説明

プラズマディスプレイパネル

【課題】緑色蛍光体の輝度寿命及びPDPの駆動電圧を改善したPDPを提供する。
【解決手段】プラズマディスプレイパネルの蛍光体層は、Zn2SiO4:Mnと(Y1-x,Gdx3(Al1-y,Gay512:Ce(ただし、0≦x≦1,0≦y≦0.5)の混合物を含む緑色蛍光体層を備え、Zn2SiO4:Mnの表面は金属酸化物で被覆され、さらに金属酸化物で被覆されたZn2SiO4:Mnの最表面は酸化アルミニウムで被覆されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空紫外線によって励起される蛍光体を含む蛍光体層を有するプラズマディスプレイパネルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータやテレビなどの画像表示に用いられるカラー表示デバイスとして、プラズマディスプレイパネル(以下、PDPと呼ぶ)が大型で薄型軽量を実現することのできるカラー表示デバイスとして注目されている。PDPは、赤色、緑色、青色のいわゆる3原色を加法混色することにより、フルカラー表示を行っている。このフルカラー表示を行うために、3原色の各色を発光する蛍光体層が備えられている。この蛍光体層を構成する蛍光体粒子はPDPの放電セル内で発光する紫外線により励起され、各色の可視光を生成している。
【0003】
ここで、PDPの動画像品質は、赤色、緑色、青色の各色蛍光体の残光特性によって大きく左右される。蛍光体の1/10残光時間(以下、単に残光時間と呼ぶ)が8msec以上あると、発光が尾を引くのが視認され表示画像品質が悪化する。また4msec以下であると残光が人の目に見えにくくなるため、表示画像品質が向上する。
【0004】
PDPに用いられる蛍光体のうち、緑色蛍光体では、通常使用されているZn2SiO4:Mnや(Y,Gd)BO3:Tbの残光時間が10msec以上と長い。そのため、残光時間の短い(Y,Gd)Al3(BO34:Tbを混合することなどが特許文献1に開示されている。しかし、Zn2SiO4:Mnからなる緑色蛍光体は、赤色蛍光体や青色蛍光体と異なり負極性に帯電し易い。そのため、PDPに用いた場合に、放電特性を悪化させることが知られており、PDPの発光効率低下の一因となっている。
【0005】
そこで、負帯電を改善するために、負帯電のZn2SiO4:Mnの表面に正帯電の酸化物を極性が正になるまで緻密に積層コーティングする方法が特許文献2、3に開示されており、特に特許文献3には、Zn2SiO4:Mnの蛍光体粒子表面に酸化マグネシウム(MgO)が被覆されることで高輝度かつ輝度劣化の小さいプラズマディスプレイ装置(以下、PDP装置と呼ぶ)を実現する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平10−195428号公報
【特許文献2】特開平11−86735号公報
【特許文献3】国際公開WO2007−097327
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、Zn2SiO4:Mn(通常8〜14msec)に(Y,Gd)Al3(BO3)4:Tbを混合しても色域が狭くなる上、残光時間が4msec以下にすることができない。また、Zn2SiO4:Mnの蛍光体粒子表面が正帯電の金属酸化物で被覆されることで、PDP内へ金属酸化物由来の不純ガスが混入し、電圧特性が悪化してしまう。正帯電の金属酸化物において、特にMgOをはじめとするアルカリ土類金属の酸化物は強い塩基性であるため、炭酸ガスとの反応性が強く、多くの不純ガスをPDP内に持ち込む。その結果、駆動電圧が高くなり、消費電力が上昇してしまう。
【0008】
本発明は、上記課題を解決して駆動電圧の上昇を抑え、消費電力を低減した高性能なPDP装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明のPDP装置は、少なくとも前面側が透明な前面基板と放電空間を介して対向配置される背面基板とを有し、放電空間を複数に仕切るための隔壁が背面基板に形成され、かつ隔壁により仕切られた放電空間で放電が発生するように前面基板および背面基板に電極群が配置されるとともに放電により発光する蛍光体層が設けられたプラズマディスプレイパネルを備えたプラズマディスプレイ装置であって、蛍光体層は、Zn2SiO4:Mnと(Y1-x,Gdx3(Al1-y,Gay512:Ce(ただし、0≦x≦1,0≦y≦0.5)の混合物を含む緑色蛍光体層を備え、Zn2SiO4:Mnの表面は金属酸化物で被覆され、さらに金属酸化物で被覆されたZn2SiO4:Mnの最表面は酸化アルミニウムで被覆されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上のように、本発明のPDPによれば、長寿命、低消費電力、高輝度のPDP装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態におけるプラズマディスプレイ装置に用いるパネルの要部を示す分解斜視図
【図2】本発明の実施の形態によるプラズマディスプレイ装置のPDPの電極配列図
【図3】本発明の実施の形態によるプラズマディスプレイ装置のPDPの断面を表す図
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態1によるプラズマディスプレイ装置について、図1〜図3を用いて説明する。しかし、本発明の実施の態様はこれに限定されるものではない。
【0013】
