説明

プラスモジウム抗原を含むワクチン

【課題】マラリア疾患に対して免疫性を付与するためのマラリア抗原の新規使用。
【解決手段】重篤マラリア疾患に対して免疫性を付与するための、スポロゾイト抗原、特にサーカムスポロゾイト(circumsporozoite)(CS)タンパク質またはその断片の使用。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マラリア疾患に対して免疫性を付与するためのマラリア抗原の新規使用に関する。本発明は特に、重篤マラリア疾患に対して免疫性を付与するための、スポロゾイト抗原、特にサーカムスポロゾイト(circumsporozoite)(CS)タンパク質またはその断片の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
マラリアは、世界的な重大な健康問題の1つである。20世紀中に、マラリア撲滅運動と共に経済的および社会的発展により、世界の大部分においてはマラリアは撲滅され、全世界における被害地域の面積は50%から27%へと減少した。それでも、予想される人口増加を考えると、2010年までに、世界人口の半分、すなわち、35億人が、マラリア感染地域に居住することになると推定されている1。現在の推定値は、毎年100万人をゆうに超える人々がマラリアで死亡し、アフリカだけでも、突出した経済コストが年間1000億USドルに匹敵することを示唆している2
【0003】
これらの数字は、マラリアによる世界的な危機、およびそれが保健衛生の国際社会に課している課題を鮮明に表している。この危機の原因は多重的であり、利用可能で入手可能で従来は非常に有効であった薬物に対する広範な耐性の出現や、保健衛生システムの崩壊および不備から、解決手段の欠如に至るまで、多岐にわたる。この疾患を防除するための手段が見出されない限り、保健衛生および小児生存を改善し、貧困を緩和し、安全・治安の確保を強化し、最も被害を受けやすい社会を強化するための世界的な努力は無に帰すであろう。
【0004】
この疾患の最も急性な形態の1つは、マラリアに起因する死亡のほとんどの原因となる寄生原虫Plasmodium falciparumにより引き起こされる。
【0005】
P. falciparumの生活環は複雑であり、完了させるためにはヒトおよびカ(蚊)の2つの宿主を要する。ヒトへの感染は、感染蚊の唾液中のスポロゾイトの接種により開始される。スポロゾイトは肝臓へ移動し、そこで肝細胞に感染し(肝臓段階)、ここでスポロゾイトは赤血球外細胞内段階を経てメロゾイト段階へと分化し、これは赤血球(RBC)に感染して無性血液段階における循環的複製を開始する。この循環は、RBC内で多数のメロゾイトが有性段階配偶子細胞へ分化することにより完了し、有性段階配偶子細胞は蚊により摂取され、蚊の体内で該細胞は中腸内での一連の段階を経て発育してスポロゾイトとなり、これは唾液腺に移行する。
【0006】
P. falciparumのスポロゾイト段階はマラリアワクチンの潜在的標的の1つと目されている。スポロゾイトの主要表面タンパク質はサーカムスポロゾイトタンパク質(CSタンパク質)として公知である。このタンパク質は、種々の株、例えばNF54株クローン3D7に関して既にクローニングされ、発現され、配列決定されている(Caspersら, Mol. Biochem. Parasitol. 35, 185-190, 1989)。株3D7からのタンパク質は、テトラペプチドAsn-Ala-Asn-Pro(これは40回反復するが4個の小さな反復Asn-Val-Asp-Proが介在する)を含む中央免疫優性反復領域を有することにより特徴づけられる。他の株では、大きな反復および小さな反復の数ならびにそれらの相対位置は様々である。この中央部分は、CSタンパク質の非反復部分と称される非反復性アミノ酸配列から構成されるNおよびC末端部分に隣接している。
【0007】
CSタンパク質に基づくGlaxoSmithKline BiologicalsのRTS,Sマラリアワクチンは1987年から開発が進められており、現在、研究されている最も進んだマラリアワクチン候補である4。このワクチンはP. falciparumの前赤血球段階を特異的に標的化し、マラリアナイーブ成人ボランティアにおける実験室飼育感染蚊を介して運搬されるP. falciparumスポロゾイトによる感染に対する防御、および半免疫成人における自然曝露に対する防御をもたらす5,6
【0008】
6〜11歳および1〜5歳の小児が参加したガンビアで実施された連続的な第I相研究において、RTS,S/AS02A(RTS,S + アジュバント)が使用された。この研究は、該ワクチンが安全であり十分に許容され免疫原性であることを証明した7。ついで、1〜4歳のモザンビーク人小児が参加した第I相研究において、小児用ワクチン用量が選定され研究され、ここで、それが安全であり十分に許容され免疫原性であることが見出された8
【0009】
しかし、長い間受け入れられている見解は、自然曝露の条件においてP. falciparumにより引き起こされる臨床疾患からの防御を達成するためには単一の抗原では十分ではなく、該寄生生物の生活環の複数の段階を代表する複数の抗原を要するであろうというものである(Page: 3 Webster, Daniel and Hill, Adrian V.S. Progress with new malaria vaccines. Bull World Health Organ, Dec. 2003, vol.81, no.12, p.902-909. ISSN 0042-9686; Hoffman S. Save the children. Nature. 2004 Aug 19;430(7002):940-1)。また、該寄生生物の前赤血球段階からのCSのような抗原は、重篤疾患に対する防御を得るのには好ましい抗原ではないであろうというのが、一般に受け入れられている見解である。なぜなら、重篤疾患は無性段階の寄生生物により引き起こされ、CSのような前赤血球抗原は無性段階の寄生生物では発現されないからである。
【発明の概要】
【0010】
本発明において、若いアフリカ人小児での治験において、前赤血球マラリア抗原で、驚くべき結果が得られた。CSタンパク質に基づくRTS,Sワクチンは、自然曝露下の感染に対する防御だけでなく、P. falciparumにより引き起こされる広範なスペクトルの臨床疾患に対する防御をももたらしうることが見出された。RTS,Sワクチンの投与を受けた小児は、対照群の場合より少数の重篤有害事象、入院およびマラリアからの重篤合併症(死亡を含む)を示した。
【0011】
特に、重篤マラリア疾患の発生が、このCSに基づくワクチンにより抑制されうるという知見は、予想外であり驚くべきものであった。重篤マラリア疾患は臨床実施のためのWHO指針に記載されている(Page: 3 World Health Organization. Management of severe malaria, a practical handbook. Second edition, 2000. http://mosquito.who.int/docs/hbsm.pdf)。重篤マラリアに関するWHOの定義による小児の分類は、非常に病的であり高い死亡リスクを伴う小児を特定している。高いリスクは約30%以上の死亡リスクを意味すると解釈されうる。
【0012】
さらに、新たな感染または臨床エピソードの両方に対するRTS,Sワクチンの効力は衰えないか、非常にゆっくりと衰えるらしい。該治験における6ヶ月の追跡期間の終了時に、該ワクチンは依然として有効であり、感染率における有意な差を示した。これは、ワクチン効力が短寿命であることを示唆したマラリアナイーブボランティアまたはガンビア人成人における従来の治験6,23とは著しく対照的である。
【0013】
したがって、本発明は、製薬上許容されるアジュバントまたは担体と組合された、重篤マラリア疾患に対するワクチン接種のための医薬の製造における、前赤血球段階で発現されるPlasmodium抗原、好ましくはスポロゾイト抗原の使用を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】一次効力エンドポイントの研究計画
【図2a】治験プロファイル(コホート1)
【図2b】治験プロファイル(コホート2)
【図3a】臨床マラリアの少なくとも1つのエピソードを有する小児の割合に関するKaplan-Meier曲線
