説明

プラズマディスプレイ装置

【課題】全白表示性能と小表示率表示性能を共に向上させる。
【解決手段】PDP(プラズマディスプレイパネル)1における、表示用の可視光が放射される面を表示面とし、表示面から可視光が放射される空間を視野空間とし、複数の放電セルを連続的に包含する空間を表示空間とし、表示空間の表示面へ投影された領域を表示領域Rpとし、前記視野空間から前記表示領域に白色光を入射させたとき、表示領域から出射する光のエネルギーの、入射された白色光のエネルギーに対する比の、表示領域における平均値を表示領域表面反射率βとすると、0.02≦β≦0.2であり、誘電体(誘電体膜)26のX電極22−1、24−1と重なる位置での厚さ及びY電極23−1、25−1と重なる位置での厚さの平均値を誘電体厚さDsifが20μm以下とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラズマディスプレイパネルなどのプラズマディスプレイ装置およびこれを用いた画像表示システムの技術に関し、特に、低電力で、かつ高輝度、高コントラストで高画質なプラズマディスプレイ装置を提供するのに有効な技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、大型でかつ厚みの薄いカラー表示装置として、プラズマディスプレイ装置が期待されている。特に、AC面放電型PDP(Plasma Display Panel)は、構造の単純さと高信頼性のために最も実用化の進んでいる方式である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−32478号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
プラズマディスプレイ装置は、少なくとも複数の放電セルを構成要素とするプラズマディスプレイパネルを有しており、上記放電セル内で放電によりプラズマを形成し、このプラズマの効果により可視光を形成して画像表示を行う装置である。プラズマの効果で可視光を形成する方法には、プラズマから直接発光する可視光を利用する方法と、プラズマから発光する紫外線により蛍光体を発光させこの可視光を利用する方法がある。通常は、後者の方法が用いられる。
【0005】
このプラズマディスプレイ装置において、強く望まれることは、低電力(低駆動電力)で明るく(高輝度)かつ高コントラストな表示を実現することである。このとき重要なことは、これらの要求を実現するために必要とされる技術が、表示率により異なるということである。表示率とは、表示領域Rpにおいて、実際に発光している(表示放電を行っている)領域の割合のことである。表示率は、表示する画像により変化する。表示率が概略100%(例えば、90%以上)の表示を全白表示と称し、表示率が小さな(例えば、10%以下の)表示を小表示率表示と称する。
【0006】
本願発明者は、全白表示おいて低駆動電力、高輝度、高コントラストな表示を実現する技術について検討し、以下の課題を見出した。すなわち、全白表示おいて低駆動電力、高輝度、高コントラストな表示を実現するためには、基本発光効率hfを増大することが必要である(詳細は後述する)。このためには、パネル反射率βを低減することが有効である。パネル反射率βを低減するには、表示放電領域面積率Adを低減し、増大した非表示放電領域の視野空間側表面を黒色化することである。しかし、このようにすると表示電極(表示放電電極)の面積が小さくなり、この結果表示電極容量(放電容量とも称す)が小さくなり、単発輝度が低下する。単発輝度とは、1フィールド(16.7ms)に1対の維持放電が発生する駆動条件(すなわち、Fdr=60Hz)での輝度のことである。この結果、小表示率表示での輝度が低下する。すなわち、全白表示性能と小表示率表示性能を両立することが困難であった。小表示率表示での輝度を増大するためには駆動周波数を増大することが考えられるが、このためには、駆動電力に含まれる無効電力を低減することが必須である。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、全白表示性能と小表示率表示性能の間に存在するトレードオフ関係を改善し、総合性能の優れたプラズマディスプレイ装置を実現できる技術を提供することにある。
【0008】
詳しくは、本願発明者が見出した「全白表示性能と小表示率表示性能を両立するためには、パネル反射率βの低減、単発輝度低下の抑制、無効電力の低減を同時に実現することが必須である」という課題に基づき、それを実現する技術を提供することを目的とする。
【0009】
本発明の前記ならびにその他の目的と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本願において開示される発明のうち、代表的なものの概要を簡単に説明すれば、次のとおりである。
【0011】
(1)表示放電を行う為のX電極及びY電極、前記X電極及びY電極を少なくとも部分的に覆う誘電体膜、放電空間に充填された放電ガス、及び前記放電ガスの放電で発生する紫外線による励起で可視光を発光する蛍光体、を少なくとも備える複数の放電セルを備えたプラズマディスプレイパネルと、前記プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動回路と、を有するプラズマディスプレイ装置であって、前記プラズマディスプレイパネルにおける、表示用の前記可視光が放射される面を表示面とし、前記表示面から前記可視光が放射される空間を視野空間とし、前記複数の放電セルを連続的に包含する空間を表示空間とし、前記表示空間の前記表示面へ投影された領域を表示領域Rpとし、前記視野空間から前記表示領域に白色光を入射させたとき、前記表示領域から出射する光のエネルギーの、入射された前記白色光のエネルギーに対する比の、前記表示領域における平均値を表示領域表面反射率βとすると、0.02≦β≦0.2であり、前記誘電体膜の前記X電極と重なる位置での厚さ及び前記Y電極と重なる位置での厚さの平均値を誘電体厚さDsifとすると、Dsifが18μm以下とするものである。
【0012】
(2)表示放電を行う為のX電極及びY電極、前記X電極及びY電極を少なくとも部分的に覆う誘電体膜、放電空間に充填された放電ガス、及び前記放電ガスの放電で発生する紫外線による励起で可視光を発光する蛍光体、を少なくとも備える複数の放電セルを備えたプラズマディスプレイパネルと、前記プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動回路と、を有するプラズマディスプレイ装置であって、前記プラズマディスプレイパネルにおける、表示用の前記可視光が放射される面を表示面とし、前記表示面から前記可視光が放射される空間を視野空間とし、前記複数の放電セルを連続的に包含する空間を表示空間とし、前記表示空間の前記表示面へ投影された領域を表示領域Rpとし、前記表示領域Rpの面積をSpとし、前記放電空間の中で前記表示放電の発生する空間を表示放電空間とし、前記表示放電空間の前記表示面へ投影された領域を表示放電領域とし、前記表示領域Rpにおける前記表示放電領域の集合をRdとし、前記表示放電領域の集合Rdの面積をSdとし、Ad=Sd/Spを表示放電領域面積率とすると、0.05≦Ad≦0.4であり、前記誘電体膜の前記X電極と重なる位置での厚さ及び前記Y電極と重なる位置での厚さの平均値を誘電体厚さDsifとすると、Dsifが18μm以下とするものである。
【0013】
(3)表示放電を行う為のX電極及びY電極、前記X電極及びY電極を少なくとも部分的に覆う誘電体膜、放電空間に充填された放電ガス、及び前記放電ガスの放電で発生する紫外線による励起で可視光を発光する蛍光体、を少なくとも備える複数の放電セルを備えたプラズマディスプレイパネルと、前記プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動回路と、を有するプラズマディスプレイ装置であって、前記プラズマディスプレイパネルにおける、表示用の前記可視光が放射される面を表示面とし、前記表示面から前記可視光が放射される空間を視野空間とし、前記複数の放電セルを連続的に包含する空間を表示空間とし、前記表示空間の前記表示面へ投影された領域を表示領域Rpとし、前記表示領域Rpの面積をSpとし、前記複数の放電セルの、少なくとも一部の前記放電セルが、前記視野空間から前記表示面に白色光を入射させたとき、前記表示面から出射する光のエネルギーの、入射された前記白色光のエネルギーに対する比が0.2以下である黒色領域を有し、前記表示領域Rpにおける前記黒色領域の集合をRbとし、前記黒色領域の集合Rbの前記表示面における面積をSbとし、Ab=Sb/Spを黒色領域面積率とすると、0.95≧Ab≧0.5であり、前記誘電体膜の前記X電極と重なる位置での厚さ及び前記Y電極と重なる位置での厚さの平均値を誘電体厚さDsifとすると、Dsifが18μm以下とするものである。
【0014】
(4)表示放電を行う為のX電極及びY電極、前記X電極及びY電極を少なくとも部分的に覆う誘電体膜、放電空間に充填された放電ガス、及び前記放電ガスの放電で発生する紫外線による励起で可視光を発光する蛍光体、を少なくとも備える複数の放電セルを備えたプラズマディスプレイパネルと、前記プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動回路と、を有するプラズマディスプレイ装置であって、前記プラズマディスプレイパネルにおける、表示用の前記可視光が放射される面を表示面とし、前記表示面から前記可視光が放射される空間を視野空間とし、前記複数の放電セルを連続的に包含する空間を表示空間とし、前記表示空間の前記表示面へ投影された領域を表示領域Rpとし、前記表示領域Rpの面積をSpとし、前記視野空間から前記表示面に白色光を入射したとき、前記表示面から出射する光のエネルギーの、入射された前記白色光のエネルギーに対する比を反射率とし、前記複数の放電セルの、前記反射率の最大値をβmaxとしたとき、少なくとも一部の前記放電セルが、前記反射率が0.5×βmax以下である黒色領域を有し、前記表示領域Rpにおける前記黒色領域の集合をRbとし、該黒色領域の集合Rbの前記表示面における面積をSbとし、Ab=Sb/Spを黒色領域面積率とすると、0.95≧Ab≧0.5であり、前記誘電体膜の前記X電極と重なる位置での厚さ及び前記Y電極と重なる位置での厚さの平均値を誘電体厚さDsifとすると、Dsifが18μm以下とするものである。
【0015】
(5)表示放電を行う為のX電極及びY電極、前記X電極及びY電極を少なくとも部分的に覆う誘電体膜、放電空間に充填された放電ガス、及び前記放電ガスの放電で発生する紫外線による励起で可視光を発光する蛍光体、を少なくとも備える複数の放電セルを備えたプラズマディスプレイパネルと、前記プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動回路と、を有するプラズマディスプレイ装置であって、前記プラズマディスプレイパネルにおける、表示用の前記可視光が放射される面を表示面とし、前記表示面から前記可視光が放射される空間を視野空間とし、前記複数の放電セルを連続的に包含する空間を表示空間とし、前記表示空間の前記表示面へ投影された領域を表示領域Rpとし、前記視野空間から前記表示領域に白色光を入射させたとき、前記表示領域から出射する光のエネルギーの、入射された前記白色光のエネルギーに対する比の、前記表示領域における平均値を表示領域表面反射率βとすると、0.02≦β≦0.2であり、前記誘電体膜の前記X電極と重なる位置での厚さ及び前記Y電極と重なる位置での厚さの平均値を誘電体厚さDsifとし、前記誘電体膜の前記X電極と重なる位置での比誘電率及び前記Y電極と重なる位置での比誘電率の平均値を誘電体比誘電率kとし、Dsif_e=Dsif/kを実効誘電体厚さとすると、Dsif_eが2.2μm以下とするものである。
【0016】
