説明

プラズマガン

【課題】部品組付け性およびコスト面での改良がなされたプラズマガンを提供する。
【解決手段】第1中間電極21および第2中間電極22の第1電極取付基体26および第2電極取付基体27において、それらの各胴部29,29の外周面に環状の第1磁石35および第2磁石36をそれぞれ嵌着する。第1中間電極21と第2中間電極22との間に配置された絶縁部材23は、第1磁石35と第2磁石36との間に位置する絶縁本体部37から第1被嵌部38および第2被嵌部39を軸方向に一体に突設し、これらの第1被嵌部38および第2被嵌部39を第1磁石35および第2磁石36の外周面上にそれぞれ被嵌する。そして、第1電極取付基体26および第2電極取付基体27の各フランジ部28,28を締結部材25で相互に締結する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物理気相成長法(PVD:Physical Vapor Deposition)または化学気相成長法(CVD:Chemical Vapor Deposition)で用いられるプラズマガンに関する。
【背景技術】
【0002】
PVDとしては、イオンプレーティング法、真空蒸着法、スパッタリング法などが知られている。
【0003】
例えば、イオンプレーティング法では、図4に示されるようなイオンプレーティング装置が知られている。このイオンプレーティング装置は、陰極1aおよび中間電極1bを備えたプラズマガン1を真空チャンバ2の側面に取り付け、アルゴンガスなどのキャリアガスの供給を受けながら放電電源3から負の電圧が印加されたプラズマガン1によりガス放電させてプラズマ4を発生させ、このプラズマ4を収束用空芯コイル5内を経て真空チャンバ2内に発射し、この真空チャンバ2内にマグネット6とともに陽極(ハース)として設置されたチタンなどの蒸着金属7に照射し、この蒸着金属7を溶解・蒸気化させる。このとき、電子と分離して+イオン化された蒸着金属粒子は、真空チャンバ2内でイオン集積電源8により負の電圧が印加されたワークWの表面に引き寄せられて密着され金属被膜となる。
【0004】
真空チャンバ2内は、先ず真空ポンプ(図示せず)に接続された排気口2aから内部空気を外部へ排気して真空度を高めることで、蒸着金属7の蒸気化を促すとともに電子運動を活発化させ、また、上記真空チャンバ2内に反応ガス導入口2bから、窒素などの反応ガスを導入することで、蒸着金属粒子は、この反応ガスと反応した化合物の被膜となってワークWの表面に形成される。
【0005】
このようなイオンプレーティング法で用いられるプラズマガンの中間電極としては、プラズマが流出する第1開口を有する板状の第1鍔部と該第1鍔部の一方の主面に上記第1開口を囲むように突設された筒状の第1胴部とを有する導電性の第1ハウジングと、上記第1ハウジングの第1胴部の内孔に嵌挿された筒状の第1電極部材と、上記第1ハウジングの第1胴部の外周面に嵌入された環状の第1磁石と、上記第1磁石を上記第1ハウジングの第1胴部から抜けないよう止める第1止め部材(ナット)と、上記第1ハウジングの第1胴部の先端に上記第1開口と同軸状に配置された環状の絶縁部材と、プラズマが流入する第2開口を有する板状の第2鍔部と該第2鍔部の一方の主面に上記第2開口を囲むように突設された筒状の第2胴部とを有する導電性の第2ハウジングと、上記第2ハウジングの第2胴部の内孔に嵌挿された筒状の第2電極部材と、上記第2ハウジングの第2胴部の外周面に嵌入された環状の第2磁石と、上記第2磁石を上記第2ハウジングの第2胴部から抜けないよう止める第2止め部材(ナット)と、締結具とを備え、上記第2ハウジングが、その上記第2鍔部の一方の主面が上記第1ハウジングの第1鍔部の一方の主面と対向し、その上記第2開口が上記第1ハウジングの第1開口と同軸状に位置し、かつ、その上記第2胴部の先端が上記第1ハウジングの第1胴部の先端との間に上記絶縁部材を挟むように配置され、上記第1ハウジングの第1鍔部と上記第2ハウジングの第2鍔部とが上記締結具によって相互に締結されているものが知られている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−66241号公報(第4頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記プラズマガンの中間電極は、第1磁石および第2磁石を第1ハウジングおよび第2ハウジングの外部に設けた構造であるため、第1ハウジングおよび第2ハウジングの小型化および軽量化を図ることができる利点があるものの、次のような課題もある。