【図3b】マラリア感染の少なくとも1つのエピソードを有する小児の割合に関するKaplan-Meier曲線
【図4】ベースライン特性(表1)
【図5】抗CSおよび抗HBsAg抗体価(表2)
【図6】主要結果の頻度(表3)
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は特に、重篤P. falciparum疾患の発生の抑制に関する。
そのようなワクチンの好ましい標的集団は小児、特に5歳未満の小児、特に1〜4歳の小児である。
【0016】
好ましくは、Plasmodium抗原はP. falciparum抗原である。
該抗原は、スポロゾイト上または該寄生生物の他の前赤血球段階(例えば、肝臓段階)で発現される任意の抗原から選ばれうる。好ましくは、該抗原は、サーカムスポロゾイト(CS)タンパク質、肝臓段階抗原1(LSA-1)、肝臓段階抗原3(LSA-3)、トロンボスポンジン関連無名タンパク質(TRAP)、および(赤血球段階に加えて)肝臓段階に存在することが最近示された尖端メレゾイト抗原1(AMA-1)から選ばれる。これらの抗原のすべては当分野でよく知られている。該抗原は全タンパク質またはその免疫原性断片でありうる。マラリア抗原の免疫原性断片(例えば、AMA-1由来のエクトドメイン)はよく知られている。
【0017】
好ましくは、Plasmodium抗原はB型肝炎表面抗原(HBsAg)に融合している。
本発明での使用のための好ましい抗原はサーカムスポロゾイト(CS)タンパク質から誘導され、好ましくは、HBsAgとのハイブリッドタンパク質の形態である。該抗原は全CSタンパク質またはその一部(互いに融合していることが可能なCSタンパク質の断片を含む)でありうる。
【0018】
好ましくは、CSタンパク質に基づく抗原は、実質的に全てのPlasmodiumCSタンパク質のC末端部分、4個以上のCSタンパク質免疫優性領域縦列反復およびB型肝炎由来表面抗原(HBsAg)を含むハイブリッドタンパク質の形態である。好ましくは、該ハイブリッドタンパク質は、CSタンパク質のC末端部分に実質的に相同である少なくとも160アミノ酸を含有する配列を含む。特に、CSタンパク質の「実質的に全て」のC末端部分は、疎水性アンカー配列を欠くC末端を含む。該CSタンパク質はC末端からの最後の12アミノ酸を欠いていることが可能である。
【0019】
最も好ましくは、本発明で使用するハイブリッドタンパク質は、リンカーを介してHBsAgのN末端にインフレームで融合した、株NF54から誘導されたP. falciparum 3D7クローン(Caspersら,前掲)のアミノ酸207-395に実質的に対応するP. falciparumのCSタンパク質の部分を含むタンパク質である。該リンカーはHBsAg由来のプレS2の部分を含みうる。
【0020】
本発明で使用する好ましいCS構築物はWO 93/10152に記載されている。最も好ましいのは、WO 93/10152(ここではそれはRTS*として示されている)およびWO 98/05355(それらの両方の全内容を参照により本明細書に組み入れることとする)に記載のRTSとして公知のハイブリッドタンパク質である。
【0021】
特に好ましいハイブリッドタンパク質は、以下のものからなるRTSとして公知のハイブリッドタンパク質である:
Sacchromyes cerevisiae TDH3遺伝子配列から誘導されるヌクレオチド1059-1061によりコードされるメチオニン残基(Musti A.m.ら Gene 1983 25 133-143)、
・該ハイブリッド遺伝子を構築するために用いるクローニング法により得られるヌクレオチド配列(1062-1070)から誘導される3アミノ酸Met Ala Pro、
・Plasmodium falciparum株3D7(Caspersら, 前掲)のサーカムスポロゾイトタンパク質(CSP)のアミノ酸207-395に相当するヌクレオチド1071-1637によりコードされる189アミノ酸のストレッチ、
・該ハイブリッド遺伝子を構築するために用いるクローニング法により得られるヌクレオチド1638-1640によりコードされるアミノ酸(Gly)、
・B型肝炎ウイルス(adw血清型)プレS2タンパク質(Nature 280: 815-819, 1979)の4個のカルボキシ末端残基に相当する、ヌクレオチド1641-1652によりコードされる4アミノ酸Pro Val Thr Asn、
・ヌクレオチド1653-2330によりコードされB型肝炎ウイルス(adw血清型)のSタンパク質を特定する226アミノ酸のストレッチ。
【0022】
好ましくは、RTSは混合粒子RTS,Sの形態である。
好ましいRTS,S構築物は、同時に合成され精製中に自発的に複合粒子構造体(RTS,S)を形成する2つのポリペプチドRTSおよびSを含む。
【0023】
RTSタンパク質は、好ましくは、酵母、最も好ましくはS. cerevisiaeにおいて発現される。そのような宿主においては、RTSはリポタンパク質粒子として発現される。好ましいレシピエント酵母株は、好ましくは、そのゲノム内に、B型肝炎S発現カセットの組込みコピーを既に含有する。したがって、生じた株は、混合(RTS,S)リポタンパク質粒子へと自発的に共集合する2つのポリペプチドSおよびRTSを合成する。これらの粒子は、有利には、その表面に該ハイブリッドのCSP配列の存在を示す。有利には、これらの混合粒子におけるRTS:Sの比は1:4である。
【0024】
本発明は、防御、特に重篤疾患に対する防御を得るために必要であると従来考えられていたものに反して、ワクチンにおける単一マラリア抗原の使用を可能にする。したがって、本発明においては、RTSまたは他の抗原は、好ましくは、該ワクチン中の唯一のマラリア抗原である。
【0025】
もう1つの態様においては、本発明は、重篤マラリアに対するワクチンにおいて使用する医薬の製造における、単一のマラリアタンパク質に由来する抗原の使用を提供する。該マラリアタンパク質は、CSタンパク質、AMA-1、TRAP、LSA-1およびLSA-3を含む本明細書に記載のタンパク質のいずれかでありうる。最も好ましくは、それは、本明細書に記載のとおりのハイブリッド形態のCSタンパク質である。
【0026】
本発明は更に、前赤血球段階で発現されるマラリア抗原とアジュバントとを含む組成物を対象(被験者)に投与することを含む、重篤マラリアを予防または軽減するための方法を提供する。該抗原およびアジュバントは本明細書に記載されている。好ましい対象は小児、好ましくは、本明細書に記載の範囲の年齢の小児である。
【0027】
本発明での使用のための適当なワクチン接種スケジュールは1ヶ月間隔の3用量のワクチンの投与を含む。
【0028】
重篤マラリアは臨床実施のためのWHO指針(前掲)に従い定義されうる。本明細書に記載の研究においては、重篤マラリアを定義するための基準は、臨床実施のためのWHO指針から導かれた。それを以下の表に示す。
【0029】
一次エンドポイントとして、該研究において定義されるマラリアの臨床エピソードは、ギムザ染色濃厚血液フィルム上で15 000/μLを超えるP. falciparum無性寄生虫血症の存在、および発熱(37.5℃以上の腋窩体温)の存在を有することを要した。
【0030】
重篤マラリアの定義は以下の1以上の更なる存在である:重篤マラリア貧血(PCV<15%)、脳性マラリア(Blantyre昏睡スコア<2)、または多重発作(過去24時間以内の2以上の全身性痙攣)、全身衰弱(補助無しでは座れないことにより定義される)、低血糖(<2.2mmol/dLまたは<40mg/dL)、臨床的に疑われるアシドーシスもしくは循環虚脱を含みうる他の身体系の重篤疾患。これらを以下の表1に示す。
【表1】

【0031】
本発明においては、該精製ハイブリッドタンパク質の水溶液を直接使用し、適当なアジュバントまたは担体と組合せることが可能である。あるいは、適当なアジュバントまたは担体と混合する前に該タンパク質を凍結乾燥することが可能である。
【0032】
本発明における好ましいワクチン用量は、好ましくは250μl(最終液体製剤)中、1〜100μg RTS,S/用量、より好ましくは5〜75μg RTS,S、最も好ましくは25μg RTS,Sタンパク質の用量である。これは、小児、特に5歳未満の小児、より詳しくは1〜4歳の小児における使用のための好ましい用量であり、好ましい成人用量の半分に相当する。好ましい成人用量は、好ましくは500μl(最終液体製剤)中、1〜100μg RTS,S/用量、より好ましくは5〜75μg RTS,S、最も好ましくは50μg RTS,Sタンパク質の用量である。
