説明

プラスミノーゲンおよびプラスミンの変異体

本発明は、プラスミンのプロテアーゼ活性の自己触媒による崩壊を減少させる、または防ぐ、触媒ドメインにおける1つ又は複数の点突然変異を含むプラスミノーゲンおよびプラスミンの変異体に関する。プラスミノーゲンおよびプラスミンの前記変異体の組成物、用途、および使用方法も開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、プラスミンのプロテアーゼ活性の自己触媒による崩壊を減少させる、または防ぐ、触媒ドメインにおける1つ又は複数の点突然変異を含むプラスミノーゲンおよびプラスミンの変異体に関する。プラスミノーゲンおよびプラスミンの前記変異体の組成物、用途、および使用方法も開示される。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
酵素前駆体であるプラスミノーゲンの活性化により、線維素溶解活性/血栓溶解活性を有するセリンプロテアーゼであるプラスミンが形成される。内因性のプラスミノーゲンの活性化は、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、スタフィロキナーゼもしくはtPA、またはこれらの任意の変異体等のプラスミノーゲン活性化因子の投与によって引き起こされ、また強化される。活性化において、プラスミノーゲンタンパク質は、タンパク質分解酵素で、5つのクリングルドメインを含む重鎖、および触媒ドメインを含む軽鎖に切断される。両鎖は2つのジスルフィド結合によってつながっている。活性化後、自己分解による切断により、重鎖からN末端のセグメント(ヒトプラスミンでは78個のアミノ酸、ウシプラスミンでは77個のアミノ酸)が除去される。ウシプラスミンの重鎖はさらに、クリングル3と4の間で自己触媒により切断され得、それゆえウシのミジプラスミンが生じる(Christensenら、1995、Biochem J 305、97−102)。プラスミノーゲンのプラスミンへの活性化は、ヒトプラスミノーゲンにおけるR561−V562のペプチド結合の切断により引き起こされ、軽鎖での大規模なコンホメーション変化を伴い、前記軽鎖内の触媒三残基内のプライミング、または活性化がもたらされる。ストレプトキナーゼおよびスタフィロキナーゼ等の細菌のプラスミノーゲン活性化因子は、プラスミノーゲンと複合体を形成し、プラスミノーゲンのR561−V562のペプチド結合を切断せずに、活性化因子とプラスミノーゲンの複合体形成におけるコンホメーション変化により、プラスミノーゲンの触媒部位を活性化する(プラスミノーゲンの活性化メカニズムは、例えば、Terzyanら、2004;Proteins 56:277−284の序論で概説されている)。
【0003】
プラスミノーゲン活性化因子は間接的な血栓溶解剤として作用するが、プラスミンそれ自体を線維素溶解/血栓溶解剤として直接使用することも提案されている。しかしながら、プラスミンが多くのプロテアーゼと同様、自己触媒によるタンパク質分解を受けやすいという事実がそのような直接利用の妨げとなっており、この分解は産物阻害を受ける二次カイネティクスに続いて起こる(Jespersenら、1986、Thrombosis Research 41、395−404)。
【0004】
1960年代の前半に、プラスミンの酸性pHでの安定化、または、リジン等のアミノ酸が存在する条件で、中性pHでの安定化が確立された。にもかかわらず、プラスミンがpH3.8で貯蔵されていてもLys104、Arg189およびLys622(リジンプラスミンに対する番号付け)の後で自己分解により切断されることが報告されている(国際公開第01/36608号パンフレット)。プラスミンがpH2.2よりも低いpHで貯蔵されている場合、位置Asp62、Asp154およびAsp346のAsp−Pro(D−P)の間で、自己分解ではなく酸による切断が生じる(国際公開第01/36608号パンフレット)。これは、あきらかな自己触媒による分解がこれ以上生じないところまでpHを低減できるが、そこでは酸加水分解が不安定化の1つの要因となることを示している。国際公開第01/36608号パンフレットには、プラスミンのペプチド結合が中性pHで(自己触媒的)加水分解を受けやすいことについての情報は記載されていない。プラスミンの既知の安定剤には、グリセロール、十分に高いイオン強度、フィブリノーゲンおよびε−アミノカプロン酸(EACA)があり、Jespersenらにより開示されている(1986、Thromb Res 41、395−404)。リジンおよびリジン誘導体(EACAおよびトラネキサム酸等)、およびp−アミノメチル安息香酸(PAMBA)も、さらなる既知の安定剤として挙げられる(Uehsimaら、1996、Clin Chim Acta 245、7−18;Verstraete 1985、Drugs 29、236−261)。米国特許第4,462,980号明細書には、酸性条件での貯蔵にもかかわらず、プラスミン分解の一因となるプラスミン凝集体が形成されることが報告されている。この問題を、ポリヒドロキシ化合物の付加により解決する方法が米国特許第4,462,980号明細書に記載されている。プラスミンの安定化方法には他に、オリゴペプチド化合物の付加もある(例えば米国特許第5,879,923号明細書)。あるいは、プラスミンの触媒部位を、誘導体化、例えばアシル化によって可逆的にブロックできる(欧州特許第0009879号明細書)。酵素を安定化する手段として、プラスミンのペグ化も提案されている(国際公開第93/15189号パンフレット)。
【0005】
プラスミンの切断型以外のプラスミン変異体が多数記載されており、キメラ的なマイクロプラスミン(国際公開第2004/045558号パンフレット)、および2つの鎖の切断部位に点突然変異を有する変異体(米国特許第5,087,572号明細書)、または触媒三残基アミノ酸に点突然変異を有する変異体(Mhashilkarら 1993、Proc Natl Acad Sci USA 90、5374−5377;Wangら、2001、J Mol Biol 295、903−914)がある。Wangら(1995、Protein Science 4、1758−1767および1768−1779)は、位置545、548、550、555、556、558、560−564、585、740および788のアミノ酸が変異している、多数の一連のマイクロプラスミノーゲン突然変異体を報告した。アミノ酸位置558および566のシステインがセリンに置換されている二重突然変異体はLindeらにより報告された(1998、Eur J Biochem 251、472−479)。Takeda−Shitakaら(1999、Chem Pharm Bull 47、322−328)は、活性が減少したプラスミン変異体、位置601のアミノ酸のアラニンがスレオニンへ置換した変異に言及している。上記で言及したアミノ酸位置はすべて、位置1のアミノ酸Gluから始まるGlu−‐プラスミノーゲンに対する位置である。非切断性プラスミノーゲン変異体(重鎖および軽鎖の間が切断されない)が国際公開第91/08297号パンフレットに記載されている。Dawsonら(1994、Biochemistry 33、12042−12047)は、位置719のArg(R719E)の代わりにGluを有するGlu−プラスミノーゲン変異体がストレプトキナーゼへの親和性を減少させていることを記載している。Jespersら(1998、Biochemistry 37、6380−6386)はAlaスキャンにおいて、一連のファージ提示マイクロプラスミノーゲンの単一サイト突然変異体H569A、R610A、K615A、D660A、Y672A、R712A、R719A、T782A、R789Aを産生し、位置719でのアルギニンがスタフィロキナーゼとの相互作用のカギであることを発見した。D660A突然変異体は、発現が非常に低いため、詳細な特徴は不明である。R719A突然変異体のみをさらに可溶型で産生した。どの突然変異体でも、タンパク質分解活性は著しい変化を示さなかった(基質S−2403)。Jespersら(1998)は、彼らの分析に活性サイト突然変異体S741Aも含め、この突然変異体の結晶構造は、Wangら(2000、J Mol Biol 295、903−914)に開示されている。ストレプトキナーゼ/プラスミノーゲン相互作用部位を解明するさらなる試みで、Terzyanら(2004、Proteins 56、277−284)は、既に突然変異している(R561A)変異体のマイクロプラスミノーゲン突然変異体を複数(K698M、D740N、S741A)報告した。R561A突然変異体はプラスミノーゲンのタンパク質分解活性を妨げ、したがって活性マイクロプラスミンの形成を妨げる(これはストレプトキナーゼ−マイクロプラスミノーゲン複合体の接触−活性化メカニズムの研究を複雑化するだろう)。Terzyanら(2004)はさらに、二重突然変異体R561A/K698Mとは明らかに機能的には無関係な、「偶然得られた」三重突然変異体R561A/H569Y/K698Mに言及している。Wangら(2000、Eur J Biochem 267、3994−4001)は、ストレプトキナーゼ/プラスミン(プラスミノーゲン)相互作用の研究において、Cys536AlaおよびCys541Serが既に突然変異している一連のマイクロプラスミノーゲン(Glu−プラスミノーゲンのアミノ酸530−791)変異体セットを産生した。これらの突然変異体は、R561A/K698G、R561A/K698AおよびR561a/K698Q二重突然変異体と同様、上述のR561A突然変異(Terzyanら(2004))を含む。同じC536A/C541S突然変異において、K698GおよびK698A単一突然変異も導入した。K698Gは精製が困難だったため、詳細な特徴は不明である。上記の研究では、プラスミノーゲン/プラスミン分子の特徴をよりよく理解することが狙いであったが、プラスミノーゲン/プラスミン突然変異体の臨床上の有益性もしくは利点、または、推定される臨床上の優位性についてはなんら報告されていない。Peisachら(1999、Biochemistry 38、11180−11188)は、M585Q、V673MおよびM788L突然変異を含むマイクロプラスミノーゲンの結晶構造の決定に成功した。
【0006】
NguyenおよびChrambach(1981、Preparative Biochem 11、159−172)は、10.0kDaの「微量で未確認のタンパク質構成成分」の存在を報告した。ウロキナーゼに活性化されたプラスミンの未精製の市販製剤(Homolysin)の還元SDS−PAGEに基づいて、ヒトプラスミンのpHによる自己分解の差異はShiおよびWu(1988、Thrombosis Research 51、355−364)によって詳細に記載されている。Ohyamaら(2004、Eur J Biochem 271、809−820)は、がんの治療における非リジンアナログプラスミノーゲン修飾物質の使用を提案している。このような化合物は、(プラスミノーゲン活性化因子ウロキナーゼの存在下)プラスミンの自己タンパク質分解を増強させ、アンギオスタチンの形成を強化するからである。Ohyamaら(2004)の表3は、自己タンパク質分解を増強する化合物に接触させたプラスミン内の15箇所もの切断部位を記載している。先行研究の観点から彼らの観察を考察すると、自己タンパク質分解を増強する化合物は、多かれ少なかれ選択的にB/軽鎖のタンパク質分解を増強するが、自己タンパク質分解を増強する化合物の非存在下では、A/重鎖、およびB鎖の両方の分解はわずかであったように思われる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の方法/変異体のいずれもが、分子レベルで安定したプラスミンを提供するという問題を解決しないことは明らかである。自己触媒による分解に内因的に耐性のある触媒ドメインを有するプラスミン変異体(またはプラスミンが由来する、同様のプラスミノーゲン変異体)の提供は、効果的で安全な長期貯蔵に向けた、また、血栓溶解療法、または眼の後部硝子体剥離もしくは硝子体の液化の誘導等におけるプラスミンの効果的で安全な治療用途に向けた、大きな前進となるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明は、触媒ドメインにおいて、位置P+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が自己タンパク質分解する傾向にある位置Pの内部アミノ酸の少なくとも1つが、位置P+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が、自己タンパク質分解しにくいまたは全く自己タンパク質分解する傾向がないアミノ酸へ突然変異していることを特徴とする、単離されたプラスミノーゲン変異体、もしくはそれから得られたプラスミン、または単離されたプラスミン変異体、または前記プラスミンのいずれかのタンパク質分解性が活性な、または可逆的に不活性な誘導体に関する。
【0009】
あるいは、本発明のプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体は、自身の触媒ドメインにおいて、位置P+1と位置P’+1との内部アミノ酸とのペプチド結合が自己タンパク質分解する傾向にある位置PおよびP’の内部アミノ酸の少なくとも2つが、位置P+1と位置P’+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が、自己タンパク質分解しにくいまたは全く自己タンパク質分解する傾向がないアミノ酸へ突然変異している。
【0010】
特に、前記位置Pまたは位置PおよびP’の内部アミノ酸は、リジンまたはアルギニンである。
【0011】
さらに詳細には、前記位置Pまたは位置PおよびP’の少なくとも1つまたは2つの内部のアミノ酸は、
(i)ヒトプラスミンの触媒ドメインの位置137のリジン、もしくは非ヒトプラスミンの触媒ドメインにおいて対応するリジンまたはアルギニン;
(ii)ヒトプラスミンの触媒ドメインの位置147のリジン、もしくは非ヒトプラスミンの触媒ドメインにおいて対応するリジンまたはアルギニン;または、
(iii)ヒトプラスミンの触媒ドメインの位置158のアルギニン、もしくは非ヒトプラスミンの触媒ドメインにおいて対応するアルギニンまたはリジン;の少なくとも1つ、または少なくとも2つであり、前記ヒトプラスミンの触媒ドメインは位置1のアミノ酸バリンで始まり、これはヒトGlu−プラスミノーゲンの位置562で生じているのと同じバリンアミノ酸である。
【0012】
さらにあるいは、前記少なくとも1つの位置Pの内部アミノ酸は、ヒトプラスミンの触媒ドメインの位置147のリジンであるか、または非ヒトプラスミン触媒ドメインにおいて対応するリジンまたはアルギニンであり、前記ヒトプラスミンの触媒ドメインは位置1のアミノ酸バリンで始まり、これはヒトGlu−プラスミノーゲンの位置562で生じているのと同じバリンアミノ酸である。必要に応じて、ヒトプラスミンの触媒ドメインの位置147のリジン(または非ヒトプラスミンの触媒ドメインにおいて対応するリジンまたはアルギニン)の突然変異を有するプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体はさらに、ヒト触媒ドメインの位置137および/または158の内部アミノ酸の突然変異または、非ヒトプラスミンの触媒ドメインにおいて対応するリジンおよび/またはアルギニンの突然変異を含んでいてもよく、前記ヒトプラスミンの触媒ドメインは位置1のアミノ酸バリンで始まり、これはヒトGlu−プラスミノーゲンの位置562で生じているのと同じバリンアミノ酸である。
【0013】
あるいは、本発明のプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体は以下のようなものである:
(i)前記位置Pの内部アミノ酸の少なくとも1つの突然変異が、ヒトプラスミンの触媒ドメインの位置137(これはヒトGlu−プラスミノーゲンを基準としたアミノ酸位置698である)のリジンの、自己タンパク質分解により耐性のある、アミノ酸137と138の間のペプチド結合を与えるアミノ酸への突然変異である場合、前記プラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体またはプラスミン誘導体は、(ヒトGlu−プラスミノーゲンを基準とした)アミノ酸位置561および562で無傷の活性化部位を含み、および触媒ドメインの外の(ヒトGlu−プラスミノーゲンを基準とした)位置536および541のアミノ酸が存在する場合は、前記アミノ酸は野生型のシステインであり、または、
(ii)前記位置Pの内部アミノ酸の少なくとも1つの突然変異が、ヒトプラスミンの触媒ドメインの位置158(これはヒトGlu−プラスミノーゲンを基準としたアミノ酸位置719である)のアルギニンの、アラニンまたはグルタミンへの突然変異である場合、したがって、位置P’+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が自己タンパク質分解する傾向にある位置P’の、ヒトプラスミンの触媒ドメインの他の内部アミノ酸の少なくとも1つが、位置P’+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が、自己タンパク分解しにくいまたは全く自己タンパク質分解する傾向がないアミノ酸へ突然変異している。
【0014】
上記の(i)または(ii)に記載のプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体はさらに、ヒト触媒ドメインの位置147の内部アミノ酸の突然変異、または、非ヒトプラスミンの触媒領域において対応するリジンまたはアルギニンの突然変異を含み、前記ヒトプラスミンの触媒領域は位置1のアミノ酸バリンで始まり、これはヒトGlu−プラスミノーゲンの位置562で生じているのと同じバリンアミノ酸である。
【0015】
本発明のプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体のいずれかは、さらに、その自己分解定数が野生型プラスミンの自己分解定数の最大で95%であるという特徴を有してもよい。
【0016】
本発明のプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体のいずれかは、さらに、触媒定数kcatが野生型プラスミンのkcatの10%〜200%の範囲にあるという特徴を有してもよい。
【0017】
本発明のプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体のいずれかは、さらに、その自己分解定数が野生型プラスミンの自己分解定数の最大で95%であり、その触媒定数kcatが野生型プラスミンのkcatの10%〜200%の範囲にあるという特徴を有してもよい。
【0018】