【0008】
すなわち、上記第1ハウジングの第1胴部の外周面に嵌入された環状の第1磁石は、上記第1ハウジングの第1胴部に螺合された上記第1止め部材(ナット)によって上記第1胴部から抜けないよう止め、上記第2ハウジングの第2胴部の外周面に嵌入された環状の第2磁石は、上記第2ハウジングの第2胴部に螺合された上記第2止め部材(ナット)によって上記第2胴部から抜けないよう止める構造であるため、上記第1胴部と上記第1止め部材とに螺合溝を加工する必要があるとともに、上記第2胴部と上記第2止め部材とに螺合溝を加工する必要がある。
【0009】
さらに、上記第1ハウジングの第1胴部の先端と上記第2ハウジングの第2胴部の先端との間に環状の絶縁部材を挟むように配置しつつ、上記第1ハウジングの第1鍔部と上記第2ハウジングの第2鍔部とを上記締結具によって相互に締結する構造であるため、絶縁部材の大きさや材質が限られ、小型でも所定の硬度を有するセラミックス製品などに限られる。
【0010】
このような理由で、従来のプラズマガンには、部品組付け性およびコスト面での課題がある。
【0011】
本発明は、このような点に鑑みなされたもので、部品組付け性およびコスト面での改良がなされたプラズマガンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載された発明は、キャリアガスの供給を受けながら負の電圧が印加される陰極と、この陰極に対して同軸上に配置されて正の電圧が印加されるプラズマ発生・収束用の中間電極とを備え、上記中間電極は、上記陰極側に配置された第1中間電極と、上記第1中間電極に対して上記陰極とは反対側に配置された第2中間電極と、上記第1中間電極と上記第2中間電極との間に配置された絶縁部材と、上記第1中間電極と上記第2中間電極とを相互に締結する締結部材とを備えたプラズマガンにおいて、上記第1中間電極および上記第2中間電極は、上記締結部材で相互に締結されたフランジ部とこれらのフランジ部の中央部から相互に対向する方向に突出された胴部とをそれぞれ有するとともに中心部に穴をそれぞれ有する導電性の第1電極取付基体および第2電極取付基体と、上記第1電極取付基体および上記第2電極取付基体の中心部の各穴にそれぞれ嵌着された筒状の第1電極部材および第2電極部材と、上記第1電極取付基体および上記第2電極取付基体の各胴部の外周面にそれぞれ嵌着された環状の第1磁石および第2磁石とを備え、上記絶縁部材は、上記第1磁石と上記第2磁石との間に位置する絶縁本体部と、上記絶縁本体部から上記第1磁石および上記第2磁石の外周面上にそれぞれ一体に突設されて上記第1磁石および上記第2磁石にそれぞれ被嵌された第1被嵌部および第2被嵌部とを具備したプラズマガンである。
【0013】
請求項2に記載された発明は、請求項1記載のプラズマガンにおいて、上記絶縁部材の上記絶縁本体部、第1被嵌部および第2被嵌部が、絶縁耐熱樹脂により一体成型されたものである。
【0014】
請求項3に記載された発明は、請求項1または2記載のプラズマガンにおける上記第1磁石および上記第2磁石を、共に環状の永久磁石としたものである。
【発明の効果】
【0015】
請求項1記載の発明によれば、上記第1中間電極および上記第2中間電極は、上記第1電極取付基体および上記第2電極取付基体の各胴部の外周面に環状の上記第1磁石および上記第2磁石をそれぞれ嵌着し、上記第1中間電極と上記第2中間電極との間に配置された絶縁部材は、上記第1磁石と上記第2磁石との間に位置する絶縁本体部から一体に突設された第1被嵌部および第2被嵌部を上記第1磁石および上記第2磁石の外周面上にそれぞれ被嵌し、上記第1電極取付基体および上記第2電極取付基体の各フランジ部を上記締結部材で相互に締結するようにしたので、これらのフランジ部間に、上記絶縁部材とともに上記第1磁石および上記第2磁石を同時に固定することができ、従来のような個別の磁石固定手段を設ける必要がなく、部品組付け性およびコスト面での向上を図れる。さらに、上記絶縁部材の第1被嵌部および第2被嵌部は、上記第1磁石および上記第2磁石を保護する保護カバーを兼用できる。
