説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】PDPの駆動時の共振による異音やノイズの発生を防止する。
【解決手段】放電空間を介して対向する前面ガラス基板1と背面ガラス基板4との間に、放電空間を放電セルCに区画する隔壁6と、放電空間の四方の外周縁に沿って形成されて放電空間を密閉するとともに前面ガラス基板1と背面ガラス基板4とを互いに固定する封着層8が設けられ、隔壁6が、背面ガラス基板4上に設けられているとともに、封着層8に対向する縁部分に封着層8との間隔を隔壁の縁部に沿って変化させる突出部分が形成され、この突出部分が他方の基板側に当接されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、プラズマディスプレイパネルの構造に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPという)は、前面ガラス基板の背面に行方向に延びる複数の行電極対が形成され、前面ガラス基板と放電空間を介して対向する背面ガラス基板に列方向に延びる複数の列電極が形成され、行電極対と列電極が交差する部分の放電空間にそれぞれ放電セルが形成されて隔壁によってそれぞれ区画されており、各放電セル内にそれぞれ放電セル毎に色分けされた赤,緑,青の蛍光体層が形成された構成を備えている。
【0003】
そして、前面ガラス基板と背面ガラス基板の間には、放電空間の外周縁に沿って放電空間を密閉する封着層が形成されていて、この封着層によって前面ガラス基板と背面ガラス基板が互いに分離不能に固定されている。
一方、背面ガラス基板上に形成されて固定されている隔壁は、その頂部が前面ガラス基板側の構造物に当接されているだけである。
【0004】
このような構成のPDPでは、行電極対の一方の行電極と列電極との間で選択的にアドレス放電が発生され、このアドレス放電によって選択された放電セル(発光セル)においてサステイン放電が発生されて赤,緑,青の蛍光体層が発光することにより、マトリクス表示による画像形成が行われる。
【0005】
従来、上記のような構成のPDPは、その駆動時に、各放電セルにおいてアドレス放電やサステイン放電等の各種放電が繰り返されることによって、放電空間に封入された放電ガスの膨張と収縮が繰り返され、さらに、行電極と列電極間に印加される電圧によって生じる静電気力によって、前面ガラス基板と背面ガラス基板間に反発と吸引が繰り返される。
【0006】
このため、PDPの駆動時に前面ガラス基板と背面ガラス基板に微小振動が発生し、互いに固定されていない隔壁の頂部と前面ガラス基板側の構造物との間に接触と離間が繰り返えされて異音やノイズが発生し、これによって、ユーザに不快感を与えてしまうという問題があった。
【0007】
このようなPDPの駆動時の異音やノイズの発生は、隔壁の頂部と前面ガラス基板側の構造物とが点接触しているような場合に、特に顕著である。
【0008】
従来、このようなPDPの駆動時の基板の振動に伴う異音やノイズの発生を抑制するために、パネルの非表示領域に位置する隔壁の頂部を前面ガラス基板側に固着して前面ガラス基板と背面ガラス基板の振動を抑制しようとしたPDP(例えば、特許文献1参照)や、パネルの非表示領域に支柱を形成して前面ガラス基板と背面ガラス基板の間隔を一定に保つことにより、隔壁の頂部と前面ガラス基板側とを面接触させて基板の振動に伴う異音やノイズの発生を抑制しようとしたPDP(例えば、特許文献2参照)等が提案されている。
【0009】
しかしながら、PDPには、図1および2に示されるように、前面ガラス基板P1と背面ガラス基板P2の間に形成された隔壁Wの端部と封着層Sとの間や略梯子形状に成形された隔壁Wのそれぞれの間に、排気や放電ガスの導入のための隙間が形成されており、このそれぞれの隙間の間隔を共振スパンとするPDPの基本構造に起因する共振モードが存在している。
【0010】
このため、この隔壁Wの端部と封着層Sの間の部分や各隔壁Wの間の隙間部分において発生する共振周波数が可聴帯域内に入ってくる場合があり、上記のような従来のPDPでは、PDPの基本構造に起因する共振による振動音の発生を十分に防止することは出来ない。
【0011】
【特許文献1】特開2001−176403号公報
