説明

プラズマシャッター形成装置および形成方法

【課題】レーザー駆動放射線発生システムにおいて高密度プラズマを生成した際に反射してレーザーシステムの上流に戻る戻り光による光学素子の損傷を防止するプラズマシャッター形成装置および形成方法を提供する。
【解決手段】レーザーパルス5をターゲット2に照射して高密度プラズマ3を生成させることにより放射線を発生、加速させるシステムにおいて、高密度プラズマ3に吸収されないでシステム上流への戻り光4となったレーザーパルスを遮断するためにプラズマシャッター11を形成する装置であって、プラズマシャッター用ターゲット10と、プラズマシャッター用レーザー照射部を有し、前記プラズマシャッター用レーザー照射部からのレーザーパルスをプラズマシャッター用ターゲット10に照射して高密度プラズマを生成させプラズマシャッター11を形成し、戻り光4となったレーザーパルスを遮断させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターゲットにレーザーパルスを照射して粒子線(陽子、イオン等)、X線、テラヘルツ波等の放射線を発生させる際に、戻り光となったレーザーパルスを効果的に遮断するプラズマシャッターを形成する装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、レーザー光をターゲットに照射して、陽子線や炭素イオン線等の粒子線を発生させて、人体患部に照射して診断や治療を行う技術が急速に進んでいる。本出願人は、特許文献1において、放射線医によるフィードバックの掛かった治療と診断をリアルタイムに同一フロアで実現することを可能とする粒子線治療装置を提案した。
【0003】
この粒子線治療装置は、粒子線発生部を極めてコンパクト化して、診断支援部(PET、X線CTやMRI、超音波検査装置)と同一フロアに設置して使用することができ、医療現場に直接配置して診断および診療に使用することができる。図4に、この粒子線治療装置における粒子線発生部の構成例を模式的に示す。
【0004】
図4の陽子線発生機構は、所要の陽子線を得るためのレーザー光25を発生するレーザー装置21と、発生したレーザー光25を複数のレンズならびにミラー等の光学部品により伝送するレーザービーム伝送装置22と、伝送されたレーザー光25を陽子線発生ターゲットに焦点合わせするレーザービーム集光部23と、レーザービーム集光部23で焦点合わせ等を行ったレーザー光25をターゲットに照射し、ターゲットから所望の陽子線26を発生させる陽子線発生部24を備える。
【0005】
この例は、陽子線発生機構を構成するレーザー装置21〜陽子線発生部24の具体的な構成、特に、陽子線発生ターゲットである薄膜テープターゲットにレーザー光25を照射して陽子線26を発生させる陽子線発生部24の部分を詳細に示したものである。
【0006】
レーザービーム集光部23を構成する集光ミラー23aの寸法は、約200mm程度であり、非常に小型の陽子線発生機構を実現するのに好都合である。特に小型化を実現するための技術的要素は、陽子線発生部24として、薄膜テープターゲット24aを採用し、レーザー光25を陽子線発生用ターゲットである薄膜テープターゲット24aに照射し、陽子線26を発生させることを実用化した点である。前記薄膜テープターゲット24aは、テープ供給リール24bに巻回収容したものをテープ巻取りリール24cに巻き取るように移送し、レーザー光照射位置では該レーザー光照射位置を挾んで設置した2本の回転ロール24dに当接して位置決めする構成である。
【0007】
上記構成において、レーザー装置21によって必要なパワーおよびビーム径等のレーザー光25を発生させる。発生したレーザー光25は、レーザービーム伝送部22とレーザービーム集光部23を通して薄膜テープターゲット24aのテープターゲット照射位置Pに焦点を合わせ照射される。レーザー光25の照射によりプラズマが生成される。その際、レーザー光25はプラズマには50%程度吸収され、残りのレーザー光25は戻り光となり、レーザーシステムの上流側に戻り光として戻る。
【0008】
一方、最近では小型の医療用レーザー駆動陽子線発生装置の陽子線生成用レーザーの開発も進められており、そのためにはエネルギーのピーク強度をより高めたレーザーパルスが必要である。このようなレーザーパルスを得るために、チャープパルス増幅(以下、CPAと称する)法が用いられている。図5に、CPA法を用いた従来のレーザー駆動陽子線発生装置の構成を模式的に示す。なお、CPA法は、上記の図4に示した装置にも適用可能である。
【0009】
