説明

プラスチック製亀甲形網の製造装置

【課題】各プラスチック製線材を簡単な構造で均一に予熱し、しかも非網撚合機構から網撚合機構へのプラスチック製線材の通し作業を簡単且つ容易にし、さらに均一な亀甲形の形状に維持するプラスチック製亀甲形網の製造装置を提供する。
【解決手段】プラスチック製線材aを撚り合せて亀甲形網bに編み上げる網撚合機構2と、その後方に配置された網撚合防止機構3と、案内歯車41、プラスチック製線材aを供出する前部供出ボビン42、後部供出ボビン43及びその間に設置されたガイド装置44を有する撚戻機構4とを備え、これらに加えて、前後の網撚合機構2及び網撚合防止機構3の間に設けられ熱伝導挿通管51を通じて内部のプラスチック製線材aを均一に加熱する加熱装置5と、前記網撚合機構2の前方に設置され亀甲形網bの形状を保持する成形保持盤6とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プラスチック製線材を撚り合せして亀甲形網を製造する装置に係り、特に、撚り合せ直前の各プラスチック製線材を簡単な構造で均一に予熱し、しかも網撚合防止機構から網撚合機構へのプラスチック製線材の通し作業を簡単且つ容易にし、さらに均一な亀甲形の形状に維持するプラスチック製亀甲形網の製造装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
金属線又は合成樹脂線状物などを撚り合せて編み上げられた亀甲形網が知られている。亀甲形網は隣接する2辺を撚り合せたものから構成されていて、強度や耐久性が極めて優れており、フェンス、養殖用網、落石防止網などの用途に多用されている。
このうち、合成樹脂線状物を撚り合せて編み上げられた亀甲形網は、金属線を用いた亀甲形金網に較べて錆や腐食を招かない点で耐久性が優れ、さらに強度や網目の規則性についても優れたものが開発されている(特開昭57−56556)。
このようなものとして、特開昭57−56556の亀甲型網状体の製造方法がある。特開昭57−56556は、延伸・未固定の線状物を所定の温度に予熱し、これを緊張状態で撚り合せ、編成した後、網状体を弛緩状態で熱固定し、次いでこれを急冷して製造される。
【特許文献1】特開昭57−56556
【特許文献2】特開昭57−28645
【特許文献3】特開昭54−96183
【特許文献4】特開昭54−46970
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、撚り合せする前のプラスチック製線材(先願の線状体に相当)をヒータや熱風ゾーンを使用して均一に予熱するのは簡単ではなく、部分的に予熱むらが生じやすく、その結果、均一に撚り合せができなかったり、部分的に強度の低下が生じたりして、均一な形状と強度を有する亀甲形網に撚り合せて編み上げることが困難であった。
また、それぞれのプラスチック製線材を後方の網撚合防止機構から前方の網撚合機構の対応する各撚合用半割型歯車の通孔に挿通させるプラスチック製線材の通し作業にあっては、後方の網撚合防止機構の撚合防止用半割型歯車の通孔に挿通させた後、これに対応する前方の網撚合機構の撚合用半割型歯車の通孔に挿通させることが必要であり、叉、間違って他の網撚合機構の撚合用半割型歯車の通孔に挿通させると、その後は全てずれて挿通させることになって、作業をやり直ししなければならないこともあり、網撚合防止機構から網撚合機構へのプラスチック製線材の通し作業は常に面倒で手間と時間がかかるという課題があった。
さらに、2本のプラスチック製線材(先願の線状体に相当)を撚り合せた後は再び亀甲形にするために、撚り合せた後の2本の線材を両側に開くが、その際に撚り合せた部分が左右に強く引っ張られ過ぎて変形し、部分的に亀甲形を維持できなくなり、均一な形状と強度を有する亀甲形網に撚り合せて編み上げることが困難であった。
【0004】
