説明

プラスチック製光学素子の製造方法

【課題】高い精度の光学特性を具備すると共に、長期間にわたる高い耐久性を有し、かつ短期間での光学安定性に優れたプラスチック製光学素子の製造方法を提供する。
【解決手段】少なくともα−オレフィンと環状オレフィンからなる共重合体を含む樹脂と、ヒンダードアミン系化合物とを含有する樹脂組成物を溶融、成型して製造するプラスチック製光学素子の製造方法において、成型前の該樹脂、該ヒンダードアミン系化合物及び該樹脂組成物から選ばれる少なくとも1つに、照射光源により、波長370〜480nmでの照射エネルギーが600W・hr/m2以上の条件で光照射することを特徴とするプラスチック製光学素子の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐久性が改良された新規のプラスチック製光学素子の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MO、CD、DVDといった光情報記録媒体(以下、単に媒体ともいう)に対して、情報の読み取りや記録を行なうプレーヤー、レコーダー、ドライブといった情報機器には、光ピックアップ装置が備えられている。光ピックアップ装置は、光源から発した所定波長の光を媒体に照射し、反射した光を受光素子で受光する光学素子ユニットを備えており、光学素子ユニットはこれらの光を媒体の反射層や受光素子で集光させるためのレンズ等の光学素子を有している。
【0003】
光ピックアップ装置の光学素子は、射出成形等の手段により安価に作製できる等の点で、プラスチックを材料として適用することが好ましい。光学素子に適用可能なプラスチックとしては、環状オレフィンとα−オレフィンの共重合体(例えば、特許文献1)等が知られている。
【0004】
ところで、例えば、CD/DVDプレーヤーのような、複数種の媒体に対して情報の読み書きが可能な情報機器の場合、光ピックアップ装置は、両者の媒体の形状や適用する光の波長の違いに対応した構成とする必要がある。この場合、光学素子ユニットはいずれの媒体に対しても共通とすることがコストやピックアップ特性の観点から好ましい。
【0005】
また、近年、CDやDVDよりも高い密度で情報を記録できる媒体として、CD(λ=780nm)やDVD(λ=635、650nm)で用いるよりも短い波長で情報の記録、再生を行なうBlu−Ray Disc等の媒体やこれらの媒体で情報の読み書きを行なう情報機器の開発が新たに行なわれている。
【特許文献1】特開2002−105131号公報 (第4頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、Blu−Ray Disc等のいわゆる次世代光ディスクでは、情報の記録、再生には波長400nm近傍の光を用いるが、特許文献1の場合では、光学素子がこのような短波長の光照射を受けるのに伴い、光学素子自身が白濁したり、あるいは屈折率が変動を受けやすくなり、その結果、特性の劣化に伴い製品寿命が短くなり、光学素子の交換が必要になる場合があった。
【0007】
上記課題に対し、波長400nm近傍の光に対する樹脂の安定性を向上する方法の一つとして、光学素子を構成する樹脂組成物に、酸化防止剤、耐光安定剤、紫外線吸収剤等を添加する方法が提案されており、これらの添加剤を適用することにより、長期間にわたる安定性が大きく改良された。しかしながら、本発明者が引き続き検討を進めた結果、特許文献1に記載されている樹脂材料に、特定の耐光安定剤、具体的には、ヒンダードアミン系耐光安定剤(以下、HALSと略記する)を適用すると、確かに、長期間にわたり波長400nm近傍の光を照射した際の光学素子の安定性は飛躍的に向上するが、光学素子を製造した後の極短期間の間に、波長400nm近傍の光を照射した時、透過率が僅かに変動することが判明した。この初期透過率変動性により、使用初期段階での透過率変動に起因する読み取り不良の発生を引き起こす恐れがあり、早急な改良が求められている。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、高い精度の光学特性を具備すると共に、長期間にわたる高い耐久性を有し、かつ短期間での光学安定性に優れたプラスチック製光学素子の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0010】
1.少なくともα−オレフィンと下記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンからなる共重合体を含む樹脂と、ヒンダードアミン系化合物とを含有する樹脂組成物を溶融、成型して製造するプラスチック製光学素子の製造方法において、成型前の該樹脂、該ヒンダードアミン系化合物及び該樹脂組成物から選ばれる少なくとも1つに、照射光源により、波長370〜480nmでの照射エネルギーが600W・hr/m2以上の条件で光照射することを特徴とするプラスチック製光学素子の製造方法。
【0011】
【化1】

【0012】
〔式中、nは0または1を表し、mは0または1以上の整数を表し、qは0または1を表し、R1〜R18、Ra及びRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表す。〕
【0013】
【化2】

【0014】
〔式中、p及びqはそれぞれ0または1以上の整数を表し、r及びsはそれぞれ0、1または2を表し、R21〜R39はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基またはアルコキシ基を表す。〕
2.少なくともα−オレフィンと下記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンからなる共重合体を含む樹脂と、ヒンダードアミン系化合物とを含有する樹脂組成物を溶融、成型して製造するプラスチック製光学素子の製造方法において、成型された該プラスチック製光学素子に、照射光源により、波長370〜480nmでの照射エネルギーが600W・hr/m2以上の条件で光照射することを特徴とするプラスチック製光学素子の製造方法。
【0015】
【化3】

【0016】
〔式中、nは0または1を表し、mは0または1以上の整数を表し、qは0または1を表し、R1〜R18、Ra及びRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表す。〕
【0017】
【化4】

【0018】
〔式中、p及びqはそれぞれ0または1以上の整数を表し、r及びsはそれぞれ0、1または2を表し、R21〜R39はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基またはアルコキシ基を表す。〕
3.前記照射光源の照射時間が、4時間以上、100時間以下であることを特徴とする前記1または2に記載のプラスチック製光学素子の製造方法。
【0019】
4.前記照射光源の波長360nm以下における総照射エネルギー量が、100W・hr/m2以下であることを特徴とする前記1〜3のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、高い精度の光学特性を具備すると共に、長期間にわたる高い耐久性を有し、かつ短期間での光学安定性に優れたプラスチック製光学素子の製造方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0022】
本発明者は、上記課題に鑑み鋭意検討を行った結果、少なくともα−オレフィンと前記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンからなる共重合体を含む樹脂と、ヒンダードアミン系化合物とを含有する樹脂組成物を溶融、成型して製造するプラスチック製光学素子の製造方法において、1)成型前の該樹脂、該ヒンダードアミン系化合物及び該樹脂組成物から選ばれる少なくとも1つ、あるいは2)成型された該プラスチック製光学素子のいずれかに、照射光源により、波長370〜480nmでの照射エネルギーが600W・hr/m2以上の条件で光照射することを特徴とするプラスチック製光学素子の製造方法により、高い精度の光学特性を具備すると共に、長期間にわたる高い耐久性を有し、かつ短期間での光学安定性に優れたプラスチック製光学素子の製造方法を実現できることを見出し、本発明に至った次第である。
【0023】
すなわち、本発明のプラスチック製光学素子の製造方法においては、プラスチック製光学素子の構成要素として、α−オレフィンと前記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンからなる共重合体を含む樹脂を用いることにより、優れた光学特性を付与すると共に、樹脂組成物に耐光安定剤としてヒンダードアミン系化合物を使用することにより長期間にわたる光照射においても優れた耐久性を発現させることができる。しかしながら、前述の如く、上記樹脂とヒンダードアミン系化合物とを含む樹脂組成物より成型した製造直後のプラスチック製光学素子は、例えば、波長400nm近傍の光を照射した時、透過率が僅かに変動することが明らかになった。この初期透過率変動は、極めて短時間で、透過率が一旦低下した後、さらに所定量の光エネルギーを照射し続けると、低下した透過率が回復するという特異的な挙動を示すことが判明した。本発明者は、この様な特異的な初期透過率変動性について、その安定化条件を鋭意探索を進めた結果、製造直後のプラスチック製光学素子、あるいは成型前の樹脂、ヒンダードアミン系化合物及び該樹脂組成物から選ばれる少なくとも1つに、370〜480nmの波長範囲に分光エネルギー分布を有する照射光源を用いて、波長370〜480nmにおける積算照射エネルギーが600W・hr/m2以上となる条件で光照射することにより、上記の初期透過率変動を完遂させることにより、使用段階では極めて安定した透過率特性を備えたプラスチック製光学素子が得られることを見出したものである。
【0024】
以下、本発明の詳細について説明する。
【0025】
はじめに、本発明に係るプラスチック製光学素子の構成材料について説明する。
【0026】
〔樹脂〕
(一般式(I)及び(II)で表される環状オレフィン)
本発明においては、本発明に係るプラスチック製光学素子を構成する樹脂材料が、α−オレフィンと下記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンからなる共重合体であることを一つの特徴とする。
【0027】
【化5】