図5において、1は圧力が1Pa以下の空間であり、1’は1Paより高い圧力空間であり、大気圧も含む。2は陽子線を発生、加速するための陽子線発生用ターゲット、3はレーザー生成プラズマ、4は戻り光、5は陽子線発生用レーザーパルス、6はミラーやレンズからなる集光光学素子、7は偏光板などからなる光学素子、8は回折格子とレーザー反射光学素子を含むパルス圧縮器、9はレーザー透過光学素子である。
【0010】
図示しないレーザーパルス発生装置から出射された陽子線発生用レーザーパルス5は、レーザー透過光学素子9より高真空部1に入射し、回折格子とレーザー反射光光学素子を含むパルス圧縮器8、光学素子7、集光光学素子6からなる光学系を通り、陽子線発生用ターゲット2に集光する。陽子線発生用レーザーパルス5が陽子線発生用ターゲット2に集光すると高密度のレーザー生成プラズマ3が生成される。そのとき、陽子線発生用レーザーパルス5はレーザー生成プラズマ3に50%程度吸収され、残りのレーザーパルスは戻り光4としてレーザーシステムの上流(回折格子とレーザー反射光学素子を含むパルス圧縮器から発振器)まで戻る。
【0011】
以上のようにして、従来のレーザー駆動粒子線発生装置においては、陽子やイオンが生成、加速され治療や診断に供されてきた。ところが、この種の従来の装置においては、プラズマを生成したときの戻り光がレーザーシステムの上流に戻るため、光学素子の損傷を招くといった問題があった。特に、CPA法を用いたレーザーシステムでは、パルス圧縮器における回折格子とレーザー反射光学素子の損傷が深刻な問題であった。
【0012】
そこで、従来、戻り光対策として、ファラデー素子やポッケルスセルなどの偏光を利用した光学素子を用いる手法を採用していた。
【0013】
しかしながら、ファラデー素子やポッケルスセルなどの光学素子は、大型化が困難であるため、レーザーパルスのビーム径が大きくなる回折格子とレーザー反射光学素子を含むパルス圧縮器の直後にこれらの光学素子を導入することが困難である。ファラデー素子ではダメージ閾値とCPA法を用いた場合のパルス幅伸長の観点からもその導入は困難である。さらに、ポッケルスセルは電気信号をトリガー源としているため立ち上がり時間が最短でも約50ps程度となり、戻り光を遮断するには不十分である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】特開2008−22994号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、レーザー駆動放射線発生システムにおいて高密度プラズマを生成した際に反射してレーザーシステムの上流に戻る戻り光による光学素子の損傷を防止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、上記課題を解決するため、第1に、レーザーパルスをターゲットに照射して高密度プラズマを生成させることにより放射線を発生、加速させるシステムにおいて、前記高密度プラズマに吸収されないでシステム上流への戻り光となったレーザーパルスを遮断するためにプラズマシャッターを形成する装置であって、プラズマシャッターを形成するために配置されるプラズマシャッター用ターゲットと、前記プラズマシャッター用ターゲットにレーザーパルスを照射するためのプラズマシャッター用レーザー照射部を有し、前記プラズマシャッター用レーザー照射部からのレーザーパルスを前記プラズマシャッター用ターゲットに照射して高密度プラズマを生成させプラズマシャッターを形成し、前記の戻り光となったレーザーパルスを遮断させることを特徴とするプラズマシャッター形成装置を提供する。
【0017】
また、第2に、上記第1の発明において、プラズマシャッターを形成する高密度プラズマの密度が1017〜1023cm−3であることを特徴とするプラズマシャッター形成装置を提供する。
【0018】
また、第3に、レーザーパルスをターゲットに照射して高密度プラズマを生成させることにより放射線を発生、加速させるシステムにおいて、前記高密度プラズマに吸収されないでシステム上流への戻り光となったレーザーパルスを遮断するためにプラズマシャッターを形成する方法であって、プラズマシャッター用レーザーパルスをプラズマシャッター用ターゲットに照射して高密度プラズマを生成させプラズマシャッターを形成し、前記の戻り光となったレーザーパルスを遮断させることを特徴とするプラズマシャッター形成方法を提供する。
【0019】
さらに、第4に、上記第3の発明において、プラズマシャッターを形成する高密度プラズマの密度が1017〜1023cm−3であることを特徴とするプラズマシャッター形成方法を提供する。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、上記構成ないし手法を採用したので、レーザー駆動放射線発生システムにおいて高密度プラズマを生成した際に反射してレーザーシステムの上流に戻る戻り光をプラズマシャッターにより吸収および反射させて遮断する。したがって、戻り光による光学素子の損傷を防止することが可能となる。
