説明

プラスチック物品の耐磨耗性改良方法およびこれにより製造された物品

本発明は、プラスチック物品の耐磨耗性を改良する方法に関する実施形態を含む。この方法は、(a) 少なくとも1つのシロキサン化合物および少なくとも1つの熱可塑性ポリマー材料を含む組成物を準備するステップと:(b) ステップ(a)の組成物から物品を形成するステップと;(c) ステップ(b)において形成された物品を、電子ビーム源、ガンマ線照射源、およびこれらの組合せから選択されるエネルギー源に曝すステップとを含む。また本発明は、磨耗抵抗性表面を含む物品に関する実施形態を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチック物品の耐磨耗性改良方法に関する実施形態を含む。また本発明は、磨耗抵抗性表面を含む物品に関する実施形態を含む。
【背景技術】
【0002】
ポリカーボネート(PC)およびレゾルシノールポリアリレート-ポリカーボネートコポリマー(SLX)などの熱可塑性ポリマーは、引っ掻き傷および擦傷タイプの損傷を受けやすい。ポリマーの引っ掻き傷または擦傷の受けやすさは、引っ掻き傷または擦傷のない外観が求められる商業的用途におけるポリマーの有用性を大幅に制限する。
【0003】
引っ掻き傷および擦傷の損傷を避けるかまたは少なくとも最小化するために、ハードコーティングが様々なポリマー、特にポリカーボネートの表面に適用されている。この手法は、つや出し用途などのいくつかの分野において有利に使用されている。ハードコーティングをポリマーの表面に適用することは、ある場合には改良された耐磨耗性を提供するが、ハードコートの適用は、追加のプロセスステップをもたらし、処理時間およびコストを増加させる傾向にある。加えて、一旦ハードコートが表面(例えば、ポリカーボネートフィルムの表面)に付着すると、ハードコートの存在により後処理オプションが制限される。さらなる制限は、ハードコート処理したポリマーを含む物品が「風化」してハードコートがポリマー表面から磨滅した場合、ポリマーが再び引っ掻き傷および擦傷を受けやすくなることである。さらに、ポリマー表面に付着しているハードコートは層間剥離することもある。
【特許文献1】米国特許第3,030,331号明細書
【特許文献2】米国特許第3,169,121号明細書
【特許文献3】米国特許第3,207,814号明細書
【特許文献4】米国特許第4,194,038号明細書
【特許文献5】米国特許第4,156,069号明細書
【特許文献6】米国特許第4,238,596号明細書
【特許文献7】米国特許第4,238,597号明細書
【特許文献8】米国特許第4,487,896号明細書
【特許文献9】米国特許第4,506,065号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、元の熱可塑性ポリマーの耐磨耗性、特に元のPCおよびSLXポリマーの耐磨耗性を向上させることは非常に望ましい目標である。さらに、改良された磨耗特性を有するこれら熱可塑性ポリマーから作られるプラスチック物品も同様に望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
一実施形態において、本発明はプラスチック物品の耐磨耗性を改良する方法を提供する。この方法は、(a) 少なくとも1つのシロキサン化合物および少なくとも1つの熱可塑性ポリマー材料を含む組成物を準備するステップと;(b) ステップ(a)の組成物から物品を形成するステップと;(c) ステップ(b)において形成された物品を、電子ビーム源、ガンマ線照射源、またはこれらの組合せから選択されるエネルギー源に曝すステップとを含み、ここで前記熱可塑性ポリマー材料は、それ自体は有機ケイ素ポリマーではない。
【0006】
第2の実施形態において、本発明は、ポリカーボネート、コポリカーボネート、およびコポリエステルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの熱可塑性ポリマー材料を含むプラスチック物品の耐磨耗性を改良する方法を提供する。この方法は、(a) 少なくとも1つのシロキサン化合物、ならびにポリカーボネート、コポリカーボネートおよびコポリエステルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの熱可塑性ポリマー材料を含む組成物を準備するステップと;(b) ステップ(a)の組成物から物品を形成するステップと;(c) ステップ(b)において形成された物品を、電子ビーム源に曝すステップとを含む。
【0007】
第3の実施形態において、本発明は、デカメチルシクロペンタシロキサンおよび少なくとも1つのレゾルシノールベースのポリアリレート-ポリカーボネートコポリマーを含むプラスチック物品の耐磨耗性を改良する方法を提供する。この方法は、(a) デカメチルシクロペンタシロキサンおよび少なくとも1つのレゾルシノールベースのポリアリレート-ポリカーボネートコポリマーを含む組成物を準備するステップと;(b) ステップ(a)の組成物から物品を形成するステップと;(c) ステップ(b)において形成された物品を、電子ビーム源に曝すステップとを含む。
【0008】
一実施形態において、本発明は磨耗抵抗性表面を含むプラスチック物品を提供し、ここで前記物品は、(a) 少なくとも1つのシロキサン化合物、ならびにポリカーボネート、コポリカーボネート、およびコポリエステルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの熱可塑性ポリマー材料を含む組成物を準備するステップと;(b) ステップ(a)において準備された組成物から物品を形成するステップと;(c) ステップ(b)において形成された物品を、電子ビーム源に曝すステップとを含む方法によって調製される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下の明細書および特許請求の範囲において、いくつかの用語は、以下の意味を有すると定義される。
【0010】
単数形の表現は、文脈において明らかに示されていない限り、複数形の指示対象を含む。近似の用語は、明細書および特許請求の範囲を通してここで使用される場合、その用語が関連する基本的機能に変更をもたらすことなく、許容範囲内で変化しうる任意の定量的表現を修飾するために適用される。したがって、「約」などの用語または複数の用語によって修飾された値は、特定された正確な値に限定されない。ある場合、近似の用語は、その値を測定する機器の精度に対応することもある。
【0011】
本明細書において使用する場合、「芳香族」という用語は、少なくとも1つの芳香族基を含む少なくとも1の原子価を有する原子の配列を指す。少なくとも1つの芳香族基を含む少なくとも1つの原子価を有する原子の配列は、窒素、硫黄、セレニウム、ケイ素および酸素などのヘテロ原子を含むこともでき、または炭素および水素だけで構成されてもよい。本明細書では、「芳香族基」という用語は、これらだけに限定されるものではないが、フェニル、ピリジル、フラニル、チエニル、ナフチル、フェニレン、およびビフェニル基を含む。前に述べたように、芳香族基は、少なくとも1つの芳香族基を含む。芳香族基は、常に4n+2の「非局在化」電子を有する環状構造であり、ここで「n」は、フェニル基(n=1)、チエニル基(n=1)、フラニル基(n=1)、ナフチル基(n=2)、アズレニル基(n=2)、アントラセニル基(n=3)などによって例示されるように、1またはそれ以上の整数である。芳香族基は、非芳香族成分を含むこともできる。例えば、ベンジル基は、フェニル環(芳香族基)およびメチレン基(非芳香族成分)を含む芳香族基である。同様に、テトラヒドロナフチル基は、非芳香族成分-(CH2)4-に融合した芳香族基(C6H3)を含む芳香族基である。便宜上、「芳香族基」という用語は、本明細書において、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、ハロ芳香族基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えばエステルおよびアミドなどのカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基など、広範囲な官能基を包含すると定義する。例えば、4-メチルフェニル基は、メチル基を含むC7芳香族基であり、このメチル基はアルキル基である官能基である。同様に、2-ニトロフェニル基は、ニトロ基を含むC6芳香族基であり、このニトロ基が官能基である。芳香族基は、4-トリフルオロメチルフェニル、ヘキサフルオロイソプロピリデンビス(4-フェン-1-イルオキシ)(すなわち-OPhC(CF3)2PhO-)、4-クロロメチルフェン-1-イル(4-chloromethylphen-1-yl)、3-トリフルオロビニル-2-チエニル、3-トリクロロメチルフェン-1-イル(3-trichloromethylphen-1-yl)(すなわち、3-CCl3Ph-)、4-(3-ブロモプロプ-1-イル)フェン-1-イル(すなわち、4-BrCH2CH2CH2Ph-)などのハロゲン化芳香族基を含む。芳香族基のさらなる例には、4-アリルオキシフェン-1-オキシ(4-allyloxyphen-1-oxy)、4-アミノフェン-1-イル(4-aminophen-1-yl)(すなわち、4-H2NPh-)、3-アミノカルボニルフェン-1-イル(すなわち、NH2COPh-)、4-ベンゾイルフェン-1-イル、ジシアノメチリデンビス(4-フェン-1-イルオキシ)(すなわち-OPhC(CN)2PhO-)、3-メチルフェン-1-イル、メチレンビス(4-フェン-1-イルオキシ)(すなわち、-OPhCH2PhO-)、2-エチルフェン-1-イル、フェニルエテニル、3-ホルミル-2-チエニル、2-ヘキシ-5-フラニル、ヘキサエチレン-1,6-ビス(4-フェン-1-イルオキシ)(すなわち、-OPh(CH2)6PhO-)、4-ヒドロキシメチルフェン-1-イル(すなわち、4-HOCH2Ph-)、4-メルカプトメチルフェン-1-イル(すなわち、4-HSCH2Ph-)、4-メチルチオフェン-1-イル(すなわち4-CH3SPh-)、3-メトキシフェン-1-イル、2-メトキシカルボニルフェン-1-イルオキシ(例えばメチルサリチル)、2-ニトロメチルフェン-1-イル(すなわち、2-NO2CH2Ph)、3-トリメチルシリルフェン-1-イル、4-t-ブチルジメチルシリルフェニル-1-イル、4-ビニルフェン-1-イル、ビニリデンビス(フェニル)などが含まれる。「C3〜C10芳香族基」という用語は、少なくとも3個の、ただし、10個を超えない炭素原子を含む芳香族基を含む。芳香族基1-イミダゾリル(C3H2N2-)は、C3芳香族基を表す。ベンジル基(C7H7-)は、C7芳香族基を表す。
【0012】
本明細書において使用する場合、「脂環式基」という用語は、少なくとも1の原子価を有し、環式ではあるが芳香族ではない原子の配列を含む基を指す。本明細書で定義する場合、「脂環式基」は、芳香族基を含んでいない。「脂環式基」は、1つまたは複数の非環式成分を含むこともできる。例えば、シクロヘキシルメチル基(C6H11CH2-)は、シクロヘキシル環(環式ではあるが芳香族ではない原子の配列)およびメチレン基(非環式成分)を含む脂環式基である。脂環式基は、窒素、硫黄、セレニウム、ケイ素および酸素などのヘテロ原子を含むこともでき、または炭素および水素だけで構成されてもよい。便宜上、本明細書では、「脂環式基」という用語は、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステルおよびアミドなどのカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲な官能基を包含すると定義される。例えば、4-メチルシクロペント-1-イル(4-methylcyclopent-1-yl)基は、メチル基を含むC6脂環式基であり、このメチル基がアルキル基である官能基である。同様に、2-ニトロシクロブタ-1-イル基は、ニトロ基を含むC4脂環式基であり、このニトロ基が官能基である。脂環式基は、1つまたは複数のハロゲン原子を含むこともでき、ハロゲン原子は同じでもまたは異なっていてもよい。ハロゲン原子には、例えばフッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が含まれる。1つまたは複数のハロゲン原子を含む脂環式基には、2-トリフルオロメチルシクロヘキサ-1-イル(2-trifluoromethylcyclohex-1-yl)、4-ブロモジフルオロメチルシクロオクタ-1-イル(4-bromodifluoromethylcyclooct-1-yl)、2-クロロジフルオロメチルシクロヘキサ-1-イル、ヘキサフルオロイソプロピリデン-2,2-ビス(シクロヘキサ-4-イル)(すなわち-C6H10C(CF3)2C6H10-)、2-クロロメチルシクロヘキサ-1-イル、3-ジフルオロメチレンシクロヘキサ-1-イル、4-トリクロロメチルシクロヘキサ-1-イルオキシ、4-ブロモジクロロメチルシクロヘキサ-1-イルチオ、2-ブロモエチルシクロペンタ-1-イル(2-bromoethylcyclopent-1-yl)、2-ブロモプロピルシクロヘキサ-1-イルオキシ(例えば、CH3CHBrCH2C6H10-)などが含まれる。さらなる脂環式基の例には、4-アリルオキシシクロヘキサ-1-イル、4-アミノシクロヘキサ-1-イル(例えば、H2NC6H10-)、4-アミノカルボニルシクロペンタ-1-イル(すなわち、NH2COC5H8-)、4-アセチルオキシシクロヘキサ-1-イル、2,2-ジシアノイソプロピリデンビス(シクロヘキサ-4-イルオキシ)(すなわち、-OC6H10C(CN)2C6H10O-)、3-メチルシクロヘキサ-1-イル、メチレンビス(シクロヘキサ-4-イルオキシ)(すなわち、-OC6H10CH2C6H10O-)、1-エチルシクロブタ-1-イル(1-ethylcyclobut-1-yl)、シクロプロピルエテニル、3-ホルミル-2-テトラヒドロフラニル、2-ヘキシル-5-テトラヒドロフラニル、ヘキサメチレン-1,6-ビス(シクロヘキサ-4-イルオキシ)(すなわち、-OC6H10(CH2)6C6H10O-)、4-ヒドロキシメチルシクロヘキサ-1-イル(すなわち、4-HOCH2C6H10-)、4-メルカプトメチルシクロヘキサ-1-イル(すなわち、4-HSCH2C6H10-)、4-メチルチオシクロヘキサ-1-イル(すなわち、4-CH3SC6H10-)、4-メトキシシクロヘキサ-1-イル、2-メトキシカルボニルシクロヘキサ-1-イルオキシ(2-CH3OCOC6H10O-)、4-ニトロメチルシイクロヘキサ-1-イル(すなわち、NO2CH2C6H10-)、3-トリメチルシリルシクロヘキサ-1-イル、2-t-ブチルジメチルシリルシクロペンタ-1-イル、4-トリメトキシシリルエチルシクロヘキサ-1-イル(例えば、(CH3O)3SiCH2CH2C6H10-)、4-ビニルシクロヘキセン-1-イル、ビニリデンビス(シクロヘキシル)などが含まれる。「C3〜C10脂環式基」という用語は、少なくとも3個のただし、10個を超えない炭素原子を含む脂環式基を含む。脂環式基2-テトラヒドロフラニル(C4H7O-)は、C4脂環式基を表す。シクロヘキシルメチル基(C6H11CH2-)は、C7脂環式基を表す。
【0013】
本明細書において使用する場合、「脂肪族基」という用語は、環式ではない原子の直鎖状または分岐状配列からなる少なくとも1の原子価を有する有機基を指す。脂肪族基は、少なくとも1個の炭素原子を含むと定義される。脂肪族基を含む原子の配列は、窒素、硫黄、ケイ素、セレニウムおよび酸素などのヘテロ原子を含むこともでき、または炭素および水素だけで構成されてもよい。便宜上、本明細書において「脂肪族基」という用語は、「環式ではない原子の直鎖状または分岐状配列」の一部として、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、ハロアルキル基、共役ジエニル基、アルコール基、エーテル基、アルデヒド基、ケトン基、カルボン酸基、アシル基(例えば、エステルおよびアミドなどのカルボン酸誘導体)、アミン基、ニトロ基などの広範囲な官能基を包含すると定義する。例えば、4-メチルペンタ-1-イル(4-methylpent-1-yl)基は、メチル基を含むC6脂肪族基であり、このメチル基がアルキル基である官能基である。同様に、4-ニトロブタ-1-イル(4-nitrobut-1-yl)基は、ニトロ基を含むC4脂肪族基であり、このニトロ基が官能基である。脂肪族基は、1つまたは複数のハロゲン原子を含むハロアルキル基であることもでき、ハロゲン原子は同じでもまたは異なっていてもよい。ハロゲン原子には、例えばフッ素、塩素、臭素、およびヨウ素が含まれる。1つまたは複数のハロゲン原子を含む脂肪族基は、トリフルオロメチル、ブロモジフルオロメチル、クロロジフルオロメチル、ヘキサフルオロイソプロピリデン、クロロメチル、ジフルオロビニリデン、トリクロロメチル、ブロモジクロロメチル、ブロモエチル、2-ブロモトリメチレン(例えば、-CH2CHBrCH2-)などのハロゲン化アルキルを含む。さらなる脂肪族基の例には、アリル、アミノカルボニル(すなわち、-CONH2)、カルボニル、2,2-ジシアノイソプロピリデン(すなわち、-CH2C(CN)2CH2-)、メチル(すなわち、-CH3)、メチレン(すなわち、-CH2-)、エチル、エチレン、ホルミル(すなわち、-CHO)、ヘキシル、ヘキサメチレン、ヒドロキシメチル(すなわち、-CH2OH)、メルカプトメチル(すなわち、-CH2SH)、メチルチオ(すなわち、-SCH3)、メチルチオメチル(すなわち、-CH2SCH3)、メトキシ、メトキシカルボニル(すなわち、CH3OCO-)、ニトロメチル(すなわち、-CH2NO2)、チオカルボニル、トリメチルシリル(すなわち、(CH3)3Si-)、t-ブチルジメチルシリル、3-トリメトキシシリルプロピル(すなわち、(CH3O)3SiCH2CH2CH2-)、ビニル、ビニリデンなどが含まれる。さらなる例として、C1〜C10脂肪族基は、少なくとも1個のただし、10個を超えない炭素原子を含む。メチル基(すなわち、CH3-)は、C1脂肪族基の例である。デシル基(すなわち、CH3(CH2)9-)は、C10脂肪族基の例である。
【0014】
本明細書において使用する場合、「耐磨耗性」という用語は、物質が摩擦、こすり若しくは浸食;衝撃;または圧力などの機械的作用によって損なわれないままでいる抵抗性を指す。磨耗は重量損失または表面の光沢の損失をもたらすことがある。耐磨耗性という用語は、擦傷抵抗および引っ掻き傷抵抗を包含する。
【0015】
前に述べたように、本発明は一態様においてプラスチック物品の耐磨耗性を改良する方法を提供する。この方法は、(a) 少なくとも1つのシロキサン化合物および少なくとも1つの熱可塑性ポリマー材料を含む組成物を準備するステップと;(b) ステップ(a)の組成物から物品を形成するステップと;(c) ステップ(b)において形成された物品を、電子ビーム源、ガンマ線照射源、およびこれらの組合せから選択されるエネルギー源に曝すステップとを含み、ここで前記熱可塑性ポリマー材料は、それ自体は有機ケイ素ポリマーではない。
【0016】
いかなる理論にも束縛されないが、エネルギービーム源に曝された場合、シロキサン化合物は架橋促進剤として作用し、それ自体および熱可塑性ポリマー材料に対して架橋結合することができると考えられる。シロキサン化合物は、当業者に知られている任意の熱可塑性ポリマー材料のための架橋促進剤として使用することができる。本明細書において使用する場合、「熱可塑性ポリマー材料」という用語は、繰り返し加熱すると軟らかくなり、冷却すると硬くなる巨大分子構造を有する材料を指す。本発明の方法に適した実例となる熱可塑性ポリマー材料の例には、これらだけに限定されるものではないが、オレフィン由来のポリマー、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、およびこれらのコポリマー;ポリメチルペンタン由来のポリマー、ポリブタジエン、ポリイソプレン、およびこれらのコポリマー;不飽和カルボン酸のポリマーおよびこれらの官能誘導体、例えば、ポリ(アルキルアクリレート)、ポリ(アルキルメタクリレート)、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、およびポリアクリル酸などのアクリルポリマー;アルケニル芳香族ポリマー、例えば、ポリスチレン、ポリ-アルファ-メチルスチレン、ポリビニルトルエン、およびゴム改質ポリスチレン;ポリアミド、例えば、ナイロン-6、ナイロン-6,6、ナイロン-1,1、およびナイロン-1,2;ポリエステル、例えば、ポリ(アルキレンジカルボキシレート)、特にポリ(エチレンテレフタレート)(以降時々「PET」と称する)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(以降時々「PBT」と称する)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)(以降時々「PTT」と称する)、ポリ(エチレンナフタレート)(以降時々「PEN」と称する)、ポリ(ブチレンナフタレート)(以降時々「PBN」と称する)、ポリ(シクロへキサンジメタノールテレフタレート)、ポリ(シクロへキサンジメタノール-コ-エチレンテレフタレート)(以降時々「PETG」と称する)、およびポリ(1,4-シクロへキサンジメチル-1,4-シクロへキサンジカルボキシレート)(以降時々「PCCD」と称する)、およびポリ(アルキレンアレーンジオエート);ポリカーボネート;コポリカーボネート;コポリエステルカーボネート;ポリスルホン;ポリイミド;ポリアリーレンサルファイド;ポリスルフィドスルホン;ならびにポリエーテル、例えば、ポリアリーレンエーテル、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルスルホン、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン;ならびにこれらのコポリマーが含まれる。
【0017】
一実施形態において、熱可塑性ポリマー材料は、PET、PBTなどのポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリフェニレンエーテル、ポリカーボネート、コポリカーボネート、コポリエステルカーボネート、およびこれらのコポリマーなどのポリマーからなる群から選択される。別の実施形態において、熱可塑性ポリマーは、ポリカーボネート、コポリカーボネート、およびコポリエステルカーボネートからなる群から選択される。
【0018】
したがって、一実施形態において、本発明はポリカーボネート、コポリカーボネート、またはコポリエステルカーボネートの少なくとも1つを含むプラスチック物品の耐磨耗性を改良する方法を提供する。この方法は、(a) 少なくとも1つのシロキサン化合物、ならびにポリカーボネート、コポリカーボネート、およびコポリエステルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの熱可塑性ポリマー材料を含む組成物を準備するステップと;(b) ステップ(a)の組成物から物品を形成するステップと;(c) ステップ(b)において形成された物品を電子ビーム源に曝すステップとを含む。
【0019】
一実施形態において、シロキサン化合物は、環式シロキサン、直鎖状シロキサン、および分岐状シロキサンからなる群から選択される。
【0020】
一実施形態において、シロキサン化合物は、下記式(I)を有する少なくとも1つの環式シロキサンを含む。
【0021】
【化1】

