説明

プラズマジェットを用いた金属ナノ粒子の合成及び表面処理

【課題】金属析出、有機物の反応、フィルムはもとより閉所、管内壁などの表面処理をそれぞれ独立に、若しくは組み合わせて行え、さらに、これらのプラズマ化学反応のプラズマの種々のパラメータを制御した上で、電源スイッチにより反応速度、反応収率、生成物形態を任意に制御できるプラズマジェットを用いた金属粒子の合成法と表面処理法を提供する。
【解決手段】大気圧近傍の圧力下において金属若しくは絶縁体管に高電圧電極を取り付け、この管中にガスを流しながら、低周波数で高電圧を印加させることにより発生させたプラズマと、還元反応によって金属となる化合物若しくはその溶液を反応させることにより金属粒子を合成する、又は表面修飾を行う。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【0002】
【0003】
【0004】
【産業上の利用分野】
【0005】
本発明は低温の大気圧プラズマジェットを用いた金属微粒子の合成法及び金属等表面処理に関すものである。即ち、プラズマジェットという高いエネルギーを有する電離気体の状態をガス圧力と電界で制御することにより、プラズマによる化学反応をコントロールし、金属粒子の粒径の制御、析出金属の表面処理、閉所、流路内のコーティングなどに応用できるものである。全体としては低温だが反応性に富む高エネルギー成分を有している非平衡状態にあるプラズマを、液体の蒸気圧以上の圧力にて、すなわち大気圧程度の圧力下にて発生させ、還元反応により金属を析出し得る化合物を含む液体へ接触させることにより、液体中の金属イオンを還元し金属若しくは金属酸化物、金属窒化物を合成する。例えば、界面活性剤のような表面改質剤と混合しながらプラズマ反応で金属析出することで析出と同時に金属表面を改質剤で修飾することが可能であり、高い溶媒分散安定性を有する金属コロイドを短時間に合成することが可能である。また、還元剤や酸化剤というような薬剤を用いないため純粋な金属粒子が得られるなどのメリットもある。これら金属ナノ粒子は反応触媒、バイオ産業における診断薬、イメージング材料へ応用が可能である。
【0006】
プラズマジェットにより流路中でプラズマを発生させることも可能であることから、プラズマジェット中に還元反応によって金属となる化合物溶液をミストとして導入することで反流路中の修飾も可能である。これら流路は様々な反応場としてマイクロリアクターなどとしての応用も可能である。
【背景技術】
【0007】
【0008】
プラズマは気体原子の電離によって生じる電子と陽イオン、さらにこれらがその起源となって生成するラジカル、励起種、光子などを含など様々なエネルギー活性種を有することから古くから化学反応へ応用されてきた。プラズマ中のエネルギーは数十eV程度にすることは容易であり、その反応性は注目されている。しかしながらそのエネルギーの高さは例えば有機反応には向かず、有機物の分解、酸化の原因となっていた。これらプラズマは一般に熱プラズマと呼ばれている。このプラズマは、ダイヤモンド加工、金属窒化物の合成などに応用されている。これに対して低温プラズマは電子のみが高いエネルギーを有するため反応系の温度は上がらず、このため高温に弱い有機反応への応用も可能となった。一般に我々が目にするネオン管や蛍光灯はこの種のプラズマに分類される。この低温プラズマは有機反応への応用が可能で、プラズマ重合の分野を切り開いた。一例としてはベンゼンの重合など従来の化学反応では直接重合ができなかった反応も可能にした。また、程よく有機物の結合を切断することから表面改質やエッチングにもちいられたりしている。しかしながら、これら装置は一般には大掛かりで、そもそもが真空チャンバーを必要とするものが多い。これは安定なプラズマ状態を作るためにはある程度の真空度で放電させることが必要なためで、従来のプラズマ重合反応器は真空チャンバーを有し、適当な真空度で気体をプラズマ化しておき、その中に気化状態のモノマーガスを導入するものであった。有機物を反応させるため低温プラズマであるグロー放電を用いるが、このため多くの気体は電離せずに低エネルギー状態で存在する(非平衡プラズマ)。このため有機物の分解は起こらず反応を行うことができる。この場合安定なグロー放電を形成するために高周波若しくはマイクロ波電源が用いられる。
【0009】
上記プラズマ装置は真空チャンバー内で行うため装置としては大掛かりとなっていたが近年、大気中で低温なプラズマを発生させることが可能となりその応用範囲は更に広がった。大気圧プラズマはいくつかの種類に分類される。先ず大気中で非平衡プラズマを形成する方法として電極間に絶縁体を挿入する「バリア放電タイプ」、著しい不平等電界を形成する「コロナ放電タイプ」、短パルス電圧を印加するパルス放電タイプに大別される。同じような放電で大気圧グロー放電もあるが電極間に誘電体を挿入したバリア型電極で形成される過渡的パルス放電であることからバリア放電タイプと考えるのが一般である。
【0010】
これら放電形式を用いた化学反応は既に多くの事例が紹介されている。例えば、誘電体バリア放電を用いる場合は次のような技術が提唱されている。即ち、印加電圧は数十から数百kHzの正弦波高電圧とし、上部電極には銅、下部電極には誘電体を挿入、その電極間は1mm程度である。この電極に交流電圧を印加すると、ストリーマー形式の絶縁破壊が生じることからフィラメント状のプラズマが時間、空間的にランダムに形成される。このプラズマは現在、オゾン生成、エキシマランプ、排ガス処理、有害物質分解、除菌、殺菌、燃料改質にもちられ、更に最近は気相反応にも応用されている。(例えば非特許文献1、非特許文献2参照)
【0011】
一方、大気圧グロー放電は誘電体バリア放電と同様の電極を形成するが、ガス種、印加電圧の周波数、誘電体材料のギャップ長、電極形状によって空間的に広がったグロー放電状態になる。これはカーボンナノチューブの合成などに用いられている(例えば非特許文献3参照)。
【0012】
これら大気圧プラズマを用いたプラズマ重合の事例としては、上記プラズマ中に有機モノマーをミスト状にして導入することで達成できる。例えば、アセチレン系モノマー重合膜形成としては、例えば、一定間隔で対向する1対の対向電極間に形成される放電部にアセチレン系モノマーガスと電離させるための不活性ガスを大気若しくは大気近傍の圧力下で導入しながら、電極間に高周波交流電圧を印加することで、グロー放電を起させ、プラズマを基板表面に接触させることで基板上に重合膜を形成する方法が知られている(例えば特許文献1参照)。同様な方法として、アルゴンガスや窒素ガスを用いた不飽和アルコールのプラズマ重合などがある(例えば特許文献2参照)。
【0013】
以上述べたように大気圧低温プラズマは有機合成反応にとって不利益となる熱を発生させることなく、高エネルギー粒子で有機分子を活性化できる点、また従来の化学的手法によるラジカル反応より高速で反応が進行することで大きなメリットがあると言える。