【0033】
本発明においては、該抗原をアジュバントまたは担体と組合せる。好ましくは、アジュバント、特に、Th1型応答の優先的刺激物質であるアジュバントが存在する。
【0034】
適当なアジュバントには、任意の起源に由来する解毒リピドAおよびリピドAの無毒性誘導体、サポニン、ならびにTh1細胞応答(本明細書中ではTh1型応答とも称される)の優先的刺激物質である他の免疫刺激物質が含まれる。
【0035】
免疫応答は、大雑把には、2つの両極端の範疇、すなわち、体液性免疫応答または細胞性免疫応答(伝統的には、それぞれ、抗体および細胞性エフェクターの防御メカニズムにより特徴づけられる)に分けることができる。これらの応答範疇はTH1型応答(細胞性応答)およびTH2型免疫応答(体液性応答)と呼ばれている。
【0036】
極端なTH1型免疫応答は、抗原特異的なハプロタイプ拘束性細胞傷害性Tリンパ球およびナチュラルキラー細胞応答の生成により特徴づけられうる。マウスにおいては、TH1型応答は、しばしば、IgG2aサブタイプの抗体の生成により特徴づけられ、一方、ヒトにおいては、これらはIgG1型抗体に対応する。TH2型免疫応答は、マウスにおいてはIgG1を含む或る範囲の免疫グロブリンイソタイプの生成により特徴づけられる。
【0037】
これらの2つの型の免疫応答の発生の原動力となるのはサイトカインであると考えられうる。高レベルのTh1型サイトカインは、与えられた抗原に対する細胞性免疫応答の誘導を優先的に促す傾向にあり、一方、高レベルのTH2型サイトカインは、抗原に対する体液性免疫応答の誘導を優先的に促す傾向にある。
【0038】
TH1型免疫応答とTH2型免疫応答との区別は絶対的なものではなく、これらの2つの両極端の間の連続体の形態をとりうる。現実には、個体は、優先的にはTH1または優先的にはTH2であるとして説明される免疫応答を支持するであろう。しかし、MosmannおよびCoffman(Mosmann, T.R.およびCoffman, R.L. (1989) TH1 and TH2 cells: different patterns of lymphokine secretion lead to different functional properties. Annual Review of Immunology, 7, p145-173)によりマウスCD4+ve T細胞クローンにおいて記載されているものについて、サイトカインのファミリーを考えることがしばしば簡便である。伝統的には、TH1型応答は、Tリンパ球によるINF-γサイトカインの産生に関連づけられる。TH1型免疫応答の誘導に直接的にしばしば関連づけられる他のサイトカイン(例えば、IL-12)はT細胞によっては産生されない。これに対して、TH2型応答はIL-4、IL-5、IL-6、IL-10および腫瘍壊死因子β(TNF-β)の分泌に関連づけられる。
【0039】
あるワクチンアジュバントはTH1またはTH2型サイトカイン応答の刺激に特に適していることが公知である。伝統的には、ワクチン接種または感染の後の免疫応答のTH1:TH2バランスの指標は、抗原での再刺激の後のin vitroでのTリンパ球によるTH1またはTH2サイトカインの産生の直接的な測定、および/または(少なくともマウスにおいては)抗原特異的抗体応答のIgG1:IgG2a比の測定を含む。
【0040】
したがって、TH1型アジュバントは、in vitroにおいて抗原で再刺激された場合に高レベルのTH1型サイトカインを産生するよう単離T細胞集団を刺激し、TH1型アイソタイプに関連した抗原特異的免疫グロブリン応答を誘導するものである。
【0041】
TH1細胞応答の優先的刺激をもたらしうるアジュバントはWO 94/00153およびWO 95/17209に記載されている。
【0042】
本発明での使用に適したアジュバントを製造するために配合されうる好ましいTh1型免疫刺激物質には、限定的なものではないが以下のものが含まれる。
【0043】
アジュバントにおける腸内細菌リポ多糖(LPS)の使用はその毒性作用により制限されているが、腸内細菌リポ多糖(LPS)は免疫系の強力な刺激物質であることが古くから公知である。コア炭水化物基とホスファートとを還元末端グルコサミンから除去することにより産生されるLPSの無毒性誘導体であるモノホスホリルリピドA(MPL)が、Ribiら(1986, Immunology and Immunopharmacology of bacterial endotoxins, Plenum Publ. Corp., NY, p407-419)により記載されており、以下の構造を有する。
【化1】

【0044】
MPLの更なる解毒形態が、該二糖バックボーンの3位からアシル鎖を除去することにより得られ、3-O-脱アシル化モノホスホリルリピドA(3D-MPL)と称される。それは、GB 2122204Bに教示されている方法により精製し製造することが可能であり、その参考文献はまた、ジホスホリルリピドAおよびその3-O-脱アシル化形態の製造を開示している。
【0045】
3D-MPLの好ましい形態は、直径0.2μm未満の小さな粒径を有するエマルションの形態であり、その製造方法はWO 94/21292に開示されている。モノホスホリルリピドAと界面活性剤とを含む水性製剤がWO9843670に記載されている。
【0046】
本発明において使用する細菌リポ多糖由来アジュバントは、細菌源から精製し加工することが可能であり、あるいはそれは合成物でありうる。例えば、精製されたモノホスホリルリピドAはRibiら 1986(前掲)に記載されており、Salmonella sp.由来の3-O-脱アシル化モノホスホリルまたはジホスホリルリピドAはGB 2220211およびUS 4912094に記載されている。他の精製および合成リポ多糖が既に記載されている(Hilgersら, 1986, Int. Arch. Allergy. Immunol., 79(4):392-6; Hilgersら, 1987, Immunology, 60(1):141-6; およびEP 0 549 074 B1)。特に好ましい細菌リポ多糖アジュバントは3D-MPLである。
【0047】
したがって、本発明で使用しうるLPS誘導体は、LPSまたはMPLまたは3D-MPLと構造において類似した免疫刺激物質である。もう1つの別な態様においては、該LPS誘導体は、MPLの前記構造の副次的部分であるアシル化単糖でありうる。
【0048】
サポニンも、本発明における好ましいTh1免疫刺激物質である。サポニンはよく知られたアジュバントであり、Lacaille-Dubois, MおよびWagner H.(1996. A review of the biological and pharmacological activities of saponins. Phytomedicine vol 2 pp 363-386)に教示されている。例えば、Quil A(クウィルA)(南米産樹木Quillaja Saponaria Molinaの樹皮に由来する)およびその画分が、US 5,057,540および「ワクチンアジュバントとしてのサポニン(Saponins as vaccine adjuvants)」, Kensil, C. R., Crit Rev Ther Drug Carrier Syst, 1996, 12(1-2);1-55およびEP 0 362 279 B1に記載されている。溶血性サポニンQS21およびQS17(Quil AのHPLC精製画分)は強力な全身性アジュバントとして記載されており、それらの製造方法は米国特許第5,057,540号およびEP 0 362 279 B1に開示されている。これらの参考文献には、全身用ワクチンのための強力なアジュバントとして作用するQS7(Quil-Aの非溶血性画分)の使用も記載されている。QS21の使用は更に、Kensilら (1991. J. Immunology vol 146, 431-437)に記載されている。QS21とポリソルベートまたはシクロデキストリンとの組合せも公知である(WO 99/10008)。QS21およびQS7のようなQuilAの画分を含む粒状アジュバント系がWO 96/33739およびWO 96/11711に記載されている。
【0049】