(6)表示放電を行う為のX電極及びY電極、前記X電極及びY電極を少なくとも部分的に覆う誘電体膜、放電空間に充填された放電ガス、及び前記放電ガスの放電で発生する紫外線による励起で可視光を発光する蛍光体、を少なくとも備える複数の放電セルを備えたプラズマディスプレイパネルと、前記プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動回路と、を有するプラズマディスプレイ装置であって、前記プラズマディスプレイパネルにおける、表示用の前記可視光が放射される面を表示面とし、前記表示面から前記可視光が放射される空間を視野空間とし、前記複数の放電セルを連続的に包含する空間を表示空間とし、前記表示空間の前記表示面へ投影された領域を表示領域Rpとし、前記表示領域Rpの面積をSpとし、前記放電空間の中で前記表示放電の発生する空間を表示放電空間とし、前記表示放電空間の前記表示面へ投影された領域を表示放電領域とし、前記表示領域Rpにおける前記表示放電領域の集合をRdとし、前記表示放電領域の集合Rdの面積をSdとし、Ad=Sd/Spを表示放電領域面積率とすると、0.05≦Ad≦0.4であり、前記誘電体膜の前記X電極と重なる位置での厚さ及び前記Y電極と重なる位置での厚さの平均値を誘電体厚さDsifとし、前記誘電体膜の前記X電極と重なる位置での比誘電率及び前記Y電極と重なる位置での比誘電率の平均値を誘電体比誘電率kとし、Dsif_e=Dsif/kを実効誘電体厚さとすると、Dsif_eが2.2μm以下とするものである。
【0017】
(7)表示放電を行う為のX電極及びY電極、前記X電極及びY電極を少なくとも部分的に覆う誘電体膜、放電空間に充填された放電ガス、及び前記放電ガスの放電で発生する紫外線による励起で可視光を発光する蛍光体、を少なくとも備える複数の放電セルを備えたプラズマディスプレイパネルと、前記プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動回路と、を有するプラズマディスプレイ装置であって、前記プラズマディスプレイパネルにおける、表示用の前記可視光が放射される面を表示面とし、前記表示面から前記可視光が放射される空間を視野空間とし、前記複数の放電セルを連続的に包含する空間を表示空間とし、前記表示空間の前記表示面へ投影された領域を表示領域Rpとし、前記表示領域Rpの面積をSpとし、前記複数の放電セルの、少なくとも一部の前記放電セルが、前記視野空間から前記表示面に白色光を入射させたとき、前記表示面から出射する光のエネルギーの、入射された前記白色光のエネルギーに対する比が0.2以下である黒色領域を有し、前記表示領域Rpにおける前記黒色領域の集合をRbとし、前記黒色領域の集合Rbの前記表示面における面積をSbとし、Ab=Sb/Spを黒色領域面積率とすると、0.95≧Ab≧0.5であり、前記誘電体膜の前記X電極と重なる位置での厚さ及び前記Y電極と重なる位置での厚さの平均値を誘電体厚さDsifとし、前記誘電体膜の前記X電極と重なる位置での比誘電率及び前記Y電極と重なる位置での比誘電率の平均値を誘電体比誘電率kとし、Dsif_e=Dsif/kを実効誘電体厚さとすると、Dsif_eが2.2μm以下とするものである。
【0018】
(8)表示放電を行う為のX電極及びY電極、前記X電極及びY電極を少なくとも部分的に覆う誘電体膜、放電空間に充填された放電ガス、及び前記放電ガスの放電で発生する紫外線による励起で可視光を発光する蛍光体、を少なくとも備える複数の放電セルを備えたプラズマディスプレイパネルと、前記プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動回路と、を有するプラズマディスプレイ装置であって、前記プラズマディスプレイパネルにおける、表示用の前記可視光が放射される面を表示面とし、前記表示面から前記可視光が放射される空間を視野空間とし、前記複数の放電セルを連続的に包含する空間を表示空間とし、前記表示空間の前記表示面へ投影された領域を表示領域Rpとし、前記表示領域Rpの面積をSpとし、前記視野空間から前記表示面に白色光を入射したとき、前記表示面から出射する光のエネルギーの、入射された前記白色光のエネルギーに対する比を反射率とし、前記複数の放電セルの、前記反射率の最大値をβmaxとしたとき、少なくとも一部の前記放電セルが、前記反射率が0.5×βmax以下である黒色領域を有し、前記表示領域Rpにおける前記黒色領域の集合をRbとし、該黒色領域の集合Rbの前記表示面における面積をSbとし、Ab=Sb/Spを黒色領域面積率とすると、0.95≧Ab≧0.5であり、前記誘電体膜の前記X電極と重なる位置での厚さ及び前記Y電極と重なる位置での厚さの平均値を誘電体厚さDsifとし、前記誘電体膜の前記X電極と重なる位置での比誘電率及び前記Y電極と重なる位置での比誘電率の平均値を誘電体比誘電率kとし、Dsif_e=Dsif/kを実効誘電体厚さとすると、Dsif_eが2.2μm以下とするものである。
【0019】
(9)前記(1)〜前記(8)のいずれかに記載のプラズマディスプレイ装置において、交叉する二方向に延在して格子状に形成された隔壁が、前記複数の放電セルの一部を形成し、前記複数の放電セルの中の少なくとも一部の前記放電セルにおいて、前記二方向の少なくとも一方向に延在する前記隔壁において、該隔壁の幅の平均値を0.1mm以上とするものである。
【0020】
(10)前記(9)に記載のプラズマディスプレイ装置において、前記隔壁の高さ方向に座標軸zをとり、前記X電極の前記座標軸zの位置座標をzXとし、前記Y電極の前記座標軸zの位置座標をzYとすると、前記位置座標zX、zYの差の絶対値|zY−zX|が0.05mm以上とするものである。
【0021】
(11)前記(10)に記載のプラズマディスプレイ装置において、前記複数の放電セルの各々において、前記表示放電空間を取り囲む固体壁を表示放電空間内面とし、前記表示放電空間内面のうち表示用の前記可視光が前記視野空間に向けて放射する面を開口面とし、前記表示放電空間内面のうち前記開口面以外の固体壁を非開口面とし、前記非開口面の表面反射率の平均値を非開口面反射率とし、前記複数の放電セルの少なくとも一部の前記放電セルにおいて、前記非開口面反射率が80%以上とするものである。
【0022】
(12)前記(1)〜前記(8)のいずれかに記載のプラズマディスプレイ装置において、第1の方向に沿って延在し、該第1の方向に直交する第2の方向に並べられた複数の隔壁が、前記複数の放電セルの一部を形成し、前記複数の放電セルの中の少なくとも一部の前記放電セルにおいて、前記複数の隔壁の幅の平均値が0.1mm以上とするものである。
【0023】
(13)画像表示システムであって、前記(1)〜前記(12)のいずれかに記載のプラズマディスプレイ装置を用いるものである。
【発明の効果】
【0024】
本願において開示される発明のうち、代表的なものによって得られる効果を簡単に説明すれば以下のとおりである。
【0025】
すなわち、全白表示性能と小表示率表示性能を両立し、任意の表示率において高輝度かつ高コントラストな(セットのBC積Fbcsの大きな)プラズマディスプレイ装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の一実施形態であるプラズマディスプレイパネルの一部を示す要部拡大分解斜視図である。
【図2】図1中の矢印D1の方向から見たPDPの要部拡大断面図である。
【図3】図1中の矢印D2の方向からみたPDPの要部拡大断面図である。
【図4】図1に示すプラズマディスプレイパネルを用いたプラズマディスプレイ装置及びこれに映像源を接続した画像表示システムの構成例を示す説明図である。
【図5】図1に示したプラズマディスプレイパネルに1枚の画を表示するのに要する1TVフィールド期間の動作を示すタイムチャートである。
【図6】図5の書き込み放電期間においてA電極、X電極、及びY電極に印加される電圧波形を示す説明図である。
【図7】図5の表示期間の間に表示電極(表示放電電極とも呼ぶ)であるX電極とY電極の間に一斉に印加される表示放電パルスを示す説明図である。
【図8】図4に示す駆動手段の詳細な構造例を模式的に示す説明図である。
【図9】プラズマディスプレイパネルにフィルタを設置した時の光の進行方向を模式的に示す説明図である。
【図10】本発明の他の実施形態であるプラズマディスプレイパネルを視野空間側からの平面を示す要部拡大平面図である。
【図11】図10に示したD1の方向から見た要部拡大断面図である。
【図12】図10に示したD2の方向から見た要部拡大断面図である。
【図13】図2に示すプラズマディスプレイパネルの比較例を示す要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の実施の形態では、本実施の形態を説明するための全図において同一機能を有するものは同一の符号を付すようにし、その繰り返しの説明は原則として省略する。また、本実施の形態を説明するための全図においては、各部材の構成をわかりやすくするために、平面図あるいは斜視図であってもハッチングや模様を付す場合がある。以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0028】
(実施の形態1)
<基本構造及び動作の説明>
まず、本願発明者らが検討したPDPの一例としてAC面放電型PDPの基本構造などについて説明する。なお、本実施の形態においてPDPを構成する一対の基板である「前面板」及び「背面板」は、両者を組み立ててパネル化した際に、蛍光体による発光が通過して表示面となる側(視野空間側)を前面板、表示面の反対側に位置する側を背面板として説明する。また、「前面板」及び「背面板」は、それぞれガラス基板からなる前面基板及び背面基板を基材とし、基材に後述する各部材を形成した基板構造体として説明する。
【0029】
図1は本実施の形態のPDPの構造の一部を示す要部拡大分解斜視図である。本実施の形態のPDP1は、放電空間を介して対向配置される前面板2及び背面板3を有している。
【0030】
前面板2は、基材となる前面ガラス基板21(後に説明する視野空間側の基板)を有している。前面ガラス基板21の下面(内側の面)には、可視光に対して透明な共通電極であるX電極22−1乃至22−2と、透明な独立電極であるY電極(走査電極)23−1乃至23−2を付設している。また、X電極22−1乃至22−2とY電極23−1乃至23−2には、それぞれXバス電極24−1乃至24−2とYバス電極25−1乃至25−2を積層付設している。さらに、X電極22−1乃至22−2、Y電極23−1乃至23−2、Xバス電極24−1乃至24−2、Yバス電極25−1乃至25−2を誘電体26によって被覆し、例えば、酸化マグネシウム(MgO)等の保護膜(保護層ともいう)27を付設し、誘電体26を覆っている。X電極22−1乃至22−2とXバス電極24−1乃至24−2をまとめてX電極と総称することもある。Y電極23−1乃至23−2とYバス電極25−1乃至25−2をまとめてY電極と総称することもある。また、X電極22−1乃至22−2、Y電極23−1乃至23−2、Xバス電極24−1乃至24−2、Yバス電極25−1乃至25−2をまとめて表示放電電極または表示電極(XとYの対の概念を含む時は表示放電電極対または表示電極対)と総称する。このようにして一体加工した基板構造体を前面板2と呼ぶ。
【0031】
本実施の形態では、X電極22−1乃至22−2、Y電極23−1乃至23−2を可視光に対して透明な電極とした。これは、透明な導電性材料で構成することにより、放電空間33内で生じた光をより多く視野空間側に取り出すことができ、明るい(輝度の大きな)パネルが得られるからである。ただし、X電極22−1乃至22−2、Y電極23−1乃至23−2は透明な電極材料に限定されないことは言うまでもない。
【0032】
また、本実施の形態では、保護膜27の材料として酸化マグネシウム(MgO)を用いているが、保護膜27の材料もこれに限定されない。保護膜27は、入射するイオンから表示放電電極と誘電体26を保護すること、イオン入射に伴う2次電子放出により放電発生と放電継続を支援すること、及びプライミング電子の発生により放電発生の高速化を行うこと、などの目的から付設され、このような目的を達することが出来れば他の材料と置き換えることもできる。
【0033】
一方、背面板3は、基材となる背面ガラス基板28を有している。背面ガラス基板28の上面(内側の面)には、X電極22−1乃至22−2、Y電極23−1乃至23−2と直角に立体交差する電極であるA電極(アドレス電極)29を付設し、該A電極29を誘電体30によって被覆し、該誘電体30の上に隔壁31をA電極29と平行に設けている。本実施の形態では、隔壁31はA電極29と平行な成分で構成されている(ストレート隔壁)が、隔壁31の配置は種々の変形例を適用することができる。例えば隔壁31はA電極29と直角な成分を含む構成(ボックス隔壁)とすることもできる。隔壁31の壁面と誘電体30の上面によって形成される凹領域の内側に蛍光体32を塗布する。このようにして一体加工したものを背面板3と呼ぶ。