【0014】
一方、金属粒子の合成に関しては、熱プラズマを用いた合成法が知られている。これはプラズマの有する高エネルギー(1万度程度の温度)を利用した原料を蒸発気化させ、その高温金属蒸気ガスを急速に冷却することで、蒸気の凝集を行い粒子形成させるものである。この技術を使用した反応例として立方晶窒化ホウ素の合成例がある。固体ホウ素やホウ酸を使用することができる点で、現行使用されている水素化ホウ素を使用するものに比べその安全性は向上した。また、Siの合成でも熱プラズマを用いることでSiClを用いることができるようになったことでその経済的効果は非常に大きいものであると言える。
【0015】
熱プラズマを用いる粒子合成には放電によるいくつかの分類がある。1つは直流アークを用いる方法で、活性プラズマ溶融金属反応法といわれるものである。これは陽極電極上に原料金属固体を設置し、プラズマアークを用いて金属を溶融解離し、この溶融金属から粒子を合成するものである。当然のことならが電極上に設置する金属を複数種にすることで金属複合体も合成が可能である。また、アークガスに窒素、酸素を導入することで金属窒化物、金属酸化物が合成可能である。
【0016】
これとは別にプラズマジェットやRFプラズマによるナノ粒子合成も報告されている。これらはプラズマ中に粉体状態で原料を供給し、金属を加熱蒸発した後に冷却凝集するもので冷却過程で化学反応を行うものである(例えば特許文献3参照)。
【0017】
いずれのプラズマによる金属粒子合成も金属の溶融状態を作るプロセスを通して行われることから熱プラズマを用いるのが普通である。
【0018】
これらプラズマを用いた合成反応は、反応活性種を作るための触媒などが必要ないことにあり、純度の高い材料を短時間に合成できる点にある。
【0019】
金属ナノ粒子の合成はプラズマ反応を用いる方法のほかに古くから還元法により作られている。これは既にその粒子径をコントロール技術まで確立されており、現在も広く用いられている。例えば、金ナノ粒子の合成では塩化金酸を原料にアルカリ溶液中、還元剤としてナトリウムチアシアナート、ナトリウムボロハイドライド、クエン酸ナトリウム塩、アスコルビン酸などを用いて金属を析出させている。
これら化学反応を用いた金微粒子の還元析出は既にその粒子の制御まで技術は確立されている。例えば2.6nmの金微粒子はBaschong等によって提唱された方法で合成しうるし、4.2nmの金微粒子はTschopp等の提唱する方法で合成が可能である。
【0020】
一方、金属や誘電体、有機物表面の処理に関してもプラズマによる処理が効果を出すことは既に知られている。例えばポリエチレン系フィルムの親水化処理の1つとしてプラズマ照射が使われる。例えば、大気圧プラズマを用いたフィルム表面処理方法として、チャンバー内でプラズマ発生電極とグランドを対向して設置させ、その間にガスを流して放電させる方法でプラズマを発生させるが、一般には噴出し型の大気圧プラズマを用いることが多い(例えば特許文献4参照)。これで表面処理が行えるフィルムは織物または不織布、紙、合成高分子、炭素繊維などである。いずれの場合もその表面処理はプラズマ中の電離気体若しくは派生したラジカルによるフィルム表面形成結合の切断に由来するものであり、多くの場合親水化処理される。この他、プラズマを用いた基板表面処理事例などが知られている(例えば特許文献5参照)。
【0021】
【特許文献1】特開2001−104773
【特許文献2】特開平10−287757
【特許文献3】特開2004−107784
【特許文献4】特開2001−316976
【特許文献5】特開平10−1551
【非特許文献1】応用物理第72(4)2003年、p457−p461
【非特許文献2】プラズマソースサイエンス アンド テクノロギー 11、2002年、pA1−pA2
【非特許文献3】アプライドフィジックス 35、2002年、p2779−p2784
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
【0023】
しかしながら従来の技術は、有機物の反応においてはプラズマ重合の初期においてはチャンバーが必要であり、またその後開発された放出型プラズマでも電極として1対のプラズマ発生電極(高電圧電極)とグランド電極が必要であり、その反応場は必然的に電極形状で決定されるという不都合があった。
【0024】
また、有機物の反応以外で例えば金属粒子の合成過程では、金属の溶融という過程を経なければならず、そのため高温な熱プラズマが必須であった。このため必然的にプラズマ重合と組み合わせて、金属粒子と有機体のハイブリッドを形成することは不可能であった。
【0025】
また、従来の化学的手法では、反応を途中で止めることはできず、反応物質が系内から無くなるまで反応は進行し、途中で止めることはできない。
【0026】
また、更に表面処理についても、放出型プラズマを用いることと、対電極を用いることで、フィルム表面の処理は可能であるが、閉所や管状内壁の処理を行うことは非常に難しかった。従来閉所もしくは、マイクロ流路など微細管の内壁を処理するときは、平板に溝をつけその溝を予め処理した後に、上蓋を貼り合せるなどの方法をとっており、これにより作成には非常に手間がかかった。
【0027】
本発明は、かかる欠点を克服し、金属析出、有機物の反応、フィルムはもとより閉所、管状内壁などの表面処理をそれぞれ独立に、若しくは組み合わせて行え、さらに、これらこのプラズマ化学反応のプラズマの種々のパラメータを制御した上で、電源スイッチにより反応速度、反応収率、生成物形態を任意に制御できる技術を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0028】
【0029】
即ち、本発明は以下に記載のプラズマジェットを用いた金属粒子の合成と表面処理に関するものである。
【0030】
先ず、プラズマとして、大気圧近傍の圧力下において金属若しくは絶縁体管に高電圧電極を取り付け、この管中にガスを流しながら、低周波数で高電圧を印加させることによりプラズマ化し、この発生した活性種と、還元反応によって金属となる化合物若しくはその溶液とを反応させることにより金属粒子合成法を行うものである。ここで大気圧とはプラズマが噴出する環境の圧力を指し、特に限定するものではないが、好ましくは溶液の蒸気圧以上、10気圧以下の範囲、更に好ましくは解放系で合成を行う大気圧は減圧、加圧装置を必要とせず好適である。
【0031】