もう1つの好ましい免疫刺激物質は、非メチル化CpGジヌクレオチド(CpG)を含有する免疫刺激性オリゴヌクレオチドである。CpGは、DNA中に存在するシトシン-グアノシンジヌクレオチドモチーフの略語である。CpGは、全身経路および粘膜経路の両方により投与される場合のアジュバントとして当技術分野において公知である(WO 96/02555, EP 468520, Davisら, J. Immunol, 1998, 160(2):870-876; McCluskieおよびDavis, J. Immunol., 1998, 161(9):4463-6)。歴史的には、BCGのDNA画分が抗腫瘍効果をもたらしうることが見出された。更なる研究において、BCG遺伝子配列由来の合成オリゴヌクレオチドが(in vitroおよびin vivoの両方において)免疫刺激作用を誘導しうることが示された。これらの研究の著者は、中央CGモチーフを含む或る回文配列がこの活性を担うと結論づけた。その後、Kriegによる刊行物(Nature 374, p546 1995)において、免疫刺激におけるCGモチーフの中心的役割が明らかにされた。詳細な解析は、CGモチーフが或る配列コンテクスト中に存在しなければならないこと、およびそのような配列が細菌DNAにおいては共通しているが脊椎動物DNAにおいては稀であることを示している。該免疫刺激性配列は、しばしば、プリン、プリン、C、G、ピリミジン、ピリミジンであり、ここで、該CGモチーフはメチル化されていないが、他の非メチル化CpG配列は免疫刺激性であることが公知であり、本発明において使用されうる。
【0050】
該6ヌクレオチドの或る組合せにおいては、回文配列が存在する。1つのモチーフの反復配列または異なるモチーフの組合せとしてのこれらのモチーフのいくつかが同一オリゴヌクレオチド中に存在しうる。オリゴヌクレオチドを含有するこれらの免疫刺激性配列の1以上の存在は、ナチュラルキラー細胞(これはインターフェロンγを産生し細胞溶解活性を有する)およびマクロファージを含む種々の免疫サブセットを活性化しうる(Wooldrigeら Vol 89 (no. 8), 1977)。このコンセンサス配列を有さない他の非メチル化CpG含有配列は免疫調節性でもあることが本発明において示された。
【0051】
CpGは、ワクチン中に配合される場合には、一般には、遊離抗原と共に遊離溶液中で(WO 96/02555; McCluskieおよびDavis, 前掲)、または抗原に共有結合させて(WO 98/16247)、または例えば水酸化アルミニウムのような担体と共に製剤化して((肝炎表面抗原) Davisら. 前掲; Brazolot-Millanら, Proc.Natl.Acad.Sci., USA, 1998, 95(26), 15553-8)投与される。
【0052】
前記のような免疫刺激物質は、担体、例えばリポソーム、水中油型エマルションおよび/または金属塩、例えばアルミニウム塩(例えば水酸化アルミニウム)と共に製剤化されうる。例えば、3D-MPLは水酸化アルミニウム(EP 0 689 454)または水中油型エマルション(WO 95/17210)と共に製剤化されることが可能であり、QS21は、有利には、コレステロール含有リポソーム(WO 96/33739)、水中油型エマルション(WO 95/17210)またはミョウバン(WO 98/15287)と共に製剤化されることが可能であり、CpGはミョウバン(Davisら. 前掲; Brazolot-Millan, 前掲)または他のカチオニック担体と共に製剤化されうる。
【0053】
また、免疫刺激物質の組合せ、特に、モノホスホリルリピドAとサポニン誘導体との組合せ(WO 94/00153; WO 95/17210; WO 96/33739; WO 98/56414; WO 99/12565; WO 99/11241)、より詳しくは、WO 94/00153に開示されているQS21と3D-MPLとの組合せも好ましい。あるいは、CpG + サポニン(例えばQS21)の組合せも本発明での使用のための強力なアジュバントとなる。
【0054】
したがって、適当なアジュバント系には、例えば、モノホスホリルリピドA、好ましくは3D-MPLと、アルミニウム塩との組合せが含まれる。増強された系は、モノホスホリルリピドAとサポニン誘導体との組合せ、特に、QS21と3D-MPLとの組合せ(WO 94/00153に開示されているもの)、またはWO 96/33739に開示されている、コレステロール含有リポソーム(DQ)においてQS21がクエンチされる、それほど反応生成性ではない組成物を含む。
【0055】
水中油型エマルション中にQS21、3D-MPLおよびトコフェロールを含む特に強力なアジュバント製剤がWO 95/17210に記載されており、これは本発明での使用のためのもう1つの好ましい製剤である。
【0056】
もう1つの好ましい製剤は、CpGオリゴヌクレオチドを、単独で又はQS21、3D-MPLもしくはアルミニウム塩と共に含む。
【0057】
したがって、本発明の1つの実施形態においては、重篤マラリア疾患の予防用ワクチンの製造のための、本明細書に記載のマラリア抗原と組合された解毒リピドAまたはリピドAの無毒性誘導体、特にモノホスホリルリピドAまたはその誘導体、例えば3D-MPLの使用を提供する。
【0058】
好ましくは、サポニン、好ましくはQS21を更に使用する。
好ましくは、本発明は更に、水中油型エマルションまたはリポソームを使用する。
【0059】
本発明で使用するアジュバントの好ましい組合せは以下のとおりである:
1.3D-MPL、QS21および水中油型エマルション、
2.リポソーム製剤中の3D-MPLおよびQS21、
3.リポソーム製剤中の3D-MPL、QS21およびCpG。
【0060】
各ワクチン用量中に存在する本発明のタンパク質の量は、典型的なワクチンにおいて、有意な有害な副作用を伴うことなく免疫防御応答を誘導する量として選択される。そのような量は、どのような具体的な免疫原を使用するのか及びワクチンをアジュバント化するか否かによって様々となるであろう。一般には、各用量は1〜1000μg、好ましくは1〜200μg、最も好ましくは10〜100μgのタンパク質を含むと予想される。個々のワクチンのための最適量は、対象における抗体価および他の応答の観察を含む標準的な研究により確認されうる。初回ワクチン接種の後、対象に、好ましくは、約4週間後にブースター(追加刺激)を行い、ついで、感染のリスクが存在する限りにおいて、6ヶ月ごとに反復ブースターを行う。RTS,Sタンパク質の好ましい量も前記のとおりである。
【0061】
本発明のワクチンは、種々の経路、例えば経口、局所、皮下、粘膜(典型的には膣内)、静脈内、筋肉内、鼻腔内、舌下、皮内および坐剤のいずれかにより投与されうる。
【0062】
免疫化は予防用または治療用でありうる。本明細書に記載の発明は、限定的なものではないが主として、マラリアに対する予防用ワクチン、より詳しくは、重篤マラリア疾患の予防または重篤マラリア疾患の可能性の軽減のための予防用ワクチンに関する。
【0063】
本発明で使用する適当な製薬上許容される担体または賦形剤は当技術分野でよく知られており、例えば水またはバッファーを包含する。ワクチン製剤は、全般的には、Pharmaceutical Biotechnology, Vol.61 Vaccine Design - the subunit and adjuvant approach, PowellおよびNewman編, Plenum Press New York, 1995. New Trends and Developments in Vaccines, Vollerら編, University Park Press, Baltimore, Maryland, U.S.A. 1978に記載されている。リポソーム内への封入は、例えばFullerton, 米国特許第4,235,877号に記載されている。高分子へのタンパク質の結合は、例えばLikhite, 米国特許第4,372,945号およびArmorら, 米国特許第4,474,757号に開示されている。
【実施例】
【0064】
材料および方法
研究地域
