説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】緑色蛍光体の短残光時間を実現し、かつ、正帯電による輝度劣化やアドレス電圧上昇などを抑制したPDPを提供する。
【解決手段】プラズマディスプレイパネルの蛍光体層23は、ZnSiO:Mn蛍光体と(Y1−X,GdAl12:Ce(ただし、0≦X≦1)蛍光体との混合物よりなる緑色蛍光体層23bを備え、ZnSiO:Mn蛍光体の粒子表面から10nm以内におけるZn元素とMn元素の和に対するMn元素の比(Mn/(Zn+Mn))が0.08〜0.10であり、かつ、Si元素に対するZn元素とMn元素の和の比((Zn+Mn)/Si)が1.97〜2.02、さらに、混合物の(Y,Gd)BO:Tb蛍光体の混合比率が、50wt%〜70wt%である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空紫外線によって励起される蛍光体を含む蛍光体層を有するプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータやテレビなどの画像表示に用いられるカラー表示デバイスとして、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼ぶ)が大型で薄型軽量を実現することのできるカラー表示デバイスとして注目されている。
【0003】
PDPは、赤色、緑色、青色のいわゆる3原色を加法混色することにより、フルカラー表示を行っている。このフルカラー表示を行うために、3原色の各色を発光する蛍光体層が備えられている。この蛍光体層を構成する蛍光体粒子はPDPの放電セル内で発光する紫外線により励起され、各色の可視光を生成している。従来、赤色蛍光体としては(Y,Gd)BO:Euが、緑色蛍光体としてはZnSiO:Mnおよび(Y,Gd)BO:Tbが、さらに、青色蛍光体としてはBaMgAl1017:Euなどが知られている。
【0004】
ここで、PDPの動画像品質は、赤色、緑色、青色の各色蛍光体の残光特性によって大きく左右される。蛍光体の1/10残光時間(以下、単に残光時間と呼ぶ)が8msec以上あると、発光が尾を引くのが視認され表示画像品質が悪化する。また4msec以下であると残光が人の目に見えにくくなるため、表示画像品質が向上する。
【0005】
PDPに用いられる蛍光体のうち、青色蛍光体として通常使用されているBaMgAl1017:Euは、1msec以下の残光時間であるため問題はない。また、赤色蛍光体では、通常使用されている(Y,Gd)BO:Euの残光時間が約10msecと長い。そのため、より残光時間の短い(Y,Gd)(P,V)O:EuまたはY:Euに変えるか、それらを混合するなどして残光時間を低減することが必要である。
【0006】
一方、緑色蛍光体では、通常使用されているZnSiO:Mnや(Y,Gd)BO:Tbの残光時間が10msec以上と長いため、残光時間の短い(Y,Gd)Al(BO:Tbを混合することなどが特許文献1に開示されている。また、ZnSiO:Mn自体の残光時間を短くする方法として、発光中心であるMn濃度を高めることが特許文献2などに開示されている。
【0007】
また、ZnSiO:Mnからなる緑色蛍光体は、赤色蛍光体や青色蛍光体と異なり負極性に帯電し易いため、PDPに用いた場合に、放電特性を悪化させることが知られている。このような負帯電を改善するために、負帯電のZnSiO:Mnの表面に正帯電の酸化物を極性が正になるまで緻密に積層コーティングする方法や、正帯電の緑色蛍光体を混合する方法が特許文献3や特許文献4に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−195428号公報
【特許文献2】特開2006−274137号公報
【特許文献3】特開平11−86735号公報
【特許文献4】特開2001−236893号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、近年のテレビの大型化、高精細化に伴ってより高速での画素の点灯および消灯が必要とされ、緑色蛍光体の長い残光特性に起因する動画像表示品質の悪化がより顕著になってきている。例えば、高精細フルスペックのハイビジョンテレビでは画素は1920(水平)×1080(垂直)であり、従来のNTSCの画素数である852(水平)×480(垂直)と比較して約6倍に増加する。したがって、1画素あたりのアドレス放電に有する時間が短くなるため、放電特性の許容範囲が狭くなり画質低下を招くという課題がある。