【0022】
上記式(I)中、「n」は3〜1000の整数であり;R1およびR2は、独立にそれぞれの出現ごとに、水素原子、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40芳香族基、またはC3〜C40脂環式基である。
【0023】
一実施形態において、式(I)におけるR1およびR2の両方がC1〜C20脂肪族基であり、これらは同じでもまたは異なっていてもよい。一実施形態において、環式シロキサンIは、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、または1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンの少なくとも1つを含む。一実施形態において、環式シロキサンIは、デカメチルシクロペンタシロキサンを含む。様々な分子量および様々な官能基を有する環式シロキサンが、Gelest Inc.、Morrisville PA(米国)から市販されている。いかなる理論にも束縛されないが、環式シロキサンは、非環式シロキサンに比べて、熱可塑性ポリマー材料との向上した混和性を示すと考えられ、より高い透明性のフィルムまたはコーティングの調製を可能にでき、これは自動車用途など特定の用途において望ましい可能性がある。
【0024】
一実施形態において、シロキサン化合物は、下記式(II)を有するシルセスキオキサンを含む。
【0025】
【化2】

【0026】
上記式(II)中、「n」は2〜100の偶数の整数であり;R3は、独立にそれぞれの出現ごとに、水素原子、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40芳香族基、C3〜C40脂環式基、またはオルガノシロキサン部分である。
【0027】
一実施形態において、シルセスキオキサン(II)は、メチルシルセスキオキサン、フェニルシルセスキオキサン、フェニルエチルシルセスキオキサン、またはポリフェニルシルセスキオキサンの少なくとも1つを含む。メチルシルセスキオキサンは、式(II)のシルセスキオキサンの例であり、ここでR3はメチル基である。フェニルシルセスキオキサンは、式(II)のシルセスキオキサンの例であり、ここでR3はフェニル基である。フェニルエチルシルセスキオキサンは、式(II)のシルセスキオキサンの例であり、ここでR3はフェニルエチル基である。フェニルポリシルセスキオキサンは、式(II)のシルセスキオキサンの例であり、ここでR3はフェニル基であり、「n」は20より大きい。
【0028】
一実施形態において、シルセスキオキサンは、完全に縮合した6、8、10、または12個のSi原子を含む多面体オリゴシルセスキオキサン(polyhedral oligosilsesquioxane: POSS)骨格を含む。シルセスキオキサン骨格は、Si-O結合およびクラスター上に構築されている。本発明の実施形態を例示する、完全に縮合した多面体オリゴシルセスキオキサン(POSS)骨格のいくつかは、これらだけに限定されるものではないが、下記式(III)、(IV)、または(V)のシルセスキオキサンを含む。
【0029】
【化3】

【0030】
上記式中、R4、R5およびR6は、独立にそれぞれの出現ごとに、水素原子、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40芳香族基、C3〜C40脂環式基、またはオルガノシロキサン部分である。
【0031】
一実施形態において、シロキサン化合物は、下記式(VI)を有するシルセスキオキサンを含む。
【0032】
【化4】

【0033】
上記式(VI)中、「n」は2〜100の整数であり:「m」は0〜100の整数であり:ただし、n+mの合計が偶数の整数であり;R3は、独立にそれぞれの出現ごとに、水素原子、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40芳香族基、C3〜C40脂環式基、またはオルガノシロキサン部分である。式IIは、一般式VIに含まれ、nが2〜100の偶数の整数でありmが0である特別な場合を表す。
【0034】
一実施形態において、シルセスキオキサンは、4〜12個のSi原子を含む部分的に縮合した多面体オリゴシルセスキオキサン(POSS)骨格を含む。シルセスキオキサン骨格は、Si-O結合およびクラスター上に構築されている。本発明の実施形態を例示する、部分的に縮合した多面体オリゴシルセスキオキサン(POSS)骨格のいくつかは、これらだけに限定されるものではないが、下記式(VII)、(VIII)、(IX)、または(X)のシルセスキオキサンを含む。
【0035】
【化5A】

【化5B】

【0036】
上記式中、R7、R8、R9およびR10は、独立にそれぞれの出現ごとに、水素原子、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40芳香族基、C3〜C40脂環式基、またはオルガノシロキサン部分である。
【0037】
一実施形態において、シロキサン化合物は、下記式(XI)を有している少なくとも1つの化合物を含む。
【0038】
【化6】

【0039】
上記式中、添え字「a」、「b」、「c」、および「d」は、独立にそれぞれの出現ごとに、0〜100の整数であり、ただし、添え字b、cおよびdの合計が1以上であり;Mが下記式(XII)を有し;
【0040】
【化7】

【0041】
Dは式(XIII)を有し;
【0042】
【化8】

【0043】
Tは式(XIV)を有し;
【0044】
【化9】

【0045】
Qは式(XV)を有し;
【0046】
【化10】

【0047】
上記式中、R11、R12およびR13は、独立にそれぞれの出現ごとに、水素原子、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40芳香族基、C3〜C40脂環式基、またはオルガノシロキサン部分である。
【0048】
シルセスキオキサンは、Aldrich Chemical Co.、Gelest Inc.から市販されており、または当業者に知られている方法によって合成することができる。したがって、一例として、本発明のいくつかの実施形態において、シルセスキオキサンは、アルキルトリハロシランまたはアルキルトリアルコキシシランの塩基触媒加水分解および縮合によって製造することができる。
【0049】
一実施形態において、シロキサン化合物は、下記式(XVI)を有する少なくとも1つの直鎖状シロキサンを含み;
【0050】
【化11】

【0051】
上記式中、「n」は0〜1000の整数であり:R14は、独立にそれぞれの出現ごとに、水素原子、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40芳香族基、またはC3〜C40脂環式基であり;R15は、独立にそれぞれの出現ごとに、水素原子、ヒドロキシル基、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40芳香族基、またはC3〜C40脂環式基である。
【0052】
一実施形態において、直鎖状シロキサン(XVI)は、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ジヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン、またはジビニル末端ポリジメチルシロキサンの少なくとも1つを含む。一実施形態において、直鎖状シロキサン(XVI)は、約500グラム/モル〜約100,000グラム/モルの範囲の分子量を有する少なくとも1つのビニル末端ポリジメチルシロキサンを含む。別の実施形態において、直鎖状シロキサン(XVI)は、少なくとも1つの、約2500グラム/モル〜約50,000グラム/モルの範囲の分子量を有するビニル末端ポリジメチルシロキサンを含む。さらに別の実施形態において、直鎖状シロキサン(XVI)は、少なくとも1つの約5000グラム/モル〜約25,000グラム/モルの範囲の分子量を有するビニル末端ポリジメチルシロキサンを含む。ここ並びに明細書および特許請求の範囲全体にわたって、範囲の限界は、結合および/または交換できる。規定した範囲には、文脈または用語が別のことを示していない限り、そこに含まれるすべての部分的範囲を含む。
【0053】
シロキサン化合物の混和性および架橋促進剤としてのその有効性は、シロキサン化合物の組成物中の全濃度によって決定することもできる。一実施形態において、シロキサン化合物は、組成物中、熱可塑性ポリマーの約0.1重量パーセント〜約50重量パーセントに相当する量で存在する。別の実施形態において、シロキサン化合物は、熱可塑性ポリマーの約1重量パーセント〜約25重量パーセントに相当する量で存在する。さらに別の実施形態において、シロキサン化合物は、熱可塑性ポリマーの約2.5重量パーセント〜約10重量パーセントに相当する量で存在する。
【0054】
一実施形態において、シロキサン化合物は、高い熱安定性、低毒性、架橋反応に対する高い効率、または熱可塑性ポリマー材料との相容性の1つまたは複数を有することができる。
【0055】
一実施形態において、熱可塑性ポリマー材料は、下記式(XVII)を有するポリカーボネートを含み;
【0056】
【化12】

【0057】
上記式中、「s」は10〜10,000の整数であり;R16は二価のC2〜C20脂肪族基、二価のC3〜C40芳香族基、または二価のC3〜C40脂環式基である。
【0058】
いくつかの実施形態において、R16はジヒドロキシ脂肪族化合物、ジヒドロキシ脂環式化合物またはジヒドロキシ芳香族化合物に由来しうる。
【0059】
一実施形態において、R16は、下記式(XVIII)を有するジヒドロキシ芳香族化合物に由来する二価のC3〜C40芳香族基であり;
【0060】
【化13】