【0016】
請求項2記載の発明によれば、上記絶縁部材を絶縁耐熱樹脂により一体成型したので、軽量で安価な絶縁部材により、耐熱性、電気絶縁性などに関する高信頼性も確保できる。
【0017】
請求項3記載の発明によれば、上記第1磁石および上記第2磁石を、共に環状の永久磁石としたので、従来の少なくとも1つは電磁石を用いる場合と比べて、配線や絶縁性に関する取扱が容易になり、上記絶縁部材により上記第1磁石および上記第2磁石を容易に固定できるとともに、磁石からの発熱がないため、耐熱性能および冷却性能の向上を図れる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係るプラズマガンの一実施の形態を示す斜視断面図である。
【図2】同上プラズマガンの陰極冷却構造を示す一部破断の正面図である。
【図3】同上プラズマガンの第1中間電極冷却構造を示す一部破断の正面図である。
【図4】プラズマガンを用いた一般的なイオンプレーティング装置を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明を、図1乃至図3に示された一実施の形態に基いて詳細に説明する。なお、図4に示されたイオンプレーティング装置は、必要に応じて参照する。
【0020】
先ず、図1乃至図3に示された一実施の形態を説明する。
【0021】
図1に示されるように、プラズマガン1は、キャリアガスの供給を受けながら負の電圧が印加される陰極1aと、この陰極1aに対して同軸上に配置されて正の電圧が印加されるプラズマ発生・収束用の中間電極1bとを備えている。
【0022】
上記陰極1aは、ステンレス鋼製の陰極取付基体11の中心部に、アルゴンガスなどの不活性ガスをキャリアガスとして導入するキャリアガス導入口12が設けられ、このキャリアガス導入口12に導電性の取付部材13を介してパイプ状の補助陰極14および円筒状の保護部材15が同心状に取り付けられ、補助陰極14の先端部に主陰極16が取り付けられ、さらに、最も外側に絶縁性の円筒管(ガラス管)17が設けられ、そして、絶縁耐熱樹脂カバー18で絶縁処理された複数の第1の締結部材19により陰極取付基体11が中間電極1bと締結されている。上記陰極取付基体11は、中央部に環状の凹部11aが形成され、この凹部11aの周縁に沿って蓋部11bが溶接されている。
【0023】
上記中間電極1bは、上記陰極1a側に第1中間電極21が配置され、この第1中間電極21に対して上記陰極1aとは反対側に第2中間電極22が配置され、上記第1中間電極21と上記第2中間電極22との間に絶縁部材23が配置され、上記第1中間電極21と上記第2中間電極22とが、絶縁耐熱樹脂カバー24で絶縁処理された複数の第2の締結部材25により相互に締結されている。
【0024】
上記第1中間電極21および上記第2中間電極22は、中心部に穴をそれぞれ有するステンレス鋼製の第1電極取付基体26および第2電極取付基体27を備えている。これらの第1電極取付基体26および第2電極取付基体27は、上記第2の締結部材25で相互に締結されたフランジ部28,28と、これらのフランジ部28,28の中央部から相互に対向する方向に突出された胴部29,29と、これらの胴部29,29とは反対側からフランジ部28,28に環状の凹部31,31がそれぞれ形成され、これらの凹部31,31の周縁に沿って蓋部32,32が溶接されている。
【0025】
上記第1電極取付基体26および上記第2電極取付基体27の中心部の各穴には、筒状の第1電極部材33および第2電極部材34がそれぞれ嵌着され、上記第1電極取付基体26および上記第2電極取付基体27の各胴部29,29の外周面には、環状の第1磁石35および第2磁石36がそれぞれ嵌着されている。これらの第1磁石35および第2磁石36は、共に環状の永久磁石であり、軸方向陰極側にN極が配置され、軸方向反対側にS極が配置されている。
【0026】
上記絶縁部材23は、上記第1磁石35と上記第2磁石36との間に環状の絶縁本体部37が挟まれるように位置するとともに、この絶縁本体部37の外周面部から上記第1磁石35および上記第2磁石36の外周面上に円筒状の第1被嵌部38および第2被嵌部39がそれぞれ一体に突設されて、これらの第1磁石35および第2磁石36にそれぞれ被嵌されている。
