説明

プラスチック製レンズを用いた光学ユニット

【課題】全てのレンズがプラスチック製レンズで構成される高解像度用途の光学ユニットの提供。
【解決手段】下記レンズ(1)、(2)を含む光学ユニット。
(1)アッベ数が45〜60のプラスチック製レンズ、
(2)スピロビインダンから誘導される構造を含み、ガラス転移温度が120〜150℃であるポリカーボネート材料を射出成形して得られるレンズ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀塩カメラ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話組み込み用小型カメラ等に使用される高解像度用途の光学ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
近年の撮像用半導体の急速な高解像度化とコストダウンにより、それに使用される光学ユニットにも高解像度化とともに小型軽量化とコストダウンが求められている。小型軽量化およびコストダウンのためには、光学ユニットに使用するレンズとして、プラスチック製のレンズを採用することが望ましく、低解像度の用途においては、構成するレンズを全てプラスチックレンズとした光学ユニットが普及している。
【0003】
しかしながら、プラスチック材料は、ガラスに比べて複屈折が大きく、光学ユニットのレンズとして使用した場合、これが解像度に悪影響するという問題があった。低解像度の用途においては、要求される解像度が低いため問題とされなかったが、高解像度、特に解像度を空間周波数(MTF)で表した場合に、コントラスト20%における解像度が150本/mm程度以上、好ましくは200本/mm程度以上の解像度の用途においては、所望の解像度が得られないため、光学ユニットを構成する全てのレンズをプラスチック製のレンズとすることはできなかった。
【0004】
光学ユニットの光学設計においては、互いにアッベ数が異なる複数のレンズを組み合わせて使用することにより色収差を補正することが行われている。高解像度用途の光学ユニットの場合、上記したプラスチックレンズの複屈折の問題から、互いにアッベ数が異なるプラスチック製とガラスレンズとを組み合わせることで、色収差を補正している。
【0005】
ガラスレンズと組み合わせて使用されるプラスチック製レンズとしては、光学ユニット用のレンズとして好ましい特性を有することから、アッベ数45〜60の脂環式ポリオレフィン樹脂製のレンズが広く使用されている。このような脂環式ポリオレフィン樹脂は、市販品としては、日本ゼオン社製のゼオネックス(ZEONEX)TM、JSR株式会社製のアートン(ARTON)TM、三井化学株式会社製のアペル(APEL)TM等が使用されている。
【0006】
したがって、構成するレンズが全てプラスチック製レンズである光学ユニットを光学設計する場合、上記したアッベ数45〜60の脂環式ポリオレフィン樹脂製のレンズと、該レンズとはアッベ数が異なるプラスチック材料製のレンズとを組み合わせて色収差を補正することになる。低解像度用途、具体的には例えば、コントラスト20%における解像度が100本/mm程度未満の光学ユニットにおいては、アッベ数45〜60の脂環式ポリオレフィン樹脂製のレンズと、アッベ数がこれよりも低い(例えば30程度)ビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂製のレンズとを組み合わせて色収差を補正することが行われている。しかし、ビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂のような、従来のポリカーボネート樹脂は一般に固有複屈折が0.106と大きく(非特許文献1)、高解像度の光学ユニットには適用することができなかった。
よって、アッベ数45〜60の脂環式オレフィン樹脂製のレンズと組み合わせて、色収差を補正するのに適したアッベ数を有し、複屈折が小さく、かつ光学ユニットのレンズ材料に適した物性を有するプラスチック材料は従来知られていなかった。
【0007】
【非特許文献1】井手文雄,「ここまできた透明樹脂」,工業調査会,2001年,p.29
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
すなわち、本発明は、全てのレンズがプラスチック製レンズで構成される高解像度用途の光学ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明は下記レンズ(1)、(2)を含む光学ユニットを提供する。
(1)アッベ数が45〜60のプラスチック製レンズ、
(2)スピロビインダンから誘導される構造を含み、ガラス転移温度が120〜150℃であるポリカーボネート材料を射出成形して得られるレンズ。
【0010】
前記ポリカーボネート材料は、下記一般式(1)および一般式(2)で表される構造単位を有するポリカーボネート共重合体(A)を含むことが好ましい。
【化1】


【化2】


ここで上式中、R1およびR3はそれぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、R2は水素原子またはメチル基を表し、kおよびlはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、mおよびnはそれぞれ独立に0〜20の整数を表す。但し、mまたはnのうち少なくとも一方は0以外である。
【0011】
前記ポリカーボネート材料は、前記ポリカーボネート共重合体(A)100質量部に対して、0.0005〜5質量部のエポキシ化合物をさらに含有してもよい。
また、前記ポリカーボネート材料は、前記ポリカーボネート共重合体(A)100質量部に対して、0.0005〜5質量部の亜リン酸エステル化合物をさらに含有してもよい。
【0012】
前記ポリカーボネート材料は、前記ポリカーボネート共重合体(A)100質量部に対して、0.0005〜5質量部の脂肪族化合物をさらに含有してもよい。
【0013】
前記ポリカーボネート材料は、前記ポリカーボネート共重合体(A)100質量部に対して、0.00005〜5質量部の5価の有機リン化合物をさらに含有してもよい。
【0014】
前記ポリカーボネート共重合体(A)は、前記一般式(1)および一般式(2)で表される構造単位中、前記一般式(1)で表される構造単位の割合が5〜90モル%であることが好ましい。
【0015】
前記ポリカーボネート共重合体(A)は、質量平均分子量が10000〜150000であることが好ましい。
【0016】
また、本発明の光学ユニットにおいて、前記ポリカーボネート材料は、下記一般式(2)および一般式(3)で表される構造単位を有するポリカーボネート共重合体(B)を含むことが好ましい。
【化3】


【化4】


ここで上式中、R3はそれぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基あるいはハロゲン原子を表し、R4およびR5はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、R6はそれぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、lはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、jはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。
【0017】
前記ポリカーボネート材料は、前記ポリカーボネート共重合体(B)100質量部に対して、0.0005〜5質量部のエポキシ化合物をさらに含有してもよい。
前記ポリカーボネート材料は、前記ポリカーボネート共重合体(B)100質量部に対して、0.0005〜5質量部の亜リン酸エステル化合物をさらに含有してもよい。
【0018】
前記ポリカーボネート材料は、前記ポリカーボネート共重合体(B)100質量部に対して、0.0005〜5質量部の脂肪族化合物をさらに含有してもよい。
【0019】
前記ポリカーボネート材料は、前記ポリカーボネート共重合体(B)100質量部に対して、0.00005〜5質量部の5価の有機リン化合物をさらに含有してもよい。
【0020】
前記ポリカーボネート共重合体(B)は、前記一般式(2)および一般式(3)で表される構造単位中、前記一般式(2)で表される構造単位の割合が5〜90モル%であることが好ましい。
【0021】
前記ポリカーボネート共重合体(B)は、質量平均分子量が10000〜150000であることが好ましい。
【0022】
また、本発明の光学ユニットにおいて、前記ポリカーボネート材料は、下記一般式(4)、一般式(5)及び一般式(6)で表される構造単位を有し、一般式(4)の構造単位が全構造単位中5〜50モル%のポリカーボネート共重合体(C)であることが好ましい。
【化5】


【化6】


【化7】

【0023】
前記ポリカーボネート共重合体(C)は、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、炭酸エステル形成化合物とを反応させてなることが好ましい。
【0024】
前記ポリカーボネート共重合体(C)において、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンの使用量が、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンと4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノールとの合計量に対して10〜90mol%であることが好ましい。
【0025】
また、本発明の光学ユニットにおいて、前記ポリカーボネート材料は、下記一般式(4)、一般式(5)及び一般式(7)で表される構造単位を有し、一般式(4)の構造単位が全構造単位中5〜50モル%のポリカーボネート共重合体(D)であることが好ましい。
【化8】


【化9】


【化10】

【0026】
また、本発明の光学ユニットにおいて、前記ポリカーボネート材料は、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、及び3官能以上のフェノール性水酸基を有する化合物と、炭酸エステル形成化合物とを反応させてなるポリカーボネート共重合体(E)を含むことが好ましい。
【0027】
前記ポリカーボネート共重合体(E)において、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンの使用量が、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンと4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノールとの合計量に対して10〜90mol%であることが好ましい。
【0028】
前記ポリカーボネート共重合体(E)は、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンと、4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノールの合計100モル部に対して、3官能以上のフェノール性水酸基を有する化合物を、0.2〜3.0モル部添加してなることが好ましい。
【0029】
前記ポリカーボネート共重合体(E)において、3官能以上のフェノール性水酸基を有する化合物が、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、及び2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2,6−ジメチル−3−ヘプテンからなる群より選択された少なくとも1種類であることが好ましい。
【0030】
本発明の光学ユニットにおいて、前記ポリカーボネート材料は、極限粘度が0.25〜0.50であることが好ましい。
前記極限粘度は0.25〜0.35であることがさらに好ましい。
【0031】
本発明の光学ユニットにおいて、前記アッベ数45〜60のプラスチック製レンズは、脂環式ポリオレフィン樹脂から作製されることが好ましい。
【0032】
本発明の光学ユニットにおいて、前記ポリカーボネート材料は、さらに紫外線吸収剤を含有することが好ましい。
【発明の効果】
【0033】
本発明の光学ユニットは、全てのレンズがプラスチック製レンズで構成されているにもかかわらず、複屈折による解像度への悪影響が生じることがなく、高解像度用途の光学ユニットとして優れている。
本発明の光学ユニットは、全てのレンズがプラスチック製レンズで構成されているため、小型軽量化が要求される用途に好適である。
【0034】
また、本発明の光学ユニットは、低アッベ数レンズを構成する材料に、流動性に優れた特定のポリカーボネート材料を使用するため、より低温で射出成形することができ、かつ射出成形の際の成形性に優れている。このため、レンズの生産性に優れており、光学ユニットのコストダウンが可能である。また、射出成形の際の成形性に優れることにより、様々な形状のレンズを使用することができる。
【0035】
低アッベ数レンズを構成するポリカーボネート材料が紫外線吸収剤を含有する本発明の光学ユニットは、レンズの耐光性が改善されることにより、所望の光学特性を長期にわたって発揮することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、図面を参照して本発明の光学ユニットを説明する。
図1は、本発明の光学ユニットの1実施形態の概略断面図(光軸を含む平面で切断)である。図1に示す光学ユニット1は、銀塩カメラのレンズ機構や、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話組み込み用小型カメラの撮像モジュールに使用される一般的な光学ユニットの構成である。すなわち、図1の光学ユニットは、略円筒状をした鏡筒5内に2枚のレンズ2,3を組み込み、レンズ押さえ7で該レンズ2,3を固定してなるものである。また、図1の光学ユニットでは、レンズ2,3間にスペーサ6が配置されている。
【0037】
より具体的には、鏡筒5は中心が一致し、かつ互いに径が異なる3つの円筒状の領域を、径が大きい側から順に、光学ユニット1の光軸方向に配列させた構成を有している。鏡筒5の、最も小径の円筒領域の端面には、円環状のリブ部5aが内側に突出して形成されている。このリブ部5aの内側が光(撮影光等)が入射する開口となる。
鏡筒5において、最も小径の領域は、レンズ2を組み込み可能である。すなわち、その内径がレンズ2の外径と略同一で、レンズ2の外径よりも若干大きくなっている。また、最も大径の領域は、レンズ3を組み込み可能である。すなわち、その内径がレンズ3の外径と略同一で、レンズ3の外径よりも若干大きくなっている。
【0038】
図2は、レンズ3の形状を説明するための図であり、図2(a)はレンズ3の正面図(光軸方向から見た図)であり、図2(b)は図1と同方向の断面図である。図2に示すように、レンズ2は、光学的作用をするレンズ部3aの周囲にフランジ部3bを有している。図解はしないが、レンズ2も同様の構造、すなわち、光学的作用をするレンズ部の周囲にフランジ部を有している。
【0039】
本発明の光学ユニット1において、レンズ2はアッベ数45〜60のプラスチック製のレンズ(以下、「高アッベ数レンズ」という。)であり、アッベ数45〜60の脂環式ポリオレフィン樹脂製のレンズであることが好ましい。
レンズ3は、後で詳述する特定のポリカーボネート材料を射出成形して得られるレンズであり、レンズ2と組み合わせて色収差の補正を行うのに相応しいアッベ数、具体的にはアッベ数が23〜35程度のレンズ(以下、「低アッベ数レンズ」という。)である。
【0040】
レンズ2は、鏡筒5の前記リブ部5a側(開口=光入射側)の最も小径の領域に組み込まれ、リブ部5aにフランジ部を当接することにより、光軸方向の位置が決定される。一方、レンズ3は、鏡筒5の最大径の領域に組み込まれる。
スペーサ6は、両端部にレンズ2,3のフランジ部と当接する部分を有する略円筒状の部材で、上記したように鏡筒5内においてレンズ2とレンズ3との間に挿入される。スペーサ6の光軸方向の長さを選択することにより、レンズ2,3の光軸方向における相対位置を適正な位置に位置決めすることができる。
また、レンズ2,3、鏡筒5、およびスペーサ6は、共に鏡筒5にレンズを適正に組み込んだ状態で、レンズ2,3の光軸が一致するように成形されている。
【0041】
図1に示す光学ユニットは、鏡筒5内にレンズ2、スペーサ6、およびレンズ3を順次組み込み、レンズ押さえ7によりレンズ2をリブ5aに向けて押圧する。この状態で接着剤等によってレンズ押さえ7を鏡筒5に固定することにより、光学ユニット1が組み立てられる。
【0042】
本発明の光学ユニットにおいて、低アッベ数レンズ材料は、スピロビインダンから誘導される構造を含み、ガラス転移温度が120〜150℃のポリカーボネート材料である。
図1に示す光学ユニットにおいて、レンズ2,3の表面には、通常所望の特性を付与する膜が形成される。例えば、反射防止膜がスパッタリング法により形成される。低アッベ数レンズ材料のガラス転移温度が120℃未満であると、このスパッタリングにレンズが耐えることができない。一方、低アッベ数レンズ材料のガラス転移温度が150℃超であると、レンズを射出成形する際にポリマー温度を高くすることが必要になり、レンズが熱劣化するおそれがある。
【0043】
低アッベ数レンズ材料として好適なポリカーボネート材料の具体例を以下に示す。
本発明の光学ユニットにおいて、低アッベ数レンズ材料の1つの態様は、下記一般式(1)および一般式(2)で表される構造単位を有するポリカーボネート共重合体(A)を含む。
【化11】


