−6もしくはポリアミド66などの、半結晶性の脂肪族ポリアミド、または115℃より下のTgの半結晶性の半芳香族ポリアミドであってもよい。好ましくは、他のポリアミドは半結晶性ポリアミドである。
【0031】
少なくとも1つの他のポリマーが存在する可能性があるので、これは必ずしも当てはまらない。その点に関してポリアミド(A)は、熱可塑性ポリマー組成物中に存在するポリマーの総重量に対して、少なくとも40重量%、好ましくは少なくとも50もしくはさらに良好には60重量%、さらにより好ましくは75〜100重量%の量で当然存在してもよい。
【0032】
上記の通り、別のポリアミドと組み合わせる非常に少ない量のポリアミド(A)で既に、燃料透過性はかなり低減することができる。本明細書での熱可塑性ポリマー組成物中に存在するポリマーは好適には、熱可塑性ポリマー組成物中に存在するポリマーの総重量に対して、少なくとも60重量%、さらにより好ましくは75〜100重量%のポリアミドを含む。第2のポリアミドを含む組成物中のポリアミド(A)の量は、熱可塑性ポリマー組成物中に存在するポリマーの総重量に関して、十分に5重量%ほどに低いものであることができる。より好ましくは、ポリアミド(A)の量は、少なくとも10重量%であり、より好ましくは20〜95重量%、またはさらに良好には50〜90重量%の範囲にある。
【0033】
組成物によって含まれる強化剤および充填剤は、配合物の成形に使用される任意の補助の強化剤または充填剤であってもよい。強化剤としてガラス繊維および炭素繊維などの繊維が使用されてもよい。繊維は本明細書では、厚さ(t)、長さ(l)および幅(w)で表される3つの寸法によって特徴付けられる粒子であって、長さ(l)に対する、幅(w)および厚さ(t)のうち最大のものとの比と定義され、そしてl/(wまたはt)と表すアスペクト比、少なくとも5を有する粒子と定義される。
【0034】
無機充填剤、ナノフィラーなどであってもよい充填剤。好ましくは、充填剤は、滑石、雲母および粘土、好ましくはナノ粘土のような、板状充填剤を含む。板状充填剤の利点は、燃料および他の液体に対する透過性がさらに低下することである。板状粒子は本明細書では、厚さ(t)、長さ(l)および幅(w)で表される3つの寸法によって特徴付けられる粒子であって、長さ(l)と幅(w)のうち最小のものに対する、厚さ(t)との比と定義され、そして(lまたはw)/tと表す、アスペクト比、少なくとも5を有する粒子と定義される。強化剤および充填剤は、広範囲にわたって変動する総計量で、例えば0.1〜60重量%で使用することができる。この量は、60重量%よりさらにより高くても、または0.1重量%より低くてもよい。より低いおよびより高い量が用いられてもよいが、強化剤と充填剤との総計量は、どちらかでも使用される場合、好ましくは5〜40重量%の範囲にある。
【0035】
しかしながら、板状充填剤は典型的には、例えば0.1〜10重量%、好ましくは1〜5重量%で変動する、はるかにより低い量で使用される。
【0036】
添加剤については、ポリアミド成形組成物のために普通使用される任意の補助添加剤を使用することができる。本組成物に使用することができる添加剤には、滑剤および剥離剤のような加工助剤、UV安定剤および特に熱安定剤および酸化防止剤のような安定剤、顔料および染料のような着色剤、核剤などが含まれる。述べられるおよびさらに好適な添加剤は、例えばGaechter、Mueller、Kunststoff−Additive、3.Ausgabe、Hanser−Verlag、Muenchen、Wien、1989におよびPlastics Additives Handbook、5th Edition、Hanser−Verlag、Muenchen、2001に記載されている。
【0037】
添加剤は単独でまたはそれらの任意の組み合わせで使用することができる。本組成物は広範囲にわたって変動する量で添加剤を含んでもよい。好適には、この量は0.01〜10重量%、好ましくは0.1〜5重量%、または0.2〜2重量%の範囲でさえある。
【0038】
特定の実施形態では、本熱可塑性ポリマー組成物は、
