説明

プラズマディスプレイパネル及びその製造方法

【課題】
明室コントラストが改善されたPDPを提供すること。
【解決手段】
背面基板と、前記背面基板上に形成されたアドレス電極と、放電セルを区画する隔壁と、前記放電セルの内側に形成された蛍光体とを有する背面板と、前面基板と、前記前面基板上に形成された、走査電極と維持電極とからなる表示電極と、前記表示電極を覆う誘電体層と、前記誘電体層を放電から保護する保護膜と、前記隔壁の上側及び前記隔壁の近傍で前記保護膜を覆う遮光層とを有する前面板とを具備するプラズマディスプレイパネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネル及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
図1は、一般的なPDP2を分解した状態で、斜め上から見た拡大斜視図である。尚、図面が異なっても、対応する部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0003】
図1に示すように、PDP2は、一対の前面板4と背面板6を有している。前面板4と背面板6は、対向した状態で重ね合わされ、外周部が封止剤(図示せず)よって気密接着されている。
【0004】
前面板4と背面板6の間に形成された空間には、NeとXeを主成分とする放電ガスが封入され、約500Torrの圧力に保たれている。
【0005】
前面板4は、ガラス製の前面基板8と、前面基板8の上に形成された複数の表示電極10と、表示電極10を覆う誘電体層12と、誘電体層12の上に形成された保護膜14を備えている。
【0006】
表示電極10は、1テレビ走査線に相当する。表示電極10は、1組のX電極(走査電極16)及びY電極(維持電極18)によって形成されている。そして、X電極(走査電極16)及びY電極(維持電極18)は、夫々、前面基板8の上に形成された透明電極20と、この透明電極20の上に形成されたバス電極22からなっている。バス電極22は、高導電率の金属によって形成され、帯状の透明電極20の一辺に片寄って配置されている。
【0007】
表示電極10を覆う誘電体層12は、低融点ガラスによって形成されている。誘電体層12の上に形成された保護膜14は、放電耐性に優れた材料、例えばMgOで形成され、誘電体層12を放電から保護する。
【0008】
一方、背面板6は、ガラス製の背面基板24と、背面基板24の上に形成された複数のアドレス電極26と、アドレス電極26を覆う誘電体層28と、誘電体層28の上に格子状に形成された隔壁(リブ)30を有している。この誘電体層28は、低融点ガラスによって形成されている。
【0009】
更に、背面板6は、隔壁30の間に露出した誘電体層28の表面と、隔壁30の側壁とに形成された蛍光体32を有している。蛍光体32には、赤(R)、緑(G)、青(B)で発光する3種類の蛍光体が用いられる。これら3種類の蛍光体が、表示電極10の延在方向に沿って、周期的に配置されている。
【0010】
図1に示すように、アドレス電極26と表示電極10は立体交差(直交)している。そして、アドレス電極26と表示電極10の交差点を含む空間が、格子状の隔壁30によって囲われている。この隔壁30によって仕切られた空間により、放電セル34が形成されている。
【0011】
各放電セル34で直交するアドレス電極26と走査電極16には、夫々、表示予定の画像情報に基づいて、書き込み信号パルス(データパルス)と書き込み走査パルス(走査パルス)が印加される。
【0012】
両パルスが同時に印加された放電セルで書込み放電が発生し、保護膜14に壁電荷が形成される。一旦壁電荷が形成されると、走査電極16と維持電極18に交互に印加される維持パルスによって、維持放電が継続的に発生する。
【0013】
この維持放電によるプラズマ中で発生する紫外線が、蛍光体32を励起し発光させる。このようにして点灯した複数の放電セルによって、PDPの表面に画像が表示される。
【0014】
ところで、保護膜14は、誘電体層12を保護するだけでなく、二次電子を放出して放電が起きやすくする。従って、保護膜14は、放電耐性が高く且つ二次電子放出係数が高い材料で形成することが好ましい。このような、材料としては、MgO、CaO、SrO、BaO等がある。
【0015】