【特許文献2】特許3686922号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明は、上記のような従来のPDPが有している問題点を解決することをその技術的課題の一つとしている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第1の発明によるPDPは、上記目的を達成するために、放電空間を介して対向する前面基板と背面基板との間に、放電空間を単位発光領域毎に区画する隔壁と、放電空間の四方の外周縁に沿って形成されて放電空間を密閉するとともに前面基板と背面基板とを互いに固定する封着層が設けられたプラズマディスプレイパネルにおいて、前記隔壁が、前面基板と背面基板の内の一方の基板上に設けられているとともに、封着層に対向する縁部分に封着層との間隔を隔壁の縁部に沿って変化させる突出部分が形成され、この突出部分が他方の基板側に当接されていることを特徴としている。
【0014】
第2の発明によるPDPは、前記目的を達成するために、放電空間を介して対向する前面基板と背面基板との間に、放電空間を単位発光領域毎に区画する隔壁と、放電空間の四方の外周縁に沿って形成されて放電空間を密閉するとともに前面基板と背面基板とを互いに固定する封着層が設けられたプラズマディスプレイパネルにおいて、前記隔壁が、前面基板と背面基板の内の一方の基板上に設けられているとともに、行方向に並ぶ単位発光領域の列毎に略梯子形状に成形されて、隣接する他の隔壁と所要の隙間を介して列方向に互いに平行に並設されており、この略梯子形状の各隔壁の隣接する隔壁に対向する側縁部の少なくとも一方に、隣接する隔壁との間隔を隔壁の側縁部に沿って変化させる突出部分が形成されて、この突出部分が他方の基板側に当接されていることを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
第1の発明は、放電空間を介して対向する前面ガラス基板と背面ガラス基板との間に、放電空間を放電セル毎に区画する隔壁と、放電空間の四方の外周縁に沿って形成されて放電空間を密閉するとともに前面ガラス基板と背面ガラス基板とを互いに固定する封着層が設けられ、隔壁が、背面ガラス基板上に設けられているとともに、封着層に対向する縁部分に封着層との間隔を隔壁の縁部に沿って変化させる突出部分が形成され、この突出部分が前面ガラス基板側に当接されているPDPを、その最良の実施形態としている。
【0016】
この実施形態によるPDPは、隔壁の縁部に形成された前面ガラス基板側に当接される突出部分によって、隔壁の封着層に対向する縁部と封着層と間隔が縁部に沿った各部分で異なっていることにより、隔壁と封着層との間に形成される共振モード、すなわち、特定の周波数に集中する構造物の固有振動数が隔壁の部分毎に異なってくる。
【0017】
これによって、このPDPの特定の周波数に集中する構造物の固有振動数が分散されて特定の共振モードに集中するのが防止されるので、PDP全体の共振レベルを低減させて、基板の共振に伴う異音やノイズの発生を防止することが出来る。
【0018】
上記実施形態において、隔壁の縁部に形成される突出部分は、この突出部分と封着層との間隔が隔壁の縁部に沿って任意の周期で変化するように形成するのが好ましい。
また、上記実施形態において、隔壁を行方向に並ぶ単位発光領域の列毎に略梯子形状に成形して隣接する他の隔壁と所要の隙間を介して列方向に互いに平行に並設し、各略梯子形状の隔壁の端部分によって各突出部分を構成し、この隔壁の端部分の長さを隣接する隔壁の端部分と互いに異なるようにするのが好ましい。
そして、この実施形態において、隔壁の端部分の封着層に対向する端面を、各隔壁の幅方向に沿って端部分と封着層の間隔が変化する形状に成形するのが好ましい。
【0019】
この形態の突出部分によれば、各突出部分毎にそれぞれの端面に沿ってPDPの共振スパンとなる封着層との間の間隔が変化しており、特定の周波数に集中する構造物の固有振動数が各隔壁の端部における位置で異なってくるため、このPDPの特定の周波数に集中する構造物の固有振動数がさらに分散されて特定の共振モードに集中するのが防止されるので、PDP全体の共振レベルをさらに低減させて、基板の共振に伴う異音やノイズの発生をさらに防止することが出来る。
【0020】
このような突出部分の端面の形状としては、封着層側に突出する円弧形状や、各隔壁の幅方向における中央の部分が封着層側に突出する三角形状,各隔壁の幅方向における一方の側部側の位置が封着層側に突出する三角形状,封着層と反対側に凹んだ円弧形状,各隔壁の幅方向における中央部が封着層と反対側に凹んだ三角形状等が挙げられる。
【0021】
また、上記実施形態において、隔壁を略格子形状に成形し、突出部分を、略格子形状の隔壁の縁部に沿って隣接する突出部分間で封着層側に突出する長さが異なる大きさに成形するのが好ましく、さらに、突出部分の封着層に対向する端面を、封着層側に突出する円弧形状に成形するのが好ましい。
【0022】
この実施形態におけるPDPも、特定の周波数に集中する構造物の固有振動数が分散されて特定の共振モードに集中するのが防止されるので、PDP全体の共振レベルを低減させて、基板の共振に伴う異音やノイズの発生を防止することが出来る。
【0023】
