説明

プラズマディスプレイ用硝子粉体含有ペースト組成物、及びそれを用いた転写フィルム

【課題】
硝子粉体の分散安定性に優れたペーストを、生産性、収率よく、低コストで製造し、かつ硝子粉体焼結時に樹脂が残らないような硝子粉体含有ペースト組成物及びそれを用いた転写フィルムを生産すること。
【解決手段】
ウレア基及び/又はウレタン基を含有するアクリル樹脂、硝子粉体、および溶剤を含有するプラズマディスプレイ用硝子粉体含有ペースト組成物及び、該硝子粉体含有ペースト組成物を支持フィルム上に塗布して転写層を形成したことを特徴とする転写フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイ用の硝子粉体含有ペースト組成物及びそれを用いた転写フィルムに関するものである。特に、前面板や背面板の誘電体膜を形成するために好適に使用することができる誘電体ペースト及び誘電体転写フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、平板状の蛍光表示体としてプラズマディスプレイが注目されている。図1は交流型のプラズマディスプレイパネルの断面形状を示す模式図の1例である。同図において、1および8は対向配置された硝子基板(通常1は前面板、8は背面板と呼ぶ)、11は隔壁であり、前面板1、硝子基板8および隔壁11によりセルが区画形成される。2は前面板1に固定された透明電極、7は透明電極の抵抗を下げる目的で透明電極上に形成されたバス電極で、低反射にするため黒色を呈している黒色導電層膜3と主電極4からなる。5は、透明電極2およびバス電極7を被覆するよう前面板1の表面に形成された誘電体膜である。6は例えば酸化マグネシウムよりなる保護膜である。9は背面板8に固定されたアドレス電極、10はアドレス電極9を被覆するように硝子基板8の表面に形成された誘電体膜、12はセル内に保持された蛍光物質である。
【0003】
透明電極およびバス電極の形成方法としては、まず、硝子基板上に、CVD法、スパッタ法や真空蒸着法でITOやSnOを主成分とした膜からなる、所定のパターンの透明電極を形成し、該透明電極の上にバス電極を形成して積層構造とする方法が一般的である。バス電極としては、クロムや銅などの金属をスパッタ法や真空蒸着法で積層することにより設けることができる。この他にも、低コストな厚膜ペーストを用いてスクリーン印刷法により形成する方法、塗布法、ドライフィルム法などで形成する検討がなされている。
【0004】
誘電体膜は硝子焼結体より形成され、その膜厚は、例えば20〜50μmとされる。誘電体膜の形成方法としては、低融点硝子粉末やその他無機粉体、樹脂および溶剤等を含有するペースト状の組成物(硝子粉体含有ペースト組成物)を調製し、この硝子粉体含有ペースト組成物をスクリーン印刷法によって前面板1及び/又は背面板8の表面に塗布して乾燥後焼成することにより誘電体膜を形成する方法が主流であった。
【0005】
しかし、この方法は膜厚のばらつきが大きい、メッシュ跡が残り表面平滑性に劣るという問題があった。そこで、例えば、硝子粉体含有ペースト組成物を支持フィルム基板上に塗布し、塗膜を乾燥して転写層を形成し、電極が固定された硝子基板の表面に転写し、転写層を焼成することにより、前記硝子基板の表面に誘電体膜を形成する転写フィルム法などが提案されている(特許文献1参照)。特に転写フィルム法は、膜の転写工程を含む簡単な方法によって、プラズマディスプレイパネルの各製膜工程の製造効率を飛躍的に向上させることができる。
【0006】
また、低融点硝子の分散性を向上するため、水酸基などの親水性の官能基を有する樹脂を用いることが提案されている(特許文献2参照)。
【特許文献1】特開平9−102273号公報
【特許文献2】特開平10−324541号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献2のような官能基を有する樹脂は硝子への濡れ性(親和性)に優れており、樹脂が硝子表面に強く吸着するため、焼成時の熱分解が遅れ、誘電体膜中に残留しやすくなり、誘電体膜が黒化し、透過率が低下するという問題がある。特に、誘電体転写フィルム法に用いた場合、従来の塗布、印刷法に比べ、樹脂の割合を多くする必要があるため、熱分解性を更に悪化させている。更に、生産性向上のため焼成時間の短縮化が図られており、樹脂を熱分解するための時間を更に短くする必要があり、透過率の低下が更に問題となっている。
【0008】
本発明は、以上のような問題を解決せしめるためになされたものである。本発明の目的は、硝子粉体焼結時に樹脂が残らないようなプラズマディスプレイ用硝子粉体含有ペースト組成物及びそれを用いた転写フィルムを提供することである。 特に、硝子粉体としてプラズマディスプレイの誘電体膜製造用の硝子を用いたとき、焼結時に樹脂が残らず、誘電体膜の光学特性の低下をまねかないようなプラズマディスプレイ用硝子粉体含有ペースト組成物及びそれを用いた転写フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明のプラズマディスプレイ用硝子粉体含有ペースト組成物は以下の組成からなるものである。すなわち、本発明のプラズマディスプレイ用硝子粉体含有ペースト組成物は、ウレア基及び/又はウレタン基を含有するアクリル樹脂、硝子粉体、および溶剤を含有するプラズマディスプレイ用硝子粉体含有ペースト組成物である。
【0010】
また、本発明の転写フィルムは、上記プラズマディスプレイ用硝子粉体含有ペースト組成物を支持フィルム上に塗工して転写層を形成した転写フィルムである。
【発明の効果】
【0011】
本発明のプラズマディスプレイ用硝子粉体含有ペースト組成物(以下、単に硝子粉体含有ペースト組成物とする)は、硝子粉体の分散性に優れているため、分散時間を短縮することができ、短時間で効率よくペーストを生産することができる。また、硝子粉体の分散安定性に優れているため、ペーストの長期保存性にも優れており、高い品質を長期にわたって保証することができる。さらに、本発明の硝子粉体含有ペースト組成物は硝子粉体の凝集が防止されるため、塗膜の欠点が少なく品質に優れたプラズマディスプレイを生産することができる。本発明の硝子粉体含有ペースト組成物を支持フィルム上に塗工して転写層を形成した転写フィルムも、硝子粉体の凝集が防止されているため、欠点が少なく品質に優れている。
【0012】
また、本発明の硝子粉体含有ペースト組成物において、ウレア基及び/又はウレタン基を含有するアクリル樹脂は熱分解性に優れるため、硝子粉体含有ペースト組成物を塗布し、乾燥した後、塗膜を焼成する工程において比較的短時間で熱分解するため、焼成不良起因の着色による透過率の低下もなく、高透明な誘電体膜を安定して形成することができる。特に、生産性向上のためタクトタイムを短縮して生産するため、短い焼成時間で生産する場合でも高品質な誘電体膜を生産することができる。この結果、パネルの輝度が向上したり、消費電力が少なくなるなどのメリットや、製品の歩留まりが向上するなどの効果が得られる。この硝子粉体含有ペースト組成物を支持フィルム上に塗工して転写層を形成した転写フィルムについても同様である。従来の転写フィルムは、転写層に粘着性や可とう性を付与するため、樹脂の量を増やしたり、可塑剤の添加など多くの有機物を含むため、熱分解しにくく長時間の加熱が必要であったが、本発明の転写シートは熱分解性が良好なため、焼成不良もなく、プラズマィスプレイの生産性を向上することができる。さらに、この転写フィルムによれば、膜厚の均一性および平滑性を維持しながら、厚膜の誘電体膜等を形成することができるので、大型のパネルに要求される誘電体膜であっても効率的に形成することができる。この結果、この転写フィルムにより製造されるプラズマディスプレイにおいて、輝度ムラなどの表示欠陥が発生することはない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の硝子粉体含有ペースト組成物について詳細に説明する。本発明の硝子粉体含有ペースト組成物は、ウレア基を含有するアクリル樹脂、硝子粉体、及び溶剤を含有することを特徴とする。
【0014】
<アクリル樹脂>