<実施の形態1>
1、PDPの構成
図1は本発明の実施の形態1によるPDPにおいて、前面板1と背面板2とを分離した状態で示す分解斜視図、図2は本発明の実施の形態によるプラズマディスプレイ装置のPDPの電極配列図、図3は前面板1と背面板2とを貼り合わせてPDPとしたときの放電セル構造を示す断面図である。
【0014】
図1に示すように、PDPは、ガラス製の前面基板4と背面基板10とを、その間に放電空間3を形成するように対向配置することにより構成されている。
【0015】
前面板1は、ガラス製の前面基板4上に導電性の第1電極である走査電極5および第2電極である維持電極6を、間に放電ギャップMGを設けて互いに平行に配置して表示電極7を構成するとともに、その表示電極7を行方向に複数本配列して設け、そして走査電極5および維持電極6を覆うようにガラス材料からなる誘電体層8が形成され、その誘電体層8上にはMgOからなる保護層9が形成されている。走査電極5および維持電極6は、それぞれITOなどの透明電極と、この透明電極をそれぞれに電気的に接続されるように形成されたAgなどの導電性金属からなる膜厚が数μm程度のバス電極とから構成されている。また、背面板2は、ガラス製の背面基板10上に、ガラス材料からなる絶縁体層11で覆われかつ列方向にストライプ状に配列したAgからなる複数本のデータ電極12が設けられ、そして絶縁体層11上には、前面板1と背面板2との間の放電空間3を放電セル毎に区画するためのガラス材料からなる井桁状の隔壁13が設けられている。また、絶縁体層11の表面および隔壁13の側面には、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の蛍光体層14R、14G、14Bが設けられている。そして、走査電極5および維持電極6とデータ電極12とが交差するように前面板1と背面板2とが対向配置され、走査電極5および維持電極6とデータ電極12が交差する交差部分には、図2に示すように、放電セル15が設けられている。また、放電空間3には、放電ガスとして、例えばネオンとキセノンの混合ガスが封入されている。なお、PDPの構造は上述したものに限られるわけではなく、例えばストライプ状の隔壁を備えたものであってもよい。
【0016】
ここで、図3に示すように、放電セル15を形成する井桁形状の隔壁13は、データ電極12に平行に形成された縦隔壁13aと、この縦隔壁13aに直交するように形成した横隔壁13bとから構成されている。また、この隔壁13内に塗布して形成される蛍光体層14R、14G、14Bは、縦隔壁13aに沿ってストライプ状に青色蛍光体層14B、赤色蛍光体層14R、緑色蛍光体層14Gの順に配列して形成されている。
【0017】
図2は、この図1に示すPDPの電極配列図である。行方向に長いn本の走査電極Y1、Y2、Y3・・・Yn(図1の5)およびn本の維持電極X1、X2、X3・・・Xn(図1の6)が配列されている。そして、列方向に長いm本のデータ電極A1・・・Am(図1の12)が配列されている。さらに、1対の走査電極Y1および維持電極X1と1つのデータ電極A1とが交差した部分に放電セル15が形成され、放電セル15は放電空間内にm×n個形成されている。また、前記走査電極Y1および維持電極X1は、図2に示すように、走査電極Y1−維持電極X1−維持電極X2−走査電極Y2・・・・の配列で繰り返すパターンで、前面板1に形成されている。そしてこれらの電極のそれぞれは、前面板1、背面板2の画像表示領域外の周辺端部に設けられた接続端子それぞれに接続されている。
【0018】
2、PDPの製造方法
2−1、前面板の製造方法
フォトリソグラフィ法によって、前面基板4上に、走査電極5および維持電極6が形成される。走査電極5は、インジウム錫酸化物(ITO)などの透明電極と、透明電極に積層された銀(Ag)などからなるバス電極とから構成されている。維持電極6は、ITOなどの透明電極と、透明電極に積層されたAgなどからなるバス電極とから構成されている。バス電極の材料には、銀(Ag)と銀を結着させるためのガラスフリットと感光性樹脂と溶剤などを含む電極ペーストが用いられる。まず、スクリーン印刷法によって、電極ペーストが、透明電極が形成された前面基板4上に塗布される。次に、乾燥炉によって、電極ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、電極ペーストが露光される。次に、電極ペーストが現像され、バス電極パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、バス電極パターンが所定の温度で焼成される。つまり、電極パターン中の感光性樹脂が除去される。また、電極パターン中のガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していたガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、バス電極が形成される。ここで、電極ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、スパッタ法、蒸着法を用いることができる。次に、誘電体層8が形成される。誘電体層8の材料には、誘電体ガラスフリットと樹脂と溶剤などを含む誘電体ペーストが用いられる。たとえば、誘電体層8は、膜厚が約40μmの酸化ビスマス(Bi23)系低融点ガラスまたは酸化亜鉛(ZnO)系低融点ガラスで形成されている。まずダイコート法によって、誘電体ペーストが所定の厚みで走査電極5、維持電極6を覆うように前面基板4上に塗布される。