プラズマアーク溶接のモニタリング方法及びプラズマアーク溶接装置
【課題】キーホール溶接に際してその良否を精度良く判定できる新規なプラズマアーク溶接のモニタリング方法及びプラズマアーク溶接装置の提供。
【解決手段】プラズマアークによるキーホール溶接をモニタリングする方法であって、一定電流を用いて溶接したときの出力電圧を計測するステップと、計測した出力電圧のうち溶融池Pの振動と相関ある溶接電圧を周波数解析してピーク周波数とその分布を求めるステップと、溶融池Pの振動と相関あるピーク周波数を特定するステップと、特定したピーク周波数と周波数レンジとを比較して溶接の良否を判定するステップとを含む。これによって、溶融池Pの振動と相関あるピーク周波数と周波数レンジとを比較するだけで良好なキーホール溶接が行われているか否かを精度良く判定することができる。
【解決手段】プラズマアークによるキーホール溶接をモニタリングする方法であって、一定電流を用いて溶接したときの出力電圧を計測するステップと、計測した出力電圧のうち溶融池Pの振動と相関ある溶接電圧を周波数解析してピーク周波数とその分布を求めるステップと、溶融池Pの振動と相関あるピーク周波数を特定するステップと、特定したピーク周波数と周波数レンジとを比較して溶接の良否を判定するステップとを含む。これによって、溶融池Pの振動と相関あるピーク周波数と周波数レンジとを比較するだけで良好なキーホール溶接が行われているか否かを精度良く判定することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー密度が高く、高速度、高品質な溶接が可能なプラズマアーク溶接のモニタリング方法及びプラズマアーク溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラズマアーク溶接は、ガスメタルア−ク(GMA)溶接、ガスタングステンアーク(GTA)溶接などと比べてエネルギー密度が高い。このため、プラズマアークを母材表面側から裏面側へ貫通させながら溶接する、いわゆるキーホール溶接が可能である。キーホール溶接が可能となれば、母材裏面側からの溶接作業が不要となるため、溶接作業効率が大幅に向上する。しかし、このキーホール溶接は、種々の要因、例えば溶接中の母材温度の上昇や大気温度、あるいはアースの取り方による磁気吹きなどにより施工の途中からキーホールの挙動が不安定となり易いため、常に溶接状況を確認しながら作業を進めなければならない。
【0003】
従来の溶接状況の確認方法として、例えば以下の特許文献1では、被溶接物のキーホールから出たアークフレームの偏向角θをモニタリングすることで溶接状況を確認する方法が提案されている。また、以下の特許文献2では、溶接部を覆うように被溶接物の裏側にバックシールド治具をあてがっておき、そのバックシールド治具と母材との間に生じる電圧を検出すると共に、その電圧と基準電圧とを比較し、そのズレを検討することで溶接状況を確認する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−89570号公報
【特許文献2】特開昭62−93072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献1に開示されているような方法は、被溶接物の下面にその溶接線に沿ってバックシールド治具を設けると共にそのバックシールド治具に複数の受光素子を設けておかなければならないため、コストや手間が掛かる。また、このアークフレームは磁気吹きなどの様々な要因により変動するため、その偏向角度θをモニタリングしただけでは溶接状況を正確に判定することは困難である。一方、前記特許文献2に開示されているような方法では、バックシールド治具と母材との間に生じる電圧と基準電圧とを比較し、そのズレのみに基づいて判断するため、溶接中の異常の有無を正確に検出することは難しい。また、いずれの従来方法でも特に溶接品質を左右する母材裏面側の裏波ビードの良否を判定することは困難である。
【0006】
そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その目的は、キーホール溶接に際して垂れ落ちや不整がない安定した一定高さの裏波ビードが得られるか否かを精度良く判定できる新規なプラズマアーク溶接のモニタリング方法及びプラズマアーク溶接装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの課題を解決すべく本発明者らは、多くの研究・実験を行った結果、溶接時に母材裏側に形成される溶融池の揺れの挙動(振動数)と溶接時に出力される溶接電圧の挙動(周波数)との関連性を発見し、本発明に至ったものである。
【0008】
すなわち、前述したようなプラズマアークによるキーホール溶接を行った場合、図2に示すように母材15の裏側であって、キーホール(プラズマアーク)の溶接方向後方には、溶接トーチ10から発生するプラズマアーク16の熱によって溶けた母材15による溶融池Pがその長手方向に沿って形成される。そして、この溶融池Pが、溶接方向前後に揺れることで安定した一定高さの裏波ビードが形成されることが分かった。このとき溶融池Pの揺れ(挙動)が大きすぎると溶融金属が垂れ落ちてしまうことから溶融池Pの揺れ(挙動)には、安定した一定高さの裏波ビードを形成するための固有の振動数(例えば、30乃至40Hz)が存在することが分かった。また、この固有振動数は、母材15の材質や溶融池Pの大きさ(質量)、粘度などによっても異なる。そして、これらの知見に基づき本発明者らがこの溶融池Pの揺れ(挙動)をさらに詳しく調べたところ、この溶融池Pの揺れ(挙動)は、キーホール溶接時に出力される溶接電圧を周波数解析したときのピーク周波数の分布と関係することが分かった。また、これらの関係は溶接電流として一定電流とパルス電流を用いた場合でも異なることが分かった。
【0009】
そこで、前記の目的を達成するために第1の発明は、被溶接物の溶接部にプラズマアークによるキーホールを形成しながら当該溶接部を連続溶接する状況をモニタリングする方法であって、一定電流を用いて溶接したときの出力電圧を計測する出力電圧計測ステップと、当該出力電圧計測ステップで計測した出力電圧のうち、前記溶接時に母材の裏側に形成される溶融池の振動と相関する可能性のある溶接電圧を周波数解析してピーク周波数とその分布を求める溶接電圧周波数解析ステップと、当該溶接電圧周波数解析ステップの周波数解析結果に基づいて前記溶融池の振動と相関する可能性のあるいくつかのピーク周波数を特定するピーク周波数特定ステップと、当該ピーク周波数特定ステップで特定したピーク周波数と予め設定した周波数レンジとを比較して溶接の良否を判定する判定ステップとを含むことを特徴とするプラズマアーク溶接のモニタリング方法である。
【0010】
このような方法であれば、溶接時に母材の裏側に形成される溶融池の振動と相関あるピーク周波数と予め設定した周波数レンジとを比較するだけでキーホール溶接の良否、すなわち一定電流を用いたキーホール溶接に際して垂れ落ちや不整がない安定した一定高さの裏波ビードが得られるか否かを精度良く判定することができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記判定ステップは、前記ピーク周波数特定ステップで特定した前記溶融池の振動と相関あるピーク周波数が、予め設定した周波数レンジ内に収まっているときは溶接が良好に行われていると判定し、予め設定した周波数レンジから外れているときは溶接不良と判定することを特徴とするプラズマアーク溶接のモニタリング方法である。
【0012】
このように特定した溶融池の振動と相関あるピーク周波数と予め設定した周波数レンジとの具体的な関係を検討するだけで、一定電流を用いたキーホール溶接に際して垂れ落ちや不整がない安定した一定高さの裏波ビードが得られるか否かを精度良く判定することができる。
【0013】
第3の発明は、第2の発明において、前記判定ステップは、前記周波数レンジ以外にも所定レベル以上のピークがあるときは溶接不良と判定することを特徴とするプラズマアーク溶接のモニタリング方法である。
【0014】
このように周波数レンジ以外にも所定レベル以上のピークがあるか否かを考慮することで、不整がない安定した一定高さの裏波ビードが得られるか否かをより精度良く判定することができる。
【0015】