【0034】
上記のように必要な構成要素を作り込んだ前面板2と背面板3を接合し、プラズマを生成するためのガス(放電ガス)を充填し、封止してPDP1が形成される。なお、前面板2、背面板3の接合および封止において上記放電ガスの気密性が保持される必要があることは言うまでもない。
【0035】
図2は図1中の矢印D1の方向から見たPDPの要部拡大断面図であり、画素の最小単位であるセル1個を概略示している。また、図13は、本実施の形態に対する比較例であるPDPの断面図であって、図2に示す断面に対応した部分を示している。セルの境界は概略破線で示す位置である。以下、セルのことを放電セルとも呼ぶ。図2において、A電極29は2つの隔壁31の中間に位置し前面ガラス基板21と背面ガラス基板28、隔壁31に囲まれた放電空間33には上記プラズマを生成するためのガス(放電ガス)が充填されている。
【0036】
放電空間33とはPDP1の駆動において、後に述べる表示放電、書き込み放電、予備放電(リセット放電とも称す)のいずれかの発生する空間のことである。さらに、具体的には、上記放電ガスが満たされ、上記放電に必要な電界が印加され、放電発生に必要な空間的広がりを有する空間である。さらに、表示放電の発生する空間(具体的には、上記放電ガスが満たされ、表示放電に必要な電界が印加され、表示放電発生に必要な空間的広がりを有する空間)を表示放電空間と呼ぶ。放電空間および表示放電空間は、個々の放電セルに含まれる空間を意味する場合もあるし、これら空間の集合を意味する場合もある。
【0037】
カラーPDPでは、通常セル内に塗布する蛍光体には、赤、緑、青用の3種類がある。この3種類の別々の蛍光体を塗布した3セルをまとめて1画素とする。このようなセル、または画素が複数個連続的かつ周期的に集合した空間を表示空間と呼ぶ。このような表示空間を含み真空封着機能、電極取り出し機能等他の必要な機能を有するものをプラズマディスプレイパネル(PDP)またはプラズマパネルと呼ぶ。
【0038】
上記PDPにおいて、上記放電ガスの気密性を保持して一体不可分の構成部を基本PDP(基本プラズマパネル)と称す。上記基本PDPにおいて、表示用の可視光が放射する面を表示面とし、上記表示用の可視光が放射される空間を視野空間とする。上述した如く、上記基本PDPにおいて少なくとも複数の上記放電セルを連続的に包含する空間が存在し、これを表示空間とする。上記表示空間の上記表示面への投影領域を表示領域Rpとする。また、上記放電空間の上記表示面への投影領域を放電領域とする。また、上記表示放電空間の上記表示面への投影領域を表示放電領域とする。また、上記表示領域Rpにおける上記表示放電領域以外の領域を非表示放電領域とする。また、上記放電セルの上記表示面への投影領域をセル領域とする。また、上記表示面に対して垂直方向を、高さ方向とする。
【0039】
上記放電セルが隔壁を構成要素の一部として有する時、上記隔壁を介して隣接する2セルの中心間を結ぶ方向を幅方向とし、上記表示面と平行な面において上記幅方向と直角方向を長手方向とする。
【0040】
上記幅方向の上記隔壁の幅を隔壁幅とし、上記隔壁幅の上記高さ方向での平均値を平均隔壁幅Wrbaとする。
【0041】
図1に示す構造例では、PDP1における上記隔壁31の長手方向が概略一方向に沿って延在するように配置されている。このような隔壁31の配置構造をストレート隔壁構造と呼ぶ。また、別の構造例では、PDPにおける上記隔壁の長手方向が少なくとも2方向すなわちDR1とDR2に配置されてある。このような隔壁の配置構造をボックス隔壁構造と呼ぶ。
【0042】
図3は図1中の矢印D2の方向からみたPDPの要部拡大断面図であり、1個のセルを示している。セルの境界は概略一点鎖線で示す位置である。図3に示す表示電極対(X電極とY電極)間の隙間の幅は、表示電極間ギャップWgxyと呼ぶ。なお、図3では、説明のため電子13、正イオン14、正壁電荷15、負壁電荷16を模式的に示している。
【0043】
図3には、例として、Y電極23−1に負の電圧を、A電極29とX電極22−1に(相対的に)正の電圧を印加して放電が発生、終了した模式図を表している。この結果、Y電極23−1とX電極22−1の間の放電を開始するための補助となる壁電荷の形成(これを書き込みと称す)が行われている。この状態でY電極23−1とX電極22−1の間に適当な逆の電圧を印加すると、誘電体26(及び保護膜27)を介して両電極の間の放電空間で放電が起こる。放電終了後Y電極23−1とX電極22−1の印加電圧を逆にすると、新たに放電が発生する。これを繰り返すことにより継続的に放電を形成できる。これを表示放電(又は維持放電)と呼ぶ。
【0044】
図4は図1に示すPDPを用いたプラズマディスプレイ装置及びこれに映像源を接続した画像表示システム(プラズマディスプレイ装置)の構成例を示す説明図である。プラズマディスプレイ装置100は、PDP1及びPDP1を駆動する駆動手段101を有している。また、図4では、駆動手段101に表示画面の信号を送る映像源102を有する構成例を示している。駆動手段(駆動回路とも呼ぶ)101は、映像源102からの表示画面の信号を受取り、これを以下に説明するような手順でPDP1の駆動信号に変換してPDP1を駆動する。
【0045】
図5〜図7は図1に示したPDPに1枚の画を表示するのに要する1TVフィールド(以下フィールドとも称す)期間の動作を示す説明図である。図5はタイムチャートである。(I)に示すように1TVフィールド40は複数の異なる発光回数を持つサブフィールド41乃至48に分割されている。各サブフィールド毎の発光と非発光の選択により階調を表現する。各サブフィールド41、42、43、44、45、46、47、48は(II)に示すように予備放電期間49、発光セルを規定する書き込み放電期間50、表示期間(発光表示期間とも呼ぶ)51からなる。
【0046】
予備放電期間49は、各セルの状態(駆動特性を規定する状態)を均一にし、かつ以降の駆動を安定確実に行なうことを目的とした動作を行なう期間である。通常、予備放電期間49において予備放電、リセット放電または全書き放電(表示領域全体を同時に書き込みする放電)が行なわれる。
【0047】
図6は、図5の書き込み放電期間においてA電極、X電極、及びY電極に印加される電圧波形を示す。波形52は書き込み放電期間50に於ける1本のA電極に印加する電圧波形、波形53はX電極に印加する電圧波形、波形54、55はY電極のi番目と(i+1)番目に印加する電圧波形の例を示しており、それぞれの電圧をV0,V1,V2(V)とする。図6より、Y電極のi行目にスキャンパルス56(図6ではスキャンパルス時の電圧は接地電圧(GND)であるが、負電圧にする場合もある)が印加された時、A電極29との交点に位置するセルで書き込み放電が起こる。また、Y電極のi行目にスキャンパルス56が印加された時、A電極29がグランド電位(基準電位)であれば書き込み放電は起こらない。このように、書き込み放電期間50に於いてY電極にはスキャンパルスが1回印加され、A電極29にはスキャンパルスに対応して発光セルではV0、非発光セルではグランド電位となる。この書き込み放電が起こった放電セルでは、放電で生じた電荷がY電極を覆う誘電体および保護膜の表面に形成される。この電荷によって発生する電界の助けによって後述する表示放電のオンオフを制御できる。すなわち、書き込み放電を起こした放電セルは発光セルとなり、それ以外は非発光セルとなる。また、書き込み放電を起こした放電セルが非発光セルとなり(書き込み放電により全書き放電で形成した壁電荷を消去する)、それ以外が発光セルとなる駆動法も存在する。
【0048】
図7は図5の表示期間51の間に表示電極(表示放電電極とも呼ぶ)であるX電極とY電極の間に一斉に印加される表示放電パルスを示す。X電極には電圧波形58が、Y電極には電圧波形59が印加される。どちらも同じ極性の電圧V3(V)のパルスが交互に印加されることにより、X電極とY電極との間の相対電圧は反転を繰り返す。この間にX電極とY電極の間の放電ガス中で起こる放電を表示放電と称す。ここでは、表示放電はパルス的に交互に行なわれる。表示期間においてX電極及びY電極に印加される電圧をそれぞれVx(t),Vy(t)とし、表示期間においてセルに外部から印加される電圧を表示電極間電圧Vse(t)とすると、表示電極間電圧Vse(t)は、
Vse(t)=Vy(t)−Vx(t) (1)
である。上記でtは時間を表す。表示放電パルス印加時における表示電極間電圧Vse(t)の絶対値|Vse(t)|の最大値を表示放電最大印加電圧と称し、Vsemaxで表す。図7において、VsemaxはV3(V)である。しかし、もし実際に表示電極に印加される電圧が図7のような矩形波ではなく、途中回路の容量、インダクタンス、抵抗等で変動する場合は、V3は表示放電パルス印加時の平均的な表示電極電圧を表しており、VsemaxはV3とは若干異なった値となる。
【0049】
上記表示放電パルスを形成する手段は、例えば、図4に示す駆動手段101の中に設置される。この概要を図8に示してある。上記表示放電パルスを形成する手段は、直流電圧を供給する手段すなわち表示放電直流電源と、上記表示放電直流電源と上記表示電極の間に設置されるスイッチ回路(図8のスイッチ回路Xとスイッチ回路Y)を構成要素の一部として構成される。表示放電直流電源は単なるコンデンサーである場合もあるし、さらに単なる接地電極(接地配線)である場合もある。スイッチ回路は、接地電位を含めて表示放電直流電源の出力電圧を選択して表示電極に印加する働きをしている。表示期間における上記表示放電直流電源間の出力電圧差の絶対値の最大値を直流電源表示放電電圧Vsdcとする。直流電源表示放電電圧Vsdcは上記V3と概略等しいが、もし実際に表示電極に印加される電圧が図7のような矩形波ではなく、途中回路の容量、インダクタンス、抵抗等で変動する場合は、VsdcはV3とは若干異なった値となる。
【0050】
以上では、書き込み放電期間と表示期間が分離している駆動方式(書き込み表示分離駆動方式)で表示放電を説明したが、表示放電の本質は表示に必要な発光を意図的に実現するための放電であり、他の駆動でもこのような放電を表示放電と認識するのは言うまでもない。例えば、上記説明の駆動方式(書き込み表示分離駆動方式)では全表示領域において書き込み放電期間と発光表示期間が同時に設定されているが、書き込み放電期間と発光表示期間を走査電極(Y電極)毎に独立に設定する駆動方式(書き込み表示同時駆動方式)も可能である。
【0051】
また、本実施の形態ではいわゆるプログレッシブ駆動方式を用いており、毎フィールド毎に表示領域の全ての放電セルを用いて画像表示が行なわれる。一方、いわゆるインタレース駆動方式も可能である。インタレース駆動方式では、PDPの放電セルが2種類(例えばAグループとBグループ)に分類され、フィールド毎にAグループとBグループのいずれかの放電セルを用いて画像表示が行なわれる。例えば、フィールドを時間順交互に奇数フィールドと偶数フィールドに分類し、奇数フィールドではAグループ放電セルを用いて、偶数フィールドではBグループ放電セルを用いて画像表示が行なわれる。さらに、上記奇数フィールドと偶数フィールドの駆動において共通の走査電極(Y電極)を用いることも可能である。以上のようなインタレース駆動方式及びこの駆動方式が適用されるPDPを用いたプラズマディスプレイ装置をALIS(Alternate Lighting of Surfaces)方式プラズマディスプレイ装置と呼び、この詳細は「Y. Kanazawa, T. Ueda, S. Kuroki, K. Kariya and T. Hirose:”High-Resolution Interlaced Addressing for Plasma Displays”, 1999 SID International Symposium Digest of Technical Papers, Volume XXX, 14.1, pp. 154-157 (1999)」に発表されている。
【0052】