いかなる制限も課すことなく、本発明の上記のプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体のいずれかは、Glu−プラスミノーゲンまたはGlu−プラスミン、Lys−プラスミノーゲンまたはLys−プラスミン、ミジプラスミノーゲンまたはミジプラスミン、ミニプラスミノーゲンまたはミニプラスミン、マイクロプラスミノーゲンまたはマイクロプラスミン、デルタプラスミノーゲンまたはデルタプラスミンの1つであってもよい。
【0019】
本発明はさらに、医薬として使用する本発明の単離されたプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体、またはこれらのいずれかの組合せに関する。
【0020】
本発明はまた、本発明の単離されたプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体、またはこれらのいずれかの組合せ、および薬学的に許容される希釈剤、担体または補助剤の少なくとも1つを含む組成物に関する。そのような組成物は、抗凝血剤、血栓溶解剤、抗炎症剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗真菌剤、血管新生阻害剤、抗有糸分裂剤、抗ヒスタミン剤または麻酔剤のうちの少なくとも1つを任意でさらに含んでもよい。
【0021】
本発明はまた、本発明の単離されたプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体のあらゆる有益な適用をも含む。いかなる制限も課すことなく、このような適用には、患者における病的なフィブリン沈着の溶解の誘導または促進、眼の後部硝子体剥離の誘導、および/または眼の硝子体液化の誘導、患者の眼の硝子体切除手術の容易化、患者の損傷した組織の酵素的壊死組織除去、患者における循環フィブリノーゲンの減少、患者におけるα2−抗プラスミンレベルの減少、または病的なフィブリン沈着のリスクの減少等がある。
【0022】
本発明はさらに、安定した自己タンパク質分解性を有するプラスミン変異体をスクリーニングするための方法に関し、前記方法は、
(i)野生型プラスミンの触媒ドメインで、位置P+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が自己タンパク質分解する傾向にある位置Pの内部アミノ酸を少なくとも1つ同定するステップと、
(ii)(i)において同定された位置Pのアミノ酸を、位置P+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が、自己タンパク質分解しにくいまたは全く自己タンパク質分解する傾向がないアミノ酸に突然変異させるステップと、
(iii)(ii)で得られた突然変異体の自己タンパク質分解安定性を測定するステップと、
(iv)安定した自己タンパク質分解性を有する変異体として、自己タンパク質分解性が安定している突然変異体を(iii)から選択するステップと
を含む。
【0023】
あるいは、安定した自己タンパク質分解性を有するプラスミン変異体をスクリーニングするための方法は、
(i)ヒトプラスミンの触媒ドメインの位置137、147および158のアルギニンまたはリジンアミノ酸の、または、非ヒトプラスミンにおいて対応するアルギニンまたはリジンの、1つ又は複数を、天然のアミノ酸とは異なるアミノ酸へ突然変異させるステップと、
(ii)(i)から得られた突然変異体の自己タンパク質分解安定性を測定するステップと、
(iii)安定した自己タンパク質分解性を有するプラスミン変異体として、自己タンパク質分解性が安定している突然変異体を(ii)から選択するステップとを含んでよく、
前記ヒトプラスミンの触媒ドメインは位置のアミノ酸バリンで始まり、これはヒトGlu−プラスミノーゲンの位置562で生じているのと同じバリンアミノ酸である。
【0024】
上記のスクリーニング法のいずれかは、任意でさらに、安定した自己タンパク質分解性を有するプラスミン変異体のタンパク質分解活性を測定するステップを含んでもよい。
【0025】
本発明はさらに、プラスミン含有組成物の長期貯蔵安定性を強化するための方法を含み、前記方法は、タンパク質分解活性の著しい損失がなく長期にわたり貯蔵できる、安定した自己タンパク質分解性を有するプラスミン変異体を同定するステップを含む。
【0026】
本発明はさらに、本発明のプラスミノーゲン変異体を産生するための方法を含み、
(i)本発明のプラスミノーゲンをコードする核酸を、前記プラスミノーゲンを発現できる適切な宿主細胞に導入するステップと;
(ii)前記宿主細胞において前記プラスミノーゲンが発現するのに十分な条件下、十分な時間をかけて(i)で得られた宿主細胞を生育するステップと;
(iii)(ii)において発現したプラスミノーゲンを回収するステップとを含む。
そのような方法は任意でさらに、(iii)において回収されたプラスミノーゲンを精製するステップ(iv)を含んでもよい。
【0027】
同様に本発明は、本発明のプラスミン変異体を産生するための方法を含み、前記方法は、
(i)本発明のプラスミノーゲンをコードする核酸を、前記プラスミノーゲンを発現できる適切な宿主細胞に導入するステップと;
(ii)前記宿主細胞において前記プラスミノーゲンが発現するのに十分な条件下、十分な時間をかけて(i)で得られた宿主細胞を生育するステップと;
(iii)(ii)において発現したプラスミノーゲンを回収するステップと;
(iv)(iii)のプラスミノーゲンをプラスミンへ活性化するステップとを含む。
そのような方法はさらに任意で、(iv)における活性化に先立って(iii)において回収されたプラスミノーゲンを精製するステップを含んでもよい。さらに、本発明のプラスミン変異体を産生するためのいかなる方法においても、(iv)において得られた活性プラスミンを任意で精製してもよい。また、さらには、本発明の方法によって産生された活性プラスミン変異体は、任意で、誘導および/または可逆的に不活化されてもよい。
【0028】
本発明はさらに、本発明のプラスミノーゲン変異体またはプラスミン変異体をコードする単離された核酸配列に関する。また、このような核酸を含む組換えベクターも、このような核酸または組換えベクターで形質転換された宿主細胞も本発明の一部である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】野生型ヒトGlu−プラスミノーゲン(1〜791)およびプラスミン触媒ドメイン(1〜230、アミノ酸配列と番号は太字で示す)のアミノ酸位置に二重に番号を付けたアミノ酸配列。本発明を実証するために使用するマイクロプラスミノーゲンはアミノ酸位置543(Glu−プラスミノーゲンに対する番号)から始まる。アミノ酸位置137、147および158(プラスミン触媒ドメインに対する番号)にある強調されたアミノ酸は、位置138、148および159のアミノ酸とのそれぞれのペプチド結合が自己触媒的切断に感受性が高いと判断されたアミノ酸である。クリングルドメイン(GenBank受入番号AAA36451に含まれる情報に由来)は、四角で囲み、そのアミノ酸配列は、標準およびイタリック体で交互に示す。触媒三残基アミノ酸を丸囲みで示す。
【図2】大量に産生されたマイクロプラスミンの分子ふるいクロマトグラフィー(SEC)プロフィール。分画番号5(プレピーク1)、分画番号7と8(プレピーク2)、分画番号10〜12(マイクロプラスミンのピーク)、および分画番号15と16(ポストピーク)に対応する溶出液を収集し、その中の物質のN末端アミノ酸配列を決定した(エドマン分解)。分画番号17と18前後のピークの溶出は緩衝液ピークに相当する。AU:吸光度単位。
【図3】大量に産生されたマイクロプラスミンの還元SDS−PAGE。レーン1:分子量マーカー、左に分子量を示す。レーン2:マイクロプラスミノーゲン。レーン3:pH3.1のマイクロプラスミン。レーン4:pH4.0のマイクロプラスミン。レーン5:pH5.0のマイクロプラスミン。レーン6:pH6.0のマイクロプラスミン。レーン7:pH7.0のマイクロプラスミン。全試料(最終タンパク質濃度0.6mg/mL)を示したpHで20℃で4時間置き、次に、−70℃で凍結させた。クーマシーブリリアントブルーでゲルを染色した。μPlg=マイクロプラスミノーゲン、μPl=プラスミン、前端=泳導ゲル前端。
【図4】マイクロプラスミンを中性pH緩衝液でインキュベートし、試料を示された時間経過後に収集し、SDS−PAGE(A)またはウェスタンブロット(B)によって分析した。矢印「a」は無傷のマイクロプラスミンを示し、一方矢印「b」および「c」は約15kDaおよび約10kDaのフラグメントをそれぞれ示し、これは自己触媒により産生されたものである。
【図5】ウェスタンブロット(円)によって評価されたマイクロプラスミンの自己分解のカイネティクスは、マイクロプラスミン活性(四角)の減少に対応している。
【図6】(A)マイクロプラスミンを、PBS(四角)、またはブタの眼の硝子体液(円)において、1.53μMの最終濃度まで希釈し、活性のあるマイクロプラスミンの残渣の濃度を様々な時点で測定した。(B)ブタの眼の硝子体液の試料を、図に示した時点で収集し、ウェスタンブロットによって解析した。矢印は約15kDaのフラグメントを示す。
【図7】(A)固定した抗マイクロプラスミン抗体上のマイクロプラスミン変異体Lys137Met(K137M)の免疫アフィニティクロマトグラム。収集された溶出液分画をX軸(溶出量)上に1から11まで番号をつける。(B)(A)で実施された免疫アフィニティクロマトグラムの溶出液分画の還元SDS−PAGE分析。レーン1:分子量マーカー。レーン2:溶出液分画2。レーン3:溶出液分画3;レーン4:溶出液分画4;レーン5:溶出液分画5;レーン6:溶出液分画6;レーン7:未精製の上清。ゲルをクーマシー染色した。
【図8】(A)組み換えスタフィロキナーゼでのK137M変異体の活性化。活性は10分後に最大値に到達し(矢印で示す)、次いで、自己分解による不活性化が生じるとともに、減少した。(B)約17および約8kDaの2つのフラグメントの蓄積により証明されるように、スタフィロキナーゼによる活性化は10分以内でほぼ完了し、自己分解が活性の減少を招くことを示す、K137M変異体の還元SDS−PAGE。レーン1〜7は、スタフィロキナーゼ付加後0分、10分、1時間、2時間、3時間、6時間、および24時間に収集した試料を示す。(上向き黒三角)マイクロプラスミノーゲン、(下向き黒三角)マイクロプラスミン、(▽)自己分解の分解フラグメント。(C)スタフィロキナーゼ付加後、0分、10分および6時間で収集された試料のHPLC解析。スタフィロキナーゼ付加後、10分で得たHPLCプロフィールは、不活性なマイクロプラスミノーゲンの約85%が活性のあるマイクロプラスミン種に変換され、t=6時間のHPLCプロフィールは、自己分解の分解フラグメント(▽)の存在を示し、(B)で示されたSDSゲルに合致している。t=10分(矢印)のマイクロプラスミンピーク面積を、高度に精製されたマイクロプラスミンで確立した標準曲線(データを示さず)との比較により、活性種の濃度を算出するために使用した。Acquity UPLCツール(Waters)を使用して、HPLCデータをすべて得た。典型的には、マイクロプラスミン試料を0.1%のトリフルオロ酢酸(TFA)、5%のアセトニトリルで5倍に希釈し、0.1%のTFA、34%のアセトニトリル中であらかじめ平衡にした、BEH300 C18 Acquity UPLCカラム(Waters)に注入した。次いで、溶出を0.1%のTFAにおいて34〜44%のアセトニトリルの1.5mLの直線勾配で行い、タンパク質を214nmの吸光度によって追跡して検出した。カラムの温度を75℃に維持し、実験をすべて100μL/分の流量で行った。(D)t=10分のK137Mマイクロプラスミン種のHPLCによる定量化と続いて残存活性の減少とを、各時点で試料中にある無傷、活性マイクロプラスミンのモル濃度を算出するために組み合わせた。等式1(実施例3を参照)にデータをあてはめ、自己分解の第2次速度定数(k)を算出した。白丸(○)は、K137M変異体のデータを示す。比較のため、別の変異体(K147A−R158A)で得られた同様のデータセットもまた(●)で示した。
【図9】K137Mマイクロプラスミン変異体のカイネティックパラメーターの測定。異なる基質(S−2403)濃度での加水分解の初速度(v)の測定値からのkcatおよびKの測定。データを等式2にあてはめた(実施例4を参照)。
【図10】GenBankから得た哺乳類プラスミノーゲンタンパク質のアミノ酸配列アラインメント。配列アラインメントを、デフォルト設定で国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information)(NCBI)ウェブサイトを通して利用可能なCOBALTソフトウエア(Constraint−based Multiple Alignment Tool;PapadopoulosおよびAgarwala,Bioinformatics 23:1073−79、2007)で行った。下向き黒三角:Glu−プラスミノーゲンの開始の表示。アミノ酸の番号付けはヒトプラスミノーゲンを基準として行われる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
発明の詳細な説明
本発明は中性pHにおけるプラスミンのタンパク質分解活性の自発的な自動不活性化の根底にあるメカニズムの研究の結果に基づいており、この研究で発明者は、大部分がプラスミンの触媒ドメインからなるマイクロプラスミンに焦点を当てた。プラスミンによる切断を受けやすいペプチド結合はリジンまたはアルギニンのC末端側に位置する(WeinsteinおよびDoolittle、1972、Biochim Biophys Acta 258、577−590)。プラスミン触媒ドメイン(ヒトGlu−プラスミノーゲンのアミノ酸位置562のバリンから開始)のアミノ酸のほぼ10%(230個のうち22個)は、リジンまたはアルギニンである。理論上、1つのプラスミン分子にある、このリジンおよびアルギニンのC末端側のすべてのペプチド結合は、別のプラスミン分子のタンパク質分解により切断可能である。
【0031】
したがって、本発明の1つの態様は、プラスミン分子およびプラスミノーゲン分子、特に活性化可能な/潜在的にプラスミンに活性化可能なプラスミノーゲン分子に関し、この分子は触媒ドメインに1つ又は複数のアミノ酸の突然変異を含むため、野生型プラスミンまたはプラスミノーゲンにおいては自己タンパク質分解により分解する傾向にあるペプチド結合が、本発明のプラスミンおよびプラスミノーゲン分子対象においては、自己タンパク質分解しにくいかまたは全く自己タンパク質分解する傾向がなくなっている。
【0032】
本発明は、言い換えれば、触媒ドメインにおいて、位置P+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が自己タンパク質分解する傾向にある(すなわち分解に対する感受性、敏感さ、または脆弱の度合いが高い)位置Pの内部アミノ酸の少なくとも1つが、位置P+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が、自己タンパク質分解しにくいかまたは全く自己タンパク質分解する傾向がない(すなわち分解に対する感受性、敏感さ、または脆弱の度合いが低いか、無い)アミノ酸へ突然変異していることを特徴とする、単離されたプラスミノーゲン変異体、もしくはそれから得られたプラスミン、または単離されたプラスミン変異体、または前記プラスミンのいずれかのタンパク質分解性が活性な、または可逆的に不活性な誘導体に関する。特に、前記位置Pの内部アミノ酸はリジンまたはアルギニンである。本明細書で使用される場合(別段に記述しない限り)、プラスミンの触媒ドメインは、ヒトプラスミンを基準として番号が付けられ、位置P=1のバリンで始まり、これはヒトGlu−プラスミノーゲンの位置562のバリンと同じである(図1を参照)。本明細書では、プラスミン触媒ドメインにおける2つの異なるアミノ酸位置も参照し、それぞれPおよびP’と名付ける。
【0033】
あるいは、本発明のプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体では、自身の触媒ドメインにおいて、位置P+1およびP’+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が自己タンパク質分解する傾向にある位置PおよびP’の内部アミノ酸の少なくとも2つが、位置P+1およびP’+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が、自己タンパク質分解しにくいかまたは全く自己タンパク質分解する傾向がないアミノ酸へ突然変異していてもよい。
【0034】
位置Pのアミノ酸を同定した後、当業者は、野生型の位置Pのアミノ酸を、別のどのアミノ酸へ突然変異させられるか、容易に決定できるであろう。そのような決定は、アミノ酸の大きさ、アミノ酸電荷、アミノ酸極性、および/またはアミノ酸疎水性親水性指標等の基準(表1を参照)を用いてもよいが、必ずしも必要ではない。特に、プラスミンおよびプラスミノーゲンでは、前記位置Pの内部アミノ酸はリジンまたはアルギニンである可能性が高く、それぞれアルギニンまたはリジンとは異なるアミノ酸に突然変異させるべきであることが示唆される。さらに、プラスミノーゲンの結晶構造およびプラスミン触媒ドメイン(MMDB ID:12717;PDB ID:1DDJ;Wangら、2001、J Mol Biol 295、903−914)の入手しやすさは、得られた突然変異プラスミンまたはプラスミノーゲン分子がタンパク質分解活性を保持するよう突然変異させるアミノ酸を同定するのに大いに価値がある。さらに、前記位置Pの野生型アミノ酸が、所与の群のいずれか1つのアミノ酸へ突然変異することにより、類似の結果がもたらされることが予想できる。表1に基づき、前記所与の群を以下のように定義できる:
− 疎水性の脂肪族アミノ酸:Met、Ile、LeuおよびVal
− 疎水性の芳香族アミノ酸:Phe
− 親水性の酸性アミノ酸:Asp、Glu、AsnおよびGln
− 親水性の塩基性アミノ酸:Arg、LysおよびHis
− 中程度に疎水性の脂肪族アミノ酸:Gly、Ala、Ser、Thr、Cys、Pro
−中程度に疎水性の芳香族アミノ酸:TyrおよびTrp
この中で、突然変異の目的では、CysおよびProは、Cysが遊離できるチオール基を生成すること、または、Proがタンパク質構造を大きく乱すため、野生型プラスミンまたはプラスミノーゲンアミノ酸の置換アミノ酸としては好ましくない可能性がある。他のアミノ酸置換には、プラスミン(プラスミノーゲン)触媒ドメインの前記位置Pの野生型のアミノ酸の、非天然もしくは非標準アミノ酸へのノルロイシン、ノルバリン、オルニチンまたはシトルリン等のアミノ酸類似体への突然変異がある(より詳細な一覧については、例えば、Hendricksonら、2004、Annu Rev Biochem 73、147−176を参照)。
【0035】
【表1】