【0010】
一方、これらの課題に対して、ZnSiO:Mn以外の蛍光体を単純に混合する方法で改善する場合には、発光効率の低下を伴う上、残光特性の改善も十分ではない。また、ZnSiO:MnのMn濃度を高める方法では、Mn濃度増加に伴う輝度低下の抑制が十分ではなく、さらに、粒子表面が負に帯電しやすいために、放電ミスやアドレス放電電圧の増加を伴うなどのアドレス放電特性が改善できない。
【0011】
また、これらの負帯電に対して、ZnSiO:Mnの表面に正帯電の酸化物をコーティングする方法ではさらに輝度低下が生じるといった課題がある。
【0012】
本発明は、このような課題を解決して、緑色蛍光体の短残光時間を実現し、かつ、色再現範囲を確保して輝度劣化とアドレス電圧の上昇のない高精細画像表示に最適なPDPを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明のPDPは、少なくとも前面側が透明な一対の基板を基板間に放電空間が形成されるように対向配置するとともに放電空間を複数に仕切るための隔壁を少なくとも一方の基板に配置し、かつ隔壁により仕切られた放電空間で放電が発生するように基板に電極群を配置するとともに放電により発光する蛍光体層を設けたPDPであって、蛍光体層は、ZnSiO:Mn蛍光体と(Y,Gd)BO:Tb蛍光体との混合物よりなる緑色蛍光体層を備え、ZnSiO:Mn蛍光体の粒子表面から10nm以内におけるZn元素とMn元素の和に対するMn元素の比(Mn/(Zn+Mn))が0.08〜0.10であり、かつ、Si元素に対するZn元素とMn元素の和の比((Zn+Mn)/Si)が1.97〜2.02、さらに、混合物の(Y,Gd)BO:Tb蛍光体の混合比率が、50wt%〜70wt%である。
【0014】
このような構成によれば、高精細画像表示においても残像がなく、高輝度で色再現性にすぐれてアドレス電圧も低減したPDPを実現することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上のように、本発明のPDPによれば、高精細画像表示においても残像のない、高輝度で色再現性にすぐれ、アドレス電圧を低減したPDPを実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】実施の形態におけるPDPの構造を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0018】
(実施の形態)
(1.PDPの構成)
図1は実施の形態におけるPDP10の構造を示す分解斜視図である。図1に示すように、PDP10は、前面基板11と背面基板17とから構成されている。ガラス製の前面基板11上には、走査電極12と維持電極13とで対をなす表示電極対14が互いに平行に複数対形成されている。この走査電極12および維持電極13は、走査電極12−維持電極13−維持電極13−走査電極12の配列で繰り返すパターンで形成されている。走査電極12は、酸化インジウムスズ(ITO)、酸化スズ(SnO)、酸化亜鉛(ZnO)などの導電性金属酸化物からなる幅の広い透明電極12aの上に、導電性を高めるために銀(Ag)などの金属を含む幅の狭いバス電極12bを積層して形成されている。維持電極13も同様に、幅の広い透明電極13aの上に幅の狭いバス電極13bを積層して形成されている。
【0019】
さらに、表示電極対14を覆うように誘電体層15および酸化マグネシウム(MgO)からなる保護層16が形成されている。誘電体層15は、膜厚が約40μmの酸化ビスマス(Bi)系低融点ガラスまたは酸化亜鉛(ZnO)系低融点ガラスで形成されている。保護層16は、膜厚が約0.8μmの酸化マグネシウム(MgO)を主体とするアルカリ土類金属酸化物からなる薄膜層であり、誘電体層15をイオンスパッタから保護するとともに放電開始電圧などの放電特性を安定させるために設けられている。
【0020】
ガラス製の背面基板17上には、銀(Ag)などを主成分とする導電性の高い材料からなる互いに平行な複数のデータ電極18が形成され、データ電極18を覆うように下地誘電体層19が形成されている。下地誘電体層19は、誘電体層15と同様の酸化ビスマス(Bi)系低融点ガラスなどであってもよいが、可視光反射層としての働きも兼ねるように酸化チタン(TiO)粒子を混合した材料であってもよい。
【0021】
下地誘電体層19上には縦隔壁22aと横隔壁22bとにより井桁状に構成された隔壁22が形成され、下地誘電体層19の表面と隔壁22の側面とには、赤色、緑色、青色に発光する赤色蛍光体層23a、緑色蛍光体層23b、青色蛍光体層23cが形成されている。