第2の発明は、放電空間を介して対向する前面ガラス基板と背面ガラス基板との間に、放電空間を放電セル毎に区画する隔壁と、放電空間の四方の外周縁に沿って形成されて放電空間を密閉するとともに前面ガラス基板と背面ガラス基板とを互いに固定する封着層が設けられ、隔壁が、背面ガラス基板上に設けられているとともに、行方向に並ぶ放電セルの列毎に略梯子形状に成形されて、隣接する他の隔壁と所要の隙間を介して列方向に互いに平行に並設されており、この略梯子形状の各隔壁の隣接する隔壁に対向する側縁部の少なくとも一方に、隣接する隔壁との間隔を隔壁の側縁部に沿って変化させる突出部分が形成されて、この突出部分が他方の基板側に当接されているPDPを、その最良の実施形態としている。
【0024】
この実施形態のPDPによれば、略梯子形状の各隔壁の上縁部に形成された突出長さが互いに異なっている突出部分によって、各突出部分と隙間を介して対向する隣接する他の隔壁との間の共振スパンとなる間隔が互いに異なっており、これによって、隙間を介して互いに対向する隣接する隔壁の間の部分に形成される共振モード、すなわち、特定の周波数に集中する構造物の固有振動数が、隔壁の部分毎に異なってくる。
【0025】
これによって、このPDPの特定の周波数に集中する構造物の固有振動数が、隙間を介して互いに隣接する隔壁間において分散されて特定の共振モードに集中するのが防止されるので、PDP全体の共振レベルをさらに低減させて、基板の共振による異音やノイズの発生を抑制することが出来る。
【0026】
上記実施形態において、隔壁の突出部分の隣接する隔壁に対向する端面を、各突出部分の幅方向に沿って突出部分と隣接する隔壁との間隔が変化する形状に成形するのが好ましい。
【0027】
これによって、各突出部分のそれぞれの端面に沿って共振スパンとなる隣接する他の隔壁との間の間隔がさらに変化するので、特定の周波数に集中する構造物の固有振動数が各突出部分における位置で異なってくるため、PDPの特定の周波数に集中する構造物の固有振動数が、隙間を介して互いに隣接する隔壁間においてさらに分散されて特定の共振モードに集中するのが防止されるので、PDP全体の共振レベルをさらに低減させて、基板の共振による異音やノイズの発生をさらに抑制することが出来る。
【0028】
また、上記実施形態において、突出部分と隣接する隔壁との間隔を、隔壁の側縁部に沿って任意の周期で変化させるようにするのが好ましい。
【実施例1】
【0029】
図3および4はこの発明によるPDPの実施形態における第1実施例を示しており、図3はこの実施例のPDPを前面ガラス基板を取り外した状態で示す平面図、図4はPDPを図3のV−V線の位置で断面した図である。
【0030】
この図3および4において、表示面である前面ガラス基板1の背面に、行方向(図4の紙面に対して垂直方向)に延びる複数の行電極対(X,Y)が列方向(図4の左右方向)に平行に並設されている。
【0031】
前面ガラス基板1の背面には、さらに、行電極対(X,Y)を被覆する誘電体層2が形成され、この誘電体層2の背面に保護層3が形成されて誘電体層2の背面が被覆されている。
【0032】
この前面ガラス基板1には、放電空間を介して背面ガラス基板4が平行に対向されており、この背面ガラス基板4の前面ガラス基板1に対向する側(表示側)の面上に、列方向に延びる列電極Dが列方向に平行に並設されている。
【0033】
背面ガラス基板4の表示側の面上には、さらに、列電極Dを被覆する列電極保護層5が形成され、この列電極保護層5上に、各行電極対(X,Y)に対向する部分毎に、それぞれ行方向に延びる一対の横壁とこの一対の横壁間を列方向に延びる複数の縦壁とによって略梯子形状に形成された複数の隔壁6が形成されている。
【0034】
この隔壁6は、それぞれ隣接する他の隔壁と行方向に延びる隙間SLを介して互いに平行に列方向に並設されており、この各隔壁6によって、前面ガラス基板1と背面ガラス基板4の間の放電空間が各行電極対(X,Y)と列電極Dが交差する部分毎に区画されて、前面ガラス基板1によって構成されるパネル面に沿ってマトリクス状に配置された複数の方形の放電セルCが形成されている。
この隔壁6の構成については、後で詳述する。
【0035】
各放電セルC内には、各放電セルC毎に赤,緑,青に色分けされた蛍光体層7が形成されている。
そして、前面ガラス基板1と背面ガラス基板4の間には、放電空間の四方の外周縁に沿って封着層8が形成されて、この封着層8によって放電空間が密閉されているとともに、前面ガラス基板1と背面ガラス基板4が互いに分離不能に固定されている。
放電空間内には、キセノンを含む放電ガスが封入されている。
【0036】
上記隔壁6は、それぞれ端部の長さが互いに異なる隔壁6A〜6Dを含んでいて、図示の例では隔壁6Aが一番短く、次いで、隔壁6B,6C,6Dの順に長くなるように形成されている。