この発明は、上記のような課題に鑑み、その課題を解決すべく創案されたものであって、その目的とするところは、前後の網撚合機構及び網撚合防止機構の対応する各半割型歯車の通孔同士を熱伝導挿通管でそれぞれ連結し、撚り合せする前の各プラスチック製線材を加熱される熱伝導挿通管内を挿通させることで、簡単な構造で均一に予熱して部分的に予熱むらが生じるのを防ぎ、しかも熱伝導挿通管を利用することで網撚合防止機構から網撚合機構へのプラスチック製線材の通し作業を簡単且つ容易にでき、さらに網撚合機構から送出された直後の各撚合箇所を成形保持盤によりその網幅方向の間隔で保持し均一な亀甲形の形状に維持して、均一な強度を有する亀甲形網を編み上げることのできるプラスチック製亀甲形網の製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以上の課題を解決するために、この発明は、プラスチック製線材の通孔を有し対になった撚合用半割形歯車を網幅方向に多数並設し、互いに合致する一対の撚合用半割形歯車の通孔に挿通された2本のプラスチック製線材を合致する一対の撚合用半割形歯車の回転により数回撚合させた後、一方又は双方が網幅方向に分離移行してそれぞれ隣設する別の撚合用半割形歯車に合致させて新たに合致した一対の撚合用半割形歯車の回転により該半割形歯車の通孔に挿通された2本のプラスチック製線材を数回撚合させ、元の位置に戻り先の撚合用半割形歯車と合致し回転することを繰り返す網撚合機構を備え、
前記網撚合機構の後方に、この網撚合機構の各撚合用半割形歯車に一対一に対応する撚合防止用半割形歯車をそれぞれ有する網撚合防止機構を配置し、網撚合防止機構の各撚合防止用半割形歯車は、プラスチック製線材の通孔をそれぞれ有し、且つ網撚合機構の撚合用半割形歯車の回転及び網幅方向への分離移行に同期して回転及び網幅方向に分離移行し、
網撚合機構及び網撚合防止機構の各一対の半割型歯車の回転に同期して回転する案内歯車と、合致して一対となる網撚合防止機構の撚合防止用半割型歯車の一方を通じて網撚合機構の一方の撚合用半割形歯車に、プラスチック製線材を供給し且つ案内歯車の回転する内側に設けられる前部供出ボビンと、合致して一対となる網撚合防止機構の撚合防止用半割型歯車の他方を通じて網撚合機構の他方の撚合用半割形歯車に、案内歯車の外周側溝に引っ掛けられて回転するプラスチック製線材プラスチック製線材を供給し且つ案内歯車の後方に配置される後部供出ボビンと、前部供出ボビンと後部供出ボビンとの間に設けられ各後部供出ボビンから供出されるプラスチック製線材を対応する案内歯車に掛け替えるためのガイド装置と、からなる撚戻機構を前記網撚合防止機構の後方にそれぞれ設け、
前後の前記網撚合機構及び網撚合防止機構の対応する各半割型歯車の通孔同士をプラスチック製線材がその内部を挿通する中空な熱伝導挿通管でそれぞれ連結し、前後の網撚合機構と網撚合防止機構との間に熱伝導挿通管が配管された領域に、熱伝導挿通管を通じて内部のプラスチック製線材を均一に加熱する加熱装置を設け、
前記網撚合機構の前方に、該網撚合機構から送出される亀甲形網の網幅方向の各撚り合せ部分に対応する箇所に少なくとも凹部をそれぞれ有し、且つ網撚合機構からの亀甲形網の送出速度と同速度で前方に少し移動した後に元の位置に瞬時に復帰し、この動作を繰り返す櫛歯型の成形保持盤を設けた手段よりなるものである。
【発明の効果】
【0006】
以上の課題を解決するための手段を備えたこの発明に係るプラスチック製亀甲形網の製造装置によれば、前後の網撚合機構及び網撚合防止機構の対応する各半割型歯車の通孔同士をプラスチック製線材がその内部を挿通する中空な熱伝導挿通管でそれぞれ連結し、前後の網撚合機構と網撚合防止機構との間に熱伝導挿通管が配管された領域に、熱伝導挿通管を通じて内部のプラスチック製線材を均一に加熱する加熱装置を設けたことにより、撚り合せする前の各プラスチック製線材を加熱される熱伝導挿通管内を挿通させることで、簡単な構造で均一に予熱して部分的に予熱むらが生じるのを防ぐことができ、予熱むらに起因して、均一に撚り合せができなかったり、部分的に強度の低下が生じたりするのを防止でき、均一な形状と強度を有するプラスチック製の亀甲形網に編み上げることができる。
しかも熱伝導挿通管を利用することにより、従来行っていた各プラスチック製線材を網撚合防止機構の各撚合防止用半割形歯車の通孔に挿通した後に、その前方の網撚合機構の対応する箇所の撚合用半割形歯車の通孔に挿通しなければならない面倒な作業を省略でき、網撚合防止機構から網撚合機構へのプラスチック製線材の通し作業を簡単且つ容易に行うことが可能となり、作業時間を大幅に短縮することができる。