治験はモザンビーク南部のManhica地方(Maputo Province)のCentro de Investigacao em Saude da Manhica [CISM] (Manhica Health Research Centre)で2003年4月〜2004年5月に行われた。この地域の特徴は他の文献に詳細に記載されている9。気候は、11月〜4月の温暖な雨季と1年の残りの時期の一般には冷涼な乾季との2つの異なる季節を有する亜熱帯気候である。2003年の年間降水量は1286mmであった。顕著な季節性を伴う永続的マラリア伝染は大部分はP. falciparumによるものである。Anopheles funestusが主要ベクターであり、2002年の推定昆虫接種率(entomologic inoculation rate)(EIR)は38であった。アモジアキンとスルファドキシン-ピリメタミン(SP)とに基づく併用療法が単純性マラリアに対する第一線(ファーストライン)の治療であり、医療施設で容易に利用可能である。CISMに隣接して、ベッド数110の委託医療施設であるManhica Health Centerがある。この地域の医療ネットワークは他の8つの周辺診療所および1つの地方病院よりなる。
【0065】
研究計画
この研究は、GSK Biologicals' RTS,S/AS02Aマラリアワクチンの安全性、免疫原性および効力を評価するための第IIb相二重盲検ランダム化およびコントロール化治験であった。主要目的は、初回ワクチン接種時に1〜4歳の小児において、第3用量投与の14日後から開始する6ヶ月の監視期間にわたり、P. falciparumマラリアの臨床エピソードに対する効力を評価することであった。
【0066】
該治験は、マラリアの生活環および病理発生における2つの点(感染および臨床疾患)において該ワクチンの効力を調べるよう計画した。これらの2つのエンドポイントを、2つの異なる場所に基づく2つのコホートにおいて同時に測定した(図1)。Manhicaの半径10kmの地域から募集したコホート1は、Manhica Health CenterおよびMaragra Health Postにおける受動的ケース検出(passive case detection)により判定される臨床疾患に対する防御の一次エンドポイントの評価に寄与した。コホート2は、Manhicaの55km北方の湿低地の農業地域であるIlha Josinaにおいて募集し、能動的および受動的監視の組合せにより新たな感染を検出するよう求められた。
【0067】
コホート1では、対照群における該監視期間にわたる臨床P. falciparum攻撃率が11%でありワクチン効力が50%だと仮定すると、15%のワクチン有効性信頼下限を検出するために80%の検出力を得るためには1群当たり704名の評価可能な被験者が必要であった。コホート2では、該監視期間にわたる新たな感染の率を50%と仮定すると、20%の信頼下限で新たな感染の予防における50%のワクチン効力を検出するために86%の検出力を得るためには1群当たり116名の評価可能な小児が必要であった。
【0068】
該プロトコールはNational Mozambican Ethics Review Committee, the Hospital Clinic of Barcelona Ethics Review CommitteeおよびProgram for Appropriate Technology in Health (PATH) Human Subjects Protection Committeeにより承認された。該治験は、ICH Good Clinical Practiceガイドラインに従い実施し、GlaxoSmithKline Biologicalsにより監視された。Local Safety MonitorおよびData and Safety Monitoring Boardが該治験の実施および結果を精査した。
【0069】
スクリーニングおよびインフォームドコンセント
CISMは該研究地域における人口統計調査システムを運営している10。この人口調査から、潜在的に適格性を有する居住小児の一覧を作成した。彼らの自宅を訪問し、親または保護者に説明書を読み聞かせ、募集基準を照査した。これらは、EPIワクチンでの完全な免疫化および該研究地域における居住の確認を含むものであった。関心を持った親/保護者をManhica Health CentreまたはIlha Josina Health Postに招いた。初回訪問時に、特別に訓練されたスタッフが、親/保護者のグループに、再び該説明書を読み聞かせ、説明した。この説明の理解を確認するための個別の口頭での理解度試験に彼らが合格した後で初めて、個別の同意を求めた。ついで、インフォームドコンセント用紙に署名(あるいは読み書きできない場合には拇印)するよう彼らに求めた。該コミュニティの一員が、公平な立会人としての役割を果たし、該コンセント用紙(同意書)に連署した。スクリーニングは簡単な病歴確認および検査、血液学的指穿刺による採血ならびに生化学的検査を含むものであった。
【0070】
小児がアレルギー疾患の病歴、25%未満のヘマトクリットを有し、栄養不良であり(身長に対する体重<3Zスコア)、臨床的に有意な慢性もしくは急性疾患または異常な血液学的もしくは生化学的パラメーターを有する場合には、該小児を参加から除外した。ワクチン接種の初日に、適格被験者を該研究に登録し、特有の研究番号および個別の写真付き個体識別カードを与えた。
【0071】
ランダム化および免疫化
1〜4歳の2022名の小児を募集し、Manhica Health CenterまたはIlha Josina Health Postにおいて3用量のRTS,S/AS02A候補マラリアワクチンまたは対照ワクチン接種計画を受けるようにランダム化した。該ランダム化は、ブロック法(1:1の比、ブロックサイズ = 6)を用いて、GSK Biologicalsにおいて行った。
【0072】
RTS,Sは、非融合S抗原をも含む粒子内のB型肝炎ウイルスのS抗原(HBsAg)のN末端でCSタンパク質10,11中央縦列反復配列およびカルボキシル末端領域が融合した、酵母内で組換え発現されるハイブリッド分子よりなる。RTS,S/AS02A(GlaxoSmithKline Biologicals, Rixensart, Belgium)の全用量は、500μLのAS02Aアジュバント(免疫刺激物質3D-MPL(登録商標)[Corixa Inc., WA, USA]とQS21とのそれぞれ50μgを含有する水中油型エマルション)中で還元(reconstituted)される50μgの凍結乾燥RTS,S抗原を含有する。この治験においては、成人用量の半分、すなわち、250μLのAS02アジュバント(3D-MPLおよびQS21のそれぞれの25μgを含有する)中に25μgのRTS,S抗原を含有する250μL用量を使用した。
【0073】
2001年7月にモザンビークのEPI計画に通常のB型肝炎ワクチン接種が導入されたため、12〜24月齢の小児は既にB型肝炎免疫化を受けていた。したがって、24月齢未満の小児には、対照ワクチンとして、初回および3回目のワクチン接種時に2用量の7価肺炎球菌コンジュゲートワクチン(Prevnar(登録商標) Wyeth Lederle Vaccines, New Jersey, USA)を、2回目のワクチン接種時に1用量のb型Haemophilus influanzae ワクチン(Hiberix(商標) GlaxoSmithKline Biologicals, Rixensart, Belgium)を投与した。24月齢を超える小児の場合には、対照ワクチンは小児用B型肝炎ワクチン(Engerix-B(登録商標) GlaxoSmithKline Biologicals, Rixensart, Belgium)であった。全用量(0.5ml用量体積)を対照群に投与した。
【0074】
RTS,S/AS02Aおよび対照ワクチンの両方を、0、1、2ヶ月のワクチン接種計画に従い、交互の腕の三角筋領域に筋肉内投与した。使用ワクチンは、異なる外観および体積のものであるため、該治験の二重盲検性を確保するためには特別な配慮を要した。ワクチン接種チームが該ワクチンを調製し、免疫化前にシリンジの内容物を不透明テープで隠蔽した。このチームは、エンドポイントの監視を含む他のいずれの研究にも関与しなかった。
【0075】
安全性および反応生成性に関する追跡
各ワクチン接種後、研究参加者を少なくとも1時間観察した。訓練された現場担当者が小児の自宅をその後の3日間毎日訪問して、有害事象がある場合にはそれを記録した。自発的(solicited)局所性および全身性の有害事象をこの期間にわたり実証した12。非自発的(unsolicited)有害事象を、各用量の投与後の30日間にわたり、病院罹患監視システムを介して記録した。重篤有害事象(SAE)を同様にして検出し、該研究の全体にわたって記録した。第3用量の投与の60日後から、研究参加小児の自宅を1ヶ月に1回訪問した。該訪問中に、居住状況を確認し、未報告のSAEを実証した。以下の血液学的および生化学的パラメーターを全参加者についてモニターした:第3用量投与の1ヶ月後の全血球数ならびに第3用量投与の1および6.5ヵ月後のクレアチニン、アラニンアミノトランスフェラーゼ[ALT]およびビリルビン。