次に、本願発明者が、以下に示す新たな課題を見出すに至った検討内容、及びこの新たな課題を解決する手段についての検討内容について説明する。
【0053】
<コントラストについて>
まず、コントラストCに関する議論を行う。コントラストCは、
C=Bpon/Boff (2)
と定義される。Bponは発光表示(あるいは、最高輝度表示)をした時の輝度、Boffは黒表示をした時の輝度であり、いずれもcd/mの単位で表現される。輝度は、通常輝度計を用いて測定される。コントラストCはさらに、明室コントラストCb及び暗室コントラストCdとして区別して測定され、それぞれ明るい環境(通常は家庭内居間の明るさすなわち照度150〜200lx(ルックス)を想定)及び暗室でのコントラストに対応する。(2)式で求められるコントラストの値が大きいほど、より鮮明で美しい画像を表現できる。すなわち、プラズマディスプレイ装置ではより大きなコントラストが求められる。
【0054】
プラズマディスプレイ装置においては、暗室における黒表示時の輝度Boffは必ずしも0ではない。なぜなら、予備放電期間における予備放電(リセット放電または全書き放電とも呼ぶ)や書き込み放電期間における書き込み放電により、必ずしも画像表示に必要でない発光が生じるからである。したがって、プラズマディスプレイ装置においては、暗室コントラストも無限大でなく有限値を有する。この値は、
Cd=Bpond/Boffd (3)
である。ただし、Bpond及びBoffdは、それぞれ「暗室における発光表示(あるいは、最高輝度表示)をした時の輝度[cd/m]」及び「暗室における黒表示をした時の輝度[cd/m]」である。暗室コントラストCdを大きくするには、Bpondを大きくするかBoffdを小さくするかであり、セル構造および放電特性で決定される。
【0055】
一方、明室コントラストCbを大きくするために、光の透過特性を制御したフィルタが通常用いられる。図9にその概略構成を示してある。図9は、PDPにフィルタを設置した時の光の進行方向を模式的に示す説明図である。以下、フィルタによる明室コントラストCb増大の原理を説明する。
【0056】
図9の構成において、PDP1として囲った部分が、基本PDPに相当する部分である。基本PDPは、モジュール(PDPモジュール)と呼ぶこともある。図9の構成において、視点方向から表示画像を見た時の明室コントラストCbは概略、
Cb=(Bponmα+Brα2*β)/(Boffmα+Brα2*β) (4)
となる。ただし、
Bponm:フィルタなしで(すなわち基本PDPだけで)暗室における発光表示をした時の輝度、すなわちモジュール輝度[cd/m]、
Boffm:フィルタなしで(すなわち基本PDPだけで)暗室における黒表示をした時の輝度[cd/m]、
Br:室内光輝度、明室における外光がフィルタ前面(フィルタの視点側面)に仮想的に設置した完全反射面(表面反射率100%の拡散反射面)で形成する輝度[cd/m]、
α:フィルタの透過率、
β:PDPの表示領域における表示面での表面反射率の平均値、すなわち表示領域表面反射率、モジュール反射率、あるいはパネル反射率とも称す。
記号は、掛け算を表す。明室環境照度をLlxとすると、Br=L/π≒L/3.14cd/mである。
【0057】
表面反射率とは、「ある面(入射面)に入射した光の一部が反射光として出射する状況において、入射光エネルギーに対する反射光エネルギーの割合」である。また、透過率とは、「ある物体の表面(入射面)に入射した光の一部がその物体を透過して透過光として出射する状況において、入射光エネルギーに対する透過光エネルギーの割合」である。
表面反射率および透過率とも、入射面の任意の場所において入射光の波長程度の精度で場所を特定して定義および測定することが原理的に可能である。通常は、表面反射率および透過率とも、表面反射率測定器および透過率測定器を用いて入射面の場所の関数として測定される。また、通常は、表面反射率、透過率とも入射光の波長の関数である。したがって、(4)式の表面反射率β及び透過率αは、可視光波長の範囲において室内光の波長分布スペクトラムと人間の視感度を考慮して決定される平均値である。さらに簡便には、人間の視感度の大きな波長範囲すなわち500nm〜600nmの波長範囲における表面反射率および透過率の平均値である。また、(4)式においてフィルタ表面での可視光の反射はないと仮定した。
【0058】
(4)式においてBr=0としたCbは暗室コントラストCdを与え、
Cd=Bponm/Boffm (5)
となる。
【0059】
(4)式において通常の明室条件(L=150〜200lx)では、
Bponmα>>Brα2*β、
Boffmα<<Brα2*βである。したがって、(4)式は
Cb≒Bponm/(Brαβ) (6)
となる。すなわち、Bponm,Br,βが一定のとき、フィルタ透過率αを小さくすると明室コントラストCbはαに反比例して大きくなる。これが、フィルタにより明室コントラストを増大させる原理である。
【0060】
次に、発光効率の議論を行なう。発光効率hとして、フィルタを用いない時(すなわち図9でPDP1だけの時)の発光効率hmとフィルタを用いた時(すなわち図9でPDP1にフィルタを設置した時)の発光効率hsを定義することができ、
hm=πBponmSp/Pdp (7)
hs=πBponmαSp/Pdp (8a)
=αhm (8b)
である。ただし、
hm:フィルタを用いない時の発光効率、モジュール発光効率と呼ぶ[lm/W]、
hs:フィルタを用いた時の発光効率、セット発光効率と呼ぶ[lm/W]、
π:円周率、
Sp:発光表示領域の面積[m]、
Pdp:放電電力、プラズマパネルの放電空間への投入電力[W]
である。ただし、発光は完全拡散発光であると仮定した。(7)、(8a)、(8b)式は、任意の階調表示時において成立する。
【0061】
また、セット輝度Bponsは、
Bpons=Bponmα (9)
Bpons:フィルタありで(すなわちセット状態で)暗室における発光表示をした時の輝度、すなわちセット輝度[cd/m]
となる。
【0062】
最終的に重要なのは当然セットの性能であり、セットのBC積
Fbcs≡BponsCb (10)
Fbcs:セットのBC積[cd/m]
である。記号≡は、等号であり、実質的に記号=と同等である。定義の意味を示すために、記号≡を用いた。セットのBC積Fbcsを増大させることが、高輝度かつ高コントラストなPDPを実現することになる。
【0063】
(6)、(9)、(10)式より、
Fbcs=Bponm/(Brβ) (11)
であり、(11)、(7)式を用いて、
Fbcs0.5=(Pdp/(Br0.5*πSp))(hm/β0.5) (12)
となる。
【0064】
すなわち、
Fbcs0.5=Ahfn (13)
A≡Pdp/(Br0.5*πSp) (14)
hfn≡hm/β0.5 (15)
A:駆動および環境で定まる係数[Wcd0.5/(lmm)]、
hfn:基本発光効率[lm/W]
となる。(13)−(15)式より、「放電電力Pdp一定(A一定)の下で、セットのBC積Fbcsを増大させるには基本発光効率hfnを増大させることが必須である」ことがわかる。このことは、発明者の考察により初めて明らかになったことである。
【0065】
(15)式で定義されるhfnを「基本」発光効率と称する理由について説明する。(15)式は、モジュール(フィルタなし)の物理量であるモジュール発光効率hmとパネル(フィルタなし、モジュール)反射率βで定義されているが、これと同様の物理量を形式的に
hfns≡hs/βs0.5 (16)
hfns:セットの基本発光効率[lm/W]、
βs:セットの反射率
と定義する。
【0066】
図9を参考にして
βs=βα (17)
だから、(8b)、(16)、(17)式より、
hfns=hm*α/(β0.5*α) (18a)
=hm/β0.5 (18b)
=hfn (18c)
となる。
【0067】
すなわち、(16)式で定義されるhfnsは、フィルタの透過率αに関係なく一定となり、その値は(15)式で定義されるhfnに等しい。この意味で、(15)式で定義されるhfnを基本発光効率と称する。
【0068】
<電力について>
次に、電力に関して議論する。駆動回路を含めたPDPが消費する電力Ppは、放電電力Pdpと無効電力Pcpに区分され
Pp=Pdp+Pcp (19)
Pdp:放電電力、プラズマパネルへの放電投入電力[W]
Pcp:無効電力、主に駆動回路部で消費される電力[W]
となる。
【0069】
放電電力Pdpについて議論する。プラズマパネルへの放電投入電力Pdpは、
Pdp=NcbPdc (20)
Pdc=2FdrCdcVs (21)
ただし、
Pdc:1放電セルの放電電力、1放電セルへの放電投入電力[W]、
Ncb:プラズマパネル内(表示空間内)の表示放電を行うセル(onセル)の数、
Fdr:駆動周波数[Hz]、
Cdc:1放電セルの放電容量、1放電セルにおける表示電極が放電電荷を蓄積する容量[F]、
Vs:表示放電電圧[V]
である。駆動周波数Fdrは、単位時間(1秒間)において表示電極への周期的な電圧印加が行なわれる回数である。放電容量Cdcは、1放電セルにおいて表示電極(X電極あるいはY電極)が誘電体26及び保護膜27を介して保護膜27表面上の仮想電極と形成する容量である。1セルの放電容量Cdcは、さらに、
Cdc=εSse/Dsif (22)
ただし、
ε:誘電体26及び保護膜27を総合した層の平均的誘電率[CV−1−1]、
Sse:1放電セルにおける表示電極(X電極あるいはY電極)の面積、表示電極面積 [m]、
Dsif:誘電体厚さ、誘電体26及び保護膜27を総合した層の厚さ[m]
である。
【0070】
図3に、誘電体厚さDsifの定義を示してある。誘電体厚さDsifは、前面ガラス基板21の表面上に形成する誘電体26及び保護膜27を総合した層において、表示電極(X電極、Xバス電極、Y電極、あるいはYバス電極)と(厚さ方向に)重なる位置での厚さの平均値である。
【0071】
式(20)、(21)、(22)より、プラズマパネルへの放電投入電力Pdpは、
Pdp=2NcbεFdr(Sse/Dsif)Vs (23)
である。
【0072】
すなわち、他の条件が一定とすると、同じ放電投入電力Pdpを実現するためには表示電極面積Sseと誘電体厚さDsifが比例の関係にある。すなわち、表示電極面積Sseが減少しても、それに比例して誘電体厚さDsifを減少すれば同一の放電投入電力Pdpをプラズマパネルに投入することができる。
【0073】
無効電力Pcpについて議論する。無効電力Pcpは、
Pcp=2(1−βcp)CwpVs2*Fdr (24)
βcp:電力回収効率、
Cwp:パネル配線容量[F]
である。また、パネル配線容量は、
Cwp=NcpCwc (25)
Ncp:プラズマパネル内(表示空間内)のセル総数、
Cwc:セル配線容量、1放電セルにおいて表示電極対が形成する配線容量[F]
である。セル配線容量Cwcは、1放電セルにおいて表示電極対(X電極とY電極)が形成する配線容量である。一般に、誘電体厚さDsifを小さくすると、セル配線容量Cwcが減少する。誘電体厚さDsifを小さくすると、表示電極対間の電気力線が比誘電率kの大きな誘電体層から比誘電率kの小さな真空中(放電空間中)に押し出されるからである。
【0074】
以上の考察の下に、全白表示の高性能化について議論する。全白表示では、通常Pdp>>Pcpである。したがって、(19)式よりPDPの消費電力Ppは放電電力Pdpに概略等しくなり、Pp≒Pdpである。今、消費電力Pp(すなわち、概略放電電力Pdp)、室内光輝度Br、及び発光表示領域面積(すなわち、ディスプレイサイズ)Spの駆動および環境条件を一定にして考えると、(14)式の係数Aは一定となり、(13)式よりセットBC積Fbcsの平方根が基本発光効率hfnに比例することとなる。すなわち、「A1:全白表示における表示性能(セットBC積Fbcs)は、基本発光効率hfnの2乗で増大する」ことがわかる。さらに、(15)式より、基本発光効率hfnを増大するには、表示領域表面反射率(モジュール反射率)βを低減することが有効であることがわかる。すなわち、「A2:全白表示における表示性能(セットBC積Fbcs)の高性能化を達成する有効な方法は、表示領域表面反射率(モジュール反射率)βを低減することである」ことがわかる。
【0075】