第4の発明は、被溶接物の溶接部にプラズマアークによるキーホールを形成しながら当該溶接部を連続溶接する状況をモニタリングする方法であって、パルス電流を用いて溶接したときの出力電圧を計測する出力電圧計測ステップと、当該出力電圧計測ステップで計測した出力電圧のうち、前記溶接時に母材の裏側に形成される溶融池の振動と相関する可能性のある溶接電圧を周波数解析してピーク周波数とその分布を求める溶接電圧周波数解析ステップと、当該溶接電圧周波数解析ステップの周波数解析結果に基づいて前記溶融池の振動と相関する可能性のあるいくつかのピーク周波数を特定するピーク周波数特定ステップと、当該ピーク周波数特定ステップで特定したピーク周波数とパルス電流のパルス周波数とを比較して溶接の良否を判定する判定ステップとを含むことを特徴とするプラズマアーク溶接のモニタリング方法である。
【0016】
このような方法であれば、溶融池の振動と相関あるピーク周波数とパルス電流のパルス周波数とを比較するだけでパルス電流を用いたキーホール溶接の良否、すなわちパルス電流を用いたキーホール溶接に際して垂れ落ちや不整がない安定した一定高さの裏波ビードが得られるか否かを精度良く判定することができる。
【0017】
第5の発明は、第1乃至第4の発明において、前記判定ステップは、前記の基準により溶接が良好に行われていると判定したときは、さらに溶接電圧の単位時間あたりの変化量および基準電圧からの乖離量に基づいて溶接の良否を判定することを特徴とするプラズマアーク溶接のモニタリング方法である。
【0018】
このように前記の基準により溶接が良好に行われていると判断したときは、さらに溶接電圧の単位時間あたりの変化量および基準電圧からの乖離量に基づいて溶接の良否を判定すれば、キーホール溶接に際して垂れ落ちや不整がない安定した一定高さの裏波ビードが得られるか否かをより精度良く判定することができる。
【0019】
第6の発明は、プラズマアークを発生する溶接トーチを用いて被溶接物の溶接部にキーホールを形成しながら当該溶接部を連続溶接するプラズマアーク溶接装置であって、一定電流を用いて溶接したときの出力電圧を計測する出力電圧計測手段と、当該出力電圧計測手段で計測した出力電圧のうち、前記溶接時に母材の裏側に形成される溶融池の振動と相関する可能性のある溶接電圧を周波数解析してピーク周波数とその分布を求める溶接電圧周波数解析手段と、当該溶接電圧周波数解析手段の周波数解析結果に基づいて前記溶融池の振動と相関する可能性のあるいくつかのピーク周波数を特定するピーク周波数特定手段と、当該ピーク周波数特定手段で特定したピーク周波数と予め設定した周波数レンジとを比較して溶接の良否を判定する判定手段とを備えたことを特徴とするプラズマアーク溶接装置である。
【0020】
このような構成であれば、第1の発明と同様に溶融池の振動と相関あるピーク周波数と予め設定した周波数レンジとを比較するだけで一定電流を用いたキーホール溶接の良否、すなわち一定電流を用いたキーホール溶接に際して垂れ落ちや不整がない安定した一定高さの裏波ビードが得られるか否かを精度良く判定することができる。
【0021】
第7の発明は、プラズマアークを発生する溶接トーチを用いて被溶接物の溶接部にキーホールを形成しながら当該溶接部を連続溶接するプラズマアーク溶接装置であって、パルス電流を用いて溶接したときの出力電圧を計測する出力電圧計測手段と、当該出力電圧計測手段で計測した出力電圧のうち、前記溶接時に母材の裏側に形成される溶融池の振動と相関する可能性のある溶接電圧を周波数解析してピーク周波数とその分布を求める溶接電圧周波数解析手段と、当該溶接電圧周波数解析手段の周波数解析結果に基づいて前記溶融池の振動と相関する可能性のあるいくつかのピーク周波数を特定するピーク周波数特定手段と、当該ピーク周波数特定手段で特定したピーク周波数とパルス電流のパルス周波数とを比較して溶接の良否を判定する判定手段とを備えたことを特徴とするプラズマアーク溶接装置である。
【0022】
このような構成であれば、第4の発明と同様に溶融池の振動と相関あるピーク周波数とパルス電流のパルス周波数とを比較するだけでパルス電流を用いたキーホール溶接の良否、すなわちパルス電流を用いたキーホール溶接に際して垂れ落ちや不整がない安定した一定高さの裏波ビードが得られるか否かを精度良く判定することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、溶接時に母材の裏側に形成される溶融池の振動と相関あるピーク周波数と予め設定した周波数レンジとを比較するだけでキーホール溶接に際して垂れ落ちや不整がない安定した一定高さの裏波ビードが得られるか否かを精度良く判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るプラズマアーク溶接装置100の実施の一形態を示すブロック図である。
【図2】溶接時に母材15の裏側に形成される溶融池Pの挙動を示す概念図である。
【図3】被溶接物14に対して溶接トーチ10を所定の角度θを傾斜させて溶接している状態を示す概念図である。
【図4】本発明方法で使用するパルス電流の波形図である。
【図5】被溶接物14に関する溶接条件の一例を示す部分拡大図である。
【図6】本発明に係るプラズマアーク溶接のモニタリング方法の処理の流れを示すフローチャート図である。
【図7】一定電流を用いた場合の溶接の良否判定処理の流れを示すフローチャート図である。
【図8】溶接電圧の変化の傾きと基準電圧に対する溶接電圧の乖離量の一例を示すグラフ図である。
【図9】一定電流を用いた場合の溶接電圧を周波数解析した際の周波数分布を示すグラフ図である。
【図10】本発明によるキーホール溶接後の溶接部の状態を示す溶接方向断面図である。
【図11】一定電流を用いた場合の溶接の良否判定処理の他の例を示すフローチャート図である。
【図12】パルス電流を用いた場合の溶接の良否判定処理の流れを示すフローチャート図である。
【図13】パルス電流を用いた場合の溶接電圧を周波数解析した際の周波数分布を示すグラフ図である。
【図14】パルス電流を用いた場合の溶接の良否判定処理の他の例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明に係るプラズマアーク溶接のモニタリング方法および溶接装置の実施の一形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るプラズマアーク溶接装置100の構成を示したブロック図である。図示するようにこのプラズマアーク溶接装置100は、溶接トーチ10と、この溶接トーチ10を駆動する駆動部20と、溶接電源を供給する電源部30と、溶接トーチ10に溶接ガスを供給するガス供給部40と、これら各部10乃至40を制御する溶接制御部50とから主に構成されている。
【0026】
溶接トーチ10は、図2に示すように、タングステン電極11を溶接トーチチップ12で覆うと共にその溶接トーチチップ12をシールドキャップ13で覆った構造をしている。そして、図示しない高周波発生器を使ってこのタングステン電極11と溶接トーチチップ12との間にパイロットアークを発生させると共に、その溶接トーチチップル12内にアルゴン(Ar)などの動作ガス(プラズマガスPG)を流すと、このプラズマガスPGがアーク熱によってイオン化してアーク電流の良導体となってタングステン電極11と母材15間で超高温(10000〜20000℃)のプラズマアーク16が発生するようになっている。そして、このプラズマアーク16を母材15の表面側から裏面側に貫通させることでキーホール溶接が可能となっている。また、この溶接トーチチップ12とシールドキャップ13間にはアルゴン(Ar)と水素(H2)、アルゴン(Ar)と酸素(O2)、アルゴン(Ar)と炭酸ガス(CO2)などからなるシールドガスSGが供給されており、このシールドガスSGによって溶接部を大気から保護して溶接品質を維持するようになっている。
【0027】
駆動部20は、この溶接トーチ10を被溶接物14に対して例えば図3に示すように所定の間隔および角度θとなるように維持・固定すると共に、溶接制御部50からの制御信号によってその溶接トーチ10を被溶接物14の溶接線に沿って所定の速度で移動(走行)させるようになっている。なお、この駆動部20は、被溶接物14側を固定し、この被溶接物14に対して溶接トーチ10側を移動させる他、溶接トーチ10側を固定し、被溶接物14側を移動させたり、両方をそれぞれ同時に移動(走行)させることも可能となっている。
【0028】