また、プラズマ放出に用いられるノズル部の材質としては周期律表4族から14族に含まれる元素単体若しくは混合物からなり、これに高電圧電極を接続し、グランド側を大気としてガスを流しながら、低周波数高電圧を印加させることにより発生させた電離気体およびラジカルガスとすることが可能である。電極材料は特に限定するものではないが、例えば、金属としてはアルミニウム管、ステンレス管、銅管、鉄管、真鋳管など、ガス流路の形成されている金属管は何れも使用が可能である。また、絶縁体管としては、例えばプラスチックとしては特に限定するものではないが、汎用プラスチックとして、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS樹脂)、アクリル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン樹脂)などが上げられる。また、エンジニアリングプラスチックとしては、特に限定するものではないが、例えば、ポリアミド、ナイロン、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE、変性PPE)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートガラス樹脂(PET−G)環状ポリオレフィン、グラスファイバー強化型ポリエチレンテレフタレート(FRP)などがあげられる。また、このほか、スーパーエンジニアリングプラスチックとして、特に限定するものではないが、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、非晶ポリアリレート、液晶ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアミドなどが挙げられる。
【0032】
また、上記プラスチックのほかに無機セラミック材料を絶縁体管として用いることもできる。これら具体例としては、特に限定するものではないが、ガラス、シリコン、ジルコニア、陶磁器、アルミナ、チタニア、シリコンカーバイト、シリコンナイトライドなどが挙げられる。
【0033】
電極は金属管を用いる場合は、高電圧電極のみを金属管に接続し、グランドは大気とする。また、プラスチック管を用いる場合は、高電圧電極の前後(接触しない、また、アーク放電しない距離以上はなす)にアースを取り付けることもできるが、金属管同様に大気をグランドにすることもできる。プラズマ発生に必要な電源として交流の高電圧電源を用いる。ここで言う交流とは10Hz〜100MHzを言い、好ましくは50Hz〜100KHz、更に好ましくは5kHz〜20kHzを言う。また交流電圧は1000V〜30,000Vの範囲でプラズマ化が可能であるが、好ましくは1,000V〜20,000V、更に好ましくは5,000V〜8,000Vを言う。
【0034】
上記条件で発生させたプラズマを反応活性種として使用するが、ここでプラズマガスとしては周期律表18族に該当する元素若しくは水素、酸素、窒素、二酸化炭素ガス、一酸化炭素、フッ素、塩素、若しくはこれら2種以上の混合物ガスが使用可能である。即ち不活性ガスとしてヘリウム、アルゴン、ネオン、クリプトン、キセノンが使用可能である。特に限定するものではないがヘリウムガスは大気中にて安定したプラズマを作りやすく一般にはよく用いられる。用いられるガスの流量はプラズマパラメーターに影響するファクターであるが、一般にその流量は1ml/sec以上1000ml/sec以下の範囲で使用が可能であるが、好ましく流量は10ml/sec以上500ml/sec以下の範囲で、更に好ましくは流量は30ml/sec以上100ml/sec以下の範囲で使用される。また、混合ガスは一般にはどのガスの組み合わせでも可能であるが、実用的にはヘリウムと組み合わせる。この場合の混合比はヘリウム1に対して混合ガス10以下の範囲で用いるが、好ましくはヘリウム1に対して混合ガス0.1以下の範囲、更に好ましくはヘリウム1に対して混合ガス0.001以下の範囲である。
【0035】
混合ガスは2種である必要はなく、3種以上のガスの混合でもなんら問題はない。ガスを混合することで発生するプラズマ及びその2次生成物であるラジカルの状態を変えることができ、これらはプラズマの発光スペクトルで観察できる。例えば特に限定するものではないが、窒素を導入することでヘリウムの電離エネルギーが窒素分子を励起し、それにより紫外光に相当するエネルギーを取り出すことができる(図1参照)。
【0036】
また、ガスの代わりに液体ミストを使用することも可能である。例えば、水蒸気を含むヘリウムガスをプラズマ化することによりOHラジカルを電離気体中に生成させることが可能である。この場合水蒸気のプラズマへの導入は超音波による水の噴霧化、加熱蒸気の導入、ネブライザーによる噴霧などが可能である。
【0037】
また、液体として水以外に一般式(2)若しくは式(3)で表されるアクリル末端若しくはメタクリル末端を有するモノマーを用いることもできる。式(2)及び(3)で表される置換基Rは水素原子、フェニル、置換フェニル、ビフェニル基、置換ビフェニル基、チエニル、置換チエニル、ナフチル、置換ナフチル、ピロリル基、置換ピロリル基、フリル基、置換フリル基、チエニル基、置換チエニル基、アルキル基、アルコキシル基が可能であるが、この場合、特に置換基として炭素数1から10のアルキル基、アルコキシル基が好ましく、更に好ましくは、炭素数1から5のアルキル基若しくはアルコキシル基が好ましい。これらモノマー類は水蒸気と混合してプラズマ中に放出することでその反応を進めることができる。
【0038】
還元反応によって微粒子を析出する金属としては特に限定するものではないが、金、白金、銀,ニオブ、タンタル、ニッケルの塩化物を用いることができる。また、これとは別に有機配位子をもった金属化合物を原料に用いることができる。還元反応によって金属を析出する錯体の中心金属原子としては金属が周期律表4族から14族に含まれる金属元素があるが、特に限定するものではないが、金、銀、銅、パラジウム、ロジウム、ガドリニウムなどが好ましい。また、これら金属錯体を用いた金属粒子の合成でも、2種以上の錯体を用いることや、プラズマガスをヘリウム以外のガスとの混合を用いることで金属酸化物、窒化物など化合物粒子の合成も可能である。有機錯体としては、特に限定するものではないが、例えば、カルボニル配位子、dπ−pπ結合を通して金属中心の電子密度を減少させるπ酸配位子、カルベン配位子、オレフィン、アセチレン配位子などがあげられる。これら錯体は数種類混合して用いることもできる。
【0039】
次に、これら金属及び金属化合物微粒子の溶媒分散性を高めるために上記金属粒子原料を溶解した溶液に予め界面活性剤を混合し、これにプラズマジェットを当てて還元反応による金属析出と同時に析出金属表面を界面活性剤で処理することで、溶媒に対する分散安定性を高めることができる。この場合用いることができる界面活性剤は、金属粒子表面電荷によって変える必要がある。即ち、金属表面電荷がマイナスの場合はカチオン系界面活性剤が有効であり、金属表面がプラス電荷を有する場合はアニオン系界面活性剤が有効である。界面活性剤の種類に関しては特に限定するものではないが、例えばマイナス電荷を有するアニオン系界面活性剤としては、脂肪族系(脂肪酸ナトリウム、脂肪酸カリウム、α−スルホ脂肪酸エステルナトリウム)や直鎖アルキルベンゼン系(直鎖アルキルベンゼンスルホン酸)や高級アルコール系(アルキル硫酸エステルナトリウム)やα−オレフィン系(α−オレフィンスルホン酸ナトリウム)やノルマルパラフィン系(アルキルスルホン酸ナトリウム)などがあげられる。また、カチオン系界面活性剤の種類に関しては、特に限定するものではないが、四級アンモニウム塩系(アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム塩)などがあげられる。このほか、1分子に両電荷を有する両性界面活性剤も用いることができ、両性界面活性剤も特に限定するものではないが、例えば、アミノ酸系(アルキルアミノ脂肪酸ナトリウム)やベタイン系(アルキルベタイン)やアミンオキシド系(アルキルアミンオキシド)や第四級アンモニウム塩系(アルキルトリメチルアンモニウム塩、ジアルキルジメチルアンモニウム系)などが使用できる。