【0027】
上記絶縁部材23の上記絶縁本体部37、第1被嵌部38および第2被嵌部39は、絶縁耐熱樹脂により一体成型されたものである。
【0028】
そして、このプラズマガン1は、上記第2中間電極22の上記蓋部32に接合する環状の絶縁部材(図示せず)および図4に示されるように収束用空芯コイル5の内側に設けられた案内筒を介して、真空チャンバ2の側面に取り付けられている。
【0029】
このように真空チャンバ2に接続されたプラズマガン1は、気密性を保持する必要があるので、上記陰極1aの陰極取付基体11と上記円筒管(ガラス管)17の一端面との間にOリングなどのシール部材51が設けられ、上記円筒管(ガラス管)17の他端面と上記第1中間電極21の上記第1電極取付基体26との間にOリングなどのシール部材52が設けられ、上記第1中間電極21および上記第2中間電極22の各胴部29,29と上記絶縁部材23の上記絶縁本体部37との間にOリングなどのシール部材53,53が設けられ、上記蓋部32に接合する環状の絶縁部材(図示せず)および上記案内筒の端面部にも上記シール部材51,52と同様のシール部材が設けられている。
【0030】
さらに、上記プラズマガン1は、放電により高温に加熱されるので、効率よく冷却するために、上記陰極1aの上記陰極取付基体11内に第1の冷却手段61が設けられ、上記第1中間電極21の上記第1電極取付基体26内に第2の冷却手段62が設けられ、上記第2中間電極22の上記第2電極取付基体27内に第3の冷却手段63が設けられている。
【0031】
図2は第1の冷却手段61を示し、上記陰極取付基体11にあってキャリアガス導入口12の周囲に環状の冷却流体通路溝64が設けられ、この冷却流体通路溝64の一部から半径方向外方へ拡大するように径方向拡大凹溝65が形成され、この径方向拡大凹溝65を2等分するように冷却流体通路溝64から径方向拡大凹溝65にわたって半径方向の仕切板66が設けられ、この仕切板66の一側に位置する径方向拡大凹溝65aに対し蓋部11bに冷却流体入口部67が設けられ、仕切板66の他側に位置する径方向拡大凹溝65bに対し蓋部11bに冷却流体出口部68が設けられている。
【0032】
上記仕切板66より冷却流体出口部68側の冷却流体通路溝64中であって上記冷却流体出口部68よりやや上流となる位置には、爪形の冷却流体案内部69が冷却流体の流れを尖端で切り裂くように周方向に設置されている。
【0033】
図3は第2の冷却手段62を示し、上記第1電極取付基体26にあって上記胴部29に設けられた上記第1電極部材33が嵌合する穴の周囲に環状の冷却流体通路溝71が設けられ、この冷却流体通路溝71の一部から半径方向外方へ拡大するように径方向拡大凹溝72が形成され、この径方向拡大凹溝72を2等分するように冷却流体通路溝71から径方向拡大凹溝72にわたって半径方向の仕切板73が設けられ、この仕切板73の一側に位置する径方向拡大凹溝72aに対し上記第1電極取付基体26のフランジ部28に冷却流体入口部74が設けられ、仕切板73の他側に位置する径方向拡大凹溝72bに対し上記第1電極取付基体26のフランジ部28に冷却流体出口部75が設けられている。
【0034】
上記仕切板73より冷却流体出口部75側の冷却流体通路溝71中であって上記冷却流体出口部75よりやや上流となる位置には、爪形の冷却流体案内部76が冷却流体の流れを尖端で切り裂くように周方向に設置されている。
【0035】
上記第2中間電極22の上記第2電極取付基体27内に設けられた第3の冷却手段63は、上記第2の冷却手段62と同様の構造であるので、説明を省略する。
【0036】
次に、上記中間電極1bを組み立てる場合は、上記第1電極取付基体26および上記第2電極取付基体27の各胴部29,29の外周面に環状の上記第1磁石35および上記第2磁石36をそれぞれ嵌着し、上記第1磁石35と上記第2磁石36との間に上記絶縁部材23の絶縁本体部37を挟むとともに、上記第1磁石35および上記第2磁石36の外周面上に上記絶縁部材23の第1被嵌部38および第2被嵌部39をそれぞれ被嵌した状態で、上記第1電極取付基体26および上記第2電極取付基体27の各フランジ部28,28を上記第2の締結部材25で相互に締結することで、上記絶縁部材23、上記第1磁石35および上記第2磁石36を同時に固定するとともに、上記絶縁部材23の第1被嵌部38および第2被嵌部39により、上記第1磁石35および上記第2磁石36を保護する。