次に、乾燥炉によって、誘電体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、誘電体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、誘電体ペースト中の樹脂が除去される。また、誘電体ガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していた誘電体ガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、誘電体層8が形成される。ここで、誘電体ペーストをダイコートする方法以外にも、スクリーン印刷法、スピンコート法を用いることができる。また、誘電体ペーストを用いずに、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、誘電体層8となる膜を形成することもできる。次に、誘電体層8上に保護層9が形成される。保護層9は、膜厚が約0.8μmの酸化マグネシウム(MgO)を主体とするアルカリ土類金属酸化物からなる薄膜層であり、誘電体層8をイオンスパッタから保護するとともに放電開始電圧などの放電特性を安定させるために設けられている。
【0019】
以上の工程により前面基板4上に走査電極5、維持電極6、誘電体層8および保護層9を有する前面板1が完成する。
【0020】
2−2、背面板の製造方法
フォトリソグラフィ法によって、背面基板10上に、データ電極12が形成される。データ電極12の材料には、導電性を確保するための銀(Ag)と銀を結着させるためのガラスフリットと感光性樹脂と溶剤などを含むデータ電極ペーストが用いられる。まず、スクリーン印刷法によって、データ電極ペーストが所定の厚みで背面基板10上に塗布される。次に、乾燥炉によって、データ電極ペースト中の溶剤が除去される。次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、データ電極ペーストが露光される。次に、データ電極ペーストが現像され、データ電極パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、データ電極パターンが所定の温度で焼成される。つまり、データ電極パターン中の感光性樹脂が除去される。また、データ電極パターン中のガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していたガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、データ電極12が形成される。ここで、データ電極ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、スパッタ法、蒸着法を用いることができる。
【0021】
次に、絶縁体層11が形成される。絶縁体層11の材料には、絶縁体ガラスフリットと樹脂と溶剤などを含む絶縁体ペーストが用いられる。例えば、絶縁体層11は、誘電体層8と同様の酸化ビスマス(Bi23)系低融点ガラスなどであってもよいが、可視光反射層としての働きも兼ねるように酸化チタン(TiO2)粒子を混合した材料であってもよい。まず、スクリーン印刷法によって、絶縁体ペーストが所定の厚みでデータ電極12が形成された背面基板10上にデータ電極12を覆うように塗布される。次に、乾燥炉によって、絶縁体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、絶縁体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、絶縁体ペースト中の樹脂が除去される。また、絶縁体ガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していた絶縁体ガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、絶縁体層11が形成される。ここで、絶縁体ペーストをスクリーン印刷する方法以外にも、ダイコート法、スピンコート法を用いることができる。また、絶縁体ペーストを用いずに、CVD(Chemical Vapor Deposition)法によって、絶縁体層11となる膜を形成することもできる。
【0022】
次に、フォトリソグラフィ法によって、隔壁13が形成される。隔壁13の材料には、フィラーと、フィラーを結着させるためのガラスフリットと、感光性樹脂と、溶剤などを含む隔壁ペーストが用いられる。まず、ダイコート法によって、隔壁ペーストが所定の厚みで絶縁体層11上に塗布される。次に、乾燥炉によって、隔壁ペースト中の溶剤が除去される。
【0023】
次に、所定のパターンのフォトマスクを介して、隔壁ペーストが露光される。次に、隔壁ペーストが現像され、隔壁パターンが形成される。最後に、焼成炉によって、隔壁パターンが所定の温度で焼成される。つまり、隔壁パターン中の感光性樹脂が除去される。また、隔壁パターン中のガラスフリットが溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していたガラスフリットが、ガラス化する。以上の工程によって、隔壁13が形成される。ここで、フォトリソグラフィ法以外にも、サンドブラスト法を用いることができる。隔壁13は、例えば低融点ガラス材料を用いて約0.12mmの高さに形成されている。また、実施の形態では、画面サイズが42インチクラスのフルハイビジョンテレビに合わせて、隔壁13の高さは0.1mm〜0.15mm、また隣接する隔壁13のピッチは0.15mmとしている。なお、PDPの構造は上述したものに限られるわけではなく、隔壁13の形状がストライプ状であってもよい。