<モジュール反射率について>
次に、モジュール反射率すなわち表示領域表面反射率βを低減する方法について議論する。表示領域表面反射率βは、表示領域での表面反射率の平均値である。表示領域表面反射率βを増大させる最大要因は、上記表示領域の上記表示面における面積(すなわち表示領域面積)に対する上記放電領域の上記表示面における面積(すなわち放電領域面積)の割合(すなわち放電領域面積率)の増加である。特に、表示領域面積に対する表示放電領域面積(上記表示放電領域の上記表示面における面積)の割合(すなわち表示放電領域面積率)が重要である。なぜなら、放電領域を定める放電空間(特に表示放電空間)においては表示放電が行なわれ、表示放電で発生する紫外線を可視光に変換する蛍光体が広い面積で塗布されているからである。蛍光体で発生する可視光を有効活用するために、一般的に蛍光体層(蛍光体を塗布した層)は、白色の蛍光体で構成されるので、蛍光体層の反射率は高い。さらに、放電空間の構造自体が、蛍光体層で発生した可視光を効率良く視野空間に放出する構造になっている。すなわち、外部から見たとき放電空間自体が白色である。すなわち、放電領域の反射率が高い。したがって、放電領域面積率(特に表示放電領域面積率)が大きくなると表示領域表面反射率βが増大する。
【0076】
表示放電領域面積率Adを、
Ad=Sd/Sp (26)
Sd:表示放電領域面積[m]、
Sp:表示領域面積[m]
とすると、例えば、図13に示す比較例のPDPでは、表示放電領域面積率Adは45%以上である。特に、ALIS方式プラズマディスプレイ装置を用いた場合には、表示放電領域面積率Adは65%以上である。この結果、比較例のPDPでの表示領域表面反射率(モジュール反射率)βは25%以上である。特に、ALIS方式プラズマディスプレイ装置の場合には、表示領域表面反射率βは32%以上である。すなわち、「A3:モジュール反射率すなわち表示領域表面反射率βを低減する有効な方法は、表示放電領域面積率Adを低減することである」ことがわかる。
【0077】
さらに、「A4:表示放電領域面積率Adを低減すると、必然的に各放電セルにおける表示電極面積Sseが減少する」と言える。常に、Sse<Adだからである。
【0078】
以上のA1〜A4の議論と結論をまとめると、「A5:全白表示における表示性能(セットBC積Fbcs)を向上すべく基本発光効率hfnの増大、表示領域表面反射率(モジュール反射率)βの低減、表示放電領域面積率Adの低減を図ると、必然的に各放電セルにおける表示電極面積Sseが減少する」ことがわかる。
【0079】
<小表示率表示性能について>
次に、小表示率表示性能について議論する。すなわち、表示率が概略10%以下の表示の性能について議論する。小表示率表示では、通常Pcp>>Pdpである。したがって、(19)式よりPDPの消費電力Ppは無効電力Pcpに概略等しくなり、Pp≦Pcpである。今、消費電力Pp(すなわち、概略無効電力Pcp)、電力回収効率βcp、パネル配線容量Cwp、表示放電電圧Vsを一定にして考えると、(24)式より駆動しうる最大の駆動周波数Fdrも一定になる。この時、(23)式より、表示率(表示放電セル数Ncb)、誘電体誘電率ε、誘電体厚さDsif、表示放電電圧Vsが一定と考えれば、放電電力Pdpは表示電極面積Sseに比例する。この結果、(7)式、(9)式より、セット輝度Bponsも表示電極面積Sseに比例する。さらに、(6)、(9)、(10)式より、セットのBC積Fbcsは表示電極面積Sseの2乗に比例する。すなわち、「A6:小表示率表示における表示性能(セットBC積Fbcs)は、表示電極面積Sseの2乗に比例する」ことがわかる。
【0080】
以上のA5,A6の議論と結論をまとめると、「A7:全白表示における表示性能(セットBC積Fbcs)を向上すべく基本発光効率hfnの増大、表示領域表面反射率(モジュール反射率)βの低減、表示放電領域面積率Adの低減を図ると、必然的に各放電セルにおける表示電極面積Sseが減少し、この結果、小表示率表示における表示性能(セットBC積Fbcs)が急激に低下する」ことがわかる。すなわち、「A8:全白表示性能と小表示率表示性能の間にトレードオフ関係の課題が存在する」ことがわかる。
【0081】
また、小表示率表示の条件、及び(24)式で無効電力Pcp一定の条件において、パネル配線容量Cwpを低減できれば駆動周波数Fdrを増大できることがわかる。すなわち、「A9:A8のトレードオフ関係を解消し全白表示性能と小表示率表示性能を両立するためには、表示領域表面反射率(モジュール反射率)βの低減、小表示率表示の輝度低下(単発輝度低下)の抑制、パネル配線容量の低減を同時に実現することが必須であること」がわかる。
【0082】
<トレードオフ関係を解消する手段>
以下では、前記したA8のトレードオフ関係を解消する方法を具体的に述べる。まず、A6に関連して行った議論と同様に、小表示率表示の条件で、消費電力Pp(すなわち、概略無効電力Pcp)、電力回収効率βcp、パネル配線容量Cwp、表示放電電圧Vsを一定にして考える。したがって、(24)式より駆動しうる最大の駆動周波数Fdrも一定になる。この時、(23)式より、表示率(表示放電セル数Ncb)、誘電体誘電率ε、表示放電電圧Vsが一定とし、誘電体厚さDsifが可変と考えれば、放電電力Pdpは表示電極面積Sseと誘電体厚さDsifの商、すなわちSse/Dsifに比例する。したがって、全白表示性能を増大させるために表示電極面積Sseが減少しても、誘電体厚さDsifを表示電極面積Sseに比例して減少させれば、放電電力Pdpの低下は抑制され、結果として小表示率表示性能の低下を抑制できる。すなわち、「A10:誘電体厚さDsifを減少させることにより、全白表示性能増大と小表示率表示性能増大を同時実現可能となる」ことがわかる。
【0083】
一般に、前面板の誘電体の比誘電率kが概略12の時はDsif=30μmであり、前面板の誘電体の比誘電率kが概略8の時はDsif=20μmである。このようなDsifの値は、上記した理由に基づき、小表示率表示での輝度と明室コントラスト、すなわち小表示率表示でのセットのBC積Fbcsを所定の性能に維持するために経験的に定まった値である。すなわち、
Dsif_e=Dsif/k (27)
k=ε/ε (28)
Dsif_e:実効誘電体厚さ、誘電体26及び保護膜27を総合した層の実効厚さ[m]、
k:誘電体26及び保護膜27を総合した層の平均的比誘電率、
ε:真空の誘電率[CV−1−1]、ε=8.85×10−12CV−1−1
として実効誘電体厚さDsif_eを定義すると、図13に示す比較例においては、Dsif_eが概略2.5μmである。また、前述したように、比較例において、表示放電領域面積率Adは45%以上であり、表示領域表面反射率(モジュール反射率)βは25%以上である。
【0084】
前述のA1〜A3の議論により、全白表示における表示性能(セットBC積Fbcs)を向上するためには表示放電領域面積率Adを低減することが有効であり、Adを40%以下、30%以下、あるいは20%以下にすることが有効である。全白表示性能を増大させる観点からは、Adの値を小さくすることが有効であるが、本願発明者の検討によれば、Adの値を40%以下とすれば、一般的な視覚者(本技術を適用したディスプレイを視覚する人間)が、全白表示における表示性能の向上を、ディスプレイの性能向上として感知することができる。また、Adの値を低減する程、性能向上の効果はより明瞭に感知できることとなるが、Adの値を10%低減する毎に相対的な差異を明確に感知することができる。このようにAdの値を40%以下、30%以下、あるいは20%以下とすると、表示領域表面反射率(モジュール反射率)βを20%以下、15%以下、あるいは10%以下にすることができる。
【0085】
しかし、この結果、表示電極面積Sseが減少し、A7に述べた如く、小表示率表示における表示性能(セットBC積Fbcs)が急激に低下する。しかし、A10の議論により、誘電体厚さDsifを減少させることにより、全白表示性能増大と小表示率表示性能増大を同時実現可能となる。具体的には、前記したAdの値の順に対応して、Dsif_eを2.2μm以下、1.7μm以下、1.1μm以下にすることが有効である。例えば、前面板2の誘電体26の比誘電率k=8の時には、Dsifを18μm以下、14μm以下、9μm以下にすることになる。また、前面板2の誘電体26の比誘電率k=12の時には、Dsifを26μm以下、20μm以下、13μm以下にすることになる。本願発明者の検討によれば、前記した表示放電領域面積率Adの値を例えば40%以下とした場合であっても、Dsif_eの値を2.2μm以下とすれば、小表示率表示における表示性能(セットBC積Fbcs)の低下を抑制することができるので、前記したように一般的な視覚者が、全白表示および小表示領域表示における表示性能の向上を、ディスプレイの性能向上として感知することができる。また、Dsif_eの値を1.7μm以下、1.1μm以下とすれば、表示放電領域面積率Adの値を30%以下、20%以下とした場合であっても、小表示率表示における表示性能(セットBC積Fbcs)の低下を抑制することができるので、全白表示および小表示領域表示における表示性能のさらなる向上をより明瞭に感知できる。
【0086】
ただし、Dsif_eの値を前記した所定の値以下に低減する手法として、Dsifの値を極端に低下する(すなわち、誘電体の厚さを薄くする)場合、以下の新たな課題が生じる懸念がある。すなわち、Dsifが減少すると、誘電体26の電気的な耐圧性能が悪化する。また、Dsifが減少すると、放電容量Cdcが増大し、この結果保護膜表面に入射するイオン密度が増大して、保護膜表面のスパッタが増大する。この結果、保護膜寿命が低減する。このように、表示性能を向上させる観点からは、前記したDsif_eの値は小さく(薄く)することが(2.2μm以下、1.7μm以下、1.1μm以下の順で)好ましい。一方、電気的な耐圧性能向上、あるいは保護膜の寿命向上の観点からは、Dsifの値は、大きく(厚く)することが好ましい。したがって、Dsif_eの具体的な値は、前記した数値範囲の中で、要求される電気的な耐圧性能、あるいは保護膜の寿命を確保可能な範囲で、最も小さい値とすることが好ましい。
【0087】
また、比誘電率kの値に関わらず、好ましいDsifの値を評価すると、Dsifを18μm以下とすることが好ましい。Dsifを18μm以下とすることにより、誘電体26及び保護膜27の比誘電率kを極端に低下させて、例えば、比誘電率k=8とした場合であっても、前記したように、全白表示性能増大と小表示率表示性能増大を同時実現可能となる。また、Dsifの値を14μm以下、9μm以下とさらに低減することにより、全白表示性能および小表示率表示性能をさらに増大させ、この増大した効果を一般的な視覚者が、全白表示における表示性能の向上を、ディスプレイの性能向上として感知することができる。
【0088】
ただし、前記の通り、電気的な耐圧性能向上、あるいは保護膜の寿命向上の観点からは、Dsifの値は、大きく(厚く)することが好ましいので、Dsifの具体的な値は、前記した数値範囲の中で、要求される電気的な耐圧性能、あるいは保護膜の寿命を確保可能な範囲で、最も小さい値とすることが好ましい。
【0089】
次に、誘電体厚さDsifあるいは実効誘電体厚さDsif_eを減少すると無効電力Pcpが減少し、この結果、小表示率表示性能がさらに向上することに関して述べる。
【0090】
前述した如く、一般に、誘電体厚さDsifあるいは実効誘電体厚さDsif_eを小さくすると、セル配線容量Cwcが減少する。誘電体厚さDsifあるいは実効誘電体厚さDsif_eを小さくすると、表示電極対間の電気力線が比誘電率kの大きな誘電体層から比誘電率kの小さな真空中(放電空間中)に押し出されるからである。この結果、(25)式より、パネル配線容量Cwpが減少する。
【0091】
小表示率表示の条件(すなわち、Pp≒Pcp)で、消費電力Pp、電力回収効率βcp、表示放電電圧Vsを一定にして考える。この時、(24)式より、パネル配線容量Cwpが減少すると、駆動しうる最大の駆動周波数Fdrが増大する。この結果、(23)式より放電電力Pdpが増大し、(14)、(13)式より小表示率表示のセットのBC積Fbcsが増大する。
【0092】
<PDPの具体的態様>