【0076】
免疫原性の評価
第1用量投与前に全参加者においてB型表面抗原(HBsAg)の状態を測定した。コホート1においては第1用量投与前ならびに第3用量投与の30日後および6.5ヶ月後に抗CS抗体を測定し、コホート2においてはこれらの同時点で抗HBs抗体を測定した。スクリーニング時に両コホートにおいて間接蛍光抗体試験(IFAT)を行った。
【0077】
有効性の評価
1997年から、医療施設に基づく罹患監視システムが機能しており13、現在ではManhica Health CenterならびにMaragraおよびIlha Josinaの診療所(Health Posts)において確立されている。個人IDカードにより研究参加者を特定し、標準化された実証および適当な医療処置を確保するために、3つ全ての施設において、プロジェクト医療スタッフが1日24時間待機している。
【0078】
過去24時間以内の発熱の報告のあった又は実証された発熱(37.5℃以上の腋窩体温)を有する全ての小児の採血を行って、二重の濃淡血液スメアにおけるマラリア寄生生物の測定ならびに微毛細管を使用するヘマトクリット(PCV)の測定を行った。入院するのが妥当な臨床状態を有する小児をManhica Health Centerに入院させた。入院に際して、医師が、より詳細な臨床履歴確認および健康診断を行い、それを、標準化された用紙に記録した。退院に際して、臨床検査および最終診断の結果を記録した。臨床処置は、標準的な国内指針に従い行った。
【0079】
コホート2においては、能動的感染検出(Active Detection of Infection)(ADI)を行った。マラリア感染に関する監視の開始の4週間前に、アモジアキン(10mg/kg、経口、3日間)とSP(1回経口用量スルファドキシン25mg/kgおよびピリメタミン1.25mg/kg)との組合せにより、無症候性寄生虫血症は消失したと推定された。寄生虫血症(寄生生物血症)の非存在を2週間後に調べ、陽性者をセカンドライン治療剤(Co-Artem(登録商標))で治療し、ADIに関する更なる評価から除外した。監視を第3用量投与の14日後に開始し、その後の2.5ヶ月間は2週間ごとに行い、ついで更に2ヶ月にわたり毎月行った(図1)。現場担当者が小児の自宅を訪問し、各訪問時に、簡単な罹患質問票を書き込み、腋窩体温を記録した。小児が無熱の場合には、指穿刺によりスライドおよび濾紙上に採血した。小児が発熱または発熱履歴を有することが判明した場合には、小児を診療所へ同行させ、検査し、血液スライドを集めた。症状にかかわらずADIからの陽性スライドを有する全ての小児を治療した。
【0080】
両コホートにおいて、第3用量投与の6.5ヶ月後に横断的調査を行った。その訪問中に腋窩体温および脾臓サイズ(Hackett尺度)を測定し、血液スライドを調製した。
【0081】
実験室手法
寄生生物の存在およびP. falciparum無性段階の密度を測定するために、標準的な品質管理法に従いギムザ染色血液スライドを読み取った14。Hospital Clinic of Barcelonaにおいて、外的な妥当性評価を行った。乾燥生化学的光度計VITROS DT II(Orto Clinical Diagnostics, Johnson & Johnson Company, USA)を使用して、生化学的パラメーターを測定した。Sysmex KX-21N細胞計数器(Sysmex Corporation Kobe, Japan)を使用して、血液学的試験を行った。マイクロヘマトクリット遠心機での遠心分離の後、Hawksleyヘマトクリット測定器を使用してヘパリン化微毛細管内でヘマトクリット(PCV)を測定した。
【0082】
参照としての標準血清と共に、配列[NVDP(NANP)15]2LRを含有する組換え抗原R32LRを吸収したプレートを使用して、標準的なELISAにより、サーカムスポロゾイトタンパク質縦列反復エピトープに特異的な抗体を測定した。市販キット(ETI-MAK-4 DIASORIN(登録商標))を使用するELISAによりHBsAgの存在を測定した。市販キット(AbbottのAUSAB EIA)を使用するELISAにより抗HBsAg抗体レベルを測定した。IFATの測定のために、25μlの試験血清(1/81920までの2倍系列希釈)を、スライド上に固定された血液段階P. falciparum寄生生物と共にインキュベートした。陽性反応をFITC標識二次抗体Evans Blueで現像した。UV光学顕微鏡下で陽性蛍光を与える最高希釈を評価した。
【0083】
定義および統計方法
コホート1において評価した一次エンドポイントは症候性P. falciparumマラリアの最初の臨床エピソードまでの時間であった。臨床エピソードは、37.5℃以上の腋窩体温および2500/μlを超えるP. falciparum無性寄生虫血症の存在を医療施設に示した小児として定義された。このケース定義は91%特異的で95%感受性であると推定されている15。二次および三次エンドポイントは、異なる臨床マラリア定義に関するワクチン効力の評価および複数のエピソードの検査を含むものであった。
【0084】
最終的診断を確定するために、すべての入院は、2つのグループの臨床家により、独立して精査され、矛盾点は、非盲検化前に相談会において解決された。入院を要するマラリアは、マラリアが疾患の唯一の原因であり重要な寄与因子であると判断されたP. falciparum無性寄生虫血症を有する小児において定義された。重篤マラリアのケース定義は臨床実施のためのWHO指針から導かれた16。重篤マラリアの全ケースは無性P. falciparum寄生虫血症を有すること、およびより考えられうる他の疾患原因を有さないことを要した。該定義は、重篤マラリア貧血(PCV<15%)、脳マラリア(Blantyre昏睡スコア<2)、および他の身体系の重篤疾患、すなわち、多重発作(過去24時間以内の2以上の全身性痙攣)、全身衰弱(補助無しでは座れないことにより定義される)、低血糖(<2.2mmol/dL)、臨床的に疑われるアシドーシスもしくは循環虚脱の構成要素であった。
【0085】
効力のプロトコール合致解析(According to Protocol (ATP) analysis)は、すべての適格性基準を満たしワクチン接種経過を完了し効力監視に寄与した被験者を含むものであった。リスク時は、あらゆる原因の入院に関する推定値の場合を除き、該研究地域における不在に関して、および抗マラリア薬の使用に関して調整された。臨床マラリアの複数エピソードの解析の場合には、前エピソード後の28日間は、被験者は感受性であるとはみなされなかった。
【0086】
最初の臨床マラリアエピソードまたはマラリア感染までの時間に関しては、ワクチン効力は、Cox回帰モデルを用いてを評価し、1からハザード比を引き算したものとして定義さした。ワクチン効力は、年齢、ベッド-ネット使用(bed-net use)、地理的地域および医療機関からの距離の、予め定められた共変量に関して調整した。比例ハザード仮定を、時間依存性Coxモデル18およびSchoenfeld残差17に基づく検定を用いて、グラフィック的に調べた。臨床マラリアの複数エピソードおよび入院に関しては、オフセット(off-set)変数としてのリスク時を含め、正規ランダム切片(normal random intercepts)と共にPoisson回帰モデルを用いて、グループ効果を評価した。ワクチン効力は、1から率比を引き算したものとして定義した。本明細書の全体にわたり、調整されたワクチン効力が記載されている。
【0087】
更なる探索的解析は、重篤マラリアおよび入院患者マラリアに関する解析を含むものであった。この場合、少なくとも1つのエピソードを有する小児の比率における相違を、フィッシャーの直接法を用いて比較した。VEは、正確な95%信頼区間を伴う、リスク比を1から引き算したものとして計算した19。8.5ヶ月における陽性寄生虫密度の割合および貧血罹患率(PCV<25%)における相違を、フィッシャーの直接法を用いて評価した。陽性密度の幾何平均およびヘマトクリット値に対する該処理の効果を、ノンパラメトリックWilcoxon検定を用いて評価した。