さらに、網撚合機構の前方に、該網撚合機構から送出される亀甲形網の網幅方向の各撚り合せ部分に対応する箇所に少なくとも凹部をそれぞれ有し、且つ網撚合機構からの亀甲形網の送出速度と同速度で前方に少し移動した後に元の位置に瞬時に復帰し、この動作を繰り返す櫛歯型の成形保持盤を設けたことにより、網撚合機構から送出された直後の各撚合箇所を成形保持盤によりその網幅方向の間隔で保持できるので、撚り合せた後の2本の線材を両側に一定の張力で引っ張って開いても、成形保持盤の凹部によってその際に撚り合せた部分が左右の何れかに強く引っ張られ過ぎて変形するのを防ぐことができるので、部分的に亀甲形を維持できなくなることもなく、均一な亀甲形の形状と所定の強度を有する亀甲形網を編み上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、図面に記載の発明を実施するための最良の形態に基づいて、この発明をより具体的に説明する。
ここで、図1はプラスチック製亀甲形網の製造装置の全体概要図、図2は網撚合機構及び網撚合防止機構の半割形歯車の回転時の部分斜視図、図3は網撚合機構及び網撚合防止機構の半割形歯車の網幅方向への分離移行時の部分斜視図、図4は撚戻機構の部分斜視図、図5は成形保持盤の部分斜視図、図6(A)〜(C)は成形保持盤の動作説明用の部分平断面図である。
【0008】
図において、プラスチック製亀甲形網の製造装置1は、プラスチック製線材aを撚り合せて亀甲形網bに編み上げる網撚合機構2と、その後方に配置された網撚合防止機構3と、案内歯車41、プラスチック製線材aを供出する前部供出ボビン42、後部供出ボビン43及びその間に設置されたガイド装置44を有する撚戻機構4とを備え、これらに加えて、前後の網撚合機構2及び網撚合防止機構3の間に設けられ熱伝導挿通管51を通じて内部のプラスチック製線材aを均一に加熱する加熱装置5と、前記網撚合機構2の前方に設置され亀甲形網bの形状を保持する成形保持盤6とを備えたものから構成されている。
【0009】
網撚合機構2は、一対の撚合用半割形歯車21,22が合致しての回転及び一対の撚合用半割形歯車21,22が網幅方向への分離移行を繰り返しながら、プラスチック製線材aを亀甲形網bに編み上げるものである。亀甲形網bはその網撚合機構2によって前方に向けて連続的に造り出される。網撚合機構2には、撚合用半割形歯車21,22を噛合によって回転させるラック23が上下に配置されている。
【0010】
網撚合機構2は、プラスチック製線材aの通孔21a、22aを有し、例えば上下で対になった撚合用半割形歯車21,22を網幅方向に多数並設し、互いに合致する一対の撚合用半割形歯車21,22の通孔21a、22aに挿通された2本のプラスチック製線材aを上下で合致する一対の撚合用半割形歯車21,22の回転により数回撚合させた後、一方又は双方が網幅方向に分離移行してそれぞれ隣設する別の撚合用半割形歯車21,22に上下で合致させて新たに合致した一対の撚合用半割形歯車21,22の回転により該半割形歯車21,22の通孔21a、22aに挿通された2本のプラスチック製線材aを数回撚合させ、元の位置に戻り先の撚合用半割形歯車21,22と上下で合致し回転することを繰り返しながら、亀甲形網bに編み上げる。
【0011】
つまり、網撚合機構2は、例えば上下で対になった撚合用半割形歯車21,22が網幅方向に多数並設された構造からなっている。上下で合致して一対となる各撚合用半割形歯車21,22には、それぞれ通孔21a、22aが形成されており、各通孔21a、22aにはプラスチック製線材aが挿通されている。上下で対になった撚合用半割形歯車21,22は上下で合致した後に数回回転する構造になっている。上部側の撚合用半割形歯車21及び下部側の撚合用半割形歯車22は、一方又は双方が網幅方向に分離移行して、それぞれ隣設する別の撚合用半割形歯車21,22に上下で合致する構造になっている。
【0012】
前記網撚合機構2の後方には、この網撚合機構2の各撚合用半割形歯車21,22に一対一に対応する撚合防止用半割形歯車31,32をそれぞれ有する網撚合防止機構3が配置されている。網撚合防止機構3は、前方の網撚合機構2との間に配管された熱伝導挿通管51が原因となって、亀甲形網bが編み上がらなくなるのを防止するために、設けられるものである。
【0013】
網撚合防止機構3の各撚合防止用半割形歯車31,32は、プラスチック製線材aが挿通されるための通孔31a、32aをそれぞれ有している。また、網撚合防止機構3の各撚合防止用半割形歯車31,32は、網撚合機構2の撚合用半割形歯車21,22の回転及び網幅方向への分離移行に同期して回転及び網幅方向に分離移行する構造になっている。網撚合防止機構3には、撚合防止用半割形歯車31,32を噛合によって回転させるラック33が上下に配置されている。