【化12】


ここで上式中、R1およびR3はそれぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、R2は水素原子またはメチル基を表し、kおよびlはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、mおよびnはそれぞれ独立に0〜20の整数を表す。但し、mまたはnのうち少なくとも一方は0以外である。
【0044】
上記した一般式(1)および一般式(2)で表される構造単位において、R1およびR3はそれぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基あるいはハロゲン原子を表し、好ましくは、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、ニトロ基あるいはハロゲン原子を表し、好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルコキシ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表す。R1およびR3のアルキル基またはアルコキシ基中の置換基としては、例えば、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、シクロアルキル基、ヘテロ原子含有のシクロアルキル基、シクロアルコキシ基、ヘテロ原子含有のシクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アリールオキシアルコキシ基、ハロゲン原子等が例示される。
【0045】
置換基R1およびR3の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、テトラヒドロフルフリル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−n−ブトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、3−n−プロポキシプロピル基、3−n−ブトキシプロピル基、3−n−ヘキシルオキシプロピル基、2−メトキシエトキシエチル基、2−エトキシエトキシエチル基、2−フェノキシメチル基、2−フェノキシエトキシエチル基、クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、2,2,2−トリクロロエチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシル基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4−tert−ブチルシクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、シクロヘキシルメトキシ基、シクロヘキシルエトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−n−ブトキシエトキシ基、3−メトキシプロポキシ基、3−エトキシプロポキシ基、3−n−プロポキシプロポキシ基、3−n−ブトキシプロポキシ基、3−n−ヘキシルオキシプロポキシ基、2−メトキシエトキシエトキシ基、2−フェノキシメトキシ基、2−フェノキシエトキシエトキシ基、クロロメトキシ基、2−クロロエトキシ基、3−クロロプロポキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、ニトロ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0046】
置換基R1およびR3は、好ましくは、炭素数1〜10の無置換の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜10の無置換の直鎖または分岐のアルコキシ基あるいは塩素原子であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基または塩素原子である。置換基R1およびR3として、メチル基または塩素原子は特に好ましい。また、一般式(1)で表される構造単位において、R2は水素原子またはメチル基を表す。
【0047】
一般式(1)および一般式(2)で表される構造単位において、kおよびlはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、好ましくは、0、1または2であり、より好ましくは、0または1である。kおよびlとして、整数0は特に好ましい。また、一般式(1)で表される構造単位において、mおよびnはそれぞれ独立に、0〜20の整数を表し、好ましくは、0から10の整数であり、より好ましくは、0〜5の整数であり、さらに好ましくは、0〜2の整数である。mおよびnとして、整数1は特に好ましい。但し、mまたはnのうち少なくとも一方は0以外である。
【0048】
一般式(1)および一般式(2)で表される構造単位において、カーボネート結合もしくはカーボネート結合を含む置換基の置換位置はスピロビインダン構造内のベンゼン環上で、それぞれ、4、5、6または7位であるか、4’、5’、6’または7’位である。
【0049】
一般式(1)で表される構造単位の中でも下記式(1A)で表される構造単位が特に好ましく、一般式(2)で表される構造単位の中でも下記式(2A)で表される構造単位が特に好ましい。
【化13】


【化14】


ここで上式中、R1、R2、R3、k、l、mおよびnは上記と同様である。
【0050】
ポリカーボネート共重合体(A)は、下記一般式(1a)で表されるジヒドロキシ化合物と下記一般式(2a)で表されるジヒドロキシ化合物に、カーボネート前駆体を作用させ、共重合させることにより得ることができる。すなわち、一般式(1)で表される構造単位は、下記一般式(1a)で表される化合物とカーボネート前駆体とから誘導することができる。また、一般式(2)で表される構造単位は、下記一般式(2a)で表される化合物とカーボネート前駆体とから誘導することができる。
【化15】


【化16】


ここで上式中、R1、R2、R3、k、l、mおよびnは上記と同様である。
【0051】
ポリカーボネート共重合体(A)の原料である一般式(1a)で表されるジヒドロキシ化合物としては、以下のジヒドロキシ化合物が例示される。但し、これらに限定されるものではない。
【化17】

