説明

プラスチック製輸送及び貯蔵用タンク

【課題】 安価に製造することができ、耐火性でプラスチックからなる輸送及び貯蔵用タンクを提供する。
【解決手段】 このタンクは、外側の層が熱の影響に対する少なくとも一つの耐火性媒体を含有する耐火層として構成された多層構造を有する。このプラスチック製の耐火層は、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンを含有することができる。更に、この耐火層は、熱の影響下において不燃性の表面を形成するポリマープラスチックから製造することができる。更に、このプラスチック製タンクの耐火層は、例えば、耐熱性の赤燐又はアルミナから成るナノ粒子を含有するプラスチック、或いは発泡グラファイトから構成することができる。最後に、この耐火層は、前記の延焼防止用素材の複数の層から成る複合層として構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液状、どろどろした形、粒状及び粉末状の収容商品のための、プラスチックから成る輸送及び貯蔵用タンク、特に、パレット状台座上に立脚する、上方の閉鎖可能な注入用ソケットと、排出栓を備えた下方の排出用ソケット又は上方の閉鎖可能な排出用ソケットとを備えたプラスチック製の内部容器と、この内部容器を取り囲む、金属製の格子状の棒又は金属板、或いはプラスチック繊維から成る外被とを有するパレット式タンクに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な収容商品の輸送と貯蔵のためのプラスチック製タンクは、一般的に耐火性ではない。
【0003】
特許文献1は、プラスチック製内部容器と外被との間に配置された、熱放射を反射する金属板材料から成る耐火性外被と、内部容器と耐火性外被との間に配備された、グラスファイバー又はアルミニウムファイバーから成る織物又はフリース、ロックウールから成るセラミックフリース、或いは耐火性の水ガラスを染み込ませたボール紙から製造することができる追加の火及び熱の遮断体とを有する、この種のパレット式タンクを記載している。
【0004】
プラスチック製の内部容器が、熱放射を反射する金属板材料から成る耐火性外被及び内部容器と耐火性外被との間に配置された、火の影響に対する追加の火及び熱の遮断体によって保護される、この周知のパレット式タンクの製造は、比較的負担がかかり、それに対応して高価となる。
【特許文献1】ドイツ特許公開第10161693号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この発明の課題は、安価に製造することができ、耐火性で、プラスチックから成る、様々な種類の収容商品のための輸送及び貯蔵用タンクを開発することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この課題は、この発明にもとづき、請求項1と請求項8によるプラスチック製の輸送及び貯蔵用タンクによって解決される。
【0007】
従属請求項は、この発明の有利で目的に適った改善構成を含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下において、図面にもとづき、この発明によるプラスチック製の内部容器を備えたパレット式タンクの二つの実施構成を説明する。
【0009】
図1による液体を輸送及び貯蔵するための単一目的及び多目的タンクとして用いることができるパレット式タンク1は、主要な構成部品として、前方壁面3と、後方壁面4と、二つの側方壁面5,6と、下方と上方の床面7,8と、上方の床面7に形成された、蓋10で閉鎖可能な注入用ソケット9と、前方壁面3の下方部分に形成され、排出栓12を備えた排出用ソケット11とを有する交換可能な平行六面体形状のプラスチック製内部容器2を備えており、このタンクは、更に、内部容器2を収容するための金属製で交差する形の水平と垂直の格子状の棒14,15から成る外側の格子状外被13と、縦横のサイズがヨーロッパ標準に準拠したパレット状の台座16とを備えている。
【0010】
排出底として構成された、内部容器2の下方の床面7は、容器の後方壁面4から前方壁面3の排出用ソケット11の方に傾斜した中央の排出用溝17を備えており、内部容器2は、下方の床面7と当接しており、この床面は、台座16の底部18と整合している。
【0011】