【0036】
発明者は、試験条件下で、自己タンパク質分解切断が、プラスミン触媒ドメイン内で限られた数しか生じないことを観察した。実施例に記載したように、本発明では自己タンパク質分解の3つのホットスポットを同定した。しかしながら、これは、自己タンパク質分解により切断されやすいペプチド結合が他にも存在する可能性を排除するものではない。
【0037】
したがって、上記において、前記位置Pの内部アミノ酸の少なくとも1つ、または前記位置PおよびP’の内部アミノ酸の少なくとも2つは、より具体的には、
(i)ヒトプラスミンの触媒ドメインの位置137のリジン、もしくは非ヒトプラスミンにおいて対応するリジンもしくはアルギニン;
(ii)ヒトプラスミンの触媒ドメインの位置147のリジン、もしくは非ヒトプラスミンにおいて対応するリジンもしくはアルギニン;または、
(iii)ヒトプラスミンの触媒ドメインの位置158のアルギニン、もしくは非ヒトプラスミンにおいて対応するリジンもしくはアルギニン;から選択される少なくとも1つまたは少なくとも2つであり、
前記ヒトプラスミンの触媒領域は位置1のアミノ酸バリンで始まり、これはヒトGlu−プラスミノーゲンの位置562で生じているのと同じバリンアミノ酸である。ヒトプラスミノーゲンおよびヒトプラスミンの触媒ドメインでのアミノ酸の番号付けを明確にするために、本明細書では図1を参照する。
【0038】
ヒトプラスミン(プラスミノーゲン)のアミノ酸に「対応する」非ヒトプラスミン(プラスミノーゲン)配列のアミノ酸の同定(つまり「対応する」アミノ酸の同定)はまず、両方のアミノ酸配列のアラインメントを実施することを意味する。このようなアラインメントでは、高い同一性および相同性を得るために、アラインメントした配列の片方または両方に、ギャップをわずかに導入するなどの最適化が必要な場合がある。次に、ヒトプラスミン(プラスミノーゲン)のアミノ酸とアラインする非ヒトプラスミン(プラスミノーゲン)のアミノ酸が同定されるが、本明細書ではこれを「対応する」アミノ酸と称する。本明細書の図10には、公に利用可能な哺乳類のプラスミノーゲンタンパク質配列の、上記のようなアラインメントを示し、ヒトプラスミノーゲン配列(ライン1)に存在する本発明にとって特に興味のあるアミノ酸を、非ヒトプラスミノーゲン配列(ライン2〜18)の対応するアミノ酸と一緒に強調して示す。特に興味のあるアミノ酸は、位置698(触媒ドメインの位置137、図1を参照)のLys、位置708(触媒ドメインの位置147、図1を参照)のLys、および位置719(触媒ドメインの位置158、図1を参照)のArgである。
【0039】
本発明の前記プラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体では、前記位置Pの内部アミノ酸の少なくとも1つは、ヒトプラスミンの触媒ドメインの位置147のリジンであるか、または非ヒトプラスミン触媒ドメインにおいて対応するリジンもしくはアルギニンである。これは、さらにヒト触媒ドメインの位置137および/または158の内部アミノ酸、または非ヒトプラスミンの触媒ドメインにおいて対応するリジンおよび/またはアルギニンの突然変異を、任意で含んでもよい。本明細書では、前記ヒトプラスミンの触媒ドメインは位置1のアミノ酸バリンで始まり、これはヒトGlu−プラスミノーゲンの位置562で生じているのと同じバリンアミノ酸である。
【0040】
またさらに、本発明の前記プラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体では、
(i)前記位置Pの内部アミノ酸の少なくとも1つの突然変異が、ヒトプラスミンの触媒ドメインの位置137(これはヒトGlu−プラスミノーゲンを基準としたアミノ酸位置698である)のリジンの、自己タンパク質分解に耐性のある、またはより耐性のあるアミノ酸137と138の間のペプチド結合を与えるアミノ酸への突然変異である場合、前記プラスミノーゲン変異体、前記プラスミン変異体または前記プラスミン誘導体は、(ヒトGlu−プラスミノーゲンを基準とした)アミノ酸位置561および562で無傷の活性化部位を含み、および触媒ドメインの外の(ヒトGlu−プラスミノーゲンを基準とした)位置536および541のアミノ酸が存在する場合は、前記アミノ酸は野生型のシステインであり、または、
(ii)前記位置Pの内部アミノ酸の少なくとも1つの突然変異が、ヒトプラスミンの触媒ドメインの位置158(これはヒトGlu−プラスミノーゲンを基準としたアミノ酸位置719である)のアルギニンの、アラニンまたはグルタミンへの突然変異である場合、したがって、位置P’+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が自己タンパク質分解する傾向にある位置P’の、ヒトプラスミンの触媒ドメインの他の内部アミノ酸の少なくとも1つが、位置P’+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が、自己タンパク質分解しにくいかまたは全く自己タンパク質分解する傾向がないアミノ酸へ突然変異している。
上記(i)および(ii)に記載の変異体は任意でさらに、ヒト触媒ドメインの位置147の内部アミノ酸、または非ヒトプラスミンの触媒ドメインにおいて対応するリジンまたはアルギニンの突然変異をさらに含み、前記ヒトプラスミンの触媒ドメインは位置1のアミノ酸バリンで始まり、これはヒトGlu−プラスミノーゲンの位置562で生じているのと同じバリンアミノ酸である。
【0041】
上述のプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体のいずれかにおいて、前記ヒト触媒ドメインの位置137のリジン、または非ヒトプラスミンの触媒ドメインにおいて対応するリジンまたはアルギニンは、疎水性脂肪族アミノ酸、疎水性芳香族アミノ酸、親水性の酸性アミノ酸、リジン以外の親水性の塩基性アミノ酸、中程度に疎水性の芳香族アミノ酸、および中程度に疎水性の脂肪族アミノ酸の群内のアミノ酸に突然変異させてもよい。特に、前記リジンは、例えば、Ala、Glu、Phe、His、Ile、Met、GlnまたはArgから選ばれたアミノ酸に突然変異させてもよい。
【0042】
上述のプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体のいずれかにおいて、前記ヒトプラスミンの触媒ドメインの位置147のリジン、または非ヒトプラスミンの触媒ドメインにおいて対応するリジンまたはアルギニンは、疎水性脂肪族アミノ酸、疎水性芳香族アミノ酸、親水性の酸性アミノ酸、リジン以外の親水性の塩基性アミノ酸、中程度に疎水性の芳香族アミノ酸、および中程度に疎水性の脂肪族アミノ酸の群内のアミノ酸に突然変異させてもよい。特に、前記リジンは、例えば、Ala、Glu、Gln、His、Ile、またはPheから選ばれたアミノ酸に突然変異させてもよい。
【0043】
上述のプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体のいずれかにおいて、前記ヒト触媒ドメインの位置158のアルギニン、または非ヒトプラスミンの触媒ドメインにおいて対応するリジンまたはアルギニンは、疎水性脂肪族アミノ酸、疎水性芳香族アミノ酸、親水性の酸性アミノ酸、親水性の塩基性アミノ酸、中程度に疎水性の芳香族アミノ酸、および中程度に疎水性の脂肪族アミノ酸の群内のアミノ酸に突然変異させてもよい。特に、前記アルギニンは、例えば、Ala、Glu、Gln、Ile、PheまたはHisから選ばれたアミノ酸に突然変異させてもよい。
【0044】
「プラスミン」は、フィブリノリジンまたはlysofibrinとしても知られ、セリン型のプロテアーゼであり、酵素前駆体であるプラスミノーゲンの活性化によりもたらされる。活性化は、アミノ酸561および562(ヒトGlu−プラスミノーゲンを基準とした番号付け)の間のタンパク質分解切断により起こる。プラスミンは、5つのクリングルドメインを含む重鎖、および触媒ドメインを含む軽鎖を保有する。プラスミノーゲンは、例えば、リジンアフィニティークロマトグラフィー(DeutschおよびMertz、1970、Science 170、1095−1096)によって血漿から濃縮できる。触媒ドメインが機能を有する限り、プラスミン分子を切断(プラスミン触媒ドメインの外部および/または内部で)ができ、したがってこのような切断によりプラスミンの「タンパク質分解活性誘導体」が形成される。そのため、5つのクリングルドメインの1つ又は複数を、全体的にまたは部分的に欠失させることができる。1つ又は複数のクリングルドメインを欠く、および/または、1つ又は複数のクリングルドメインの一部を欠く切断プラスミンは、したがって、本発明においてプラスミンのタンパク質分解活性誘導体の例として想定される。プラスミンの切断変異体の例には、「ミジプラスミン」、「ミニプラスミン」、「マイクロプラスミン」、「デルタプラスミン」があるが、これらに限定されない。ミジプラスミンは基本的にクリングルドメイン1〜3を欠いている(例えばChristensenら、1995、Biochem J 305、97−102)。ミニプラスミンは、元は、エラスターゼでプラスミンを限定的に分解して得られたもので、基本的にクリングルドメイン1〜4を欠いている(例えばChristensenら、1979、Biochim Biophys Acta 567、472−481;PowellおよびCastellino、1980、J Biol Chem 255、5329)。ミニプラスミンはその後、組換えで産生されている(国際公開第2002/050290号パンフレット)。マイクロプラスミンは、元は、高pHでプラスミンをインキュベートすることで得られたもので、基本的にクリングルドメインをすべて欠いている(例えば国際公開第89/01336号パンフレット)。高pHでプラスミンをインキュベートすることで得られたマイクロプラスミンは、重鎖のカルボキシ末端の30〜31個のアミノ酸を含むが、組換えで産生されたマイクロプラスミン変異体は、重鎖のカルボキシ末端の19個のアミノ酸を含む(国際公開第2002/050290号パンフレット)。デルタプラスミンは、クリングルドメイン1が触媒ドメインに直接に結合されているプラスミンの組み換え型である(国際公開第2005/105990号パンフレット)。上記のプラスミンの切断変異体は、「ミジプラスミノーゲン」、「ミニプラスミノーゲン」、「マイクロプラスミノーゲン」および「デルタプラスミノーゲン」のそれぞれの活性化により得られる。活性化が可能であるためには、切断プラスミノーゲンは、クリングル5ドメインと触媒ドメインの間にリンカーとなる最小数のアミノ酸を含む必要がある(例えば、Wangら、1995、Protein Science 4、1758−1767を参照)。本発明の文脈においてプラスミノーゲンは「無傷の活性化部位」を含むことが望ましく、「無傷の活性化部位」とは、少なくともアミノ酸561および562(ヒトGlu−プラスミノーゲンに対する;または非ヒトプラスミノーゲンにおいて対応するアミノ酸)が、プラスミノーゲンのプラスミンへの活性化/転化を、異なったカイネティクスを有する可能性があるにもかかわらず、野生型プラスミンと同様生じることができるようになっていることを意味する。プラスミンまたはその活性切断変異体の代わりに、活性化可能なプラスミノーゲンまたはその切断変異体を本発明の文脈において使用できる(例えば欧州特許第0480906号明細書;米国特許第5,304,383号明細書;欧州特許第0631786号明細書;米国特許第5,520,912号明細書;米国特許第5,597,800号明細書;米国特許第5,776,452号明細書を参照)。「プラスミノーゲン」は、例えばGlu−プラスミノーゲンまたはLys−プラスミノーゲン(位置68でのArg、もしくは位置77または78のLysから開始)などのプラスミノーゲンの任意の形態を指す。活性化可能なプラスミノーゲンまたはその活性化可能な切断変異体を使用する場合、プラスミンへの活性化は遅れ、器官、組織または体液との接触後に、つまり対象への投与後に生じるのが一般的であろう。また別の形態では、本発明の文脈において、プラスミンまたはその活性切断変異体の代わりに、活性化可能なプラスミノーゲンまたはその活性化可能な切断変異体を、プラスミノーゲン活性化因子(組織プラスミノーゲン活性化因子(tPA)、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼまたはスタフィロキナーゼ、またはその任意の変異体等)と併用して使用してもよい。(例えば米国特許第6,733,750号明細書;米国特許第6,585,972号明細書;米国特許第6,899,877号明細書;国際公開第03/33019号パンフレットを参照)。さらにまた別の形態では、(i)プラスミンまたはその誘導体、(ii)活性化可能なプラスミノーゲン、またはその活性化可能な誘導体、および、任意で、(iii)プラスミノーゲン活性化因子のいずれかの混合物を、本発明の文脈において、使用できる(例えば米国特許出願公開第2004/0081643号明細書を参照)。プラスミン(またはプラスミノーゲン)の安定性を確実なものとするために、プラスミン(またはプラスミノーゲン)は、一般的に低温で貯蔵される(例えば摂氏+4度または摂氏−20度)。貯蔵組成物は安定化組成物、例えば低pH組成物(pH4以下のpH、例えば、酸1mM〜250mMのクエン酸等の酸で得られる、例えば、CastellinoおよびSodetz、1976、Methods Enzymol 45、273−286;国際公開第01/36608号パンフレット;国際公開第01/36609号パンフレット;国際公開第01/36611号パンフレットを参照)、もしくは高グリセロール含有組成物(30〜50%v/v、例えば、CastellinoおよびSodetz、1976、Methods Enzymol 45、273−286)であってもよく、または、例えばアミノ酸(例えば、リジンまたはEACAまたはトラネキサム酸等のリジン類似体)、糖(例えばマンニトール)、または当技術分野において知られている任意の安定剤(例えばジペプチド、国際公開第97/01631号パンフレット)などを含む1つ又は複数のさらなる安定剤組成物内に、もしくはその安定剤組成物と一緒に貯蔵してもよい。「プラスミン」種にはさらに、その任意の活性誘導体(もしくはその活性切断プラスミン変異体)、または活性化可能なプラスミノーゲンの同様の誘導体(もしくはその活性可能な切断変異体)が含まれる。そのような誘導体には、例えば、Tc99−標識プラスミン(Deaconら、1980、Br J Radiol 53、673−677)等の標識プラスミンまたはプラスミノーゲン(もしくはその切断変異体)、またはペグ化された、もしくはアシル化されたプラスミンまたはプラスミノーゲン(もしくはその切断変異体;欧州特許第9879号明細書、国際公開第93/15189号パンフレット)が含まれる。他の任意の標識(放射性、蛍光性等)も、プラスミンまたはプラスミノーゲンの誘導体を産生するために使用してよい。前記誘導体にはさらに、ハイブリッドまたはキメラのプラスミンまたはプラスミノーゲン分子があり、この分子は例えば、フィブリン結合分子(tPAのクリングル2、アポリポタンパク質のクリングル、tPAもしくはフィブロネクチンのフィンガードメイン、またはフィブリン結合抗体のFabドメイン等)に融合された、例えば、本発明の切断されたプラスミンまたはプラスミノーゲンを含む。
【0045】
野生型プラスミン、および本発明のプラスミン変異体またはプラスミン誘導体の自己タンパク質分解に対する耐性(つまり安定性)は、タンパク質分解活性を比較するための方法と類似の方法で比較でき、例えば、発色性の活性分析、または例えばフィブリン、フィブリノーゲンまたはフィブロネクチンに基づく生物学的基質分析等がある。
【0046】
自己タンパク質分解に対する耐性の測定のために、自己分解速度定数が測定し得る。本発明のプラスミノーゲン変異体から得られたプラスミン、または本発明の任意のプラスミン誘導体のいずれかを含む、本発明のプラスミン変異体の自己分解速度定数は、野生型プラスミンの自己分解速度定数より少なくとも5%、もしくは少なくとも10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、75%、80%、90%、95%、99%もしくは99.5%低く、または、自己分解速度定数は、野生型プラスミンの自己分解速度定数の最大で95%、または最大で0.5%、1%、5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、60%、70%、75%、80%、もしくは90%であるという特徴を有してもよい。示された百分率を測定するため、算出は絶対自己分解速度定数の価に基づいて行われ得る。例えば、野生型マイクロプラスミンの自己分解速度定数は230M−1−1であり、一方、マイクロプラスミン変異体K137Mの自己分解速度定数は1M−1−1である(実施例3/表3を参照)。したがってK137M変異体の自己分解速度定数は、野生型マイクロプラスミンの自己分解速度定数の0.43%である。
【0047】
さらに、本発明のプラスミノーゲン変異体から得られたプラスミン、または前記プラスミンのいずれかの誘導体を含む、本発明のプラスミン変異体のいずれかは、野生型プラスミンのタンパク質分解活性とは異なるタンパク質分解活性(高いまたは低い)を有してもよく、この活性は、例えば発色性の活性分析、または、フィブリン、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、ゼラチン、ラミニンまたはコラーゲン等に基づいた生物学的基質分析等で測定される。
【0048】
本発明のプラスミノーゲン変異体から得られたプラスミン、または本発明の任意のプラスミン誘導体のいずれかを含む、本発明のプラスミン変異体のタンパク質分解活性を、野生型プラスミンのタンパク質分解活性と、触媒定数kcatにより、比較してもよい。触媒定数kcatは単位時間当たりに各酵素部位が生成物に変換する基質分子の数の尺度である。したがって、本発明のプラスミノーゲン変異体から得られたプラスミン、または本発明のプラスミン誘導体のいずれかを含む、本発明のプラスミン変異体のいずれかは、野生型プラスミンのkcat値の+100%〜−90%、または+50%〜−50%の範囲にあるkcat値、つまり、野生型プラスミンのkcat値の10%〜200%、または50%〜150%の範囲のkcat値を有することを特徴としてもよい。示された百分率を測定するため、算出は絶対kcat値に基づいて行われる。例えば、野生型マイクロプラスミンのkcatは46s−1であるが、マイクロプラスミン変異体K137Mのkcatは36s−1である(実施例4/表3を参照)。したがってK137M変異体のkcatは野生型マイクロプラスミンのkcatの78.3%である。
【0049】
本発明のプラスミノーゲン変異体から得られたプラスミン、または本発明のプラスミン誘導体のいずれかを含む、本発明のプラスミン変異体のタンパク質分解活性を、野生型プラスミンのタンパク質分解活性と比較する別の方法には、kcat/K(表3)の比較が含まれる。本発明のプラスミノーゲン変異体から得られたプラスミン、または本発明のプラスミン誘導体のいずれかを含む、本発明のプラスミン変異体のkcat/Kは、野生型プラスミンのkcat/Kと比較して1/1000まで、または1/500まで低くても許容できる(後を参照)。
【0050】
さらに、本発明のプラスミノーゲン変異体から得られたプラスミン、または本発明のプラスミン誘導体のいずれかを含む、本発明のプラスミン変異体のいずれかは、上で定義された自己分解速度定数および触媒定数kcatを組合せた特徴を有してもよい。
【0051】