【0022】
隔壁22は、例えば低融点ガラス材料を用いて約0.12mmの高さに形成されている。
【0023】
また、実施の形態では、画面サイズが42インチクラスのフルハイビジョンテレビに合わせて、隔壁22の高さは0.1mm〜0.15mm、また隣接する隔壁22のピッチは0.15mmとしている。
【0024】
前面基板11と背面基板17とは、表示電極対14とデータ電極18とが交差するように対向配置され、その外周部をフリットなどの封着材(図示せず)によって封着され内部に放電空間が形成されている。放電空間にはキセノン(Xe)などを含む放電ガスが約6×10Paの圧力で封入されている。放電空間は隔壁22によって複数の区画に仕切られており、表示電極対14とデータ電極18とが交差する部分に放電セル24が形成されている。そしてこれらの放電セル24が放電、発光することにより画像が表示される。なお、PDP10の構造は上述したものに限られるわけではなく、隔壁22の形状がストライプ状であってもよい。
【0025】
(2.蛍光体材料の構成とその製造方法)
ここで、青色蛍光体層23cには、残光時間の短いBaMgAl1017:Euの青色蛍光体材料を用いている。赤色蛍光体層23aには、(Y,Gd)(P,V)O:Eu蛍光体またはY:Eu蛍光体の少なくとも一つを含む赤色蛍光体材料を用いている。また、緑色蛍光体層23bには、ZnSiO:Mnと(Y,Gd)BO:Tbとの混合緑色蛍光体材料を用いている。
【0026】
次に、各色の蛍光体材料の製造方法について説明する。本実施の形態において、蛍光体材料は固相反応法により製造されたものを用いている。
【0027】
青色蛍光体材料であるBaMgAl1017:Euは以下の方法で作製する。炭酸バリウム(BaCO)と炭酸マグネシウム(MgCO)と酸化アルミニウム(Al)と酸化ユーロピウム(Eu)とを蛍光体組成に合うように混合する。この混合物を空気中において800℃〜1200℃で焼成し、さらに水素と窒素を含む混合ガス雰囲気において1200℃〜1400℃で焼成して作製する。
【0028】
赤色蛍光体材料である(Y,Gd)(P,V)O:Eu蛍光体またはY:Eu蛍光体は以下の方法で作製する。酸化イットリウム(Y)、酸化ガドリミウム(Gd)、酸化バナジウム(V)、5酸化リン(P)と酸化ユーロピウム(EuO)とを蛍光体組成に合うように混合する。この混合物を空気中において600℃〜800℃で焼成し、さらに酸素と窒素を含む混合ガス雰囲気において1000℃〜1200℃で焼成して作製する。
【0029】
次に緑色蛍光体材料について説明する。本実施の形態では、緑色蛍光体材料として、ZnSiO:Mn蛍光体と(Y,Gd)BO:Tb蛍光体とを混合して用いている。特にZnSiO:Mnは、粒子表面10nm以下におけるMn元素に対するZn元素とMn元素の和との比(Mn/(Zn+Mn)比)が0.08〜0.10であり、かつZn元素とMn元素の和に対するSi元素との比((Zn+Mn)/Si比)が1.97〜2.02となる構成をしている。
【0030】
ここでZnSiO:Mnの粒子表面10nm以下におけるMn/(Zn+Mn)および(Zn+Mn)/Siは、XPS装置で測定することができる。XPSとは、X−ray Photoelectron Spectroscopyの略で、X線光電子分光分析と呼ばれ、物質の表面近傍10nmまでの元素の様子を調べる方法である。Mn/(Zn+Mn)および(Zn+Mn)/Siは、XPS装置によりZn、Si、Mnの分析を行い、それらより算出した値である。
【0031】
以下、本実施の形態における緑色蛍光体材料の製造方法についてさらに詳しく説明する。ZnSiO:Mnは、従来の固相反応法や液相法や液体噴霧法を用いて作製する。固相反応法は酸化物や炭酸化物原料とフラックスを焼成して作製する方法である。液相法は、有機金属塩や硝酸塩を水溶液中で加水分解し、必要に応じてアルカリなどを加えて沈殿させて生成した蛍光体材料の前駆体を熱処理して作製する方法である。また液体噴霧法は、蛍光体材料の原料が入った水溶液を加熱された炉中に噴霧して作製する方法である。
【0032】
本実施の形態で使用するZnSiO:Mnは、特に作製方法に影響を受けるものではないが、ここでは一例として固相反応法による製法について述べる。原料としては酸化亜鉛(ZnO)、酸化珪素(SiO)、炭酸マンガン(MnCO)を用いる。なお、炭酸マンガンを用いる方法と同様に水酸化マンガン、硝酸マンガン、ハロゲン化マンガン、シュウ酸マンガンなどを初期の材料に用い、これらを製造過程における焼成工程を経ることにより、間接的に酸化マンガンを得る方法がある。また、直接的に酸化マンガンを使用しても構わない。