フォークリフト、通常の操作機器及び同等の輸送手段を用いて取り扱うために構成されたパレット式タンク1の台座16の底部18は、四つの角の脚部19〜22と、後方中央の脚部23と、パレット式タンク1の排出栓12の下に配置され、底部18から形成された前方中央の脚部24と、底部18用のブリッジ状補強用金属板27の外側の端部によって形成された二つの側方中央の脚部25,26とで支えられている。
【0012】
図2は、高密度のポリエチレンからブロー成形により製造されたプラスチック製内部容器2の前方壁面3と、後方壁面4と、側方壁面5,6と、下方及び上方の床面7,8とが、内側層28と、中間層29と、熱の影響に対する外側耐火層30とから構成されることを図解している。
【0013】
特に、そして全く一般的に、例えば、プラスチック繊維などのプラスチックから成る容器において、パレット式タンク1の内部容器2の外側耐火層30を製造するためには、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンを含有する様々なプラスチックが考慮の対象となる。
【0014】
更に、プラスチック製タンクの場合、この耐火層は、熱の影響下において不燃性の表面を形成するポリマープラスチックから製造することができる。
【0015】
更に、このプラスチック製タンクの耐火層は、例えば、耐熱性の赤燐又はアルミナから成るナノ粒子を含有するプラスチックから構成することができる。
【0016】
発泡グラファイトから構成された外側耐火層30は、火の影響に対する効果的な保護に貢献するものである。この発泡グラファイトは、熱の影響により膨張して、プラスチック製内部容器の表面に、格子状外被13の格子棒14,15を部分的又は完全に取り囲む、図2に模式的に図示した泡沸層31を形成する。この泡沸層は、内部容器の収容商品を火炎から隔離して、内部容器のポリエチレン製内壁が更に溶けるのを防止する。
【0017】
更に、耐火層30は、前述した耐火層の中の少なくとも二つによって形成された複合層として構成することができる。
【0018】
同じ手法により、内部容器2の支持層としての中間層29も、複合層により構成することができる。
【0019】
図3に図示したパレット式タンク32は、図1によるパレット式タンク1とは、内部容器2の注入用ソケット9に対する中央のアクセス用開口部34を備え、格子状外被13に固定された取り外し可能な保護用蓋33と、格子状外被13に取り付けられ、四つの側方壁面35a〜35dを備えた耐火性外被35とが異なる。
【0020】
輸送及び貯蔵用タンク32の耐火性外被35、保護用蓋33、台座16の角の脚部19〜22及び中央の脚部23〜25は、熱放射を反射する金属板材料から製造される。
【0021】
耐火性外被35の側方壁面35a〜35dは、台座16の底部18と格子状外被13の垂直の格子棒15の引っ込められた下方端部15aとの間に挟み込まれる。
【0022】
更に、耐火性外被35の側方壁面35a〜35dを垂直の格子棒15の下方端部15aと格子状外被13の下方の枠36の両方又は一方と固定する方策が有る。
【0023】
耐火性外被35の外側に向かって僅かに曲がった上方周縁部37によって、内部容器2の耐火性外被35への取り付けが容易となるとともに、取り付けの際の内部容器の損傷が防止される。
【0024】
耐火性外被35の上方周縁部37の縁38に取り付けられた保護用蓋33は、耐火性外被35と共に、格子状外被13の垂直の格子棒15の上方端部15b上に固定される。
【0025】
ブロー成形により製造されたプラスチック製内部容器2は、図1によるパレット式タンク1の内部容器と同様に、内側層28と、中間層29と、熱の影響に対する外側耐火層30とから構成され、その際耐火層は、図1によるパレット式タンクと関連して記述した延焼防止素材を含有することができる。
【0026】
内部容器2の外側の単層又は多層の耐火層30を発泡グラファイトで製造した場合、火災時に、内部容器2と耐火性外被35の側方壁面35a〜35d、保護用蓋33及び台座16の底部18との間に有る空洞が、熱の影響によって膨張した発泡グラファイトの泡沸層31で満たされることとなる。金属板材料から成る耐火性外被35と内部容器2の外側耐火層の発泡グラファイト製泡沸層31が、火災時におけるパレット式タンクに対する有効な防火を保証するものである。
【0027】
耐火性を備えたパレット式タンクの別の実施構成では、内部容器2と外被13との間に配置された、金属板材料から成る耐火性外被35は、熱の影響に対する少なくとも一つの耐火性媒体を含有するプラスチック材料から成る内側層と外側層の両方又は一方を有する。