溶接電源部30は、溶接トーチ10と母材15との間にプラズマアーク16を発生させるために必要な電流を所定の電圧で供給するものであり、その電流値および電圧値は溶接制御部50によって細かく制御されるようになっている。そして、この溶接電源部30は、供給する電流としては、一定電流の他に、例えば図4に示すような矩形波のパルス電流を所定のパルス周波数で供給できるようになっている。図4はこの溶接電源部30から供給されるパルス電流の波形の一例を示したものであり、Ipはピーク電流、Ibはベース電流、wpはパルス幅、f1はパルス周波数である。ガス供給部40は、溶接トーチ10に対して前述したプラズマガスやシールドガスなどの溶接ガスを供給するものであり、同じく溶接制御部50によってそのガス流量やタイミングなどが適宜制御されるようになっている。
【0029】
溶接制御部50は、中央制御部51と、記憶部(データベース)52と、出力電圧計測部53と、溶接電圧周波数解析部56と、入力部54と、出力部55とから構成されている。そして、中央制御部51は、コンピュータシステムなどの情報処理装置(CPU、ROM、RAM、入出力インタフェースなど)から構成されており、入力部54から入力される操作指令や所定の制御用プログラムに基づいて前記各部10乃至40などを制御するようになっている。
【0030】
記憶部(データベース)52は、HDDや半導体メモリなどのデータの書き込み・読み出し自在の記憶装置などから構成されており、各種制御用プログラムなどの他に、少なくとも各種溶接条件とその溶接条件毎に異なるキーホール裏面側の溶融池の固有振動数に関するデータが書き込み・読み出し自在に記録されている。
【0031】
すなわち、この記憶部(データベース)52には、少なくとも様々な溶接条件とその条件下で一意に決まる溶融池Pの固有振動数に関する情報がデータベースとして記録されている。ここで、様々な溶接条件としては、例えば被溶接物14に関する条件と溶接施工条件とが挙げられる。そして、被溶接物14に関する条件としては、材料(母材の種類)の他に、例えば図5に示すように板厚t、開先角度θ、ルート長さrなどがある。一方、溶接施工条件としては、溶接電流、溶接速度、パイロットガス流量、パイロットガス組成、シールドガス組成、図2に示すスタンドオフ(母材−溶接トーチチップ間隔)、溶接トーチチップ穴径、図3に示したように溶接部(被溶接物14)に対する溶接トーチ10の角度θなどがある。
【0032】
出力電圧計測部53は、溶接電源部30からの出力電圧を常時あるいは任意の時間計測して溶接電圧周波数解析部56および中央制御部51に入力するようになっている。溶接電圧周波数解析部56は、この出力電圧計測部53で計測された出力電圧のうち、溶融池Pの振動と相関ある溶接電圧を周波数解析してピーク周波数とその分布を求め、その結果を中央制御部51に出力するようになっている。入力部54は、例えばキーボードやマウスなどの各種入力装置から構成されており、各種の溶接条件や操作指令などを入力するようになっている。出力部はCRTやLCDなどのモニターやスピーカーなどの各種出力装置から構成されており、入力部54からの溶接条件の入力操作の確認のための表示や各種の溶接状況などの情報を表示するようになっている。なお、この出力部55はモニターの表面にタッチパネルなどの入力機能を付加することで入力部54と兼用しても良い。
【0033】
次に、このような構成をしたプラズマアーク溶接装置100によるプラズマ溶接のモニタリング方法の一例を主に図6乃至図10を参照しながら説明する。本発明装置100の溶接制御部50(中央制御部51)は、入力部54から被溶接物14に関する条件と溶接開始指令が入力されたならば、その被溶接物14に関する条件に最適な溶接施工条件を記憶部(データベース)52から選択してきてその溶接施工条件に従って各部10乃至40を制御して溶接を開始する。ここでの溶接は一定電流を用いて行うものとする。
【0034】
そして、この溶接制御部50(中央制御部51)は、キーホール溶接が始まったならば、図6に示すように先ず入力部54から入力されたその溶接条件を取得する(ステップS100)と共に、記憶部52にアクセスしてその溶接条件下で一意に定まる溶融池Pの固有振動数を取得する(ステップS200)。次に、この溶接制御部50(中央制御部51)は、溶融池Pの固有振動数を取得したならば、その出力電圧を計測すると共に、計測された出力電圧のうち、溶融池Pの振動と相関ある溶接電圧を周波数解析してピーク周波数とその分布を求める(ステップS300、S400)。その後、この溶接制御部50(中央制御部51)は、その溶接電圧とピーク周波数とその分布を求めたならば、次のステップS500に移行して溶接の良否を判定する。
【0035】
図7は、このステップS500における溶接の良否判定処理の流れを示したものである。この溶接良否判定処理は、まず最初のステップS501において出力された溶接電圧の単位時間あたりの変化量が所定値以下であるか否かを判定する。この溶接電圧の変化量は、例えば図8に示すような溶接電圧の変化を示すグラフの傾きによって判断することができる。すなわち、短時間での急激な溶接電圧の変化は、キーホールが大き過ぎたり、あるいはキーホールが形成されないなどの重大な溶接不良(欠陥)を招く可能性が高いからである。そして、この最初のステップS501において溶接電圧の単位時間あたりの変化量が所定値以下でない(NO)と判断したならステップS513側に移行するが、変化量が所定値以下である(YES)と判断したならば、次のステップS503に移行する。
【0036】
ステップS503では、その溶接電圧が基準電圧からどの程度ずれているか、その乖離量を検出し、この乖離量が基準電圧から所定範囲内にあるか否かを判断する。すなわち、図8に示すように、溶接電圧が基準電圧から大きく乖離している場合もキーホールが大き過ぎたり、あるいはキーホールが形成されないなどの重大な溶接不良(欠陥)を招く可能性が高いからである。そして、その乖離量が基準電圧から所定範囲内にない(NO)と判断したときは、ステップS513に移行するが、その乖離量が基準電圧から所定範囲内にある(YES)と判断したときは、次のステップS505に移行する。
【0037】
ステップS505では、先のステップS400での周波数解析結果に基づいて溶融池Pの振動と相関あるピーク周波数を特定して次のステップS507に移行する。ステップS507では、特定されたピーク周波数が所定の周波数レンジに収まっているか否かを判断する。すなわち、このピーク周波数は、実際の溶融池Pの振動数に相当することから、その振動数が、先に読み出された溶融池Pの固有振動数とほぼ一致しているか否かを判断するものである。
【0038】
そして、例えば図9(A)に示すように、特定されたピーク周波数が所定の周波数レンジに収まっている(YES)と判断した場合には、実際の溶融池Pの振動数が固有振動数とほぼ一致していると判断して次のステップS509に移行する。これに対し、例えば図9(B)に示すように、特定されたピーク周波数が所定の周波数レンジに収まっていない(NO)と判断した場合には、実際の溶融池Pの振動数が固有振動数と大きくずれていると判断してステップS513側に移行する。実際の溶融池Pの振動数が固有振動数とほぼ一致している場合には良好な溶接が行われ、反対に両者が大きくずれている場合には良好な溶接が行われていないと考えられるからである。
【0039】
ステップS509では、特定されたピーク周波数が所定の周波数レンジには収まってはいるものの、このピーク周波数以外に外乱による所定レベル以上の別のピークがないか判断する。ピーク周波数以外に所定レベル以上の大きなピークがあると、そのピークの影響を受けて正確な判断が難しくなるからである。そして、例えば図9(C)に示すように、所定の周波数レンジ以外にも大きなピークがある(NO)と判断したときには、ステップS513に移行し、所定の周波数レンジ以外に大きなピークがない(YES)と判断したときには、ステップS511に移行する。
【0040】
ステップS511では、ステップS501乃至S509の4つの条件を全て満たしているため、図10に示すように裏ビードが整った良好な溶接が行われていると判定して処理を終了する。これに対し、ステップS513では、ステップS501乃至S509の4つの条件のうちいずれかを満たしていないため、溶接不良と判定して処理を終了する。このようにして溶接良否判定処理が終了したならば、図3のステップS600に移行してそのデータを記憶部52に保存(データ保存)してステップS700に移行する。ステップS700では、溶接が終了したか否かを判断し、溶接が終了するまで上記の処理を所定時間または所定溶接距離ごとに繰り返す。
【0041】