【0061】
上記式中、それぞれのGは、独立にそれぞれの出現ごとに、C3〜C40芳香族基であり;Eは、独立にそれぞれの出現ごとに、結合、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、C3〜C40芳香族基、硫黄含有結合、セレニウム含有結合、リン含有結合、または酸素原子であり;「t」は、1以上の数であり;「v」は0かまたは1であり;「u」は0を含む自然数である。
【0062】
ある実施形態において、ジヒドロキシ芳香族化合物は、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロペンタン;2,2-ビス(3-アリル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(2-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-6-メチルフェニル)ブタン;1,3-ビス[4-ヒドロキシフェニル-1-(1-メチルエチリジン)]ベンゼン;1,4-ビス[4-ヒドロキシフェニル-l-(1-メチルエチリジン)]ベンゼン;1,3-ビス[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-6-メチルフェニル-1-(1-メチルエチリジン)]ベンゼン;1,4-ビス[3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-6-メチルフェニル-l-(1-メチルエチリジン)]ベンゼン;4,4'-ビフェノール;2,2',6,8-テトラメチル-3,3',5,5'-テトラブロモ-4,4'-ビフェノール;2,2',6,6'-テトラメチル-3,3',5-トリブロモ-4,4'-ビフェノール;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-2,2,2-トリクロロエタン;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル-1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロパン);1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-シアノエタン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ジシアノメタン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-シアノ-1-フェニルメタン;2,2-ビス(3-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ノルボルナン;9,9-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フルオレン;3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタリド;1,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン;1,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロペノン;ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルフィド;4,4'-オキシジフェノール;4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ペンタン酸;4,4-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)ペンタン酸;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)酢酸;2,4'-ジヒドロキシジフェニルメタン;2-ビス(2-ヒドロキシフェニル)メタン;ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン;ビス(4-ヒドロキシ-5-ニトロフェニル)メタン;ビス(4-ヒドロキシ-2,6-ジメチル-3-メトキシフェニル)メタン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2-クロロフェニル)エタン;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノール-A);1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-t-ブチル-5-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-ブロモ-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-クロロ-5-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3-ブロモ-5-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5-ジソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5-ジフェニル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラクロロフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラブロモフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラメチルフェニル)プロパン;2,2-ビス(2,6-ジクロロ-3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(2,6-ジブロモ-3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3-エチルフェニル)プロパン;2,2-ビス(4-ヒドロキシ-3,5-ジメチルフェニル)プロパン;2,2-ビス(3,5,3',5'-テトラクロロ-4,4'-ジヒドロキシフェニル)プロパン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキシルメタン;2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1-フェニルプロパン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;4,4'-[1-メチル-4-(1-メチル-エチル)-1,3-シクロヘキサンジイル]ビスフェノール(1,3 BHPM);4-[1-[3-(4-ヒドロキシフェニル)-4-メチルシクロヘキシル]-1-メチル-エチル]-フェノール(2,8 BHPM);3,8-ジヒドロキシ-5a,10b-ジフェニルクマラノ-2',3',2,3-クマラン(DCBP);2-フェニル-3,3-ビス(4-ヒドロキシフェニル)フタルイミジン;1,1-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3-t-ブチル-5-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3-ブロモ-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3-クロロ-5-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3-ブロモ-5-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3,5-ジソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(3,5-ジフェニル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラクロロフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラブロモフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラメチルフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(2,6-ジクロロ-3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(2,6-ジブロモ-3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-3-イソプロピルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3,5-ジクロロ-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3,5-ジブロモ-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3-クロロ-4-ヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3-ブロモ-4-ヒドロキシ-5-イソプロピルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3-t-ブチル-5-クロロ-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3-ブロモ-5-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;ビス(3-クロロ-5-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3-ブロモ-5-フェニル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3,5-ジソプロピル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(3,5-ジフェニル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラクロロフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラブロモフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(4-ヒドロキシ-2,3,5,6-テトラメチルフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(2,6-ジクロロ-3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;1,1-ビス(2,6-ジブロモ-3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン;4,4-ビス(4-ヒドロキシフェニル)ヘプタン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)デカン;1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン;1,1-ビス(3,5-ジメチル-4-ヒドロキシフェニル)シクロドデカン;4,4'ジヒドロキシ-1,1-ビフェニル;4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジメチル-1,1-ビフェニル;4,4'-ジヒドロキシ-3,3'-ジオクチル-1,1-ビフェニル;4,4'-(3,3,5-トリメチルシクロヘキシリデン)ジフェノール;4,4'-ビス(3,5-ジメチル)ジフェノール;4,4'-ジヒドロキシジフェニルエーテル;4,4'-ジヒドロキシジフェニルチオエーテル;1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン;1,3-ビス(2-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-プロピル)ベンゼン;1,4-ビス(2-(4-ヒドロキシフェニル)-2-プロピル)ベンゼン;1,4-ビス(2-(4-ヒドロキシ-3-メチルフェニル)-2-プロピル)ベンゼン;2,4'-ジヒドロキシフェニルスルホン;4,4'-ジヒドロキシジフェニルスルホン(BPS);ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン;2,6-ジヒドロキシナフタレン;ヒドロキノン;レゾルシノール;C1-3アルキル-置換レゾルシノール類;3-(4-ヒドロキシフェニル)-1,1,3-トリメチルインダン-5-オール;1-(4-ヒドロキシフェニル)-1,3,3-トリメチルインダン-5-オール;4,4-ジヒドロキシジフェニルエーテル;4,4-ジヒドロキシ-3,3-ジクロロジフェニルエーテル;4,4-ジヒドロキシ-2,5-ジヒドロキシジフェニルエーテル;4,4-チオジフェノール;2,2,2',2'-テトラヒドロ-3,3,3',3'-テトラメチル-1,1'-スピロビ[1H-インデン]-6,6'-ジオール;からなる群およびこれらの混合物から選択される。式(XVI)のジヒドロキシ芳香族化合物は、市販されておりまたは当業者に知られている方法によって調製することもできる。
【0063】
一実施形態において、ジヒドロキシ芳香族化合物は下記式(XIX)を有するビスフェノールであり:
【0064】
【化14】

【0065】
上記式中、R17は、独立にそれぞれの出現ごとに、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、またはC3〜C40芳香族基であり;「a」は、独立にそれぞれの出現ごとに、0〜4の整数であり;WはC1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、またはC3〜C40芳香族基である。
【0066】
一実施形態において、式(XVII)のR16はビスフェノールA(2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン、CASNo.80-05-7)から誘導され、この熱可塑性ポリマー材料はビスフェノールAポリカーボネートである。ビスフェノールAは、ALDRICH Chemical Coから市販されている。ビスフェノールAポリカーボネートは、一般式(XVII)に含まれ、R16が式(XIX)を有するビスフェノールから誘導された場合を表し、ここで式(XIX)中の「a」は0に等しく、Wはイソプロピリデン基であり、ヒドロキシル基は4,4'位に存在する。
【0067】
別の実施形態において、式(XVII)のR16はビスフェノールZ(4,4'-シクロヘキシリデンビスフェノール、CASNo.843-55-0)から誘導され、この熱可塑性ポリマー材料はビスフェノールZポリカーボネートである。ビスフェノールZは、ALDRICH Chemical Coから市販されている。ビスフェノールZポリカーボネートは、一般式(XVII)に含まれ、R16が式(XIX)を有するビスフェノールから誘導された場合を表し、ここで式(XIX)中の「a」は0であり、Wはシクロヘキシリデン基であり、ヒドロキシル基は4,4'位に存在する。
【0068】
本発明の方法に関して適切でありうる他のポリカーボネートの例には、これらだけに限定されるものではないが、2,2'-ジメチルビスフェノールZポリカーボネート、2,2'ジメチルビスフェノールAポリカーボネート、およびビスフェノールMポリカーボネートが含まれる。
【0069】
多くの適切なポリカーボネートが市販されており、他の多くのポリカーボネートは、当技術分野において知られている方法によって調製することができる。ポリカーボネート調製のための方法には、これらだけに限定されるものではないが、例えばホスゲンを使用する界面重合;例えばビスフェノールAビスクロロホルメートを使用するビスクロロホルメート重合法;ならびに例えばビスフェノールAおよびジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネートを使用する溶融重合法が含まれる。
【0070】
一実施形態において、ポリカーボネートはホモポリマーであり、すなわち同じジヒドロキシ化合物から誘導された構造単位を含む。一実施形態において、熱可塑性ポリマー材料は、コポリカーボネートを含んでおり、すなわち、2種以上のジヒドロキシ化合物から誘導された構造単位を含む。一実施形態において、コポリカーボネートは、式(XIX)によって表される1種以上のジヒドロキシ芳香族化合物から誘導された構造単位を含む。一実施形態において、熱可塑性ポリマー材料は、下記式(XX)を有する構造単位を含むコポリカーボネートを含む:
【0071】
【化15】

【0072】
上記式中、R17は、独立にそれぞれの出現ごとに、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、またはC3〜C40芳香族基であり;「a」は、独立にそれぞれの出現ごとに、0〜4の整数であり;WはC1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、またはC3〜C40芳香族基である。当業者は、「構造単位(XX)を含むコポリカーボネート」という用語は、構造(XX)において示される構造単位を含むコポリカーボネートを指すこと、およびこの用語は、コポリカーボネートが構造(XX)を有する「繰返し単位」を含まなければならないことを示唆することを意図していないことを理解するであろう。
【0073】
一実施形態において、熱可塑性ポリマー材料は、ビスフェノールAポリカーボネート構造単位を含むコポリカーボネートを含む。一実施形態において、熱可塑性ポリマー材料は、ビスフェノールZポリカーボネート構造単位を含むコポリカーボネートを含む。ビスフェノールAポリカーボネート構造単位およびビスフェノールZポリカーボネート構造単位は、両方とも式(XX)で表される構造単位の範囲に含まれる。
【0074】
多くの適切なコポリカーボネートが市販されており、他の多くのコポリカーボネートは当技術分野において知られている方法によって調製することができる。コポリカーボネート構造単位の調製方法は、ポリカーボネートの調製に類似していることもあり、これらだけに限定されるものではないが、例えばホスゲンを使用する界面重合;例えばビスフェノールAビスクロロホルメートを使用するビスクロロホルメート重合法;ならびに例えばビスフェノールAおよびジフェニルカーボネートなどのジアリールカーボネートを使用する溶融重合法が含まれることもある。
【0075】
一実施形態において、熱可塑性ポリマー材料は、少なくとも1つのポリカーボネートブロックおよび少なくとも1つのポリエステルブロックを含むコポリエステルカーボネートを含む。別の実施形態において、熱可塑性ポリマー材料は、下記式(XXI)を有する構造単位を含むポリエステルブロックを含むコポリエステルカーボネートを含み:
【0076】
【化16】

【0077】
上記式中、R18は、独立にそれぞれの出現ごとに、二価のC2〜C20脂肪族基、二価のC3〜C40芳香族基、または二価のC3〜C40脂環式基であり;R19は、独立にそれぞれの出現ごとに、二価のC1〜C20脂肪族基、二価のC3〜C40芳香族基、または二価のC3〜C40脂環式基である。式(XXI)の構造単位は、式(XXII)のジオールおよび式(XXIII)の二酸または二酸の誘導体から誘導することができる;
【0078】
【化17】