【0014】
網撚合防止機構3は網撚合機構2と略同一の構造をしており、そして網撚合機構2と同一の動きをすることにより、網撚合機構2の各撚合用半割形歯車21,22とこれに一対一に対応する網撚合防止機構3の各撚合防止用半割形歯車31,32との間に配管された各熱伝導挿通管51同士が、撚合用半割形歯車21,22の回転及び網幅方向への分離移行の動きに対して、接触したり撚り合うのを防止するためである。
【0015】
つまり、各熱伝導挿通管51同士が接触したり撚り合うと、網撚合機構2の撚合用半割形歯車21,22の回転及び網幅方向への分離移行の障害となったり故障の原因となり、また熱伝導挿通管51が破損したり曲がったりして、挿通されているプラスチック製線材aが切れたり撚り合ったりして、亀甲形網bが編み上がらなくなる。これを防止するために、網撚合防止機構3が網撚合機構2の後方に配置されているのである。
【0016】
撚戻機構4は、網撚合防止機構3に向けて連続的に供出されるプラスチック製線材aには網撚合機構2で撚られることによって撚りの癖が付加されるため、網撚合防止機構3に向けて連続的に供出されるプラスチック製線材aの撚りを戻すことによって、網撚合機構2で撚られるプラスチック製線材aに撚りの癖が付加されるのを防いで、亀甲形網bの形状がスムーズに形成されなくなるのを防ぎ、叉その強度が低下するのを防ぐ機能を果たす。
【0017】
また、撚戻機構4は、網撚合防止機構3に向けて連続的に供出されるプラスチック製線材a同士が、網撚合防止機構3の各撚合防止用半割形歯車31,32の回転及び網幅方向への分離移行の動きによって絡み合うのを防いで、網撚合防止機構3に向けてプラスチック製線材aをスムーズに供出できるようにしている。
【0018】
撚戻機構4は、案内歯車41、プラスチック製線材aを供出する前部供出ボビン42、プラスチック製線材aを供出する後部供出ボビン43、ガイド装置44などから構成され、前記網撚合防止機構3の後方に、後方に向けて案内歯車41内の前部供出ボビン42、ガイド装置44、後部供出ボビン43の順序でそれぞれ設けられている。
【0019】
案内歯車41は、網撚合機構2及び網撚合防止機構3の各一対の半割型歯車の回転に同期して回転する。前部供出ボビン42に対応する数だけ設けられている。叉前記網撚合防止機構3の後方に設けられている。案内歯車41の外周には歯車が形成され、この歯車と噛み合って案内歯車41を回転させる回転歯車41aがそれぞれ設けられている。案内歯車41の外周の一部には、後部供出ボビン43から供給されるプラスチック製線材aを引っ掛けて回転させるための外周側溝41bが形成されている。
【0020】
前部供出ボビン42は、合致して一対となる網撚合防止機構3の撚合防止用半割型歯車31又は32の一方を通じて網撚合機構2の一方の撚合用半割形歯車21又は22に、プラスチック製線材aを供給する。前部供出ボビン42にはプラスチック製線材aが巻かれている。前部供出ボビン42は案内歯車41の回転する内側に設けられている。前部供出ボビン42は回転する案内歯車41に対して略回転しないように設けられている。
【0021】
後部供出ボビン43は、合致して一対となる網撚合防止機構3の撚合防止用半割型歯車31又は32の他方を通じて網撚合機構2の他方の撚合用半割形歯車21又は22に、案内歯車41の外周側溝41bに引っ掛けられて回転するプラスチック製線材aを供給する。後部供出ボビン43にはプラスチック製線材aが巻かれている。案内歯車41及びガイド装置44の後方に配置されている。
【0022】
ガイド装置44は、前部供出ボビン42と後部供出ボビン43との間に設けられ、各後部供出ボビン43から供出されるプラスチック製線材aを対応する案内歯車41に掛け替えるための装置である。ガイド装置44にはプラスチック製線材aを引っ掛けた係止片44aが設けられていて、網撚合機構2及び網撚合防止機構3の各半割形歯車21,22及び31,32の回転及び網幅方向への分離移行の動きに連動して、この係止片44aが上下、左右方向に移動して、後部供出ボビン43からのプラスチック製線材aの供出をスムーズにしている。
【0023】