上記の検討結果を踏まえ、前記したトレードオフ関係を解消するための具体的態様について図2及び図13を用いて以下に説明する。以下の説明において、図2及び図13に示す、横方向が隔壁31の幅方向である。幅方向と直角方向(図中の縦方向)が高さ方向であり、高さ方向にz座標軸が示してある。幅方向および高さ方向と直角方向(すなわち図の紙面と垂直方向)が長手方向である。
【0093】
図2及び図13において、放電空間33は、保護膜27と蛍光体32に囲まれている。また、図2及び図13に示す符号、Wds(z)及びWrb(z)は幅方向の長さであり、各々放電空間幅Wds(z)及び隔壁幅Wrb(z)である。放電空間幅Wds(z)及び隔壁幅Wrb(z)は高さ方向、すなわち、z座標の関数である。また、符号、hds及びhrbは高さ方向の長さであり、各々放電空間高さhds及び隔壁高さhrbである。放電空間幅Wds(z)の放電空間高さhdsに亘って平均した値が平均放電空間幅Wdsaである。隔壁幅Wrb(z)の隔壁高さhrbに亘って平均した値が平均隔壁幅Wrbaである。また、図2及び図13には蛍光体層32の厚さhphを示している。図13に示す比較例においては、平均隔壁幅Wrbaはできる限り小さく設定されており、0.06mm以下である。
【0094】
図2に示す本実施の形態のPDPでは、全白表示における表示性能(セットBC積Fbcs)を向上するために、表示領域表面反射率(モジュール反射率)βが図13に示す比較例より小さくなっている。ここで、表示用の可視光が放射される面を表示面とし、該表示面から可視光が放射される空間を視野空間とし、複数の放電セルを連続的に包含する空間を表示空間とし、この表示空間の、上記表示面へ投影された領域を表示領域Rpとし、視野空間から該表示領域Rpに白色光を入射させたとき、該表示領域Rpから出射する光のエネルギーの、該入射された白色光のエネルギーに対する比の、該表示領域Rpにおける平均値を、表示領域表面反射率(あるいはモジュール反射率)βとした場合、0.02≦β≦0.2が満足されることが好ましい。表示性能(セットBC積Fbcs)を向上するためには、表示領域表面反射率(モジュール反射率)βがより小さいことが好ましいが、実用的な材料および製造条件を考慮して上記範囲のβが選ばれる。また後述するように、表示領域表面反射率βの低減を、表示放電領域面積率Ad=Sd/Spの低減、或いは黒色領域面積率Ab=Sb/Spの増大で実現する際に、表示領域表面反射率βの実用的な下限が存在し、表示領域表面反射率βの上記範囲が実用的価値を有する範囲である。上記の材料、製造条件、構造条件を考慮すると、より好ましい表示領域表面反射率βの範囲は、0.05≦β≦0.15である。
【0095】
さらに、上記表示領域表面反射率βの低減を、表示放電領域面積率Adの低減で実施する態様の一例を説明する。
【0096】
上記表示領域Rpの面積をSpとし、表示に利用される放電空間を表示放電空間とし、該表示放電空間の、表示面へ投影された領域を表示放電領域とし、上記表示領域Rpにおける上記表示放電領域の集合をRdとし、該表示放電領域の集合Rdの面積をSdとした場合、表示放電領域面積率Ad=Sd/Spが、0.05≦Ad≦0.4を満足することが好ましい。表示性能(セットBC積Fbcs)を向上するためには、表示放電領域面積率Adがより小さいことが好ましいが、実用的な材料および製造条件を考慮して上記範囲のAdが選ばれる。この結果、上記表示領域表面反射率βを上記範囲(0.02≦β≦0.2)に収めることができる。より好ましい表示放電領域面積率Adの範囲は、0.2≦Ad≦0.3である。この場合、表示領域表面反射率βの範囲を0.05≦β≦0.15に収めることができる。
【0097】
なお、放電セルの、上記表示面へ投影された領域をセル領域とし、前記複数の放電セルの少なくとも一部の放電セルにおいて、該セル領域における上記表示放電領域以外の領域を非表示放電領域としたとき、前記視野空間から該非表示放電領域に白色光を入射させたとき、該非表示放電領域から出射する光のエネルギーの、該入射された白色光のエネルギーに対する比が0.2以下にされている。この比は小さいほど望ましいが、プロセス温度(通常500℃程度の加熱工程がある)や材料コストを考慮すると、上記比は0.02〜0.2が実用的価値を有する範囲である。
【0098】
本実施の形態では、表示領域表面反射率βの目標値を実現するために、上記非表示放電領域の態様が以下のようになっている。例えば、少なくとも一部の上記放電セルにおいて、上記平均隔壁幅Wrbaが0.1mm以上、0.15mm以上、0.2mm以上、あるいは0.3mm以上に設定されている。平均隔壁幅Wrbaの値が大きくなるほど、表示領域表面反射率(モジュール反射率)βをより大きく低減することが可能となり、全白表示性能の増大を顕著にすることができる。本願発明者の検討によれば、平均隔壁幅Wrbaの値を0.1mm以上とすれば、一般的な視覚者(本技術を適用したディスプレイを視覚する人間)が、全白表示における表示性能の向上を、ディスプレイの性能向上として感知することができる。ただし、平均隔壁幅Wrbaの値を大きくするほど、表示電極面積Sseが減少するので、小表示率性能の低下を低下させる原因となる。したがって、小表示率表示性能の低下を抑制する観点から、前記した誘電体厚さDsif、あるいは実効誘電体厚さDsif_eの厚さを考慮して決定する必要がある。
【0099】
また、表示領域表面反射率βを出来る限り小さくするために、隔壁あるいは隔壁頭部(隔壁の視野空間側すなわち表示面側部分)が黒色の材料で形成されている。あるいは、隔壁よりも視野空間側の空間に、隔壁に合わせて黒色の層(通常黒色帯またはブラックマトリックスと呼ばれる)が形成されてある。ここで、黒色の材料あるいは黒色の層とは、その表面反射率が20%以下の材料あるいは層である。
【0100】
このように、本実施の形態では、表示放電領域面積率Adを0.4以下、あるいは0.3以下とすることにより、表示領域表面反射率βを0.2以下、あるいは0.15以下として、全白表示における表示性能を向上させている。ここで、単に表示領域表面反射率βを0.2以下、あるいは0.15以下とするのみでは、前記したように表示電極面積Sseが減少し、小表示率表示における表示性能(セットBC積Fbcs)が低下する。そこで、本実施の形態では、前記したように、前面板2の誘電体厚さDsifの値を18μm以下、14μm以下、あるいは9μm以下とする。あるいは、誘電体26及び保護膜27を総合した層の平均的比誘電率kを考慮した実効誘電体厚さDsif_eを2.2μm以下、1.7μm以下、あるいは1.1μm以下とすることにより、小表示率表示における表示性能(セットBC積Fbcs)が低下を抑制することができるので、全白表示性能および小表示率表示性能を向上させることができる。
【0101】
次に、上記表示領域表面反射率βを黒色領域の面積比率の面から達成した本実施の態様の第1の変形例を説明する。
【0102】
複数の放電セルの、少なくとも一部の放電セルに、視野空間から表示面に白色光を入射させたとき、該表示面から出射する光のエネルギーの、該入射された白色光のエネルギーに対する比が0.2以下である黒色領域を持たせ、上記表示領域Rpの面積をSp、さらに表示領域Rpにおける該黒色領域の集合をRbとし、該黒色領域の集合Rbの上記表示面における面積をSbとしたとき、黒色領域面積率Ab=Sb/Spが、0.95≧Ab≧0.5を満足するものである。黒色領域面積率Abをこの範囲内にすることにより、上記表示領域表面反射率βを上記範囲(0.02≦β≦0.2)に収めることができる。特に好ましい黒色領域面積率Abの範囲は、0.8≧Ab≧0.7である。この場合、表示領域表面反射率βの範囲を安定的に0.05≦β≦0.15に収めることができる。
【0103】
この場合も、黒色領域に白色光を入射させたとき、該黒色領域から出射する光のエネルギーの、該入射された白色光のエネルギーに対する比は小さいほど望ましいが、プロセス温度(通常500℃程度の加熱工程がある)や材料コストを考慮すると、上記比は0.02〜0.2が実用的価値を有する範囲である。
【0104】
このように、本実施の形態の第1の変形例では、表示放電領域面積率Adを0.9以下、あるいは0.8以下とすることにより、表示領域表面反射率βを0.2以下、あるいは0.15以下として、全白表示における表示性能を向上させている。また、本変形例では、前記したように、前面板2の誘電体厚さDsifの値を18μm以下、14μm以下、あるいは9μm以下とする。あるいは、誘電体26及び保護膜27を総合した層の平均的比誘電率kを考慮した実効誘電体厚さDsif_eを2.2μm以下、1.7μm以下、あるいは1.1μm以下とすることにより、小表示率表示における表示性能(セットBC積Fbcs)が低下を抑制することができるので、全白表示性能および小表示率表示性能を向上させることができる。
【0105】
また、上記黒色領域の面積Sbが大きくなりすぎると、発光輝度が低下して表示装置として機能しなくなる場合があるが、前記したように、前面板2の誘電体厚さDsifあるいは誘電体26及び保護膜27を総合した層の平均的比誘電率kを考慮した実効誘電体厚さDsif_eを減少させれば発光輝度の低下を抑制することができるので、黒色領域面積率Abを広くとることができる。
【0106】
次に、上記表示領域表面反射率βを実現するために、少なくとも一部の放電セルにおいて、視野空間から見た白色光に対する表面反射率が大きな領域、すなわち相対白色領域RWと小さな領域すなわち相対黒色領域RBを存在させ、下記の条件を満足させた、本実施の態様における、第2の変形例を説明する。
【0107】
まず、反射率を、視野空間から表示面に白色光を入射させたとき、該表示面から出射する光のエネルギーの、該入射された白色光のエネルギーに対する比と定義し、前記複数の放電セルの、少なくとも一部の放電セルにおいて、前記反射率の最大値をβmaxとしたとき、前記少なくとも一部の放電セルが、前記反射率が0.5×βmax以下である相対黒色領域RBを有し、これを下記条件が満たされるように設定する。
【0108】
すなわち、複数の放電セルを連続的に包含する空間を表示空間とし、この表示空間の、表示面へ投影された領域を表示領域Rpとし、該表示領域Rpの面積をSpとし、上記表示領域Rpにおける上記相対黒色領域RBの集合を黒色領域Rbとし、上記黒色領域Rbの上記表示面における面積をSbとしたとき、黒色領域面積率Ab=Sb/Spが、0.95≧Ab≧0.5を満足するようにするものである。この第2の変形例においても、前記第1の変形例と同様に黒色領域面積率Abを0.95≧Ab≧0.5にすることにより、上記表示領域表面反射率βを上記範囲(0.02≦β≦0.2)に収めることができる。特に好ましい黒色領域面積率Abの範囲は、0.8≧Ab≧0.7である。この場合、表示領域表面反射率βの範囲を安定的に0.05≦β≦0.15に収めることができる。
【0109】
このように、本実施の形態の第2の変形例では、表示放電領域面積率Adを0.9以下、あるいは0.8以下とすることにより、表示領域表面反射率βを0.2以下、あるいは0.15以下として、全白表示における表示性能を向上させている。また、本変形例では、前記したように、前面板2の誘電体厚さDsifの値を18μm以下、14μm以下、あるいは9μm以下とする。あるいは、誘電体26及び保護膜27を総合した層の平均的比誘電率kを考慮した実効誘電体厚さDsif_eを2.2μm以下、1.7μm以下、あるいは1.1μm以下とすることにより、小表示率表示における表示性能(セットBC積Fbcs)が低下を抑制することができるので、全白表示性能および小表示率表示性能を向上させることができる。
【0110】
また、上記黒色領域の面積Sbが大きくなりすぎると、発光輝度が低下して表示装置として機能しなくなる場合があるが、前記したように、前面板2の誘電体厚さDsifあるいは誘電体26及び保護膜27を総合した層の平均的比誘電率kを考慮した実効誘電体厚さDsif_eを減少させれば発光輝度の低下を抑制することができるので、黒色領域面積率Abを広くとることができる。
【0111】