【0037】
さらに、各隔壁6A〜6Dの端部6Aa〜6Daは、それぞれの端面が隔壁の長さ方向において外側(封着層8側)方向に突出する円弧形状に成形されている。
従って、各隔壁6A〜6Dの端部6Aa〜6Daの長さが異なっていることによって、隔壁6A〜6Dの端部6Aa〜6Daとこの端部に対向する封着層8との間の間隔L1〜L4は、隔壁6Aの端部6Aaと封着層8間の間隔L1が一番長く、次いで、隔壁6Bの端部6Baと封着層8間の間隔L2,隔壁6Cの端部5Caと封着層8間の間隔L3,隔壁6Dの端部6Daと封着層8間の間隔L4の順に、短くなっている。
【0038】
隔壁6A〜6Dの端部6Aa〜6Daの端面が円弧形状に成形されていることによって、各隔壁6A〜6Dにおいて、それぞれの端部6Aa〜6Daの頂部と封着層8間の間隔が一番短く、この頂部から隔壁の幅方向外側(図3において上方側または下方側)にゆくにしたがって長くなっている。
【0039】
この各隔壁6A〜6Dは、6A−6B−6C−6D−6C−6B−…というように、列方向に端部6Aa〜6Daの長さが順に長くなった後に順に短くなって、端部6Aa〜6Daと封着層8との間の間隔が周期的に変化するように配置されている。
この隔壁6A〜6Dは、何れも本体部分と円弧状の端部の頂面が前面ガラス基板1側に形成された保護層3の背面に当接されている。
【0040】
このPDPは、行電極対(X,Y)の一方の行電極Yと列電極D間で選択的にアドレス放電が発生され、このアドレス放電によって選択された放電セル(発光セル)Cにおいて行電極対(X,Y)の行電極XとY間でサステイン放電が発生されて赤,緑,青の蛍光体層7を発光させることにより、マトリクス表示による画像を形成する。
【0041】
一般的に、PDPのような構造物は、下記のような共振周波数fを持っている。
【0042】
f=(1.028/L2)×√(EH2/β)
E:構造物(ガラス基板等)のヤング率
β:構造物(ガラス基板等)の密度
H:構造物(ガラス基板等)の高さ(厚さ)
L:共振スパン
【0043】
そして、PDPにおいて、前面ガラス基板1側の構造物と背面ガラス基板4側の構造物との間に接触している部分と接触していない部分が存在すると、接触している部分の間に橋渡しのような共振構造が形成されて、PDPの駆動時に共振による振動が発生することになる。
【0044】
上記PDPは、前述したように、各隔壁6A〜6Dの端部6Aa〜6Daの長さが異なっていることによって、隔壁6A〜6Dの端部6Aa〜6Daとこの端部に対向する封着層8との間の共振スパンとなる間隔L1〜L4が互いに異なっており、これによって、各隔壁6A〜6Dの端部6Aa〜6Daと封着層8との間の部分に形成される共振モード、すなわち、特定の周波数に集中する構造物の固有振動数が、各隔壁6A〜6D間で異なってくる。
【0045】
さらに、隔壁6A〜6Dの端部6Aa〜6Daの各端面が円弧形状に成形されていることによって、各隔壁6A〜6Dにおいて、それぞれの端部の円弧形の端面に沿って共振スパンとなる封着層8との間の間隔が変化しており、特定の周波数に集中する構造物の固有振動数が、各隔壁6A〜6Dの端部6Aa〜6Daにおける位置で異なってくる。
【0046】
これによって、このPDPの特定の周波数に集中する構造物の固有振動数が分散されて特定の共振モードに集中するのが防止されるので、PDP全体の共振レベルを低減させて、基板の共振に伴う異音やノイズの発生を防止することが出来る。
【0047】
図5は、上記PDPの振動スペクトラムを示している。
【0048】
上記PDPは、隔壁6A〜6Dの端部6Aa〜6Daとこの端部に対向する封着層8との間の共振スパンとなる間隔L1〜L4が互いに異なっていることによって、各隔壁の端部の長さが同じであるPDPの場合と比べて振幅レベル値が小さい複数の共振周波数の基本成分fl,f2,f3…を有しているとともに、これら共振周波数の基本成分の干渉によるインタ・モジュレーション(f2−fl),(f3−f2),(f3−fl)…が低周波数領域に発生する。
【0049】
上記PDPは、さらに、各隔壁6A〜6Dの端部6Aa〜6Daの端面が円弧形状に成形されていて、封着層8との間の間隔が各隔壁6A〜6Dの端面に沿って変化して、共振スパンが、(Lll〜L12),(L21〜L22),(L31〜L32)…というように広く変化しているため(図3参照)、これにともなって、共振周波数の基本成分が、(fll〜f12),(f21〜f22),(f31〜f32)…というように分散したものとなる。
【0050】
図6は、各隔壁の端部の長さは互いに異なるが、それぞれの端面の形状が封着層と平行な直線状に成形されているPDPの振動スペクトラムを示しており、このPDPは、共振周波数の基本成分f0l,f02,f03…を有しているとともにインタ・モジュレーション(f02−f0l),(f03−f02),(f03−f0l)…を低周波数領域に発生させる。