【0024】
次に、蛍光体層14が形成される。蛍光体層14の材料には、蛍光体粒子とバインダと溶剤などとを含む蛍光体ペーストが用いられる。まず、ディスペンス法によって、蛍光体ペーストが所定の厚みで隣接する複数の隔壁13間の絶縁体層11上および隔壁13の側面に塗布される。次に、乾燥炉によって、蛍光体ペースト中の溶剤が除去される。最後に、焼成炉によって、蛍光体ペーストが所定の温度で焼成される。つまり、蛍光体ペースト中の樹脂が除去される。以上の工程によって、蛍光体層14が形成される。ここで、ディスペンス法以外にも、スクリーン印刷法を用いることができる。
【0025】
以上の工程により、背面基板10上に、データ電極12、絶縁体層11、隔壁13および蛍光体層14を有する背面板2が完成する。
【0026】
2−3、前面板と背面板との組立方法
まず、ディスペンス法によって、背面板2の周囲に封着ペーストが塗布される。塗布された封着ペーストは、封着ペースト層(図示せず)を形成する。次に乾燥炉によって、封着ペースト層中の溶剤が除去される。その後、封着ペースト層は、約350℃の温度で仮焼成される。仮焼成によって、封着ペースト層中の樹脂成分などが除去される。次に、表示電極7とデータ電極12とが直交するように、前面板1と背面板2とが対向配置される。さらに、前面板1と背面板2の周縁部が、クリップなどにより押圧した状態で保持される。この状態で、所定の温度で焼成することにより、低融点ガラス材料が溶融する。その後、室温まで冷却することにより、溶融していた低融点ガラス材料がガラス化する。これにより、前面板1と背面板2とが気密封着される。最後に、放電空間3にNe、Xeなどを含む放電ガスが封入される。封入する放電ガスの組成は、従来から用いられているNe−Xe系であるが、Xeの含有量を5体積%以上に設定し、封入圧力は55kPa〜80kPaの範囲に設定する。これによりPDPが完成する。
【0027】
3、蛍光体材料の構成とその製造方法
次に、各色の蛍光体材料と蛍光体材料の製造方法について説明する。本実施の形態において、蛍光体材料は固相反応法により製造されたものを用いている。
【0028】
3−1、青色蛍光体の構成とその製造方法
まず青色蛍光体材料について説明する。本発明の実施の形態では、青色蛍光体層14Bとして、残光時間の短いBaMgAl1017:Euの青色蛍光体材料を用いている。青色蛍光体材料であるBaMgAl1017:Euは以下の方法で作製する。
【0029】
炭酸バリウム(BaCO3)と炭酸マグネシウム(MgCO3)と酸化アルミニウム(Al23)と酸化ユーロピウム(Eu23)とを蛍光体組成に合うように混合する。この混合物を空気中において800℃〜1200℃で焼成し、さらに水素と窒素を含む混合ガス雰囲気において1200℃〜1400℃で焼成して作製する。
【0030】
3−2、赤色蛍光体の構成とその製造方法
次に赤色蛍光体材料について説明する。本発明の実施の形態では、赤色蛍光体層14Rとして、(Y,Gd)(P,V)O4:Eu蛍光体またはY23:Eu蛍光体の少なくとも一つを含む赤色蛍光体材料を用いている。赤色蛍光体材料である(Y,Gd)(P,V)O4:Eu蛍光体またはY23:Eu蛍光体は以下の方法で作製する。酸化イットリウム(Y23)、酸化ガドリミウム(Gd23)、酸化バナジウム(V25)、5酸化リン(P25)と酸化ユーロピウム(EuO2)とを蛍光体組成に合うように混合する。この混合物を空気中において600℃〜800℃で焼成し、さらに酸素と窒素を含む混合ガス雰囲気において1000℃〜1200℃で焼成して作製する。
【0031】
3−3、緑色蛍光体とその製造方法
3−3−1、緑色蛍光体
まず、緑色蛍光体材料について説明する。本発明の実施の形態では、緑色蛍光体層14Gとして、Zn2SiO4:Mnと(Y1-x,Gdx3(Al1-y,Gay512:Ceとを含む緑色蛍光体材料を用いている。
【0032】
さらに、本実施の形態では、Zn2SiO4:Mn蛍光体の表面は2層の金属酸化物膜によって被覆されている。例えば、Zn2SiO4:Mn蛍光体の表面は第1層目として酸化マグネシウム(MgO)の金属酸化物で被覆され、さらに第2層目として酸化アルミニウムが酸化マグネシウム(MgO)で被覆されたZn2SiO4:Mnの最表面に被覆されている。
【0033】
第1層目として酸化マグネシウム(MgO)が被覆される目的は、PDP装置としての輝度の向上とPDP装置を長時間使用した場合の蛍光体の輝度劣化を抑制することである。
【0034】
また、第2層目として最表面に酸化アルミニウムが被覆される目的は、第1層目がPDP装置内に持ち込む水(H2O)、一酸化炭素(CO)や二酸化炭素(CO2)などの不純ガスを低減することである。
【0035】
特に、第1層目として酸化マグネシウム(MgO)を被覆材料として用いた場合、PDP装置に持ち込む不純ガスが多く、輝度が向上したとしても、駆動電圧が上昇してしまう。しかし、第1層目の酸化マグネシウム(MgO)に加えて、さらに第2層目として酸化アルミニウム(Al23)がZn2SiO4:Mnの最表面に被覆されることで、不純ガスのPDP装置への持ち込みが低減される。
【0036】
なお、PDP装置内に持ち込む不純ガスとは、蛍光体粒子表面に吸着した水(H2O)、一酸化炭素(CO)や二酸化炭素(CO2)などがPDP装置の製造工程を経た後も蛍光体粒子表面に残留するガスを指す。