【0033】
また、ZnSiO:Mnにおける亜鉛供給源となる材料として(以下、「Zn材」という。)、直接高純度の(純度99%以上)の酸化亜鉛を用いる。また、上述のように、酸化亜鉛を直接用いる方法以外に、高純度(純度99%以上)の水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、硝酸亜鉛、ハロゲン化亜鉛、シュウ酸亜鉛などを初期の材料に用い、これらを製造過程における焼成工程を経ることにより、間接的に上記酸化亜鉛を得る方法であっても構わない。
【0034】
ZnSiO:Mnにおける珪素供給源となる材料(以下、「Si材」という。)としては、高純度(純度99%以上)の二酸化珪素を用いることができる。また、珪酸エチルなどの珪素アルコキシド化合物を加水分解して得られる珪素の水酸化物を用いてもよい。
【0035】
従来の方法では、上記材料のうちSi材の組成比率を、化学量論比よりも過剰に混合することで高輝度の蛍光体を得ることを特徴としている。しかしながら、本実施の形態の製造方法では、従来の方法とは異なり、Zn材の組成比率を、化学量論比よりも過剰に混合することを特徴としている。
【0036】
具体的な各蛍光体材料の配合の一例として、MnCO:0.14mol、ZnO:1.88mol、SiO:1.00molとしている。
【0037】
Mn材、Zn材およびSi材の混合には、工業的に通常用いられるV型混合機、攪拌機など用いることができ、また、粉砕機能を有したボールミル、振動ミル、ジェットミル等も用いることができる。
【0038】
次に焼成工程について説明する。蛍光体材料の混合粉を大気雰囲気中において、焼成開始後6時間程度で最高温度1200℃にし、この最高温度を維持して4時間焼成を行い、その後、通常行なわれる大気雰囲気中で約12時間かけて降温させる。このようにして、緑色蛍光体材料粉が得られる。
【0039】
なお、焼成時の雰囲気は、大気雰囲気に限るものではなく、窒素雰囲気中、窒素と水素の混合雰囲気中でもよい。また最高温度は、1100℃〜1350℃の間が好ましいが、最高温度維持時間や昇温時間や降温時間などは適宜変更しても問題ない。
【0040】
なお、本実施の形態におけるZnSiO:Mnの、粒子表面10nm以下におけるMn元素に対するZn元素とMn元素の和との比や、Zn元素とMn元素の和に対するSi元素との比は、Mn材、Zn材およびSi材の混合割合や、焼成条件などを制御することにより調整している。
【0041】
次に、もう一方の緑色蛍光である(Y,Gd)BO:Tbは以下の方法で作製する。酸化イットリウム(Y)と酸化ガドリニウム(Gd)と酸化硼素(B)と酸化テルビウム(Tb)とを蛍光体組成に合うように混合する。混合物を空気中において1100℃〜1200℃で焼成し、さらに酸素と窒素を含む混合ガス雰囲気において1200℃〜1400℃で焼成して作製する。
【0042】
このようにして作製したZnSiO:Mnと(Y,Gd)BO:Tbを混合し、緑色蛍光体を作製する。
【0043】
(3.実機評価試験結果)
PDPの実機評価結果を表1に示し、各評価について下記のように評価した。
【0044】
【表1】

【0045】
(3.1 輝度評価)
上記の緑色蛍光体を用いて緑色蛍光体層23bを形成したPDP10を作製する。このPDP10に駆動回路などを接続してプラズマディスプレイ装置を作製する。このプラズマディスプレイ装置において緑色蛍光体層23bのみを発光させて輝度を測定した。なお、輝度は、従来品である比較品1の輝度を100とした時の相対値で表し、この相対的な輝度が85以上であることを目安としている。
【0046】
(3.2 色再現範囲評価)
色再現範囲とは、プラズマディスプレイ装置において、赤色、緑色、青色それぞれを単色で発光させた際の色度をxy色度座標上に描画し、その各点により形成される三角形の面積で示している。色再現範囲は、従来品である比較品1の色再現範囲を100とした時の相対値で表し、この相対的な色再現範囲が90以上であれば、HDTVの色度規格を満足し実用上好ましい。
【0047】
(3.3 緑色残光特性評価)
緑色の残光特性は、プラズマディスプレイ装置において、維持放電終了時の発光量が最大値となる時点を0として、発光量が最大値の1/10になる時間を測定し、従来品である比較品1の残光特性である9.2msよりも短い場合に残光特性の改善効果があるものと判定した。
【0048】