【0028】
上記一般式(I)において、nは0または1であり、mは0または正の整数であり、kは0または1である。なおkが1の場合には、kを用いて表される環は6員環となり、kが0の場合にはこの環は5員環となる。
【0029】
1〜R18ならびにRaおよびRbは、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基である。ここで、ハロゲン原子は、フッ素原子、塩素原子、臭素原子またはヨウ素原子である。
【0030】
また、炭化水素基としては、通常、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または芳香族炭化水素基が挙げられる。より具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基などが挙げられる。これらアルキル基はハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0031】
シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられ、芳香族炭化水素基としてはフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。さらに上記一般式(I)において、R15とR16とが、R17とR18とが、R15とR17とが、R16とR18とが、R15とR18とが、あるいはR16とR17とがそれぞれ結合して(互いに共同して)、単環または多環の基を形成していてもよく、しかもこのようにして形成された単環または多環が二重結合を有していてもよい。ここで形成される単環または多環としては、具体的に以下のようなものが挙げられる。
【0032】
【化6】

【0033】
なお上記例示において、1または2の番号を付した炭素原子は、前記一般式(I)においてそれぞれR15(R16)またはR17(R18)結合している炭素原子を表す。
【0034】
また、R15とR16とで、またはR17とR18とでアルキリデン基を形成していてもよい。このようなアルキリデン基は、通常は炭素原子数2〜20のアルキリデン基であり、このようなアルキリデン基の具体的な例としては、エチリデン基、プロピリデン基およびイソプロピリデン基が挙げられる。
【0035】
【化7】

【0036】
上記一般式(II)において、pおよびqはそれぞれ独立に、0または正の整数であり、rおよびsはそれぞれ独立に、0、1または2である。また、R21〜R39はそれぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基またはアルコキシ基である。
【0037】
ここでハロゲン原子は、上記一般式(I)中のハロゲン原子と同じである。また炭化水素基としては、通常、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または芳香族炭化水素基が挙げられる。より具体的には、アルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、アミル基、ヘキシル基、オクチル基、デシル基、ドデシル基およびオクタデシル基などが挙げられる。これらアルキル基はハロゲン原子で置換されていてもよい。
【0038】
シクロアルキル基としては、シクロヘキシル基が挙げられ、芳香族炭化水素基としては、アリール基、アラルキル基などが挙げられ、具体的には、フェニル基、トリル基、ナフチル基、ベンジル基、フェニルエチル基などが挙げられる。
【0039】
アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基などが挙げられる。ここで、R29およびR30が結合している炭素原子と、R33が結合している炭素原子またはR31が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよい。すなわち、上記二個の炭素原子がアルキレン基を介して結合している場合には、R29とR33とが、または、R30とR31とが互いに共同して、メチレン基(−CH2−)、エチレン基(−CH2CH2−)またはプロピレン基(−CH2CH2CH2−)の内のいずれかのアルキレン基を形成している。
【0040】
さらに、r=s=0のとき、R35とR32またはR35とR39とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。具体的には、r=s=0のとき、R35とR32とにより形成される以下のような芳香族環が挙げられる。
【0041】
【化8】