本発明の硝子粉体含有ペースト組成物のウレア基及び/又はウレタン基を含有するアクリル樹脂は、適度な粘着性を有して硝子粉体を結着させることができ、塗工膜の焼成処理温度(通常、400℃〜600℃)によって完全に分解除去される(共)重合体の中から選択されるのが好ましい。具体的には、下記構造式32で表されるアクリル単量体においてRで示される1価の有機基がウレア基(−NCON−)及び/又はウレタン基(−NCO−)を含有することで、(A)ウレア基及び、又はウレタン基を含有するアクリル単量体の重合体、(B)ウレア基及びウレタン基を含有しないアクリル単量体とウレア基及び/又はウレタン基を含有するアクリル単量体の共重合体、(C)ウレア基及び/又はウレタン基を含有するアクリル単量体の重合体とウレア基及びウレタン基を含有しないアクリル単量体の重合体の混合物、およびこれらの混合物が含まれる。
【0015】
【化1】

【0016】
(式中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rはウレア基及び/又はウレタン基を有する1価の有機基を示す。)。
【0017】
ウレア基は、例えば、イソシアナート基とアミノ基を反応させて合成することができる。Rには、ウレア基以外に、アルキル基やアルキルオキシ基、アルキルフェノキシ基、アミド基、スルフォンアミド基、アミノ基、カルボニル基等の極性基を含んでも良い。本発明の硝子粉体含有ペーストにおけるウレア基を含有するアクリル樹脂の具体例を、以下に示す。
【0018】
まず第1に、ウレア基を含有するアクリル樹脂が、(メタ)アクリル酸エステル重合体の場合について、構造式2のRの1例を、下記構造式3に示す。
【0019】
【化2】

【0020】
このような(メタ)アクリル酸エステル重合体は、例えば、(メタ)アクリル酸単量体に水酸基を有するウレア基含有化合物を反応させた後、重合することにより合成することができる。
【0021】
第2に、ウレア基を含有するアクリル樹脂が、(メタ)アクリルアミド重合体の場合について、構造式2のRの1例を、下記構造式4に示す。
【0022】
【化3】

【0023】
このような(メタ)アクリルアミド重合体は、例えば、(メタ)アクリル酸単量体とアミン基を有するウレア基含有化合物を反応させた後、重合することにより合成することができる。
【0024】
第3に、ウレア基を含有するアクリル樹脂が、アクリル基に直接ウレア基が結合している単量体の重合物である場合について、構造式2のRの1例を下記構造式5に示す。
【0025】
【化4】

【0026】
このようなアクリル基に直接ウレア基が結合している(メタ)アクリル重合は、例えば、(メタ)アクリルアミド単量体にイソシアネート基含有化合物を反応させた後、重合することにより合成することができる。
【0027】
また、ウレア基としては、エチレンウレア基を有するものが好ましく使用することができる。エチレンウレア基を有するものとは、ウレア基が下記構造式71であるものを示す。
【0028】
【化5】

【0029】
構造式1で示されるエチレンウレア基含有アクリル単量体の具体例としては、2−メタアクリロイルオキシエチルエチレンウレア、2−メタクリルアミドエチルエチレンウレアなどが例示される。この2例について、構造式2における化学構造式Rを、構造式6に示す。
【0030】
【化6】

【0031】
該ウレア基含有アクリル単量体は単独でもよいが、2種類以上のウレア基を有するアクリル単量体からなる共重合体、さらには2種類以上のウレア基を有するアクリル樹脂の混合物、さらにはこれらの混合物であってもよい。
【0032】
次に、ウレタン基は、例えば、イソシアナート基と水酸基を反応させて合成することができる。本発明の硝子粉体含有ペーストにおけるウレタン基を含有するアクリル樹脂の具体例を、以下に示す。
【0033】
まず第1に、ウレタン基を含有するアクリル樹脂が、(メタ)アクリル酸エステル重合体の場合について、構造式32のRの1例を、下記構造式7に示す。
【0034】
【化7】

【0035】
このような(メタ)アクリル酸エステル重合体は、例えば、側鎖にイソシアネート基を有する(メタ)アクリル酸エステル単量体に水酸基を有する有機化合物(アルコール類)を反応させた後、重合することにより合成することができる。また、(メタ)アクリル酸単量体に水酸基を有するウレタン基含有化合物を反応させた後、重合することにより合成することもできる。
【0036】
第2に、ウレタン基を含有するアクリル樹脂が、(メタ)アクリルアミド重合体の場合について、構造式32のRの1例を、下記構造式8に示す。
【0037】
【化8】

【0038】
このような(メタ)アクリルアミド重合体は、例えば、(メタ)アクリル酸単量体とアミン基を有するウレタン基含有化合物を反応させた後、重合することにより合成することができる。
【0039】
該ウレタン基含有アクリル単量体は単独でもよいが、2種類以上のウレタン基を有するアクリル単量体からなる共重合体、さらには2種類以上のウレタン基を有するアクリル樹脂の混合物、さらにはこれらの混合物であってもよい。
【0040】
また、ウレア基及び/又はウレタン基含有アクリル単量体の量は、全アクリル単量体に対して、重量比で0.1〜30重量%含有していることが好ましく、さらに好ましくは0.2〜20重量%、特に好ましくは0.5〜10重量%である。ウレア基及び/又はウレタン基含有アクリル単量体が0.1重量%以上であると、硝子の分散生が良く、アクリル樹脂の熱分解性に優れ、好ましい。また、30重量%以下であると塗工にゲル化することもなく、適切な粘度のアクリル樹脂を安定して生産できるばかりか、高価なウレア基又はウレタン基を含むアクリル単量体を少なくできるので、コストを低くすることができ好ましい。すなわち、ウレア基を含有するアクリル単量体と、ウレア基を含有しないアクリル単量体との共重合体が、特に好ましい。
【0041】
ウレア基及びウレタン基を含有しないアクリル単量体の例としては、アクリル酸エステル、メタアクリル酸エステル系のものとして、アルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシアルキル(メタ)アクリレート、アルコキシアルキル(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート、シクロアルキル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレートなどがあり、具体的にはエチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、t−オクチル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、オクタデシル(メタ)アクリレート、アセトキシル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、2−(2−メトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレート、3−フェノキシ−2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノフェニル(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノエチルエーテル(メタ)アクリレート、β−フェノキシエトキシエチル(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、トリフロロエチル(メタ)アクリレート、オクタフロロペンチル(メタ)アクリレート、パーフロロオクチルエチル(メタ)アクリレート、などを挙げることができる。
【0042】
これらのうち、特に好ましい(メタ)アクリレート化合物として、メチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレートなどを挙げることができる。
【0043】