【0051】
図5と図6を比較すると、PDPの各隔壁6A〜6Dの端部6Aa〜6Daの端面がそれぞれ円弧形状に成形されている図5の方が、共振周波数の基本成分とインタ・モジュレーションのそれぞれの振幅レベル値が、共に、図6の場合よりも小さくなっていることが分かる。
【0052】
以上のように、上記PDPは、各隔壁6A〜6Dの端部6Aa〜6Daの長さが異なっているとともに各端部の端面の形状がそれぞれ円弧形状に成形されていることによって、振幅レベル値が小さく周波数帯域の広い振動スペクトラムを有することになり、これによって、駆動時の共振によるノイズレベルを従来に比べて大幅に低下させることが出来る。
【0053】
なお、上記においては、隔壁6A〜6Dが、列方向に沿って端部の長さが短い順に配置され次に長い順に配置される周期的な配置になっている例が示されているが、隔壁6A〜6Dの配置はこれに限られず、端部の長さが短い順に配置された後に再度また短い順に配置される配置や、アットランダムな配置等、種々の配置の態様が可能である。
さらに、上記においては、隔壁の端部が四種類の長さに設定されている例が示されているが、これに限らず、隔壁の端部の長さの種類は任意に設定が可能である。
【0054】
図7は、上記PDPにおいて、隔壁の端部の形状の変形例を示している。
【0055】
上記においては、隔壁6A〜6Dのそれぞれの端部が隔壁の長さ方向において外側方向に突出する円弧形状に成形されている例が示されている。
【0056】
これに対し、図7(a)は、長さの異なる各隔壁16の端面16aが、頂点が隔壁16の幅方向の中央に位置するとともに隔壁の長さ方向において外側方向に突出する三角形状に成形されている例を示している。
図7(b)は、長さの異なる各隔壁26の端面26aが、頂点が隔壁26の幅方向の一方の側部(図示の例では下側の側部)に位置する三角形状に成形されている例を示している。
図7(c)は、長さの異なる各隔壁36の端面36aが、図3の例の場合と反対に、隔壁36の長さ方向において内側方向に凹んだ円弧形状に成形されている例を示している。
図7(d)は、長さの異なる各隔壁46の端面46aが、図7(a)の場合と反対に、頂点が隔壁16の幅方向の中央に位置するとともに隔壁の長さ方向において内側方向に凹んだ三角形状に成形されている例を示している。
【0057】
この図7(a)〜(d)の隔壁16〜46は、それぞれ、何れか一種を用いる様にしても良いし、適宜組み合わせて用いる様にしても良い。
【0058】
何れの場合においても、各隔壁16〜46において、それぞれの端部の端面形状に沿って、共振スパンとなる封着層との間の間隔が変化して特定の周波数に集中する構造物の固有振動数が変化するので、PDPの特定の周波数に集中する構造物の固有振動数が分散されて特定の共振モードに集中するのが防止されることにより、PDP全体の共振レベルを低減させることが出来る。
【実施例2】
【0059】
図8は、この発明によるPDPの実施形態における第2実施例を示している。
この実施例におけるPDPは、隔壁56が略格子形状に成形されている。
【0060】
この隔壁56の左右の側部(図8には左側部のみ記載されている)に、行方向に並ぶ放電セルCによって構成される表示ラインDLに対向する部分毎に、隔壁56の側方外側(封着層8に向かう側)に向けて突出する突出部56a〜56cが一体的に形成されている。
【0061】
この各突出部56a〜56cは、それぞれ円弧形状に成形されているとともに、封着層8側への突出長さが突出部56aが一番短く、次いで突出部56b,56cの順に長くなるように成形されている。
【0062】
この各突出部56a〜56cの封着層8側への突出長さが異なっていることによって、突出部56a〜56cとこの突出部に対向する封着層8との間の間隔L5〜L7は、突出部56aと封着層8間の間隔L5が一番長く、次いで、突出部56bと封着層8間の間隔L6,突出部56cと封着層8間の間隔L7の順に短くなっている。
【0063】
そして、突出部56a〜56cは、封着層8に対向する面が円弧形に成形されていることによって、各突出部56a〜56cにおいて、それぞれの突出部の頂部と封着層8間の間隔が一番短く、この頂部から突出部の幅方向外側(図8において上方側または下方側)にゆくにしたがって長くなっている。
【0064】
この各突出部56a〜56cは、56a−56b−56c−56b−56a…というように、封着層8側への突出長さが順に長くなった後に順に短くなって、封着層8との間の間隔が周期的に変化するように配置されている。
隔壁56と各突出部56a〜56cの頂面は、前面ガラス基板側に形成された保護層の背面に当接されている。