【0042】
ここで、qは一般式(II)におけるqと同義である。
【0043】
本発明に係る一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンとしては、具体的には、ビシクロ−2−ヘプテン誘導体(ビシクロヘプト−2−エン誘導体)、トリシクロ−3−デセン誘導体、トリシクロ−3−ウンデセン誘導体、テトラシクロ−3−ドデセン誘導体、ペンタシクロ−4−ペンタデセン誘導体、ペンタシクロペンタデカジエン誘導体、ペンタシクロ−3−ペンタデセン誘導体、ペンタシクロ−3−ヘキサデセン誘導体、ペンタシクロ−4−ヘキサデセン誘導体、ヘキサシクロ−4−ヘプタデセン誘導体、ヘプタシクロ−5−エイコセン誘導体、ヘプタシクロ−4−エイコセン誘導体、ヘプタシクロ−5−ヘンエイコセン誘導体、オクタシクロ−5−ドコセン誘導体、ノナシクロ−5−ペンタコセン誘導体、ノナシクロ−6−ヘキサコセン誘導体、シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物、1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン誘導体、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン誘導体などが挙げられる。
【0044】
以下に、本発明に係る一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンのより具体的な例を示すが、本発明ではこれら例示する化合物にのみ限定されるものではない。
【0045】
《ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン誘導体》
1)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
2)6−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
3)5,6−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
4)1−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
5)6−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
6)6−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
7)6−イソブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
8)7−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、等
《テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン誘導体》
9)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
10)8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
11)8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
12)8−プロピルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
13)8−ブチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
14)8−イソブチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
15)8−ヘキシルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
16)8−シクロヘキシルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
17)8−ステアリルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
18)5,10−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
19)2,10−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
20)8,9−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
21)8−エチル−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
22)11,12−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
23)2,7,9−トリメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
24)9−エチル−2,7−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
25)9−イソブチル−2,7−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
26)9,11,12−トリメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
27)9−エチル−11,12−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
28)9−イソブチルー11,12−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
29)5,8,9,10−テトラメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
30)8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
31)8−エチリデン−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
32)8−エチリデン−9−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
33)8−エチリデン−9−イソプロピルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
34)8−エチリデン−9−ブチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
35)8−n−プロピリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
36)8−n−プロピリデン−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
37)8−n−プロピリデン−9−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
38)8−n−プロピリデン−9−イソプロピルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
39)8−n−プロピリデン−9−ブチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
40)8−イソプロピリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
41)8−イソプロピリデン−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
42)8−イソプロピリデン−9−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
43)8−イソプロピリデン−9−イソプロピルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
44)8−イソプロピリデン−9−ブチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
45)8−クロロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
46)8−ブロモテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
47)8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
48)8,9−ジクロロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、等
《ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン誘導体》
49)ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン
50)12−メチルヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン
51)12−エチルヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン
52)12−イソブチルヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン
53)1,6,10−トリメチル−12−イソブチルヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン、等
《オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセン誘導体》
54)オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセン
55)15−メチルオクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセン
56)15−エチルオクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセン、等
《ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン誘導体》
57)ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン
58)1,3−ジメチルペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン
59)1,6−ジメチルペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン
60)15,16−ジメチルペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、等
《ヘプタシクロ−5−エイコセン誘導体あるいはヘプタシクロ−5−ヘンエイコセン誘導体》
61)ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン
62)ヘプタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセン、等
《トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン誘導体》
63)トリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン
64)2−メチルトリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン
65)5−メチルトリシクロ[4.3.0.12,5]−3−デセン、等
《トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン誘導体》
66)トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン
67)10−メチルトリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン、等
《ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン誘導体》
68)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン
69)1,3−ジメチルペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン
70)1,6−ジメチルペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン
71)14,15−ジメチルペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、等
《ジエン化合物》
72)ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4、10−ペンタデカジエン、等
《ペンタシクロ[7.4.0.12,6.19,12.08,13]−3−ペンタデセン誘導体》
73)ペンタシクロ[7.4.0.12,6.19,12.08,13]−3−ペンタデセン
74)メチル置換ペンタシクロ[7.4.0.12,6.19,12.08,13]−3−ペンタデセン、等
《ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]−4−エイコセン誘導体》
75)ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]−4−エイコセン
76)ジメチル置換ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]−4−エイコセン、等
《ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.03,8.02,10.012,21.014,19]−5−ペンタコセン誘導体》
77)ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.03,8.02,10.012,21.014,19]−5−ペンタコセン
78)トリメチル置換ノナシクロ[10.9.1.14,7.113,20.115,18.03,8.02,10.012,21.014,19]−5−ペンタコセン、等
《ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセン誘導体》
79)ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセン
80)11−メチル−ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセン
81)11−エチル−ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセン
82)10,11−ジメチル−ペンタシクロ[8.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ヘキサデセン、等
《ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセン誘導体》
83)ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセン
84)15−メチル−ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセン
85)トリメチル−ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセン、等
《ノナシクロ[10.10.1.15,8.114,21.116,19.02,11.04,9.013,22.015,20]−5−ヘキサコセン誘導体》
86)ノナシクロ[10.10.1.15,8.114,21.116,19.02,11.04,9.013,22.015,20]−5−ヘキサコセン、等
《その他》
87)5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
88)5−メチル−5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
89)5−ベンジル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
90)5−トリル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
91)5−(エチルフェニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
92)5−(イソプロピルフェニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
93)5−(ビフェニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
94)5−(β−ナフチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
95)5−(α−ナフチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
96)5−(アントラセニル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
97)5,6−ジフェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
98)シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物
99)1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレン
100)1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン
101)8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.03,5.17,10]−3−ドデセン
102)8−メチル−8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.03,5.17,10]−3−ドデセン
103)8−ベンジル−テトラシクロ[4.4.0.03,5.17,10]−3−ドデセン
104)8−トリル−テトラシクロ[4.4.0.03,5.17,10]−3−ドデセン
105)8−(エチルフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.03,5.17,10]−3−ドデセン
106)8−(イソプロピルフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.03,5.17,10]−3−ドデセン
107)8,9−ジフェニル−テトラシクロ[4.4.0.03,5.17,10]−3−ドデセン
108)8−(ビフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.03,5.17,10]−3−ドデセン
109)8−(β−ナフチル)−テトラシクロ[4.4.0.03,5.17,10]−3−ドデセン
110)8−(α−ナフチル)−テトラシクロ[4.4.0.03,5.17,10]−3−ドデセン
111)8−(アントラセニル)−テトラシクロ[4.4.0.03,5.17,10]−3−ドデセン
112)(シクロペンタジエン−アセナフチレン付加物)に、シクロペンタジエンを更に付加した化合物
113)11,12−ベンゾ−ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン
114)11,12−ベンゾ−ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ヘキサデセン
115)11−フェニル−ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン
116)14,15−ベンゾ−ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン
(α−オレフィン)
次いで、本発明に係る樹脂を構成するα−オレフィンについて説明する。
【0046】
共重合体を構成するα−オレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン、1−テトラデセン、1−ヘキサデセン、1−オクタデセン、1−エイコセンなどの直鎖状α−オレフィン;4−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ブテンなどの分岐状α−オレフィンなどが挙げられる。好ましくは、炭素原子数が2〜20のα−オレフィンが好ましい。このような直鎖状または分岐状のα−オレフィンは置換基で置換されていても良く、また1種単独、或いは2種以上組合わせて用いることができる。
置換基としては、種々のものが挙げられ特に制限はないが、代表的なものとしてアルキル、アリール、アニリノ、アシルアミノ、スルホンアミド、アルキルチオ、アリールチオ、アルケニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、アルキニル、複素環、アルコキシ、アリールオキシ、複素環オキシ、シロキシ、アミノ、アルキルアミノ、イミド、ウレイド、スルファモイルアミノ、アルコキシカルボニルアミノ、アリールオキシカルボニルアミノ、アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、複素環チオ、チオウレイド、ヒドロキシル及びメルカプトの各基、並びにスピロ化合物残基、有橋炭化水素化合物残基、スルホニル、スルフィニル、スルホニルオキシ、スルファモイル、ホスホリル、カルバモイル、アシル、アシルオキシ、オキシカルボニル、カルボキシル、シアノ、ニトロ、ハロゲン置換アルコキシ、ハロゲン置換アリールオキシ、ピロリル、テトラゾリル等の各基及びハロゲン原子等が挙げられる。
【0047】
上記アルキル基としては炭素数1〜32のものが好ましく、直鎖でも分岐でもよい。アリール基としては、フェニル基が好ましい。
【0048】
アシルアミノ基としては、アルキルカルボニルアミノ基、アリールカルボニルアミノ基;スルホンアミド基としては、アルキルスルホニルアミノ基、アリールスルホニルアミノ基;アルキルチオ基、アリールチオ基におけるアルキル成分、アリール成分は上記のアルキル基、アリール基が挙げられる。
【0049】
アルケニル基としては炭素数2〜23のもの、シクロアルキル基としては炭素数3〜12、特に5〜7のものが好ましく、アルケニル基は直鎖でも分岐でもよい。シクロアルケニル基としては炭素数3〜12、特に5〜7のものが好ましい。
【0050】
ウレイド基としては、アルキルウレイド基、アリールウレイド基;スルファモイルアミノ基としてはアルキルスルファモイルアミノ基、アリールスルファモイルアミノ基;複素環基としては5〜7員のものが好ましく、具体的には2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル等;飽和複素環としては5〜7員のものが好ましく、具体的にはテトラヒドロピラニル、テトラヒドロチオピラニル等;複素環オキシ基としては5〜7員の複素環を有するものが好ましく、例えば、3,4,5,6−テトラヒドロピラニル−2−オキシ、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ等;複素環チオ基としては5〜7員の複素環チオ基が好ましく、例えば2−ピリジルチオ、2−ベンゾチアゾリルチオ、2,4−ジフェノキシ−1,3,5−トリアゾール−6−チオ等;シロキシ基としてはトリメチルシロキシ、トリエチルシロキシ、ジメチルブチルシロキシ等;イミド基としては琥珀酸イミド、3−ヘプタデシル琥珀酸イミド、フタルイミド、グルタルイミド等;スピロ化合物残基としてはスピロ[3.3]ヘプタン−1−イル等;有橋炭化水素化合物残基としてはビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−イル、トリシクロ[3.3.1.13.7]デカン−1−イル、7,7−ジメチル−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン−1−イル等が挙げられる。
【0051】
スルホニル基としては、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、ハロゲン置換アルキルスルホニル基、ハロゲン置換アリールスルホニル基等;スルフィニル基としては、アルキルスルフィニル基、アリールスルフィニル基等;スルホニルオキシ基としては、アルキルスルホニルオキシ基、アリールスルホニルオキシ基等;スルファモイル基としては、N,N−ジアルキルスルファモイル基、N,N−ジアリールスルファモイル基、N−アルキル−N−アリールスルファモイル等;ホスホリル基としては、アルコキシホスホリル基、アリールオキシホスホリル基、アルキルホスホリル基、アリールホスホリル基等;カルバモイル基としては、N,N−ジアルキルカルバモイル基、N,N−ジアリールカルバモイル基、N−アルキル−N−アリールカルバモイル基等;アシル基としては、アルキルカルボニル基、アリールカルボニル基等;アシルオキシ基としては、アルキルカルボニルオキシ基等;オキシカルボニル基としては、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基等;ハロゲン置換アルコキシ基としてはα−ハロゲン置換アルコキシ基等;ハロゲン置換アリールオキシ基としては、テトラフルオロアリールオキシ基、ペンタフルオロアリールオキシ基等;ピロリル基としては1−ピロリル等;テトラゾリル基としては1−テトラゾリル等の各基が挙げられる。
【0052】
上記置換基の他に、トリフルオロメチル、ヘプタフルオロ−i−プロピル、ノニルフルオロ−t−ブチル等の各基や、テトラフルオロアリール基、ペンタフルオロアリール基なども好ましく用いられる。更に、これらの置換基は、他の置換基で置換されてもよい。
本発明共重合体中の非環状モノマー含有量は成形性の観点から20質量%以上であることが好ましく、25%以上で90%以下であることがより好ましく、30%以上で85%以下であることがさらに好ましい。
【0053】
本発明に係る共重合体のガラス転移温度(Tg)は、好ましくは80〜250℃、より好ましくは90〜220℃、最も好ましくは100〜200℃の範囲である。数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されるポリスチレン換算値で、好ましくは10,000〜1,000,000、より好ましくは20,000〜500,000、最も好ましくは50,000〜300,000の範囲である。分子量分布は、上記Mnと、同様にGPCで測定されるポリスチレン換算の質量平均分子量(Mw)との比(Mw/Mn)で表したときに、好ましくは2.0以下である。
【0054】
Mw/Mnが大きすぎると、成形体の機械的強度や耐熱性が低下する。特に機械的強度、耐熱性、成形加工性を向上させるには、Mw/Mnが1.8以下がより好ましく、1.6以下が特に好ましい。
【0055】
重合時の温度は、0〜200℃、好ましくは50〜150℃の範囲から選ばれ、圧力は大気圧〜100気圧の範囲から選ばれる。また、重合体帯域に水素を存在させることによって、生成する重合体の分子量を容易に調整することができる。
【0056】