【0079】
上記式中、R18は二価のC2〜C20脂肪族基、二価のC3〜C40芳香族基、または二価のC3〜C40脂環式基であり;R19は二価のC1〜C20脂肪族基、二価のC3〜C40芳香族基、または二価のC3〜C40脂環式基であり;R20は、独立にそれぞれの出現ごとに、ヒドロキシル、ハロゲン、C1〜C20アルコキシ基、またはC3〜C20アリールオキシ基である。
【0080】
式(XXIII)中に包含される適切な二酸および二酸誘導体、例えば、二酸、二酸ハロゲン化物、ジエステルおよび酸エステルには、これらだけに限定されるものではないが、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、セバシン酸、アジピン酸、スベリン酸、オレイン酸、アゼライン酸、エルカ酸、ブラジル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マロン酸、リンゴ酸、マレイン酸、乳酸、ナフタレン-2,6-ジカルボン酸、ナフタレン-2,7-ジカルボン酸、シクロヘキサン-1,4-ジカルボン酸、ビフェニル-3,4'-ジカルボン酸、ビフェニル-4,4'-ジカルボン酸、ジフェニルエーテル-4,4'-ジカルボン酸、ジフェニルスルホン-4,4'-ジカルボン酸、ジフェニルケトン-4,4'-ジカルボン酸、ジフェニルスルフィド-4,4'-ジカルボン酸、ジフェニルメタン-4,4'-ジカルボン酸、ジフェニルジクロロメタン-4,4'-ジカルボン酸、これらの対応する二酸ハロゲン化物、ジエステルまたは酸エステルおよびこれらの混合物が含まれる。
【0081】
本発明のコポリエステルカーボネートおよびそれらの調製方法は当技術分野においてよく知られており、例えば、米国特許第3,030,331号;同第3,169,121号;同第3,207,814号;同第4,194,038号;同第4,156,069号;同第4,238,596号;同第4,238,597号;同第4,487,896号;および同第4,506,065号において開示されている。一実施形態において、コポリエステルカーボネートは、式(XXII)で表される構造単位を含むポリエステルブロックを含み、これは脂肪族ジオールまたは脂肪族二酸または二酸誘導体から誘導される。LEXAN SPは、ビスフェノールA及びドデカン二酸から誘導される構造単位を組み込んだ、そのようなコポリエステルカーボネートの一例である。LEXAN SPは、GE Plastics、Pittsfield、Mass.から市販されている。本発明による使用のための他の適切なコポリエステルカーボネートおよび前記コポリエステルカーボネートの調製に使用することができる方法の例は、米国特許第4,238,596号および同第4,238,597号に見られる。
【0082】
一実施形態において、コポリエステルカーボネートは、少なくとも1つのジヒドロキシ芳香族化合物および少なくとも1つの芳香族ジカルボン酸残基から誘導された構造単位を含んでいるポリエステルブロックを含む。特定の一実施形態において、ジヒドロキシ芳香族化合物は、一般的にレゾルシノールまたはレゾルシノール誘導体と呼ばれる下記式(XXIV)を有する1,3-ジヒドロキシベンゼンから誘導される。
【0083】
【化18】

【0084】
式(XXIV)において、「b」は、独立にそれぞれの出現ごとに、0〜4の整数であり、R21は、独立にそれぞれの出現ごとに、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、またはC3〜C40芳香族基である。レゾルシノールまたはレゾルシノール誘導体は、本発明の関連において使用される場合、明確な他の記述がない限り、非置換1,3-ジヒドロキシベンゼンおよび置換された1,3-ジヒドロキシベンゼンの両方を含むと理解されるべきである。
【0085】
適切な芳香族ジカルボン酸残基は、イソフタル酸、テレフタル酸、またはイソフタル酸とテレフタル酸との混合物を含む単環式芳香族二酸化合物、あるいは多環式芳香族二酸化合物から誘導された芳香族ジカルボン酸残基を含む。様々な実施形態において、芳香族ジカルボン酸残基は、下記式(XXV)によって表すことができる。
【0086】
【化19】

【0087】
式(XXV)において、「b」は、独立にそれぞれの出現ごとに、0〜4の整数であり、R22は、独立にそれぞれの出現ごとに、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、またはC3〜C40芳香族基である。芳香族ジカルボン酸残基は、一般的に、対応する酸、酸ハロゲン化物およびエステルから誘導される。一実施形態において、芳香族ジカルボン酸残基は、塩化イソフタロイル(C8H4O2Cl2)と塩化テレフタロイル(C8H4O2Cl2)との混合物から誘導される。
【0088】
便宜上、レゾルシノールまたはレゾルシノール誘導体(XXIV)から誘導された構造単位ならびにイソ-およびテレフタレート残基(XXV)を含むポリエステルを、「ITRポリマー」または単に「ITR」と称する。したがって、特定の一実施形態において、熱可塑性ポリマー材料は、下記式(XXVI)のITR構造単位を含むコポリエステルカーボネートを含み;
【0089】
【化20】