前後の網撚合機構2及び網撚合防止機構3の対応する各半割型歯車21と31、22と32の通孔同士は、プラスチック製線材aがその内部を挿通する中空な熱伝導挿通管51でそれぞれ連結されている。熱伝導挿通管51は、前後の網撚合機構2と網撚合防止機構3との間に半割型歯車の数だけそれぞれ並設状態で配管されている。
【0024】
つまり、或る熱伝導挿通管51の一端は網撚合機構2の撚合用半割型歯車21の通孔21aに連結され、熱伝導挿通管51の他端は撚合用半割型歯車21に対応して同期し回転及び網幅方向への分離移行する網撚合防止機構3の撚合防止用半割型歯車31の通孔31aに連結されている。同様に、別の熱伝導挿通管51の一端は網撚合機構2の撚合用半割型歯車22の通孔22aに連結され、熱伝導挿通管51の他端は撚合用半割型歯車22に対応して同期し回転及び網幅方向への分離移行する網撚合防止機構3の撚合防止用半割型歯車32の通孔32aに連結されている。
【0025】
各熱伝導挿通管51は内部が中空になっていて、その中空の内部には一本のプラスチック製線材aがそれぞれ挿通されている。プラスチック製線材aを網撚合防止機構3の各撚合防止用半割型歯車31,32から網撚合機構2の対応する各撚合用半割型歯車21,22に挿通させる場合に、この熱伝導挿通管51を利用することによって、間違いなくしかも簡単に挿通させることができる。
【0026】
また、各熱伝導挿通管51は熱伝導性を有する例えば金属製の円筒管から構成されている。各熱伝導挿通管51は加熱装置5で加熱されると、その熱が熱伝導性を有する各熱伝導挿通管51の全体に伝わる。挿通された各プラスチック製線材aはその内部を前方の網撚合機構2側に向けて移動する間に、全体に熱が伝わった熱伝導挿通管51によって均一に加熱されて軟化する。軟化した各プラスチック製線材aは撚り合せの際に撚り抵抗を生じることがなく、スムーズに撚り合せが行われて、亀甲形網bに編み上げられる。
【0027】
加熱装置5は、前述したように熱伝導挿通管51を通じてその内部を挿通するプラスチック製線材aを均一に加熱する装置で、前後の網撚合機構2と網撚合防止機構3との間の熱伝導挿通管51が多数並設された状態で配管された領域に設けられている。加熱装置5は、多数並設された熱伝導挿通管51に対して横断方向に配置されている。加熱装置5には例えば電熱ヒーターが使用されている。加熱装置5及び各熱伝導挿通管51が配置された網撚合機構2と網撚合防止機構3との間は、熱が外部に漏れにくいように例えば密閉された空間になっている。
【0028】
前記網撚合機構2の前方には、この網撚合機構2で亀甲形網bに編み上げられて送出された亀甲形網bの形状を保持する成形保持盤6が例えば前後に2基設けられている。2基の成形保持盤6は連結板62により一体的に連結されていて、全く同一の動作を行う。各成形保持盤6は、網撚合機構2から送出される亀甲形網bの網幅方向の各撚り合せ部分cに対応する箇所に少なくとも凹部61をそれぞれ有し、且つ網撚合機構2からの亀甲形網bの送出速度と同速度で前方に少し移動した後に元の位置に瞬時に復帰し、この動作を繰り返す構造になっている。また、連結板62により連結された両成形保持盤6は、図示しない駆動機構により、網撚合機構2と連動して駆動する構造になっている。
【0029】
各凹部61は、上方から各撚り合せ部分cを押さえる場合に傷つかないように例えば丸みを帯びており、横長な成形保持盤6の下面に同一間隔で多数形成されていて、成形保持盤6は正面から見て櫛歯型の形状に形成されている。横長な成形保持盤6の下面に多数形成された凹部61には、網撚合機構2から送出される亀甲形網bの網幅方向の各撚り合せ部分cが係合される。この場合において、成形保持盤6の凹部61には、一つおきに亀甲形網bの撚り合せ部分cが係合される。つまり凹部61には亀甲形網bの撚り合せ部分cが係合される箇所と係合されない空部とが交互に現れる。
【0030】
また、前後に配置された2基の成形保持盤6の下面に形成された凹部61は、前後で同一箇所に形成されている。そして、前後の2基の成形保持盤6では、亀甲形網bの六角形の両辺の撚り合せ部分cの箇所が、その前後では六角形の中央位置になるため、前後の凹部61で亀甲形網bの撚り合せ部分cが係合される箇所が異なっている。つまり、前方の成形保持盤6の凹部61に亀甲形網bの撚り合せ部分cが係合される場合は、その箇所と同じ位置にある後方の成形保持盤6の凹部61は空部になっている。
【0031】