このように本発明のモニタリング方法によれば、プラズマアークによるキーホール溶接に際して垂れ落ちや不整がない安定した一定高さの裏波ビードが得られるか否かの判定をリアルタイムで精度良く行うことが可能となるため、溶接継続や中断の判断を的確に行うことができると共に、仮に溶接欠陥が発生した場合でもその後の補修作業などを大幅に低減することが可能となる。
【0042】
なお、本実施の形態における溶接良否判定処理(ステップS500)では、図7に示したように、先ず溶接電圧の変化量や乖離量を判断してから、ピーク周波数の特定を行い、その特定位置などに基づいて溶接良否判定を行うようにしたが、その判断順序はこれに限定されるものでない。例えば、図11に示すように先にピーク周波数の検出位置などに基づいて溶接良否判定(ステップS505、S507、S509)を行ってから、溶接電圧の変化量や乖離量を判断(ステップS501、S503)する順序であっても良い。
【0043】
次に、図12は、溶接電流としてパルス電流を用いた場合のステップS500における溶接良否判定処理の流れを示したものである。本実施の形態では、図12に示すようにステップS505でのピーク周波数特定処理が終了した後のステップS515において、特定したピーク周波数が、予め設定したパルス電流のパルス周波数のみか否かを判断する。
【0044】
この結果、図13(A)に示すように、そのピーク周波数が設定したパルス周波数のみであると判定したならば、ステップS511に移行するが、図13(B)に示すように、そのピーク周波数以外に外乱による所定レベル以上の他のピークがあると判定したならば、ステップS513に移行する。上記の実施の形態と同様にステップS511では、溶接が良好に行われていると判定して処理を終了し、ステップS513では、溶接不良と判定して処理を終了する。
【0045】
このように溶接電流としてパルス電流を用いた場合には、その溶接電圧のピーク周波数とパルス電流のパルス周波数との関係を判断することで、より精度良くキーホール溶接の良否を判定することが可能となる。なお、本実施の形態でも各判断処理の順序はこれに限定されるものでなく、図14に示すように、溶接電圧の変化量や乖離量を判断(ステップS501、S503)するに先だってステップS515の判断を行うようにしても良い。また、溶接電流としてパルス電流を用いた場合には、図6におけるステップS200の固有振動数取得ステップは省略することができる。
【0046】
また、前記課題を解決するための手段の欄に記載した本発明を構成する各手段(ステップ)のうち、一定電流およびパルス電流を用いて溶接したときの出力電圧を検出する出力電圧検出手段(ステップ)は、例えば図1の出力電圧計測部53や図6の出力電圧計測ステップS300などに対応する。また、検出した出力電圧のうち、溶接時に母材の裏側に形成される溶融池Pの振動と相関ある溶接電圧を周波数解析してピーク周波数とその分布を求める溶接電圧周波数解析手段(ステップ)は、例えば図1の溶接電圧周波数解析部56や図6の溶接電圧周波数解析ステップS400に対応する。また、周波数解析結果に基づいて前記溶融池の振動と相関あるピーク周波数を特定するピーク周波数特定手段(ステップ)は、例えば図1の中央制御部51や図7のステップS505などに対応する。また、特定したピーク周波数と予め設定した周波数レンジとを比較して溶接の良否を判定する判定手段(ステップ)は、例えば図1の中央制御部51や図6のステップS500および図7、図11の溶接良否判定処理などに対応する。また、溶接電圧のピーク周波数とパルス電流のパルス周波数とを比較して溶接の良否を判定する判定手段は、例えば図1の中央制御部51や図6のステップS500および図12,図14の溶接良否判定処理などに対応する。
【符号の説明】
【0047】
100…プラズマアーク溶接装置
11…タングステン電極
12…溶接トーチチップ
10…溶接トーチ
13…シールドキャップ
14…被溶接物
15…母材
16…プラズマアーク
20…駆動部
30…溶接電源部
40…溶接ガス供給部
50…溶接制御部
51…中央制御部
52…記憶部(データベース)
53…出力電圧計測部
54…入力部
55…出力部
56…溶接電圧周波数解析部
P…溶融池
PG…プラズマガス
SG…シールドガス
【技術分野】
【0001】
本発明は、エネルギー密度が高く、高速度、高品質な溶接が可能なプラズマアーク溶接のモニタリング方法及びプラズマアーク溶接装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラズマアーク溶接は、ガスメタルア−ク(GMA)溶接、ガスタングステンアーク(GTA)溶接などと比べてエネルギー密度が高い。このため、プラズマアークを母材表面側から裏面側へ貫通させながら溶接する、いわゆるキーホール溶接が可能である。キーホール溶接が可能となれば、母材裏面側からの溶接作業が不要となるため、溶接作業効率が大幅に向上する。しかし、このキーホール溶接は、種々の要因、例えば溶接中の母材温度の上昇や大気温度、あるいはアースの取り方による磁気吹きなどにより施工の途中からキーホールの挙動が不安定となり易いため、常に溶接状況を確認しながら作業を進めなければならない。
【0003】
従来の溶接状況の確認方法として、例えば以下の特許文献1では、被溶接物のキーホールから出たアークフレームの偏向角θをモニタリングすることで溶接状況を確認する方法が提案されている。また、以下の特許文献2では、溶接部を覆うように被溶接物の裏側にバックシールド治具をあてがっておき、そのバックシールド治具と母材との間に生じる電圧を検出すると共に、その電圧と基準電圧とを比較し、そのズレを検討することで溶接状況を確認する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭62−89570号公報
【特許文献2】特開昭62−93072号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記特許文献1に開示されているような方法は、被溶接物の下面にその溶接線に沿ってバックシールド治具を設けると共にそのバックシールド治具に複数の受光素子を設けておかなければならないため、コストや手間が掛かる。また、このアークフレームは磁気吹きなどの様々な要因により変動するため、その偏向角度θをモニタリングしただけでは溶接状況を正確に判定することは困難である。一方、前記特許文献2に開示されているような方法では、バックシールド治具と母材との間に生じる電圧と基準電圧とを比較し、そのズレのみに基づいて判断するため、溶接中の異常の有無を正確に検出することは難しい。また、いずれの従来方法でも特に溶接品質を左右する母材裏面側の裏波ビードの良否を判定することは困難である。
【0006】
そこで、本発明はこれらの課題を解決するために案出されたものであり、その目的は、キーホール溶接に際して垂れ落ちや不整がない安定した一定高さの裏波ビードが得られるか否かを精度良く判定できる新規なプラズマアーク溶接のモニタリング方法及びプラズマアーク溶接装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの課題を解決すべく本発明者らは、多くの研究・実験を行った結果、溶接時に母材裏側に形成される溶融池の揺れの挙動(振動数)と溶接時に出力される溶接電圧の挙動(周波数)との関連性を発見し、本発明に至ったものである。
【0008】
すなわち、前述したようなプラズマアークによるキーホール溶接を行った場合、図2に示すように母材15の裏側であって、キーホール(プラズマアーク)の溶接方向後方には、溶接トーチ10から発生するプラズマアーク16の熱によって溶けた母材15による溶融池Pがその長手方向に沿って形成される。そして、この溶融池Pが、溶接方向前後に揺れることで安定した一定高さの裏波ビードが形成されることが分かった。このとき溶融池Pの揺れ(挙動)が大きすぎると溶融金属が垂れ落ちてしまうことから溶融池Pの揺れ(挙動)には、安定した一定高さの裏波ビードを形成するための固有の振動数(例えば、30乃至40Hz)が存在することが分かった。また、この固有振動数は、母材15の材質や溶融池Pの大きさ(質量)、粘度などによっても異なる。そして、これらの知見に基づき本発明者らがこの溶融池Pの揺れ(挙動)をさらに詳しく調べたところ、この溶融池Pの揺れ(挙動)は、キーホール溶接時に出力される溶接電圧を周波数解析したときのピーク周波数の分布と関係することが分かった。また、これらの関係は溶接電流として一定電流とパルス電流を用いた場合でも異なることが分かった。