あるいは、本発明のプラスミノーゲン変異体から得られたプラスミン、または本発明のプラスミン誘導体のいずれかを含む、本発明のプラスミン変異体のいずれかを、自己分解速度定数データとkcat/Kデータとを組み合わせることにより、野生型プラスミンと比較してもよい。例えば、自己分解速度定数が野生型プラスミンと比較して1/20でありkcat/Kが野生型プラスミンと比較して1/10であるプラスミン変異体は、野生型プラスミンより2倍優れているであろう。明らかに最終的な使用方法次第ではあるが、タンパク質分解活性が低い非常に安定したプラスミン(すなわち自己タンパク質分解により分解されない、またはほとんど分解されない)は、例えば、プラスミン活性が低レベルであるが持続することが望ましい場合、または目的とする臨床的効果を達成するために必要とされる場合に、強く求められる可能性が高い。したがって、このようなタンパク質分解活性が低い高度に安定したプラスミン変異体は、除放性の担体または補助剤を実際に使用する必要のない、除放性の製剤と事実上等しいものとなるであろう。
【0052】
本発明のプラスミノーゲン変異体から得られたプラスミン、または本発明のプラスミン誘導体のいずれかを含む、本発明のプラスミン変異体のいずれかを比較するためのまた別の方法では、自己分解速度定数データとkcatデータを組み合わせることにより、野生型プラスミンと比較してもよい。
【0053】
上述のような任意の比較測定では、明らかにプラスミン変異体をその最も近い野生型プラスミンと比較することが望ましい。例えば、マイクロプラスミン変異体を野生型マイクロプラスミンと、またはミニプラスミン変異体を野生型ミニプラスミンと比較することが望ましい。さらに、任意の活性測定では明らかに、本発明のプラスミン変異体の可逆的に不活化された誘導体を、まず可逆的な不活性化の原因(例えばアシル化または非最適pH)を除くことにより活性化するべきである。
【0054】
本発明のプラスミノーゲン変異体またはそれから得られたプラスミン、本発明のプラスミン変異体のいずれかは、Glu−プラスミンまたはGlu−プラスミノーゲン、Lys−プラスミノーゲンまたはLys−プラスミン、ミジプラスミノーゲン、またはミジプラスミン、ミニプラスミノーゲンまたは、ミニプラスミン、マイクロプラスミノーゲンまたはマイクロプラスミン、デルタプラスミノーゲンまたはデルタプラスミンであってもよい。
【0055】
プラスミン種がタンパク質分解活性を有するかどうかを判断するための分析が多数ある。簡易で直接的な分析は、試料中のプラスミンによる発色基質の分解に基づいており;発色基質には、タンパク質分解切断でp−ニトロアニリン(pNA)を放出するS−2403(Glu−Phe−Lys−pNA)およびS−2251(Val−Leu−Lys−pNA)がある。形成されたpNAの量は吸光度405nmで測定できる。プラスミン活性を測定するための他の分析には電位差測定分析がある。比色分析(発色基質を使用する)および電位差測定の分析は、例えば、CastellinoおよびSodetz(1976、Methods Enzymol 45、273−286)に記載されている。プラスミン活性を測定するためのさらに他の分析には、カゼイン分解法がある(例えば、RobbinsおよびSummaria、1970、Methods Enzymol 19、184−199;RuyssenおよびLauwers、1978、「Pharmaceutical Enzymes」のIX章−Plasmin、Story−Scientia,Gent,Belgium、123−131ページ)。プラスミン活性を測定するための、さらなる他の分析には線溶検査がある(例えば、AstrupおよびMullertz、1952、Arch Biochem Biophys 40、346−351)。他のタンパク質基質を使用して、他の活性分析を容易に設計できる。このような分析を、酵素の自己タンパク質分解による分解に起因する、長期にわたるプラスミンのタンパク質分解活性の消失を追跡するためにも使用してもよいことは明らかである。本発明のプラスミン変異体、またはその任意の活性切断変異体もしくは誘導体の安定性を分析するための別の方法として、前記プラスミン変異体を野生型プラスミンの存在下でインキュベートしてもよく、野生型プラスミンによる分解に対するプラスミン変異体の耐性をモニターできる。
【0056】
病変、創傷、潰瘍化した傷等(縫合創の潰瘍形成等)からの壊死要素または壊死組織片の除去におけるプラスミンの使用は、例えば米国特許第3,208,908号明細書に記載されている。同様に、熱傷の治療にプラスミンを含む治療用製剤の局所使用が、例えば米国特許第4,122,158号明細書に開示されている。壊死組織切除は、壊死した、損傷した、および/または感染した組織を除去し、残存している健康な組織の治癒を改善、または強化する。このような除去は、外科的、機械的、化学的な手段により、または選択的に壊死組織を食べる、生きている特定の種の蛆虫(蛆療法)により行ってもよい。壊死組織切除を酵素を使用して、または酵素を併用して行ってもよく、この方法は酵素的壊死組織除去と呼ばれる。壊死組織切除は、熱傷および重度の創傷等の治癒過程の重要な一側面であり、ある種のヘビ咬傷の治療においても同様に使用される。酵素的壊死組織除去(単独で、または他のタイプの壊死組織切除との併用で)におけるプラスミン(または上述の任意のプラスミンの変異体もしくは誘導体、またはその代替物)の適用は、創傷治癒を促進または容易にするために、および皮膚移植等の外科的処置の補助として特に有益である。
【0057】
プラスミン(または上述の任意のプラスミンの変異体もしくは誘導体、またはその代替物)のより広く知られた使用方法は、大まかに言えば、病的なフィブリンの沈着の治療に関する。フィブリンの沈着は身体の種々様々な病的状態に起因する。例えばフィブリンを含む血塊が組織内の血管で形成されると、深部静脈、冠状動脈、脳動脈または網膜静脈の閉鎖症、または血栓症を引き起こす。フィブリンのわずかな蓄積は、切迫した重篤な血栓症に先行し、またはその警告となる可能性がある。例として、不安定狭心症が挙げられるが、これは切迫した冠状動脈血栓症および一過性脳虚血発作の警告と考えられ、脳卒中に先行する場合がある。フィブリンはさらに、感染、自己免疫疾患および癌などの多くの疾病プロセスに付随する炎症に関連して、組織内に蓄積することが多い。フィブリンは他にも、微生物による感染によって引き起こされた化膿巣の周囲に沈着する。さらにフィブリン沈着は、特定の固形腫瘍に関連して見られることが多い。フィブリン沈着はまた、あらゆるタイプの創傷の治癒中に生じる恐れがある。また、フィブリン沈着は、網膜静脈におけるフィブリンの蓄積としても現れ、網膜変性症、視力障害または視力喪失にさえもつながる可能性がある。病的なフィブリン沈着という用語はさらに、カテーテル、カテーテルデバイス内やその先端、または、人工血管、および合成の、ヒトまたは動物由来の移植組織等の、フィブリンを含む閉塞により実質的に閉塞されるインプラント内で形成または存在する沈着を包含する。用語「カテーテルデバイス」は、身体に挿入できる任意のカテーテルまたはチューブ状のデバイスを指し、動脈カテーテル、心臓カテーテル、中心静脈カテーテル、静脈内カテーテル、末梢挿入中心静脈カテーテル、肺動脈カテーテル、トンネル状中心静脈カテーテル、および動静脈シャント等がある。
【0058】
血栓症、つまり、血栓または止血血栓の形成、の進行を助長する様々な要因には、(1)罹患血管の血管内皮細胞表層の損傷(2)血中凝固特性の増加、および(3)罹患血管の血液の停滞、がある。血栓症は、血管表層の破損箇所に付着された非常に小さな塊から発症する。小さな塊は、血栓症の発症を助長し、血管の内径を減少させ血流を減速させる作用がある。さらに、最初の小さな血栓が成長すると、罹患血管の完全な、またはほぼ完全な閉鎖に発展する可能性が高い。血栓症が動脈の1つで起こると、その動脈により供給される組織では、酸素および栄養が欠乏し、その結果組織の損傷または死(壊疽)を引き起こす可能性がある。損傷の度合いは、血栓症の位置および大きさ、増殖速度、患部が動脈1本としかつながっていないか、または側副血管により供給を受けるかどうかに依存する。例えば心臓または脳のような重要臓器へつながる血管が影響を受ける場合、人間は重度に障害を負うか、または死亡する可能性がある。時に、血栓は細菌等の伝染性の生物体を含む場合があり敗血症性血栓症が、膿形成および周囲の組織の感染を伴い発症する可能性がある。
【0059】
さらに、プラスミン(または上述のそのあらゆる変異体もしくはその誘導体、またはその代替物)の使用法には、循環フィブリノーゲンレベルの減少(例えば国際公開第93/07893号パンフレット)、およびα2−抗プラスミン阻害因子としての使用(虚血性脳卒中後に脳梗塞の大きさを減少させるという報告がされている;国際公開第00/18436号パンフレット)がある。
【0060】
プラスミン(または上述のそのあらゆる変異体もしくはその誘導体、またはその代替物)のさらなる別の使用法は、眼における後部硝子体剥離(PVD)の誘導、および/または硝子体液化に関し、機械的な硝子体切除術の補助手段として、またはその代替法としての使用がある(国際公開第2004/052228号パンフレット;米国特許第6,733,750号明細書;米国特許第6,585,972号明細書;米国特許第6,899,877号明細書;国際公開第03/33019号パンフレット;国際公開第2006/122249号パンフレット;国際公開第2007/047874号パンフレット;米国特許第5,304,118号明細書;米国特許出願公開第第2006/0024349号明細書;米国特許出願公開第第2003/0147877号明細書)。硝子体切除および/または硝子体液化は、多くの眼の疾患にとって利点があり、そのような疾患には、硝子体浮遊物(通常透明な硝子体液内の硝子体液の自動性細片/蓄積で視力を損なう)、網膜剥離(硝子体の牽引により発症する可能性のある盲検化の症状)、黄斑パッカー(網膜黄斑上の瘢痕組織;黄斑は鮮明な中心視覚に必要である;黄斑パッカーはまた、網膜上膜症、または網膜前膜症、セロファン黄斑症、網膜しわ、表面しわ網膜症、黄斑前線維症、または内境界膜疾病としても知られる)、硝子体出血および/または網膜上の線維性瘢痕組織の形成(網膜剥離の原因となる可能性がある)を招く糖尿病網膜症(増殖性または非増殖性)、黄斑円孔(盲点の原因となり、硝子体の牽引、受傷または外傷事故により発症する網膜黄斑の孔)、硝子体出血(糖尿病網膜症、受傷、網膜剥離もしくは網膜裂孔、クモ膜下出血(テルソン症候群)、または閉鎖された血管が原因)、硝子体下出血(硝子体を覆う硝子体膜下の出血)、黄斑浮腫(流動性タンパク質の、眼の網膜黄斑上またはその下での沈着)、および黄斑変性(ドルーゼンの形成で発症;乾燥型および湿潤型;年齢に関連する場合加齢黄斑変性症)がある。プラスミンの他の眼への適用には、トラベクレクトミー手術(眼圧減少のために実施)後のろ過胞の維持または再建がある。例えば、国際公開第2009/073457号パンフレットを参照。
【0061】
プラスミン(またはそのあらゆる変異体もしくはその誘導体、またはその代替物)のさらに別の使用法は、診断にあり、より具体的には、適正に標識された(例えば、Tc99標識された、上記を参照)プラスミン(または上述のそのあらゆる変異体もしくはその誘導体、またはその代替物)を、病的なフィブリン沈着の検出に適用してもよい。本発明の切断プラスミンまたはプラスミノーゲン変異体をこのような診断法に適用する場合、前記変異体がフィブリン結合部位を含むことに注意するべきである(プラスミンそれ自体のものであろうが、例えばハイブリッド分子を作ることによりプラスミン触媒ドメインとなって付加されたものであろうが)。
【0062】
本発明のプラスミン、またはそのあらゆる変異体もしくはその誘導体、またはその代替物は、薬学的に許容される担体、希釈剤または補助剤において貯蔵してもよい。そのような担体、希釈剤または補助剤は、1〜100mMの酢酸またはクエン酸等の酸性の低緩衝液から構成されるか、または含んでもよい。酸性の場合、薬学的に許容される担体、希釈剤または補助剤のpHは、2.5〜4.0であり、例えば3.0〜3.5、または3.1である。有益な酸性化合物には、酢酸、クエン酸、塩酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸または安息香酸がある。ギ酸を使用してもよいが、この化合物はAsp残基のC末端でタンパク質分解切断を誘導しないため、注意が必要である。酸性か中性の薬学的に許容される担体、希釈剤または補助剤は、セリン、スレオニン、メチオニン、グルタミン、グリシン、イソロイシン、バリン、アラニン、アスパラギン酸、リジン、ヒスチジンまたはその任意の誘導体または類似体等の1つ又は複数のアミノ酸を含んでもよい。薬学的に許容される担体、希釈剤または補助剤は、単糖、二糖、多糖または多価アルコール等の糖を含んでもよい。例えば、スクロース、グルコース、フルクトース、ラクトース、トレハロース、マルトースおよびマンノース等の糖、ソルビトールおよびマンニトール等の糖アルコール、デキストリン、デキストラン、グリコゲン、デンプンおよびセルロース等の多糖がある。薬学的に許容される担体、希釈剤または補助剤は、グリセロール、ナイアシンアミド、グルコサミン、チアミン、シトルリン、無機塩類(塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化マグネシウム、塩化カルシウム等)、ベンジルアルコールまたは安息香酸等の化合物を含んでもよい。薬学的に許容される担体、希釈剤または補助剤には、ε−アミノカプロン酸(EACA)および/またはトラネキサム酸等の化合物を含んでもよい(上記、および背景技術節を参照)。この化合物のいくつかを、上記のプラスミン、またはそのあらゆる変異体もしくは誘導体、またはその代替物の安定剤として使用してもよい。
【0063】
上記を考慮すると、本発明の別の態様は、薬剤として使用する、本発明の単離されたプラスミノーゲン、プラスミン、またはそのあらゆる変異体もしくは誘導体、またはその代替物、またはこれらのいずれかの組合せに関する。
【0064】
本発明のまた別の態様は、本発明の単離されたプラスミノーゲン、プラスミン、またはそのあらゆる変異体もしくは誘導体、またはその代替物、またはこれらのいずれかの組合せ、および薬学的に許容される希釈剤、担体または補助剤の少なくとも1つを含む組成物に関する。さらなる実施形態において、前記組成物は、抗凝血剤、さらに血栓溶解剤、抗炎症剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗真菌剤、血管新生阻害剤、抗有糸分裂剤、抗ヒスタミン剤または麻酔剤のうちの少なくとも1つを追加でさらに含んでもよい。
【0065】
本発明の上述の2つの態様に対する一実施形態において、本発明の単離されたプラスミノーゲン、プラスミン、またはそのあらゆる変異体もしくは誘導体、またはその代替物、またはこれらのいずれかの組合せ、または、本発明の組成物は、臨床的に意義のあるあらゆる状況で使用されてもよく、例えばこのような状況には、病的なフィブリン沈着の治療、眼の後部硝子体剥離の誘導、眼の硝子体液化の誘導、眼の硝子体切除の補助および容易化、後部硝子体剥離の誘導、硝子体黄斑癒着の分離、黄斑円孔の閉鎖、酵素的壊死組織除去、循環フィブリノーゲンの減少、α2−抗プラスミンレベルの減少、またはトラベクレクトミーとの併用がある。
【0066】
本発明の上述の2つの態様に対する別の実施形態において、本発明の単離されたプラスミノーゲン、プラスミン、またはそのあらゆる変異体もしくは誘導体、またはその代替物、またはこれらのいずれかの組合せ、または、本発明の組成物は、予防の目的で、または予防療法のための方法で使用されてもよい。予防的な使用法には、病的なフィブリン沈着の発症リスクが高い哺乳動物(肥満の、運動不足の、または大きな外科的イベントまたは手術を受ける予定のある哺乳動物等)における発症リスクの減少がある。予防的な使用法には、他にも、片眼が後部硝子体剥離および/または硝子体液化の誘導が必要であると診断される/された哺乳動物の、健康な方の眼における後部硝子体剥離および/または硝子体液化の誘導がある。
【0067】
あるいは、本発明は、患者における病的なフィブリン沈着を治療する、分解する、軟化する、浸解する、溶解するための、フィブリン沈着の溶解を誘導するまたは促進するための方法に関し、前記方法は、本発明の単離されたプラスミノーゲン、プラスミン、またはそのあらゆる変異体もしくは誘導体、またはその代替物、またはこれらのいずれかの組合せの有効量を接触させることを含み、前記接触により、前記病的なフィブリン沈着の治療、分解、軟化、浸解、溶解、または前記病的なフィブリン沈着の溶解の誘導もしくは促進が得られる。
【0068】
本発明はまたさらに、眼における後部硝子体剥離を誘導する、および/または眼における硝子体の液化を誘導する、または眼における外科的な硝子体切除の容易化のための方法に関し、前記方法は、このような治療が必要な前記患者の眼に、本発明の単離されたプラスミノーゲン、プラスミン、またはそのあらゆる変異体もしくは誘導体、またはその代替物、またはこれらのいずれかの組合せの有効量を接触させることを含み、前記接触により、前記後部硝子体剥離および/または硝子体の前記液化の誘導、または前記外科的な硝子体切除の容易化が得られる。
【0069】
本発明はまた、患者の損傷した組織の酵素的壊死組織除去のための方法に関し、前記方法は、本発明の単離されたプラスミノーゲン、プラスミン、またはその任意の変異体もしくは誘導体、またはその代替物、またはこれらのいずれかの組合せの有効量を前記損傷した組織に接触させることを含み、前記接触により、前記損傷した組織の前記酵素的壊死組織除去が得られる。
【0070】
本発明の他の方法は、臨床的に関連のある、他のあらゆる適応症を治療するか予防し、患者の循環フィブリノーゲンを減少させるための、またはα2−抗プラスミンレベルを減少させるための方法を含み、前記方法は、本発明の単離されたプラスミノーゲン、プラスミン、またはその任意の変異体もしくは誘導体、またはその代替物、またはこれらのいずれかの組合せの有効量をそのような治療を必要とする患者に接触させることを含み、前記接触により、前記循環フィブリノーゲン、または前記α2−抗プラスミンレベルを減少させる。
【0071】
一般的に、本発明のプラスミン(またはそのあらゆる変異体もしくはその誘導体、またはその代替物)を含む本発明の薬剤または組成物は、最終的な使用方法および投与法によるが、抗凝血剤、さらなる血栓溶解剤、抗炎症剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗真菌剤、血管新生阻害剤、抗有糸分裂剤、抗ヒスタミン剤、または麻酔剤等の1つ又は複数のさらなる活性成分を含んでもよい。
【0072】
「抗凝血剤」には、ヒルジン、ヘパリン、クマリン、低分子ヘパリン、トロンビン阻害物質、血小板抑制剤、血小板凝集阻害剤、凝固因子抑制因子、抗フィブリン抗体、および第VIII因子阻害物質(国際公開第01/04269号パンフレットおよび国際公開第2005/016455号パンフレットに記載されたもの等)がある。
【0073】
「血栓溶解剤」には、野生型プラスミン、野生型プラスミノーゲン、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、組織プラスミノーゲン活性化因子(tPAまたはアルテプラーゼ)、ウロキナーゼ型プラスミノーゲン活性化因子(uPA)およびスタフィロキナーゼ、またはこれらのあらゆる変異体もしくは誘導体、例えばAPSAC(アニソイル化プラスミノーゲンストレプトキナーゼ活性化因子複合体)、レテプラーゼ、テネクテプラーゼ、scuPA(単鎖uPA)、またはこれらのいずれかの組合せがある。
【0074】
「抗炎症剤」には、ステロイド剤(例えばプレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、コルチゾン、ハイドロコルチゾン、プレドニゾン、トリアムシノロン、デキサメサゾン)および非ステロイド系の抗炎症剤(NSAID;例えばアセトアミノフェン、イブプロフェン、アスピリン)がある。