【0052】
【化18】

【0053】
【化19】

【0054】
【化20】

【0055】
【化21】

【0056】
またもう一方の原料となる一般式(2a)で表されるジヒドロキシ化合物としては、以下のジヒドロキシ化合物が例示される。但し、これらに限定されるものではない。
6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’,5,5’−ヘキサメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジエチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ−n−プロピル−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジイソプロピル−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ−n−ブチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ−tert−ブチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ−n−ペンチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ−イソペンチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ−n−ヘキシル−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ−n−オクチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ−(2−エチルヘキシル)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ−n−ノニル−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ−n−デシル−3,3,3’,3’,−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ−n−ドデシル−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ−n−ウンデシル−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ−n−オクタデシル−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジシクロペンチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジシクロヘキシル−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジシクロヘプチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジシクロオクチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(4−メチルシクロヘキシル)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシル)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジシクロヘキシルメチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジシクロヘキシルエチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジテトラヒドロフルフリル−3,3,3’,3’,−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(2−メトキシエチル)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(2−エトキシエチル)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(2−n−ブトキシエチル)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(3−メトキシプロピル)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(3−エトキシプロピル)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(3−n−ブトキシプロピル)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(3−n−ヘキシルオキシプロピル)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(2−メトキシエトキシエチル)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(2−エトキシエトキシエチル)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(2−フェノキシメチル)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(2−フェノキシエトキシエチル)−3,3,3’,3’,−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ビスクロロメチル−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(2−クロロエチル)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(3−クロロプロピル)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(2,2,2−トリクロロエチル)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジメトキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジイソプロポキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ−n−ブトキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ−n−ヘキシルオキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ−n−オクチルオキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ−n−オクタデシルオキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジシクロヘキシルオキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(4−tert−ブチルシクロヘキシルオキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジシクロヘキルメチルオキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジシクロヘキシルエチルオキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(2−メトキシエトキシ)−3,3,3’,3’,−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(2−エトキシエトキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(2−n−ブトキシエトキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(3−メトキシプロポキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(3−エトキシプロポキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(3−n−ブトキシプロポキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(3−n−ヘキシルオキシプロポキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(2−メトキシエトキシエトキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(2−エトキシエトキシエトキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(2−フェノキシメトキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(2−フェノキシエトキシ)−3,3,3’,3’,−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(2−フェノキシエトキシエトキシ)−3,3,3’,3’,−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(2−クロロエトキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン65. 6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(3−クロロプロポキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジ(2,2,2−トリクロロエトキシ)−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジニトロ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジフルオロ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジクロロ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジブロモ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’−ジヨード−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’,4,4’−ヘキサメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−4,4’−ジメトキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−4,4’−ジニトロ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−4,4’−ジクロロ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’,7,7’−ヘキサメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−7,7’−ジメトキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−7,7’−ジニトロ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−7,7’−ジクロロ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’,5,5’,7,7’−オクタメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−5,5’,7,7’−テトラクロロ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−7,7’−ジクロロ−3,3,3’,3’,5,5’−ヘキサメチル−1,1’−スピロビインダン、6,6’−ジヒドロキシ−4,4’,5,5’,7,7’−ヘキサクロロ−3,3,3’,3’,−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、5,5’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、7,7’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン。
【0057】
一般式(1a)で表されるジヒドロキシ化合物は、一般式(2a)で表されるジヒドロキシ化合物を製造原料として、反応それ自体は公知の方法により好適に製造される。すなわち、一般式(1a)で表されるジヒドロキシ化合物は、一般式(2a)で表されるジヒドロキシ化合物と、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等のアルキレンオキシド類、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等の環状のアルキレンカーボネート類、2−ブロモエタノール、2−クロロエタノール、2−ブロモ−1−プロパノール等のβ−ハロヒドリン類との反応により製造することができる。また、一般式(2a)で表されるジヒドロキシ化合物は公知の方法、例えば、特開昭62−10030号公報などに記載の方法により、好適に製造される。例えば、ビスフェノールAを、酸触媒の存在下に、加熱することにより得られる。
【0058】
ポリカーボネート共重合体(A)は、製造方法それ自体は公知の各種ポリカーボネート重合方法によって製造される。その方法としては、例えば、実験化学講座第4版、(28)高分子合成、231〜242頁、丸善出版(1988年)に記載の方法、例えば、溶液重合法、エステル交換法または界面重合法などの方法が挙げられる。代表的には、一般式(1a)で表されるジヒドロキシ化合物と一般式(2a)で表されるジヒドロキシ化合物に、カーボネート前駆体(例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジフェニル等の炭酸ジエステル化合物、ホスゲン等のハロゲン化カルボニル化合物など)を反応させることにより好適に製造される。
【0059】
溶液重合法は、ピリジン等の有機塩基の存在下、有機溶媒中で、上記ジヒドロキシ化合物とハロゲン化カルボニル化合物(例えば、ホスゲンなど)を反応させる方法である。界面重合法は、ジヒドロキシ化合物とアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩基よりなる水溶液と有機溶媒(例えば、ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン、1,2−ジクロロエチレン、トリクロロエタン、テトラクロロエタン、ジクロロプロパン等の脂肪族ハロゲン化炭化水素、あるいは、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等の芳香族ハロゲン化炭化水素、またはそれらの混合物等)よりなる界面条件下で、ハロゲン化カルボニル化合物との反応を行い、所望により触媒(例えば、トリエチルアミン)、分子量調節剤の存在下に重縮合反応を行う製造方法である。エステル交換法は、前記ジヒドロキシ化合物と炭酸ジエステル化合物(例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジフェニルカーボネートなど)を溶融状態または溶液状態で、加熱下、所望により触媒の存在下に反応させる方法である。
【0060】
ポリカーボネート共重合体(A)は、上記一般式(1)で表される構造単位と、上記一般式(2)で表される構造単位を含むポリカーボネート共重合体である限り特に限定されない。したがって、ランダム共重合体、交互共重合体あるいはブロック共重合体のいずれであってもよい。ポリカーボネート共重合体(A)をランダム共重合体として製造する場合は、一般式(1a)および一般式(2a)で表されるジヒドロキシ化合物を混合して、このジヒドロキシ化合物の混合物にカーボネート前駆体を作用させることにより製造される。ポリカーボネート共重合体(A)を交互共重合体として製造する場合は、一般式(1a)または一般式(2a)で表されるジヒドロキシ化合物のいずれか一方とカーボネート前駆体から、末端がハロホーメート基または炭酸エステル基である単量体の中間体を製造し、この中間体ともう一方のジヒドロキシ化合物を作用させることにより製造される。ポリカーボネート共重合体(A)をブロック共重合体として製造する場合は、一般式(1a)または一般式(2a)で表されるジヒドロキシ化合物のいずれか一方を単独でカーボネート前駆体と作用させ、大部分の末端がハロホーメート基または炭酸エステル基であるポリカーボネートのオリゴマーを調製し、その後、他方のジヒドロキシ化合物またはそのジヒドロキシ化合物から誘導されるポリカーボネートオリゴマーを作用させることにより製造される。
【0061】
ポリカーボネート共重合体(A)は、一般式(1)で表される構造単位および一般式(2)として、それぞれ異なる複数の構造単位を含んでもよい。
ポリカーボネート共重合体(A)は、耐熱性、機械物性等の諸物性のバランスを考慮すると、一般式(1)および一般式(2)で表される構造単位中、一般式(1)で表される構造単位の割合は、好ましくは、5〜90モル%であり、より好ましくは、10〜80モル%であり、さらに好ましくは、20〜70モル%である。
【0062】
また、ポリカーボネート共重合体(A)は、一般式(1)で表される構造単位および一般式(2)で表される構造単位以外に、他の構造単位を含んでもよい。他の構造単位を含有する場合、全構造単位中一般式(1)および一般式(2)で表される構造単位の割合は、本発明の所望の効果を損なわない範囲であれば、特に制限されるものではないが、通常、50モル%以上であり、好ましくは、70モル%以上であり、より好ましくは、90モル%以上である。本発明の所望の効果を最大限に得るためには、ポリカーボネート共重合体(A)は、一般式(1)および一般式(2)で表される構造単位のみで構成されることが、特に好ましい。
【0063】
かかる一般式(1)および(2)で表される構造単位以外の他の構造単位は、一般式(1a)または一般式(2a)で表されるジヒドロキシ化合物以外の他のジヒドロキシ化合物から誘導される繰り返し構造単位であり、該ジヒドロキシ化合物としては、各種公知の芳香族ジヒドロキシ化合物または脂肪族ジヒドロキシ化合物を例示することができる。
【0064】
該芳香族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、1,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)フェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフェニルメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1−ナフチルメタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルエタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)プロパン〔ビスフェノールA〕、2−(4’−ヒドロキシフェニル)−2−(3’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−3−メチルブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ペンタン、3,3−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ペンタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−4−メチルペンタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、4,4−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘプタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)トリデカン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)オクタン、2,2−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−エチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−n−プロピル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−イソプロピル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−sec−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−tert−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−シクロヘキシル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−アリル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’−メトキシ−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(2’,3’,5’,6’−テトラメチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)シアノメタン、1−シアノ−3,3−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ブタン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン等のビス(ヒドロキシアリール)アルカン類、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロペンタン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘプタン、1,1−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3’,5’−ジメチル−4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3’,5’−ジクロロ−4’−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、1,1−ビス(3’−メチル−4’−ヒドロキシフェニル)−4−メチルシクロヘキサン、1,1−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)ノルボルナン、2,2−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)アダマンタン等のビス(ヒドロキシアリール)シクロアルカン類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルエーテル、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルエーテル、エチレングリコールビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル等のビス(ヒドロキシアリール)エーテル類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジシクロヘキシル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド、3,3’−ジフェニル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルフィド等のビス(ヒドロキシアリール)スルフィド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド、3,3’−ジメチル−4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホキシド等のビス(ヒドロキシアリール)スルホキシド類、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、4,4’−ジヒドロキシ−3,3’−ジメチルジフェニルスルホン等のビス(ヒドロキシアリール)スルホン類、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ケトン、ビス(4−ヒドロキシ−3−メチルフェニル)ケトン等のビス(ヒドロキシアリール)ケトン類、さらには、7,7’−ジヒドロキシ−3,3’,4,4’−テトラヒドロ−4,4,4’,4’−テトラメチル−2,2’−スピロビ(2H−1−ベンゾピラン)、トランス−2,3− ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2−ブテン、9,9−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)フルオレン、3,3−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−2− ブタノン、1,6−ビス(4’−ヒドロキシフェニル)−1,6−ヘキサンジオン、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−p−キシレン、α,α,α’,α’−テトラメチル−α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−m−キシレン、4,4’−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン、レゾルシン等が挙げられる。さらに、例えばビスフェノールA2モルとイソフタロイルクロライドまたはテレフタロイルクロライド1モルとを反応させることにより製造することができるエステル結合を含む芳香族ジヒドロキシ化合物も有用である。
【0065】
該脂肪族ジヒドロキシ化合物の具体例としては、1,2−ジヒドロキシエタン、1,3−ジヒドロキシプロパン、1,4−ジヒドロキシブタン、1,5−ジヒドロキシペンタン、3−メチル−1,5−ジヒドロキシペンタン、1,6−ジヒドロキシヘキサン、1,7−ジヒドロキシヘプタン、1,8−ジヒドロキシオクタン、1,9−ジヒドロキシノナン、1,10−ジヒドロキシデカン、1,11−ジヒドロキシウンデカン、1,12−ジヒドロキシドデカン、ジヒドロキシネオペンチル、2−エチル−1,2−ジヒドロキシヘキサン、2−メチル−1,3−ジヒドロキシプロパン等のジヒドロキシアルカン、1,3−ジヒドロキシシクロヘキサン、1,4−ジヒドキシシクロヘキサン及び2,2−ビス(4’−ヒドロキシルシクロヘキシル)プロパン等のジヒドロキシシクロアルカンを挙げることができる。
【0066】
さらに、o−ジヒドロキシキシリレン、m−ジヒドロキシキシリレン、p−ジヒドロキシキシリレン、1,4−ビス(2’−ヒドロキシエチル)ベンゼン、1,4−ビス(3’−ヒドロキシプロピル)ベンゼン、1,4−ビス(4’−ヒドロキシブチル)ベンゼン、1,4−ビス(5’−ヒドロキシペンチル)ベンゼン、1,4−ビス(6’−ヒドロキシヘキシル)ベンゼン、2,2−ビス[4’−(2”−ヒドロキシエチルオキシ)フェニル]プロパン等のジヒドロキシ化合物を挙げることができる。
【0067】
さらに、一般式(1)および(2)で表される構造単位以外の他の構造単位として、上記ジヒドロキシ化合物以外の2官能性化合物から誘導される構造単位を含有していてもよい。すなわち、該ジヒドロキシ化合物以外の2官能性化合物としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸、芳香族ジアミン、脂肪族ジアミン、芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート等の化合物が挙げられる。これらの2官能性化合物を用いることにより、カーボネート基以外に、イミノ基、エステル基、エーテル基、イミド基、アミド基、ウレタン基、ウレア基等の基を含有するポリカーボネート共重合体が得られ、本発明はかかるポリカーボネート共重合体も包含するものである。
【0068】
ポリカーボネート共重合体(A)において、末端基は、ヒドロキシ基、ハロホーメート基、炭酸エステル基等の反応性の末端基であってもよく、また、後述する分子量調節剤で封止された不活性な末端基であってもよい。ポリカーボネート共重合体(A)中の末端基の量は特に制限はないが、通常、構造単位の総モル数に対して、0.001〜10モル%であり、好ましくは、0.01〜5モル%であり、より好ましくは、0.1〜3モル%である。
【0069】
詳しくは後述するが、本発明の光学ユニットにおいて、低アッベ数レンズ材料は、極限粘度が0.25〜0.50であることが好ましく、より好ましくは0.25〜0.35である。したがって、ポリカーボネート共重合体(A)は、極限粘度が上記範囲であることが好ましい。
このため、ポリカーボネート共重合体(A)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定する標準ポリスチレン換算の分子量としての質量平均分子量が、5000〜200000であり、好ましくは、10000〜150000であり、より好ましくは、15000〜120000である。また、質量平均分子量と数平均分子量の比として表される多分散性インデックスとしては、特に限定されるものではないが、好ましくは、1.5〜20.0であり、より好ましくは、2.0〜15.0であり、さらに好ましくは、2.0〜10.0である。
【0070】
質量平均分子量および多分散性インデックスが上記の範囲であるポリカーボネート共重合体(A)を得るためには、本発明のポリカーボネート共重合体(A)を前記の方法に従い重合して製造する際に、分子量を調節する目的で分子量調節剤の存在下に重合を行うことは好ましいことである。かかる分子量調節剤としては特に限定されるものではなく、公知のポリカーボネート重合の際に使用される各種既知の分子量調節剤であればよく、例えば、1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物もしくはその誘導体(例えば、1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物のハロホーメート化合物、1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物の炭酸エステルなど)、1価のカルボン酸もしくはその誘導体(例えば、1価のカルボン酸のアルカリ金属またはアルカリ土類金属塩、1価のカルボン酸の酸ハライド、1価のカルボン酸のエステルなど)等が挙げられる。
【0071】
上記の1価のヒドロキシ脂肪族化合物またはヒドロキシ芳香族化合物としては、例えば、メタノール、エタノール、ブタノール、オクタノール、ラウリルアルコール、メトキシエタノール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、アリルアルコール、フェノール、p−tert−ブチルフェノール、2−クレゾール、3−クレゾール、4−クレゾール、2−エチルフェノール、4−エチルフェノール、4−クミルフェノール、4−フェニルフェノール、4−シクロヘキシルフェノール、4−n−オクチルフェノール、4−イソオクチルフェノール、4−ノニルフェノール、4−メトキシフェノール、4−n−ヘキシルオキシフェノール、4−イソプロペニルフェノール、2−クロロフェノール、3−クロロフェノール、4−クロロフェノール、2−ブロモフェノール、3−ブロモフェノール、4−ブロモフェノール、2,4−ジクロロフェノール、2,4−ジブロモフェノール、ペンタクロロフェノール、ペンタブロモフェノール、β−ナフトール、α−ナフトール、2−(4’−メトキシフェニル)−2−(4”−ヒドロキシフェニル)プロパン等が挙げられる。
【0072】
また、上記の1価のカルボン酸としては、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、カプロン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、2,2−ジメチルプロピオン酸、3−メチル酪酸、3,3−ジメチル酪酸、4−メチル吉草酸、3,3−ジメチル吉草酸、4−メチルカプロン酸、2,4−ジメチル吉草酸、3,5−ジメチルカプロン酸、フェノキシ酢酸等の脂肪族カルボン酸類、安息香酸、4−プロポキシ安息香酸、4−ブトキシ安息香酸、4−ペンチルオキシ安息香酸、4−ヘキシルオキシ安息香酸、4−オクチルオキシ安息香酸等の安息香酸類が挙げられる。
【0073】
上記した分子量調節剤の中でもフェノールまたはp−tert−ブチルフェノールが好ましい。
極限粘度が上記した範囲のポリカーボネート共重合体(A)を得るには、ジオール成分に対するモル比で0.001〜10モル%となる量で分子量調節剤を添加する。分子量調節剤としてフェノールを使用する場合、ジオール成分に対するモル比で0.01〜5モル%となる量で添加することが好ましい。一方、分子量調節剤としてp−tert−ブチルフェノールを使用する場合、ジオール成分に対するモル比で0.01〜10モル%となる量で添加することが好ましい。
【0074】
本発明の光学ユニットにおいて、低アッベ数レンズ材料は、ポリカーボネート共重合体(A)に加えてエポキシ化合物を含有してもよい。この場合、ポリカーボネート共重合体(A)100質量部に対して0.0005〜5質量部のエポキシ化合物を含有することが好ましい。より好ましくは、ポリカーボネート共重合体(A)100質量部に対して0.001〜3質量部のエポキシ化合物を含有し、さらに好ましくは、0.01〜2質量部である。
【0075】
ポリカーボネート共重合体(A)と共に使用可能なエポキシ化合物は、エポキシ基(オキシラン環)を有する化合物であって、芳香族であっても脂肪族であってもよく、また該脂肪族は直鎖、分岐または環状であってもよい。また、該エポキシ化合物は、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、水酸基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミノアルキル基、スルホ基等で置換されていてもよい。また、これらの置換基のうち、同一あるいは異なった置換基が分子内に2個以上含まれていてもよい。
【0076】
このようなエポキシ化合物としては、シクロヘキセンオキシド化合物, シクロヘキセンオキシド以外の環状エポキシ化合物、グリシジルエーテル化合物、カルボン酸グリシジルエステル化合物、エポキシ樹脂化合物、天然油のエポキシ化物、その他が挙げられる。
【0077】
シクロヘキセンオキシド化合物の具体例としては、シクロヘキセンオキシド、3,4−ジメチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、3,5−ジメチルー1,2−エポキシシクロヘキサン、3−メチル−5−t−ブチル−1,2−エポキシシクロヘキサン、4−ビニル−1−シクロヘキセンオキシド、4−ビニル−1−シクロヘキセンジエポキシド、2,6,6−トリクロロ−1,2−エポキシシクロヘキサン、ジペンテンジオキシド、4,5−エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、3−t−ブチル−4,5−エポキシ無水テトラヒドロフタル酸、4,5−エポキシテトラヒドロフタル酸ジグリシジル、4,5−エポキシテトラヒドロフタル酸ジエチル4,5−エポキシテトラヒドロフタル酸ジ−n−ブチル、4,5−エポキシテトラヒドロフタル酸ジ−2−エチルヘキシル、4,5−エポキシテトラヒドロフタル酸イソデシル、コハク酸ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)、アジピン酸ビス(3,4−エポキシシクロヘキシルメチル)、アジピン酸ビス(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル)、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)−2’、3’−エポキシ−2,4−ジオキサスピロ(5.5)ウンデカン、3,4−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、2,3−エポキシシクロヘキシルメチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、シクロヘキシルメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、シクロヘキシル−2−メチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、オクタデシル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、2−エチルヘキシル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、オクタデシル−2,2−ジメチル−3,4−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4−(3,4−エポキシシクロヘキシル)ブチル−3’,4’− エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4−(3,4−エポキシ−5−メチルシクロヘキシル)ブチル−3’,4’−エポキシシクロヘキシルカルボキシレート、4−(3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシル)ブチル−3’,4’−エポキシ−6’−メチルシクロヘキシルカルボキシレート、3,4−エポキシ−6−メチルシクロヘキシルメチル−6’−メチルシクロヘキシルカルボキシレート等が挙げられる。
【0078】
シクロヘキセンオキシド以外の環状エポキシの具体例としては、シクロペンテンオキシド、シクロオクテンオキシド、シクロドデカンエポキシド、α−ピネンオキシド、exo−2,3−エポキシノルボルナン、1,2,5,6−ジエポキシシクロオクタン、リモネンオキシド、3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]−デカン、アリルオキシ3,4−エポキシトリシクロ[5.2.1.02,6]−デカン、1,2−エポキシ−5−トランス−9−シス−シクロドデカジエン、セドレンエポキシド、5,6−エポキシ−4,7−メタノ−1−オキサスピロ−[2,5]−オクタン、1,4,4A,8A−テトラヒドロ−1,4−メタノナフタレン−5,8−ジオン−6,7−エポキシド、シクロヘプテンオキシド、9−オキサビシクロ[6.1.0]ノン−4−エン、シス−1,2−エポキシシクロデカン、ジシクロペンタジエンジオキシド等が挙げられる。
【0079】
グリシジルエーテル化合物の具体例としては、フェニルグリシジルエーテル、グリシジルベンジルエーテル、グリシジル2−メチルフェニルエーテル、グリシジル4−エチルフェニルエーテル、t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、グリシジルメシチルエーテル、グリシジル−4−メトキシフェニルエーテル、2−ビフェニルグリシジルエーテル、グリシジル1−ナフチルエーテル、アリルグリシジルエーテル、グリシジルイソプロピルエーテル、ブチルグリシジルエーテル、t−ブチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、グリシジルラウリルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,3−ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,4−ブタンジオールジグリシジルエーテル、ハイドロキノンジグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラメチルビスフェノールAジグリシジルエーテル、テトラブロモビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、レゾルシノールジグリシジルエーテル、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)ビフェニル、4,4’−ビス(2,3−エポキシプロポキシ)−3,3’,5,5’−テトラメチルビフェニル、ネオペンチルアルコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、グリセリンジグリシジルエーテル、グリセリントリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ソルビタンポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、グリシジルラウリルエーテル等が挙げられる。
【0080】
カルボン酸グリシジルエステル化合物の具体例としては、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、テレフタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルフタルイミド、オレイン酸グリシジル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、4,5−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸ジグリシジルエステル等が挙げられる。エポキシ樹脂化合物の具体例としては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、o−クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ザイロック型エポキシ樹脂等が挙げられる。天然油のエポキシ化物の具体例としては、エポキシ化大豆油、エポキシ化アマニ油、エポキシ化トール油脂肪酸2−エチルヘキシル、エポキシ化(エチレングリコール−ジ−トール油脂肪酸エステル)等が挙げられる。
【0081】
また、その他のエポキシ化合物としては、エポキシステアリン酸ブチル、エポキシステアリン酸オクチル、エポキシステアリン酸−2−エチルヘキシル、エポキシステアリン酸ベンジル、エポキシステアリン酸アリル、ビスエポキシジシクロペンタジエニルエーテル、1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシヘキサン、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシデカン、1,2−エポキシドデカン、1,2−エポキシテトラデカン、1,2−エポキシヘキサデカン、1,2−エポキシオクタデカン、ブタジエンモノオキシド、ブタジエンジエポキシド、2−メチル−2−ビニルオキシラン、1,2−エポキシ−5−ヘキセン、1,2−エポキシ−7−オクテン、1,2,7,8−ジエポキシオクタン、テトラフェニルエチレンエポキシド、エポキシ化ポリブタジエン、グリシドール、2−メチルグリシドール、3−プロピルオキシランメタノール、スチレンオキシド、2,3−エポキシプロピルベンゼン、1−フェニルプロピレンオキシド、スチルベンオキシド、4,5,9,10−ジエポキシ−1−デセン、1,2,4,5,9,10−トリエポキシデカン、9,10−エポキシオクタデカン、2−エポキシエチルビシクロ[2.2.1]ヘプタン、2−(ベンジロキシメチル)−2−メチルオキシラン等が挙げられる。
【0082】
低アッベ数レンズ材料に使用されるエポキシ化合物としては、好ましくは、シクロヘキセンオキシド化合物、シクロヘキセンオキシド以外の環状エポキシ化合物、グリシジルエーテル化合物、カルボン酸グリシジルエステル化合物、エポキシ樹脂化合物であり、より好ましくは、シクロヘキセンオキシド化合物、シクロヘキセンオキシド以外の環状エポキシ化合物、グリシジルエーテル化合物、カルボン酸グリシジルエステル化合物であり、さらに好ましくは、シクロヘキセンオキシド化合物、カルボン酸グリシジルエステル化合物であり、特に好ましくは、シクロヘキセンオキシド化合物である。シクロヘキセンオキシド化合物の中では、不飽和結合を含有しない化合物が特に好ましい。
【0083】
本発明の光学ユニットにおいて、低アッベ数レンズ材料はポリカーボネート共重合体(A)に加えて亜リン酸エステル化合物を含有してもよい。この場合、低アッベ数レンズ材料は、上記したエポキシ樹脂と亜リン酸エステル化合物を同時に含有してもよく、亜リン酸エステル化合物のみを含有してもよい。
ここで、亜リン酸エステル化合物は、ポリカーボネート共重合体(A)100質量部に対して、0.0005〜5質量部含有されることが好ましく、より好ましくは、0.001〜3質量部、さらに好ましくは、0.01〜2質量部含有される。
【0084】
低アッベ数レンズ材料に含有される亜リン酸エステル化合物としては、公知の各種誘導体を使用することができる。亜リン酸エステル化合物の具体例として、例えば、トリメチルホスファイト、トリエチルホスファイト、トリブチルホスファイト、トリオクチルホスファイト、トリス(2−エチルヘキシルホスファイト)、トリノニルホスファイト、トリデシルホスファイト、トリス(トリデシル)ホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、トリステアリルホスファイト、トリス(2−クロロエチル)ホスファイト、トリス(2,3−ジクロロプロピルホスファイト)などのトリアルキルホスファイト類、トリシクロヘキシルホスファイトなどのトリスシクロアルキルホスファイト類、トリフェニルホスファイト、トリクレジルホスファイト、トリス(エチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイトなどのトリスアリールホスファイト類、フェニル−ジデシルホスファイト、ジフェニル−イソオクチルホスファイト、ジフェニル−2−エチルヘキシルホスファイト、ジフェニル−デシルホスファイト、ジフェニル−トリデシルホスファイトなどのアリールアルキルホスファイト類、ビス(トリデシル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ジステアリル−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ジフェニル−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ビス(ノニルフェニル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリスチリル−ジホスファイト、テトラフェニル−ジプロピレングリコール−ジホスファイト、テトラ(トリデシル)−4,4’−イソプロピリデンジフェニル−ジホスファイト等のジホスファイト類、テトラ(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)−4,4’−ジフェニルホスファイト、テトラフェニルテトラ(トリデシル)ペンタエリスチリルテトラホスファイト、トリラウリルトリチオホスファイトなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではない。これらの亜リン酸エステル化合物は、単独もしくは2種類以上組み合わせて、使用することができる。
【0085】
本発明の光学ユニットにおいて、低アッベ数レンズ材料は、ポリカーボネート共重合体(A)に加えて脂肪族化合物を含有してもよい。この場合、脂肪族化合物は、ポリカーボネート共重合体(A)100質量部に対して、0.0005〜5質量部含有されることが好ましく、より好ましくは、0.001〜3質量部、さらに好ましくは、0.01〜2質量部含有される。
【0086】
低アッベ数レンズ材料に含有される脂肪族化合物は、脂肪鎖を有する化合物で、芳香族を含まない化合物であり、該脂肪鎖は直鎖、分岐、または環状のいずれであってもよい。脂肪族化合物は、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、水酸基、アルコキシ基、シアノ基、ニトロ基、アミノ基、アミノアルキル基、スルホ基等で置換されていてもよい。また、これらの置換基のうち、同一あるいは異なった置換基が分子内に2個以上含まれていてもよい。また、置換基を有する場合に、置換基と金属が塩を形成していてもよい。
【0087】
脂肪族化合物としては、好ましくは、無置換の脂肪族化合物、あるいはカルボキシル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、水酸基、アルコキシ基等で置換された脂肪族化合物、置換基と金属が塩を形成した脂肪族化合物が挙げられる。さらに好ましくは、カルボキシル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アミノカルボニル基、アルキルアミノカルボニル基、水酸基、アルコキシ基等で置換された化合物、置換基と金属が塩を形成した化合物である。好ましい具体例としては、脂肪族炭化水素、脂肪酸化合物、脂肪酸エステル化合物、脂肪酸金属塩化合物、脂肪酸アミド化合物または脂肪族アルコール等が挙げられ、より好ましくは脂肪酸化合物、脂肪酸エステル化合物、脂肪酸金属塩化合物、脂肪酸アミド化合物または脂肪族アルコールである。脂肪族化合物としては、公知の化合物を使用することができる。
【0088】
脂肪族炭化水素の具体例としては、流動パラフィン、モンタンワックス、蜜ロウ、低重合ポリエチレン、水素添加ポリブテン等が挙げられる。脂肪酸化合物の具体例としては、直鎖飽和脂肪酸、環状飽和脂肪酸、分岐飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、水酸基を有する不飽和脂肪酸等が挙げられる。C6〜C32の直鎖飽和脂肪酸としては、例えば、カプロン酸(C6)、エナント酸(C7)、カプリル酸(C8)、ペラルゴン酸(C9)、カプリン酸(C10)、ウンデシル酸(C11)、ラウリン酸(C12)、トリデシル酸(C13)、ミリスチン酸(C14)、ペンタデシル酸(C15)、パルミチン酸(C16)、ヘプタデシル酸(C17)、ステアリン酸(C18)、ノナデカン酸(C19)、アラキジン酸(C20)、ヘンアイコサン酸(C21)、ベヘニン酸(C22)、トリコサン酸(C23)、リグノセリン酸(C24)、ペンタコサン酸(C25)、セロチン酸(C26)、ヘプタコサン酸(C27)、モンタン酸(C28)、ノナコサン酸(C29)、メリシン酸(C30)、ヘントリアコンタン酸(C31)、ラクセル酸(C32)等が挙げられ、環状飽和脂肪酸としては、ナフテン酸等が挙げられ、分岐飽和脂肪酸としては、2−エチルヘキソイン酸、イソデカン酸等が挙げられ、不飽和脂肪酸としては、オレイン酸、エライジン酸、セトレイン酸、エルカ酸、プラシジン酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸等が挙げられ、水酸基を有する不飽和脂肪酸としては、リシノール酸が挙げられる。
【0089】
脂肪酸化合物としては、好ましくは、C11〜C22の直鎖飽和脂肪酸、ナフテン酸、オレイン酸、エルカ酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸あるいはリシノール酸であり、より好ましくはウンデシル酸(C11)、ラウリン酸(C12)、トリデシル酸(C13)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)、ベヘニン酸(C22)、オレイン酸、エルカ酸、あるいはソルビン酸であり、さらに好ましくはミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)、ベヘニン酸(C22)であり、特に好ましくはステアリン酸(C18)である。
【0090】
脂肪酸エステル化合物としては、前記の脂肪酸とアルコールとのエステル化合物が挙げられる。該アルコールとしては、C1〜C22の直鎖の一価アルコール、多価アルコールが挙げられ、C1〜C22の直鎖の一価アルコールの具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デシルアルコール(C10)、ウンデシルアルコール(C11)、ラウリルアルコール(C12)、トリデシルアルコール(C13)、ミリスチルアルコール(C14)、ペンタデシルアルコール(C15)、セチルアルコール(C16)、ヘプタデシルアルコール(C17)、ステアリルアルコール(C18)、ノナデシルアルコール(C19)、エイコシルアルコール(C20)等が挙げられる。多価アルコールとしては、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1,3−ブタンジオール等が挙げられる。一価の脂肪酸と多価アルコールのエステルの場合,x価のアルコールのx個の水酸基の内のy個(yは1以上、x以下の整数)がエステル結合を形成し、また(x−y)個の水酸基がそのまま残っていてもよい。
【0091】
具体例としては、ウンデシル酸ステアリル、ラウリン酸ステアリル、トリデシル酸ステアリル、ミリスチン酸ステアリル、パルミチン酸ステアリル、ステアリン酸ブチル、ステアリン酸ラウリル、アラキジン酸ブチル、ベヘニン酸ブチル、オレイン酸ブチル、ペンタエリスリトールテトラステアレート、エチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、ポリエチレングリコールジオレエート、リシノール酸ブチル、グリセリンモノカプリレート、グリセリンモノカプレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノミリステート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノオレエート、グリセリンモノエルケート、グリセリンモノリノレート、グリセリントリラウレート、グリセリントリミリステート、グリセリントリパルミテート、グリセリントリステアレート、グリセリントリオレエート等が挙げられる。
【0092】
脂肪酸エステル化合物としては、好ましくは、ラウリン酸ステアリル、ミリスチン酸ステアリル、パルミチン酸ステアリル、ステアリン酸ブチル、ペンタエリスリトールテトラステアレート、エチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレートであり、より好ましくはラウリン酸ステアリル、ミリスチン酸ステアリル、パルミチン酸ステアリル、エチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、グリセリンモノステアレートであり、さらに好ましくはミリスチン酸ステアリル、パルミチン酸ステアリル、エチレングリコールモノステアレート、グリセリンモノステアレートであり、特に好ましくはグリセリンモノステアレートである。
【0093】
脂肪酸金属塩化合物としては、前記の脂肪酸と以下の金属との塩が挙げられる。金属としては、リチウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、亜鉛、カドミウム、アルミニウム、スズ、鉛が挙げられ、好ましくは、カルシウム、亜鉛であり、特に好ましくは、カルシウムである。脂肪酸金属塩化合物として、具体例を挙げると、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、リシノール酸カルシウム、ステアリン酸ストロンチウム、ステアリン酸バリウム、ラウリン酸バリウム、リシノール酸バリウム、ステアリン酸カドミウム、ラウリン酸カドミウム、リシノール酸カドミウム、ナフテン酸カドミウム、2−エチルヘキソイン酸カドミウム、ステアリン酸亜鉛、ラウリン酸亜鉛、リシノール酸亜鉛、2−エチルヘキソイン酸、ステアリン酸鉛、ナフテン酸鉛等が挙げられ、好ましくはステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛であり、よりステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛であり、特に好ましくはステアリン酸カルシウムである。
【0094】
脂肪酸アミド化合物としては、RCONH2 で表される化合物、RCONH−CH2−NHCORで表されるメチレンビスアミド化合物、あるいはRCONH−CH2CH2−NHCORで表されるエチレンビスアミド化合物、が挙げられ、RCOOHで表されるカルボン酸化合物と、各々、アンモニア、メチレンジアミン、エチレンジアミンから得られるアミド化合物である。RCOOHで表されるカルボン酸化合物としては、前記の脂肪酸が挙げられる。脂肪酸アミド化合物としては、具体的には、パルミチルアミド、ステアリルアミド、オレイルアミド、メチレンビスステアロアミド、エチレンビスステアロアミド等が例示出来、好ましくはパルミチルアミド、ステアリルアミドであり、ステアリルアミドがさらに好ましい。
【0095】
脂肪族アルコールとしては、一価アルコールおよび多価アルコールが挙げられる。一価アルコールでは、C8 〜C32の直鎖の一価アルコールが挙げられ、具体例としては、オクチルアルコール(C8)、ノニルアルコール(C9)、デシルアルコール(C10)、ウンデシルアルコール(C11)、ラウリルアルコール(C12)、トリデシルアルコール(C13)、ミリスチルアルコール(C14)、ペンタデシルアルコール(C15)、セチルアルコール(C16)、ヘプタデシルアルコール(C17)、ステアリルアルコール(C18)、ノナデシルアルコール(C19)、エイコシルアルコール(C20)、セリルアルコール(C26)、メリシルアルコール(C30)、等が挙げられ、多価アルコールとしては、グリセリン、ソルビトール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、1、3−ブタンジオール等が挙げられる。好ましくはC8〜C20の直鎖の一価アルコール、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールであり、より好ましくはノニルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールであり、さらに好ましくはセチルアルコール、ステアリルアルコールであり、ステアリルアルコールが特に好ましい。
【0096】
このような脂肪族化合物の内、好ましくは、C11〜C22の直鎖飽和脂肪酸、ナフテン酸、オレイン酸、エルカ酸、ソルビン酸、リノール酸、リノレン酸あるいはリシノール酸(脂肪酸化合物)、ラウリン酸ステアリル、ミリスチン酸ステアリル、パルミチン酸ステアリル、ステアリン酸ブチル、ペンタエリスリトールテトラステアレート、エチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、グリセリンモノパルミテート、グリセリンモノステアレート(脂肪酸エステル化合物)、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛(脂肪酸金属塩化合物)、パルミチルアミド、ステアリルアミド(脂肪酸アミド化合物)、C8〜C20の直鎖の一価アルコール、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(脂肪族アルコール)である。
【0097】
より好ましくは、ウンデシル酸(C11)、ラウリン酸(C12)、トリデシル酸(C13)、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)、ベヘニン酸(C22)、オレイン酸、エルカ酸、あるいはソルビン酸(脂肪酸化合物)、ラウリン酸ステアリル、ミリスチン酸ステアリル、パルミチン酸ステアリル、エチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジラウレート、ポリエチレングリコールモノオレエート、グリセリンモノステアレート(脂肪酸エステル化合物)、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛(脂肪酸金属塩化合物)、パルミチルアミド、ステアリルアミド(脂肪酸アミド化合物)、ノニルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、グリセリン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール(脂肪族アルコール)である。さらに好ましくは、ミリスチン酸(C14)、パルミチン酸(C16)、ステアリン酸(C18)、ベヘニン酸(C22)(脂肪酸化合物)、ミリスチン酸ステアリル、パルミチン酸ステアリル、エチレングリコールモノステアレート、グリセリンモノステアレート(脂肪酸エステル化合物)、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛(脂肪酸金属塩化合物)、ステアリルアミド(脂肪酸アミド化合物)、セチルアルコール、ステアリルアルコール(脂肪族アルコール)であり、特に好ましくは、ステアリン酸(脂肪酸化合物)、グリセリンモノステアレート(脂肪酸エステル化合物)、ステアリン酸カルシウム(脂肪酸金属塩化合物)である。本発明の樹脂組成物に含まれる脂肪族化合物は、単独で、もしくは2種類以上を組み合わせて、使用することができる。
【0098】
本発明の光学ユニットにおいて、低アッベ数レンズ材料は、ポリカーボネート共重合体(A)に加えて5価の有機リン化合物と含有してもよい。
5価の有機リン化合物の添加によって、低アッベ数レンズ材料中に存在する微量の金属を補足、封止することが出来、金属による着色等の悪影響を抑制することが可能である。 ここで、5価の有機リン化合物は、ポリカーボネート共重合体(A)100質量部に対して、0.00005〜0.5質量部含有されることが好ましく、より好ましくは、0.0001〜0.1質量部、さらに好ましくは、0.001〜0.08質量部含有される。
【0099】
低アッベ数レンズ材料に含有される5価の有機リン化合物とは、リン酸エステル化合物、酸性リン酸エステル化合物、その他のリン化合物が含まれ、芳香族であっても脂肪族であってもよく、また該脂肪鎖は直鎖、分岐または環状であってもよい。また、該リン化合物は、ハロゲン原子、カルボキシル基、アルキルカルボニル基、アルコキシカルボニル基、アルコキシ基等で置換されていてもよい。また、これらの置換基のうち、同一あるいは異なった置換基が分子内に2個以上含まれていてもよい。
【0100】
リン酸エステル化合物の具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリトリルホスフェート、トリス(t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、ジフェニルトリルホスフェート、トリス(ブトキシエチル)ホスフェート、トリス(2−クロロエチル)ホスフェート、トリス(2−クロロメチルエチル)ホスフェート、トリス(1、3−ジクロロ−2−プロピル)ホスフェート、トリス(2、3−ジブロモプロピル)ホスフェートが挙げられる。
【0101】
酸性リン酸エステル化合物の具体例としては、ジブチルホスフェート、ジ(2−エチルヘキシル)ホスフェート、ジフェニルホスフェート、ジベンジルホスフェート、エチルアシッドホスフェート、ブチルアシッドホスフェート、ブチルピロホスフェート、2−エチルヘキシルアシッドホスフェート、オレイルアシッドホスフェート、テトラコシルアシッドホスフェート、エチレングリコールアシッドホスフェート、ブトキシエチルアシッドホスフェートが挙げられる。また、その他のリン化合物としては、エチルジエチルホスホノアセテートが挙げられる。
【0102】
低アッベ数レンズ材料に含有される5価の有機リン化合物としては、好ましくは、酸性の官能基を含まないリン酸エステル化合物であり、より好ましくは、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリプロピルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリトリルホスフェート、トリス(t−ブチルフェニル)ホスフェート、トリアリルホスフェート、ジフェニルトリルホスフェート、および、エチルジエチルホスホノアセテートであり、さらに好ましくは、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリトリルホスフェート、トリス(t−ブチルフェニル)ホスフェート、ジフェニルトリルホスフェート、および、エチルジエチルホスホノアセテートであり、特に好ましくは、トリメチルホスフェートおよびエチルジエチルホスホノアセテートである。
【0103】
本発明の光学ユニットにおいて、低アッベ数レンズ材料の別の1つの態様は、下記一般式(2)および一般式(3)で表される構造単位を有するポリカーボネート共重合体(B)を含む。
【化22】