【0040】
また、前述の界面活性剤とは別に、オリゴ及びポリアルキルアミンをプロトン化ポリカチオン化合物で金属微粒子表面を処理することも可能である。アルキルアミンとしては一般式(3)で表されるアルキルアミンが有用で
【0041】
【化3】

【0042】
特に、一般式中nが0以上、20以下、好ましくは0以上、10以下、更に好ましくは2以上、5以下で表される。
【0043】
また、水に対する分散安定性を更に向上させる手段として、上記ポリカチオンを末端に有するポリエチレングリコール誘導体で金属表面を処理してやる方法もある。ポリカチオンとしては上記示したようなオリゴアルキルアミン即ち、一般式(4)で表されるオリゴアルキルアミンで
【0044】
【化4】

【0045】
特に、一般式中nが0以上、20以下、好ましくは0以上、10以下、更に好ましくは2以上、5以下で表されるものが有用と言える。
【0046】
また、ここでR3及びR4で示される有機基としては、水素、炭素数1から10であらわされるアルキル基で好ましくは炭素数1から5、更に好ましくは炭素数1から2で示されるアルキル基である。
【0047】
一方、一般式(5)
【0048】
【化5】

【0049】
あらわされるポリエチレングリコール鎖の分子量として、特に一般式中 n が10以上、1000000以下、好ましくは1000以上、100000以下、更に好ましくは10000以上、20000以下で表されるものが有用と言える。また、式中mは0から4の整数である。
【0050】
また、ここでR5はアルキル基、アルコキシル基、ビニル基、水酸基、ビオチニル基、スクシニル基、アミノ基、アミノアルキル基、アリル基、アリール基、置換アリール基をあらわす。ここにアルキル基の炭素数1から100の正の整数で表されるものを示し、アルコキシル基の炭素数1から100までの正の整数で表されるものを示すが、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から3で示される。アミノアルキル基のアルキル鎖は炭素数1から100までの正の整数で表されるが、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から3で示される。また置換アリール基の置換基としてはアルキル基、アルコキシル基、ビニル基、水酸基、ビオチニル基、スクシニル基、アミノ基、アミノアルキル基、アリル基、アリール基、置換アリール基をあらわす。ここにアルキル基の炭素数1から100の正の整数で表されるものを示すが、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から3で示される。アルコキシル基の炭素数1から100までの正の整数で表されるものを示されるが、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から3で示される。アミノアルキル基のアルキル鎖は炭素数1から100までの正の整数で表されるが、好ましくは炭素数1から10、更に好ましくは炭素数1から3で示される。
【0051】
さらに、この化合物はアルキルハライドにより容易に四級化することができ、ポリカチオンとして用いることができる。これらポリカチオンは負電荷を有する金属粒子と容易に静電相互作用を起し、ポリカチオン種を表面に吸着する。
【0052】
また、アルキルアミンの電荷に関しては、上記4級化のほかにプロトン酸によるアミンのプロトン化がある。これは、pka以下の状態にしてやることでアミンがプロトン化されるが、このとき用いる酸としては、特に限定するものではないが、塩酸、硫酸、アルキル硫酸、ベンゼンスルホン酸、酢酸などを用いることができる。
【0053】
また、上記アミンとは別にポリアミンが一般式(6)
【0054】
【化6】

【0055】
でnが1以上、10,000以下の正の整数であらわされるポリアクリルアミンであり、これを共存させることによって金属表面を析出と同時に表面修飾することも可能である。この場合の一般式(6)であらわされるポリアクリルアミンのmとしては、1以上10,000以下の正の整数で表すことができるが、好ましくは1以上5,000以下の正の整数、更に好ましくは、100以上1,000以下の正の整数である。ここでR6は水素、炭素数1から10までのアルコキシル基、炭素数1から5までのアセタール基、水酸基、チオール基、アミノ基、トシル基で表される。また、R8は水素、炭素数1若しくは2のアルキル基、また、R7は水素、水酸基である。
【0056】
さらに、この化合物はアルキルハライドにより容易に四級化することができ、ポリカチオンとして用いることができる。これらポリカチオンは負電荷を有する金属粒子と容易に静電相互作用を起し、ポリカチオン種を表面に吸着する。
【0057】
また、ポリアクリルアミンの電荷に関しては、上記4級化のほかにプロトン酸によるアミンのプロトン化がある。これは、pka以下の状態にしてやることでアミンがプロトン化されるが、このとき用いる酸としては、特に限定するものではないが、塩酸、硫酸、アルキル硫酸、ベンゼンスルホン酸、酢酸などを用いることができる。
【0058】