【0090】
上記式中、R21およびR22は、独立にそれぞれの出現ごとに、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、またはC3〜C40芳香族基であり;「b」は、独立にそれぞれの出現ごとに、0〜4の整数である。
【0091】
一実施形態において、コポリエステルカーボネートは、ポリエステルブロックおよびポリカーボネートブロックを含む。コポリエステルカーボネートは、一般的にヒドロキシ末端ポリエステル中間体(例えば、ヒドロキシ末端ITR中間体)を、界面条件下、ジヒドロキシ置換芳香族化合物(例えば、ビスフェノールAなどのビスフェノール)およびホスゲンと反応させることで調製する。ヒドロキシ末端ポリエステル中間体は、当業者に公知の方法によって調製することができる。
【0092】
一実施形態において、ヒドロキシ末端ポリエステル中間体は、レゾルシノールなどのジヒドロキシ芳香族化合物を1つまたは複数の芳香族塩化二酸(例えば、二塩化イソフタロイルおよび二塩化テレフタロイル)と、水および水と実質的に混和できない少なくとも1種の有機溶媒を含む反応混合物中で(すなわち界面条件の下で)反応させることで調製する。ヒドロキシ末端ポリエステルの分子量の調節は、使用する塩化二酸に対するジヒドロキシ置換芳香族化合物のモル比を増加させ、反応混合物中に存在する水の量を減少させることで行うことができる。ヒドロキシ末端ポリエステル中間体の分子量の向上した調節が、エンドキャップ剤を使用してまたは使用せずに達成され得る。
【0093】
一実施形態において、本発明は、プラスチック物品の耐磨耗性を改良する方法を提供する。この方法は、(a) デカメチルシクロペンタシロキサンおよび少なくとも1つのレゾルシノールベースのポリアリレート-ポリカーボネートコポリマーを含む組成物を準備するステップと;(b) ステップ(a)の組成物から物品を形成するステップと;(c) ステップ(b)において形成された物品を、電子ビーム源に曝すステップとを含む。レゾルシノールベースのポリアリレート-ポリカーボネートコポリマーは、レゾルシノールまたはレゾルシノール誘導体から誘導された少なくとも1つの構造単位を含むポリアリレートである。
【0094】
少なくとも1つのシロキサン化合物および少なくとも1つの熱可塑性ポリマー材料を含む組成物は、顔料、染料、衝撃改質剤、UVスクリーナー、難燃剤、充填剤、安定剤、流動助剤、エステル交換阻害剤、および離型剤を含む、当業者に知られている添加剤をさらに含むこともできる。
【0095】
本発明の組成物は、適切な量のシロキサン化合物を、任意の他の添加剤とともに熱可塑性ポリマー材料と混合またはブレンドすることによって、調製または提供してもよい。混合またはブレンドの方法には、これらだけに限定されるものではないが、1軸押出機または2軸押出機中での溶融混合、2ロール式ミル上、バンバリーミキサー中、ペイントシェーカーまたはコーヒー粉砕機中での、粉末としてブレンド成分および組成物の混合が含まれる。
【0096】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数の成分または添加剤は、組成物に水性混合物または溶液として加え、その後、例えば押出機などの適切な加工設備中で液化することができる。別の実施形態において、いくつかの成分は水溶液中で混合し、次いで蒸発させて残りの成分に加えることのできる材料を形成することができる。
【0097】
一実施形態において、ブレンド後に、組成物は次いで場合によって、例えば組成物のペレット化または粉砕によって、粒状の形態に小さくすることもできる。一実施形態において、本発明の組成物は、射出成形、押出し、回転成形、ブロー成形および熱成形などの様々な手段によって、フィルムや多層構造体などの物品を形成するなど、有用な成形物品に形作ることもできる。
【0098】
一実施形態において、少なくとも1つのシロキサン化合物および少なくとも1つの熱可塑性ポリマー材料を含む組成物は、押出しによりフィルムである物品を形成する。一実施形態において、フィルムは約10ミクロン〜約1000ミクロンの範囲の厚さを有している。別の実施形態において、フィルムは約100ミクロン〜約800ミクロンの範囲の厚さを有している。さらに別の実施形態において、フィルムは約200ミクロン〜約600ミクロンの範囲の厚さを有している。
【0099】
一実施形態において、多層物品は、少なくとも1つのシロキサン化合物および少なくとも1つの熱可塑性ポリマー材料を含む組成物から形成される。多層物品は、基材層とその上のコーティング層とを含む。基材層は、熱可塑性ポリマー、熱硬化性ポリマー、セルロース系材料、ガラス、セラミック、または金属を含む。コーティング層は、少なくとも1つのシロキサン化合物ならびにポリカーボネート、コポリカーボネート、およびコポリエステルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの熱可塑性ポリマー材料を含む。場合によっては、多層物品は、例えば、任意の基材層と任意のコーティング層との間の付着中間層などの中間層をさらに含むこともできる。本発明の多層物品には、これらだけに限定されるものではないが、基材層とコーティング層とを含む多層物品;基材層のそれぞれの側にコーティング層を有する前記基材層を含む多層物品;および基材層と、少なくとも1つの中間層を基材層とコーティング層との間に有する少なくとも1つのコーティング層とを含む多層物品が含まれる。中間層は、透明でもよくおよび/または、例えば着色剤や金属フレークなどの装飾材料などの添加剤を含んでいてもよい。基材層、コーティング層、および任意の中間層は、お互いが隣接して重なって接触していることが好ましい。
【0100】
本発明の物品中の基材層の材料は、付加で調製されたものであろうと縮合で調製されたものであろうと、少なくとも1つの第2のポリマー材料であることができる。適切な縮合ポリマーには、これらだけに限定されるものではないが、ポリカーボネート、特に芳香族ポリカーボネート、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド、ポリエステル、コポリエステルカーボネート、およびポリアミドが含まれる。一実施形態において、基材層は、ポリカーボネート、コポリカーボネートおよびコポリエステルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの第2のポリマー材料を含む。第2のポリマー材料は、シロキサン化合物および熱可塑性ポリマー材料を含む上記組成物の熱可塑性ポリマー材料とは異なる。
【0101】
基材として使用するための適切なポリカーボネート(PC)およびコポリカーボネートは、式(XVIII)を有する少なくとも1つのジヒドロキシ芳香族化合物から誘導された構造単位を含むポリカーボネートおよびコポリカーボネートを含む。最も好ましいポリカーボネートは、ビスフェノールAのホモポリカーボネート-およびコポリカーボネートである。ポリカーボネート基材は、コポリエステルカーボネートとすることもできる。このようなコポリマーは、一般的に有機カーボネート単位に加えて、イソフタレートおよび/またはテレフタレートなどのエステル単位を含み、式(XIX)の構造単位を含むこともできる。ポリエステル基材には、これらだけに限定されるものではないが、ポリ(エチレンテレフタレート)(PET)、ポリ(1,4-ブチレンテレフタレート)(PBT)、ポリ(トリメチレンテレフタレート)、ポリ(エチレンナフタレート)、ポリ(ブチレンナフタレート)、ポリ(シクロヘキサンジメタノールテレフタレート)、ポリ(シクロヘキサンジメタノール-co-エチレンテレフタレート)、およびポリ(1,4-シクロヘキサンジメチル-1,4-シクロヘキサンジカルボキシレート)が含まれる。
【0102】
適切な付加ポリマー基材には、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(塩化ビニル-co-塩化ビニリデン)、ポリ(フッ化ビニル)、ポリ(フッ化ビニリデン)、ポリ(酢酸ビニル)、ポリ(ビニルアルコール)、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(アクリロニトリル)などのホモポリマー-およびコポリマー脂肪族オレフィンおよび官能化オレフィンポリマー、(メタ)アクリルアミドのポリマーまたはポリ(メチルメタクリレート)(「PMMA」)などのアルキル(メタ)アクリレートのポリマーなどのアクリルポリマー、ならびにシンジオタクチックポリスチレンを含むポリスチレンなどのアルケニル芳香族化合物のポリマーが含まれる。多くの目的のため好ましい付加ポリマーは、ポリスチレン、特にABSおよびASAコポリマーと呼ばれるもので、これはブタジエンおよびアルキルアクリレートのエラストマーベースのポリマー上にそれぞれグラフトした熱可塑性の、非エラストマー性スチレン-アクリロニトリル側鎖を含むこともできる。
【0103】
前述の任意のポリマーのブレンド物も、基材として使用することができる。一般的なブレンド物には、これらだけに限定されるものではないが、PC/ABS、PC/ASA、PC/PBT、PC/PET、PC/ポリエーテルイミド、PC/ポリスルホン、ポリエステル/ポリエーテルイミド、ポリメチルメタクリレート/アクリルゴム、ポリフェニレンエーテル/ポリスチレン、ポリフェニレンエーテル/ポリアミドまたはポリフェニレンエーテル/ポリエステルを含むブレンド物が含まれる。
【0104】
一実施形態において、多層物品中の基材層は、少なくとも1つの熱硬化性ポリマーを含むこともできる。適切な熱硬化性ポリマー基材には、これらだけに限定されるものではないが、エポキシ、シアン酸エステル、不飽和ポリエステル、ジアリルフタレート、アクリル、アルキド、フェノール-ホルムアミド、ノボラック、レゾール、ビスマレイミド、PMR樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド、尿素ホルムアルデヒド、ベンゾシクロブタン、ヒドロキシメチルフラン、およびイソシアネートから誘導された熱硬化性ポリマーが含まれる。一実施形態において、熱硬化性ポリマー基材は、さらに、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、またはポリエステルなどの、ただし、これらだけに限定されるものではないが、少なくとも1つの熱可塑性ポリマーを含む。前記熱可塑性ポリマーは、一般的に熱硬化性モノマーの硬化前に、前記熱硬化性モノマーの混合物と混合される。
【0105】
一実施形態において、熱可塑性または熱硬化性基材層は、少なくとも1つの充填剤および/または顔料もまた組み込む。例示的な増量および強化充填剤、ならびに顔料には、珪酸塩、ゼオライト、二酸化チタン、石粉、ガラスファイバーまたはガラス球、カーボンファイバー、カーボンブラック、グラファイト、炭酸カルシウム、タルク、雲母、リトポン、酸化亜鉛、ケイ酸ジルコニウム、酸化鉄、珪藻土、酸化マグネシウム、酸化クロム、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、粉砕石英、焼成粘土、カオリン、アスベスト、セルロース、木粉、コルク、木綿および合成織物繊維、特にガラス繊維およびカーボンファイバーなどの強化充填剤、ならびに金属フレークなどの着色剤、ガラスフレークおよびガラスビーズ、セラミック粒子、他のポリマー粒子、染料および顔料(これは、有機でも無機でもまたは有機金属でもよい)が含まれる。一実施形態において、本発明は、シート成形化合物(SMC)などの充填した熱硬化性基材層を含む多層物品を包含する。
【0106】
基材層は、木材、紙、ボール紙、繊維板、パーティクルボード、合板、工作用紙、クラフト紙、硝酸セルロース、酢酸酪酸セルロース、同様のセルロース含有材料を含むが、これらだけに限定されるものではない少なくとも1つのセルロース系材料を含むこともできる。本発明は、また少なくとも1つのセルロース系材料と、少なくとも1つの熱硬化性ポリマー(特に接着性熱硬化性ポリマー)、または少なくとも1つの熱可塑性ポリマー(特にPETもしくはポリカーボネートなどのリサイクル熱可塑性ポリマー)、または少なくとも1つの熱硬化性ポリマーと少なくとも1つの熱可塑性ポリマーとの混合物のいずれかとのブレンド物を包含する。
【0107】
一実施形態において、多層物品は、少なくとも1つのガラス層を基材層として含む。一実施形態において、多層物品は、少なくとも1つの金属層を基材層として含む。代表的な金属基材には、磨耗するかもしれない、真鍮、銅、および他の金属を含む基材または金属含有物品が含まれる。
【0108】