【化23】


式中、R3はそれぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、R4およびR5はそれぞれ独立に水素原子またはアルキル基を表し、R6はそれぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、lはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、jはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。
ここで、一般式(2)で表される構造単位については、ポリカーボネート共重合体(A)について記載したのと同様である。
【0104】
一般式(3)で表される構造単位において、R4およびR5はそれぞれ独立に、水素原子またはアルキル基を表す。R4およびR5の具体例としては、水素原子、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、トリフルオロメチル基などが例示される。
【0105】
該置換基R4およびR5は、好ましくは、水素原子または炭素数1〜10の直鎖、分岐または環状のアルキル基であり、より好ましくは、水素原子、炭素数1〜4の直鎖のアルキル基であり、該置換基R4およびR5として、メチル基は特に好ましい。
【0106】
6はそれぞれ独立に、アルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、好ましくは、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい直鎖、分岐または環状のアルコキシ基あるいはハロゲン原子を表し、好ましくは、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルキル基、置換基を有していてもよい炭素数1〜20の直鎖、分岐または環状のアルコキシ基またはハロゲン原子を表す。R6のアルキル基またはアルコキシ基中の置換基としては、例えば、アルコキシ基、アルコキシアルコキシ基、シクロアルキル基、ヘテロ原子含有のシクロアルキル基、シクロアルコキシ基、ヘテロ原子含有のシクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アリールオキシアルコキシ基、ハロゲン原子等が例示される。
【0107】
該置換基R6の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、2−エチルヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、4−tert−ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基、テトラヒドロフルフリル基、2−メトキシエチル基、2−エトキシエチル基、2−n−ブトキシエチル基、3−メトキシプロピル基、3−エトキシプロピル基、3−n−プロポキシプロピル基、3−n−ブトキシプロピル基、3−n−ヘキシルオキシプロピル基、2−メトキシエトキシエチル基、2−エトキシエトキシエチル基、2−フェノキシメチル基、2−フェノキシエトキシエチル基、トリフルオロメチル基、クロロメチル基、2−クロロエチル基、3−クロロプロピル基、2,2,2−トリクロロエチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、sec−ブトキシ基、n−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシル基、n−オクチルオキシ基、n−デシルオキシ基、n−ドデシルオキシ基、n−テトラデシルオキシ基、n−オクタデシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、4−tert−ブチルシクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロオクチルオキシ基、シクロヘキシルメトキシ基、シクロヘキシルエトキシ基、2−メトキシエトキシ基、2−エトキシエトキシ基、2−n−ブトキシエトキシ基、3−メトキシプロポキシ基、3−エトキシプロポキシ基、3−n−プロポキシプロポキシ基、3−n−ブトキシプロポキシ基、3−n−ヘキシルオキシプロポキシ基、2−メトキシエトキシエトキシ基、2−フェノキシメトキシ基、2−フェノキシエトキシエトキシ基、クロロメトキシ基、2−クロロエトキシ基、3−クロロプロポキシ基、2,2,2−トリクロロエトキシ基、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。
【0108】
該置換基R6 は、好ましくは、炭素数1〜10の無置換の直鎖または分岐のアルキル基、炭素数1〜10の無置換の直鎖または分岐のアルコキシ基あるいはフッ素原子、塩素原子であり、より好ましくは、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、イソブトキシ基、tert−ブトキシ基、フッ素原子または塩素原子であり、置換基R6として、メチル基、フッ素原子は特に好ましい。一般式(3)で表される構造単位において、jはそれぞれ独立に0〜2の整数を表し、好ましくは、0または1である。jとして、整数0は特に好ましい。一般式(3)で表される繰り返し構造単位の中でも、下記式(3A)で表される繰り返し構造単位は特に好ましい。
【化24】