【0037】
そして、Zn2SiO4:Mnの最表面に被覆される酸化アルミニウム(Al23)のZn2SiO4:Mnに対する重量比率は、100ppm以上10000ppm以下である。100ppmを下回る場合はPDP装置内へ持ち込む不純ガスの低減効果が小さい。また、10000ppmを上回る場合は酸化アルミニウム(Al23)の被覆により蛍光体の励起源を遮蔽する効果が増大し、蛍光体の輝度が損なわれる。なお、第1層目の被覆材料については、酸化マグネシウム(MgO)に限らず、酸化ストロンチウム(SrO)や酸化バリウム(BaO)などの金属酸化物を含む。本実施形態では第1層目に酸化マグネシウム(MgO)、第2層目に酸化アルミニウム(Al23)を用いているが、酸化アルミニウム(Al23)は必ずしも第2層目でなくても良く、Zn2SiO4:Mn蛍光体の最表面が酸化アルミニウムで被覆されていればよい。蛍光体粒子へのコーティングの方法は後に詳細に説明する。
【0038】
3−3−2、緑色蛍光体の製造方法
次に、本発明の実施の形態における緑色蛍光体の製造方法について詳しく説明する。Zn2SiO4:Mn蛍光体は、従来の固相反応法や液相法や液体噴霧法を用いて作製する。固相反応法は酸化物や炭酸化物原料とフラックスを焼成して作製する方法である。また、液相法は、有機金属塩や硝酸塩を水溶液中で加水分解し、必要に応じてアルカリなどを加えて沈殿させて生成した蛍光体材料の前駆体を熱処理して作製する方法である。
【0039】
さらに、液体噴霧法は、蛍光体材料の原料が入った水溶液を加熱された炉中に噴霧して作製する方法である。本実施の形態で使用するZn2SiO4:Mn蛍光体は、特に作製方法に影響を受けるものではないが、ここでは一例として固相反応法による製法について述べる。
【0040】
はじめに原料混合であるが、原料としては酸化亜鉛、酸化珪素、炭酸マンガン(MnCO3)を用いる。また、上述のように、炭酸マンガンを用いる方法と同様に水酸化マンガン、硝酸マンガン、ハロゲン化マンガン、シュウ酸マンガン等を初期の材料に用い、これらを製造過程における焼成工程(後に詳細に説明する)を経ることにより、間接的に酸化マンガンを得る方法がある。また、直接的に酸化マンガンを使用しても構わない。
【0041】
Zn2SiO4:Mnにおける亜鉛供給源となる材料として(以下、「Zn材」という。)、高純度の(純度99%以上)の酸化亜鉛を用いる。また、上述のように、酸化亜鉛を直接用いる方法以外に、高純度(純度99%以上)の水酸化亜鉛、炭酸亜鉛、硝酸亜鉛、ハロゲン化亜鉛、シュウ酸亜鉛等を初期の材料に用い、これらを製造過程における焼成工程(後に詳細に説明する)を経ることにより、間接的に上記酸化亜鉛を得る方法であっても構わない。
【0042】
Zn2SiO4:Mnにおける珪素供給源となる材料(以下、「Si材」という。)としては、高純度(純度99%以上)の二酸化珪素を用いることができる。また、珪酸エチルなどの珪素アルコキシド化合物を加水分解して得られる珪素の水酸化物を用いてもよい。
【0043】
具体的な緑色蛍光体の材料の配合の一例として0.16molのMnCO3と、1.80molのZnOと、1.00molのSiO2とを混合している。Mn材、Zn材およびSi材の混合には、工業的に通常用いられるV型混合機、攪拌機等を用いることができ、また、粉砕機能を有したボールミル、振動ミル、ジェットミル等も用いることができる。以上のようにして、緑色蛍光体材料の混合粉が得られる。
【0044】
次に焼成工程について説明する。蛍光体材料の混合粉を大気雰囲気中において、焼成開始後6時間程度で最高温度1200℃にし、この最高温度を維持して4時間焼成を行う。その後、通常行われる大気雰囲気中で約12時間かけて降温させる。なお、焼成時の雰囲気は、大気雰囲気に限るものではなく、窒素雰囲気中、窒素と水素の混合雰囲気中でもよい。また、最高温度は、1100℃〜1350℃の間が好ましいが、最高温度維持時間や昇温時間や降温時間などは適宜変更しても問題ない。
【0045】
次に、もう一方の緑色蛍光体材料である(Y1-x,Gdx3(Al1-y,Gay512:Ceは以下の方法で作製する。酸化イットリウム(Y23)と酸化ガドリニウム(Gd23)と酸化アルミニウム(Al23)と酸化ガリウム(Ga23)と酸化セリウム(CeO2)とを蛍光体組成に合うように混合する。混合物を空気中において1000℃〜1200℃で焼成し、さらに酸素と窒素を含む混合ガス雰囲気において1200℃〜1400℃で焼成して作製する。本実施の形態では、x=0,y=0.2となるように組成を調整したが、0≦x≦1,0≦y≦0.5であれば、如何なる組成であっても問題はない。
【0046】
このようにして作製したZn2SiO4:Mnと(Y1-x,Gdx3(Al1-y,Gay512:Ceを混合し、緑色蛍光体を作製する。なお、本実施の形態では、Zn2SiO4:Mnと(Y1-x,Gdx3(Al1-y,Gay512:Ceを重量比率で50%ずつ混合したが、混合比率については、色度設計値や蛍光体粒子径により適宜調整が必要であり、駆動電圧低減の効果は、如何なる混合比率であっても同様の効果が得られる。
【0047】
3−3−3、緑色蛍光体の粒子表面に金属酸化物を被覆する方法