これ以外に、ウレア基及びウレタン基を含有しないアクリル単量体としては、アクリル酸アミド、メタアクリル酸アミド系のものがあり、具体的には(メタ)アクリルアミド、N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−t−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−シクロへキシル(メタ)アクリルアミド、N−(2−メトキシエチル)(メタ)アクリルアミド、N、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ベンジル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミドなどを挙げることができる。
【0044】
さらに、ウレア基及びウレタン基含有アクリル単量体との共重合に使用できる他の単量体としては、アクリル単量体と共重合可能な化合物であれば特に制限はなく、例えば(メタ)アクリル酸、ビニル安息香酸、ビニルマレイン酸、ビニルフタル酸などの不飽和カルボン酸類;ビニルベンジルメチルエーテル、ビニルグリシジルエーテル、スチレン、α−メチルスチレン、ブタジエン、イソプレンなどのビニル基含有ラジカル重合性化合物を挙げることができる。全樹脂におけるアクリル樹脂成分の割合は、好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは100重量%である。70重量%以上にすることにより硝子粉体の分散性が良く、アクリル樹脂の熱分解性に優れ、好ましい。
【0045】
本発明の硝子粉体含有ペースト組成物を構成するアクリル樹脂の分子量としては、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)によるポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が2,000〜400,000であることが好ましく、さらに好ましくは10,000〜300,000で、さらに好ましくは50,000〜250,000である。これらの範囲にすることにより、硝子粉体含有ペーストの粘度を塗工時に適切な範囲とすることができ、また、支持フィルム上に塗布されて形成された転写層の力学的強度を向上させることができる。
【0046】
また、アクリル樹脂は粘着性を有することが好ましく、ガラス転移温度が低いものが好ましい。ガラス転移温度は、好ましくは60℃以下、より好ましくは20℃以下、さらに好ましくは0℃以下である。ガラス転移温度をこれらの値以下にすることにより、粘着性を付与することができる。
【0047】
また、本発明の硝子粒子含有ペースト組成中に可塑剤、粘着性付与剤などを添加するのも好ましい。これらを添加することにより、粘着性を付与することができる。
【0048】
また、ウレア基及び/又はウレタン基を含有するアクリル樹脂の熱分解が完了温度が400℃以下であることが好ましい。さらに好ましくは380℃以下で、より好ましくは360℃以下である。これらの熱分解温度以下であると、焼成時の樹脂の熱分解が早く進み、焼成膜中に残留することないため、焼成膜が黒化したり、透過率が低下するという問題が発生することなく、好ましい。熱分解温度は、空気中での加熱により樹脂の熱分解が完了する温度で、熱重量測定装置(TGA法)で重量変化を測定することにより測定することができる。アクリル樹脂の中にウレア基を含有するモノマーを所定量含むことにより、容易に熱分解を400℃以下で完了せしめることができる。
【0049】
アクリル樹脂の含有割合としては、硝子粉体100重量部に対して、5〜40重量部であることが好ましく、さらに好ましくは10〜30重量部である。5重量部以上にすることにより、硝子粉体を確実に結着保持し、十分な塗工膜強度を得ることができ、好ましい。また、40重量部以下にすることにより、焼成工程を短時間にすることができたり、焼成膜中に未焼成成分からなる不純物が混入するなどの問題が発生しないため、好ましい。
【0050】
<硝子粉体>
本発明の硝子粉体含有ペースト組成物において、硝子粉体の好適な組成の具体例としては、(i)PbO−B−SiO−CaO系、(ii)ZnO−B−SiO系、(iii)PbO−B−SiO−Al系、(iv)PbO−ZnO−B−SiO系、(v)PbO−B−SiO系、(vi)Bi−B−SiO系、(vii)Bi−B−SiO−Al系など低融点硝子が挙げられる。この他に、酸化リチウム、酸化珪素、酸化硼素、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、炭酸カルシウム、RuO、Co−Cr−Fe、Co−Mn−Fe、Co−Mn−Fe−Al、Co−Ni−Cr−Fe、Co−Ni−Mn−Cr−Fe、Co−Ni−Al−Cr−Fe、Co−Mn−Al−Cr−Fe−Siなどの無機粉体、Ag、Cr、Cu−Crなどの金属粉末を添加してもよい。本発明に用いられる硝子粉体の平均粒径は、好ましくは0.1〜5μmである。より好ましくは0.5〜4μm、さらに好ましくは1〜3μmである。この範囲の平均粒径にすることにより、焼成膜中の気泡含有量を少なくすることができ、好ましい。
【0051】
硝子粉体の軟化点は、400℃以上600℃未満が好ましく、さらに好ましくは、450℃以上600℃未満である。この範囲の軟化点にすることにより、プラズマディスプレイ製造時に基板に対して熱ダメージを少なくすることができ、好ましい。硝子粉体の軟化点を調整するには、一般に、硝子製造の原料秤量時に各酸化物成分の組成比を変量した後、硝子化する方法が用いられる。「軟化点」は、示差熱分析計により測定することができる。
【0052】
<溶剤>
本発明の硝子粉体含有ペースト組成物の溶剤としては、硝子粉体との親和性、結着樹脂の溶解性が良好で、硝子粉体含有ペースト組成物に適度な粘性を付与することができると共に、乾燥されることにより容易に蒸発除去できるものであることが好ましい。かかる溶剤の具体例としては、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルブチルケトン、ジプロピルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン類;n−ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、シクロヘキサノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテル系アルコール類;酢酸エチル、酢酸−n−ブチル、酢酸アミルなどの飽和脂肪族モノカルボン酸アルキルエステル類;乳酸エチル、乳酸−n−ブチルなどの乳酸エステル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのエーテル系エステル類、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素類などを例示することができ、これらのうち、メチルブチルケトン、シクロヘキサノン、ジアセトンアルコール、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、酢酸−n−ブチル、酢酸エチル乳酸エチル、エチル−3−エトキシプロピオネート、トルエンなどが好ましい。
【0053】
本発明の硝子粉体含有ペースト組成物における溶剤の含有割合としては、組成物の粘度を好適な範囲に維持する観点から適宜調整することができる。例えば、硝子粉体と樹脂をあわせた100重量部に対して、溶剤は5〜50重量部であることが好ましく、さらに好ましくは10〜40重量部である。
【0054】
<硝子粉体含有ペースト>
本発明の硝子粉体含有ペースト組成物には、上記の必須成分のほかに、分散剤、粘着性付与剤、可塑剤、表面張力調整剤、安定剤、消泡剤、分散剤などの各種添加剤が任意成分として含有されていてもよい。
【0055】
硝子粉体含有ペースト組成物は、上記硝子粉体、結着樹脂および溶剤並びに任意成分を、ロール混練機、ミキサー、ホモミキサー、サンドミルなどの混練・分散機を用いて混練することにより調製することができる。
【0056】
本発明の硝子粉体含有ペースト組成物の粘度は、0.1〜100Pa・sであることが好ましく、より好ましくは、1〜10Pa・sである。これらの粘度範囲にすることにより、塗工性を良好にすることができ、さらに硝子粉体の沈降を防止することもできる。塗液粘度をこれらの範囲に調整するため、溶媒量や、アクリル樹脂の分子量を適宜調整する。
【0057】