基材層およびコーティング層の性質に基づき、少なくとも1つの接着性中間層を、任意の基材層と任意のコーティング層との間に用いるのが有利である。接着性中間層は、透明でも、不透明でもまたは半透明でもよい。多くの用途のために、中間層は光学的に透明な性質で、一般的に約60%を超える透過度を有し、ヘイズ値が約3%未満であり好ましくない色を有していないことが好ましい。
【0109】
一実施形態において、上記コーティング層の適用法には、その個別のシートを製造してその後で基材層に適用するか、または、両方の層を、一般的に溶融法により同時に作製する方法が含まれる。この様に、同時射出成形、同時押出し、オーバーモールド法、ブロー成形、多段ショット射出成形およびコーティング層材料のフィルムを基材層の表面に設置し、その後で2つの層を、一般的に射出成形装置、例えばインモールド装飾またはホットプレスにおいて付着させるなどの方法が使用される。一実施形態において、少なくとも1つのコーティング層の適用は、溶媒キャスティングによって行うこともできる。
【0110】
コーティング層および基材層を含む構造体を第2の基材層に適用することも本発明の範囲内である。第2の基材層は、一般的に熱可塑性、熱硬化性、またはセルロース系材料であって、基材層の材料とは類似しているかまたは同一であるが、コーティング層の材料とは異なる材料である。これは、例えば、射出成形金型にコーティング層および基材層を含む構造体を装填し、その後ろに第2の基材層材料を射出することによって実現することができる。この方法により、インモールド装飾などが可能である。第2の基材層の両面に他の層を取り付けることもできるが、通常は一面だけに適用することが好ましい。
【0111】
一実施形態において、シロキサン化合物および熱可塑性ポリマー材料を含む組成物を含むコーティング層は、約10ミクロン〜約1000ミクロンの範囲の厚さを有している。別の実施形態において、シロキサン化合物および熱可塑性ポリマー材料を含む組成物を含むコーティング層は、約100ミクロン〜約800ミクロンの範囲の厚さを有している。さらに別の実施形態において、シロキサン化合物および熱可塑性ポリマー材料を含む組成物を含むコーティング層は、約200ミクロン〜約600ミクロンの範囲の厚さを有している。
【0112】
一実施形態において、第2のポリマー材料を含む基材層は、約100ミクロン〜約2000ミクロンの範囲の厚さを有している。別の実施形態において、第2のポリマー材料を含む基材層は、約200ミクロン〜約1600ミクロンの範囲の厚さを有している。さらに別の実施形態において、第2のポリマー材料を含む基材層は、約400ミクロン〜約1000ミクロンの範囲の厚さを有している。
【0113】
前に述べたように、シロキサン化合物および熱可塑性ポリマー材料を含む組成物を含む物品は、電子ビーム(E-ビーム)源に曝される。E-ビーム源に曝されることにより架橋および/または鎖の切断がもたらされ、ポリマーの特性が変化する。E-ビーム源へ曝す手法またはE-ビーム照射の手法は、テレビスクリーンなどの様々な用途に使用されており当業者によく知られている。一実施形態において、E-ビーム照射は、タングステンなどの電子放射材料からの電子の熱放射;電圧の適用による放射された電子の加速;ならびに電場および/または直交磁場の使用によるビームの収束を含む。E-ビーム照射は、周囲の雰囲気条件中で、真空中で、または不活性雰囲気中で行うこともできる。一実施形態において、E-ビーム照射は窒素または水素の存在下で行われる。一実施形態において、E-ビーム照射は真空中で行われる。
【0114】
E-ビーム源の加速電圧がE-ビームの侵入深さを決定する。一実施形態において、E-ビーム源は、約80kV〜約20MVの範囲の動作電圧を有している。別の実施形態において、E-ビーム源は、約80kV〜約1000kVの範囲の動作電圧を有している。さらに別の実施形態において、E-ビーム源は、約80kV〜約500kVの範囲の動作電圧を有している。特定の一実施形態において、E-ビーム源は、約150kVの動作電圧を有している。
【0115】
E-ビーム照射に曝されたときのプラスチック物品の特性の変化は、単位質量当たりのエネルギーで測定されるE-ビーム線量(例えば、2.30カロリー/gが1百万ラド、1Mradに等しい)によって決定される。一実施形態において、電子ビーム源へ曝すことにより、約1Mrad〜約5000Mradの範囲の電子ビーム線量をもたらす。別の実施形態において、電子ビーム源へ曝すことにより、約1Mrad〜約500Mradの範囲の電子ビーム線量をもたらす。さらに別の実施形態において、電子ビーム源へ曝すことにより、約1Mrad〜約200Mradの範囲の電子ビーム線量をもたらす。
【0116】
一実施形態において、E-ビーム源へ曝すことにより、ガラス転位温度、加熱たわみ温度、引っ張り強度/係数、熱膨張係数、耐薬品性、または耐磨耗性の1つまたは複数の変化をもたらす。
【0117】
一実施形態において、本発明は、磨耗抵抗性表面を含む物品を提供する。物品は、(a)少なくとも1つのシロキサン化合物、ならびにポリカーボネート、コポリカーボネートおよびコポリエステルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの熱可塑性ポリマー材料を含む組成物を準備するステップと;(b) ステップ(a)の組成物から物品を形成するステップと;(c) ステップ(b)において形成された物品を、電子ビーム源に曝すステップとを含む方法によって調製される。
【0118】
本発明の方法によって調製することのできる物品には、自動車、トラック、軍用車、およびパネル、クオータパネル、ロッカーパネル、トリム、フェンダー、扉、デッキリッド、トランクリッド、フード、ボンネット、屋根、バンパー、バンド、グリル、ミラーハウジング、ピラーアプリッケ、外装材、ボディ側モールディング、ホイールカバー、ハブキャップ、ドアーハンドル、スポイラー、窓枠、ヘッドランプベゼル、ヘッドランプ、テールランプ、テールランプハウジング、テールランプベゼル、ライセンス・プレート囲い、ルーフラックおよびランニングボードを含むモーターサイクルの外装および内装構成部品;アウトドアー車およびデバイスのためのエンクロージャ、ハウジング、パネル、および部品;電気および電気通信デバイスのためのエンクロージャ;屋外家具;航空機構成部品;トリム、エンクロージャおよびハウジングを含むボートおよび船舶用設備;屋外モーターハウジング;水深測定器ハウジング、個人用ウォータークラフト;ジェットスキー;プール;スパ;ホットバス;脚立;脚立カバー;グレージング、屋根、窓、床、窓用装飾品または処理品などの建築用途;写真、絵画、ポスターのために処理したガラスカバーなどの展示品目;壁パネルおよび扉;保護したグラフィック;屋外および屋内表示;現金自動預払い機(ATM)のためのエンクロージャ、ハウジング、パネル、および部品;芝および庭園用道具を含む、芝および庭園用トラクター、芝刈機および道具のためのエンクロージャ、ハウジング、パネル、および部品;窓およびドアートリム;スポーツ設備および玩具;スノーモービルのためのエンクロージャ、ハウジング、パネル、および部品;RV車用パネルおよび構成部品;遊園地用設備;プラスチック-木材の組合せから作られる物品;ゴルフコースマーカー;ユーティリティピットカバー;コンピュータハウジング;デスクトップ型コンピュータハウジング;携帯用コンピュータハウジング;ラップトップ型コンピュータハウジング;手のひらサイズコンピュータハウジング;モニターハウジング;プリンターハウジング;キーボード;FAX機器ハウジング;コピー機ハウジング;電話器ハウジング、携帯電話ハウジング;ラジオ送信機ハウジング;ラジオ受信機ハウジング;照明用備品;照明用製品;ネットワークインターフェースデバイス用ハウジング、;変圧器ハウジング;エアコン用ハウジング;公共輸送設備のための外装材または座席;列車、地下鉄、またはバスのための外装材または座席;メーターハウジング;アンテナハウジング;衛星放送用アンテナのための外装材;コート処理したヘルメットおよび個人用保護設備;コート処理した合成または天然織物; コート処理した写真用フィルムおよび写真プリント; コート処理した塗装物品; コート処理した染料物品; コート処理した蛍光物品; コート処理した発泡物品などの用途が含まれる。本発明は、前記物品について成形、インモールド装飾、塗料オーブン中での焼成、ラミネーションおよび/または熱成形などの、ただし、これらだけに限定されるものではないが、付加的な製造作業をさらに企図している。
【0119】
(実施例)
(実施例1〜19および比較例1〜4)
材料: 実施例に使用したシロキサン化合物は、デカメチルシクロペンタシロキサン(D5)、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン(D6)、または1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサン(CVMS)であった。これらはGelest Inc.(Morrisville、Pennsylvania、米国)から購入し、購入したしたままの状態で使用した。実験に使用したポリマー材料は、ポリマー中でのITRブロックとポリカーボネートブロックとの重量分率が90:10に等しいITR-ポリカーボネートコポリマー(SLX90/10)であった。特段の記述がない限り、SLX90/10ポリマーはフェノールで末端キャップしてあり、GE Plastics社より市販されていた。一部の実施形態において、GE Plasticsから市販されている商用ITR-ポリカーボネートフィルム(SGJ790)を比較ポリマーとして使用した。一部の実施形態において、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)を比較の架橋促進剤として使用したが、これはAldrich Chemical Company(Milwaukee、Wisconsin、米国)から購入し、購入したままの状態で使用した。P-steel Current Gen(P-Steel現世代品)、熱可塑性フィルム1、および熱可塑性フィルム2も、ベンチマークとして使用した。
【0120】
フィルム形成: 熱可塑性ポリマー材料およびシロキサン化合物またはTAICを、コーヒー粉砕機を使用して乾燥ブレンドし、285℃において押し出してペレットとし、その後カーボンンブラックを含むポリカーボネートと共に、275℃において二重層フィルムへと同時押出しした。シロキサン化合物およびTAICの濃度は、約0.25重量パーセント〜約5重量パーセントの範囲で変化させた。SLX層の厚さは約200〜500μmであり、ポリカーボネート厚さは400〜1000μmであった。フィルムの幅は18cmであった。
【0121】
E-ビーム照射: E-ビーム照射実験は、マサチューセッツ州WilmingtonのAdvanced Electron Beams Inc.において、80〜150kV動作電圧の設備を使用した。特段の注記がない限り、150kVを標準として使用した。ユニットは通過ごとに5Mradの照射線量を与えることができた。これより高い線量は、複数回通過させることで得た。E-ビーム線量は0〜400Mradに変化させた。すべての実験は、特段の注記がない限り、酸素濃度300ppm未満の窒素ブランケットの下で実施した。
【0122】
擦傷性能測定: サンプルの擦傷性能は、フェルト(Atlas 14995600)を間に挟んだ2ミクロンの研磨紙(3M 281Q WETORDRY PRODUCTION(商標)研磨紙2MIC)を備えたAltas Crockmeterを用いて調べた。擦傷の重さの程度は、半分、2回または10回サイクルを使用して、サイクルの数で調節した。サイクルストロークは、後進および前進であり、「半分」とは1つの方向に1回進めたことを意味する。擦傷性能の評価に2つの方法を使用した。
(1) 擦傷試験前後の20°光沢を、擦傷ストライプの中央に置いた光沢計を使用して比較した。2つ以上のストライプを使用して平均値および標準偏差を得た。
(2) 擦傷サンプルを、「GretagMacbeth Spectralight III」の「Daylight 65」条件の下、標準サンプルと目視で比較した。標準サンプルは、様々な擦傷性能を有するポリマーで構成されており、リネンまたはペーパーで様々なサイクル数擦傷して、表1に示すような様々な程度の擦傷損傷の厳しさ(目視品質、すなわちVQ)を得た。擦傷サンプルは、目視により0(最悪)から10(最善)スケールに分類した。各試験において、各条件の下で4回繰り返し、これらの数の平均値および標準偏差を評価に使用した。これらサンプルに関して得たVQは、一般的に20°-光沢計から得られた光沢の保持によく一致している。
【0123】
【表1】