(3.4 アドレス放電特性評価)
アドレス放電特性は、プラズマディスプレイ装置において、安定したアドレス放電が生じるために必要なアドレス電極への印加電圧(以下、アドレス電圧)を測定し、従来品である比較品1との差が+5V以下であれば実用上問題がないものと判定した。
【0049】
ただし、高速アドレスが必要な立体画像表示や超高精細テレビでは、アドレス放電による消費電力がアドレス電圧の2乗に比例して増加するため、アドレス電圧が、従来品である比較品との差が−1V以下が必要である。
【0050】
(3.5 評価結果)
表1に実施例1〜6および比較例1〜4の緑色蛍光体の組成、およびそれを用いたPDP10の評価結果を示す。表1に示すように、比較例および実施例は、ZnSiO:Mnの粒子表面10nm以下におけるMn/(Zn+Mn)、および(Zn+Mn)/Siと(Y,Gd)BO:Tbの混合比率を異ならせたものである。
【0051】
また、比較例1は従来のZnSiO:Mnの場合を示し、他の比較例あるいは実施例は全てこの比較例1に対する相対値として評価している。
【0052】
表1に示すように、実施例1〜5では、相対輝度を90以上、色再現範囲を90以上、残光特性を高精細フルスペックのハイビジョンテレビに適用可能な7ms以下、さらにはアドレス電圧を比較例1以下に抑えることができる。したがって、このようなZnSiO:Mnを主体とした緑色蛍光体を用いたPDP10では、従来の課題であった残光時間が長いといった課題と、正帯電による輝度劣化やアドレス電圧上昇などの課題を解決し、高精細フルスペックの画像表示に最適なPDPを実現することができる。
【0053】
さらに、赤色蛍光体層23aが(Y,Gd)(P,V)O:Eu蛍光体またはY:Eu蛍光体の少なくとも一つを含むようにし、青色蛍光体層23cがBaMgAl1017:Eu蛍光体を含むようにすると、赤色蛍光体層23a、緑色蛍光体層23b、青色蛍光体層23cの全てにおいて残光時間を短くすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明のPDPによれば、高品位な動画像表示品質を実現するPDPを提供し、大画面の高精細画像表示装置などに有用である。
【符号の説明】
【0055】
10 PDP
11 前面基板
12 走査電極
12a,13a 透明電極
12b,13b バス電極
13 維持電極
14 表示電極対
15 誘電体層
16 保護層
17 背面基板
18 データ電極
19 下地誘電体層
22 隔壁
22a 縦隔壁
22b 横隔壁
23 蛍光体層
23a 赤色蛍光体層
23b 緑色蛍光体層
23c 青色蛍光体層
24 放電セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも前面側が透明な一対の基板を基板間に放電空間が形成されるように対向配置するとともに前記放電空間を複数に仕切るための隔壁を少なくとも一方の基板に配置し、かつ前記隔壁により仕切られた放電空間で放電が発生するように基板に電極群を配置するとともに放電により発光する蛍光体層を設けたプラズマディスプレイパネルであって、前記蛍光体層は、ZnSiO:Mn蛍光体と(Y,Gd)BO:Tb蛍光体との混合物よりなる緑色蛍光体層を備え、前記ZnSiO:Mn蛍光体の粒子表面から10nm以内におけるZn元素とMn元素の和に対するMn元素の比(Mn/(Zn+Mn))が0.08〜0.10であり、かつ、Si元素に対するZn元素とMn元素の和の比((Zn+Mn)/Si)が1.97〜2.02、さらに、前記混合物の(Y,Gd)BO:Tb蛍光体の混合比率が、50wt%〜70wt%であることを特徴とするプラズマディスプレイパネル。
【請求項2】
前記蛍光体層が、(Y,Gd)(P,V)O:Eu蛍光体またはY:Eu蛍光体の少なくとも一つを含む赤色蛍光体層と、BaMgAl1017:Eu蛍光体を含む青色蛍光体層とを備えることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイパネル。

【図1】
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【公開番号】特開2011−238499(P2011−238499A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109804(P2010−109804)
【出願日】平成22年5月12日(2010.5.12)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】