硝子粉体含有ペーストのレオロジー特性としては、Cassonの流動方程式による降伏値の絶対値が1Pa以下であることが好ましく、より好ましくは0.5Pa以下、さらに好ましくは0.1Pa以下である。1Pa以下であると、硝子粉体含有ペーストの流動性が良くなり、硝子粉粉体の分散安定性が良好で、硝子粉体の凝集が起こらず、凝集物の発生もなく、ペーストの寿命が長くなり、好ましい。S=ずり応力(Pa)、D=ずり速度(s−1)、τ=降伏値(Pa)、μ=Casson粘度(Pa・s)とすると、流動方程式は、下記式で表される。降伏値は、D1/2に対するS1/2のグラフにおけるS1/2軸の切片の2乗で求められる。
(S)1/2=(τ1/2+(μ1/2×(D)1/2
【0058】
このようにして得られた硝子粉体含有ペースト組成物は、スクリーン印刷法、スリットダイコーター、カーテンフローコーター、ブレードコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーターなどの塗布方法により直接プラズマディスプレイ用硝子基板上に塗布される場合と、転写フィルムを製造後、ラミネーターを用いてプラズマディスプレイ用硝子基板上に転写する場合がある。
【0059】
<転写フィルム>
次に、プラズマディスプレイ用誘電体膜を形成せしめるための硝子粉体含有ペースト組成物及び硝子粉体含有ペースト組成物を支持フィルムに塗布して転写層を形成した転写フィルムを例にしながら説明する。
【0060】
好ましい硝子粉体含有ペースト組成物の一例を示せば、軟化点450〜580℃の硝子粉体(酸化鉛30〜80重量%、酸化ケイ素1〜20重量%、酸化ホウ素10〜50重量%およびその他成分0〜30重量%)100重量部と、アクリル樹脂(ポリブチルメタクリレートと2−エチルヘキシルメタクリレートとウレア基及び/又はウレタン基含有のメタクリレートの共重合体など)5〜30重量部と、可塑剤(フタル酸ジブチルなど)1〜30重量部と、溶剤(トルエン、酢酸ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルなど)10〜50重量部とを含有する組成物を挙げることができる。必要に応じて酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化リチウム、酸化珪素、酸化硼素、酸化バリウム等の無機粉末を添加してもよい。
【0061】
転写フィルムは、支持フィルム基板と、この支持フィルム基板上に積層された転写層(誘電体膜)によって構成される。転写フィルム用のフィルム基板としては、耐熱性および耐溶剤性を有するとともに可撓性を有する樹脂フィルムであることが好ましい。フィルム基板を形成する樹脂としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリ塩化ビニル、ポリフロロエチレンなどの含フッ素樹脂、ナイロン、セルロースなどを挙げることができる。フィルム基板の厚さとしては、例えば10〜100μmが好ましい。この範囲にすることにより、支持基板としての強度と柔らかさをバランス良く発揮することができる。また、誘電体膜が塗布されるフィルム基板の表面には離型処理が施されていることが好ましい。これにより、硝子基板への転写工程において、フィルム基板の剥離操作を容易に行うことができ、さらには離型剤の種類を替えることにより、フィルム基板と誘電体膜との密着力を変えることができる。
【0062】
転写フィルムを構成する誘電体膜は、本発明の硝子粉体含有ペースト組成物を、上記フィルム基板上に塗布し、塗膜を乾燥して溶剤を除去することにより形成することができる。
【0063】
硝子粉体含有ペースト組成物をフィルム基板上に塗布する方法としては、膜厚均一性に優れた厚膜塗膜(例えば20μm以上)を効率よく形成することができるものであることが好ましく、具体的には、スリットダイコーター、カーテンフローコーター、ブレードコーター、ワイヤーバーコーター、ロールコーターなどの塗布法が好ましい。この中でも、経時的な溶媒の蒸発による濃度変化や、ゴミの付着が少ないことからスリットダイコーター、カーテンフローコーターが、特に好ましい。
【0064】
フィルム基板に膜を形成するために硝子粉体含有ペースト組成物を塗布した後、オーブンで乾燥する。この後、通常、膜の上に保護フィルムをラミネートしながら巻き取る。このような保護フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンフィルム、ポリビニルアルコール系フィルムなどや、これらのフィルムの表面に離型処理が施されているものを挙げることができる。ロール圧は1〜10kg/cm、ローラの表面温度は10〜130℃が好ましく、より好ましくは20〜80℃、さらに好ましくは25〜60℃である。ラミネート速度は、0.1〜10m/分が好ましい。
【0065】
<プラズマディスプレイ用前面板/背面板の作製>
以上のようにして作製した転写フィルムを用い、転写フィルム上の膜材料を、電極が固定された前面板及び/又は背面板となる硝子基板の表面に転写せしめる。転写工程の一例を示せば以下のとおりである。転写フィルムの保護フィルムは、転写前に剥離する。次に、硝子基板の表面(電極固定面)に、膜表面が当接されるように転写フィルムを重ね合わせ、この転写フィルムを加熱ローラなどにより熱圧着した後、転写膜から支持フィルム基板を剥離除去する。これにより、硝子基板の表面に膜が転写されて密着した状態となる。転写条件としては、例えば、加熱ローラの表面温度は10〜130℃が好ましく、より好ましくは20〜80℃、さらに好ましくは25〜60℃で、加熱ローラによるロール圧が1〜10kg/cm、加熱ローラの移動速度が0.1〜10.0m/分である。また、硝子基板は予熱されていてもよく、予熱温度としては例えば50〜100℃とすることができる。
【0066】
この後、硝子基板の表面に転写された膜を焼成する。具体的には、転写膜が形成された硝子基板を、高温雰囲気下に配置することにより、転写膜に含有されている有機物質(アクリル樹脂、残存溶剤、各種の添加剤など)が分解などによって除去され、硝子粉体である硝子粉末が溶融して焼結する。これにより、硝子基板上には、硝子焼結体よりなる誘電体膜が形成される。ここに、焼成温度としては、転写膜中の構成物質によっても異なるが、例えば500〜600℃とされる。
【0067】
誘電体膜の他に、隔壁膜として用いた場合は、公知の隔壁用材料を用いて作製できる。例えば、酸化リチウム、酸化珪素、酸化硼素、酸化バリウム、酸化アルミニウム、酸化チタン等の硝子粉末、アクリル樹脂、有機溶剤などを含むペーストを塗布することにより作製できる。また、黒色導電層膜として用いた場合は、公知の黒色導電層用材料を用いて作製することができる。例えば、RuO、Co−Cr−Fe、Co−Mn−Fe、Co−Mn−Fe−Al、Co−Ni−Cr−Fe、Co−Ni−Mn−Cr−Fe、Co−Ni−Al−Cr−Fe、Co−Mn−Al−Cr−Fe−Si、Cr、Cu−Crなどの金属粉末とウレア基を有するアクリル樹脂、硝子粉末、有機溶剤などを含むペーストを塗布することにより作製できる。主電極膜として用いた場合も、公知の電極用材料を用いて作製することができる。例えば、銀、Cr、Cu−Cr等の金属粉末と、ウレア基を有するアクリル樹脂、硝子粒子、有機溶剤などを含むペーストを塗布することにより作製できる。これ以外にも、プラズマディスプレイの封着剤としても用いることができる。
【実施例】
【0068】
以下、本発明の実施例について説明するが、本発明はこれらによって限定されるものではない。
【0069】
・アクリル樹脂の熱分解完了温度
アクリル樹脂の熱分解完了温度は、ペースト組成物を、まず60℃のオーブンで10分間乾燥し、溶媒を除去した後、熱重量測定装置(タイプTGA−50、島津製作所製)を使用して、20ml/分の空気気流下で10℃/分の昇温速度で加熱しながら、室温から600℃まで加熱する。このとき、300℃前後からアクリル樹脂の分解が起こり、徐々に重量が低減していくが、600℃まで加熱したときの重量に対して、0.1%の重量変化となる温度を熱分解完了温度とする。
【0070】
・硝子粉体の軟化点
硝子粉体の軟化点は、JIS R3103−1の「硝子軟化点試験方法」に準じて測定する。これ以外にも、特開2003−95697号公報に示されているように、熱機械分析装置(TMA)により測定する方法、特開2002−308645号公報に示されているように、示差熱分析(DTA)により測定する方法があり、適宜用いても良い。