本発明に係るオレフィン系樹脂は、1成分の環状モノマーから合成された高分子でもよいが、好適には2成分以上の環状モノマー、或いは環状モノマーと非環状モノマーを用いて合成された共重合体が選ばれる。この共重合体については、100成分以上のモノマーを用いて製造しても良いが生産効率重合安定性からモノマーの混合は10成分以下が好ましい。更に好ましいのは、5成分以下である。また、得られた共重合体は、結晶性高分子でも非晶性高分子でもかまわないが、好ましくは非晶性高分子が良い。
【0057】
本発明に係る共重合体の炭素−炭素不飽和結合(芳香環含む)を水素添加する方法には、公知の方法を用いることができるが、中でも、水素添加率を高くし、且つ水素添加反応と同時に起こる重合体鎖切断反応を少なくするためには、有機溶媒中、ニッケル、コバルト、鉄、チタン、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム及びレニウムから選ばれる少なくとも1つの金属を含む触媒を用いて水素添加反応を行なうのが好ましい。水素化触媒は、不均一触媒、均一触媒のいずれも使用可能である。不均一系触媒は、金属または金属化合物のままで、又は適当な担体に担持して用いることができる。担体としては、例えば、活性炭、シリカ、アルミナ、炭化カルシウム、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ケイソウ土、炭化珪素等が挙げられ、触媒の担持量は、触媒合計質量に対する金属含有量で、通常0.01〜80質量%、好ましくは0.05〜60質量%の範囲である。均一系触媒は、ニッケル、コバルト、チタンまたは鉄化合物と有機金属化合物(例えば、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物)とを組み合わせた触媒、またはロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、レニウム等の有機金属錯体触媒を用いることができる。これらの水素添加触媒は、それぞれ単独で、或いは2種類以上組み合わせて使用することができ、その使用量は、重合体100質量部に対して、通常、0.01〜100質量部、好ましくは0.05〜50質量部、より好ましくは0.1〜30質量部である。
【0058】
水素添加反応温度は、通常0〜300℃の温度であり、好ましくは室温〜250℃、特に好ましくは50〜200℃の温度範囲である。
【0059】
また、水素圧力は、通常0.1MPa〜30MPa、好ましくは1MPa〜20MPa、より好ましくは2MPa〜15MPaである。得られた水素添加物の水素添加率は、耐熱性や耐候性の観点から、1H−NMRによる測定において、主鎖の炭素−炭素不飽和結合の通常90%以上、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上である。水素化率が低いと、得られる重合体の透過率、低複屈折性、熱安定性等の光学特性が低下する。
【0060】
本発明に係る共重合体の水素添加反応に於いて用いられる溶媒としては、本発明に係る共重合体を溶解し、溶媒自体が水素添加されないものであればどのようなものでもよく、例えば、テトラヒドロフラン、ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、ジメトキシエタンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、デカリンなどの脂肪族環状炭化水素、メチレンジクロリド、ジクロロエタン、ジクロロエチレン、テトラクロロエタン、クロルベンゼン、トリクロルベンゼンなどのハロゲン化炭化水素等が挙げられ、これらは2種以上混合して使用してもよい。
【0061】
本発明に係る共重合体水素添加物の製造は、重合体溶液から共重合体水素添加物を単離した後、再度溶媒に溶解しても可能であるが、単離することなく、上記有機金属錯体と有機アルミニウム化合物からなる水素添加触媒を加えることにより水素添加反応を行う方法を採用することもできる。
【0062】
水素添加反応の終了後、公知の方法により重合体に残存する水素添加触媒を除去することができる。例えば、吸着剤による吸着法、良溶媒による溶液に乳酸等の有機酸と貧溶媒と水とを添加し、この系を常温下或いは加温下に於いて抽出除去する方法、更には良溶媒による溶液または重合体スラリーを窒素または水素ガスの雰囲気下でトリメチレンジアミン、アニリン、ピリジン、エタンジアミド、水酸化ナトリウム等の塩基性化合物で接触処理した後に、或いは接触処理と同時に酢酸、クエン酸、安息香酸、塩酸等の酸性化合物を接触処理した後、洗浄除去する方法等が挙げられる。
【0063】
本発明に係る共重合体水素添加物溶液から重合体水素化物の回収法は特に限定されず、公知の方法を用いることができる。例えば、撹拌下の貧溶媒中に反応溶液を排出し重合体水素化物を凝固させ濾過法、遠心分離法、デカンテーション法等により回収する方法、反応溶液中にスチームを吹き込んで重合体水素化物を析出させるスチームストリッピング法、反応溶液から溶媒を加熱等により直接除去する方法等が挙げられる。
【0064】
本発明において、水素添加方法を用いると水素添加率は90%以上が容易に達成でき、95%以上、特に99%以上とすることが可能であり、そうして得られる重合体又は共重合体水素添加物は容易に酸化されることがなく、優れた重合体又は共重合体水素添加物となる。
【0065】
《樹脂組成物の添加剤》
本発明のプラスチック製光学素子、あるいは樹脂組成物においては、耐光安定剤としてヒンダードアミン系化合物を用いることを一つの特徴とする。
【0066】
〔ヒンダードアミン系耐光安定剤〕
本発明のプラスチック製光学素子に適用可能なヒンダードアミン系耐光安定剤(以下、HALSと記す。)としては、特に制限はないが、テトラヒドロフランを溶媒として用いたGPCにより測定したポリスチレン換算のMnが1000〜10000であるものが好ましく、2000〜5000であるものがより好ましく、2800〜3800であるものが特に好ましい。Mnが小さすぎると、該HALSをブロック共重合体に加熱溶融混練して配合する際に、揮発のため所定量を配合できなかったり、射出成型等の加熱溶融成型時に発泡やシルバーストリークが生じるなど加工安定性が低下する。また、ランプを点灯させた状態でレンズを長時間使用する場合に、レンズから揮発性成分がガスとなって発生する。逆にMnが大き過ぎると、ブロック共重合体への分散性が低下して、レンズの透明性が低下し、耐光性改良の効果が低減する。したがって、本発明においては、HALSのMnを上記範囲とすることにより加工安定性、低ガス発生性、透明性に優れたレンズが得られる。
【0067】
このようなHALSの具体例としては、N,N′,N″,N′″−テトラキス−〔4,6−ビス−{ブチル−(N−メチル−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−4−イル)アミノ}−トリアジン−2−イル〕−4,7−ジアザデカン−1,10−ジアミン、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、1,6−ヘキサンジアミン−N,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)とモルフォリン−2,4,6−トリクロロ−1,3,5−トリアジンとの重縮合物、ポリ〔(6−モルフォリノ−s−トリアジン−2,4−ジイル)(2,2,6,6,−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕−ヘキサメチレン〔(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ〕などの、ピペリジン環がトリアジン骨格を介して複数結合した高分子量HALS;コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸と1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジノールと3,9−ビス(2−ヒドロキシ−1,1−ジメチルエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンとの混合エステル化物などの、ピペリジン環がエステル結合を介して結合した高分子量HALS等が挙げられる。
【0068】
これらの中でも、ジブチルアミンと1,3,5−トリアジンとN,N′−ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)ブチルアミンとの重縮合物、ポリ〔{(1,1,3,3−テトラメチルブチル)アミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル}{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ}〕、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの重合物などのMnが2,000〜5,000のものが好ましい。
【0069】
本発明に係る樹脂に対する上記配合量は、本発明に係る共重合体100質量部に対して、好ましくは0.01〜20質量部、より好ましくは0.02〜15質量部、特に好ましくは0.05〜10質量部である。添加量が少なすぎると耐光性の改良効果が十分に得られず、屋外で長時間使用する場合等に着色が生じる。一方、HALSの配合量が多すぎると、その一部がガスとなって発生したり、樹脂への分散性が低下して、レンズの透明性が低下する。
【0070】
本発明においては、本発明に係るHALSの他に、本発明の目的効果を損なわない範囲で、その他の耐光安定剤を併用してもよく、例えば、ベンゾフェノン系耐光安定剤、ベンゾトリアゾール系耐光安定剤などを適宜選択して用いることができる。
【0071】
また、本発明に係る樹脂組成物の調製時や樹脂組成物の成型工程においては、上記HALSの他に、必要に応じて各種添加剤(配合剤ともいう)を添加することができる。添加剤については、格別限定はないが、酸化防止剤、熱安定剤、耐候安定剤、紫外線吸収剤、近赤外線吸収剤などの安定剤;滑剤、可塑剤などの樹脂改質剤;染料や顔料などの着色剤;帯電防止剤、難燃剤、フィラーなどが挙げられる。これらの配合剤は、単独で、あるいは2種以上を組み合せて用いることができ、その配合量は本発明に記載の効果を損なわない範囲で適宜選択される。
【0072】
以下に、代表的な添加剤である酸化防止剤について説明する。
【0073】
〔酸化防止剤〕
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤などが挙げられ、これらの中でもフェノール系酸化防止剤、特にアルキル置換フェノール系酸化防止剤が好ましい。これらの酸化防止剤を配合することにより、透明性、耐熱性等を低下させることなく、成型時の酸化劣化等によるレンズの着色や強度低下を防止できる。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができ、その配合量は、本発明の目的を損なわない範囲で適宜選択されるが、本発明に係る重合体100質量部に対して好ましくは0.001〜5質量部、より好ましくは0.01〜1質量部である。
【0074】
フェノール系酸化防止剤としては、従来公知のものが使用でき、例えば、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−(1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル)フェニルアクリレートなどの特開昭63−179953号公報や特開平1−168643号公報に記載されるアクリレート系化合物;オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,2′−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス(メチレン−3−(3′,5′−ジ−t−ブチル−4′−ヒドロキシフェニルプロピオネート))メタン[すなわち、ペンタエリスリメチル−テトラキス(3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニルプロピオネート))]、トリエチレングリコールビス(3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオネート)などのアルキル置換フェノール系化合物;6−(4−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ブチルアニリノ)−2,4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、4−ビスオクチルチオ−1,3,5−トリアジン、2−オクチルチオ−4,6−ビス−(3,5−ジ−t−ブチル−4−オキシアニリノ)−1,3,5−トリアジンなどのトリアジン基含有フェノール系化合物;などが挙げられる。
【0075】
リン系酸化防止剤としては、一般の樹脂工業で通常使用される物であれば格別な限定はなく、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、10−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドなどのモノホスファイト系化合物;4,4′−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシルホスファイト)、4,4′イソプロピリデン−ビス(フェニル−ジ−アルキル(炭素数12〜15)ホスファイト)などのジホスファイト系化合物などが挙げられる。これらの中でも、モノホスファイト系化合物が好ましく、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ジノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイトなどが特に好ましい。
【0076】