これら金属粒子の合成及び表面処理法の応用としては、マイクロ流路内の処理があげられる。即ち、金属粒子合成法において、プラズマガスと還元反応によって金属を析出させる化合物の溶液を同時に微細流路に流し込みながら低周波数で高電圧を印加させることにより発生させた電離気体およびラジカルガスと、還元反応によって金属となる化合物溶液を反応させることにより、微細流路管面に金属微粒子を丹治するものである。この場合、電極の設置場所によってプラズマ発生させる流路をコントロールすることができるため、複数の流路系において、特定箇所だけをプラズマ反応場として使用することができる。マイクロ流路の材質はプラスチック、無機誘電体などを用いることができる。プラスチックとしては特に限定するものではないが、汎用プラスチックとしては例えば、ポリエチレン(高密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、アクリロニトリルブタジエンスチレン樹脂(ABS樹脂)、アクリロニトリルスチレン樹脂(AS樹脂)、アクリル樹脂、ポリテトラフルオロエチレン(テフロン樹脂)などが上げられる。また、エンジニアリングプラスチックとしては、特に限定するものではないが、例えば、ポリアミド、ナイロン、ポリアセタール、ポリカーボネート、変性ポリフェニレンエーテル(m−PPE、変性PPE)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレートガラス樹脂(PET−G)環状ポリオレフィン、グラスファイバー強化型ポリエチレンテレフタレート(FRP)などがあげられる。また、このほか、スーパーエンジニアリングプラスチックとして、特に限定するものではないが、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、非晶ポリアリレート、液晶ポリエステル、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリアミドなどが挙げられる。
【0059】
また、上記プラスチックのほかに無機セラミック材料をマイクロ流路材料として用いることもできる。これら具体例としては、特に限定するものではないが、ガラス、シリコン、ジルコニア、陶磁器、アルミナ、チタニア、シリコンカーバイト、シリコンナイトライドなどが挙げられる。
【0060】
プラズマ発生のための電極は特にマイクロ流路中に設ける必要はなく、プラスチック基板もしくはセラミック基板を介してマイクロ流路上に設置することで使用することができる。また、この電極は導電テープなど安価な材料を使用することができ、従来の固定型電極とは異なり、使用後は取り外すこともできる。
【0061】
マイクロ流路の処理としては必要に応じて、予め、金属粒子源を含まない、プラズマ電離ガスで流路表面をエッチングした後に、還元反応による金属析出を行うこともできる。
【0062】
本発明の金属微粒子の合成及び表面処理に関して、その優れた特性を利用してフィルム表面処理、一般の流路、閉所内、更にマイクロ反応場に用いられるマイクロ流路などの処理に利用することができる。また、本発明の化合物はフィルム、管内内壁に丹治することによって、触媒として使用したり、アクセプターを導入したりすることにより、バイオセンサーとしても応用が可能である。
【実施例】
【0063】
以下、本発明について、さらに具体的かつ詳細に実施例を用いて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0064】
合成例1 オリゴアミノ化ポリエチレングリコールの合成
以下の界面活性剤の一部となるオリゴアルキルアミンを片末端に有するポリエチレングリコールの合成法に関して述べる。一般反応の反応スキームを図2に示す。
【0065】
ペンタエチレンヘキサミンを末端に有するポリエチレングリコールの合成
【0066】
2−1:メトキシーポリエチレングリコールートシルクロライドの合成
【0067】
窒素置換下、室温のフラスコ中に溶媒としてトラヒドロフラン30mlを入れ、これに開始剤2−メトキシエタノール1mmolとカリウムナフタレン/テトラヒドロフラン溶液(0.3168mol/l)1mmolを攪拌しながら加え、メタル化を行った。1時間室温で攪拌した後、エチレンオキシドを70mmol(仕込み分子量3000のとき)加え二日間攪拌し、重合を行った。
【0068】
二日間攪拌後、GPC測定により目的の分子量のポリマーが合成できていることを確認した。その後、このポリマー溶液に3mmolのトリエチルアミンを加えた後3倍モルのp−トルエンスルホニルクロライドを加えた。1日反応させた後、エーテル再沈により精製、クロロホルムと飽和食塩水で抽出を行い、無水硫酸ナトリウムにより脱水、ベンゼン凍結乾燥にて回収した。解析についてはゲルパーミエーチョンクロマトグラフィー、H−NMR測定を行なった。
【0069】
2−2.[メトキシ−ポリエチレングリコール−ペンタエチレンヘキサミンの合成]
テトラヒドロフラン15ml中に1gの上記合成したメトキシーポリエチレングリコールートシルを完全に溶解させ、このポリマー100倍mol量のペンタエチレンヘキサミン溶液中にゆっくり滴下させて40℃で窒素雰囲気下24h反応させた。その後、冷却したイソプロピルアルコール再沈を複数回(4回)行って精製とし、ベンゼン凍結乾燥にて回収した。解析についてはゲルパーミエーション、H−NMR、元素分析測定を行なった。
【0070】
実施例1
ポリアミン末端を有するポリエチレングリコールを用いた金ナノ粒子の合成
【0071】
ペンタエチレンヘキサミン末端を有するメトキシポリチレングリコール(分子量5000)0.26wt%、塩化金酸0.0015wt%水溶液の8.5gをサンプル瓶に取り出し、ヘリウムガス0.1kg/cm、印加電圧10kV(10kHz)で図3(a)、(b)に示す装置を用いて大気圧下でプラズマを発生させ、そのプラズマを上記水溶液に直接30分間照射し電離気体による塩化金酸の還元反応と還元析出した金粒子のペンタエチレンヘキサミン末端を有するメトキシポリチレングリコールによる修飾反応を行った。その結果、図4に示す透過型電子顕微鏡像のような分散安定性に優れる金ナノ粒子が得られた。得られた金粒子径は5〜10nmであった。
【0072】
実施例2
ポリアミン末端を有するポリエチレングリコールを用いた金ナノ粒子の合成
【0073】
ペンタエチレンヘキサミン末端を有するメトキシポリチレングリコール(分子量5000)0.26wt%、塩化金酸0.0041wt%水溶液の8.5gをサンプル瓶に取り出し、ヘリウムガス0.1kg/cm、印加電圧10kV(10kHz)で図3(a)、(b)に示す装置を用いて大気圧下でプラズマを発生させ、そのプラズマを上記水溶液に直接30分間照射し電離気体による塩化金酸の還元反応と還元析出した金粒子のペンタエチレンヘキサミン末端を有するメトキシポリチレングリコールによる修飾反応を行った。その結果、図5に示す透過型電子顕微鏡像ような分散安定性に優れる金ナノ粒子が得られた。得られた金粒子径は10〜20nm程度であった。
【0074】
実施例3
ポリアミンを用いた金ナノ粒子の合成
【0075】
3−1:ジエチレントリアミンを分散剤に用いた金ナノ粒子の合成
【0076】
10mlガラス製サンプル瓶に予め0.4mMに調整した塩化金酸溶液0.1gを純水で10gまで希釈し、これにジエチレントリアミン60mM溶液0.2gを添加してボルテックスで1分撹拌する。この試料の入ったガラス瓶中にヘリウムガス0.1kg/cm、印加電圧10kV(10kHz)で図3(a)、(b)に示す装置を用いて大気圧下でプラズマを発生させ、直接30分間照射し電離気体による塩化金酸の還元反応と還元析出した金粒子のジエチレントリアミンによる修飾反応を行った。
【0077】
反応終了後、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて粒子の形態を観察した結果、金粒子の成長が確認され、その一次粒子径およそ5ナノメートル程度であった。