しかし、これらの材料は、大気中の水分や炭酸化物と反応し、容易に劣化してしまう。このため、保護膜の形成後、前面板4と背面板6を気密接着するまでの間に、保護膜14が劣化してしまうことがある。そこで、保護膜14の表面を、SiN、SiO、TiO、MgF、CaF等の一時保護膜で保護する技術が開発されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】第3073451号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
PDPと並ぶ大型及び薄型の画像表示装置(例えば、テレビジョン)としては、LCD(Liquid Crystal Display)がある。PDPには、LCDと比較すると、周囲が明るい場合のコントラスト、すなわち明室コントラストが低いという問題がある。
【0018】
そこで、本発明の目的は、明室コントラストが改善されたPDP及びその製造方法を提供することである。
【0019】
尚、隔壁としては、透明なものや黒く着色されたものも存在する。しかし、たとえ隔壁が透明であっても、外光は隔壁を透過して、隔壁側面に形成された蛍光体によって反射される。また、隔壁が黒く着色されていても、隔壁の上に食み出した蛍光体によって、外光は反射される。
【課題を解決するための手段】
【0020】
上記の目的を達成するために、本発明の第1の側面は、背面基板と、前記背面基板上に形成されたアドレス電極と、放電セルを区画する隔壁と、前記放電セルの内側に形成された蛍光体とを有する背面板と、前面基板と、前記前面基板上に形成された、査電極と維持電極とからなる表示電極と、前記表示電極を覆う誘電体層と、前記誘電体層を放電から保護する保護膜と、前記隔壁の上側及び前記隔壁の近傍で前記保護膜を覆う遮光層とを有する前面板とを具備するプラズマディスプレイパネルである。
【0021】
本発明の第2の側面は、前面基板の上に、走査電極と維持電極からなる表示電極と、前記表示電極を覆う誘電体層と、前記誘電体層を放電から保護する保護膜と、前記保護膜の表面に可視光を遮る遮光膜を順次形成して、前面板を作製する第1の工程と、背面基板の上に、アドレス電極と、放電セルを区画する隔壁と、前記放電セルの内側に蛍光体層とを順次形成して、背面板を作製する第2の工程と、前記前面板と前記背面板を組み立てた後、前記走査電極と前記維持電極の間に交流電圧を印加して放電を起こして、前記遮光膜を除去する第3の工程を具備するプラズマディスプレイパネルの製造方法である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、明室コントラストが改善されたPDPを提供することができうる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来のPDPを分解した状態で、斜め上から見た拡大斜視図である。
【図2】実施例1のPDPの平面図である。
【図3】図2で四角によって囲われた領域Aの拡大平面図である。
【図4】図3のIV-IV線における、実施例1のPDPの断面図である。
【図5】図3のV-V線における、実施例1のPDPの断面図である。
【図6】実施例1のPDPの製造工程を説明する、図3のIV-IV線における断面図である(その1)。
【図7】実施例1のPDPの製造工程を説明する、図3のIV-IV線における断面図である(その2)。
【図8】実施例1のPDPの製造工程を説明する、図3のIV-IV線における断面図である(その3)。
【図9】実施例1のPDPの製造工程を説明する、図3のIV-IV線における断面図である(その4)。
【図10】図3のIV-IV線における、実施例2のPDPの断面図である。
【図11】図3のV-V線における、実施例2のPDPの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面にしたがって本発明の実施の形態について説明する。但し、本発明の技術的範囲はこれらの実施の形態に限定されず、特許請求の範囲に記載された事項とその均等物まで及ぶものである。
【0025】
PDPの低い明室コントラストは、白色の蛍光体や隔壁が、外光を反射することに起因している。
【0026】
そこで、本実施の形態のPDPでは、隔壁の上側及び隔壁の近傍(又は、周囲)で、保護膜の表面が、可視光を遮る遮光層によって覆われている。この遮光層が、隔壁による外光の反射を防止して、PDPの明室コントラストを改善する。尚、「上側」とは、基板(前面基板又は背面基板)とは反対側の方向を意味する。
【0027】
ところで、隔壁は、その近傍(又は、周囲)に存在する放電ガスを冷却して、プラズマの接近を妨げる。このため、隔壁の近傍には、プラズマは拡がってこない。従って、隔壁の側壁及び近傍に形成された蛍光体は、発光しないか、或いは微弱にしか発光しない。