このうち、網撚合機構2の直近側に位置する後方の成形保持盤6は、網撚合機構2から送出された直後の亀甲形網bの六角形の左右両辺となる撚り合せ部分cを一つおきの各凹部61で上方から押さえて係合する。そして、係合した状態で亀甲形網bの送出速度と同じ速度で、亀甲形網bの六角形の左右両辺となる撚り合せ部分cの長さと、撚り合せ部分cの終端から次の亀甲形網bの撚り合せ部分cの始端までの正弦(sinの斜辺に対する対辺)の長さとの合計距離だけ前方に移動した後、成形保持盤6は元の位置に瞬時に復帰し、この動作を繰り返す。
【0032】
亀甲形網bの六角形の左右両辺となる撚り合せ部分cを構成する2本のプラスチック製線材aは、網撚合機構2の撚合用半割型歯車21,22から送出されると、上下の撚合用半割型歯車21,22が左右に分離移行するのに伴い、撚り合せ部分cの終端から左右に別れて、隣設の撚合用半割型歯車21,22と上下で合致し回転することにより、2本のプラスチック製線材aは撚り合せられる。このようにして亀甲形網bが編み上げられる。
【0033】
このとき、この2本のプラスチック製線材aが撚り合せ部分cの終端から左右に別れる場合に、左右に強く引っ張られても、各撚り合せ部分cの終端側は成形保持盤6の下面側に形成された凹部61に係合されているため、左右の何れかの方向に引き寄せられることなく中央位置で保持されて、亀甲形の六角形の形状が保持される。
【0034】
特に撚り合せされた直後のプラスチック製線材aは加熱により軟化しているため、左右のプラスチック製線材aで軟化状態が微妙に違う場合には、左右の何れかの方向に引き寄せられて亀甲形が崩れることが考えられるが、この成形保持盤6の働きによって、各撚り合せ部分cの終端側は凹部61に係合されて保持されるので、左右の何れかの方向に引き寄せられことはなく、亀甲形の形状を保持することができるのである。
【0035】
前方に位置する別の成形保持盤6は、後方の成形保持盤6が押さえて係合する亀甲形網bの六角形の両辺の中央部分に位置する撚り合せ部分cを上方から押さえて係合するが、連結板62により後方の上記成形保持盤6と一体的に連結されているため全く同一の動作で作動する。亀甲形に編み上げられた直後の亀甲形網bは直前の加熱により軟化していて形状が変形する可能性があるが、前後の成形保持盤6によって、亀甲形が変形するのが阻止されてその形状の保持が図られている。
【0036】
成形保持盤6の直ぐ後方には、編み上げられた直後の亀甲形網bを前方に向けて送り出する円筒形状の送出ローラー7が設置されている。この送出ローラー7の円周側面にはピン71が幅方向及び円周方向に一定の間隔で突起しており、前方側に向けて回転するピン71が亀甲形の六角形の頂点側を引っ掛けて引っ張ることにより、亀甲形網bは前方に移動して、前方に設置されている図示しない巻取装置に巻き取られる。
【0037】
次に、上記発明を実施するための最良の形態の構成に基づく作用について以下説明する。
後方に配置された撚戻機構4の各前部供出ボビン42から供出したプラスチック製線材aを、その前方の網撚合防止機構3の例えば撚合防止用半割形歯車31の各通孔31aにそれぞれ挿入し、熱伝導挿通管51の内部を挿通させてその前方に配置された網撚合機構2の撚合用半割形歯車21の通孔21aからその先端側を出す。
【0038】
同様に、後方に配置された撚戻機構4の各後部供出ボビン43から供出したプラスチック製線材aを、前方の対応する各ガイド装置44を経由して、ガイド装置44の前方の対応する各前部供出ボビン42の外周に配置された案内歯車41の外周側溝41bに引っ掛けて、案内歯車41の前方の網撚合防止機構3の例えば撚合防止用半割形歯車32の各通孔32aにそれぞれ挿入し、熱伝導挿通管51の内部を挿通させてその前方に配置された網撚合機構2の撚合用半割形歯車22の通孔22aからその先端側を出す。
【0039】
以上のようにして、プラスチック製線材aをプラスチック製亀甲形網bの製造装置1にセットした後、加熱装置5の電熱ヒータを加熱させて、プラスチック製線材aが挿通された各熱伝導挿通管51を加熱する。熱伝導挿通管51を加熱すると、その熱が熱伝導挿通管51の全体に伝わり、その内部のプラスチック製線材aは均一に加熱されて軟化する。このようにして、プラスチック製線材aを軟化して撚り合せ抵抗を小さくした後に、網撚合機構2及びこれに連動する網撚合防止機構3と撚戻機構4の案内歯車41、ガイド装置44などを作動させる。
【0040】