次に、緑色蛍光体の蛍光体粒子表面に金属酸化物を被覆する方法について説明する。まず、被覆されていないZn2SiO4:Mn蛍光体に酸化マグネシウム(MgO)を被覆する場合について述べる。硝酸マグネシウムを水またはアルカリ水溶液中に溶解する。その溶解液中に被覆されていないZn2SiO4:Mn蛍光体を投入して混合液を作製し、加熱しながら攪拌する。加熱温度は30℃未満では金属塩が溶液中に析出してしまう。また60℃を超える温度では、Zn2SiO4:Mn蛍光体が酸やアルカリによって溶解してしまう。このため、30℃以上かつ60℃以下の温度範囲内で加熱、攪拌する。この攪拌により溶解液中のマグネシウム陽イオンが負帯電性のZn2SiO4:Mn蛍光体に密着することで被覆が行われる。この混合液を濾過、乾燥し、その後この乾燥物を空気中において400℃〜800℃で焼成することで酸化マグネシウム(MgO)が表面に被覆されたZn2SiO4:Mn蛍光体が完成する。なお、酸化マグネシウム(MgO)の被覆量は最初に投入する硝酸塩の量で決定される。なお、他の金属酸化物で被覆される場合についても原料の硝酸塩を適宜変更して上記手法を用いることで同様にZn2SiO4:Mn蛍光体の蛍光体粒子表面に金属酸化物を被覆することができる。
【0048】
次に、酸化マグネシウム(MgO)で被覆されたZn2SiO4:Mn蛍光体の最表面に酸化アルミニウム(Al23)を被覆する場合について述べる。硝酸アルミニウムを水またはアルカリ水溶液中に溶解する。その溶解液中に被覆されていないZn2SiO4:Mn蛍光体を投入して混合液を作製し、加熱しながら攪拌する。加熱温度は30℃未満では金属塩が溶液中に析出してしまう。また60℃を超える温度では、Zn2SiO4:Mn蛍光体が酸やアルカリによって溶解してしまう。このため、30℃以上かつ60℃以下の温度範囲内で加熱、攪拌する。この攪拌により溶解液中のアルミニウム陽イオンが負帯電性のZn2SiO4:Mn蛍光体に密着することで被覆が行われる。この混合液を濾過、乾燥し、その後この乾燥物を空気中において400℃〜800℃で焼成することで酸化アルミニウム(Al23)が最表面に被覆されたZn2SiO4:Mn蛍光体が完成する。なお、酸化アルミニウム(Al23)の被覆量は最初に投入する硝酸塩の量で決定される。
【0049】
4、実機評価試験結果
本発明の実施形態におけるZn2SiO4:Mnと(Y1-x,Gdx3(Al1-y,Gay512:Ceとを含む緑色蛍光体層を備えたPDPの実機評価結果を表1に示した。なお、本試験評価では、比較品及び実施例品のいずれもZn2SiO4:Mnと(Y1-x,Gdx3(Al1-y,Gay512:Ceを重量比率で50%ずつ混合したものである。
【0050】
4−1、比較品および実施例品の詳細
比較品1および実施例品の詳細は以下の通りである。なお、各金属酸化物の被覆量(ppm)とは、製造条件中の緑色蛍光体の粉体における重量(wt%)に対する各金属酸化物の重量(wt%)を示している。
【0051】
<比較品1>
比較品1は、蛍光体粒子の表面に何も被覆されていないZn2SiO4:Mnと(Y1-x,Gdx3(Al1-y,Gay512:Ceとから構成される蛍光体層を備えたPDPである。
【0052】
<実施例品1>
実施例品1のPDPにおける蛍光体層は、蛍光体Zn2SiO4:Mnと(Y1-x,Gdx3(Al1-y,Gay512:Ceとを備え、蛍光体Zn2SiO4:Mnの蛍光体粒子の表面に酸化マグネシウム(MgO)のみが被覆されている。酸化マグネシウム(MgO)の被覆量は、500ppmである。
【0053】
<実施例品2>
実施例品2のPDPにおける蛍光体層は、蛍光体Zn2SiO4:Mnと(Y1-x,Gdx3(Al1-y,Gay512:Ceとを備え、蛍光体Zn2SiO4:Mnの蛍光体粒子の表面に酸化マグネシウム(MgO)のみが被覆されている。酸化マグネシウム(MgO)の被覆量は、2500ppmである。
【0054】
<実施例品3>
実施例品3は蛍光体Zn2SiO4:Mnの蛍光体粒子の表面に酸化マグネシウム(MgO)が被覆され、酸化マグネシウム(MgO)が被覆されたZn2SiO4:Mnの最表面にさらに酸化アルミニウム(Al23)が第2層目として被覆されている蛍光体と、(Y1-x,Gdx3(Al1-y,Gay512:Ceとから構成される蛍光体層を備えたPDPである。酸化マグネシウム(MgO)は2500ppm、酸化アルミニウム(Al23)は100ppmがそれぞれ被覆されている。
【0055】
<実施例品4>
実施例品4は蛍光体Zn2SiO4:Mnの蛍光体粒子の表面に酸化マグネシウム(MgO)が被覆され、酸化マグネシウム(MgO)が被覆されたZn2SiO4:Mnの最表面にさらに酸化アルミニウム(Al23)が第2層目として被覆されている蛍光体と、(Y1-x,Gdx3(Al1-y,Gay512:Ceとから構成される蛍光体層を備えたPDPである。酸化マグネシウム(MgO)は2500ppm、酸化アルミニウム(Al23)は1000ppmがそれぞれ被覆されている。
【0056】
<実施例品5>
実施例品5は蛍光体Zn2SiO4:Mnの蛍光体粒子の表面に酸化マグネシウム(MgO)が被覆され、酸化マグネシウム(MgO)が被覆されたZn2SiO4:Mnの最表面にさらに酸化アルミニウム(Al23)が第2層目として被覆されている蛍光体と、(Y1-x,Gdx3(Al1-y,Gay512:Ceとから構成される蛍光体層を備えたPDPである。酸化マグネシウム(MgO)は2500ppm、酸化アルミニウム(Al23)は10000ppmがそれぞれ被覆されている。
【0057】
<実施例品6>
実施例品6は蛍光体Zn2SiO4:Mnの蛍光体粒子の表面に酸化マグネシウム(MgO)が被覆され、酸化マグネシウム(MgO)が被覆されたZn2SiO4:Mnの最表面にさらに酸化アルミニウム(Al23)が第2層目として被覆されている蛍光体と、(Y1-x,Gdx3(Al1-y,Gay512:Ceとから構成される蛍光体層を備えたPDPである。酸化マグネシウム(MgO)は2500ppm、酸化アルミニウム(Al23)は15000ppmがそれぞれ被覆されている。