【0124】
様々なシロキサン化合物、様々な濃度のシロキサン化合物、様々なSLX90/10ポリマーを有するサンプル、様々なE-ビーム線量、様々な加速電圧、および様々な酸素濃度に関して、サンプルの擦傷性能を決定した。実施例1〜19および比較例1〜7に関して、使用した組成物および実験条件の詳細を表2に示す。
【0125】
【表2】

【0126】
以下の比較は例証である。
【0127】
ベンチマーク(比較例5〜7)と市販のSLXフィルム(比較例1)間との比較を図1および図2に示す。比較例6は、半サイクルの紙擦傷から10サイクルの紙擦傷の広範囲な損傷領域にわたり、最も高いペーパー擦傷抵抗を実証している。一方、比較例1は、これらグループ中で最も低い性能を示している。損傷は、特に2サイクル試験で激しく、67%の光沢の保持しか示していない。10サイクルの紙擦傷での光沢の保持の増加は、材料が削られて、その結果表面が磨かれたことによるものである。したがって、これは実際の擦傷抵抗性能を反映していない。
【0128】
同じ実験条件における擦傷性能に関するE-ビーム照射および架橋促進剤の効果を図3および図4に示す。実施例6、15、および19対比較例1、2、および4の比較は、架橋促進剤の添加がSLX対照品(比較例1および2)に比較して光沢の保持およびVQを著しく増加させたことを示している。またシロキサン型促進剤(実施例6および15)が、イソシアヌレート型促進剤(比較例4)よりも性能を向上させたことが観察された。実施例19において、実施例6および比較例4に関して観察されたのと同様の水準の、ちょうど0.5重量%の擦傷性能の向上が観察された。光沢の保持およびVQの程度は、ベンチマーク熱可塑性フィルムの半サイクルおよび2サイクルの擦傷損傷と同様かまたはより良好であった。さらに、実施例6、15および19において、約114の初期光沢が観察されたが、これはベンチマーク熱可塑性フィルム(比較例5および6)よりも著しく高かった。
【0129】
同一実験条件おける、シロキサン化合物濃度の擦傷性能における効果を、図5、6、7および8に示す。実施例1、5、および9対比較例3の比較により、E-ビームの効果はCVMS濃度が増加すると向上し、2重量%(実施例5)でピークとなることが示されている。SLXにおけるE-ビーム照射による架橋反応はCVMSの存在によって向上することもあり、反応の程度は、CVMSが増加すると増加した。しかしながら、CVMSをさらに増加すると、CVMSの可塑化効果のためにE-ビームの効果が弱くなる結果をもたらすこともある。実施例5に対して得られた水準と同じ水準の擦傷性能の向上を達成するには、10重量%のTAICが必要であった。
【0130】
実施例10、14および18ならびに比較例3について同様の傾向が観察された。しかしながら、D5は2重量%の代わりに0.5重量%において最大の効果に達し(実施例14)、D5は、SLXとの相容性が悪く、0.5%より高い濃度において、架橋密度の増大に寄与することのない遊離した領域を形成しうる。
【0131】
同じシロキサン濃度および同じ加速電圧におけるE-ビーム線量の擦傷性能への効果を図9、10、11および12に示す。実施例2〜7の比較は、CVMSの添加それ自体は擦傷性能を変化させないことを示した(実施例2)。改良は、E-ビーム照射後にのみ観察された。性能は、線量の増加によって向上され、200Mrad(実施例6)においてピークを示した。しかしながら、さらに曝すことで、これらの擦傷性能を悪化させた。これは競合する鎖の切断反応が優勢になったことによると考えられる。非常に類似した傾向が、実施例11〜16に関して観察された。ここでも、D5それ自体の添加(実施例11)はSLXの擦傷性能に影響しなかった。効果は、200Mrad(実施例15)において最大であった。
【0132】
同じシロキサン濃度および同じ加速電圧におけるE-ビーム照射条件の擦傷性能への効果を図13に示す。E-ビーム照射は、(窒素などの)不活性雰囲気中および空気中で行った。実施例5および8の比較は、E-ビーム照射が窒素の存在下で行われた場合により良好な光沢の保持が得られたことを示している。
【0133】
本発明を典型的な実施形態において例示し説明したが、本発明の精神から決して逸脱することなく様々な修正および置換えが可能であるので、この詳細な説明に限定されることを意図するものではない。したがって、本明細書で開示した発明の修正形態および均等形態が、ごく日常的な実験法を用いて当業者によってなされるかもしれないが、かかる修正形態および均等形態のすべては、特許請求の範囲に定義する本発明の精神および範囲内であると確信する。
【図面の簡単な説明】
【0134】
【図1】本発明の一実施形態による比較例1、5、6および7に関する擦傷試験後に得られた光沢の保持の結果を示すグラフである。
【図2】本発明の一実施形態による比較例1、5、6および7に関する擦傷試験後に得られた視覚的品質(VQ)の結果を示すグラフである。
【図3】本発明の一実施形態による実施例6、15および19対比較例1、2および4に関する擦傷試験後に得られた光沢の保持の結果を示すグラフである。
【図4】本発明の一実施形態による実施例6、15、および19対比較例1、2および4に関する擦傷試験後に得られた視覚的品質(VQ)の結果の結果を示すグラフである。
【図5】本発明の一実施形態による実施例1、5、および9対比較例3に関する擦傷試験後に得られた光沢の保持の結果を示すグラフである。
【図6】本発明の一実施形態による実施例1、5、および9対比較例3に関する擦傷試験後に得られた視覚的品質(VQ)の結果の結果を示すグラフである。
【図7】本発明の一実施形態による実施例10、14、および18対比較例3に関する擦傷試験後に得られた光沢の保持の結果を示すグラフである。
【図8】本発明の一実施形態による実施例10、14、および18対比較例3に関する擦傷試験後に得られた視覚的品質(VQ)の結果を示すグラフである。
【図9】本発明の一実施形態による実施例2〜7に関する擦傷試験後に得られた光沢の保持の結果を示すグラフである。
【図10】本発明の一実施形態による実施例2〜7に関する擦傷試験後に得られた視覚的品質(VQ)の結果の結果を示すグラフである。
【図11】本発明の一実施形態による実施例11〜16に関する擦傷試験後に得られた光沢の保持の結果を示すグラフである。
【図12】本発明の一実施形態による実施例11〜16に関する擦傷試験後に得られた視覚的品質(VQ)の結果の結果を示すグラフである。
【図13】本発明の一実施形態による実施例5および6に関する擦傷試験後に得られた光沢の保持の結果を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック物品の耐磨耗性を改良するための方法であって、
(a)少なくとも1つのシロキサン化合物および少なくとも1つの熱可塑性ポリマー材料を含む組成物を準備するステップと;
(b)ステップ(a)の組成物から物品を形成するステップと;
(c)ステップ(b)において形成された物品を、電子ビーム源、ガンマ線照射源、およびこれらの組合せから選択されるエネルギー源に曝すステップと
を含み、前記熱可塑性ポリマー材料はそれ自体は有機ケイ素ポリマーではない方法。
【請求項2】
プラスチック物品の耐磨耗性を改良するための方法であって、
(a) 少なくとも1つのシロキサン化合物、ならびにポリカーボネート、コポリカーボネートおよびコポリエステルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの熱可塑性ポリマー材料を含む組成物を準備するステップと;
(b) ステップ(a)の組成物から物品を形成するステップと;
(c) ステップ(b)において形成された物品を、電子ビーム源に曝すステップと
を含む方法。
【請求項3】
前記シロキサン化合物が、環式シロキサン、直鎖状シロキサン、および分岐状シロキサンからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記シロキサン化合物が、下記式(I)を有する少なくとも1つの環式シロキサンを含む、請求項2に記載の方法:
【化1】