【0021】
ここでは放射線は、たとえば粒子線、X線、テラヘルツ波等も含むものである。また粒子線は、たとえば陽子線、炭素イオン線などのイオン線および中性子線、電子線を含むものである。なおX線は波長0.01〜150nm、テラヘルツ波は波長1μm以上の電磁波である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るプラズマシャッター形成装置を備えたレーザー駆動陽子線発生システムの構成を模式的に示す図である。
【図2】レーザー生成プラズマの成長時間と持続時間およびプラズマシャッター使用可能領域の関係例を示す図である。
【図3】光学遅延素子の一例を模式的に示す図である。
【図4】従来の粒子線治療装置における陽子線発生機構の構成を模式的に示す図である。
【図5】CPA法を用いた従来のレーザー駆動陽子線発生装置の構成を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明について詳述する。
【0024】
本発明は、レーザーパルスをターゲットに照射して高密度プラズマを生成させることにより放射線を発生させるレーザー駆動放射線発生システムにおいて、前記高密度プラズマに吸収されないでシステム上流への戻り光となったレーザーパルスを遮断するためにプラズマシャッターを形成する装置に係り、プラズマシャッターを形成するために配置されるプラズマシャッター用ターゲットと、前記プラズマシャッター用ターゲットにレーザーパルスを照射するためのプラズマシャッター用レーザー照射部を有し、前記プラズマシャッター用レーザー照射部からのレーザーパルスを前記プラズマシャッター用ターゲットに照射して高密度プラズマを生成させプラズマシャッターを形成し、前記の戻り光となったレーザーパルスを遮断させることを特徴とするものである。
【0025】
図1は、本発明の一実施形態に係るプラズマシャッター形成装置を備えたレーザー駆動陽子線発生システムの構成を模式的に示す図である。図1において、図3と同様な要素には同じ符号を付してある。
【0026】
陽子線発生用ターゲット2は、レーザー生成プラズマ3を生成し、陽子を発生、加速するためのものであり、典型的には固体が使用される。たとえば、Al、Cu、C、Ti、W、ポリエチレン系高分子材料等が好適に使用される。これらは図4の装置で説明したようにテープ状で使用することができるので好ましい。それ以外では、アルカリ金属、アルカリ土類金属および放射性物質を除く、常温で固体状態が維持できる物質を使用することができる。ただし、毒性が高いCd、As、TeおよびTlは使用を差し控えることが望ましい。また、希ガスを冷却して生成可能なクライオターゲット(特開2003−303696号公報(特許第3759089号))も使用することができる。気体ターゲットを用いる際は、細管に背圧を掛けたノズルを用いる。さらに、液滴ターゲット(特開2004−235158号公報(特許第3943089号))やクラスターターゲットも使用することができる。
【0027】
レーザー生成プラズマ3は、陽子線発生用レーザーパルス5を陽子線発生用ターゲット2に照射した際にその表面で生成される高密度プラズマである。レーザー生成プラズマ3は、陽子線発生用レーザーパルス5のパルス幅の時間だけ存在し、その持続時間は、陽子線発生用レーザープラズマ5の時間幅に依存し、その成長時間は約1ps程度と非常に速い時間で成長可能である。レーザー生成プラズマ3の密度は1017〜1023cm−3程度である。レーザー生成プラズマ3が生成される際に吸収されないレーザーパルスは50%程度であり、吸収されないレーザーパルスは戻り光4として反射される。
【0028】
陽子線発生用レーザーパルス5は、図示しないレーザー装置から出射し、本実施形態の光学系でCPA増幅される。陽子線発生用ターゲット2に照射される陽子線発生用レーザーパルス5の強度は1015〜1023Wcm−2程度、エネルギーは0.01〜10J/pulse程度、パルス幅は10fs〜20ns程度、繰り返しは0.1〜1000Hz程度である。レーザーとしては、CPA増幅できるレーザーでイッテルビウムヤグ(Yb:YAG)レーザー、チタンサファイア(Ti:sapphire)レーザー、ネオジウムガラス(Nd:glass)レーザー、クリプトンフロライド(KrF)レーザーおよび色素レーザーを用いることができ、またネオジウムヤグ(Nd:YAG)レーザーや炭酸ガス(CO)レーザーなども場合によっては用いることができる。
【0029】