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3−チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3′−チオジプロピピオネート、ジステアリル3,3−チオジプロピオネート、ラウリルステアリル3,3−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオ−プロピオネート、3,9−ビス(2−ドデシルチオエチル)−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0077】
また、本発明に係る樹脂組成物に、さらに最も低いガラス転移温度が30℃以下である化合物を配合することにより、透明性、耐熱性、機械的強度などの諸特性を低下させることなく、長時間の高温高湿度環境下での白濁を防止できる。
【0078】
例えば、本発明に係る樹脂組成物と、(1)軟質重合体、(2)アルコール性化合物、からなる群から選ばれる少なくとも1種類の配合剤を含んでなる樹脂組成物とすることができる。これらの配合剤を配合することにより、透明性、低吸水性、機械的強度などの諸特性を低下させることなく、長時間の高温高湿度環境下での白濁を防止できる。
【0079】
これらの中でも、(1)軟質重合体、及び(2)アルコール性化合物が、高温高湿度環境下における白濁防止効果、得られる樹脂組成物の透明性に優れる。
【0080】
(1)軟質重合体
本発明に用いる軟質重合体は、通常30℃以下のTgを有する重合体であり、Tgが複数存在する場合には、少なくとも最も低いTgが30℃以下であることが好ましい。
【0081】
これらの軟質重合体の具体例としては、例えば、液状ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、エチレン・α−オレフィン共重合体、プロピレン・α−オレフィン共重合体、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・プロピレン・スチレン共重合体などのオレフィン系軟質重合体、ポリイソブチレン、イソブチレン・イソプレンゴム、イソブチレン・スチレン共重合体などのイソブチレン系軟質重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレン、ブタジエン・スチレンランダム共重合体、イソプレン・スチレンランダム共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン共重合体、ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン・ブロック共重合体、イソプレン・スチレン・ブロック共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン・ブロック共重合体などのジエン系軟質重合体、ジメチルポリシロキサン、ジフェニルポリシロキサン、ジヒドロキシポリシロキサン、などのケイ素含有軟質重合体、ポリブチルアクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリアクリルアミド、ポリアクリロニトリル、ブチルアクリレート・スチレン共重合体などのα,β−不飽和酸からなる軟質重合体、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル、酢酸ビニル・スチレン共重合体などの不飽和アルコールおよびアミンまたはそのアシル誘導体またはアセタールからなる軟質重合体、エチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、エピクロルヒドリンゴム、などのエポキシ系軟質軟質重合体、フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン−プロピレンゴム、などのフッ素系軟質重合体、天然ゴム、ポリペプチド、蛋白質、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、塩化ビニル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマーなどのその他の軟質重合体、等が挙げられる。これらの軟質重合体は、架橋構造を有したものであってもよく、また、変性反応により官能基を導入したものでもよい。
【0082】
上記軟質重合体の中でもジエン系軟質重合体が好ましく、特に該軟質重合体の炭素−炭素不飽和結合を水素化した水素化物が、ゴム弾性、機械強度、柔軟性、分散性の点で優れる。
【0083】
(2)アルコール性化合物
また、アルコール性化合物は、分子内に少なくとも1つの非フェノール性水酸基を有する化合物で、好適には、少なくても1つの水酸基と少なくとも1つのエーテル結合またはエステル結合を有する。このような化合物の具体例としては、例えば2価以上の多価アルコール、より好ましくは3価以上の多価アルコール、さらに好ましくは3〜8個の水酸基を有する多価アルコールの水酸基の1つがエーテル化またはエステル化されたアルコール性エーテル化合物やアルコール性エステル化合物が挙げられる。
【0084】
2価以上の多価アルコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、トリグリセロール、ジペンタエリスリトール、1,6,7−トリヒドロキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)−4−オキソヘプタン、ソルビトール、2−メチル−1,6,7−トリヒドロキシ−2−ヒドロキシメチル−4−オキソヘプタン、1,5,6−トリヒドロキシ−3−オキソヘキサンペンタエリスリトール、トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートなどが挙げられるが、特に3価以上の多価アルコール、さらには3〜8個の水酸基を有する多価アルコールが好ましい。またアルコール性エステル化合物を得る場合には、α,β−ジオールを含むアルコール性エステル化合物が合成可能なグリセロール、ジグリセロール、トリグリセロールなどが好ましい。
【0085】
このようなアルコール性化合物として、例えば、グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノベヘネート、ジグリセリンモノステアレート、グリセリンジステアレート、グリセリンジラウレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールモノラウレート、ペンタエリスリトールモノベヘレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールジラウレート、ペンタエリスリトールトリステアレート、ジペンタエリスリトールジステアレートなどの多価アルコール性エステル化物;3−(オクチルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(デシルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(ラウリルオキシ)−1,2−プロパンジオール、3−(4−ノニルフェニルオキシ)−1,2−プロパンジオール、1,6−ジヒドロオキシ−2,2−ジ(ヒドロキシメチル)−7−(4−ノニルフェニルオキシ)−4−オキソヘプタン、p−ノニルフェニルエーテルとホルムアルデヒドの縮合体とグリシドールの反応により得られるアルコール性エーテル化合物、p−オクチルフェニルエーテルとホルムアルデヒドの縮合体とグリシドールの反応により得られるアルコール性エーテル化合物、p−オクチルフェニルエーテルとジシクロペンタジエンの縮合体とグリシドールの反応により得られるアルコール性エーテル化合物などが挙げられる。これらの多価アルコール性化合物は単独でまたは2種以上を組み合わせて使用される。これらの多価アルコール性化合物の分子量は特に限定されないが、通常500〜2000、好ましくは800〜1500のものが、透明性の低下も少ない。
【0086】
(3)有機または無機フィラー
有機フィラーとしては、通常の有機重合体粒子または架橋有機重合体粒子を用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデンなどのハロゲン含有ビニル重合体;ポリアリレート、ポリメタクリレートなどのα,β−不飽和酸から誘導された重合体;ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニルなどの不飽和アルコールから誘導された重合体;ポリエチレンオキシド、またはビスグリシジルエーテルからから誘導された重合体;ポリフェニレンオキシド、ポリカーボネート、ポリスルフォンなどの芳香族縮合系重合体;ポリウレタン;ポリアミド;ポリエステル;アルデヒド・フェノール系樹脂;天然高分子化合物などの粒子または架橋粒子を挙げることができる。
【0087】
無機フィラーとしては、例えば、フッ化リチウム、硼砂(硼酸ナトリウム含水塩)などの1族元素化合物;炭酸マグネシウム、燐酸マグネシウム、炭酸カルシウム、チタン酸ストロンチウム、炭酸バリウムなどの2族元素化合物;二酸化チタン(チタニア)、一酸化チタンなどの4族元素化合物;二酸化モリブデン、三酸化モリブデンの6族元素化合物;塩化マンガン、酢酸マンガンなどの7族元素化合物;塩化コバルト、酢酸コバルトなどの8〜10族元素化合物;沃化第一銅などの11族元素化合物;酸化亜鉛、酢酸亜鉛などの12族元素化合物;酸化アルミニウム(アルミナ)、フッ化アルミニウム、アルミノシリケート(珪酸アルミナ、カオリン、カオリナイト)などの13族元素化合物;酸化珪素(シリカ、シリカゲル)、石墨、カーボン、グラファイト、ガラスなどの14族元素化合物;カーナル石、カイナイト、雲母(マイカ、キンウンモ)、バイロース鉱などの天然鉱物の粒子が挙げられる。
【0088】
(1)〜(3)の化合物の配合量は脂環式炭化水素系共重合体と配合される化合物の組み合わせによって決まるが、一般に、配合量が多すぎれば、組成物のガラス転移温度や透明性が大きく低下し、光学材料として使用するのに不適である。また配合量が少なすぎれば、高温高湿下において成型物の白濁を生じる場合がある。配合量としては、脂環式炭化水素系共重合体100質量部に対して、通常0.01〜10質量部、好ましくは0.02〜5質量部、特に好ましくは0.05〜2質量部の割合で配合する。配合量が少なすぎる場合には高温高湿度環境下における白濁防止効果が得られず、配合量が多すぎる場合は成型品の耐熱性、透明性が低下する。
【0089】
《プラスチック製光学素子の製造方法》
次に、本発明のプラスチック製光学素子の製造方法について説明する。
【0090】
上記説明した樹脂組成物を用いて、プラスチック製光学素子を成型する際に、本発明においては、1)成型前の樹脂、ヒンダードアミン系化合物及び樹脂組成物から選ばれる少なくとも1つ、あるいは2)成型された該プラスチック製光学素子のいずれかに、照射光源により、波長370〜480nmでの照射エネルギーが600W・hr/m2以上の条件で光照射することを特徴とする。
【0091】
本発明のプラスチック製光学素子の製造方法の詳細を説明する前に、樹脂組成物の調製方法及びプラスチック製光学素子の成型プロセスについて説明する。
【0092】
〔樹脂組成物の調製方法〕
本発明に係る樹脂組成物は、成型する工程(成型プロセス)の前に特定の加工処理をすることが好ましく、加工処理の段階で通常樹脂に添加される本発明に係るヒンダードアミン系耐光安定剤をはじめとする可塑剤、酸化防止剤、その他の添加剤を加えても良い。
【0093】
本発明に係る樹脂組成物の調製方法としては、混練プロセスまたは混合物を溶媒に溶解、溶媒除去、乾燥を経て組成物を得るプロセス等が好ましい調製方法として挙げられるが、特に好ましい調製方法は、混練プロセスである。また、混練プロセスとして、通常の樹脂の配合に用いる混練装置を用いることができ、例えば、ロール、バンバリーミキサ、二軸混練機、ニーダールーダなどを用いることができるが、好ましくは、バンバリーミキサ、二軸混練機、ニーダールーダ等が挙げられる。樹脂の酸化を防ぐ目的で、密閉系で混練り可能な装置が好適に使用され、さらに好ましくは、窒素やアルゴンなどの不活性ガス化で混練プロセスを行うことが望ましい。
【0094】
〔プラスチック製光学素子の成型方法〕
次いで、本発明のプラスチック製光学素子の成型方法について説明する。
【0095】
本発明のプラスチック製光学素子は、まず、樹脂組成物(樹脂単独の場合もあれば、樹脂と添加剤との混合物の場合もある)を調製し、次いで、得られた樹脂組成物を成型する工程を含む。
【0096】
はじめに、本発明に係る樹脂組成物の成型方法について説明する。
【0097】
本発明に係る樹脂組成物の成型物は、前記樹脂組成物からなる成型材料を成型して得られる。成型方法としては、格別制限されるものはないが、低複屈折性、機械強度、寸法精度等の特性に優れた成型物を得る為には溶融成型が好ましい。溶融成型法としては、例えば、市販のプレス成型、市販の押し出し成型、市販の射出成型等が挙げられるが、射出成型が成型性、生産性の観点から好ましい。
【0098】
成型条件は使用目的、または成型方法により適宜選択されるが、例えば、射出成型における樹脂組成物(樹脂単独の場合または樹脂と添加物との混合物の両方がある)の温度は、成型時に適度な流動性を樹脂に付与して成型品のヒケやひずみを防止し、樹脂の熱分解によるシルバーストリークの発生を防止し、更に、成型物の黄変を効果的に防止する観点から150℃〜400℃の範囲が好ましく、更に好ましくは200℃〜350℃の範囲であり、特に好ましくは200℃〜330℃の範囲である。
【0099】
本発明に係る成型物は、球状、棒状、板状、円柱状、筒状、チューブ状、繊維状、フィルムまたはシート形状など種々の形態で使用することができ、また、低複屈折性、透明性、機械強度、耐熱性、低吸水性に優れるため、本発明の光学用樹脂レンズとして用いられるが、その他の光学部品としても好適である
〔光エネルギーの照射〕
本発明においては、上記のような成型プロセスにおいて、1)成型前の樹脂、ヒンダードアミン系化合物及び樹脂組成物から選ばれる少なくとも1つ、あるいは2)成型されたプラスチック製光学素子のいずれかに、照射光源により、波長370〜480nmでの照射エネルギーが600W・hr/m2以上の条件で光照射することを特徴し、照射エネルギー量の上限としては特に制限はないが、10000W・hr/m2を超えるとその効果はほぼ一定となるため、光照射処理の効率化及び経済性の観点から10000W・hr/m2以下とすることが好ましい。