【0009】
そこで、前記の目的を達成するために第1の発明は、被溶接物の溶接部にプラズマアークによるキーホールを形成しながら当該溶接部を連続溶接する状況をモニタリングする方法であって、一定電流を用いて溶接したときの出力電圧を計測する出力電圧計測ステップと、当該出力電圧計測ステップで計測した出力電圧のうち、前記溶接時に母材の裏側に形成される溶融池の振動と相関する可能性のある溶接電圧を周波数解析してピーク周波数とその分布を求める溶接電圧周波数解析ステップと、当該溶接電圧周波数解析ステップの周波数解析結果に基づいて前記溶融池の振動と相関する可能性のあるいくつかのピーク周波数を特定するピーク周波数特定ステップと、当該ピーク周波数特定ステップで特定したピーク周波数と予め設定した周波数レンジとを比較して溶接の良否を判定する判定ステップとを含むことを特徴とするプラズマアーク溶接のモニタリング方法である。
【0010】
このような方法であれば、溶接時に母材の裏側に形成される溶融池の振動と相関あるピーク周波数と予め設定した周波数レンジとを比較するだけでキーホール溶接の良否、すなわち一定電流を用いたキーホール溶接に際して垂れ落ちや不整がない安定した一定高さの裏波ビードが得られるか否かを精度良く判定することができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明において、前記判定ステップは、前記ピーク周波数特定ステップで特定した前記溶融池の振動と相関あるピーク周波数が、予め設定した周波数レンジ内に収まっているときは溶接が良好に行われていると判定し、予め設定した周波数レンジから外れているときは溶接不良と判定することを特徴とするプラズマアーク溶接のモニタリング方法である。
【0012】
このように特定した溶融池の振動と相関あるピーク周波数と予め設定した周波数レンジとの具体的な関係を検討するだけで、一定電流を用いたキーホール溶接に際して垂れ落ちや不整がない安定した一定高さの裏波ビードが得られるか否かを精度良く判定することができる。
【0013】
第3の発明は、第2の発明において、前記判定ステップは、前記周波数レンジ以外にも所定レベル以上のピークがあるときは溶接不良と判定することを特徴とするプラズマアーク溶接のモニタリング方法である。
【0014】
このように周波数レンジ以外にも所定レベル以上のピークがあるか否かを考慮することで、不整がない安定した一定高さの裏波ビードが得られるか否かをより精度良く判定することができる。
【0015】
第4の発明は、被溶接物の溶接部にプラズマアークによるキーホールを形成しながら当該溶接部を連続溶接する状況をモニタリングする方法であって、パルス電流を用いて溶接したときの出力電圧を計測する出力電圧計測ステップと、当該出力電圧計測ステップで計測した出力電圧のうち、前記溶接時に母材の裏側に形成される溶融池の振動と相関する可能性のある溶接電圧を周波数解析してピーク周波数とその分布を求める溶接電圧周波数解析ステップと、当該溶接電圧周波数解析ステップの周波数解析結果に基づいて前記溶融池の振動と相関する可能性のあるいくつかのピーク周波数を特定するピーク周波数特定ステップと、当該ピーク周波数特定ステップで特定したピーク周波数とパルス電流のパルス周波数とを比較して溶接の良否を判定する判定ステップとを含むことを特徴とするプラズマアーク溶接のモニタリング方法である。
【0016】
このような方法であれば、溶融池の振動と相関あるピーク周波数とパルス電流のパルス周波数とを比較するだけでパルス電流を用いたキーホール溶接の良否、すなわちパルス電流を用いたキーホール溶接に際して垂れ落ちや不整がない安定した一定高さの裏波ビードが得られるか否かを精度良く判定することができる。
【0017】
第5の発明は、第1乃至第4の発明において、前記判定ステップは、前記の基準により溶接が良好に行われていると判定したときは、さらに溶接電圧の単位時間あたりの変化量および基準電圧からの乖離量に基づいて溶接の良否を判定することを特徴とするプラズマアーク溶接のモニタリング方法である。
【0018】
このように前記の基準により溶接が良好に行われていると判断したときは、さらに溶接電圧の単位時間あたりの変化量および基準電圧からの乖離量に基づいて溶接の良否を判定すれば、キーホール溶接に際して垂れ落ちや不整がない安定した一定高さの裏波ビードが得られるか否かをより精度良く判定することができる。
【0019】
第6の発明は、プラズマアークを発生する溶接トーチを用いて被溶接物の溶接部にキーホールを形成しながら当該溶接部を連続溶接するプラズマアーク溶接装置であって、一定電流を用いて溶接したときの出力電圧を計測する出力電圧計測手段と、当該出力電圧計測手段で計測した出力電圧のうち、前記溶接時に母材の裏側に形成される溶融池の振動と相関する可能性のある溶接電圧を周波数解析してピーク周波数とその分布を求める溶接電圧周波数解析手段と、当該溶接電圧周波数解析手段の周波数解析結果に基づいて前記溶融池の振動と相関する可能性のあるいくつかのピーク周波数を特定するピーク周波数特定手段と、当該ピーク周波数特定手段で特定したピーク周波数と予め設定した周波数レンジとを比較して溶接の良否を判定する判定手段とを備えたことを特徴とするプラズマアーク溶接装置である。
【0020】
このような構成であれば、第1の発明と同様に溶融池の振動と相関あるピーク周波数と予め設定した周波数レンジとを比較するだけで一定電流を用いたキーホール溶接の良否、すなわち一定電流を用いたキーホール溶接に際して垂れ落ちや不整がない安定した一定高さの裏波ビードが得られるか否かを精度良く判定することができる。
【0021】
第7の発明は、プラズマアークを発生する溶接トーチを用いて被溶接物の溶接部にキーホールを形成しながら当該溶接部を連続溶接するプラズマアーク溶接装置であって、パルス電流を用いて溶接したときの出力電圧を計測する出力電圧計測手段と、当該出力電圧計測手段で計測した出力電圧のうち、前記溶接時に母材の裏側に形成される溶融池の振動と相関する可能性のある溶接電圧を周波数解析してピーク周波数とその分布を求める溶接電圧周波数解析手段と、当該溶接電圧周波数解析手段の周波数解析結果に基づいて前記溶融池の振動と相関する可能性のあるいくつかのピーク周波数を特定するピーク周波数特定手段と、当該ピーク周波数特定手段で特定したピーク周波数とパルス電流のパルス周波数とを比較して溶接の良否を判定する判定手段とを備えたことを特徴とするプラズマアーク溶接装置である。
【0022】
このような構成であれば、第4の発明と同様に溶融池の振動と相関あるピーク周波数とパルス電流のパルス周波数とを比較するだけでパルス電流を用いたキーホール溶接の良否、すなわちパルス電流を用いたキーホール溶接に際して垂れ落ちや不整がない安定した一定高さの裏波ビードが得られるか否かを精度良く判定することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、溶接時に母材の裏側に形成される溶融池の振動と相関あるピーク周波数と予め設定した周波数レンジとを比較するだけでキーホール溶接に際して垂れ落ちや不整がない安定した一定高さの裏波ビードが得られるか否かを精度良く判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るプラズマアーク溶接装置100の実施の一形態を示すブロック図である。
【図2】溶接時に母材15の裏側に形成される溶融池Pの挙動を示す概念図である。
【図3】被溶接物14に対して溶接トーチ10を所定の角度θを傾斜させて溶接している状態を示す概念図である。
【図4】本発明方法で使用するパルス電流の波形図である。
【図5】被溶接物14に関する溶接条件の一例を示す部分拡大図である。
【図6】本発明に係るプラズマアーク溶接のモニタリング方法の処理の流れを示すフローチャート図である。
【図7】一定電流を用いた場合の溶接の良否判定処理の流れを示すフローチャート図である。
【図8】溶接電圧の変化の傾きと基準電圧に対する溶接電圧の乖離量の一例を示すグラフ図である。
【図9】一定電流を用いた場合の溶接電圧を周波数解析した際の周波数分布を示すグラフ図である。
【図10】本発明によるキーホール溶接後の溶接部の状態を示す溶接方向断面図である。
【図11】一定電流を用いた場合の溶接の良否判定処理の他の例を示すフローチャート図である。
【図12】パルス電流を用いた場合の溶接の良否判定処理の流れを示すフローチャート図である。
【図13】パルス電流を用いた場合の溶接電圧を周波数解析した際の周波数分布を示すグラフ図である。