【0028】
本PDPでは、このように発光体としての機能が低い蛍光体の上側(隔壁の近傍)も、遮光層によって覆われている。従って、発光体としての機能が低い蛍光体による外光の反射も、本PDPによれば、防止することもできる。このため、明室コントラストが、更に改善される。
【0029】
以上のように、本PDPでは、発光に寄与しない領域(又は、発光への寄与が小さい領域)による外光の反射が防止されている。由って、本PDPによれば、明室コントラストを改善することができる。
【0030】
上述した遮光層は、保護膜の表面全体に遮光膜を一様に形成し、その後走査電極と維持電極の間に交流電圧を印加して放電を起こせば、容易に形成することができる。
【0031】
放電が起きるとプラズマが生成されて、遮光膜がプラズマに曝される。プラズマに曝されると、遮光膜はスパッタされ除去される。このため、プラズマが拡がらない隔壁近傍と隔壁の上側を残して、遮光膜が除去される。その結果、隔壁の上側及び隔壁の近傍で保護膜を覆う遮光層が、形成される。
【0032】
なお、走査電極と維持電極の間に交流電圧を印加するためには、例えば、走査電極及び維持電極に交互に維持パルス(電圧パルス)を印加すればよい。
【実施例1】
【0033】
以下図面に従って、本実施例のPDPの構成、動作、及び製造方法を説明する。
【0034】
(1)構 成
図2は、本実施例のPDP36の平面図である。
【0035】
図2に示すように、本PDP36は、前面板4と背面板6を具備している。
【0036】
前面板4には、水平方向に延在する走査電極16と同じく水平方向に延在する維持電極18からなる複数の表示電極が形成されている。
【0037】
走査電極16には、画像データを書き込むための電圧パルス(書き込み走査パルス)が、上から順番に印加される。すなわち、走査電極16には、矢印38の指し示す方向(走査方向)に向かって、順番に書き込み走査パルスが印加される。
【0038】
一方、背面板6には、走査電極16及び維持電極18に直交(立体交差)する複数のアドレス電極26が形成されている。このアドレス電極26と、走査電極16及び維持電極18が交差する位置には、放電セル34が形成されている。放電セル34は、個別に放電するPDPの最少単位領域である。
【0039】
図3は、図2で四角によって囲われた領域Aを拡大した拡大平面図である。但し、図3は、PDP36を90°回転した状態で描かれている。図4は、図3のIV-IV線における断面図である。図5は、図2のV-V線における断面図である。
【0040】
図3乃至図5に示すように、前面板4は、ガラス製の前面基板8と、前面基板8の上に形成された複数の表示電極10と、表示電極10を覆う誘電体層12と、誘電体層12の上に形成された保護膜14を備えている。更に、前面板4は、後述する背面板6を形成する隔壁30の上側及び隔壁30の近傍(又は、周囲)で保護膜14を覆う遮光層40を備えている。
【0041】
表示電極10は、1テレビ走査線に相当する。表示電極10は、1組のX電極(走査電極16)及びY電極(維持電極18)によって形成されている。そして、X電極(走査電極16)及びY電極(維持電極18)は、夫々、前面基板8の上に形成された透明電極20と、この透明電極20の上に形成されたバス電極22からなっている。バス電極22は、高導電率の金属によって形成され、帯状の透明電極20の一辺に片寄って配置されている。
【0042】
表示電極10を覆う誘電体層12は、低融点ガラスによって形成されている。誘電体層12の上に形成された保護膜14は、放電耐性に優れた材料、例えばMgOで形成され、誘電体層12を放電から保護する。
【0043】
遮光層40は、隔壁30の上側の領域と隔壁30を囲む幅十数μmの領域とからなる保護膜14の表面に、形成されている。この遮光層40は、厚さ0.1μmのCuO膜によって形成されている。CuOは黒色なので、外光を吸収して遮断する。従って、遮光層40を設けることによって、明室コントラストが改善される。尚、遮光層40の厚さとしては、0.05〜0.3μmが好ましい。
【0044】
背面板6は、図4及び5に示すように、ガラス製の背面基板24と、背面基板24の上に形成された複数のアドレス電極26と、アドレス電極26を覆う誘電体層28と、誘電体層28の上に格子状に形成された隔壁30を有している(図3には、遮光層40を透視して見た隔壁30が、破線によって示されている。)。誘電体層28は、低融点ガラスによって形成されている。
【0045】