【0037】
次に、図1乃至図3に示された一実施の形態の作用効果を説明する。
【0038】
上記陰極1aの補助陰極14にアルゴンガスなどのキャリアガスを供給しつつ、図4に示された放電電源3から上記補助陰極14および上記主陰極16に負の電圧を印加するとともに、放電電源3から上記第1中間電極21の第1電極部材33および上記第2中間電極22の第2電極部材34に正の電圧を印加することで、これらの正負の電極間で放電がなされ、プラズマが発生する。
【0039】
このプラズマは、環状に形成された第1磁石35および第2磁石36により収束しつつ、真空チャンバ2内に発射され、図4に示されるように真空チャンバ2内にマグネット6とともに陽極(ハース)として設置されたチタンなどの蒸着金属7に照射され、この蒸着金属7を溶解・蒸気化させる。このとき、+イオン化された蒸着金属粒子は、真空チャンバ2内でイオン集積電源8により負の電圧が印加されたワークWの表面に引き寄せられて密着され金属被膜となる。
【0040】
上記放電で加熱された上記陰極1aを冷却する第1の冷却手段61は、上記陰極取付基体11に設けられた冷却流体入口部67から環状の冷却流体通路溝64に流入した冷却流体が、この冷却流体通路溝64に沿って上記陰極取付基体11の中央部周囲をほぼ一周旋回した後、冷却流体出口部68から外部へ排出されるので、上記陰極取付基体11の中央部に接続された取付部材13を介して補助陰極14、保護部材15および主陰極16などを効率良く冷却することができる。その際、冷却流体が半径方向の仕切板66に衝突する直前に、爪形の冷却流体案内部69が冷却流体の流れ方向を冷却流体出口部68側へ変化させるので、冷却流体が外部へ円滑に排出され、冷却効率が向上する。
【0041】
同様に、上記放電で加熱された上記第1中間電極21および上記第2中間電極22を冷却する第2の冷却手段62および第3の冷却手段63は、上記第1電極取付基体26および上記第2電極取付基体27の各フランジ部28に設けられた冷却流体入口部74から各胴部29に設けられた環状の冷却流体通路溝71に流入した冷却流体が、この冷却流体通路溝71に沿って第1電極部材33および第2電極部材34の各周囲をほぼ一周旋回した後、冷却流体出口部75から外部へ排出されるので、第1電極部材33および第2電極部材34をそれぞれ効率良く冷却することができる。その際、冷却流体が半径方向の仕切板73に衝突する直前に、爪形の冷却流体案内部76が冷却流体の流れ方向を冷却流体出口部75側へ変化させるので、冷却流体が外部へ円滑に排出され、冷却効率が向上する。
【0042】
さらに、上記第1電極取付基体26および上記第2電極取付基体27の各フランジ部28から各胴部29にわたってこれらの内部にそれぞれ環状の凹部31および冷却流体通路溝71を設けたので、上記第1電極取付基体26および上記第2電極取付基体27を全体的に効率よく冷却でき、第1電極部材33および第2電極部材34だけでなく、上記第1磁石35および上記第2磁石36も効率よく冷却できる。
【0043】
また、上記第1の冷却手段61は、冷却流体通路溝64の一部から半径方向外方へ拡大するように形成された径方向拡大凹溝65に対し冷却流体入口部67および冷却流体出口部68が設けられ、また、第2の冷却手段62および第3の冷却手段63は、冷却流体通路溝71の一部から半径方向外方へ拡大するように形成された径方向拡大凹溝72に対し冷却流体入口部74および冷却流体出口部75が設けられているので、薄型の陰極取付基体11、第1電極取付基体26および第2電極取付基体27に対して、十分な流量の冷却流体を供給することができる。
【0044】