【図14】パルス電流を用いた場合の溶接の良否判定処理の他の例を示すフローチャート図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
次に、本発明に係るプラズマアーク溶接のモニタリング方法および溶接装置の実施の一形態を添付図面を参照しながら説明する。図1は、本発明に係るプラズマアーク溶接装置100の構成を示したブロック図である。図示するようにこのプラズマアーク溶接装置100は、溶接トーチ10と、この溶接トーチ10を駆動する駆動部20と、溶接電源を供給する電源部30と、溶接トーチ10に溶接ガスを供給するガス供給部40と、これら各部10乃至40を制御する溶接制御部50とから主に構成されている。
【0026】
溶接トーチ10は、図2に示すように、タングステン電極11を溶接トーチチップ12で覆うと共にその溶接トーチチップ12をシールドキャップ13で覆った構造をしている。そして、図示しない高周波発生器を使ってこのタングステン電極11と溶接トーチチップ12との間にパイロットアークを発生させると共に、その溶接トーチチップル12内にアルゴン(Ar)などの動作ガス(プラズマガスPG)を流すと、このプラズマガスPGがアーク熱によってイオン化してアーク電流の良導体となってタングステン電極11と母材15間で超高温(10000〜20000℃)のプラズマアーク16が発生するようになっている。そして、このプラズマアーク16を母材15の表面側から裏面側に貫通させることでキーホール溶接が可能となっている。また、この溶接トーチチップ12とシールドキャップ13間にはアルゴン(Ar)と水素(H2)、アルゴン(Ar)と酸素(O2)、アルゴン(Ar)と炭酸ガス(CO2)などからなるシールドガスSGが供給されており、このシールドガスSGによって溶接部を大気から保護して溶接品質を維持するようになっている。
【0027】
駆動部20は、この溶接トーチ10を被溶接物14に対して例えば図3に示すように所定の間隔および角度θとなるように維持・固定すると共に、溶接制御部50からの制御信号によってその溶接トーチ10を被溶接物14の溶接線に沿って所定の速度で移動(走行)させるようになっている。なお、この駆動部20は、被溶接物14側を固定し、この被溶接物14に対して溶接トーチ10側を移動させる他、溶接トーチ10側を固定し、被溶接物14側を移動させたり、両方をそれぞれ同時に移動(走行)させることも可能となっている。
【0028】
溶接電源部30は、溶接トーチ10と母材15との間にプラズマアーク16を発生させるために必要な電流を所定の電圧で供給するものであり、その電流値および電圧値は溶接制御部50によって細かく制御されるようになっている。そして、この溶接電源部30は、供給する電流としては、一定電流の他に、例えば図4に示すような矩形波のパルス電流を所定のパルス周波数で供給できるようになっている。図4はこの溶接電源部30から供給されるパルス電流の波形の一例を示したものであり、Ipはピーク電流、Ibはベース電流、wpはパルス幅、f1はパルス周波数である。ガス供給部40は、溶接トーチ10に対して前述したプラズマガスやシールドガスなどの溶接ガスを供給するものであり、同じく溶接制御部50によってそのガス流量やタイミングなどが適宜制御されるようになっている。
【0029】
溶接制御部50は、中央制御部51と、記憶部(データベース)52と、出力電圧計測部53と、溶接電圧周波数解析部56と、入力部54と、出力部55とから構成されている。そして、中央制御部51は、コンピュータシステムなどの情報処理装置(CPU、ROM、RAM、入出力インタフェースなど)から構成されており、入力部54から入力される操作指令や所定の制御用プログラムに基づいて前記各部10乃至40などを制御するようになっている。
【0030】
記憶部(データベース)52は、HDDや半導体メモリなどのデータの書き込み・読み出し自在の記憶装置などから構成されており、各種制御用プログラムなどの他に、少なくとも各種溶接条件とその溶接条件毎に異なるキーホール裏面側の溶融池の固有振動数に関するデータが書き込み・読み出し自在に記録されている。
【0031】
すなわち、この記憶部(データベース)52には、少なくとも様々な溶接条件とその条件下で一意に決まる溶融池Pの固有振動数に関する情報がデータベースとして記録されている。ここで、様々な溶接条件としては、例えば被溶接物14に関する条件と溶接施工条件とが挙げられる。そして、被溶接物14に関する条件としては、材料(母材の種類)の他に、例えば図5に示すように板厚t、開先角度θ、ルート長さrなどがある。一方、溶接施工条件としては、溶接電流、溶接速度、パイロットガス流量、パイロットガス組成、シールドガス組成、図2に示すスタンドオフ(母材−溶接トーチチップ間隔)、溶接トーチチップ穴径、図3に示したように溶接部(被溶接物14)に対する溶接トーチ10の角度θなどがある。
【0032】
出力電圧計測部53は、溶接電源部30からの出力電圧を常時あるいは任意の時間計測して溶接電圧周波数解析部56および中央制御部51に入力するようになっている。溶接電圧周波数解析部56は、この出力電圧計測部53で計測された出力電圧のうち、溶融池Pの振動と相関ある溶接電圧を周波数解析してピーク周波数とその分布を求め、その結果を中央制御部51に出力するようになっている。入力部54は、例えばキーボードやマウスなどの各種入力装置から構成されており、各種の溶接条件や操作指令などを入力するようになっている。出力部はCRTやLCDなどのモニターやスピーカーなどの各種出力装置から構成されており、入力部54からの溶接条件の入力操作の確認のための表示や各種の溶接状況などの情報を表示するようになっている。なお、この出力部55はモニターの表面にタッチパネルなどの入力機能を付加することで入力部54と兼用しても良い。
【0033】
次に、このような構成をしたプラズマアーク溶接装置100によるプラズマ溶接のモニタリング方法の一例を主に図6乃至図10を参照しながら説明する。本発明装置100の溶接制御部50(中央制御部51)は、入力部54から被溶接物14に関する条件と溶接開始指令が入力されたならば、その被溶接物14に関する条件に最適な溶接施工条件を記憶部(データベース)52から選択してきてその溶接施工条件に従って各部10乃至40を制御して溶接を開始する。ここでの溶接は一定電流を用いて行うものとする。
【0034】
そして、この溶接制御部50(中央制御部51)は、キーホール溶接が始まったならば、図6に示すように先ず入力部54から入力されたその溶接条件を取得する(ステップS100)と共に、記憶部52にアクセスしてその溶接条件下で一意に定まる溶融池Pの固有振動数を取得する(ステップS200)。次に、この溶接制御部50(中央制御部51)は、溶融池Pの固有振動数を取得したならば、その出力電圧を計測すると共に、計測された出力電圧のうち、溶融池Pの振動と相関ある溶接電圧を周波数解析してピーク周波数とその分布を求める(ステップS300、S400)。その後、この溶接制御部50(中央制御部51)は、その溶接電圧とピーク周波数とその分布を求めたならば、次のステップS500に移行して溶接の良否を判定する。
【0035】
図7は、このステップS500における溶接の良否判定処理の流れを示したものである。この溶接良否判定処理は、まず最初のステップS501において出力された溶接電圧の単位時間あたりの変化量が所定値以下であるか否かを判定する。この溶接電圧の変化量は、例えば図8に示すような溶接電圧の変化を示すグラフの傾きによって判断することができる。すなわち、短時間での急激な溶接電圧の変化は、キーホールが大き過ぎたり、あるいはキーホールが形成されないなどの重大な溶接不良(欠陥)を招く可能性が高いからである。そして、この最初のステップS501において溶接電圧の単位時間あたりの変化量が所定値以下でない(NO)と判断したならステップS513側に移行するが、変化量が所定値以下である(YES)と判断したならば、次のステップS503に移行する。
【0036】
ステップS503では、その溶接電圧が基準電圧からどの程度ずれているか、その乖離量を検出し、この乖離量が基準電圧から所定範囲内にあるか否かを判断する。すなわち、図8に示すように、溶接電圧が基準電圧から大きく乖離している場合もキーホールが大き過ぎたり、あるいはキーホールが形成されないなどの重大な溶接不良(欠陥)を招く可能性が高いからである。そして、その乖離量が基準電圧から所定範囲内にない(NO)と判断したときは、ステップS513に移行するが、その乖離量が基準電圧から所定範囲内にある(YES)と判断したときは、次のステップS505に移行する。