更に、背面板6は、隔壁30の間に露出した誘電体層28の表面と、隔壁30の側壁とに形成された蛍光体32を有している。蛍光体32には、赤(R)、緑(G)、青(B)で発光する3種類の蛍光体が用いられている。これら3種類の蛍光体が、表示電極10(走査電極16及び維持電極18)の延在方向に沿って、周期的に配置されている。
【0046】
図2に示すように、アドレス電極26と表示電極10(走査電極16及び維持電極18)は立体交差(直交)している。そして、アドレス電極26と表示電極10の交差点を含む空間が、格子状の隔壁30によって囲われている。この隔壁30によって仕切られた空間により、発光の最小単位となる放電セル34が形成される。
【0047】
以上のように、本PDP36は、背面基板24と、背面基板24の上に形成されたアドレス電極26と、放電セル34を区画する隔壁30と、放電セル34の内側に形成された蛍光体32とを有する背面板6を具備している(図4及び5参照)。
【0048】
また、本PDP36は、前面基板8と、前面基板8の上に形成された、走査電極16と維持電極18とからなる表示電極10と、表示電極10を覆う誘電体12と、誘電体層12を放電から保護する保護膜14と、隔壁30の上側及び隔壁30の近傍(又は、周囲)で保護膜14を覆う遮光層40とを有する前面板4を具備している(図4及び5参照)。
【0049】
(2)動 作
次に、PDP36の動作を説明する。
【0050】
まず、各放電セル34で直交するアドレス電極26と走査電極16に、夫々、表示予定の画像情報に基づいて、書き込み信号パルス(データパルス)と書き込み走査パルス(走査パルス)が印加される。
【0051】
すると、両パルスが同時に印加された放電セル34で書込み放電が発生し、保護膜14に壁電荷が形成される。一旦壁電荷が形成されると、走査電極16と維持電極18に交互に印加される維持パルスによって、維持放電が継続的に発生する。
【0052】
この維持放電によってプラズマが発生し、紫外線を生成する。この紫外線が、蛍光体32を励起し発光させる。但し、隔壁30は、その近傍に存在する放電ガスは冷却して、プラズマの接近を妨げる。このため、隔壁30の近傍(又は、周囲)には、プラズマは拡がらない。従って、隔壁の側壁及び近傍(又は、周囲)に形成された蛍光体は、発光しないか、或いは微弱にしか発光しない。
【0053】
以上にように維持放電によって蛍光体が発光して放電セルが点灯し、PDP36の表面に画像が表示される。この時、隔壁30の側壁及び近傍に形成された蛍光体及び隔壁30の頂上に向かって入射する外光が、遮光層40によって吸収される。このため、発光体として殆ど機能しないこれらの領域では、外光が反射されなくなる。その結果、本PDP36の明室コントラストが、改善される。
【0054】
(3)製造方法
図6乃至9は、本PDP36の製造工程を説明する、図3のIV-IV線における断面図である。
【0055】
(a)前面板製造工程(図6参照)
まず、ガラスからなる前面基板8の表面に、スパッタリングにより透明導電膜を形成し、フォトリソグラフィにより帯状の透明電極20に加工する。透明導電膜の材料は、例えば、ITO(Indium Tin Oxide)である。この透明電極20の上に、スパッタリングより金属導電膜を形成する。金属導電膜は、例えば、Cr−Cu−Crの三層金属膜である。
【0056】
次に、この金属導電膜を、フォトリソグラフィにより加工して、帯状の透明電極20の上辺又は下辺に片寄った位置に、バス電極22を形成する。このバス電極22と上記透明電極20が一体となって、走査電極16及び維持電極18を形成する。
【0057】
次に、この走査電極16及び維持電極18からなる表示電極10の上に、誘電体層12を形成する。誘電体層12の材料は、低融点ガラスである。
【0058】
次に、PDP36の放電特性を改善し且つ誘電体層12を保護するため、誘電体層12の上に保護膜14を形成する。保護膜14の材料は、2次電子放出効率が高く、且つ放電によってスパッタされにくい酸化マグネシウム(MgO)である。保護膜14は、真空中で蒸着法によって形成する。
【0059】
更に、保護膜14の上に、厚さ0.1μmのCuO膜44を、蒸着法によって形成する。原料は、CuOである。尚、CuO膜44は、CuOをターゲットとするスパッタ法によって形成してもよい。
【0060】
このように、本工程では、前面基板8の上に、走査電極16と維持電極18からなる表示電極10と、表示電極10を覆う誘電体層12と、誘電体層12を放電から保護する保護膜14と、保護膜14の表面に可視光(外光)を吸収して遮る遮光膜42を順次形成する。
【0061】
(b)背面板製造工程(図7参照)