(a)20〜99.99重量%の半結晶性の半芳香族ポリアミド(A)、
(b)0〜40重量%の少なくとも1つの他のポリマー、
(c)0〜50重量%の充填剤および/または強化剤、
(d)0.01〜10重量%の添加剤
からなり、
ここで、ポリアミド(A)は、(a)および(b)の総重量に対して少なくとも50重量%の量で存在し、そして(a)〜(d)の重量百分率は組成物の総重量に対するものである。(a)〜(d)の合計は100%に等しい。より特に、本熱可塑性ポリマー組成物は、
(e)50〜99.95重量%の半結晶性の半芳香族ポリアミド(A)、
(f)0〜25重量%の少なくとも1つの他のポリマー、
(g)0〜50重量%の充填剤および/または強化剤、
(h)0.05〜5重量%の添加剤
からなってもよい。
【0039】
本発明による容器もしくは導管は、上記の熱可塑性ポリマー組成物から製造された少なくとも部品もしくは層を含む。特有の実施形態では、容器もしくは導管は、本熱可塑性ポリマー組成物から製造された単層からなるか、または本熱可塑性ポリマー組成物から製造された層と、本熱可塑性ポリマー組成物とは異なるポリマー組成物からなる少なくとも1つの層とを含む少なくとも2つの層を含む。
【0040】
本熱可塑性ポリマー組成物とは異なるポリマー組成物からなる少なくとも1つの層は、適用できる場合、他のポリマー層、または層と本明細書ではまた表される。
【0041】
好適には、熱可塑性ポリマー組成物から製造されたものの層は、別のバリア層、例えばEVOHバリア層と組み合わせられる。
【0042】
本発明はまた、冷却システム、加熱システム、空気取入れシステム、排気システム、圧力システムまたは燃料システム用の容器もしくは導管の製造方法に関する。本発明による方法は、熱可塑性ポリマー組成物が加熱され、そして容器もしくは導管形状へ溶融造形される溶融加工工程であって、熱可塑性ポリマー組成物が少なくとも115℃のガラス転移温度を有する半結晶性の半芳香族ポリアミドを含む溶融加工工程を含む。熱可塑性ポリマー組成物およびそれに使用される半結晶性の半芳香族ポリアミドは、本明細書で上に記載されたような任意の特定のまたは好ましい実施形態であってもよい。
【0043】
本発明はまた、冷却システム、加熱システム、空気取入れシステム、排気システム、圧力システムまたは燃料システムでの本発明による容器もしくは導管の使用に関する。本明細書では、冷却システム、加熱システム、空気取入れシステム、排気システム、圧力システムまたは燃料システムは、当然、自動車エンジンの一部であってもよい。容器もしくは導管はまた、ホットエア、水、冷却液(例えば水/グリコール混合物)、油、または燃料と直接接触してもよい。
【0044】
好適には本発明によるプラスチック容器は、燃料タンク、または冷却液用タンクである。
【0045】
本発明によるプラスチック導管は、例えば、加熱およびまたは冷却液、ハイドロリック液用のチューブ、パイプもしくはホース、または空気吸入システムの部品もしくはガス排気システム用の部品であることができる。
【0046】
本発明はまた、少なくとも115℃のガラス転移温度を有する半結晶性の半芳香族ポリアミドを含む熱可塑性ポリマー組成物でできた、容器もしくは導管ではない、かかる構成部品を含む加熱装置または燃料システムに関する。
【0047】
本発明は、加熱装置または燃料システム用の構成部品であって、ドアハンドル、ドアトリム、ハウジング、壁パネルまたはそれらの部品、ポンプエレメントである構成部品にさらに関する。
【0048】
本発明は、以下の実施例および比較実験でさらに例示される。
【0049】
[材料]
PA−1 ポリアミド6T/4T/66、半芳香族コポリアミド、Tm 325C、Tg 125℃、RV 1.9
PA−2 ポリアミド6、脂肪族ポリアミド、Tm 220℃、Tg 51℃、RV=3.2
PA−3 ポリアミド6T/66、半芳香族コポリアミド、Tm 320℃、Tg 100℃、RV 2.6
【0050】