式中、R4、R5、R6およびjは上記と同様である。
【0109】
本発明のポリカーボネート共重合体(B)は、下記一般式(2a)で表されるジヒドロキシ化合物と下記一般式(3a)で表されるジヒドロキシ化合物を、カーボネート前駆体と作用させ共重合させることにより得ることができる。
【化25】


【化26】


式中、R3、R4、R5、R6、lおよびjは上記と同様である。
一般式(2a)で表されるジヒドロキシ化合物は、ポリカーボネート共重合体(A)について上記したのと同様である。
【0110】
一方、ポリカーボネート共重合体(B)のもう一つの原料である一般式(3a)で表されるジヒドロキシ化合物としては、以下に示す化合物が例示されるが、但し、本発明はこれらに限定されるものではない。
α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−2−エチルフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−2−n−プロピルフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−2−イソプロピルフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−2−n−ブチルフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−2−イソブチルフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−2−tert−ブチルフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−2−n−ペンチルフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−2−イソペンチルフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−2−n−ヘキシルフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−2−n−オクチルフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−2−エトキシフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−2−n−プロポキシフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−2−イソプロポキシフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−2−n−ブトキシフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−3−ブロモフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−3−ヨードフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロ−2−メチルフェニル)−1,3−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジエチルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−2−メチルフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−2−メトキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−2−エトキシフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−3−ニトロフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−3−フルオロフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシ−3−クロロフェニル)−1,4−ジイソプロピルベンゼン、α,α’−ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3−ジエチルベンゼン。
【0111】
一般式(3a)で表されるジヒドロキシ化合物は公知の方法、例えば、特公平8−13770号公報などに記載の方法、すなわち、イオン交換樹脂などの酸触媒の存在下に、α,α’−ジヒドロキシジイソプロピルベンゼン類やジイソプロペニルベンゼン類などの化合物とフェノール類とを反応させる方法などにより、好適に製造される。
【0112】
ポリカーボネート共重合体(B)は、公知の製造方法、具体的にはポリカーボネート共重合体(A)について上記した方法と同様の方法で製造することができる。
ポリカーボネート共重合体(B)は、上記一般式(2)で表される構造単位と、上記一般式(3)で表される構造単位を含むポリカーボネート共重合体である限り特に限定されない。したがって、ランダム共重合体、交互共重合体あるいはブロック共重合体のいずれであってもよい。
【0113】
ポリカーボネート共重合体(B)は、一般式(2)で表される構造単位および一般式(3)として、それぞれ異なる複数の構造単位を含んでもよい。
ポリカーボネート共重合体(B)は、耐熱性、機械物性等の諸物性のバランスを考慮すると、一般式(2)および一般式(3)で表される構造単位中、一般式(2)で表される構造単位の割合は、好ましくは、5〜90モル%であり、より好ましくは、10〜80モル%であり、さらに好ましくは、20〜70モル%である。
【0114】
また、ポリカーボネート共重合体(B)は、一般式(2)で表される構造単位および一般式(3)で表される構造単位以外に、他の構造単位を含んでもよい。他の構造単位を含有する場合、全構造単位中一般式(2)および一般式(3)で表される構造単位の割合は、本発明の所望の効果を損なわない範囲であれば、特に制限されるものではないが、通常、50モル%以上であり、好ましくは、70モル%以上であり、より好ましくは、90モル%以上である。本発明の所望の効果を最大限に得るためには、ポリカーボネート共重合体(B)は、一般式(2)および一般式(3)で表される構造単位のみで構成されることが、特に好ましい。
ポリカーボネート共重合体(B)において、一般式(2)で表される構造単位および一般式(3)で表される構造単位以外に含んでもよい他の構造単位は、ポリカーボネート共重合体(A)に含んでもよい他の構造単位として例示したものから広く選択することができる。
【0115】
ポリカーボネート共重合体(B)において、末端基は、ヒドロキシ基、ハロホーメート基、炭酸エステル基等の反応性の末端基であってもよく、また、ポリカーボネート共重合体(A)と同様に分子量調節剤で封止された不活性な末端基であってもよい。ポリカーボネート共重合体(B)中の末端基の量は特に制限はないが、通常、構造単位の総モル数に対して、0.001〜10モル%であり、好ましくは、0.01〜5モル%であり、より好ましくは、0.1〜3モル%である。
【0116】
ポリカーボネート共重合体(A)のところでも述べたように、発明の光学ユニットにおいて、低アッベ数レンズ材料は、極限粘度が0.25〜0.50であることが好ましく、より好ましくは0.25〜0.35である。したがって、ポリカーボネート共重合体(B)は、極限粘度が上記範囲であることが好ましい。
このため、ポリカーボネート共重合体(B)は、GPC(ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー)で測定する標準ポリスチレン換算の分子量としての質量平均分子量が、5000〜200000であり、好ましくは、10000〜150000であり、より好ましくは、15000〜120000である。また、質量平均分子量と数平均分子量の比として表される多分散性インデックスとしては、特に限定されるものではないが、好ましくは、1.5〜20.0であり、より好ましくは、2.0〜15.0であり、さらに好ましくは、2.0〜10.0である。
【0117】
質量平均分子量および多分散性インデックスが上記の範囲であるポリカーボネート共重合体(B)を得るためには、本発明のポリカーボネート共重合体(B)を重合して製造する際に、分子量を調節する目的で分子量調節剤の存在下に重合を行うことは好ましいことである。ここで分子量調節剤としては、ポリカーボネート共重合体(A)について例示したものから広く選択することができる。中でもフェノールまたはp−tert−ブチルフェノールが好ましい。
極限粘度が上記範囲のポリカーボネート共重合体(B)を得るためには、ジオール成分に対するモル比で0.001〜10モル%となる量で分子量調節剤を添加する。分子量調節剤としてフェノールを使用する場合、ジオール成分に対するモル比で0.01〜5モル%となる量で添加することが好ましい。一方、分子量調節剤としてp−tert−ブチルフェノールを使用する場合、ジオール成分に対するモル比で0.01〜10モル%となる量で添加することが好ましい。
【0118】
ポリカーボネート共重合体(B)を含有する場合においても、低アッベ数レンズ材料は、ポリカーボネート共重合体(B)に加えて、エポキシ化合物、亜リン酸エステル化合物、脂肪族化合物、5価の有機リン化合物のうち、いずれから1つをさらに含有してもよい。なお、エポキシ化合物と亜リン酸エステル化合物については、これらを同時に含有してもよい。
エポキシ化合物、亜リン酸エステル化合物、脂肪族化合物および5価の有機リン化合物の具体例については、ポリカーボネート(A)のところで記載したのと同様である。
【0119】
低アッベ数レンズ材料がエポキシ化合物を含有する場合、ポリカーボネート共重合体(B)100質量部に対して0.0005〜5質量部のエポキシ化合物を含有することが好ましい。より好ましくは、ポリカーボネート共重合体(B)100質量部に対して0.001〜3質量部のエポキシ化合物を含有し、さらに好ましくは、0.01〜2質量部である。低アッベ数レンズ材料が亜リン酸エステル化合物を含有する場合、ポリカーボネート共重合体(B)100質量部に対して、0.0005〜5質量部含有することが好ましく、より好ましくは、0.001〜3質量部、さらに好ましくは、0.01〜2質量部含有する。低アッベ数レンズ材料が脂肪族化合物を含有する場合、ポリカーボネート共重合体(B)100質量部に対して、0.0005〜5質量部含有することが好ましく、より好ましくは、0.001〜3質量部、さらに好ましくは、0.01〜2質量部含有する。低アッベ数レンズ材料が5価の有機リン化合物を含有する場合、ポリカーボネート共重合体(B)100質量部に対して、0.00005〜0.5質量部含有することが好ましく、より好ましくは、0.0001〜0.1質量部、さらに好ましくは、0.001〜0.08質量部含有する。
【0120】
本発明の光学ユニットにおいて、低アッベ数レンズ材料の別の1つの態様は、下記一般式(4)、(5)および(6)で表される構造単位を有し、該一般式(4)の構造単位が全構造単位中5〜50モル含有するポリカーボネート共重合体(C)を含む。
【化27】


【化28】


【化29】

【0121】
上記したポリカーボネート共重合体(C)は、上記一般式(4)で表される構造単位を誘導する6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンと、上記一般式(5)で表される構造単位を誘導する4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール及び上記一般式(6)で表される構造単位を誘導する4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノールを、炭酸エステル形成性化合物と反応させることで得られる。
【0122】
炭酸エステル形成性化合物としては、例えばホスゲンや、ジフェニルカーボネート、ジ−p−トリルカーボネート、フェニル−p−トリルカーボネート、ジ−p−クロロフェニルカーボネート、ジナフチルカーボネートなどのビスアリルカーボネートが挙げられる。これらの化合物は2種類以上併用して使用することも可能である。
【0123】
上記したポリカーボネート共重合体(C)は、ビスフェノールAからポリカーボネートを製造する際に用いられている公知の方法、例えばビスフェノール類とホスゲンとの直接反応(ホスゲン法)、あるいはビスフェノール類とビスアリールカーボネートとのエステル交換反応(エステル交換法)などの方法に用いて上記の原料から合成することができる。
【0124】
前者のホスゲン法においては、通常酸結合剤および溶媒の存在下に、上記一般式(4)で表される構造単位を誘導する6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、上記一般式(5)で表される構造単位を誘導する4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール及び上記一般式(6)で表される構造単位を誘導する4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノールを、ホスゲンと反応させる。この酸結合剤としては、例えば、ピリジンや、水酸化ナトリウム及び水酸化カリウムなどのアルカリ金属の水酸化物などが用いられる。また、溶媒としては、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、クロロベンゼン及びキシレンなどが用いられる。さらに、縮重合反応を促進するために、トリエチルアミンのような第三級アミン触媒および第四級アンモニウム塩などの触媒が使用される。また、分子量の調節には、フェノール、p−t−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、長鎖アルキルフェノール等の一官能基化合物を分子量調節剤として加える。更に、所望に応じ亜硫酸ナトリウム、ハイドロサルファイトなどの酸化防止剤や、フロログルシン、イサチンビスフェノール、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼンなど分岐化剤を小量添加してもよい。反応は、通常0〜150℃、好ましくは5〜40℃の範囲とするのが適当である。反応時間は反応温度によって左右されるが、通常0.5分〜10時間、好ましくは1分〜2時間である。また、反応中は、反応系のpHを10以上に保持することが望ましい。
【0125】
一方、後者のエステル交換法においては、上記一般式(4)で表される構造単位を誘導する6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、上記一般式(5)で表される構造単位を誘導する4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール及び上記一般式(6)で表される構造単位を誘導する4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノールを、ビスアリールカーボネートと混合し、減圧下で高温において反応させる。この時、p−t−ブチルフェノール、p−クミルフェノール、長鎖アルキルフェノール等の一官能基化合物を分子量調節剤として加えてもよい。反応は、通常150〜350℃、好ましくは200〜300℃の範囲の温度において行われ、また減圧度は最終的には1mmHg以下にすることが好ましく、エステル交換反応により生成した該ビスアリールカーボネートから由来するフェノール類を系外へ留去させる。反応時間は反応温度や減圧度などによって左右されるが、通常1〜6時間程度である。反応は窒素やアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。また、所望に応じ、酸化防止剤や分岐化剤を添加して反応を行ってもよい。
【0126】
ホスゲン法とエステル交換法では、上記一般式(4)で表される構造単位を誘導する化合物、上記一般式(5)で表される構造単位を誘導する化合物及び上記一般式(6)で表される構造単位を誘導する化合物の反応性を考慮した場合、ホスゲン法の方が好ましい。
【0127】
本発明においてホスゲン法を採用する場合は、ホスゲン吹き込み終了後に反応を効率よく行うため第四級アンモニウム塩を少量添加することが好ましい。第四級アンモニウム塩としては、具体的には、テトラメチルアンモニウムクロライド、トリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライド、テトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラ−n−ブチルアンモニウムアイオダイドなどが例示される。これらのうちトリメチルベンジルアンモニウムクロライド、トリエチルベンジルアンモニウムクロライドが好ましい。この第四級アンモニウム塩は、使用される全ビスフェノール類に対して、一般に0.0005〜5mol%使用されることが好ましい。第4級アンモニウム塩の添加後、3〜10分後に、トリエチルアミンなどの3級アミン及び分子量調節剤を添加して重合させることが好ましい。三級アミンの添加量は、全ビスフェノール類に対して、0.01〜1.0mol%である。分子量調節剤の添加量については後述する。
【0128】
成形性、耐熱性、低複屈折性を考慮すると、ポリカーボネート共重合体(C)における6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンの使用量が、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンと4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノールの合計量に対して、全構造単位中10〜90mol%が好ましい。6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンの使用量が10mol%未満の場合、これを用いて製造されるレンズが所望の低複屈折特性を発現することができない。一方、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンの使用量が90mol%超であると、ポリカーボネート共重合体(C)の溶融温度が高くなるため射出成形が困難となる。また、射出成形時の温度が高くなることから、得られる成形品が強度に劣る。
【0129】
ポリカーボネート共重合体(A)のところでも述べたように、本発明の光学ユニットにおいて、低アッベ数レンズ材料は、極限粘度が0.25〜0.50であることが好ましく、より好ましくは0.25〜0.35である。したがって、ポリカーボネート共重合体(C)は、極限粘度が上記範囲であることが好ましい。
ポリカーボネート共重合体(C)の極限粘度は、上記したホスゲン法およびエステル交換法のいずれの場合においても、所望量の分子量調節剤と添加することで調節することができる。ここで分子量調節剤としては、ポリカーボネート共重合体(A)について例示したものから広く選択することができる。中でもフェノールまたはp−tert−ブチルフェノールが好ましい。
極限粘度が上記範囲のポリカーボネート共重合体(C)を得るためには、ジオール成分に対するモル比で0.01〜10モル%となる量で分子量調節剤を添加する。分子量調節剤は、好ましくはジオール成分に対するモル比で0.1〜8モル%となる量で添加する。
【0130】
高解像度用途の光学ユニットのレンズに要求される成形性、耐熱性、低複屈折性の観点から、上記一般式(4)で表される構造単位は、ポリカーボネート共重合体(C)の全構造単位中5〜50mol%である。一般式(4)で表される構造単位が5mol%未満では、複屈折性改善効果は小さく、50mol%を越えるとガラス転移温度上昇により成形条件が狭くなるため成形不良や分子配向による複屈折増加をおこしやすい。
【0131】
更に、レンズの成形性を考慮すると、上記一般式(5)で表される構造単位は、ポリカーボネート共重合体(C)の全構造単位中20〜80mol%が好ましい。一般式(5)で表される構造単位が20mol%未満では、成形性が低下し、80mol%を超えると流動性が大きくなりすぎて貼り付き等の成形不良が起こりやすい。
【0132】
本発明の光学ユニットにおいて、低アッベ数レンズ材料の別の1つの態様は、下記一般式(4)、(5)および(7)で表される構造単位を有し、該一般式(4)の構造単位が全構造単位中5〜50モル含有するポリカーボネート共重合体(D)を含む。
【化30】