【0075】
「抗ウイルス剤」には、トリフルリジン、ビダラビン、アシクロビル、バラシクロビル、ファムシクロビル、およびイドクスウリジンがある。
【0076】
「抗菌剤」または抗生剤には、アンピシリン、ペニシリン、テトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、フラミセチン、ガチフロキサシン、ゲンタマイシン、トブラマイシン、バシトラシン、ネオマイシンおよびポリミキシンがある。
【0077】
「抗糸状菌/静真菌/抗真菌剤」には、フルコナゾール、アムホテリシン、クロトリマゾール、エコナゾール、イトラコナゾール、ミコナゾール、5−フルオロシトシン、ケトコナゾールおよびナタマイシンがある。
【0078】
「血管新生阻害剤」には、抗−VEGF(血管内皮細胞増殖因子)、または抗−PlGF(胎盤成長因子)抗体等の抗体(またはそのフラグメント)、およびマクゲン(ペガプタニブナトリウム)、トリプトファニルtRNAシンテターゼ(TrpRS)、酢酸アネコルタブ、コンブレタスタチンA4プロドラッグ、AdPEDF(色素上皮由来因子を発現できるアデノベクター)、VEGFトラップ、VEGFレセプター2の阻害剤、VEGF、PlGFまたはTGF−βの阻害剤、シロリムス(ラパマイシン)およびエンドスタチン等の剤がある。
【0079】
「抗有糸分裂剤」には、マイトマイシンCおよび5−フルオロウラシルがある。
【0080】
「抗ヒスタミン剤」には、フマル酸ケトチフェンおよびマレイン酸フェニラミンがある。
【0081】
「麻酔剤」には、ベンゾカイン、ブタムベン、ジブカイン、リドカイン、オキシブプロカイン、プラモキシン、プロパラカイン、プロキシメタカイン、テトラカインおよびアメトカインがある。
【0082】
「接触する」は、本明細書で使用される場合、薬剤等の組成物と、前記組成物が接触する組織、体液、器官、生物体等との間の相互作用をもたらす、あらゆる投与の方法を指す。組成物と、組織、体液、器官、生物体等との間の相互作用は、組成物を投与して直ちに、またはほぼ直ちに生じさせることができ、長期間(期間は組成物を投与して直ちに、またはほぼ直ちに開始する)生じさせることができ、または、組成物を投与した時間に対して遅らせることができる。
【0083】
病的なフィブリン沈着に接触するあらゆる方法が利用できるが、その方法は、フィブリン沈着にプラスミン(またはそのあらゆる変異体もしくは誘導体、またはその代替物)の有効量を(直ちに、遅延して、または長期間にわたって)提供する。そのようなフィブリン沈着が血塊を伴う場合、注射および/または点滴および/またはカテーテルによって、プラスミン(またはそのあらゆる変異体もしくは誘導体、またはその代替物)を動脈内、静脈内または局所的に(血塊の近くに、または血塊中にさえも)送達できる。
【0084】
酵素的壊死組織除去においてプラスミン(またはそのあらゆる変異体もしくはその誘導体、またはその代替物)を使用する場合、局所に塗布できるゲル様の組成物、または液状の形態での適用も含んでよい。
【0085】
眼の硝子体液および/または房水に接触するあらゆる方法が利用できるが、その方法では、硝子体液および/または房水にプラスミン(またはそのあらゆる変異体もしくは誘導体、またはその代替物)の有効量を(直ちに、遅延して、または長期間にわたって)提供する。硝子体液および/または房水に接触する方法の1つには、硝子体液および/または房水に直接注射する、1つ又は複数の眼球内注射がある。あるいは、前記接触方法には、結膜下、筋肉内、または静脈注射がある。さらに別の接触方法には、OCUSERT(登録商標)(Alza Corp.,Palo Alto,California)または、VITRASERT(登録商標)(Bausch & Lomb Inc.,Rochester,New York)等の硝子体へ埋め込み型のデバイスを設置する方法がある。硝子体液および/または房水にプラスミン(またはそのあらゆる変異体もしくは誘導体、またはその代替物)の有効量を接触させる方法は、持効性製剤、徐放性製剤、または任意の適切な埋め込み型のデバイスを使用した、持続的な方法でもよい。
【0086】
用語「有効量」は、本発明の薬剤、特に本発明の薬剤の活性成分、すなわち、プラスミンまたは活性切断変異体(または上述のそのあらゆる代替物)の投与措置を指す。有効量は、一般に、接触または投与の方法および治療される症状に対する調節により異なり、またそのような調節を必要とする。薬剤、特にその活性成分の有効量は、深刻なまたは不必要な毒性作用を引き起こさず、望ましい臨床結果または治療的効果もしくは予防的効果を得るために必要とされる量である。有効量を得るまたは維持するために、薬剤を単回投与または複数回投与してもよい。有効量はさらに、治療が必要な症状の重症度、または予防が必要な症状の予想される重症度により異なる場合があり、また有効量は、患者の全体的な健康状態および身体状況に依存し、通常、有効量を決定するには、治療を行う医師または内科医の判断が必要となるであろう。有効量はさらに、異なったタイプの投与の組合せによって決定してもよい。薬剤は、溶液(液体、またはゲル状等の半液体、または分散液もしくは懸濁液内、コロイド、エマルジョン内、ナノ粒子懸濁液)として、または固形物(例えば錠剤、小型錠剤、ハードまたはソフトカプセル)として投与してもよい。
【0087】
血栓溶解の目的では、プラスミン治療におけるプラスミンの用量および治療期間は、典型的には血塊の大きさと場所、また患者の身体の大きさ、体重および年齢に依存する。血塊が静脈性の場合、プラスミンでの治療は数日継続する可能性があるが、血塊が動脈性の場合、プラスミン治療は数時間しか必要とされない可能性がある。心筋梗塞症では、短い単回投与で治療してもよいが、血栓静脈炎および肺塞栓症等の症状には、長期間の複数回投与の治療を必要とする可能性がある。長期間の持続的および/または間欠的な血栓溶解剤プラスミンでの治療を、冠状動脈閉塞症の治療に、または血栓形成を発症するリスクが高いとされる患者において、血栓形成のリスクを減らすための予防的治療に適用してもよい。プラスミンの用量に影響するさらなる因子には、α2−抗プラスミンおよび/またはα2−マクログロブリン等のプラスミン阻害因子の循環レベルがあり、その初期レベルは患者に依存する。全循環α2−抗プラスミンの多くとも15%が残存し、効果的な血栓溶解療法を達成するように、プラスミン用量を調節することが望ましいであろう。血栓溶解を誘導する目的で、血栓の近位部のそばにプラスミン、またはそのあらゆる変異体または誘導体、またはその代替物を送達する接触方法は、血清抑制因子への曝露が減少するため有利となる可能性がある。そのような接触方法には、一般的にカテーテルデバイスによる運搬がある。血栓溶解に対する使用でのプラスミン用量は、一般的に500マイクログラム/体重約10ミリグラム/kg体重の範囲にあり、単回ボーラス投与、または1回の初回ボーラス投与とその後の1回または反復ボーラス投与に分けて投与する。プラスミンを、あるいは点滴、またはドラッグデリバリー用のマイクロポンプによって長期間にわたり投与してもよい。持続的投与のためのプラスミン用量は1〜10mg/kg/時間までの範囲にあってもよい。
【0088】
後部硝子体剥離、硝子体液化、硝子体の血液または出血のクリアランス、または硝子体腔からの有毒物質もしくは異物のクリアランスを誘導するためのプラスミン用量は一般的に、片眼1用量あたり、約0.1マイクログラム〜約250マイクログラムまでの範囲にあってもよく、片眼1用量あたり約50マイクロリットル〜約300マイクロリットルまでの希釈剤または担体容積内で送達できる。希釈剤または担体は、例えば、無菌の平衡塩類溶液(BSSまたはBSS Plus)、生理的食塩溶液、または1〜10mMのクエン酸を含む溶液であってもよい。一実施形態においては、プラスミンを、0.1mL希釈剤または担体に含まれる125マイクログラムの用量で、眼に送達する。硝子体切除の場合には、前記プラスミンを硝子体切除の15〜300分前、または15〜120分前に眼に送達してもよい。プラスミンの代替源としてプラスミノーゲンを使用する場合(「プラスミン」の定義を参照)、片眼当たり250マイクログラムまでのプラスミノーゲンを使用でき、前記プラスミノーゲンは、プラスミノーゲン活性化因子としてウロキナーゼまたはストレプトキナーゼを2000IUまで、またはtPAを25マイクログラムまで併用してもよい。眼に使用される場合、プラスミンまたはプラスミノーゲンの投与ではさらに、空気、膨張気体または液化可能な気体、またはそれらの混合物等の気体状の補助剤を、眼に無毒である限り、併用して投与してもよい。他の適切な気体には、SF6(六フッ化硫黄)およびC2F6(ヘキサフルオロエタン)、C3Fs(オクタフルオロプロパン)、C4Fs(オクタフルオロシクロブタン)等のパーフルオロカーボン、酸素、窒素、二酸化炭素、アルゴン、および他の不活性ガスがある。眼に使用される気体材料の容積は、気体材料、患者、および望ましい結果に依存する。例えば、後眼房に注入される空気の容積は約0.5mL〜約0.9mLの範囲にあり得る。SF6およびパーフルオロカーボンの気体等の他の気体材料では、約0.3mL〜0.5mLの範囲にあり得る。気体材料は、後部硝子体膜に硝子体液を圧迫し、眼を損傷させずに硝子体液内に空間を形成するのに十分な量で、眼の後眼房へ注入することが好ましい。好ましい実施形態では、気体状補助剤を硝子体液に注入し、眼球内腔の内部体積の約40%〜約60%を占める空間を形成する。
【0089】
上に詳述された用量は、いかなる場合にも制限を意味する数値ではない。前記用量はさらに、野生型プラスミンまたはプラスミノーゲン、またはその任意の活性または活性可能な切断変異体を指す。本発明の安定性が増加したプラスミン(またはそのあらゆる変異体もしくはその誘導体、またはその代替物)を使用する場合の用量は、本発明のプラスミンの最終的な安定度および残存活性に依るが、野生型プラスミンで得られるのと同じ、または全体的により優れた臨床的効果を得るため、同程度の用量、より高い用量、またはより低い用量であってもよい。本発明のプラスミンの用量は、α2−抗プラスミン等の内因性阻害因子による阻害速度にも依存する。
【0090】
本明細書で開示された研究に沿って、本発明はさらに、安定した自己タンパク質分解性を有するプラスミン変異体をスクリーニングするための方法に関し、前記方法は、
(i)野生型プラスミンの触媒ドメインにおいて、位置P+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が自己タンパク質分解する傾向にある位置Pの内部アミノ酸を少なくとも1つ同定するステップと、
(ii)(i)において同定された位置Pのアミノ酸を、位置P+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が、自己タンパク質分解しにくいかまたは全く自己タンパク質分解する傾向がないアミノ酸に突然変異させるステップと、
(iii)(ii)で得られた突然変異体の自己タンパク質分解安定性を測定するステップと、
(iv)自己タンパク質分解性が安定している突然変異体を、安定した自己タンパク質分解性を有する変異体として(iii)から選択するステップとを含む。
【0091】
本発明は同様に、安定した自己タンパク質分解性を有するプラスミン変異体をスクリーニングするための方法に関し、前記方法は、
(i)ヒトプラスミンの触媒領域の位置137、147および158のアルギニンまたはリジンアミノ酸の、または、非ヒトプラスミンにおいて対応するアルギニンまたはリジンの1つ又は複数を、天然のアミノ酸とは異なるアミノ酸へ突然変異させるステップと、
(ii)(i)で得られた突然変異体の自己タンパク質分解安定性を測定するステップと、
(iii)自己タンパク質分解性が安定している突然変異体を、安定した自己タンパク質分解性を有するプラスミン変異体として(ii)から選択するステップとを含み、
前記ヒトプラスミンの触媒領域は位置1のアミノ酸バリンで始まり、これはヒトGlu−プラスミノーゲンの位置562で生じているのと同じバリンアミノ酸である。
【0092】
上記のスクリーニング法は、安定した自己タンパク質分解性を有するプラスミン変異体のタンパク質分解活性を測定するステップをさらに含んでもよい。
【0093】
薬物を含む多数の製品(ここでは特に、使用者が利用できる状態にある活性成分、すなわち、患者に投与できる最終的な製剤として理解される)、およびバルク貯蔵された薬物の活性成分は、通常利用に先立ってかなりの時間貯蔵される。可能な限り製品の有効期限を延ばすことが目的である。有効期限とは、製品が安全に使用され得、その有用性が効力を維持する、つまり薬剤の場合はその活性が、および/またはその活性成分が効力を維持する期間を意味する。典型的には、有効期限は製品またはその包装に表示される。一旦有効期限が切れると、製品の安全性と有用性の効力は保証されない。製品の貯蔵においてさらに重要な側面は、望ましい有効期限を達成できる貯蔵温度である。例えば、+4℃または平均的な冷蔵庫の温度で貯蔵された製品の有効期限は、12ヶ月になる可能性があるが、−20℃または平均的な冷凍庫の温度で貯蔵された同じ製品の有効期限は、36ヶ月になる可能性がある。しかしながら、物流的に、例えば−20℃の凍結温度でコールドチェーンを維持するのは、+4℃でコールドチェーンを維持するより、著しく複雑で困難で費用がかかる。したがって、製品が+4℃で貯蔵されながら、短くはあるが十分な長さの有効期限を有することは、依然として大変魅力的である可能性がある。本発明は、プラスミン、もしくはその任意の活性断片もしくは誘導体、またはプラスミンもしくはその任意の活性誘導体を含む組成物の有効期限または長期貯蔵安定性を延長、強化、増加させるための解決策を提供する。解決策では、本明細書に記載した、安定性を増強したプラスミン変異体を提供し、これにより、内因的に有効期限を増加、強化、延長する。
【0094】
本発明は、同様にプラスミンを含む組成物の長期貯蔵安定性を強化する方法に関し、前記方法は、タンパク質分解活性の著しい損失がなく長期にわたり貯蔵できる、安定した自己タンパク質分解性を有するプラスミン変異体を同定するステップを含む。長期安定性の測定には、本発明のプラスミン製剤を等分し、活性測定を想定した貯蔵期間中に反復して行う。想定した貯蔵期間が、例えば24か月である場合、活性測定を例えば毎月行い得る。想定した貯蔵期間終了時点でのタンパク質分解活性の許容可能な減少量は、大部分は想定した臨床適用によるが、例えば10%〜15%を上回らないのが一般的であり得る。
【0095】
本発明はさらに、本発明のプラスミノーゲン変異体を産生するための方法、
つまりプラスミノーゲンを産生するための方法に関し、この方法は、触媒ドメインにおいて、位置P+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が自己タンパク質分解する傾向にある位置Pの内部アミノ酸の少なくとも1つが、位置P+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が、自己タンパク質分解しにくいかまたは全く自己タンパク質分解する傾向がないアミノ酸へ突然変異していることを含む。このような方法は、
(i)本発明のプラスミノーゲン変異体をコードする核酸を前記プラスミノーゲンを発現できる適切な宿主細胞に導入するステップと;
(ii)前記宿主細胞において前記プラスミノーゲンが発現するのに十分な条件下、十分な時間をかけて(i)で得られた宿主細胞を生育するステップと;
(iii)(ii)で発現したプラスミノーゲンを回収するステップとを含む。
この方法には、最後に(iii)で回収されたプラスミノーゲンの精製を含むステップ(iv)を付加できる。
発現および産生に適した宿主細胞および方法は、例えば国際公開第90/13640号パンフレット(昆虫細胞)、国際公開第2002/050290号パンフレットおよび国際公開第03/066842号パンフレット(酵母細胞)、国際公開第2008/054592号パンフレット(細菌細胞/リフォールディングプロセス)および国際公開第2005/078109号パンフレット(ウキクサ科形質転換植物または形質転換植物細胞)に開示されている。
【0096】
本発明はさらに、本発明のプラスミン変異体を産生するための方法、つまりプラスミンを産生するための方法を包含し、この方法は、触媒ドメインにおいて、位置P+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が自己タンパク質分解する傾向にある位置Pの内部アミノ酸の少なくとも1つが、位置P+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が、自己タンパク質分解しにくいかまたは全く自己タンパク質分解する傾向がないアミノ酸へ突然変異していることを含む。そのような方法は一般的に、上述のように本発明のプラスミノーゲンを産生するステップを含み、さらに、適切なプラスミノーゲン活性化因子(tPA、uPA、ウロキナーゼ、ストレプトキナーゼ、スタフィロキナーゼ、またはその任意の変異体等)を使用して、本発明のプラスミノーゲンを本発明のプラスミンへ活性化するステップを含む。最終的には、活性化に先立ってプラスミノーゲンを精製する、活性化したプラスミンを精製する、ならびに/または活性プラスミンを上述のように誘導する、および/もしくは可逆的に不活化する、および/もしくは、任意で適切な貯蔵条件(溶液の安定化、凍結乾燥および/または低温)下に置く、1つ又は複数のステップを付加できる。
【0097】
本発明はまた、本発明のプラスミノーゲン変異体またはプラスミン変異体をコードする、単数または複数の単離された核酸配列に関する。本発明は、またそのような核酸を含む単数または複数の組換えベクターに関する。本発明はまた、そのような核酸、またはそのような組換えベクターで形質転換された単数または複数の宿主細胞に関する。
【実施例】
【0098】
実施例1 プラスミン触媒ドメインの自己分解、および自己タンパク質分解に感受性のプラスミン触媒ドメインにおけるペプチド結合の測定。
プラスミンのタンパク質分解活性の自動不活性化の根底にあるメカニズムを調査するため、発明者は、主にプラスミンの触媒ドメインからなるマイクロプラスミンに焦点を当てることとした。
【0099】
大量に産生されたマイクロプラスミンの典型的な分子ふるいクロマトグラフィー(SEC)プロフィールを図2に示す。分画番号5(プレピーク1)、分画番号7と8(プレピーク2)、分画番号10〜12(マイクロプラスミンのピーク)、および分画番号15と16(ポストピーク)に対応する溶出液を収集し、その中の物質をN末端アミノ酸配列を決定した(エドマン分解)。分画番号17と18前後のピークの溶出は緩衝液ピークに相当する。SECは、Amersham Bioscience Superdex 75 10/300 GLカラムをWaters Alliance HPLCシステムに接続して行った。カラムを、8mMのNaHPO、1.5mMのKHPO、3mMのKCl、0.5Mの(NHSOを含むpH7.4の緩衝液で平衡にし溶出した。1mg/mLのマイクロプラスミン溶液の50μL(つまり、50μgのマイクロプラスミン)を注入した。溶出液のタンパク質をUV吸光度検出器で220nmでモニターした。
【0100】
得られたアミノ酸配列を、表2に記載する。マイクロプラスミンの「重鎖」(アミノ酸APSから開始、すなわち、重鎖の19個のC末端のアミノ酸)および軽鎖(アミノ酸VVGから開始)に対応したアミノ酸配列、および2つの自己分解生成物(アミノ酸EAQおよびアミノ酸VCNから開始)に対応するアミノ酸配列がある。プラスミン(プラスミノーゲン)の全配列、および重鎖と軽鎖の指標、および自己切断部位については、図1を参照のこと。自己分解生成物は、Lys137およびLys147のC末端アミド結合の切断にそれぞれ対応する(番号付けはプラスミンの軽鎖の位置1のバリンから開始、図1を参照)。
【0101】
【表2】