【0071】
・ペースト組成物の降伏値
E型粘度計(東機産業製)を用い、25℃においてずり速度を変えて粘度を測定し、流動方程式から降伏値を求めた。
【0072】
・ペースト組成物の保存安定性
ペースト組成物を5±5℃で1ヶ月保管し、硝子粉体の沈降を確認する。凝集した硝子沈降物が発生しない場合は良好、発生した場合は不良とした。
【0073】
・光透過率
分光光度計を用いて、波長550nmの可視光での光線透過率を測定した。光透過率の測定は、硝子基板の透過率を100%とした後、硝子基板上に誘電体膜を積層した部分の透過率を測定した。
【0074】
(実施例1)
<硝子粉体含有ペースト組成物A1の作製>
硝子粉体として、主成分が酸化鉛40重量%、酸化ホウ素30重量%、酸化ケイ素10重量%、酸化バリウム20重量%の組成を有するPbO−B−SiO−BaO系硝子(軟化点580℃)100重量部と、ウレア基を有するアクリル樹脂としてメチルメタクリレート/2−エチルヘキシルメタクリレート/2−メタアクリロイルオキシエチルエチレンウレア=11/85/4(重量%)の重合体(Mw:250,000)20重量部と、フタル酸ジブチル7重量部、トルエン(溶剤)35重量部とを混練することにより、硝子粉体含有ペースト組成物A1を調製した。E型粘度計で粘度と降伏値を測定した結果、粘度は2Pa・s、降伏値は0.02Paと非常に小さく、分散性は良好であった。ペースト組成物の保存安定性を試験したが、硝子粉体の凝集もなく、保存安定性は良好であった。
【0075】
<硝子粉体含有ペースト組成物A2の作製>
また、硝子粉体として、主成分が酸化鉛70重量%、酸化ホウ素15重量%、酸化ケイ素8重量%、酸化亜鉛3重量%の組成を有するPbO−B−SiO−ZnO系硝子(軟化点470℃)100重量部と、ウレア基を有するアクリル樹脂としてメチルメタクリレート/2−エチルヘキシルメタクリレート/2−メタアクリロイルオキシエチルエチレンウレア=11/85/4(重量%)の重合体(Mw:250,000)15重量部と、フタル酸ジブチル7部、トルエン(溶剤)35重量部とを混練することにより、硝子粉体含有ペースト組成物A2を調製した。E型粘度計で粘度と降伏値を測定した結果、粘度は3Pa・s、降伏値は0.04Paと非常に小さく、分散性は良好であった。ペースト組成物の保存安定性を試験したが、硝子粉体の凝集もなく、保存安定性は良好であった。
【0076】
<転写フィルムA1、A2の作製>
まず、硝子粉体含有ペースト組成物A1を、ブレードコーターを用いて予め離型処理したポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムよりなる支持フィルム基板(幅250mm、厚さ50μm)上に塗布して塗膜を形成した。形成された塗膜を110℃で5分間乾燥することにより溶剤を除去し、これにより、膜厚30μmの誘電体転写膜A1を支持フィルム基板上に積層した。この後保護フィルムとして離型フィルム(幅250mm、厚さ38μm)を、ロール圧4kg/cmで室温にてラミネートしながら巻き取った。これを転写フィルムA1と呼ぶ。
【0077】
同様にして、硝子粉体含有ペースト組成物A2を支持フィルム基板上に塗工し、膜厚30μmの誘電体転写膜A2を支持フィルム基板上に積層した後、保護フィルムをラミネートしながら巻き取った。これを転写フィルムA2と呼ぶ。
転写フィルムA1及びA2の誘電体転写層をTGA分析した結果、アクリル樹脂の熱分解温度は共に370℃と良好であった。
【0078】
<誘電体転写膜A1の転写工程>
6インチパネル用の硝子基板上にあらかじめITO透明導電膜を形成し、さらにその上に銀ペーストをスクリーン印刷で塗布後焼成し、厚さ10μm、幅100μmのバス電極を形成した。次に、転写フィルムA1を用意し、転写フィルムよりカバーフィルム基板をはがし、バス電極を形成した基板上に誘電体転写膜の表面が当接されるよう転写フィルムを重ね合わせ、この転写フィルムをラミネーターで熱圧着した。ここで、圧着条件としては、加熱ローラの表面温度を60℃、ロール圧を4kg/cm、加熱ローラの移動速度を1m/分とした。熱圧着処理の終了後、転写フィルムから支持フィルム基板を剥離除去した。これにより、硝子基板の表面に誘電体転写膜A1が密着した状態となった。
【0079】
<誘電体転写膜A1の焼成工程>
硝子基板上に転写された誘電体転写膜A1を室温から10℃/分の昇温速度で590℃まで昇温し、590℃の温度雰囲気下30分間にわたって焼成処理することにより、硝子基板の表面に、硝子焼結体よりなる誘電体膜A1を形成した。
【0080】
<誘電体転写膜A2の転写工程>
次に、転写フィルムA2を用意し、転写フィルムよりカバーフィルム基板をはがし、誘電体膜A1の上に誘電体転写膜A2の表面が当接されるよう転写フィルムを重ね合わせ、この転写フィルムをラミネーターで熱圧着した。ここで、圧着条件としては、同じく加熱ローラの表面温度を60℃、ロール圧を4kg/cm、加熱ローラの移動速度を1m/分とした。熱圧着処理の終了後、転写フィルムから支持フィルム基板を剥離除去した。これにより、硝子基板の表面に誘電体転写膜A2が密着した状態となった。
【0081】
<誘電体転写膜A2の焼成工程>
硝子基板上に転写された誘電体転写膜A2を室温から10℃/分の昇温速度で570℃まで昇温し、570℃の温度雰囲気下30分間にわたって焼成処理することにより、硝子基板の表面に、硝子焼結体よりなる誘電体膜A2を形成した。断面を走査型電子顕微鏡で観察してこの誘電体膜A1とA2の積層膜厚を測定したところ、30μm±1.0μmの範囲にあり、膜厚の均一性に優れているものであった。
【0082】
<誘電体膜の性能評価>
このようにして、誘電体膜を有する硝子基板よりなるパネル材料を作製した。形成された誘電体膜について、断面および表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、全てのパネル材料に形成された誘電体膜においてピンホールやクラックなどの膜欠陥は認められなかった。また、低融点硝子が軟化流動してバス電極と透明導電膜との間に浸食することも、透明導電膜からバス電極が剥離することもなかった。また目視による外観の観察においても、バス電極の着色は認められなかった。さらに、形成された誘電体膜の光透過率(測定波長550nm)を分光光度計で測定したところ、光透過率の平均値は88%であり、良好な透明性を有するものであることが認められた。
【0083】
(実施例2)
<硝子粉体含有ペースト組成物Bの作製>
また、硝子粉体として、主成分が酸化鉛70重量%、酸化ホウ素15重量%、酸化ケイ素8重量%、酸化亜鉛3重量%の組成を有するPbO−B−SiO−ZnO系硝子(軟化点470℃)100重量部と、ウレア基を有するアクリル樹脂としてn−ブチルメタクリレート/2−エチルヘキシルメタクリレート/2−メタアクリロイルオキシエチルエチレンウレア=56/43/1(重量%)の重合体(Mw:300,000)15重量部と、フタル酸ジブチル7部、トルエン(溶剤)35重量部とを混練することにより、硝子粉体含有ペースト組成物Bを調製した。E型粘度計で粘度と降伏値を測定した結果、粘度は3Pa・s、降伏値は0.06Paと非常に小さく、分散性は良好であった。ペースト組成物の保存安定性を試験したが、硝子粉体の凝集もなく、保存安定性は良好であった。
【0084】
<転写フィルムBの作製>
実施例1と同様にして、硝子粉体含有ペースト組成物Bを支持フィルム基板上に塗工し、膜厚30μmの誘電体転写膜Bを支持フィルム基板上に積層した後、保護フィルムをラミネートしながら巻き取った。これを転写フィルムBと呼ぶ。この誘電体転写層をTGA分析した結果、アクリル樹脂の熱分解温度は380℃と良好であった。
【0085】
<誘電体転写膜A1の転写工程>
実施例1と同様にして、転写フィルムA1を用意し、6インチパネル用硝子基板上に誘電体転写膜A1を転写した。
【0086】
<誘電体転写膜A1の焼成工程>
実施例1と同様にして、硝子基板上に転写された誘電体転写膜A1を室温から10℃/分の昇温速度で590℃まで昇温し、590℃の温度雰囲気下30分間にわたって焼成処理することにより、硝子基板の表面に、硝子焼結体よりなる誘電体膜A1を形成した。