透過型電子顕微鏡像を図6に示す。
【0078】
3−2:トリエチレンテトラミンを分散剤に用いた金ナノ粒子の合成
【0079】
10mlガラス製サンプル瓶に予め0.4mMに調整した塩化金酸溶液0.1gを純水で10gまで希釈し、これにリエチレンテトラミン60mM溶液0.2gを添加してボルテックスで1分撹拌する。この試料の入ったガラス瓶中にヘリウムガス0.1kg/cm、印加電圧10kV(10kHz)で図3(a)、(b)に示す装置を用いて大気圧下でプラズマを発生させ、直接30分間照射し電離気体による塩化金酸の還元反応と還元析出した金粒子のリエチレンテトラミンによる修飾反応を行った。
【0080】
反応終了後、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて粒子の形態を観察した結果、金粒子の成長が確認された。反応終了後、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて粒子の形態を観察した結果、金粒子の成長が確認され、その一次粒子径およそ5ナノメートル程度であった。透過型電子顕微鏡像を図7に示す。
【0081】
3−3:テトラエチレンペンタミンを分散剤に用いた金ナノ粒子の合成
【0082】
10mlガラス製サンプル瓶に予め0.4mMに調整した塩化金酸溶液0.1gを純水で10gまで希釈し、これにテトラエチレンペンタミン60mM溶液0.2gを添加してボルテックスで1分撹拌する。この試料の入ったガラス瓶中にヘリウムガス0.1kg/cm、印加電圧10kV(10kHz)で図3(a)、(b)に示す装置を用いて大気圧下でプラズマを発生させ、直接30分間照射し電離気体による塩化金酸の還元反応と還元析出した金粒子のテトラエチレンペンタミンによる修飾反応を行った。
【0083】
反応終了後、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて粒子の形態を観察した結果、金粒子の成長が確認された。反応終了後、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて粒子の形態を観察した結果、金粒子の成長が確認され、合成された粒子は凝集体であり、その凝集粒子の大きさは400ナノメートル程度であった。透過型電子顕微鏡像を図8に示す。
【0084】
実施例4
ノニオン系界面活性剤としてポリエチレングリコールを用いた金ナノ粒子の合成
【0085】
10mlガラス製サンプル瓶に予め0.4mMに調整した塩化金酸溶液0.1gを純水で10gまで希釈し、これに分子量2000のポリエチレングリコール60mM溶液0.2gを添加してボルテックスで1分撹拌する。この試料の入ったガラス瓶中にヘリウムガス0.1kg/cm、印加電圧10kV(10kHz)で図3(a)、(b)に示す装置を用いて大気圧下でプラズマを発生させ、直接30分間照射し電離気体による塩化金酸の還元反応と還元析出した金粒子のポリエチレングリコール溶液中での析出反応を行った。
【0086】
反応終了後、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて粒子の形態を観察した結果、金粒子の成長が確認された。反応終了後、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて粒子の形態を観察した結果、金粒子の成長が確認され、合成された粒子は凝集体であり、その凝集粒子の大きさは5ナノメートル程度であった。透過型電子顕微鏡像を図9に示す。
【0087】
実施例5
混合ガスを用いた金ナノ粒子の合成
【0088】
ヘリウムプラズマを大気中で照射することにより、大気中窒素へのエネルギー移動を誘発させた混合気体プラズマによる金ナノ粒子合成を行った。
混合ガスのスペクトルを図1に示す。
【0089】
ペンタエチレンヘキサミン末端を有するメトキシポリチレングリコール(分子量5000)0.26wt%、塩化金酸0.0015wt%水溶液の8.5gをサンプル瓶に取り出し、ヘリウムガス0.1kg/cm、印加電圧10kV(10kHz)で図3(a)、(b)に示す装置を用いて大気圧下で上記混合ガスプラズマを発生させ、そのプラズマを上記水溶液に直接30分間照射し電離気体による塩化金酸の還元反応と還元析出した金粒子のペンタエチレンヘキサミン末端を有するメトキシポリチレングリコールによる修飾反応を行った。その結果、図10に示す透過型電子顕微鏡像ような分散安定性に優れる金ナノ粒子が得られた。得られた金粒子径は5〜10nmであった。
【0090】
実施例6
金薄膜の合成
【0091】
塩化金酸0.12wt%水溶液の8.5gをサンプル瓶に取り出し、ヘリウムガス0.1kg/cm、印加電圧10kV(10kHz)で図3(a)、(b)に示す装置を用いて大気圧下でプラズマを発生させ、そのプラズマを上記水溶液に直接30分間照射し電離気体による塩化金酸の還元反応が気液界面で発生する為、水溶液表面に金薄膜が形成される(図11参照)。
【0092】
実施例8
酸化チタン粒子の合成
【0093】
10mlガラス製サンプル瓶にエタノール2gを入れこれにテトラブトキシチタン0.2gを添加して撹拌する。その後、この溶液にジエチレントリアミン0.13gを添加しさらに撹拌する。溶液が錯体形成を示す黄色に変化したのを確認したところで分子量600のポリエチレングリコール0.64gを添加しさらにボルテックスを用いて2分撹拌する。出来上がった溶液に対してプラズマジェットのノズルを5mm程度まで近づけ、ヘリウムガス0.05kg/cm、印加電圧10kV(10kHz)で図3(a)、(b)に示す装置を用いて大気圧下でプラズマを発生させ、直接30分間照射し電離気体によるチタンアルコキシドの脱アルコール反応による酸化チタン膜の合成を行った。形成された酸化チタン膜の写真を図12に示す。
【0094】
この酸化チタン薄膜はX線回折によりアモルファスであることが確認された。X線回折データを図13に示す。
【0095】
実施例9
白金粒子の合成
【0096】
ジエチレントリアミンを分散剤に用いた白金ナノ粒子の合成
【0097】
10mlガラス製サンプル瓶に予め0.4mMに調整した塩化白金酸溶液0.1gを純水で10gまで希釈し、これにジエチレントリアミン60mM溶液0.2gを添加してボルテックスで1分撹拌する。この試料の入ったガラス瓶中にヘリウムガス0.1kg/cm、印加電圧10kV(10kHz)で図3(a)、(b)に示す装置を用いて大気圧下でプラズマを発生させ、直接30分間照射し電離気体による塩化白金酸の還元反応と還元析出した白金金粒子のジエチレントリアミンによる修飾反応を行った。
【0098】
反応終了後、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて粒子の形態を観察した結果、金粒子の成長が確認され、その一次粒子径およそ5ナノメートル程度であった。