図13に示す比較例においては、前記A7で示した如く、全白表示における表示性能(セットBC積Fbcs)を向上すべく、表示放電領域面積率Adの低減あるいは黒色領域面積率Abの増大を図ると、必然的に各放電セルにおける表示電極面積Sseが減少し、この結果、小表示率表示における表示性能(セットBC積Fbcs)が急激に低下する。本実施の形態においては、このトレードオフの課題を克服すべく、前記A10及びその関連部分で述べた如く、前面板の誘電体厚さDsifあるいは実効誘電体厚さDsif_eを比較例より減少させてある。誘電体厚さDsifあるいは実効誘電体厚さDsif_eの最適値は、実際のセル構造、セル材料、さらには好みとする表示画像特性により変化する。これらの条件を考慮すると、前述した如く、誘電体厚さDsifを18μm以下、14μm以下、9μm以下にする、あるいは、誘電体26及び保護膜27の比誘電率を考慮して、実効誘電体厚さDsif_eを2.2μm以下、1.7μm以下、1.1μm以下にすることが有効である。
【0112】
パネル駆動において前面板2の誘電体26中には電界が形成され、誘電体厚さDsifあるいは実効誘電体厚さDsif_eが減少するとこの電界強度が増大する。この電界強度増大の結果、誘電体そのものが絶縁破壊等により破壊される可能性がある。本実施の形態では、前面板2の誘電体26に、このような絶縁体破壊が生じない材料あるいはプロセスが用いられている。
【0113】
前述した如く、誘電体厚さDsifあるいは実効誘電体厚さDsif_eを減少すると無効電力Pcpが減少し、この結果、小表示率表示性能(小表示率表示のセットのBC積Fbcs)がさらに向上する。
【0114】
(実施の形態2)
図10〜図12は、本実施の形態2のプラズマディスプレイパネル(基本PDP)の概略図である。図10は、視野空間側から見た平面の一部を示す要部拡大平面図である。図11、図12は、それぞれ図10に示したD1,D2の方向から見た断面の一部をさらに拡大して示す要部拡大断面図である。以下、本実施の形態と前記実施の形態1との相違点について説明する。
【0115】
まず、本実施の形態では隔壁がボックス隔壁構造になっている。すなわち、隔壁31の長手方向が交叉する2つの方向DR1とDR2に沿って延在するように格子状に配置されており、これら方向は図中のD1とD2に一致している。前記実施の形態1で説明したのと同様の方法で、長手方向が少なくとも2方向(DR1とDR2)の隔壁構成部に関して平均隔壁幅Wrbaが決定される。少なくとも一部の放電セルにおいて、長手方向が上記2方向すなわちDR1とDR2の少なくともいずれかの方向に配置された上記隔壁の平均隔壁幅Wrbaが0.1mm以上、0.15mm以上、0.2mm以上、あるいは0.3mm以上に設定されている。平均隔壁幅Wrbaの値が大きくなるほど、表示領域表面反射率(モジュール反射率)βをより大きく低減することが可能となり、全白表示性能の増大を顕著にすることができる。本願発明者の検討によれば、平均隔壁幅Wrbaの値を0.1mm以上とすれば、一般的な視覚者(本技術を適用したディスプレイを視覚する人間)が、全白表示における表示性能の向上を、ディスプレイの性能向上として感知することができる。ただし、平均隔壁幅Wrbaの値を大きくするほど、表示電極面積Sseが減少するので、小表示率性能の低下を低下させる原因となる。したがって、小表示率表示性能の低下を抑制する観点から、前記した誘電体厚さDsif、あるいは実効誘電体厚さDsif_eの厚さを考慮して決定する必要がある。
【0116】
本実施の形態のもう一つの相違点は、表示放電電極対(X電極とY電極)が対向配置になっていることである。すなわち、Y電極230とYバス電極250が前面ガラス基板21に設置されてあり、X電極220が背面ガラス基板28に上記Y電極と高さ方向に対向する配置で設置されている。視野空間は、前面板に関して背面板と反対側に存している。背面板側にあるX電極220は可視光を透過する必要はなく、必ずしも透明電極である必要はない。また、X電極、Y電極共に誘電体26、30と保護膜27で被覆されてある。蛍光体32は隔壁31の側壁だけに塗布されており、上記X電極及びY電極を被覆する保護膜27上には塗布されていない。図11、図12に示した高さhがセルの高さ、あるいは隔壁31の高さ、あるいは放電空間33の高さである。
【0117】
このように表示放電電極対を対向配置にすることにより、表示放電電極対の一方(X電極)と表示電極間ギャップWgxy(図3参照)が表示領域の一部を専有する必要がなくなる。すなわち、表示放電領域面積Sdが小さくなり、表示放電領域面積率Adを小さくすることができる。したがって、表示領域表面反射率βを小さくすることが容易になる。
【0118】
放電の紫外線発生効率を増大してモジュール発光効率を増大するためには放電のpd積を大きくする必要がある。pd積とは、放電ガスのガス圧力pと放電電極間の距離dとの積(掛け算)である。本実施の形態では、放電電極間の距離dは放電空間高さhである。十分な紫外線発生効率を得るために必要な放電空間33の高さhの値は、ガス圧力pやセル構造により異なる。一般的には、状況に応じて、放電空間33の高さhが0.05mm以上、0.1mm以上、0.2mm以上、0.3mm以上、あるいは0.5mm以上である必要がある。放電空間33の高さhが大きいほどより大きな紫外線発生効率を得ることができるが、一方で隔壁アスペクト比Arbasの大きな隔壁31を形成する必要があり製造コストの増大を招くことになる。隔壁アスペクト比Arbasとは、h/Wrbaのことである。放電空間の高さhの値は、これらのメリット(紫外線発生効率の増大)とデメリット(製造コストの増大)とを総合的に考慮して決定される。本願発明者の検討によれば、上記した放電空間の高さhの段階的な値において、これら総合的判断の基準(メリット重視とデメリット抑制重視)が顕著に変化する。
【0119】
上記の放電空間33の高さhを実現するためには、例えば下記の構造が必要となる。すなわち、PDP200の高さ方向に座標軸zをとり、上記表示電極であるX電極の上記座標軸zの位置座標をzXとし、上記Y電極の上記座標軸zの位置座標をzYとし、上記位置座標zXとzYの差の絶対値|zY−zX|が0.05mm以上、0.1mm以上、0.2mm以上、0.3mm以上、あるいは0.5mm以上である必要がある。
【0120】
また、放電空間33の高さhを大きくすると、放電空間アスペクト比Adsas=h/Wdsaも大きくなる。放電空間アスペクト比が大きくなると、蛍光体32で発光した可視光は蛍光体32の表面あるいは背面板の保護膜27表面(あるいは背面板の誘電体26表面)で多重回反射をして視野空間に出てくる。したがって、可視光を有効活用するために、蛍光体32の表面あるいは背面板の保護膜27表面(あるいは背面板の誘電体26表面)の表面反射率(これを非開口面反射率と呼ぶ)を大きくする必要がある。この非開口面反射率は通常60%程度であり、これを80%以上あるいは90%以上にすることが望ましい。本願発明者の検討によれば、非開口面反射率を80%とすることにより、一般的な視覚者(本技術を適用したディスプレイを視覚する人間)が、輝度向上を、明瞭に感知することができる。また、90%以上とすれば、80%と比較してさらに向上したことを感知することができる。
【0121】
上記放電空間33の高さhを大きくすればするほど、この非開口面反射率を大きくすることが必要となる。上記非開口面反射率を次のように説明することできる。すなわち、上記放電セルにおいて上記表示放電空間を取り囲む固体壁を表示放電空間内面とし、上記表示放電空間内面のうち表示用の可視光が視野空間に向けて放射する面を開口面とし、上記表示放電空間内面のうち上記開口面以外の固体壁を非開口面とし、上記非開口面の表面反射率の平均値を非開口面反射率とする。
【0122】
以上、本願発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。
【0123】
例えば、実施の形態2では、基本PDPの構造について説明したが、これを実施の形態で説明した図4、あるいは図8に示すプラズマディスプレイ装置に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、プラズマディスプレイパネルなどのプラズマディスプレイ装置に広く利用可能である。
【符号の説明】
【0125】
1、200 PDP(プラズマディスプレイパネル、基本プラズマパネル)
2 前面板
3 背面板
21 前面ガラス基板
22−1、22−2、220 X電極
23−1、23−2、230 Y電極
24−1、24−2 Xバス電極
25−1、25−2、250 Yバス電極
26 誘電体(誘電体膜)
27 保護膜
28 背面ガラス基板
29 A電極(アドレス電極)
30 誘電体(誘電体膜)
31 隔壁(リブ)
32 蛍光体
33 放電空間
40 TVフィールド
41〜48 サブフィールド
49 予備放電期間
50 書き込み放電期間
51 表示期間(発行表示期間)
52 波形(1本のA電極に印加する電圧波形)
53 波形(X電極に印加する電圧波形)
54 波形(Y電極のi番目に印加する電圧波形)
55 波形(Y電極のi+1番目に印加する電圧波形)
56 スキャンパルス(Y電極のi行目に印加されるスキャンパルス)
57 スキャンパルス(Y電極のi+1行目に印加されるスキャンパルス)
58 電圧波形(X電極に印加される電圧波形)
59 電圧波形(Y電極に印加される電圧波形)
100 プラズマディスプレイ装置
101 駆動手段(駆動回路)
102 映像源
Dsif 誘電体厚さ
hds 放電空間高さ
hrb 隔壁高さ
hph 厚さ
Wds(z) 放電空間幅
Wdsa 平均放電空間幅
Wrb(z) 隔壁幅
Wrba 平均隔壁幅
h 高さ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表示放電を行う為のX電極及びY電極、前記X電極及びY電極を少なくとも部分的に覆う誘電体膜、放電空間に充填された放電ガス、及び前記放電ガスの放電で発生する紫外線による励起で可視光を発光する蛍光体、を少なくとも備える複数の放電セルを備えたプラズマディスプレイパネルと、
前記プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動回路と、を有し、
前記プラズマディスプレイパネルにおける、表示用の前記可視光が放射される面を表示面とし、
前記表示面から前記可視光が放射される空間を視野空間とし、
前記複数の放電セルを連続的に包含する空間を表示空間とし、
前記表示空間の前記表示面へ投影された領域を表示領域Rpとし、
前記視野空間から前記表示領域に白色光を入射させたとき、前記表示領域から出射する光のエネルギーの、入射された前記白色光のエネルギーに対する比の、前記表示領域における平均値を表示領域表面反射率βとすると、
0.02≦β≦0.2であり、
前記誘電体膜の前記X電極と重なる位置での厚さ及び前記Y電極と重なる位置での厚さの平均値を誘電体厚さDsifとすると、Dsifが18μm以下であることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項2】
表示放電を行う為のX電極及びY電極、前記X電極及びY電極を少なくとも部分的に覆う誘電体膜、放電空間に充填された放電ガス、及び前記放電ガスの放電で発生する紫外線による励起で可視光を発光する蛍光体、を少なくとも備える複数の放電セルを備えたプラズマディスプレイパネルと、
前記プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動回路と、を有し、
前記プラズマディスプレイパネルにおける、表示用の前記可視光が放射される面を表示面とし、
前記表示面から前記可視光が放射される空間を視野空間とし、
前記複数の放電セルを連続的に包含する空間を表示空間とし、
前記表示空間の前記表示面へ投影された領域を表示領域Rpとし、
前記表示領域Rpの面積をSpとし、
前記放電空間の中で前記表示放電の発生する空間を表示放電空間とし、
前記表示放電空間の前記表示面へ投影された領域を表示放電領域とし、
前記表示領域Rpにおける前記表示放電領域の集合をRdとし、
前記表示放電領域の集合Rdの面積をSdとし、
Ad=Sd/Spを表示放電領域面積率とすると、
0.05≦Ad≦0.4であり、
前記誘電体膜の前記X電極と重なる位置での厚さ及び前記Y電極と重なる位置での厚さの平均値を誘電体厚さDsifとすると、Dsifが18μm以下であることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項3】