【0087】
<誘電体転写膜Bの転写工程>
次に、転写フィルムBを用意し、実施例1と同様にして、誘電体膜A1の上に誘電体転写膜Bの表面が当接されるよう転写フィルムを重ね合わせ、誘電体転写膜Bを転写した。
【0088】
<誘電体転写膜Bの焼成工程>
実施例1と同様にして、硝子基板上に転写された誘電体転写膜Bを、室温から10℃/分の昇温速度で570℃まで昇温し、570℃の温度雰囲気下30分間にわたって焼成処理することにより、硝子基板の表面に、硝子焼結体よりなる誘電体膜Bを形成した。
断面を走査型電子顕微鏡で観察して誘電体膜A1とBの積層膜厚を測定したところ、30μm±1.0μmの範囲にあり、膜厚の均一性に優れているものであった。
【0089】
<誘電体膜の性能評価>
このようにして、誘電体膜を有する硝子基板よりなるパネル材料を作製した。形成された誘電体膜について、断面および表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、全てのパネル材料に形成された誘電体膜においてピンホールやクラックなどの膜欠陥は認められなかった。また、低融点硝子が軟化流動してバス電極と透明導電膜との間に浸食することも、透明導電膜からバス電極が剥離することもなかった。また目視による外観の観察においても、バス電極の着色は認められなかった。さらに、形成された誘電体膜の光透過率(測定波長550nm)を分光光度計で測定したところ、光透過率の平均値は88%であり、良好な透明性を有するものであることが認められた。
【0090】
(実施例3)
実施例1と同様に、硝子粉体含有ペースト組成物A1、A2を用意した。硝子の分散性、保存安定性は良好であった。
【0091】
<誘電体塗布膜A1の作製工程>
実施例1と同様に、6インチパネル用の硝子基板上にあらかじめITO透明導電膜を形成し、さらにその上に銀ペーストをスクリーン印刷で塗布後焼成し、厚さ10μm、幅100μmのバス電極を形成した。次にバス電極を形成した基板上に硝子粉体含有ペースト組成物A1を枚葉コーターで塗布し、形成された塗膜を110℃で5分間乾燥することにより溶剤を除去し、これにより、膜厚30μmの誘電体塗布膜A1を硝子基板の表面に形成した。
【0092】
<誘電体塗布膜A1の焼成工程>
硝子基板上に形成された誘電体塗布膜A1を室温から10℃/分の昇温速度で590℃まで昇温し、590℃の温度雰囲気下30分間にわたって焼成処理することにより、硝子基板の表面に、硝子焼結体よりなる誘電体膜A1を形成した。
【0093】
<誘電体塗布膜A2の作製工程>
さらにその基板上に硝子粉体含有ペースト組成物A2を枚葉コーターで塗布し、形成された塗膜を110℃で5分間乾燥することにより溶剤を除去し、これにより、膜厚30μmの誘電体塗布膜A2を硝子基板の表面に形成した。
【0094】
<誘電体塗布膜A2の焼成工程>
誘電体塗布膜A2を室温から10℃/分の昇温速度で570℃まで昇温し、570℃の温度雰囲気下30分間にわたって焼成処理することにより、硝子基板の表面に、硝子焼結体よりなる誘電体膜A2を形成した。
断面を走査型電子顕微鏡で観察してこの誘電体膜A1とA2の積層膜厚を測定したところ、30μm±1.5μmの範囲にあり、膜厚の均一性に優れているものであった。
【0095】
<誘電体膜の性能評価>
このようにして、誘電体膜を有する硝子基板よりなるパネル材料を作製した。形成された誘電体膜について、断面および表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、全てのパネル材料に形成された誘電体膜においてピンホールやクラックなどの膜欠陥は認められなかった。また、低融点硝子が軟化流動してバス電極と透明導電膜との間に浸食することも、透明導電膜からバス電極が剥離することもなかった。また目視による外観の観察においても、バス電極の着色は認められなかった。さらに、形成された誘電体膜の光透過率(測定波長550nm)を分光光度計で測定したところ、光透過率の平均値は88%であり、良好な透明性を有するものであることが認められた。
【0096】
(実施例4)
<硝子粉体含有ペースト組成物Eの作製>
硝子粉体として、主成分が酸化鉛70重量%、酸化ホウ素15重量%、酸化ケイ素8重量%、酸化亜鉛3重量%の組成を有するPbO−B−SiO−ZnO系硝子(軟化点470℃)100重量部と、ウレア基を有するアクリル樹脂としてメチルメタクリレート/2−エチルヘキシルメタクリレート/2−メタアクリルアミドエチルエチレンウレア=9/58/30/3(重量%)の重合体(Mw:205,000)15重量部と、フタル酸ジブチル7部、トルエン(溶剤)35重量部とを混練することにより、硝子粉体含有ペースト組成物A2を調製した。E型粘度計で粘度と降伏値を測定した結果、粘度は2Pa・s、降伏値は0.04Paと非常に小さく、分散性は良好であった。ペースト組成物の保存安定性を試験したが、硝子粉体の凝集もなく、保存安定性は良好であった。
【0097】
<転写フィルムEの作製>
実施例1と同様にして、硝子粉体含有ペースト組成物Eを支持フィルム基板上に塗工し、膜厚30μmの誘電体転写膜Eを支持フィルム基板上に積層した後、保護フィルムをラミネートしながら巻き取った。これを転写フィルムEと呼ぶ。この誘電体転写層をTGA分析した結果、アクリル樹脂の熱分解温度は380℃と良好であった。
【0098】
<誘電体転写膜A1の転写工程>
実施例1と同様にして、転写フィルムA1を用意し、6インチパネル用硝子基板上に誘電体転写膜A1を転写した。
【0099】
<誘電体転写膜A1の焼成工程>
実施例1と同様にして、硝子基板上に転写された誘電体転写膜A1を室温から10℃/分の昇温速度で590℃まで昇温し、590℃の温度雰囲気下30分間にわたって焼成処理することにより、硝子基板の表面に、硝子焼結体よりなる誘電体膜A1を形成した。
【0100】
<誘電体転写膜Eの転写工程>
次に、転写フィルムEを用意し、実施例1と同様にして、誘電体膜A1の上に誘電体転写膜Eの表面が当接されるよう転写フィルムを重ね合わせ、誘電体転写膜Eを転写した。
【0101】
<誘電体転写膜Eの焼成工程>
実施例1と同様にして、硝子基板上に転写された誘電体転写膜Eを、室温から10℃/分の昇温速度で570℃まで昇温し、570℃の温度雰囲気下30分間にわたって焼成処理することにより、硝子基板の表面に、硝子焼結体よりなる誘電体膜Eを形成した。
断面を走査型電子顕微鏡で観察して誘電体膜A1とEの積層膜厚を測定したところ、30μm±1.0μmの範囲にあり、膜厚の均一性に優れているものであった。
【0102】
<誘電体膜の性能評価>
このようにして、誘電体膜を有する硝子基板よりなるパネル材料を作製した。形成された誘電体膜について、断面および表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、全てのパネル材料に形成された誘電体膜においてピンホールやクラックなどの膜欠陥は認められなかった。また、低融点硝子が軟化流動してバス電極と透明導電膜との間に浸食することも、透明導電膜からバス電極が剥離することもなかった。また目視による外観の観察においても、バス電極の着色は認められなかった。さらに、形成された誘電体膜の光透過率(測定波長550nm)を分光光度計で測定したところ、光透過率の平均値は87%であり、良好な透明性を有するものであることが認められた。
【0103】
(実施例5)
<硝子粉体含有ペースト組成物F1の作製>
硝子粉体として、主成分が酸化鉛40重量%、酸化ホウ素30重量%、酸化ケイ素10重量%、酸化バリウム20重量%の組成を有するPbO−B−SiO−BaO系硝子(軟化点580℃)100重量部と、ウレタン基を有するアクリル樹脂としてメチルメタクリレート/2−エチルヘキシルメタクリレート/2−メタアクリロイルオキシエチルブトキシウレタン=11/85/4(重量%)の重合体(Mw:285,000)20重量部と、フタル酸ジブチル7重量部、トルエン(溶剤)35重量部とを混練することにより、硝子粉体含有ペースト組成物F1を調製した。E型粘度計で粘度と降伏値を測定した結果、粘度は4Pa・s、降伏値は0.1Paと比較的小さく、分散性は良好であった。ペースト組成物の保存安定性を試験したが、硝子粉体の凝集もなく、保存安定性は良好であった。