【0037】
ステップS505では、先のステップS400での周波数解析結果に基づいて溶融池Pの振動と相関あるピーク周波数を特定して次のステップS507に移行する。ステップS507では、特定されたピーク周波数が所定の周波数レンジに収まっているか否かを判断する。すなわち、このピーク周波数は、実際の溶融池Pの振動数に相当することから、その振動数が、先に読み出された溶融池Pの固有振動数とほぼ一致しているか否かを判断するものである。
【0038】
そして、例えば図9(A)に示すように、特定されたピーク周波数が所定の周波数レンジに収まっている(YES)と判断した場合には、実際の溶融池Pの振動数が固有振動数とほぼ一致していると判断して次のステップS509に移行する。これに対し、例えば図9(B)に示すように、特定されたピーク周波数が所定の周波数レンジに収まっていない(NO)と判断した場合には、実際の溶融池Pの振動数が固有振動数と大きくずれていると判断してステップS513側に移行する。実際の溶融池Pの振動数が固有振動数とほぼ一致している場合には良好な溶接が行われ、反対に両者が大きくずれている場合には良好な溶接が行われていないと考えられるからである。
【0039】
ステップS509では、特定されたピーク周波数が所定の周波数レンジには収まってはいるものの、このピーク周波数以外に外乱による所定レベル以上の別のピークがないか判断する。ピーク周波数以外に所定レベル以上の大きなピークがあると、そのピークの影響を受けて正確な判断が難しくなるからである。そして、例えば図9(C)に示すように、所定の周波数レンジ以外にも大きなピークがある(NO)と判断したときには、ステップS513に移行し、所定の周波数レンジ以外に大きなピークがない(YES)と判断したときには、ステップS511に移行する。
【0040】
ステップS511では、ステップS501乃至S509の4つの条件を全て満たしているため、図10に示すように裏ビードが整った良好な溶接が行われていると判定して処理を終了する。これに対し、ステップS513では、ステップS501乃至S509の4つの条件のうちいずれかを満たしていないため、溶接不良と判定して処理を終了する。このようにして溶接良否判定処理が終了したならば、図3のステップS600に移行してそのデータを記憶部52に保存(データ保存)してステップS700に移行する。ステップS700では、溶接が終了したか否かを判断し、溶接が終了するまで上記の処理を所定時間または所定溶接距離ごとに繰り返す。
【0041】
このように本発明のモニタリング方法によれば、プラズマアークによるキーホール溶接に際して垂れ落ちや不整がない安定した一定高さの裏波ビードが得られるか否かの判定をリアルタイムで精度良く行うことが可能となるため、溶接継続や中断の判断を的確に行うことができると共に、仮に溶接欠陥が発生した場合でもその後の補修作業などを大幅に低減することが可能となる。
【0042】
なお、本実施の形態における溶接良否判定処理(ステップS500)では、図7に示したように、先ず溶接電圧の変化量や乖離量を判断してから、ピーク周波数の特定を行い、その特定位置などに基づいて溶接良否判定を行うようにしたが、その判断順序はこれに限定されるものでない。例えば、図11に示すように先にピーク周波数の検出位置などに基づいて溶接良否判定(ステップS505、S507、S509)を行ってから、溶接電圧の変化量や乖離量を判断(ステップS501、S503)する順序であっても良い。
【0043】
次に、図12は、溶接電流としてパルス電流を用いた場合のステップS500における溶接良否判定処理の流れを示したものである。本実施の形態では、図12に示すようにステップS505でのピーク周波数特定処理が終了した後のステップS515において、特定したピーク周波数が、予め設定したパルス電流のパルス周波数のみか否かを判断する。
【0044】
この結果、図13(A)に示すように、そのピーク周波数が設定したパルス周波数のみであると判定したならば、ステップS511に移行するが、図13(B)に示すように、そのピーク周波数以外に外乱による所定レベル以上の他のピークがあると判定したならば、ステップS513に移行する。上記の実施の形態と同様にステップS511では、溶接が良好に行われていると判定して処理を終了し、ステップS513では、溶接不良と判定して処理を終了する。
【0045】
このように溶接電流としてパルス電流を用いた場合には、その溶接電圧のピーク周波数とパルス電流のパルス周波数との関係を判断することで、より精度良くキーホール溶接の良否を判定することが可能となる。なお、本実施の形態でも各判断処理の順序はこれに限定されるものでなく、図14に示すように、溶接電圧の変化量や乖離量を判断(ステップS501、S503)するに先だってステップS515の判断を行うようにしても良い。また、溶接電流としてパルス電流を用いた場合には、図6におけるステップS200の固有振動数取得ステップは省略することができる。
【0046】
また、前記課題を解決するための手段の欄に記載した本発明を構成する各手段(ステップ)のうち、一定電流およびパルス電流を用いて溶接したときの出力電圧を検出する出力電圧検出手段(ステップ)は、例えば図1の出力電圧計測部53や図6の出力電圧計測ステップS300などに対応する。また、検出した出力電圧のうち、溶接時に母材の裏側に形成される溶融池Pの振動と相関ある溶接電圧を周波数解析してピーク周波数とその分布を求める溶接電圧周波数解析手段(ステップ)は、例えば図1の溶接電圧周波数解析部56や図6の溶接電圧周波数解析ステップS400に対応する。また、周波数解析結果に基づいて前記溶融池の振動と相関あるピーク周波数を特定するピーク周波数特定手段(ステップ)は、例えば図1の中央制御部51や図7のステップS505などに対応する。また、特定したピーク周波数と予め設定した周波数レンジとを比較して溶接の良否を判定する判定手段(ステップ)は、例えば図1の中央制御部51や図6のステップS500および図7、図11の溶接良否判定処理などに対応する。また、溶接電圧のピーク周波数とパルス電流のパルス周波数とを比較して溶接の良否を判定する判定手段は、例えば図1の中央制御部51や図6のステップS500および図12,図14の溶接良否判定処理などに対応する。
【符号の説明】
【0047】
100…プラズマアーク溶接装置
11…タングステン電極
12…溶接トーチチップ
10…溶接トーチ
13…シールドキャップ
14…被溶接物
15…母材
16…プラズマアーク
20…駆動部
30…溶接電源部
40…溶接ガス供給部
50…溶接制御部
51…中央制御部
52…記憶部(データベース)
53…出力電圧計測部
54…入力部
55…出力部
56…溶接電圧周波数解析部
P…溶融池
PG…プラズマガス
SG…シールドガス
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被溶接物の溶接部にプラズマアークによるキーホールを形成しながら当該溶接部を連続溶接する状況をモニタリングする方法であって、
一定電流を用いて溶接したときの出力電圧を計測する出力電圧計測ステップと、
当該出力電圧計測ステップで計測した出力電圧のうち、前記溶接時に母材の裏側に形成される溶融池の振動と相関する可能性のある溶接電圧を周波数解析してピーク周波数とその分布を求める溶接電圧周波数解析ステップと、
当該溶接電圧周波数解析ステップの周波数解析結果に基づいて前記溶融池の振動と相関する可能性のあるいくつかのピーク周波数を特定するピーク周波数特定ステップと、
当該ピーク周波数特定ステップで特定したピーク周波数と予め設定した周波数レンジとを比較して溶接の良否を判定する判定ステップとを含むことを特徴とするプラズマアーク溶接のモニタリング方法
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマアーク溶接のモニタリング方法において、
前記判定ステップは、
前記ピーク周波数特定ステップで特定したピーク周波数が、予め設定した周波数レンジ内に収まっているときは溶接が良好に行われていると判定し、予め設定した周波数レンジから外れているときは溶接不良と判定することを特徴とするプラズマアーク溶接のモニタリング方法。
【請求項3】
請求項2に記載のプラズマアーク溶接のモニタリング方法において、
前記判定ステップは、