集光光学素子6は、陽子線発生用レーザーパルス5を陽子線発生用ターゲット2の面上の照射点に集光させるもので、ミラーやレンズを用いることができる。
【0030】
光学素子7は、陽子線発生用レーザーパルス5を偏光させるために使用され、回折格子とレーザー反射光学素子を含むパルス圧縮器8は、CPA増幅におけるパルス圧縮のために使用され、レーザー透過光学素子9は、陽子線発生用レーザーパルス5を入射させるために使用される。また、右側のレーザー反射光学素子16は陽子線発生用レーザーパルス5の光路の向きを変更させる役割を行う。
【0031】
プラズマシャッター用ターゲット10は、プラズマシャッター形成装置を構成する一要素であり、高密度プラズマよりなるプラズマシャッター11を形成するためのものであり、ターゲット材料としては、陽子線発生用ターゲット2で用いるものと同様なものを使用することができる。プラズマシャッター用ターゲット10は、陽子線発生用ターゲット2と集光光学素子6との間の任意の場所に設置することができ、陽子線発生用レーザーの光路を高密度プラズマが遮断できる位置に設置する。図1に示すようにプラズマシャッター用レーザー入射方向から陽子線発生用レーザー照射方向に向かって陽子線発生用レーザーを跨いだ任意の位置に設置可能である。その設置箇所は1箇所でもよいし、複数箇所でもよい。また、集光光学素子6と回折格子とレーザー反射光学素子を含むパルス圧縮器8の間に設置してもよい。プラズマシャッター用ターゲット10の一例を示すと、1cm×1cm、厚さ100nm以上のものを使用することができ、戻り光4が遮断できる場合はこのサイズでなくてもよい。
【0032】
プラズマシャッター11は、プラズマシャッター用レーザーパルス12をプラズマシャッター用ターゲット10に照射した際にその表面で生成される高密度プラズマである。プラズマシャッター11を構成する高密度プラズマも、レーザー生成プラズマ3と同様に、プラズマシャッター用レーザーパルス12のパルス幅の時間だけ存在し、その持続時間は、プラズマシャッター用レーザーパルス12の時間幅に依存し、その成長時間は約1ps程度と非常に短い時間で成長可能である。プラズマの密度は1017〜1023cm−3の間で制御可能であり、プラズマ密度は、レーザー光を用いた干渉計による回折縞のシフトにより測定可能である。この密度領域のプラズマは、戻り光4を十分吸収することで遮断することが可能である。図2に、プラズマシャッター11の生成時間と持続時間およびプラズマシャッター使用可能領域の関係例を示す。プラズマシャッター11が約1ps程度で成長し、戻り光4を遮断できる密度になった後、20ns程度持続する。
【0033】
プラズマシャッター用レーザーパルス12は、上記した図示しないレーザー装置から出射されたレーザーパルスの一部を分岐させたものを用いることができ、プラズマシャッター11を形成するため、レンズ等からなるプラズマシャッター用集光光学素子13により集光され、プラズマシャッター用ターゲット10に照射される。この場合、チャープパルス増幅(CPA)レーザーシステムにおいて回折格子とレーザー反射光学素子を含むパルス圧縮器8を用いてパルス圧縮する直前のレーザーパルスの一部を取り出して使用することが望ましい。プラズマシャッター用レーザーパルス12の照射強度は約10〜1023Wcm−2、エネルギーは0.1mJ/pulse以上、パルス幅は10fs以上、繰り返しは陽子線発生用レーザーパルス5と同じ繰り返しであれば適宜の値のものを利用できる。プラズマシャッター用レーザーパルス12の集光レーザービーム直径は、点集光の場合10〜500μm程度、線集光の場合は幅20μm、長さ0.5〜3mm程度とすることができるが、戻り光4が十分遮断されるのであれば、このサイズに限定されない。
【0034】
プラズマシャッター用レーザーパルス12として、上記した図示しないレーザー装置から出射されたレーザー光の一部を用いるために、レーザー光はレーザー光分割光学素子(ビームスプリッター)14で分割され、光学遅延素子15で陽子線発生用レーザーパルス5とのタイミングを調整するため光学遅延された後、ミラー等からなるレーザー反射光学素子16で光路の向きを変更されて、プラズマシャッター用集光光学素子13へと導かれる。図3に光学遅延素子15の一例を模式的に示す。この例は、ステージの上にミラーを設置し、ステージをレールの上で矢印方向に動かし、光路の短長をつけることでシャッター用レーザーパルス12の到着時間を変えるものである。ミラーを用いる代わりにプリズム等を用いてもよい。
【0035】
なお、プラズマシャッター用レーザーパルス12、時間的に0.5ns程度のジッターで別のレーザーシステムを同期動作できる場合は、これを用いることも可能である。すなわち、たとえばCPAレーザーシステムの発振器レーザー光を高速のフォトダイオードで検出して電気信号を作り出し、その信号の一部を分周した電気信号を用いてプラズマシャッター用レーザーを外部トリガーで動作させる。このときのレーザーエネルギー、集光強度、パルス幅は、上記の一部取り出した場合と同じ条件である。