【0104】
<硝子粉体含有ペースト組成物F2の作製>
また、硝子粉体として、主成分が酸化鉛70重量%、酸化ホウ素15重量%、酸化ケイ素8重量%、酸化亜鉛3重量%の組成を有するPbO−B−SiO−ZnO系硝子(軟化点470℃)100重量部と、ウレタン基を有するアクリル樹脂としてメチルメタクリレート/2−エチルヘキシルメタクリレート/2−メタアクリロイルオキシエチルブトキシウレタン=11/85/4(重量%)の重合体(Mw:285,000)15重量部と、フタル酸ジブチル7部、トルエン(溶剤)35重量部とを混練することにより、硝子粉体含有ペースト組成物F2を調製した。E型粘度計で粘度と降伏値を測定した結果、粘度は5Pa・s、降伏値は0.1Paと比較的小さく、分散性は良好であった。ペースト組成物の保存安定性を試験したが、硝子粉体の凝集もなく、保存安定性は良好であった。
【0105】
<転写フィルムF1、F2の作製>
実施例1と同様にして、硝子粉体含有ペースト組成物F1を支持フィルム基板上に塗工し、膜厚30μmの誘電体転写膜F1を支持フィルム基板上に積層した後、保護フィルムをラミネートしながら巻き取った。これを転写フィルムF1と呼ぶ。
さらに、実施例1と同様にして、硝子粉体含有ペースト組成物F2を支持フィルム基板上に塗工し、膜厚30μmの誘電体転写膜F2を支持フィルム基板上に積層した後、保護フィルムをラミネートしながら巻き取った。これを転写フィルムF2と呼ぶ。
誘電体転写層F1、F2をTGA分析した結果、アクリル樹脂の熱分解温度は375℃と良好であった。
【0106】
<誘電体転写膜F1の転写工程>
実施例1と同様にして、転写フィルムF1を用意し、6インチパネル用硝子基板上に誘電体転写膜F1を転写した。
【0107】
<誘電体転写膜F1の焼成工程>
実施例1と同様にして、硝子基板上に転写された誘電体転写膜F1を室温から10℃/分の昇温速度で590℃まで昇温し、590℃の温度雰囲気下30分間にわたって焼成処理することにより、硝子基板の表面に、硝子焼結体よりなる誘電体膜F1を形成した。
【0108】
<誘電体転写膜F2の転写工程>
次に、転写フィルムF2を用意し、実施例1と同様にして、誘電体膜F1の上に誘電体転写膜F2の表面が当接されるよう転写フィルムを重ね合わせ、誘電体転写膜F2を転写した。
【0109】
<誘電体転写膜F2の焼成工程>
実施例1と同様にして、硝子基板上に転写された誘電体転写膜F2を、室温から10℃/分の昇温速度で570℃まで昇温し、570℃の温度雰囲気下30分間にわたって焼成処理することにより、硝子基板の表面に、硝子焼結体よりなる誘電体膜F2を形成した。
断面を走査型電子顕微鏡で観察してこの誘電体膜F1とF2の積層膜厚を測定したところ、30μm±1.0μmの範囲にあり、膜厚の均一性に優れているものであった。
【0110】
<誘電体膜の性能評価>
このようにして、誘電体膜を有する硝子基板よりなるパネル材料を作製した。形成された誘電体膜について、断面および表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、全てのパネル材料に形成された誘電体膜においてピンホールやクラックなどの膜欠陥は認められなかった。また、低融点硝子が軟化流動してバス電極と透明導電膜との間に浸食することも、透明導電膜からバス電極が剥離することもなかった。また目視による外観の観察においても、バス電極の着色は認められなかった。さらに、このようにして、誘電体膜を有する硝子基板よりなるパネル材料を作製し、形成された誘電体膜の光透過率(測定波長550nm)を分光光度計で測定したところ、光透過率の平均値は89%であり、良好な透明性を有するものであることが認められた。
【0111】
(比較例1)
<硝子粉体含有ペースト組成物C1の作製>
硝子粉体として、主成分が酸化鉛40重量%、酸化ホウ素30重量%、酸化ケイ素10重量%、酸化バリウム20重量%の組成を有するPbO−B−SiO−BaO系硝子(軟化点580℃)100重量部と、水酸基を有するアクリル樹脂としてn−ブチルメタクリレート/2−エチルヘキシルメタクリレート/ヒドロキシルエチルメタクリレート=27/70/3(重量%)の重合体(Mw:240,000)20重量部と、フタル酸ジブチル7部、トルエン(溶剤)35重量部とを混練することにより、硝子粉体含有ペースト組成物C1調製した。E型粘度計で粘度と降伏値を測定した結果、粘度は2Pa・s、降伏値は0.01Paと小さく、分散性は良好であった。ペースト組成物の保存安定性を試験したが、硝子粉体の凝集が発生することもなく、保存安定性は良好であった。
【0112】
<硝子粉体含有ペースト組成物C2の作製>
また、硝子粉体として、主成分が酸化鉛70重量%、酸化ホウ素15重量%、酸化ケイ素8重量%、酸化亜鉛3重量%の組成を有するPbO−B−SiO−ZnO系硝子(軟化点470℃)100重量部と、水酸基を有するアクリル樹脂としてn−ブチルメタクリレート/2−エチルヘキシルメタクリレート/ヒドロキシルエチルメタクリレート=27/70/3(重量%)の重合体(Mw:240,000)15重量部と、フタル酸ジブチル7部、トルエン(溶剤)30重量部とを混練することにより、硝子粉体含有ペースト組成物C2調製した。E型粘度計で粘度と降伏値を測定した結果、粘度は1Pa・s、降伏値は0.01Paと小さく、分散性は良好であった。ペースト組成物の保存安定性を試験したが、硝子粉体の凝集が発生することもなく、保存安定性は良好であった。
【0113】
<転写フィルムC1、C2の作製>
実施例1と同様にして、硝子粉体含有ペースト組成物C1を支持フィルム基板上に塗工し、膜厚30μmの誘電体転写膜C1を支持フィルム基板上に積層した後、保護フィルムをラミネートしながら巻き取った。これを転写フィルムC1と呼ぶ。
さらに、実施例1と同様にして、硝子粉体含有ペースト組成物C2を支持フィルム基板上に塗工し、膜厚30μmの誘電体転写膜C2を支持フィルム基板上に積層した後、保護フィルムをラミネートしながら巻き取った。これを転写フィルムC2と呼ぶ。
誘電体転写層C1、C2をTGA分析した結果、アクリル樹脂の熱分解温度は405℃であった。
【0114】
<誘電体転写膜C1の転写工程>
実施例1と同様にして、転写フィルムC1を用意し、6インチパネル用硝子基板上に誘電体転写膜C1を転写した。
【0115】
<誘電体転写膜C1の焼成工程>
実施例1と同様にして、硝子基板上に転写された誘電体転写膜C1を室温から10℃/分の昇温速度で590℃まで昇温し、590℃の温度雰囲気下30分間にわたって焼成処理することにより、硝子基板の表面に、硝子焼結体よりなる誘電体膜C1を形成した。
【0116】
<誘電体転写膜C2の転写工程>
次に、転写フィルムC2を用意し、実施例1と同様にして、誘電体膜C1の上に誘電体転写膜C2の表面が当接されるよう転写フィルムを重ね合わせ、誘電体転写膜C2を転写した。
【0117】
<誘電体転写膜C2の焼成工程>
実施例1と同様にして、硝子基板上に転写された誘電体転写膜C2を、室温から10℃/分の昇温速度で570℃まで昇温し、570℃の温度雰囲気下30分間にわたって焼成処理することにより、硝子基板の表面に、硝子焼結体よりなる誘電体膜C2を形成した。
【0118】
断面を走査型電子顕微鏡で観察してこの誘電体膜C1とC2の積層膜厚を測定したところ、30μm±1.0μmの範囲にあり、膜厚の均一性に優れているものであった。しかしながら、誘電体膜は黒色に着色しており、アクリル樹脂の未分解物が膜中に残存しているものと推察される。
【0119】
<誘電体膜の性能評価>
このようにして、誘電体膜を有する硝子基板よりなるパネル材料を作製した。形成された誘電体膜について、断面および表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、全てのパネル材料に形成された誘電体膜においてピンホールやクラックなどの膜欠陥は認められなかった。また、低融点硝子が軟化流動してバス電極と透明導電膜との間に浸食することも、透明導電膜からバス電極が剥離することもなかった。また目視による外観の観察においても、バス電極の着色は認められなかった。さらに、このようにして、誘電体膜を有する硝子基板よりなるパネル材料を作製し、形成された誘電体膜の光透過率(測定波長550nm)を分光光度計で測定したところ、光透過率の平均値は75%であり、透明性は不十分で不合格であった。