【0065】
この実施例のPDPは、隔壁56側部に、封着層8側への突出長さが互いに異なっている突出部56a〜56cが形成されていることによって、各突出部56a〜56cとこの突出部に対向する封着層8との間の共振スパンとなる間隔L5〜L7が互いに異なっており、これによって、隔壁56の端部と封着層8との間の部分に形成される共振モード、すなわち、特定の周波数に集中する構造物の固有振動数が、隔壁56の部分毎に異なってくる。
【0066】
さらに、各突出部56a〜56cが円弧形状に成形されていることによって、各突出部56a〜56cにおいて、それぞれの突出部の円弧形の端面に沿って共振スパンとなる封着層8との間の間隔が変化しており、特定の周波数に集中する構造物の固有振動数が、各突出部56a〜56cにおける位置で異なってくる。
【0067】
これによって、このPDPの特定の周波数に集中する構造物の固有振動数が分散されて特定の共振モードに集中するのが防止されるので、PDP全体の共振レベルを低減させて、基板の共振による異音やノイズの発生を抑制することが出来る。
【0068】
なお、上記においては、突出部56a〜56cが、列方向に沿って突出長さが短い順に配置され次に長い順に配置される周期的な配置になっている例が示されているが、隔壁6A〜6Dの配置はこれに限られず、突出長さが短い順に配置された後に再度また短い順に配置される配置や、アットランダムな配置等、種々の配置の態様が可能である。
【0069】
また、上記においては、突出部の突出長さが三種類の長さに設定されている例が示されているが、これに限らず、突出部の突出長さの種類は任意に設定が可能である。
また、上記においては、各突出部が円弧形状に成形されている例が示されているが、突出部の形状はこの形状に限られることなく、三角形状等の他の形状であっても良い。
また、上記においては、円弧状の突出部が隔壁の左右の側部に形成されている例が示されているが、同様の形状の突出部を、隔壁の上縁部および下縁部の放電セルの列方向の各列に対向する部分毎に形成するようにしても良い。
【0070】
これによって、隔壁の上部と下部においても、上述した側部の場合と同様に、PDPの特定の周波数に集中する構造物の固有振動数が分散されて特定の共振モードに集中するのが防止されるので、PDP全体の共振レベルをさらに低減させて、基板の共振による異音やノイズの発生を抑制することが出来る。
【実施例3】
【0071】
図9は、この発明によるPDPの実施形態における第3実施例を示している。
【0072】
この図9において、各隔壁66は、それぞれ第1実施例の場合と同様に略梯子形状に成形されていて、列方向に隙間SL1を介して互いに平行に並設されている。
各隔壁66の上縁部に、互いに高さが異なる突起部66a〜66cが一体的に形成されている。
【0073】
この各突起部66a〜66cは、それぞれ外周面が円弧形状に成形されているとともに、隔壁66からの突出長さが突出部66aが一番短く、次いで突出部66b,66cの順に長くなるように成形されている。
【0074】
この各突起部66a〜66cの封着層8側への突出長さが異なっていることによって、突起部66a〜66cに対向する封着層8との間の間隔L8〜L10および隙間SL1を介して隣接する隔壁66との間の間隔L11〜L13は、突起部66aとの間隔L8およびL11が一番長く、次いで、突起部66bとの間隔L9およびL12,突起部66cとの間隔L10およびL13の順に短くなっている。
【0075】
そして、突起部66a〜66cは、外周面が円弧状に成形されていることによって、各突起部66a〜66cにおいて、それぞれの突起部の頂部と封着層8または隣接する他の隔壁66との間の間隔が一番短く、この頂部から両側にゆくにしたがって長くなっている。
【0076】
この各突起部66a〜66cは、図示の例では、66a−66b−66c−66a−66b…というように、突出長さが短い順に並んだ配列が繰り返される形態で形成されている。
各隔壁66と各突起部66a〜66cの頂面は、前面ガラス基板側に形成された保護層の背面に当接されている。
【0077】
この実施例のPDPは、各隔壁66の上縁部に、突出長さが互いに異なっている突起部66a〜66cが形成されていることによって、各突起部66a〜66cと対向する封着層8との間の共振スパンとなる間隔L8〜L10、および、各突起部66a〜66cと隙間SL1を介して対向する隣接する他の隔壁66との間の共振スパンとなる間隔L11〜L13が互いに異なっており、これによって、隔壁66と封着層8との間の部分に形成される共振モード、および、隙間SL1を介して隣接する他の隔壁66との間の部分に形成される共振モード、すなわち、特定の周波数に集中する構造物の固有振動数が、隔壁66の部分毎に異なってくる。