まず、ガラスからなる背面基板24の表面に、スパッタリングにより金属導電膜を形成し、フォトリソグラフィによりアドレス電極26を形成する。金属導電膜としては、Cr−Cu−Cr三層金属膜を用いる。
【0062】
次に、アドレス電極26の上に誘電体層28を形成する。誘電体層28の材料は、低融点ガラスである。
【0063】
次に、誘電体層28の全面に隔壁用の材料層を形成し、サンドブラスト加工により隔壁30を形成する。隔壁30の材料は、低融点ガラスである。そして、隔壁30中に蛍光体ペースト(蛍光体32)を、スクリーン印刷によって塗布する。
【0064】
このように、本工程では、背面基板24の上に、アドレス電極26と、放電セル34を区画する隔壁30と、放電セル34の内側に蛍光体32を順次形成する。
【0065】
(c)パネル組立て排気工程(図8参照)
以上のようにして形成した前面板4と背面板6とを、アドレス電極26と表示電極10とが交差するように対向させて、重ね合わせる。この状態で昇温し、両パネルの外周部に塗布した封止材(図示せず)を溶かして、前面板4と背面板6を接着する。同時に排気のためのチップ管(図示せず)を、背面板6に接着する。
【0066】
次に、このチップ管を通してパネルの内部を排気し、その後、NeとXeを主成分とする放電ガスを、パネル内部に形成された放電空間に充填する。充填圧力は、500Torrである。
【0067】
次に、チップ管を封じて、放電ガスをパネル内部に封止する。
【0068】
以上のように、本工程では、前面板4と背面板6を組み立てる。
【0069】
(d)遮光膜除去工程(図9参照)
次に、走査電極16と維持電極18に交流電圧を印加して、両電極間にプラズマ46(面放電)を発生させ、走査電極16と維持電極18の間のCuO膜44(遮光膜)をプラズマエッチングにより除去する。この時、CuO膜44(遮光膜)は、走査電極16と維持電極18の下側で除去される。但し、走査電極16と維持電極18の下側であっても、プラズマ46が広がっていかない隔壁30の近傍では、CuO膜44(遮光膜)は除去されない。
【0070】
このプラズマエッチングの結果、隔壁30の上側及び隔壁30の近傍(又は、周囲)で保護膜14を覆う遮光層40が形成される。
【0071】
このように、本工程では、走査電極16と維持電極18の間に数百Vの交流電圧を印加して放電を起こして、遮光膜を除去する。
【0072】
以上の工程により、本PDP36が完成する。
【実施例2】
【0073】
本実施例のPDP48の平面図及び拡大平面図は、実施例1の平面図(図2)及び拡大平面図(図3)と同じである。従って、図2及び図3を参照して、本PDP48を説明する。
【0074】
図10は、図3のIV-IV線における本PDP48の断面図である。図11は、図3のV-V線における本PDP48の断面図である。
【0075】
本PDP48は、実施例1のPDP36において、遮光層40の表面に、SiNからなる一時保護膜50が形成されているPDPである(図10及び11参照)。一時保護膜50は、前面板4と背面板6を組み立てるまでの間、一時的に保護層14を保護するための保護膜である。
【0076】
本PDP48を製造するためには、実施例1で説明したPDP36の製造方法において、CuO膜44(遮光膜)の形成後、その上に連続的に一時保護膜50を形成すればよい。
【0077】
一時保護膜(SiN膜)50は、SiHとNHを原料ガスとする化学気相成長法によって形成する。又は、一時保護膜50は、SiNをターゲットとするスパッタ法によって形成することもできる。
【0078】
本実施例では、保護膜14の形成後、その上に連続的に一時保護膜50を形成するので、保護膜14の表面に変質層が形成されず、保護膜50の放電特性を良好にすることができる。
【0079】
尚、SiNの代わりに、SiO、TiO、MgF、及びCaFの何れかで、一時保護膜50を形成してもよい。
【0080】
図10及び11に示した例では、遮光層40の上に一時保護膜50が形成されている。
【0081】
このようにすると、遮光層40と一時保護膜50からなる2層構造をプラズマエッチングする際、その終了時点を的確に把握することができる。これは、保護膜14に接している黒色の遮光層40が除去されると、前面板4が透明になるからである。
【0082】
但し、遮光層40と保護膜14の間に、一時保護膜50を形成してもよい。保護膜14を外気から保護する機能は、一時保護膜50を、保護膜14の上に直接形成しても十分に発揮されるからである。
【0083】
(変形例)