作動する網撚合機構2は、互いに合致する一対の撚合用半割形歯車21,22の通孔21a,22aに挿通された2本のプラスチック製線材aを合致する一対の撚合用半割形歯車21,22の回転により数回撚合させた後、一方又は双方が網幅方向に分離移行してそれぞれ隣設する別の撚合用半割形歯車21,22に合致させて新たに合致した一対の撚合用半割形歯車21,22の回転により該半割形歯車の通孔21a,22aに挿通された2本のプラスチック製線材aを数回撚合させ、元の位置に戻り先の撚合用半割形歯車21,22と合致し回転することを繰り返す。これにより、亀甲形網bが編み上げられて網撚合機構2の前方に順次送出される。
【0041】
網撚合機構2の後方の熱伝導挿通管51及び網撚合防止機構3の撚合防止用半割形歯車31,32は、それぞれ対応する網撚合機構2の撚合用半割形歯車21,22の回転及び網幅方向への分離移行に同期して回転及び網幅方向に分離移行する。
【0042】
同様に網撚合防止機構3の後方の撚戻機構4も網撚合機構2の撚合用半割形歯車21,22の回転及び網幅方向への分離移行に同期して、前部供出ボビン42及び後部供出ボビン43から網撚合防止機構3に向けて連続的に供出されるプラスチック製線材aの撚りを戻すことによって、網撚合機構2で撚られるプラスチック製線材aに撚りの癖が付加されるのが防止される。また、網撚合防止機構3に向けて連続的に供出されるプラスチック製線材a同士が、網撚合防止機構3の各撚合防止用半割形歯車31,32の回転及び網幅方向への分離移行の動きによって絡み合うのが防止される。
【0043】
網撚合機構2の撚合用半割形歯車21,22の通孔21a,22aからプラスチック製線材aの撚り合せ部分cの終端側が送出されると、後部の成形保持盤6が上方から下りてきてその下面に形成された凹部61の内部に撚り合せ部分cの終端側を押さえながら係合して入れる(図6(A)参照)。これにより、網撚合機構2から送出された直後の軟化した状態の2本のプラスチック製線材aの各撚り合せ部分cの終端側は、後部の成形保持盤6の凹部61によって係合されて保持される。その直後に2本のプラスチック製線材aは左右に引っ張られて別れるが、各撚り合せ部分cの終端側は成形保持盤6の凹部61に保持されているため、左右方向にずれることなく、亀甲形の形状を維持することが可能となる。
【0044】
網撚合機構2に直近の後方の成形保持盤6の凹部61が2本のプラスチック製線材aの各撚り合せ部分cの終端側を押さえて係合するとき、前方の成形保持盤6の凹部61がこれより一つ先に既に送出されている各撚り合せ部分cの終端側を同時に上方から下りてきて押さえて係合する。
【0045】
前後の成形保持盤6は、各凹部61がそれぞれのプラスチック製線材aの各撚り合せ部分cの終端側を押さえて係合した後は、網撚合機構2から亀甲形網bが送出される速度と同じ速度で、亀甲形網bの六角形の左右両辺となる撚り合せ部分cの長さと、撚り合せ部分cの終端から次の亀甲形網bの撚り合せ部分cの始端までの正弦(sinの斜辺に対する対辺)の長さとの合計距離だけ前方に移動した後(図6(B)(C)参照)、瞬時に上方に移動しながら後方の元の位置に復帰すると同時に再び上方から下りてきて網撚合機構2から送出された直後のプラスチック製線材aの各撚り合せ部分cの終端側を押さえて係合する(図6(A)参照)。前後の成形保持盤6はこの動作を繰り返す。
【0046】
亀甲形に編み上げられた直後の亀甲形網bは直前の加熱により軟化していて形状が変形する可能性があるが、前後の成形保持盤6の上述の働きによって、各撚り合せ部分cは保持されて左右方向にずれることがなく、亀甲形が変形するのが阻止されてその形状の保持が図られる。
【0047】
網撚合機構2によって編み上げられた亀甲形網bは、成形保持盤6の直ぐ後方に設置された送出ローラー7の前方側に向けて回転するピン71が亀甲形の六角形の頂点側を引っ掛けて引っ張ることにより前方に移動して、前方に設置されている図示しない巻取装置に巻き取られる。
【0048】
なお、この発明は上記発明を実施するための最良の形態に限定されるものではなく、この発明の精神を逸脱しない範囲で種々の改変をなし得ることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】この発明を実施するための最良の形態を示すプラスチック製亀甲形網の製造装置の全体概要図である。