【0100】
すなわち、光情報記録媒体等に対し、本発明のプラスチック製光学素子、あるいはそれを組み込んだ光ピックアップ装置を用いて、情報の再生あるいは記録を行う前に、少なくとも370〜480nmの波長領域に分光エネルギー分布を有する照射光源を用いて、波長370〜480nmにおける総照射エネルギーが600W・hr/m2以上となる条件で光照射する。このプレ照射を施すことにより、α−オレフィンと一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンからなる共重合体を含む樹脂と、ヒンダードアミン系化合物とを含有する樹脂組成物から成型したプラスチック製光学素子の特有の問題である初期透過率変動を抑制することができた。
【0101】
また、本発明のプラスチック製光学素子を製造する原材料である樹脂、ヒンダードアミン系化合物及びそれらを混練した樹脂組成物から選ばれる少なくとも1つに対し、上記と同様に370〜480nmの波長領域に分光エネルギー分布を有する照射光源を用いてプレ照射処理を行っても同様の効果を得ることができる。
【0102】
(照射光源)
本発明のプラスチック製光学素子の製造方法で適用可能な照射光源としては、370〜480nmの波長領域に分光エネルギー分布を有し、波長370〜480nmにおける総照射エネルギーとして600W・hr/m2以上の条件で照射できる光源であれば特に制限はないが、例えば、キセノン管、ハロゲンランプ、LED等を搭載した照射装置等が好ましく用いられる。LEDを搭載した照射装置としては、例えば、400〜450nmの波長の光を発する青色LEDや、375nm前後の波長の光を発する紫外線LEDを搭載した照射装置が挙げられる。特に、LEDを搭載した照射装置を用いる場合、効率良く光照射を行う観点では、複数のLEDが搭載された照射装置が好ましく用いられる。
【0103】
照射光源の構成としては、上記で規定する波長370〜480nmにおける総照射エネルギーを達成できる範囲であれば、単一の照射光源を用いても良いし、あるいは複数個の照射光源の配列した照射アレイを設け、連続して搬送されるプラスチック製光学素子あるいは原材料である樹脂、ヒンダードアミン系化合物、樹脂組成物等に、本発明で規定する光エネルギーを照射してもよい。また、照射方法として、一度に連続して、本発明で規定する照射エネルギー量を付与してもよく、あるいは照射回数を複数回とし、総照射エネルギーが600W・hr/m2以上となるように不連続に照射してもよい。
【0104】
また、本発明のプラスチック製光学素子の製造方法においては、照射光源の照射時間としては、本発明で規定する波長370〜480nmにおける総照射エネルギーとして600W・hr/m2以上となる条件であれば、その照射時間として特に制限はないが、適切な照度を備えた照射光源を選択、あるいは照射光源の個体数を適宜調整して、2時間以上、20時間以下とすることが好ましい。
【0105】
また、本発明のプラスチック製光学素子の製造方法においては、より短波側の紫外線照射によるプラスチック製光学素子、あるいは原材料である樹脂、ヒンダードアミン系化合物及びそれらを混練した樹脂組成物への影響を低減する観点から、照射光源の波長360nm以下における総照射エネルギー量を100W・hr/m2以下に制限することが好ましく、より好ましくは50W・hr/m2以下、更に好ましは10W・hr/m2以下に制御することである。
【0106】
上記で規定する条件を達成する手段としては、特に制限はないが、例えば、上記で規定する分光エネルギー分布を備えた光源を選択する方法、あるいは光源の光照射部に短波側の紫外線を吸収するフィルター、例えば、アクリル板等を設置して、波長360nm以下の光量を制御する方法等を挙げることができる。
【0107】
(加熱環境下での光照射)
本発明のプラスチック製光学素子の製造方法においては、本発明で規定する照射光源による効果をより促進させる観点から、加温環境下で光照射を行うことが好ましい。光照射時の環境温度としては、本発明のプラスチック製光学素子を構成する樹脂の種類、添加剤の種類、あるいは樹脂組成物等や、照射光源の変形、変質等へ影響の無い温度範囲であれば特に限定はないが、概ね20〜80℃の環境温度で光照射することが好ましく、より好ましくは30℃〜80℃の環境であり、光照射による高い効率を得る観点からは更には40℃〜60℃の範囲の環境下で光照射が行われることが好ましく、特には40℃〜50℃の範囲の環境下で光照射が行われることが好ましい。
【0108】
尚、加熱環境を実現するための加熱装置については、特に限定はなく、例えば、光照射に用いる光源を加熱装置として利用してもよいし、光源とは別に加熱装置を設ける形態でもよい。加熱装置としては、例えば、ギアオーブンや赤外線加熱炉を用いたり、あるいは光照射領域全体に加熱した一定温度の空気を循環させて、所定の温度としてもよい。
【0109】
《本発明に係るプラスチック製光学素子の用途》
本発明のプラスチック製光学素子の製造方法に従って製造されたプラスチック製光学素子は、高い精度の光学特性を具備すると共に、長期間にわたる高い耐久性を有し、かつ短期間での光学安定性に優れた特性を有しており、様々な光学部品への適用が可能である。
【0110】
本発明のプラスチック製光学素子の適用範囲としては、例えば、光学レンズや光学プリズムとしては、カメラの撮像系レンズ;顕微鏡、内視鏡、望遠鏡レンズなどのレンズ;眼鏡レンズなどの全光線透過型レンズ;CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)などの光ディスクのピックアップレンズ;レーザビームプリンターのfθレンズ、センサー用レンズなどのレーザ走査系レンズ;カメラのファインダー系のプリズムレンズなどが挙げられる。
【0111】
光ディスク用途としては、CD、CD−ROM、WORM(追記型光ディスク)、MO(書き変え可能な光ディスク;光磁気ディスク)、MD(ミニディスク)、DVD(デジタルビデオディスク)などが挙げられる。その他の光学用途としては、液晶ディスプレイなどの導光板;偏光フィルム、位相差フィルム、光拡散フィルムなどの光学フィルム;光拡散板;光カード;液晶表示素子基板などが挙げられる。
【0112】
これらの中でも、低複屈折性が要求されるピックアップレンズやレーザ走査系レンズとして好適であり、ピックアップレンズに最も好適に用いられる。
【実施例】
【0113】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0114】
《光学素子の作製》
〔試料1の作製〕
環状オレフィン系重合体としてテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンとエチレンの共重合体(表1には、樹脂1と記載)を用い、これにHALSとしてビス−[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル]セバシエート(表1には、化合物1と記載)を1.0質量%添加し、これを約220℃で混練し、押し出し機でペレット化して樹脂組成物を作製した。
【0115】
このペレット化した樹脂組成物を用いて、インライン方式の射出成型機により、シリンダー温度を240度にて、厚さ3mm、巾20mm、長さ50mmの試験用プレートを作製し、これを試料1とした。
【0116】
〔試料2の作製〕
環状オレフィン系重合体として、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンとエチレンの共重合体を用いて、これを約220℃で混練し、押し出し機でペレット化して樹脂組成物を作製した。
【0117】
このペレット化した樹脂組成物を用いて、インライン方式の射出成型機により、シリンダー温度を240度にて、厚さ3mm、巾20mm、長さ50mmの試験用プレートを作製した。
【0118】
次いで、この試験用プレートに、45℃の環境下で、キセノンフラッシュランプ(照射光源Aと称す、発光波長域約330〜1050nm)を用いて、波長370〜480nmの範囲における総照射エネルギーが3000W・hr/m2となるように24時間かけて照射を行い、試料2を作製した。
【0119】
この時、波長360nm以下における総照射エネルギー量は、キセノンフラッシュランプ発光面に紫外線カットフィルター(アクリル板)を装着し、10W・hr/m2となるようにした。
【0120】
〔試料3の作製〕
試料1の作製において、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンとエチレンの共重合体に代えて、ポリカーボネート樹脂(表1には、樹脂2と記載)を用いた以外は同様にして、試料3を作製した。
【0121】
〔試料4の作製〕
上記作製した試料1の試験用プレートに、45℃の環境下で、キセノンフラッシュランプ(前出)を用いて、波長370〜480nmの範囲における総照射エネルギーが450W・hr/m2となるように2時間かけて照射を行い、試料4を作製した。
【0122】
この時、波長360nm以下における総照射エネルギー量は、キセノンフラッシュランプ発光面に紫外線カットフィルター(アクリル板)を装着し、10W・hr/m2となるようにした。
【0123】
〔試料5〜9の作製〕
上記試料4の作製において、キセノンフラッシュランプの種類または照射時間を適宜変更して、表1に記載の波長370〜480nmの範囲における総照射エネルギーとなるようにした以外は同様にして、試料5〜9を作製した。
【0124】
〔試料10、11の作製〕
上記試料7の作製において、照射光源をキセノンフラッシュランプに代えて、それぞれハロゲンランプ(照射光源B)、複数の紫外線LED(照射光源C、主波長375nm)に変更した以外は同様にして、試料10、11を作製した。
【0125】
〔試料12の作製〕
上記試料7の作製において、樹脂材料としてテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンとエチレンの共重合体に代えて、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ドコセン(表1には、樹脂3と記載)を用いた以外は同様にして、試料12を作製した。
【0126】
〔試料13の作製〕
上記試料7の作製において、樹脂材料としてテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンとエチレンの共重合体に代えて、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン(表1には樹脂4と記載)を用いた以外は同様にして、試料13を作製した。
【0127】
〔試料14の作製〕
上記試料7の作製において、HALSとしてビス−[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル]セバシエートに代えて、CHIMASSORB 944LD(チバガイギー社製、表1には化合物2と記載)を用いた以外は同様にして、試料14を作製した。
【0128】
〔試料15の作製〕
上記試料7の作製において、HALSとしてビス−[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル]セバシエートに代えて、MARK LA−57(旭電化工業社製、表1には化合物3と記載)を用いた以外は同様にして、試料15を作製した。
【0129】
〔試料16の作製〕
上記試料7の作製において、キセノンフラッシュランプ発光面に装着した紫外線カットフィルター(アクリル板)を取り外し、波長360nm以下における総照射エネルギー量を、120W・hr/m2に変更した以外は同様にして、試料16を作製した。
【0130】
〔試料17の作製〕
上記試料7の作製において、光照射環境の温度を15℃に変更した以外は同様にして、試料17を作製した。
【0131】
〔試料18の作製〕
上記試料7の作製において、光照射環境の温度を15℃に変更した以外は同様にして、試料18を作製した。
【0132】
〔試料19〜35の作製〕
上記試料2〜18の作製において、光照射処理を行う時期を、成型した試験用プレートに代えて、ペレット化した樹脂組成物に変更し、同条件で光照射した以外は同様にして、試料19〜35を作製した。
【0133】
《光学素子の評価》
〔初期安定性の評価〕
上記作製した各光学素子の405nmにおける透過率を、JIS−R−1635に従い、日立製作所製分光光度計U−4000型を用いて測定し、これをT1(%)とした。次いで、光ピックアップ装置を用いて、レーザダイオードにより405nmの波長の光を、各試験用プレート上に、直径1cmの円形スポット光として1時間照射した後、同様にして透過率を測定した。次いで、同様に1時間照射して透過率を測定し、この操作を照射時間が20時間となるまで行った。この照射処理過程で、最も透過率の変動が最大となるときの透過率をT2(%)とし、それぞれの試料の上記透過率T1(%)を100としたときの透過率T2の相対透過率(%)を求め、これを初期安定性の尺度とした。この数値が100に近いほど、初期安定性に優れていることを表す。
【0134】
〔耐久性の評価〕
23℃、55%RHの環境室内で、公知の光ピックアップ装置を用いて、光源よりレーザダイオードにより405nmの波長の光を、各試験用プレート上に、直径1cmの円形スポット光として250時間の連続照射を施した後、そのレーサー照射箇所を目視観察し、下記の基準に従って耐久性の評価を行った。
【0135】
◎:連続照射後も、レーザー照射箇所に変質は全く認められない
○:連続照射後に、レーザー照射箇所に極弱い濁りが認められるが実用上は全く問題がない
△:連続照射後に、レーザー照射箇所に弱い白濁現象が認められるが実用上許容の範囲にある
×:連続照射後に、レーザー照射箇所に強い白濁現象が認められ、実用上問題がある
以上により得られた結果を、表1、表2に示す。
【0136】
【表1】