【0102】
大量に産生されたマイクロプラスミンを自己触媒により分解させた。0.6mg/mLの最終濃度のマイクロプラスミンを+20℃で4時間、pH3.1、pH4.0、pH5.0、pH6.0、およびpH7.0でインキュベートし、−70℃で直ちに凍結した。試料を還元SDS−PAGEにより分析し、その結果を図3に示す(クーマシーブリリアントブルー染色ゲル)。図3には、約15kDa、約10kDa、および10kDaよりやや小さい、自己触媒による主な分解生成物を示す。観察されたバンドはN末端のアミノ酸配列決定により決定された切断部位に一致している(表1を参照)。
【0103】
実験の別のセットにおいては、大量に産生したマイクロプラスミン(5mMのクエン酸、6mg/mLのマンニトール、pH3、1中4mg/mL)を中性pH緩衝液により希釈し、時間を変えて収集されたアリコートをSDS−PAGEまたはウェスタンブロットのどちらかで分析した。SDS−PAGE分析では、マイクロプラスミンを、BSS+(Alcon;mL当たり、7.14mgのNaCl、0.38mgのKCl、0.154mgのCaCl、0.2mgのMgCl、0.42mgのナトリウムリン酸、2.1mgのNaHCO、0.92mgのグルコース、および0.184mgのグルタチオンジスルフィドを含む;pH7.4)で1.25mg/mLの最終濃度に希釈して、室温で維持しデータを得た(図4A)。ウエスタンブロット解析では、マイクロプラスミン(最終濃度1.53μM)をPBSで希釈し、37℃でインキュベートし、マウスの抗マイクロプラスミン抗体でウェスタンブロットを反応させた(図4B)。図4Aおよび4Bは、無傷のマイクロプラスミンの経時分解および自己触媒による分解生成物の蓄積を示す。別の試料を、大量に産生したマイクロプラスミンを100mMリン酸ナトリウム、pH7.2で2倍希釈して調製し37℃で30分インキュベートした。次いで、4〜12%のポリアクリルアミドゲル上で25マイクログラムのタンパク質を分離した。クーマシー染色に引き続き、2つの分解フラグメントに対応するバンドを切り取り、ペプチドをゲルから単離し、N末端配列に供した(Eurosequence B.V.,Groningen,The Netherlandsにより実施)。15kDaのバンドからは、無傷の触媒ドメイン(に対して期待された配列Val−Val−Gly−Gly)が得られた。より低分子の、10kDaのフラグメントからは、Val−Gln−Ser−Thr−Glu−Leuの配列が得られ、Arg158とVal159の間の主要な切断部位が同定された。また、10kDaフラグメントからは、量が少なく(<10%)、分解能の低い配列(Xaa−Xaa−Asn−Arg−Tyr)が得られ、小さな切断部位が、リジン147のC末端側に位置することが示唆される。すべての番号付けは、プラスミンの軽鎖の位置1のValから開始する(図1を参照)。したがって、マイクロプラスミンを2mg/mLで自己分解させた場合、Arg158とVal159との間の新たな自己触媒的な切断部位が同定された。
【0104】
図5に示すように、ウェスタンブロット(円)によって評価されたマイクロプラスミンの自己分解のカイネティクスは、発色基質分析によって評価されたようにマイクロプラスミン活性の減少(四角)と同様であった(実施例3を参照)。自己分解データは、図4Bにおける無傷のマイクロプラスミンに対応するバンドの定量化、および活性データ(二次反応方程式を使用して最も一致した;データを示さず)から得た。上述の実験から、マイクロプラスミンの自己分解は、活性を減少させる原因であり、自己触媒により切断しやすい主要な部位は、Arg158とVal159、Lys147とVal148、Lys137とGlu138の間にあることが結論づけられた。
【0105】
興味深いことに、眼の硝子体液におけるマイクロプラスミンの不活性化のカイネティクスは、PBSにおいて観察されたカイネティクスと非常に類似しており(図6A)、ウエスタンブロット解析では、眼の硝子体液におけるマイクロプラスミンの不活性化も自己分解によって生じることが示された(図6B)。PBS(図6Aで四角)で、またはブタの眼の硝子体液(図6Aで円)で、マイクロプラスミンを1.53μMの最終濃度に希釈し、活性のあるマイクロプラスミンの残渣の濃度を、発色基質Glu−Phe−Lys−pNAを使用して、様々な時点で測定した。ブタの眼の硝子体液の試料を、図に示した時間で収集し、ウェスタンブロット(図6B)によって上述のように解析した。矢印は15kDaのフラグメントを示す。
【0106】
実施例2 プラスミノーゲン変異体の作成、発現、および精製、ならびにプラスミンへの活性化。
発現ベクター
Invitrogen Corporation(Carlsbad,California)から購入したpPICZαA分泌ベクターを、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)における組み換えヒトマイクロプラスミノーゲンの発現および分泌のために使用した。
【0107】
このベクターは、サッカロマイセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)α−因子プレプロペプチドの分泌シグナルを含む。XhoI認識配列は、Lys−Arg部位のすぐ上流の、α−因子分泌シグナルのカルボキシ末端に存在し、Lys−Arg部位は、成熟タンパク質から分泌シグナルを除去するためにKex2により切断される。このXhoI制限酵素部位を、5’末端でXhoIおよびKex2認識部位を有する遺伝子を合成して、目的の遺伝子をKex2切断部位に隣接させてクローニングするために使用してもよい。次いで、目的の組み換えの遺伝子は、天然のNH終端を有して発現する。異種遺伝子のクローンニングを容易にするために、制限酵素EcoRI、SfiI、KpnI、SacIIおよびXbaIのための認識部位を有するマルチプルクローニングサイトが、pPICZαAベクターのα−因子分泌シグナルからすぐ下流に作られている。
【0108】
遺伝子合成
ピキア・パストリス(Pichia pastoris)におけるヒトマイクロプラスミノーゲンの発現を改善するために、ヒトマイクロプラスミノーゲンおよびその変異体をコードする遺伝子を、ピキア・パストリス(Pichia pastoris)にとって好ましいコドン利用を考慮に入れて、新しく合成した。
【0109】
コドン最適化遺伝子配列を設計するため、ヒトマイクロプラスミノーゲンアミノ酸配列(配列番号2)を、プログラムGene Designerにインポートした。Gene Designerは、DNA2.0(Menlo Park,California)により開発され、インターネットで自由に利用できる。この配列を、プログラムで提供されたピキア・パストリス(Pichia pastoris)コドン利用表を使用して、DNA塩基配列へ逆翻訳した。次いで、核酸配列を手動でチェックし、大腸菌(Escherichia coli)のコドン利用により適するように調整した。さらに、可能な場合、6塩基対パリンドローム配列および核酸反復を除去した。5’末端に、XhoI制限酵素部位およびKex2切断部位を、3’末端にXbaI制限酵素部位を付加した。
【0110】
この野生型のマイクロプラスミノーゲン配列に、実施例1に記載のように、同定されたアミノ酸残基を変化させるため、突然変異を導入した。隣接した核酸を、ユニークな制限酵素部位を導入するために変化させたが、この場合、コードされたアミノ酸配列を保存するために注意を要した。
【0111】
第1の変異体において、位置137のリジンはグルタミンに置換される。Lys137は、位置478〜480のコドンAAAによりコードされている。核酸TTGAAA(位置475〜480)をCTGCAGに変化させ、PstI部位を導入し、マイクロプラスミノーゲンタンパク質のLys137をGlnに変化させたが、位置136のロイシンは変化させなかった。(核酸配列は、配列番号4にあり、推定されるアミノ酸配列は配列番号5にある)。
【0112】
第2の変異体において、位置147のリジンはヒスチジンに置換される。Lys147は位置508〜510のコドンAAGにコードされている。核酸AAGGTT(位置508〜513)をCACGTGに変化させ、PmlI部位を導入し、マイクロプラスミノーゲンタンパク質のLys147をHisに変化させたが、位置148のバリンは変化させなかった。(核酸配列は配列番号6にあり、推定されるアミノ酸配列は配列番号7にある。)
【0113】
第3の変異体において、位置158のアルギニンはヒスチジンに置換される。Arg158は位置540〜542のコドンCGTにコードされている。核酸TCGTGTT(位置539〜545)をACACGTGに変化させ、PmlI部位を導入し、マイクロプラスミノーゲンタンパク質のArg158をHisに変化させたが、位置157のグリシンおよび位置159のバリンは変化させなかった。(核酸配列は配列番号8に示し、推定されるアミノ酸配列は配列番号9に示す。)
【0114】
第4の変異体において、上記の変化を全て組み合わせ、位置137のリジンをグルタミンに、位置147のリジンをヒスチジンに、位置158のアルギニンをヒスチジンに置換する。(核酸配列は配列番号10に示し、推定されたアミノ酸配列を配列番号11に示す。)
【0115】
マイクロプラスミノーゲン変異体の配列を新たに合成し、Integrated DNA Technologies(Coralville,Iowa)のベクターpUC57へクローニングした。他の場合には、マイクロプラスミノーゲンの配列を合成し、同じクローニング方法を使用してDNA2.0(Menko Park,California)のベクターpPICZαAへクローニングした。
【0116】
さらに別の場合には、マイクロプラスミノーゲン変異体を、Stratagene(La Jolla,California)のQuikChange II Site Directed Mutagenesis Kitを使用して上述のように作成した発現ベクターでの部位特異的突然変異誘発後に得た。下記のプライマーを使用した:
Lys137Gln突然変異:
CGTTCGGTGCTGGTCTGCTGCAGGAAGCACAATTACCTGTG(センス;配列番号12)および
CACAGGTAATTGTGCTTCCTGCAGCAGACCAGCACCGAACG(アンチセンス;配列番号13)
Lys137Arg突然変異:
GGTACGTTCGGTGCTGGTCTGTTGCGTGAAGCACAATTACCTGTGATTG(センス;配列番号14)および
CAATCACAGGTAATTGTGCTTCACGCAACAGACCAGCACCGAACGTACC(アンチセンス;配列番号15)
Lys147Ala突然変異:
CAATTACCTGTGATTGAGAACGCCGTGTGTAACAGATACGAGTTC(センス;配列番号16)および
GAACTCGTATCTGTTACACACGGCGTTCTCAATCACAGGTAATTG(アンチセンス;配列番号17)
Lys147Glu突然変異:
CAATTACCTGTGATTGAGAACGAAGTGTGTAACAGATACGAGTTC(センス;配列番号18)および
GAACTCGTATCTGTTACACACTTCGTTCTCAATCACAGGTAATTG(アンチセンス;配列番号19)
Lys147Gln突然変異:
CAATTACCTGTGATTGAGAACCAAGTGTGTAACAGATACGAGTTC(センス;配列番号20)および
GAACTCGTATCTGTTACACACTTGGTTCTCAATCACAGGTAATTG(アンチセンス;配列番号21)
Arg158Ala突然変異:
CAGATACGAGTTCCTGAATGGCGCCGTGCAGTCCACTGAGTTGTGTGCAGG(センス;配列番号22)および
CCTGCACACAACTCAGTGGACTGCACGGCGCCATTCAGGAACTCGTATCTG(アンチセンス;配列番号23)
Arg158Gln突然変異:
GATACGAGTTCCTGAATGGTCAGGTTCAGTCCACTGAGTTGTGTG(センス;配列番号24)および
CACACAACTCAGTGGACTGAACCTGACCATTCAGGAACTCGTATC(アンチセンス;配列番号25)
単一、二重および三重突然変異体の全リストは、表3に記載する(後を参照)。
【0117】
マイクロプラスミノーゲン変異体のための発現ベクターの作成
野生型および変異のマイクロプラスミノーゲン配列を、XhoIおよびXbaIでベクターpUC57を分解して得、ベクターpPICZαAへ直接クローニングした。宿主ベクターフラグメントをXhoIおよびXbaI制限酵素で調製し、Qiaquick gel extraction kit(Qiagen GmbH,Germany)を使用して、アガロースゲルから精製した。大腸菌株TOP10(Invitrogen)をライゲーションミックスを使用し形質転換し、アンピシリン抵抗性のクローンを選択した。制限分析に基づいて、期待された大きさの挿入物を含むプラスミドクローンを、後の特性評価のために保持した。得られたプラスミドクローンの配列決定により、マイクロプラスミノーゲンのコード領域へ正確に挿入されα−因子接合信号に融合されたこと、およびコード領域に不要な突然変異がないことが確認された。
【0118】
マイクロプラスミノーゲン変異体の発現とプラスミンへの活性化
マイクロプラスミノーゲン変異体および活性マイクロプラスミン変異体を、国際公開第02/50290号パンフレットの実施例2に概説される手順に実質的に従って得る。
【0119】
活性化に先立って、マイクロプラスミノーゲン突然変異体を免疫アフィニティによって直接ピキア・パストリス(Pichia pastoris)上清から精製した。マウスの抗ヒトマイクロプラスミン抗体(抗原としてマイクロプラスミンを使用して、Balb/cマウスで産生;ハイブリドーマセルライン7H11A11により産生、ThromboGenics N.V.で入手可能)をGE Healthcareのプロトコル番号71500015ADに記載のセファロースビーズに結合した。このプロトコルに従い、7.5mLの免疫アフィニティ樹脂を45mgの抗体から調製し、XK16/20カラムに詰めた。未精製の上清200〜400mL(ピキア(Pichia)培養物を0.2μでろ過/pH6.0)を直接7H11A11アフィニティーカラムに添加した。洗浄ステップ(100mMのKHPO、0.5MのNaCl、pH6.2、カラム容量の10倍量)後、マイクロプラスミノーゲン変異体を0.2Mのグリシン−HCl、pH3.0の緩衝剤で溶出した。
溶出液(分画4〜6)を中和し、25mMリン酸ナトリウム緩衝液、pH7.2に透析した。Lys157Met(K157M)突然変異体の精製物を、免疫アフィニティークロマトグラフィーで得られたクロマトグラムを(A)により、図7に示し異なった溶出液分画をSDS−PAGEとその後のクーマシー染色で分析した(B)。
【0120】
上述の野生型および変異マイクロプラスミノーゲン種のアミノ酸配列および核酸配列を以下に記載する。
配列番号2−野生型ヒトマイクロプラスミノーゲンアミノ酸配列
【化1】