ポリアミド組成物のそれぞれは、加工助剤および熱安定剤を含む約0.5〜1.0重量%の標準添加剤パッケージを含んだ。本明細書で述べられる融解温度(Tm)、ガラス転移温度(Tg)および相対粘度(RV)は、以下に記載される方法によって測定した。
【0051】
[DSC測定:TmおよびTg]
融解温度(Tm)は、10℃/分の加熱速度での二次加熱ランでDSCによりASTM D3418−03に従って測定した。
【0052】
ガラス転移温度(Tg)は、ガラス転移範囲に入り、そして最大のガラス転移速度を示す、10℃/分の加熱速度での二次加熱ランでDSCによりASTM E 1356−91に従って測定した。
【0053】
[機械的特性]
機械的特性 引張強度[MPa]および破断点伸び[%]は、23℃でISO 527に従った引張試験で測定した。機械的特性は、70μm厚さフィルムに関して測定した。
【0054】
[サンプル調製]
1mm厚さのサンプルを、標準の押出および成形条件を用いる溶融押出成形によって調製した。その1mm厚さサンプルを燃料透過性試験のために使用した。次のサンプルを調製した。
【0055】
【表1】



【0056】
70μm厚さフィルムを、低温急冷ロールを用いるスリットダイを通しての溶融押出によって製造した。その70μm厚さフィルムをエージング実験および酸素透過率のために使用した。次のサンプルを調製した。
【0057】
【表2】



【0058】
[燃料透過]
燃料透過は、CE10燃料について1mm厚さプラークに関して測定した。溶解性および拡散は、標準方法を用いて測定し、それに基づいて透過度を計算し、そして基準としてのPA6に対して格付けした。本明細書では計算された透過度値のそれぞれをPA6の値で割った。従って、PA6は1と格付けされた。結果を表1に示す。
【0059】
【表3】



【0060】
[加熱エージング]
材料を、乾燥条件下で高められた温度(85℃)へのおよび湿潤条件(85%RH)下で高められた温度(85℃)への長期暴露下に試験した。エージングの前後に機械的特性を測定した。試験結果を表2に示す。
【0061】
【表4】



【0062】
[酸素透過率試験]
酸素透過率は、標準試験手順を用いてフィルムサンプルに関して測定した。
【0063】
実施例IIIおよびIVならびに比較実験Cのフィルムを酸素透過率試験にかけ、実施例IIIおよびIVについての観察された透過率を、比較実験Cのそれに対して標準化した。比較実験Cについての1の標準化値と比較して、実施例IIIおよびIVのフィルムは、はるかにより低い酸素透過率を有し、それらは互いにほんの少し異なり:0.25対0.26であった。明らかに実施例IIIでの半結晶性ポリアミドPA−1は、比較実験Cでの脂肪族ポリアミドPA−6よりはるかに低い酸素透過率を示した。実施例IVのブレンドにおける20重量%PA−2の存在にもかかわらず、PA−1の低い酸素透過率は、ほとんど影響を受けず、少なくとも重量ベースで予測され得るよりもはるかに低い程度の影響を受けた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも115℃のガラス転移温度(Tg)を有する半結晶性の半芳香族ポリアミドを含む熱可塑性ポリマー組成物でできた部品もしくは層からなる、または部品もしくは層を含む、冷却システム、加熱システム、空気取入れシステム、排気システム、圧力システムまたは燃料システム用の導管。
【請求項2】
前記半結晶性の半芳香族ポリアミド(A)が少なくとも120℃のガラス転移温度、および/または少なくとも270℃の融解温度(Tm−A)、および/または少なくとも1.20の密度を有する、請求項1に記載の導管。
【請求項3】
前記半結晶性の半芳香族ポリアミド(A)が、
(a)25〜45モル%のテレフタル酸、
(b)5〜25モル%のテレフタル酸とは異なる芳香族ジカルボン酸、および/または脂肪族ジカルボン酸、
(c)エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミンおよびペンタメチレンジアミンからなる群から選択される5〜30モル%のジアミン、
(d)少なくとも6個のC−原子を含む20〜45モル%のジアミン、および任意選択的に