[前記式中、「n」は3から1000までの整数であり;R1およびR2は、独立にそれぞれの出現ごとに、水素原子、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40芳香族基、またはC3〜C40脂環式基である]。
【請求項5】
前記環式シロキサンIが、オクタメチルシクロテトラシロキサン、デカメチルシクロペンタシロキサン、ドデカメチルシクロヘキサシロキサン、または1,3,5,7-テトラビニル-1,3,5,7-テトラメチルシクロテトラシロキサンの少なくとも1つを含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記シロキサン化合物が、下記式(II)を有する少なくとも1つのシルセスキオキサンを含む、請求項2に記載の方法:
【化2】

[前記式中、「n」は2から100までの偶数の整数であり;R3は、独立にそれぞれの出現ごとに、水素原子、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40芳香族基、C3〜C40脂環式基、またはオルガノシロキサン部分である]。
【請求項7】
前記シロキサン化合物が、下記式(VI)を有する少なくとも1つのシルセスキオキサンを含む、請求項2に記載の方法:
【化3】

[前記式中、「n」は2から100までの整数であり:「m」は0から100のまでの整数であり:ただし、n+mの合計が偶数の整数であり;R3は、独立にそれぞれの出現ごとに、水素原子、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40芳香族基、C3〜C40脂環式基、またはオルガノシロキサン部分である]。
【請求項8】
前記シロキサン化合物が下記式(XI)を有する少なくとも1つの化合物を含む、請求項2に記載の方法:
【化4】

[前記式中、添え字「a」、「b」、「c」、および「d」は、独立にそれぞれの出現ごとに、0から100までの整数であり、ただし、添え字b、cおよびdの合計は1またはそれ以上であり、Mは式(XII)を有し;
【化5】

Dは式(XIII)を有し;
【化6】

Tは式(XIV)を有し;
【化7】

Qは式(XV)を有し;
【化8】

前記式中、R11、R12およびR13は、独立にそれぞれの出現ごとに、水素原子、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40芳香族基、C3〜C40脂環式基、またはオルガノシロキサン部分である]。
【請求項9】
前記シロキサン化合物が、下記式(XVI)を有する少なくとも1つの直鎖状シロキサンを含む、請求項2に記載の方法:
【化9】

[前記式中、「n」は0から1000までの整数であり;R14は、独立にそれぞれの出現ごとに、水素原子、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40芳香族基、またはC3〜C40脂環式基であり;R15は、独立にそれぞれの出現ごとに、水素原子、ヒドロキシル基、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40芳香族基、またはC3〜C40脂環式基である]。
【請求項10】
前記直鎖状シロキサン(XVI)が、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサン、テトラデカメチルヘキサシロキサン、ジヒドロキシ末端ポリジメチルシロキサン、またはジビニル末端ポリジメチルシロキサンの少なくとも1つを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記直鎖状シロキサン(XVI)が、約500グラム/モルから約100,000グラム/モルまでの範囲の分子量を有する少なくとも1つのビニル末端ポリジメチルシロキサンを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記熱可塑性ポリマー材料が、式(XVII)を有するポリカーボネートを含む、請求項2に記載の方法
【化10】

[前記式中、「s」は10から10,000までの整数であり;R16は二価のC2〜C20脂肪族基、二価のC3〜C40芳香族基、または二価のC3〜C40脂環式基である]。
【請求項13】
前記ポリカーボネートが、ビスフェノールAポリカーボネートである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記熱可塑性ポリマー材料が、下記式(XX)を有する構造単位を含むコポリカーボネートを含む、請求項2に記載の方法:
【化11】

[前記式中、R17は、独立にそれぞれの出現ごとに、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、またはC3〜C40芳香族基であり;「a」は、独立にそれぞれの出現ごとに、0から4までの整数であり;WはC1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、またはC3〜C40芳香族基である]。
【請求項15】
前記熱可塑性ポリマー材料が、下記式(XXI)を有する構造単位を含むコポリエステルカーボネートを含む、請求項2に記載の方法:
【化12】

[前記式中、R18は、独立にそれぞれの出現ごとに、二価のC2〜C20脂肪族基、二価のC3〜C40芳香族基、または二価のC3〜C40脂環式基であり;R19は、独立にそれぞれの出現ごとに、二価のC1〜C20脂肪族基、二価のC3〜C40芳香族基、または二価のC3〜C40脂環式基である]。
【請求項16】
前記コポリエステルカーボネートが、式(XXVI)を有する構造単位を含む、請求項15に記載の方法:
【化13】

[前記式中、R21およびR22は、独立にそれぞれの出現ごとに、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、C1〜C20脂肪族基、C3〜C40脂環式基、またはC3〜C40芳香族基であり;bは、独立にそれぞれの出現ごとに、0から4までの整数である]。
【請求項17】
前記シロキサン化合物が、熱可塑性ポリマーの約0.1重量パーセントから約50重量パーセントまでに相当する量で存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項18】
前記シロキサン化合物が、熱可塑性ポリマーの約0.25重量パーセントから約10重量パーセントまでに相当する量で存在する、請求項2に記載の方法。
【請求項19】
ステップ(b)が、前記組成物を押し出してフィルムである物品を形成するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項20】
前記フィルムが、約100ミクロンから約1000ミクロンまでの範囲の厚さを有する、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
ステップ(b)が、前記組成物を第2のポリマー材料と同時押出しをして多層物品を形成するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項22】
前記第2のポリマー材料が、ステップ(a)で準備された前記熱可塑性ポリマー材料とは異なるように選択され、前記第2のポリマー材料が、ポリカーボネート、コポリカーボネート、コポリエステルカーボネート、およびこれらの組合せからなる群から選択される、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
ステップ(b)が、前記組成物を溶媒キャスティングして、フィルムを形成するステップを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項24】
前記曝すステップが、窒素または水素の存在下で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項25】
前記曝すステップが、真空中で行われる、請求項2に記載の方法。
【請求項26】
前記電子ビーム源が、約80kVから約20MVまでの範囲の動作電圧を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項27】
前記電子ビーム源が、約150kVの動作電圧を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項28】
前記電子ビーム源に曝すステップが、約1Mradから約5000Mradまでの範囲の電子ビーム線量をもたらす、請求項2に記載の方法。
【請求項29】
プラスチック物品の耐磨耗性を改良する方法であって、
(a)デカメチルシクロペンタシロキサンおよび少なくとも1つのレゾルシノールベースのポリアリレート-ポリカーボネートコポリマーを含む組成物を準備するステップと;
(b)ステップ(a)の組成物から物品を形成するステップと;
(c)ステップ(b)において形成された物品を、電子ビーム源に曝すステップと
を含む方法。
【請求項30】
磨耗抵抗性表面を含む物品であって、
(a)少なくとも1つのシロキサン化合物、ならびにポリカーボネート、コポリカーボネート、およびコポリエステルカーボネートからなる群から選択される少なくとも1つの熱可塑性ポリマー材料を含む組成物を準備するステップと;
(b)ステップ(a)の組成物から物品を形成するステップと;
(c)ステップ(b)において形成された物品を、電子ビーム源に曝すステップと
を含む方法によって調製される物品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2009−511735(P2009−511735A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−536673(P2008−536673)
【出願日】平成18年10月11日(2006.10.11)
【国際出願番号】PCT/US2006/039041
【国際公開番号】WO2007/047144
【国際公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】