【0078】
さらに、各突起部66a〜66cの外端面が円弧状に成形されていることによって、各突起部66a〜66cにおいて、それぞれの突起部の円弧形の端面に沿って共振スパンとなる封着層8または隣接する他の隔壁66との間の間隔が変化しており、特定の周波数に集中する構造物の固有振動数が、各突起部66a〜66cにおける位置で異なってくる。
【0079】
これによって、このPDPの特定の周波数に集中する構造物の固有振動数が、隔壁66と封着層8との間のみならず、隙間SL1を介して互いに隣接する隔壁66間においても分散されて、特定の共振モードに集中するのが防止されるので、PDP全体の共振レベルをさらに低減させて、基板の共振による異音やノイズの発生を抑制することが出来る。
【0080】
なお、上記においては、突起部66a〜66cの配列は、上記の例に限られず、突起部66a〜66cが、その突出長さが短い順に配置され次に長い順に配置される周期的な配置や、アットランダムな配置等、種々の配置の態様が可能である。
【0081】
また、上記においては、突起部の突出長さが三種類の長さに設定されている例が示されているが、これに限らず、突起部の突出長さの種類は任意に設定が可能である。
また、上記においては、各突起部の外端面が円弧形状に成形されている例が示されているが、突出部の形状はこの形状に限られることなく、三角形状等の他の形状であっても良い。
また、各突起部66a〜66cは、図示のように列方向に整列された状態で形成されていても良いが、各隔壁66毎に行方向にずれる態様で形成されるようにしても良い。
さらに、上記において、各隔壁の両端部を第1実施例と同様の形態に成形しても良い。
【0082】
上記第1および2実施例のPDPは、放電空間を介して対向する前面基板と背面基板との間に、放電空間を単位発光領域毎に区画する隔壁と、放電空間の四方の外周縁に沿って形成されて放電空間を密閉するとともに前面基板と背面基板とを互いに固定する封着層が設けられたプラズマディスプレイパネルにおいて、前記隔壁が、前面基板と背面基板の内の一方の基板上に設けられているとともに、封着層に対向する縁部分に封着層との間隔を隔壁の縁部に沿って変化させる突出部分が形成され、この突出部分が他方の基板側に当接されているPDPを、その上位概念の実施形態としている。
【0083】
上記第3実施例のPDPは、放電空間を介して対向する前面基板と背面基板との間に、放電空間を単位発光領域毎に区画する隔壁と、放電空間の四方の外周縁に沿って形成されて放電空間を密閉するとともに前面基板と背面基板とを互いに固定する封着層が設けられたプラズマディスプレイパネルにおいて、前記隔壁が、前面基板と背面基板の内の一方の基板上に設けられているとともに、行方向に並ぶ単位発光領域の列毎に略梯子形状に成形されて、隣接する他の隔壁と所要の隙間を介して列方向に互いに平行に並設されており、この略梯子形状の各隔壁の隣接する隔壁に対向する側縁部の少なくとも一方に、隣接する隔壁との間隔を隔壁の側縁部に沿って変化させる突出部分が形成されて、この突出部分が他方の基板側に当接されているPDPを、その上位概念の実施形態としている。
【図面の簡単な説明】
【0084】
【図1】従来例を示す平面図である。
【図2】図1のII−II線における断面図である。
【図3】この発明の実施形態における第1実施例のPDPを示す平面図である。
【図4】図3のIV−IV線における断面図である。
【図5】同実施例のPDPの振動スペクトラムを示すグラフである。
【図6】振動スペクトラムの比較例を示すグラフである。
【図7】同実施例における隔壁の端面形状の変形例を示す平面図である。
【図8】この発明の実施形態における第2実施例のPDPを示す平面図である。
【図9】この発明の実施形態における第3実施例のPDPを示す平面図である。
【符号の説明】
【0085】
1 …前面ガラス基板(前面基板)
4 …背面ガラス基板(背面基板)
6,6A,6B,6C,6D,56,66 …隔壁
6Aa,6Ba,6Ca,6Da …端部(突出部分)
8 …封着層
16a,26a,36a,46a …端面
56a,56b,56c …突出部(突出部分)
66a,66b,66c …突起部(突出部分)
C …放電セル(単位発光領域)
SL,SL1 …隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電空間を介して対向する前面基板と背面基板との間に、放電空間を単位発光領域毎に区画する隔壁と、放電空間の四方の外周縁に沿って形成されて放電空間を密閉するとともに前面基板と背面基板とを互いに固定する封着層が設けられたプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記隔壁が、前面基板と背面基板の内の一方の基板上に設けられているとともに、封着層に対向する縁部分に封着層との間隔を隔壁の縁部に沿って変化させる突出部分が形成され、この突出部分が他方の基板側に当接されていることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記突出部分と封着層との間隔が、隔壁の縁部に沿って任意の周期で変化している請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項3】