(e)0〜10モル%の1つ以上のアミノカルボン酸および/またはラクタム、ならびに
(f)アミノおよび/またはカルボン酸基の点で一官能性または三官能性である0〜3モル%の1つ以上の化合物
に由来する繰り返し単位からなり、
a〜fのそれぞれのモル%がa〜fの合計に対するものであり、a〜fの合計が100%である、請求項1または2に記載の導管。
【請求項4】
前記熱可塑性ポリマー組成物が、少なくとも1つの他のポリマー、および/または強化剤、および/または充填剤、および/または少なくとも1つの他の添加剤を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の導管。
【請求項5】
熱可塑性ポリマー組成物が、
(A)40〜95重量%の前記半結晶性の半芳香族ポリアミド、
(B)0〜40重量%の少なくとも1つの他のポリマー、
(C)5〜40重量%のガラス充填剤および/または繊維、
(D)0.01〜10重量%の前記少なくとも1つの添加剤
からなり、
前記重量百分率(重量%)が前記ポリマー組成物の総重量に対するものである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の導管。
【請求項6】
少なくとも115℃のガラス転移温度(Tg)を有する半結晶性の半芳香族ポリアミドを含む熱可塑性ポリマー組成物でできた層と、前記熱可塑性ポリマー組成物から製造された層と、前記熱可塑性ポリマー組成物とは異なるポリマー組成物からなる少なくとも1つの層とを含む、冷却システム、加熱システム、空気取入れシステム、排気システム、圧力システムまたは燃料システム用のプラスチック容器。
【請求項7】
前記半結晶性の半芳香族ポリアミドが請求項2〜5のいずれか一項に記載されるような半結晶性の半芳香族ポリアミドである、請求項6に記載のプラスチック容器。
【請求項8】
少なくとも115℃のガラス転移温度を有する半結晶性の半芳香族ポリアミドを含む熱可塑性ポリマー組成物でできた、ドアハンドル、ドアトリム、ハウジング、壁パネルもしくはそれらの部品、ポンプエレメントである、加熱装置または燃料システム用の構成部品。
【請求項9】
前記半結晶性の半芳香族ポリアミドが請求項2〜5のいずれか一項に記載されるような半結晶性の半芳香族ポリアミドである、請求項8に記載の構成部品。
【請求項10】
冷却システム、加熱システム、空気取入れシステム、排気システム、圧力システムまたは燃料システムでの、請求項1〜5のいずれか一項に記載の導管、請求項6もしくは7に記載の容器、または請求項8もしくは9に記載の構成部品の使用。
【請求項11】
前記冷却システム、前記加熱システム、前記空気取入れシステム、前記排気システム、前記圧力システムまたは前記燃料システムが、自動車エンジンの一部である、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
前記容器もしくは導管が、ホットエア、水、冷却液、油、または燃料と直接接触する、請求項10または11に記載の使用。
【請求項13】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の導管、または請求項6もしくは7に記載の容器、および/または請求項8もしくは9に記載の構成部品を含む加熱システム、冷却システム、空気取入れシステム、排気システム、圧力システムまたは燃料システム。

【公表番号】特表2012−515805(P2012−515805A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−545767(P2011−545767)
【出願日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際出願番号】PCT/EP2010/050679
【国際公開番号】WO2010/084149
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(503220392)ディーエスエム アイピー アセッツ ビー.ブイ. (873)
【Fターム(参考)】