【化31】


【化32】

【0133】
上記したポリカーボネート共重合体(D)は、上記一般式(4)で表される構造単位を誘導する6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンと、上記一般式(5)で表される構造単位を誘導する4,4’−[1,3−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール及び上記一般式(7)で表される構造単位を誘導する2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを、炭酸エステル形成性化合物と反応させることで得られる。したがって、4,4’−[1,4−フェニレンビス(1−メチルエチリデン)]ビスフェノールの代わりに2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンを使用する点以外は、上記したポリカーボネート共重合体(C)を製造する手順と同様に実施すればよい。
【0134】
ポリカーボネート共重合体(A)のところでも述べたように、本発明の光学ユニットにおいて、低アッベ数レンズ材料は、極限粘度が0.25〜0.50であることが好ましく、より好ましくは0.25〜0.35である。したがって、ポリカーボネート共重合体(D)は、極限粘度が上記範囲であることが好ましい。
ポリカーボネート共重合体(D)の極限粘度は、上記したホスゲン法およびエステル交換法のいずれの場合においても、所望量の分子量調節剤を添加することで調節することができる。ここで分子量調節剤としては、ポリカーボネート共重合体(A)について例示したものから広く選択することができる。中でもフェノールまたはp−tert−ブチルフェノールが好ましい。
極限粘度が上記範囲のポリカーボネート共重合体(D)を得るためには、ジオール成分に対するモル比で0.01〜10モル%となる量で分子量調節剤を添加する。分子量調節剤は、好ましくはジオール成分に対するモル比で0.1〜8モル%となる量で添加する。
【0135】
本発明の光学ユニットにおいて、低アッベ数レンズ材料の別の1つの態様は、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、及び3官能以上のフェノール性水酸基を有する化合物と、炭酸エステル形成化合物とを反応させてなるポリカーボネート共重合体(E)を含有する。
【0136】
炭酸エステル形成化合物としては、ポリカーボネート共重合体(C)について上記したものを広く用いることができる。また、ポリカーボネート共重合体(E)を製造する際に用いる方法としては、ポリカーボネート共重合体(C)について上記した方法、すなわちホスゲン法、エステル交換法等を使用することができる。ホスゲン法またはエステル交換法によるポリカーボネート共重合体の製造手順に関して、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン及び4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノールに加えて、3官能以上のフェノール性水酸基を有する化合物を使用する点以外は、ポリカーボネート共重合体(C)について記載したのと同様である。
【0137】
分岐化剤として作用する3官能以上のフェノール性水酸基を有する化合物としては、フロログルシン、2,4,4’−トリヒドロキシベンゾフェノン、2,4,4’−トリヒドロキシフジェニルエーテル、2,2−ビス(2,4−ジヒドロキシフェニル)プロパン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシジフェニルメタン、2,4,4’−トリヒドロキシジフェニルメタン、2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2,6−ジメチル−ヘプテン−3、2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−4,6−ジメチル−ヘプタン−2、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェノール、2,6−ビス(2−ヒドロキシ−5−イソプロピルベンジル)−4−イソプロピルフェノール、テトラキス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、α,α’,α”−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1,3,5−トリイソプロピルベンゼン、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン、1,1,1−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3−メチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3,5−ジメチル−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3−クロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3,5−ジクロロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3,5−ジブロモ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3−フルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,1−トリス(3,5−ジフルオロ−4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−1−フェニルメタン等が例示される。そのうち、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、及び2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2,6−ジメチル−3−ヘプテンが反応性や取り扱いの容易さから最も好ましい。
【0138】
さらに、分岐化剤となる3官能以上のフェノール性水酸基を有する化合物は、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンと、4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノールとの合計100モル部に対して、3官能以上のフェノール性水酸基を有する化合物を0.2〜3.0モル部添加することが好ましい。0.2モル部未満では流動性改善効果が低く、3.0モル部を超えると耐衝撃性が劣ってくる。
【0139】
上記した低アッベ数レンズ材料は、さらに紫外線吸収剤を含むことが好ましい。上記した低アッベ数レンズ材料は、高アッベ数材料の好適例として後に示す脂環式ポリオレフィン樹脂と比較するとやや耐光性に劣る。低アッベ数レンズ材料に紫外線吸収剤を含有させることで、低アッベ数レンズの耐光性が改善される。これにより、本発明の光学ユニットは、その優れた光学特性が長期にわたって発揮される。
【0140】
低アッベ数レンズ材料に含有される紫外線吸収剤としては、プラスチック材料の紫外線吸収剤として使用されるものを広く含み、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、サリチル酸系またはシアノアクリレート系の紫外線吸収剤のいずれも使用することができる。ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ・tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ・tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ・tert−アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2’−メチレンビス{4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール}、2−{2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル}ベンゾトリアゾール、2(2’−ヒドロキシ−5’−メタアクリロキシフェニル)−2H−ベンゾトリアゾールが挙げられる。ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の具体例としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホニックアシッド、2−ヒドロキシ−4−オクトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4,4’−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)が挙げられる。サリチル酸系紫外線吸収剤としては、フェニルサリシレート、p−tert−ブチルフェニルサリシレート、p−オクチルフェニルサリシレートが挙げられる。シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、2−エチルヘキシル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、エチル−2−シアノ−3,3’−ジフェニルアクリレートが挙げられる。
【0141】
紫外線吸収剤を含有させる量は、紫外線吸収剤の種類によって異なるが、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤の場合、低アッベ数レンズ材料の合計質量100質量部に対して、0.01〜1質量部含有させることが好ましく、より好ましくは0.05〜0.5質量部含有させる。低アッベ数レンズ材料が紫外線吸収剤を上記の範囲で含有すれば、該レンズ材料を用いて作製される低アッベ数レンズの耐光性を改善する効果が十分である。
【0142】
また、射出成形時に必要な安定性や離型性を確保するため、所望に応じて、ヒンダードフェノール系やホスファイト系酸化防止剤;シリコン系、脂肪酸エステル系、脂肪酸系、脂肪酸グリセリド系、密ろう等天然油脂などの滑剤や離型剤;ポリアルキレングリコール、脂肪酸グリセリド等帯電防止剤などを低アッベ数レンズ材料に含有させてもよい。
【0143】
上記した低アッベ数レンズ材料は、高解像度用途の光学ユニットのレンズ材料として好適な以下の特性を有している。
低複屈折
上記した低アッベ数レンズ材料は、ビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂のような、低解像度用途の光学ユニットのレンズ材料として従来使用されているポリカーボネート樹脂に比べて、複屈折が少ないことを特徴とする。例えば、光学面の半径9mm、中心部の厚さ2.5mmのレンズを射出成形した場合に、ビスフェノールA型のポリカーボネート樹脂のレンズでは、レタデーションが200〜400nm程度であるのに対して、上記した低アッベ数レンズ材料で作製したレンズは、レタデーションが0〜120nm程度である。
【0144】
低吸水性
上記した低アッベ数レンズ材料は低吸水性であり、具体的には、JIS K7209に従って測定した飽和吸水率が0.3%以下である。
このような特性により、湿度による屈折率変化が生じにくく、レンズの寸法安定性にも優れる。
【0145】
高流動性
上記した低アッベ数レンズ材料は、極限粘度が0.25〜0.5dl/gであることが好ましい。低アッベ数レンズ材料の極限粘度が上記の範囲であれば、該レンズ材料が流動性に優れており、射出成形によりレンズを作製する場合に好ましい。
このような特性により、レンズを射出成形する際の成形性に優れている。よって、成形不良が生じることがなく、しかも様々な構造を有するレンズに成形することができる。
【0146】
低アッベ数レンズ材料は、極限粘度が0.25〜0.35dl/gであることがより好ましい。低アッベ数レンズ材料の極限粘度が0.25〜0.35dl/gであると、低解像度用途の光学ユニットのレンズ材料として従来使用されているポリカーボネート樹脂よりも低温、具体的にはポリマー温度235〜260℃で射出成形することができる。これにより、射出成形の際に熱劣化物が発生することが防止され、長期間にわたって連続的に射出成形することが可能となる。なお、本明細書において、ポリマー温度とは、射出成型機のノズルやシリンダ部分における原料ポリマーの温度を意味する。
【0147】
さらに、低アッベ数レンズ材料の極限粘度が0.25〜0.35dl/gであれば、ポリマー温度235〜260℃において、射出成形において通常実施されるせん断速度100〜1000(S-1)におけるせん断速度と粘度の関係がニュートン流体に近い特性を有する。
また、従来のポリカーボネート樹脂よりも低温で射出成形されるため、レンズ材料の熱劣化が軽減されている。レンズ材料の熱劣化は、レンズの着色の原因となるため、熱劣化の軽減は光学ユニット、特に高解像度用途の光学ユニットのレンズにとって好ましい。
さらにまた、より低温で射出成形することにより、レンズ成形に要するエネルギーが少なくて済み、レンズ製造、ひいては光学ユニット製造における歩留まりにも優れている。
【0148】
低アッベ数レンズ材料の極限粘度を0.25〜0.5dl/g、好ましくは0.25〜0.35dl/gとするには、上記したようにポリカーボネート共重合体(A)〜(E)を製造する際に分子量調節剤を所望量添加すればよい。
【0149】
アッベ数
上記した低アッベ数レンズ材料は、アッベ数が23〜35程度であり、アッベ数45〜60の高アッベ数レンズ材料と組み合わせて色収差を補正するのに好ましい。
【0150】
高アッベ数レンズ材料は、アッベ数45〜60で、レンズ等光学用途で使用されるプラスチック材料である。したがって、複屈折および吸水性が低く、寸法安定性に優れた透明なプラスチック材料であることが好ましい。このようなプラスチック材料としては、メタクリル樹脂(PMMA)、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート、オレフィン・マレイミド交互共重合体、ポリ(1,3−シクロヘキサンジエン)、ポリシクロヘキサン、脂環式ポリオレフィン樹脂等が挙げられる。また、高アッベ数レンズ材料としては、溶融時の流動性を高めるために、酢酸に加えて、2−エチルヘキサン酸、酪酸のような他の酸でエステル化された変性セルロースを使用することができる。このような変性セルロースとしては、セルロースの水酸基がエステル化された基として、アセチル基をモル比で2.43、2−エチルヘキサノイル基またはブチリル基をモル比で0.54の割合で含む変性セルロースが挙げられる。
【0151】
これらの中でも、高解像度用途の光学ユニットのレンズとして好ましい特性を有することから脂環式ポリオレフィン樹脂が好ましい。脂環式ポリオレフィン樹脂は、嵩高い脂環式構造から分子骨格が形成されており、PMMAと同様に複屈折が低く、しかも低吸水性および耐熱性という点ではPMMAよりもはるかに優れている。
【0152】
このような脂環式ポリオレフィン樹脂としては、具体的には特開平5−279554号、特表2001−072870号、特開平6−107735号、特開平6−136035号、および特開平09−263627号に開示されるノルボルネン系の脂環式ポリオレフィン樹脂、特開2004−51949号、特開2003−313177号、特開2003−327630号、特開2004−51949号、特願2002−293492号の開示されるメタクリル基を側鎖にもつノルボルネン誘導体をメタロセン触媒等で開環重合させた後、水素化して得られる脂環式ポリオレフィン樹脂、特開2001−26693号、特開2001−26682号、特開2003−321591号、特開2003−313247号、特開2002−332312号、特開2002−275314号、特開2002−105131号に開示されるエチレンとシクロオレフィンの共重合体からなる脂環式ポリオレフィン樹脂が挙げられ、市販品としては、日本ゼオン社製のゼオネックス(ZEONEX)TM、JSR株式会社製のアートン(ARTON)TM、三井化学株式会社製のアペル(APEL)TMが挙げられる。
【0153】
上記した脂環式ポリオレフィン樹脂は、高解像度用途の光学ユニットのレンズ材料として好適な以下の特性を有している。
低複屈折
上記した脂環式ポリオレフィン樹脂は、複屈折が少ないことを特徴とする。具体的には、この材料を用いて射出成形したレンズ(光学面の半径が6.4mm、中心部厚さ2.9mm)は、レタデーションが0〜150nm程度である。この特性により、色収差を補正するために、上記した低アッベ数レンズと組み合わせて使用しても解像度に悪影響を及ぼすことがない。
【0154】
低吸水性
上記した脂環式ポリオレフィン樹脂は、吸水性が非常に低いことを特徴とする。具体的には、具体的には、JIS K7209に従って測定した飽和吸水率が0.01%未満である。このような特性により、湿度による屈折率変化が生じにくく、レンズの寸法安定性にも優れる。
【0155】
低光学弾性係数
上記した脂環式ポリオレフィン樹脂は、光学弾性係数が低いことを特徴とする。具体的には、光学弾性係数が7.0×10-13cm2/dyne以下である。
光学弾性係数の低い材料を用いて射出成形した成形体は、光学弾性係数が高い材料から射出成形した成形体と比較した場合、成形体に内在する分子の歪が同程度であったとしても、複屈折が成形体に現れにくい特性を有する。従って、光学弾性係数の低い材料は、複屈折の少ない成形体を得るうえで好ましい。
【0156】
本発明の光学ユニットは、高アッベ数レンズおよび低アッベ数レンズを少なくとも1つ備えていればよく、図1に示した光学ユニット1のように、高アッベ数レンズ2および低アッベ数レンズ3を1つずつ備えたものに限定されない。高解像度用途の光学ユニットでは、複数、例えば3枚以上の結像レンズを組み合わせて使用することで、所望の解像力や精度を達成している。本発明の光学ユニットは、全体として色収差が補正されるように光学設計されるのであれば、高アッベ数レンズまたは低アッベ数レンズのうち、いずれか一方が2枚以上であってもよく、さらに両者とも2枚以上であってもよい。図3に本発明の光学ユニットの別の1実施形態を示した概念図である。図3に示す光学ユニット1’において、レンズ3’は、上記したポリカーボネート材料を射出成形して得られるアッベ数23〜35程度の低アッベ数レンズである。一方、レンズ2a,2bおよび2cは、脂環式ポリオレフィン樹脂等から作製されるアッベ数45〜60の高アッベ数レンズである。すなわち、図3に示す光学ユニット1’は、1枚の低アッベ数レンズ3’と、3枚の高アッベ数レンズ2a,2bおよび2cとで構成されている。
【0157】
光学ユニットが3枚以上のレンズを有する場合、高アッベ数レンズ2および低アッベ数レンズ3に加えて、これらとは異なるレンズ(以下、「他のレンズ」という。)を有してもよい。本発明の光学ユニットが他のレンズを含む場合、他のレンズの種類、数および配置は、光学ユニットの光学特性を損なわない限り特に限定されない。したがって、高アッベ数レンズ2と低アッベ数レンズ3との間に他のレンズを配置してもよい。但し、光学設計の点から、高アッベ数レンズ2と低アッベ数レンズ3とは隣接して配置されることが好ましい。
【0158】
また、本発明の光学ユニットにおいて、高アッベ数レンズおよび低アッベ数レンズは、所望の特性を与えるための構造を有してもよい。このような構成としては、具体的には、例えば反射防止膜、ハードコート、汚れ防止皮膜、防湿皮膜、または特定の波長の光線、例えば赤外線や紫外線を吸収する光線吸収膜もしくはこれらの光線をカットするフィルタ等が挙げられる。上記したように、低アッベ数レンズ材料は、高アッベ数レンズ材料と比較するとやや耐光性に劣る。このため、低アッベ数レンズに紫外線吸収膜や紫外線カット用のフィルタを設けることは、低アッベ数レンズの耐光性を改善するのに好ましい。
【0159】
紫外線吸収膜としては、具体的には例えば、特開平5−113665号、特開平10−219231号、特開平11−185502号、特開2000−57802号に記載されているものが挙げられる。
【0160】
反射防止膜は、無機材料または有機材料を用いて形成され、膜構成としては、単層であってもよく、または多層であってもよい。さらにまた、無機材料の膜と有機材料の膜との多層構造であってもよい。反射防止膜は、光学ユニットを構成するレンズの一面側又は両面に設けることができる。両面に設ける場合、両面の反射防止膜は、同じ構成であっても別の構成であっても良い。例えば、一方の面の反射防止膜を多層構造とし、他方の面側の反射防止膜を簡略化して単層構造とすることも可能である。
【0161】
無機材料としては、SiO2、SiO、ZrO2、TiO2、TiO、Ti23、Ti25、Al23、Ta25、CeO2、MgO、Y23、SnO2、MgF2、WO3等が挙げられ、これらを単独でまたは2種以上を併用して用いることができる。これらの中でも、レンズがプラスチック製のレンズであるので、低温で真空蒸着が可能なSiO2、ZrO2、TiO2、Ta25が好ましい。
無機材料で形成される多層膜としては、レンズ側からZrO2層とSiO2層の合計光学的膜厚がλ/4、ZrO2層の光学的膜厚がλ/4、最表層のSiO2層の光学的膜厚がλ/4の、高屈折率材料層と低屈折率材料層とを交互に成膜する積層構造が例示される。ここで、λは設計波長であり、通常520nmが用いられる。最表層は、屈折率が低く、かつ反射防止膜に機械的強度を付与できることからSiO2とすることが好ましい。
無機材料で反射防止膜を形成する場合、成膜方法は例えば真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、CVD法、飽和溶液中での化学反応により析出させる方法等を採用することができる。
【0162】
有機材料としては、例えばFFP(テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、ETFE(エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体)等を挙げることができ、レンズ材料やハードコート膜(有する場合)の屈折率を考慮して選定される。成膜方法は、真空蒸着法の他、スピンコート法、ディップコート法などの量産性に優れた塗装方法で成膜することができる。
ハードコート層としては、公知の紫外線硬化もしくは電子線硬化のアクリル系もしくはエポキシ系の樹脂を用いることができる。
汚れ防止膜としては、含フッ素有機重合体のような撥水撥油性材料を使用することができる。
【0163】
防湿皮膜としては、透明性が高く、透湿性の高い材料を広く使用することができ、無機材料であってもよく、または有機材料であってもよい。
好適な無機材料の一例として、SiO2 、SiO、ZrO2、TiO2、TiO、Ti23、Al23、Ta25、CeO2、MgO、Y23、SnO2、MgF2、WO3、InとSnの混合酸化物からなる混合物が挙げられる。
これら無機材料で防湿皮膜を形成する場合、できるだけ緻密な構造を有し、かつ目的とする波長の光線の吸収が少ないことが好ましい。このため、上記の無機材料の中でも、SiO2、SiOのようなケイ素酸化物からなるガラス質膜であるのが好ましい。
【0164】
無機材料で防湿皮膜を形成する場合、膜厚は10nm〜1000nm(1μm)であるのが好ましい。この膜厚がこのような範囲であれば、防湿性能に影響を与えるピンホールの数が少ないからである。すなわち、無機材料で形成される防湿皮膜の膜厚を上記範囲に限定する理由は、膜厚が、10nmより薄いとピンホールの発生の懸念があるし、また、1000nmより厚くしても、防湿性という観点からは、その寄与は最早少ないし、膜厚を厚くすると、生産性が低下する、特に乾式成膜法では生産性が低下するし、また、残留応力によりクラックが入りやすくなるからである。
【0165】
無機材料で防湿皮膜を形成する場合、形成方法には、特に限定は無く、真空蒸着、スパッタリング、イオンプレーティング、CVD(Chemical Vapor Deposition)等の各種の乾式成膜法や、ゾル−ゲル法などの各種の湿式成膜法が利用可能であり、形成する防湿皮膜の組成や膜厚等に応じて、適宜、選択すればよい。特に、乾式成膜法による防湿皮膜の膜厚は、上述した10nm〜1μmであるのがより好ましい。この理由は、上記限定理由がより顕著だからである。
さらに、ゾル−ゲル法などの湿式の成膜法を利用する際における溶液の塗布方法にも、特に限定は無く、ディップコート、スプレーコート、スピンコート等各種の塗布方法が利用可能であるが、レンズ表面全体に防湿皮膜を成膜できる等の点で、ディップコート(浸漬塗布)が好ましく例示される。
ゾル−ゲル法による場合、防湿皮膜は、例えば、アルコキシシラン化合物を加水分解することにより得られるが、市販品では日本ダクロシャムロック社製のソルガード(SolGard)TM等を用いることができる。
【0166】
有機材料からなる好適な防湿皮膜の一例として、ポリ塩化ビニリデンや塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体などを主成分とする皮膜、日本ゼオン社製のゼオネックス(ZEONEX)TMなどの脂環式ポリオレフィン樹脂を主成分とする皮膜、旭硝子社製のサイトップ(CYTOP)TMやデュポン社製のテフロン(登録商標)AF(Teflon AF)などの非晶フッ素樹脂(アモルファスフルオロポリマー)を主成分とする皮膜、住友3M社製のノベック(Novec)TMなどのフッ素系樹脂を主成分とする皮膜、信越化学工業の信越シリコーンKR251、KR400、KR114A等のシリコーン系樹脂を主成分とする皮膜等が例示される。これらの中でも、ポリ塩化ビニリデンまたは塩化ビニリデン−塩化ビニル共重合体などを主成分とする皮膜であるのが好ましい。
【0167】
有機材料で防湿皮膜を形成する場合、膜厚は100nm〜10000nm(10μm)であるのが好ましい。この膜厚がこのような範囲であれば、防湿性能に影響を与えるピンホールの数が少ないからである。すなわち、膜厚を上記範囲に限定する理由は、膜厚が、100nmより薄いとピンホールができやすくなり、また、10μmより厚くしても、防湿性という観点からは、その寄与は最早少ないし、極端に厚いと厚みが不均一となりやすく、光学性能が低下するからである。
【0168】
さらに、有機材料から形成される防湿皮膜の光学特性としては、光線透過性が良好で、屈折率が低いことが好ましい。屈折率が低いと入射光の表面反射によるロスが少なく、結果として光線透過率が向上するからである。有機材料から形成される防湿皮膜に、機能反射防止、ハードコート等の機能を併せ持たせることも可能である。
【0169】
有機材料で防湿皮膜を形成する場合、その形成方法には、特に限定は無く、皮膜となる樹脂成分を溶解あるいは分散してなる塗料を調整して塗布/乾燥する成膜法などの各種の湿式成膜法や、プラズマ重合やCVDなどの各種の乾式成膜法が利用可能であり、形成する皮膜の組成や膜厚等に応じて、適宜、選択すればよい。
また、塗料を用いる湿式の成膜法において、塗料の塗布方法には、特に限定はなく、スプレー塗布、刷毛による塗布、ディップコートなど、各種の方法が利用可能であるが、レンズ表面全体に防湿皮膜を成膜できる等の点で、ディップコートが好ましく例示される。
特に、塗布成膜法により有機材料からなる防湿皮膜を形成する場合、その膜厚は、上述した100nm〜10μmであるのがより好ましい。この理由は、上記限定理由がより顕著だからである。
【0170】
防湿皮膜は、単層膜であっても良いし、多層膜であっても良い。多層膜の場合、無機材料の層のみからなるものであってもよく、または有機材料の層のみからなるものであってもよい。さらにまた、無機材料の層と有機材料の層を含んだ複合膜であっても良い。このような複合膜からなる防湿皮膜は、特に優れた防湿性を発現する。その理由は定かでは無いが、無機材料からなる防湿皮膜および有機材料からなる防湿皮膜は、互いに異なる積層原理や皮膜構成を有するので、互いの欠陥や欠点を埋め合うあるいは補い合うと共に、それぞれの皮膜が有する防湿性能を相乗的に得ることができ、その結果、非常に優れた耐湿性を得ることができると考えられる。
また、一般的に、無機材料からなる防湿皮膜は硬質でピンホールやクラック等が多く、逆に、有機材料からなる防湿皮膜はある程度の弾性を有する。そのため、防湿皮膜として複合膜を用いる場合、下層に無機材料からなる防湿皮膜、上層に有機材料からなる防湿皮膜を設けることにより、無機材料からなる防湿皮膜のピンホール等を有機材料からなる防湿皮膜が好適に埋めて、結果的に欠陥の無い皮膜を形成でき、無機材料からなる防湿皮膜の防湿性能を完全に生かした非常に高い防湿性能を発現できる。しかも、弾性を有する有機材料からなる防湿皮膜が、外部からのストレスに対する耐性や、熱等によるレンズの膨張/収縮に対して無機材料からなる防湿皮膜を保護する保護膜としても作用するので、強度も十分に確保して、長期にわたって良好な耐湿性を発揮できる。
【0171】
また、光学ユニットは、その用途、すなわち銀塩カメラ、デジタルカメラ、ビデオカメラ、携帯電話組み込み用小型カメラ等にとって好ましい他の機構を有していてもよい。このような機構としては、具体的には、焦点合わせ機構、ズーム機構等が挙げられる。
【0172】
上記した理由により、高アッベ数レンズおよび低アッベ数レンズは、射出成形により製造することが好ましい。射出成形条件としては、各々以下であることが好ましい。
高アッベ数レンズ
ポリマー温度:240〜280℃
金型温度:100〜130℃
保持圧力:20〜100MPa
金型内冷却保持時間:30秒〜5分
低アッベ数レンズ
射出温度:235〜260℃
金型温度:90〜120℃
保持圧力:30〜80MPa
金型内冷却保持時間:60〜180秒
【実施例】
【0173】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。但し、これらの実施例は説明を目的とするものであり、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0174】
(製造例1)
内容量2リットルのフラスコに、錨型翼を備えた攪拌機、冷却還流器、ホスゲン(塩化カルボニル)吹き込み用浸漬管を取り付けた。このフラスコに原料モノマーとして下記式(1a−1)で表されるジヒドロキシ化合物138.74g(0.35モル)、下記式(2a−1)で表されるジヒドロキシ化合物46.26g(0.155モル)、分子量調整剤としてフェノール0.71g(ジオール成分に対するモル比で1.5モル%)、ピリジン197.75g(2.50モル)およびジクロロメタン700gを投入した。
【化33】