【0088】
同様の方法をITT(intention to treat)解析において用いた。用量1の投与から始まるリスク時は、該研究における不在に関しても薬物使用に関しても調整せず、効果の推定値は共変量に関して調整しなかった。
【0089】
抗CSおよび抗HBsAg抗体のデータを、95%CIを伴う幾何平均力価(GMT)により要約した。血清陽性率を抗CS力価(>0.5 EU/mLとして定義される)に関して計算した。血清防御率を抗HBs力価(>10 mIU/mLとして定義される)に関して計算した。SAS20およびSTATA21を用いて解析を行った。
【0090】
結果
コホート1および2に関する治験プロファイルを図2aおよび2bに示す。各コホート内で、ランダム化は、比較可能な小児群を与えた(表1)。すべての指標は、マラリア伝染強度が、コホート2の研究地域においては、コホート1の研究地域より高かったことを示唆している。
【0091】
ワクチン安全性
RTS,S/AS02Aおよび対照ワクチンは安全であり、十分に許容されるものであり、どちらの群においても被験者の92%以上が全3用量の投与を受けた。局所性および全身性の自発的(solicited)有害事象は短い持続時間のものであり、ほとんどは強度において軽度または中等度であった。等級3の局所性または全身性有害事象は稀であり、短い持続時間のものであった。RTS,S/AS02Aおよび対照群においては、腕の運動を制限する局所注射部位疼痛が、それぞれ7(0.2%)および1(0.03%)用量の投与後に生じ、20mmを超える注射部位腫脹が、それぞれ224(7.7%)および14(0.5%)用量の投与後に生じた。通常の活動を妨げる、全身性の自発的有害事象(発熱、被刺激性、眠気、食欲不振)が、RTS,S/AS02Aおよび対照群においてそれぞれ55(1.9%)および23(0.8%)の用量の投与後に生じた。少なくとも1つの非自発的(unsolicited)有害事象がRTS,S/AS02A群の653名(64.5%)の被験者および対照群の597名(59.1%)の被験者により報告された。安全検査値は該治験の経過にわたりベースラインから実質的に不変のままであった。
【0092】
RTS,S/AS02A群においては180(17.8%)および対照群においては249(24.7%)の、429のSAEが報告された。該研究中に、RTS,S/AS02A群の5名(0.6%)および対照群の10名(1.2%)の、15名が死亡した。有意な寄与因子としてのマラリアによる死者は4名であり、4名は全て対照群におけるものであった。いずれの重篤有害事象または死亡も、ワクチン接種に関連しているとは判定されなかった。
【0093】
免疫原性
ワクチン接種前の抗CS抗体価は被検小児においては低かった。該ワクチンは免疫原性であり、第3用量の投与後に高い抗体レベルを誘導し、6ヶ月で初期レベルの約1/4に低下したが、依然としてベースライン値を十分に上回っていた。対照群の抗体レベルは追跡期間の全体にわたり低いままであった。該ワクチンは(97%血清防御を超える)高レベルの抗HBsAg抗体をも誘導した(表2)。CSおよびHBsAgの両方に関して、該ワクチンの免疫原性は、24月齢未満の小児においては、より高かった。
【0094】
ワクチン効力
コホート1において行ったATP解析においては、282名の小児が、一次ケースの定義を満たす最初の又は唯一の臨床エピソードを示し(RTS,S/AS02A群では123名および対照群では159名)、26.9%(95% CI: 7.4%〜42.2%; p = 0.009)の粗ワクチン効力推定値および29.9%(95% CI: 11%〜44.8%; p = 0.004)の調整推定値を与えた(図3aおよび表3)。臨床マラリアの最初のエピソードを有する小児における無性段階寄生生物の密度はワクチン接種によっては影響されなかった。なぜなら、提示時の幾何平均密度はRTS,S/AS02Aおよび対照群においてそれぞれ43 522/μLおよび41 867/μLであったからである(p = 0.915)。
【0095】
種々の方法(Schoenfeld残差を用いるハザードの比例ハザード性に関する検定 [p = 0.139])を用いて解析したところ、6ヶ月の観察期間にわたる一次エンドポイントにおいて定義される効力低下の証拠は存在しなかった。これらのデータに合致して、第3用量投与の6.5ヶ月後の横断的調査時に、RTS,S/AS02A被投与者における寄生虫血症の罹患率は37%低かった(RTS,S/AS02Aにおいては11.9%であるのに対して、対照においては18.9%)。これらの小児における寄生生物密度はRTS,S被投与者と対照との間で類似していた(幾何平均密度2271対2513; p = 0.699)。
【0096】
少数の小児が2以上のエピソードを示し、このエンドポイントに関するワクチン効力はVE = 27.4% [95% CI: 6.2%〜43.8%; p=0.014]であった。VE推定値は、寄生生物密度カットオフに基づく異なるケース定義に関して、有意には変化しなかった(表3)。第1用量投与からの臨床疾患までの時間のITT解析は30.2%(95% CI: 14.4%〜43.0%; p<0.001)のVEを与えた。ATP解析においては、RTS,S/AS02A群では26および対照群では36の貧血(PCV<25%)の付随エピソードが認められた(VE=28.2% [95% CI: -19.6%〜56.9%; p=0.203])。8.5ヶ月における貧血の罹患率は対照群では0.29%であったのに対して、ワクチン群では0.44%であった(p = 0.686)。
【0097】
RTS,S/AS02A群においては、重篤マラリアの少なくとも1つのエピソードを有する11名の小児が存在し、一方、対照群においては26名のそのような小児が存在した(VE=57.7% [95% CI: 16.2%〜80.6%; p=0.019])。RTS,S/AS02A群においては、入院を要するマラリアを有する42名の小児が存在し、一方、対照群においては62名のそのような小児が存在した(VE=32.3% [95% CI: 1.3%〜53.9%; p=0.053])。あらゆる原因の入院の数はそれらの2群間で類似していた(79対90; VE=14.4% [95% CI: -19.7%〜38.8%; p=0.362])。
【0098】
最初の感染までの時間の低下における該ワクチンの効力の評価をコホート2において判定した。45%(95% CI: 31.4%〜55.9%; p<0.001)のVE推定値を示す、無性P. falciparum寄生虫血症の最初または唯一のエピソードを有する323名(RTS,S/AS02A群では157名および対照群では166名)の小児が存在した(図3bおよび表3)。最初の感染時の無性段階寄生生物の平均密度は対照群とRTS,S/AS02A群とで類似していた(3950/μL 対 3016/μL, p=0.354)。コホート1に関する効力の持続性を評価するのに用いたのと同じ方法を用いて、ベストフィットのモデルは、約40%で安定化する、該ワクチンの経時的な効力の低下を示唆した。追跡終了時の無性P. falciparum寄生虫血症の罹患率はRTS,S/AS02A群においては対照群より有意に低かった(それぞれ52.3%対65.8%; p=0.019)。8.5ヶ月における貧血の罹患率は対照群では2.7%であり、RTS,S/AS02A群では0.0%であった(p=0.056)。
【0099】
年齢とワクチン効力との間の交互作用の証拠は存在せず、このことは、効力が年齢の増加と共に有意には変化しなかったことを示唆している。しかし、本発明者らは、マラリア疾患の矢面に立つ、より若い年齢の集団におけるワクチン効力を評価するための更なる探索的部分集団解析を行った。24月齢未満の小児においては、第1用量投与時に、RTS,S/AS02Aの被投与者(N=173)間では重篤マラリアが3例存在し、一方、対照ワクチンの被投与者(N=173)間では13例存在した(VE=76.9% [95% CI: 27.0%〜96.9%; p=0.018])。臨床マラリアの最初または唯一のエピソードの発生を同様に解析した。より若い小児においては、RTS,S/AS02A群および対照群でそれぞれ31および47のマラリアエピソードが存在し、それぞれ0.41および0.70エピソードPYARの発生率を示した(VE=46.7% [95% CI:14.8%〜66.7%; p=0.009])。新たな感染に対するVEは、より年長の集団およびより若い年齢の集団において類似していた(44.0%対46.5%)。