【0028】
最後に、前述した輸送及び貯蔵用タンクでは、内部容器の耐火層に、電導性のプラスチック材料をコーティングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】パレット式タンクの第一の実施構成の斜視図
【図2】図1のパレット式タンクにおける三層構造のプラスチック製内部容器の壁面と格子状外被の横断面を拡大した図
【図3】パレット式タンクの第二の実施構成の斜視図
【図4】蓋の領域の縦断面を部分的に拡大した図
【図5】図3のタンクの底領域の縦断面を部分的に拡大した図
【符号の説明】
【0030】
1 パレット式タンク
2 内部容器
3 前方壁面
4 後方壁面
5,6 側方壁面
7 下方の床面
8 上方の床面
9 注入用ソケット
10 蓋
11 排出用ソケット
12 排出栓
13 格子状外被
14,15 格子棒
15a 格子棒15の引っ込められた下方端部
15b 格子棒15の上方端部
16 台座
17 排出用溝
18 台座16の底部
19〜22 台座16の脚部
23〜26 台座16の中央の脚部
27 補強用金属板
28 内側層
29 中間層
30 外側耐火層
31 泡沸層
32 パレット式タンク
33 保護用蓋
34 中央の開口部
35 耐火性外被
35a〜35d 耐火性外被35の側方壁面
36 格子状外被13の下方の枠
37 耐火性外被35の上方周縁部
38 上方周縁部37の縁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液状、どろどろした形、粒状及び粉末状の収容商品のための、プラスチックから成る輸送及び貯蔵用タンク、特に、パレット状台座上に立脚する、上方の閉鎖可能な注入用ソケットと、排出栓を備えた下方の排出用ソケット又は上方の閉鎖可能な排出用ソケットとを備えたプラスチック製の内部容器と、この内部容器を取り囲む、金属製の格子状の棒又は金属板、或いはプラスチック繊維から成る外被とを有するパレット式タンクにおいて、
熱の影響に対する少なくとも一つの耐火性媒体を含有する少なくとも一つの外側耐火層(30)を備えた、ブロー成形によって製造されたプラスチック製内部容器(2)の多層構造(28〜30)を特徴とするタンク。
【請求項2】
耐火層(30)が、少なくとも一つのハロゲンを添加されていることを特徴とする請求項1に記載のタンク。
【請求項3】
耐火層(30)が、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素などのハロゲンを含有することを特徴とする請求項2に記載のタンク。
【請求項4】
熱の影響下において不燃性の表面を形成するポリマープラスチックから成る耐火層(30)を特徴とする請求項1に記載のタンク。
【請求項5】
赤燐又はアルミナから成るナノ粒子を含有するプラスチックから成る耐火層(30)を特徴とする請求項1に記載のタンク。
【請求項6】
発泡グラファイトから成る耐火層(30)を特徴とする請求項1に記載のタンク。
【請求項7】
耐火層(30)が、請求項2から6までのいずれか一つに記載の少なくとも二つの層から成る複合層として構成されていることを特徴とする請求項1に記載のタンク。
【請求項8】
耐火層(30)が、電導性のプラスチック材料でコーティングされていることを特徴とする請求項1から7までのいずれか一つに記載のタンク。
【請求項9】
プラスチック製内部容器(2)と外被(13)との間に配置された、金属板材料から成る耐火性外被(35)を特徴とする請求項1から8までのいずれか一つに記載のタンク。
【請求項10】
液状、どろどろした形、粒状及び粉末状の収容商品のための、プラスチックから成る輸送及び貯蔵用タンク、特に、パレット状台座上に立脚する、上方の閉鎖可能な注入用ソケットと、排出栓を備えた下方の排出用ソケット又は上方の閉鎖可能な排出用ソケットとを備えたプラスチック製の内部容器と、この内部容器を取り囲む、金属製の格子状の棒から成る外被とを有するパレット式タンクにおいて、
プラスチック製内部容器(2)と外被(13)との間に配置された、熱の影響に対する少なくとも一つの耐火性媒体を含有するプラスチック材料から成る内側の層と外側の層の両方又は一方を備えている、金属板材料から成る耐火性外被(35)を特徴とするタンク。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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