【化34】

【0175】
この混合物に対してホスゲン64.35g(0.65モル)を3時間かけて供給し、反応混物をさらに2時間攪拌混合した。反応終了後、5%塩酸水溶液で洗浄して過剰のピリジンを塩酸塩として除去した後、水層が中性になるまで水洗を繰り返した。分液して有機層を取り出して、ジクロルメタンを蒸発溜去することによりポリカーボネート材料PC1を得た。このポリカーボネート材料PC1の質量平均分子量は70000、Tgは135℃、220℃における溶融粘度は150Pa・secであった。
このポリカーボネート材料PC1の濃度0.5g/dlの溶液(溶媒:塩化メチレン)の温度20℃における極限粘度[η]を測定したところ0.25〜0.35dl/gの範囲内であることが確認された。
また、JIS K7142に従って、光源に波長選択フィルターの付属するアッベ屈折計を用いて、波長を変えて(C線(656nm)、D線(589nm)、F線(486nm)屈折率を測定し、得られた屈折率を用いてこのポリカーボネート材料PC1のアッベ数を求めた。測定温度は25℃であった。算出されたアッベ数は29であった。
【0176】
(製造例2)
内容量2リットルのフラスコに、錨型翼を備えた攪拌機、冷却還流器、ホスゲン(塩化カルボニル)吹き込み用浸漬管を取り付けた。このフラスコに、原料モノマーとして下記式(2a−1)で表されるジヒドロキシ化合物77.1g(0.25モル)と下記式(3a−1)で表されるジヒドロキシ化合物86.6g(0.25モル)、水酸化ナトリウム56g(1.40モル)、分子量調整剤として4−tert−ブチルフェノール3.76g(ジオール成分に対するモル比で5モル%)、ならびに、600mlのイオン交換水を投入し水溶液を調製した。
【化35】