【0036】
プラズマシャッター11は、陽子線発生用レーザーパルス5が陽子線発生用ターゲット2に照射される際にはその光路を妨げない。陽子線発生用レーザーパルス5が陽子線発生用ターゲット2に到達したとき、プラズマシャッター用レーザーパルス12がプラズマシャッター用ターゲット10に照射されて、高密度のプラズマが生成され、プラズマシャッター11が形成される。陽子線発生用レーザーパルス5が陽子線発生用ターゲット3に集光されてプラズマが生成したときから、プラズマシャッター用レーザー12がプラズマシャッター用ターゲット10に集光される時間差は−1ns〜1ns程度の時間領域である。しかし戻り光を防ぐことができれば、この時間領域に限定されない。
【0037】
したがって、プラズマシャッター11は、陽子線発生用レーザーパルス5を陽子線発生用ターゲット2に集光した際に生成するプラズマに吸収されないレーザーパルスによる戻り光4を効果的に遮断することができる。これにより、戻り光4による光学素子(回折格子とレーザー反射光学素子を含むパルス圧縮器、ミラーや波長板など)への損傷を低減させることが可能となる。
【符号の説明】
【0038】
1 1Pa以下の圧力空間
1’ 1Paより高い圧力空間
2 陽子線発生用ターゲット
3 レーザー生成プラズマ
4 戻り光
5 陽子線発生用レーザーパルス
6 集光光学素子
7 光学素子
8 回折格子とレーザー反射光学素子を含むパルス圧縮器
9 レーザー透過光学素子
10 プラズマシャッター用ターゲット
11 プラズマシャッター
12 プラズマシャッター用レーザーパルス
13 プラズマシャッター用集光光学素子
14 レーザー光分割光学素子
15 光学遅延素子
16 レーザー反射光学素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーパルスをターゲットに照射して高密度プラズマを生成させることにより放射線を発生、加速させるシステムにおいて、前記高密度プラズマに吸収されないでシステム上流への戻り光となったレーザーパルスを遮断するためにプラズマシャッターを形成する装置であって、
プラズマシャッターを形成するために配置されるプラズマシャッター用ターゲットと、
前記プラズマシャッター用ターゲットにレーザーパルスを照射するためのプラズマシャッター用レーザー照射部を有し、
前記プラズマシャッター用レーザー照射部からのレーザーパルスを前記プラズマシャッター用ターゲットに照射して高密度プラズマを生成させプラズマシャッターを形成し、前記の戻り光となったレーザーパルスを遮断させることを特徴とするプラズマシャッター形成装置。
【請求項2】
プラズマシャッターを形成する高密度プラズマの密度が1017〜1023cm−3であることを特徴とする請求項1に記載のプラズマシャッター形成装置。
【請求項3】
レーザーパルスをターゲットに照射して高密度プラズマを生成させることにより放射線を発生、加速させるシステムにおいて、前記高密度プラズマに吸収されないでシステム上流への戻り光となったレーザーパルスを遮断するためにプラズマシャッターを形成する方法であって、
プラズマシャッター用レーザーパルスをプラズマシャッター用ターゲットに照射して高密度プラズマを生成させプラズマシャッターを形成し、前記の戻り光となったレーザーパルスを遮断させることを特徴とするプラズマシャッター形成方法。
【請求項4】
プラズマシャッターを形成する高密度プラズマの密度が1017〜1023cm−3であることを特徴とする請求項3に記載のプラズマシャッター形成方法。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−108641(P2011−108641A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−237682(P2010−237682)
【出願日】平成22年10月22日(2010.10.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成19年度及び平成20年度文部科学省「先端融合領域イノベーション創出拠点の形成「光医療産業バレー」拠点創出」(委託業務)産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(505374783)独立行政法人 日本原子力研究開発機構 (727)
【出願人】(000236436)浜松ホトニクス株式会社 (1,479)
【Fターム(参考)】