配列番号3−ピキア(Pichia)での発現に最適化されたコドン利用を有する人工の核酸配列。核酸配列は、配列番号2の野生型ヒトマイクロプラスミノーゲンアミノ酸配列をコードする。
【化2−1】

【化2−2】

配列番号4−Lys137Gln置換を有するマイクロプラスミノーゲン変異体(突然変異させたコドンは太字イタリック体、XhoI、PstIおよびXbaI制限酵素部位に下線)
【化3】

配列番号5−配列番号4の推定アミノ酸配列(下線を引いたN末端アミノ酸「LEKR」は導入されたXhoI+Kex2切断部位によりコードされる;導入されたアミノ酸突然変異は太字/イタリック体で示し下線を引く。)
【化4】

配列番号6−Lys147His置換を有するマイクロプラスミノーゲン変異体(突然変異させたコドンは太字イタリック体、XhoI、PmlIおよびXbaI制限酵素部位に下線)
【化5】

配列番号7−配列番号6の推定アミノ酸配列(下線を引いたN末端アミノ酸「LEKR」は導入されたXhoI+Kex2切断部位によりコードされる;導入されたアミノ酸突然変異は太字/イタリック体で示し下線を引く。)
【化6】

配列番号8−Arg158His置換を有するマイクロプラスミノーゲン変異体(突然変異させたコドンは太字イタリック体、XhoI、PmlIおよびXbaI制限酵素部位に下線)
【化7】

配列番号9−配列番号8の推定アミノ酸配列(下線を引いたN末端アミノ酸「LEKR」は導入されたXhoI+Kex2切断部位によりコードされる;導入されたアミノ酸突然変異は太字/イタリック体で示し下線を引く。)
【化8】

配列番号10−Lys137Gln、Lys147HisおよびArg158His置換を有するマイクロプラスミノーゲン変異体(突然変異させたコドンは太字イタリック体、XhoI、Pstl、PmlIおよびXbaI制限酵素部位に下線)
【化9−1】

【化9−2】

配列番号11−配列番号10の推定アミノ酸配列(下線を引いたN末端アミノ酸「LEKR」は導入されたXhoI+Kex2切断部位によりコードされる;導入されたアミノ酸突然変異は太字/イタリック体で示し下線を引く。)
【化10】

【0121】
実施例3 野生型プラスミンと比較して減少したプラスミン変異体の自己タンパク質分解
最初に、精製されたマイクロプラスミノーゲン突然変異体を、組み換えスタフィロキナーゼ(SAK−SY162)またはウロキナーゼ(Sigma)を使用して、活性のあるマイクロプラスミン種に変換した。簡単に述べると、マイクロプラスミノーゲン突然変異体(典型的には25mMリン酸ナトリウムpH7.2中5〜20μM)を、スタフィロキナーゼ(典型的にはマイクロプラスミノーゲン/スタフィロキナーゼ比=50/1)またはウロキナーゼ(典型的にはマイクロプラスミノーゲン/ウロキナーゼ比=200)の存在下、37℃でインキュベートし、他で記述したように、活性マイクロプラスミン種の出現を、発色基質S−2403(濃度0.3mMで使用)に対する加水分解性の活性をモニターして追跡した。一旦最大活性に到達すると、マイクロプラスミノーゲン変換の程度をSDS−PAGEおよびHPLCで評価した。活性化に続いて、自己分解反応を、37℃で維持した試料の活性の減少量を測定することでモニターした。自己分解による分解をSDS−PAGEおよびHPLCで可視化した。そのような実験の代表例を図8A〜Cに示す。自己分解の二次の反応速度定数(k)の測定を以下のように決定した:(1)HPLCでのマイクロプラスミンピーク面積を、活性マイクロプラスミン種のモル濃度を算出するために(精製された、野生型マイクロプラスミンで確立された標準曲線との比較によって)活性化フェーズの終わりに/自己分解フェーズの最初に使用した;(2)自己分解フェーズ中に測定された活性の減少を、各時点の活性マイクロプラスミンの残渣のモル濃度を算出するため使用した;(3)残渣のマイクロプラスミン濃度(mol/lの単位で)を時間の関数(秒の単位で)としてプロットし、データを非線形回帰分析により等式1にあてはめ、自己分解定数k(M−1−1の単位で)を得た。
等式1:
【数1】

等式1では、[μPL]は任意の所与の時間のマイクロプラスミン濃度であり、[μPL]はt=0のときの濃度である。そのような曲線の一例を図8Dに示し、様々なマイクロプラスミン突然変異体に対して測定されたk値を表3に記載する(後を参照)。
【0122】
SAK−SY162は、スタフィロキナーゼSak−STAR(Collenら、1992;Fibrinolysis6、203−213)の変異体であり、次のアミノ酸置換を有する:K35A、E65Q、K74R、E80A、D82A、T90A、E99D、T101S、E108A、K109A、K130TおよびK135R。
【0123】
実施例4 野生型プラスミンと比較したプラスミン変異体のタンパク質分解活性。
マイクロプラスミンの加水分解活性は発色基質Glu−Phe−Lys−pNA(S−2403、Chromogenix,Milano,Italy)を使用して、追跡できる。基質の加水分解において、pNA(p−ニトロアニリン)群が放出され、405nmで吸光度が増加する。野生型マイクロプラスミンおよびマイクロプラスミン変異体の活性を、Powerwave X(Bio−Tek)プレート読み取り装置を用いて測定した。50mMトリス、38mMのNaCl、0.01%Tween80、pH7.4中、37℃で分析を行った。
【0124】
マイクロプラスミン変異体に対して、最初に、調製物をスタフィロキナーゼまたはウロキナーゼで活性化し、活性マイクロプラスミン種の濃度を活性化フェーズの終わりに、別記したように決定した。しかしながら、後の不活性化を防ぐために、活性化された試料を、2倍量の5mMのクエン酸を付加してpHを約3まで低下させることにより、安定化させた。
【0125】
発色基質S−2403に対するマイクロプラスミン変異体のカイネティクスパラメーター(kcatとK)を、様々な基質濃度で加水分解の初速度を測定すること、および等式2でのデータの解析によって得た。等式2では[μPL]がHPLCによって測定された活性マイクロプラスミンの濃度であり、[S]はS−2403の濃度である。加水分解の初速度の測定値から得たkcatおよびK測定の一例を図9に示す。
等式2:
【数2】