【0100】
CS力価とマラリア防御との間の関係をコホート1において評価した。CS力価における10倍増加当たりのハザード比は0.94(95% CI: 0.66〜1.33; p=0.708)であり、より高いタータイル(tertile)のCS応答における被験者とより低いタータイルのCS応答における被験者との比較のためのハザード比は1.38(95% CI: CI 0.89〜2.12; p=0.150)であった。
【0101】
考察
RTS,S/AS02Aは、P. falciparumにより引き起こされる感染および或るスペクトルの臨床疾患の両方に対して若いアフリカ人小児において防御をもたらす最初のサブユニットワクチンである。結果は、感染に対して部分的防御を誘導する単一の前赤血球抗原に基づくワクチンが、血液段階成分の非存在下であっても、罹患率を減少させうることを示している。
【0102】
若いアフリカ人小児において、RTS.S/AS02Aは十分に許容され、その反応生成性プロファイルは、このワクチンの従来の小児治験で観察されたものに類似していた。局所性および全身性症状は対照ワクチン群よりも頻繁に見られたが、被験者の試験中止にはつながらなかった。該ワクチンは安全であった。すなわち、RTS,S/AS02Aの投与を受けた小児は、対照群の場合より少数の全原因重篤有害事象、入院、およびマラリアからの重篤合併症を示した。他の介入治験において見られているとおり、本発明者らの研究参加者における死亡率はこの集団における履歴的バックグラウンド罹患率より低かった9
【0103】
P. falciparumスポロゾイトに対する高レベルの曝露にもかかわらず、この集団における天然に存在する抗CS抗体レベルは低かった。該ワクチンは、特に24ヶ月未満の小児において、高度に免疫原性であった。抗体レベルは6ヶ月間で約75%低下したが、追跡期間の終了時に、それは尚も免疫前レベルを十分に上回っていた。RTS,S/AS02A被投与者においては、抗CS抗体のレベルとマラリアのリスクとの間の関連性を検出できなかった。しかし、ほとんど全てのワクチン被投与者において得られた高い力価、および比較的低い免疫閾値防御レベルが存在しうるという可能性は、この解析を制限するものであった。また、該ワクチンは、この研究においては測定されなかった、防御に関与すると考えられている細胞性応答を誘導することが公知である22
【0104】
感染に対する該ワクチン効力は、この前赤血球ワクチンがスポロゾイトを中和し血流侵入性肝臓段階メロゾイトまたは感染肝細胞の数を抑制する公知の能力5に合致する。結果は、感染に対する防御と軽度な単純性疾患、マラリアによる入院および重篤マラリアに対する防御との間の顕著な合致をも示している。効力は、より若い小児において及びより重篤なエンドポイントに関して、より高いことを示唆する傾向が存在するようであるが、異なるエンドポイントに関する信頼区間は重複し、観察された相違は偶然によるものでありうる。異なるエンドポイントに対する観察された防御は、より容易に測定される感染エンドポイントが、臨床疾患に対するワクチン効力に関する代用物として用いられうることを示唆している。
【0105】
貧血のケースにおいて有意な相違が見られないことに、本発明者らは驚いた。その傾向は、RTS,S/AS20Aワクチンの被投与者において少数のケースに関して見出されたが、該研究中のマラリア貧血の比率は、予想されたものより遥かに低く、これは、このエンドポイントに関する統計的に有意なワクチン効力を検出する能力を制限した。疾患過程の早期に子供を医療施設へ連れて来るよう彼らの母親または保護者に強く促したことがマラリア症例の早期治療を確保し貧血の発生を減少させたのかもしれない。また、モザンビークは最近、マラリアに対する、より有効な一線級治療へと転換しており、これらの薬物の投与を受けた該治験における小児は、より急速な寄生生物の消失、より少数の再燃、したがってより短い感染持続期間を示した。これらの介入のそれぞれが、観察された貧血発生に影響を及ぼした可能性がある。
【0106】
効力の低下を検出するために本発明者らが用いた統計方法は、観察期間の全体にわたり、新たな感染および臨床疾患の両方に対する持続的なワクチン効力が存在し、最後の横断的調査において、感染の罹患率における有意な相違が存在することを示唆した。これは、ワクチン効力が短寿命であることを示唆したマラリアナイーブボランティアまたはガンビア人成人における治験6,23とは著しく対照的である。これらの見掛け上矛盾する結果に関しては幾つかの説明が可能である。第1に、該ワクチンは、この研究集団においては、成人の場合より遥かに免疫原性であり、維持された免疫応答が、持続的な防御効力をもたらした可能性がある。第2に、この治験中に生じた、より高いレベルのスポロゾイト曝露が、抗体測定によっては示されない防御免疫応答の自然ブースターをもたらした可能性がある。該研究集団は尚も、長期的安全性およびワクチン効力の持続性の両方をモニターするために監視中である。
【0107】
この治験の最も顕著な知見の1つは、58%の、重篤マラリアに対する実証された効力、およびそれが、より若い小児において、より高いということが示唆されたことである。重篤マラリアの定義は尚も議論の的ではあるが、WHOに基づく定義に従う小児の分類が、非常に病的であり高い死亡リスクを伴う小児を特定するものであるということに関して疑う余地はほとんどない。
【0108】
参考文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
製薬上許容されるアジュバントまたは担体と組合された、重篤マラリア疾患に対するワクチン接種のための医薬の製造における、前赤血球段階で発現されるPlasmodium抗原の使用。
【請求項2】
標的集団が5歳未満の小児である、請求項1記載の使用。
【請求項3】
標的集団が1〜4歳の小児である、請求項1または請求項2記載の使用。
【請求項4】
該抗原が、CS、LSA-1、LSA-3、AMA-1、Exp-1またはそれらの免疫原性断片よりなる群から選ばれる、請求項1〜3のいずれか1項記載の使用。
【請求項5】
該抗原が、B型肝炎由来表面抗原(HBsAg)に融合したスポロゾイト抗原である、請求項1〜4のいずれか1項記載の使用。
【請求項6】
スポロゾイト抗原がサーカムスポロゾイトタンパク質(CS)またはその免疫原性断片である、請求項4または請求項5記載の使用。
【請求項7】
CSタンパク質または断片が、実質的に全てのPlasmodiumのCSタンパク質C末端部分、4個以上のCSタンパク質免疫優性領域縦列反復およびB型肝炎由来表面抗原(HBsAg)を含むハイブリッドタンパク質の形態である、請求項6記載の使用。
【請求項8】
該ハイブリッドタンパク質が、リンカーを介してHBsAgのN末端にインフレームで融合した、P. falciparum NF54株3D7クローンCSタンパク質のアミノ酸207-395に実質的に対応するP. falciparumのCSタンパク質の配列を含む、請求項7記載の使用。
【請求項9】
該ハイブリッドタンパク質がRTSである、請求項8記載の使用。
【請求項10】
RTSが混合粒子RTS,Sの形態である請求項9記載の使用。
【請求項11】
RTS,Sの量が25μg/用量である、請求項10記載の使用。
【請求項12】
該抗原を、Th1細胞応答の優先的刺激物質であるアジュバントと組合せて使用する、請求項1〜11のいずれか1項記載の使用。
【請求項13】
該アジュバントが3D-MPL、QS21または3D-MPLとQS21との組合せを含む、請求項12記載の使用。
【請求項14】
該アジュバントが水中油型エマルションを更に含む、請求項13記載の使用。
【請求項15】
該アジュバントがリポソームを更に含む、請求項13記載の使用。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−116849(P2012−116849A)
【公開日】平成24年6月21日(2012.6.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−14815(P2012−14815)
【出願日】平成24年1月27日(2012.1.27)
【分割の表示】特願2007−531693(P2007−531693)の分割
【原出願日】平成17年9月14日(2005.9.14)
【出願人】(305060279)グラクソスミスクライン バイオロジカルズ ソシエテ アノニム (169)
【Fターム(参考)】