前記周波数レンジ以外にも所定レベル以上のピークがあるときは溶接不良と判定することを特徴とするプラズマアーク溶接のモニタリング方法。
【請求項4】
被溶接物の溶接部にプラズマアークによるキーホールを形成しながら当該溶接部を連続溶接する状況をモニタリングする方法であって、
パルス電流を用いて溶接したときの出力電圧を計測する出力電圧計測ステップと、
当該出力電圧計測ステップで計測した出力電圧のうち、前記溶接部の母材の裏側に形成される溶融池の振動と相関する可能性のある溶接電圧を周波数解析してピーク周波数とその分布を求める溶接電圧周波数解析ステップと、
当該溶接電圧周波数解析ステップの周波数解析結果に基づいて前記溶融池の振動と相関する可能性のあるいくつかのピーク周波数を特定するピーク周波数特定ステップと、
当該ピーク周波数特定ステップで特定したピーク周波数と前記パルス電流のパルス周波数とを比較して溶接の良否を判定する判定ステップとを含むことを特徴とするプラズマアーク溶接のモニタリング方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のプラズマアーク溶接のモニタリング方法において、
前記判定ステップは、
前記の基準により溶接が良好に行われていると判定したときは、さらに溶接電圧の単位時間あたりの変化量および基準電圧からの乖離量に基づいて溶接の良否を判定することを特徴とするプラズマアーク溶接のモニタリング方法。
【請求項6】
プラズマアークを発生する溶接トーチを用いて被溶接物の溶接部にキーホールを形成しながら当該溶接部を連続溶接するプラズマアーク溶接装置であって、
一定電流を用いて溶接したときの出力電圧を計測する出力電圧計測手段と、
当該出力電圧計測手段で計測した出力電圧のうち、前記溶接時に母材の裏側に形成される溶融池の振動と相関する可能性のある溶接電圧を周波数解析してピーク周波数とその分布を求める溶接電圧周波数解析手段と、
当該溶接電圧周波数解析手段の周波数解析結果に基づいて前記溶融池の振動と相関する可能性のあるいくつかのピーク周波数を特定するピーク周波数特定手段と、
当該ピーク周波数特定手段で特定したピーク周波数と予め設定した周波数レンジとを比較して溶接の良否を判定する判定手段とを備えたことを特徴とするプラズマアーク溶接装置。
【請求項7】
プラズマアークを発生する溶接トーチを用いて被溶接物の溶接部にキーホールを形成しながら当該溶接部を連続溶接するプラズマアーク溶接装置であって、
パルス電流を用いて溶接したときの出力電圧を計測する出力電圧計測手段と、
当該出力電圧計測手段で計測した出力電圧のうち、前記溶接時に母材の裏側に形成される溶融池の振動と相関する可能性のある溶接電圧を周波数解析してピーク周波数とその分布を求める溶接電圧周波数解析手段と、
当該溶接電圧周波数解析手段の周波数解析結果に基づいて前記溶融池の振動と相関する可能性のあるいくつかのピーク周波数を特定するピーク周波数特定手段と、
当該ピーク周波数特定手段で特定した溶接電圧のピーク周波数とパルス電流のパルス周波数とを比較して溶接の良否を判定する判定手段とを備えたことを特徴とするプラズマアーク溶接装置。
【請求項1】
被溶接物の溶接部にプラズマアークによるキーホールを形成しながら当該溶接部を連続溶接する状況をモニタリングする方法であって、
一定電流を用いて溶接したときの出力電圧を計測する出力電圧計測ステップと、
当該出力電圧計測ステップで計測した出力電圧のうち、前記溶接時に母材の裏側に形成される溶融池の振動と相関する可能性のある溶接電圧を周波数解析してピーク周波数とその分布を求める溶接電圧周波数解析ステップと、
当該溶接電圧周波数解析ステップの周波数解析結果に基づいて前記溶融池の振動と相関する可能性のあるいくつかのピーク周波数を特定するピーク周波数特定ステップと、
当該ピーク周波数特定ステップで特定したピーク周波数と予め設定した周波数レンジとを比較して溶接の良否を判定する判定ステップとを含むことを特徴とするプラズマアーク溶接のモニタリング方法
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマアーク溶接のモニタリング方法において、
前記判定ステップは、
前記ピーク周波数特定ステップで特定したピーク周波数が、予め設定した周波数レンジ内に収まっているときは溶接が良好に行われていると判定し、予め設定した周波数レンジから外れているときは溶接不良と判定することを特徴とするプラズマアーク溶接のモニタリング方法。
【請求項3】
請求項2に記載のプラズマアーク溶接のモニタリング方法において、
前記判定ステップは、
前記周波数レンジ以外にも所定レベル以上のピークがあるときは溶接不良と判定することを特徴とするプラズマアーク溶接のモニタリング方法。
【請求項4】
被溶接物の溶接部にプラズマアークによるキーホールを形成しながら当該溶接部を連続溶接する状況をモニタリングする方法であって、
パルス電流を用いて溶接したときの出力電圧を計測する出力電圧計測ステップと、
当該出力電圧計測ステップで計測した出力電圧のうち、前記溶接部の母材の裏側に形成される溶融池の振動と相関する可能性のある溶接電圧を周波数解析してピーク周波数とその分布を求める溶接電圧周波数解析ステップと、
当該溶接電圧周波数解析ステップの周波数解析結果に基づいて前記溶融池の振動と相関する可能性のあるいくつかのピーク周波数を特定するピーク周波数特定ステップと、
当該ピーク周波数特定ステップで特定したピーク周波数と前記パルス電流のパルス周波数とを比較して溶接の良否を判定する判定ステップとを含むことを特徴とするプラズマアーク溶接のモニタリング方法。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれかに記載のプラズマアーク溶接のモニタリング方法において、
前記判定ステップは、
前記の基準により溶接が良好に行われていると判定したときは、さらに溶接電圧の単位時間あたりの変化量および基準電圧からの乖離量に基づいて溶接の良否を判定することを特徴とするプラズマアーク溶接のモニタリング方法。
【請求項6】
プラズマアークを発生する溶接トーチを用いて被溶接物の溶接部にキーホールを形成しながら当該溶接部を連続溶接するプラズマアーク溶接装置であって、
一定電流を用いて溶接したときの出力電圧を計測する出力電圧計測手段と、
当該出力電圧計測手段で計測した出力電圧のうち、前記溶接時に母材の裏側に形成される溶融池の振動と相関する可能性のある溶接電圧を周波数解析してピーク周波数とその分布を求める溶接電圧周波数解析手段と、
当該溶接電圧周波数解析手段の周波数解析結果に基づいて前記溶融池の振動と相関する可能性のあるいくつかのピーク周波数を特定するピーク周波数特定手段と、
当該ピーク周波数特定手段で特定したピーク周波数と予め設定した周波数レンジとを比較して溶接の良否を判定する判定手段とを備えたことを特徴とするプラズマアーク溶接装置。
【請求項7】
プラズマアークを発生する溶接トーチを用いて被溶接物の溶接部にキーホールを形成しながら当該溶接部を連続溶接するプラズマアーク溶接装置であって、
パルス電流を用いて溶接したときの出力電圧を計測する出力電圧計測手段と、
当該出力電圧計測手段で計測した出力電圧のうち、前記溶接時に母材の裏側に形成される溶融池の振動と相関する可能性のある溶接電圧を周波数解析してピーク周波数とその分布を求める溶接電圧周波数解析手段と、
当該溶接電圧周波数解析手段の周波数解析結果に基づいて前記溶融池の振動と相関する可能性のあるいくつかのピーク周波数を特定するピーク周波数特定手段と、
当該ピーク周波数特定手段で特定した溶接電圧のピーク周波数とパルス電流のパルス周波数とを比較して溶接の良否を判定する判定手段とを備えたことを特徴とするプラズマアーク溶接装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2013−107087(P2013−107087A)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−251739(P2011−251739)
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
【公開日】平成25年6月6日(2013.6.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【出願人】(000231235)大陽日酸株式会社 (642)
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