【図2】この発明を実施するための最良の形態を示す網撚合機構及び網撚合防止機構の半割形歯車の回転時の部分斜視図である。
【図3】この発明を実施するための最良の形態を示す網撚合機構及び網撚合防止機構の半割形歯車の網幅方向への分離移行時の部分斜視図である。
【図4】この発明を実施するための最良の形態を示す撚戻機構の部分斜視図である。
【図5】この発明を実施するための最良の形態を示す成形保持盤の部分斜視図である。
【図6】(A)〜(C)はこの発明を実施するための最良の形態を示す成形保持盤の動作説明用の部分平断面図である。
【符号の説明】
【0050】
1 プラスチック製亀甲形網の製造装置
2 網撚合機構
21 撚合用半割形歯車
21a 通孔
22 撚合用半割形歯車
22a 通孔
23 ラック
3 網撚合防止機構
31 撚合防止用半割形歯車
31a 通孔
32 撚合防止用半割形歯車
32a 通孔
33 ラック
4 撚戻機構
41 案内歯車
41a 回転歯車
41b 外周側溝
42 前部供出ボビン
43 後部供出ボビン
44 ガイド装置
44a 係止片
5 加熱装置
51 熱伝導挿通管
6 成形保持盤
61 凹部
62 連結板
7 送出ローラー
71 ピン
a プラスチック製線材
b 亀甲形網
c 撚り合せ部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック製線材の通孔を有し対になった撚合用半割形歯車を網幅方向に多数並設し、互いに合致する一対の撚合用半割形歯車の通孔に挿通された2本のプラスチック製線材を合致する一対の撚合用半割形歯車の回転により数回撚合させた後、一方又は双方が網幅方向に分離移行してそれぞれ隣設する別の撚合用半割形歯車に合致させて新たに合致した一対の撚合用半割形歯車の回転により該半割形歯車の通孔に挿通された2本のプラスチック製線材を数回撚合させ、元の位置に戻り先の撚合用半割形歯車と合致し回転することを繰り返す網撚合機構を備え、
前記網撚合機構の後方に、この網撚合機構の各撚合用半割形歯車に一対一に対応する撚合防止用半割形歯車をそれぞれ有する網撚合防止機構を配置し、網撚合防止機構の各撚合防止用半割形歯車は、プラスチック製線材の通孔をそれぞれ有し、且つ網撚合機構の撚合用半割形歯車の回転及び網幅方向への分離移行に同期して回転及び網幅方向に分離移行し、
網撚合機構及び網撚合防止機構の各一対の半割型歯車の回転に同期して回転する案内歯車と、合致して一対となる網撚合防止機構の撚合防止用半割型歯車の一方を通じて網撚合機構の一方の撚合用半割形歯車に、プラスチック製線材を供給し且つ案内歯車の回転する内側に設けられる前部供出ボビンと、合致して一対となる網撚合防止機構の撚合防止用半割型歯車の他方を通じて網撚合機構の他方の撚合用半割形歯車に、案内歯車の外周側溝に引っ掛けられて回転するプラスチック製線材プラスチック製線材を供給し且つ案内歯車の後方に配置される後部供出ボビンと、前部供出ボビンと後部供出ボビンとの間に設けられ各後部供出ボビンから供出されるプラスチック製線材を対応する案内歯車に掛け替えるためのガイド装置と、からなる撚戻機構を前記網撚合防止機構の後方にそれぞれ設け、
前後の前記網撚合機構及び網撚合防止機構の対応する各半割型歯車の通孔同士をプラスチック製線材がその内部を挿通する中空な熱伝導挿通管でそれぞれ連結し、前後の網撚合機構と網撚合防止機構との間に熱伝導挿通管が配管された領域に、熱伝導挿通管を通じて内部のプラスチック製線材を均一に加熱する加熱装置を設け、
前記網撚合機構の前方に、該網撚合機構から送出される亀甲形網の網幅方向の各撚り合せ部分に対応する箇所に少なくとも凹部をそれぞれ有し、且つ網撚合機構からの亀甲形網の送出速度と同速度で前方に少し移動した後に元の位置に瞬時に復帰し、この動作を繰り返す櫛歯型の成形保持盤を設けたことを特徴とするプラスチック製亀甲形網の製造装置。
【請求項2】
櫛歯型の成形保持盤は前後に2基設けられている請求項1記載のプラスチック製亀甲形網の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−299245(P2009−299245A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−158406(P2008−158406)
【出願日】平成20年6月17日(2008.6.17)
【出願人】(390032757)粕谷製網株式会社 (4)
【Fターム(参考)】