【0120】
(比較例2)
<硝子粉体含有ペースト組成物D1の作製>
硝子粉体として、主成分が酸化鉛40重量%、酸化ホウ素30重量%、酸化ケイ素10重量%、酸化バリウム20重量%の組成を有するPbO−B−SiO−BaO系硝子(軟化点580℃)100重量部と、アクリル樹脂としてn−ブチルメタクリレート/2−エチルヘキシルメタクリレート=30/70(重量%)の重合体(Mw:260,000)15重量部と、フタル酸ジブチル7部、トルエン(溶剤)35重量部とを混練することにより、硝子粉体含有ペースト組成物D1を調製した。E型粘度計で粘度と降伏値を測定した結果、粘度は7Pa・s、降伏値は4Paと大きく、分散性は不良であった。ペースト組成物の保存安定性を試験したが、硝子粉体の凝集が起こり、保存安定性は不良で、再使用できなかった。
【0121】
<硝子粉体含有ペースト組成物D2の作製>
また、硝子粉体として、主成分が酸化鉛70重量%、酸化ホウ素15重量%、酸化ケイ素8重量%、酸化亜鉛3重量%の組成を有するPbO−B−SiO−ZnO系硝子(軟化点470℃)100重量部と、アクリル樹脂としてn−ブチルメタクリレート/2−エチルヘキシルメタクリレート=30/70(重量%)の重合体(Mw:260,000)15重量部と、フタル酸ジブチル7部、トルエン(溶剤)35重量部とを混練することにより、硝子粉体含有ペースト組成物D2を調製した。E型粘度計で粘度と降伏値を測定した結果、粘度は5Pa・s、降伏値は3Paと大きく、分散性は不良であった。ペースト組成物の保存安定性を試験したが、硝子粉体の凝集が起こり、保存安定性は不良で、再使用できなかった。
【0122】
<転写フィルムD1、D2の作製>
実施例1と同様にして、硝子粉体含有ペースト組成物D1を支持フィルム基板上に塗工し、膜厚30μmの誘電体転写膜D1を支持フィルム基板上に積層した後、保護フィルムをラミネートしながら巻き取った。これを転写フィルムD1と呼ぶ。
さらに、実施例1と同様にして、硝子粉体含有ペースト組成物D2を支持フィルム基板上に塗工し、膜厚30μmの誘電体転写膜D2を支持フィルム基板上に積層した後、保護フィルムをラミネートしながら巻き取った。これを転写フィルムD2と呼ぶ。
この誘電体転写層D1、D2をTGA分析した結果、アクリル樹脂の熱分解温度は410℃であった。
【0123】
<誘電体転写膜D1の転写工程>
実施例1と同様にして、転写フィルムD1を用意し、6インチパネル用硝子基板上に誘電体転写膜D1を転写した。
【0124】
<誘電体転写膜D1の焼成工程>
実施例1と同様にして、硝子基板上に転写された誘電体転写膜D1を室温から10℃/分の昇温速度で590℃まで昇温し、590℃の温度雰囲気下30分間にわたって焼成処理することにより、硝子基板の表面に、硝子焼結体よりなる誘電体膜D1を形成した。
【0125】
<誘電体転写膜D2の転写工程>
次に、転写フィルムD2を用意し、実施例1と同様にして、誘電体膜D1の上に誘電体転写膜D2の表面が当接されるよう転写フィルムを重ね合わせ、誘電体転写膜D2を転写した。
【0126】
<誘電体転写膜D2の焼成工程>
実施例1と同様にして、硝子基板上に転写された誘電体転写膜D2を、室温から10℃/分の昇温速度で570℃まで昇温し、570℃の温度雰囲気下30分間にわたって焼成処理することにより、硝子基板の表面に、硝子焼結体よりなる誘電体膜D2を形成した。
【0127】
断面を走査型電子顕微鏡で観察してこの誘電体膜D1とD2の積層膜厚を測定したところ、30μm±2.5μmの範囲にあり、膜厚の均一性に劣っているものであった。誘電体膜の表面が粗れており、未分散の硝子粉体が凝縮したものが見られた。
【0128】
<誘電体膜の性能評価>
このようにして、誘電体膜を有する硝子基板よりなるパネル材料を作製した。形成された誘電体膜について、断面および表面を走査型電子顕微鏡で観察したところ、全てのパネル材料に形成された誘電体膜において凝集物が認められた。また、低融点硝子が軟化流動してバス電極と透明導電膜との間に浸食することも、透明導電膜からバス電極が剥離することもなかった。また目視による外観の観察においても、バス電極の着色は認められなかった。さらに、このようにして、誘電体膜を有する硝子基板よりなるパネル材料を作製し、形成された誘電体膜の光透過率(測定波長550nm)を分光光度計で測定したところ、光透過率の平均値は50%であり、透明性は不十分で不合格であった。また、凝集物起因と思われる表示ムラが見られ不合格であった。
【産業上の利用可能性】
【0129】
本発明のプラズマディスプレイ用硝子粉体含有ペースト組成物は、第1に高品質の各種ペースト組成物を効率的に生産することができ、第2に本発明の硝子粉体含有ペースト組成物を用いた転写フィルムは、膜厚均一性に優れ、欠点もなく、表面平滑性にも優れ、高品質なプラズマディスプレイ用転写フィルムを形成することができ、第3にプラズマディスプレイ用途に使用した場合、収率よく、低コストで高品質なプラズマディスプレイを生産することができ、非常に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】交流型のプラズマディスプレイパネルの断面形状を示す模式図である。
【図2】本発明のプラズマディスプレイ用転写フィルムの断面模式図の一例である。
【符号の説明】
【0131】
1 硝子基板(前面板)
2 透明電極
3 黒色導電層
4 主電極
5 誘電体膜
6 保護層
7 バス電極
8 硝子基板(背面板)
9 アドレス電極
10 誘電体膜
11 隔壁
12 蛍光物質
20 支持フィルム基板
21 転写層
22 カバーフィルム基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウレア基及び/又はウレタン基を含有するアクリル樹脂、硝子粉体、および溶剤を含有するプラズマディスプレイ用硝子粉体含有ペースト組成物。
【請求項2】
前記ウレア基が構造式1で示されるエチレンウレア基である請求項1に記載のプラズマディスプレイ用硝子粉体含有ペースト組成物。
【化1】

【請求項3】
前記ウレア基及び/又はウレタン基を含有するアクリル樹脂が、アクリル樹脂全体に対してウレア基及び/又はウレタン基含有アクリル単量体を0.1〜30重量部含有している請求項1又は2に記載のプラズマディスプレイ用硝子粉体含有ペースト組成物。
【請求項4】
前記硝子粉体100重量部に対して、前記ウレア基及び/又はウレタン基を含有するアクリル樹脂が5〜40重量部である請求項1から3のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用硝子粉体含有ペースト組成物。
【請求項5】
前記硝子粉体が軟化点400℃以上600℃未満の硝子である請求項1から5のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用硝子粉体含有ペースト組成物。
【請求項6】
前記プラズマディスプレイ用硝子粉体含有ペースト組成物の降伏値の絶対値が1Pa以下である請求項1から5のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用硝子粉体含有ペースト組成物。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載のプラズマディスプレイ用硝子粉体含有ペースト組成物が支持フィルム上に塗布されて転写層を形成した転写フィルム。
【請求項8】
請求項7に記載の転写フィルムをプラズマディスプレイの前面板及び/又は背面板の誘電体膜形成用転写フィルムとして用いた転写フィルム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−294435(P2007−294435A)
【公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−83859(P2007−83859)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】