【化36】

【0177】
その後、該水溶液に600mlのジクロロメタンを添加し、2相混合物とし、この2相混合物を攪拌しながら、該混合物にホスゲン59.4g(0.6モル)を9.9g/分の供給速度で供給した。ホスゲンの供給終了後、0.08gのトリエチルアミンを反応混合物に添加し、さらに90分間攪拌混合した。その後、攪拌を停止し反応混合物を分液し、ジクロロメタン相を塩酸水溶液により中和し、イオン交換水を使用して、水性洗浄液に電解質が実質的に検出されなくなるまで洗浄した。その後、ジクロロメタン相から、ジクロロメタンを蒸発溜去することにより、ポリカーボネート材料PC2を得た。このポリカーボネート材料PC2の質量平均分子量は35000、240℃における溶融粘度は100Pa・secであった。またTgは145℃であった。
このポリカーボネート材料PC2の濃度0.5g/dlの溶液(溶媒:塩化メチレン)の温度20℃における極限粘度[η]を測定したところ0.25〜0.35dl/gの範囲内であることが確認された。
また、JIS K7142に従って、光源に波長選択フィルターの付属するアッベ屈折計を用いて、波長を変えて(C線(656nm)、D線(589nm)、F線(486nm)屈折率を測定し、得られた屈折率を用いてこのポリカーボネート材料PC2のアッベ数を求めた。測定温度は25℃であった。算出されたアッベ数は29であった。
【0178】
(実施例1)
本実施例では、低アッベ数レンズ3を製造例1で作成したポリカーボネートPC1から射出成形し、高アッベ数レンズ2をアッベ数56.2(25℃、カタログ値)、吸水率0.01%未満のゼオネックス(ZEONEX)TM480R(日本ゼオン株式会社製)から射出成形して、図1に示す光学ユニット1を組み立てた。
ポリカーボネート材料PC1は、110℃の熱風乾燥機で5時間乾燥した後、射出成形に供した。射出成形機のシリンダー温度は、ホッパー下部を200℃、それ以外の部分を240℃に設定した。溶融した樹脂を110℃に保たれた金型に射出し、圧力50MPaで120秒間保持した後、金型を開いて射出成形された低アッベ数レンズ3を取り出した。得られた低アッベ数レンズ3は、レンズ部3aの半径9mm、中心部厚さ2.5mmであった。
得られた低アッベ数レンズ3を偏光板(直交ニコル)に挟んで干渉色を基準サンプルと比較することにより、レンズ部3aのレタデーションを評価した。その結果、レンズ部3aのレタデーションは0〜50nmであった。
【0179】
ZEONEXTM480Rも同様に、110℃の熱風乾燥機で5時間乾燥した後、射出成形に供した。射出成形機のシリンダー温度は、ホッパー下部を230℃、それ以外の部分を280℃に設定した。溶融した樹脂を125℃に保たれた金型に射出し、圧力80MPaに130秒間保持した後、金型を開いて射出成形された高アッベ数レンズ2を取り出した。得られた高アッベ数レンズ2は、光学面の半径6.4mm、中心部厚さ2.9mmであった。
得られた高アッベ数レンズ2を偏光板(直交ニコル)に挟んで干渉色を基準サンプルと比較することにより、レンズ部のレタデーションを評価した。その結果、レンズ部のレタデーションは0〜150nmであった。
なお、以下の実施例2〜6は、全てこの高アッベ数レンズ2を使用した。
【0180】
上記の手順で得られたレンズ2,3を用いて、図1に示す光学ユニット1を組み立てた。この光学ユニット1を用いて、レンズの複屈折による解像度への影響を以下の手順で評価した。
図4は、評価に使用した装置の模式図である。図4において、コリメート光源8から出た平行光線は、撮影用のチャート10を通過して光学ユニット1に入射する。該チャート10は、図5に示すように、複屈折を持たない透明なガラス板に碁盤目状に線が記入されたものである。
このチャート10を、図1に示す光学ユニット1を用いて、CCDカメラ12に結像させて撮影する。光学ユニット1とCCDカメラ12とは、焦点距離の調整機構と絞り機構を有するアダプタ11により接続されている。CCDカメラ12により撮影された画像は、電子データとしてコンピュータ13に取り込まれる。コンピュータ13には、予め複屈折ゼロの基準データが保存されており、該基準データと取り込んだ画像データとを画像演算プログラムを用いて比較し、基準データに対する画像の低下(画像の面積、形状等から判断される)を以下の基準に従って評価した。なお、基準データは、理論上複屈折ゼロの画像データとして、コンピュータ上で作成したものである。
○ 画像低下がほとんど認められない場合。
△ 画像低下がある程度認められる場合。
× 画像低下がはっきり認められる場合。
結果を表1に示した。
【0181】
(実施例2)
本実施例では、低アッベ数レンズ材料に製造例2のポリカーボネート材料PC2を用い、高アッベ数レンズ材料にZEONEXTM480Rを使用して、図1に示す光学ユニット1を組み立てた。
ポリカーボネート材料PC2から低アッベ数レンズ3の射出成形は、射出成型機のシリンダー温度を、ホッパー下部を200℃、それ以外の部分を250℃に設定した点以外は実施例1と同様に実施した。
得られた低アッベ数レンズ3を偏光板(直交ニコル)に挟んで干渉色を基準サンプルと比較することにより、レンズ部3aのレタデーションを評価した。その結果、レンズ部3aのレタデーションは0〜50nmであった。
この低アッベ数レンズ3と、実施例1の高アッベ数レンズ2を用いて図1に示す光学ユニット1を組み立てて、実施例1と同様にレンズの複屈折による解像度への影響評価を実施した。結果を表1に示した。
【0182】
(実施例3)
低アッベ数レンズ材料として、製造例1のポリカーボネート100質量部にトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト0.2質量部を二軸混練機にて溶融混練して得たペレットを使用して、実施例1と同様の手順で低アッベ数レンズ3を得た。得られた低アッベ数レンズ3のレンズ部3aのレタデーションは0〜40nmであった。この低アッベ数レンズ3と実施例1で得た高アッベ数レンズ2を用いて、図1に示す光学ユニット1を組み立てて、実施例1と同様にレンズの複屈折による解像度への影響評価を実施した。結果を表1に示した。
【0183】
(実施例4)
低アッベ数レンズ材料として、製造例2のポリカーボネート100質量部にトリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト0.2質量部を二軸混練機にて溶融混練して得たペレットを使用して、実施例2と同様の手順で低アッベ数レンズ3を得た。得られた低アッベ数レンズ3のレンズ部3aのレタデーションは0〜40nmであった。この低アッベ数レンズ3と実施例1で得た高アッベ数レンズ2を用いて、図1に示す光学ユニット1を組み立てて、実施例1と同様にレンズの複屈折による解像度への影響評価を実施した。結果を表1に示した。
【0184】
(実施例5)
低アッベ数レンズ材料として、製造例1のポリカーボネート100質量部にステアリン酸カルシウム0.1質量部を二軸混練機にて溶融混練して得たペレットを使用して、実施例1と同様の手順で低アッベ数レンズ3を得た。得られた低アッベ数レンズ3のレンズ部3aのレタデーションは0〜40nmであった。この低アッベ数レンズ3と実施例1で得た高アッベ数レンズ2を用いて、図1に示す光学ユニット1を組み立てて、実施例1と同様にレンズの複屈折による解像度への影響評価を実施した。結果を表1に示した。
【0185】
(実施例6)
低アッベ数レンズ材料として、製造例2のポリカーボネート100質量部にステアリン酸カルシウム0.1質量部を二軸混練機にて溶融混練して得たペレットを使用して、実施例2と同様の手順で低アッベ数レンズ3を得た。得られた低アッベ数レンズ3のレンズ部3aのレタデーションは0〜40nmであった。この低アッベ数レンズ3と実施例1で得た高アッベ数レンズ2を用いて、図1に示す光学ユニット1を組み立てて、実施例1と同様にレンズの複屈折による解像度への影響評価を実施した。結果を表1に示した。
【0186】
(比較例)
低アッベ数レンズ材料として、従来低解像度用途の光学ユニットのレンズ材料として使用されるアッベ数30(25℃、カタログ値)のビスフェノールA型のポリカーボネート材料PC(AD−5503(帝人化成株式会社製))を使用した。ポリカーボネート材料PCは、110℃の熱風乾燥機で5時間乾燥した後、射出成形に供した。射出成形機のシリンダー温度は、ホッパー下部を240℃、それ以外の部分を280℃に設定した。溶融した樹脂を130℃に保たれた金型に射出し、圧力60MPaで240秒間保持した後、金型を開いて射出成形された低アッベ数レンズ3を取り出した。得られた低アッベ数レンズ3は、レンズ部3aの半径9mm、中心部厚さ2.5mmであった。
得られた低アッベ数レンズ3を偏光板(直交ニコル)に挟んで干渉色を基準サンプルと比較することにより、レンズ部3aのレタデーションを評価した。その結果、レンズ部3aのレタデーションは200〜400nmであった。
上記により得られた低アッベ数レンズ3と、実施例1で得た高アッベ数レンズ2を用いて図1に示す光学ユニット1を組み立て、実施例1と同様にレンズの複屈折による解像度への影響評価を実施した。結果を表1に示した。
【0187】
【表1】

【図面の簡単な説明】
【0188】
【図1】図1は、本発明の光学ユニットの1実施形態の概略断面図(光軸を含む平面で切断)である。
【図2】図2は、本発明の光学ユニットのレンズ3の形状を説明するための図であり、図2(a)はレンズ3の正面図(光軸方向から見た図)であり、図2(b)は図1と同方向の断面図である。
【図3】図3は、本発明の光学ユニットの別の1実施形態を示した概念図である。
【図4】図4は、レンズの複屈折による画像への影響を評価する装置の模式図である。
【図5】図5は、図4の装置の構成要素である撮影チャートの平面図である。
【符号の説明】
【0189】
1,1’:光学ユニット
2,2a,2b,2c,3,3’:レンズ
3a:レンズ部
3b:フランジ部
5:鏡筒
5a:リブ部
6:スペーサ
7:レンズ押さえ
8:コリメート光源
10:撮影用チャート
11:接続アダプタ
12:CCDカメラ
13:コンピュータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記レンズ(1)、(2)を含む光学ユニット。
(1)アッベ数が45〜60のプラスチック製レンズ、
(2)スピロビインダンから誘導される構造を含み、ガラス転移温度が120〜150℃であるポリカーボネート材料を射出成形して得られるレンズ。
【請求項2】
前記ポリカーボネート材料は、下記一般式(1)および一般式(2)で表される構造単位を有するポリカーボネート共重合体(A)を含む請求項1に記載の光学ユニット。
【化1】


【化2】


(上式中、R1およびR3はそれぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基またはハロゲン原子を表し、R2は水素原子またはメチル基を表し、kおよびlはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、mおよびnはそれぞれ独立に0〜20の整数を表す。但し、mまたはnのうち少なくとも一方は0以外である。)
【請求項3】
前記ポリカーボネート材料は、前記ポリカーボネート共重合体(A)100質量部に対して、0.0005〜5質量部のエポキシ化合物をさらに含有する請求項2に記載の光学ユニット。
【請求項4】
前記ポリカーボネート材料は、前記ポリカーボネート共重合体(A)100質量部に対して、0.0005〜5質量部の亜リン酸エステル化合物をさらに含有する請求項2または3に記載の光学ユニット。
【請求項5】
前記ポリカーボネート材料は、前記ポリカーボネート共重合体(A)100質量部に対して、0.0005〜5質量部の脂肪族化合物をさらに含有する請求項2に記載の光学ユニット。
【請求項6】
前記ポリカーボネート材料は、前記ポリカーボネート共重合体(A)100質量部に対して、0.00005〜5質量部の5価の有機リン化合物をさらに含有する請求項2に記載の光学ユニット。
【請求項7】
前記ポリカーボネート共重合体(A)は、前記一般式(1)および一般式(2)で表される構造単位中、前記一般式(1)で表される構造単位の割合が5〜90モル%である請求項2ないし6のいずれかに記載の光学ユニット。
【請求項8】
前記ポリカーボネート共重合体(A)は、質量平均分子量が10000〜150000である請求項2ないし7のいずれかに記載の光学ユニット。
【請求項9】
前記ポリカーボネート材料は、下記一般式(2)および一般式(3)で表される構造単位を有するポリカーボネート共重合体(B)を含む請求項1に記載の光学ユニット。
【化3】


【化4】


(上式中、R3はそれぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基、ニトロ基あるいはハロゲン原子を表し、R4およびR5はそれぞれ独立に水素原子またはメチル基を表し、R6はそれぞれ独立にアルキル基、アルコキシ基またはハロゲン原子を表し、lはそれぞれ独立に0〜3の整数を表し、jはそれぞれ独立に0〜2の整数を表す。)
【請求項10】
前記ポリカーボネート材料は、前記ポリカーボネート共重合体(B)100質量部に対して、0.0005〜5質量部のエポキシ化合物をさらに含有する請求項2に記載の光学ユニット。
【請求項11】
前記ポリカーボネート材料は、前記ポリカーボネート共重合体(B)100質量部に対して、0.0005〜5質量部の亜リン酸エステル化合物をさらに含有する請求項9または10に記載の光学ユニット。
【請求項12】
前記ポリカーボネート材料は、前記ポリカーボネート共重合体(B)100質量部に対して、0.0005〜5質量部の脂肪族化合物をさらに含有する請求項9に記載の光学ユニット。
【請求項13】
前記ポリカーボネート材料は、前記ポリカーボネート共重合体(B)100質量部に対して、0.00005〜5質量部の5価の有機リン化合物をさらに含有する請求項9に記載の光学ユニット。
【請求項14】
前記ポリカーボネート共重合体(B)は、前記一般式(2)および一般式(3)で表される構造単位中、前記一般式(2)で表される構造単位の割合が5〜90モル%である請求項9ないし13のいずれかに記載の光学ユニット。
【請求項15】
前記ポリカーボネート共重合体(B)は、質量平均分子量が10000〜150000である請求項9ないし14のいずれかに記載の光学ユニット。
【請求項16】
前記ポリカーボネート材料は、下記一般式(4)、一般式(5)及び一般式(6)で表される構造単位を有し、一般式(4)の構造単位が全構造単位中5〜50モル%のポリカーボネート共重合体(C)を含む請求項1に記載の光学ユニット。
【化5】


【化6】


【化7】

【請求項17】
前記ポリカーボネート共重合体(C)は、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、炭酸エステル形成化合物とを反応させてなるポ請求項16に記載の光学ユニット。
【請求項18】
前記ポリカーボネート共重合体(C)において、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンの使用量が、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンと4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノールとの合計量に対して10〜90mol%である請求項17に記載の光学ユニット。
【請求項19】
前記ポリカーボネート共重合体(C)において、前記一般式(5)で表される構造単位が全構造単位中20〜80mol%である請求項16ないし18のいずれかに記載の光学ユニット。
【請求項20】
前記ポリカーボネート材料は、下記一般式(4)、一般式(5)及び一般式(7)で表される構造単位を有し、一般式(4)の構造単位が全構造単位中5〜50モル%のポリカーボネート共重合体(D)を含む請求項1に記載の光学ユニット。
【化8】


【化9】


【化10】

【請求項21】
前記ポリカーボネート材料は、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダン、4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノール、及び3官能以上のフェノール性水酸基を有する化合物と、炭酸エステル形成化合物とを反応させてなるポリカーボネート共重合体(E)を含む請求項1に記載の光学ユニット。
【請求項22】
前記ポリカーボネート共重合体(E)において、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンの使用量が、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンと4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノールとの合計量に対して10〜90mol%である請求項21に記載の光学ユニット。
【請求項23】
前記ポリカーボネート共重合体(E)は、6,6’−ジヒドロキシ−3,3,3’,3’−テトラメチル−1,1’−スピロビインダンと、4,4’−[1,3−フェニレン(1−メチルエチリデン)]ビスフェノールの合計100モル部に対して、3官能以上のフェノール性水酸基を有する化合物を、0.2〜3.0モル部添加してなる請求項21または22に記載の光学ユニット。
【請求項24】
前記ポリカーボネート共重合体(E)において、3官能以上のフェノール性水酸基を有する化合物が、1,1,1−トリス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、4,4’−[1−[4−[1−(4−ヒドロキシフェニル)−1−メチルエチル]フェニル]エチリデン]ビスフェノール、及び2,4,6−トリス(4−ヒドロキシフェニル)−2,6−ジメチル−3−ヘプテンからなる群より選択された少なくとも1種類である請求項21ないし23のいずれかに記載の光学ユニット。
【請求項25】
前記ポリカーボネート材料は、極限粘度が0.25〜0.50である請求項1ないし24のいずれかに記載の光学ユニット。
【請求項26】
前記極限粘度は0.25〜0.35である請求項25に記載の光学ユニット。
【請求項27】
前記アッベ数45〜60のプラスチック製レンズは、脂環式ポリオレフィン樹脂から作製される請求項1ないし26のいずれかに記載の光学ユニット。
【請求項28】
前記ポリカーボネート材料は、さらに紫外線吸収剤を含有する請求項1ないし27のいずれかに記載の光学ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−71782(P2006−71782A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−252596(P2004−252596)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】