表示放電を行う為のX電極及びY電極、前記X電極及びY電極を少なくとも部分的に覆う誘電体膜、放電空間に充填された放電ガス、及び前記放電ガスの放電で発生する紫外線による励起で可視光を発光する蛍光体、を少なくとも備える複数の放電セルを備えたプラズマディスプレイパネルと、
前記プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動回路と、を有し、
前記プラズマディスプレイパネルにおける、表示用の前記可視光が放射される面を表示面とし、
前記表示面から前記可視光が放射される空間を視野空間とし、
前記複数の放電セルを連続的に包含する空間を表示空間とし、
前記表示空間の前記表示面へ投影された領域を表示領域Rpとし、
前記表示領域Rpの面積をSpとし、
前記複数の放電セルの、少なくとも一部の前記放電セルが、前記視野空間から前記表示面に白色光を入射させたとき、前記表示面から出射する光のエネルギーの、入射された前記白色光のエネルギーに対する比が0.2以下である黒色領域を有し、
前記表示領域Rpにおける前記黒色領域の集合をRbとし、
前記黒色領域の集合Rbの前記表示面における面積をSbとし、
Ab=Sb/Spを黒色領域面積率とすると、
0.95≧Ab≧0.5であり、
前記誘電体膜の前記X電極と重なる位置での厚さ及び前記Y電極と重なる位置での厚さの平均値を誘電体厚さDsifとすると、Dsifが18μm以下であることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項4】
表示放電を行う為のX電極及びY電極、前記X電極及びY電極を少なくとも部分的に覆う誘電体膜、放電空間に充填された放電ガス、及び前記放電ガスの放電で発生する紫外線による励起で可視光を発光する蛍光体、を少なくとも備える複数の放電セルを備えたプラズマディスプレイパネルと、
前記プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動回路と、を有し、
前記プラズマディスプレイパネルにおける、表示用の前記可視光が放射される面を表示面とし、
前記表示面から前記可視光が放射される空間を視野空間とし、
前記複数の放電セルを連続的に包含する空間を表示空間とし、
前記表示空間の前記表示面へ投影された領域を表示領域Rpとし、
前記表示領域Rpの面積をSpとし、
前記視野空間から前記表示面に白色光を入射したとき、前記表示面から出射する光のエネルギーの、入射された前記白色光のエネルギーに対する比を反射率とし、
前記複数の放電セルの前記反射率の最大値をβmaxとしたとき、少なくとも一部の前記放電セルが、前記反射率が0.5×βmax以下である黒色領域を有し、
前記表示領域Rpにおける前記黒色領域の集合をRbとし、該黒色領域の集合Rbの前記表示面における面積をSbとし、
Ab=Sb/Spを黒色領域面積率とすると、
0.95≧Ab≧0.5であり、
前記誘電体膜の前記X電極と重なる位置での厚さ及び前記Y電極と重なる位置での厚さの平均値を誘電体厚さDsifとすると、Dsifが18μm以下であることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項5】
表示放電を行う為のX電極及びY電極、前記X電極及びY電極を少なくとも部分的に覆う誘電体膜、放電空間に充填された放電ガス、及び前記放電ガスの放電で発生する紫外線による励起で可視光を発光する蛍光体、を少なくとも備える複数の放電セルを備えたプラズマディスプレイパネルと、
前記プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動回路と、を有し、
前記プラズマディスプレイパネルにおける、表示用の前記可視光が放射される面を表示面とし、
前記表示面から前記可視光が放射される空間を視野空間とし、
前記複数の放電セルを連続的に包含する空間を表示空間とし、
前記表示空間の前記表示面へ投影された領域を表示領域Rpとし、
前記視野空間から前記表示領域に白色光を入射させたとき、前記表示領域から出射する光のエネルギーの、入射された前記白色光のエネルギーに対する比の、前記表示領域における平均値を表示領域表面反射率βとすると、
0.02≦β≦0.2であり、
前記誘電体膜の前記X電極と重なる位置での厚さ及び前記Y電極と重なる位置での厚さの平均値を誘電体厚さDsifとし、前記誘電体膜の前記X電極と重なる位置での比誘電率及び前記Y電極と重なる位置での比誘電率の平均値を誘電体比誘電率kとし、Dsif_e=Dsif/kを実効誘電体厚さとすると、Dsif_eが2.2μm以下であることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項6】
表示放電を行う為のX電極及びY電極、前記X電極及びY電極を少なくとも部分的に覆う誘電体膜、放電空間に充填された放電ガス、及び前記放電ガスの放電で発生する紫外線による励起で可視光を発光する蛍光体、を少なくとも備える複数の放電セルを備えたプラズマディスプレイパネルと、
前記プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動回路と、を有し、
前記プラズマディスプレイパネルにおける、表示用の前記可視光が放射される面を表示面とし、
前記表示面から前記可視光が放射される空間を視野空間とし、
前記複数の放電セルを連続的に包含する空間を表示空間とし、
前記表示空間の前記表示面へ投影された領域を表示領域Rpとし、
前記表示領域Rpの面積をSpとし、
前記放電空間の中で前記表示放電の発生する空間を表示放電空間とし、
前記表示放電空間の前記表示面へ投影された領域を表示放電領域とし、
前記表示領域Rpにおける前記表示放電領域の集合をRdとし、
前記表示放電領域の集合Rdの面積をSdとし、
Ad=Sd/Spを表示放電領域面積率とすると、
0.05≦Ad≦0.4であり、
前記誘電体膜の前記X電極と重なる位置での厚さ及び前記Y電極と重なる位置での厚さの平均値を誘電体厚さDsifとし、前記誘電体膜の前記X電極と重なる位置での比誘電率及び前記Y電極と重なる位置での比誘電率の平均値を誘電体比誘電率kとし、Dsif_e=Dsif/kを実効誘電体厚さとすると、Dsif_eが2.2μm以下であることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項7】
表示放電を行う為のX電極及びY電極、前記X電極及びY電極を少なくとも部分的に覆う誘電体膜、放電空間に充填された放電ガス、及び前記放電ガスの放電で発生する紫外線による励起で可視光を発光する蛍光体、を少なくとも備える複数の放電セルを備えたプラズマディスプレイパネルと、
前記プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動回路と、を有し、
前記プラズマディスプレイパネルにおける、表示用の前記可視光が放射される面を表示面とし、
前記表示面から前記可視光が放射される空間を視野空間とし、
前記複数の放電セルを連続的に包含する空間を表示空間とし、
前記表示空間の前記表示面へ投影された領域を表示領域Rpとし、
前記表示領域Rpの面積をSpとし、
前記複数の放電セルの、少なくとも一部の前記放電セルが、前記視野空間から前記表示面に白色光を入射させたとき、前記表示面から出射する光のエネルギーの、入射された前記白色光のエネルギーに対する比が0.2以下である黒色領域を有し、
前記表示領域Rpにおける前記黒色領域の集合をRbとし、
前記黒色領域の集合Rbの前記表示面における面積をSbとし、
Ab=Sb/Spを黒色領域面積率とすると、
0.95≧Ab≧0.5であり、
前記誘電体膜の前記X電極と重なる位置での厚さ及び前記Y電極と重なる位置での厚さの平均値を誘電体厚さDsifとし、前記誘電体膜の前記X電極と重なる位置での比誘電率及び前記Y電極と重なる位置での比誘電率の平均値を誘電体比誘電率kとし、Dsif_e=Dsif/kを実効誘電体厚さとすると、Dsif_eが2.2μm以下であることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項8】
表示放電を行う為のX電極及びY電極、前記X電極及びY電極を少なくとも部分的に覆う誘電体膜、放電空間に充填された放電ガス、及び前記放電ガスの放電で発生する紫外線による励起で可視光を発光する蛍光体、を少なくとも備える複数の放電セルを備えたプラズマディスプレイパネルと、
前記プラズマディスプレイパネルを駆動する駆動回路と、を有し、
前記プラズマディスプレイパネルにおける、表示用の前記可視光が放射される面を表示面とし、
前記表示面から前記可視光が放射される空間を視野空間とし、
前記複数の放電セルを連続的に包含する空間を表示空間とし、
前記表示空間の前記表示面へ投影された領域を表示領域Rpとし、
前記表示領域Rpの面積をSpとし、
前記視野空間から前記表示面に白色光を入射したとき、前記表示面から出射する光のエネルギーの、入射された前記白色光のエネルギーに対する比を反射率とし、
前記複数の放電セルの前記反射率の最大値をβmaxとしたとき、少なくとも一部の前記放電セルが、前記反射率が0.5×βmax以下である黒色領域を有し、
前記表示領域Rpにおける前記黒色領域の集合をRbとし、該黒色領域の集合Rbの前記表示面における面積をSbとし、
Ab=Sb/Spを黒色領域面積率とすると、
0.95≧Ab≧0.5であり、
前記誘電体膜の前記X電極と重なる位置での厚さ及び前記Y電極と重なる位置での厚さの平均値を誘電体厚さDsifとし、前記誘電体膜の前記X電極と重なる位置での比誘電率及び前記Y電極と重なる位置での比誘電率の平均値を誘電体比誘電率kとし、Dsif_e=Dsif/kを実効誘電体厚さとすると、Dsif_eが2.2μm以下であることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイ装置において、
交叉する二方向に延在して格子状に形成された隔壁が、前記複数の放電セルの一部を形成し、
前記複数の放電セルの中の少なくとも一部の前記放電セルにおいて、前記二方向の少なくとも一方向に延在する前記隔壁において、該隔壁の幅の平均値が0.1mm以上であることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項10】
請求項9に記載のプラズマディスプレイ装置において、
前記隔壁の高さ方向に座標軸zをとり、前記X電極の前記座標軸zの位置座標をzXとし、前記Y電極の前記座標軸zの位置座標をzYとし、
前記位置座標zX、zYの差の絶対値|zY−zX|が0.05mm以上であることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項11】
請求項10に記載のプラズマディスプレイ装置において、
前記複数の放電セルの各々において、前記表示放電空間を取り囲む固体壁を表示放電空間内面とし、
前記表示放電空間内面のうち表示用の前記可視光が前記視野空間に向けて放射する面を開口面とし、
前記表示放電空間内面のうち前記開口面以外の固体壁を非開口面とし、
前記非開口面の表面反射率の平均値を非開口面反射率とすると、
前記複数の放電セルの少なくとも一部の前記放電セルにおいて、前記非開口面反射率が80%以上であることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。
【請求項12】
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載のプラズマディスプレイ装置において、
第1の方向に沿って延在し、該第1の方向に直交する第2の方向に並べられた複数の隔壁が、前記複数の放電セルの一部を形成し、前記複数の放電セルの中の少なくとも一部の前記放電セルにおいて、前記複数の隔壁の幅の平均値が0.1mm以上であることを特徴とするプラズマディスプレイ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−14450(P2011−14450A)
【公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−158961(P2009−158961)
【出願日】平成21年7月3日(2009.7.3)
【出願人】(509189444)日立コンシューマエレクトロニクス株式会社 (998)
【Fターム(参考)】