【0058】
4−2、実機評価
表1には、比較品1と実施例品1〜実施例品5までの実機評価を行うために、粉体輝度、TDS分析によるガス分率(%)、駆動電圧の変動量(V)の結果を示している。
【0059】
4−2−1、粉体輝度の評価
比較品1、実施例品1〜6の各蛍光体粉末に対して、146nmの紫外線で発光させた場合の輝度を分光光度計(浜松ホトニクス、PMA−12)で測定した。比較品1の輝度を基準に100とした場合の各実施例品における輝度を相対的に表している。
【0060】
4−2−2、吸着ガス量の評価
PDP装置への不純ガスの量を評価するために、TDS昇温脱離ガス分光法(TDS:Thermal Desorption Spectroscopy)による蛍光体粉末のガス吸着量を評価した。なお測定には電子化学株式会社 WA1000S/Wを使用した。
【0061】
比較品1、実施例品1〜6の蛍光体粉末について、60℃から650℃へ毎分10℃で昇温させた場合の蛍光体粉末から脱離する水(H2O)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)の総量をそれぞれ測定した。比較品1における各々のガス量を基準として100とした場合の各実施例品における吸着ガス量を相対的に示している。
【0062】
4−2−3、PDPの特性
蛍光体粒子に被覆された酸化物がPDP装置内に持ち込む不純ガスに起因する駆動電圧の変動量を評価するため、比較品1、実施例品1〜6を実際に使用したPDP装置を作製し、駆動電圧を測定した。駆動電圧はPDP装置が完全点灯する最低の電圧値とし、比較品1の駆動電圧(V)を基準として各実施例品における駆動電圧を比較品1と比較し、比較品1との駆動電圧差(V)を示している。つまり、比較品1の駆動電圧(V)より大きければ+の値となり、小さければ−の値となる。
【0063】
4−3、結果
各実機における結果を下記表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
粉体の輝度については、実施例品1〜2の第1層目の酸化マグネシウム(MgO)のみを被覆した場合、酸化マグネシウム(MgO)の被覆量が2500ppm以下では蛍光体の輝度に大きな変化は無く、PDP装置として使用上問題ない。また、実施例品3〜6の第1層目として酸化マグネシウム(MgO)、第2層目として酸化アルミニウム(Al23)を被覆した場合、酸化アルミニウム(Al23)の被覆量が10000ppm以下であれば蛍光体の輝度に大きな影響はない。しかし、酸化アルミニウム(Al23)の被覆量が10000ppmを超えた場合、酸化アルミニウム層により蛍光体を励起する紫外線が遮蔽され、輝度が大きく低下する。
【0066】
吸着ガス量については、第1層目の酸化マグネシウム(MgO)のみが被覆されている場合、比較品1、実施例品1、2からその被覆量が増加するにともなって、水(H2O)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)の吸着量が極めて大きく、特に輝度劣化の効果が高い2500ppmでは酸化マグネシウム(MgO)が被覆されていない場合に比べて水(H2O)が約1.4倍、一酸化炭素(CO)が1.3倍程度、二酸化炭素(CO2)については2倍以上増えている。一方、第2層目としてZn2SiO4:Mnの最表面に酸化アルミニウム(Al23)を100,1000,10000ppmと被覆させた実施例品3〜5は水(H2O)、一酸化炭素(CO)、二酸化炭素(CO2)ともにガス吸着量が大幅に小さい。
【0067】
また、PDP装置としての駆動電圧については、実施例品2では比較品1に対して2.5V上昇している。一方、第2層目としてZn2SiO4:Mnの最表面に酸化アルミニウム(Al23)が被覆されている実施例品3〜5では比較品1に対して1.5V、0.5V、0.5Vと、Zn2SiO4:Mnの表面に第一層目のみが被覆されている実施例品2に比べ駆動電圧が低減している。
【0068】
特に、第2層目としてZn2SiO4:Mnの最表面に酸化アルミニウム(Al23)が1000ppm以上10000ppm以下被覆されている場合、駆動電圧差がより小さい。
【0069】
以上の結果から、第2層目の酸化アルミニウム(Al23)の被覆量が100ppm以上10000ppm以下の場合、より駆動電圧が低減したPDP装置を実現することができる。
【0070】
5、実施の形態のまとめ
上記実施形態において特徴的な部分を以下に列記する。なお、上記実施形態に含まれる発明は、以下に限定されるものではない。なお、各構成の後ろに括弧で記載したものは、各構成の具体例である。各構成はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0071】
(1)
本発明のPDP装置は、少なくとも前面側が透明な前面基板(4)と放電空間(3)を介して対向配置される背面基板(10)とを有し、放電空間(3)を複数に仕切るための隔壁(13)が背面基板(10)に形成され、かつ隔壁(13)により仕切られた放電空間(15)で放電が発生するように前面基板(4)および背面基板(10)に電極群が配置されるとともに放電により発光する蛍光体層(14)が設けられたプラズマディスプレイパネルを備えたプラズマディスプレイ装置であって、Zn2SiO4:Mnと(Y1-x,Gdx3(Al1-y,Gay512:Ce(ただし、0≦x≦1,0≦y≦0.5)の混合物を含む緑色蛍光体層(14G)を備え、Zn2SiO4:Mnの表面は金属酸化物で被覆され、さらに金属酸化物で被覆されたZn2SiO4:Mnの最表面は酸化アルミニウムで被覆されていることを特徴とする。