実施例1及び2では、保護膜14は、MgOで形成されている。しかし、保護膜14は、CaO、SrO、BaO、SrCuO等で形成してもよい。
【0084】
また、実施例1及び2では、遮光層40は、SiNで形成されている。しかし、遮光層40を、FeOやCrOなどの金属酸化物や、Ti粒子、Zr粒子、Al粒子等をベースとする黒色顔料で形成しても良い。
【0085】
また、遮光層40を、CuO、Fe、Fe、Cr等で形成しても良い。但し、これらの材料は黒色ではない。
【0086】
また、実施例1及び2のPDPは、格子状の隔壁を有する、所謂ボックス構造のPDPである。しかし、隔壁30は、必ずしも格子状である必要はない。例えば、表示電極に沿って延在するリッジ状の隔壁を用いて、本PDPを形成してもよい。
【符号の説明】
【0087】
2・・・従来のPDP 4・・・前面板 6・・・背面板
8・・・前面基板 10・・・表示電極 12・・・誘電体層
14・・・保護膜 16・・・走査電極 18・・・維持電極
20・・・透明電極 22・・・バス電極
24・・・背面基板 26・・・アドレス電極
28・・・誘電体層 30・・・隔壁 32・・・蛍光体
34・・・放電セル 36・・・実施例1のPDP
38・・・矢印(走査方向) 40・・・遮光層
42・・・(走査電極と維持電極の間に形成された)遮光膜
44・・・CuO膜 46・・・プラズマ
48・・・実施例2のPDP 50・・・一時保護膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
背面基板と、前記背面基板上に形成されたアドレス電極と、放電セルを区画する隔壁と、前記放電セルの内側に形成された蛍光体とを有する背面板と、
前面基板と、前記前面基板上に形成された、走査電極と維持電極とからなる表示電極と、前記表示電極を覆う誘電体層と、前記誘電体層を放電から保護する保護膜と、前記隔壁の上側及び前記隔壁の近傍で前記保護膜を覆う遮光層とを有する前面板とを、
具備するプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
請求項1に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記遮光層の表面又は前記遮光層と前記保護層の間に、前記前面板と前記背面板を組み立てるまでの間一時的に前記保護層を保護する一時保護膜が残存していることを、
特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記遮光膜が、CuO、CrO、及びFeOからなる群から選ばれる何れかの金属酸化膜であることを、
特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
請求項2に記載のプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記一時保護膜が、SiN、SiO、TiO、MgF、及びCaFからなる群から選ばれる何れかの絶縁膜であることを、
特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
前面基板の上に、走査電極と維持電極からなる表示電極と、前記表示電極を覆う誘電体層と、前記誘電体層を放電から保護する保護膜と、前記保護膜の表面に可視光を遮る遮光膜を順次形成して、前面板を作製する第1の工程と、
背面基板の上に、アドレス電極と、放電セルを区画する隔壁と、前記放電セルの内側に蛍光体層とを順次形成して、背面板を作製する第2の工程と、
前記前面板と前記背面板を組み立てた後、前記走査電極と前記維持電極の間に交流電圧を印加して放電を起こして、前記遮光膜を除去する第3の工程を、
具備するプラズマディスプレイパネルの製造方法。
【請求項6】
請求項5に記載のプラズマディスプレイパネルの製造方法において、
前記第2の工程で、前記遮光層の表面又は前記遮光層と前記保護膜の間に、前記前面板と前記背面板を組み立てるまでの間一時的に前記保護層を保護する一時保護膜を形成することを、
特徴とするプラズマディスプレイパネルの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2010−170713(P2010−170713A)
【公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−9825(P2009−9825)
【出願日】平成21年1月20日(2009.1.20)
【出願人】(599132708)日立プラズマディスプレイ株式会社 (328)
【Fターム(参考)】