前記隔壁が、行方向に並ぶ単位発光領域の列毎に略梯子形状に成形されて、隣接する他の隔壁と所要の隙間を介して列方向に互いに平行に並設されており、各略梯子形状の隔壁の端部分が前記突出部分を構成していて、この隔壁の端部分の長さが隣接する隔壁の端部分と互いに異なっている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項4】
前記隔壁の端部分の封着層に対向する端面が、各隔壁の幅方向に沿って端部分と封着層の間隔が変化する形状に成形されている請求項3に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項5】
前記隔壁の端部分の端面が、封着層側に突出する円弧形状に成形されている請求項4に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項6】
前記隔壁の端部分の端面が、各隔壁の幅方向における中央の部分が封着層側に突出する三角形状に成形されている請求項4に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項7】
前記隔壁の端部分の端面が、各隔壁の幅方向における一方の側部側の位置が封着層側に突出する三角形状に成形されている請求項4に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項8】
前記隔壁の端部分の端面が、封着層と反対側に凹んだ円弧形状に成形されている請求項4に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項9】
前記隔壁の端部分の端面が、各隔壁の幅方向における中央部が封着層と反対側に凹んだ三角形状に成形されている請求項4に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項10】
前記隔壁が略格子形状に成形され、前記突出部分が、略格子形状の隔壁の縁部に沿って隣接する突出部分間で封着層側に突出する長さが異なる大きさに成形されている請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項11】
前記突出部分の封着層に対向する端面が、封着層側に突出する円弧形状に成形されている請求項10に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項12】
放電空間を介して対向する前面基板と背面基板との間に、放電空間を単位発光領域毎に区画する隔壁と、放電空間の四方の外周縁に沿って形成されて放電空間を密閉するとともに前面基板と背面基板とを互いに固定する封着層が設けられたプラズマディスプレイパネルにおいて、
前記隔壁が、前面基板と背面基板の内の一方の基板上に設けられているとともに、行方向に並ぶ単位発光領域の列毎に略梯子形状に成形されて、隣接する他の隔壁と所要の隙間を介して列方向に互いに平行に並設されており、
この略梯子形状の各隔壁の隣接する隔壁に対向する側縁部の少なくとも一方に、隣接する隔壁との間隔を隔壁の側縁部に沿って変化させる突出部分が形成されて、この突出部分が他方の基板側に当接されている、
ことを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項13】
前記隔壁の突出部分の隣接する隔壁に対向する端面が、各突出部分の幅方向に沿って突出部分と隣接する隔壁との間隔が変化する形状に成形されている請求項12に記載のプラズマディスプレイパネル。
【請求項14】
前記突出部分と隣接する隔壁との間隔が、隔壁の側縁部に沿って任意の周期で変化している請求項12に記載のプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−123652(P2009−123652A)
【公開日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−299199(P2007−299199)
【出願日】平成19年11月19日(2007.11.19)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【Fターム(参考)】