【0072】
これにより、より低電圧で駆動する高輝度、高発光効率のPDP装置を実現することができる。
【0073】
(2)
(1)のPDP装置であって、金属酸化物は酸化マグネシウムであることを特徴とする。
【0074】
これにより、高輝度かつ輝度劣化の小さいPDP装置を実現することができる。
【0075】
(3)
(1)のPDP装置であって、酸化マグネシウムの重量比率は、Zn2SiO4:Mnに対して2500ppm以下であることを特徴とする。
【0076】
これにより、より高輝度かつ輝度劣化の小さいPDP装置を実現することができる。
【0077】
(4)
(1)のPDP装置であって、酸化アルミニウムの重量比率は、Zn2SiO4:Mnに対して100ppm以上10000ppm以下であることを特徴とする。
【0078】
これにより、輝度を維持するとともに、PDP装置内へ持ち込まれる不純ガスが低減される。その結果、駆動電圧が低減し、電圧マージンの確保および発光効率の維持が可能となり、高品質なPDP装置を提供することができる。
【0079】
(5)
少なくとも前面側が透明な前面基板と放電空間を介して対向配置される背面基板とを有し、放電空間を複数に仕切るための隔壁が背面基板に形成され、かつ隔壁により仕切られた放電空間で放電が発生するように前面基板および背面基板に電極群が配置されるとともに放電により発光する蛍光体層が設けられたプラズマディスプレイパネルを備えたプラズマディスプレイ装置の製造方法であって、Zn2SiO4:Mnを含む緑色蛍光体粒子の表面を金属酸化物で被覆し、金属酸化物で被覆されたZn2SiO4:Mnの最表面を酸化アルミニウムで被覆することを特徴とする。
【0080】
これにより、より低電圧で駆動する高輝度、高発光効率のPDP装置を実現することができる。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明は、長寿命、低消費電力、高輝度のPDP装置を実現することができ、大画面の表示デバイスなどに有用である。
【符号の説明】
【0082】
1 前面板
2 背面板
3 放電空間
4 前面基板
5 走査電極
6 維持電極
8 誘電体層
9 保護層
10 背面基板
11 絶縁体層
12 データ電極
13 隔壁
13a 縦隔壁
13b 横隔壁
14 蛍光体層
14R 赤色蛍光体層
14G 緑色蛍光体層
14B 青色蛍光体層
15 放電セル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも前面側が透明な前面基板と放電空間を介して対向配置される背面基板とを有し、前記放電空間を複数に仕切るための隔壁が前記背面基板に形成され、かつ前記隔壁により仕切られた放電空間で放電が発生するように前記前面基板および前記背面基板に電極群が配置されるとともに放電により発光する蛍光体層が設けられたプラズマディスプレイパネルを備えたプラズマディスプレイ装置であって、
前記蛍光体層はZn2SiO4:Mnと(Y1-x,Gdx3(Al1-y,Gay512:Ce(ただし、0≦x≦1,0≦y≦0.5)の混合物を含む緑色蛍光体層を備え、前記Zn2SiO4:Mnの表面は金属酸化物で被覆され、さらに前記金属酸化物で被覆された前記Zn2SiO4:Mnの最表面は酸化アルミニウムで被覆されていることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項2】
前記金属酸化物は酸化マグネシウムであることを特徴とする請求項1に記載のプラズマディスプレイ装置。
【請求項3】
前記酸化マグネシウムの重量比率は、
前記Zn2SiO4:Mnに対して2500ppm以下であることを特徴とする請求項2記載のプラズマディスプレイ装置。
【請求項4】
前記酸化アルミニウムの重量比率は、
前記Zn2SiO4:Mnに対して100ppm以上10000ppm以下であることを特徴とする請求項1記載のプラズマディスプレイ装置。
【請求項5】
少なくとも前面側が透明な前面基板と放電空間を介して対向配置される背面基板とを有し、前記放電空間を複数に仕切るための隔壁が前記背面基板に形成され、かつ前記隔壁により仕切られた放電空間で放電が発生するように前記前面基板および前記背面基板に電極群が配置されるとともに放電により発光する蛍光体層が設けられたプラズマディスプレイパネルを備えたプラズマディスプレイ装置の製造方法であって、
前記蛍光体層は、Zn2SiO4:Mnと(Y1-x,Gdx3(Al1-y,Gay512:Ce(ただし、0≦x≦1、0≦y≦0.5)とを含む緑色蛍光体粒子を備え、
Zn2SiO4:Mnを含む緑色蛍光体粒子の表面を金属酸化物で被覆し、金属酸化物で被覆された前記Zn2SiO4:Mnの最表面を酸化アルミニウムで被覆することを特徴とするプラズマディスプレイ装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−227083(P2012−227083A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−95761(P2011−95761)
【出願日】平成23年4月22日(2011.4.22)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】