【0137】
【表2】

【0138】
表1、表2の結果より明らかな様に、本発明で規定する照射条件で、作製した光学素子あるいは樹脂組成物にプレ照射を行った試料は、比較例に対し、光ピックアップ装置で用いられる405nmの波長の光を照射した初期段階での透過率変動が極めて小さいことが分かる。更に、長期間にわたり405nmの波長の光を連続照射しても、白濁を起こすことなく耐久性に優れていることが分かる。なお、波長370〜480nmにおける総照射エネルギーとして10000W・hr/m2以上の条件で同様の評価を行った結果、試料9、あるいは試料26と同等の結果であり、照射エネルギー量は経済的及び効率を考慮すると10000W・hr/m2以下とすることが好ましいことを確認した。
【0139】
また、本発明の試料をプラスチック製光学素子に加工し、公知の光ピックアップ装置に組み込んで、その効果を確認した結果、初期段階での記録性が安定し、読み取り不良等の発生が無いことを確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともα−オレフィンと下記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンからなる共重合体を含む樹脂と、ヒンダードアミン系化合物とを含有する樹脂組成物を溶融、成型して製造するプラスチック製光学素子の製造方法において、成型前の該樹脂、該ヒンダードアミン系化合物及び該樹脂組成物から選ばれる少なくとも1つに、照射光源により、波長370〜480nmでの照射エネルギーが600W・hr/m2以上の条件で光照射することを特徴とするプラスチック製光学素子の製造方法。
【化1】

〔式中、nは0または1を表し、mは0または1以上の整数を表し、qは0または1を表し、R1〜R18、Ra及びRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表す。〕
【化2】

〔式中、p及びqはそれぞれ0または1以上の整数を表し、r及びsはそれぞれ0、1または2を表し、R21〜R39はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基またはアルコキシ基を表す。〕
【請求項2】
少なくともα−オレフィンと下記一般式(I)または(II)で表される環状オレフィンからなる共重合体を含む樹脂と、ヒンダードアミン系化合物とを含有する樹脂組成物を溶融、成型して製造するプラスチック製光学素子の製造方法において、成型された該プラスチック製光学素子に、照射光源により、波長370〜480nmでの照射エネルギーが600W・hr/m2以上の条件で光照射することを特徴とするプラスチック製光学素子の製造方法。
【化3】

〔式中、nは0または1を表し、mは0または1以上の整数を表し、qは0または1を表し、R1〜R18、Ra及びRbは、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子または炭化水素基を表す。〕
【化4】

〔式中、p及びqはそれぞれ0または1以上の整数を表し、r及びsはそれぞれ0、1または2を表し、R21〜R39はそれぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基またはアルコキシ基を表す。〕
【請求項3】
前記照射光源の照射時間が、4時間以上、100時間以下であることを特徴とする請求項1または2に記載のプラスチック製光学素子の製造方法。
【請求項4】
前記照射光源の波長360nm以下における総照射エネルギー量が、100W・hr/m2以下であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のプラスチック製光学素子の製造方法。

【公開番号】特開2007−119567(P2007−119567A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312489(P2005−312489)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(303000408)コニカミノルタオプト株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】