【0099】
TEM像を図14に示す。
【0100】
実施例10
ポリマー、金属粒子複合体の合成
【0101】
10mlガラス製サンプル瓶にメタクリル酸2−ヒドロキシメチル4.0gを採取し、これに予め0.4mMに調整した塩化金酸溶液0.1gを添加してボルテックスで1分撹拌する。この試料の入ったガラス瓶中にヘリウムガス0.1kg/cm、印加電圧10kV(10kHz)で図3(a)、(b)に示す装置を用いて大気圧下でプラズマを発生させ、直接2時間照射し電離気体による塩化金酸の還元反応による金粒子をポリマー固体中に分散させた。分散した金粒子を含むポリマー固体の写真を図15に示す。
【産業上の利用可能性】
【0102】
本発明は、大気圧プラズマを用いた金属もしくは金属化合物の合成法に係わり、更に金属の安定分散系を同時に達成できる技術である。また、金属析出反応を伴うことから、局所、閉塞空間の表面修飾を容易足らしめる技術として用いることができる。更に、有機固形物中に容易に金属粒子を分散させることも可能であり、今後のセンサー材料、発光素子材料、バイオセンサー材料、エネルギーデバイス材料への応用が幅広い応用が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0103】
【図1】「窒素を導入することで発生する紫外光スペクトルを示す図である。」
【図2】「オリゴアルキルアミンの合成反応スキームを示す図である。」
【図3】「プラズマ発生装置を示す図である。」
【図4】「ペンタエチレンヘキサミン末端を有するポリエチレングリコールを金属表面修飾剤に用いて合成した金コロイドの透過型電子顕微鏡写真を示す図である。」
【図5】「ペンタエチレンヘキサミン末端を有するポリエチレングリコールを分散剤に用いて合成した金コロイドの透過型電子顕微鏡写真を示す図である。」
【図6】「ジエチレントリアミンを分散剤に用いて合成した金コロイドの透過型電子顕微鏡写真を示す図である。」
【図7】「トリエチレンテトラミンを分散剤に用いて合成した金コロイドの透過型電子顕微鏡写真を示す図である。」
【図8】「テトラエチレンペンタミンを分散剤に用いて合成した金コロイドの透過型電子顕微鏡写真を示す図である。」
【図9】「ポリエチレングリコール(分子量2000)を分散剤に用いて合成した金コロイドの透過型電子顕微鏡写真を示す図である。」
【図10】「混合ガス中でペンタエチレンヘキサミンを末端に有するポリエチレングリコールを分散剤に用いて合成した金コロイドの透過型電子顕微鏡写真を示す図である。」
【図11】「塩化金酸溶液に直接プラズマを照射することによって合成した溶液表面に生成した金箔の写真を示す図である。」
【図12】「チタンアルコキシド、ジエチレントリアミン、ポリエチレングリコール、エタノール混合溶液に直接プラズマを照射することによって合成した溶液表面に生成した有色チタン固形の写真を示す図である。」
【図13】「チタンアルコキシド、ジエチレントリアミン、ポリエチレングリコール、エタノール混合溶液に直接プラズマを照射することによって合成した溶液表面に生成した有色チタン固形のX−線回折を示す図である。」
【図14】「ジエチレントリアミンを分散剤に用いて合成した白金コロイドの透過型電子顕微鏡写真を示す図である。」
【図15】「メタクリル酸2−ヒドロキシメチル中に溶解した塩化金酸溶液にプラズマ照射して合成したポリマー金コロイド複合体の写真を示す図である。」
【符号の説明】
1 ガス流路管
1a ガス噴出口
2 電極
3 プラズマ発生用電極
4 電圧印加装置
5 非平衡プラズマジェット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
大気圧近傍の圧力下において金属若しくは絶縁体管に高電圧電極を取り付け、この管中にガスを流しながら、低周波数で高電圧を印加させることにより発生させたプラズマと、還元反応によって金属となる化合物若しくはその溶液を反応させることを特徴とする金属粒子合成法及び表面修飾法。
【請求項2】
請求項1記載の金属管は周期律表4族から14族に含まれる元素単体若しくは混合物からなり、これに高電圧電極を接続し、グランド側を大気としてガスを流しながら、低周波数で高電圧を印加させることにより発生させたプラズマと、還元反応によって金属となる化合物若しくはその溶液を反応させることを特徴とする金属粒子合成法及び表面修飾法。
【請求項3】
請求項1記載の絶縁体管は合成高分子体、若しくは、天然物高分子体、ガラス、若しくは無機セラミック体からなり、これに高電圧電極を接続し、ガスを流しながら、低周波数で高電圧を印加させることにより発生させた電離気体およびラジカルガスと、還元反応によって金属となる化合物若しくはその溶液を反応させることを特徴とする金属粒子合成法及び表面修飾法。
【請求項4】
請求項1記載の金属粒子合成法においてプラズマ発生に用いられる電源の周波数が10Hz〜100MHzで出力電圧が1000V〜30,000Vで、これを印加することで発生させたプラズマと、還元反応によって金属となる化合物若しくはその溶液を反応させることを特徴とする金属粒子合成法及び表面修飾法。
【請求項5】
請求項1,2,3及び4記載の金属粒子合成法において、使用するガスが周期律表18族に該当する不活性元素若しくは水素、酸素、窒素、二酸化炭素ガス、一酸化炭素、フッ素、塩素若しくはこれら2種以上の混合物ガスで、これに低周波数で高電圧を印加させることにより発生させたプラズマと、還元反応によって金属となる化合物若しくはその溶液を反応させることを特徴とする金属粒子合成法及び表面修飾法。
【請求項6】
請求項5記載の金属粒子合成法において、使用するガスに水または水蒸気を導入することを特徴とする金属粒子合成法及び表面修飾法。
【請求項7】
請求項1,2,3及び4記載のプラズマ還元金属粒子合成において、還元反応によって金属となる化合物が塩化物でこれら化合物の水溶液若しくは有機溶媒に溶解した溶液を用いることを特徴とする金属粒子合成及び表面修飾法。
【請求項8】
請求項1,2,3及び4記載のプラズマ還元金属粒子合成において、還元反応によって金属となる化合物が金属イオンと有機配位子とで形成される金属錯体化合物でその中心金属が周期律表4族から14族に含まれる金属元素からなる化合物の有機溶液若しくは水溶液を用いることを特徴とする金属粒子合成及び表面修飾法。
【請求項9】
請求項1、2,3及び4記載のプラズマ還元金属粒子合成において、プラズマガスとしてヘリウムの他にヘリウム以外のガスを混合した混合ガスを用いることで金属化合物粒子を合成することを特徴とするプラズマ還元金属粒子合成及び有機高分子複合体の合成法及び表面修飾法
【請求項10】
請求項1,2,3及び4記載の金属粒子合成法において、使用するガスに一般式(1)若しくは一般式(2)で表されるアクリル若しくはメタクリルモノマーを液体または水蒸気として導入することを特徴とする金属粒子合成及び有機高分子複合体の合成法及び表面修飾法。