様々なマイクロプラスミン突然変異体に対して得られたkcatおよびK値を表3に記載する。
【0126】
【表3】

【0127】
実施例5 インビトロまたはインビボモデルにおけるプラスミン変異体の治療効果。
5.1脳梗塞サイズに対するプラスミン変異体の影響。
国際公開第00/18436号パンフレットの実施例2の記載のように、またはWelshら(1987、J Neurochem 49、846−851)によれば、脳梗塞サイズを減少させる本発明のプラスミン変異体の効果を、マウスの脳梗塞モデルにおいて見ることができる。野生型プラスミンの脳梗塞サイズへの有益な効果が、国際公開第00/18436号パンフレットの実施例5で実証されている。類似の実験を本発明のいずれかのプラスミン変異体で行い、これらのプラスミン変異体の有益な効果を測定し、野生型プラスミンの有益な効果と比較する。
【0128】
5.2 プラスミン変異体のインビボの血栓溶解活性
ウサギの体外ループ血栓溶解モデル(国際公開第02/50290号パンフレットの実施例6;Hotchkissら、1987、Thromb Haemost 58、107 要約書377)、イヌの冠動脈回旋枝の銅コイル誘導血栓症モデル(国際公開第02/50290号パンフレットの実施例8;Bergmannら、1983、Science 220、1181−1183)、またはウサギの頚静脈血栓症モデル(Collenら、1983、J Clin Invest 71、368−376)を本発明のプラスミン変異体のインビボの血栓溶解活性を実証するために使用できる。国際公開第00/18436号パンフレットの実施例7および9、およびCollenら(1983)による記載にあるように、血栓溶解への野生型プラスミンの有益な効果をこれらのモデルで実証した。類似の実験を本発明のプラスミン変異体のいずれかで行い、これらのプラスミン変異体の有益な効果を測定し、野生型プラスミンの有益な効果と比較する。
【0129】
5.3プラスミン変異体のインビトロの血栓溶解活性
末梢動脈閉鎖(PAO)のインビトロモデルは国際公開第01/36609号パンフレットの実施例6に記載されており、野生型プラスミンの血栓溶解の効果をこのモデルにおいて実証した。類似の実験を本発明のプラスミン変異体のいずれかで行い、これらのプラスミン変異体の末梢動脈閉鎖の血栓溶解への有益な効果を測定し、野生型プラスミンの有益な効果と比較する。
【0130】
5.4 プラスミン変異体によって誘導された眼の硝子体の液化および後部硝子体剥離
国際公開第2004/052228号パンフレットの実施例5は、死後のブタの眼における硝子体の液化におけるマイクロプラスミンの効果と、効果を測定するための分析を開示している。国際公開第2004/052228号パンフレットの実施例6は、死後のヒトの眼における後部硝子体剥離(PVD)の誘導におけるマイクロプラスミンの効果の他に、効果を測定するための分析を開示する。本発明のプラスミン変異体による硝子体液化およびPVDの誘導を、類似の死後モデルにおいて実証する。
【0131】
5.5 プラスミン変異体によって誘導されたインビボのPVD
国際公開第2004/052228号パンフレットの実施例7は、インビボのネコのモデルにおけるPVDの誘導に対するマイクロプラスミンの効果の他に、その効果を測定するための分析を開示している。本発明のプラスミン変異体によるPVDの誘導を、インビボのモデルにおいて実証する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒ドメインにおいて、位置P+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が自己タンパク質分解する傾向にある位置Pの内部アミノ酸の少なくとも1つが、位置P+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が、自己タンパク質分解しにくいアミノ酸へ突然変異していることを特徴とする、単離されたプラスミノーゲン変異体もしくはそれから得られたプラスミン、または単離されたプラスミン変異体、または前記プラスミンのいずれかのタンパク質分解性が活性な、または可逆的に不活性な誘導体。
【請求項2】
触媒ドメインにおいて、位置P+1およびP’+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が自己タンパク質分解する傾向にある位置PおよびP’の内部アミノ酸の少なくとも2つが、位置P+1およびP’+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が、自己タンパク質分解しにくいアミノ酸へ突然変異している、請求項1に記載のプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体。
【請求項3】
前記位置PまたはPおよびP’の内部アミノ酸が、リジンまたはアルギニンである、請求項1または2に記載のプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体。
【請求項4】
前記位置Pまたは位置PおよびP’の内部アミノ酸の少なくとも1つまたは2つは、
(i)ヒトプラスミンの触媒ドメインの位置137のリジン、または非ヒトプラスミンの触媒ドメインにおいて対応するリジンもしくはアルギニン;
(ii)前記ヒトプラスミンの触媒ドメインの位置147のリジン、または非ヒトプラスミンの触媒ドメインにおいて対応するリジンもしくはアルギニン;または、
(iii)前記ヒトプラスミンの触媒ドメインの位置158のアルギニン、または非ヒトプラスミンの触媒ドメインにおいて対応するアルギニンもしくはリジン;
の1つまたは2つであり、前記ヒトプラスミンの触媒ドメインは位置1のアミノ酸バリンで始まり、これはヒトGlu−プラスミノーゲンの位置562で生じているのと同じバリンアミノ酸である、請求項1から3のいずれか一項に記載のプラスミノーゲン、プラスミン、またはプラスミン誘導体。
【請求項5】
前記位置Pの内部アミノ酸の少なくとも1つが、前記ヒトプラスミンの触媒ドメインの位置147のリジン、または非ヒトプラスミンの触媒ドメインにおいて対応するリジンまたはアルギニンであり、前記ヒトプラスミンの触媒ドメインは位置1のアミノ酸バリンで始まり、これはヒトGlu−プラスミノーゲンの位置562で生じているのと同じバリンアミノ酸である、請求項1に記載のプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体。
【請求項6】
ヒト触媒ドメインの位置137および/または158の内部アミノ酸、または非ヒトプラスミンの触媒ドメインにおいて対応するリジンおよび/またはアルギニンの突然変異をさらに含み、前記ヒトプラスミンの触媒ドメインは位置1のアミノ酸バリンで始まり、これはヒトGlu−プラスミノーゲンの位置562で生じているのと同じバリンアミノ酸である、請求項5に記載のプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体。
【請求項7】
(i)位置Pの前記少なくとも1つの内部アミノ酸の突然変異が、前記ヒトプラスミンの触媒ドメインの位置137(これはヒトGlu−プラスミノーゲンを基準としたアミノ酸位置698である)のリジンの、自己タンパク質分解により耐性のある、アミノ酸137と138の間のペプチド結合を与えるアミノ酸への突然変異である場合、前記プラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体またはプラスミン誘導体は、(ヒトGlu−プラスミノーゲンを基準とした)アミノ酸位置561および562でインタクトな活性化部位を含み、および触媒ドメインの外の(ヒトGlu−プラスミノーゲンを基準とした)位置536および541のアミノ酸が存在する場合は、前記アミノ酸は野生型のシステインである、または、
(ii)位置Pの前記少なくとも1つの内部アミノ酸の突然変異が、ヒトプラスミンの触媒ドメインの位置158(これはヒトGlu−プラスミノーゲンを基準としたアミノ酸位置719である)のアルギニンの、アラニンまたはグルタミン酸への突然変異である場合、位置P’+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が自己タンパク質分解する傾向にある位置P’の、前記ヒトプラスミンの触媒ドメインの少なくとも1つの他の内部アミノ酸が、位置P’+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が、自己タンパク質分解しにくいか、または全く自己タンパク質分解する傾向がないアミノ酸へ突然変異している、
請求項1に記載のプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体。
【請求項8】
ヒト触媒ドメインの位置147の内部アミノ酸、または非ヒトプラスミンの触媒ドメインにおいて対応するリジンまたはアルギニンの突然変異をさらに含み、前記ヒトプラスミンの触媒ドメインは位置1のアミノ酸バリンで始まり、これはヒトGlu−プラスミノーゲンの位置562で生じているのと同じバリンアミノ酸である、請求項7に記載のプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体。
【請求項9】
自己分解定数が、野生型プラスミンの自己分解定数の最大で95%であることをさらに特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のプラスミン変異体、またはプラスミン誘導体。
【請求項10】
触媒定数kcatが、野生型プラスミンのkcatの10%〜200%の範囲にあることをさらに特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のプラスミン変異体、またはプラスミン誘導体。
【請求項11】
自己分解定数が、野生型プラスミンの自己分解定数の最大で95%であり、触媒定数kcatが、野生型プラスミンのkcatの10%〜200%の範囲にあることをさらに特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のプラスミン変異体、またはプラスミン誘導体。
【請求項12】
前記プラスミノーゲンまたはプラスミンが、Glu−プラスミノーゲンまたはGlu−プラスミン、Lys−プラスミノーゲンまたはLys−プラスミン、ミジプラスミノーゲンまたはミジプラスミン、ミニプラスミノーゲンまたはミニプラスミン、マイクロプラスミノーゲンまたはマイクロプラスミン、デルタプラスミノーゲンまたはデルタプラスミンである、請求項1から11のいずれか一項に記載の単離されたプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体。
【請求項13】
医薬として使用するための、請求項1から12のいずれか一項に記載の単離されたプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、もしくはプラスミン誘導体、またはこれらのいずれかの組合せ。
【請求項14】
請求項1から12のいずれか一項に記載の単離されたプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、もしくはプラスミン誘導体、またはこれらのいずれかの組合せ、および薬学的に許容される希釈剤、担体または補助剤の少なくとも1つを含む組成物。
【請求項15】
抗凝血剤、血栓溶解剤、抗炎症剤、抗ウイルス剤、抗菌剤、抗真菌剤、血管新生阻害剤、抗有糸分裂剤、抗ヒスタミン剤または麻酔剤の少なくとも1つをさらに含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
対象における病的なフィブリン沈着の溶解を誘発する、または促進するための請求項1から12のいずれか一項に記載の単離されたプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体。
【請求項17】
対象における眼における後部硝子体剥離の誘発のための、および/または眼における硝子体の液化の誘発のための、または眼における硝子体切除手術を容易にするための、請求項1から12のいずれか一項に記載の単離されたプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体。
【請求項18】
対象の損傷した組織の酵素的壊死組織除去のための、請求項1から12のいずれか一項に記載の単離されたプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体。
【請求項19】
対象において、循環フィブリノーゲンを減少させるための、またはα2−抗プラスミンレベルを減少させるための、請求項1から12のいずれか一項に記載の単離されたプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体。
【請求項20】
病的なフィブリン沈着のリスクを減少させるための、請求項1から12のいずれか一項に記載の単離されたプラスミノーゲン変異体、プラスミン変異体、またはプラスミン誘導体。
【請求項21】
安定した自己タンパク質分解性を有するプラスミン変異体をスクリーニングするための方法であって、前記方法が、
(i)野生型プラスミンの触媒ドメインにおいて、位置P+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が自己タンパク質分解する傾向にある位置Pの内部アミノ酸を少なくとも1つを同定すること、
(ii)(i)において同定された位置Pの前記アミノ酸を、位置P+1の内部アミノ酸とのペプチド結合が自己タンパク質分解しにくいアミノ酸に突然変異させること、
(iii)(ii)で得られた突然変異体の自己タンパク質分解安定性を測定すること、および
(iv)前記自己タンパク質分解性が安定している突然変異体を、安定した自己タンパク質分解性を有する変異体として(iii)から選択すること、
を含む方法。
【請求項22】
安定した自己タンパク質分解性を有するプラスミン変異体をスクリーニングするための方法であって、前記方法が、
(i)ヒトプラスミンの触媒ドメインの位置137、147および158のアルギニンまたはリジンアミノ酸、または非ヒトプラスミンにおいて対応するアルギニンまたはリジンの、1つ又は複数を、天然のアミノ酸とは異なるアミノ酸へ突然変異させること、
(ii)(i)で得られた突然変異体の自己タンパク質分解安定性を測定すること、および
(iii)自己タンパク質分解性が安定している突然変異体を、安定した自己タンパク質分解性を有するプラスミン変異体として、(ii)から選択することを含み、
前記ヒトプラスミンの触媒領域は位置1のアミノ酸バリンで始まり、これはヒトGlu−プラスミノーゲンの位置562で生じているのと同じバリンアミノ酸である、方法。
【請求項23】
前記安定した自己タンパク質分解性を有するプラスミン変異体のタンパク質分解活性を測定するステップをさらに含む、請求項21または22に記載の方法。
【請求項24】
タンパク質分解活性を有意に損なわず長期にわたり貯蔵できる安定した自己タンパク質分解性を有するプラスミン変異体を同定するステップを含む、プラスミン含有組成物の長期貯蔵安定性を強化するための方法。
【請求項25】
請求項1から12のいずれか一項に記載のプラスミノーゲン変異体を産生するための方法であって、前記方法が、
(i)請求項1から12のいずれか一項に記載のプラスミノーゲンをコードする核酸を、前記プラスミノーゲンを発現できる適切な宿主細胞に導入するステップと;
(ii)(i)で得られた宿主細胞で前記プラスミノーゲンが発現するのに十分な条件下、十分な時間をかけて前記宿主細胞を生育させるステップと;
(iii)(ii)で発現した前記プラスミノーゲンを回収するステップと;
を含む方法。
【請求項26】
(iii)において回収された前記プラスミノーゲンを精製するステップ(iv)をさらに含む請求項25に記載の方法。
【請求項27】
請求項1から12のいずれか一項に記載のプラスミン変異体を産生するための方法であって、前記方法が、
(i)請求項1から12のいずれか一項に記載のプラスミノーゲンをコードする核酸を、前記プラスミノーゲンを発現できる適切な宿主細胞に導入するステップと;
(ii)(i)で得られた前記宿主細胞を、前記宿主細胞内で前記プラスミノーゲンが発現するのに十分な条件下、十分な時間をかけて生育させるステップと;
(iii)(ii)で発現した前記プラスミノーゲンを回収するステップと;
(iv)(iii)の前記プラスミノーゲンをプラスミンへ活性化させるステップと;
を含む方法。
【請求項28】
(iii)において回収された前記プラスミノーゲンを(iv)における活性化に先立って精製する、請求項27に記載の方法。
【請求項29】
(iv)において得られた前記活性プラスミンを精製する、請求項27または28に記載の方法。
【請求項30】
前記活性プラスミンが誘導体化される、および/または可逆的に不活化される、請求項27から29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
請求項1から12のいずれか一項に記載のプラスミノーゲン変異体またはプラスミン変異体をコードする単離された核酸配列。
【請求項32】
請求項31に記載の核酸を含む組換えベクター。
【請求項33】
請求項31に記載の核酸、または請求項32に記載のベクターで形質転換された宿主細胞。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7−1】
image rotate

【図7−2】
image rotate

【図8−1】
image rotate

【図8−2】
image rotate

【図8−3】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10−1】
image rotate

【図10−2】
image rotate

【図10−3】
image rotate

【図10−4】
image rotate

【図10−5】
image rotate

【図10−6】
image rotate

【図10−7】
image rotate

【図10−8】
image rotate

【図10−9】
image rotate

【図10−10】
image rotate

【図10−11】
image rotate

【図10−12】
image rotate


【公表番号】特表2012−532596(P2012−532596A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−519013(P2012−519013)
【出願日】平成22年7月9日(2010.7.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059902
【国際公開番号】WO2011/004011
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(512006354)スロンボジェニックス・ナムローゼ・フェンノートシャップ (1)
【氏名又は名称原語表記】ThromboGenics NV
【Fターム(参考)】