そして、上記第1中間電極21および上記第2中間電極22は、上記第1電極取付基体26および上記第2電極取付基体27の各胴部29,29の外周面に環状の上記第1磁石35および上記第2磁石36をそれぞれ嵌着し、上記第1中間電極21と上記第2中間電極22との間に配置された絶縁部材23は、上記第1磁石35と上記第2磁石36との間に位置する絶縁本体部37から一体に突設された第1被嵌部38および第2被嵌部39を上記第1磁石35および上記第2磁石36の外周面上にそれぞれ被嵌し、上記第1電極取付基体26および上記第2電極取付基体27の各フランジ部28,28を上記第2の締結部材25で相互に締結するようにしたので、これらのフランジ部28,28間に、上記絶縁部材23とともに上記第1磁石35および上記第2磁石36を同時に固定することができ、従来のような個別の磁石固定手段を設ける必要がなく、部品組付け性およびコスト面での向上を図れる。さらに、上記絶縁部材23の第1被嵌部38および第2被嵌部39は、上記第1磁石35および上記第2磁石36を保護する保護カバーを兼用できる。
【0045】
また、上記絶縁部材23を絶縁耐熱樹脂により一体成型したので、軽量で安価な絶縁部材23により、耐熱性、電気絶縁性などに関する高信頼性も確保できる。
【0046】
さらに、上記第1磁石35および上記第2磁石36を、共に環状の永久磁石としたので、従来の少なくとも1つは電磁石を用いる場合と比べて、配線や絶縁性に関する取扱が容易になり、上記絶縁部材23により上記第1磁石35および上記第2磁石36を容易に固定できるとともに、磁石からの発熱がないため、耐熱性能および冷却性能の向上を図れる。
【0047】
なお、本発明のプラズマガン1は、イオンプレーティング法だけでなく、他のPVD(例えば、アシスト蒸着スパッタ法)や、CVDにおけるプラズマ発生器として利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、プラズマガンの製造業および販売業などにおいて利用可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 プラズマガン
1a 陰極
1b 中間電極
21 第1中間電極
22 第2中間電極
23 絶縁部材
25 締結部材
26 第1電極取付基体
27 第2電極取付基体
28 フランジ部
29 胴部
33 第1電極部材
34 第2電極部材
35 第1磁石
36 第2磁石
37 絶縁本体部
38 第1被嵌部
39 第2被嵌部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャリアガスの供給を受けながら負の電圧が印加される陰極と、この陰極に対して同軸上に配置されて正の電圧が印加されるプラズマ発生・収束用の中間電極とを備え、
上記中間電極は、
上記陰極側に配置された第1中間電極と、
上記第1中間電極に対して上記陰極とは反対側に配置された第2中間電極と、
上記第1中間電極と上記第2中間電極との間に配置された絶縁部材と、
上記第1中間電極と上記第2中間電極とを相互に締結する締結部材とを備えたプラズマガンにおいて、
上記第1中間電極および上記第2中間電極は、
上記締結部材で相互に締結されたフランジ部とこれらのフランジ部の中央部から相互に対向する方向に突出された胴部とをそれぞれ有するとともに中心部に穴をそれぞれ有する導電性の第1電極取付基体および第2電極取付基体と、
上記第1電極取付基体および上記第2電極取付基体の中心部の各穴にそれぞれ嵌着された筒状の第1電極部材および第2電極部材と、
上記第1電極取付基体および上記第2電極取付基体の各胴部の外周面にそれぞれ嵌着された環状の第1磁石および第2磁石とを備え、
上記絶縁部材は、
上記第1磁石と上記第2磁石との間に位置する絶縁本体部と、
上記絶縁本体部から上記第1磁石および上記第2磁石の外周面上にそれぞれ一体に突設されて上記第1磁石および上記第2磁石にそれぞれ被嵌された第1被嵌部および第2被嵌部と
を具備したことを特徴とするプラズマガン。
【請求項2】
上記絶縁部材の上記絶縁本体部、第1被嵌部および第2被嵌部は、絶縁耐熱樹脂により一体成型された
ことを特徴とする請求項1記載のプラズマガン。
【請求項3】
上記第1磁石および上記第2磁石は、共に環状の永久磁石である
ことを特徴とする請求項1または2記載のプラズマガン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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