【化1】

【化2】

(ここで、R1はCHで表されるアルキル鎖で炭素数が1から5のものである。またR2はその末端に3級アミンもしくは4級アンモニウム塩を含むアルキル鎖であり、アルキル鎖は炭素数1から5のものである。)
【請求項11】
請求項10記載のプラズマ還元金属粒子合成及び有機高分子複合体の合成法において、モノマーと同時に水若しくは水蒸気を電離気体と同時に流すことを特徴とする金属粒子合成及び有機高分子複合体の合成法及び表面修飾法。
【請求項12】
請求項1,2、3及び4記載の金属粒子合成法において、還元反応によって金属となる化合物と界面活性剤を共存させることによって金属表面を析出と同時に表面修飾することを特徴とする金属粒子合成法及び表面修飾法
【請求項13】
請求項12記載の界面活性剤としてカチオン系、アニオン系、ノニオン系界面活性剤を用いることを特徴とする金属表面修飾法およびプラズマ還元金属粒子合成法
【請求項14】
請求項1,2、3及び4記載の金属粒子合成法において、還元反応によって金属となる化合物とポリアルキルアミンを共存させることによって金属表面を析出と同時に表面修飾することを特徴とする金属粒子合成法及び表面修飾法。
【請求項15】
請求項14記載の金属粒子合成法において、ポリアルキルアミンが一般式(3)でnが1以上、20以下の正の整数であらわされる直鎖アルキルアミンであり、これを共存させることによって金属表面を析出と同時に表面修飾することを特徴とする金属粒子合成法及び表面修飾法。
【化3】

【請求項16】
請求項14記載の金属粒子合成法において、ポリアルキルアミンが一般式(4)でnが1以上、20以下の正の整数であらわされる直鎖アルキル4級化アミンであり、これを共存させることによって金属表面を析出と同時に表面修飾することを特徴とする金属粒子合成法及び表面修飾法。
【化4】

(ここでR3及びR4はそれぞれ独立に水素原子、炭素数1から10で表されるアルキル基である。)
【請求項17】
請求項14記載の金属粒子合成法において、ポリアルキルアミンが一般式(3)でnが1以上、20以下の正の整数であらわされる直鎖アルキルアミンであり、更にこのアミンがプロトン酸によりプロトン化されている化合物であり、これを共存させることによって金属表面を析出と同時に表面修飾することを特徴とする金属粒子合成法及び表面修飾法。
【請求項18】
請求項1、2,3及び4記載の金属粒子合成法において、その界面活性剤が一般式(5)で表されるアミン末端を有するポリエチレングリコールであることを特徴とする金属粒子合成法及び表面修飾法。
【化5】

(ここでR5はアルキル基、アルコキシル基、ビニル基、水酸基、ビオチニル基、スクシニル基、アミノ基、アミノアルキル基、アリル基、アリール基、置換アリール基をあらわす。ここにアルキル基の炭素数1から100の正の整数で表されるものを示し、アルコキシル基の炭素数1から100までの正の整数で表されるものを示し、アミノアルキル基のアルキル鎖は炭素数1から100までの正の整数で表される。また置換アリール基の置換基としてはアルキル基、アルコキシル基、ビニル基、水酸基、ビオチニル基、スクシニル基、アミノ基、アミノアルキル基、アリル基、アリール基、置換アリール基をあらわす。ここにアルキル基の炭素数1から100の正の整数で表されるものを示し、アルコキシル基の炭素数1から100までの正の整数で表されるものを示し、アミノアルキル基のアルキル鎖は炭素数1から100までの正の整数で表される。)
【請求項19】
請求項1、2、3及び4記載の金属粒子合成法において、その界面活性剤がアミン末端を有するポリエチレングリコール誘導体で、末端アミンが4級化されていることを特徴とする金属粒子合成法及び表面修飾法。
【請求項20】
請求項1,2,3及び4記載の金属粒子合成法において、その界面活性剤がアミン末端を有するポリエチレングリコール誘導体で、末端アミンがプロトン酸によってプロトン化されていることを特徴とする金属粒子合成法及び表面修飾法。
【請求項21】
請求項1,2,3及び4記載の金属粒子合成法において、ポリアミンが一般式(6)でnが1以上、10,000以下の正の整数であらわされるアミノ基を側鎖に有するポリメタクリル酸メチル、あるいはポリ(メタクリル酸アミノアルキル)であり、これを共存させることによって金属表面を析出と同時に表面修飾することを特徴とする金属粒子合成法及び表面修飾法。
【化6】

(ここでR6は水素、炭素数1から10までのアルコキシル基、炭素数1から5までのアセタール基、水酸基、チオール基、アミノ基、トシル基で表される。また、R8は水素、炭素数1若しくは2のアルキル基、また、R7は水素、水酸基である。)
【請求項22】
請求項21記載の金属粒子合成法において、ポリアクリルアミンが一般式(6)でnが1以上、10,000以下の正の整数であらわされるアミン部位が4級化アミンであり、これを共存させることによって金属表面を析出と同時に表面修飾することを特徴とする金属粒子合成法及び表面修飾法。
【請求項23】
請求項21記載の金属粒子合成法において、ポリアクリルアミンが一般式(6)でnが1以上、10,000以下の正の整数であらわされ、更にこのアミンがプロトン酸によりプロトン化されている化合物であり、これを共存させることによって金属表面を析出と同時に表面修飾することを特徴とする金属粒子合成法及び表面修飾法。
【請求項24】
請求項1から23記載の金属粒子合成法において、プラズマガスと還元反応によって金属を析出させる化合物の溶液を同時に閉所空間に流し込みながら閉所流路管内面に金属微粒子を丹治すること特徴とする金属粒子合成法及び表面処理法。
【請求項25】
請求項24記載の金属粒子合成法及び表面処理法において、流路がプラスチックからなることを特徴とする金属粒子合成法及び表面処理法。
【請求項26】
請求項24記載の金属粒子合成法及び表面処理法において、微細流路が無機セラミック材料からなることを特徴とする金属粒子合成法及び表面処理法。
【請求項27】
請求項24記載の金属粒子合成法及び表面処理法において、流路を先ず、金属源の溶媒を流す前にプラズマガスで処理した後に金属を析出させる化合物の溶液を同時に流路に流し込みながら、流路内面に金属微粒子を丹治すること特徴とする金属粒子合成法及び表面処理法。
【請求項28】
請求項24記載の金属粒子合成法及び表面処理法において、使用する流路が微細加工されていることを特徴とする金属粒子合成法及び表面処理法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2008−214743(P2008−214743A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−97829(P2007−97829)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(504171134)国立大学法人 筑波大学 (510)
【Fターム(参考)】